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Title:
ALUMINUM ALLOY CASTING MATERIAL, METHOD FOR PRODUCTION OF THE ALUMINUM ALLOY CASTING MATERIAL, ALUMINUM ALLOY MATERIAL, AND METHOD FOR PRODUCTION OF ALUMINUM ALLOY MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/090866
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: an aluminum alloy casting material produced by casting a molten product of an aluminum alloy; an aluminum alloy material produced by at least heating the aluminum alloy casting material; and a method for producing the aluminum alloy casting material or the aluminum alloy material. In the production of the aluminum alloy casting material, firstly, an aluminum alloy is molten at a predetermined temperature to produce a molten product (a melting step), wherein the aluminum alloy contains Fe in an amount of 0.8 to 5 mass% and Ti in an amount of 0.15 to 1 mass% and further contains a third constituent element such as Zr in a specified amount, with the remainder being Al and unavoidable impurities. Subsequently, the molten product is casted on a die into a plate-like shape while cooling to a temperature lower than the solidus temperature of the aluminum alloy by at least 10˚C at a cooling rate of equal to or greater than 150˚C/sec and less than 10000˚C/sec (a casting step).

Inventors:
MATSUOKA HIDEAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/050766
Publication Date:
July 31, 2008
Filing Date:
January 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYOTA CHUO KENKYUSHO KK (JP)
MATSUOKA HIDEAKI (JP)
International Classes:
B22D21/04; B22D11/00; C22C21/00; C22F1/04; B21B3/00; C22F1/00
Foreign References:
JPH059634A1993-01-19
JPH08165538A1996-06-25
JP2004156117A2004-06-03
JP2006249550A2006-09-21
Other References:
See also references of EP 2127782A4
Attorney, Agent or Firm:
TAKAHASHI, Yoshiyasu et al. (26-19 Meieki 3-chome, Nakamura-ku, Nagoya-sh, Aichi 02, JP)
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Claims:
 アルミニウム合金の溶湯を鋳造してなるアルミニウム合金鋳造材の製造方法であって、
 第1成分元素として0.8~5mass%のFeと、第2成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有すると共に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第3成分元素群から選ばれる1種以上の第3成分元素を、個々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1成分元素Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Tiの含有量をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合計含有量をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満足する量で含有し、残部がAlと不可避的不純物とからなるアルミニウム合金を準備し、該アルミニウム合金を、その組成から決定される液相線温度よりも20℃以上高い温度で溶解させて溶湯を得る溶解工程と、
 上記アルミニウム合金の組成から決定される固相線温度より少なくとも10℃低い温度まで上記溶湯を冷却速度150℃/sec以上かつ10000℃/sec未満で冷却しつつ鋳型によって鋳造する鋳造工程とを有することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1において、上記鋳造工程は、連続鋳造により行うことを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1又は2において、上記溶解工程においては、上記第3成分元素群のうち少なくともZrを0.2~1.2mass%含有する上記アルミニウム合金を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~3のいずれか一項において、上記溶解工程においては、さらに第4成分元素としてMgを0.05~2mass%含有する上記アルミニウム合金を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~4のいずれか一項において、上記溶解工程においては、Cu、Cr、及びCoからなる第5成分元素群から選ばれる1種以上の第5成分元素をさらに0.05~1mass%含有する上記アルミニウム合金を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~5のいずれか一項において、上記溶解工程においては、さらに第6成分元素としてV及び/又はMoを0.05mass%超え0.5mass%未満含有する上記アルミニウム合金を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項4~6のいずれか一項において、上記アルミニウム合金においては、上記第4成分元素と上記第5成分元素と上記第6成分元素との合計量を3mass%以下にすることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~7のいずれか一項において、上記鋳型としては、銅製の鋳型を用いることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~8のいずれか一項において、上記鋳造工程においては、上記溶湯を厚さ0.3~10mmの板状に鋳造することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項9において、上記鋳造工程においては、上記溶湯の鋳造を単ロール式、双ロール式、ブロック式、ベルト式、又はホイール式で行うことを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項9又は10において、上記鋳造工程においては、上記鋳型において上記溶湯の少なくとも表層を冷却固化させ、次いで水冷により冷却を行って板状に鋳造することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材の製造方法。
 請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる上記アルミニウム合金鋳造材に対して温度200℃以上で熱間圧延加工を行うことにより、上記アルミニウム合金鋳造材の厚みを30%以上圧下させる熱間圧延工程を有することを特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。
 請求項12において、上記熱間圧延工程は、上記鋳造工程において上記溶湯を上記鋳型で温度200℃~500℃まで冷却しながら板状に鋳造し、上記鋳型から剥離した後に行うことを特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。
 請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる上記アルミニウム合金鋳造材に対して冷間圧延加工を行うことにより、上記アルミニウム合金鋳造材の厚みを30%以上圧下させた後、上記アルミニウム合金の融点の1/2以上かつ550℃以下の温度で加熱する冷間圧延-加熱工程を有することを特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。
 請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法によって得られる上記アルミニウム合金鋳造材を温度400℃以上で0.5時間~3時間加熱する熱処理工程を有することを特徴とするアルミニウム合金材の製造方法。
 第1成分元素として0.8~5mass%のFeと、第2成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有すると共に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第3成分元素群から選ばれる1種以上の第3成分元素を、個々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1成分元素Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Tiの含有量をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合計含有量をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満足する量で含有し、残部がAlと不可避的不純物とからなるアルミニウム合金鋳造材であって、
 該アルミニウム合金鋳造材は、Al基地からなるα相と、該α相を取り囲むように形成され、かつ上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶組織からなる層状相とを有する金属組織を有し、
 上記Al基地は、Alの過飽和固溶体からなり、該過飽和固溶体には上記第2成分元素及び上記第3成分元素が固溶しており、
 上記アルミニウム合金鋳造材の任意断面において、Alと上記第2成分元素と上記第3成分元素との金属間化合物からなる粒径5μm以上の晶出物の占める面積率は5%未満になっていることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項16において、上記アルミニウム合金鋳造材は、上記第3成分元素群のうち少なくともZrを0.2~1.2mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項16又は17において、上記アルミニウム合金鋳造材は、第4成分元素としてMgを0.05~2mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項18において、上記第4成分元素としてのMgは、少なくとも上記Al基地中に固溶していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項18又は19において、上記第4成分元素としてのMgは、上記Al基地中でAl-Mg化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項16~20のいずれか一項において、上記アルミニウム合金鋳造材は、Cu、Cr、及びCoからなる第5成分元素群から選ばれる1種以上の第5成分元素を0.05~1mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項21において、上記第5成分元素としてのCr及び/又はCoは、上記層状相を構成する上記Al-Fe系化合物の少なくとも一部に置換してAl-(Fe,Cr)化合物及び/又はAl-(Fe,Co)化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項21又は22において、上記第5成分元素としてのCuは、上記Al基地中でAl-Cu化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項16又は17において、上記アルミニウム合金鋳造材は、第4成分元素としてMgを0.05~2mass%、及び第5成分元素としてCuを0.05~1mass%含有し、上記第4成分元素及び上記第5成分元素は、上記Al基地中でAl-Cu-Mg化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項16~24のいずれか一項において、上記アルミニウム合金鋳造材は、第6成分元素としてV及び/又はMoを0.05mass%超え0.5mass%未満含有することを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 請求項25において、上記第6成分元素としてのV及び/又はMoは、上記Al基地中で、Alとの化合物、Alと上記第2成分元素と上記第3成分元素との化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金鋳造材。
 第1成分元素として0.8~5mass%のFeと、第2成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有すると共に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第3成分元素群から選ばれる1種以上の第3成分元素を、個々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1成分元素Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Tiの含有量をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合計含有量をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満足する量で含有し、残部がAlと不可避的不純物とからなるアルミニウム合金材であって、
 該アルミニウム合金材は、Al基地からなるα相と、該α相を取り囲むように形成され、かつ上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶組織からなる層状相とを有する金属組織を有し、
 上記Al基地は、Al、及び/又はAlに上記第2成分元素及び上記第3成分元素が固溶したAlの過飽和固溶体からなり、
 上記Al基地には、Alと上記第2成分元素と上記第3成分元素との金属間化合物からなる粒径2~500nmの析出物が分散されていることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項27において、上記アルミニウム合金材は、上記第3成分元素群のうち少なくともZrを0.2~1.2mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項27又は28において、上記アルミニウム合金材は、第4成分元素としてMgを0.05~2mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項29において、上記第4成分元素としてのMgは、少なくとも上記Al基地中に固溶していることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項29又は30において、上記第4成分元素としてのMgは、上記Al基地中でAl-Mg化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項27~31のいずれか一項において、上記アルミニウム合金材は、Cu、Cr、及びCoからなる第5成分元素群から選ばれる1種以上の第5成分元素を0.05~1mass%含有することを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項32において、上記第5成分元素としてのCr及び/又はCoは、上記層状相を構成する上記Al-Fe系化合物の少なくとも一部に置換してAl-(Fe,Cr)化合物及び/又はAl-(Fe,Co)化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項32又は33において、上記第5成分元素としてのCuは、上記Al基地中でAl-Cu化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項27又は28において、上記アルミニウム合金材は、第4成分元素としてMgを0.05~2mass%、及び第5成分元素としてCuを0.05~1mass%含有し、上記第4成分元素及び上記第5成分元素は、上記Al基地中でAl-Cu-Mg化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項27~35のいずれか一項において、上記アルミニウム合金材は、第6成分元素としてV及び/又はMoを0.05mass%超え0.5mass%未満含有することを特徴とするアルミニウム合金材。
 請求項36において、上記第6成分元素としてのV及び/又はMoは、上記Al基地中で、Alとの化合物、Alと上記第2成分元素と上記第3成分元素との化合物を形成していることを特徴とするアルミニウム合金材。
Description:
アルミニウム合金鋳造材及びそ 製造方法、アルミニウム合金材及びその製 方法

 本発明は、アルミニウム合金の溶湯を板 に鋳造してなるアルミニウム合金鋳造材及 その製造方法、並びに該アルミニウム合金 造材を加工及び/又は加熱してなるアルミニ ウム合金材及びその製造方法に関する。

