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Patent Searching and Data


Title:
ANTITUMOR AGENT
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/084693
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a novel antitumor agent containing, as an active ingredient, a compound inhibiting binding between an acetylated histone and a bromodomain-containing protein, preferably a thienotriazolodiazepine compound represented by the general formula (I) below or a pharmaceutically acceptable salt thereof, or a hydrate or solvate of any of those. (In the formula, the symbols are as defined in the description.)

Inventors:
MIYOSHI SHINJI (JP)
OOIKE SHINSUKE (JP)
IWATA KAZUNORI (JP)
HIKAWA HIDEMASA (JP)
SUGAHARA KUNIO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073864
Publication Date:
July 09, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI TANABE PHARMA CORP (JP)
MIYOSHI SHINJI (JP)
OOIKE SHINSUKE (JP)
IWATA KAZUNORI (JP)
HIKAWA HIDEMASA (JP)
SUGAHARA KUNIO (JP)
International Classes:
A61K31/55; C07D495/14; A61K45/00; A61P35/00; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2006129623A12006-12-07
WO1998011111A11998-03-19
WO1994022872A11994-10-13
WO1998011111A11998-03-19
WO2006129623A12006-12-07
Foreign References:
JP2008156311A2008-07-10
Other References:
NATURE, vol. 399, 1999, pages 491 - 496
JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY, vol. 282, no. 18, 2007, pages 13141 - 13145
EXP. CELL RES., vol. 177, 1988, pages 122 - 131
CANCER RES., vol. 47, 1987, pages 3688 - 3691
CANCER RESEARCH, vol. 63, 15 January 2003 (2003-01-15), pages 304 - 307
JOURNAL OF CLINICAL ONCOLOGY, vol. 22, no. 20, 15 October 2004 (2004-10-15), pages 4135 - 4139
AMERICAN JOURNAL OF PATHOLOGY, vol. 159, no. 6, December 2001 (2001-12-01), pages 1987 - 1992
See also references of EP 2239264A4
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 44, JP)
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Claims:
 アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分とする抗癌剤。
 アセチル化ヒストンがアセチル化ヒストンH3又はアセチル化ヒストンH4である請求項1に記載の抗癌剤。
 アセチル化ヒストンがアセチル化ヒストンH4である請求項1又は2に記載の抗癌剤。
 ブロモドメイン含有タンパク質がBETファミリータンパク質である請求項1~3のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 BETファミリータンパク質がBRD2、BRD3、BRD4又はBRDtである請求項4のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 BETファミリータンパク質がBRD2、BRD3又はBRD4である請求項4又は5に記載の抗癌剤。
 アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する化合物が下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物である請求項1~6のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 一般式(I)中の置換基R 4 が結合している不斉炭素原子の立体配置がS配置である請求項7に記載の抗癌剤。
 一般式(I)中、R 1 がメチルである請求項7又は8に記載の抗癌剤。
 一般式(I)中、R 2 がメチルである請求項7~9のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 一般式(I)中、R 3 が塩素原子、シアノフェニル、フェニルアミノ、フェネチルカルボニルアミノである請求項7~10のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 一般式(I)中、R 4 がヒドロキシフェニルアミノカルボニルメチル、メトキシカルボニルメチルである請求項7~11のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 一般式(I)で示される化合物が(S)-2-[4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル]-N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド若しくはその2水和物、
メチル (S)-{4-(3’-シアノビフェニル-4-イル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート、
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-(4-フェニルアミノフェニル)-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート又は
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-[4-(3-フェニルプロピオニルアミノ)フェニル]-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタートである請求項7~12のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 癌が血液癌、骨髄腫、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、骨肉腫又は大腸癌である請求項1~13のいずれか1項に記載の抗癌剤。
 (S)-2-[4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル]-N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド又はその2水和物を有効成分とする抗肺癌剤。
 下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分とする抗癌剤。
 下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物を有効成分とするアセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合阻害剤。
 哺乳動物に対し、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量を投与することを特徴とする癌の治療方法。
 哺乳動物に対し、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効量を投与することを特徴とする癌の治療方法。
 癌の予防又は治療剤を製造するための、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。
 癌の予防又は治療剤を製造するための、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の使用。
 癌の予防又は治療方法に用いる、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
 癌の予防又は治療方法に用いる、アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子若しくは水酸基で置換されていても良い炭素数1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシアノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4の整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2の整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキシアルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミノ若しくは水酸基で置換されていても良いフェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは溶媒和物。
Description:
抗癌剤

