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Title:
L-CYSTEINE-PRODUCING BACTERIUM, AND METHOD FOR PRODUCTION OF L-CYSTEINE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/104731
Kind Code:
A1
Abstract:
L-Cysteine, L-cystine, a derivative or precursor thereof, or a mixture of two or more of L-cysteine, L-cystine and a derivative or precursor thereof can be produced by: culturing a bacterium belonging to the family Enterobacteriaceae which is capable of producing L-cysteine and is so modified that the activity of a protein encoded by tolC gene (e.g., any one of proteins (A) and (B) shown below) can be increased in a culture medium; and collecting L-cysteine, L-cystine, the derivative or precursor thereof or the mixture from the culture: (A) a protein comprising then amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:2; and (B) a protein which comprises an amino acid sequence having the substitution, deletion, insertion or addition of one or several amino acid residues in the amino acid sequence depicted in SEQ ID NO:2 and which is increased in its L-cysteine production ability when the activity in the bacterium is increased.

Inventors:
NONAKA GEN (JP)
TAKAGI HIROSHI (JP)
OHTSU IWAO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/053021
Publication Date:
August 27, 2009
Filing Date:
February 20, 2009
Export Citation:
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Assignee:
AJINOMOTO KK (JP)
NAT UNIV CORP NARA INST (JP)
NONAKA GEN (JP)
TAKAGI HIROSHI (JP)
OHTSU IWAO (JP)
International Classes:
C12N15/00; C12N1/21; C12N15/09; C12P13/12
Domestic Patent References:
WO2001027307A12001-04-19
WO2005010175A12005-02-03
WO1997015673A11997-05-01
Foreign References:
JP2002233384A2002-08-20
JP2005287333A2005-10-20
JP2992010B21999-12-20
JP2002233384A2002-08-20
JPH11155571A1999-06-15
US20050112731A12005-05-26
US6218168B12001-04-17
JP2003169668A2003-06-17
JP2005245311A2005-09-15
US5972663A1999-10-26
JP2005287333A2005-10-20
JP2992010B21999-12-20
EP0952221A21999-10-27
US6596517B22003-07-22
US6303383B12001-10-16
JPH057491A1993-01-19
US20050112731A12005-05-26
JPH02109985A1990-04-23
US6180373B12001-01-30
JP2005137369A2005-06-02
EP1528108A12005-05-04
JPH1156381A1999-03-02
JP2002262896A2002-09-17
Other References:
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See also references of EP 2246420A4
Attorney, Agent or Firm:
KAWAGUCHI, Yoshiyuki et al. (JP)
Yoshiyuki Kawaguchi (JP)
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Claims:
 L-システイン生産能を有し、かつ、tolC遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大するように改変された腸内細菌科に属する細菌。
 前記tolC遺伝子の発現量を増大させること、及び/または、tolC遺伝子の翻訳量を増大させることにより、前記タンパク質の活性が増大した請求項1に記載の細菌。
 tolC遺伝子のコピー数を高めること、又は同遺伝子の発現調節配列を改変することにより、tolC遺伝子の発現量が増大された、請求項2に記載の細菌。
 前記タンパク質が、下記(A)または(B)に記載のタンパク質である請求項1~3のいずれか一項に記載の細菌。
(A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質。
(B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、または付加を含むアミノ酸配列を有し、かつ、細菌内の活性を増大させたときにL-システイン生産能が向上するタンパク質。
 前記tolC遺伝子が、下記(a)または(b)に記載のDNAである、請求項1~4のいずれか一項に記載の細菌。
(a)配列番号1の塩基配列を含むDNA、または
(b)配列番号1の塩基配列または同塩基配列から調製され得るプローブとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、細菌内の活性を増大させたときにL-システイン生産能が向上するタンパク質をコードするDNA。
 L-システインによるフィードバック阻害が低減された変異型セリンアセチルトランスフェラーゼを保持する請求項1~5のいずれか一項に記載の細菌。
 ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大した、請求項1~5のいずれか一項に記載の細菌。
 システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質の活性が低下した、請求項1~5のいずれか一項に記載の細菌。
 ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質の活性が増大した、請求項6に記載の細菌。
 システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質の活性が低下した、請求項6に記載の細菌。
 システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質の活性が低下した、請求項7に記載の細菌。
 システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質の活性が低下した、請求項9に記載の細菌。
 前記システインデスルフヒドラーゼ活性を有するタンパク質がトリプトファナーゼである、請求項8、10~12のいずれか一項に記載の細菌。
 前記細菌がエシェリヒア属細菌である、請求項1~13のいずれか一項に記載の細菌。
 前記細菌がエシェリヒア・コリである、請求項14に記載の細菌。
 請求項1~15のいずれか一項に記載の細菌を培地中で培養し、該培地からL-システイン、L-シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、又はこれらの混合物を採取することを特徴とする、L-システイン、L-シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、又はこれらの混合物の製造法。
 前記L-システインの誘導体がチアゾリジン誘導体である、請求項16に記載の方法。
 前記L-システインの前駆体がO-アセチルセリン又はN-アセチルセリンである、請求項16に記載の方法。
Description:
L-システイン生産菌及びL-システ インの製造法

 本発明は、L-システインの又はその関連 質の製造法に関し、詳しくはL-システイン又 はその関連物質の製造に好適な細菌、及びそ れを用いたL-システイン又はその関連物質の 造法に関する。L-システイン及びその関連 質は、医薬品、化粧品及び食品分野で利用 れている。

 従来、L-システインは、毛髪、角、羽毛 のケラチン含有物質から抽出することによ 、あるいはDL-2-アミノチアゾリン-4-カルボン 酸を前駆体とする微生物酵素変換により得ら れている。また、新規な酵素を用いた固定化 酵素法によるL-システインの大量生産も計画 れている。さらに、微生物を用いた発酵法 よるL-システインの生産も試みられている

 L-システイン生産能を有する微生物とし は、例えば、細胞内のセリンアセチルトラ スフェラーゼ活性が上昇したコリネ型細菌( 許文献1)が知られている。また、L-システイ ンによるフィードバック阻害が低減された変 異型セリンアセチルトランスフェラーゼを保 持させることにより、L-システイン生産能を める技術が知られている(特許文献2~4)。

 また、L-システイン分解系を抑制するこ によってL-システイン生産能が高められた微 生物としては、シスタチオニン-β-リアーゼ( 許文献2)、トリプトファナーゼ(特許文献5) O-アセチルセリン スルフヒドリラーゼB(特 文献6)の活性を低下又は欠失させたコリネ型 細菌又はエシェリヒア属細菌が知られている 。

 さらに、YdeDタンパク質をコードするydeD 伝子は、システイン経路の代謝産物の排出 関与していることが知られている(非特許文 1)。また、細胞に毒性の物質を排出するの 適したタンパク質をコードする遺伝子であ mar-座、emr-座、acr-座、cmr-座、mex-遺伝子、bmr -遺伝子、qacA-遺伝子(特許文献7)、又はemrAB、e mrKY、yojIH、acrEF、bcrもしくはcusA遺伝子(特許 献8)の発現を上昇させることによりL-システ ン生産能を高める技術が知られている。

 また、L-システイン生産菌として、cysB遺 子によりコードされるシステインレギュロ の正の転写制御因子の活性が上昇したエシ リヒア・コリ (特許文献9)が知られている

 tolC(非特許文献2)は、ポーリン(外膜チャン ル)をコードする遺伝子として知られている 、L-システイン生産との関連は知られてい い。

特開2002-233384

特開平11-155571号

米国特許出願公開第20050112731号

米国特許第6218168号

特開2003-169668

特開2005-245311

米国特許第5972663号

特開2005-287333

国際公開パンフレット第01/27307号 Dabler et al., Mol. Microbiol. 36, 1101-1112 (2 000) BioCyc Home Page, Summary of Escherichia coli,  Strain K-12, version 11.6, E. coli K-12 Gene: tolC[ 成20年2月11日検索]、インターネット<URL:ht tp://biocyc.org/ECOLI/NEW-IMAGE?type=GENE&object=EG11009 >

 本発明は、細菌のL-システイン生産能を 上させる新規な技術を開発し、L-システイン 生産菌、及び同細菌を用いたL-システイン、L -シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体 又はこれらの混合物の製造法を提供するこ を課題とする。

