Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
12-HYDROXYSTEARIC ACID COPOLYMER AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/031531
Kind Code:
A1
Abstract:
A novel biodegradable 12-hydroxyacid copolymer which is useful in a non-petroleum raw material, in the prevention of environmental pollution, and in the prevention of global warming is produced in high yield by using 12-hydroxystearic acid or a derivative thereof obtained by hydrogenation of ricinoleic acid obtained from castor oil and a long-chain hydroxy acid synthesizable from vegetable seed oil as raw materials and immobilized lipase as a catalyst.

Inventors:
EBATA HIROKI (JP)
MATSUMURA SHUICHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/065753
Publication Date:
March 12, 2009
Filing Date:
September 02, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
UNIV KEIO (JP)
EBATA HIROKI (JP)
MATSUMURA SHUICHI (JP)
International Classes:
C08G63/06; C08G63/82; C12P7/62; C08L101/16
Domestic Patent References:
WO2008029805A12008-03-13
Foreign References:
JP2003012779A2003-01-15
JPH1112224A1999-01-19
JPH11106488A1999-04-20
JPH10218977A1998-08-18
JP2005113001A2005-04-28
JPH05211878A1993-08-24
JPH1046180A1998-02-17
JPH05125166A1993-05-21
JP2005113001A2005-04-28
JP2006516998A2006-07-13
JPH05211878A1993-08-24
Other References:
RAIA SLIVNIAK AND ABRAHAM J.DOMB: "Lactic acid and ricinoleic acid based copolyesters", MACROMOLECULES, vol. 38, no. 13, 28 June 2005 (2005-06-28), pages 5545 - 5553, XP008131366
RAIA SLIVNIAK AND ABRAHAM J.DOMB: "Macrolactones and polyesters from ricinoleic acid", BIOMACROMOLECULES, vol. 6, no. 3, June 2005 (2005-06-01), pages 1679 - 1688, XP008131362
BIOMACROMOLECULES, vol. 6, 2005, pages 1679 - 1688
MACROMOLECULES, vol. 38, 2005, pages 5545 - 5553
MACROMOLECULES, vol. 40, 2007, pages 2852 - 2862
See also references of EP 2213694A4
Attorney, Agent or Firm:
KODAMA, Yoshihiro et al. (17-2 Sotokanda 2-chome, Chiyoda-k, Tokyo 21, JP)
Download PDF:
Claims:
 下式1の12-ヒドロキアシステアリン酸又はその誘導体(主にエステル)と下式2でn=4以上の長鎖ヒドロキシ酸とを共重合して得られる下式3の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体。
(式1)12-ヒドロキシステアリン酸
(式2)長鎖ヒドロキシ酸
(式3)12-ヒドロキシステアリン酸共重合体
 下式3で示される重量平均分子量(Mw)20000以上の請求項1の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体。
(式1)12-ヒドロキシステアリン酸
(式2)長鎖ヒドロキシ酸
(式3)12-ヒドロキシステアリン酸共重合体

 12-ヒドロキシステアリン酸含有量が15mol%以上100mol%未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体。
 式1の12-ヒドロキシステアリン酸又はその誘導体と式2でn=4以上の長鎖ヒドロキシ酸とを原料に、油脂加水分解酵素(リパーゼ)を触媒として合成することを特徴とする下式3の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体の製造方法。
(式3)12-ヒドロキシステアリン酸共重合体
 請求項1~3のいずれかに記載の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体であって、DSCによる融点が30℃以上120℃未満であることを特徴とする12-ヒドロキシステアリン酸共重合体。
 請求項1、2、3又は5のいずれかに記載の12-ヒドロキシステアリン酸共重合体であって、Durometer-Aによる硬度が30A以上90A未満であることを特徴とする熱可塑性エラストマー。
Description:
12-ヒドロキシステアリン酸共重 体及びその製造方法

 本発明は、新規な非石油系熱可塑性エラス マーである12-ヒドロキシステアリン酸共重 体に関する。
 さらに、本発明は、12-ヒドロキシステアリ 酸又はその誘導体を共重合して得られる生 解性の熱可塑性エラストマーおよびそれを むエラストマー組成物に関する。