 本発明は、アセチル化ヒストンとブロモ メイン含有タンパク質との結合を阻害する 合物を有効成分とする抗癌剤、より具体的 はチエノトリアゾロジアゼピン化合物を有 成分とする抗癌剤に関する。

 ヒストン(histone)は、ヒトをはじめとする 細胞生物から真菌類(カビ・酵母)に代表さ る単細胞生物に至るまで、真核細胞の核内 共通に存在し、ゲノムDNAとイオン結合する 基性タンパク質である。ヒストンは通常5種 の成分(H1、H2A、H2B、H3およびH4)からなって り、生物種を越えて高度に類似している。 えばヒストンH4の場合、出芽酵母ヒストンH4( 全長102アミノ酸配列)とヒトヒストンH4(全長10 2アミノ酸配列)では92%のアミノ酸配列が一致 、相違はわずか8残基である。1生物中に数 種類存在すると想定されている天然タンパ 質の中で、ヒストンは真核生物種間で最も 度に保存されたタンパク質であることが知 れている。ゲノムDNAはこのヒストンとの規 的な結合により折り畳まれており、両者の 合体は、ヌクレオソームという基本的な構 単位を形成する。そして、このヌクレオソ ムが凝集することによって染色体のクロマ ン構造が形成されている。ヒストンはヒス ンテールと呼ばれるN末端部分で、アセチル 、メチル化、リン酸化、ユビキチン化、及 SUMO化などの修飾を受け、クロマチン構造を 維持又は特異的に構造変換することによって 遺伝子発現、DNA複製、DNA修復等の染色体DNA上 で生じる反応がコントロールされている。ヒ ストンの翻訳後修飾は後成的な調節メカニズ ムであり、真核細胞の遺伝子調節に対して必 須であると考えられている。例えば、ヒスト ンのアセチル化は一対の修飾酵素(すなわち ストンアセチル化酵素と脱アセチル化酵素) よりコントロールされている。通常は脱ア チル化酵素が優位に働き、ヒストンは脱ア チル化状態に保たれているが、細胞が刺激 受け活性化するとヒストンアセチル化酵素 よってヒストンのリジン残基のアミノ基が セチル化され、アミノ基の正電荷が中和さ ることによってヌクレオソーム間の相互作 が緩み、転写因子がリクルートされて転写 開始する。

 一方、ヒストンのアセチル化リジンに結 するタンパク質のドメイン構造としてブロ ドメインが知られている。ヒトでは三十数 類のブロモドメイン含有タンパク質が存在 る。この中で、アセチル化ヒストンH3/H4と 互作用するタンパク質にBRD2、BRD3、BRD4があ 。これらの中で、BRD4は細胞周期や遺伝子発 に関与するタンパク質であることが知られ いる。(非特許文献1:Nature 399, 491-496, 1999)( 特許文献2:JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.282 No.18 13141-13145, 2007)。このBRD4は分子内に2つ bromodomainと 1つのextraterminal domainを有するBE T(bromodomain and extraterminal)ファミリータンパ 質に属する。BRD4以外のBETファミリータンパ 質としては、ヒト由来ではBRD2、BRD3、BRDtが られている。これまでに、これらBETファミ ータンパク質とアセチル化ヒストンとの結 を阻害する化合物は知られていない。

 ヒストンのアセチル化に関連して、ヒス ン脱アセチル化酵素を阻害する化合物が腫 細胞の細胞周期停止、分化誘導やアポトー ス誘導活性を示すことが知られている(非特 許文献3:Exp.Cell Res.,177,122-131, 1988、非特許文 4:Cancer Res.,47,3688-3691, 1987)。しかしながら アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有 ンパク質との結合を阻害する化合物が腫瘍 胞に影響を及ぼすか否かについては、これ で一切報告がない。