 本発明者は、上記課題を解決するために鋭 研究を行った結果、tolC遺伝子によりコード されるタンパク質の活性が増大するように細 菌を改変することによってL-システイン生産 を向上させることができることを見出し、 発明を完成するに至った。
 すなわち本発明は以下のとおりである。
(1)L-システイン生産能を有し、かつ、tolC遺伝 子によりコードされるタンパク質の活性が増 大するように改変された腸内細菌科に属する 細菌。
(2)前記tolC遺伝子の発現量を増大させること 及び/または、tolC遺伝子の翻訳量を増大させ ることにより、前記タンパク質の活性が増大 した、前記細菌。
(3)tolC遺伝子のコピー数を高めること、又は 遺伝子の発現調節配列を改変することによ 、tolC遺伝子の発現量が増大された、前記細 。
(4)前記タンパク質が、下記(A)または(B)に記載 のタンパク質である前記細菌。
 (A)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタ ンパク質。
 (B)配列番号2に示すアミノ酸配列において、 1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿 、または付加を含むアミノ酸配列を有し、 つ、細菌内の活性を増大させたときにL-シス テイン生産能が向上するタンパク質。
(5)前記tolC遺伝子が、下記(a)または(b)に記載 DNAである、前記細菌。
 (a)配列番号1の塩基配列を含むDNA、または
 (b)配列番号1の塩基配列または同塩基配列か ら調製され得るプローブとストリンジェント な条件下でハイブリダイズし、かつ、細菌内 の活性を増大させたときにL-システイン生産 が向上するタンパク質をコードするDNA。
(6)L-システインによるフィードバック阻害が 減された変異型セリンアセチルトランスフ ラーゼを保持する(1)~(5)のいずれかに記載の 細菌。
(7)ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質 活性が増大した、(1)~(5)のいずれかに記載の 菌。
(8)システインデスルフヒドラーゼ活性を有す るタンパク質の活性が低下した、(1)~(5)のい れかに記載の細菌。
(9)ydeD遺伝子によりコードされるタンパク質 活性が増大した、(6)に記載の細菌。
(10)システインデスルフヒドラーゼ活性を有 るタンパク質の活性が低下した、(6)に記載 細菌。
(11)システインデスルフヒドラーゼ活性を有 るタンパク質の活性が低下した、(7)に記載 細菌。
(12)システインデスルフヒドラーゼ活性を有 るタンパク質の活性が低下した、(9)に記載 細菌。
(13)前記システインデスルフヒドラーゼ活性 有するタンパク質がトリプトファナーゼで る、前記細菌。
(14)エシェリヒア属細菌である、前記細菌。
(15)エシェリヒア・コリである、前記細菌。
(16)前記細菌を培地中で培養し、該培地からL- システイン、L-シスチン、それらの誘導体又 前駆体、又はこれらの混合物を採取するこ を特徴とする、L-システイン、L-シスチン、 それらの誘導体又は前駆体、又はこれらの混 合物の製造法。
(17)前記L-システインの誘導体がチアゾリジン 誘導体である、前記方法。
(18)前記L-システインの前駆体がO-アセチルセ ン又はN-アセチルセリンである、前記方法

tolC欠損株のシステイン感受性と、tolC ラスミドによる相補(生育回復)を示す図(写 )。 tolC欠損株のO-アセチルセリン、N-アセ ルセリンへの感受性(抗菌活性)を示す図(写 )。 TolC強化システイン生産菌の生育曲線。 TolC強化システイン生産菌によるシステ イン生産を示す図。

発明を実施するための形態

<1>本発明の細菌
 本発明の細菌は、L-システイン生産能を有 、かつ、tolC遺伝子によりコードされるタン ク質の活性が増大するように改変された腸 細菌科に属する細菌である。ここで、L-シ テイン生産能とは、本発明の細菌を培地中 培養したときに、培地中または菌体内にL-シ ステインを生成し、培地中または菌体から回 収できる程度に蓄積する能力をいう。また、 L-システイン生産能を有する細菌とは、野生 または親株よりも多い量のL-システインを 産し培地に蓄積することができる細菌を意 し、好ましくは、0.05g/L以上、より好ましく 0.1g/L以上、特に好ましくは0.2g/L以上の量のL -システインを生産し培地に蓄積することが きる微生物を意味する。

 微生物が産生したL-システインは、培地 で、ジスルフィド結合によって一部がL-シス チンに変換することがある。また、後述する ように、L-システインと培地に含まれるチオ 酸との反応によってS-スルホシステインが 成することがある(Szczepkowski T.W., Nature, vol. 182 (1958))。さらに、細菌の細胞内で生成した L-システインは、細胞中に存在するケトン又 アルデヒド、例えばピルビン酸と縮合し、 ミチオケタールを中間体としてチアゾリジ 誘導体が生成することがある(特許第2992010 参照)。こられのチアゾリジン誘導体及びヘ チオケタールは、平衡混合物として存在す ことがある。したがって、L-システイン生 能とは、L-システインのみを培地中又は菌体 内に蓄積する能力に限られず、L-システイン 加えて、L-シスチン、又はそれらの誘導体 しくは前駆体、又はこれらの混合物を培地 に蓄積する能力も含まれる。前記L-システイ ン又はL-シスチンの誘導体としては、例えばS -スルホシステン、チアゾリジン誘導体、及 ヘミチオケタール等が挙げられる。また、L- システイン又はL-シスチンの前駆体としては 例えばL-システインの前駆体であるO-アセチ ルセリンが挙げられる。L-システイン又はL- スチンの前駆体には、前駆体の誘導体も含 れ、例えばO-アセチルセリンの誘導体である N-アセチルセリン等が挙げられる。

 O-アセチルセリン(OAS)はL-システイン生合 の前駆体物質である。OASは細菌や植物の代 物質であり、セリンアセチルトランスフェ ーゼ(SAT)の酵素反応によりL-セリンのアセチ ル化によって生じる。OASは細胞内で更にL-シ テインへと変換される。

 L-システイン生産能を有する細菌として 、本来的にL-システイン生産能を有するもの であってもよいが、下記のような微生物を、 変異法や組換えDNA技術を利用して、L-システ ン生産能を有するように改変したものであ てもよい。尚、本発明においてL-システイ とは、特記しない限り、還元型L-システイン 、L-シスチン、前記のような誘導体もしくは 駆体、またはこれらの混合物を指すことが る。

 本発明に用いる細菌としては、エシェリ ア属、エンテロバクター属、パントエア属 クレブシエラ属、セラチア属、エルビニア 、サルモネラ属、モルガネラ属など、腸内 菌科に属する細菌であって、L-アミノ酸を 産する能力を有するものであれば、特に限 されない。具体的にはNCBI(National Center for B iotechnology Information)データベースに記載され いる分類により腸内細菌科に属するものが 用できる(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/ wwwtax.cgi?id=91347)。改変に用いる腸内細菌科の 株としては、中でもエシェリヒア属細菌、 ンテロバクター属細菌、パントエア属細菌 エルビニア属、エンテロバクター属、又は レブシエラ属を用いることが望ましい。

 エシェリヒア属細菌としては、特に限定 れないが、具体的にはNeidhardtらの著書(Backma nn, B. J. 1996. Derivations and Genotypes of some m utant derivatives of Escherichia coli K-12, p. 2460-2 488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Se cond Edition, American Society for Microbiology Press,  Washington, D.C.)に挙げられるものが利用でき 。その中では、例えばエシェリヒア・コリ 挙げられる。エシェリヒア・コリとしては 体的には、プロトタイプの野生株K12株由来 エシェリヒア・コリ W3110 (ATCC 27325)、エシ ェリヒア・コリ MG1655 (ATCC 47076)等が挙げら る。

 これらを入手するには、例えばアメリカ ・タイプ・カルチャー・コレクション(住所  12301  Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852P.O.  Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of Ame rica)より分譲を受けることが出来る。すなわ 各菌株に対応する登録番号が付与されてお 、この登録番号を利用して分譲を受けるこ が出来る(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対 応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カ ルチャー・コレクションのカタログに記載さ れている。

 エンテロバクター属細菌としては、エン ロバクター・アグロメランス(Enterobacter aggl omerans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Ent erobacter aerogenes)等、パントエア属細菌として はパントエア・アナナティス(Pantoea ananatis) 挙げられる。尚、近年、エンテロバクター アグロメランスは、16S rRNAの塩基配列解析 どにより、パントエア・アグロメランス(Pant oea agglomerans)又はパントエア・アナナティス( Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルテ ィ(Pantoea stewartii)に再分類されているものが る。本発明においては、腸内細菌科に分類 れるものであれば、エンテロバクター属又 パントエア属のいずれに属するものであっ もよい。

 特に、パントエア属細菌、エルビニア属 菌、エンテロバクター属細菌は、γ-プロテ バクテリアに分類される細菌であり、分類 的に非常に近縁である(J Gen Appl Microbiol 19 97 Dec;43(6) 355-361, International Journal of Systema tic Bacteriology, Oct. 1997,p1061-1067)。近年、DNA-DN Aハイブリダイゼーション実験等により、エ テロバクター属に属する細菌には、パント ア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)又はパ トエア・ディスパーサ(Pantoea dispersa)等に再 分類されているものがある(International Journal of Systematic Bacteriology, July 1989;39(3).p.337-345) また、エルビニア属に属する細菌にはパン エア・アナナス(Pantoea ananas)、パントエア スチューアルティに再分類されているもの ある(International Journal of Systematic Bacteriology , Jan 1993;43(1), p.162-173 参照)。

