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Title:
AGENT FOR IMPROVING DYSFUNCTION DUE TO NEUROPATHY AND RHO KINASE ACTIVATION INHIBITOR
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/005033
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a substance which can be used as an active ingredient for improving dysfunction due to neuropathy. An agent for improving dysfunction due to neuropathy of the invention as a means for resolution is characterized by containing endo-β-N-acetylglucosaminidase type enzyme capable of hydrolyzing an N-acetylglucosaminide linkage in a keratan sulfate sugar chain skeleton as an active ingredient. By administering the improving agent of the invention, clinical improvement is obtained in motor neuron dysfunction to be treated or sensory neuron dysfunction such as neuropathic pain typified by pain due to allodinia or hyperalgesic response.

Inventors:
KADOMATSU KENJI (JP)
MATSUYAMA YUKIHIRO (JP)
TANAKA AKIOMI (JP)
TAKESHITA SAWAKO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/061834
Publication Date:
January 08, 2009
Filing Date:
June 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV NAGOYA NAT UNIV CORP (JP)
SEIKAGAKU KOGYO CO LTD (JP)
KADOMATSU KENJI (JP)
MATSUYAMA YUKIHIRO (JP)
TANAKA AKIOMI (JP)
TAKESHITA SAWAKO (JP)
International Classes:
A61K38/46; A61P21/00; A61P21/02; A61P25/00; A61P25/02; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2004103299A22004-12-02
Foreign References:
JP2006290842A2006-10-26
JP2726274B21998-03-11
JP3734504B22006-01-11
JP2004024189A2004-01-29
JP2006290842A2006-10-26
JP2726274B21998-03-11
JP3734504B22006-01-11
US5840546A1998-11-24
EP0798376B12004-02-18
JP2004024189A2004-01-29
JP3980657B22007-09-26
US6184023B12001-02-06
US5773277A1998-06-30
US5763205A1998-06-09
US5578480A1996-11-26
JP2007520447A2007-07-26
US20060233782A12006-10-19
Other References:
See also references of EP 2174661A4
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YAMAGATA, T. ET AL., J. BIOL. CHEM., vol. 243, 1968, pages 1523 - 1535
HAMAI A. ET AL., J. BIOL. CHEM., vol. 272, 1997, pages 9123 - 9130
KIYOSHI NAKAZAWA; SAKARU SUZUKI, J. BIOL. CHEM., vol. 250, no. 3, 1975, pages 912 - 917
BASSO, D. M.; BEATTIE, M. S.; BRESNAHAN, J. C.: "Graded histological and locomotor outcomes after spinal cord contusion using the NYU weight-drop device versus transection", EXP. NEUROL., vol. 139, 1996, pages 244 - 256
CHAPLAN, S. R.; BACH, F. W.; POGREL, J. W.; CHUNG, J. M.; YAKSH, T. L.: "Quantitative assessment of tactile allodynia in the rat paw.", J. NEUROSCI. METHODS, vol. 53, 1994, pages 55 - 63
Attorney, Agent or Firm:
TSUJITA, Takashi et al. (11-12 Takada 3-chome,Toshima-k, Tokyo 33, JP)
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Claims:
 ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素を有効成分とすることを特徴とする神経障害に基づく機能不全の改善剤。
 神経障害が脊髄損傷に伴うものであることを特徴とする請求項1記載の改善剤。
 神経障害が筋萎縮性側索硬化症であることを特徴とする請求項1記載の改善剤。
 神経障害に基づく機能不全が運動神経機能不全であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の改善剤。
 神経障害に基づく機能不全が知覚神経機能不全であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の改善剤。
 知覚神経機能不全が神経因性疼痛であることを特徴とする請求項5記載の改善剤。
 神経因性疼痛がアロデニア又は痛覚過敏反応に基づく疼痛であることを特徴とする請求項6記載の改善剤。
 ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素を有効成分とすることを特徴とする神経因性疼痛の改善剤。
 ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素を有効成分とすることを特徴とするRhoキナーゼ活性化抑制剤。
 ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合を加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素を、ヒト成人、一日当たり、0.3ミリユニット(mU)~15000 mUの用量で、神経障害部位に持続投与するための、該酵素を有効成分として含む神経障害適用剤。
 
 
Description:
神経障害に基づく機能不全の改 剤およびRhoキナーゼ活性化抑制剤

 本発明は、神経障害に基づく機能不全の 善剤およびRhoキナーゼ活性化抑制剤に関す 。

 ヒトの中枢神経系(CNS)において、脊髄損 、脳血管障害、脳外傷などによっていった 損傷を受けた神経軸索を再生することは極 て困難であり、一度運動機能や知覚機能の 落症状が起こってしまうとその回復は難し 、生涯にわたって後遺症に苦しまなければ らない。このことは当業者にはもちろんの と、一般にもよく知られた事実であるが、 年、その理由が次第に明らかにされつつあ 。神経機能の回復のためには、損傷によっ 離断した神経軸索が損傷部を超えて伸長し 二次ニューロンにシナプス形成を行うこと よる神経回路の再生が必要である。しかし がら、中枢神経系を取り巻く環境には、無 序なシナプス形成を防ぐための複数の神経 索の再生抑制因子を介した再生阻害機構が わっており、この機構が神経回路の再生の 魔をする。コンドロイチン硫酸プロテオグ カンは、神経軸索の再生抑制因子の一つと て知られ、損傷部位における神経軸索の伸 を阻害することが報告されている(例えば非 許文献1)。また、特許文献1では、神経軸索 伸長を阻害するグリア性瘢痕の形成にケラ ン硫酸が重要な働きを示すことが、脳にお るケラタン硫酸の生合成に必要なN-アセチ グルコサミン6-O-硫酸転移酵素1(GlcNAc6ST-1)遺 子をノックアウトしたマウスを用いた脳損 モデルによる実験により明らかにされてい 。そして、同文献では、損傷部位において ラタン硫酸が発現しないことがグリア性瘢 の形成の抑制をもたらすという実験結果か 、ケラタン硫酸の合成や生理活性を阻害す 物質は神経障害の予防や治療に有効である 提唱されている。