 近年、胸腺、気道、肺などの体中上部組 における上皮性細胞癌(midline carcinoma) にBRD 4-NUT融合タンパク質が発現する例があり、こ 融合タンパク質の発現が認められる患者は 射線治療と化学療法に抵抗性を示して患者 予後が悪いことが知られている(非特許文献 6:Cancer Research vol.63 January 15 2003 p304-307、 特許文献7:Journal of clinical oncology Vol. 22 No . 20 October 15 2004 p4135-4139) 。また、midline  carcinoma において第9番染色体と第15番染色体 のt(9;15)染色体転座によってBRD3タンパク質 NUTタンパク質との融合タンパク質BRD3-NUTも形 成されることが報告されている。BRD3-NUT融合 ンパク質、BRD4-NUT融合タンパク質を各々発 している患者由来の癌細胞株において、そ 融合タンパク質の発現をsiRNAによって遺伝学 的に阻害すると、その癌細胞の増殖は停止す ることが報告されている(非特許文献8:Oncogene advance online publication 15 October 2007; doi: 10. 1038/sj.onc.1210852)。よって、これらの融合タン ク質の機能を阻害する薬剤は抗癌剤として 待されるが、アセチル化ヒストンと融合タ パク質上に存在するブロモドメインとの結 を阻害することで、これら融合タンパク質 機能が阻害されるという報告はない。

 一方、下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物は、細胞接着阻害作用を有し、炎症性腸疾 患に有用であること、又はT細胞上のCD28から 共刺激シグナルを阻害する作用を有し、移 時における拒絶反応、自己免疫疾患、アレ ギー性疾患に有用であることが知られてい (特許文献1:国際公開パンフレット WO98/11111 、特許文献2:国際公開パンフレット WO2006/12 9623号)。しかしながら、これらの化合物がア チル化ヒストンとBETファミリータンパク質 の結合を阻害する作用を有すること、及び 癌作用を有することについては一切知られ いない。

国際公開パンフレット WO98/11111号

国際公開パンフレット WO2006/129623号 Nature 399, p491-496, 1999 JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY Vol.282 No.18 p1 3141-13145, 2007 Exp.Cell Res.,177, p122-131, 1988 Cancer Res.,47, p3688-3691, 1987 American Journal of Pathology Vol. 159 No. 6,  p1987-1992 December 2001 Cancer Research vol.63, p304-307 January 15 2003 Journal of clinical oncology Vol. 22 No. 20, p 4135-4139 October 15 2004 Oncogene advance online publication 15 October 2 007; doi: 10.1038/sj.onc.1210852

 本発明の課題は新規な抗癌剤を提供する とにある。

 本発明者らは上記の課題を解決すべく鋭意 力した結果、アセチル化ヒストンとブロモ メイン含有タンパク質との結合を阻害する 合物、好ましくは以下の一般式(I)で示され チエノトリアゾロジアゼピン化合物若しく その医薬上許容しうる塩又はそれらの水和 若しくは溶媒和物を有効成分として用いる とで、新規な抗癌剤を提供できることを見 し、本発明を完成するに至った。
 すなわち、本発明の要旨は以下の通りであ 。