 アルミニウム合金板材は、所定組成に調 した合金溶湯を圧延用インゴットに半連続 造し、スラブ切断後、均質化処理工程、面 工程を経て、加熱し、熱間圧延して作製さ ていた。また、必要に応じて熱間圧延後に 冷間圧延が行われる。このようなアルミニ ム合金板材の製造過程においては、凝固組 を消失させながら所定形状に仕上げるとと に、均質・微細な金属組織に調整される。 た、圧延工程では合金種に応じた調質(例え ば、熱処理)が行われていた。このように、 ルミニウム合金板材の製造工程は多岐にわ るため、エネルギー消費量の低減や低コス 化には限界があった。

 一方、近年、アルミニウム合金に対する 続鋳造法が検討されている。これは、アル ニウム合金の溶湯から所定厚さの板材を連 的に直接鋳造する方法である。連続鋳造法 おいては、スラブよりも薄い例えば厚さ10mm 以下の板材を連続鋳造することができる。そ のため、従来のインゴット連続鋳造よりも冷 却速度が速く、微細な鋳造組織が得られる。 また、冷却速度が速いため、通常不純物元素 として扱われてきたFeの許容量が拡大し、ア ミニウム合金のリサイクル性を向上させる とができる。さらに、工程数を大幅に削減 きるため、低コスト化を図ることができる

 ところで、例えば自動車外板用のアルミニ ム合金板材には、主として5000系(Al-Mg系)の ルミニウム合金が用いられていた。その他 も、最近では、ベークハード性を有する過 Si型の6016合金又は6022合金(Al-Mg-Si系合金)の適 用が検討されている。なお、ベークハードと は自動車の塗装の焼付け工程での熱を利用し た時効硬化現象のことである。
 例えば、Al-Mg-Si系合金においては、溶体化 理のみを実施した材料(調質:T4)を所定形状に プレス成形し、その後の塗装・焼付け工程で 硬化させ、外板用のアルミニウム合金板材に 仕上げられている。Al-Mg-Si系合金等の6000系合 金は、アルミニウム合金の中では中強度で良 好な耐食性を有し、例えば自動車の足廻り用 材料等として使用されてきた。6000系合金に いては、このような優れた特性と、先述し ベークハード性及び連続鋳造圧延とを融合 、製造時のエネルギー消費量をより低減し 高機能化で低コストな材料に仕上げられて た(特許文献1~3参照)。

 アルミニウム合金の強度レベルは、合金 成に大きく依存する。特に、高い強度を発 するアルミニウム合金としては、時効硬化 理により析出強化される熱処理型合金があ 、その代表例が7000系合金(Al-Zn-Mg系合金)、 び2000系合金(Al-Cu系合金)である。先述の6000 合金もこれに属するが、他の熱処理合金に べ、強度特性において劣っていた。一方、Cu が添加された高強度な6000系合金の開発も行 れている。

 しかしながら、Cuが添加された6000系合金で 、2000系合金及び7000系合金と同様に、強度 向上する反面、加工性及び耐食性が低下す という問題があった。そのため、かかるア ミニウム合金からなるアルミニウム合金板 は、自動車の外板又は足廻り等の耐食性が 求される部位等に適用することは実用上困 であった。
 また、上述のごとく、アルミニウム合金板 においては添加元素を加えることによって 度を向上させることが可能であるが、例え Al-Fe-Ni合金等においては、耐熱性、即ち高 での強度には優れる反面、耐軟化性が不十 であり、鋳造後焼鈍し、さらに長時間加熱 た後における硬さ(残留硬さ)が鋳造後の硬さ に比べて大きく低下し易い。そのため、かか るアルミニウム合金は、高温で時効硬化させ ることができず、また、高温環境下における 強度は優れていても高温加熱後の室温での強 度が低下するため、結局は高温環境下で用い られる部材に適用することは困難であった。

 このように、自動車構造部材等を構成する ルミニウム合金板材には、複雑多岐にわた 所望の形状に成形が可能であると共に、強 、耐食性等だけでなく、耐軟化性等の特性 も優れたものが要求されている。
 これまでに利用されているアルミニウム合 ではこれら要求特性を満足するアルミニウ 合金板材を工業的に製造することは極めて 難であった。

特開平8-165538号公報

特開2004-156117号公報

特開2006-249550号公報

 本発明は、かかる従来の問題点に鑑みて されたものであって、低コストで製造でき と共に、強度、成形性、及び耐食性に優れ かつ耐軟化性に優れたアルミニウム合金鋳 材、アルミニウム合金材、及びそれらの製 方法を提供しようとするものである。

 第1の発明は、アルミニウム合金の溶湯を鋳 造してなるアルミニウム合金鋳造材の製造方 法であって、
 第1成分元素として0.8~5mass%のFeと、第2成分 素として0.15~1mass%のTiとを含有すると共に、Z r、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第3成分元素群か ら選ばれる1種以上の第3成分元素を、個々の 有量が0.05~2mass%、かつ上記第1成分元素Feの 有量をFe(mass%)、第2成分元素Tiの含有量をTi(ma ss%)、及び上記第3成分元素の合計含有量をX(ma ss%)としたとき、Fe>X>Tiを満足する量で含 し、残部がAlと不可避的不純物とからなる ルミニウム合金を準備し、該アルミニウム 金を、その組成から決定される液相線温度 りも20℃以上高い温度で溶解させて溶湯を得 る溶解工程と、
 上記アルミニウム合金の組成から決定され 固相線温度より少なくとも10℃低い温度ま 上記溶湯を冷却速度150℃/sec以上かつ10000℃/s ec未満で冷却しつつ鋳型によって鋳造する鋳 工程とを有することを特徴とするアルミニ ム合金鋳造材の製造方法にある。

 上記第1の発明の製造方法は、上記溶解工程 と上記鋳造工程とを有する。
 上記溶解工程及び上記鋳造工程においては 上記特定組成の上記アルミニウム合金を溶 させて上記溶湯を作製し、該溶湯を冷却し つ鋳造して上記アルミニウム合金鋳造材を 製する。したがって、上記第1の発明におい ては、上記溶湯から例えば板状等に直接鋳造 することが可能であり、スラブ(鋳塊)を作製 る工程等を省略することができる。そのた 、工数を減らすことができ、上記アルミニ ム合金鋳造材を低コストで作製することが きる。

 また、本発明の製造方法においては、上 第1~第3成分元素を特定量含有し、残部がAl 不可避的不純物とからなる上記特定組成の ルミニウム合金を用いて、該アルミニウム 金の上記溶湯を上記特定の冷却速度で冷却 つつ鋳造を行っている。そのため、上記の とく溶湯から例えば板状等に直接鋳造を行 ても、強度、成形性、及び耐食性に優れ、 つ耐軟化性にも優れたアルミニウム合金鋳 材を得ることができる。

 上記特定組成範囲にある上記アルミニウ 合金は、Siを添加しなくても優れた鋳造性 示すことができる。そのため、Si添加による 材料特性の低下を回避しつつ、鋳造性を向上 させることができる。また、上記アルミニウ ム合金は、Ni、Mnを添加しなくても優れた耐 性を示すことができる。

 さらに、本発明の製造方法においては、 記特定組成の上記アルミニウム合金の溶湯 上記特定の冷却速度で冷却しつつ鋳造を行 ている。そのため、上記アルミニウム合金 造材は、優れた強度を示すと共に耐軟化性 も優れており、例えば上記アルミニウム合 の組成から決定される固相線温度の1/2以上 いう高温環境下に曝された後でも、室温で 硬さがほとんど低下しない。そのため、上 アルミニウム合金鋳造材は、例えば200℃以 という高温で時効硬化させることができる 共に、その強度をより向上させることがで る。それ故、後工程で上記アルミニウム合 鋳造材に対して例えば熱間圧延及び焼鈍等 行っても、上記アルミニウム合金鋳造材の 度を低下させることなく、むしろその強度 向上させることが可能になる。この理由は のように考えられる。

 即ち、本発明のように、アルミニウム合 にFeを添加した場合、金属組織的には、Al基 地からなるα相と、該α相を取り囲むように 成された、Al-Fe系化合物とAl基地との共晶組 からなる層状相とが形成されるが、さらに 記第2成分元素Ti、及び上記第3成分元素を上 記特定量添加すると、Alに上記第2成分元素及 び上記第3成分元素を固溶させることができ 飽和固溶体からなるAl基地が形成される。そ のため、熱エネルギーやひずみエネルギーが 加わったときにAlとTi(第2成分元素)と第3成分 素とからなる安定な化合物(金属間化合物) をAl基地中に析出させることができる。それ 故、耐軟化性が向上し、上述のごとく加工や 加熱等を行った後の強度を向上させることが できる。

 また、本発明においては、高温環境下で長 間使用した後室温に戻したときの強度の低 を防止し、鋳造後の強度よりも高い強度に 持することができる。さらに、本発明の範 内において合金組成及び冷却速度をさらに 整することにより、高温環境下で長時間使 した後に強度が低下せず、むしろその強度 さらに向上させることも可能になる。
 そのため、上記第1の発明においては、例え ば自動車用構造部材等に適したアルミニウム 合金鋳造材を製造することができる。

 また、本発明の製造方法においては、150 /sec以上という高い冷却速度で鋳造を行って いる。そのため、不純物元素の許容量を増大 させることができ、リサイクル性を向上させ ることができる。

 以上のように、上記第1の発明によれば、 低コストで製造できると共に、強度、成形性 、及び耐食性に優れ、かつ耐軟化性に優れた アルミニウム合金鋳造材の製造方法を提供す ることができる。

 第2の発明は、上記第1の発明の製造方法 よって得られる上記アルミニウム合金鋳造 に対して温度200℃以上で熱間圧延加工を行 ことにより、上記アルミニウム合金鋳造材 厚みを30%以上圧下させる熱間圧延工程を有 ることを特徴とするアルミニウム合金材の 造方法にある。

 第3の発明は、上記第1の発明の製造方法 よって得られる上記アルミニウム合金鋳造 に対して冷間圧延加工を行うことにより、 記アルミニウム合金鋳造材の厚みを30%以上 下させた後、上記アルミニウム合金の融点 1/2以上かつ550℃以下の温度で加熱する冷間 延-加熱工程を有することを特徴とするアル ニウム合金材の製造方法にある。

 第4の発明は、上記第1の発明の製造方法 よって得られる上記アルミニウム合金鋳造 を温度400℃以上で0.5時間~3時間加熱する熱処 理工程を有することを特徴とするアルミニウ ム合金材の製造方法にある。

