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Title:
ABNORMAL PRION PROTEIN BINDER, AND METHOD FOR DETECTION OF ABNORMAL PRION PROTEIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/066454
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: a method for detecting abnormal prion protein as distinguished from normal prion protein in a simple manner, rapidly, with a high degree of sensitivity and quantitatively without the need of the enzymatic treatment with protease K; and a reagent for use in the method. Specifically disclosed are: an abnormal prion protein binder which comprises lactoferrin; and a method for detecting abnormal prion protein by using the abnormal prion protein binder.

Inventors:
IWAMARU YOSHIFUMI (JP)
KUHARA TETSUYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/003396
Publication Date:
May 28, 2009
Filing Date:
November 20, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MORINAGA MILK INDUSTRY CO LTD (JP)
IWAMARU YOSHIFUMI (JP)
KUHARA TETSUYA (JP)
International Classes:
G01N33/53; C07K1/22; C07K14/79; C07K17/02
Domestic Patent References:
WO2005070969A12005-08-04
WO2002057793A22002-07-25
Foreign References:
JPH10267928A1998-10-09
JPH1132795A1999-02-09
JP2003121448A2003-04-23
Other References:
ISHIMARU ET AL.: "Saibo ni Okeru Lactoferrin no Prion Fukusei Sogai Koka", SEIKAGAKU, 25 December 2007 (2007-12-25), pages 4P-0951
Attorney, Agent or Firm:
SAEKI, Norio et al. (Aminosan Kaikan Building 15-8, Nihonbashi 3-chome, Chuo-k, Tokyo 27, JP)
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Claims:
 ラクトフェリンが含まれてなる、異常型プリオン蛋白質結合剤。
 ラクトフェリンが担体に固定化されてなる、請求項1に記載の異常型プリオン蛋白質結合剤。
 異常型プリオン蛋白質検出剤である、請求項1又は請求項2に記載の異常型プリオン蛋白質結合剤。
 次の工程:
 請求項2に記載の異常型プリオン蛋白質結合剤を、試料に接触させる工程、
 試料に接触させた該異常型プリオン蛋白質結合剤から、結合した成分を分離する工程、
 分離した成分に含まれる異常型プリオン蛋白質を検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法。
 分離した成分に含まれる異常型プリオン蛋白質を検出する工程が、分離した成分に含まれる異常型プリオン蛋白質を免疫学的検出法によって検出する工程である、請求項4に記載の方法。
 次の工程:
 請求項2に記載の異常型プリオン蛋白質結合剤を、試料に接触させる工程、
 試料に接触させた該異常型プリオン蛋白質結合剤から、結合した成分を分離する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の分離方法。
Description:
異常型プリオン蛋白質結合剤お び異常型プリオン蛋白質の検出方法

 本発明は、異常型プリオン蛋白質結合剤 よび異常型プリオン蛋白質の検出方法に関 る。

 いわゆるプリオン病が、大きな社会問題 なっている。このプリオン病としては、伝 性海綿状脳症(TSE)、例えば、スクレイピー 牛海綿状脳症(BSE)、クロイツフェルト-ヤコ 病(CJD)等が知られている。

 様々な証拠から、これらのプリオン病は、 染性プリオン蛋白質(異常型プリオン蛋白質 )(PrP Sc )によって、引き起こされることがわかって た。

 そこで、ヒト及び動物のプリオン病の伝 を回避し、医薬品や食品の安全性を確保す ために、試料中の感染性プリオン蛋白質(異 常型プリオン蛋白質)を検出する試みが様々 行われてきた。

 ところが、ヒト及び動物は、プリオン病を き起こさない非感染性プリオン蛋白質(正常 型プリオン蛋白質)(PrP C )をもともと生体内に有している。そして、 の正常型プリオン蛋白質は、驚くべきこと 異常型プリオン蛋白質と同一のアミノ酸配 (一次構造)を有しており、その相違点は、同 一のアミノ酸配列から形成される高次構造に のみ存在する。

 一般に、二種類の蛋白質を区別して検出 る方法としては、これらを区別可能である うな特異的な抗体を使用する方法があり得 。しかし、おそらくは上記したアミノ酸配 の同一性のために、現在までのところ、異 型プリオン蛋白質と正常型プリオン蛋白質 区別可能な特異抗体は得られていない。す わち、試料中の感染性プリオン蛋白質(異常 型プリオン蛋白質)を、特異的な抗体を使用 て検出する方法は、未だ実用化の見込みが い。

 そのために、現在までのところ、異常型 リオン蛋白質の検出方法は、大別して次の2 種類の方法に限られている。

 一つの方法は、異常型プリオン蛋白質(感 染性プリオン蛋白質)の含有が疑われる試料 、試験動物の脳内に注入した後に長期間の 育を行い、得られた脳標本における神経の 理学的な変化を確認する方法である。

 この方法は、信頼できる方法であるが、 念ながら、あまりにも時間と費用とを要す ために、各種の検出方法の較正試験として 使われる他には、常用される検出方法とな には至っていない。

 もう一つの方法は、プロテアーゼKを使用 した方法である。おそらくはその高次構造に 起因して、正常型プリオン蛋白質はプロテア ーゼKにより分解されやすい(感受性である)こ と、その一方で異常型プリオン蛋白質はプロ テアーゼKにより分解されにくい(耐性である) ことが知られている。そこで、このプロテア ーゼKによる分解に対する感受性(耐性)の違い を利用して、例えば、プロテアーゼK処理を た後に、処理前と同じ位置のバンドのタン ク質として、ポリクローナル抗体を使用し イムノブロッティング等によって検出され ば異常型プリオン蛋白質であり、対応する ンドが消失していれば(検出されなければ)正 常型プリオン蛋白質であったと判定すること で、検出を行うことができる。