1.アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有 ンパク質との結合を阻害する化合物若しく その医薬上許容しうる塩又はそれらの水和 若しくは溶媒和物を有効成分とする抗癌剤
2.アセチル化ヒストンがアセチル化ヒストンH 3又はアセチル化ヒストンH4である1に記載の 癌剤、
3.アセチル化ヒストンがアセチル化ヒストンH 4である1又は2に記載の抗癌剤。
4.ブロモドメイン含有タンパク質がBETファミ ータンパク質である1~3のいずれか1項に記載 の抗癌剤、
5.BETファミリータンパク質がBRD2、BRD3、BRD4又 BRDtである4に記載の抗癌剤、
6.BETファミリータンパク質がBRD2、BRD3又はBRD4 ある4又は5に記載の抗癌剤、
7.アセチル化ヒストンとブロモドメイン含有 ンパク質との結合を阻害する化合物が下記 般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物である1~6のいず れか1つに記載の抗癌剤、
8.一般式(I)中の置換基R 4 が結合している不斉炭素原子の立体配置がS 置である7に記載の抗癌剤、
9.一般式(I)中、R 1 がメチルである7又は8に記載の抗癌剤、
10.一般式(I)中、R 2 がメチルである7~9のいずれか1つに記載の抗 剤。
11.一般式(I)中、R 3 が塩素原子、シアノフェニル、フェニルアミ ノ、フェネチルカルボニルアミノである7~10 いずれか1つに記載の抗癌剤、
12.一般式(I)中、R 4 がヒドロキシフェニルアミノカルボニルメチ ル、メトキシカルボニルメチルである7~11の ずれか1つに記載の抗癌剤、
13.一般式(I)で示される化合物が(S)-2-[4-(4-クロ ロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1 ,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル〕- N-(4-ヒドロキシフェニル)アセトアミド若しく はその2水和物、
メチル (S)-{4-(3’-シアノビフェニル-4-イル)-2 ,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾ [4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート、
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-(4-フェニルア ノフェニル)-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[ 4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート又は
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-[4-(3-フェニル ロピオニルアミノ)フェニル]-6H-チエノ[3,2-f][ 1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル} セタートである7~12のいずれか1つに記載の抗 癌剤、
14.癌が血液癌、骨髄腫、肝癌、卵巣癌、前立 腺癌、肺癌、骨肉腫又は大腸癌である1~13の ずれか1つに記載の抗癌剤、
15.(S)-2-[4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル- 6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジア ピン-6-イル]-N-(4-ヒドロキシフェニル)アセ アミド又はその2水和物を有効成分とする抗 癌剤、
16.下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物を有効成分とす る抗癌剤、
17.下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物を有効成分とす るアセチル化ヒストンとブロモドメイン含有 タンパク質との結合阻害剤、
18.哺乳動物に対し、アセチル化ヒストンとブ ロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害 する化合物若しくはその医薬上許容しうる塩 又はそれらの水和物若しくは溶媒和物の有効 量を投与することを特徴とする癌の治療方法 、
19.哺乳動物に対し、アセチル化ヒストンとブ ロモドメイン含有タンパク質との結合を阻害 する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物の有効量を投与 することを特徴とする癌の治療方法、
20.癌の予防又は治療剤を製造するための、ア セチル化ヒストンとブロモドメイン含有タン パク質との結合を阻害する化合物若しくはそ の医薬上許容しうる塩又はそれらの水和物若 しくは溶媒和物の使用、
21.癌の予防又は治療剤を製造するための、ア セチル化ヒストンとブロモドメイン含有タン パク質との結合を阻害する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物の使用、
22.癌の予防又は治療方法に用いる、アセチル 化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質 との結合を阻害する化合物若しくはその医薬 上許容しうる塩又はそれらの水和物若しくは 溶媒和物、
23.癌の予防又は治療方法に用いる、アセチル 化ヒストンとブロモドメイン含有タンパク質 との結合を阻害する下記一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物。

 本発明によれば、新規な抗癌剤を提供す ことができる。

 本発明により提供される抗癌剤は有効成分 してアセチル化ヒストンとブロモドメイン 有タンパク質との結合を阻害する化合物を 有している。ヒストンは既に述べたように5 種類の成分からなっているが、本発明におい てはH3又はH4がアセチル化されたアセチル化 ストンH3又はアセチル化ヒストンH4とブロモ メイン含有タンパク質との結合を阻害する 合物を有効成分として用いることが好まし 。ブロモドメイン含有タンパク質に関して 、BETファミリーに属するタンパク質である とが好ましい。BETファミリータンパク質は ト由来以外にも、ハエ由来、イースト菌由 のタンパク質などが知られているが本発明 おいてはヒト由来のBETファミリータンパク とアセチル化ヒストンとの結合を阻害する 合物を有効成分として用いることが望まし 。ヒト由来のBETファミリータンパク質の具 例としては、BRD2、BRD3、BRD4、BRDtを挙げるこ とができ、BRD2、BRD3又はBRD4を好ましい例とし て挙げることができる。よって、本発明にお いて用いる有効成分として好ましい化合物は 、アセチル化ヒストンH3又はアセチル化ヒス ンH4(好ましくは、アセチル化ヒストンH4)とB RD2、BRD3又はBRD4との結合を阻害する化合物が げられる。
 本発明において有効成分として用いる化合 の具体的な構造を挙げると、一例として以 の一般式(I)

