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Patent Searching and Data


Title:
ANTIFOULING MEMBER AND LAMINATED GLASS USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/123553
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are an antifouling member and a laminated glass using the antifouling member. Specifically disclosed is an antifouling member comprising a glass substrate, a photocatalytically active layer formed on a surface of the glass substrate, and an overcoat layer arranged on the photocatalytically active layer. This antifouling member is characterized in that the photocatalytically active layer has a geometrical thickness of 5-500 nm. The antifouling member is further characterized in that (A) the overcoat layer contains at least one oxide selected from the group consisting of tantalum oxide, tin oxide, silicon nitride, silicon oxynitride, and oxides containing silicon and tin, while having a geometrical thickness of 0.5-70 nm, or (B) the overcoat layer contains an oxide containing silicon and zirconium, while having a geometrical thickness of 0.5-150 nm. Also specifically disclosed is a laminated glass wherein the antifouling member is bonded with another glass substrate through an intermediate film in such a manner that the side opposite to the front side of the antifouling member faces the another glass substrate.

Inventors:
TAKAHASHI AKIRA (JP)
FUKAWA MAKOTO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/056605
Publication Date:
October 16, 2008
Filing Date:
April 02, 2008
Export Citation:
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Assignee:
ASAHI GLASS CO LTD (JP)
TAKAHASHI AKIRA (JP)
FUKAWA MAKOTO (JP)
International Classes:
C03C17/34; B01J35/02; C03C27/12
Domestic Patent References:
WO2005040056A22005-05-06
WO2002053369A12002-07-11
Foreign References:
JP2001130928A2001-05-15
Attorney, Agent or Firm:
SENMYO, Kenji et al. (SIA Kanda Square17, Kanda-konyacho,Chiyoda-k, Tokyo 35, JP)
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Claims:
 ガラス基板と、前記ガラス基板の基板面上に形成された光触媒活性層と、前記光触媒活性層の上に積層されたオーバーコート層と、を備える防汚性物品であって、
 前記光触媒活性層の幾何学的膜厚が5~500nmであって、
 前記オーバーコート層が、(A)酸化タンタル、酸化スズ、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、およびケイ素とスズを含む酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物を含有し、幾何学的膜厚が0.5~70nmであるか、または(B)ケイ素とジルコニウムを含む酸化物を含有し、幾何学的膜厚が0.5~150nmである、ことを特徴とする防汚性物品。
 前記オーバーコート層が、-55~-10mVのゼータ電位を有する請求項1に記載の防汚性物品。
 前記オーバーコート層がケイ素とジルコニウムを含む酸化物を含有し、含有する前記ケイ素原子および全金属原子の合計に対する、前記ケイ素原子および前記ジルコニウム原子の合計の濃度が80~100原子%であり、前記ケイ素原子および前記ジルコニウム原子の合計に対する、前記ケイ素原子の濃度が60~95原子%である、請求項1または2に記載の防汚性物品。
 前記オーバーコート層がケイ素とジルコニウムを含む酸化物を含有し、幾何学的膜厚が50~150nmである、請求項3に記載の防汚性物品。
 ケイ素とジルコニウムを含む酸化物からなる前記オーバーコート層の上に、さらにトップコート層を備える防汚性物品であって、
 前記トップコート層が、窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化スズ、およびケイ素とスズを含む酸化物からなる群から選ばれる少なくとも1種からなる請求項3または4に記載の防汚性物品。
 前記トップコート層の幾何学的膜厚が0.5~70nmである請求項5に記載の防汚性物品。
 前記トップコート層のゼータ電位が-55~-10mVである請求項5または6に記載の防汚性物品。
 第1のガラス基板と、光触媒活性層およびオーバーコート層を含む第2のガラス基板と、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に介在された中間膜と、を備え、前記第2のガラス基板が室内側に配される合わせガラスであって、
 前記第2のガラス基板が、請求項1~7のいずれかに記載の防汚性物品である合わせガラス。
Description:
防汚性物品およびこれを用いる わせガラス

 本発明は、防汚性能を長時間維持する防 性物品およびこれを用いる合わせガラスに する。

 近年、有機物の汚れを分解すること等を目 として、チタニア(TiO 2 )等の金属酸化物半導体の光触媒層を有する ラスが自動車や建築用等の窓ガラスとして 案されている。また、光触媒層の表面には 傷や汚れを防ぐことや、親水性をより高め ことを目的としてオーバーコート層を設け ことが行われている(例えば、特許文献1参照 )。

特開2005-163018号公報

 本発明者らは、従来の、光触媒層の表面 設けられたオーバーコート層においては、 内や室内に存在する有機物(例えば、車のシ ートからブリードアウトした可塑剤等)がオ バーコート層の表面に付着、吸着しやすい と;有機物がオーバーコート層上に堆積して く堆積速度が、光触媒活性層の働きによっ オーバーコート層で有機物が分解される分 速度より速く、従来のオーバーコート層が 機物によって汚れやすいこと;を見出した。

 さらに、本発明者らは、従来のオーバー ート層が上述のとおり有機物が付着、吸着 やすく、有機物の堆積速度が分解速度より いことによって、経時的にオーバーコート が汚れ、これが原因となって防汚性物品の 親水性が失われて、ガラスが高湿度環境に かれたときにオーバーコート層に曇りを生 やすくなるという問題点を見出した。

 そこで、本発明の目的は、有機物が付着 吸着し難い性質(以下、難吸着性と記載する 。)を持つオーバーコート層を有する、優れ 防汚性能を長時間維持する防汚性物品を提 すること、および当該防汚性物品を用いた わせガラスを提供することである。

 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研 した結果、ガラス基板と、前記ガラス基板 片側表面上に積層された光触媒活性層と、 記光触媒活性層の上に積層された特定のオ バーコート層とを備える防汚性物品が優れ 防汚性を長時間維持すること、およびこの うな物品を備える合わせガラスが優れた防 性を長時間維持することを見出し、本発明 完成させた。
すなわち、本発明は、下記(1)~(8)を要旨とす ものである。

