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Patent Searching and Data


Title:
AROMATIC POLYETHER SULFONE HAVING HYDROXYPHENYL END GROUP AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/022591
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing an aromatic polyether sulfone (PES) having a hydroxyphenyl end group which is suitable for an alloying agent. This method for producing an aromatic polyether sulfone having a hydroxyphenyl end group is characterized in that an aromatic polyether sulfone obtained in advance by polymerization is heated together with a divalent phenol compound and/or water and a basic compound in an aprotic polar solvent. This method enables to efficiently and economically produce a PES having a reactive hydroxyphenyl end group, which is suitable for finely dispersing the PES in a matrix resin when a thermoplastic resin or a thermosetting resin and the PES are alloyed, by a simple process in a short time.

Inventors:
KANOMATA AKINORI (JP)
YAMAUCHI KOJI (JP)
HORIUCHI SHUNSUKE (JP)
SAKATA HIROAKI (JP)
HONDA SHIRO (JP)
ASANO ITARU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/064086
Publication Date:
February 19, 2009
Filing Date:
August 06, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TORAY INDUSTRIES (JP)
KANOMATA AKINORI (JP)
YAMAUCHI KOJI (JP)
HORIUCHI SHUNSUKE (JP)
SAKATA HIROAKI (JP)
HONDA SHIRO (JP)
ASANO ITARU (JP)
International Classes:
C08G75/23
Foreign References:
JPH0341120A1991-02-21
JPH04236223A1992-08-25
JP2000095863A2000-04-04
JP2004263154A2004-09-24
JP2004107606A2004-04-08
JPH0711134A1995-01-13
JPH06228438A1994-08-16
JPH06157906A1994-06-07
JP2001106921A2001-04-17
JP2005105151A2005-04-21
JPH01118565A1989-05-11
JPH0258569A1990-02-27
JP2007231234A2007-09-13
JP2000080329A2000-03-21
JPH04325590A1992-11-13
JPS427799B
JPS4521318B
JPS4819700A
JPS5312991A1978-02-06
JPS5316098A1978-02-14
JPH05163352A1993-06-29
JPH0586186A1993-04-06
Other References:
"Polymer Alloy: Kiso to Ohyoh (= Foundations and Applications of Polymer Alloys", KK TOKYO KAGAKU DOJIN
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Claims:
一般式(a-1)および/または一般式(a-2)で表される構造を有する芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、一般式(b-1)および/または(b-2)で表される二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中で加熱することを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
 式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~6のアルキル基および炭素数6~8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、mは0~3の整数を表す。Yは直接結合、O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。
芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中で加熱する工程(I)、工程(I)で得られた溶液と界面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液を得る工程(II)、工程(II)で得られた均一溶液または懸濁液に非プロトン性極性溶媒とは異なる第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルスルホン粒子を析出させる工程(III)を含むことを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
二価フェノール化合物(B)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)1モルに対して、0.01~0.5倍モルであることを特徴とする請求項1または2記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
水(C)の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)1モルに対して、0.1~30倍モルであることを特徴とする請求項1~3記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウムおよび無水炭酸カリウムから選ばれる少なくとも1種である請求項1~4記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ジメチルスルホキシドおよびスルホランから選ばれる少なくとも1種である請求項1~5のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
加熱温度が100~200℃であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、二価フェノール化合物(B)および/または水(C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中で加熱して得られた芳香族ポリエーテルスルホン(E)と酸を接触させることを特徴とする請求項1~7記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポリエチレングリコール、およびポリビニルピロリドンから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項2~8のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエーテルスルホン(A)100質量部に対し、1~200質量部であることを特徴とする請求項2~9のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
第2の溶媒が、25℃における芳香族ポリエーテルスルホン(A)の溶解度が1質量%以下の溶媒であることを特徴とする請求項2~10のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
第2の溶媒が、水、メタノール、エタノールから選ばれる1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項2~11のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
原料の芳香族ポリエーテルスルホン(A)の、ヒドロキシフェニル末端基組成が50モル%以下(重水素化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100より算出される)であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
得られるヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、ヒドロキシフェニル末端基組成が60モル%以上(重水素化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100より算出される)であることを特徴とする請求項1~13のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
得られるヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した還元粘度が0.2~0.4であることを特徴とする請求項1~14のいずれか記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
得られるヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、ヒドロキシフェニル末端基組成が80モル%以上(重水素化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/[(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100より算出される)であることを特徴とする請求項14記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
請求項1~16いずれか1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)1~100質量部をエポキシ樹脂100質量部と100℃~200℃で混練、加熱、硬化させることを特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン樹脂組成物の製造方法。
下記の化学構造式(a-3)で表され、ヒドロキシフェニル末端基組成が60モル%以上(重水素化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシルフェニル末端基)]/[(6.9ppmのピーク面積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100より算出される)であり、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した還元粘度が0.2~0.4であることを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)。
 式中のRは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数1~6のアルキル基および炭素数6~8のアリール基から選ばれるいずれかを表し、nは0~1、mは0~3の整数を表す。Yは直接結合、O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。
請求項18記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)から得られ、平均粒子径が0.1~50μmであることを特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子。
粒子径分布が、1.0~1.5であることを特徴とする請求項19記載のヒドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子。
Description:
ヒドロキシフェニル末端基を有 る芳香族ポリエーテルスルホンとその製造 法

 本発明は従来の製造方法では製造困難で ったヒドロキシフェニル末端基を多量に含 する芳香族ポリエーテルスルホン(以下PESと 略す)とその製造方法に関する。より詳しく 、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂アロイ用と て相溶化効果に優れる高ヒドロキシフェニ 末端基含量であり、かつ高純度のPESと、該 リマーを経済的且つ簡易な方法で効率よく 造する方法に関する。

 PESは、その優れた耐熱性、機械特性、電 的特性、難燃性、耐薬品性、耐加水分解性 耐放射線性、低誘電特性、成形加工性によ 、射出成形用の回路基盤、光ディスク、磁 ディスク等のディスク用支持板、電気絶縁 保護膜、集積回路用層間絶縁膜、集積回路 盤材料などの電気、電子部品、自動車部品 航空機部品および医療用機器部品などに幅 く用いられている。

 また、前記優れた性質を活かし、PESを熱 塑性樹脂や熱硬化性樹脂に配合することに り、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂の性能を 上させる改質剤としても、幅広く使用され いる。

 PESをアロイ化する方法としては、例えば (1)熱可塑性樹脂とPESを溶融混練する方法、( 2)熱可塑性樹脂とPESを溶媒中でアロイ化する 法のほか、(3)熱硬化性樹脂のプレポリマー PESを溶媒中、あるいは溶媒非存在下におい 溶解させ、その後、硬化させることにより ロイ化する方法などが知られている。

 (1)熱可塑性樹脂アロイとしては、ポリカ ボネートにPESを特定組成でアロイ化し、モ ホロジーを制御することにより、ポリカー ネートの耐薬品性を向上させ、かつPESの成 性を改良する方法が開示されている(特許文 献1)。

 (2)熱可塑性樹脂とPESを溶媒中でアロイ化 る例として、ポリアミドイミド樹脂にPESをN MP溶液中でアロイ化させ、ポリアミドイミド 脂の可とう性や耐衝撃性を改良する方法が 示されている(特許文献2)。

 (3)熱硬化性樹脂のプレポリマーにPESを溶 させ、硬化させることによりアロイ化する として、エポキシ樹脂やマレイミド樹脂な の熱硬化性樹脂にPESをアロイ化することに り強靱性を向上させる方法や、熱感光性樹 や配線板用材料として使用されるエポキシ 脂やアクリル樹脂などの熱硬化性樹脂にPES アロイ化することにより、マトリックスの 硬化性樹脂本来の特性を維持し、機械物性 向上させる方法が開示されている(特許文献 3、4)。

 アロイ化による樹脂組成物の品質向上の めには、各ポリマー成分の相分離構造を微 化する必要があるが、前記(1)~(3)の技術では 、マトリックスとなる樹脂中にPESが粗大分散 しているのが現状であり、アロイ化による品 質向上には、さらなる微分散化技術が必要で あった。

 ポリマーの分散性を向上させる方法とし 、一般的には相溶化剤を使用する方法やア イ成分を化学反応により分子レベルで結合 せることにより、分散性を向上させたり、 らには相溶化させることが知られており、 れらの知見は、例えば高分子学会編、東京 学同人出版の「ポリマーアロイ 基礎と応 」などの総説にレビューされている。

 特許文献5では、前記(3)で述べた方法によ り、熱硬化性樹脂マトリックス中にPESを、よ り微分散化させるために熱硬化性樹脂マトリ ックスの原料として多官能のエポキシ樹脂を 用い、PESのポリマー末端にエポキシ基と反応 しうる官能基、例えばヒドロキシフェニル末 端基を導入することにより、ポリマー間での 反応を促進させ、PESを熱硬化性樹脂マトリッ クス中に微分散化させる方法が開示されてい る。また本技術を用いたエポキシ樹脂組成物 からなる繊維強化複合材料は、PESがマトリッ クス樹脂中に微分散化されており、さらに該 材料の剛性(例えば圧縮強度)、および靭性(例 えば、衝撃後圧縮強度)に優れることが開示 れている。

 同様に特許文献6、7ではPESのポリマー末 にエポキシと反応しうる官能基として、ア ノフェニル末端を導入し、同様の効果が発 することが開示されている。さらに特許文 8、9、10ではアロイ化の際に、PESのヒドロキ フェニル末端基とマトリックス樹脂との反 を均一に起こすために、PESの形状を粒子径 小さい粒子とすることで、アロイ時の微分 化、混練時間の短縮等に効果的であること 開示されている。

 また、芳香族ポリエーテルスルホン粒子の 造方法としては、機械的粉砕法、化学的粒 化法などが開示されている。
特許文献8では機械的粉砕法として、市販のPE Sを粉砕機を用いて数十μmサイズの粒子を得 方法が開示されている。特許文献9では化学 粒子化法として、市販のPESをN-メチル-2-ピ リドン(NMP)に溶解し、エタノールを加えた溶 液を、オクチルフェノキシポリエトキシエタ ノールを溶解した純水中に添加し、粒子径1μ m以下の水性分散液を得る方法が開示されて る。また特許文献10では、液中乾燥法による 粒子化法についても開示されている。

 一般にPESは、有機極性溶媒中、アルカリ 属化合物の存在下、ジハロゲノジフェニル ルホン化合物と二価フェノール化合物との 縮合反応、あるいは、二価フェノール化合 のアルカリ金属二塩をあらかじめ合成して いて、ジハロゲノジフェニル化合物との重 合反応によって得られることが知られてい (特許文献11、12、13)。

 通常重縮合反応は、高分子量化するため は二価フェノール化合物に対し、ジハロゲ ジフェニル化合物は、通常等モル使用され この時、理論上ポリマー末端の一方はヒド キシフェニル末端基、もう片一方がハロゲ フェニル末端基となる。しかしながら、従 技術により重合されるPESは、溶融粘度が高 、通常の押出成形、射出成形可能なエンジ アリングプラスチックに比べると、加工性 課題があった。すなわちガラス転移温度の い材料であるため、高温条件での溶融加工 必要となり、そのため溶融加工の段階で、 融粘度が増加することが知られていた。こ は、従来の技術で重合されるPESの末端には 性の高いヒドロキシフェニル末端基が含ま ており、加熱によってハロゲノフェニル末 と反応したり、あるいはヒドロキシフェニ 末端基の熱劣化や酸化劣化によるものと考 られている。

 そのため、PESのヒドロキシフェニル末端 を低減し、溶融安定性を向上させる方法と て、例えば特許文献14、15では、二価フェノ ール化合物、アルカリ金属塩、およびジハロ ゲノジフェニルスルホンからPESを重合後、ク ロロメタンを反応させることにより、反応活 性なヒドロキシフェニル末端基を封鎖する方 法や、特許文献16には、ジハロゲノジフェニ スルホンを二価フェノール化合物よりも過 に用いて重合後、さらに過剰分のハロゲノ ェニル末端に対して、当量以上の一価フェ ール化合物を添加して末端封鎖することに り、反応不活性なフェニル基を導入し、溶 可能性を改善する方法が開示されている。

 また特許文献17では、重合時の副反応を 制し、ポリマーの溶融安定性を向上させる とに着想し、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノ を重合溶媒として用いる方法も開示されて る。