 近時、イラク、イラン等の中東情勢の緊迫 や中国等の産業基盤の発展により原料とし 、又はエネルギー源としての石油資源の獲 競争が激化し、世界的な石油の高騰をきた ている。そのため石油代替エネルギーの開 、石油原料に替わる天然由来原料をベース した素材開発が活発化してきている。
 一方、地球温暖化対策として製品の製造に する二酸化炭素の発生量を抑えるべく省エ 装置や製造方法の開発、環境汚染対策とし 生分解性素材のような循環型の素材や安全 の確保できる製品の開発も同時に活発に進 られている。

 循環型の素材としては、生分解性のポリエ テル、中でも、脂肪族ポリエステルに関す 研究開発が盛んである。
 その一端を示すと、脂肪族ジカルボン酸又 そのエステル、脂肪族又は脂環式ジオール び天然由来の不飽和酸又はそのエステルか なる熱可塑性の生分解性脂肪族コポリエス ルが特許文献1~3に開示されており、すず触 を用いて1種以上の脂肪族ジカルボン酸又は そのエステルと、1種以上の直鎖又は分岐し 脂肪族グリコールから生分解性の脂肪族ポ エステルの製造方法が特許文献4に開示され いる。
 また、天然油脂又は合成トリグリセリドと アルキルフェノール、ベンゾトリアゾール 芳香族アミンの少なくとも1種、さらには、 アルカリ金属又はアルカリ土類金属の金属ベ ース物質からなる生分解性の植物油グリース が特許文献5に開示されている。

 さらに、ヒマシ油を原料としたリシノール を含有する生分解性のポリエステルとして リシノール酸ラクトンと乳酸の共重合が高 ・減圧法及びラクトンを経由した開環重合 より分子量5000~16,000、融点100~130℃の共重合 が得られ、DDS用途への利用が検討されてお 、共重合体の結晶性がポリ乳酸より少ない め生分解しやすいことが非特許文献1に報告 されている。
 また、非特許文献2では、リシノール酸と乳 酸の各種割合のポリエステルを熱縮合により 合成し、高分子量のポリ乳酸とエステル交換 反応により分子量2000~8000のランダムな共重合 物を得たことが報告されている。これらの非 特許文献は、熱縮合によるポリエステルの合 成であり、得られたリシノール酸を含有する ポリエステルの分子量が小さく、得られた乳 酸との共重合ポリエステルの物性、性能に関 する報告は開示されていない。
 一方、ヒドロキシル基を含有する脂肪酸と 肪族ジカルボン酸からなる分子末端にアミ 基を有するポリエステル化合物が特許文献6 に開示され、また、医用材料を目的としたリ シノール酸と乳酸を重縮合反応によりリシノ ール酸含有率をコントロールした反応性の生 分解性共重合体ポリエステルが特許文献7に 示されているが、非特許文献1及び2に記載さ れているポリエステルの合成法と同様に熱縮 合反応で得られている。
 さらに、リシノール酸エステルを架橋させ エラストマーとして、過酸化物開始剤の存 下で、ヒマシ油又はリシノール酸エステル エポキシ化油及びポリカルボン酸から形成 れるポリエステルからエラストマーを形成 、良好な機械的強度及び弾力性を示し、摩 及び加水分解に抵抗性のあるシート材料が 許文献8に開示されている。

 さらに、生分解性のポリエステルの合成に による縮合反応以外の合成方法として、酵 を用いた合成法が報じられている。すなわ 、加水分解酵素であるリパーゼを用いて平 反応の中でエステル化の反応を進行させる 成法であり、酵素リパーゼの効率的な利用 意図した固定化リパーゼを用いる油脂、又 脂肪酸からエステルを合成する方法である
 上記観点から特許文献9には、焼成ゼオライ トなる担体に吸着固定化した固定化リパーゼ を用いて、担体中の水分を固定化酵素1g当た 800mg以下に調節しつつリシノール酸からオ ゴマーを製造する方法が開示されている。 の文献によるリシノール酸からのオリゴマ の製造においては、合成に用いる酵素反応 至適温度が熱化学反応と比べて低温であり 省エネルギーかつ、有害な有機溶剤や触媒 要しないので、地球温暖化や環境汚染の観 からも好ましいエステルオリゴマーの合成 法である。
 しかしながら、特許文献9における実施例で は、脱水縮合率を中和価で追跡しており、実 施例から中和価30以下のポリエステルは得ら ていない。この中和価の値から推測される リエステルの重量平均分子量は、3000を越え ず、比較的分子量の小さいポリエステルであ ると推論される。