 (1)ガラス基板と、前記ガラス基板の基板面 に形成された光触媒活性層と、前記光触媒 性層の上に積層されたオーバーコート層と を備える防汚性物品であって、
前記光触媒活性層の幾何学的膜厚が5~500nmで って、
前記オーバーコート層が、(A)酸化タンタル、 酸化スズ、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素および ケイ素とスズを含む酸化物からなる群から選 ばれる少なくとも1種の酸化物を含有し、幾 学的膜厚が0.5~70nmであるか、または(B)ケイ素 とジルコニウムを含む酸化物を含有し、幾何 学的膜厚が0.5~150nmである、ことを特徴とする 防汚性物品。
 (2)前記オーバーコート層のゼータ電位が-55~ -10mVである上記(1)に記載の防汚性物品。
 (3)前記オーバーコート層がケイ素とジルコ ウムを含む酸化物を含有し、含有する前記 イ素原子および全金属原子の合計に対する 前記ケイ素原子および前記ジルコニウム原 の合計の濃度が80~100原子%であり、前記ケイ 素原子および前記ジルコニウム原子の合計に 対する、前記ケイ素原子の濃度が60~95原子%で ある、上記(1)または(2)に記載の防汚性物品。
 (4)前記オーバーコート層がケイ素とジルコ ウムを含む酸化物を含有し、幾何学的膜厚 50~150nmである、上記(3)に記載の防汚性物品
 (5)ケイ素とジルコニウムを含む酸化物から る前記オーバーコート層の上に、さらにト プコート層を備える防汚性物品であって、 記トップコート層が、窒化ケイ素、二酸化 イ素、酸窒化ケイ素、酸化タンタル、酸化 ズ、およびケイ素とスズを含む酸化物から る群から選ばれる少なくとも1種からなる上 記(3)または(4)に記載の防汚性物品。
 (6)前記トップコート層の幾何学的膜厚が0.5~ 70nmである上記(5)に記載の防汚性物品。
 (7)前記トップコート層のゼータ電位が-55~-10 mVである上記(5)または(6)に記載の防汚性物品
 (8)第1のガラス基板と、光触媒活性層および オーバーコート層を含む第2のガラス基板と 前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板 との間に介在された中間膜とを備え、前記第 2のガラス基板が室内側に配される合わせガ スであって、前記第2のガラス基板が、上記( 1)~(7)のいずれかに記載の防汚性物品。

 本発明の防汚性物品および当該防汚性物 を用いた合わせガラスは、有機物が付着、 着し難い性質を持ち、優れた防汚性を長時 維持することができる。

本発明において防曇性を評価するため 使用する防曇性能評価装置を模式的に示す 略図である。 高湿槽2がその内壁面に備えているテス トパターンを模式的に示す概略図である。 本発明の防汚性物品の一例の断面を模 的に示す断面図である。 本発明の防汚性物品の一例の断面を模 的に示す断面図である。 本発明の合わせガラスの一例の断面を 式的に示す断面図である。 例9~12の防汚性物品について、可視光線 照射時間に対する水滴の接触角の関係を示す グラフである。 例9~12、および例14の防汚性物品につい 、可視領域の各波長に対する反射率の関係 示すグラフである。

符号の説明

  300   防曇性能評価装置
  1   防汚性物品サンプル
  2   高湿槽
  3   間仕切り
  4   ウォーターバス
  8   テストパターン
  9   D群
  10  C群
  500、600   防汚性物品
  501、601、713   ガラス基板
  503、603、703   光触媒活性層
  505、605、705   オーバーコート層
  607、707   トップコート層
  700   合わせガラス
  701   第2のガラス基板(本発明の防汚性物 品)
  709   中間膜
  711   第1のガラス基板

 本発明の防汚性物品は、ガラス基板と、 記ガラス基板の基板面上に形成された光触 活性層と、前記光触媒活性層の上に積層さ たオーバーコート層と、を備える防汚性物 であって、前記光触媒活性層の幾何学的膜 が5~500nmであって、前記オーバーコート層が 、(A)酸化タンタル、酸化スズ、窒化ケイ素、 酸窒化ケイ素およびケイ素とスズを含む酸化 物からなる群から選ばれる少なくとも1種、 たは(B)ケイ素とジルコニウムを含む酸化物 らなることを特徴とする防汚性物品である

 以下、これを本発明の第1の態様の防汚性物 品という。
 本発明の防汚性物品に用いられるガラス基 は、無色透明の材料に限られず、例えば、 過率が本発明の目的を損なわない範囲で着 している材料を用いることができる。特に ラス板が好ましい。

 ガラス板は特に制限されず、例えば、透 または着色のフロートガラス(フロート法で 製造されたガラス)、着色させた熱線吸収ガ スが挙げられる。具体的には、ソーダライ ガラスに鉄イオン等の着色成分を含有させ 熱線吸収ガラスが好適に用いられる。また アルカリガラスを用いることもできる。こ らのガラス板は強化処理が施されていても い。

 本発明の防汚性物品に用いられる光触媒 性層は、光触媒活性を有する層であり、ガ ス基板の片側表面上に積層されている層で る。光触媒活性層は、被膜に付着した有機 を分解して汚れをなくするまたは少なくす 性能(防汚性)や、超親水性を有する。

 光触媒活性層を構成する材料は特に制限さ ず、例えば、金属酸化物半導体が挙げられ 。具体的には例えば、酸化チタン、酸化タ グステンのような金属酸化物;これらの金属 酸化物に窒素がドープされたもの(例えば、 素がドープされた酸化チタン)、これらの金 酸化物に硫黄ドープされたもの(例えば、硫 黄がドープされた酸化チタン)等が挙げられ 。光触媒活性層は、防汚性により優れると う観点から、酸化チタン、窒素がドープさ た酸化チタン(以下、TiO x :Nとも記載する)等が好ましい。

 従来の光触媒活性層は紫外線によって光 媒活性を有する化合物中の電子を励起させ ことによってその効果を発揮するものであ が、近年可視光に応答する性能(つまり、紫 外線より低いエネルギーで電子を励起させう る性能)を有する光触媒が研究されている。

 また、紫外線による応答性を有する光触 活性層を備える防汚性物品は、合わせガラ にも応用することができる。合わせガラス 応用する場合、例えば、防汚性物品と、樹 製の中間膜と、別のガラス基板とを積層し 合わせガラスとするが、室内または車内で 紫外線量を減少させることを目的として、 記中間膜に紫外線吸収剤を添加したポリビ ルブチラール等の樹脂を使用し、中間膜に って紫外線を吸収させる場合がある。しか 、この場合室内または車内における紫外線 が低下するため光触媒活性層の光触媒活性 十分に発揮されないという問題が生じる。

 これに対して、可視光は紫外線に比べてそ 量が多く、合わせガラスの中間膜を透過す ことができる。そこで、可視光に対して応 することができ、室内または車内において 防汚性を発揮することができるという観点 ら、窒素がドープされた酸化チタン(TiO 2 :N)が好ましい。なお、これらは紫外線に対し ても応答性を有する。
 光触媒活性層を構成する材料は、それぞれ 独で、または2種以上を組み合わせて使用す ることができる。

 本発明の第1の態様の防汚性物品において 、光触媒活性層の幾何学的膜厚が5nm未満では 防汚性が不十分となるおそれがあり、500nm超 は防汚性の向上への寄与が小さくなる一方 生産コストが嵩むおそれがある。光触媒活 層の幾何学的膜厚は好ましくは10~300nmであ 、より好ましくは50~300nmである。

 本発明の第1の態様の防汚性物品は、オー バーコート層を備えることによって、有機物 等(例えば、空気中に浮遊している、ジオク ルフタレート(DOP)のような可塑剤)の汚れを の表面に吸着または付着させにくく(難吸着 )、汚れの蓄積を防止し、防汚性を維持でき る。