 前述のように、PESの溶融加工性を改良す ため様々な工夫が実施されてきたが、その でも溶融加工性を低下させる原因となるヒ ロキシフェニル末端基を低減、あるいは封 し、反応不活性なハロゲノフェニル末端に ることが好ましい。しかしながら、PESを熱 塑性樹脂や熱硬化性樹脂のアロイ用改質材 して使用する場合は、反応活性なヒドロキ フェニル末端基を有するPESの方が、熱可塑 樹脂や熱硬化性樹脂との反応を促進するこ が可能となるため、好ましいと考えられる 、ポリマーそのものの製造の問題だけでな 、アロイ化の際の溶融加工性が悪いという 題があった。ポリマー製造面や溶融加工性 優れる、反応不活性なハロゲノフェニル末 のPESをアロイ化剤として使用した場合、前 特許文献1~3に記載したように、PESが熱可塑 樹脂や熱硬化性樹脂中に分散せず、粗大分 するという課題があった。

 一方、特許文献5では、ヒドロキシフェニ ル末端基のPESを製造する方法については、詳 細の記載がないものの、通常公知の方法、す なわち二価フェノール化合物をジハロゲノジ フェニルスルホンを原料とした重縮合により 製造されている。通常公知の重縮合は、その 重縮合理論から二価フェノール化合物をジハ ロゲノジフェニルスルホンよりも過剰に用い て重合したり、あるいは重合終了時にハロゲ ノフェニル末端に対して、当量以上の二価フ ェノール化合物を添加することにより、ハロ ゲノフェニル末端基よりも、反応活性なヒド ロキシフェニル末端基を当量以上導入するこ とが可能となる(理論上、ジハロゲノジフェ ルスルホンと二価フェノール化合物の仕込 比が1:1と、当量の場合に、最も高分子量化 可能となり、その時の末端基組成は、ハロ ノフェニル末端基:ヒドロキシフェニル末端 =50:50(モル%)となる)。しかしながら、仕込み 比を1:1と、当量仕込んだ場合でも、重合条件 によっては、重合途中の成長末端となるアル カリ金属のフェノキシドや二価フェノール化 合物のアルカリ金属塩などは、重合時に容易 に酸化され、重合時に着色するという課題や 、重合時の酸化反応により、仕込みモルバラ ンス、成長末端基バランスが崩れ、高分子量 化が困難になるという課題、ハロゲノフェニ ル末端基量がヒドロキシフェニル末端基量よ りも多くなるという課題など、酸化反応によ り理想的な重縮合反応が妨げられ、分子量制 御やヒドロキシ末端基量制御が困難という課 題があった。さらに反応性のヒドロキシフェ ニル末端基量を高めるために、積極的に過剰 の二価フェノール化合物を使用した場合では 、重縮合理論で知られている通り、2成分の ノマーのモルバランスをずらすことにより 末端基量を微増加することが可能となるも の、同時にポリマー分子量が著しく低下す という課題があった。すなわちヒドロキシ ェニル末端基量の増加とポリマー分子量の 少が、同時に進行するという重縮合方法の 質的問題があった。

 また特許文献16(特に4頁18行目以降)に開示 されている方法を参考に、重合終了時に二価 フェノール化合物を添加し、二価フェノール 化合物により末端を封鎖する方法を、本発明 者らは検討したが、この場合は、ポリマー中 のクロロフェニル末端と二価フェノール化合 物の重合が進行し、目的とする高ヒドロキシ フェニル末端化が進行せず、むしろ二価フェ ノールの後添加による酸化反応による分解や 着色が進行するという問題があった。

 さらに、前記のごとく、積極的に過剰の 価のフェノール化合物を重合開始前、重合 了時に使用した場合、得られたPES中に、過 に加えた酸性の二価フェノール化合物や二 フェノール化合物のアルカリ金属塩、およ アルカリ金属塩そのもののが、ポリマー中 残存し、ポリマーの熱安定性、滞留安定性 低下させるという問題、ヒドロキシフェニ 末端基との相互作用により、精製・除去が り困難になるという問題があった。通常、P ESは、重合反応後、重合反応溶液をPESを析出 せる貧溶媒中に投下する、場合によって、 処理することにより、白色固体を析出させ 洗浄・濾過等のクリーン化を実施して、あ いは濾過等を実施することなく、ポリマー 末を回収するが、ヒドロキシルフェニル末 基量を増加させることにより、同時にポリ ー分子量を低分子量化させると、高分子量P ESのように粉体状態として回収することが困 になり、場合によっては貧溶媒中で軟化し 塊の状態でポリマーが回収されるという課 があった。このようにポリマーを貧溶媒に 出させる段階において、粉体状態として回 することが困難なため、ヒドロキシフェニ 末端基を増加させるために、過剰に加えた 性の二価フェノール化合物や二価フェノー 化合物のアルカリ金属塩、あるいはアルカ 金属塩そのものの再沈殿精製・未反応モノ ーの除去工程において生産性が顕著に低下 るという問題のほか、ヒドロキシフェニル 端基を有するPES中にアルカリ金属塩が残存 るという課題があった。このようなPESを熱 塑性樹脂や熱硬化性樹脂とアロイ化すると 熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂の種類によっ は、熱分解、アロイ化による着色、加水分 が加速したり、滞留安定性が低下したり、 るいは電気特性が顕著に低下するという問 があり、アロイ用改質剤として使用するに 、さらなる純度向上が必要であった。

 一方、特許文献6(12頁右上15行)、7(10頁右 10行)のいずれも、ヒドロキシフェニル末端 よりも、エポキシとの反応性が高いアミノ 端基を導入したPESにより、前記特許文献5と 様の効果が得られることが開示されている 本特許文献6で使用されているアミノ基を導 入したPESは、ジハロゲノジフェニルスルホン と二価フェノール化合物のカリウム金属塩と の重縮合後、アミノフェノール化合物のカリ ウム塩との反応により得られることが開示さ れている。しかしながら特許文献6、7のいず の方法も前記ヒドロキシフェニル末端基PES 公知例と同様の課題を有しており、さらに ミノフェノール化合物やその金属塩は、二 フェノール化合物やその金属塩よりも、さ に熱分解や酸化分解しやすいという化学的 質を有している。さらにアミノフェノール 合物による末端封鎖の場合、アミノ基、ヒ ロキシフェニル基のいずれもが、ポリマー 長末端と反応する。そのため、末端基制御 分子量制御が困難となり、かつ精製・後処 効率も低下するという問題があった。さら 得られるPESは熱安定性、滞留安定性、耐加 分解性がさらに劣るという問題の他、反応 の異なるアミノフェニル末端とヒドロキシ ェニル末端の両方が存在するため、熱可塑 樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ化の際に、 一な反応を促進することが困難であり、そ 結果、分散性の均一化が困難という問題が った。

 またこのようにして得られたPESの微粒子 方法として、特許文献8では機械的粉砕法を 用いて、市販のPESを粉砕機を用いて数十μmサ イズの粒子を得る方法が開示されているもの の、粒子径を50μm以下と小さくすればするほ 、粉砕に要する時間、コスト等が極端に増 し、生産性が低下するという問題点がある また、粒子径分布も広くなるのが現状であ た。

 特許文献9では化学的粒子化法として、市 販のPESをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に溶解し エタノールを加えた溶液を、オクチルフェ キシポリエトキシエタノールを溶解した純 中に添加し、粒子径1μm以下の水性分散液を る方法が開示されているが、用いる溶媒の 類が多く工程が煩雑になるという問題点が る。

 また特許文献10では液中乾燥法による、 子化法についても開示されているが、実施 中において、具体的な方法については明記 れておらず、実現性の判断は難しい。一般 液中乾燥法は、工程が煩雑であり、溶媒除 が高コストになるため、生産性に劣るとい 問題点がある。

 このように、PES粒子化の技術に関しては、 コスト、用いる溶媒が多く工程が煩雑等、 産性の低下を免れることはできず、満足の くものでは無かった。

特開平7-11134号公報(請求項1)

特開平6-228438号公報(請求項1)

特開平6-157906号公報(請求項1)

特開2001-106921号公報(請求項8)

特開2005-105151号公報(請求項1)

特開平1-118565号公報(請求項1、請求項5)

特開平2-58569号公報(請求項12)

特開2007-231234号公報(請求項1)

特開2000-80329号公報(請求項1)

特開平4-325590号公報(請求項1)

特公昭42-7799号公報(請求項1)

特公昭45-21318号公報(請求項1)

特開昭48-19700号公報(請求項1)

特開昭53-12991号公報(請求項1)

特開昭53-16098号公報(請求項1)

特開平5-163352号公報(請求項1)

特開平5-86186号公報(請求項1)

 上記特許文献のうち、特許文献1~7はPESの 可塑性樹脂、熱硬化性樹脂アロイに関する 知例、特許文献8~10はPESの粒子化に関する公 知例、特許文献11~17はPES製造に関する公知例 ある。

 本発明は上記従来技術の課題を解決し、 可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とPESをアロイ化 る際に、マトリックス樹脂中のPESを微分散 、さらにはナノサイズに分散化させるのに 適な、反応性のヒドロキシフェニル末端基 有する高純度なPESを、経済的且つ簡易な方 で短時間に効率よく製造する方法を提供す ことを課題とする。

 上記課題に対し本発明は下記発明を提供す 。
(1)一般式(a-1)および/または一般式(a-2)で表さ る構造を有する芳香族ポリエーテルスルホ (A)と、一般式(b-1)および/または(b-2)で表さ る二価フェノール化合物(B)および/または水( C)、および塩基性化合物(D)を非プロトン性極 溶媒中で加熱することを特徴とするヒドロ シフェニル末端基を有する芳香族ポリエー ルスルホン(E)の製造方法。

