KUBOTA KUNICHIKA (JP)
UEHARA TOSHIHIRO (JP)
OHNO TAKEHIRO (JP)
OHISHI KATSUHIKO (JP)
YOKOYAMA KENJI (JP)
KUBOTA KUNICHIKA (JP)
UEHARA TOSHIHIRO (JP)
OHNO TAKEHIRO (JP)
OHISHI KATSUHIKO (JP)
JPH0978199A | 1997-03-25 | |||
JP2000290753A | 2000-10-17 | |||
JP2005325407A | 2005-11-24 | |||
JPH09316601A | 1997-12-09 | |||
JP2005187900A | 2005-07-14 | |||
JP2003027236A | 2003-01-29 |
See also references of EP 2246452A4
表面に硬質皮膜が被覆される表面被覆用合金であって、該表面被覆用合金は、質量%で、C:0.5~1.2%、Si:2.0%以下、Mn:1.0%以下、Cr:5.0~14.0%、Mo+1/2W:0.5~5.0%、N:0.015%を超えて0.1%以下を含有し、残部はFe及び不純物でなる表面被覆用合金。 |
質量%で、C:0.6~0.85%、Si:0.1~1.5%、Mn:0.2~0.8%、Cr:7.0~11.0%、Mo+1/2W:1.0~4.0%、N:0.04~0.08%を含有する請求項1に記載の表面被覆用合金。 |
更に質量%で、S:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.03%以下の一種以上を含有する請求項1または2に記載の表面被覆用合金。 |
更に質量%で、V:1.0%以下、Cu:0.5%以下、Nb:0.3%以下の一種以上を含有する請求項1乃至3の何れかに記載の表面被覆用合金。 |
請求項1乃至4の何れかに記載の表面被覆用合金表面に被覆される硬質皮膜は、DLC膜である表面被覆用合金。 |
請求項1乃至4の何れかに記載の表面被覆用合金の表面に、硬質皮膜が被覆されている摺動部材。 |
請求項6に記載の摺動部材に被覆される硬質皮膜は、DLC膜である摺動部材。 |
本発明は、表面に硬質皮膜が被覆される 面被覆用合金と該表面被覆用合金の表面に 硬質皮膜を被覆した摺動部材に関するもの ある。
金属製の部材表面に、例えばDLC(Diamond like
Carbon)やセラミック系の硬質皮膜を被覆(コー
ィング)した材料は、耐摩耗性や摺動性等の
特性を向上させることができるため、過酷な
環境で使用される部材に適用されている。中
でも、DLC膜で被覆した摺動部材は、耐磨耗性
、摺動性に優れているため、幅広く使用され
てきている。
しかしながら、例えば、表面被覆用合金にD
LC膜をP-CVD(プラズマCVD)やPVD法によって成膜す
る場合には、密着性に問題がある。密着性を
向上させるには、成膜時に基材を高温に加熱
する必要がある。即ち、表面被覆用合金は400
~500℃の高温に加熱される。もし加熱時に材
が軟化した場合、DLC膜が剥離し易くなるた
、500℃の高温であっても軟化し難い材質の
面被覆用合金を選ぶ必要がある。
そのため、P-CVD(プラズマCVD)やPVD法を用いて
DLC膜を被覆する表面被覆用合金としては、高
温でも58HRC以下に軟化しない高速度工具鋼が
んで用いられる(特開2003-27236号公報)。高速
工具鋼は、Mo、W、V、Nb等の合金元素を多量
含有して、これらの合金元素の効果により
例えばDLC膜をP-CVD(プラズマCVD)やPVD法によっ
て成膜する場合であっても、素材の硬さを高
硬度に維持できるものである。
高速度工具鋼製の表面被覆用合金は、高価
合金元素を多量に含有している。最近では
合金元素の価格が大幅に上昇していること
ら、安価な表面被覆用合金とするために、
加する合金元素の種類を少なくするか、或
は更に、合金元素の添加量を減らしても、
望の特性が得られる表面被覆用合金が求め
れている。
しかし、例えば、低合金鋼のJIS SUP12やJIS S
UJ2等では500℃の高温に加熱すると材料の硬さ
が58HRC未満に軟化してしまい、DLC膜が剥離し
くなるため、表面被覆用合金としては不向
である。
本発明の目的は、高速度工具鋼と比較して
金元素の添加量を低減し、400~500℃の高温に
加熱した場合でも58HRC以上の良好な硬さを維
できる表面被覆用合金と、表面被覆用合金
表面に、硬質皮膜を被覆した摺動部材を提
することである。
本発明は、上述した課題に鑑みてなされた
のである。
すなわち本発明は、表面に硬質皮膜が被覆
れる表面被覆用合金であって、該表面被覆
合金は、質量%で、C:0.5~1.2%、Si:2.0%以下、Mn:1
.0%以下、Cr:5.0~14.0%、Mo+1/2W:0.5~5.0%、N:0.015%を超
えて0.1%以下を含有し、残部はFe及び不純物で
なる表面被覆用合金である。
好ましくは、質量%で、C:0.6~0.85%、Si:0.1~1.5%
Mn:0.2~0.8%、Cr:7.0~11.0%、Mo+1/2W:1.0~4.0%、N:0.04~0.08
%を含有する表面被覆用合金である。
更に、質量%で、S:0.1%以下、Ca:0.1%以下、Mg:0.
