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Title:
AQUEOUS SYNTHETIC-RESIN EMULSION FOR CEMENT MORTAR ADMIXTURE, RE-EMULSIFIABLE POWDER FOR CEMENT MORTAR ADMIXTURE FROM AQUEOUS SYNTHETIC-RESIN EMULSION, AND CEMENT MORTAR ADMIXTURE COMPRISING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/008260
Kind Code:
A1
Abstract:
An aqueous synthetic-resin emulsion which, when used as a cement mortar admixture, imparts satisfactory flowability and workability, is reduced in material property fluctuation, and attains improvements in bonding strength, etc. The aqueous synthetic-resin emulsion for use as a cement mortar admixture contains a synthetic resin dispersed and stabilized with a polyvinyl alcohol resin [I] having an average degree of saponification of 85 mol% or higher and an average degree of polymerization of 50-3,000 and having 1-15 mol% 1,2-diol bonds in side chains, the synthetic resin being one obtained from comonomer ingredients comprising (A) at least one monomer selected among acrylic monomers and styrene monomers and (B) at least one functional monomer selected from the group consisting of (i) monomers containing a glycidyl group, (ii) monomers containing an allyl group, (iii) monomers containing a hydrolyzable silyl group, (iv) monomers containing an acetoacetyl group, (v) monomers having two or more vinyl groups in the molecular structure, and (vi) monomers containing a hydroxy group.

Inventors:
SUGAYA MAMORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/061453
Publication Date:
January 15, 2009
Filing Date:
June 24, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NICHIGO MOWINYL CO LTD (JP)
NIPPON SYNTHETIC CHEM IND (JP)
SUGAYA MAMORU (JP)
International Classes:
C08F220/00; C04B24/26; C08F2/30; C08L25/04; C08L29/02; C08L33/00
Foreign References:
JP2006124682A2006-05-18
JP2005330394A2005-12-02
JP2006241448A2006-09-14
JP2004285143A2004-10-14
JP2005042036A2005-02-17
Other References:
See also references of EP 2166028A4
Attorney, Agent or Firm:
SAITOH, Yukihiko et al. (2-7 Minamimorimachi 1-chome,Kita-ku, Osaka-sh, Osaka 54, JP)
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Claims:
 平均ケン化度85モル%以上、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2-ジオール結合を1~15モル%有するポリビニルアルコール系樹脂[I]により、アクリル系モノマー及びスチレン系モノマーの少なくとも1種のモノマー(A)と下記(ア)~(カ)からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基含有モノマー(B)とを共重合成分とする合成樹脂が、分散安定化されてなることを特徴とするセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン。
 (ア)グリシジル基含有モノマー。
 (イ)アリル基含有モノマー。
 (ウ)加水分解性シリル基含有モノマー。
 (エ)アセトアセチル基含有モノマー。
 (オ)分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー。
 (カ)ヒドロキシル基含有モノマー。
 平均ケン化度85モル%以上、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2-ジオール結合を1~15モル%有するポリビニルアルコール系樹脂[I]を保護コロイド剤として用い、アクリル系モノマー及びスチレン系モノマーの少なくとも1種のモノマー(A)と下記(ア)~(カ)からなる群から選ばれた少なくとも1種の官能基含有モノマー(B)とを共重合成分として乳化重合してなることを特徴とする請求項1記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン。
 (ア)グリシジル基含有モノマー。
 (イ)アリル基含有モノマー。
 (ウ)加水分解性シリル基含有モノマー。
 (エ)アセトアセチル基含有モノマー。
 (オ)分子構造中にビニル基を2個以上有するモノマー。
 (カ)ヒドロキシル基含有モノマー。
 官能基含有モノマー(B)の使用量が、全モノマー成分の0.01~10重量%であることを特徴とする請求項1または2記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン。
 ポリビニルアルコール系樹脂[I]の使用量が、全モノマー成分100重量部に対して、3~20重量部であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン。
 さらに、分子量3,000~500,000の水溶性カチオンポリマーを含有してなることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン。
 請求項1~5のいずれか一項に記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョンを乾燥してなることを特徴とするセメントモルタル混和剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末。
 さらに、分子量3,000~2,000,000の水溶性カチオンポリマーを含有してなることを特徴とする請求項6記載のセメントモルタル混和剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末。
 請求項1~5のいずれか一項に記載のセメントモルタル混和剤用水性合成樹脂エマルジョン、または請求項6および7のいずれか一項に記載のセメントモルタル混和剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末を含有してなることを特徴とするセメントモルタル混和剤。
Description:
セメントモルタル混和剤用水性 成樹脂エマルジョン、セメントモルタル混 剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉 、及びそれを用いたセメントモルタル混和

 本発明は、特定のポリビニルアルコール 樹脂(以下、ポリビニルアルコールを「PVA」 と略記することがある。)を保護コロイドと て分散安定化してなるアクリル系モノマー びスチレン系モノマーの少なくとも1種のモ マーと特定の官能基含有モノマーとを共重 したセメント混和剤用水性合成樹脂エマル ョン、セメントモルタル混和剤用再乳化性 性合成樹脂エマルジョン粉末、及びそれを いたセメントモルタル混和剤に関するもの ある。

 従来より、水性合成樹脂エマルジョンに 械安定性や凍結安定性を付与するために、 護コロイド剤として、PVA系樹脂が使用され いる。しかしながら、この場合、一般には エマルジョンの機械安定性や凍結安定性は 善されるものの、重合安定性が不充分であ 、特に、エマルジョン中の樹脂分が50重量% 超えるような高い不揮発分では重合するこ ができなかった。

 そのため、アクリル系モノマー及びスチ ン系モノマーの少なくとも1種のモノマーを 重合してなる水性合成樹脂エマルジョンの保 護コロイド剤として、PVA系樹脂を使用する場 合には、エマルジョン中の樹脂分を50重量%未 満にする必要があり、生産性の点で問題があ った。また、得られるエマルジョンの安定性 も不充分で、経時的に増粘するという問題も あった。

 また、PVA系樹脂を保護コロイド剤として いた水性合成樹脂エマルジョンを、セメン モルタルへの混和用途に用いることが知ら ているが、かかるエマルジョンを混和する 、セメントモルタルの流動性が経時的に悪 し、作業性が低下するという問題があった

 そのため、水性合成樹脂エマルジョンの 護コロイド剤としてPVA系樹脂を使用する場 に、エマルジョン中の樹脂分を50重量%以上 高濃度でも重合することができるPVA系保護 ロイド剤の開発、およびセメントモルタル 混和しても流動性、作業性が低下しない水 合成樹脂エマルジョンの開発が望まれてい 。

 一方、再乳化性水性合成樹脂エマルジョ 粉末は、水性合成樹脂エマルジョンを乾燥( 例えば、噴霧乾燥)することにより製造され ものであり、粉末であることから水性合成 脂エマルジョンと比較して取り扱いが容易 ある。製品の紙袋包装が可能で、保管・輸 に便利である。また、この再乳化性水性合 樹脂エマルジョン粉末は、使用時に水に添 して攪拌するだけで水中に再分散・乳化さ ることができるため、セメントやモルタル のセメントモルタル製品や石膏製品等への 調合混和剤として、更に木部・木質用材料 接着剤、塗料用バインダー、土壌改良用バ ンダーなどとして使用されている。特に、 性合成樹脂エマルジョン粉末は、セメント ルタル製品や石膏等の無機水硬性組成物に め混合することができるので、現場で水を 合するだけでモルタルなどのセメントモル ル製品や石膏製品を形成させることができ 。

 一般的に、水に再乳化しうる水性合成樹 エマルジョン粉末として知られているもの 多くは、再乳化させる必要性から、保護コ イドとしてPVA系樹脂などの水溶性高分子を 用し、乳化重合して得られた水性合成樹脂 マルジョンを乾燥して得られるものである それ故に、皮膜の耐水性が充分でなく、特 セメントモルタル製品や石膏製品を改質す ために混和するには湿潤時の接着強さなど 物性が不充分であった。

 これに対応するため、水に再乳化した際 、元のエマルジョン状態レベルに戻り易く 特にセメントモルタル製品や石膏製品を改 するために混和した際には湿潤時の接着強 などにおいて充分な物性を発現する、加え 、セメントモルタルに混和しても流動性、 業性が低下しない再乳化性水性合成樹脂エ ルジョン粉末の開発が望まれていた。

 かかる対策として、水性合成樹脂エマルジ ンにおいては、アセトアセチル(CH 3 COCH 2 CO-)基含有PVA系樹脂や変性PVA系樹脂を乳化分 剤として使用することなどが提案され、多 の特許文献などに記載されている。

 たとえば、特許文献1には、アセト酢酸エ ステル基、メルカプト基、ジアセトンアクリ ルアミド基などの活性水素基を含有し、ブロ ックキャラクター[η]が0.6より大きく、ケン 度が95.0モル%より高く、かつブロック性の低 いPVAを重合体に付着させた水性エマルジョン が開示されており、得られる水性エマルジョ ンの機械安定性、凍結安定性および高温放置 安定性が良好であると述べられている。

 また、特許文献2には、エチレンスルホン 酸アルカリ塩を含有する酢酸ビニル-エチレ スルホン酸アルカリ塩共重合体をケン化し 製造される変性PVA系樹脂を、乳化剤として エチレン性不飽和単量体を乳化重合する方 が開示されており、得られたエマルジョン 、粘度の経時変化が少なく、放置安定性等 おいて優れた性能を有することが述べられ いる。

 特許文献3には、平均ケン化度が90モル%以 下であり、スルホン酸基含有量が0.1~20モル% 変性PVA系樹脂からなる乳化重合用安定剤が 示されている。

 特許文献4には、側鎖に炭素数4以上の炭 水素基とスルホン酸基もしくは硫酸エステ 基とを含有する変性PVA系樹脂からなるスチ ンの乳化安定剤が開示されており、得られ 乳化エマルジョンは、優れた安定性を示し つ適度の粘性を有しており、接着剤、セメ トモルタル混和剤などとして用いることが べられている。

 しかしながら、特許文献1では、機械安定 性、凍結安定性および高温放置安定性の良好 な水性エマルジョンが得られているものの、 長期の保管における粘度安定性についてはま だまだ満足のいくものではなかった。また、 特許文献2~4では、重合安定性が不充分であっ たり、グラフト率が低く機械安定性が劣った りするため、セメントモルタル混和用途にお いて混和安定性が不充分であり、まだまだ満 足のいくものではなかった。