式中のRは、それぞれ同一であっても異なっ いてもよく、炭素数1~6のアルキル基および 素数6~8のアリール基から選ばれるいずれか 表し、mは0~3の整数を表す。Yは直接結合、O S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。
(2)芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、二価フ ェノール化合物(B)および/または水(C)、およ 塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中 加熱する工程(I)、工程(I)で得られた溶液と 面活性剤を混合し、均一溶液または懸濁液 得る工程(II)、工程(II)で得られた均一溶液ま たは懸濁液に非プロトン性極性溶媒とは異な る第2の溶媒を加えて芳香族ポリエーテルス ホン粒子を析出させる工程(III)を含むことを 特徴とするヒドロキシフェニル末端基を有す る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法 。
(3)二価フェノール化合物(B)の添加量が、芳香 族ポリエーテルスルホン(A)1モルに対して、0. 01~0.5倍モルであることを特徴とする上記(1)ま たは(2)記載のヒドロキシフェニル末端基を有 する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方 法。
(4)水(C)の添加量が、芳香族ポリエーテルスル ホン(A)1モルに対して、0.1~30倍モルであるこ を特徴とする上記(1)~(3)記載のヒドロキシフ ニル末端基を有する芳香族ポリエーテルス ホン(E)の製造方法。
(5)塩基性化合物(D)が炭酸ナトリウム、炭酸カ リウム、無水炭酸ナトリウムおよび無水炭酸 カリウムから選ばれる少なくとも1種である 記(1)~(4)記載のヒドロキシフェニル末基端を する芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造 法。
(6)非プロトン性極性溶媒が、N-メチルピロリ ン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチ アセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジ ン、ジメチルスルホキシドおよびスルホラ から選ばれる少なくとも1種である上記(1)~(5 )のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル末 基を有する芳香族ポリエーテルスルホン(E) 製造方法。
(7)加熱温度が100~200℃であることを特徴とす 上記(1)~(6)のいずれか1項記載のヒドロキシフ ェニル末端基を有する芳香族ポリエーテルス ルホン(E)の製造方法。
(8)芳香族ポリエーテルスルホン(A)と、二価フ ェノール化合物(B)および/または水(C)、およ 塩基性化合物(D)を非プロトン性極性溶媒中 加熱して得られた芳香族ポリエーテルスル ン(E)と酸を接触させることを特徴とする上 (1)~(7)記載のヒドロキシフェニル末端基を有 る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方 。
(9)界面活性剤が、完全ケン化型または部分ケ ン化型のポリビニルアルコール、完全ケン化 型または部分ケン化型のポリ(ビニルアルコ ルーエチレン)共重合体、ポリエチレングリ ール、およびポリビニルピロリドンから選 れる1種または2種以上の混合物であること 特徴とする上記(2)~(8)のいずれか1項記載のヒ ドロキシフェニル末端基を有する芳香族ポリ エーテルスルホン(E)の製造方法。
(10)界面活性剤の添加量が、芳香族ポリエー ルスルホン(A)100質量部に対し、1~200質量部で あることを特徴とする上記(2)~(9)のいずれか1 記載のヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
(11)第2の溶媒が、25℃における芳香族ポリエ テルスルホン(A)の溶解度が1質量%以下の溶媒 であることを特徴とする上記(2)~(10)のいずれ 1項記載のヒドロキシフェニル末端基を有す る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法 。
(12)第2の溶媒が、水、メタノール、エタノー から選ばれる1種または2種以上の混合物で ることを特徴とする上記(2)~(11)のいずれか1 記載のヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
(13)原料の芳香族ポリエーテルスルホン(A)の ヒドロキシフェニル末端基組成が50モル%以 (重水素化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒ ロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面 (ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピ ク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100よ 算出される)であることを特徴とする上記(1)~ (12)のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル 端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン( E)の製造方法。
(14)得られるヒドロキシフェニル末端基を有 る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、ヒド キシフェニル末端基組成が60モル%以上(重水 化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒ ロキシルフェニル末端基)]/(6.9ppmのピーク面 (ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピ ク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100よ 算出される)であることを特徴とする上記(1)~ (13)のいずれか1項記載のヒドロキシフェニル 端基を有する芳香族ポリエーテルスルホン( E)の製造方法。
(15)得られるヒドロキシフェニル末端基を有 る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、DMF中 25℃、1g/dlの条件で測定した還元粘度が0.2~0.4 であることを特徴とする上記(1)~(14)のいずれ 記載のヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
(16)得られるヒドロキシフェニル末端基を有 る芳香族ポリエーテルスルホン(E)の、ヒド キシフェニル末端基組成が80モル%以上(重水 化ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒ ロキシルフェニル末端基)]/[(6.9ppmのピーク面 積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピ ーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100よ 算出される)であることを特徴とする上記(14 )記載のヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン(E)の製造方法。
(17)上記(1)~(16)いずれか1項記載のヒドロキシ ェニル末端基を有する芳香族ポリエーテル ルホン(E)1~100質量部をエポキシ樹脂100質量部 と100℃~200℃で混練、加熱、硬化させること 特徴とする芳香族ポリエーテルスルホン樹 組成物の製造方法。
(18)下記の化学構造式(a-3)で表され、ヒドロキ シフェニル末端基組成が60モル%以上(重水素 ジメチルスルホキシド中、 1 H-NMRにより測定され、[6.9ppmのピーク面積(ヒ ロキシルフェニル末端基)]/[(6.9ppmのピーク面 積(ヒドロキシフェニル末端基由来)+7.7ppmのピ ーク面積(クロロフェニル末端基由来)]×100よ 算出される)であり、DMF中、25℃、1g/dlの条 で測定した還元粘度が0.2~0.4であることを特 とするヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン。

式中のRは、それぞれ同一であっても異なっ いてもよく、炭素数1~6のアルキル基および 素数6~8のアリール基から選ばれるいずれか 表し、nは0~1、mは0~3の整数を表す。Yは直接 合、O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。
(19)上記(18)記載のヒドロキシフェニル末端基 有する芳香族ポリエーテルスルホン(E)から られ、平均粒子径が0.1~50μmであることを特 とするヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエーテルスルホン粒子。
(20)粒子径分布が、1.0~1.5であることを特徴と る上記(19)記載のヒドロキシフェニル末端基 を有する芳香族ポリエーテルスルホン粒子。

 本発明によれば、熱可塑性樹脂や熱硬化 樹脂とPESをアロイ化する際に、マトリック 樹脂中のPESを微分散化させるのに好適な、 応性のヒドロキシフェニル末端基を有するP ESを、経済的且つ簡易な方法で短時間に効率 く製造する方法を提供できる。

参考例1で得たPES、実施例21で得たPESのN MRチャートを示す図である。 参考例1で得たPES、実施例48で得たPESのN MRチャートを示す図である。 実施例58で得たPES粒子の走査型電子顕 鏡写真を示す図である。 比較例14で得たエポキシ樹脂組成物の 面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である 実施例71で得たエポキシ樹脂組成物の 面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である 実施例70で得たエポキシ樹脂組成物の 面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である 実施例75で得たエポキシ樹脂組成物の 面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である 実施例74で得たエポキシ樹脂組成物の 面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である

符号の説明

a: ヒドロキシル基に置換された芳香族炭素 隣接するプロトン
b: クロル置換された芳香族炭素に隣接する ロトン

以下に、本発明実施の形態を説明する。

 (1)芳香族ポリエーテルスルホン(A)(以下PES(A) と略す)
 本発明で用いられるPES(A)とは、一般式(a-1) よび/または一般式(a-2)で表される構造を有 、式中のRは、それぞれ同一であっても異な ていてもよく、炭素数1~6のアルキル基およ 炭素数6~8のアリール基から選ばれるいずれ を表し、mは0~3の整数を表す。Yは直接結合 O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。

 このようなPES(A)は、通常公知の方法によ 製造することができ、例えば前記特許文献1 1~17記載の方法により製造することが可能で る。

 例えば、アルカリ金属化合物の存在下、 機溶媒中、一般式(I)で表されるジハロゲノ フェニル化合物と一般式(II-1)および/または (II-2)で表される二価フェノール化合物とを重 縮合させ、あるいはジハロゲノジフェニル化 合物と、あらかじめ調製した一般式(II-1)およ び/または(II-2)で表される二価フェノール化 物とアルカリ金属化合物とを重縮合させる とにより製造することができる。

(式中のXは、ClまたはFを表し、Rは、それぞれ 同一であっても異なっていてもよく、炭素数 1~6のアルキル基および炭素数6~8のアリール基 から選ばれるいずれかを表し、mは0~3の整数 表す。Yは直接結合、O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す。)

 二価フェノール化合物に対し、ジハロゲ ジフェニル化合物は、通常等モル使用され 。分子量や末端基組成を微調整するために 二価フェノール化合物を等モルからわずか 過剰量あるいは過小量で使用することもで る。また分子量や末端基組成を調整するた に、少量のモノハロゲノジフェニル化合物 るいは一価フェノール化合物を重合溶液中 添加することもできる。

 重縮合の反応温度は、使用する溶媒の特 に依存するが、通常140~340℃で実施するのが 好ましい。340℃以上より高温で重縮合すると 、生成ポリマーの分解反応が進行するため、 高分子量体や高純度のPESが得られなくなる傾 向があり、140℃より低い温度で重縮合すると 、高分子量体が得られない傾向にある。

 反応時間は、反応原料成分の種類、重合 応の形式、反応温度により大幅に変化する 、通常は10分~100時間の範囲であり、好まし は30分~24時間の範囲で実施される。反応雰 気としては、酸素が存在しないことが好ま く、窒素もしくはその他の不活性ガス中で うことが好ましい。二価フェノール化合物 アルカリ金属塩は酸素の存在下で加熱する 酸化されやすく、目的とする重合反応が妨 られ、高分子量化が困難になるほか、重合 の着色原因ともなる。

 また重縮合反応は、重合終了時に、適当 末端停止剤、例えば、メチルクロライド、t -ブチルクロライド、4,4’-ジクロロジフェニ スルホンのような単官能クロライド、多官 クロライドを、反応溶液に重合体の末端停 剤として添加し、例えば90~150℃で反応させ ことによって末端封鎖することができる。

 ここで、使用される有機溶媒としては、 えばジメチルスルホキシド、ヘキサメチレ スルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N ,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセ アミドなどのアミド系溶媒、N-メチル-2-ピロ リドン、N-メチル-2-ピペリドンなどのピペリ ン系溶媒、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン などの2-イミダゾリノン系溶媒、ジフェニル ーテル、ジフェニルスルホンなどのジフェ ル化合物、塩化メチレン、クロロホルム、 クロロエタン、テトラクロロエタン、トリ ロロエチレンなどのハロゲン系溶媒、γ-ブ ロラクトンなどのラクトン系溶媒、スルホ ンなどのスルホラン系溶媒、これら2種以上 の混合物などが挙げられる。

 また、重合時に微量の水分、反応中に外 から入ってくる水分、重合時に発生する水 重合の進行を阻害するため、これら反応系 の水を分離する目的で、非プロトン性極性 媒に相溶し、かつ0.101MPa下において、水と 沸混合物を形成する溶媒を用いることが出 る。このような溶媒としては、特に限定さ ないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘ タン、オクタン、シクロヘキサン、ドデカ 、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタ ン、エチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、 イソプロピルエーテル、エチルブチルエー ル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、アセ ルアセトン、メチルエチルケトン等のケト 系溶媒、エタノール、イソプロパノール、n- プロパノール、イソブチルアルコール、ヘキ サノール、ベンジルアルコール等のアルコー ル系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブ チル、酪酸ブチル、安息香酸メチル等のエス テル系溶媒等、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、 吉草酸、安息香酸等のカルボン酸系溶媒、ク ロロホルム、ブロモホルム、1,2-ジクロロメ ン、1,2-ジクロロエタン、四塩化炭素、クロ ベンゼン、ヘキサフルオロイソプロパノー 等のハロゲン系溶媒、エチレンジアミン、 ニリン、ピリジン、メチルピリジン等のア ン系溶媒などが挙げられ、好ましくは、炭 水素、さらに好ましくはベンゼン、トルエ 、キシレンから選ばれる少なくとも1種を使 用することができる。

 水共沸溶媒の使用量は、系内の水分を除 可能な量であれば特に制限はないが、全モ マーの重量に対して、0.01~10倍重量の範囲が 好ましく、さらに好ましくは0.02~5倍量である 。

 またアルカリ金属化合物としては、例え 、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸 物、アルカリ金属水素化物、アルカリ金属 ルコキシドなどが挙げられる。なかでも炭 カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリ 属炭酸塩が好ましく、とりわけ無水炭酸カ ウム、無水炭酸ナトリウムなどの無水アル リ金属塩が好ましい。

 重縮合により得られた粗PESは、反応溶液 に含まれているアルカリ金属化合物を濾過 るいは遠心分離によって分離した後、ある は濾過や遠心分離をせずに、反応溶液にPES 貧溶媒を加えて、あるいは貧溶媒に反応溶 を加えて、析出固体として分離することが きる。PESの貧溶媒としては、例えばメタノ ル、エタノール、イソプロパノール、ブタ ールなどのアルコール類、アセトニトリル どのニトリル類、水などを挙げることがで る。またこれらの貧溶媒を2種以上混合して 用いることができる。また上記の貧溶媒には 、ポリマーが析出可能な範囲で、前記の重合 反応溶媒などのポリマーの良溶媒が含有され ていてもよい。

 析出固体は貧溶媒で洗浄後、乾燥させる とによって、PESの粉末を得ることができる

 本発明で使用されるPES(A)は、前記の方法 より製造することが可能であるが、最終的 得られるヒドロキシフェニル末端基を有す PES(E)を効率よく、高純度で製造するために 、PES(A)のDMF中、25℃、1g/dlで測定した還元粘 度が0.25~1.0が好ましく、さらに好ましくは0.35 ~0.8、より好ましくは0.4~0.6のものである。

 本還元粘度をゲルパーミエーションクロ トグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF、 準物質としてポリスチレンより換算した数 均分子量(Mn)に置き換えると、その数平均分 量としては、33000~140000のものが好ましく、 らに好ましくは47000~110000、より好ましくは5 4000~80000である。

 本発明の製造方法で使用するPES(A)の還元 度が低い(数平均分子量が低い)と、最終的 得られるヒドロキシフェニル基含有PES(E)の 子量が極めて小さくなり、低分子量側のポ マーやオリゴマーが貧溶媒に溶解、あるい 膨潤したりし、その結果、ポリマーの回収 や洗浄効率が低下する傾向が認められる。 らに洗浄効率の低下により、ポリマー中に ルカリ金属化合物などの不純物量が増加す という傾向が認められる。また低分子量化 伴いガラス転移温度が低下し、PESの本来の 徴である耐熱性が低下する場合がある。