 オーバーコート層として、(A)酸化タンタ 、酸化スズ、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素お びケイ素とスズを含む酸化物からなる群か 選ばれる少なくとも1種からなるオーバーコ ート層を用いると、上述の効果に加えて、超 親水性および防曇性を長時間に亘って維持す ることができる。該オーバーコート層の幾何 学的膜厚は、防汚性、難吸着性、有機物分解 性、超親水性および防曇性に優れるという観 点から0.5~70nmであり、防汚性、難吸着性、有 物分解性、超親水性および防曇性により優 るという観点から1~20nmであるのが好ましい

 オーバーコート層として(B)ケイ素とジル ニウムを含む酸化物(以下、ZrSiOともいう)か らなるオーバーコート層を用いると、防汚性 、難吸着性および有機物分解性を維持しつつ 、さらに可視光線に対する高い反射防止性を 実現することができる。ZrSiOからなるオーバ コート層の幾何学的膜厚は、防汚性、難吸 性および有機物分解性に優れるという観点 ら0.5~150nmであり、防汚性、難吸着性および 機物分解性に加えて、可視光線に対する反 防止性に優れるという観点から50~150nmが好 しく、可視光線に対する反射防止性により れるという観点から70~100nmであるのがより好 ましい。ZrSiOからなるオーバーコート層の幾 学的膜厚は、ケイ素原子とジルコニウム原 との割合により、この範囲において適宜決 ることができる。

 また、ZrSiOからなるオーバーコート層の 何学的膜厚は、防汚性、難吸着性および有 物分解性に加えて、超親水性および防曇性 優れるという観点からは0.5~70nmがより好まし く、防汚性、難吸着性、有機物分解性、超親 水性および防曇性により優れるという観点か ら、1~20nmであるのがより好ましい。

 ZrSiOは、ケイ素原子とジルコニウム原子 を含む酸化物であれば特に制限されない。Zr SiOにおけるケイ素原子およびジルコニウム原 子を合計した濃度は、親水性に優れるという 観点から、酸化物に含まれるケイ素原子およ び金属原子(金属原子はジルコニウム原子を む。)の合計量Aに対して80~100原子%であるの 好ましく、90~100原子%であるのがより好まし 。

 ZrSiOに含まれるケイ素原子の濃度は、光反 防止性により優れ、親水性に優れるという 点から、ZrSiOに含まれるケイ素原子およびジ ルコニウム原子の合計量Bに対して60~95原子% あるのが好ましく、65~90原子%であるのがよ 好ましい。
 ZrSiOに含まれるジルコニウム原子の量は、 視光線に対する反射防止性により優れ、親 性に優れるという観点から、合計量B中の5~40 原子%であるのが好ましく、10~35原子%である がより好ましい。

 オーバーコート層は、有機物等の汚れを 着または付着させにくく、汚れの蓄積を防 し、超親水性を長時間維持することができ という観点から、ゼータ電位が-55~-10mVであ 材料からなる層を用いるのが好ましい。オ バーコート層のゼータ電位は-55~-25mVである がより好ましい。ゼータ電位がこのような 囲である場合、オーバーコート層を構成す 材料の分子内の極性の強さが適切なものと り、有機物等の汚れを吸着や付着させにく と考えられる。

 このようなゼータ電位を有する層を形成 得る材料としては、酸化タンタル、酸化ス 、窒化ケイ素等が挙げられる。オーバーコ ト層を形成する材料は、それぞれ単独でま は2種以上を組み合わせて使用することがで きる。

 オーバーコート層は、光触媒活性層の上 配置される。ガラス基板の光触媒活性層が けられている側の面の最表層にオーバーコ ト層を配置するのが好ましい態様の1つとし て挙げられる。特に、(A)酸化タンタル、酸化 スズ、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素およびケイ 素とスズを含む酸化物からなる群から選ばれ る少なくとも1種からなるオーバーコート層 用いる場合は、ガラス基板の光触媒活性層 設けられている側の面の最表層にオーバー ート層を配置するのが、超親水性および防 性を長時間維持するために好ましい。

 次に本発明の第2の態様の防汚性物品につ いて説明する。本発明の第2の態様の防汚性 品は、ガラス基板と、前記ガラス基板の片 表面上に積層された光触媒活性層と、前記 触媒活性層の上に積層されたZrSiOからなるオ ーバーコート層と、前記オーバーコート層の 上に積層されたトップコート層とを備える防 汚性物品であって、前記トップコート層が、 窒化ケイ素、二酸化ケイ素、酸窒化ケイ素、 酸化タンタル、酸化スズ、およびケイ素とス ズを含む酸化物からなる群から選ばれる少な くとも1種からなる防汚性物品である。

 近年、有機物の汚れを分解すること等を目 として、チタニア(TiO 2 )等の金属酸化物半導体の光触媒層を有する ラスが自動車用や建築用等のガラスとして 案されているが、TiO 2 のような材料はガラスに比して屈折率が高い ため可視光反射率が高くなり、その外観が損 なわれる課題があった。このため、光触媒活 性層の下層や上層に光触媒活性層より屈折率 が低い材料の層を積層して、光触媒活性層付 きガラスの可視光に対する反射率を低減させ ることが行われている(例えば、特開2005-165014 号公報)。
 光触媒活性層よりも屈折率の低い材料とし は、フッ化マグネシウムや二酸化ケイ素等 知られているが、これらの材料を採用する 、光触媒活性を低下する場合があった。

 本発明者は、光触媒活性層と光反射防止 層とを有するガラス基板においては、光反 防止性と防汚性との両立について改善の余 があることから、本発明の第2の態様の防汚 性物品を発明するに至った。

 すなわち、本発明の第2の態様の防汚性物 品は、有機物等(例えば、空気中に浮遊して るジオクチルフタレート(DOP)のような可塑剤 )の汚れをその表面に吸着または付着させに く(難吸着性)し、汚れの蓄積を防止して、長 時間に渡り高い防汚性を有するとともに、超 親水性を長時間維持することができ、長時間 に渡り高い防曇性を有する。さらに、可視光 に対して優れた低反射性を有する。

 本発明の第2の態様にかかる防汚性物品の オーバーコート層に用いられるZrSiOは、ケイ 原子とジルコニウム原子とを含む酸化物で れば特に制限されない。ZrSiOにおけるケイ 原子およびジルコニウム原子を合計した濃 は、親水性に優れるという観点から、ZrSiOに 含まれるケイ素原子および金属原子(金属原 はジルコニウム原子を含む。)の合計量Aに対 して80~100原子%であるのが好ましく、90~100原 %であるのがより好ましい。

 ZrSiOに含まれるケイ素原子の濃度は、光 射防止性により優れ、親水性に優れるとい 観点から、ZrSiOに含まれるケイ素原子および ジルコニウム原子の合計量Bに対して60~95原子 %であるのが好ましく、65~90原子%であるのが り好ましい。ZrSiOに含まれるジルコニウム原 子の量は、可視光線に対する反射防止性によ り優れ、親水性に優れるという観点から、合 計量B中の5~40原子%であるのが好ましく、10~35 子%であるのがより好ましい。