 また、知覚神経機能不全のうち、QOL(Quality  of Life)を著しく低下させる症状として、神経 因性疼痛の発現が挙げられる。神経因性疼痛 とは、中枢神経、または末梢神経が障害され ることに起因する痛みで、自発痛、侵害性刺 激に対する閾値が低下する痛覚過敏反応、通 常痛みを引き起こさない非侵害性の機械刺激 や触覚刺激を激痛として誤認識するメカニカ ル・アロデニア等の症状からなる。神経因性 疼痛を発現する疾患としては、中枢性として 脳障害、多発性硬化症、脊髄損傷などが、末 梢性の疾患としては糖尿病、帯状疱疹などが 挙げられる。神経因性疼痛の中でもアロデニ ア(Allodynia)は、難治性の燃えるような痛み、 すような痛みが長期間、持続的に続くこと 特徴とし、痛みによるリハビリテーション 効果低減などの原因にもなっている。神経 性疼痛に対する薬物療法は、未だに満足す ものはほとんどないといってよく、薬効、 全性の両者を満足する薬物の開発が望まれ いる。しかしながら、薬剤の開発は思うよ には進んでいない。その原因としては、発 機序が複雑に絡み合って、ひとつではない 思われることが挙げられる。アロデニアの 症メカニズムの詳細は今なお不明であるが 近年、痛み物質として知られているATP(アデ ノシン三リン酸)に関する知見が報告され始 ている。ATPは脊髄ミクログリアを強力に活 化し、異常神経回路形成を助長する種々の ディエーターの産生増強、細胞骨格の再構 に伴うシナプス輸送や神経伝達物質の放出 引き起こし、神経因性疼痛に関与すること 分かってきたが、そのATPは、Rhoファミリー ひとつであるRacをも活性化する(非特許文献2 )。
 また、神経損傷により脊髄後角の脊髄ミク グリアが活性化し、そこに強度に発現したP 2X4受容体の刺激が、神経因性疼痛を引き起こ すことが明らかとなり、これら活性化のカス ケードの一つの経路として、Rhoキナーゼシグ ナル伝達系の関与が提唱されている(非特許 献2)。

特開2006-290842号公報 Niederost,B.P., Zimmermann,D.R., Schwab,M.E. & Bandtlow,C.E. Bovine CNS myelin contains neurite grow th-inhibitory activity associated with chondroitin sulf ate proteoglycans. J. Neurosci. 19, 8979-8989 (1999). Honda, S. et al., 2001. Extracellular ATP or A DP Induce Chemotaxis of Cultured Microglia through Gi /o-Coupled P2Y Receptors. J. Neurosci. 21(6), 1975-198 2.

 以上のように、神経障害の予防や治療のた の研究開発は日々、精力的に行われている ころであるが、残念ながら現状においては ずしも満足できる成果が得られているわけ はない。事実、上記のように特許文献1にお いてはケラタン硫酸の合成や生理活性を阻害 する物質が神経障害の予防や治療に有効であ ると提唱されているものの、具体的な物質が 実際に有効であるとの結果を得るまでには至 っていない。
 そこで本発明は、神経障害に基づく機能不 の改善の有効成分となり得る物質を提供す ことを目的とする。

 本発明者らは上記の点に鑑みて鋭意研究を った結果、ケラタン硫酸分解酵素の1つであ るケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグル サミニド結合を加水分解するエンド-β-N-ア チルグルコサミニダーゼ型酵素が、運動神 機能不全や知覚神経機能不全(アロデニアや 痛覚過敏反応に基づく疼痛に代表される神経 因性疼痛等)といった神経障害に基づく機能 全を改善すること、この作用はケラタン硫 によるRhoキナーゼ活性化の抑制を介してい ことを見出した。
 そして、本発明者らは、ケラタン硫酸糖鎖 格中のN-アセチルグルコサミニド結合を加 分解するエンド-β-N-アセチルグルコサミニ ーゼ型酵素(以下、「エンド-β-N-アセチルグ コサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解酵素」 いうこともある。)を、神経障害、例えば脊 髄損傷の直後から、持続的に個体の損傷部位 に投与し、ケラタン硫酸プロテオグリカンの ケラタン硫酸鎖を除去することが、プロテオ グリカンによる神経細胞やグリア細胞等の非 神経細胞の持続的な異常活性化を解除し、こ れがプロテオグリカンによる神経軸索ガイダ ンス機能の解除につながり、ひいては神経因 性疼痛の治療効果につながるとの発想を得た 。該発想に基づき、本発明者らは、ラット脊 髄損傷モデル髄腔内の損傷部位に、エンド-β -N-アセチルグルコサミニダーゼ型ケラタン硫 酸分解酵素を持続投与することにより、運動 神経機能及び知覚神経機能の改善を促し、特 に後者の改善により、神経因性疼痛、特にア ロデニアを改善しうることを初めて見出した 。

 上記の知見に基づいてなされた本発明の神 障害に基づく機能不全の改善剤(以下、本発 明改善剤ともいう。)は、請求項1記載の通り ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチルグル サミニド結合を加水分解するエンド-β-N-ア チルグルコサミニダーゼ型酵素を有効成分 することを特徴とする。
 また、請求項2記載の改善剤は、請求項1記 の改善剤において、神経障害が脊髄損傷に うものであることを特徴とする。
 また、請求項3記載の改善剤は、請求項1記 の改善剤において、神経障害が筋萎縮性側 硬化症であることを特徴とする。
 また、請求項4記載の改善剤は、請求項1乃 3のいずれかに記載の改善剤において、神経 害に基づく機能不全が運動神経機能不全で ることを特徴とする。
 また、請求項5記載の改善剤は、請求項1乃 3のいずれかに記載の改善剤において、神経 害に基づく機能不全が知覚神経機能不全で ることを特徴とする。
 また、請求項6記載の改善剤は、請求項5記 の改善剤において、知覚神経機能不全が神 因性疼痛であることを特徴とする。
 また、請求項7記載の改善剤は、請求項6記 の改善剤において、神経因性疼痛がアロデ ア又は痛覚過敏反応に基づく疼痛であるこ を特徴とする。
 また、本発明の神経因性疼痛の改善剤は、 求項8記載の通り、ケラタン硫酸糖鎖骨格中 のN-アセチルグルコサミニド結合を加水分解 るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ 酵素を有効成分とすることを特徴とする。
 また、本発明のRhoキナーゼ活性化抑制剤(以 下、本発明抑制剤ともいう。)は、請求項9記 の通り、ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセ ルグルコサミニド結合を加水分解するエン -β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素を 効成分とすることを特徴とする。
 また、本発明の神経障害適用剤は、請求項1 0記載の通り、ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-ア セチルグルコサミニド結合を加水分解するエ ンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素 を、ヒト成人、一日当たり、0.3ミリユニット (mU)~15000 mUの用量で、神経障害部位に持続投 するための、該酵素を有効成分として含む

 本発明によれば、エンド-β-N-アセチルグ コサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解酵素が 脊髄損傷等の神経障害に基づく運動神経や 覚神経の機能不全の改善剤、具体的には例 ば、神経因性疼痛の改善剤のための有効成 として提供される。また、エンド-β-N-アセ ルグルコサミニダーゼ型ケラタン硫酸分解 素の特定量を含む、神経障害部位に持続投 するための神経障害適用剤が提供される。