 PES(A)の還元粘度が高い(数平均分子量が高 い)と、好ましい範囲の分子量を有するヒド キシフェニル基含有PES(E)を得るためには、 価フェノール化合物(B)および/または水(C)や 基性化合物(D)の添加量が増えるため、PES(A) 溶解性が低下したり、酸性を示す未反応の 価フェノール化合物(B)や、塩基性化合物(D) ポリマー中に残存したり、ポリマーが着色 、洗浄・回収・分離が困難となる傾向があ 。

 また本発明の製造方法で使用するPES(A)の 端基組成は、PES(A)の製造性や、反応性のヒ ロキシフェニル末端基を有するPES(E)を、効 良く製造するためには、ヒドロキシフェニ 末端基よりもクロロフェニル末端基が相対 に多いPESを使用することが好ましい。より 体的には、PES(A)を原料とし、二価のフェノ ル化合物との反応により、ヒドロキシフェ ル末端基を導入する本発明の方法において 、ヒドロキシフェニル末端基導入効率の面 反応後の後処理効率の面から、PES(A)中のヒ ロキシフェニル末端基組成は、0~50モル%が ましく、より好ましくは0~30モル%、さらに好 ましくは0~10モル%である。

 このようなPES(A)としては、前記のごとく 知の方法により製造することが可能である 、前記の方法により製造されている市販品 PES(例えばBASF社製 “ULTRASON E”シリーズ、 友化学(株)製“スミカエクセル”シリーズ) 使用することができる。これらの中で、好 しくはスミカエクセル3600P、4100P、4800P、5003 P、5200P、より好ましくはスミカエクセル3600P 4100P、4800P相当品である。

 (2)反応性のヒドロキシフェニル末端基を有 るPES(E)の製造方法(工程I)
 本発明の反応性のヒドロキシフェニル末端 を有するPES(E)は、通常公知の方法、すなわ 二価フェノール化合物に対し、ジハロゲノ フェニル化合物の重縮合により直接製造し り、重縮合の後半で末端封鎖剤を添加して 造するのではなく、高分子量のPES(A)を原料 し、二価フェノール化合物(B)および/または 水(C)および塩基性化合物(D)を非プロトン性極 性溶媒中で加熱することにより、反応性のヒ ドロキシフェニル末端基を有するPES(E)を製造 することを特徴とするものである。

 従来の製造方法では、二価フェノール化 物とジハロゲノジフェニル化合物を原料モ マーとするのに対し、本発明の方法では、 ハロゲノジフェニル化合物を反応に使用し い点で大きく異なる。

(式中のXは、ClまたはFを表し、Rは、それぞれ 同一であっても異なっていてもよく、炭素数 1~6のアルキル基および炭素数6~8のアリール基 から選ばれるいずれかを表し、mは0~3の整数 表す。Yは直接結合、O、S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表し、nは1以上の整 を表す。)

 さらに本発明を明確にするため、反応ス ームを上記式に示した。まず目的とするヒ ロキシフェニル末端基を有するPES(E)よりも 相対的に分子量の高いPES(A)をあらかじめ重 して製造する。ここでは、ジハロゲノジフ ニル化合物(I)と二価フェノール化合物(II)( こではII-1を例示)より、従来公知の方法によ り重合した後、回収し、その後必要に応じて 、洗浄、乾燥したものを使用することができ る。重合後の反応溶液には、残存モノマー、 溶媒、アルカリ類が残存していることから、 本発明で使用するPES(A)は、回収後、洗浄・乾 燥したものが特に好ましい。

 本ポリマー(A)を中間原料として、二価フ ノール化合物(B)(ここではb-1を例示)および/ たは水(C)および塩基性化合物(D)と非プロト 性極性溶媒中で加熱することにより、二価 ェノール化合物(B)および/または水(C)による PES(A)のポリマー主鎖への求核置換反応により (式中矢印αの位置)、ヒドロキシフェニル末 基を有するPES(E)を誘導するものである。

 また本発明の反応では、前記ポリマー主 への求核置換反応のほかに、ハロゲノフェ ル末端と二価フェノール化合物(B)および/ま たは水(C)の求核置換反応によっても(式中βの 位置)、ヒドロキシフェニル末端基が生成す 。ポリマー主鎖モル数に対し、ハロゲノフ ニル末端は、ポリマー末端にのみ極わずか 存在するため、ポリマー主鎖への求核置換 応が確率的に優勢となるが、二価フェノー 化合物(B)および/または水(C)の添加量や、塩 性化合物(D)の添加量、反応温度、反応時間 調整することにより、ポリマー主鎖への求 置換反応だけでなく(αの反応)、ハロゲノフ ェニル末端への求核置換反応(βの反応)も同 に進行させることが可能となり、ヒドロキ フェニル末端基量の高いPES(E)を誘導するこ ができる。

 一方、公知の重縮合の場合、二価のフェノ ル化合物とジハロゲノジフェニルスルホン 仕込みモル比(r)、その時得られるポリマー 子量、ポリマー末端基組成は、高分子化学 論(第2版)(化学同人発行、p206)などに記載さ ているように、
r=ジハロゲノジフェニルスルホンの仕込みモ 数(a)/二価のフェノール化合物の仕込みモル 数(b)(ここで過剰成分を分母とし、a/b=rと置く )、反応率をpと置くと、その時得られるポリ ーの数平均重合度(Pn)は、
Pn=(1+r)/[2r(1-p)+(1-r)]と表される。
反応率が100%と仮定すると(p=1)、
Pn=(1+r)/(1-r)

 この式から、二価のフェノール化合物が1 %過剰に存在する場合、その数平均重合度は20 1となる。また末端基比率は、各モノマー成 の仕込みモル比に準じ、[ハロゲノフェニル 端]/[ヒドロキシフェニル末端]=r=1.0/1.01とな 、ヒドロキシフェニル末端基組成は50.2%程 となる(なお反応率が100%以下の場合は、さら に低い値になる)。

 一方、得られるポリマー中のヒドロキシ ェニル末端基を過剰に生成させるために、 価のフェノール化合物を10%過剰に仕込む場 (r=1.0/1.1)、その数平均重合度は21、ヒドロキ シフェニル末端基組成は52.4%程度、さらに二 のフェノール化合物を50%過剰に仕込んだ場 (r=1.0/1.5)、数平均重合度はわずかに5、生成 るヒドロキシフェニル末端基組成は60モル% 度であり、その時の理論分子量はきわめて 分子量となってしまい、分子量が高く、高 ドロキシフェニル末端基組成のポリマーを ることは、理論的にも不可能であった。

 本発明者らは、本反応により効率よく、 つ定量的にヒドロキシフェニル末端基を導 できることを見いだし、さらに本反応によ ば、高収率で目的のヒドロキシフェニル末 基を有するPESが得られ、さらに好ましいこ に、本反応により高ヒドロキシフェニル末 基を有し、従来の方法に比べ高分子量であ 、さらに後処理工程が極めて単純化でき、 つ純度の高いPESが得られることを見いだし 。 本発明で使用される二価フェノール化 物(B)は、下記一般式(b-1)、および/または(b-2) で表されるものである。

(式中のRは、それぞれ同一であっても異なっ いてもよく、炭素数1~6のアルキル基および 素数6~8のアリール基から選ばれるいずれか 表し、mは0~3の整数を表す。Yは直接結合、O S、SO 2 、CO、C(CH 3 ) 2、 CH(CH 3 )、およびCH 2 から選ばれるいずれかを表す)

 このような二価フェノール化合物(B)とし は、ハイドロキノン、カテコール、レゾル ン、4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(4-ヒドロ シフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ フェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェ ル)エタンなどのビス(4-ヒドロキシフェニル )アルカン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニル ルホンなどのジヒドロキシジフェニルスル ン類、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテ ルなどのジヒドロキシフェニルエーテル類、 およびこれらの構造異性体が挙げられるが、 これらの中で、入手性や実用性、価格面から 、ハイドロキノン、4,4’-ビフェノール、4,4 -ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェ ノール-S)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニルプ パン)(ビスフェノール-A)、ビス(4-ヒドロキシ フェニル)メタン(ビスフェノール-F)、4,4’-エ チリデンビスフェノール(ビスフェノール-E) 4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4 -ジヒドロキシジフェニルスルホンが好まし く、またこれら二価フェノールの化合物(B)の 構造異性体を使用することもできるが、より 好ましくは4,4’-ジヒドロキシジフェニルス ホン(ビスフェノール-S)、2,2-ビス(4-ヒドロキ シフェニルプロパン)(ビスフェノール-A)、ビ (4-ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノ ル-F)、4,4’-エチリデンビスフェノール(ビス フェノール-E)であり、特に好ましくは、4,4’ -ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェ ール-S)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニルプロ パン)(ビスフェノール-A)である。

 本反応で使用する二価フェノール化合物( B)の添加量は、最終的に得ようとするヒドロ シフェニル末端基を有するPES(E)の目標とす 末端基量や目標とする分子量によるが、む ろこれらは、二価フェノール化合物(B)の添 量により制御することが可能となる。本反 を定量的に進行させるためには、PES(A)1モル に対し、0.001~2.0倍モルが好ましく、より好ま しくは0.01~1.5、さらに好ましくは0.01~1.0倍モ 、特に好ましくは0.01~0.5倍モルである。なお ここでPES(A)のモル数は、前記式(a-1)、(a-2)で される1つの繰り返し単位の分子量を基準に 出されるものである。

 二価フェノール化合物(B)の添加量が2.0モ 以上になると、得られるヒドロキシフェニ 末端基を有する芳香族ポリエールスルホン( E)の分子量が小さくなりすぎ、ポリマーの回 ・洗浄が困難となるだけでなく、酸性を示 未反応の二価フェノール化合物(B)や二価フ ノール化合物の塩、あるいは塩基性化合物( D)そのものがポリマー中に残存したり、ポリ ーが着色する傾向がある。特にヒドロキシ ェニル末端基導入量の増加に伴い、ポリマ の溶解性や、塩基性化合物との相互作用が 加するため、洗浄・回収・分離が困難とな 傾向がある。一方、0.001以下では、ヒドロ シフェニル末端基を定量的に導入すること 困難となる。

 本発明で使用する水(C)は、特に制限はな が、得られるポリマー中の不純物含量など 考慮すると、出来る限り不純物の少ない水 用いることが好ましい。

 本反応で使用する水(C)の添加量は、最終 に得ようとするヒドロキシフェニル末端基 有するPES(E)の目標とする末端基量や目標と る分子量によるが、むしろこれらは、水(C) 添加量により制御することが可能となる。 反応を定量的に進行させるためには、PES(A)1 モルに対し、0.01~50倍モルが好ましく、より ましくは0.1~40倍、特に好ましくは0.1~30倍モ である。なおここでPES(A)のモル数は、前記 (a-1)、(a-2)で表される1つの繰り返し単位の分 子量を基準に算出されるものである。

 水(C)の添加量が50倍モル以上になると、 られるヒドロキシフェニル末端基を有する 香族ポリエールスルホン(E)の分子量が小さ なりすぎ、ポリマーの回収・洗浄が困難と るだけでなく、溶媒へのPES(A)の溶解性が低 して析出しやすくなるため、均一に反応を 行するためには、用いる非プロトン性極性 媒中のPES(A)の濃度を低下させることが必要 なる。しかし、濃度が低下することで反応 が低下するため、反応の進行が長時間にな 、さらには溶媒量が増えることでポリマー 回収・洗浄が困難となり、コストも増大す ため、工業的に現実的ではない。一方、0.01 以下では、ヒドロキシフェニル末端基を定 的に導入することが困難となる。

 なお本発明では添加する水(C)の量や塩基 化合物(D)の量などで目標とするPES(E)の末端 量や分子量を制御するため、原料中に含ま る微量の水分、反応中に外部から入ってく 水分、塩基性化合物調製時の水分などは、 発明の目的の反応、すなわち中間原料であ PES(A)と添加した水(C)の求核置換反応以外に 系内に存在する水による反応が進行するこ があるため、ヒドロキシフェニル末端基を するPES(E)の目標とする末端基量や、目標と る分子量の制御が困難となるため、これら 水分は可能な限り除去することが好ましい

 本発明の反応を定量的に進行させるため 本反応の有機溶媒として、非プロトン性極 溶媒を使用する。具体的には、ジメチルス ホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N ,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリ ン(NMP)、N-メチル-2-ピペリドン、1,3-ジメチ -2-イミダゾリジノン、およびこれら2種以上 混合物などが挙げられるが、特に好ましく 、ジメチルスルホキシド、DMF、NMPが挙げら る。