 エンテロバクター属細菌としては、エンテ バクター・アグロメランス(Enterobacter agglome rans)、エンテロバクター・アエロゲネス(Entero bacter aerogenes)等が挙げられる。具体的には、 欧州特許出願公開952221号明細書に例示された 菌株を使用することが出来る。
 エンテロバクター属の代表的な株として、 ンテロバクター・アグロメランスATCC12287株 挙げられる。

 パントエア属細菌の代表的な菌株として、 ントエア・アナナティス、パントエア・ス ューアルティ(Pantoea stewartii)パントエア・ グロメランス、パントエア・シトレア(Pantoea  citrea)が挙げられる。
 パントエア・アナナティスとして具体的に 、パントエア・アナナティスAJ13355株、SC17 が挙げられる。SC17株は、静岡県磐田市の土 から、低pHでL-グルタミン酸及び炭素源を含 む培地で増殖できる株として分離された株AJ1 3355(FERM BP-6614)から、粘液質低生産変異株と て選択された株である(米国特許第6,596,517号) 。
 パントエア・アナナティスAJ13355株は、平成 10年2月19日に、通産省工業技術院生命工学工 技術研究所(現名称、産業技術総合研究所特 許生物寄託センター、住所 郵便番号305-8566  茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、受 番号FERM P-16644として寄託され、平成11年1月 11日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移 され、受託番号FERM BP-6614が付与されている 。尚、同株は、分離された当時はエンテロバ クター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans) と同定され、エンテロバクター・アグロメラ ンスAJ13355として寄託されたが、近年16S rRNA 塩基配列解析などにより、パントエア・ア ナティス(Pantoea ananatis)に再分類されている

 エルビニア属細菌としては、エルビニア アミロボーラ、エルビニア・カロトボーラ 挙げられ、クレブシエラ属細菌としては、 レブシエラ・プランティコーラが挙げられ 。

 以下、腸内細菌科に属する細菌にL-シス イン生産能を付与する方法、又はこれらの 菌のL-システイン生産能を増強する方法につ いて述べる。

 細菌にL-システイン生産能を付与するに 、栄養要求性変異株、アナログ耐性株又は 謝制御変異株の取得や、L-システインの生合 成系酵素の発現が増強された組換え株の創製 等、従来、コリネ型細菌又はエシェリヒア属 細菌等の育種に採用されてきた方法を適用す ることができる(アミノ酸発酵、(株)学会出版 センター、1986年5月30日初版発行、第77-100頁 照)。ここで、L-システイン生産菌の育種に いて、付与される栄養要求性、アナログ耐 、代謝制御変異等の性質は、単独でもよく 2種又は3種以上であってもよい。また、発現 が増強されるL-システイン生合成系酵素も、 独であっても、2種又は3種以上であっても い。さらに、栄養要求性、アナログ耐性、 謝制御変異等の性質の付与と、生合成系酵 の増強が組み合わされてもよい。

 L-システイン生産能を有する栄養要求性 異株、L-システインのアナログ耐性株、又は 代謝制御変異株を取得するには、親株又は野 生株を通常の変異処理、すなわちX線や紫外 の照射、またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロ グアニジン(NTG)もしくはエチルメタンスルフ ォネート(EMS)等の変異剤処理などによって処 し、得られた変異株の中から、栄養要求性 アナログ耐性、又は代謝制御変異を示し、 つL-アミノ酸生産能を有するものを選択す ことによって得ることができる。

 具体的には、L-システイン生産菌として 、フィードバック阻害耐性のセリンアセチ トランスフェラーゼ(SAT)をコードする複数種 のcysEアレルで形質転換されたE. coli JM15(米 特許第6,218,168号)、細胞に毒性の物質を排出 るのに適したタンパク質をコードする過剰 現遺伝子を有するE. coli W3110 (米国特許第5 ,972,663号)、システインデスルフヒドラーゼ活 性が低下したE. coli株 (特開平11-155571号公報) 、cysB遺伝子によりコードされるシステイン ギュロンの正の転写制御因子の活性が上昇 たE. coli W3110 (WO01/27307)などのエシェリヒア 属に属する株が挙げられるが、これらに限定 されない。

 E. coliでは、システインデスルフヒドラー 活性を有するタンパク質として、シスタチ ニン-β-リアーゼ(metC産物、特開平11-155571号 Chandra et. al., Biochemistry, 21 (1982) 3064-3069)) トリプトファナーゼ(tnaA産物、特開2003-169668 、(Austin Newton et. al., J. Biol. Chem. 240 (1965)  1211-1218))、O-アセチルセリン スルフヒドリ ーゼB(cysM遺伝子産物、特開2005-245311)、及び malY遺伝子産物(特開2005-245311)が知られてい 。これらのタンパク質の活性を低下させる とにより、L-システイン生産能が向上する。
 本発明において、「タンパク質の活性が低 する」とは、同タンパク質の活性が野生株 は親株等の非改変株に対して低下している とを意味し、活性が完全に消失しているこ を含む。

 システインデスルフヒドラーゼ活性を有 るタンパク質の活性を低下させるような改 は、例えば、同タンパク質をコードする遺 子の発現を低下させることによって達成さ る。具体的には例えば、染色体上の標的遺 子のコード領域の一部又は全部を欠損させ ことによって、前記タンパク質の細胞内の 性を低下させることができる。標的遺伝子 プロモーターやシャインダルガルノ(SD)配列 等の発現調節配列を改変したりすることなど によっても、発現を低下させることができる 。また、発現調節配列以外の非翻訳領域の改 変によっても、遺伝子の発現量を低下させる ことができる。さらには、染色体上の遺伝子 の前後の配列を含めて、遺伝子全体を欠失さ せてもよい。また、染色体上の標的遺伝子の コード領域にアミノ酸置換(ミスセンス変異) 導入すること、また終始コドンを導入する と(ナンセンス変異)、あるいは一~二塩基付 ・欠失するフレームシフト変異を導入する とによっても達成出来る(Journal of Biological Chemistry 272:8611-8617(1997) Proceedings of the Natio nal Academy of Sciences,USA 95 5511-5515(1998), Journa l of Biological Chemistry 266, 20833-20839(1991))。

 また、標的タンパク質の活性が低下する うな改変であれば、X線もしくは紫外線を照 射、またはN-メチル-N'-ニトロ-N-ニトロソグア ニジン等の変異剤による通常の変異処理によ る改変であってもよい。

 発現調節配列の改変は、好ましくは1塩基 以上、より好ましくは2塩基以上、特に好ま くは3塩基以上である。また、コード領域を 失させる場合は、標的タンパク質の機能が 下又は欠失するのであれば、欠失させる領 は、N末端領域、内部領域、C末端領域のい れの領域であってもよく、コード領域全体 あってよい。通常、欠失させる領域は長い が確実に遺伝子を不活化することができる また、欠失させる領域の上流と下流のリー ィングフレームは一致しないことが好まし 。

 標的遺伝子のコード領域に他の配列を挿 する場合も、遺伝子のいずれの領域であっ もよいが、挿入する配列は長い方が、確実 遺伝子を不活化することができる。挿入部 の前後の配列は、リーディングフレームが 致しないことが好ましい。他の配列として 、コードされるタンパク質の機能を低下又 欠損させるものであれば特に制限されない 、例えば、抗生物質耐性遺伝子やL-システ ン生産に有用な遺伝子を搭載したトランス ゾン等が挙げられる。

 染色体上の標的遺伝子を上記のように改 するには、例えば、遺伝子の部分配列を欠 し、正常に機能するタンパク質を産生しな ように改変した欠失型遺伝子を作製し、該 伝子を含むDNAで細菌を形質転換して、欠失 遺伝子と染色体上の遺伝子とで相同組換え 起こさせることにより、染色体上の遺伝子 欠失型遺伝子に置換することによって達成 きる。欠失型遺伝子によってコードされる ンパク質は、生成したとしても、野生型タ パク質とは異なる立体構造を有し、機能が 下又は消失する。このような相同組換えを 用した遺伝子置換による遺伝子破壊は既に 立しており、「Redドリブンインテグレーシ ン(Red-driven integration)」と呼ばれる方法(Datse nko, K. A, and Wanner, B. L. Proc. Natl. Acad. Sci . U S A. 97:6640-6645 (2000))、Redドリブンイン グレーション法とλファージ由来の切り出し システム(Cho, E. H., Gumport, R. I., Gardner, J. F. J. Bacteriol. 184: 5200-5203 (2002))とを組合わ せた方法(WO2005/010175号参照)等の直鎖状DNAを用 いる方法や、温度感受性複製起点を含むプラ スミド、接合伝達可能なプラスミドを用いる 方法、宿主内で複製起点を持たないスイサイ ドベクターを利用する方法などがある(米国 許第6303383号、または特開平05-007491号)。

 標的遺伝子の転写量が低下したことの確 は、同遺伝子から転写されるmRNAの量を野生 株、あるいは非改変株と比較することによっ て行うことが出来る。mRNAの量を評価する方 としては、ノーザンハイブリダイゼーショ 、RT-PCR等が挙げられる(Molecular cloning(Cold spr ing Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA) , 2001))。