 このプロテアーゼKを使用した検出方法は 、現在、広く使用され、多くのバリエーショ ンが提案されている(特許文献1:特開平10-267928 号公報、特許文献2:特開平11-32795号公報、特 文献3:特開2003-121448号公報)。

 しかし、この方法は、酵素処理を行うこと 必須とすることから、酵素反応に適した条 を準備しなければならない点で煩雑であり 酵素反応を行うための時間を要し、その結 、迅速性や簡易性において十分でないこと 試薬として比較的高価な酵素を必須とする と等の欠点を、原理的に有している。

特開平10-267928号公報

特開平11-32795号公報

特開2003-121448号公報

 従って、プロテアーゼKによる酵素処理を 行うことなく、簡便に迅速且つ高感度で定量 的に、異常型プリオン蛋白質を、正常型プリ オン蛋白質から区別して、検出する方法が求 められていた。

 すなわち、本発明の目的は、プロテアー Kによる酵素処理を行うことなく、簡便に迅 速且つ高感度で定量的に、異常型プリオン蛋 白質を、正常型プリオン蛋白質から区別して 、検出する方法、及び該方法に使用される検 出剤を提供することにある。

 また、このような検出方法に使用するた に、正常型プリオン蛋白質とは結合せず、 常型プリオン蛋白質に特異的に結合する試 (結合剤)が、求められていた。

 すなわち、本発明の目的は、正常型プリ ン蛋白質とは結合せず、異常型プリオン蛋 質に特異的に結合する試薬(結合剤)を提供 ることにもある。

 本発明者等は、上記目的のために、異常 プリオン蛋白質の特異的な検出方法を鋭意 究してきたところ、哺乳動物の乳由来のタ パク質であるラクトフェリンが、正常型プ オン蛋白質とは結合せず、異常型プリオン 白質のみに特異的に結合する性質を有して ることを見出して、本発明を完成した。

 すなわち、ラクトフェリンは、永らく求 られてきた、正常型プリオン蛋白質とは結 せずに、異常型プリオン蛋白質に特異的に 合する試薬(結合剤)であり、このラクトフ リンを使用すれば、プロテアーゼKによる酵 処理を行うことなく、異常型プリオン蛋白 を正常型プリオン蛋白質から区別して、検 することができる。

 また、ラクトフェリンの異常型プリオン 白質に特異的に結合する性質を利用するこ によって、異常型プリオン蛋白質の特異的 検出が可能になるだけではなく、異常型プ オン蛋白質の特異的な分離(精製及び濃縮を 含む)、異常型プリオン蛋白質の特異的な固 化、異常型プリオン蛋白質の自己会合の特 的な阻害が可能になり、プロテアーゼKによ 酵素処理による方法では不可能であった新 な用途が提供されている。すなわち、本発 による異常型プリオン蛋白質結合剤は、こ ような有用な用途を有している。

 従って、本発明は、次の[1]~[2]にある。
[1] ラクトフェリンが含まれてなる、異常型 リオン蛋白質結合剤。
[2] ラクトフェリンからなる異常型プリオン 白質結合部位を有する、異常型プリオン蛋 質結合剤。

 また、ラクトフェリンを担体に固定化し 使用すれば、異常型プリオン蛋白質のみを 常型プリオン蛋白質から分離(精製及び濃縮 を含む)して得ること、異常型プリオン蛋白 を結合して固定化すること、異常型プリオ 蛋白質を検出することを、特に好適に行う とができる。

 従って、本発明は、次の[3]~[6]にもある。
[3] ラクトフェリンが担体に固定化されてな 、[1]~[2]の何れかに記載の異常型プリオン蛋 白質結合剤。
[4] ラクトフェリンが異常型プリオン蛋白質 合部位として担体に固定化されてなる、[1]~ [2]の何れかに記載の異常型プリオン蛋白質結 合剤。
[5] 担体がビーズである、[3]~[4]の何れかに記 載の異常型プリオン蛋白質結合剤。
[6] ビーズが磁性化可能なビーズである、[5] 記載の異常型プリオン蛋白質結合剤。

 このような異常型プリオン蛋白質結合剤は 異常型プリオン蛋白質の検出の用途に使用 ることができる。
 従って、本発明は、次の[7]~[9]にもある。
[7] 異常型プリオン蛋白質検出剤である、[1]~ [6]の何れかに記載の異常型プリオン蛋白質結 合剤。
[8] ラクトフェリンからなる異常型プリオン 白質結合部位を有する、異常型プリオン蛋 質検出剤である、[1]~[6]の何れかに記載の異 常型プリオン蛋白質結合剤。
[9] ラクトフェリンからなる異常型プリオン 白質結合部位、及び標識部位が含まれてな 、異常型プリオン蛋白質検出剤である、[1]~ [6]の何れかに記載の異常型プリオン蛋白質結 合剤。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白 結合剤、又は異常型プリオン蛋白質検出剤 使用して、異常型プリオン蛋白質を、検出 る方法、結合する方法、分離する方法(精製 する方法、及び濃縮する方法を含む)、固定 する方法、又は異常型プリオン蛋白質の自 会合を阻害する方法にもある。