 本反応に使用される非プロトン性極性溶 量は、PES(A)、二価フェノール化合物(B)を溶 させる量であれば、特に制限はないが、全 ノマーの重量に対して、0.5~20倍重量の範囲 好ましい。さらに好ましくは2~10倍量である 。

 0.5倍未満では原料となるPES(A)、二価フェ ール化合物(B)が溶解せず、また反応時の攪 等の操作が困難となり、均一な反応が困難 なる。また溶媒量が20倍量を超えると、ポ マー濃度や二価フェノール化合物(B)および/ たは水(C)の濃度が下がり、反応速度が遅く ったり、再沈殿生成、洗浄、回収が困難に る傾向が認められ、何よりも溶媒量の増加 より、生産量の低下、溶媒回収コストに影 する。

 なお本発明では非プロトン性極性溶媒中 本反応を実施することが重要であるが、場 によっては、非プロトン性極性溶媒以外の 機溶媒を併用することもできる。特に、原 中に含まれる微量の水分、反応中に外部か 入ってくる水分、使用する塩基性化合物の 合水、塩基性化合物水溶液中、塩基性化合 調製時の水分などは、本発明の目的の反応 すなわち中間原料であるPES(A)と二価フェノ ル化合物(B)および/または水(C)の求核置換反 応以外に、系内に存在する水による加水分解 が進行することがある。反応系内の水分は、 本発明の反応を阻害することがあることから 、これら反応系内の水を分離する目的で、非 プロトン性極性溶媒に相溶し、かつ0.101MPa下 おいて、水と共沸混合物を形成する溶媒を いることが出来る。このような溶媒として 、特に限定されないが、例えば、ペンタン ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘ サン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、キ レン、ナフタレン、エチルベンゼン等の炭 水素系溶媒、ジイソプロピルエーテル、エ ルブチルエーテル、ジオキサン等のエーテ 系溶媒、アセチルアセトン、メチルエチル トン等のケトン系溶媒、エタノール、イソ ロパノール、n-プロパノール、イソブチル ルコール、ヘキサノール、ベンジルアルコ ル等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、酢 メチル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、安息香 メチル等のエステル系溶媒等、ギ酸、酢酸 プロピオン酸、吉草酸、安息香酸等のカル ン酸系溶媒、クロロホルム、ブロモホルム 1,2-ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、四 塩化炭素、クロロベンゼン、ヘキサフルオロ イソプロパノール等のハロゲン系溶媒、エチ レンジアミン、アニリン、ピリジン、メチル ピリジン等のアミン系溶媒などが挙げられ、 好ましくは、炭化水素、さらに好ましくはベ ンゼン、トルエン、キシレンから選ばれる少 なくとも1種を使用することができる。

 水共沸溶媒の使用量は、系内の水分を除 可能な量であれば特に制限はないが、全モ マーの重量に対して、0.01~10倍重量の範囲が 好ましく、さらに好ましくは0.02~5倍量である 。また本発明の反応では、反応系に塩基性化 合物(D)を添加すると、さらに反応速度を向上 させることができる。使用する塩基性化合物 (D)としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸 化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジ ウム、水酸化セシウム、酢酸ナトリウム、酢 酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素 カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウ ム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシ ウム、無水炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウ ム等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウ ム、水酸化マグネシウム、炭酸水素カルシウ ム、炭酸水素バリウム、炭酸水素マグネシウ ム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化 合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシ ド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド 等の4級アンモニウム塩、トリメチルアミン トリエチルアミン等の三級アミン、N、Nージ メチルアミン、N、Nージエチルアミン等の二 アミン、N-メチルアミン、N-エチルアミン等 の一級アミン、アンモニアなどが挙げられる 。これらの中でも、取り扱い易さから、水酸 化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリ ウム、炭酸カリウム、無水炭酸ナトリウム、 無水炭酸カリウムなどを使用することができ 、なかでも炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、 無水炭酸ナトリウム、無水炭酸カリウムから 選ばれる1種または2種以上を好ましく使用す ことができる。

 塩基性化合物(D)の添加量は、使用する二 フェノール化合物(B)1モルに対し、0.1~3倍モ の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5~1 モルである。

 塩基性化合物(D)の添加量が二価フェノー 化合物(B)1モルに対し、3倍モル以上では、PE S(E)酸性の二価フェノール化合物や二価フェ ール化合物の塩、さらには塩基性化合物(D) 身がポリマー中に残存したり、ポリマーが 色する傾向がある。PES(E)一方、0.5以下では 反応性のヒドロキシフェニル末端基を導入 ることが困難となる。

 また水を用いた場合の塩基性化合物(D)の 加量は、使用する水(C)1モルに対し、0.01~2倍 モルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.0 1~1倍モルである。

 塩基性化合物(D)の添加量が、水(C)1モルに 対し、2倍モル以上では、塩基性化合物(D)が 媒へ溶解せずに不均一に存在する傾向が見 れ、これら過剰な塩基性化合物はポリマー に残存したり、ポリマーが着色する傾向が る。一方、0.01倍モル以下では、反応性のヒ ロキシフェニル末端基を導入することが困 となる。

 加熱温度は、使用する溶媒種、溶媒の沸 、反応溶液の濃度、二価フェノール化合物( B)および/または水(C)の添加量、塩基性化合物 (D)の添加量に依存するが、通常100~250℃で実 するのが好ましく、さらに好ましくは100~200 である。250℃以上より高温で反応すると、 価フェノール化合物塩の熱分解、反応系内 生成したヒドロキシフェニル末端基を有す PES(E)そのものの熱分解が進行するため、分 量の制御やヒドロキシフェニル末端基導入 の制御が困難となったり、最終的に得られ PES(E)の熱安定性・滞留安定性の低下や、着 といった傾向が認められるようになる。一 、100℃より低い温度で本反応を行うと、反 が非常に遅くなるという問題がある。

 反応に要する時間は、二価フェノール化 物(B)の種類・添加量および/または水(C)の添 加量、塩基性化合物(D)の種類・添加量、反応 濃度、反応温度により大幅に変化するが、通 常は10分~10時間の範囲であり、好ましくは30 ~5時間の範囲で実施される。反応雰囲気とし ては、酸素が存在しないことが好ましく、窒 素もしくはその他の不活性ガス中で行うとよ い結果が得られる。二価フェノール化合物の 塩基性化合物は酸素の存在下で加熱すると酸 化されやすく、目的とする反応が妨げられ、 その結果、分子量制御、ヒドロキシフェニル 末端基導入量の制御が困難となるほか、重合 体の着色原因ともなる。

 本発明の方法により得られた粗ヒドロキ フェニル末端基を有するPESは、反応溶液中 含まれている塩基性化合物を濾過あるいは 心分離によって分離した後、あるいは濾過 遠心分離をせずに、反応溶液に貧溶媒を加 て、あるいは貧溶媒に反応溶液を加えて、 出固体として分離することができる。ヒド キシフェニル末端基を有するPESの貧溶媒と ては、例えばメタノール、エタノール、イ プロパノール、ブタノールなどのアルコー 類、アセトニトリルなどのニトリル類、水 どを挙げることができる。またこれらの貧 媒を2種以上混合して用いることができる。 また上記の貧溶媒には、ポリマーが析出可能 な範囲で、前記の重合反応溶媒などのポリマ ーの良溶媒が含有されていてもよい。

 (3)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) 子の製造方法(工程II)
 本発明のヒドロキシフェニル末端基を有す 芳香族ポリエーテルスルホンを粒子化する 法としては、工程(I)の後、界面活性剤の共 下で、PES粒子を析出させることにより製造 ることができる。

 PES粒子を析出させる方法としては、例えば
(a)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で冷却す ることにより析出させる方法、
(b)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶媒を 除去することにより析出させる方法、
(c)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶液に PESと非相溶の溶媒を加えることにより析出さ せる方法、
(d)工程(I)の後、界面活性剤の共存下で溶液に PESとPESを溶解する溶媒に非相溶の溶媒を加え 、エマルジョンを形成させ、PESを溶解する溶 媒を除去することにより析出させる方法、
等が挙げられる。なお、界面活性剤は、PESが 析出する際に共存さえすれば、添加方法、添 加手順等に関しては、いずれの方法でも構わ ない。工程の容易さから、(c)が好ましく用い られる。

 界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナト ウム、脂肪酸カリウム、アルキルベンゼン ルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸エステ ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウ 、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウ 、ポリスルホン酸ナトリウム、ポリアクリ 酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、 化トリアルキルメチルアンモニウム、塩化 ルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジア キルジメチルアンモニウム等のカチオン系 面活性剤、完全ケン化型または部分ケン化 のポリビニルアルコール、完全ケン化型ま は部分ケン化型のポリ(ビニルアルコールー エチレン)共重合体、ポリエチレングリコー 、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチ ン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンラ リン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン リコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシ チレンアルキルフェニルエーテル、ポリオ シアルキルエーテル、ポリアクリル酸、ポ メタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ タクリルアミド、カルボキシメチルセルロ ス、ポリオキシエチレンアミン、ポリビニ ピロリドン、セルロース等ノニオン系界面 性剤、およびアルキルアミノカルボン酸塩 カルボキシベタイン等の両性の界面活性剤 ら選ばれる1種または2種以上の混合系を用い ることができる。なお、ここで言うアルキル とは、炭素数2~30までの直鎖状または分岐状 和炭化水素基、および直鎖状または分岐状 飽和炭化水素基を表す。このうち好ましい のとしては、数平均分子量が1000以上の界面 性剤である。特に好ましくは、完全ケン化 または部分ケン化型のポリビニルアルコー 、完全ケン化型または部分ケン化型のポリ( ビニルアルコールーエチレン)共重合体、ポ エチレングリコール、およびポリビニルピ リドンから選ばれる1種または2種以上の混合 物である。なお、ここで言う数平均分子量と は、ゲルパーミエーションクロマトグラフを 用いて、ポリエチレングリコールによる校正 曲線と対比させて算出したものである。

 界面活性剤の添加量としては、PES(A)100質 部に対して、1~200質量部が好ましく、より ましくは30~200質量部、さらに好ましくは50~20 0質量部である。添加量が上記範囲より少な 場合、PESが粒子状ではなく、粗大凝集物と て得られ、粒子径分布も広くなる傾向であ 好ましくない。上記範囲より多い場合、界 活性剤が非プロトン性極性溶媒に残存する め、好ましくない。

 (4)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) 子の製造方法(工程III)
 PESを析出させるための第2の溶媒を、添加時 のPESの均一溶液または懸濁液の温度としては 、0~80℃が好ましく、より好ましくは10~60℃で ある。PESの均一溶液または懸濁液の温度が上 記範囲より高い場合、PESが粒子状ではなく、 粗大凝集物として得られる傾向であり、好ま しくない。

 第2の溶媒としては、25℃におけるPESの溶 度が1質量%以下の溶媒を使用する。このよ な溶媒としては、上記範囲であれば特に限 されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、シ ロペンタン、デカン、ドデカン、トリデカ 、テトラデカン等の脂肪族炭化水素系溶媒 ベンゼン、トルエン、キシレン、2-メチルナ フタレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ジエチ ルエーテル、テトラヒドロフラン、ジイソプ ロピルエーテル、ジオキサン等のエーテル系 溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケ トン系溶媒、メタノール、エタノール、イソ プロパノール、n-プロパノール等のアルコー 系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブ ル、プロピオン酸ブチル、酪酸ブチル等の ステル系溶媒等、クロロホルム、ブロモホ ム、1,2-ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタ 、四塩化炭素、クロロベンゼン等のハロゲ 系溶媒、および水の中から選ばれる1種また 2種以上の混合溶媒が挙げられる。このうち 、好ましいものとしては、水、メタノール、 およびエタノールなどが挙げられ、これらは その1種または2種以上の混合溶媒として使用 きる。また上記の溶媒には、PES(A)の溶解度 1質量%以下の範囲で、上記記載の非プロト 性極性溶媒が含有されていてもよい。

 第2の溶媒の添加量は、PES(A)の均一溶液ま たは懸濁液100質量部に対して、10質量部以上 好ましく、より好ましくは15質量部以上で る。添加量が上記範囲より少ない場合、PES(E )の粒子が析出しない。

 第2の溶媒の添加速度は、PESの均一溶液ま たは懸濁液100質量部に対して、10質量部/分以 下が好ましく、より好ましくは5質量部/分で る。添加速度が上記範囲より速い場合、PES 粒子状ではなく、粗大凝集物として得られ 傾向であり好ましくない。