 標的タンパク質の量が低下したことの確 は、抗体を用いてウェスタンブロットによ て行うことが出来る(Molecular cloning(Cold sprin g Harbor Laboratory Press, Cold spring Harbor (USA), 2001))。

 本発明においては、L-システイン生産菌 、フィードバック阻害耐性の変異型SATを保 していることが好ましい。エシェリヒア・ リに由来する、フィードバック阻害耐性の 異型SATとして具体的には、256位のメチオニ 残基がグルタミン酸残基に置換された変異 SAT(特開平11-155571)、256位のメチオニン残基が イソロイシン残基に置換された変異型SAT(Denk,  D. and Boeck, A., J. General Microbiol., 133, 515- 525 (1987))、97位のアミノ酸残基から273位のア ノ酸残基までの領域における変異、又は227 のアミノ酸残基からC末端領域の欠失を有す る変異型SAT(WO97/15673号国際公開パンフレット 米国特許第6218168号)、野生型SATの89~96位に相 当するアミノ酸配列が1又は複数の変異を含 、かつ、L-システインによるフィードバック 阻害が脱感作されている、変異型SAT(米国特 公開第20050112731(A1))等が知られている。実施 に記載した変異型SATをコードするcysE5は、 生型SATの95位及び96位のVal残基及びAsp残基が 各々Arg残基及びPro残基に置換されている。

 SAT遺伝子は、エシェリヒア・コリの遺伝子 限られず、SAT活性を有するタンパク質をコ ドするものであれば、使用することができ 。また、L-システインによるフィードバッ 阻害を受けないシロイヌナズナ由来のSATア ソザイムが知られており、これをコードす 遺伝子を用いることもできる(FEMS Microbiol. L ett., 179 (1999) 453-459)。
 細菌に変異型SATをコードする遺伝子を導入 れば、L-システイン生産能が付与される。 菌への変異型SAT遺伝子の導入は、通常のタ パク質発現に用いられる種々のベクターを いることができる。このようなベクターと ては、pUC19、pUC18、pHSG299, pHSG399, pHSG398, RSF1 010, pBR322, pACYC184, pMW219等が挙げられる。

 SAT遺伝子を含む組換えベクターを細菌に 入するには、D.A.Morrisonの方法(Methods in Enzym ology 68, 326 (1979))あるいは受容菌細胞を塩化 カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方法 (Mandel,M. and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))、エレ トロポーレーションによる方法等、細菌の 質転換に通常用いられている方法を用いる とができる。

 また、SAT遺伝子のコピー数を高めること よっても、SAT活性を上昇させるこができる SAT遺伝子のコピー数を高めることは、上記 ようなベクターを用いてSAT遺伝子を細菌に 入することによって、又は、SAT遺伝子を細 の染色体DNA上に多コピー存在させることに って達成できる。細菌の染色体DNA上にSAT遺 子を多コピーで導入するには、染色体DNA上 多コピー存在する配列を標的に利用して相 組換えにより行う。染色体DNA上に多コピー 在する配列としては、レペティティブDNA、 移因子の端部に存在するインバーテッド・ ピートが利用できる。あるいは、特開平2-10 9985号公報に開示されているように、SAT遺伝 をトランスポゾンに搭載してこれを転移さ て染色体DNA上に多コピー導入することも可 である。

 また、YdeDタンパク質をコードするydeD遺伝 は、システイン経路の代謝産物の排出に関 していることが知られており、YdeDタンパク の活性を高めることによっても、L-システ ン生産能を向上させることができる(特開2002 -233384)。YdeDタンパク質の活性を増大させるよ うな改変は、例えば、ydeD遺伝子の発現を向 させることによって達成される。ydeD遺伝子 発現の向上は、後述する、tolC遺伝子の発現 を向上させる改変と同様にして行うことがで きる。
 エシェリヒア・コリのydeD遺伝子は、例えば 、配列番号9、10に示す塩基配列を有するプラ イマーを用いたPCRにより、エシェリヒア・コ リ染色体DNAから取得することができる。

 また、セリンによるフィードバック阻害 受けない3-ホスホグリセレートデヒドロゲ ーゼ(PGD)を保持させることによっても、L-シ テイン生産能を向上させることができる。 のような変異型PGDをコードする遺伝子とし は、serA5遺伝子(米国特許第6,180,373号に記載) が知られている。

 また、硫酸塩/チオ硫酸塩輸送系タンパク 質群をコードするcysPTWAクラスター遺伝子の 現が増強されるように改変されたエシェリ ア属に属するL-システイン生産菌(特開2005-137 369号公報、EP1528108号明細書)を使用すること できる。

 さらに、L-システイン生産能を有し、か 、emrAB、emrKY、yojIH、acrEF、bcr又はcusA遺伝子 発現が上昇するように改変されたエシェリ ア属細菌を使用することもできる(特開2005-28 7333号公報)。

 上記のようにして得られるL-システイン 産能を有する細菌のうち、本発明において ましいのは、フィードバック阻害耐性の変 型SATを保持する細菌、YdeDタンパク質の活性 高められた細菌、又はシステインデスルフ ドラーゼ活性を欠損した細菌であり、より ましいのは、フィードバック阻害耐性の変 型SATを保持し、かつ、YdeDタンパク質の活性 が高められた細菌、フィードバック阻害耐性 の変異型SATを保持し、かつ、システインデス ルフヒドラーゼ活性を欠損した細菌、又は、 YdeDタンパク質の活性が高められ、かつ、シ テインデスルフヒドラーゼ活性を欠損した 菌であり、特に好ましいのは、フィードバ ク阻害耐性の変異型SATを保持し、システイ デスルフヒドラーゼ活性を欠損し、かつ、Yd eDタンパク質の活性が高められた細菌である システインデスルフヒドラーゼ活性として 、トリプトファナーゼ活性であることが好 しい。

 本発明の細菌は、上述したようなL-システ ン生産能を有する腸内細菌科に属する細菌 、tolC遺伝子によりコードされるタンパク質( 以下、「TolC」と記載することがある)の活性 増大するように改変することによって得る とができる。ただし、TolCタンパク質の活性 が増大するように改変を行った後に、L-シス イン生産能を付与してもよい。
 tolC遺伝子は、ECK3026、weeA、b3035、colE1-i、mtcB 、mukA 、refI、toc遺伝子と同義である。

 「tolC遺伝子によりコードされるタンパク質 の活性が増大する」とは、tolC遺伝子により ードされるTolCタンパク質の活性が野生株又 親株等の非改変株に対して増大しているこ を意味する。
 TolCタンパク質の活性とは、具体的には、細 菌内の活性を増大させたときにL-システイン 産能が向上する活性を意味する。また、TolC タンパク質は、実施例に記載するように、発 現を増強することによって非改変株よりもシ ステイン耐性を高める活性を有することが明 らかとなった。したがって、他の定義によれ ば、TolCタンパク質の活性とはこのようなシ テイン耐性を高める活性を意味する。

 tolC遺伝子よりコードされるTolCタンパク の活性を増大させるような改変は、例えば tolC遺伝子の発現を増大させることによって 成される。

 tolC遺伝子の発現を増強するための改変は、 例えば、遺伝子組換え技術を利用して、細胞 中の遺伝子のコピー数を高めることによって 行うことができる。例えば、tolC遺伝子を含 DNA断片を、宿主細菌で機能するベクター、 ましくはマルチコピー型のベクターと連結 て組換えDNAを作製し、これを細菌に導入し 形質転換すればよい。
 前記ベクターとしては、宿主細菌の細胞内 おいて自律複製可能なベクターを挙げるこ ができる。エシェリヒア・コリ細胞内にお て自律複製可能なベクターとしては、pUC19 pUC18、pHSG299、pHSG399、pHSG398、pACYC184(pHSG、pACYC は宝バイオ社より入手可)、RSF1010、pBR322、pMW2 19(pMW219はニッポンジーン社より入手可)、pSTV2 9(宝バイオ社より入手可)等が挙げられる。

 組換えDNAを細菌に導入するには、これま に報告されている形質転換法に従って行え よい。例えば、エシェリヒア・コリK-12につ いて報告されているような、受容菌細胞を塩 化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す方 法(Mandel,M.and Higa, A., J. Mol. Biol., 53, 159 (1 970))があり、バチルス・ズブチリスについて 告されているような、増殖段階の細胞から ンピテントセルを調製してDNAを導入する方 (Duncan, C. H.,Wilson, G. A. and Young, F. E., Ge ne, 1, 153 (1977))がある。あるいは、バチルス ・ズブチリス、放線菌類及び酵母について知 られているような、DNA受容菌の細胞を、組換 えDNAを容易に取り込むプロトプラストまたは スフェロプラストの状態にして組換えDNAをDNA 受容菌に導入する方法(Chang, S. and Choen, S.  N., Molec. Gen. Genet., 168, 111 (1979); Bibb, M. J ., Ward, J. M. and Hopwood, O. A., Nature, 274, 39 8 (1978); Hinnen, A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. , Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978))も応 用できる。