実施例1の実験結果その1:Bcケラタナー IIの後肢運動神経機能評価(BBBテスト)におけ 治療効果の用量反応を示すグラフである。 同、Ks36ケラタナーゼIIの治療効果の用 反応を示すグラフである。 同、投与濃度が0.05 U/200 μLの場合のBc ラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIの治療効 の比較を示すグラフである。 同、投与濃度が0.000025 U/200 μLの場合 BcケラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIの治療 果の比較を示すグラフである。 同、投与濃度が0.05 U/200 μLの場合にお けるBcケラタナーゼII、不活性化Bcケラタナー ゼII、Psケラタナーゼの治療効果の比較を示 グラフである。 実施例1の実験結果その2:後肢運動神経 能評価(グリッドテスト)における投与濃度 0.05 U/200 μLの場合のBcケラタナーゼIIとKs36 ラタナーゼIIの治療効果の比較を示すグラフ である。 同、投与濃度が0.0000 25U/200 μLの場合 BcケラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIの治療 果の比較を示すグラフである。 実施例1の実験結果その3:後肢運動神経 能評価(フットプリントテスト)における投 濃度が0.05 U/200 μLの場合のBcケラタナーゼII とKs36ケラタナーゼIIの治療効果の比較を示す グラフである。 実施例1の実験結果その4:サーマル・ア デニア治療/改善効果の評価(テイルフリッ テスト)における投与濃度が0.05 U/200 μLの場 合のBcケラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIの 療/改善効果の比較を示すグラフである。 実施例1の実験結果その5:メカニカル・ アロデニア治療/改善効果の評価(タッチテス )における投与濃度が0.05 U/200 μLの場合のBc ケラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIの治療/改 善効果の比較を示すグラフである。 実施例2の実験その1:Ks36ケラタナーゼII のケラタン硫酸による神経軸索の伸長阻害作 用に対する解除効果を示すグラフである。 実施例2の実験その2:ケラタン硫酸によ る神経軸索の伸長阻害作用に対するY27632(Rho ナーゼ阻害剤、シグマ社)の解除効果を示す 光顕微鏡写真である。 同、Ks36ケラタナーゼIIのRhoキナーゼ活 性化抑制作用を示すグラフである。 実施例3におけるALSモデルマウスの脊 におけるケラタン硫酸の発現を示すウェス ンブロッティングの結果である。 同、ケラタン硫酸のミクログリアでの 発現を示す蛍光顕微鏡写真である。

 本発明改善剤は、ケラタン硫酸糖鎖骨格中 N-アセチルグルコサミニド結合を加水分解 るエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ 酵素(エンド-β-N-アセチルグルコサミニダー 型ケラタン硫酸分解酵素)を有効成分とする ことを特徴とするものである。ケラタン硫酸 糖鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合 加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサ ニダーゼ型酵素は、ケラタナーゼIIとの別 を持つケラタン硫酸分解酵素であり、それ 体は公知の物質である(以降、ケラタン硫酸 鎖骨格中のN-アセチルグルコサミニド結合 加水分解するエンド-β-N-アセチルグルコサ ニダーゼ型酵素をケラタナーゼIIと略称する )。ケラタナーゼIIは微生物由来の酵素であり 、バチルス属細菌Ks36株(微生物の受託番号:FER M P-10204)が産生することが知られている(必要 であれば特許第2726274号公報を参照のこと。 降、Ks36株が産生するケラタナーゼIIをKs36ケ タナーゼIIと略称する)。また、至適反応温 が50~60℃の熱安定性に優れた耐熱性ケラタ ーゼIIも知られており、この酵素はバチルス ・サーキュランスKsT202株(微生物の受託番号:F ERM BP-5285)が産生することが知られている(以 、耐熱性ケラタナーゼIIをBcケラタナーゼII 略称する)。BcケラタナーゼIIは、ケラタン 酸を分解して、主に、硫酸化ケラタン硫酸 糖及びケラタン硫酸四糖を生成することを 徴とする(必要であれば特許第3734504号、米国 特許第5,840,546号、ヨーロッパ特許第0798376 B1 の公報を参照のこと)。また、Bcケラタナー IIは、例えばバチルス・サーキュランスKsT20 2株からクローニングされた耐熱性ケラタナ ゼII遺伝子を、大腸菌等の宿主に組み込んで 生産した遺伝子組換え型耐熱性ケラタナーゼ IIであってもよい(必要であれば特開2004-24189 公報やGenBank: ACCESSION No. AY188989 http://www.ncb i.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?db=nuccore&id=32454884 参照のこと。以降、遺伝子組換え型耐熱性 ラタナーゼIIをrBCケラタナーゼIIと略称する )。上記特開2004-24189号公報に記載されたrBCケ タナーゼIIの全アミノ酸配列を配列番号1と て添付する。
 Ks36ケラタナーゼIIと、BcケラタナーゼIIは、 ともにエンド-β-N-アセチルグルコサミニダー ゼ型酵素ではあるが、高濃度のケラタンポリ 硫酸(硫酸化度の高いケラタン硫酸)に対する 応性、至適pH、pH安定性、至適温度、温度安 定性、および薬剤による阻害の影響等が異な ることから、本質的には異なった酵素である と言える(必要であれば特許第3734504号、米国 許第5,840,546号、ヨーロッパ特許第0798376 B1 の公報を参照のこと)。本発明における神経 害に基づく機能不全の改善剤の有効成分と る酵素としては、この2種類の酵素が好適に 挙げられるが、BcケラタナーゼIIが好ましく rBCケラタナーゼIIがより好ましい。
 なお、本発明において使用されるケラタナ ゼIIは、ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-アセチ ルグルコサミニド結合を加水分解するエンド -β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素であ る限り、上記例示酵素に限定されるものでは なく、その由来、酵素学的性質も限定されな い。

 ケラタナーゼIIは、脊髄損傷に伴う神経 害や筋萎縮性側索硬化症などの様々な神経 害に基づく運動神経機能不全や知覚神経機 不全などを改善するが、この作用はケラタ 硫酸によるRhoキナーゼ活性化の抑制を介し ものである。Rhoキナーゼ(ROCK)は、細胞質に 在し、結合したGTP(グアノシン三リン酸)を加 水分解する活性を有する低分子量GTPase(グア シン三リン酸フォスファターゼ)であり、ア チン骨格系あるいはチューブリンを制御す ことによって細胞の形や運動などの様々な 御を行う重要なリン酸化酵素である。この 素は1990年代に発見され、Rhoなどのいくつか の細胞内因子によって活性化される。Rhoキナ ーゼシグナル伝達系が活性化されることで、 アクチン骨格系が不活化し、結果的に神経軸 索の伸長が阻害され、成長円錐の崩壊が引き 起こされる。ケラタン硫酸によって誘導され る神経軸索の伸長阻害がRhoキナーゼ活性化を 伴うこと、ケラタナーゼIIの神経障害に基づ 機能不全の改善作用がこのRhoキナーゼ活性 の抑制を介していることは、今回、本発明 らによって初めて見出された知見であり、 の知見をもとに、本発明は、Rhoキナーゼシ ナル伝達系の制御をコンセプトとした新規 神経障害に基づく機能不全の改善剤を提供 る。