 以上の手法により、PES(E)粒子の分散液を ることができる。

 PES粒子の分散液からPES(E)粒子の単離を行 ためには、通常公知の固液分離、洗浄、乾 の手法を用いることができる。以下詳細に 明する。

 PES粒子の分散液に含まれるPES(E)粒子、非 ロトン性極性溶媒、第2の溶媒、界面活性剤 から、PES(E)粒子を単離する方法は、公知の方 法を用いることができる。例えば、濾過、デ カンテーション、遠心分離、酸析法、塩析法 、スプレードライ法、凍結凝固法などが挙げ られる。

 PES(E)の洗浄方法としては、二価フェノー (B)、塩基性化合物(D)、非プロトン性極性溶 、界面活性剤がPES(E)に残存しないよう、十 洗浄することが好ましい。

 PES(E)の洗浄溶媒としては、第2の溶媒を用 いることが好ましく、より好ましくは水、メ タノール、エタノールから選ばれる1種また 2種以上の混合溶媒として用いてもよい。

 固液分離を行った後の溶媒は、回収を行 、PESの製造方法の各工程中のいずれか、又 PES粒子の製造方法での洗浄工程において、 利用することも可能であり、これにより生 性を向上させることができる。

 PES(E)の乾燥方法としては、公知の方法を いることができる。例えば、風乾、加熱乾 、減圧乾燥、凍結乾燥などが挙げられる。 熱する場合、温度は、ガラス転移点温度よ 低い温度が好ましく、50~150℃が好ましい。

 以上の手法により、ヒドロキシフェニル 端基を有するPES(E)の粒子を得ることができ 。

 本発明のヒドロキシフェニル末端基を有 るPES(E)を得るためには、本発明のいずれか 工程において酸を接触させることが好まし 。接触させる工程は特に限定されないが、 ましくは、反応後の溶液あるいは貧溶媒に る析出時、あるいは回収後、いずれかの工 で、PESと酸を接触させることで、PESに含ま る塩基性化合物を効率よく取り除くことが 能となる。

 使用される酸としては、塩酸、硝酸、硫 、リン酸、過塩素酸、亜硫酸、クロム酸、 亜塩素酸、過塩素酸、シアン化水素、臭素 素酸、ホウ酸などの無機酸、酢酸、蟻酸、 ュウ酸、酒石酸、ステアリン酸、ナフテン 、ピクリン酸、りんご酸などの有機酸から ばれる1種または2種以上の混酸を用いるこ ができ、酸の種類はこれらに限るものでは い。

 使用する酸の量としては、用いる溶媒へ 溶解性などの影響を受けるため、特に制限 ないが、PES1モルに対し、0.001~2倍モルの範 が好ましく、さらに好ましくは0.01~1倍モル ある。酸の量が上記範囲より少ない場合、 ルカリ金属塩が十分に取り除くことができ 、好ましくない。

 酸接触後のPESを貧溶媒で洗浄後、乾燥さ ることによって、ヒドロキシフェニル末端 を有するPES(E)を得ることができる。

 (5)ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) 特性
 本発明によって得られるヒドロキシフェニ 末端基を有するPES(E)の末端基組成は、例え 、重水素化DMSO溶媒中、400MHz  1 H-NMRを用い、積算回数100回により、7.7ppmにク ル置換された芳香族炭素に隣接する2つのプ ロトン(H Cl )と、6.9ppmにヒドロキシル基で置換された芳 族炭素に隣接する2つのプロトン(H OH )が高分解能で観測できること、 1 H-NMRの面積比は周知の通り、そのモル数を反 していることから、ヒドロキシフェニル末 基、クロロフェニル末端基組成(モル%)は、 記式により算出することができる。
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
[H OH のピーク面積]/([H OH のピーク面積]+[H Cl のピーク面積])×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
[H Cl のピーク面積]/([H OH のピーク面積]+[H Cl のピーク面積])×100

 すなわち、ヒドロキシフェニル末端基と ロロフェニル末端基が1:1存在する場合は、 ドロキシフェニル末端基/クロロフェニル末 端基組成は、50/50モル%で表すことができる。

 本発明の製造方法によれば、出発原料と るPES(A)の末端基組成、反応時に使用する二 フェノール化合物(B)および/または水(C)の添 加量などの反応条件を、本発明の範囲内で選 択することにより、ヒドロキシフェニル末端 基量や分子量を適宜調整することが可能であ るが、最終的に得られるヒドロキシフェニル 末端基を有するPES(E)の好ましいヒドロキシフ ェニル末端基組成(モル%)は、60モル%以上が好 ましく、より好ましくは70モル%以上、さらに 好ましくは80モル%以上である。

 特に本発明の製造方法によれば、従来公 の製造方法では製造困難であった、ヒドロ シフェニル末端基が60モル%以上のもの、さ には80モル%以上のものも製造可能である。

 本発明の好ましい態様によって得られる ドロキシフェニル末端基を有するPES(E)は、 応性の高いヒドロキシフェニル末端基を高 有量含んでおり、さらに耐熱性、耐薬品性 難燃性、電気的性質並びに機械的性質に優 、特に従来の方法により得られるPES(A)や、 るいはモルバランスをずらしてヒドロキシ ェニル末端基量を増加させた低分子量PESに べて、生産性に優れ、さらにヒドロキシフ ニル末端基量が高く、分子量分布が狭く、 つ、金属含有量が著しく少ないという特徴 ある。

 本発明のヒドロキシフェニル末端基を有 るPES(E)の好ましい分子量は、最終的に得ら るポリマーのヒドロキシフェニル末端基量 分子量、ガラス転移温度や、本ポリマーを 可塑性樹脂や熱硬化性樹脂にアロイ化する の、末端基反応性のほか、末端基反応によ 相溶性の向上効果の面から、該ポリマーのD MF中、25℃で測定した還元粘度が0.2~0.4が好ま く、さらに好ましくは0.25~0.4である。

 本還元粘度をゲルパーミエーションクロ トグラフィー(GPC)を用い、溶媒としてDMF中 標準物質としてポリスチレンより換算した 平均分子量(Mn)に置き換えると、その数平均 子量としては、26000~54000のものが好ましく さらに好ましくは33000~54000である。

 本発明のヒドロキシフェニル末端基を有 るPES(E)は、反応温度や反応時間、水分量や いる原料の種類などの影響があるため、特 限定はされないが、好ましい態様によって られるヒドロキシフェニル末端基を有するP ES(E)は、原料となるPES(A)の分子量や、二価フ ノール化合物(B)および/または水(C)の添加量 により、得られる分子量やヒドロキシフェニ ル末端基量に依存する傾向が見られる。

 例えば150℃、5時間、DMSO中で、好ましい 様によって得られるヒドロキシフェニル末 基を有するPES(E)のヒドロキシフェニル末端 量は二価フェノール化合物(B)および/または (C)の添加量に比例する。また、ヒドロキシ ェニル末端基を有するPES(E)の好ましい還元 度である0.2~0.4、ヒドロキシフェニル末端基 量60~100%、を得るためには、ヒドロキシフェ ル末端基量が50%のPES(A)を用いた場合、好ま いPES(A)の還元粘度はおおよそ0.25~0.55以上の 囲となり、ヒドロキシフェニル末端基量が0% のPES(A)を用いた場合、好ましいPES(A)の還元粘 度はおおよそ0.35~0.75以上の範囲となる。

 しかし、使用するPES(A)の還元粘度が低い( 数平均分子量が低い)と、最終的に得られる ドロキシフェニル末端基を有するPES(E)の分 量が小さくなり、低分子量側のポリマーや リゴマーが貧溶媒に溶解、あるいは膨潤し りし、その結果、ポリマーの回収率や洗浄 率が低下する傾向が認められる。さらに洗 効率の低下により、ポリマー中にアルカリ 属化合物などの不純物量が増加するという 向が認められる。また低分子量化に伴いガ ス転移温度が低下し、PESの本来の特徴であ 耐熱性が低下する場合がある。また、PES(A) 還元粘度が高い(数平均分子量が高い)と、好 ましい範囲の分子量を有するヒドロキシフェ ニル末端基を有するPES(E)を得るためには、二 価フェノール化合物(B)や塩基性化合物(D)およ び/または水(C)の添加量が増えるため、PES(A) 溶解性が低下したり、酸性を示す未反応の 価フェノール化合物(B)や、塩基性化合物(D) ポリマー中に残存したり、ポリマーが着色 、洗浄・回収・分離が困難となる傾向があ ため、原料のPES(A)の還元粘度は0.4を越え0.6 下のものが最も好ましい。

 なお、ここで言う還元粘度とは、DMF中、2 5℃、1g/dlで測定した還元粘度である。

 本発明のヒドロキシフェニル末端基を有 るPES(E)の粒子化方法を採用することにより 数平均粒子径は、0.1~50μmのPES(E)粒子を得る とができる。数平均粒子径のより好ましい 囲は、0.1~30μmである。数平均粒子径が上記 囲より小さいと、取扱い性が低下し、回収 が困難になるため、収率が低下する傾向で る。数平均粒子径が上記範囲より大きいと 二価フェノール(B)や塩基性化合物(D)を粒子 に多く残存する傾向であるため、洗浄効率 悪化、着色等PESの品質が低下するため好ま くない。なお、PES粒子の数平均粒子径は、 査型電子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を 測、直径を測定し、以下の式(1)より算出す 。なお、粒子が真円でない場合は、長径を 定するものとする。

 さらに本発明のPES(E)粒子の粒子径分布は 1.0~1.5の範囲であるとより好ましい。均一な 粒子径は、ポリマーアロイ用添加剤、触媒担 持体、電子写真用のトナー、液晶スペーサー などに適用する場合、予期した以上の性能を 発現することがあるため好ましい。例えば、 ポリマーアロイ用添加剤として用いた場合、 混練時間の短縮等、生産性の大幅な向上があ る。 なお、粒子径分布は、以下の式(3)に従 、数平均粒子径に対する体積平均粒子の比 より算出する。体積平均粒子径は、走査型 子顕微鏡写真にて、任意粒子100個を観測、 径を測定し、以下の式(2)より算出する。な 、粒子が真円でない場合は、長径を測定す ものとする。

 ここで、
Ri:粒子個々の粒子径、
n:測定数100、
Dn:数平均粒子径、
Dv:体積平均粒子径、
PDI:粒子径分布とする。

 またヒドロキシフェニル末端基を有するP ES(E)中に残存するアルカリ金属量は、熱可塑 樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ化の際の熱 定性、滞留安定性、着色への影響から、少 いほど好ましい。熱可塑性樹脂や熱硬化性 脂とのアロイ用として使用目的、および本 明の好ましい態様によって得られる残存ア カリ金属量として、1000ppm以下が好ましく、 より好ましくは500ppm、さらに好ましくは100ppm 以下である。

 また好ましい態様によって得られるヒド キシフェニル末端基を有するPES(E)は、各種 可塑性樹脂や熱硬化性樹脂とのアロイ用ポ マーとして、熱安定性、滞留安定性、非着 性などに優れるだけでなく、本発明のヒド キシフェニル末端基を有するPES(E)をアロイ した熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂からなる 成物は、PES(E)がポリマーマトリックス中に 分散、さらにはナノサイズにまで分散し、 らに使用するヒドロキシフェニル末端基を するPES(E)の末端基量、その分子量、配合量 よっては完全相溶した構造を呈し、機械特 、耐熱性、および電気的特性が極めて優れ 熱可塑性樹脂アロイ、熱硬化性樹脂アロイ 提供することが可能となる。

 特に本発明の製造方法によれば、これら アロイ用に好適な、反応性のヒドロキシフ ニル末端基を有するPES(E)を、極めて簡易的 方法で、効率よく、かつ所望のヒドロキシ ェニル末端基量、所望の分子量のポリマー 定量的に製造することが可能となる。

 以下に実施例を挙げて本発明を更に具体 に説明する。これら例は例示的なものであ て限定的なものではない。

 (1)還元粘度(η sp /c)
 還元粘度は、オストワルド毛細管粘度計を い、DMF中、25℃、1g/dlの条件で測定した。

 なお還元粘度(η sp /c)は、下記し記に基づき計算し、5回の測定 を平均化した値を使用した。
ηsp/c=(t-t 0 )/t 0 /c
t;重合体溶液の粘度計における標線間の通過 間(秒)
t 0 ;純溶媒の粘度計の標線間の通過時間(秒)
c;重合体溶液の濃度(g/dl)