03%以下の一種以上を含有する表面被覆用合金
である。
また更に、質量%で、V:1.0%以下、Cu:0.5%以下
Nb:0.3%以下の一種以上を含有する表面被覆用
金である。
また、上記の表面被覆用合金表面に被覆さ
る硬質皮膜は、DLC膜である表面被覆用合金
ある。
また本発明は、上記の表面被覆用合金の表
に、硬質皮膜が被覆されている摺動部材で
る。
好ましくは、上記摺動部材に被覆される硬
皮膜は、DLC膜である摺動部材である。
本発明の表面被覆用合金は、高速度工具 と比較して、合金元素の添加量を低減して 、400~500℃の高温に加熱しても58HRC以上の良 な硬さを維持できることから、硬質皮膜を 覆する摺動部材用の素材に好適である。
上述したように、本発明の重要な特徴は高
度工具鋼と比較して合金元素の添加量を低
しても、400~500℃の高温に加熱しても58HRC以
の良好な硬さを維持できる合金組成にある
以下に詳しく本発明を説明する。なお、特
記載の無い限り、各元素の含有量は質量%で
記す。
C:0.5~1.2%
Cは、表面被覆用合金の基地の硬さを高め、
高温焼戻しによってCrやMoとの炭化物を形成
て表面被覆用合金の耐磨耗性を確保するた
の重要な元素であるため必須で含有する。
しかし、Cが1.2%を超えると表面被覆用合金
靭性を劣化させ、0.5%未満であると、上述のC
の添加効果が得られない。そのため、Cの範
は0.5~1.2%に限定する。上述の効果を確実に得
るための好ましいCの範囲は0.6~0.85%である。
に好ましくは、Cの下限を0.6%とし、上限を0.7
%とする。
Si:2.0%以下
Siは、脱酸元素として添加する他、本発明
おいては高温焼戻しの硬さを高める効果が
るので2.0%以下の範囲において必須で添加す
。Siを2.0%を超えて添加しても、Siの高温焼
しの硬さを高める効果の向上は望めず、か
って靭性や熱間加工性を阻害する。そのた
、Siは2.0%以下の範囲に規定する。
なお、Siの高温焼戻しの硬さを高める効果
確実に実現できる好ましい範囲は、0.1~1.5%で
ある。更に好ましくは、Siの下限を0.3%、更に
好ましくは0.5%とすれば良く、好ましい上限
1.3%、更に好ましくは1.1%である。
Mn:1.0%以下
Mnは、添加すると靭性を劣化させることな
鋼の強度を増すことができ、高温焼戻しの
さも改善される。但し、過度なMnは、加工性
、低温靭性を低下させる。また、同時に加工
硬化し易くなり、加工時に材料の弾性限界点
、降伏点、引張り強さ、疲労限界等が増加し
、伸び、絞りが減少する。更に1.0%を超える
囲では焼戻し時に脆性が発生するので、Mnの
上限を1.0%以下に規定する。鋼の強度を確保
て、加工性の低下や焼戻し時の脆化をより
実に抑制できる好ましいMnの下限は0.2%であ
、さらに好ましくは0.3%、さらに好ましくは0
.6%である。好ましい上限は0.8%である。
Cr:5.0~14.0%
Crは、焼入れ性を向上させ、高温焼戻しの
さを高める効果があるため、5.0%以上を必須
添加する。また、Crは、耐食性を向上させ
効果もある一方で、過度のCr添加は加工性、
低温靭性に悪影響を及ぼすので、14%を上限と
規定する。また、Crの増加と共に高温焼戻し
硬さが上昇するとは限らず、適当なCr量に
いて硬さが最高となる。この効果を確実に
るにはCrの下限を7.0%、さらに好ましくは8.0%
上限を11.0%とするのが好ましい。
Mo+1/2W:0.5~5.0%
Mo及びWは、固溶強化および/または炭化物の
析出硬化により高温焼戻し後の軟化抵抗を向
上させ、耐摩耗性、耐熱疲労性を改善するた
めに単独または複合で添加できる。更に、硬
質な炭化物を作り、硬さを向上させる。
WはMoの約2倍の原子量であることからMo+1/2W
規定する(当然、何れか一方のみの添加とし
も良いし、双方を共添加することもできる)