(式中、R 1 は炭素数1~4のアルキル、
 R 2 は水素原子;ハロゲン原子;又はハロゲン原子 しくは水酸基で置換されていても良い炭素 1~4のアルキル、
 R 3 はハロゲン原子;ハロゲン原子、炭素数1~4の ルキル、炭素数1~4のアルコキシ若しくはシ ノで置換されていても良いフェニル;-NR 5 -(CH 2 ) m -R 6 (ここで、R 5 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、mは0~4 整数、R 6 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル);又は-NR 7 -CO-(CH 2 ) n -R 8 (ここで、R 7 は水素原子又は炭素数1~4のアルキル、nは0~2 整数、R 8 はハロゲン原子で置換されていても良いフェ ニル若しくはピリジル)、
 R 4 は-(CH 2 ) a -CO-NH-R 9 (ここで、aは1~4の整数、R 9 は炭素数1~4のアルキル;炭素数1~4のヒドロキ アルキル;炭素数1~4のアルコキシ;又は炭素数 1~4のアルキル、炭素数1~4のアルコキシ、アミ ノ若しくは水酸基で置換されていても良いフ ェニル若しくはピリジル)又は-(CH 2 ) b -COOR 10 (ここで、bは1~4の整数、R 10 は炭素数1~4のアルキル)を示す。)
で示されるチエノトリアゾロジアゼピン化合 物若しくはその医薬上許容しうる塩又はそれ らの水和物若しくは溶媒和物を挙げることが できる。

 本明細書において、炭素数1~4のアルキル は、直鎖又は分枝鎖のアルキルを意味し、 えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ ロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル等 挙げることができる。

 ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原 、臭素原子、ヨウ素原子を意味する。

 炭素数1~4のアルコキシとは、直鎖又は分 鎖のアルコキシを意味し、例えば、メトキ 、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキ 、n-ブトキシ、イソブトキシ、t-ブトキシ等 挙げることができる。

 炭素数1~4のヒドロキシアルキルとは、1~9 の水酸基で置換されている上述した炭素数1 ~4のアルキルを意味し、ヒドロキシメチル、 ドロキシエチル等を具体例として挙げるこ ができる。

 R 1 の好ましい例としてはメチルを挙げることが できる。

 R 2 の好ましい例としては、ハロゲン原子、メチ ル及びヒドロキシメチルを挙げることができ 、塩素原子、メチル及びヒドロキシメチルを より好ましい例として挙げることができる。 最も好ましい例としてはメチルを挙げること ができる。

 R 3 の好ましい例としては、ハロゲン原子、メト キシフェニル、シアノフェニル、-NR 5’ -(CH 2 ) m’ -R 6’ (ここで、R 5’ は水素原子又はメチル、m’は0又は1、R 6’ はフェニル、ピリジル又はフッ素原子で置換 されたフェニル)及び-NR 7’ -CO-(CH 2 ) n’ -R 8’ (ここで、R 7’ は水素原子、n’は2、R 8’ はフェニル)を挙げることができ、塩素原子 シアノフェニル、フェニルアミノ及びフェ チルカルボニルアミノをより好ましい例と て挙げることができる。最も好ましい例と ては、塩素原子及び3-シアノフェニルを挙げ ることができる。

 R 4 の好ましい例としては、-(CH 2 ) a’ -CO-NH-R 9’ (ここで、a’は1、R 9’ はメチル、ヒドロキシエチル、メトキシ、ア ミノフェニル、ヒドロキシフェニル、ピリジ ル又はメトキシピリジル)及び-(CH 2 ) b’ -COOR 10’ (ここで、b’は1、R 10’ はメチル又はエチル)を挙げることができ、 ドロキシフェニルアミノカルボニルメチル メトキシカルボニルメチルをより好ましい として挙げることができる。最も好ましい としては、4-ヒドロキシフェニルアミノカル ボニルメチル及びメトキシカルボニルメチル を挙げることができる。また、R 4 が結合している炭素原子は不斉炭素原子であ り、その立体配置はS配置、R配置及びそれら 混合物のいずれでも良いが、S配置であるこ とが望ましい。

 一般式(I)で示される化合物の好ましい例と ては、(S)-2-[4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリ チル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4 ]ジアゼピン-6-イル]-N-(4-ヒドロキシフェニル) アセトアミド及びその2水和物(実施例中の化 物1)、
メチル (S)-{4-(3’-シアノビフェニル-4-イル)-2 ,3,9-トリメチル-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾ [4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート(実 例中の化合物2)、
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-(4-フェニルア ノフェニル)-6H-チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[ 4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル}アセタート(実施 中の化合物8)、並びに
メチル (S)-{2,3,9-トリメチル-4-[4-(3-フェニル ロピオニルアミノ)フェニル]-6H-チエノ[3,2-f][ 1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼピン-6-イル} セタート(実施例中の化合物10)
が挙げられ、
(S)-2-[4-(4-クロロフェニル)-2,3,9-トリメチル-6H- チエノ[3,2-f][1,2,4]トリアゾロ[4,3-a][1,4]ジアゼ ン-6-イル]-N-(4-ヒドロキシフェニル)アセト ミド及びその2水和物をより好ましい例とし 挙げることができる。