 ZrSiOからなるオーバーコート層の幾何学 膜厚は、防汚性、難吸着性および有機物分 性に優れるという観点から0.5~150nmが好まし 、防汚性、難吸着性および有機物分解性に えて、可視光線に対する反射防止性に優れ という観点から50~150nmがより好ましく、可視 光線に対する反射防止性により優れるという 観点から70~100nmであるのがより好ましい。ZrSi Oからなるオーバーコート層の幾何学的膜厚 、ケイ素原子とジルコニウム原子との割合 より、この範囲において適宜決めることが きる。

 トップコート層の幾何学的膜厚は、防汚 、難吸着性、有機物分解性、超親水性およ 防曇性に優れるという観点から0.5~70nmであ 、防汚性、難吸着性、有機物分解性、超親 性および防曇性により優れるという観点か 1~20nmであるのが好ましい。

 トップコート層は、有機物等の汚れを吸着 たは付着させにくく、汚れの蓄積を防止し 超親水性を長時間維持することができ、防 性に優れるという観点から、ゼータ電位が- 55~-10mVであるのが好ましく、-55~-25mVであるの より好ましい。このような範囲である場合 オーバーコート層を構成する材料の分子内 極性の強さが適切なものとなり、有機物等 汚れを吸着や付着させにくいと考えられる このようなゼータ電位を有する層を形成し る材料としては、酸化タンタル、酸化スズ 窒化ケイ素が挙げられる。
 トップコート層を形成する材料は、それぞ 単独でまたは2種以上を組み合わせて使用す ることができる。
 トップコート層は、ガラス基板の光触媒活 層が設けられている側の面の最表層に配置 れるのが好ましい態様の1つとして挙げられ る。

 本発明の第2の態様の防汚性物品が備える 光触媒活性層および酸化物層の数は特に制限 されない。光触媒活性層を少なくとも1層と ZrSiOからなるオーバーコート層を少なくとも 1層と、トップコート層とを備えることがで る。さらに、例えば、光触媒活性層を2層以 とすることもできる。また、ZrSiOからなる ーバーコート層を2層以上とすることもでき 。光触媒活性層を2層以上とする場合、ガラ ス基板の上に、光触媒活性層とZrSiO層とが交 に、かつ合計の積層数が2以上である防汚性 物品とすることができる。

 また、ガラス基板を用いる場合、ガラス基 からアルカリ成分が溶出して光触媒活性層 損傷を与える場合がある。このようなアル リ成分による損傷を抑えるために、ガラス 板と光触媒活性層との間にアルカリバリヤ を設けることもできる。アルカリバリヤ層 、二酸化ケイ素からなる層が好ましい。
 本発明の防汚性物品はその製造方法につい 特に制限されない。

 第1の態様の防汚性物品の製造方法として は、ガラス基板の片側表面上に光触媒活性層 を形成する光触媒活性層形成工程と、光触媒 活性層の上にオーバーコート層を形成するオ ーバーコート層形成工程とを具備する方法(1) が挙げられる。

 第2の態様の防汚性物品の製造方法として は、ガラス基板の片側表面上に光触媒活性層 を形成する光触媒活性層形成工程と、光触媒 活性層の上にZrSiOからなるオーバーコート層 形成するオーバーコート層形成工程と、ZrSi Oからなるオーバーコート層の上にトップコ ト層を形成するトップコート層形成工程と 具備する方法(2)が挙げられる。方法(2)にお て、光触媒活性層形成工程とZrSiOからなるオ ーバーコート層形成工程とを繰り返して行う ことができる。

 方法(1)について以下に説明する。
 光触媒活性層形成工程において、ガラス基 の片側表面上に光触媒活性層を形成して、 ラス基板の上に光触媒活性層を積層させる
 ガラス基板の片側表面上に光触媒活性層を 成する方法としては、例えば、スパッタリ グ法、CVD法、湿式法(スプレー法など)等が げられる。なかでも、大面積の基板に層を 成する際に、膜厚の均一性に優れるという 点から、スパッタリング法が好ましい。

 スパッタリング法としては、例えば、マ ネトロンカソードを用いたDC(直流)スパッタ リング方式、AC(交流)スパッタリング方式、RF スパッタリング方式、パルス電源を用いたパ ルススパッタリング方式、2本のマグネトロ カソードを用いデュアルマグネトロンスパ タリング方式などが挙げられる。これらの 式のいずれを用いてもよい。

 なお、本発明において、複数の金属原子 含む酸化物をスパッタリング法で成膜する きは、複数の金属原子を含むターゲット(以 下、混合ターゲットと記載する)を使ってス ッタリング法を行ってもよく、成膜チャン ー内に複数のターゲットを設置して同時に パッタリングを行ってもよい。本発明にお ては、混合ターゲットを用いる場合、ター ットに含まれる金属原子の比率と得られる に含まれる金属原子の比率の組成とは一致 る。

 光触媒活性層として酸化チタン層を製造 る場合は、ターゲットとしてTiOx(x<2)を用 、スパッタガスとして酸素原子を含むガス 含有するガス雰囲気中で反応性スパッタリ グ法を行う方法が好適に挙げられる。光触 活性層として窒素がドープされた酸化チタ 層を製造する場合は、ターゲットとしてTiOx (x<2)を用い、スパッタガスとして窒素原子 含むガスを含有するガス雰囲気中で反応性 パッタリング法を行う方法が好適に挙げら る。ここでxは、1.6<x<2である。

 本明細書において窒素原子を含むガスを含 するガスとは、窒素原子を含むガスを含有 るものであればよく、特に限定されない。 えば、窒素原子を含むガス、窒素原子を含 ガスと不活性ガスとの混合ガス等が挙げら る。窒素原子を含むガスとしては、例えば 窒素ガス(N 2 )、N 2 O、NO、NO 2 、NH 3 等が挙げられる。これらは、単独でまたは2 以上を混合して用いられる。

 本明細書において不活性ガスとは、例え 、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプト 、キセノン等の希ガスが挙げられる。中で 、経済性および放電のしやすさの点から、 ルゴンが好ましい。これらは、単独でまた 2種以上を混合して用いられる。

 本明細書において、酸素原子を含むガスを 有するガスとは、酸素原子を含むガスを含 するものであればよく、特に限定されない 例えば、酸素原子を含むガス、酸素原子を むガスと不活性ガスとの混合ガス等が挙げ れる。酸素原子を含むガスとしては、例え 、酸素ガス(O 2 )、二酸化炭素ガス(CO 2 )等が挙げられる。これらは、単独でまたは2 以上を混合して用いられる。

 スパッタリングの条件は、成膜する膜の 類、厚さ等により適宜決定されうる。光触 活性層の製造における成膜時の圧力は、グ ー放電が安定に行われる圧力であればよく スパッタガスや反応性スパッタガスに由来 て系内に生成するイオン(酸素イオン、反跳 アルゴン等)の衝突による光触媒活性層への メージを減らして防汚性および防曇性に優 た光触媒活性層を安定に形成することがで るという観点から、1Pa以上であるのが好ま い。