 すなわち、水性合成樹脂エマルジョンに するこれらの文献においては、実際の製品 を目的として不揮発分濃度を50%以上にした に、静置時の粘度安定性と高いグラフト率 起因する機械安定性の両立が充分ではなく セメントやモルタルに混和した場合にも、 メントやモルタルを混和直後に使用する場 には流動性や作業性は良好であるが、混和 に時間をおいて使用する場合にはセメント モルタルの流動性が低下して作業性が低下 るという問題が生じていた。

 また、再乳化性水性合成樹脂エマルジョン 末に関しては、特許文献5に、アセトアセチ ル(CH 3 COCH 2 CO-)基含有PVA系樹脂を乳化分散剤として使用 ることが提案されているが、まだまだ満足 いくものではなく、再乳化時の物性が改善 れ、皮膜の耐水性を更に改善した再乳化性 性合成樹脂エマルジョン粉末が望まれてい 。特に、セメントモルタルに混和した際の 動性や作業性の改善、加えて経時で流動性 作業性が低下しない再乳化性水性合成樹脂 マルジョン粉末の開発が望まれている。

特開2003-277419号公報

特開昭50-155579号公報

特開平10-060015号公報

特開昭58-063706号公報

特許第3225150号公報

 本発明の目的は、セメントモルタル混和 として使用した場合に、良好な流動性、作 性を示し、物性ばらつきの少ない、加えて 着強さなどが向上したアクリル系やスチレ 系のセメントモルタル混和剤用水性合成樹 エマルジョン、セメントモルタル混和剤用 乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末、及 それを用いたセメントモルタル混和剤を提 することにある。

 しかるに、本発明者はかかる事情に鑑み 意研究を重ねた結果、平均ケン化度85モル% 上、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2-ジオー 結合を1~15モル%有するPVA系樹脂[I]を保護コロ イド剤として、アクリル系モノマー及びスチ レン系モノマーの少なくとも1種のモノマー(A )と特定の官能基含有モノマー(B)とを共重合 分とする合成樹脂が、分散安定化されるこ により、セメントモルタル混和剤として使 した場合に、良好な流動性、作業性を示し 物性ばらつきの少ない、加えて接着強さな が向上するなどに優れることを見出し、本 明を完成した。

 即ち、本発明の要旨は、平均ケン化度85モ %以上、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2-ジオ ル結合を1~15モル%有するポリビニルアルコー ル系樹脂[I]により、アクリル系モノマー及び スチレン系モノマーの少なくとも1種のモノ ー(A)と下記(ア)~(カ)からなる群から選ばれた 少なくとも1種の官能基含有モノマー(B)とを 重合成分とする合成樹脂が、分散安定化さ てなるセメントモルタル混和剤用水性合成 脂エマルジョン、及びセメントモルタル混 剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉 に関するものである。
 (ア)グリシジル基含有モノマー。
 (イ)アリル基含有モノマー。
 (ウ)加水分解性シリル基含有モノマー。
 (エ)アセトアセチル基含有モノマー。
 (オ)分子構造中にビニル基を2個以上有する ノマー。
 (カ)ヒドロキシル基含有モノマー。

 また、本発明のセメントモルタル混和剤 水性合成樹脂エマルジョンは、平均ケン化 85モル%以上、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2 -ジオール結合を1~15モル%有するポリビニルア ルコール系樹脂[I]を保護コロイド剤として用 い、アクリル系モノマー及びスチレン系モノ マーの少なくとも1種のモノマー(A)と上記(ア) ~(カ)からなる群から選ばれた少なくとも1種 官能基含有モノマー(B)とを共重合成分とし 乳化重合してなるセメントモルタル混和剤 水性合成樹脂エマルジョンであることが好 しい。

 更に、本発明では、上記セメントモルタ 混和剤用水性合成樹脂エマルジョンまたは 記セメントモルタル混和剤用再乳化性水性 成樹脂エマルジョン粉末を含有してなるセ ントモルタル混和剤も提供するものである

 本発明のセメントモルタル混和剤用水性 成樹脂エマルジョン、及びセメントモルタ 混和剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョ 粉末は、セメントモルタル混和剤として使 した際に、良好な流動性、作業性を示し、 性ばらつきの少ない、加えて接着強さなど 向上するなどの優れた効果を有し、セメン モルタル用途として、補修モルタル用、下 調整塗材用、セルフレベリング材、タイル 着モルタル、及び石膏系材料などの改質剤 して有用である。

 以下に、本発明を詳細に説明する。
 本発明においては、平均ケン化度85モル%以 、平均重合度50~3000で、側鎖に1,2-ジオール 合を1~15モル%有するPVA系樹脂[I]を使用すると 、共重合性モノマーとの反応性がより良好と なり重合安定性に優れ、かつ不揮発分のより 高い水性合成樹脂エマルジョンが得られ易く なり、不揮発分の高い水性合成樹脂エマルジ ョンが得られると、輸送コストの低減、水性 合成樹脂エマルジョンの乾燥性の向上、特に 、噴霧乾燥時における熱源エネルギーの省力 化ができることとなる。

 本発明において用いられる側鎖に1,2-ジオ ール結合を有するPVA系樹脂[I]は公知であり、 通常、下記一般式(1)で示される1,2-ジオール 造単位を含有するPVA系樹脂があげられる。

 このようなPVA系樹脂[I]は、例えば、(a)酢 ビニルと3,4-ジアセトキシ-1-ブテンとの共重 合体をケン化する方法、(b)酢酸ビニルとビニ ルエチレンカーボネートとの共重合体をケン 化及び脱炭酸する方法、(c)酢酸ビニルと2,2- アルキル-4-ビニル-1,3-ジオキソランとの共重 合体をケン化及び脱ケタール化する方法、(d) 酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテル との共重合体をケン化する方法、等により得 られる。

 本発明において、上記PVA系樹脂[I]の平均 ン化度は、85モル%以上であり、好ましくは9 0~99.8モル%である。平均ケン化度が上記範囲 満では、水性合成樹脂エマルジョンの重合 の安定性が低下することとなり、重合が完 したとしても水性合成樹脂エマルジョンの 存安定性が良好でなくなることがあり、安 な水性合成樹脂エマルジョンを得ることが 難になる傾向がある。

 なお、本発明において、平均ケン化度は 慣用の方法により測定し求めることができ 。例えば、JIS K 6726に記載のケン化度の算 方法にしたがって求めることができる。

 PVA系樹脂[I]の平均重合度は、50~3000であり 、好ましくは100~1700、更に好ましくは100~1000 特に好ましくは200~500である。平均重合度が 記範囲未満では、PVA系樹脂を工業的に製造 ることが困難となり、上記範囲を超えると 水性合成樹脂エマルジョンの粘度が高くな 過ぎたり、水性合成樹脂エマルジョンの重 安定性が低下したりする傾向がある。

 なお、本発明において、平均重合度は、 用の方法により測定し求めることができる 例えば、JIS K 6726に記載の平均重合度の算 方法にしたがって求めることができる。

 PVA系樹脂[I]の側鎖の1,2-ジオール結合量は 、1~15モル%であり、好ましくは1~12モル%、よ 好ましくは2~10モル%、特に好ましくは2~8モル %である。かかる1,2ジオール結合量が上記範 未満では、水性合成樹脂エマルジョンの機 安定性や皮膜の耐水性などが低下すること なり、上記範囲を超えると重合時の安定性 低下し、不揮発分の高い安定な水性合成樹 エマルジョンが得られにくくなる傾向があ 。

 本発明において、保護コロイド剤(分散安 定化剤)として使用するPVA系樹脂[I]の使用量 、使用される全共重合モノマー量100重量部( 下「部」と略す)に対して、3~20部であるこ が好ましく、より好ましくは4~15部、特に好 しくは5~10部である。かかる使用量が少なす ぎると、乳化重合の際の保護コロイド量が不 足となって、重合安定性が不良となる傾向が あり、多すぎると、水性合成樹脂エマルジョ ンの粘度が高まり安定性が低下する傾向があ る。

 ここで、用いられたPVA系樹脂[I]は、通常 重合により形成される水性合成樹脂エマル ョン中に全量が存在することとなる。即ち 共重合体100部に対して、3~20部、より好まし くは4~15部、更に好ましくは5~10部のPVA系樹脂[ I]がエマルジョン中に存在することがある。

 本発明においては、保護コロイド剤(分散 安定化剤)として、側鎖に1,2-ジオール結合を するPVA系樹脂[I]を使用するが、本発明の目 を阻害しない範囲において変性、非変性タ プの部分・完全ケン化PVA系樹脂などを併用 ても良い。

 また、本発明では、PVA系樹脂[I]は、通常、 系媒体を用いて水溶液とし、これが乳化重 の過程において使用される。ここで水系媒 とは、水、または水を主体とするアルコー 性溶媒をいい、好ましくは水のことをいう
 この水溶液におけるPVA系樹脂[I]の量(不揮発 分)については、取り扱いの容易性の観点か は、5~30重量%、特には5~20重量%であることが ましい。

 また、本発明で用いられるPVA系樹脂[I]に アニオン性基を含むPVA系樹脂を併用しても い。アニオン性基としては、スルホン酸基 カルボン酸基、リン酸基などをあげること できるが、これらの中でも、エマルション のpHに関係なく、安定して強い電荷反発が られる点から、スルホン酸基であることが ましい。

 なお、本発明において、PVA系とは、PVA自 、または、例えば、各種変性種(本発明にお いては1,2-ジオール結合を有する変性種以外 もの)によって変性されたものを意味し、そ 変性度は、通常20モル%以下、好ましくは15 ル%以下、更に好ましくは10モル%以下である

 かかる変性種としては、例えば、エチレ 、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィ 類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン 、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン 等の不飽和酸類あるいはその塩あるいはモ またはジアルキルエステル等、アクリロニ リル、メタクリロニトリル等のニトリル類 アクリルアミド、メタクリルアミド等のア ド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホ 酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィン ルホン酸あるいはその塩、アルキルビニル ーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アリ エーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリ ルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ) リルエーテル、ポリオキシエチレン(メタ) クリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)ア クリレート等のポリオキシアルキレン(メタ) クリレート、ポリオキシエチレン(メタ)ア リルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)ア クリルアミド等のポリオキシアルキレン(メ )アクリルアミド、ポリオキシエチレン〔1-( タ)アクリルアミド-1,1-ジメチルプロピル〕 ステル、ポリオキシエチレンビニルエーテ 、ポリオキシプロピレンビニルエーテル、 リオキシエチレンアリルアミン、ポリオキ プロピレンアリルアミン、ポリオキシエチ ンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビ ルアミン、N-アクリルアミドメチルトリメ ルアンモニウムクロライド、アリルトリメ ルアンモニウムクロライド、ジメチルジア ルアンモニウムクロリド、ジメチルアリル ニルケトン、N-ビニルピロリドン、塩化ビニ ル、塩化ビニリデン等があげられる。また、 上記の他、アセトアセチル基変性、メルカプ ト基変性、ジアセトンアクリルアミド変性等 の活性水素を含有する変性種もあげられる。