 上記第2~第4の発明においては、上記第1の 発明の製造方法によって得られた上記アルミ ニウム合金鋳造材に対し、それぞれ上記熱間 圧延工程、上記冷間圧延-加熱工程、又は上 熱処理工程を行っている。そのため、得ら る上記アルミニウム合金材中にはAlと上記第 2成分元素と上記第3成分元素とからなる金属 化合物の析出物を形成させることができる 該析出物は、金属組織中で安定相又は準安 相を形成していると考えられる。かかる金 組織を有する上記アルミニウム合金材は、 記アルミニウム合金鋳造材に比べてより優 た強度を発揮することができる。また、そ 他にも上記第1の発明と同様の作用効果を生 じうる。

 第5の発明は、第1成分元素として0.8~5mass%のF eと、第2成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有 すると共に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第 3成分元素群から選ばれる1種以上の第3成分元 素を、個々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1 成分元素Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Ti 含有量をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合 計含有量をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満 足する量で含有し、残部がAlと不可避的不純 とからなるアルミニウム合金鋳造材であっ 、
 該アルミニウム合金鋳造材は、Al基地から るα相と、該α相を取り囲むように形成され かつ上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶組織 からなる層状相とを有する金属組織を有し、
 上記Al基地は、Alの過飽和固溶体からなり、 該過飽和固溶体には上記第2成分元素及び上 第3成分元素が固溶しており、
 上記アルミニウム合金鋳造材の任意断面に いて、Alと上記第2成分元素と上記第3成分元 素との金属間化合物からなる粒径5μm以上の 出物の占める面積率は5%未満になっているこ とを特徴とするアルミニウム合金鋳造材にあ る。

 上記アルミニウム合金鋳造材は、上記特定 組成を有し、上記Al基地からなる上記α相と 、該α相を取り囲むように形成された、上記A l基地とAl-Fe系化合物との共晶組織からなる上 記層状相とを有する金属組織を有する。また 、上記Al基地は、Alの過飽和固溶体からなり 該過飽和固溶体には上記第2成分元素及び上 第3成分元素が固溶しており、上記アルミニ ウム合金鋳造材の任意断面において、Alと上 第2成分元素と上記第3成分元素との化合物 らなる粒径5μm以上の晶出物の占める面積率 5%未満になっている。
 このような上記アルミニウム合金鋳造材は 上記第1の発明の製造方法によって得られる 上記アルミニウム合金鋳造材と同様に、低コ ストで製造できると共に、強度、成形性、及 び耐食性に優れ、かつ耐軟化性に優れている 。

 一般に、上記第5の発明のアルミニウム合 金鋳造材と同様の組成の合金は、その鋳造時 にAlと上記第2成分元素と上記第3成分元素と 金属間化合物からなる粒径5μm以上の晶出物 発生し易い。かかる晶出物が多く生成する 、熱間圧延や焼鈍等を行ったときに強度が 下するおそれがある。

 上記第5の発明のアルミニウム合金鋳造材 においては、上記アルミニウム合金鋳造材の 任意断面における粒径5μm以上の上記晶出物 占める面積率が5%未満になっている。即ち、 Alと上記第2成分元素と上記第3成分元素との 属間化合物からなる上記晶出物の含有率が 常に少なくなっており、上記第2成分元素及 上記第3成分元素は、上記α相内の上記Al基 中に固溶している。そのため、上記アルミ ウム合金鋳造材に対して例えば熱間圧延及 焼鈍等を行っても、上記アルミニウム合金 造材の強度を低下させることなく、むしろ の強度を向上させることが可能になる。

 上記第5の発明のアルミニウム合金鋳造材 は、例えば上記第1の発明の製造方法によっ 得ることができる。上記第1の発明の製造方 においては、上記のごとく、上記特定組成 上記アルミニウム合金を上記特定の温度ま 上記特定の冷却速度で冷却している。その め、上記α相に上記晶出物が生成すること 抑制することができ、上記のごとく上記晶 物の面積率を5%未満にすることができる。

 第6の発明は、第1成分元素として0.8~5mass%のF eと、第2成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有 すると共に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第 3成分元素群から選ばれる1種以上の第3成分元 素を、個々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1 成分元素Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Ti 含有量をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合 計含有量をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満 足する量で含有し、残部がAlと不可避的不純 とからなるアルミニウム合金材であって、
 該アルミニウム合金材は、Al基地からなるα 相と、該α相を取り囲むように形成され、か 上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶組織から なる層状相とを有する金属組織を有し、
 上記Al基地は、Al、及び/又はAlに上記第2成 元素及び上記第3成分元素が固溶したAlの過 和固溶体からなり、
 上記Al基地には、Alと上記第2成分元素と上 第3成分元素との金属間化合物からなる粒径2 ~500nmの析出物が分散されていることを特徴と するアルミニウム合金材にある。

 上記第6の発明のアルミニウム合金材は、 上記特定組成を有し、上記Al基地からなる上 α相と、該α相を取り囲むように形成され、 かつ上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶組織 らなる上記層状相とを有する金属組織を有 る。また、上記Al基地には、Alと上記第2成分 元素と上記第3成分元素との金属間化合物か なる粒径2~500nm以下の析出物が分散している かかるアルミニウム合金材は、強度、成形 、及び耐食性に優れ、かつ耐軟化性に優れ 。

 即ち、上記第6の発明の上記アルミニウム合 金材は、上記第1の発明の製造方法によって られる上記アルミニウム合金鋳造材、及び 記第5の発明の上記アルミニウム合金鋳造材 対して例えば加熱や圧延等を行うことによ 製造することができる。このような加熱や 延等により、上記アルミニウム合金鋳造材 Al基地中に固溶していた上記第2成分元素及 上記第3成分元素を、微細な上記析出物とし て析出させることができる。その結果、上記 アルミニウム合金鋳造材は、優れた強度、成 形性、及び耐食性、耐軟化性を示すことがで きる。
 上記第6の発明のアルミニウム合金材は、具 体的には、上記第2~第4の発明の製造方法によ り得ることができる。

実施形態例1における、溶解工程、鋳造 工程、後処理工程、及び加熱工程と、硬度HVR 1~3の測定タイミングを示す説明図であって、 後処理工程として熱間圧延工程を行った場合 の説明図(a)、後処理工程として冷間圧延-加 工程を行った場合の説明図(b)、後処理工程 して熱処理工程を行った場合の説明図(c)。 実施例1における、溶解工程、凝固工程 、後処理工程、及び加熱工程と、硬度HVR1~3の 測定タイミングを示す説明図であって、後処 理工程として熱間圧延工程を行った場合の説 明図(a)、後処理工程として冷間圧延-加熱工 を行った場合の説明図(b)。 実施形態例1における、硬度の挙動の(a) パターン1、(b)パターン2、(c)パターン3を示す 説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前の合 金組織(実施例11)を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延後の合 金組織(実施例11)を示す説明図。 実施形態例1における、各アルミニウム 合金組成毎の冷却速度と引張強さとの関係を 示す線図。 実施形態例1における、熱間圧延後の合 金組織(実施例11)のSEM写真であって、析出物 形成された状態を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前のア ルミニウム合金鋳造材(実施例11)の合金組織 SEM写真(倍率1000倍)を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前のア ルミニウム合金鋳造材(実施例11)の合金組織 SEM写真(倍率5000倍)を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前の ルミニウム合金鋳造材(比較例22)の合金組織 SEM写真(倍率1000倍)を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前の ルミニウム合金鋳造材(比較例22)の合金組織 SEM写真(倍率5000倍)を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前の ルミニウム合金鋳造材(比較例22)の晶出物の 分分析結果を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延前の ルミニウム合金鋳造材(実施例11)の合金組織 TEM写真を示す説明図。 図13における*1点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図13における*2点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図13における*3点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図13における*4点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 実施形態例1における、熱間圧延後の ルミニウム合金鋳造材(実施例11)の合金組織 TEM写真を示す説明図。 図18における*1点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図18における*2点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図18における*3点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 図18における*4点におけるEDXの分析結 を示す説明図。 実施形態例1における、焼鈍温度と残 硬さとの関係を示す説明図。 実施形態例2における、アルミニウム 金鋳造材の正面図(a)、側面図(b) 実施形態例2における、アルミニウム 金鋳造材の薄板部の合金組織を示す説明図(a )、アルミニウム合金鋳造材の中厚板部の合 組織を示す説明図(b)、アルミニウム合金鋳 材の大厚板部の合金組織を示す説明図(c)。

 次に、本発明の好ましい実施の形態につい 説明する。
 上記第1の発明の製造方法においては、上記 溶解工程と上記鋳造工程とを行うことにより 上記アルミニウム合金鋳造材を製造する。該 アルミニウム合金鋳造材は、アルミニウム合 金の溶湯を鋳型に供給しつつ鋳造する鋳造法 によって製造される。

 上記鋳造工程は、連続鋳造により行うこと 好ましい。
 この場合には、上記溶湯から上記アルミニ ム合金鋳造材を連続的に直接鋳造すること できる。そしてこの場合には、直接鋳造を っても、強度、成形性、及び耐食性に優れ かつ耐軟化性にも優れたアルミニウム合金 造材を得ることができる上述の作用効果を 著に発揮させることができる。また、この 合には、上記特定の冷却速度での冷却を行 易くなる。
 また、上記鋳造工程は、ダイカスト法等の うに連続鋳造以外の方法によって行うこと できる。

 上記溶解工程においては、上記第1成分元 素と上記第2成分元素と上記第3成分元素とを 有し、残部がアルミニウムと不可避的不純 とからなるアルミニウム合金を用いる。

 上記アルミニウム合金は、上記第1成分元素 として、Feを0.8~5mass%含有する。
 アルミニウム合金にFeを添加した場合、強 、及び高温での強度(耐熱性)が向上する。ま た、金属組織的には、Al-Fe系化合物とAlとに って層状相を形成するようになる。
 Feが0.8mass%未満の場合には、十分な強度が得 られず、高温環境下における強度、即ち耐熱 性が低下したりするおそれがある。一方、5ma ss%を越える場合には、冷却速度に対応して特 性が大きく変化し易くなり、一定の特性を備 えた鋳造材を安定的に生産することが困難に なるという問題が生じる。具体的には、例え ば圧延を行った場合に、アルミニウム合金鋳 造材に割れが生じ易くなるおそれがある。ま た、この場合には、鋳造時に粗大な晶出物が 形成されやすくなり、加工性や成形性が低下 するおそれがある。好ましくは、上記第1成 元素Feの含有量は2.0~4.0mass%であることがよく 、より好ましくは3.0~4.0mass%がよい。