 従って、本発明は、次の[10]~[18]にもある。
[10] 次の工程:
 [3]~[6]の何れかに記載の異常型プリオン蛋白 質結合剤を、試料に接触させる工程、
 試料に接触させた該異常型プリオン蛋白質 合剤から、結合した成分を分離する工程、
 分離した成分に含まれる異常型プリオン蛋 質を検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法。
[11] 分離した成分に含まれる異常型プリオン 蛋白質を検出する工程が、分離した成分に含 まれる異常型プリオン蛋白質を免疫学的検出 法によって検出する工程である、[10]に記載 方法。
[12] 免疫学的検出法が、ウェスタンブロット 法、ELISA法、又は免役沈降法である、[11]に記 載の方法。
[13] 次の工程:
 [3]~[6]の何れかに記載の異常型プリオン蛋白 質結合剤を、試料に接触させる工程、
 試料に接触させた該異常型プリオン蛋白質 合剤から、結合した成分を分離する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の分離方法。
[14] ラクトフェリンが担体に固定化されてな る異常型プリオン蛋白質結合剤が、ラクトフ ェリン固定化ビーズである、[10]~[13]の何れか に記載の方法。
[15] 異常型プリオン蛋白質結合剤が、磁性化 可能なビーズを使用されてなるラクトフェリ ン固定化ビーズである[10]~[13]の何れかに記載 の方法。
[16] 試料が、動物組織に界面活性剤を添加し て均一化して得られた液体試料である、[10]~[ 15]の何れかに記載の方法。
[17] 動物組織が、哺乳動物の脳、脊髄、眼、 及び/又は小腸である、[16]に記載の方法。
[18] 結合した成分を分離する工程が、ラクト フェリンを含有する溶液で溶出させることに よって行われる、[10]~[17]の何れかに記載の方 法。

 さらに、本発明は、次の[19]~[22]にもある。
[19] ラクトフェリンを、異常型プリオン蛋白 質に結合させる工程、
 異常型プリオン蛋白質に結合したラクトフ リンを検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法。
[20] 標識部位を有するラクトフェリンを、異 常型プリオン蛋白質に結合させる工程、
 異常型プリオン蛋白質に結合したラクトフ リンの標識部位を検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法。
[21] ラクトフェリンを、異常型プリオン蛋白 質に結合させて、異常型プリオン蛋白質の自 己会合を阻害する方法。
[22] ラクトフェリンが含まれてなる、異常型 プリオン蛋白質の自己会合阻害剤。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白 に結合させるための、ラクトフェリン、標 部位を有するラクトフェリン、又は担体に 定化されたラクトフェリンの使用(use)にも る。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白 を検出するための、ラクトフェリン、標識 位を有するラクトフェリン、又は担体に固 化されたラクトフェリンの使用(use)にもあ 。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白 を分離するための、ラクトフェリン、標識 位を有するラクトフェリン、又は担体に固 化されたラクトフェリンの使用(use)にもあ 。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白 の自己会合を阻害するための、ラクトフェ ン、標識部位を有するラクトフェリン、又 担体に固定化されたラクトフェリンの使用( use)にもある。

 本発明によって初めて開示されたように ラクトフェリンは、正常型プリオン蛋白質 は結合せず、異常型プリオン蛋白質のみに 異的に結合するために、この知見に基づく 発明によれば、プロテアーゼKによる酵素処 理を行うことなく、簡便に迅速且つ高感度で 定量的に、異常型プリオン蛋白質を、正常型 プリオン蛋白質から区別して、検出すること ができる。

 すなわち、本発明によれば、異常型プリ ン蛋白質を正常型プリオン蛋白質から区別 るために、プロテアーゼKによる酵素処理を 行うことが不要であるために、酵素反応に適 した条件を準備しなければならない煩雑さが なく、酵素反応を行うための時間を要するこ とがない。その結果として本発明によれば、 プロテアーゼKによる酵素処理を行う場合に じていた、迅速性や再現性において十分で いこと、試薬として比較的高価な酵素を必 とすること等の欠点を、原理的に有しない

 従って、本発明によれば、動物に由来す 原材料を使用した飲食品及び医薬品に対し 、異常型プリオン蛋白質(感染性プリオン蛋 白質)による汚染の検査を、従来よりも、簡 に迅速且つ高感度で定量的に、さらに低コ トで行うことができる。また、ヒト及び動 におけるプリオン病の診断を、従来よりも 簡便に迅速且つ高感度で定量的に、さらに コストで行うことができる。これによって ヒト及び動物へのプリオン病の感染防止や 期診断という社会の要請に応えることがで る。

 さらに、本発明によれば、異常型プリオ 蛋白質を正常型プリオン蛋白質から分離回 して得ることができ、これによって異常型 リオン蛋白質の分離、濃縮、及び精製を可 としている。従って、これを組みあわせる とによって、上記の異常型プリオン蛋白質( 感染性プリオン蛋白質)による汚染の検査、 び、ヒト及び動物におけるプリオン病の診 を、さらに効果的に行うことができる。

図1はラクトフェリン固定化ビーズへの 異常型プリオン蛋白質の特異的な結合を示す イムノブロットの結果である。 図2は従来法であるプロテアーゼK処理 よる異常型プリオン蛋白質の識別を示すイ ノブロットの結果である。

 次に、本発明の好ましい実施態様につい 詳細に説明する。ただし、本発明は以下の ましい実施態様に限定されず、本発明の範 内で自由に変更することができるものであ 。尚、本明細書において百分率は特に断り ない限り質量による表示である。

 本発明に係る異常型プリオン蛋白質の検出 法は、好ましい実施態様において、次の工 :
 ラクトフェリンが担体に固定化されてなる 常型プリオン蛋白質結合剤を、試料に接触 せる工程、
 試料に接触させた異常型プリオン蛋白質結 剤から、結合した成分を分離する工程、
 分離した成分に含まれる異常型プリオン蛋 質を検出する工程、
を含む方法として、実施することができる。