 本発明改善剤または本発明抑制剤(以下、 これらをまとめて本発明薬剤ともいう。)の 効成分である、Ks36ケラタナーゼIIやBcケラタ ナーゼIIに例示されるケラタナーゼIIは、通 の非経口酵素製剤と同様に常法によって非 口製剤に製剤化され、目的とする疾患に応 た投与経路で哺乳動物(例えばヒト、非ヒト 長類、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、ウ 、ブタ、イヌ、ネコなど)に非経口的に投与 され、当該動物の目的疾患の治療または予防 に使用される。

 非経口製剤としては液体製剤(溶液製剤、 懸濁剤、点眼剤、点鼻薬、脳、髄腔内や皮膚 への局所注入剤等)、固体製剤(凍結乾燥製剤 粉末製剤、顆粒製剤、マイクロカプセル、 ポソーム、リポスフェア等)、半固体製剤( 膏等)が挙げられる。例えば、本発明薬剤を 体製剤として製造する場合、注射用水、医 上許容される添加物もしくは担体、例えば 張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、グ リセリン、マンニトール、ソルビトール、ホ ウ酸、ホウ砂、ブドウ糖、プロピレングリコ ールなど)、緩衝剤(リン酸緩衝液、酢酸緩衝 、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩 液、トリス緩衝液、グルタミン酸緩衝液、 プシロンアミノカプロン酸緩衝液など)、保 存剤(パラオキシ安息香酸エステル類、クロ ブタノール、ベンジルアルコール、塩化ベ ザルコニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、 デト酸ナトリウム、ホウ酸、ホウ砂など)、 イオン界面活性剤(例えば、ポリオキシエチ レンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシ エチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステ ル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレ ングリコール)、増粘剤(ポリビニルアルコー など)、安定化・活性保持剤(血清アルブミ 、ゼラチン、シュークロース、ポリエチレ グリコール、デキストラン類、ラクトース マルトース、マンニトール、キシリトール ソルビトール、イノシトール、エデト酸ナ リウム、クエン酸ナトリウム、アスコルビ 酸など)、pH調整剤(塩酸、水酸化ナトリウム リン酸、酢酸など)、溶解補助剤、酸化防止 剤、容器への吸着を防止するために有効な物 質などを適宜添加した溶液に、医薬的に許容 されるグレードのケラタナーゼIIを溶解また 分散することによって製造することができ 。また、このような液体製剤を、ケラタナ ゼIIの活性等、薬理学的機能に影響を及ぼ ない乾燥方法(凍結乾燥等)で乾燥し、用時溶 解型の固体製剤とすることができる。具体的 な例としては、医薬的に許容されるグレード のケラタナーゼIIを生理食塩液、注射用水、 張液、油性液等に溶解もしくは懸濁するな して液体製剤とすることができる。

 以上のごとく製剤化された本発明薬剤を 目的疾患、症状の程度、投与対象等に応じ 投与方法で投与し、神経障害に基づく機能 全を改善、治癒または予防することができ 。例えば、神経障害を受けた部位またはそ 周辺に局所的に投与する投与方法が挙げら 、好ましい。より具体的には、マイクロチ ーブを用いて浸透圧ポンプによってクモ膜 腔内(髄腔内)に持続投与することができ、 のような持続投与法が本発明の目的を考慮 ると好ましい。

 本発明薬剤の投与量、投与期間は、目的疾 、投与対象の動物種、年齢や体重、症状の 度、健康状態などの条件によって医師等の 療専門家によって適宜設定されるべきもの 、特に限定はされない。すなわち、障害部 におけるRhoキナーゼの活性化を抑制し、あ いはグリア性瘢痕におけるケラタン硫酸プ テオグリカンのケラタン硫酸鎖を分解する に有効な量および期間であればよい。
 脊髄損傷のモデルにおいて、ラット(体重:0. 3キログラム/脳脊髄液量:0.3 mL)における本発 改善剤の一日当たりの髄腔内投与量は、ケ タナーゼIIの酵素単位として約1.5マイクロ ニット(μU)(0.000025 U/200 μL)~30ミリユニット(m U)、好ましくは約0.3 mU(0.005 U/200 μL)~10 mU、 も好ましくは約3.0 mU(0.05 U/200 μL)である。 ここで、カッコ内のU/200 μLは濃度を表し、 濃度の酵素液剤を1日あたり、12 μL投与する 。
 これを、ラットの体重を0.3キログラムとし 脳脊髄液量を0.3 mLとして、ヒト成人(体重:6 0キログラム/脳脊髄液量:150 mL)に換算すると 体重換算で約200倍、硬膜内へ直接投与する とを考慮して、脳脊髄液量で換算すると約5 00倍となる。したがって、ヒト成人(平均的な 体重60キログラム/平均的な脳脊髄液量150 mL) の投与量は、以下の通りとなる。
 体重換算の場合、一日当たりの髄腔内投与 として、約0.3 mU~6000 mU、好ましくは約60 mU ~2000 mU、最も好ましくは約600 mUである。
 また、脳脊髄液量換算の場合、一日当たり 髄腔内投与量は、約0.75 mU~15000 mU、好まし は約150 mU~5000 mU、最も好ましくは約1500 mU ある。
 したがって、上記の換算法を総合的に考慮 ると、一日当たりの髄腔内投与量は、約0.3 mU~15000 mU、好ましくは約60 mU~5000 mU、最も ましくは約600 mU~1500 mUである。
 投与期間は、損傷部位におけるケラタン硫 プロテオグリカンの発現量、有害事象の発 等の可能性を考慮し、症状に応じて医師等 医療専門家が決定すべきことではあるが、 の目安としては、持続投与においては受傷 約8週間まで、好ましくは約4週間まで、よ 好ましくは約2週間までである。投与開始時 は、受傷直後乃至受傷後3日から一週間経過 後程度であることが好ましい。
 なお、有効成分であるケラタナーゼIIの好 しい比活性は、約2 U/mgタンパク質以上なの 、上記の一日当たりの髄腔内投与量は、酵 タンパク質重量としては、約0.3 mUは約0.15 イクログラム(μg)以下、15000 mUは約7500 μg以 下、60 mUは約30 μg以下、5000 mUは約2500 μg以 下、600 mUは約300 μg以下、1500 mUは約750 μg 下に相当する。なお、酵素量1ユニット(1 U) 、サメ軟骨由来のケラタンポリ硫酸を基質 し、37℃で10分間反応させたときに、1分間 1 μmolのガラクトースに相当する還元末端を 生成する酵素量として定義される(必要であ ば特開2004-24189号公報を参照のこと)。