 上記の公知文献から、脱石油を意図し、地 温暖化や環境汚染をクリアーし、優れた柔 性を有する生分解性のポリエステルを工業 に得る技術に到達しているとは断じがたい
 一方、本発明のソフトマテリアルの分野で る熱可塑性エラストマー(TPE、Thermoplastic ela stomer)について述べると、TPEはリサイクル可 なゴム材料として近年、急速な成長を遂げ いる。TPEは加硫ゴムと異なり、マトリック 相の架橋を必要とせず、擬似(物理的)架橋に よりゴム弾性を発現するように材料設計がな されており、常温では加硫ゴムと同様にゴム 弾性を示し高温ではマトリックス相が可塑化 し流動するため、熱可塑性樹脂と同様に取り 扱い可能である。可逆的な利用(リサイクル) 可能で、架橋工程が不要なために加硫ゴム 比べ、格段に省エネルギーかつ生産性向上 可能であり、スクラップの回収・リサイク が容易なことも大きな魅力である。また、 硫ゴムとは補強メカニズムが異なるために ーボンブラックなどの補強材を必要せず、 比重(軽量)であることも特長の一つである

 TPEはやわらかいゴム成分からなるソフトセ メントと硬い樹脂成分からなるハードセグ ントから形成されており、その分子構造か 、(1)オレフィン系(TPO)、(2)スチレン系(TPS)、 (3)ウレタン系(TPU)、(4)ポリエステル系(TPEE)、( 5)塩ビ系(T-PVC)、(6)その他、に大別される。
 現在、TPEは自動車、建材、スポーツ用品、 療用途や工業部品分野などで需要が拡大し おり、年率6~10%程度の高い成長率で成長し いる。中でもTPSとTPOは、環境規制の整備を 景に、塩ビや合成ゴムの代替材料として需 が急拡大しており、幅広い分野で堅調に成 を遂げている。ただし、いずれの素材も石 が原料であり、原料高騰の影響を受け、さ に生分解しないことも課題として挙げられ 。

 中でも、石油系原料を用いた熱可塑性エ ストマーとして、TPOの一つであるエチレン オクテンのブロック共重合体が非特許文献3 に開示されており、オクテン含有量の少ない 硬いブロックとオクテン含有量の大きいソフ トブロックの比率を変えたブロック共重合体 により熱的性質や機械的性質を任意に変化さ せることが可能であることを示している。こ のブロック共重合体は、柔軟性と耐熱性を併 せもつとして報告されている。

特表2005-523355号公報

特表2005-523356号公報

特表2005-523357号公報

特表2002-539309号公報

特開平10-46180号公報

特開平5-125166号公報

特開2005-113001号公報

特表2006-516998号公報

特開平5-211878号公報 Biomacromolecules 2005,6,1679-1688 Macromolecules 2005,38,5545-5553 Macromolecules,2007,40,2852-2862

 これら合成ゴムは、あらゆる工業分野に いられているが、その原料である石油の安 供給が危ぶまれるとともに、難分解性であ ことから廃棄時の環境汚染の問題を抱えて る。さらには、ポリマー中に金属残渣を有 ており、環境や生体にとってはそれら金属 渣を含まないポリマーがより好ましいとい る。

 以上の現状から、工業的には石油を原料 する合成高分子素材、この素材を使用した ラストマーが主体的に用いられており、脱 油原料、環境汚染防止、省エネルギーの観 からみると多くの問題点を包含している。 かる問題点を解決するために、石油代替資 を原料として反応効率に優れ、環境低負荷 生体触媒により機能性高分子素材を合成す ことが求められている。

 以上記述したように脱石油原料、省エネル ー及び環境汚染防止を達成するために、天 の素材を利用して、これに酵素のような自 界に存在し、通常の化学反応と比べて温和 温度領域で効率的に触媒反応を遂行可能な 媒を用いて人体に有害な物質を使用しない 法で、優れた柔軟性を有する生分解性エラ トマーの製造方法を見いだした。
 すなわち、ヒマシ油から得られるリシノー 酸を水素添加して得られる12-ヒドロキシス アリン酸又はこの誘導体(主としてエステル )と植物の種子油等から合成可能な12-ヒドロ シドデカン酸ほかの長鎖ヒドロキシ酸を原 とし、油脂加水分解酵素であるリパーゼを 媒に用いて、温和な反応温度でエステル合 反応を遂行し、工業的に有用な生分解性で れた柔軟性を有する共重合ポリエステルを 成する方法を見いだし、優れた熱可塑性エ ストマーを得ることが可能となった。 
 なお、図1に12-ヒドロキシステアリン酸の化 学式を示し、図2に長鎖ヒドロキシ酸の化学 を示すが、いずれも飽和ヒドロキシ脂肪酸 ある。
 図3に本発明の目的物の12-ヒドロキシステア リン酸共重合体の合成反応を示す。