 この方法によれば、試料中に含まれてい 異常型プリオン蛋白質を、異常型プリオン 合剤中に固定化されているラクトフェリン よって、特異的に結合(吸着)することがで 、次に、異常型プリオン結合剤中に固定化 れているラクトフェリンと結合した異常型 リオン蛋白質を、分離して回収することが き、このように分離された異常型プリオン 白質を、次に検出することで、異常型プリ ン蛋白質を正常型プリオン蛋白質と区別し 、検出することができる。

 分離した成分に含まれる異常型プリオン 白質を検出する工程は、分離した成分に含 れる異常型プリオン蛋白質を免疫学的検出 によって検出する工程であることが、好ま い。

 好ましい免疫学的検出法としては、ウェ タンブロット法、ELISA法、又は免役沈降法 挙げることができる。

 分離した成分に含まれる異常型プリオン 白質を検出する工程で行われる検出は、上 免疫学的検出法を含めて、異常型プリオン 白質を検出することができる方法であれば く、異常型プリオン蛋白質と正常型プリオ 蛋白質を区別することができない方法であ ても、当然に使用することができる。これ 、本発明においては、それ以前の工程で、 クトフェリンとの結合を行うことによって 異常型プリオン蛋白質に対する特異性は既 確保されているためである。従って、上記 免疫学的検出法においては、異常型プリオ 蛋白質と正常型プリオン蛋白質を区別しな 抗体であっても、当然に使用することがで る。

 ラクトフェリン(lactoferrin:以下、LFと略記 ることがある。)とは、主に母乳中に含まれ ている分子量約80キロダルトンの鉄結合性糖 白質であり、大腸菌、カンジダ菌、クロス リジウム菌、ブドウ球菌等の有害微生物に する抗菌作用や、免疫賦活作用、抗腫瘍作 等、様々な作用をもつ乳タンパク質として られている。ラクトフェリンは乳由来の糖 ンパク質であることから、安全性が高く、 期連用することが可能で、それ自体は殆ど 味無臭であり、各種の食品・医薬品・飼料 添加物として、汎用性が高い。しかし、異 型プリオン蛋白質との特異的な結合能は、 れまで知られていなかった。

 本発明に使用するラクトフェリンは、市 のラクトフェリンや、哺乳動物(例えば、ヒ ト、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ等。)の初乳 移行乳、常乳、末期乳、又はこれらの乳の 理物である脱脂乳、ホエー等を原料とし、 えばイオン交換クロマトグラフィー等の常 により、前記原料から分離して得られるラ トフェリンを用いることができる。中でも 工業的規模で製造されている市販のラクト ェリン(例えば、森永乳業社製)を使用するこ とが好適である。更に、遺伝子工学的手法に より、微生物、動物細胞、トランスジェニッ ク動物等で生産したラクトフェリンを使用す ることも可能である。牛乳由来のホエーは、 乳製品製造の副産物として安定して大量に得 ることができるという利点があるために、本 発明に使用するラクトフェリンの原料として 、特に好適である。

 ここで、ラクトフェリンの調製(乳等の原 料からのラクトフェリンの分離、精製)方法 一例を以下に示す。まず、イオン交換体(た えばCM-セファロースFF(商品名、アマシャム ァルマシア社製))をカラムに充填し、塩酸 通液し、水洗してイオン交換体を平衡化す 。続いて、4℃に冷却したpH6.9の脱脂牛乳を ラムに通液し、透過液を回収し、再度同様 カラムに通液する。次いで、蒸留水をカラ に通液し、食塩水を通液し、イオン交換体 吸着した塩基性蛋白質の溶出液を得る。こ 溶出液に飽和度80%の硫酸アンモニウムを添 し、タンパク質を沈殿させ、遠心分離して 殿物を回収する。回収した沈殿物を、飽和 80%の硫酸アンモニウム溶液で洗浄し、脱イ ン水を添加して溶解し、得られた溶液を限 濾過膜モジュール(たとえばSLP0053(商品名、 化成社製))を用いて脱塩し、凍結乾燥して、 粉末状ウシラクトフェリンを得る。このよう にして、純度が95質量%以上のウシラクトフェ リンが得られる。なお、本明細書におけるラ クトフェリンの純度は液体クロマトグラフ法 により測定して得られる値とする。

 ラクトフェリンは、多くのタンパク質と じく、種、属、個体等の違いによって、1又 は複数の位置での1又は複数の塩基の置換、 失、挿入、付加、又は逆位等の変異が当然 在し、このような変異を有する遺伝子がコ ドするタンパク質のアミノ酸においても変 が生じている場合がある。本発明に用いる とができるラクトフェリンには、異常型プ オン蛋白質との特異的な結合性が損なわれ い範囲において、このような変異を含むも も含有される。

 ラクトフェリンが担体に固定化されてな 異常型プリオン蛋白質結合剤を調製するた に使用することができるラクトフェリンの 定化の方法は、異常型プリオン蛋白質との 異的な結合性が損なわれないものであれば 通常の固定化の方法を使用することができ 。このような方法としては、例えば、ポリ プチドの第一級アミノ基に対して直接に共 結合を形成する方法、ポリペプチドのスル ヒドリル基(チオール基)に対して直接に共 結合を形成する方法等を挙げることができ 。

 ラクトフェリンが担体に固定化されてな 異常型プリオン蛋白質結合剤において、ラ トフェリンが固定化される担体は、所望の 件下で、固体層として操作できるものであ ばよく、タンパク質が固定化されて使用さ る一般的な担体であれば、使用することが きる。このような担体として、例えば、親 性又は疎水性の樹脂を表面に有するものを げることができ、その形状として、例えば 粒子状(ビーズ状)、膜状、繊維状、中空糸 、網状等を挙げることができる。好ましい 体として、ビーズ状(粒子状)の形状のものを 挙げることができる。ビーズ(粒子)の粒径(直 径)は、目的に応じて選択することができる 、例えば、一般に0.5~200μm、好ましくは1.0~100 μm、さらに好ましくは1.0~50μm、さらに好まし くは1.0~20μm、さらに好ましくは1.0~10μm、特に 好ましくは1.0~5.0μmの範囲のものを使用する とができる。