。Mo、Wが少ないと高温焼戻しの硬さの改善が
得られなくなるため、下限を0.5%に規定する
但し、添加量が5.0%を超えても上記の効果の
上はあまり望めない。そのため、Mo+1/2Wの上
限を5.0%に規定する。好ましくはMo+1/2Wの下限
1.0%、上限を4.0%、さらに好ましくは3.0%とす
ば良い。
N:0.015%を超えて0.1%以下
Nは、添加により固溶強化、析出硬化および
/または、炭化物の結晶粒を微細化させ硬さ
向上させる他、高温焼戻しの硬さやクリー
特性の改善に有効な成分であるが、過度な
加は加工性、低温靭性を低下させるので、
限を0.1%に規定する。一方、Nが過度に少なく
なると、固溶強化、析出硬化および/または
結晶粒を微細化させ硬さを向上させる効果
出ないため、Nの下限は、0.015%を超えた範囲
規定する。高温焼戻しの硬さを確保するた
に、好ましくはNの下限を0.04%、上限を0.08%
すれば良い。
本発明では、上述した元素の他は、実質的
Feであるが、製造上不可避的に混入する元
は当然含有する。
また、上記の元素以外に、選択元素として
軟化抵抗を向上させ、硬さと強さ、靭性と
った特性を向上させる効果のあるVは、1.0%
下の範囲で、耐食性と言った特性を向上さ
る効果のあるCuは、0.5%以下の範囲で、高温
戻し時の結晶粒粗大化を防ぐ効果のあるNbは
、0.3%以下の範囲で、一種以上を添加するこ
ができる。
また、必須で添加するMn等との硫化物を形
し、被削性を改善するSは、0.1%以下の範囲で
含有しても良く、特にSは、微量添加すると
Mn等との硫化物を形成し、被削性を改善する
ため、必要に応じて添加できる。一方でSを
量に添加すると、熱間加工性、耐溶接高温
れ性、耐食性に悪影響を及ぼすため、0.1%以
と規定する。被削性の改善に好ましくは、S
の下限を0.03%、上限を0.08%とすれば良い。
また、Sと同様に、被削性を改善するCa及びM
gについても、Ca:0.1%以下、Mg:0.03%以下の範囲
添加することができる。
S,Ca,Mgについては、複合添加も可能である。
上記の表面被覆用合金は、400~500℃の高温に
加熱しても58HRC以上の良好な硬さを維持でき
ことから、400~500℃の高温に昇温して硬質皮
膜の密着性を高め、摺動性を向上させる硬質
皮膜を被覆するP-CVD(プラズマCVD)やPVD法用の
材として最適である。
P-CVD(プラズマCVD)やPVD法を適用するとTiN、TiC
、Al 2
O 3
、DLC等の硬質皮膜を被覆することができる。
中でも、密着性を向上させたDLC膜を被覆する
場合、表面被覆用合金は400~500℃程度に加熱
れる場合があること、そして、更にDLC膜は
れた摺動性を付与することができる。その
め、本発明の表面被覆用合金は、P-CVD(プラ
マCVD)やPVD法で密着性の良好なDLC膜を被覆す
素材として好適であり、摺動部材としては
本発明の表面被覆用合金とDLC膜の組合わせ
最適であり、特に好ましい。
以下の実施例で本発明を更に詳しく説明す
。
表1に示した化学組成の本発明と比較例の10k
g鋼塊を真空溶解で作製し、表面被覆用合金
得た。作製した表面被覆用合金の化学組成
表1に示す。
なお、本発明No.21合金及びNo.22合金は、3ton
解(大気溶解)を実施したものである。
作製した表面被覆用合金を均質化焼鈍した
、1150℃で熱間鍛造し、15mm(T)×15mm(W)×1000mm(L)
の表面被覆用合金鍛造材を得た。
その後、780℃で3時間の焼鈍を行った。更に
、焼鈍した表面被覆用合金から15mm(T)×15mm(W)×
15mm(L)の硬度測定用試験片を作製した。
また、No.21とNo.22の合金は、大気溶解後、熱
間鍛造し、さらに14mmφに熱間圧延後、860℃で
3時間の焼鈍を行った。更に、焼鈍した表面
覆用合金から厚さ15mmの硬度測定用試験片を