 本発明の原料の12-ヒドロキシステアリン 又はその誘導体は、分子量約300で,分子中の 12位にヒドロキシル基があり、分子末端にカ ボン酸又はカルボン酸エステルを有するの 、エステル化又はエステル交換反応により 己縮合や長鎖ヒドロキシ酸とエステル化又 エステル交換反応して線状高分子化が可能 ある。かかる高分子化反応を遂行するため 固定化リパーゼをモレキュラーシーブの存 下、又は減圧下で縮合物を効率的に除去す ことが必要である。

 本願に記載された発明は、基本的には以下 第1の発明~第4の発明よりなるものである(以 下、特に断りない限り「本発明」という)。
 すなわち、(1)下式1の12-ヒドロキシステアリ ン酸又はその誘導体(主にエステル)と下式2で n=4以上の長鎖ヒドロキシ酸とを共重合して得 られる下式3の12-ヒドロキシステアリン酸共 合体。
(式1)12-ヒドロキシステアリン酸
(式2)長鎖ヒドロキシ酸
(式3)12-ヒドロキシステアリン酸共重合体
(2)重量平均分子量(Mw)20000以上の上記(1)の12-ヒ ドロキシステアリン酸共重合体。
(3)12-ヒドロキシステアリン酸含有量が15mol%以 上100mol%未満であることを特徴とする上記(1) は(2)記載の12-ヒドロキシステアリン酸共重 体。
(4)式1の12-ヒドロキシステアリン酸又はその 導体と式2でn=4以上の長鎖ヒドロキシ酸とを 料に、油脂加水分解酵素(リパーゼ)を触媒 して合成することを特徴とする式3の12-ヒド キシステアリン酸共重合体の製造方法。

 さらに本発明では、上記基本的発明を引用 る発明として、以下の発明が含まれる。
(5)(1)~(3)のいずれかに記載の12-ヒドロキシス アリン酸共重合体であって、DSCによる融点 30℃以上120℃未満であることを特徴とする12- ヒドロキシステアリン酸共重合体。
(6)(1)、(2)、(3)又は(5)のいずれかに記載の12-ヒ ドロキシステアリン酸共重合体であって、Dur ometer-Aによる硬度が30A以上90A未満であること 特徴とする熱可塑性エラストマー。

 以上のことから、本発明は、ヒマシ油から られるリシノール酸の水素添加により得ら る12-ヒドロキシステアリン酸及びその誘導 と植物の種子油から合成可能である長鎖ヒ ロキシ酸を原料として油脂加水分解酵素(リ パーゼ)の固定化触媒を用いる重合法により 柔軟性で、機械的強度に優れた生分解性の 重合体を高収率で得ることが可能となった
 そのため、環境汚染の原因となる有害な合 触媒を用いず、モレキュラーシーブを併用 た反応系にて、固定化リパーゼを用いるこ により比較的温和な反応条件で高分子量の1 2-ヒドロキシステアリン酸を含有してなる共 合体を合成でき、この共重合により石油系 ラストマーの代替が可能となり、省エネル ー化を達成できると共に熱縮合反応と比較 て二酸化炭素の排出量も著しく低減するこ ができて、石油資源の節約ばかりか、医薬 バイオマテリアルへの応用が可能となる。

12-ヒドロキシステアリン酸の化学式。 長鎖ヒドロキシ酸の化学式。 12-ヒドロキシ酸共重合体の合成反応式 12-ヒドロキシ酸共重合体(12HS含量23mol%) 1H-NMRスペクトル。 各種共重合体のDSCプロファイル(降温曲 線)。 融点、結晶化温度の組成(12HS含量)依存 。 ヤング率の組成(12HS含量)依存性。 硬度の組成(12HS含量)依存性。 12-ヒドロキシ酸共重合体(12HS含量36mol%) 生分解性。(BOD試験) 12-ヒドロキシ酸共重合体(12HS含量36mol%) のケミカルリサイクル性。 図4のトレーシング図