 好ましい態様において、担体として、疎 性又は親水性の樹脂を表面に有するビーズ( 粒子)を使用することができ、このときには ラクトフェリンが担体に固定化されてなる 常型プリオン蛋白質結合活性担体とは、ラ トフェリン固定化ビーズである。このよう 担体を使用すれば、液体中に懸濁して分散 せることができる一方で、操作上の必要に じて沈降させて回収することも容易である

 さらに好ましい態様において、担体とし 、疎水性又は親水性の樹脂を表面に有する ーズ(粒子)であって、その内部(中心部)に磁 性化可能な材料を含むものを使用することが でき、このときには、ラクトフェリンが担体 に固定化されてなる異常型プリオン蛋白質結 合活性担体とは、磁性化可能なビーズを使用 されてなるラクトフェリン固定化ビーズであ る。このような担体を使用すれば、液体中に 懸濁して分散させることができる一方で、操 作上の必要に応じて磁石によって容易に沈降 させて回収することができる。このような操 作は、ラクトフェリン固定化ビーズを、試料 に接触させる工程、結合した成分を分離する 工程、などの工程中において、あるいはその 工程の前後に、作業上の所望に応じて、当業 者が行うことができる。

 試料は、異常型プリオン蛋白質(感染性プ リオン蛋白質)の存在が疑われるあらゆる液 試料を使用することができるが、異常型プ オン蛋白質が存在している場合に十分に分 されているものとなっていることが好まし 。検査の対象が動物組織である場合には、 れが十分に可溶化されていることが好まし 。このように可溶化された試料として、例 ば動物組織に界面活性剤を添加して均一化 て得られた液体試料を挙げることができる このような液体試料のpHは、好ましくは中性 付近であり、一般にpH5.5~7.8、好ましくはpH6.0~ 7.7、特に好ましくはpH6.5~7.6の範囲のpHを好適 使用することができるが、これに限られる のではない。このような液体試料を調製す ために使用される界面活性剤としては、動 組織を可溶化するために一般的に使用され 界面活性剤であれば使用することができる 、可溶化とプリオン蛋白質の高次構造の保 の点から、非イオン性界面活性剤を使用す ことが好ましく、好適に使用可能な界面活 剤としては、例えばtween 20、triton X-100、NP- 40、好ましくは、tween 20、triton X-100、NP-40、 に好ましくはtween 20、NP-40を挙げることが きる。試料は、ラクトフェリンと異常型プ オン蛋白質との特異的な結合性の確保のた に、後述のような条件下で、異常型プリオ 蛋白質結合活性担体と接触できるような液 試料として、調製されていることが好まし 。

 ラクトフェリンと異常型プリオン蛋白質 の特異的な結合性の確保のために、異常型 リオン蛋白質結合活性担体と試料との接触 、一般にpH5.5~7.8、好ましくはpH6.0~7.7、特に ましくはpH6.5~7.6の範囲、一般に3~30℃、好ま しくは3℃~20℃、特に好ましくは3~5℃の範囲 温度、一般に5~300分、好ましくは10~180分、特 に好ましくは15~90分の範囲の接触時間の条件 、好適に行うことができるが、これらの条 に限られるものではない。

 可溶化される動物組織としては、異常型 リオン蛋白質(感染性プリオン蛋白質)の存 が疑われるあらゆる動物組織を使用するこ ができるが、早期診断のためには、異常型 リオン蛋白質の蓄積が多いことが知られて る、哺乳動物の脳、脊髄、眼、及び/又は小 であることが好ましい。

 試料に接触させた異常型プリオン蛋白質 合剤から、結合した成分を分離する工程に いては、蛋白質-蛋白質の相互作用の解離に 一般的に使用される条件のうち、比較的強い 解離条件で解離させて、結合した成分を分離 して溶出させることができる。このような条 件としては、例えば、中性付近のpHで界面活 剤を含有させた溶液によって3~30℃の範囲の 温度で行う条件を挙げることができる。また 、ラクトフェリンと異常型プリオン蛋白質と の特異的な結合を解離するために、ラクトフ ェリンを含有する溶液で溶出させることによ って行うことができる。

 好ましい実施の態様においては、ラクト ェリンが担体に固定化されてなる異常型プ オン蛋白質結合剤を試料に接触させる工程 後であって、試料に接触させた異常型プリ ン蛋白質結合剤から結合した成分を分離す 工程の前に、試料に接触させた異常型プリ ン蛋白質結合剤を、洗浄する工程を設ける とができる。この洗浄は、主として非特異 な吸着をしている成分があった場合に、こ を試料に接触させた異常型プリオン蛋白質 合剤から除去することを目的として行われ ものであり、このような目的で行われる一 的な手法に従って行うことができ、例えば 異常型プリオン蛋白質結合剤に接触させる 料を調製するために使用された溶液であっ 、可溶化された動物組織等が含まれていな 溶液を使用して洗浄することで、行うこと できるが、これに限られるものではない。

 さらに、本発明は、異常型プリオン蛋白質 分離方法にもあり、本発明に係る異常型プ オン蛋白質の分離方法は、好ましい実施の 様において、次の工程:
 ラクトフェリンが担体に固定化されてなる 常型プリオン蛋白質結合剤を、動物組織が 溶化された試料に接触させる工程、
 試料接触処理工程を受けた異常型プリオン 白質結合活性担体から、結合した成分を分 する工程、
を含む方法として、実施することができる。