 本発明において有効成分として用いるこ ができる化合物は遊離形態の化合物のほか 医薬上許容しうる塩を用いてもよい。医薬 許容しうる塩としては、塩酸、硫酸、臭化 素塩、リン酸等の鉱酸との塩;メタンスルホ ン酸、p-トルエンスルホン酸、酢酸、シュウ 、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸等の有機 との塩;ナトリウム、カリウム等のアルカリ 金属との塩;マグネシウム等のアルカリ土類 属との塩;アンモニア、エタノールアミン、2 -アミノ-2-メチル-1-プロパノール等のアミン の塩が挙げられる。この他、医薬として許 されるものであれば塩の種類は特に限定さ ることはない。

 さらに、本発明において有効成分として いることができる化合物は、溶媒和物とし 用いてもよい。溶媒和物としては、エタノ ル酢酸エチル等との溶媒和物が挙げられる この他、医薬として許容されるものであれ 、溶媒和物の種類は特に限定されることは い。

 式(I)で示される化合物はいずれも公知の 合物であり、国際公開パンフレット WO98/111 11号や国際公開パンフレット WO2006/129623号公 などに記載された方法により当業者が容易 合成できる。

 本発明の有効成分は製薬上許容しうる担 (賦形剤、結合剤、崩壊剤等)と混合して得 れる医薬組成物あるいは製剤(例えば、錠剤 液剤等)の形態で経口的又は非経口的に投与 することができる。医薬組成物は通常の方法 に従って製剤化することができる。

 有効成分の投与量は、年齢、体重、一般 健康状態、性別、食事、投与時間、投与方 、排泄速度、薬物の組合せ、患者のその時 治療を行っている病状の程度に応じ、それ あるいはその他の要因を考慮して決められ 。具体例を挙げると、1日投与量は、患者の 状態や体重、化合物の種類、投与経路等によ って異なるが、例えば、経口的には0.01~1000mg/ kg体重/日であり、一日1~数回に分けて投与さ 、また非経口的には約0.01~100mg/kg体重/日を 日1~数回に分けて投与するのが好ましい。

 本発明において提供される抗癌剤は適応 れる癌種を問わないが、具体例としては血 癌、骨髄腫、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、肺 、骨肉腫、大腸癌、乳癌、皮膚癌、上皮性 胞癌(midline carcinoma)を挙げることができる この中で好ましい癌種としては血液癌、骨 腫、肝癌、卵巣癌、前立腺癌、肺癌、骨肉 、大腸癌を挙げることができ、血液癌、前 腺癌、肺癌、大腸癌をより好ましい例をと て挙げることができる。本発明において血 癌とはリンパ腫、白血病を含むものである 本発明において抗癌剤とは制癌剤、抗腫瘍 等を含む概念であり、癌を予防及び/又は治 する目的で、癌腫を縮小若しくは消滅させ か又は癌腫を増大させない効果を有するも である。なお、本発明において、「予防」 は疾患を発症していない健常人に対して本 明の有効成分を投与する行為であり、例え 、疾患の発症を防止することを目的とする のである。「治療」とは医師により疾患を 症している診断された人(患者)に対して本 明の有効成分を投与する行為であり、例え 、疾患や症状を軽減すること、癌腫を増大 せないこと又は疾患発症前の状態に戻すこ を目的とするものである。また、投与の目 が疾患や症状の悪化防止又は癌腫の増大防 であっても、投与されるのが患者であれば 治療行為である。

 以下に、実施例を用いて本発明をさらに 体的に説明するが、本発明は以下の実施例 よって限定されるものではない。

 合成例
 以下に示す化合物1をWO98/11111号の実施例2、 合物2をWO2006/129623号の実施例8に記載の方法 準じて作成した。この他の化合物3~18につい ても同様に国際公開パンフレット WO98/11111号 又は国際公開パンフレット WO2006/129623号の実 施例に記載の方法に準じて合成した。