 つぎに、光触媒活性層形成工程後に、オ バーコート層形成工程において、光触媒活 層の上にオーバーコート層を積層させる。 ーバーコート層を形成する方法としては、 えば、スパッタリング法、CVD法、湿式法(ス プレー法など)等が挙げられる。なかでも、 面積の基板に層を形成する際に、膜厚の均 性に優れるという観点から、スパッタリン 法が好ましい。スパッタリング法は、上記 同義である。

 酸化タンタル層の製造においては、例え 、ターゲットとしてTaを用い、スパッタガ として酸素原子を含むガスを含有するガス 囲気中で反応性スパッタリング法を行う方 が好適に挙げられる。

 酸化スズ層の製造においては、例えば、 ーゲットとしてSnを用い、スパッタガスと て酸素原子を含むガスを含有するガス雰囲 中で反応性スパッタリング法を行う方法が 適に挙げられる。

 窒化ケイ素層の製造においては、例えば ターゲットとして多結晶シリコン(ボロンド ープ)を用い、スパッタガスとして窒素原子 含むガスを含有するガス雰囲気中で反応性 パッタリング法を行う方法が好適に挙げら る。

 酸窒化ケイ素層の製造においては、例え 、ターゲットとして多結晶シリコン(ボロン ドープ)を用い、スパッタガスとして窒素原 を含むガスおよび酸素原子を含むガスを含 するガス雰囲気中で反応性スパッタリング 行う方法が好適に挙げられる。

 二酸化ケイ素層の製造においては、例え 、ターゲットとして多結晶シリコン(ボロン ドープ)を用い、スパッタガスとして酸素原 を含むガスを含有するガス雰囲気中で反応 スパッタリングを行う方法が好適に挙げら る。

 窒化ケイ素層、酸窒化ケイ素層および二 化ケイ素層の製造において用いるターゲッ は、上述のボロンドープ多結晶シリコンタ ゲットに限定されず、例えば単結晶シリコ や、シリコンとSiCの焼結体であってもよく また、ドーパントは、ボロンに限定されず ルミニウム、リン等であってもよい。

 ケイ素とスズを含む酸化物層の製造にお ては、例えば、ターゲットとしてシリコン スズとの混合ターゲットを用い、スパッタ スとして酸素原子を含むガスを含有するガ 雰囲気中で反応性スパッタリング法を行う 法が好適に挙げられる。

 ケイ素とスズを含む酸化物は、ケイ素原 とスズ原子と酸素原子とを含む酸化物であ ば特に制限されない。酸化物におけるケイ 原子およびスズ原子を合計した濃度は、親 性に優れるという観点から、酸化物に含ま るケイ素原子および金属原子(金属原子はス ズ原子を含む。)の合計量Aに対して80~100原子% であるのが好ましく、90~100原子%であるのが り好ましい。

 ケイ素とスズを含む酸化物層に含まれる イ素原子の濃度は、親水性に優れるという 点から、酸化物に含まれるケイ素原子およ スズ原子の合計量Bに対して5~95原子%である が好ましく、35~95原子%であるのがより好ま く、40~75原子%であるのが特に好ましい。

 スパッタリングの条件は、成膜する膜の 類、厚さ等により適宜決定される。オーバ コート層の製造における成膜時の圧力は、 ロー放電が安定に行われる圧力であればよ 。

 また、本発明の防汚性物品がトップコー 層を有する場合は、光触媒活性層およびオ バーコート層を形成した後に、オーバーコ ト層の上にトップコート層を形成し、光触 活性層およびオーバーコート層の上にトッ コート層を積層させる。

 また、アルカリバリヤ層を有する場合は 光触媒活性層を形成する前に、ガラス基板 表面にアルカリバリヤ層を形成すればよい これらの層を形成する方法としても、例え 、スパッタリング法、CVD法、湿式法(スプレ ー法など)等が挙げられ、大面積の基板に層 形成する際に、膜厚の均一性に優れるとい 観点から、スパッタリング法が好ましい。 パッタリング法については、上記と同義で る。スパッタリングの条件は、成膜する膜 種類、厚さ等により適宜決定される。

 酸化物層の製造における成膜時の圧力は グロー放電が安定に行われる圧力であれば く、防汚性および防曇性により優れ、スパ タガスや反応性スパッタガスに由来して系 に生成するイオン(酸素イオン、反跳アルゴ ン等)等の衝突による光触媒活性層または酸 物層へのダメージを減らして安定した性能 有する光触媒活性層および酸化物層を形成 ることができるという観点から、1Pa以上で るのが好ましい。

 なお、本発明の防汚物品の製造方法にお て、光触媒活性層形成工程およびオーバー ート層形成工程を行った後、または光触媒 性層形成工程、オーバーコート層形成工程 よびトップコート層形成工程を行った後で られた防汚性物品を、例えば630~700℃に加熱 して曲げ加工や強化加工を行うことができる 。曲げ加工や強化加工を行う際の熱により、 光触媒活性層の触媒活性が向上するので好ま しい。また、曲げ加工や強化加工があらかじ め施されたガラス基板に光触媒活性層を形成 することもできる。

 本発明の防汚性物品について添付の図面 用いて以下に説明する。なお、本発明の防 性物品は添付の図面に示すものに限定され い。図3、図4は、本発明の防汚性物品の一 の断面を模式的に示す断面図である。

 図3において、防汚性物品500は、ガラス基板 501の上に光触媒活性層503を積層し、光触媒活 性層503の上にオーバーコート層505を積層して いる。
 図4において、防汚性物品600は、ガラス基板 601の上に光触媒活性層603を積層し、光触媒活 性層603の上にオーバーコート層605を積層し、 オーバーコート層605の上にトップコート層607 を積層している。

 本発明の防汚性物品は、有機物等がオー ーコート層の表面に付着、吸着しにくいこ から、オーバーコート層によって、汚れの 積を防止することができて、それにより防 性を長時間維持することができる。さらに 防汚性物品が高湿度環境におかれたときに 面に曇りを生じやすくなることを抑制する 果(防曇性)や、水の接触角を小さくするこ ができ親水性が高く(超親水性)、水の付着等 によって生じる曇りを抑制する効果に優れ、 長時間に亘って高い防曇性を維持することが できるものである。

 本発明の防汚性物品は、例えば、自動車 の窓ガラス、建築用窓ガラス、各種産業用 ガラス、鏡等として使用することができる 防汚性物品の厚さは特に制限されず例えば0 .4~10mmとすることができる。

 本発明の防汚性物品は、オーバーコート が形成されている面を室内側または車内側 面になるように設置すること、室外側また 車外側の面になるように設置すること、の ずれも好ましく、用途によって使い分けれ よい。また本発明の防汚性物品を鏡として 用することも好ましい。

 次に、本発明の合わせガラスについて説明 る。本発明の合わせガラスは、第1のガラス 基板と、光触媒活性層、オーバーコート層お よびトップコート層を含む第2のガラス基板 、前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基 板との間に介在された中間膜とを備え、前記 第2のガラス基板が室内側に配される合わせ ラスであって、前記第2のガラス基板が本発 の防汚性物品である合わせガラスである。
 この合わせガラスにおいては、第2の基板は 、光触媒活性層、オーバーコート層およびト ップコート層が形成されていない面と中間膜 とが接するようにして配置される。