 上記第2成分元素としては、Tiを0.15~1mass%含 する。
 第2成分元素Tiを後述の第3成分元素と共に添 加した場合、合金組織を微細化することがで きるとともに、溶解状態から凝固する際に過 飽和固溶したものが、熱間圧延を行った場合 、あるいは冷間圧延後に熱処理を行った場合 に、アルミニウム母相中に析出して強度特性 を更に向上させることができる。
 Tiが0.15mass%未満の場合には、十分な耐熱性 耐軟化性が得られなくなるおそれがある。 方、1mass%を超える場合には、鋳造時に粗大 Al-Ti系晶出物が形成され易くなり、加工性や 成形性が悪くなるおそれがある。好ましくは 、上記第2成分元素Tiの含有量は0.3~0.9mass%であ ることがよく、より好ましくは0.7~0.8mass%がよ い。

 上記第3成分元素としては、Zr、Nb、Hf、Sc、 びYからなる第3成分元素群から選ばれる1種 上の元素を、個々の含有量が0.05~2mass%とな 量で含有する。
 上記第3成分元素は、上記第1成分元素Fe及び 上記第2成分元素Tiと共に添加することにより 、耐軟化性を向上させる効果を発揮する。す なわち、アルミニウム合金に第1成分元素Feを 添加した場合、上述のごとくAl-Fe系化合物とA l基地とによって層状相を形成するようにな 。さらに上記第2成分元素Ti、及び上記第3成 元素を上記特定量添加すると、熱エネルギ やひずみエネルギーが加わったときにAlとTi と第3成分元素とからなる安定な化合物(金属 化合物)相がアルミニウム母相内に析出する ため、強度特性や耐軟化性を向上させること ができる。そのため、熱間圧延、あるいは冷 間圧延後に加熱を行った場合に強度を向上さ せることができる。また、圧延加工を施さず に熱処理だけを行った場合にも同様に強度の 向上効果を得ることができる。
 上記第3成分元素群の個々の含有量が0.05mass% 未満の場合には、上記第3成分元素添加によ 上述の効果が充分に得られないおそれがあ 。一方、少なくとも1種の第3成分元素が2mass% を越える場合には、冷却速度を充分に高くし ないと大きな晶出物が生じやすくなり、加工 性や成形性が劣化するおそれがある。そのた め、生産が困難になる。好ましくは、上記第 3成分元素群の個々の含有量は0.2~1.2mass%であ ことがよく、より好ましくは0.5~1.2mass%がよ 。

 また、上記第3成分元素の合計含有量X(mass%) 、上記アルミナ合金における上記第1成分元 素Feの含有量をFe(mass%)、及び第2成分元素Tiの 有量をTi(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満足 する。
 X≧Feの場合には、上記アルミニウム合金鋳 材の強度が低下したり、耐軟化性が低下し りするおそれがある。X≦Tiの場合には、耐 化性が劣化するおそれがある。また、Fe≦Ti の場合には、上記アルミニウム合金鋳造材の 強度が低下したり、耐軟化性が低下したりす るおそれがある。

 また、上記溶解工程においては、上記第3成 分元素群のうち少なくともZrを0.2~1.2mass%含有 る上記アルミニウム合金を用いることが好 しい。
 この場合には、優れた強度特性及び成形性 維持しつつ、耐軟化性をより向上させるこ ができる。
 上記Zrの含有量が0.2mass%未満の場合には、Zr 加による上述の効果が充分に得られないお れがある。一方、1.2mass%を越える場合には 上記溶解工程においてアルミニウム合金を 解させるときの溶解温度が非常に高くなる それがある。そのため、溶解時に特別な装 が必要となり、製造コストが増大するおそ がある。

 また、上記溶解工程においては、さらに第4 成分元素としてMgを0.05~2mass%含有する上記ア ミニウム合金を用いることが好ましい。
 この場合には、成形性をほとんど損ねるこ なく上記アルミニウム合金鋳造材の強度を り向上させることができる。Mgが0.05mass%未 の場合には、Mg添加による強度の向上効果が 充分に得られず、Mg添加の意味がほとんどな なってしまうおそれがある。一方、2mass%を えて添加した場合には、上記アルミニウム 金鋳造材の加工性が悪くなり、例えば圧延 に圧延割れが発生するおそれがある。また 成形性が悪くなるおそれがある。より好ま くは、第4成分元素Mgの含有量は0.2mass%~1.5mass %がよく、さらに好ましくは0.3mass%~0.8mass%がよ い。

 上記溶解工程においては、Cu、Cr、及びCoか なる第5成分元素群から選ばれる1種以上の 5成分元素をさらに0.05~1mass%含有する上記ア ミニウム合金を用いることが好ましい。
 上記第5成分元素群のうちCuを含有する場合 は、上記アルミニウム合金鋳造材の加工性 ほとんど損ねることなく、強度を向上させ ことができる。また、上記第5成分元素群の うちCr及び/又はCoを含有する場合には、Al-(Fe, Cr)化合物及び/又はAl-(Fe,Co)化合物が形成され Al-Fe化合物単体が分散するよりも、伸び、 工性、及び成形性を向上させることができ 。その結果、加工性や成形性等をほとんど ねることなく、上記アルミニウム合金鋳造 の強度を向上させることができる。
 上記第5成分元素が0.05mass%未満の場合には、 該第5成分元素の添加による上述の効果が充 に得られないおそれがある。一方、上記第5 分元素群のうちCuを1mass%を越えて添加した 合には、加工性及び成形性が悪くなるおそ がある。また、この場合には、耐食性が劣 するおそれがある。また、上記第5成分元素 のうちCr及び/又はCoを1mass%を越えて添加し 場合には、成形性が悪くなるおそれがある より好ましくは、上記第5成分元素の含有量 、0.1mass%~0.7mass%がよく、さらに好ましくは0. 1mass%~0.5mass%がよい。
 なお、上記第5成分元素を2種類以上含有す 場合には、その合計量を0.05~1mass%という上記 範囲にすることが好ましい。

 上記溶解工程においては、さらに第6成分元 素としてV及び/又はMoを0.05mass%超え0.5mass%未満 含有する上記アルミニウム合金を用いること が好ましい。
 この場合には、上記アルミニウム合金鋳造 の加工性及び成形性をほとんど損ねること く、強度を向上させることができる。
 上記第6成分元素が0.05mass%以下の場合には、 該第6成分元素の添加による上述の効果が充 に得られないおそれがある。一方、0.5mass%以 上添加した場合には、溶解温度が著しく上昇 してしまうおそれがある。また、粗大な晶出 物が形成されやすくなり、加工性及び成形性 が悪くなるおそれがある。より好ましくは、 上記第6成分元素の含有量は0.1mass~0.4mass%がよ 、さらに好ましくは0.1mass%~0.3mass%がよい。 お、上記第6成分元素を2種類含有する場合に は、その合計量を0.05mass%未満かつ0.5mass%超過 いう上記範囲にすることが好ましい。

 上記アルミニウム合金においては、上記第4 成分元素と上記第5成分元素と上記第6成分元 との合計量を3mass%以下にすることが好まし 。
 上記第4~第6成分元素の合計量が3mass%を越え 場合には、上記アルミニウム合金鋳造材の 工性が悪くなり、例えば圧延時に圧延割れ 発生するおそれがある。またこの場合には 上記鋳造工程において晶出物が生じやすく り、成形性が劣化するおそれがある。

 また、本発明において、優れた強度、耐軟 性、耐食性、及び成形性を特に高レベルで ね備えた合金組成のアルミニウム合金の比 は、2.7g/cm 3 以上となる。

 また、上記溶解工程においては、上記アル ニウム合金を、その組成から決定される液 線温度から20℃以上高い温度(液相線温度+20 以上)で溶解させて溶湯を得る。
 溶解温度が液相線温度+20℃未満の場合には 十分な湯流れ性を得ることができず、鋳造 のアルミニウム合金鋳造材の内部に巣が形 され、健全なアルミニウム合金鋳造材を得 ことができなくなるおそれがある。

 次に、上記鋳造工程においては、上記アル ニウム合金の組成から決定される固相線温 より少なくとも10℃低い温度即ち、少なく も固相線温度-10℃に達するまで、上記溶湯 冷却速度150℃/sec以上かつ10000℃/sec未満で冷 しつつ板状に鋳造して上記アルミニウム合 鋳造材を得る。
 この場合には、上述したように耐軟化性等 特性に優れたアルミニウム合金鋳造材を得 ことができ、例えば熱エネルギーやひずみ ネルギーが加わったときに、AlとTiと第3成 元素とからなる安定な化合物(金属間化合物) 相がアルミニウム母相(上記α相)内に析出し 強度をより向上させることができる。また 粗大なAl-Fe系化合物あるいは他の元素を含み 構成される晶出相が形成されることを抑制す ることができ、延性、靱性等の低下を防止す ることができる。そのため、加工性及び成形 性等を低下させることなく、耐軟化性等の特 性を向上させることができる。

 上記鋳造工程における上記冷却速度が150℃/ sec未満の場合には、凝固過程で粗大な晶出物 が形成されるため、成形性が悪くなったり、 強度特性及び耐軟化性が低下したりするおそ れがある。また、10000℃/secを越える冷却速度 を実現するためには、特別な装置が必要とな るため、製造コストが増大するおそれがある 。また、10000℃/secを越える冷却速度を達成す る場合には、鋳造後のアルミニウム合金鋳造 材の形状をリボン状あるいは粉末状にする必 要がある。そのため、例えば圧延等の組成加 工に供するためには、事前に予備成形工程が 必要となる。
 したがって、本発明のように150℃/sec以上か つ10000℃/sec未満という冷却速度を規定するこ とにより、工業的に実現可能な低コストで高 品質なアルミニウム合金鋳造材を製造するこ とができる。また、本発明の規定範囲内の冷 却速度であれば、アルミニウム合金鋳造材の 断面内にアモルファス相が実質的には存在せ ず、例えば結晶化温度の前後で生じる特性変 化がほとんど生じない熱的安定性の高いアル ミニウム合金鋳造材を得ることができる。

 また、上記鋳造工程において、上記冷却速 による冷却を上記固相線温度-10℃に達する で行わなかった場合には、連続鋳造時に上 の溶湯の熱によって下流の鋳造材が局部的 再溶融し、粗大な晶出物が形成されるおそ がある。そのため、得られるアルミニウム 金鋳造材の金属組織が不均一になるおそれ ある。
 なお、上記冷却速度(150℃/sec以上かつ10000℃ /sec未満)による冷却は、少なくとも上記固相 温度-10℃に達するまで行えばよく、当該温 に達した以降は、上記の150℃/sec以上かつ100 00℃/sec未満という冷却速度からはずれる温度 で冷却してもよいし、この範囲の冷却速度で 冷却してもよい。好ましくは、上記冷却速度 (150℃/sec以上かつ10000℃/sec未満)による冷却は 、固相線温度-100℃に達するまで行うことが い。