 (2)アルカリ金属含有量の定量
 PES中のアルカリ金属含有量の定量は下記の 法により行った。試料を石英るつぼに秤量 、電気炉を用いて灰化し、灰化物を濃硝酸 溶解した後、希硝酸で定容とした。得られ 定容液をICP重量分析法(装置;Agilent製4500)及 ICP発光分光分析法(装置;PerkinElmer製Optima4300DV) に処した。

 (3)PESの加熱時重量減少率の測定
 PESの加熱時重量減少率は熱重量分析機を用 、下記条件で行った。なお、試料は2mm以下 細粒物を用いた。
装置:パーキンエルマー社製 TGA7
測定雰囲気:窒素気流下 100℃~600℃、昇温速 10℃/分。
試料仕込み重量:約10mg
上記条件により測定し、10%重量減量を示した 温度を「10%重量減量温度」とし、熱安定性を 評価した。

 (4)PESの数平均分子量測定
 ポリマーの数平均分子量は、ゲルパーミエ ションクロマトグラフィー(GPC)により標準 リスチレン換算の数平均分子量を求めた。GP C測定は、検出器に株式会社島津製作所製示 屈折計RID-10Aを用い、ポンプにLC-10ADvpを用い カラムは昭和電工株式会社製GPC用カラム、S hodex KD-806Mを2本接続して行った。測定条件は 、流速0.5mL/minとし、溶離液にジメチルホルム アミド(DMF)を用い、試料濃度1mg/mLの溶液を0.1m L注入した。

 (5)界面活性剤の数平均分子量の測定
 界面活性剤の数平均分子量は、ゲルパーミ ーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、 準ポリエチレングリコール換算の数平均分 量を求めた。GPC測定は、検出器に株式会社 津製作所製示差屈折計RID-10Aを用い、ポンプ LC-10ADvpを用い、カラムは昭和電工株式会社 GPC用カラム、Shodex GF-7MHQを2本接続して行っ た。測定条件は、流速1.0mL/minとし、溶離液に 水(イオン交換水)を用い、試料濃度1mg/mLの溶 を0.1mL注入した。

 (6)PES末端基組成
 400MHz  1 H-NMR(核磁気共鳴)装置(日本電子株式会社製 AL -400)を用い、試料濃度1mg/mLの重水素化DMSO溶液 中、積算回数100回で測定した。

 7.7ppmにクロル置換された芳香族炭素に隣接 る2つのプロトン(H Cl )と、6.9ppmにヒドロキシル基で置換された芳 族炭素に隣接する2つのプロトン(H OH )が、観察される。これらのピーク面積比を い、末端基組成を下記関係式より算出した
[ヒドロキシフェニル末端基組成(モル%)]=
[H OH のピーク面積]/([H OH のピーク面積]+[H Cl のピーク面積])×100
[クロロフェニル末端基組成(モル%)]=
[H Cl のピーク面積]/([H OH のピーク面積]+[H Cl のピーク面積])×100

 (7)熱可塑性樹脂とのアロイ化
 東洋精機製小型ブラベンダーを用い、所定 度で15分間配合して溶融混合し、得られた 成物はペレタイズし、乾燥した。

 (8)熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂アロイのモ フォロジー観察
 透過型電子顕微鏡(HITACHI、ELECTRON MICROSCOPE H -700)を用いて、得られた樹脂組成物の断面に いてモルフォロジー観察を行い、写真上に 影された、分散した個々の球状分散相の最 長い粒子系を30点測定し、それらの値を平 化した値を平均粒径とした。 

 (9)熱特性測定
 セイコー電子工業(株)製ロボットDSCを用い サンプル量5~8mg、窒素雰囲気下で、30℃~280℃ まで20℃/分で昇温、5分滞留後、30℃まで20℃/ 分で降温、5分滞留し、300℃まで20℃/分で昇 して、2回目の昇温時に得られたガラス転移 度(Tg)を測定した。

 (10)数平均粒子径、体積平均粒子径、粒子径 分布の算出法
 走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製走査 型電子顕微鏡JSM-6301NF)にて、PES粒子を観察、 均粒子径を測定した。なお、粒子が真円で い場合は、長径をその粒子径として測定し 。

 数平均粒子径(Dn)、体積平均粒子径(Dv)は 任意粒子100個の平均より数式(1)および(2)に い、算出した。

 粒子径分布(PDI)は、数式(3)に従い、算出 た。

 なお、Ri:粒子個々の粒子径、n:測定数100 Dn:数平均粒子径、Dv:体積平均粒子径、PDI:粒 径分布とする。

 <PES(A)の調製>
 [参考例1]PES(A-1)の調製
 特許文献17(特開平5-86186)に記載の本文、実 例を参考に、攪拌機、温度計、冷却器、留 物分液器および窒素導入管を備えた1Lの四口 フラスコに、4,4’-ジヒドロキシジフェニル ルホン(以下DHDPSと略す)(50.06g、0.20モル)、ト エン100ml、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン( 250.8g)、40%水酸化カリウム水溶液(56.0g、0.39モ )を秤量し、攪拌しながら窒素ガスを通じ、 反応系をすべて窒素置換した。窒素ガスを通 じながら130℃まで加熱した。反応系の温度が 上昇するとともにトルエンの環流が開始され 、反応系内の水をトルエンとの共沸で除去し 、トルエンを反応系に戻しながら共沸脱水を 130℃で4時間行った。この後、4,4’-ジクロロ フェニルスルホン(以下DCDPSと略す)(57.40g、0. 20モル)をトルエン40gとともに反応系に加え、 反応系を150℃に加熱した。トルエンを留出さ せながら4時間反応させ、高粘度の茶褐色の 液を得た。反応液の温度を室温まで冷却し 反応溶液をメタノール1kgに投下し、ポリマ 粉を析出させた。濾過によりポリマー粉を 収し、これに水1kgを加え、さらに1Nの塩酸を 加え、スラリー溶液をpH3~4になるまで加え、 性にした。濾過によりポリマー粉を回収し 後、ポリマー粉を水1kgで2回洗浄した。さら にメタノール1kgで洗浄し、150℃で12時間真空 燥した。得られたポリマー粉は白色粉末状 収量は88.3g(収率95.0%:収率=(88.3/464.53(PES(A)の 子量)/0.2×100より算出)、ガラス転移温度(Tg)=2 34℃、10%重量減量温度は510℃であった。還元 度は0.58であった。400MHz  1 H-NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒ ドロキシフェニル末端基=50/50(モル%)であった 。一連の結果を表1に示した。

 [参考例2]PES(A-2)の調製
 特許文献16(特開平5-163352)記載の方法により PESを調製した。攪拌機、窒素導入管、温度 、冷却管を取り付けた1Lの四口フラスコに ジフェニルスルホン(611.6g)、DCDPS(57.43g、0.20 ル)、DHDPS(47.55g、0.19モル)、無水炭酸カリウ (30.4g、0.2200モル)を秤量し、窒素雰囲気下、1 30℃まで徐々に加熱した。ジフェニルスルホ が溶解した後、反応溶液を攪拌しながら反 温度を300℃にまで上昇させ、重合を開始し 。反応時間2時間で反応を終了し、反応溶液 を1kgのアセトン/メタノール1:1混合溶媒に投 し、析出固体を粉砕、1kgの水で洗浄を2回繰 返し、130℃で12時間真空乾燥した。溶液粘 は0.35(g/dl)であった。400MHz  1 H-NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒ ドロキシフェニル末端基=52/48(モル%)であった 。結果を表1に示した。

 [参考例3]p-tert-ブチルフェニル末端基含有PES の製造(A-3)
 参考文献16(特開平5-163352)の方法により、末 封鎖したPESを調製した。攪拌機、窒素導入 、温度計、冷却管を取り付けた1Lの四口フ スコに、ジフェニルスルホン(611.6g)、DCDPS(57. 44g、0.20モル)、DHDPS(48.04g、0.19モル)、無水炭 カリウム(30.40g、0.22モル)、末端封鎖剤とし p-tert―ブチルフェノール(2.44g、0.016モル)を 量し、窒素雰囲気下、130℃まで徐々に加熱 た。ジフェニルスルホンが溶解した後、反 溶液を攪拌しながら反応温度を300℃にまで 昇させ、重合を開始した。反応時間2時間で 応を終了し、反応溶液を1kgのアセトン/メタ ノール1:1混合溶媒に投下し、析出固体を粉砕 、1kgの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した 結果を表1に示した。

 NMRではフェニルクロロ末端、ヒドロキシ ェニル末端基、新たなピークとして1.2ppm付 にt-ブチル基が確認され、このプロトン面 比より、クロロフェニル末端基/ヒドロキシ ェニル末端基/p-tert-ブチルフェニル末端基=2 0/10/70(モル%)であった。

 [参考例4]クロロフェニル末端基を有するPES 製造方法(A-4)
 特許文献16(特開平5-163352)の方法により、末 封鎖したPESを調製した。攪拌機、窒素導入 、温度計、冷却管を取り付けた1Lの四口フ スコに、ジフェニルスルホン(611.6g)、DCDPS(57. 44g、0.20モル)、DHDPS(48.04g、0.19モル)、無水炭 カリウム(30.4g、0.22モル)を秤量し、窒素雰囲 気下、130℃まで徐々に加熱した。ジフェニル スルホンが溶解した後、反応溶液を攪拌しな がら反応温度を300℃にまで上昇させ、重合を 開始した。反応時間2時間後、クロロメタン0. 096L(0.04モル)を吹き込み、末端封鎖した後、 応溶液を1kgのアセトン/メタノール1:1混合溶 に投下し、析出固体を粉砕、1kgの水で2回洗 浄し、130℃で真空乾燥した。溶液粘度は0.35 あった。結果を表1に示した。

 NMRではヒドロキシフェニル末端基は確認 れないことから、全末端がクロロフェニル 端基に変換したと推測される。

 [参考例5]ビスフェノールA型PESの製造(A-5)
 参考例1のDHDPS(50.06g、0.20モル)の代わりに2,2- ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(以下ビ フェノール-A(bisA)と略す)(45.66g、0.20モル)を 用した以外は参考例1と同様に行った。

 得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は8 5.0g(収率96.0%:収率=(85.0/442.55(PESの分子量)/0.2×1 00)。参考例1~4とは主鎖骨格が異なるため、ガ ラス転移温度=191℃、10%重量減量温度は488℃ あった。還元粘度は0.56(g/dl)であった。400MHz 1 H-NMRにより測定したクロロフェニル末端基/ヒ ドロキシフェニル末端基=50/50(モル%)であった 。

 [参考例6]
 住友化学(株)製“スミカエクセル 3600P”
 還元粘度は0.36、ガラス転移温度224℃、10%重 量原料温度510℃、400MHz  1 H-NMRより、クロロフェニル末端基のみが観察 れた。

 [参考例7]
 住友化学(株)製“スミカエクセル4800P”
 還元粘度 0.48、ガラス転移温度230℃、10%重 減量温度510℃、400MHz  1 H-NMRより、クロロフェニル末端基のみが観察 れた。

 <二価フェノールを用いたヒドロキシフェ ニル末端基を有するPES(E)の製造>
 [実施例1]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取 付けた300mLの四口フラスコに、参考例1で合 したPES(A-1)(5g、10.7ミリモル(5/464.53×1000で計 ))に対し、DHDPS(1.25g、4.99ミリモル)、N-メチ -2-ピロリドン(NMP) 200ml、無水炭酸カリウム(0 .7g、5.06ミリモル)を秤量し、N-メチル-2-ピロ ドン(NMP)反応溶液を攪拌しながら反応温度を 150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で反応 終了し、反応溶液を0.1%濃度の酸メタノール5 00mlに投下し、析出固体を粉砕、500mlの水で2 洗浄し、130℃で真空乾燥した。得られたポ マー粉は白色粉末状で収量は7.2g、収率96%(収 率は回収したPES重量/(仕込みPES(A-1)重量+仕込 DHDPS)×100により算出)、ガラス転移温度=185℃ 、10%重量減量温度は504℃、還元粘度(ηsp/c)は0 .25であった。 1 H-NMRではクロロフェニル末端基は確認されず ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%の PESが得られた。アルカリ金属含量は、80ppmで った。結果を表3にまとめて示す。