 次に、側鎖に1,2-ジオール結合を有するPVA 系樹脂[I]により分散安定化される水性合成樹 脂エマルジョンについて説明する。

 本発明における水性合成樹脂エマルジョ は、アクリル系モノマー及びスチレン系モ マーの少なくとも1種のモノマー(A)と特定の 官能基含有モノマー(B)とを共重合成分として 含んでなるものである。

 かかるアクリル系モノマーとしては、例 ば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ )アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレー 、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メ )アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)ア リレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレー ト、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル( メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリ レートなどの脂肪族系(メタ)アクリレートや フェノキシ(メタ)アクリレート等の芳香族 (メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸トリ ルオロエチルなどがあげられ、これらは1種 または2種以上併用して用いられる。中でも ルキル基の炭素数が1~18、好ましくは1~10、更 に好ましくは1~8の脂肪族系(メタ)アクリレー が好適である。

 なお、本発明において「(メタ)アクリレ ト」は、アクリレートまたはメタクリレー を意味し、「(メタ)アクリル」は、アクリル またはメタクリルを意味する。

 スチレン系モノマーとしては、例えば、 チレン、α-メチルスチレンなどがあげられ 。これらは単独でもしくは2種以上併せて用 いることができる。

 上記の中でもホモポリマーのガラス転移 度の高いメチルメタクリレートおよびスチ ンの少なくとも一方と、ガラス転移温度の いn-ブチルアクリレートおよび2-エチルヘキ シルアクリレートの少なくとも一方との組み 合わせが、共重合性の容易さ、及び汎用的に 塗料用や接着剤用に使用されているモノマー 類であることなどの点で特に好ましい。

 本発明においては、乳化重合する際に、 記のアクリル系モノマー及びスチレン系モ マーの少なくとも1種のモノマー(A)とともに 特定の官能基含有モノマー(B)を共重合するこ とが、セメントモルタル混和剤として使用し た場合に、物性ばらつきが少なく、加えて接 着強さなどが向上するなどの優れた効果を発 揮する点で好ましい。

 かかる官能基含有モノマー(B)としては、下 (ア)~(カ)からなる群から選ばれた少なくと 1種であることが好ましい。
 (ア)グリシジル基含有モノマー。
 (イ)アリル基含有モノマー。
 (ウ)加水分解性シリル基含有モノマー。
 (エ)アセトアセチル基含有モノマー。
 (オ)分子構造中にビニル基を2個以上有する ノマー。
 (カ)ヒドロキシル基含有モノマー。

 上記グリシジル基含有モノマー(ア)の具 例としては、例えば、グリシジル(メタ)アク リレート、グリシジル(メタ)アリルエーテル 3,4-エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレ ト等があげられる。このうち、特に物性ば つきの少なく、加えて湿潤時の接着強さな が向上するなどの観点から、グリシジル(メ タ)アクリレートが好ましい。

 上記アリル基含有モノマー(イ)の具体例 しては、例えば、トリアリルオキシエチレ 、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌ ート、トリアリルイソシアヌレート、テト アリルオキシエタン等のアリル基を2個以上 するモノマー、アリルグリシジルエーテル 酢酸アリル等があげられる。このうち、湿 時の接着強さの観点から、アリルグリシジ エーテルが好ましい。

 上記加水分解性シリル基含有モノマー(ウ )の具体例としては、例えば、ビニルトリメ キシシラン、ビニルトリエトキシシラン等 ビニルトリアルコキシシラン;ビニルメチル メトキシシラン、ビニルメチルジエトキシ ラン等のビニルアルキルジアルコキシシラ ;γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキ シラン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルト エトキシシラン等のγ-(メタ)アクリロキシプ ロピルトリアルコキシシラン;γ-(メタ)アクリ ロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ- (メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキ シラン等のγ-(メタ)アクリロキシプロピル ルキルジアルコキシシラン;ビニルトリス(β- メトキシエトキシ)シラン等があげられる。 のうち、湿潤時接着強さの観点から、ビニ トリアルコキシシラン、特にはビニルトリ トキシシランが好ましい。

 上記アセトアセチル基含有モノマー(エ) 具体例としては、例えば、アセト酢酸ビニ エステル、アセト酢酸アリルエステル、ジ セト酢酸アリルエステル、アセトアセトキ エチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキ シプロピル(メタ)アクリレート等のアセトア トキシアルキル(メタ)アクリレート;アセト セトキシエチルクロトナート、アセトアセ キシプロピルクロトナート等のアセトアセ キシアルキルクロトナート;2-シアノアセト セトキシエチル(メタ)アクリレート等があ られる。このうち、特に物性ばらつきの少 く、加えて湿潤時接着強さなどが向上する どの観点から、アセトアセトキシアルキル( タ)アクリレート、特にはアセトアセトキシ エチル(メタ)アクリレートが好ましい。

 上記分子構造中にビニル基を2個以上有す るモノマー(オ)の具体例としては、例えば、 ビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ト アリルシアヌレート、トリアリルイソシア レート;エチレングリコールジ(メタ)アクリ ート、1,2-プロピレングリコールジ(メタ)ア リレート、1,3-プロピレングリコールジ(メ )アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ) クリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ) クリレート、ネオペンチルグリコールジ(メ タ)アクリレート等のアルキレングリコール( タ)アクリレート;トリメチロールプロパン リ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリ ート等があげられる。

 上記ヒドロキシル基含有モノマー(カ)の 体例としては、例えば、2-ヒドロキシエチル (メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メ タ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ) クリレート等のアルキル基の炭素数が1~10、 特に1~6のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレ トなどがあげられる。このうち、乳化重合 における保護コロイド的作用及びセメント ルタル配合物などとの混和性改良の観点か 、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好 しい。

 本発明の好ましい態様によれば、官能基 有モノマー(B)は、グリシジル基含有モノマ (ア)、加水分解性シリル基含有モノマー(ウ) 、アセトアセチル基含有モノマー(エ)からな 群より選択されることが好ましく、特には グリシジル基含有モノマー(ア)、アセトア チル基含有モノマー(エ)のうち少なくとも1 を含んでなることが、セメントモルタル混 剤として使用した場合に、物性ばらつきの ない、加えて接着強さなどが向上するなど 優れた効果を発揮する点で特に好ましい。

 官能基含有モノマー(B)の使用量は、共重 性モノマー全体の0.01~10重量%であることが ましく、より好ましくは0.05~5重量%、特に好 しくは0.1~5重量%、更に好ましくは0.1~1重量% ある。使用量が少なすぎると、セメントモ タル混和剤として使用した場合に、物性ば つきの少ない、加えて接着強さなどが向上 るなどの効果が不充分となる傾向があり、 すぎると、重合不良となったりする傾向が る。

 なお、これらの官能基含有モノマー(B)は 単独でもしくは2種以上のものを組み合わせ て使用することができる。

 また、本発明においては、本発明の目的 阻害しない範囲において、上記以外の共重 可能なモノマーを併用することができ、例 ば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラ リル酸ビニル、バーサチック酸ビニル等の ルボン酸ビニル、メチルビニルエーテル等 アルキルビニルエーテルといったビニル系 ノマー;エチレン、プロピレン、1-ブテン、 ソブテン等のオレフィン、塩化ビニル、塩 ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリ ン等のハロゲン化オレフィン、エチレンス ホン酸といったオレフィン系モノマー;およ び、ブタジエン-1,3、2-メチルブタジエン、1,3 又は2,3-ジメチルブタジエン-1,3、2-クロロブ ジエン-1,3等のジエン系モノマー等があげら る。

 また、上記以外の官能基含有モノマーと て、(メタ)アクリルニトリル等のニトリル モノマー;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチ アクリルアミド、t-ブチルアクリルアミド 2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン 酸、ダイアセトンアクリルアミド等のアミド 変性や(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基 性のアクリル系モノマー;および、(無水)イ コン酸、(無水)マレイン酸等及びこれらの ステルの不飽和ジカルボン酸またはそのエ テル系モノマー等も使用可能である。

 本発明による水性合成樹脂エマルジョン おいては、前記したアクリル系モノマー及 スチレン系モノマーの少なくとも1種のモノ マー(A)と特定の官能基含有モノマー(B)などの 共重合性モノマー成分以外に、必要に応じて 他の成分を更に用いることができる。このよ うな他の成分としては、水性合成樹脂エマル ジョンとしての性質を低下させることがない 限り、目的に応じて適宜選択することができ る。他の成分としては、例えば、重合開始剤 、重合調整剤、補助乳化剤、可塑剤、造膜助 剤等があげられる。

 重合開始剤としては、通常の乳化重合に 用できるものであれば使用でき、例えば、 硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸 ンモニウム等の無機過酸化物;有機過酸化物 、アゾ系開始剤、過酸化水素、ブチルパーオ キサイド等の過酸化物;およびこれらと酸性 硫酸ナトリウムやL-アスコルビン酸等の還元 剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤等 があげられる。これらは、単独でもしくは2 以上併せて用いることができる。これらの でも、皮膜物性や強度増強に悪影響を与え 重合が容易な点で過硫酸アンモニウムや過 酸カリウムが好ましい。

 重合調整剤としては、公知のものの中か 適宜選択することができる。このような重 調整剤としては、例えば、連鎖移動剤、バ ファーなどがあげられる。

 ここで、連鎖移動剤としては、例えば、 タノール、エタノール、プロパノール、ブ ノール等のアルコール;アセトアルデヒド、 プロピオンアルデヒド、n-ブチルアルデヒド フルフラール、ベンズアルデヒド等のアル ヒド類;および、ドデシルメルカプタン、ラ ウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン 、チオグリコール酸、チオグリコール酸オク チル、チオグリセロール等のメルカプタン類 などがあげられる。これらは、単独でもしく は2種以上併せて用いることができる。連鎖 動剤の使用は、重合を安定に行わせるとい 点では有効であるが、合成樹脂の重合度を 下させるため、得られる皮膜の耐水性の低 やセメントモルタル混和剤として使用した 合には物性ばらつきが大きくなり、加えて 着強さなどが低下する傾向がある。このた 、連鎖移動剤を使用する場合には、その使 量をできる限り低く抑えることが望ましい