 また、上記鋳型としては、銅製の鋳型を用 ることが好ましい。
 この場合には、上記鋳造工程において、150 /sec以上かつ10000℃/sec未満という範囲の冷却 速度を比較的簡単に実現することができる。

 上記鋳造工程においては、上記溶湯を厚さ0 .3~10mmの板状に連続鋳造することが好ましい
 板状への鋳造は、後述のように例えば単ロ ル式、双ロール式、ブロック式、ベルト式 イール式等の鋳造装置を用いて行うことが きる。
 厚さ0.3mm未満の場合には、ロール間、ブロ ク間、ベルト間への注湯やギャップ制御な が困難になり、アルミニウム合金鋳造材の 産が困難になるおそれがある。一方、10mmを える場合には、上述の150℃/sec以上という冷 却速度を確保することが困難になる。また、 冷却速度にばらつきが生じ、均一な特性のア ルミニウム合金鋳造材を得ることが困難にな るおそれがある。

 上記鋳造工程においては、上記溶湯の連続 造を単ロール式、双ロール式、ブロック式 ベルト式、又はホイール式で行うことが好 しい。
 上記単ロール式の連続鋳造法は、上記アル ニウム合金の溶湯を例えば銅製の回転単ロ ルに連続的に供給し、急冷凝固させること 板状のアルミニウム合金鋳造材を得る方法 ある。また、上記双ロール式の連続鋳造法 、例えば銅製の回転ロールを対に配置し、 ロールのギャップを任意に調整することで 却速度を制御することができ、単ロール法 同様に急冷凝固させることにより板状のア ミニウム合金鋳造材を得る方法である。ま 、上記ブロック式の連続鋳造法は、可動式 2つのブロック状冷却部材の間に溶湯を供給 し、該ブロック間で冷却固化させながら連続 的に板状に鋳造する方法である。また、上記 ベルト式の連続鋳造法は、可動式の2つのベ ト状冷却部材の間に溶湯を供給し、該ベル 間で冷却固化させながら連続的に板状に鋳 する方法である。また、上記ホイール式の 続鋳造法は、回転ホイールの外周面に形成 れた溝の一部に溶湯を注入して溝と押え(ロ ル)との間を通過させ、移動鋳型内で凝固さ せつつ連続的に引出しながら板状に鋳造する 方法である。
 これらの連続鋳造法においては、150℃/sec以 上かつ10000℃/sec未満という範囲の冷却速度を 比較的簡単に実現できると共に、優れた生産 性で上記アルミニウム合金鋳造材を製造する ことができる。

 上記鋳造工程においては、上記鋳型におい 上記溶湯の少なくとも表層を冷却固化させ 次いで水冷により冷却を行って板状に鋳造 ることができる。
 この場合には、例えば単ロール、及び双ロ ル式の連続鋳造法によって鋳造を行うとき 、径が小さな回転ロールを用いることがで る。即ち、径の小さな回転ロールを用いる 、ロール(鋳型)と溶湯との接触面積及び接 時間が不十分になり、上記溶湯を上述の冷 速度で固相線温度-10℃に達するまで冷却す ことが困難になる。これに対し、上記のご く、上記鋳型において少なくとも表層を固 させた溶湯に対して続けて水冷を行うと、 転ロールのロール径が小さい場合であって 、より確実に固相線温度-10℃に達するまで 上述の冷却速度で冷却を行うことができる

 また、上記鋳造工程後に得られる上記アル ニウム合金鋳造材に対して、熱エネルギー び/又はひずみエネルギーを加えるための各 種後処理工程を行うことができる。
 具体的には、上記第2の発明のように、上記 鋳造工程後の上記アルミニウム合金鋳造材に 対して温度200℃以上で熱間圧延加工を行うこ とにより、上記アルミニウム合金鋳造材の厚 みを30%以上圧下する熱間圧延工程を行うこと ができる。
 この場合には、上記アルミニウム合金材に いて、上記α相、及びAl-Fe系化合物とAlとの 晶組織からなる上記層状相が形成されるだ でなく、上述のごとく熱エネルギー及びひ みエネルギーにより、AlとTi(第2成分元素)と 第3成分元素とからなる安定な化合物(析出物) 相を上記Al基地中に析出させることができる そのため、上記アルミニウム合金鋳造材の 度をより向上させて上記アルミニウム合金 を得ることができる。なお、上記第6の発明 の上記アルミニウム合金材は、上記熱間圧延 工程を行うことにより作製することができる 。
 上記アルミニウム合金鋳造材の加熱温度が2 00℃未満の場合には、圧延割れや大きな耳割 が発生するおそれがある。これは特に溶質 度の高いアルミニウム合金を用いた場合に 著に発生する。また、熱エネルギーにより 度が向上するという上記アルミニウム合金 の特性を充分に引き出すことができないお れがある。その結果、上記熱間圧延工程後 、上記アルミニウム合金材の強度を充分に 上させることができないおそれがある。

 また、上記熱間圧延工程においては、鋳 工程後に得られる上記アルミニウム合金鋳 材の厚みを30%以上小さくする圧延加工を行 。圧下が30%未満の場合には、ひずみエネル ーが不十分となり、強度を充分に向上させ ことができなくなるおそれがある。

 また、上記熱間圧延工程は、上記鋳造工程 おいて上記溶湯を上記鋳型で温度200℃~500℃ まで冷却しながら板状に鋳造し、上記鋳型か ら剥離した後に行うことが好ましい。
 この場合には、上記鋳造工程後に得られる 度200℃~500℃のアルミニウム合金鋳造材を加 熱することなく、そのまま上記熱間圧延工程 に用いることができる。また、熱間圧延工程 でさらに加熱が必要な場合においても、その 加熱時間を短縮化できる。そのため、工数や 製造時間を少なくすることができ、製造コス トの低減を図ることができる。
 上記鋳造工程後の上記アルミニウム合金鋳 材の温度が200℃未満の場合には、上記熱間 延工程において、上記アルミニウム合金鋳 材を再度温度200℃以上に加熱する必要が生 る。一方、上記鋳造工程後の上記アルミニ ム合金鋳造材の温度が500℃を越える場合に 、上記層状相中のAl-Fe系化合物が粗大化し 強度が低下するおそれがある。また、この 合には、上記熱間圧延工程において、圧延 ールに対するダメージが大きくなり、ロー 寿命の低下を招くおそれがある。
 なお、本発明で用いるアルミニウム合金組 の範囲においては、上述の「固相線温度よ 少なくとも10℃低い温度」が上述の500℃以 になることはない。したがって、上記鋳造 程において500℃まで冷却しても、上述の「 相線温度より少なくとも10℃低い温度」まで の冷却は充分確保される。また、熱間圧延後 に、例えば450℃×1hのような高温焼鈍を行っ ももはや耐軟化性はほとんど変化しない。

 また、上記第3の発明のように、上記鋳造工 程後の上記アルミニウム合金鋳造材に対して 冷間圧延加工を行うことにより、上記アルミ ニウム合金鋳造材の厚みを30%以上圧下した後 、上記アルミニウム合金の融点の1/2以上かつ 550℃以下の温度で上記アルミニウム合金鋳造 材を加熱する冷間圧延-加熱工程を行うこと できる。
 この場合にも、上記熱間圧延工程と同様に 熱エネルギー及びひずみエネルギーにより 記アルミニウム合金鋳造材の強度をより向 させて上記アルミニウム合金材を得ること できる。
 上記アルミニウム合金鋳造材の加熱温度が 記アルミニウム合金の融点の1/2未満の場合 は、熱エネルギーにより強度が向上すると う上記アルミニウム合金鋳造材の特性を充 に引き出すことができないおそれがある。 の結果、冷間圧延して加熱した後の上記ア ミニウム合金鋳造材の強度を充分に向上さ ることができないおそれがある。一方、550 を越える場合には、粗大な化合物が形成さ たり、局部的に組成が溶融したりするおそ がる。その結果、上記アルミニウム合金材 強度等の特性が低下してしまうおそれがあ 。より強度を向上させるためには、上記冷 圧延-加熱工程における加熱温度は400℃~500 であることが好ましく、より好ましくは400 ~450℃であることがよい。
 なお、上記第6の発明の上記アルミニウム合 金材は、上記冷間圧延-加熱工程によっても 造することができる。

 また、上記第4の発明のように、上記鋳造工 程後の上記アルミニウム合金鋳造材を温度400 ℃以上で0.5時間~3時間加熱する熱処理工程を うことができる。
 この場合においても、熱エネルギーにより AlとTi(第2成分元素)と第3成分元素とからな 安定な化合物相を上記Al基地中に析出させる ことができる。そのため、上記アルミニウム 合金鋳造材の強度をより向上させて上記アル ミニウム合金材を得ることができる。
 上記アルミニウム合金鋳造材の加熱温度が4 00℃未満の場合又は加熱時間が0.5時間未満の 合には、熱エネルギーにより強度が向上す という上記アルミニウム合金鋳造材の特性 充分に引き出すことができないおそれがあ 。その結果、加熱後の上記アルミニウム合 鋳造材の強度を充分に向上させることがで ないおそれがある。一方、3時間を超えて加 熱しても強度特性はほとんど上昇せず、長時 間加熱するメリットはほとんど得られなくな る。より強度を向上させるためには、上記熱 処理工程における加熱温度は400℃~500℃であ ことが好ましく、加熱時間は1~2時間である とが好ましい。
 なお、上記第6の発明のアルミニウム合金材 は、上記熱処理工程によっても作製すること ができる。

 上記第1の発明によって製造されたアルミ ニウム合金鋳造材は、実質的に表面以外にア モルファス相が存在しない。

 次に、上記第5及び第6の発明について説明 る。
 上記第5の発明の上記アルミニウム合金鋳造 材及び上記第6の発明の上記アルミニウム合 材は、第1成分元素として0.8~5mass%のFeと、第2 成分元素として0.15~1mass%のTiとを含有すると に、Zr、Nb、Hf、Sc、及びYからなる第3成分元 群から選ばれる1種以上の第3成分元素を、 々の含有量が0.05~2mass%、かつ上記第1成分元 Feの含有量をFe(mass%)、第2成分元素Tiの含有量 をTi(mass%)、及び上記第3成分元素の合計含有 をX(mass%)としたとき、Fe>X>Tiを満足する で含有し、残部がAlと不可避的不純物とから なる。各成分元素の含有量の臨界意義は、上 記第1の発明と同様である。