 なお、本発明薬剤の単位製剤当たりの酵 量または濃度は上記投与量に応じて設定さ るが、製剤は必ずしも投与時の酵素量また 濃度とする必要はなく、例えば、投与直前 るいは投与時に、希釈液によって有効かつ 全な濃度に希釈してもよい。したがって、 発明はこのような希釈液と、上記本発明薬 との組み合わせによるキットも提供する。

 本発明薬剤は人体等への投与を目的した 薬品であるため、有効成分であるケラタナ ゼIIは医薬的に許容されるグレードのもの あり、エンドトキシン、核酸、プロテアー 等の本酵素産生微生物に由来する不純物が 力除かれたものであることが好ましい。エ ドトキシン、核酸、プロテアーゼは通常の 析法で検出限界以下であることが好ましく 例えば、エンドトキシン量は、生化学工業( )製のトキシカラー(登録商標)システムを用 て測定した場合、5.0 pg/100 U以下であるこ が望ましい。また、核酸はスレッシュホー ド法(DNA測定装置:スレッシュホールド(モレ ュラーデバイス社製))で測定した場合、検出 限界以下であることが望ましい。プロテアー ゼは、FITC-カゼインを基質として測定した場 、全蛋白量に対して0.1%以下であることが好 ましい。

 本発明改善剤は、脊髄および脳を含む中 神経(CNS)系または末梢神経系の急性障害、 急性障害または慢性障害に基づく機能不全 改善、治癒または予防に使用される。本発 改善剤の対象疾患としては、中枢神経の挫 、外傷性脳損傷、その他の脳損傷、脳卒中 筋萎縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS) 腕神経叢損傷、ambliophia、脊髄損傷、アルツ イマー病、パーキンソン病を含む神経損傷 神経変性疾患又は神経機能不全が挙げられ が、これに限定されるものではない。脊髄 傷は、交通事故、墜落、挫傷、銃創、およ その他の傷害によってもたらされたニュー ンの挫滅などの疾患および外傷性損傷を含 。本発明改善剤を投与することにより、治 対象(患者)の運動神経機能不全(運動神経の 能不全、障害、麻痺に基づく四肢体幹運動 能障害など)や、アロデニアや痛覚過敏反応 に基づく疼痛に代表される神経因性疼痛等の 知覚神経機能不全(知覚神経の機能不全、障 、麻痺に基づく神経過敏、異常感覚、手足 痺れ、顔面神経麻痺など)において臨床的な 善が得られる。

 なお、本発明薬剤を、脊髄損傷等の神経障 における改善効果が知られている他の薬剤 併用して治療を行うことも可能である。
 例えば、このような薬剤としてはコンドロ チン硫酸プロテオグリカンを分解する作用 有する、コンドロイチナーゼを有効成分と る薬剤が挙げられる。
 コンドロイチナーゼは、コンドロイチン硫 を脱離的に不飽和二糖に分解する脱離酵素 ある。現在入手可能な酵素を以下に列記す 。
・コンドロイチナーゼABC(Proteus vulgaris由来/ 化学バイオビジネス(株)販売)
・コンドロイチナーゼAC I(Flavobacterium heparinu m由来/生化学バイオビジネス(株)販売))
・コンドロイチナーゼAC II(Arthrobacter aurescens 由来/生化学バイオビジネス(株)販売))
・コンドロイチナーゼAC II(Flavobacterium sp. Hp  102由来)
・コンドロイチナーゼB(Flavobacterium heparinum由 来/生化学バイオビジネス(株)販売))
・コンドロイチナーゼC(Flavobacterium sp. Hp 102 由来)
・コンドロイチナーゼAC(組み換え体、Flavobact erium heparinum由来/IBEX Technologies Inc.販売)
・コンドロイチナーゼB(組み換え体、Flavobacte rium heparinum由来/IBEX Technologies Inc.販売)
 コンドロイチナーゼABC(Chondroitinase ABC)〔EC  4.2.2.20又はEC 4.2.2.4〕は、コンドロイチン硫 を含むグリコサミノグリカンのN-アセチルヘ キソサミニド結合を脱離反応的に切断して、 非還元末端にδ4-ヘキスロン酸残基を持つ不 和二糖を主に生成する酵素で、哺乳動物軟 由来のコンドロイチン硫酸A(コンドロイチン -4-硫酸を多く含む)、鮫軟骨由来のコンドロ チン硫酸C(コンドロイチン-6-硫酸を多く含む )および哺乳動物皮膚由来のコンドロイチン 酸B(デルマタン硫酸)の分解を強力に触媒し ヒアルロン酸の分解に対しては弱く触媒す 酵素であり、コンドロイチン硫酸プロテオ リカンのコンドロイチン硫酸側鎖中のコン ロイチン硫酸A、デルマタン硫酸、及びコン ロイチン硫酸Cも分解する(Yamagata, T. et al.,  J.Biol. Chem., 243: 1523-1535(1968)、Hamai A. et al ., J. Biol. Chem. 272:9123-9130(1997))。本酵素は、 動物組織からムコ多糖類を除去したり、組織 中のムコ多糖を同定したりするための研究用 試薬として、プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)等の細菌の産生する酵素商品が、コ ド番号:100330(Chondroitinase ABC(Proteus vulgaris))及 びコード番号:100332(Chondroitinase ABC Protease Fre e(Proteus vulgaris))として生化学バイオビジネス (株)から試薬として市販されているほか、よ 高純度(単一タンパク質で、エンドトキシン 、核酸、夾雑タンパク質等を含まない)に精 され、比活性が極めて高い酵素が椎間板ヘ ニア治療剤として臨床試験が行われ、生体 対する作用が十分に解明されているため、 り好ましい。特に日本特許第3980657号、米国 許第6,184,023号、米国特許第5,773,277号、米国 許第5,763,205号等に記載の高純度かつ比活性 高いコンドロイチナーゼABCが最も好ましい なお、上記コンドロイチナーゼABCは、下記 別称の酵素と同一酵素である。
・コンドロイチナーゼABC Type1
・Chondroitin ABC endolyase 1
・Chondroitin ABC lyase I
・Chondroitin sulfate endolyase
・Chondroitin ABC eliminase
 また、上記コンドロイチナーゼABC活性を持 物質の遺伝子はクローニングされており、 のタンパク質のアミノ酸配列及びそれをコ ドするDNAの塩基配列も同定されている(米国 特許第5,578,480号、特表2007-520447(WO2004/103299))。 代表的なアミノ酸配列としては、米国特許第 5,578,480号に記載されているものが挙げられる 。このアミノ酸配列は、1021個のアミノ酸残 からなるが、アミノ酸:1-24はシグナル配列を 構成し、成熟タンパク質は997個のアミノ酸残 基からなる(アミノ酸:25-1021)。また、他の代 的なアミノ酸配列としては、アミノ酸配列 ータベース(UniProtKB/Swiss-Prot:Entry name CABC_PROV U、Primary accession number P59807、Protein name Chon droitin ABC endolyase 1 [Precursor])に記載されて るものが挙げられる。このアミノ酸配列も 1021個のアミノ酸残基からなるが、米国特許 5,578,480号に記載されているアミノ酸配列と 2個のアミノ酸が相違する(694番:Q→E、738番:D →N)。さらに、米国特許出願公開第2006/0233782 のSEQ ID NO: 1に記載されたアミノ酸配列は 成熟タンパク質のものであるため、997個の ミノ酸残基からなるが、米国特許第5,578,480 に記載されているアミノ酸配列のアミノ酸: 25-1021の範囲では、4個のアミノ酸が相違する( 154番:A→T、295番:I→T、694番:Q→E、738番:D→N) すなわち、米国特許第5,578,480号に記載され いるアミノ酸配列を基準として、少なくと 4個のアミノ酸(例えば、154番、295番、694番、 738番)を他のアミノ酸に置換したものであっ も、同等のコンドロイチナーゼABC活性を持 酵素と見なすことができる。
 さらに、本発明改善剤を製剤化した薬剤を 神経因性疼痛における改善効果が知られて る他の薬剤と併用して治療を行うことも可 である。例えば、このような薬剤としては 下記例示のような、NSAIDsやオピオイド、鎮 補助薬が挙げられる。オピオイド鎮痛薬と ては、モルヒネ、フェンタニル、オキシコ ン、リン酸コデイン、ペチジン、ブプレノ フィン、トラマドール、ペンタゾジン、ブ ルファノールなどが挙げられる。また、鎮 補助薬としては、抗うつ剤である三環系(ア ミトリプチン、ノルトリプチン等)、四環系( トラミド)、SSRI(パロキセチン、フルボキサ ン)、SNRI(ミルナシプラン)、抗痙攣薬として は、カルバマゼピン、ラモトリジン、ゾニサ ミド、バルブロ酸、クロナゼパム等、抗攣縮 薬としてバクロフェン等、抗不整脈薬として 、リドカイン、メキシレチン等、NMDA受容体 抗薬として、ケタミン、デキストロメトル ァン、アマンタジン、イフェンプロジル等 ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出 含有製剤としてノイロトロピンが挙げられ 。また、最近注目されている、Caチャンネル ブロッカー(α2δサブユニットに結合する)で るガバペンチン(抗痙攣剤)とプレガバリンが 挙げられる。また、抗炎症作用を有する薬剤 、例えばコハク酸メチルプレドニゾロンナト リウム、デキサメタゾン、ベタメサゾン等の ステロイド剤やRhoキナーゼ阻害剤であるファ スジルと併用してもよい。