 一方、tolC遺伝子のコピー数を高めること は、上述のようなtolC遺伝子を細菌のゲノムDN A上に多コピー存在させることによっても達 できる。細菌のゲノムDNA上にtolC遺伝子を多 ピーで導入するには、ゲノムDNA上に多コピ 存在する配列を標的に利用して相同組換え より行う。ゲノムDNA上に多コピー存在する 列としては、レペティティブDNA、転移因子 端部に存在するインバーテッド・リピート 利用できる。また、ゲノム上に存在するtolC 遺伝子の横にタンデムに連結させてもよいし 、ゲノム上の不要な遺伝子上に重複して組み 込んでもよい。これらの遺伝子導入は、温度 感受性ベクターを用いて、あるいはintegration クターを用いて達成することが出来る。

 あるいは、特開平2-109985号公報に開示さ ているように、tolC遺伝子をトランスポゾン 搭載してこれを転移させてゲノムDNA上に多 ピー導入することも可能である。ゲノム上 遺伝子が転移したことの確認は、tolC遺伝子 の一部をプローブとして、サザンハイブリダ イゼーションを行うことによって確認出来る 。

 さらに、tolC遺伝子の発現の増強は、上記 した遺伝子コピー数の増幅以外に、国際公開 00/18935号パンフレットに記載した方法で、ゲ ムDNA上またはプラスミド上のtolC遺伝子の各 々のプロモーター等の発現調節配列を強力な ものに置換することや、各遺伝子の-35、-10領 域をコンセンサス配列に近づけること、tolC 伝子の発現を上昇させるようなレギュレー ーを増幅すること、又は、tolC遺伝子の発現 低下させるようなレギュレーターを欠失ま は弱化させることによっても達成される。 えば、lacプロモーター、trpプロモーター、t rcプロモーター、tacプロモーター、araBAプロ ーター、ラムダファージのPRプロモーター、 PLプロモーター、tetプロモーター、T7プロモ ター、φ10プロモーター等が強力なプロモー ーとして知られている。また、E.coliのスレ ニンオペロンのプロモーターを使用するこ もできる。また、tolC遺伝子のプロモーター 領域、SD領域に塩基置換等を導入し、より強 なものに改変することも可能である。プロ ーターの強度の評価法および強力なプロモ ターの例は、Goldsteinらの論文(Prokaryotic promo ters in biotechnology. Biotechnol. Annu. Rev., 1, 105 -128 (1995))等に記載されている。さらに、リ ソーム結合部位(RBS)と開始コドンとの間のス ペーサー、特に開始コドンのすぐ上流の配列 における数個のヌクレオチドの置換がmRNAの 訳効率に非常に影響を及ぼすことが知られ おり、これらを改変することも可能である tolC遺伝子のプロモーター等の発現調節領域 、プロモーター検索ベクターやGENETYX等の遺 伝子解析ソフトを用いて決定することも出来 る。これらのプロモーター置換または改変に よりtolC遺伝子の発現が強化される。発現調 配列の置換は、例えば温度感受性プラスミ を用いた方法や、Redドリブンインテグレー ョン法(WO2005/010175)を使用することが出来る

 エシェリヒア・コリのtolC遺伝子の塩基配列 、及び同遺伝子がコードするアミノ酸配列を 、それぞれ配列番号1及び2に示す。
 細菌が属する種又は菌株によって、tolC遺伝 子の塩基配列に差異が存在することがあるた め、改変するtolC遺伝子は、配列番号1の塩基 列のバリアントであってもよい。TolCのホモ ログは多数の細菌で知られており、データベ ースの検索により見つけることができる。配 列情報からE.coli K-12株のTolCタンパク質と相 性の高いタンパク質を探す場合には、例え BLASTサーチ(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi) にて検索することができる。また、キーワー ドからホモログを探す場合には、例えばEntrez のサーチエンジン(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/g query)を用いてキーワードとして「tolC」や「ou ter membrane channel protein」を入力すれば、候 となる配列が複数のデータベースから抽出 れる。これらの候補をよく精査し、目的の モログ配列を見つけることができる。この うな方法で見つけられた多数のTolCホモログ うち、以下の細菌のTolCホモログの遺伝子塩 基配列及びアミノ酸配列を、配列番号11~30に す。カッコ内はNCBI (National Center for Biotech nology Information)データベースのアクセション 号、及び配列番号2のアミノ酸配列との同一 性(%)を示す。

 シゲラ・ボイディイ(Shigella boydii)Sb227(NCBI a ccession:YP_409239)、99%)
 シゲラ・フレクスネリ(Shigella flexneri) 2a st r. 2457T(NCBI accession:NP_838556、Identity:99%)
 サルモネラ・エンテリカ(Salmonella enterica)sub sp. enterica serovar Typhi Ty2(NCBI accession:NP_806790 、89%)
 シトロバクター・コセリ(Citrobacter koseri)ATCC  BAA-895(NCBI accession:YP_001455919、89%)
 クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumo niae)subsp. pneumoniae MGH 78578(NCBI accession:YP_00133 7075、83%)
 エンテロバクター・サカザキイ(Enterobacter s akazakii)ATCC BAA-894(NCBI accession:YP_001436507、80%)
 エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)s ubsp. atroseptica SCRI1043(NCBI accession:YP_048456、76% )
 セラチア・プロテアマキュランス(Serratia pr oteamaculans)568(NCBI accession:YP_001480490、73%)
 アエロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmoni cida)subsp. salmonicida A449(NCBI accession:ABO88689、51 %)
 ビブリオ・ブルニフィカス(Vibrio vulnificus)YJ 016(NCBI accession:NP_933376、45%)

 また、tolC遺伝子は、上記のようなTolCタ パク質又はTolCホモログのアミノ酸配列にお て、1若しくは数個の位置での1若しくは数 のアミノ酸の置換、欠失、挿入又は付加等 含む配列を有するタンパク質をコードする 伝子であってもよい。前記「1若しくは数個 とは、アミノ酸残基のタンパク質の立体構 における位置やアミノ酸残基の種類によっ も異なるが、具体的には好ましくは1~20個、 より好ましくは1~10個、さらに好ましくは1~5 を意味する。上記の1若しくは数個のアミノ の置換、欠失、挿入、または付加は、タン ク質の機能が正常に維持される保存的変異 ある。保存的変異の代表的なものは、保存 置換である。保存的置換とは、置換部位が 香族アミノ酸である場合には、Phe、Trp、Tyr で、置換部位が疎水性アミノ酸である場合 は、Leu、Ile、Val間で、極性アミノ酸である 合には、Gln、Asn間で、塩基性アミノ酸であ 場合には、Lys、Arg、His間で、酸性アミノ酸 ある場合には、Asp、Glu間で、ヒドロキシル を持つアミノ酸である場合には、Ser、Thr間 お互いに置換する変異である。保存的置換 みなされる置換としては、具体的には、Ala らSer又はThrへの置換、ArgからGln、His又はLys の置換、AsnからGlu、Gln、Lys、His又はAspへの 換、AspからAsn、Glu又はGlnへの置換、CysからS er又はAlaへの置換、GlnからAsn、Glu、Lys、His、A sp又はArgへの置換、GluからGly、Asn、Gln、Lys又 Aspへの置換、GlyからProへの置換、HisからAsn Lys、Gln、Arg又はTyrへの置換、IleからLeu、Met Val又はPheへの置換、LeuからIle、Met、Val又はP heへの置換、LysからAsn、Glu、Gln、His又はArgへ 置換、MetからIle、Leu、Val又はPheへの置換、P heからTrp、Tyr、Met、Ile又はLeuへの置換、Serか Thr又はAlaへの置換、ThrからSer又はAlaへの置 、TrpからPhe又はTyrへの置換、TyrからHis、Phe はTrpへの置換、及び、ValからMet、Ile又はLeu の置換が挙げられる。また、上記のような ミノ酸の置換、欠失、挿入、付加、または 位等には、遺伝子が由来する微生物の個体 、種の違いに基づく場合などの天然に生じ 変異(mutant又はvariant)によって生じるものも まれる。

 さらに、上記のような保存的変異を有す 遺伝子は、コードされるアミノ酸配列全体 対して、80%以上、好ましくは90%以上、より ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、 り好ましくは98%以上、特に好ましくは99%以 の相同性を有し、かつ、野生型TolCタンパク 質と同等の機能を有するタンパク質をコード する遺伝子であってもよい。