 また、上記アルミニウム合金鋳造材及び上 アルミニウム合金材の金属組織は、Al基地 らなるα相と、該α相を取り囲むように形成 れ、かつ上記Al基地とAl-Fe系化合物との共晶 組織からなる層状相とを有する。
 上記第5の発明において、上記Al基地は、Al 過飽和固溶体からなり、該過飽和固溶体に 上記第2成分元素及び上記第3成分元素が固溶 している。
 上記第6の発明において、上記Al基地は、Al 及び/又はAlに上記第2成分元素及び上記第3成 分元素が固溶したAlの過飽和固溶体からなる 上記第6の発明において、固溶していた上記 第2成分元素及び上記第3成分元素が完全に析 した場合には、上記Al基地はAlからなる。
 上記第2成分元素及び上記第3成分元素は、 記層状相内の上記Al-Fe系化合物には固溶して おらず、上記α相及び/又は上記層状相内の上 記Al基地中に固溶している。

 また、上記第5の発明において、上記アルミ ニウム合金鋳造材の任意断面において、Alと 記第2成分元素と上記第3成分元素との化合 からなる粒径5μm以上の晶出物の占める面積 は5%未満になっている。好ましくは、粒径2. 5μm以上の晶出物の面積率が5%未満であること がよく、より好ましくは、実質的に上記α相 上記晶出物を含有していないことがよい。
 粒径5μm以上の晶出物の面積率が5%以上にな と、熱間圧延等により、上記アルミニウム 金鋳造材に熱エネルギーやひずみエネルギ を加わえたときに、強度特性や耐軟化性を 上させることができなくなるおそれがある

 上記第6の発明のアルミニウム合金材にお いては、Alと上記第2成分元素と上記第3成分 素との化合物からなる粒径2~500nmの析出物が 記Al基地中に分散されている。該析出物は 例えば上記α相の上記Al基地中に形成される 析出物の粒径が2nm未満の場合には、充分な 度が得られないおそれがある。一方、500nm 越える場合にも、強度が低下するおそれが る。

 上記第6の発明における析出物及び上記第5 発明における晶出物は例えば透過型電子顕 鏡観察によりその存在を確認することがで る。また、顕微鏡観察により、上記アルミ ウム合金鋳造材の任意断面における晶出物 び析出物の大きさ(粒径)を調べることができ る。晶出物及び析出物の粒径は、それぞれ上 記アルミニウム合金鋳造材の任意断面におけ る晶出物及び析出物と同面積の円を仮定し、 その円の直径(円相当径)と定義する。
 また、任意断面における上記晶出物の面積 合は、上記アルミニウム合金鋳造材の測定 象面を鏡面まで研磨した後、透過型電子顕 鏡で観察し、得られた像に対して画像解析 理装置を用いて面積率を測定する。面積率 、観察視野面積に対する観察視野面内にお る晶出物の面積の割合とする。但し、観察 野面積は少なくとも1mm 2 以上とする。

 上記第6の発明の上記アルミニウム合金材 は、上記第1の発明の製造方法によって得ら る上記アルミニウム合金鋳造材及び上記第5 発明の上記アルミニウム合金鋳造材に、熱 ネルギーやひずみエネルギーを加えること より得ることができる。これにより、例え 上記Al基地中に固溶していた上記第2成分元 と上記第3成分元素を上記析出物として析出 させることができる。

 上記第5及び第6の発明において、上記アル ニウム合金鋳造材及び上記アルミニウム合 材は、上記第3成分元素群のうち少なくともZ rを0.2~1.2mass%含有することが好ましい。
 この場合には、優れた強度特性及び成形性 維持しつつ、耐軟化性をより向上させるこ ができる。Zrの含有量の臨界意義は、上記 1の発明と同様である。

 また、上記アルミニウム合金鋳造材及び上 アルミニウム合金材は、第4成分元素として Mgを0.05~2mass%含有することが好ましい。
 この場合には、成形性をほとんど損ねるこ なく上記アルミニウム合金鋳造材及び上記 ルミニウム合金材の強度をより向上させる とができる。Mgの含有量の臨界意義は、上 第1の発明と同様である。

 上記第4成分元素としてのMgは、少なくとも 記Al基地中に固溶していることが好ましい
 また、上記第4成分元素としてのMgは、上記A l基地中でAl-Mg化合物を形成していることが好 ましい。
 これらの場合には、上記アルミニウム合金 造材及び上記アルミニウム合金材の強度を り一層向上させることができる。

 上記アルミニウム合金鋳造材及び上記ア ミニウム合金材は、Cu、Cr、及びCoからなる 5成分元素群から選ばれる1種以上の第5成分 素を0.05~1mass%含有することが好ましい。上 第5成分元素群のうちCuを含有する場合には 上記アルミニウム合金鋳造材及び上記アル ニウム合金材の加工性をほとんど損ねるこ なく、その強度を向上させることができる また、上記第5成分元素群のうちCr及び/又はC oを含有する場合には、上記アルミニウム合 鋳造材及び上記アルミニウム合金材の伸び 加工性、及び成形性を向上させることがで る。上記第5成分元素の含有量の臨界意義は 記第1の発明と同様である。

 上記第5成分元素としてのCr及び/又はCoは、 記層状相を構成する上記Al-Fe化合物の少な とも一部に置換してAl-(Fe,Cr)化合物及び/又は Al-(Fe,Co)化合物を形成していることが好まし 。
 この場合には、上記アルミニウム合金鋳造 及び上記アルミニウム合金材の伸び、加工 、及び成形性をより向上させることができ 。

 上記第5成分元素としてのCuは、上記Al基地 でAl-Cu化合物を形成していることが好ましい 。
 この場合には、上記アルミニウム合金鋳造 及び上記アルミニウム合金材の加工性をほ んど損ねることなく、その強度をより向上 せることができる。

 上記アルミニウム合金鋳造材及び上記アル ニウム合金材は、第4成分元素としてMgを0.05 ~2mass%、及び第5成分元素としてCuを0.05~1mass%含 有し、上記第4成分元素及び上記第5成分元素 、上記Al基地中でAl-Cu-Mg化合物を形成してい ることが好ましい。。即ち、上記第4成分と てのMgと、上記第5成分元素としてのCuとを含 有する場合には、上記Al基地中でAl-Cu-Mg化合 を形成していることが好ましい。
 この場合には、加工性をほとんど損ねるこ なく、上記アルミニウム合金鋳造材及び上 アルミニウム合金材の強度をより一層向上 せることができる。

 上記アルミニウム合金鋳造材及び上記アル ニウム合金材は、第6成分元素としてV及び/ はMoを0.05mass%超え0.5mass%未満含有することが 好ましい。
 この場合には、上記アルミニウム合金鋳造 及び上記アルミニウム合金材の加工性及び 形性をほとんど損ねることなく、強度を向 させることができる。上記第6成分元素の含 有量の臨界意義は、上記第1の発明と同様で る。

 上記第6成分元素としてのV及び/又はMoは、 記Al基地中で、Alとの化合物(Al-V化合物及び/ はAl-Mo化合物)、Alと上記第2成分元素Tiと上 第3成分元素Xとの化合物(Al-(V,X,Ti)、Al-(Mo,X,Ti) )を形成していることが好ましい。
 この場合には、上記アルミニウム合金鋳造 及び上記アルミニウム合金材の加工性及び 形性をほとんど損ねることなく、強度をよ 一層向上させることができる。

(実施形態例1)
 本例では、まず、表1~表4に示すごとく、複 種類の組成を有するアルミニウム合金より るアルミニウム合金鋳造材(連続鋳造材)を 製し、その耐軟化性等を調べ、本発明のア ミニウム合金鋳造材の優位性を明らかにし 。
 まず、本発明の範囲内にあるアルミニウム 金鋳造材(実施例1~48)について、その合金成 組成、比重、及び冷却速度を表1及び表2に す。
 また、比較のために、本発明に規定の成分 囲から外れるアルミニウム合金よりなるア ミニウム合金鋳造材(比較例1~20及び比較例28 ~37)、及び本発明に規定の範囲から外れる冷 速度で作製したアルミニウム合金鋳造材(比 例21~27)も準備した。こられの合金の成分組 と比重を表3及び表4に示す。
 なお、本例において、冷却速度は、鋳造工 において各組成のアルミニウム合金の溶湯 冷却されていく過程において、固相線温度 40℃の範囲を通過するときの速度をもって決 定した。

 本例では、図1に示すごとく、各アルミニウ ム合金鋳造材(実施例1~48、比較例1~20及び比較 例28~37)を連続鋳造によって作製し、その後、 耐軟化性評価のために各種後処理工程を行っ た。
 すなわち、図1(a)~(c)に示すごとく、各アル ニウム合金鋳造材を作製するに当たり、各 金組成から決定される液相線温度よりも20℃ 以上高い温度(溶解温度)で各アルミニウム合 を溶解させて溶湯を形成する溶解工程S1と この溶湯を表1~表4に示す各種冷却速度で少 くとも固相線温度より10℃低い温度まで冷却 し、さらに室温まで冷却し厚み1.2mmの板状に 造してアルミニウム合金鋳造材を得る鋳造 程S2とを行った。鋳造工程S2は、銅製のロー ルを用いた単ロール式の連続鋳造法によって 行った。

 また、鋳造工程S2後に得られた各アルミ ウム合金鋳造材(実施例1~48、比較例1~20、及 比較例28~37)に対して、後処理工程S3を行った 。後処理工程S3としては、下記の熱間圧延工 S3a(実施例1~36、実施例41~48、比較例1~20、及 比較例28~37)、冷間圧延-加熱工程S3b(実施例37 実施例39、及び実施例40)、熱処理工程S3c(実 例38)のいずれかを行った。各アルミニウム 金鋳造材に対して行った後処理工程の種類 表1~表4に示す。