 本発明の合わせガラスに用いられる第2のガ ラス基板は、上述の説明では光触媒活性層、 オーバーコート層およびトップコート層を含 む構成としたが、本発明の防汚性物品であれ ばこれに制限されない。
 光触媒活性層は、可視光に対する応答性を することから窒素ドープされた酸化チタン( 以下、TiO 2 :Nともいう)が好ましい態様の1つとして挙げ れる。

 本発明の合わせガラスに用いられる中間 は特に制限されない。中間膜の材料として 、例えば、ポリビニルブチラール等が挙げ れる。中間膜の厚さは特に制限されず、例 ば、0.3~0.8mmとすることができ、通常は0.76mm ある。

 本発明の合わせガラスに用いられる、防汚 物品以外のガラス板は特に制限されず、例 ば、透明または着色のフロートガラス(フロ ート法で製造されたガラス)、着色させた熱 吸収ガラスが挙げられる。また、強化ガラ を用いることができる。具体的には、ソー ライムガラスに鉄イオン等の着色成分を含 させた熱線吸収ガラスが好適に用いられる ガラス板の厚さは特に制限されず、例えば 1.5~3.0mmとすることができる。
 本発明の合わせガラスは、その製造につい 特に制限されない。例えば、従来公知のも が挙げられる。

 本発明の合わせガラスについて、本発明の わせガラスの一例の断面を模式的に示す図5 を用いて以下に説明する。なお、本発明の合 わせガラスは添付の図面に示すものに限定さ れない。
 図5において、本発明の合わせガラス700は、 第2のガラス基板(本発明の防汚性物品)701と中 間膜709と第1のガラス基板711とを具備する。

 第2のガラス基板701は、ガラス基板713の一 方の基板面上に、光触媒活性層703、オーバー コート層705およびトップコート層707が積層さ れている。第2のガラス基板701は、ガラス基 713の他方の面において、中間膜709を介して 1のガラス基板711と積層されている。

 本発明の合わせガラスは、例えば、自動 用窓ガラス、建築用窓ガラス、各種産業用 ラス等として使用することができる。本発 の合わせガラスは、光触媒活性層が形成さ ている面を室内側または車内側の面になる うに設置すること、室外側または車外側の になるように設置すること、のいずれも好 しく、用途によって使い分ければよい。例 ば、本発明の防汚性物品を自動車用の窓ガ スとして用い、雰囲気中の有機物を分解す 効果や防曇効果を得る場合には、光触媒活 層が形成されている面を車内側の面になる うに配置することが好ましい。

 以下に、実施例を挙げて本発明を具体的 説明するが、本発明はこれらの例によって 定して解釈されない。

 得られた防汚性物品について、以下に示す 価を行う。結果を表1、表2に示す。表2中の 触媒活性層、オーバーコート層およびトッ コート層の欄における数値はそれぞれの層 幾何学的膜厚(単位nm)(以下単に厚さともい )を示す。
 なお本明細書のそれぞれの層の厚さは、触 式表面膜圧測定計(テーラー・ホブソン社製 、タリステップ)によって測定されている。

 1.可視光線照射によるオイル分解性試験
 防汚性物品において光触媒活性層およびオ バーコート層が設けられている側の表面に エンジンオイル(トヨタ自動車社製、キャス ルモーターオイル)を0.22cm 3 塗布した後、1時間放置する。その後、接触 が50±10°になるように水洗後、乾燥して試験 用試料を作製する。

 この試験用試料に蛍光灯(ナショナル社製 、パルック15W)を照射し、経時的に接触角を 定する。なお、蛍光灯と試料とは12cmの間隔 空け、さらに蛍光灯と試料の間に紫外線カ ト機能を有するガラス板(旭硝子社製、UVFL 厚さ2mm)を挿入する。蛍光灯の光には紫外線 含まれるので、このガラス板を通して蛍光 を照射することにより、試料に照射される を可視光線のみとすることができる。

 接触角の測定は、接触角計(協和界面科学 社製:CA-X150型)を用い、純水による液滴につい て測定する。試験用試料表面での蛍光灯(可 光)の照度は、14,000ルクスである。

 オイル分解性試験の結果は、試料の光触 活性の強度を表している。光触媒活性が大 い場合は、オイルの分解が急速に進むため 試料表面の接触角が短時間で低下する。表 のオイル分解性(可視光)の評価結果の記号 、◎:接触角が400時間以内に10°以下に低下し たもの、○:接触角が400~600時間で10°以下に低 下したもの、△:接触角が600~800時間で10°以下 に低下したもの、×:接触角が800時間以上経過 しても10°より大きいもの、を意味する。

 2.紫外線照射によるオイル分解性試験
 防汚性物品において光触媒活性層およびオ バーコート層が設けられている側の表面に エンジンオイル(トヨタ自動車社製、キャス ルモーターオイル)を0.22cm 3 塗布した後、1時間放置する。その後、接触 が50±10°になるように水洗後、乾燥して試験 用試料を作製する。

 この試験用試料に、ブラックライト(ナショ ナル社製、FL6BLB)を12cmの距離をおいて試験用 料に照射し、経時的に接触角を測定する。
 接触角の測定は、接触角計(協和界面科学社 製、CA-X150型)を用い、純水による液滴につい 測定する。なお、試験用試料表面での蛍光 (紫外線)の照度は、1mW/cm 2 である。

 オイル分解性試験結果は、光触媒活性の 度を表しており、光触媒活性が大きい場合 、オイル分解が急速に進むため、試料表面 接触角が短時間で低下していく。表中のオ ル分解性(紫外線)の評価結果の記号は、◎: 触角が5時間以内に5°以下に低下したもの、 ○:接触角が5~10時間で5°以下に低下したもの △:接触角が10~24時間で5°以下に低下したも 、×:接触角が24時間以上経過しても5°より きいもの、を意味する。

 3.分光特性の評価
 例9~12および例14の防汚性物品について、分 光度計(日立社製、U-4100)を用いて入射角5° 条件で反射率を測定した。可視光反射率(R v )の測定結果を表2にまとめた。
 防汚性物品の可視光反射率について添付の 面を用いて以下に説明する。
 図7は、可視光の波長に対する例9~12および14 の防汚性物品の反射率の関係を示すグラフで ある。図7において、オーバーコート層がな 例12は反射率が高く、また、例11は450nm付近 波長の光を強く反射した。
 これに対して、例9、10、および14は400~800nm 付近全体の波長の光の反射率が低く、光反 防止性に優れる。なお可視光は400~800nmの波 を有する。