 以下、本発明を詳細に説明する。
 本発明は、脱石油原料である12-ヒドロキシ テアリン酸又はその誘導体を用いて通常の 学反応と比較して穏和な反応温度で、かつ 反応効率が優れる酵素反応により、工業的 価値のある高分子量で、柔軟で生分解性に れる共重合体及びその製造方法に関する。

 重量平均分子量が3000以下の12-ヒドロキシ酸 共重合体は、熱重縮合反応やリパーゼを用い るエステル化、又はエステル交換反応で比較 的容易に合成できるが、12-ヒドロキシ酸共重 合体組成物の分子量が機械的強度、ゴム弾性 等に大きく影響するため、分子量が小さいと 工業的に従来用いられている熱可塑性エラス トマーの代替素材とは成りがたい。
 本発明で用いる12-ヒドロキシステアリン酸 びその誘導体と長鎖ヒドロキシ酸は、共に 子中にカルボキシル基とヒドロキシル基を する二官能の化合物であるため、生成した 重合体はエステル結合で結ばれたポリマー 造を形成している。
 また、本発明においては、重合過程で生成 る縮合水(12-ヒドロキシステアリン酸の場合 )又は低分子アルコール(12-ヒドロキシステア ン酸エステルの場合)を逐次、反応系から除 去することにより重量平均分子量が20000以上 ポリエステルを調製することが可能となり 熱可塑性エラストマーとして有用なポリエ テルを得ることができた。

 12-ヒドロキシステアリン酸共重合体の原料 なっている12-ヒドロキシステアリン酸及び の誘導体は、ヒマシ油から得られるリシノ ル酸の水素添加により合成可能であり、一 には、滑剤、添加剤として使用されている
 また、12-ヒドロキシドデカン酸などの長鎖 ドロキシ酸は、植物の種子油等から合成可 であり、植物の葉中などにも少量含まれて る。主鎖メチレン鎖が長く、ポリエチレン 近い結晶構造を示している。

 本発明では、12-ヒドロキシステアリン酸又 その誘導体と長鎖ヒドロキシ酸から高分子 の共重合体を得るために、比較的低温で縮 反応を行うことのできるリパーゼを用いる とにより省エネルギー化に貢献できると同 に生成したポリエステルに有毒な触媒が混 することもない。
 さらに、固定化酵素を用いることにより、 素を繰り返し縮合反応に利用することがで るばかりか、化学修飾しない単独の酵素を いるよりも熱安定性も向上し、酵素反応の を安定的にコントロールしやすく、また、 応系から除去しやすいといった特徴を有す 。
 すなわち、純度の高い12-ヒドロキシ酸共重 体を容易に、かつ、省エネ的に得ることが きる。図3に固定化リパーゼを触媒とする12- ヒドロキシステアリン酸又はその誘導体(メ ルエステル)と長鎖ヒドロキシ酸との反応式 示す。

 本発明で得られた12-ヒドロキシステアリ 酸又はその誘導体と長鎖ヒドロキシ酸から る共重合は重量平均分子量が大きく、通常 酵素反応では達成しがたいポリエステルで る。可逆反応性を有するリパーゼを用いて ドロキシ酸又はヒドロキシ酸エステルから 分子量ポリエステルを合成するには、生成 た水又は低級アルコールを逐次除去する必 があり、そのためには反応系を減圧に保つ の反応系のコントロールが必要となる。し るに、モレキュラーシーブス4A等のような 成ゼオライト化合物を存在させることによ 単純かつ、容易にエステル合成反応を進め ことができるばかりか、ポリエステルを高 子化することが容易になる。

 合成ゼオライトは、均一な細孔径を有す 無機多孔性物質であり細孔径より小さい分 は細孔内に吸着され、これに対し、細孔径 り大きいサイズの分子は細孔内に入り得な ので吸着されず、両者を分離することがで る。すなわち、分子フルイ効果を有してい ので、共重合体組成物の生成時に生ずる水 低分子アルコールを分離することができる このような高分子量の12-ヒドロキシ酸共重 体とすることによりはじめて、従来の石油 料由来の熱可塑性エラストマー等の代替と る非石油原料の熱可塑性エラストマーと成 うる。