 以下、本発明を実施例によって詳細に説 するが、本発明は以下の記載に限定して解 されるものではない。

実施例1:ケラタナーゼIIの脊髄損傷後の機能 全の改善作用
(実験方法)
  動物として、S.D.ラット(日本SLC社、雌、9 齢)を用い、エーテルとケタミンカクテル麻 下に、第9胸椎と第12胸椎を椎弓切除し、IH-0 400 Impactorを用い、第9胸椎に圧座による脊髄 傷を作製した。損傷後、顕微鏡下で第12胸 の硬膜に小切開を加え、マイクロチューブ クモ膜下に挿入した。マイクロチューブに 、予め被験サンプルを充填した浸透圧ポン (Alzet Osmotic pump)を接続した。チューブなら にポンプは棘間靱帯および筋肉に固定し、 層ならびに皮膚を閉創した。術後、抗生物 の経口投与を2週間行い、排尿反射が回復す るまで、徒手排尿を1日1回施行した。被験サ プルは、損傷直後から、14日間髄腔内に持 投与した(投与速度:12 μL/24 hr,総投与量:168  μL/14日間)。被験サンプルは、次の5種類とし 。
(1)BcケラタナーゼII(特許第3734504号公報に記載 のバチルス・サーキュランスKsT202株菌体から 抽出した耐熱性ケラタナーゼII)(0.000005 U/200  μL、0.000025 U/200 μL、0.05 U/200 μL)
(2)Ks36ケラタナーゼII(特許第2726274号公報に記 のバチルス属細菌Ks36株が産生するケラタナ ーゼII)(0.000025 U/200 μL、0.0005 U/200 μL、0.05  U/200 μL)
(3)不活性化BcケラタナーゼII(BcケラタナーゼII (0.05 U/200 μL)の酵素活性を100℃(10分間)で不 化した酵素)
(4)Psケラタナーゼ(ケラタン硫酸分解酵素であ っても、ケラタン硫酸の硫酸化されていない ガラクトースのβ-ガラクトシド結合を加水分 解するPseudomonas sp株由来のエンド-β-ガラク シダーゼ型酵素:以下、Psケラタナーゼと称 。必要であれば参考文献:Kiyoshi Nakazawa and S akaru Suzuki, J.Biol. Chem., 250: (3) 912-917(1975),  Purification of Keratan sulfate-endogalactosidase and I ts Action on Keratan Sulfate of Different Originを 照のこと)(0.05 U/200 μL)
(5)生理食塩液(200 μL:コントロール)