 4.ゼータ電位の測定
 ゼータ電位は、レーザーゼータ電位計(大塚 電子社製、ELS-6000)により、シート状サンプル に対して、平板試料用セルを用いて測定した 。具体的には、平板試料用セルを使用し、モ ニター粒子溶液として、ポリスチレンラテッ クス(粒径520nm)をヒドロキシプロピルセルロ- (分子量:300000)でコーティングして、10mM塩化 ナトリウム水溶液に分散させたものを用いた 。測定時の温度は25℃であった。結果を表1に 示す。
 なお、測定に供したシート状サンプルは、 1に示す条件でそれぞれの材料からなる層を ガラス基板上に膜厚100nmで成膜し、650℃で10 間焼成することによって作製した。

 5.自動車内放置による防曇性試験
 自動車内放置防曇性評価の方法は、以下の うに行う。まず、前処理として、防汚性物 の膜の表面に、低圧水銀ランプを10分間照 することによりUVオゾン処理を施す。
 つぎに、防曇性能評価装置(特開2006-1056号公 報に記載の装置に準ずる。)により、防汚性 品の視認性が40秒間以上であることを確認し て初期状態とする。視認性の確認方法につい ては後に説明する。

 防曇性能評価装置について添付の図面を いて以下に説明する。図1は、本発明におい て防曇性を評価するために使用する防曇性能 評価装置を模式的に示す概略図である。図1 おいて、防曇性能評価装置300は、防汚性物 サンプル1、高湿槽2およびウォーターバス4( 田化学器械工業社製WK-40)から構成されてい 。

 高湿槽2は上面と下面がなく側面のみであ り、厚さ2mmのポリカーボネート材料で構成さ れている。サイズは70mm×70mm×70mmである。高 槽2とウォーターバス4との間は、中心部に50m m×50mmの孔(図示せず)が設けられた厚さ3.5mmの ーダライムガラスで構成される間仕切り3に より仕切られている。ウォーターバス4で発 した水蒸気(図示せず。)は、間仕切り3の孔( 示せず)を通って高湿槽2に入り込む。ウォ ターバス4の水面から間仕切り3までの距離を 15mmとし、水温は35℃に設定する。高湿槽2の に防汚性物品サンプル1を配置する。これら 条件は、車両に乗車している乗員および衣 などから蒸発する水蒸気が36℃程度におけ ものであり、その水蒸気が徐々に車室空間 満たしていく現象を考慮して決定したもの ある。

 高湿槽2は、不図示の内壁面にテストパタ ーンを備えている。図2は、高湿槽2がその内 面に備えるテストパターンを模式的に示す 略図である。図2において、テストパターン 8はJIS-S-4030「眼鏡用くもり止め剤試験方法」 おける付図1「くもり止め判定用テストチャ ート」のC群10の1つと、D群9の6つから構成さ ている。またテストパターン8のコントラス を高めるため、高湿槽2につや消し塗装を施 す。

 防汚性物品の視認性は、図1における防汚 性物品サンプル1を高湿槽2の上においてから 汚性物品サンプル1の状態を目視で確認する ことによって評価される。すなわち、防汚性 物品サンプル1の表面に曇りが発生するまで 時間、または、防汚性物品サンプル1を介し 見えるテストパターンが歪んで見えるまで 時間(水膜が発生したと判断できるまでの時 間)によって評価する。

 自動車内放置防曇性は、通常防汚性物品 ンプル1を室温23℃の自動車内(2001年式、ト タマークII)の前部ドアガラスに固定して放 し、所定時間経過後に防曇性の評価のため 汚性物品サンプル1を車内から取り出して、 述の防曇性能評価装置による視認性の観察 行い、観察後は再度防汚性物品サンプル1を 車内に戻して放置するという作業を繰り返し て、評価を行う。初期状態から、自動車内で の放置による経時変化によって防曇性能評価 装置による視認性の評価結果が40秒未満にな までの経過時間を防曇維持時間(単位:時間) する。なお、放置試験の期間中、自動車は1 日あたりの平均日照時間が10時間になるよう 場所に停車する。

 後述の例1~22の防汚性物品を作製し、得ら れた各例の防汚性物品に対して、可視光線照 射によるオイル分解性試験、紫外線照射によ るオイル分解性試験、分光特性の評価および 自動車内放置による防曇性試験を行った結果 を表2に示す。例1~5、例8~9、例13~18、および例 22は実施例であり、例6~7、例10~12、および例19 ~21は比較例である。

 [例1]
 真空チャンバー内にガラス基板(コーニング 社製、#1737、無アルカリガラス、厚さ1.1mm)を ットし、背圧が1×10 -3 Pa以下になるまで、排気する。次いで、アル ンと窒素の混合比9:1でガスを導入し、3.8Pa なるように調節後、ターゲットにTiOx(X=1.984) 用いて、DCマグネトロンスパッタ法(放電電 :750W)で、窒素含有酸化チタン(以下、TiO 2 :Nとも記載)膜(光触媒層)を成膜する。この窒 含有酸化チタン膜の膜厚は200nmである。

 次に、ターゲットにTaを用い、アルゴンガ と酸素ガスとを(混合比、アルゴンガス:酸素 ガス=1:2)で導入し、チャンバー圧力を0.5Paに た後、DCマグネトロンスパッタ法(放電電力:5 00W)で、酸化タンタル層(オーバーコート層)を 10nmの厚さで成膜し、積層体1を得る。
 積層体1を、大気中において650℃で10分間焼 し、防汚性物品を得る。

 [例2]
 オーバーコート層として、ターゲットに多 晶Si(ボロンドープ)を用い、アルゴンガスと 窒素ガスとを導入し(混合比、アルゴンガス: 素ガス=1:3.7)、チャンバー圧力を0.4Paにして DCマグネトロンスパッタ法(放電電力:750W)で 膜した厚さ10nmの窒化ケイ素の層を用いる以 外は、例1と同様にして防汚性物品を得る。

 [例3]
 オーバーコート層として、ターゲットにSn 用い、酸素ガス(100%)を導入し、チャンバー 力を0.5Paにして、DCマグネトロンスパッタ法( 放電電力:500W)で成膜した厚さ10nmの酸化スズ を用いる以外は、例1と同様にして防汚性物 を作製する。

 [例4]
 オーバーコート層として、ターゲットにSi Snとの混合ターゲット(モル比=Si:Sn=1:1)を用い 、アルゴンと酸素の混合比1:0.82でガスを導入 し、チャンバー圧力を0.2Paにして、DCマグネ ロンスパッタ法(放電電力:200W)で成膜した厚 10nmのSiとSnを含む酸化物膜を用いる以外は 例1と同様にして防汚性物品を作製する。

 [例5]
 オーバーコート層として、ターゲットにZrSi 2 粒子とSi粒子とを、含有するケイ素とジルコ ウムとの原子数比が9:1となるように調合し 合、焼結したSiZrターゲットを用い、アルゴ ンと酸素の混合比4:1でガスを導入し、チャン バー圧力を2.1Paにした後、DCマグネトロンス ッタ法(放電電力:750W)でケイ素とジルコニウ を含む酸化物からなるZrSiO層を10nm成膜した 外は例1と同様にして防汚性物品を作製する 。