 ここで、前記バッファーとしては、例え 、酢酸ソーダ、酢酸アンモニウム、第二リ 酸ソーダ、クエン酸ソーダなどがあげられ 。これらは、単独でもしくは2種以上併せて 用いることができる。

 補助乳化剤としては、乳化重合に用いる とができるものとして当業者に公知のもの あれば、いずれのものでも使用可能である したがって、補助乳化剤は、例えば、アニ ン性、カチオン性、およびノニオン性の界 活性剤、PVA系樹脂[I]以外の保護コロイド能 有する水溶性高分子、および水溶性オリゴ ー等の公知のものの中から適宜選択するこ ができる。

 ここで、界面活性剤の好ましい具体例と ては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、 デシルベンゼンスルホン酸ナトリウムのよ なアニオン性界面活性剤、および、プルロ ック型構造を有するものやポリオキシエチ ン型構造を有するものなどのノニオン性界 活性剤があげられる。また、界面活性剤と て、構造中にラジカル重合性不飽和結合を する反応性界面活性剤を使用することもで る。これらは単独でもしくは2種以上併せて 用いることができる。

 界面活性剤の使用は乳化重合をスムーズに 行させ、コントロールし易くする(乳化剤と しての効果)。加えて、重合中に発生する粗 子やブロック状物の発生を抑制する効果が る。
 ただし、これら界面活性剤を乳化剤として く使用すると、グラフト率が低下する傾向 ある。このため、界面活性剤を使用する場 には、その使用量はPVA系樹脂に対して補助 な量であること、すなわち、できる限り少 くすることが望ましい。

 ここで、PVA系樹脂[I]以外の保護コロイド を有する水溶性高分子としては、例えば、P VA系樹脂[I]以外のPVA系樹脂、ヒドロキシエチ セルロース、ポリビニルピロリドン、メチ セルロースなどがあげられる。これらは単 でもしくは2種以上併せて用いることができ る。これらは、エマルジョンの増粘やエマル ジョンの粒子径を変えて粘性を変化させる点 で効果がある。ただし、その使用量によって は皮膜の耐水性を低下させることがあるため 、使用する場合には少量で使用することが望 ましい。

 ここで、水溶性オリゴマーとしては、例 ば、スルホン酸基、カルボキシル基、水酸 、アルキレングリコール基などの親水性基 有する重合度が10~500程度の重合体または共 合体が好適にあげられる。水溶性オリゴマ の具体例としては、例えば、2-メタクリル ミド-2-メチルプロパンスルホン酸共重合体 どのアミド系共重合体、メタクリル酸ナト ウム-4-スチレンスルホネート共重合体、ス レン/マレイン酸共重合体、メラミンスルホ 酸ホルムアルデヒド縮合物、ポリ(メタ)ア リル酸塩などがあげられる。更に、具体例 しては、スルホン酸基、カルボキシル基、 酸基、アルキレングリコール基などを有す モノマーやラジカル重合性の反応性乳化剤 予め単独または他のモノマーと共重合して る水溶性オリゴマーなどもあげられる。こ らは単独でもしくは2種以上併せて用いるこ ができる。本発明においては、これらの中 も、顔料および炭カル等のフィラーとの混 安定性の点で、2-メタクリルアミド-2-メチ プロパンスルホン酸共重合体、メタクリル ナトリウム-4-スチレンスルホネート共重合 が好ましい。水溶性オリゴマーは、乳化重 を開始する前に予め重合したものを使用し もよいし、市販品を使用してもよい。

 また、可塑剤としては、例えば、アジペー 系可塑剤、フタル酸系可塑剤、燐酸系可塑 などが使用できる。また、沸点が260℃以上 造膜助剤も使用できる。
 これら他の成分の使用量は、本発明の目的 阻害しない限り、目的に応じて適宜選択す ことができる。

 次に、本発明の水性合成樹脂エマルジョン 製造について説明する。
 前記したように、本発明による水性合成樹 エマルジョンは、特定のPVA系樹脂[I]を保護 ロイド剤として用いて、アクリル系モノマ 及びスチレン系モノマーの少なくとも1種の モノマー(A)と特定の官能基含有モノマー(B)と を含む共重合性モノマーを乳化重合すること によって製造することができる。

 乳化重合の方法としては、例えば、反応 に、水、PVA系樹脂[I]を仕込み、昇温して共 合性モノマーと重合開始剤を滴下するモノ ー滴下式乳化重合法;および、滴下するモノ マーを予めPVA系樹脂[I]と水とで分散・乳化さ せた後、滴下する乳化モノマー滴下式乳化重 合法などがあげられるが、重合工程の管理や コントロール性等の面でモノマー滴下式が便 利である。

 通常、乳化重合は、PVA系樹脂[I]及び前記 重合性モノマー成分以外に、重合開始剤、 合調整剤、補助乳化剤等のような前記した の成分を必要に応じて用いて実施する。ま 、重合の反応条件は、共重合性モノマーの 類、目的等に応じて適宜選択することがで る。

 乳化重合過程を更に具体的に説明にすると 以下のとおりである。
 先ず、反応缶に水、PVA系樹脂[I]、必要に応 て補助乳化剤を仕込み、これを昇温(通常65~ 90℃)した後、共重合性モノマー成分の一部と 重合開始剤をこの反応缶に添加して、初期重 合を実施する。次いで、残りの共重合性モノ マー成分を、一括または滴下しながら反応缶 に添加し、必要に応じて更に重合開始剤を添 加しながら重合を進行させる。重合反応が完 了したと判断されたところで、反応缶を冷却 し、目的とする水性合成樹脂エマルジョンを 取り出すことができる。

 本発明において、乳化重合より得られる水 合成樹脂エマルジョンは、典型的には、均 な乳白色であって、水性合成樹脂エマルジ ン中の合成樹脂の平均粒子径は0.2~2μmであ ことが好ましく、より好ましくは0.3~1.5μmで る。
 なお、ここで、平均粒子径は、慣用の方法 例えばレーザー解析/散乱式粒度分布測定装 置「LA-910」(株式会社堀場製作所製)により測 することができる。

 また、水性合成樹脂エマルジョン中の合 樹脂において、そのガラス転移温度として 、-20~+30℃であることがセメントモルタル混 和剤として使用した場合に、物性ばらつきが 少なく、加えて接着強さなどが向上するなど の点で好ましく、特には-15~+20℃であること 好ましい。かかるガラス転移温度が低すぎ と接着強さが低下する傾向となり、高すぎ とジブチルフタレートなどの可塑剤を多く れて水性合成樹脂エマルジョンの造膜温度 低下させることになり、この結果、特に湿 時接着強さなどが低下する傾向がある。

 なお、本発明において、上記合成樹脂に けるガラス転移温度とは、共重合モノマー 分として官能基含有モノマー(B)を除いた主 モノマー成分に基づき、Foxの式により計算 れる値のことである。

 更に、本発明においては、PVA系樹脂[I]の なくとも一部が、前記の合成樹脂にグラフ していることが、得られる乾燥前の水性合 樹脂エマルジョン自体の貯蔵安定性や接着 さ測定における測定値のばらつきが少なく ることなどの点で好ましい。

 PVA系樹脂[I]が前記の合成樹脂にグラフト た場合に、下記式(2)で表される値(W)が50重 %以上であることが好ましく、より好ましく 65重量%以上であり、更に好ましくは70重量% 上である。かかる値は、グラフト化程度の 安になるものであり、この値が低すぎると グラフト化の程度が低く、乳化重合時の保 コロイド作用が低下し、重合安定性が低下 たり、加えてフィラー類との混和性が低下 たりするなどの傾向がある。

 式(2)の値(W)は、以下のようにして算出され 。
 即ち、対象となるエマルジョン等を、40℃× 16時間乾燥して、厚さが約0.5mmの皮膜を作製 、それを23℃×65%RH下に2日間放置する。その 膜を、沸騰水中で8時間抽出を行った後、ア セトン中で8時間抽出を行い、グラフト化し いない樹脂等を除去する。この場合の、抽 前の皮膜絶乾重量をw 1 (g)、抽出後の皮膜絶乾重量をw 2 (g)とし、下記の式より求める。

 W(重量%)=(w 2 )/(w 1 )×100  …(2)
   w 1 :抽出前の皮膜絶乾重量(g)
   w 2 :抽出後の皮膜絶乾重量(g)
 なお、抽出前の皮膜絶乾重量(w 1 )は、予め、抽出試験サンプルとは別のサン ルを105℃×1時間乾燥させ、抽出前サンプル 皮膜絶乾重量を算出したものであり、抽出 の皮膜絶乾重量(w 2 )は、抽出後のサンプルを105℃×1時間乾燥さ た時の重量である。これらw 1 とw 2 の重量の算出は、それぞれ別のサンプルを用 いたものであるため、同一条件下での取り扱 いとすべく、両サンプルの乾燥にともなう揮 発分割合により補正して、両サンプルの皮膜 絶乾重量を算出した。

 上記式(2)の値(W)を上記範囲に調整する方 としては、乳化重合温度を従来よりもやや くしたり、重合用触媒として使用する過硫 塩に極微量の還元剤(例えば、酸性亜硫酸ソ ーダ、など)を併用したりする等があげられ 。

 本発明においては、乳化重合後の水性合 樹脂エマルジョンに、必要に応じて各種添 剤を更に加えてもよい。このような添加剤 しては、例えば、有機顔料、無機顔料、水 性添加剤、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤 どがあげられる。

 このようにして、本発明のセメントモル ル混和剤用水性合成樹脂エマルジョンが得 れるが、その使用に際しては、不揮発分と て、通常40~60重量%に調整することが好まし 。

 本発明においては、前記乳化重合により られた水性合成樹脂エマルジョンを乾燥す ことにより、セメントモルタル混和剤用再 化性水性合成樹脂エマルジョン粉末とする とができる。

 得られたセメントモルタル混和剤用再乳 性水性合成樹脂エマルジョン粉末は、粉末 まま使用することもできるし、水に再乳化 て水性合成樹脂エマルジョンとして使用す こともできる。