 熱間圧延工程S3aにおいては、図1(a)に示すご とく、鋳造工程S2後のアルミニウム合金鋳造 を温度450℃に加熱し、熱間圧延加工によっ その厚みを40%圧下して厚み0.72mmのアルミニ ム合金材を得た。その後室温まで放冷した
 冷間圧延-加熱工程S3bにおいては、図1(b)に すごとく、上記鋳造工程S2後のアルミニウム 合金鋳造材に冷間圧延加工を施してその厚み を40%圧下させて厚み0.72mmのアルミニウム合金 材を得た。その後、アルミニウム合金の融点 の1/2以上の温度(本例においては450℃)でアル ニウム合金材を1時間加熱した。その後室温 まで放冷した。
 熱処理工程S3cにおいては、図1(c)に示すごと く、上記鋳造工程S2後のアルミニウム合金鋳 材を温度450℃で1時間加熱した。その後室温 まで放冷した。

 さらに、本例においては、図1(a)~(c)に示す とく、上記の後処理工程S3後に、アルミニウ ム合金材を300℃の温度に100時間保持(例えば エンジンの走行環境相当の温度域に長時間 露されたことを想定。)し、その後室温まで 冷する加熱工程S4を行った。
 以上のようにして、鋳造後に、後処理工程S 3、及び加熱工程S4を行ったアルミニウム合金 材(実施例1~実施例48、比較例1~20、及び比較例 28~37)を得た。

 また、本例においては、冷却速度の優位性 示すため、比較用として、表4に示す各組成 のアルミニウム合金を冷却速度150℃/未満で 造して、鋳塊を作製し、該鋳塊を圧延する とによってアルミニウム合金材を作製した( 較例21~比較例27)。
 即ち、図2(a)に示すごとく、まず鋳塊を作製 するに当たり、各合金の組成から決定される 液相線温度よりも200℃高い温度(溶解温度)に 合金を溶解して溶湯を作製する溶解工程S5 、該溶湯を冷却速度100℃/secで冷却すること より凝固させてアルミニウム合金鋳塊を得 凝固工程S6とを行った。これにより、厚み1. 2mmの板状のアルミニウム合金鋳塊を得た。

 鋳塊作製後、後処理工程S7として、熱間圧 工程S7a又は冷間圧延-加熱工程S7bを行った。 体的には、比較例21~23及び比較例25~27につい ては熱間圧延工程S7aを行い、比較例24につい は冷間圧延-加熱工程S7bを行った。
 熱間圧延工程S7aにおいては、図2(a)に示すご とく、上記凝固工程S6後のアルミニウム合金 塊を温度450℃に加熱し、熱間圧延加工によ てその厚みを40%圧下して厚み0.72mmのアルミ ウム合金材を得た。その後室温まで放冷し 。
 また、冷間圧延-加熱工程S7bにおいては、図 2(b)に示すごとく、上記凝固工程S6後のアルミ ニウム合金鋳塊に冷間圧延加工を施してその 厚みを40%圧下させて厚み0.72mmのアルミニウム 合金材を得た。その後、アルミニウム合金の 融点の1/2以上の温度(本例においては450℃)で1 時間加熱し、室温まで放冷した。

 さらに、図2(a)及び(b)に示すごとく、上記の 後処理工程S7後に、アルミニウム合金材を300 の温度に100時間保持(例えば、エンジンの走 行環境相当の温度域に長時間曝露されたこと を想定。)し、その後室温まで放冷する加熱 程S8を行った。
 以上のようにして、溶解工程S5、凝固工程S6 、後処理工程S7、及び加熱工程S8を行ったア ミニウム合金材(比較例21~比較例27)を得た。

 そして、実施例1~40及び比較例1~27におい 、後処理工程S3(S7)前のアルミニウム合金鋳 材の硬度HVR1、後処理工程S3(S7)後のアルミニ ム合金材の硬度HVR2、及び後処理工程S3(S7)後 に更に加熱工程S4(S8)を経たアルミニウム合金 材の硬度HVR3をそれぞれ測定し、その変化に って耐軟化性の評価を行った。なお、上記HV Rn(n:No)は残留硬さと呼され、一般には材料融 の1/2を越えるような高温域に曝されると、 留硬さは大きく低下するようになる。その うな観点から、高温域で長時間曝されても さ低下の少ないアルミニウム合金鋳造材を 討した。

 耐軟化性は、図3(a)に示すごとく、HVR1<HVR2 <HVR3のパターン(パターン1)となるものを優( ◎)とし、図3(b)に示すごとく、HVR1<HVR2、HVR1 <HVR3、かつHVR2>HVR3のパターン(パターン2) なるものを良(○)とし、それ以外の、例え 、図3(c)に示すごとく、HVR1>HVR2>HVR3のパ ーン(パターン3)となるものを不良(×)として 定する。各実施例1~48及び比較例1~37の耐軟 性の評価結果を表5~表8に示す。
 なお、図3(a)~(c)は、横軸にHVR1、HVR2、HVR3の 別を、縦軸にビッカース硬さHVをとったもの である。

 表5及び表6から知られるように、実施例1~48 アルミニウム合金鋳造材は、耐軟化性が上 パターン1又はパターン2の挙動を示してお 、耐軟化性に優れていることがわかる。
 一方、表7及び表8の結果から知られるよう 、Al-遷移元素合金において、遷移元素種の み合わせ又は鋳造時の冷却速度により、図3( a)(b)のパターン1、2を示す“上昇系(◎又は○) ”と、図3(c)のパターン3の“下降系(×)”に分 類されることがわかった。なお、表7に示す とく、下降系は汎用のAl合金において観察さ れる現象である。

 実施例1~48のアルミニウム合金鋳造材が上述 のごとく優れた耐軟化性を示す理由を調べる ために、これらの実施例うちの1種類のアル ニウム合金鋳造材(実施例11)について、熱間 延工程前後における合金組織の変化を走査 電子顕微鏡によって観察した。熱間圧延前 合金組織の顕微鏡写真を図4に示し、熱間圧 延後の合金組織の顕微鏡写真を図5に示した
 図4及び図5より知られるごとく、熱間圧延 には、Al基地からなるα相、及びAl-Fe系化合 とAl基地との共晶組織からなる層状相の金属 組織内において、Al基地中にAlとTiと第3成分 素とからなる安定な化合物相(析出物)が析出 していた。この安定な化合物相(析出物)によ て、耐軟化性が向上し、上述のごとく加工 加熱等を行った後において、強度が向上し と考えられる。なお、図5とは違う倍率で、 圧延後のアルミニウム合金材の合金組織を走 査型電子顕微鏡により観察した結果(写真)を 7に示す。図7よりも知られるごとく、実施 11のアルミニウム合金材1は、Al基地からなる α相2と、該α相2を取り囲むように形成された 層状相4とを有している。そして、熱間圧延 のアルミニウム合金材1(実施例11)の合金組織 においては、Al基地中に粒径約15nm以下の析出 物3が生じていることがわかる。

 また、熱間圧延工程前における実施例11の ルミニウム合金鋳造材の合金組織の走査型 子顕微鏡(SEM)の別写真を図8及び図9に示す。 8は、アルミニウム合金鋳造材(実施例11)の 金組織を倍率1000倍のSEMで観察した写真を示 、図9は、アルミニウム合金鋳造材(実施例11 )の合金組織を倍率5000倍のSEMで観察した写真 示す。なお、図9は、図8における晶出物が 生していた部分の拡大図である。
 また、実施例11の比較用として、熱間圧延 程前における比較例22のアルミニウム合金鋳 造材の合金組織の走査型電子顕微鏡写真を図 10及び図11に示す。図10は、アルミニウム合金 鋳造材(比較例22)の合金組織を倍率1000倍のSEM 観察した写真を示し、図11は、アルミニウ 合金鋳造材(比較例22)の合金組織を倍率5000倍 のSEMで観察した写真を示す。なお、図11は、 10における晶出物が発生していた部分の拡 図である。
 なお、走査型電子顕微鏡としては、株式会 日立製作所製のS-3600Nを用い、加速電圧15kV いう条件で観察を行った。

 図8及び図9に示すごとく、実施例11のアルミ ニウム合金鋳造材の合金組織においては、α 中に粒径5μm以上の晶出物(Alと第2成分元素Ti と第3成分元素Xとの化合物(Al x (Ti,X)))はほとんどなく、晶出物の面積率は5% 満であった。
 一方、図10及び図11より知られるごとく、比 較例22のアルミニウム合金鋳造材9の合金組織 においては、α相92のAl基地中に粒径5μm以上 粗大な晶出物93(Alと第2成分元素Tiと第3成分 素Xとの化合物(Al x (Ti,X)))が比較的多く(面積率5%以上)分散してい た。また、図9と図11とを比較して知られるご とく、比較例22においては、実施例11に比べ 、より大きな晶出物が発生していた。

 また、アルミニウム合金鋳造材(比較例22) の晶出物が観察された領域における成分分析 を行った結果を示す(図12参照)。同図におい は、アルミニウム合金鋳造材(比較例22)の走 型電子顕微鏡写真における直線A-Aで示した 域における各成分(Al、Zr、Ti、Fe)の相対的な 量をピークの大きさで示している。また、図 12において、Al、Ti、FeについてはKα線による ロファイルを示し、ZrについてはLα線によ プロファイルを示す。図12より知られるごと く、晶出物においては、第2成分元素Ti及び第 3成分元素Zrが多く存在しており、AlとTiとZrと の化合物を形成していることがわかる。なお 、各成分量の分析には、エダックス・ジャパ ン株式会社製のエネルギー分散型X線分析装 を用いた。

 また、熱間圧延前のアルミニウム合金鋳造 (実施例11)を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し 結果(写真)を図13に示す。透過型電子顕微鏡 としては株式会社日立製作所製のHF-2000を用 、観察は加速電圧200kVビーム径φ1nmという条 で行った。図13に示すごとく、実施例11のア ルミニウム合金鋳造材1の金属組織は、Al基地 からなるα相2と、該α相2を取り囲むように形 成された層状相4とを有している。次いで、 状相4における任意の位置(図13の点*1~*4)につ て、エネルギー分散型X線分析(EDX)を行うこ により、層状相4に存在する成分元素を調べ た。EDX分析は、エネルギー分散型X線分析装 としては、NORAN VOYAGERIII M3100を用い、検出 としては、Si/Li半導体検出器を用いた。測定 は、エネルギー分解能137eV、取込時間30秒と う条件で行った。その結果を図14~17に示す。
 図14~図17は、それぞれ図13における*1~*4の各 におけるEDXの分析結果を示す。