 ZrSiO層に含まれるケイ素とジルコニウム の原子数比は、ターゲットにおけるケイ素 ジルコニウムとの原子数比と同様である。 た、ケイ素原子およびジルコニウム原子の 計が、ZrSiO層に含有されるケイ素原子および 金属原子の合計量A中の100原子%であり、ケイ 原子の量が、ケイ素原子およびジルコニウ 原子の合計量B中の90原子%であり、ジルコニ ウム原子の量が、合計量B中の10原子%である なお、これらの金属原子の含有量は、X線光 子分光法によって測定した。

 [例6]
 オーバーコート層として、ターゲットにZr 用い、酸素ガス(100%)を導入し、チャンバー 力を0.5Paにして、DCマグネトロンスパッタ法( 放電電力:750W)で酸化ジルコニウム層を厚さ10n mで成膜する以外は例1と同様にして防汚性物 を得る。

 [例7]
 オーバーコート層として、ターゲットにZn 用い、アルゴンガスと酸素ガスとを導入し( 合比、アルゴンガス:酸素ガス=1:4)、チャン ー圧力を0.5Paにして、DCマグネトロンスパッ タ法(放電電力:400W)で酸化亜鉛層を厚さ10nmで 膜する以外は例1と同様にして防汚性物品を 得る。

 [例8]
 オーバーコート層として、窒化ケイ素の層 厚さ25nmで成膜する以外は例2と同様にして 汚性物品を作製する。

 [例9]
 オーバーコート層であるZrSiO層の膜厚を80nm した以外は、例5と同様にして防汚性物品を 作製する。

 [例10]
 オーバーコート層として、ターゲットにSi Alとの混合ターゲット(原子数比、Si:Al=9:1)を いて、酸素ガスを導入し、チャンバー圧力 2.1Paにして、DCマグネトロンスパッタ法(放 電力:200W)でケイ素とアルミニウムを含む酸 物(以下、SiAlOという)からなる層を厚さ80nm成 膜した以外は、例1と同様にして防汚性物品 作製する。SiAlO膜に含まれるケイ素原子とア ルミニウム原子との比は、ターゲットにおけ るケイ素原子とアルミニウム原子との比と同 様である。

 [例11]
 オーバーコート層として、ターゲットにSiC Siとの混合ターゲット(体積比、SiC:Si=80:20)を 用いて、アルゴンと酸素の混合比4:1でガスを 導入し、チャンバー圧力を2.1Paにして、DCマ ネトロンスパッタ法(放電電力:500W)で二酸化 イ素の膜を厚さ80nmで成膜した以外は、例1 同様にして防汚性物品を作製する。

 [例12]
 オーバーコート層を形成しないこと以外は 例1と同様にして防汚性物品を作製する。

 [例13]
 光触媒活性層として、ターゲットにTiを用 、酸素ガスを導入し、チャンバー圧力を2.1Pa にして、DCマグネトロンスパッタ法(放電電力 :750W)で酸化チタンの膜を厚さ200nmで成膜した 外は、例9と同様にして防汚性物品5を作製 る。

 [例14]
 例9のオーバーコート層の上に更に窒化ケイ 素からなるトップコート層を10nmの厚さで積 した以外は、例9と同様にして防汚性物品を 製する。窒化ケイ素層は、例2のときと同様 の成膜条件で成膜した。

 [例15]
 トップコート層として厚さ10nmの二酸化ケイ 素からなる層を用いた以外は例14と同様にし 、防汚性物品を作製する。二酸化ケイ素層 、ターゲットに多結晶Si(ボロンドープ)を用 い、アルゴンガスと窒素ガスとを導入し(混 比;アルゴンガス:窒素ガス=1:3.7)、チャンバ 圧力を0.4Paにして、積層体の上に、DCマグネ ロンスパッタ法(放電電力:750W)で成膜して形 成した。

 [例16]
 トップコート層として厚さ10nmの酸化タンタ ルからなる層を用いた以外は例14と同様の防 性物品を作製する。酸化タンタル層の成膜 件は、例1に記載した条件と同様とした。

 [例17]
 トップコート層として厚さ10nmの酸化スズか らなる層を用いた以外は例14と同様の防汚性 品を作製する。酸化スズ層の成膜条件は、 3に記載した条件と同様とした。

 [例18]
 トップコート層として厚さ10nmのケイ素とス ズを含む酸化物からなる層を用いた以外は例 14と同様の防汚性物品を作製する。ケイ素と ズを含む酸化物からなる層の成膜条件は、 4に記載した条件と同様とした。

 [例19]
 トップコート層として厚さ10nmの酸化ジルコ ニウムからなる層を用いた以外は例14と同様 防汚性物品を作製する。酸化ジルコニウム の成膜条件は、例6に記載した条件と同様と した。

 [例20]
 トップコート層として厚さ10nmのTiO 2 :Nからなる層を用いた以外は例14と同様の防 性物品を作製する。TiO 2 :N層の成膜条件は、光触媒活性層のTiO 2 :N層の条件と同様とした。

 [例21]
 トップコート層として厚さ10nmの酸化亜鉛か らなる層を用いた以外は例14と同様の防汚性 品を作製する。酸化亜鉛層の成膜条件は、 7に記載した条件と同様とした。

 [例22]
 窒化ケイ素からなるオーバーコート層の厚 を1nmとした以外は、例2と同様にして防汚性 物品を得る

 表2に示す結果から明らかなように、例1~5 、例8~9、および例22は防汚性能に優れる。例1 ~5、および例8~9のうちオーバーコート層のゼ タ電位が-55~-10mVである防汚性物品は、防汚 に優れるとともに長時間防曇性を維持でき ことがわかる。例9、および例13はZrSiOから るオーバーコート層を有するが、オーバー ート層厚さが80nmと厚いため、防曇性持続時 に劣る。また、例13において、可視光線照 によるオイル分解性の評価結果が×となって いるが、これは酸化チタンが可視光線に応答 して光触媒機能を発現する性質を有していな いからである。

 例10~12は光反射防止性または防汚性のい れかに劣り、光反射防止性と防汚性とが両 されていない。それに対して例9、例13およ 例14は光反射防止性および防汚性に優れる。

 例14~18のトップコート層を備える防汚性 品は、低反射性、防汚性に優れるとともに 時間防曇性を維持できることがわかる。こ らのうちトップコート層のゼータ電位が-55~- 10mVである防汚性物品は、低反射性、防汚性 優れるとともに長時間防曇性を維持できる とがわかる。

 本発明により、有機物が付着、吸着し難い 質を持つオーバーコート層、あるいはオー ーコート層とトップコート層とを合わせ持 、優れた防汚性能を長時間維持する防汚性 品が提供され、これを用いた合わせガラス 、自動車や建築用等の窓ガラスとして有用 ある。
 
 なお、2007年4月4日に出願された日本特許出 2007-098416号、及び2007年4月4日に出願された 本特許出願2007-098417号の明細書、特許請求の 範囲、図面および要約書の全内容をここに引 用し、本発明の明細書の開示として、取り入 れるものである。