 乾燥方法は、例えば、噴霧乾燥、凍結乾 、凝析後の温風乾燥等があげられる。これ の中でも、生産コスト、省エネルギーの観 から噴霧乾燥することが好ましい。

 噴霧乾燥の場合、その噴霧形式は、例え 、ディスク式、ノズル式などの形式により 施することができる。噴霧乾燥の熱源とし は、例えば、熱風、加熱水蒸気などがあげ れる。噴霧乾燥の条件としては、噴霧乾燥 の大きさ、種類、水性エマルジョンの不揮 分、粘度、流量等に応じて適宜選択するこ ができる。噴霧乾燥の温度は、通常は、80~1 50℃が好ましく、より好ましくは100~140℃であ る。乾燥温度が低すぎると乾燥に時間を要し 、生産的に問題が生じることがあり、高すぎ ると熱による樹脂自体の変質が起こり易くな ってくる傾向がある。

 噴霧乾燥処理を更に具体例をあげて説明 ると、まず水性合成樹脂エマルジョン中の 揮発分を調整し、これを噴霧乾燥機のノズ より連続的に供給し、霧状にしたものを温 により乾燥させて粉末化させる。場合によ 、調整した噴霧液を噴霧に際して予め加温 てノズルより連続的に供給し、霧状にした のを温風により乾燥させて粉末化させるこ も可能である。加温することで乾燥スピー が速くなり、かつ噴霧液の粘度低下に伴い 霧液の高不揮発分化が可能で、生産コスト 低減にも寄与する。

 なお、本発明においては、抗粘結剤を、 性合成樹脂エマルジョンに混合したり、噴 乾燥後の樹脂エマルジョン粉末に混合した 、噴霧乾燥時に水性合成樹脂エマルジョン 別のノズルから噴霧するなどして、併用す ことができる。

 抗粘結剤を添加することにより、抗粘結 で樹脂エマルジョン粉末をまぶすような状 にして貯蔵中などにおいて粒子同士が粘結 て凝集しブロッキングするのを防止するこ ができる。

 抗粘結剤としては、公知の不活性な無機 たは有機粉末、例えば、無機粉末としては 酸カルシウム、タルク、クレー、ドロマイ 、無水珪酸、アルミナホワイト等を使用す ことができる。これらは単独でもしくは2種 以上併せて用いることができる。これらの中 でも、無水珪酸、炭酸カルシウム、クレー等 が好ましい。有機粉末としては合成樹脂のガ ラス転移温度が70℃以上の水性エマルジョン 噴霧乾燥してなる樹脂エマルジョン粉末も 粘結剤として使用可能である。抗粘結剤の 用量は、得られる樹脂エマルジョン粉末に して、5~30重量%程度であることが好ましい

 再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末 水への再乳化性をより向上させるために、 溶性添加剤を配合することができる。通常 水溶性添加剤は乾燥前の水性合成樹脂エマ ジョンに配合する。この配合量は、乾燥前 水性合成樹脂エマルジョンの不揮発分100部 対して、2~50部である。配合量が少なすぎる と水への再乳化性の向上が充分に図れない傾 向があり、多すぎると水への再乳化性の向上 には大いに役立つが皮膜の耐水性が低下し、 期待する物性が発揮できなくなることがある 。

 水溶性添加剤としては、例えばPVA系樹脂 、ヒドロキシエチルセルロース類、メチル ルロース類、ポリビニルピロリドン、でん ん類、デキストリン類、水溶性アルキッド 脂、水溶性アミノ樹脂、水溶性アクリル樹 、水溶性ポリカルボン酸樹脂、水溶性ポリ ミド樹脂などの水溶性樹脂があげられる。 れらは単独でもしくは2種以上併せて用いる ことができる。これらの中でも、PVA系樹脂類 が好ましい。

 上記PVA系樹脂類としては、平均ケン化度8 5モル%以上のポリビニルアルコールが望まし 、87モル%以上であることがより好ましい。 た、平均ケン化度の上限値としては、特に 定されるものではないが、99.5モル%以下で ることが好ましく、95モル%以下であること より好ましい。平均ケン化度が小さすぎる 皮膜の耐水性が著しく低下する傾向があり 大きすぎると耐水性が良くなるが、水への 乳化性を悪くする傾向がある。

 また、この平均重合度は、50~3000であること が好ましく、200~2000であることがより好まし 、300~600であることが更に好ましい。平均重 合度が小さすぎると耐水性が低下する傾向が あり、大きすぎると再乳化性が低下する傾向 がある。
 水への溶解性が容易でないものは、再乳化 に悪影響を与える場合があるので、事前に への溶解性を確認した上で使用することが ましい。

 本発明においては、上記で得られた水性 成樹脂エマルジョンまたは水性合成樹脂エ ルジョン粉末に、さらに特定の水溶性カチ ンポリマーを含有させることによって、水 性カチオンポリマー含有の水性合成樹脂エ ルジョン(以下、「カチオンポリマー含有水 性エマルジョン」と略す場合がある)、また 水溶性カチオンポリマー含有の水性合成樹 エマルジョン粉末(以下、「カチオンポリマ 含有水性エマルジョン粉末」と略す場合が る)が得られる。

 具体的には、カチオンポリマー含有水性 マルジョン、またはカチオンポリマー含有 性エマルジョン粉末を得る方法として、(a) 性合成樹脂エマルジョンと液状の水溶性カ オンポリマーとを混合する、(b)(a)のカチオ ポリマー含有水性エマルジョンを乾燥して チオンポリマー含有水性エマルジョン粉末 する、(c)水性合成樹脂エマルジョンを乾燥 てなる水性合成樹脂エマルジョン粉末と粉 状の水溶性カチオンポリマーとを混合する 等の方法があげられる。

 本発明において用いられる水溶性カチオ ポリマーとしては、液状のもの、粉末状の のがあり、例えば、水性合成樹脂エマルジ ンに含有させる場合には液状の水溶性カチ ンポリマーを用いたり、粉末状の水溶性カ オンポリマーを水溶液にして用いたりする とが好ましく、水性合成樹脂エマルジョン 末に含有させる場合には粉末状の水溶性カ オンポリマーを用いたりすることが好まし 。但し、これらの使用形態に限定されるも ではない。

 水性合成樹脂エマルジョンに含有させる 合には、分子量3,000~500,000の水溶性カチオン ポリマーが用いられ、好ましくは5,000~300,000 あり、特に好ましくは8,000~200,000である。分 量が大きすぎると水性合成樹脂エマルジョ の安定性が低下し凝集物が発生したり、ま 粘度が上昇したりする傾向があり、分子量 小さすぎるとエマルジョン粒子に対する吸 が不充分となり、期待されるセメントモル ル強度や接着強さが不充分となる傾向があ 。

 また、水性合成樹脂エマルジョン粉末に 有させる場合には、分子量3,000~2,000,000の水 性カチオンポリマーが用いられ、好ましく 50,000~1,500,000であり、特に好ましくは100,000~1 ,200,000である。分子量が大きすぎると、これ セメントモルタル混和剤としてセメントモ タルに使用した場合、セメントモルタルの 定性が低下しコテ作業性が悪くなったり、 時でセメントモルタル粘度が上昇したりす 傾向がある。また、分子量が小さすぎると 待されるセメントモルタル強度や接着強さ 発現しなくなる傾向がある。

 本発明においては、水性合成樹脂エマル ョンまたは水性合成樹脂エマルジョン粉末 対して、特定範囲の分子量を持つ水溶性カ オンポリマーを安定に混和でき、これによ 接着強さなどの向上が達成されるようにな 。

 本発明に用いる水溶性カチオンポリマー は、ポリマー中にカチオン基を有するポリ ーのことであり、かかる水溶性カチオンポ マーとしては、入手しやすい点、環境およ 人体への安全性に優れる点、カチオン強度 強すぎない点から、3級カチオンを有する基 および4級カチオンを有する基の少なくとも つを含む水溶性カチオンポリマーであるこ が好ましい。

 3級カチオンを有する基としては、例えば 、ジアリルモノメチルアンモニウムクロライ ド等のジアリルモノアルキルアンモニウムハ ライドなどがあげられ、4級カチオンを有す 基としては、例えば、ジアリルジメチルア モニウムクロライド等のジアリルジアルキ アンモニウムハライドなどがあげられ、こ らは単独でもしくは2種以上併せて用いるこ ができる。これらの中でもジアリルジメチ アンモニウムクロライド単位を含む重合体 好ましい。

 また、3級カチオンを有する基および4級 チオンを有する基の少なくとも一つを含む アリル化合物とアクリルアミドとの共重合 や、該ジアリル化合物とマレイン酸等の不 和ジカルボン酸との共重合体なども好まし 用いられる。

 具体的には、水溶性カチオンポリマーと ては、下記一般式(3):

〔式(3)中、R 1 、R 2 は、水素原子または炭素数1~3のアルキル基で あり、それぞれ同じであっても異なっていて もよい。R 3 、R 4 は、炭素数1~3のアルキレン基であり、それぞ れ同じであっても異なっていてもよい。Y - は1価のアニオンである。〕で示される繰り し単位を有するポリマー〔好ましい繰り返 単位数(重合度)は10~4000である。〕、または 記一般式(4):

〔式(4)中、R 5 は、炭素数1~3のアルキル基が好ましいがその 限りではない。R 6 、R 7 は、炭素数1~2のアルキレン基であり、それぞ れ同じであっても異なっていてもよい。Zは である。〕で示される繰り返し単位を有す ポリマー(好ましい繰り返し単位数は10~4000で ある。)などをあげることができる。

 上記一般式(3)および(4)において、炭素数1 ~3のアルキル基としては、メチル基、エチル 、ノルマル-プロピル基、イソプロピル基な どをあげることができる。炭素数1~3のアルキ レン基としては、メチレン基、エチレン基、 プロピレン基などをあげることができる。

 上記一般式(3)において、1価のアニオン(Y - )としては、Cl - 、Br - などがあげられるが、なかでも特にCl - が好ましい。

 上記一般式(4)において、アミンと塩を形 する酸(Z)としては、例えば、塩酸、硝酸等 無機酸および、蟻酸、酢酸、プロピル酸、 レイン酸、フマル酸等の有機酸などをあげ ことができる。これらの中でも、入手のし すさから、無機酸が好ましく、塩酸が特に ましい。

 具体的には、下記一般式(5)および(6)の少 くとも一方で示される繰り返し単位を有す ポリマーが好ましい。

 また、下記一般式(7)と(8)との繰り返し単 を含むポリマーや、下記一般式(9)と(10)との 繰り返し単位を含むポリマーが、特に好まし く用いられる。

 上記一般式(7),(9)および(10)の繰り返し単 において、好ましい繰り返し単位数は10~4000 あり、上記一般式(8)の繰り返し単位におい 、好ましい繰り返し単位数は1~500である。