 この方法によれば、試料中に含まれてい 異常型プリオン蛋白質を、異常型プリオン 合剤中に固定化されているラクトフェリン よって、特異的に結合(吸着)することがで 、次に、異常型プリオン結合剤中に固定化 れているラクトフェリンと結合した異常型 リオン蛋白質を、分離して回収することが きる。これによって異常型プリオン蛋白質 分離、濃縮、及び精製を可能としている。

 上記の本発明に係る異常型プリオン蛋白 の分離方法の実施の態様は、本発明に係る 常型プリオン蛋白質の検出方法の好ましい 施態様として説明した工程のうち、分離し 成分に含まれる異常型プリオン蛋白質を検 する工程を除いて、同じ工程を行うことで 施することができるものとなっている。従 て、異常型プリオン蛋白質の検出方法の好 しい実施の態様に関連して既に述べた内容 、異常型プリオン蛋白質の分離方法の実施 態様においても、そのままあてはめること できる。

 本発明に係るラクトフェリンが含まれて る異常型プリオン蛋白質結合剤は、ラクト ェリンが担体に固定化されてなる異常型プ オン蛋白質結合剤として上述のような実施 態様において使用できるほか、次のような 施の態様においても使用することができる

 すなわち、本発明に係る異常型プリオン蛋 質結合剤の好適な使用の態様として、次の 程:
 ラクトフェリンを、異常型プリオン蛋白質 結合させる工程、
 異常型プリオン蛋白質に結合したラクトフ リンを検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法を 、挙げることができる。

 この異常型プリオン蛋白質の検出方法に れば、ラクトフェリンは特段の修飾を行う となく異常型プリオン蛋白質結合剤として 用することができる。異常型プリオン蛋白 の検出は、結合したラクトフェリンの検出 よって行うことができる。

 ラクトフェリンの検出法としては、一般 に使用されるあらゆる検出方法を使用する とができ、例えば、ラクトフェリンに対す 抗体を使用した免疫学的な検出法を使用す ことができる。

 また、本発明に係る異常型プリオン蛋白質 合剤の好適な使用の態様として、次の工程:
 標識部位を有するラクトフェリンを、異常 プリオン蛋白質に結合させる工程、
 異常型プリオン蛋白質に結合したラクトフ リンの標識部位を検出する工程、
を含む、異常型プリオン蛋白質の検出方法を 、挙げることができる。

 この異常型プリオン蛋白質の検出方法に れば、ラクトフェリンは、あらかじめ標識 位を付しておき、この標識部位を有するラ トフェリンを異常型プリオン蛋白質結合剤 して使用する。異常型プリオン蛋白質の検 は、ラクトフェリンに付された標識部位の 出によって行うことができる。

 標識部位としては、生体高分子に対して一 的に使用される標識部位であれば使用する とができる。このような標識部位として、 えば、蛍光標識、放射線標識、酵素標識を げることができる。蛍光標識としては、例 ば、Alexa Fluor(登録商標)(ベクトンディッキ ソン社製)シリーズの色素、及びCyeDye(登録 標)(ベクトンディッキンソン社製)シリーズ 色素を挙げることができ、例えば、Alexa Fluo r(登録商標)488及びAlexa Fluor(登録商標)647、あ いはCy3、Cy5.5及びCy7を好ましいものとして げることができる。放射線標識としては、 えば、 14 C及び 35 Sを使用した標識を挙げることができる。酵 標識としては、例えば、西洋ワサビペルオ シダーゼ(HRP、HorseRadish Peroxydase)あるいはア カリホスファターゼ(ALP、 Alkaline Phosphatase) を使用した標識を挙げることができる。

 本発明は、さらに、異常型プリオン蛋白 結合剤を使用して異常型プリオン蛋白質の 己会合を阻害する方法、及び異常型プリオ 蛋白質の自己会合阻害剤にもある。異常型 リオン蛋白質は多数の分子が自己会合して 量体を形成すること、おそらくそれによっ プリオン病の病原性が高められることが、 在のところ信じられているが、本発明に係 異常型プリオン蛋白質結合剤は、異常型プ オン蛋白質に特異的に結合してこの自己会 を阻害することができる。一方で、本発明 係る異常型プリオン蛋白質結合剤は、正常 プリオン蛋白質には結合しないために、正 型プリオン蛋白質が有していると思われる 知の生体機能に、悪影響を与えるおそれは い。

 以下に実施例を挙げて本発明を詳細に説 する。本発明は以下の実施例に限定される のではない。

[実施例1]
[ラクトフェリン固定化ビーズによる、感染 からの異常型プリオン蛋白質の検出]
 異常型プリオン蛋白質感染マウス脳を使用 て、以下のようにラクトフェリン固定化ビ ズによる異常型プリオン蛋白質の検出を行 た。

(ラクトフェリン固定化ビーズの作製)
 1 mL のDynabeads M-280 Tosylactivated を1 mLのPBS で2回洗浄した後、これに1 mg ラクトフェリ を0.1M ホウ酸緩衝液1 mLした溶液を加え、37 ℃、24時間転倒混和した。上清を除きDynabeads 1 mLのPBSで2回洗浄し、Dynabeadsに0.1%ラクトフ ェリンを含む0.2 Mトリス塩酸緩衝液(pH 8.5)を 1mL加え、37℃、4時間転倒混和した。
 次に、上清を除きDynabeadsを1 mLの0.1%ラクト ェリンを含むPBSで1回洗浄し、次いで0.1% Twe en 20 を含むPBSで1回洗浄した。
 次に、上清を除きDynabeadsを1 mLの0.1%ラクト ェリンを含むPBSで1回洗浄し、上清を除き、 このようにして得られたラクトフェリン結合 Dynabeads(以下に、ラクトフェリン結合ビーズ 又はラクトフェリン固定化ビーズともいう) 1 mLの0.1%ラクトフェリンを含むPBSで保存し 。