取した。
この試験片を大気炉内で表2及び表3に示し
焼入れ温度で加熱保持し、油冷にて焼入れ
行った。焼入れ後に試験片の両面を平行研
し、DLC成膜温度の上限近傍の500℃付近で焼
しを行なった。焼戻し温度は表2及び表3に示
し、焼戻し後にロックウェル硬さCスケール
て硬さを測定した。その結果を表2及び表3に
示す。
表2及び表3に示すように、本発明の表面被
用合金は、高速度工具鋼のSKH51と比較して合
金元素の添加量を低減しているにもかかわら
ず、500℃以上での焼戻し後の硬さが58HRC以上
なっていることが分かる。一方、比較例No.2
4及びNo.25は58HRC以上の硬さを得ることができ
、SUP12とSUJ2では、500℃の焼戻しにより58HRC
大きく下回っていることが分かる。
なお、SUJ2においては、180℃の焼戻しにより
、63HRCが得られたが、500℃の高温焼戻しでは4
7HRC以下に硬さが低下している。これは、180
の低温焼戻しした材料を500℃程度に昇温し
場合、硬さが低下することを意味する。
以上のことから、本発明の表面被覆用合金
、DLC膜の成膜温度の上限である、500℃程度
温度域でも高い硬さを維持でき、表面被覆
合金の表面に、硬質皮膜を被覆すれば高い
着性を維持できるので摺動部材として用い
ことが可能である。
次に、被削性改善元素を添加した本発明合
のうち、No.10,11,12,13,14及び15について、被削
性試験を行なった。被削性改善効果を確認す
るため、被削性改善元素を無添加としたNo.23
ついても、同様に被削性試験を行なった。
被削性試験は、焼鈍ままの素材から15mm(T)×1
5mm(W)×22mm(L)の寸法の試験片を切り出し、切り
出した被削性試験片にドリルで孔開け加工を
行って、ドリルの磨耗量にて評価を実施した
。評価は、ドリルの最外周部をAと表記し、4/
D部をBと表記して、試験結果を表4に示す。な
お、試験条件は以下のとおりである。
ドリル径:φ4.0mmストレートシャンクドリル
切削深さ:20mm
切削速度:30m/min
送り速度:0.05mm/rev
ステップフィード:10mm
切削液:水溶性
表4に示すように、被削性改善元素を添加 した本発明合金は、被削性改善元素を無添加 としたNo.23合金よりも被削性が向上している がわかる。中でも適量のSとCaを複合添加し No.14合金が最も被削性が良いことが分かる
次に、表1で製作した本発明のNo.9と、低合
鋼のSUJ2について、DLC膜を成膜して比較を行
た。
780℃で3時間の焼鈍を行った本発明のNo.9を15
mm×15mm×30mmに切断し、1050℃に加熱後、油冷の
焼入れを行い、その後、500℃の焼戻しを行っ
た。低合金鋼のSUJ2は780℃で3時間の焼鈍を行
、15mm×15mm×30mmに切断し、950℃に加熱後、油
冷の焼入れを行い、その後、180℃の焼戻しを
行った。
更に、焼入れ焼戻しした表面被覆用合金か
幅10mm×長さ20mm×厚さ3mmで鏡面仕上げの表面
覆用合金試験片を作製し、この試験片の表
にPVD法を用いてDLC膜を成膜した。DLC成膜時
は試験片が最大424℃に加熱されたことを確
した。
DLC成膜後、ロックウェル硬度計による圧痕
利用してDLC膜の密着性評価を行った。なお
密着性評価は、荷重150kgfとし、ダイヤモン
圧子を用いて行なった。本発明のNo.9を評価
した外観写真を図1に、低合金鋼のSUJ2を評価
た外観写真を図2に示す。
図1及び図2に示すように、低合金のSUJ2と 較して、本発明では圧痕によるクラックが さく、SUJ2よりも高い密着性を維持している ことが確認できた。
本発明合金は、高温加熱時に高い硬さが 可欠な用途に適用できる。同時に、高価な 金の使用量を抑えることができるので、こ まで高価な合金を使用していた従来のもの 比べて経済的で広い範囲での応用を期待す ことができる。