 上記ポリマーの中でも、ジアリルジメチ アンモニウムクロライド単位を含む重合体 あることがより好ましく、ジアリルジメチ アンモニウムクロライドとアクリルアミド の共重合体であることがさらに好ましい。

 水溶性カチオンポリマーの配合量は、水 合成樹脂エマルジョン(不揮発分)または水 合成樹脂エマルジョン粉末100部に対して、0. 1~50部であることが好ましく、0.1~10部である とがより好ましい。配合量が少なすぎると 合した効果が認められない傾向があり、多 ぎるとカチオンポリマー含有水性エマルジ ン、またはカチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末を再乳化して得られる水性合成 脂エマルジョンが凝集する傾向や経時で増 する傾向がある。

 また、得られたこれらカチオンポリマー 有水性エマルジョン、カチオンポリマー含 水性エマルジョン粉末のゼータ電位として 、0.1~100mVであることが好ましく、1~100mVであ ることがより好ましく、3~100mVであることが らに好ましい。ゼータ電位は、本発明にお て、特に旧モルタル面や樹脂塗面への密着 を示す指標となるものである。ゼータ電位 高すぎると、樹脂粒子の分散安定性が低下 る傾向があり、ゼータ電位値が低くなりす ると、セメントモルタルの流動性の低下、 らに旧モルタル面や樹脂塗面への密着性が 下したりする傾向がある。

 本発明におけるゼータ電位とは、マイク テック・ニチメン株式会社製の「ZEECOM IP-12 0B SYSTEM」を用いて測定したものである。な 、カチオンポリマー含有水性エマルジョン 末の場合には、水に再乳化してから測定に する。

 このようにして、本発明のカチオンポリ ー含有水性エマルジョン、またはカチオン リマー含有水性エマルジョン粉末を得るこ ができるが、カチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末を得るに当たっては、水性合 樹脂エマルジョンと水溶性カチオンポリマ からなるカチオンポリマー含有水性エマル ョンを上記の粉末化処理と同様にして、カ オンポリマー含有水性エマルジョン粉末と ることもできる。

 かくして本発明のセメントモルタル混和 用水性合成樹脂エマルジョン、及びセメン モルタル混和剤用再乳化性水性合成樹脂エ ルジョン粉末は、セメントモルタル混和剤 して使用した際に、良好な流動性、作業性 示し、物性ばらつきの少ない、加えて接着 さなどが向上するなどの優れた効果を発揮 る。そして、セメントモルタル用途として 補修モルタル用、下地調整塗材用、セルフ ベリング材、タイル接着モルタル、モルタ シーラー・プライマー、モルタル養生剤、 び石膏系材料などの改質剤として有用であ 、さらに土木・建材用原料、ガラス繊維収 剤、難燃剤用などにも有用である。

 以下、実施例をあげて本発明を更に具体的 説明するが、本発明はその要旨を超えない り以下の実施例に限定されるものではない
 尚、例中「部」、「%」とあるのは、断りの ない限り重量基準を意味する。

 まず、水性合成樹脂エマルジョンおよび 性合成樹脂エマルジョン粉末(水溶性カチオ ンポリマーを含有しない状態)の実施例を説 する。

<水性合成樹脂エマルジョンの製造例>
〔実施例1-1/エマルジョン1〕
 攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサイズの テンレス製反応缶に、670部の水、保護コロ ドとして、側鎖に1,2-ジオール結合を有するP VA(平均重合度300、平均ケン化度99.1モル%、側 の1,2-ジオール結合の含有量8モル%/日本合成 化学工業株式会社製)の46部、酢酸ナトリウム の2g、酸性亜硫酸ナトリウムの1gを仕込み、 応缶を85℃に加熱して、このPVAを溶解させた 。次に、この反応缶の温度を80℃に保ち、こ に、予め混合しておいた混合モノマー〔ブ ルアクリレート358部/メチルメタクリレート 293部/アセトアセトキシエチルメタクリレー 6.5部=54.4/44.6/1(重量比)〕の66部を添加し、重 開始剤として過硫酸アンモニウム1.6gを水30g に溶解した過硫酸アンモニウム水溶液の30%を 加えて、初期重合反応を1時間行った。次い 、残りの混合モノマーと重合開始剤として 記過硫酸アンモニウム水溶液の60%を、反応 に4時間に渡って滴下して重合を進行させた 滴下終了後に前記過硫酸アンモニウム水溶 の10%を加え、同温度で1時間熟成させ、不揮 発分50.1%の水性合成樹脂エマルジョン(エマル ジョン1)を得た(平均粒子径:0.43μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、80重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=358/293=55/45(重 量比)〕からなる合成樹脂の計算上のガラス 移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTg -52℃、+105℃とした場合、約-1℃であった。

〔実施例1-2/エマルジョン2〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/スチレン/アセトアセトキシエチ メタクリレート=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、前記エマルジョン1と同様にして、 マルジョン2(不揮発分49.8%)を得た(平均粒子 :0.40μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、75重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/スチレン=55/45(重量比)〕からなる合 樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それ ぞれのホモポリマーのTgを-52℃、+100℃とした 場合、約-2℃であった。

〔実施例1-3/エマルジョン3〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/スチレン/グリシジルメタクリレ ト=44.6/54.4/1(重量比)に変更した以外は、前記 エマルジョン1と同様にして、エマルジョン3( 不揮発分50.2%)を得た(平均粒子径:0.42μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、77重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/スチレン=45/55(重量比)〕からなる合 樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は、それ ぞれのホモポリマーのTgを-52℃、+100℃とした 場合、約+12℃であった。
 但し、最低造膜温度を調整する目的で可塑 としてジブチルフタレートを樹脂分に対し 3%添加した。

〔実施例1-4/エマルジョン4〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/スチレン/ セトアセトキシエチルメタクリレート=55.5/2 2/22/0.5(重量比)に変更した以外は、前記エマ ジョン1と同様にして、エマルジョン4(不揮 分50.2%)を得た(平均粒子径:0.45μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、75重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート/スチレン=55.8 /22.1/22.1(重量比)〕からなる合成樹脂の計算上 のガラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポ マーのTgを-52℃、+105℃、+100℃とした場合、 -3℃であった。

〔実施例1-5/エマルジョン5〕
 混合モノマーの種類と組成比を、メチルメ クリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/ グリシジルメタクリレート=48/51/1(重量比)に 更した以外は、前記エマルジョン1と同様に て、エマルジョン5(不揮発分49.9%)を得た(平 粒子径:0.44μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、73重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔メチルメタ リレート/2-エチルヘキシルアクリレート=48. 5/51.5(重量比)〕からなる合成樹脂の計算上の ラス転移温度(Tg)は、それぞれのホモポリマ ーのTgを+105℃、-70℃とした場合、約-10℃であ った。

〔実施例1-6/エマルジョン6〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/ビニルト メトキシシラン=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、前記エマルジョン1と同様にしてエ ルジョン6(不揮発分50.1%)を得た(平均粒子径:0 .42μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、74重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、エマルジョン1と同様に、約-1℃であ った。

〔実施例1-7/エマルジョン7〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/エチレン リコールジメタクリレート=54.4/44.6/1(重量比) に変更した以外は、前記エマルジョン1と同 にしてエマルジョン7(不揮発分50.0%)を得た( 均粒子径:0.43μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、71重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、エマルジョン1と同様に、約-1℃であ った。

〔実施例1-8/エマルジョン8〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/アリルグ シジルエーテル=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、前記エマルジョン1と同様にしてエ ルジョン8(不揮発分49.8%)を得た(平均粒子径:0 .43μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、72重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、エマルジョン1と同様に、約-1℃であ った。

〔実施例1-9/エマルジョン9〕
 保護コロイドとして、側鎖に1,2-ジオール結 合を有するPVA(平均重合度300、平均ケン化度99 .1モル%、側鎖の1,2-ジオール結合の含有量3モ %/日本合成化学工業株式会社製)に変更した 外は、前記エマルジョン1と同様にして、エ マルジョン9(不揮発分50.3%)を得た(平均粒子径 :0.40μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は76重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、エマルジョン1と同様に、約-1℃であ った。

〔比較例1-1/エマルジョン10〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート=55/45(重量 )に変更し、更に665部の水に変更した以外は 前記エマルジョン1と同様にして、エマルジ ョン10(不揮発分50.3%)を得た(平均粒子径:0.43μm )。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、78重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタクリレート=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを-52℃ +105℃とした場合、約-1℃であった。

〔比較例1-2/エマルジョン11〕
 保護コロイドとして、アセトアセチル基変 PVA(平均重合度300、平均ケン化度97.0モル%、 セトアセチル化度0.5モル%/日本合成化学工 株式会社製)に変更した以外は前記エマルジ ン1と同様にしてエマルジョン11(不揮発分50. 0%)を得た(平均粒子径:0.44μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、78重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタアクリレート=55/45(重量 )〕からなる合成樹脂の計算上のガラス転移 度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを-52 、+105℃とした場合、約-1℃であった。

〔比較例1-3〕
 保護コロイドとして、平均重合度500、平均 ン化度88モル%のPVA(ゴーセノールGL05/日本合 化学工業株式会社製)の37部と、平均重合度1 400、平均ケン化度88モル%のPVA(ゴーセノールGM 14/日本合化学工業株式会社製)の9部に変更し 以外は、前記エマルジョン1と同様にして重 合したが、重合途中にゲル化して水性合成樹 脂エマルジョンは得られなかった。

〔比較例1-4/エマルジョン12〕
 前記エマルジョン1において、保護コロイド の代わりに乳化剤として、ノニオン性活性剤 (エマルゲン1135S-70/花王株式会社製)の28部と ニオン性活性剤(ホスタパールBVconc/クラリア ントジャパン株式会社製)の26部を使用した。 具体的には、これらの活性剤の20%と使用する 水の200部を反応缶に仕込み、残りの活性剤と 水の約435部及び混合モノマーとで乳化モノマ ーを作成し重合に供した。不揮発分50.2%のエ ルジョン12を得た(平均粒子径:0.07μm)。
 得られた水性合成樹脂エマルジョンの上記 (2)で算出される値(W)は、43重量%であった。
 また、この主要モノマー組成〔ブチルアク レート/メチルメタアクリレート=55/45(重量 )〕からなる合成樹脂の計算上のガラス転移 度(Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを-52 、+105℃とした場合、約-1℃であった。