 また、tolC遺伝子は、公知の遺伝子配列か ら調製され得るプローブ、例えば前記遺伝子 配列又はその相補配列とストリンジェントな 条件下でハイブリダイズし、TolCタンパク質 同等の機能を有するタンパク質をコードす DNAであってもよい。ここで、「ストリンジ ントな条件」とは、いわゆる特異的なハイ リッドが形成され、非特異的なハイブリッ が形成されない条件をいう。一例を示せば 相同性が高いDNA同士、例えば80%以上、好ま くは90%以上、より好ましくは95%以上、より ましくは97%以上、より好ましくは98%以上、 に好ましくは99%以上の相同性を有するDNA同 がハイブリダイズし、それより相同性が低 DNA同士がハイブリダイズしない条件、ある は通常のサザンハイブリダイゼーションの いの条件である60℃、1×SSC、0.1% SDS、好まし くは、0.1×SSC、0.1% SDS、さらに好ましくは、6 8℃、0.1×SSC、0.1% SDSに相当する塩濃度、温度 で、1回、より好ましくは2~3回洗浄する条件 挙げられる。

 プローブは、遺伝子の相補配列の一部で ってもよい。そのようなプローブは、公知 遺伝子配列に基づいて作製したオリゴヌク オチドをプライマーとし、これらの塩基配 を含むDNA断片を鋳型とするPCRによって作製 ることができる。例えば、プローブとして 300 bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には 、ハイブリダイゼーションの洗いの条件は、 50℃、2×SSC、0.1% SDSが挙げられる。

 上記の遺伝子やタンパク質のバリアント 関する記載は、セリンアセチルトランスフ ラーゼ、システインデスルフヒドラーゼ等 酵素やYdeDタンパク質、及びそれらをコード する遺伝子にも同様に適用される。

<2>本発明のL-システイン、L-シスチン、 れらの誘導体もしくは前駆体、又はこれら 混合物の製造法
 上記のようにして得られる本発明の細菌を 地中で培養し、該培地からL-システイン、L- シスチン、それらの誘導体もしくは前駆体、 又はこれらの混合物を採取することにより、 これらの化合物を製造することができる。L- ステインの誘導体又は前駆体としては、前 したようなS-スルホシステイン、チアゾリ ン誘導体、同チアゾリジン誘導体に相当す ヘミチオケタール、O-アセチルセリン、又は N-アセチルセリン等が挙げられる。

 使用する培地としては、炭素源、窒素源 イオウ源、無機イオン及び必要に応じその の有機成分を含有する通常の培地が挙げら る。

 炭素源としては、グルコース、フラクト ス、シュクロース、糖蜜やでんぷんの加水 解物などの糖類、フマール酸、クエン酸、 ハク酸等の有機酸類を用いることができる

 窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩 アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無 アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有 窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を いることができる。

 イオウ源としては、硫酸塩、亜硫酸塩、 化物、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の無機硫 化合物が挙げられる、

 有機微量栄養源としては、ビタミンB1な の要求物質または酵母エキス等を適量含有 せることが望ましい。これらの他に、必要 応じてリン酸カリウム、硫酸マグネシウム 鉄イオン、マンガンイオン等が少量添加さ る。

 培養は好気的条件下で30~90時間実施する がよく、培養温度は25℃~37℃に、培養中pHは5 ~8に制御することが好ましい。尚、pH調整に 無機あるいは有機の酸性あるいはアルカリ 物質、更にアンモニアガス等を使用するこ ができる。培養物からのL-システインの採取 は通常のイオン交換樹脂法、沈澱法その他の 公知の方法を組み合わせることにより実施で きる。

 上記のようにして得られるL-システイン 、L-システイン誘導体の製造に用いることが できる。システイン誘導体としては、メチル システイン、エチルシステイン、カルボシス テイン、スルホシステイン、アセチルシステ イン等が含まれる。

 また、L-システインのチアゾリジン誘導体 培地に蓄積した場合は、培地からチアゾリ ン誘導体を採取し、チアゾリジン誘導体とL- システインとの間の反応平衡をL-システイン に移動させることによって、L-システイン 製造することができる。
 また、培地にS-スルホシステインが蓄積し 場合、例えばジチオスライトール等の還元 を用いて還元することによってL-システイン に変換することができる。

 後記実施例に示すように、tolC遺伝子欠損 株は、非改変株に比べてL-システイン感受性 示す。また、tolC遺伝子欠損株は、O-アセチ セリン(NAS)及びN-アセチルセリン(OAS)に対し も感受性を示す。これらの結果から、TolCは L-システイン、並びにNAS及びOASを排出する外 の排出因子であると考えられる。従って、T olC活性の強化は、L-システインだけではなく NASやOASの高生産をもたらすと考えられる。

 OASを発酵生産する方法は、特開平11-56381号 特開2002-262896号に記載されている。細胞内の OAS濃度を高めるためには、フィードバック阻 害が低下した変異型SATを細菌に保持させるの がよく、細胞内から内膜を介した排出のため には内膜の排出ポンプYdeD(Dabler, T. et al., Mo l. Microbiol., 36, 1101-1112 (2000))の活性を増大 せることが好ましい。したがって、変異型SA Tを保持し、かつ、YdeDタンパク質の活性が増 した細菌は、OASの生産にも適しており(特開 2002-262896)、特に本発明の細菌の一形態である 、TolC活性が増大し、変異型SATを保持し、か 、YdeDタンパク質の活性が増大した細菌は、O ASの生産により適している。このような細菌 しては、例えば実施例に示すE. coli MG1655δt naA::Km r /pCEM256I/pYdeD/pLSTolCが挙げられる。上記のよう 、細胞内のOASの高濃度化と排出に関連した 膜の因子は知られていたものの、OASを効率 く該膜を透過させて培地中に排出するため 有効因子はこれまで知られていなかった。 れはL-システインについても同様である。 膜を効率的に透過させるための有効な手段 開発は、L-システイン及びOASについて共通の 課題であったが、いずれもTolC活性の増強に り達成されると考えられる。

 OASは比較的不安定な化合物であるため、 養中に不可逆的な化学反応によりNASに変換 れる可能性がある。したがって、中性付近 行われる発酵においては、培地中に、OASと OASからの自然反応によってもたらされるNAS 混在して蓄積する場合がある。発酵によっ 専らOASを生産したい場合には、例えば培地 pHを酸性側に保つ方法をとることができる( 開2002-262896号)。また、専らNASを生産したい 合には、培地のpHをアルカリ側に保つこと 、OASからの自然反応によってNASを生成させ ことができる。

 本発明の細菌を培地で適当な条件で培養 、培地に蓄積するNAS及び/又はOASを採取する ことにより、NAS及び/又はOASを製造すること できる。培養に用いる培地としては、前記 ような培地、例えば実施例に記載したL-シス テイン生産培地や、特開2002-262896号に記載さ た生産培地を利用することができる。培地 は、チオ硫酸などOASからL-システインへの 胞内での反応を促進する物質は培地には添 しないほうが、より多くのOASを生産させる めには好ましい。生産に適した条件は、培 に蓄積したNAS及び/又はOASの量を測定するこ により、適宜設定することができる。NAS及 /又はOASの定量は、疎水性カラム及びUV検出 を用いたHPLC等により行うことができる。前 記のように、培養や定量の最中にOASがNASに変 換される可能性がある。従って、発酵によっ て生産されたOASを全てNASに変換し、このNASの 量をHPLCで測定することで、発酵生産物をOAS NASの総和としてとらえるほうが発酵成績を 察する上では好ましい。OASを全てNASに変換 るためには、例えば培地をアルカリ200mMトリ スバッファー(pH9.0)と混ぜることでアルカリpH にすればよい(特開2002-262896号)。

 以下、本発明をさらに具体的に説明する 以下の記載において、システインはL-体で る。

(1)システイン感受性を示すクローンのスクリ ーニング
 システイン耐性に関与する遺伝子を網羅的 探索するため、Keio collection(E. coli BW25113の 必須遺伝子を除く一遺伝子欠損ライブラリー ;Baba, T, et al., 2006; Mol. Syst. Biol. 2:2006.0008 )の中からシステインに対して感受性を示す ローンのスクリーニングを行った。

(1-1)Keioコレクションからのシステイン感受性 を示すクローンのスクリーニング
 Keio collection 3,985クローンを0.5 ml LB液体培 地37℃、15時間培養した。この培養液を、異 る濃度(0, 15, 20, 25 mM)のシステインを含むL B寒天培地にスタンプし、37℃で一晩培養した 。野生株のシステインによる生育阻害濃度以 下(20 mM)で感受性になるクローンを目視で選 した。具体的には、システイン15 mMを含むL Bプレートでコロニーを形成しなかったクロ ンを候補として選抜した。これら候補の中 ら特に強く明確なシステイン感受性を示す のとして、tolC遺伝子欠損株が取得された。T olCは外膜に局在し、外膜を介した物質輸送の チャンネルを形成するポーリンと呼ばれるタ ンパク質である。E. coliではTolC以外にも多数 のポーリンの存在が知られているが、今回の スクリーニングから選抜したシステイン感受 性が強いと感じられた数個の候補の中ではTol Cが唯一のポーリンであった。