 同様に、熱間圧延後のアルミニウム合金材( 実施例11)についても透過型電子顕微鏡(TEM)で 察し、任意の四点*1~*4におけるEDX分析を行 た。TEM写真を図18に示し、図18の各点*1~*4に けるEDX分析の結果をそれぞれ図19~図22に示す 。
 図13~図17及び図18~図22より知られるごとく、 熱間圧延の前後に関わらず、層状相4には、Al 及びFeしか検出されておらず、第2成分元素Ti 第3成分元素Zrは存在していない(図13及び図1 8参照)。よって、第2成分元素Tiや第3成分元素 Zrはα相2のAl基地中に存在していることがわ る。

 次に、本例では、実施例1~実施例48及び比 較例1~37に関して、室温での強度、加工性、 形性、及び耐食性を評価した。評価方法は 次のように行った。

<強度>
 各アルミニウム合金材から引張試験片を切 出し、JIS Z2241に規定の引張試験を行って引 張強さを求めた。その結果を表5~表8に示す。
 また、引張試験によって測定した引張強さ 冷却速度との関係を図6に示す。図6は、横 に冷却速度(℃/sec)、縦軸に引張強さ(MPa)を示 した片対数グラフである。そして図6におい は、3種類のアルミニウム合金組成、即ちAl-2 Fe-1Zr-0.8Ti(比較例21、実施例48、実施例9、実施 例47、実施例46)、Al-4Fe-1Zr-0.8Ti(比較例22、実施 例43、実施例11、実施例42、実施例41)、Al-4Fe-1Z r-0.8Ti-0.5Mg(実施例45、実施例44)のアルミニウ 合金材について、冷却速度と引張強さとの 係を示した。

<加工性>
 加工性の判定は、圧延加工(熱間圧延又は冷 間圧延)後における圧延割れの発生の有無を 察することによって行った。
 即ち、圧延加工後の各アルミニウム合金材 表面を観察し、表面に圧延割れが観察され 場合を不良(×)とし、圧延割れが観察されな かった場合を良好(○)として評価した。なお 耳割れ(連続鋳造材の両端に発生する割れ) みが発生した連続鋳造材については、良好( )として評価した。実工程ではスリッターで 除去できるからである。その結果を表5~表8に 示す。なお、圧延を行っていないアルミニウ ム合金材(実施例38)については、加工性の評 は行っていない。

<成形性>
 成形性は、JIS H7701に規定の自動車アルミニ ウム合金板のヘミング加工限界評価試験を行 い、曲げ部分における表面の割れの発生を立 体顕微鏡で観察した。表面に割れが観察され た場合を不良(×)とし、割れが観察されなか た場合を良好(○)として評価した。その結果 を表5~表8に示す。

<腐食性>
 腐食性は、6061合金について腐食試験を行い 、その結果との比較により評価した。
 即ち、まず市販の6061合金(Al-1.1Mg-0.8Si-0.1Cu-0. 1Cr-0.03Ti)から一定の寸法の試験片を切り出し その重量W1を測定した。次いで、濃度5wt%のN aCl水溶液を用いて、試験片に対して塩水噴霧 試験を行った(JIS Z2371)。次いで、試験片の表 面に生成した腐食生成物を除去した後、試験 片の重量(W2)を測定した。そして、6061合金の 験片の重量変化率δWa(%)を、δWa=|W2-W1|×100/W1 いう式に基づいて算出した。
 一方、実施例1~48及び比較例1~37のアルミニ ム合金鋳造材についても、各アルミニウム 金鋳造材から一定寸法の試験片を作製し、 述の6061合金の場合と同様に塩水噴霧試験を った。そして、試験前の重量W3及び試験後 重量W4を測定し、各試験片の重量変化率δWb(% )を、δWb=|W4-W3|×100/W3という式に基づいて算出 した。
 腐食性の判定は、δWb<0.8δWaの場合を優(◎ )、0.8Wa≦Wb≦1.2Waの場合を良(○)とした。また 、δWb>1.2δWaの場合を不良(×)とした。その 果を表5~表8に示す。

 表5、表6及び図6より知られるごとく、実 例1~実施例48は、引張強さ230MPa以上という充 分な強度を示すと共に、耐軟化性、成形性、 及び耐腐食性にも優れたアルミニウム合金鋳 造材であることがわかる。

 実施例1~実施例48の結果(表5及び表6)からわ るように、ベースとなるAl-Fe合金に対し、第 2成分元素Ti、及び第3成分元素(Zr、Nb、Hf、Sc Y)を添加することにより、成形性及び耐食性 を損なうことなく、高強度なAl合金となる。 た、必要に応じて、第4成分元素Mg、第5成分 元素(Cu、Cr、Co)、第6成分元素(V、Mo)を添加す ことで、さらにその特性を向上させること できる。
 また、実施例1~実施例48は耐軟化性に優れ、 後工程において熱エネルギーやひずみエネル ギーを与えることにより、更に高強度化する ことも見出した。そして、使用環境(例えば 300℃に長時間曝される)において特性低下が めて少ない。それ故、本発明の合金は、例 ば自動車部品において好適に利用すること できる。

 これに対し、表7及び表8から知られるご く、本発明において規定する合金組成範囲 超えるアルミニウム合金を用いた場合(比較 1~比較例20、比較例28~比較例37)や、冷却速度 が不十分な場合(比較例21~27)には、合金鋳造 の特性が劣化していることがわかる。

 また、本例においては、鋳造工程後に冷間 延加工を行ったアルミニウム合金材及び圧 加工を行っていないアルミニウム合金鋳造 について、焼鈍(加熱)温度と残留硬さとの 係を調べた。
 具体的には、まず、上記実施例11と同様の 成及び条件(表1参照)でアルミニウム合金鋳 材を作製した。次いで、アルミニウム合金 造材に対して室温条件下で冷間圧延を行い アルミニウム合金鋳造材の厚みを50%圧下さ た。次いで、所定の温度で1時間加熱(焼鈍) 、加熱後のアルミニウム合金材の残留硬さ 調べた。そして、加熱(焼鈍)温度と残留硬さ との関係をグラフにプロットした。その結果 を図23に示す。なお、残留硬さの測定は、ビ カース硬さ試験機を用いて荷重100gf、保持 間20秒間という条件で行った。
 また、上記実施例11と同様の組成及び条件( 1参照)で作製したアルミニウム合金鋳造材 対して、圧延を行わずに各温度で焼鈍だけ 行った場合についても、加熱(焼鈍)温度と残 留硬さとの関係をグラフにプロットした。そ の結果を図23に示す。

 図23より知られるごとく、圧延後に加熱 た場合、圧延をせずに加熱した場合のいず においても、加熱により残留硬さを向上さ ることができる。特に、400℃~500℃で加熱し 場合には、残留硬さをより充分に向上させ ことができ、圧延を行った場合には、400℃~ 450℃で加熱した場合において、より一層残留 硬さを向上できることがわかる。

(実施形態例2)
 本例は、ダイキャストによりアルミニウム 金鋳造材を製造する例である。
 本例のアルミニウム合金鋳造材は、図24(a) び(b)に示すごとく、円柱状の土台部11と該土 台部11上に一体的に形成された縦L:90mm×横W:50m mの板状部15とを有する。板状部15は、それぞ 厚みの異なる大厚板部12(厚みt 1 :4mm)、中厚板部13(t 2 :3mm)、及び薄板部14(t 3 :2mm)からなる。大厚板部12、中厚板部13、及び 薄板部14は、厚みが異なる点を除いてそれぞ 縦L 1 :30mm×横W:50mmという同じ寸法で形成されてい 。

 本例においては、実施例形態例1と同様に、 特定組成のアルミニウム合金をその液相線温 度よりも20℃以上高い温度で溶解させて溶湯 作製し、該溶湯をダイキャストにより鋳造 、図24(a)及び(b)に示す形状のアルミニウム 金鋳造材1を作製した。
 具体的には、まず、Feを4mass%、Ti0.85をmass%、 及びZrを1mass%含有するAl合金を準備し、この 金の液相線温度よりも20℃以上高い温度(溶 温度)で合金を溶解させて溶湯を作製した。 いで、この溶湯を上述の所望の形状の金型 圧入し、鋳造した。図24(a)及び(b)に示すご く、大厚板部12、中厚板部13、及び薄板部14 それぞれ厚みが異なるため、鋳造時には、 れらは異なる冷却速度で冷却される。本例 おいては、大厚板部12、中厚板部13、及び薄 部14が、それぞれ80℃/sec、100℃/sec、400℃/sec という冷却速度で冷却されるように冷却を行 った。このようにして、図24(a)及び(b)に示す とくアルミニウム合金鋳造材1を作製した。

 次に、本例におい作製したアルミニウム合 鋳造材の合金組織を金属顕微鏡で観察した その結果を図25(a)~(c)に示す。図25(a)は薄板 の合金組織を示し、図25(b)は中厚板部の合金 組織を示し、図25(c)は大厚板部の合金組織を す。
 図25(a)に示すごとく、冷却速度400℃/secで冷 された薄板部14においては、合金組織中に 大な晶出物はほとんど形成されていない。 方、図25(b)及び(c)に示すごとく、冷却速度100 ℃/secで冷却された中厚板部13、冷却速度80℃/ secで冷却された大厚板部12においては、合金 織中に晶出物19が多く発生していた。

 次いで、薄板部、中厚板部、及び大厚板部 ついて、粒径5μm以上の晶出物の面積率を測 定した。具体的には、各薄板部、中厚板部、 大厚板部を鏡面まで研磨し、倍率1000倍の金 顕微鏡で鏡面を観察しながら画像解析処理 置を用いて観察視野面積(1mm 2 )における晶出物の面積率を測定した。その 果を後述の表9に示す。

 また、薄板部、中厚板部、大厚板部につ て、焼鈍前後における残留硬さの測定を行 た。その結果を表9に示す。なお、焼鈍は、 温度450℃、1時間という条件で行い、残留硬 の測定はビッカース硬さ試験機を用いて荷 100gf、保持時間20秒間という条件で行った。

 表9より知られるごとく、薄板部においては 、残留硬さが焼鈍後に大幅に増大していた。 一方、中厚板部及び大厚板部の残留硬さは、 焼鈍後においてあまり増大せず、焼鈍前後に おいてほとんど変わっていなかった。よって 、本例のアルミニウム合金鋳造材は、薄板部 において、特に優れた耐軟化性を示すことが わかる。
 本例のアルミニウム合金鋳造材において、 板部は、150℃/sec以上かつ10000℃/sec未満の冷 却速度で冷却された部分である。したがって 、ダイキャスト法によって鋳造を行った場合 においても、冷却速度を150℃/sec以上かつ10000 ℃/sec未満の範囲に調整することによって、 発明の作用効果を得ることができると考え れる。




 
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