 また、本発明で用いる酵素としては、各種 体由来のリパーゼが市販されており、得る とが可能であるが、本発明者が検討した結 では、Candida antarctica 由来の固定化リパー (Novozymes Japan Ltd 社製 Novozym 435)で良好な リエステル合成結果が得られた。しかし、 菌株由来の酵素に限定されるものではなく 重量平均分子量が20000以上の12-ヒドロキシ テアリン酸と長鎖ヒドロキシ酸との共重合 工業的に合成可能となるような酵素の活性 安定性が得られ、これらの酵素性能を考慮 た酵素価格が廉価であれば使用可能である
 また、これらの酵素を固定化する方法とし 、無機・有機担体に吸着固定する方法を用 ているが、酵素同士を架橋して合成反応系 不溶な固定化酵素を得る方法(架橋法)やア ギン酸ゲルや合成高分子ゲルなどの高分子 ル中に包括固定する方法など、いずれの方 を用いてもよく、固定化法が簡便で、固定 酵素の活性が高く、安定性が得られる方法 あれば特に限定するものではない。

 本発明の12-ヒドロキシ酸共重合体の分子構 や物性の確認方法としては、FT-IR、 1 H-NMR、 13 C-NMR及び引張り試験や硬度測定などによる評 ・測定が好ましい。

(実施例)
 以下、実施例によって本発明をさらに詳細 説明する。

 12-ヒドロキシステアリン酸を含む共重合体 おいて、12-ヒドロキシステアリン酸(12-HS)に 対する12-ヒドロキシドデカン酸(12-HD)の比率( ル%)を変化させて酵素反応により合成した 重合体組成物の収率と重量平均分子量(Mw)、 び数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量 、すなわち、ポリマーの分子量がピーク分子 量に対してどれだけ広がっているかという分 子量分布を示す尺度である多分散度(Polydispers ity、Mw/Mn、分子量分布指数ともいう)の検討を 行った。測定はSECカラム(Shodex K-804L +K-800D、  Showa Denko Co.、Tokyo,Japan)を用いて、RI検出器 により行った。溶媒にはクロロホルムを流速 1.0 mL・min -1 で用い、ポリスチレン換算により分子量を決 定した。反応はネジ付きの試験管を用いて、 縮合物を効率的に除去するように試験管上部 にモレキュラーシーブス4Aを付して行った。 質(トータル300mg)に対して50重量%(150mg)の固 化リパーゼ(Novozymes Japan Ltd 社性Novozym 435) 用いて、トルエン中(150ml)90℃で反応させた 果を表1に示した。
 共重合体の組成比は、 1 H-NMRにより測定したものである。その結果、 ずれにおいても共重合体の収率は80%を超え 高収率であり、重量平均分子量は20,000以上 分子量を有する共重合体が得られた。

 得られた12-ヒドロキシ酸共重合体の一例と て、実施例1における番号4の重量平均分子 :98,900、多分散度(Mw/Mn):3.0で23 mol%の12-HSを含 する12-ヒドロキシ酸共重合体の 1 H-NMRによる構造解析結果を図4(図11はそのトレ ーシング図)に示す。
 測定は、重クロロホルムを用いてLambda 300  Fourier Transform Spectrometer (JEOL Ltd.、Tokyo、Japa n)で300 MHzで行った。スペクトルの帰属から12 -ヒドロキシ酸共重合体の生成が確認された

 本発明で得られた12-ヒドロキシ酸共重合体 物性について検討した。その熱的性質に関 て、融点および結晶化温度の測定は示差走 熱量計(DSC, Shimadzu, Kyoto, Japan)により行っ (昇温・降温速度、10℃/min.)。図5に12-ヒドロ システアリン酸(12HS)含有量の異なる2種の12- ヒドロキシ酸共重合体、すなわち、実施例1 おいて得られた番号4及び番号6の12-ヒドロキ シ酸共重合体の測定結果(降温曲線)を12HS及び 12HDの2種のホモポリマーと対比して示した。
 2種の12-ヒドロキシ酸共重合体はいずれも12H Sホモポリマーよりも高い結晶化温度を示し 12HDホモポリマーよりも低い結晶化温度を示 た。また、2種の共重合体で比較すると12HS 有量の大きい番号6の共重合体の方が低い結 化温度を示した。このことから12-ヒドロキ 酸共重合体において、12HSの含有量によって 熱的性質を任意に変えることが可能であるこ とが確認できる。