実験結果その1:後肢運動神経機能評価(BBBテス ト)
 損傷1日後および損傷1週後から10週後まで1 間に1回、Bassoらの方法(Basso, D.M., Beattie, M.S . & Bresnahan, J.C., Graded histological and loco motor outcomes after spinal cord contusion using the NYU weight-drop device versus transection. Exp. Neuro l., 139, 244-256(1996))に準じ、Basso-Beattie-Bresnahan (BBB)スケールを用いて後肢運動神経機能を評 した。検査はブラインド下で実施し、検査 2人の結果を平均した値で表した。結果を図 1~図5に示す。
 図1から明らかなように、BcケラタナーゼII 0.05 U/200 μL投与群、0.000025 U/200 μL投与群 おいて、生理食塩液投与群に比して顕著な 肢運動神経機能の回復が認められた。中で 0.05 U/200 μL投与群の効力が優れていた。
 図2から明らかなように、Ks36ケラタナーゼII の0.05 U/200 μL投与群、0.0005 U/200 μL投与群 おいて、生理食塩液投与群に比して顕著な 肢運動神経機能の回復が認められた。中で 0.05 U/200 μL投与群の効力が優れていた。
 図3から明らかなように、BcケラタナーゼII Ks36ケラタナーゼIIの後肢運動神経機能の回 に対する効力は、投与濃度が0.05 U/200 μLの 合には同等であった。
 図4から明らかなように、投与濃度が0.000025 U/200 μLのような低濃度の場合、後肢運動神 機能の回復に対する効力は、熱安定性に優 たBcケラタナーゼIIでは認められたが、Ks36 ラタナーゼIIでは認められなかった。この結 果から、BcケラタナーゼIIは、その優れた安 性から、Ks36ケラタナーゼIIよりも、より低 量で有効性を示し、より優れた治療薬とな ことが明らかとなった。
 図5から明らかなように、BcケラタナーゼII 不活性化BcケラタナーゼII、Psケラタナーゼ 0.05 U/200 μLの投与濃度で投与した場合、後 運動神経機能の回復に対する効力は、Bcケ タナーゼIIにおいてのみ認められた。この結 果から、後肢運動神経機能の回復治療に対す る有効成分となり得るのは、ケラタン硫酸を 分解するケラタナーゼと称する酵素の中でも ケラタナーゼIIであること、不活性化Bcケラ ナーゼIIには効力がないことから、Bcケラタ ーゼIIの効力は、そのエンド-β-N-アセチル ルコサミニダーゼ活性に起因することが明 かとなった。

実験結果その2:後肢運動神経機能評価(グリッ ドテスト)
 損傷1週後から10週後まで1週間に1回、ラッ を2cm×2cmの網(グリッド)の上に置き、3分間歩 行させ、グリッドを下肢でグリップできた回 数ならびに全歩数を計測した。全歩数のうち 、グリップできた割合を%グリップ値とし、 右それぞれの値を平均して表した。Bcケラタ ナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIを0.05 U/200 μLの 投与濃度で投与した場合の結果を図6に、0.000 025 U/200 μLの投与濃度で投与した場合の結果 を図7にそれぞれ示す。
 図6から明らかなように、BcケラタナーゼII 与群とKs36ケラタナーゼII投与群の%グリップ は、投与濃度が0.05 U/200 μLの場合には同等 であり、いずれも生理食塩液投与群の%グリ プ値に比して高値を示した。
 図7から明らかなように、投与濃度が0.000025 U/200 μLのような低濃度の場合、後肢運動神 機能の回復に対する効力は、熱安定性に優 たBcケラタナーゼIIでは認められたが、Ks36 ラタナーゼIIでは認められなかった。この結 果から、BcケラタナーゼIIは、その優れた安 性から、Ks36ケラタナーゼIIよりも、より低 量で有効性を示し、より優れた治療薬とな ことが明らかとなった。

実験結果その3:後肢運動神経機能評価(フット プリントテスト)
 損傷1日後および損傷1週後から10週後まで1 間に1回、ラットの後肢にインクを塗布し、5 0cmの紙の上を歩行させることで、後肢の足跡 を得た。紙の上に記された後肢の足跡の歩幅 を左右それぞれ計測し、平均して表した(単 ;mm)。BcケラタナーゼIIとKs36ケラタナーゼIIを 0.05 U/200 μLの投与濃度で投与した場合の結 を図8に示す。
 図8から明らかなように、BcケラタナーゼII 与群とKs36ケラタナーゼII投与群の歩幅は、 理食塩液投与群の歩幅に比して広く、これ の投与群において後肢運動神経機能の回復 認められた。

実験結果その4:サーマル・アロデニア治療/改 善効果の評価(知覚神経の熱刺激に対する作 :テイルフリックテスト)
 損傷前および損傷1週後から10週後まで1週間 に1回、ラットの尻尾を55℃の湯浴に浸し、尻 尾を揺らすまでの時間(反応時間)を計測した( 単位;秒)。測定は15分間隔で3回実施し、平均 で表した。BcケラタナーゼIIとKs36ケラタナ ゼIIを0.05 U/200 μLの投与濃度で投与した場 の結果を図9に示す。
 図9から明らかなように、生理食塩液投与群 では、損傷前に比して、損傷後、経日的に反 応時間が短縮していき、熱刺激に対して過敏 反応を示した。一方、BcケラタナーゼII投与 とKs36ケラタナーゼII投与群では、損傷早期 は生理食塩液投与群と同様の傾向を示した 、損傷5週後以降からは、熱刺激に対する過 反応は改善し、損傷8週後には、損傷前とほ ぼ同程度の安定した反応時間となり、これら の投与群において知覚神経機能の正常値に至 る顕著な回復(サーマル・アロデニア治療/改 効果)が認められた。

実験結果その5:メカニカル・アロデニア治療/ 改善効果の評価(知覚神経の圧刺激に対する 用:タッチテスト)
 損傷前および損傷1週後から10週後まで1週間 に1回、ラットを小箱に入れ、15分間静置させ た。ラットが落ち着いたところで、下からvon  frey filament(刺激強度の異なる数種のフィラ ント)で後肢の足底を刺激した。強い刺激、 弱い刺激を繰り返し、正確な刺激閾値を決定 する方法であるUp-down method(Chaplan, S.R., Bach, F.W., Pogrel, J.W., Chung, J.M., Yaksh, T.L., Quanti tative assessment of tactile allodynia in the rat pa w., J. Neurosci. Methods 53, 55-63(1994))を用い、 ットが痛みを感じて後肢を動かすfilamentの圧 刺激を左右それぞれ計測し、平均値で表した (単位;グラム)。BcケラタナーゼIIとKs36ケラタ ーゼIIを0.05 U/200 μLの投与濃度で投与した 合の結果を図10に示す。
 図10から明らかなように、生理食塩液投与 では、損傷前に比して、損傷1週後から2週後 にfilamentの圧刺激が高値を示し、後肢への刺 に対して鈍感反応を示した。しかし、損傷4 週後以降には、損傷前に比してfilamentの圧刺 が低値を示し、さらに、損傷6週後では後肢 への僅かな刺激でも反応してしまう、知覚過 敏症状を示した。一方、BcケラタナーゼII投 群とKs36ケラタナーゼII投与群では、損傷6週 までは生理食塩液投与群と同様の傾向を示 たが、損傷7週後以降は徐々に知覚過敏反応 は改善した。損傷10週後には、損傷前と同程 のfilamentの圧刺激となり、これらの投与群 おいて知覚神経機能の正常値に至る顕著な 復(メカニカル・アロデニア治療/改善効果) 認められた。