 実施例1 アセチル化ヒストンH4とBRD2、3及び 4との結合阻害試験
 Flag-tagを付加したBRD2、3及び4のcDNAを含む発 ベクターをCHO細胞にトランスフェクトし、2 4時間後に細胞溶解液を調製した。アセチル ヒストンH4とBRDとの結合はTime Resolved Fluoresc ence Resonance Energy Transfer(TR-FRET)法を用いて確 認した。384-well white plate(Coaster社製)に50nmol/L のビオチン標識アセチル化ヒストンH4ペプチ (Upstate社製)と段階希釈した被検化合物を加 た。さらに、BRD発現ベクターをトランスフ クトしたCHO細胞溶解液、ユーロピウム標識 Flag抗体(Cisbio社製)、及び XL-665標識アビジ (Cisbio社製)を加え、室温で30分から2時間反応 させた。FRETによる蛍光をEnVision 2103 Multilabel  Reader(Perkin Elmer社製)で測定した。結合阻害 性は、化合物非添加群のカウントに対する 合物添加群のカウントの減少率で表し、化 物の濃度を変えて求めたカウントの減少率 化合物の濃度をプロットした用量-反応曲線 からIC 50 値を求めた。
 化合物1のIC 50 (nmol/L)値はアセチル化ヒストンH4-BRD2が55.5、 セチル化ヒストンH4-BRD3が120.2、アセチル化 ストンH4-BRD4が136.1であった。その他の化合 のIC 50 値を表2に示した。

 実施例2 癌細胞に対する増殖抑制活性試験
 10%Fetal bovine serumを含むRPMI1640培地(SIGMA社製 )を用いて、ヒト前骨髄性白血病由来細胞株HL -60、ヒト急性リンパ芽球性白血病由来細胞株 MOLT4、ヒトバーキットリンパ腫由来細胞株Daud i、ヒト多発性骨髄腫由来細胞株RPMI-8226をそ ぞれ37℃、5%CO 2 下で培養した。また、10%Fetal bovine serumを含 ISKOV培地(SIGMA社製)を用いて、ヒト慢性骨髄 白血病由来細胞株MV4-11を37℃、5%CO 2 下で培養した。また、10%Fetal bovine serumを含 DMEM/F-12培地(SIGMA社製)を用いて、ヒト肺癌細 胞由来細胞株EBC-1、ヒト肝細胞癌由来細胞株K im-1、ヒト結腸癌由来細胞株HCT-116、ヒト前立 癌由来細胞株PC-3、ヒト卵巣癌由来細胞株A27 80、ヒト骨肉腫由来細胞株Saos2をそれぞれ37℃ 、5%CO 2 下で培養した。これらの細胞を96穴プレート 播種し、1日間培養した後、そこに培地で希 釈した化合物を終濃度0.0003~10μM(最終DMSO濃度 0.4%)になるように添加した。更に3日間培養 た後、WST-8(0.16mg/mL)を培養液に加えて2時間 養した。450nmの吸光度から650nmの吸光度を減 た値を測定した。増殖抑制活性は、化合物 添加群の吸光度に対する化合物添加群の吸 度の減少率で表し、化合物の濃度を変えて めた吸光度の減少率と化合物の濃度をプロ トした用量-反応曲線からGI 50 値を求めた。
 化合物1及び2のGI 50 (μmol/L)値を表1に示した。

 その他の化合物についてのGI 50 (nmol/L)値を表2に示した。

 以上の結果より、アセチル化ヒストン、 り詳細にはアセチル化ヒストンH4とブロモ メイン含有タンパク質、より詳細にはヒト 来のBETファミリータンパク質であるBRD2、BRD3 、BRD4との結合を阻害する化合物は抗癌剤と て用いることが可能であることが明らかと った。また、アセチル化ヒストンとブロモ メイン含有タンパク質との結合を阻害する 合物である上記一般式(I)で示されるチエノ リアゾロジアゼピン化合物は抗癌剤として 用であることも明らかとなった。さらに、 記一般式(I)で示されるチエノトリアゾロジ ゼピン化合物はアセチル化ヒストンとブロ ドメイン含有タンパク質との結合阻害活性 有していることが明らかとなった。

 本発明によれば、新規な抗癌剤を提供する とが可能である。
 本願は、日本で出願された特願2007-339456を 礎としており、その内容は本明細書にすべ 包含されるものである。