 同様の熱的性質を12-ヒドロキシ酸共重合体 12-ヒドロキシステアリン酸(12HS)含有量を変 てポリマーの融点及び結晶化温度を測定し 結果を図6に示す。
 図6によれば、12-ヒドロキシ酸共重合体の融 点及び結晶化温度ともに12-ヒドロキシ酸共重 合体の12HS含有量が増大するにしたがって直 的に低下しており、共重合体の12HS含有量を えることにより任意に共重合体の熱的性質 変えることが可能であることを示している

 同様に得られた12-ヒドロキシ酸共重合体に ける12-ヒドロキシステアリン酸(12HS)含有量 変化させてヤング率を測定した結果を図7に 示す。ヤング率の測定は溶媒キャスト法によ り調製したフィルムサンプルを用いて、引張 り試験機(Autograph、SHIMADZU Co.、Tokyo、Japan)に り行った。12HS含有量の増加とともにヤング は低下し、20mol%以上の範囲で該共重合体の ング率は大きな変化を示した。このことよ 12HS含有量によって共重合体のヤング率を大 きく変化させることが可能であることが確認 された。
 図8に12-ヒドロキシ酸共重合体の12HS含有量 変化させた場合の DurometerA 硬度の変化を示 す。硬度は熱プレス機により調製した厚み2mm のプレスシートを用いて、ASTMのD2240に則して 行った。図8によれば、ヤング率と同様に、12 HS含量が15mol%以上の範囲で該共重合体の硬度 大きな変化を示し、このことより12HS含有量 によって共重合体の硬度を大きく変化させる ことが可能であることが確認された。

 一方、12-ヒドロキシ酸共重合体の生分解性 ついて検討した結果を図9に示す。図9は、 分解性指標にアニリンを用いて、12-ヒドロ システアリン酸(12HS)含有量 36 mol% の共重 体の生分解性をBOD法(OECD Guidelines forTesting o f Chemicals, 301C, Modified MITI Test, Organization f or EconomicCooperation and Development (OECD), Paris,  1981)により測定した結果を示した。
 生分解性の良好なアニリンと対比して該共 合体は、アニリンとほぼ同様の時期から分 が始まり、その後の分解率もアニリンと比 てやや小さい程度である。
 この結果から、12-ヒドロキシ酸共重合体の 分解性は極めて良好であることが明らかで る(40日間で約60%の分解率)。

 また、本発明で得られた12-ヒドロキシ酸共 合体のケミカルリサイクル性を検討するた に(a)Poly(12HD-co-36 mol% 12HS)、(b)Poly(12HD-co-36 m ol%12HS)を酵素分解して生成したオリゴマー、 び(c)オリゴマーを再重合して得られたPoly(12 HD-co-36 mol% 12HS)のサイズ排除クロマトグラフ ィー(SEC)のプロファイル変化を図10に示した (a)のポリマーの保持時間と比べて (b)のオリ ゴマーは保持時間が長いことから、ポリマー と比べてオリゴマーの分子量は小さく、ほぼ 同一の分子量に分解されており、このオリゴ マーを再重合して得られたポリマー(c)は、(a) と同じ保持時間を示しており、オリゴマーが 再重合して(a)と同じポリマーを生成している ことが明らかになった。
 このことから、該12-ヒドロキシ酸共重合体 その分解生成したオリゴマーの間には、酵 反応により分解と重合を可逆的に変化させ ことができる、すなわち、該共重合体を分 してオリゴマーとして回収し、再度オリゴ ーを重合して該共重合体を合成して用いる とができることを示している。
 したがって、該ポリマーには石油資源の有 利用の観点から重視されているケミカルリ イクル性に優れ、固定化リパーゼにより環 を汚染することなく実施することが可能で ると考えられる。

 以上の実施例に示す結果から、12-ヒドロ シ酸共重合体組成物は、共重合する12-ヒド キシステアリン酸と長鎖ヒドロキシ酸の含 率を変化させることにより、組成の異なる 子量20000以上の熱可塑性エラストマーを形 して熱的性質や機械特性を実用性のある範 で任意に可変でき、しかも生分解性やケミ ルリサイクル性を有することが明らかにな た。