(脳組織を可溶化した試料(脳乳剤)の調製)
 異常型プリオン蛋白質に感染したマウスか 脳を取り出した。異常型プリオン蛋白質感 マウス脳(以下に、感染脳ともいう)をバイ マッシャーに入れ、10,000×g 2分間遠心分離 、回収したペレットにNP-40 RIPAを加え10%(w/v) 乳剤を作成した。これを、4℃で15分インキ ベートした後、攪拌混和し、10,000×g 2分間 心分離して、上清を回収した。回収した上 にNP-40 RIPAを加え、2%(w/v)脳乳剤(脳組織を可 溶化した試料)を調製した。このようにして 感染脳による脳乳剤(以下に感染脳乳剤とも う)を得た。

(ラクトフェリン固定化ビーズによる異常型 リオン蛋白質の分離)
 脳乳剤500μl に、ラクトフェリン結合Dynabead sを20μl加え、4℃で1時間転倒混和した。その 、ビーズを1 mLのNP-40 RIPAにて10分間、3回洗 浄し、さらに、1 mLのNP-40 RIPAにてオーバー イトで洗浄した。
 洗浄したラクトフェリン結合Dynabeadsを回収 、20 μl中性緩衝液(NuPAGE LDSサンプルバッフ ァー(4×)、Invitrogen社製)を加えて、95℃、10分 加熱して試験試料とした。
 なお、ビーズは磁性体のビーズであるため 、ビーズの回収は、操作中に適宜磁石を使 して行った。

(イムノブロットによる検出)
 調製した試験試料は、イムノブロット法に り、プリオンタンパク質の検出を行った。
 すなわち、試験試料を、NuPAGEゲルを用いて 気泳動(40 mA 定電流, 70分)し、次いで、タ ク式転写装置を用いてPVDF膜にゲル中のタン パク質を転写(220 mA 定電流, 60分)した。
 転写後のPVDF膜は、ブロックエース(大日本 薬)を用いて4℃、30分間ブロッキングし、次 で、0.1% Tween20を含むブロックエースで5,000 に希釈したHRP結合抗プリオン蛋白質モノク ーナル抗体(T2-HRP)を含む溶液をPVDF膜に添加 、4℃、1時間インキュベートした。
 抗体と反応させたPVDF膜は、0.1% Tween 20 を むPBSで10分間、3回洗浄し、化学発光検出試 で膜を展開し、画像解析装置を用いて化学 光を検出した。

[比較例1]
[ラクトフェリン固定化ビーズによる、非感 脳からの異常型プリオン蛋白質の検出]
 正常なマウス脳(以下に、正常脳、又は非感 染脳ともいう)を使用して、以下のようにラ トフェリン固定化ビーズによる異常型プリ ン蛋白質の検出を行った。

(ラクトフェリン固定化ビーズの作製)
 実施例1と同様に行った。

(脳組織を可溶化した試料(脳乳剤)の調製)
 異常型プリオン蛋白質に感染したマウスに えて、正常なマウス(非感染マウス)から取 出した脳を使用したことを除き、実施例1と 様に行って、正常脳による脳乳剤(以下に正 常脳乳剤、又は非感染脳乳剤ともいう)を得 。

(ラクトフェリン固定化ビーズによる異常型 リオン蛋白質の分離)
 感染脳乳剤に代えて、非感染脳乳剤を使用 たことを除き、実施例1と同様に行って、試 験試料を得た。

(イムノブロットによる検出)
 感染脳乳剤に由来する試験試料に代えて、 感染脳乳剤に由来する試験試料を使用した とを除き、実施例1と同様に行った。

(結果)
 図1は、実施例1及び比較例1において得られ イムノブロットの結果を示した図である。 ずれのレーンでもプロテアーゼK処理は施し ていない(PK-)。

 レーン1、2及び3は、感染脳乳剤に対して クトフェリン固定化ビーズによる異常型プ オン蛋白質の分離を行って得られた試験試 によるもの(実施例1)である。レーン1の試料 を10倍希釈してイムノブロットしたレーンが ーン2であり、レーン1の100倍希釈がレーン3 ある。レーン4は、非感染脳乳剤に対してラ クトフェリン固定化ビーズによる異常型プリ オン蛋白質の分離を行って得られた試験試料 によるもの(比較例1)である。

 レーン1、2及び3においては、濃度依存的 プリオン蛋白質のバンドが観察され、レー 1の100倍希釈であるレーン3においても、明 にプリオン蛋白質のバンドが観察される。 れは試料の由来から、異常型プリオン蛋白 を示している。すなわち、ラクトフェリン 定化ビーズとの結合によって、感染脳に由 する異常型プリオン蛋白質が分離され、検 された。

 一方、レーン4においては、操作的にレー ン1と同程度の濃度となっている試料である もかかわらず、プリオン蛋白質のバンドは 察されない。すなわち、ラクトフェリン固 化ビーズとの結合によっては、非感染脳に 来する正常型プリオン蛋白質は、回収され ことはなく、検出されることはなかった。

 以上から、感染脳に由来する異常型プリ ン蛋白質は、ラクトフェリン固定化ビーズ 特異的に結合すること、非感染脳に由来す 正常型プリオン蛋白質は、ラクトフェリン 定化ビーズに結合しないことがわかった。 らに、ラクトフェリン固定化ビーズを使用 て、異常型プリオン蛋白質を、正常型プリ ン蛋白質から分離回収して得ることができ これによって、異常型プリオン蛋白質を検 することができることがわかった。