<再乳化性水性合成樹脂エマルジョン粉末 製造例>
〔実施例1-10/樹脂粉末1〕
 実施例1-1で得られたエマルジョン1の不揮発 分100部に対して、平均重合度500、平均ケン化 度88モル%のPVA(ゴーセノールGL05/日本合成化学 工業株式会社製)7部添加し、加水して不揮発 を40%に調整した。抗粘結剤として炭酸カル ウムの存在下において、ノズル式の噴霧乾 機により熱源を熱風として140℃の温風下に 噴霧乾燥させて再乳化性水性合成樹脂エマ ジョン粉末(樹脂粉末)1を得た。

〔実施例1-11~1-18/樹脂粉末2~9〕
 実施例1-2~1-9で得られた各エマルジョン2~9に ついて、樹脂粉末1と同様にして再乳化性水 合成樹脂エマルジョン粉末2~9を得た。

〔比較例1-5~1-7/樹脂粉末10~12〕
 比較例1-1、1-2、1-4で得られた各エマルジョ 10~12について、樹脂粉末1と同様にして再乳 性水性合成樹脂エマルジョン粉末10~12を得 。

 上記実施例1-1~1-18および比較例1-1~1-7につ て、以下の通り評価を行った。

<エマルジョンの重合安定性>
 上記重合において、重合缶へのスケーリン 及び粗粒子の有無を観察し、下記の基準で 価した。
(評価基準)
 ○・・・スケーリングが少なく、粗粒子が とんどない状態。
 △・・・一部にスケーリングあり、粗粒子 少しある状態。
 ×・・・スケーリングが多く、粗粒子が多 状態。

<樹脂粉末の再乳化性>
 攪拌しながら脱イオン水50gに、再乳化性水 合成樹脂エマルジョン粉末50gを添加し、そ 後1000回転で10分間撹拌して再乳化した。こ 再乳化液を容積250ccのガラス容器に入れ室 で1週間放置した。この時の再乳化性を下記 基準で評価した。
(評価基準)
 ◎・・・均一な再乳化液が得られ、樹脂粉 の沈降が僅かしか観られない状態。
 ○・・・均一な再乳化液が得られ、樹脂粉 の沈降が少し観られる状態。
 △・・・再乳化液に相分離がやや認められ 樹脂粉末の沈降がある状態。
 ×・・・再乳化液に相分離が認められ、樹 粉末の沈降がかなり多い状態。

<セメントモルタルの流動性>
 JIS A 6203に準じてモルタル混和試験を行う
 普通ポルトランドセメント500g、豊浦硅砂150 0g、不揮発分45%のエマルジョン111g(不揮発分50 g)および、練り混ぜ用の水(以下、「練り混ぜ 水」という)289gを、ホバートミキサーを使用 て3分間攪拌し、セメントモルタルを調整し た。このセメントモルタルの流動性は、フロ ーテーブルの上に設置した底辺直径100mmのフ ーコーンに、上記セメントモルタルを詰め み、フローコーンを抜き取った後、12mmの落 下衝撃を15回与えてセメントモルタルの広が 直径を測定した。これを初期フローとして 価した。更に1時間放置後、ホバートミキサ ーで30秒攪拌し同様の測定を行った。これを 時1時間後のフローとした。
 なお、再乳化性水性合成樹脂エマルジョン 末の場合には、この樹脂粉末50gを予めセメ ト、豊浦硅砂と既調合してから使用した。 の場合の練り混ぜ水は350gとした。
 水性合成樹脂エマルジョン及び再乳化性水 合成樹脂エマルジョン粉末のセメントモル ル(C)に対する水(W)量、すなわちW/Cは、いず も70%一定である。

<セメントモルタルの接着強さ>
 JIS A 6203に準じてセメントモルタルの常態 着強さ試験を行い、下記の基準で評価した
 供試体の作製:セメントモルタル基板(70×70× 20mm/JIS R 5201準拠)をJIS R 6252に規定の150番研 磨紙を用いて研磨した。この基板上に型枠を 用いて各テストセメントモルタルを40×40×10mm となるように充填し、成型・養生して供試体 を作製した。
 養生条件:成型後、温度20±2℃、相対湿度90% 上で48時間経過した後、脱型してから温度20 ±2℃の水中で5日間養生し、更に温度20±2℃、 相対湿度60±10%で21日間養生した。
 なお、湿潤時接着強さの測定は、前記記載 養生を経た供試体を室温水に24時間浸漬後 ただちに取り出し、湿潤状態のままに接着 さを測定した。
 測定は万能測定機(島津製作所株式会社製) て行った。
(評価基準)
 ◎・・・ 接着強さ1.5 N/mm 2 以上。
 ○・・・ 接着強さ1.0 N/mm 2 以上、1.5 N/mm 2 未満。
 △・・・ 接着強さ0.8 N/mm 2 以上、1.0 N/mm 2 未満。
 ×・・・ 接着強さ0.8 N/mm 2 未満。

 前記実施例及び比較例で得られた水性合 樹脂エマルジョン及び再乳化性水性合成樹 エマルジョン粉末のそれぞれの評価結果は 表1、表2に示されるとおりであった。

 セメントモルタルに対する水量(W/C)を70% した場合(表1)、比較例1-1,1-2におけるセメン モルタルのフロー値が、実施例1-1,1-2と比べ て小さい。そこで、比較例1-1,1-2のセメント ルタルの流動性のレベルを、実施例1-1,1-2と ぼ同じ水準にして対比するため、比較例1-1, 1-2の水量を多くして、即ちセメントモルタル に対する水量(W/C)を75%にして、流動性試験及 セメントモルタル接着強さ試験に供した。

 これらの評価結果は、表3に示されるとお りであった。

 以上の結果より、実施例はいずれも、エ ルジョンの重合安定性、および樹脂粉末の 乳化性に優れ、物性のばらつきの少ないも であり、良好な流動性とともに常態時・湿 時の接着強さに優れた結果が得られた。実 例1-5,1-14のエマルジョン5および対応する樹 粉末5、並びに実施例1-16の樹脂粉末7につい は、僅かに低い接着強さを示したが、本発 の水性合成樹脂エマルジョンおよび再乳化 水性合成樹脂エマルジョン粉末として充分 使用できるものであった。

 これに対して、比較例1-1,1-5のエマルジョ ン10および対応する樹脂粉末10、並びに比較 1-4のエマルジョン12については、湿潤時の接 着強さに劣ることが分かる。また、比較例1-2 ,1-6のエマルジョン11および対応する樹脂粉末 11については、流動性に劣るものであり、た え水分を増加して流動性を向上させたとし も、接着強さに劣るため、目的とする物性 得られないことが分かる。更に、比較例1-3 、重合中にゲル化したため、エマルジョン 体が得られないものであった。そして、比 例1-7の樹脂粉末12は、再乳化性、接着強さ 流動性の全てにおいて劣ることが分かる。

 つぎに、カチオンポリマー含有水性エマ ジョンおよびカチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末の実施例を説明する。

 <カチオンポリマー含有水性エマルジョン の製造例>
〔実施例2-1/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン1〕
 まず、前記実施例1-1の製造例と同様にして 水性合成樹脂エマルジョン1’を得た。具体 的には、攪拌機と還流冷却器とを備えた2Lサ ズのステンレス製反応缶に、670部の水、保 コロイドとして、側鎖に1,2-ジオール結合を 有するPVA(平均重合度300、平均ケン化度99.1モ %、側鎖の1,2-ジオール結合の含有量8モル%/ 本合成化学工業株式会社製)の46部、酢酸ナ リウムの2g、酸性亜硫酸ナトリウムの1gを仕 み、反応缶を85℃に加熱して、このPVAを溶 させた。次に、この反応缶の温度を80℃に保 ち、ここに、予め混合しておいた混合モノマ ー〔ブチルアクリレート358部/メチルメタク レート293部/アセトアセトキシエチルメタク レート6.5部=54.4/44.6/1(重量比)〕の66部を添加 し、重合開始剤として過硫酸アンモニウム1.6 gを水30gに溶解した過硫酸アンモニウム水溶 の30%を加えて、初期重合反応を1時間行った 次いで、残りの混合モノマーと重合開始剤 して前記過硫酸アンモニウム水溶液の60%と 、反応缶に4時間にわたって滴下して重合を 進行させた。滴下終了後に前記過硫酸アンモ ニウム水溶液の10%を加え、同温度で1時間熟 させ、不揮発分50.1%の水性合成樹脂エマルジ ョン1’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン1’の上 記(2)で算出される値(W)は、80重量%であった。
 この主要モノマー組成〔ブチルアクリレー /メチルメタクリレート=358/293=55/45(重量比) からなる合成樹脂の計算上のガラス転移温 (Tg)は、それぞれのホモポリマーのTgを-52℃ +105℃とした場合、約-1℃である。

 得られた水性合成樹脂エマルジョン1’の 500gに、水溶性カチオンポリマーとして、ジ リルジメチルアンモニウムクロライド/アク ルアミド共重合体(PAS-J-81L/25%水溶液、分子 :約10,000/日東紡株式会社製)5.5gを、水で2倍に 希釈して添加し、更に加水して不揮発分45%品 に調整し、カチオンポリマー含有水性エマル ジョン1を得た。

〔実施例2-2/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン2〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/スチレン/アセトアセトキシエチ メタクリレート=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョ ン1’の製造と同様にして、不揮発分49.8%の水 性合成樹脂エマルジョン2’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン2’の上 記(2)で算出される値(W)は、75重量%であった。
 この主要モノマー組成〔ブチルアクリレー /スチレン=55/45(重量比)〕からなる合成樹脂 計算上のガラス転移温度(Tg)は、それぞれの ホモポリマーのTgを-52℃、+100℃とした場合、 約-2℃である。

 得られた水性合成樹脂エマルジョン2’の 500gに、水溶性カチオンポリマーとして、ジ リルジメチルアンモニウムクロライド/アク ルアミド共重合体(PAS-J-81/25%水溶液、分子量 :約200,000/日東紡株式会社製)5.5gを、水で2倍に 希釈して添加し、更に加水して不揮発分45%品 に調整し、カチオンポリマー含有水性エマル ジョン2を得た。

〔実施例2-3/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン3〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/グリシジ メタクリレート=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョ ンの製造と同様にして、不揮発分49.9%の水性 成樹脂エマルジョン3’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン3’の上 記(2)で算出される値(W)は、73重量%であった。
 この主要モノマー組成〔ブチルアクリレー /メチルメタクリレート=55/45(重量比)〕から る合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は 、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョン1’ 同様に、約-1℃であった。