 ポーリンとして知られるOmpA、OmpC、OmpF、O mpG、OmpN、OmpT、OmpX、LamB、又はBtuBを欠損した は全くシステイン感受性を示さなかった。 ステインは毒性が高いアミノ酸であること ら、TolCがシステインやシステイン関連物質 の輸送(排出)を促進することでシステイン耐 を獲得している可能性が推測される。これ でにシステインやシステイン関連物質の輸 に関与していることが知られていた因子(Yde D(Dassler, T. et al., Mol. Microbiol., 2000; 36:1101- 1112)、YfiK(Franke, I. et al., J. Bacteriol., 2003;  185:1161-1166)、CydDC(Pittman, Marc S. et al., J. Bio l. Chem., Dec 2002; 277: 49841-49849)、多剤排出ポ ンプ(Yamada, S., et al., Appl. Envir. Microbiol., J ul 2006; 72: 4735-4742))は専ら内膜の因子であり 、内膜の透過には排出因子が必要であること が知られていた。しかしながら、システイン のような低分子アミノ酸の外膜透過にTolCの うなポーリン(外膜チャンネル)が必要である かどうかは知られていなかった。また、多数 のポーリンの中でも特にTolCのみがスクリー ングから候補として選抜され、TolCのみがシ テインの輸送の中心的な因子である可能性 示唆されたことも容易には予想できない結 であった。

(1-2)tolC遺伝子欠損によるシステイン感受性
 Keio CollectionスクリーニングによりtolC欠損 が取得されたため、同遺伝子欠損株のシス インに対する感受性をより詳細に解析する め、異なる濃度のシステインを含有する寒 培地上での生育を観察した。ここで用いたto lC欠損株は、JW5503株(Keio collection)、その親株 BW25113株(Andreas Haldimann, A. and Wanner, B. L., J. Bacteriol. 2001 November; 183(21): 6384-6393)であ る。また、相補実験用のtolC遺伝子が搭載さ たプラスミドはpTolC(ASKA clone;(Kitagawa, M, et  al., 2005; DNA Res. 12:291-299))、そのベースとな るベクターはpCA24(ASKA cloneのためのベクター; (Kitagawa, M, et al., 2005; DNA Res. 12:291-299))で る。

 各プラスミドを有する菌をL培地(10 g/L  Bac to trypton, 5g/L Bacto Yeast extract, 5g/L NaCl)5 ml に植菌し、37℃で一晩培養したものを0.9%生理 食塩水で10倍ずつ希釈した希釈系列(10 -2 ~10 -6 )を作成して、その希釈菌液を各種濃度(10, 15 , 20mM)のシステインを含むL寒天培地(10 g/L   Bacto trypton, 5g/L Bacto Yeast extract, 5g/L NaCl,  15g/L 寒天)にスポットし(5μl)、37℃で一晩培 し、tolC欠損株のシステイン培地での生育、 び、tolCプラスミドによる相補(生育回復)試 を行った。その結果を図1に示す。対照株BW2 5113/pCA24に対して、tolC欠損株JW5503/pCA24は顕著 システイン感受性を示し、またプラスミド tolC遺伝子を導入した場合(JW5503/pTolC株)には の感受性から回復することから、TolCがシス テイン耐性に関与していることがわかった。

(1-3)tolC遺伝子欠損によるN-アセチルセリン(NAS )及びO-アセチルセリン( OAS)に対する感受性
 Cross streak 法によるtolC欠損株におけるN-ア チルセリン(NAS)とO-アセチルセリン(OAS)に対 る影響を調べた。NAS(2M), OAS(2M), L-システイ ン(2M), L-セリン(1M)による生育阻害を比較す ため、tolC欠損株JW5503株とその対照株である 生株BW25113株をそれぞれL液体培地で一晩培 したものを、白金耳によりL寒天培地上にス リークした。菌をストリークした方向に対 て垂直方向に、上記試薬を滴下した短冊状 ろ紙を置き 30℃で一晩培養した。培養後、 ろ紙から菌の生育を阻害する距離(抗菌幅)を 定し、各試薬の両菌株に対する抗菌活性を 較した。その結果を図2に示す。また、前記 抗菌幅を表1に示す。
 前述のように、tolC欠損株はL-システインに して感受性を示すことがわかったが、この 験においても野生株よりもtolC欠損株に対し て大きな抗菌幅が見られ、tolC欠損株のL-シス テインに対する感受性が観察された。また、 同様にN-アセチルセリン(NAS)とO-アセチルセリ ン(OAS)に対しても、tolC欠損株で大きな抗菌幅 が観察され、これらの物質に対して感受性を 示すことが明らかとなった。

(2)システイン生産菌の構築(E.coli MG1655tnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD)
 E. coliMG1655株から、トリプトファナーゼ遺 子を欠損し、変異型SAT遺伝子を保持し、か 、ydeD遺伝子の発現が増強された菌株を構築 た。

(2-1)E.coli MG1655からtnaA欠損株の構築
 E.coli MG1655 tnaA欠損株の構築は、E.coli JW3686 株(Keio collection)のtnaA::Km r をP1kcファージを用いてMG1655株(ATCC No. 47076) 形質導入することで行った。ファージ液の 製及び形質導入は、Millerらの方法(Miller, J.  H., Experiments in molecular genetics. Cold Spring Ha rbor, N.Y: Cold Spring Harbor Laboratory; 1972, Gener alized transduction: use of P1 in strain construction ; pp. 201-205)に従い以下の手順で行った。

 JW3686株を3 mlのL培地で37℃で一晩培養した 3 mlの軟寒天(0.5% agar)に100μlの培養液、100μl のP1kc ファージ懸濁液、100μlのCaCl 2 (100 mM)を添加し、2.5 mM CaCl 2 を含むL培地に重層した。軟寒天が固化した 、37℃で一晩培養した。プラークが生じた軟 寒天上に2 mlのL培地を加え、寒天を破砕し、 増殖したP1kc ファージを回収した。このL培 にクロロホルムを100μl加えて穏やかに混合 、15 min室温で静置した。遠心分離(4℃, 2,000 ×g, 5 min)により菌体、および軟寒天を除去 、その上清をファージ懸濁液として回収し 。3 mlのL培地で37℃で一晩培養したE. coli MG 1655をレシピエントの前培養液として用いた 5 mM CaCl 2 を含むL培地に前培養液を1%植菌し、OD 660 が0.5になるまで37℃で振とう培養した。この 養液150μlに、m.o.i. 0.1~0.01となるように希釈 したファージ懸濁液を等量加え、37℃で30分 温した。ファージ粒子の吸着後、100μlのク ン酸三ナトリウム(1 M)を加え、37℃で60分保 した。混合液を0.2 mlずつ、選択培地に塗布 し、37℃で一晩培養した。形成したコロニー 形質導入体として取得した。PCR、活性染色 より、目的位置へのtnaA::Km r 遺伝子の形質導入を確認した。

(2-2)フィードバック耐性変異型SAT遺伝子搭載 ラスミドpCEM256Iの構築
 変異型SAT遺伝子を搭載したプラスミドとし 、文献(特開平11-155571号、Nakamori, S, et al., Appl. Environ. Microbiol., 1998, 64, 1607-1611)に記 のpCEM256Iと同一の構造を有するプラスミド 用いた。pCEM256Iは、E. coliの野生型SAT遺伝子( cysE)に変異を導入して得た変異型SAT遺伝子を している。この変異型SATは、256位のメチオ ンがイソロイシンに置換されており、この 異によりシステインに対するフィードバッ 耐性を示す(特開平11-155571号)。pCEM256Iは、具 体的には以下のようにして得た。

 プロモーター領域とターミネーター領域を むcysE遺伝子を単離するために、E. coli JM240  の染色体を鋳型として、Denkら(Denk, D. and B ock, A., J. General Microbiol., 133, 515-525 (1987)) 決定したcysE遺伝子(SATをコード)の配列に基 いて作製したセンスプライマー(5’-GGGAATTCAT CGCTTCGGCGTTGAAA-3’、Primer 1、配列番号3)とアン センスプライマー(5’-GGCTCTAGAAGCGGTATTGAGAGAGATT A-3’、Primer 2、配列番号4)を用いてPCRを行っ 。PCRは、DNA Thermal Cycler 480 (Perkin Elmer Co. )、及びEx Taqポリメラーゼを用いて、94℃ 1 、55℃ 1分、72℃ 3分からなるサイクルを、2 5サイクル繰り返すことにより行った。特異 に増幅された約1.2 kb のDNA断片を、EcoRVで処 理されたプラスミドベクターpBluscriptII SK +  にTA クローニング技術によってライゲーシ ョンさせ、pCEを得た。PCR増幅領域はシークエ ンシングにより野生型と同一であることを確 認した。

 cysE遺伝子の部位特異的変異導入は次の方 法で行った。5’-CAGGAAACAGCTATGAC-3’(Primer 3、 列番号5)、5’-CTGCAATCTGTGACGCT-3’ (Primer 4、配 列番号6)、5’-AATGGATATAGACCAGC-3’ (Primer 5、配 番号7)と5’-GCTGGTCTATATCCATT-3’(Primer 6、配列 号8)を用いて、SATの256位のメチオニン残基 イソロイシンに置換した。Primer 3とPrimer 4 それぞれ、プラスミドpCEのPstIサイトの140 bp 上流と、BstEIIサイトの50 bp下流に相補的とな るようにデザインされている。Primer 4とPrimer  5は部位特異変異のためのプライマーとして 用いた。まず、pCEを鋳型として、それぞれ独 立のチューブ内で、Primer 3とPrimer 5、Primer 4 とPrimer 6を用いてPCRを行った。得られたPCR産 物をアガロースゲル電気泳動後、ゲルから回 収した。回収された270bpと250bpのDNA断片を鋳 として、Primer 3とPrimer 4を用い、再度PCRを った。二回目のPCR後、増幅された500 bpのDNA 片を、制限酵素PstIとBstEIIで処理して得られ た310 bpの断片を、同様に制限酵素処理したpC Eのラージフラグメントと連結し、pCEM256Iを得 た。シークエンシングにより目的どおりの変 異が導入されたことを確認した。またそれ以 外の領域は野生型と同一であることを確認し た。