実施例2:ケラタナーゼIIの神経軸索伸長作用 びRhoキナーゼ活性化抑制作用
実験その1:神経軸索伸長阻害の解除
(実験方法)
 生後1日目(P1)のマウス脳より、プライマリ 皮質神経組織を採取後、皮質を小片に細切 、カルシウムおよびマグネシウム・フリー ハンクス緩衝液(HBSS)中に浮遊させ、0.25%トリ プシン、0.1%デオキシリボヌクレアーゼ(DNase) 37℃にて15分間処理した。単離した神経細胞 は、2%の神経細胞培養用添加物B-27添加剤(B27  Supplement for Neuronal Cells)を添加したNeurobasal 地(Basal Medium for Neuronal Cells;Invitrogen社)に 、1×10 5 cells/mLになるように細胞懸濁液を調製した。 胞懸濁液を、被験サンプルを塗布した8ウェ ルチャンバーに播種した後、一晩インキュベ ートした。神経細胞培養開始から24時間後に ャンバースライドを4%パラホルムアルデヒ にて固定処理し、神経細胞をNeuronal Class III β tubulin(TUJ1)抗体(COVANCE社)を用いた免疫組織 学的手法によって同定した。1回の実験あた り80個から90個の神経細胞の軸索長を計測し 平均値を算出しグラフで示した。被験サン ルは、次の3種類とした。
(1)25 μg/mLのポリ-L-リジン(シグマ社、以下同 )を塗布したもの
(2)25 μg/mLのポリ-L-リジンを塗布してからさ にExtracellular proteoglycan mixture solution(PG)(0.5  μg/mL:Chemicon社、Neurocan, Phosphacan, Versican, Aggr ecanの混合物、以下同じ)を塗付したもの
(3)25μg/mLのポリ-L-リジンを塗布してからさら PG(0.5μg/mL)とKs36ケラタナーゼII(0.01 U/mL:生化 学工業(株))を塗付したもの

(実験結果)
 結果を図11に示す。図11から明らかなように 、ケラタン硫酸を含むPG存在下では、神経軸 の伸長が約70%阻害されたが、Ks36ケラタナー ゼIIの共存下では、PGによって誘導された神 軸索の伸長阻害作用が、ほぼ100%解除された 以上の結果から、ケラタナーゼIIには、神 軸索の伸長阻害作用に対する解除効果があ ことが明らかとなった。

実験その2:Rhoキナーゼ活性化の抑制
(実験方法)
 次に、ケラタナーゼIIの上記実験その1の作 メカニズムを調べるために、Rhoキナーゼの 与を検討した。被験サンプルを塗布した8ウ ェルチャンバーを作製し、実験その1の方法 同様にして神経細胞を播種した。神経細胞 養開始から24時間後、15μMのY27632(Rhoキナーゼ 阻害剤、シグマ社)を添加し、さらに24時間培 養した。その後、チャンバーを4%パラホルム ルデヒドにて固定処理し、神経細胞をNeurona l Class IIIβ tubulin(TUJ1)抗体(COVANCE社)を用いた 免疫組織化学的手法によって同定した。1回 実験あたり80個から90個の神経細胞の軸索長 計測し、平均値を算出しグラフで示した。 験サンプルは、次の4種類とした。
(1)25 μg/mLのポリ-L-リジン(シグマ社、以下同 )を塗布してからさらに10 μg/mLラミニン(BD  Biosciences社、以下同じ)を塗布したもの
(2)25 μg/mLのポリ-L-リジンを塗布してからさ に10 μg/mLのラミニンと20 μg/mLのケラタン硫 酸(生化学工業(株)、以下同じ)を塗布したも
(3)25 μg/mLのポリ-L-リジンを塗布してからさ に10 μg/mLのラミニンと40 μg/mLのケラタン硫 酸を塗布したもの
(4)25 μg/mLのポリ-L-リジンを塗布してからさ に10 μg/mLのラミニンと20 μg/mLのケラタン硫 酸とKs36ケラタナーゼII(0.01 U/mL、生化学工業( 株))を塗布したもの

(実験結果)
 図12に、被験サンプル(2)についてY27632を添 しなかった場合(a)と添加した場合(b)の神経 索の伸長程度の蛍光顕微鏡写真を示す。ま 、図13に、それぞれの被験サンプルについて Y27632を添加しなかった場合と添加した場合の 神経細胞の軸索長の計測結果を示す。図12と 13から明らかなように、ケラタン硫酸によ て誘導された神経軸索の伸長阻害作用は、Y2 7632の添加によって解除された。この結果か 、ケラタン硫酸は、Rhoキナーゼ活性化を介 て神経軸索の伸長阻害を誘導していること わかった。また、ケラタン硫酸によるRhoキ ーゼ活性化を介した神経軸索の伸長阻害作 が、Y27632を添加しなくても、Ks36ケラタナー IIの共存によって解除されたことから、ケ タナーゼIIは、Rhoキナーゼ活性化を抑制する ことでケラタン硫酸による神経軸索の伸長阻 害作用の解除効果を発揮していることが明ら かとなった。

実施例3:筋萎縮性側索硬化症(ALS)モデル脊髄 のケラタン硫酸の発現
 ALSモデルマウスであるSOD1-G93AマウスはJackson  Laboratory社より購入した。ALSモデルマウス2 より脊髄を摘出し、蛋白質を抽出後、ウェ タンブロッティングを実施した。ケラタン 酸量は、抗ケラタン硫酸抗体5D4(生化学工業( 株))にて検出した。その結果、ALSモデルマウ では、野生型マウス(WT)に比してケラタン硫 酸の発現増強が検出された(図14)。
 次に、ALSモデルマウスの脊髄でのケラタン 酸発現細胞を免疫組織化学的手法により調 た。ALSモデルマウスの脊髄を摘出し、組織 片を作製後、抗ケラタン硫酸抗体5D4とミク グリア細胞の特異マーカーを認識するIba1で 2重染色を行ったところ、ケラタン硫酸のミ ログリアでの発現が確認された(図15)。
 ALSは、グリオーシスが起こることで知られ いるが、以上の結果から、ケラタン硫酸は グリオーシスの主体であるアストロサイト はなく、しかし、病気の成り立ちに深く関 っているといわれているミクログリアに特 的に発現することがわかった。この現象は 脊髄損傷や脳刺傷の際に、ケラタン硫酸が ミクログリアのみならず、オリゴデンドロ イトにも発現することを考えると、ALSに特 的な発現様式であるといえる。

製剤例1:
 rBcケラタナーゼII(遺伝子組換え型耐熱性ケ タナーゼII)を生理食塩液に溶解して濃度が0 .000025 U/μL~0.05 U/200μLの溶液製剤を調製した

 本発明は、ケラタン硫酸糖鎖骨格中のN-ア チルグルコサミニド結合を加水分解するエ ド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ型酵素 、脊髄損傷等の神経障害に基づく運動神経 知覚神経の機能不全の改善剤、具体的には えば、神経因性疼痛の改善剤のための有効 分として提供することができる点において 業上の利用可能性を有する。