 得られた水性合成樹脂エマルジョン3’の 500gに、実施例2-1で用いたものと同様の水溶 カチオンポリマー(PAS-J-81L)5.5gを、水で2倍に 釈して添加し、更に加水して不揮発分45%品 調整し、カチオンポリマー含有水性エマル ョン3を得た。

〔実施例2-4/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン4〕
 混合モノマーの種類と組成比を、ブチルア リレート/メチルメタクリレート/ビニルト メトキシシラン=54.4/44.6/1(重量比)に変更した 以外は、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョ ンの製造と同様にして、不揮発分50.2%の水性 成樹脂エマルジョン4’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン4’の上 記(2)で算出される値(W)は、75重量%であった。
 この主要モノマー組成〔ブチルアクリレー /メチルメタクリレート=55/45(重量比)〕から る合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は 、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョン1’ 同様に、約-1℃であった。

 得られた水性合成樹脂エマルジョン4’の 500gに、実施例2-1で用いたものと同様の水溶 カチオンポリマー(PAS-J-81L)5.5gを、水で2倍に 釈して添加し、更に加水して不揮発分45%品 調整し、カチオンポリマー含有水性エマル ョン4を得た。

〔実施例2-5/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン5〕
 保護コロイドとして、側鎖に1,2-ジオール結 合を有するPVA(平均重合度300、平均ケン化度99 .1モル%、側鎖の1,2-ジオール結合の含有量3モ %/日本合成化学工業株式会社製)に変更した 外は、実施例2-1の水性合成樹脂エマルジョ の製造と同様にして、不揮発分50.1%の水性 成樹脂エマルジョン5’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン5’の上 記(2)で算出される値(W)は、75重量%であった。
 この主要モノマー組成〔ブチルアクリレー /メチルメタクリレート=55/45(重量比)〕から る合成樹脂の計算上のガラス転移温度(Tg)は 、実施例2-1記載の水性合成樹脂エマルジョン 1’と同様に約-1℃である。

 得られた水性合成樹脂エマルジョン5’の 500gに、実施例2-1で用いたものと同様の水溶 カチオンポリマー(PAS-J-81L)5.5gを、水で2倍に 釈して添加し、更に加水して不揮発分45%品 調整し、カチオンポリマー含有水性エマル ョン5を得た。

 <カチオンポリマー含有水性エマルジョン 粉末の製造例>
〔実施例2-6/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末1〕
 実施例2-1で得られたカチオンポリマー含有 性エマルジョン1’(不揮発分45%)200部に対し 、平均重合度500、平均ケン化度88モル%のPVA( ゴーセノールGL05/日本合成化学工業株式会社 )の20%水溶液を31.5部(カチオンポリマー含有 性エマルジヨンの不揮発分に対しPVA7%)添加 、加水して不揮発分を40%に調整した。抗粘 剤として炭酸カルシウムの存在下において ノズル式の噴霧乾燥機により熱源を熱風と て140℃の温風下にて噴霧乾燥させて、カチ ンポリマー含有水性エマルジョン粉末1を得 た。

〔実施例2-7/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末2〕
 実施例2-1で得られた水溶性カチオンポリマ 添加前の水性合成樹脂エマルジョン1’(不 発分50.1%)200部に対して、平均重合度500、平 ケン化度88モル%のPVA(ゴーセノールGL05/日本 成化学工業株式会社製)の20%水溶液を35部(水 合成樹脂エマルジョンの不揮発分に対しPVA7 %)添加し、加水して不揮発分を40%に調整した 抗粘結剤として炭酸カルシウムの存在下に いて、ノズル式の噴霧乾燥機により熱源を 風として140℃の温風下にて噴霧乾燥させて 水性合成樹脂エマルジョン粉末2’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン粉末2’ の500gに、水溶性カチオンポリマーとして、 アリルジメチルアンモニウムクロライド重 体(Magnafloc 368/微粉末品、分子量:約1,000,000/ バスペシャリテイ・ケミカルズ株式会社製)3 g添加し、カチオンポリマー含有水性エマル ョン粉末2を得た。

〔実施例2-8/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末3〕
 実施例2-3で得られた水溶性カチオンポリマ 添加前の水性合成樹脂エマルジョン3’(不 発分49.9%)を用いて、実施例2-7と同様にして 性合成樹脂エマルジョン粉末3’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン粉末3’ の500gに、水溶性カチオンポリマーとして、 施例2-7で用いたものと同様のジアリルジメ ルアンモニウムクロライド重合体(Magnafloc 36 8)3gを添加し、カチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末3を得た。

〔実施例2-9/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末4〕
 実施例2-4で得られた水溶性カチオンポリマ 添加前の水性合成樹脂エマルジョン4’(不 発分50.2%)を用いて、実施例2-7と同様にして 性合成樹脂エマルジョン粉末4’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン粉末4’ の500gに、水溶性カチオンポリマーとして、 施例2-7で用いたものと同様のジアリルジメ ルアンモニウムクロライド重合体(Magnafloc 36 8)5gを添加し、カチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末4を得た。

〔実施例2-10/カチオンポリマー含有水性エマ ジョン粉末5〕
 実施例2-5で得られた水溶性カチオンポリマ 添加前の水性合成樹脂エマルジョン5’(不 発分50.1%)を用いて、実施例2-7と同様にして 性合成樹脂エマルジョン粉末5’を得た。
 得られた水性合成樹脂エマルジョン粉末5’ の500gに、水溶性カチオンポリマーとして、 施例2-7で用いたものと同様のジアリルジメ ルアンモニウムクロライド重合体(Magnafloc 36 8)3gを添加し、カチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末5を得た。

 上記実施例2-1~2-10について以下の通り評 した。

<水溶性カチオンポリマーの混和安定性>
 実施例2-1~2-10において、水性合成樹脂エマ ジョンに上記水溶性カチオンポリマーを添 した際のゲル化の有無などの混和安定性を 察した。なお、カチオンポリマー含有水性 マルジョン粉末の場合には、45%濃度となる うに水に再乳化し、再乳化した時の状態か 評価した。評価基準は以下のとおりである
(評価基準)
 ○・・・ゲル化などの変化は起こらない。
 △・・・少し増粘するが、ゲル化などの変 は起こらない。
 ×・・・ゲル化、著しい粘度上昇。

<ゼータ電位>
 マイクロテック・ニチメン株式会社製の「Z EECOM IP-120B SYSTEM」を用いてゼータ電位を測 した。なお、カチオンポリマー含有水性エ ルジョン粉末の場合には、水に再乳化して ら測定に供した。

<セメントモルタルの流動性試験>
 JIS A 6203に準じてセメントモルタル混和試 を行った。普通ポルトランドセメント500g、 豊浦硅砂1500g、不揮発分45%のカチオンポリマ 含有水性エマルジョン111g(不揮発分50g)およ 、練り混ぜ水265gを、ホバートミキサーで3 間攪拌して、セメントモルタルを調整した このセメントモルタルの流動性は、フロー ーブルの上に設置した底辺直径100mmのフロー コーンに、上記セメントモルタルを詰め込み 、フローコーンを抜き取った後、12mmの落下 撃を15回与えてモルタルセメントの広がり直 径を測定した。これを初期フローとして評価 した。更に、1時間放置後、ホバートミキサ で30秒間攪拌して同様の測定を行った。これ を1時間後のフローとした。
 なお、カチオンポリマー含有水性エマルジ ン粉末の場合には、カチオンポリマー含有 性エマルジョン粉末50gとし、水量を340gとし て試験した。
 カチオンポリマー含有水性エマルジョンの メント(C)に対する水(W)量、すなわちW/Cは65% カチオンポリマー含有水性エマルジョン粉 のセメントに対する水量(W/C)は68%とした。

<セメントモルタル接着強さ>
 JIS A 6203に準じてセメントモルタルの常態 接着強さ試験を行い、下記の基準で評価し 。
 供試体の作製:セメントモルタル基板(70×70× 20mm/JIS R 5201準拠)をJIS R 6252に規定の150番研 磨紙を用いて研磨した。この基板上に型枠を 用いて各テストセメントモルタルを40×40×10mm となるように充填し、成型・養生して供試体 を作製した。
 養生条件:成型後、温度20±2℃、相対湿度90% 上で48時間経過した後、脱型してから温度20 ±2℃の水中で5日間養生し、さらに温度20±2℃ 、相対湿度60±10%で21日間養生した。
 なお、湿潤時接着強さの測定は、前記記載 養生を経た供試体を室温水に24時間浸漬後 ただちに取り出し、湿潤状態のままに接着 さを測定した。
 測定は万能測定機(島津製作所株式会社製) て行った。
(評価基準)
 ◎・・・ 接着強度1.5 N/mm 2 以上。
 ○・・・ 接着強度1.0 N/mm 2 以上、1.5 N/mm 2 未満。
 △・・・ 接着強度0.8 N/mm 2 以上、1.0 N/mm 2 未満。
 ×・・・ 接着強度0.8 N/mm 2 未満。

 これらの評価結果は、表4に示されるとお りであった。

 以上の結果より、実施例2-1~2-10はいずれ 、水溶性カチオンポリマーの混和安定性に れ、良好な流動性とともに、常態時・湿潤 の接着強さに優れた結果が得られた。さら 、これら実施例の流動性と接着強さの物性 、ほとんどばらつきのない良好なものであ た。

 そして、カチオンポリマー含有水性エマ ジョンのセメントに対する水量(W/C)は65%と なく、カチオンポリマー含有水性エマルジ ン粉末のセメントに対する水量(W/C)も68%と少 ない。このように少ない水量であっても、充 分なレベルの流動性が得られるのは、水溶性 カチオンポリマーを添加することによるもの である。

 本発明のセメントモルタル混和剤用水性 成樹脂エマルジョン、及びセメントモルタ 混和剤用再乳化性水性合成樹脂エマルジョ 粉末は、セメントモルタル混和剤として使 した際に、良好な流動性、作業性を示し、 性ばらつきの少ない、加えて接着強さなど 向上するなどの優れた効果を有し、セメン モルタル用途として、補修モルタル用、下 調整塗材用、セルフレベリング材、タイル 着モルタル、モルタルシーラー・プライマ 、モルタル養生剤、及び石膏系材料などの 質剤として非常に有用である。更に、土木 建築用原料、ガラス繊維収束剤、難燃剤用 どにも有用である。また、本発明のカチオ ポリマー含有水性エマルジョン、及び、カ オンポリマー含有水性エマルジョン粉末は 木部・木質・紙などの接着剤、紙・繊維な の加工剤、無機仕上げ剤、塗料、土木・建 原料などにも使用できる。