(2-3)ydeD遺伝子のクローニング(ydeD遺伝子強化 プラスミドpYdeDの構築)
 システイン排出ポンプをコードするE. coli  ydeD遺伝子のクローニングは次の手順で行っ 。まずE. coli MG1655株(ATCC No. 47076)ゲノムDNA テンプレートとして、センスプライマー(5 -CGCGGATCCAATGGTCATAAATGGCAGCGTAGCGC-3’、Primer 7、配 列番号9)とアンチセンスプライマー(5’-CGCGGAT CCGCAGGGCGTTGCGGAACAAAC-3’、Primer 8、配列番号10) 用いて、PCRを行った。PCRは、Pyrobest DNAポリ ラーゼ(Takara社)を用いて、添付のプロトコ ルに従って行った。こうして、ydeD遺伝子の 流約300bp、及び、下流約200bpを含む約1.5kbのy deD遺伝子断片を取得した。前記両プライマー にはBamHIサイトがデザインされている。PCR断 をBamHIで処理した後、pSTV29(Takara社)のBamHIサ トに挿入し、pSTV29ベクター上のlacZ遺伝子と 同方向にydeD遺伝子断片が挿入されたプラス ドをpYdeDと命名した。PCRで増幅された部分の シークエンシングを行い、PCRによるエラーが ないことを確認した。

(2-4)システイン生産菌MG1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD株の構築
 MG1655δtnaA::Km r 株に、定法によりpCEM256I及びpYdeDを導入し、 異型SATとシステイン排出ポンプYdeDが強化さ 、システインの分解系であるTnaAが欠損した システイン生産菌MG1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD株を構築した。

(3)TolCを強化したシステイン生産菌の構築
 システイン生産菌におけるtolC遺伝子強化の 効果を調べるため、tolC遺伝子強化用のプラ ミドを構築し、上記システイン生産菌に導 した。

(3-1)TolC強化用プラスミドpLSTolCの構築
 最初に、プラスミドベクターpMW219(3,923bp,  ッポンジーン)をClaIで切断後、5’末端平滑 をT4DNA ポリメラーゼを用いて行った。その 、EcoT14Iで約0.6kbのカナマイシン耐性遺伝子 切り出し、3.2 kbpのlarge fragmentを回収した 次にプラスミドpFW5(2,726 bp, Podbielski, A., et al., Gene, 1996, 177, 137-147)をHindIIIで切断後、 5’末端平滑化を行った後、EcoT14Iで1.2 kb のa ad9遺伝子(スペクチノマイシン耐性遺伝子)を 収した。両回収断片をライゲーションして 築したプラスミドを、pLS219 (4,444 bp)と命名 した。プラスミドpUX(5208 bp, Aono, R., et al., J. Bacteriol., 1998, 180, 938-944)からプロモータ ー領域とターミネーター領域を含むtolC遺伝 をHindIIIとEcoRIにより切り出した(2.6 kbp)。こ 切り出したtolC遺伝子断片を、pLS219のマルチ クローニングサイトのHIndIII-EcoRI部位に連結 た(pLSTolC, 6,966 bp)。

(3-2)TolCを強化したシステイン生産菌E. coli MG 1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD/pLSTolCの構築
 pLSTolを、システイン生産菌MG1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeDに導入し、MG1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD/pLSTolC株を構築した。形質転換は レクトロポーレーションによる定法で行っ 。

(4)TolCを強化したシステイン生産菌によるシ テイン生産
 TolCが強化されたシステイン生産菌(E. coli M G1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD/pLSTolC)と、TolCを強化していない 照株(E. coli MG1655δtnaA::Km r /pCEM256I/pYdeD)を、L培地(クロラムフェニコール (40μg/mL)、カナマイシン(50μg/mL)、アンピシリ (50μg/mL)、さらにpLSTolC保有株にはスペクチ マイシン(100μg/mL)添加)5 mlに植菌し、37℃で 晩培養した(前培養)。一晩培養した菌液を25 0μlとり、25 mlの新しい培地(SM1+10% L培地)に え、37℃、140 rpmで振とう培養した。培養時  0, 3, 6, 9, 14, 25時間で培養液をとり、菌 数(OD 660 )、及びシステイン生産量を調べた。なお、 養に用いたSM1培地の組成は次に示すとおり ある;0.1 M KH 2 PO 4 -K 2 HPO 4  buffer (pH 7.0), 30 g/L glucose, 10g/L (NH 4 ) 2 SO 4 , 0.1 g/L NaCl, 7.2 μM FeSO 4 ・7H 2 O, 0.6 μM Na 2 MoO 4 , 40.4 μM H 3 BO 3 , 2.9 μM CoCl 2 , 1 μM CuSO 4 , 8.1 μM MnCl 2 , 1 mM MgSO 4 , 0.1 mM CaCl 2 (Dassler, T., et al., Mol. Microbiol., 2000, 36, 110 1-1112)。SM1+10% L培地は、このSM1培地に1/10濃度 のL培地成分を加えたものである。

 システイン・シスチン及びシステイン関連 合物の定量は、Gaitondeの方法(Gaitonde, M.K. Bi ochem. J., 1967,104, 627-633)に従い、次のように った。培養液100μlにGaitonde試薬 (Ninhydrin 250  mg, 酢酸 6 ml, 塩酸 4 ml) 200μlを加え、100 ℃で5分間発色反応を行い、400μlの100% エタ ールを加え、OD 560 を測定した。図3に生育曲線、図4に培地中に 積したシステイン量(Gaitonde法による定量値) の変化を示す。TolC強化株では、生育は対照 とほぼ同等で、システイン量が顕著に増加 ていることがわかった。このようにTolC強化 システイン生産量を増加させる効果がある とが明らかとなった。

〔配列表の説明〕
配列番号1:E. coi tolC遺伝子の塩基配列
配列番号2:E. coi TolCのアミノ酸配列
配列番号3~10:PCRプライマー
配列番号11:Shigella boydii tolC遺伝子ホモログ 塩基配列
配列番号12:Shigella boydii TolCホモログのアミ 酸配列
配列番号13:Shigella flexneri tolC遺伝子ホモログ の塩基配列
配列番号14:Shigella flexneri TolCホモログのアミ ノ酸配列
配列番号15:Salmonella enterica tolC遺伝子ホモロ の塩基配列
配列番号16:Salmonella enterica TolCホモログのア ノ酸配列
配列番号17:Citrobacter koseri tolC遺伝子ホモロ の塩基配列
配列番号18:Citrobacter koseri TolCホモログのア ノ酸配列
配列番号19:Klebsiella pneumoniae tolC遺伝子ホモ グの塩基配列
配列番号20:Klebsiella pneumoniae TolCホモログの ミノ酸配列
配列番号21:Enterobacter sakazakii tolC遺伝子ホモ グの塩基配列
配列番号22:Enterobacter sakazakii TolCホモログの ミノ酸配列
配列番号23:Erwinia carotovora tolC遺伝子ホモロ の塩基配列
配列番号24:Erwinia carotovora TolCホモログのア ノ酸配列
配列番号25:Serratia proteamaculans tolC遺伝子ホモ ログの塩基配列
配列番号26:Serratia proteamaculans TolCホモログの アミノ酸配列
配列番号27:Aeromonas salmonicida tolC遺伝子ホモ グの塩基配列
配列番号28:Aeromonas salmonicida TolCホモログの ミノ酸配列
配列番号29:Vibrio vulnificus tolC遺伝子ホモログ の塩基配列
配列番号30:Vibrio vulnificus TolCホモログのアミ ノ酸配列

 本発明により、細菌のL-システイン生産 を向上させることができる。また、本発明 よれば、L-システイン、L-シスチン、それら 誘導体又は前駆体、又はこれらの混合物を 率よく製造することができる。




 
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