[比較例2]
[プロテアーゼKを使用した、異常型プリオン 白質の検出]
 プロテアーゼKを使用して行う従来の方法に よって、異常型プリオン蛋白質を正常型プリ オン蛋白質から区別して検出する実験(比較 2)を、以下のように行った。

(脳乳剤の調製)
 異常型プリオン蛋白質に感染したマウスの (以下に感染脳ともいう)、及び非感染マウ (正常マウス)の脳(以下に非感染脳、又は正 脳ともいう)を用意し、これらのマウス脳を れぞれバイオマッシャーに入れ、10,000×g 2 間遠心分離し、回収したペレットにNP-40 RIP Aを加え10%(w/v)脳乳剤を作成した。これを、4 で15分インキュベートした後、攪拌混和し、 10,000×g 2分間遠心分離して、上清を回収した 。回収した上清にNP-40 RIPAを加え、0.5%(w/v)脳 剤に調整して、感染脳乳剤、及び非感染脳 剤を得た。

(プロテアーゼKによる酵素分解処理)
 これらの脳乳剤500μl に、プロテイナーゼK 最終濃度20 μg/mlとなるように添加し、37℃ 30分間インキュベートした。反応後、プロ イナーゼK阻害剤(Pefablock)を5 μl加え、さら Buthanol-Methanol solutionを250μl 加え、攪拌混和 した後、20,000×g、10分間遠心分離した。遠心 離後、ペレットに50 μl中性緩衝液(NuPAGE LDS サンプルバッファー(4×)、Invitrogen社製)を加 95℃、10分間加熱して、それぞれ感染脳乳剤 来の試料、及び非感染脳乳剤由来の試料を た。

(イムノブロットによる検出)
 上記のようにして得た、プロテアーゼKによ る酵素分解処理を行った感染脳乳剤(プロテ ーゼK処理感染脳乳剤)、プロテアーゼKによ 酵素分解処理を行った非感染脳乳剤(プロテ ーゼK処理非感染脳乳剤)、さらに、プロテ ーゼKによる酵素分解処理を行っていない感 脳乳剤(もとの感染脳乳剤)、プロテアーゼK よる酵素分解処理を行っていない非感染脳 剤(もとの非感染脳乳剤)の4種類の試料に対 て、イムノブロット法により、プリオンタ パク質の検出を行った。
 すなわち、試料を、NuPAGEゲルを用いて電気 動(40 mA 定電流, 70分)し、次いで、タンク 転写装置を用いてPVDF膜にゲル中のタンパク 質を転写(220 mA 定電流, 60分)した。
 転写後のPVDF膜は、ブロックエース(大日本 薬)を用いて4℃、30分間ブロッキングし、次 で、0.1% Tween20を含むブロックエースで5,000 に希釈したHRP結合抗プリオン蛋白質モノク ーナル抗体(T2-HRP)を含む溶液をPVDF膜に添加 、4℃、1時間インキュベートした。
 抗体と反応させたPVDF膜は、0.1% Tween 20 を むPBSで10分間、3回洗浄し、化学発光検出試 で膜を展開し、画像解析装置を用いて化学 光を検出した。

(結果)
 図2は、比較例2において得られたイムノブ ットの結果を示した図である。レーン1及び2 は、プロテアーゼKによる酵素分解処理を行 ていないレーン(PK-)であり、レーン3及び4は プロテアーゼKによる酵素分解処理を行った (PK+)レーンである。

 レーン1は、プロテアーゼKによる酵素分 処理を行っていない感染脳乳剤(もとの感染 乳剤)を試料としたレーンである。レーン2 、プロテアーゼKによる酵素分解処理を行っ いない非感染脳乳剤(もとの非感染脳乳剤) 試料としたレーンである。レーン3は、プロ アーゼKによる酵素分解処理を行った感染脳 乳剤(プロテアーゼK処理感染脳乳剤)を試料と したレーンである。レーン4は、プロテアー Kによる酵素分解処理を行った非感染脳乳剤( プロテアーゼK処理非感染脳乳剤)を試料とし レーンである。

 レーン1及び2では、イムノブロットによ てプリオンタンパク質のバンドが検出され おり、プロテアーゼK未処理の状態では、異 型プリオン蛋白質(レーン1)であっても、正 型プリオン蛋白質(レーン2)であっても、い れも検出されることが示されている。これ 対して、レーン3及び4では、イムノブロッ によって、異常型プリオン蛋白質(レーン3) みにバンドが検出され、正常型プリオン蛋 質(レーン4)にはバンドが検出されていない とから、プロテアーゼK処理によって、異常 プリオン蛋白質と正常型プリオン蛋白質と 区別し、異常型プリオン蛋白質のみを検出 ることができることが示されている。

 以上に示された比較例2の結果(図2)を、実 施例1及び比較例1で得られた結果(図1)と比較 よって次のことがわかった。すなわち、ラ トフェリン固定化ビーズによる異常型プリ ン蛋白質と正常型プリオン蛋白質との識別 、プロテアーゼKを使用した従来の方法と同 程度以上に、確実性と信頼性があることがわ かった。

 本発明によれば、動物に由来する原材料 使用した飲食品及び医薬品に対して、異常 プリオン蛋白質(感染性プリオン蛋白質)に る汚染の検査を、従来よりも、簡便に迅速 つ高感度で定量的に、さらに低コストで行 ことができる。また、ヒト及び動物におけ プリオン病の診断を、従来よりも、簡便に 速且つ高感度で定量的に、さらに低コスト 行うことができる。これによって、ヒト及 動物へのプリオン病の感染防止や早期診断 いう社会の要請に応えることができる。本 明は、このように産業上の利用可能性を有 るものである。