 [実施例2]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、ディーンス ーク共沸蒸留装置を取り付けた300mLの四口 ラスコに、参考例1で合成したPES(A-1)(5g、10.7 リモル(5/464.53×1000で計算))に対し、DHDPS(1.25g 、4.99ミリモル)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP) 2 00ml、水共沸溶媒としてトルエン20ml、無水炭 カリウム(0.7g、5.06ミリモル)を秤量し、N-メ ル-2-ピロリドン(NMP)反応溶液を攪拌しなが 反応温度を150℃にまで上昇させ、水をトル ンとの共沸として取り除きながら、反応時 2時間で反応を終了し、反応溶液を0.1%濃度の 酸メタノール500mlに投下し、析出固体を粉砕 500mlの水で2回洗浄し、130℃で真空乾燥した 得られたポリマー粉は白色粉末状で収量は7 .5g、収率98.7%(収率は回収したPES重量/(仕込みP ES(A-1)重量+仕込みDHDPS)×100により算出)、ガラ 転移温度=185℃、10%重量減量温度は505℃、還 元粘度(ηsp/c)は0.28であった。 1 H-NMRではクロロフェニル末端基は確認されず ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%の PESが得られた。アルカリ金属含量は、100ppmで あった。結果を表3にまとめて示す。

 [実施例3]
 溶媒としてNMPの代わりにDMSOを使用した以外 は実施例1と同様の方法で実施した。結果を 3にまとめて示す。

 [実施例4~7]
 表2に示した仕込み組成により、DHDPSの添加 、無水炭酸カリウム添加量を変更した以外 実施例1の方法で実施した。一連の結果を表 3に示す。

 [実施例8、9]
 塩基性化合物として、水酸化ナトリウム、 酸化カルシウムを使用した以外は、実施例1 と同様に行った。結果を表3に示す。

 [実施例10、11]
 二価フェノール化合物として、DHDPSの代わ にビスフェノール-A、ハイドロキノン(HQ)を 用した以外は、実施例1と同様に行った。結 を表3に示す。

 [比較例1]
 DHDPSとDCDPSの仕込み量を変更し、DHDPS(55.96g、 0.22モル)をDCDPS(57.43g、0.20モル)と、DHDPSをDCDPS 対し、1.1倍モル過剰に使用した以外は、参 例1と同様に実施した。得られたポリマー粉 は白色粉末状で収量は68.8g(収率74.1%:収率=(68.8 /464.53(PESの分子量)/0.2×100)、ガラス転移温度=1 67℃、10%重量減量温度は405℃であった。還元 度は0.23dl/gであった。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=60/40(モル%)、再沈殿中にポ リマーの軟化挙動が認められ、アルカリ金属 残存量は、1100ppmであった。

 [比較例2]
 DHDPSとDCDPSの仕込み量を変更し、DHDPS(60.06g、 0.24モル)、DCDPS(57.40g、0.20モル)と、DHDPSをDCDPS 対し、1.2倍モル過剰に使用した以外は、参 例1と同様に実施した。結果を表3に示す。

 [比較例3]
 重合終了時に、末端封鎖剤としてp-tert―ブ ルフェノール(2.44g、0.016モル)の代わりに、D HDPS(4.00g、0.016モル)を添加した以外は参考例3 同様に実施した。結果を表3に示す。

 実施例1~実施例11より、PES(A-1)とDHDPS、ビ フェノール-A、HQなどの二価フェノール化合 (B)を無水炭酸カリウム、水酸化ナトリウム 水酸化カルシウムなどの塩基性化合物(D)の 在下、非プロトン性極性溶媒としてNMP中で 応することにより、二価フェノール化合物 添加量に応じ、ヒドロキシフェニル末端基 導入することができ、また回収率も高く、 らにはアルカリ金属含量の低いポリマーが られることがわかる。

 実施例1~7の結果から、DHDPSの添加量をPES 対し、0.04倍モル~1.1倍モル比の添加範囲にお いて、ヒドロキシフェニル末端基量を増加さ せることができることがわかった。また水共 沸溶媒を用いた実施例2では、反応時間2時間 度でも実施例1とほぼ同等の結果が得られる ことがわかる。すなわち水共沸溶媒を用い、 反応系の水分を留去することにより、本発明 の反応速度を高めることができることがわか る。

 また反応溶媒としてNMPの代わりにDMSOを用 いても、実施例1とほぼ同等の結果が得られ ことがわかる。

 実施例8、9の結果から、無水炭酸カリウ の代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化カ シウムを用いると、収率の低下や残存金属 の増加などの傾向は認められるものの、い れの場合においても高ヒドロキシフェニル 端基含有量のPESが得られており、その熱安 性や残存アルカリ金属含量は低く、熱安定 、ポリマー純度に優れるポリマーが得られ ことがわかる。

 実施例10、11の結果から、二価フェノール 化合物としてDHDPSの代わりに、ビスフェノー -AやHQを用いても、同様の結果が得られるこ とが確認された。

 一方、DCDPSとDHDPの仕込みモル比をずらし 、直接重縮合した比較例1、2では、仕込み ル比をずらしたことにより、ヒドロキシフ ニル末端基が増加するものの、その含有量 実施例1~11に比べ低く、さらにモル比をずら たことによるポリマー分子量低下は顕著と り、さらに回収工程でのロスが多く、ポリ ー収率の顕著な低下が認められた。さらに 安定性が低下し、ポリマー中不純物である ルカリ金属残存量が増加していることがわ る。また、重合終了時にDHDPSを添加し、末 封鎖を試みた比較例3では、参考例3と比較し ても、ヒドロキシフェニル末端基が増加して おらず、特に反応が進行していないことがわ かる。

 [実施例12-15]
 表4に示した条件により反応を行った。攪拌 機、窒素導入管、温度計、冷却管を取り付け た1Lの四口フラスコに、参考例2~5で合成したP ES(A-2~A-5)(40g)、PES1モルに対し0.5倍モルのDHDPS あるいはビスフェノールA、NMP 500ml、DHDPSと 等モルの無水炭酸カリウムを使用し、合成 順は実施例1と同様に実施した。反応後の溶 液を0.1%濃度の酸メタノール5lに投下し、析出 固体を粉砕、5lの水で2回洗浄し、130℃で真空 乾燥した。一連の結果を表5に示す。

 [実施例16]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、ディーンス ーク共沸蒸留装置、冷却管を取り付けた1L 四口フラスコに、反応系で生成する水分を 去するために、水共沸溶媒としてトルエン 使用し、参考例2で合成したPES(A-2)(40g)、PES1 ルに対し0.5倍モルのDHDPS、NMP 500ml、トルエ 50ml、DHDPSと約等モルの無水炭酸カリウムを 用し、反応温度を150℃にまで上昇させ、水 トルエンとの共沸として取り除きながら、 応時間2時間で反応を終了した以外は、実施 12と同様に実施した。結果を表5に示す。

 [実施例17]
 反応溶媒としてNMPの代わりにDMSOを用いた以 外は、実施例12と同様に実施した。結果を表5 に示す。

 [実施例18、19]
 市販品のPES(住友化学(株)製、スミカエクセ 3600P、4800P)を用いた以外は、実施例12と同様 に実施した。一連の結果を表5に示す。

 実施例12-15の結果から、分子量、末端基 造の異なるPES(A-2~4)や、ビスフェノール-A単 からなるPES(A-5)を用い、二価フェノール化合 物としてDHDPS、ビスフェノールA、塩基性化合 物として無水炭酸カリウム、非プロトン性極 性溶媒としてNMPを用い、反応させることによ り、150℃というマイルドな条件下で、ヒドロ キシフェニル末端基を導入することができ、 また収率も高く、さらにはアルカリ金属含量 の低いポリマーが得られることがわかる。す なわち原料となるPESの分子量、末端基構造の 違いによらず、高ヒドロキシフェニル末端基 量のポリマーが、高収率で、かつ高純度で得 ることが可能となったことがわかる。

 水共沸溶媒を用いた実施例16では、反応 間2時間程度でも実施例12とほぼ同等の結果 得られ、反応系の水分を共沸により留去す ことにより、本発明の反応速度を高めるこ ができることがわかる。

 また反応溶媒としてNMPの代わりにDMSOを用 いた実施例17においても、実施例12とほぼ同 の結果が得られることがわかる。

 また実施例18、19の結果から、通常公知の 重縮合法により製造されている市販のPESを使 用しても、同様の結果が得られることがわか る。

 [実施例20~23]
 窒素導入管、温度計、ディーンスターク共 蒸留装置を取り付けた100mLの三口フラスコ 、表6に示した仕込み組成により、PES(A-1)、DH DPS、無水炭酸カリウムを秤量し、溶媒に、モ レキュラーシーブを入れて1晩以上乾燥処理 たジメチルスルホキシド(DMSO)50ml、水共沸溶 としてトルエン5mlを添加した。窒素フロー 、回転子を入れてDMSO反応溶液を攪拌しなが ら反応温度を150℃にまで上昇させ、水をトル エンとの共沸として取り除きながら、反応時 間5時間で反応を終了した。反応溶液を0.1%希 酸水500mlに滴下することで、粉体状の析出 を得、さらに500mlの水で2回洗浄し、80℃で6 間真空乾燥し、白色微粉末状のポリマー粉 得た。結果を表7にまとめて示す。

 [実施例24~31] 
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管を取 付けた1Lの四口フラスコに、表6に示した仕 み組成により、参考例2~5で合成したPES(A-2~A- 5)または市販品のPES(住友化学(株)製、スミカ クセル3600P、4800P)、DHDPS、無水炭酸カリウム を秤量し、溶媒に、モレキュラーシーブを入 れて1晩以上乾燥処理した、ジメチルスルホ シド(DMSO)400ml、水共沸溶媒としてトルエン20m lを添加した。窒素フロー下、DMSO反応溶液を 拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ 水をトルエンとの共沸として取り除きなが 、反応時間5時間で反応を終了した。反応溶 液を0.1%希塩酸水4lに滴下することで、粉体状 の析出物を得、さらに4lの水で2回洗浄し、80 で6時間真空乾燥し、白色微粉末状のポリマ ー粉を得た。結果を表7にまとめて示す。

 実施例20~23と実施例4~6の結果から、溶媒 DMSOを用い、水共沸溶媒としてトルエンを加 た方が、より反応が進行していることがわ る。また、ヒドロキシフェニル末端基や還 粘度は、実施例1~11と同じく、添加した二価 フェノールの量に依存していることがわかる 。                            

 実施例24~31の結果から、 実施例12~15と同 に、原料となるPESの分子量、末端基構造の いによらず、高ヒドロキシフェニル末端基 のポリマーが、高収率で、かつ高純度で得 ことが可能となったことがわかる。

  1 H-NMRの結果から、原料に用いた参考例1のPESで は確認された、7.7ppm付近にクロル置換された 芳香族炭素に隣接するプロトン(b)が反応後の 実施例21では観察されず、6.9ppm付近にヒドロ シル基で置換された芳香族炭素に隣接する ロトン(a)が増えていることが確認できる。( 図1参照)
 <水を用いたヒドロキシフェニル末端基を 有するPES(E)の製造>

 [実施例32]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジム ロート)を取り付けた100mLの四口フラスコに、 参考例1で合成したPES(A-1)(5g、10.7mmol(5/464.53×10 00で計算))に対し、水(1.35g、75.0mmol)、N-メチル -2-ピロリドン(NMP) 50ml、無水炭酸カリウム(0.7 g、5.06mmol)を秤量し、NMP反応溶液を攪拌しな ら反応温度を150℃にまで上昇させ、反応時 5時間で反応を終了し、反応溶液を0.1%濃度の 酸メタノール500mlに滴下し、析出粉体、500ml 水で2回、500mlのメタノールで1回洗浄し、130 で真空乾燥した。得られたポリマー粉は白 粉末状で、収量は4.9g、収率97%(収率は回収 たPES重量/仕込みPES(A-1)重量×100により算出) ガラス転移温度=207℃、10%重量減量温度は508 、還元粘度(ηsp/c)は0.36であった。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=20/80(モル%)のPESが得られた 。アルカリ金属含量は、80ppmであった。結果 表9に示す。

 [実施例33]
 溶媒をNMPの代わりにジメチルスルホキシド( DMSO)にした以外は、実施例32と同様に実施し 。得られたポリマー粉は白色粉末状で収量 4.9g、収率97%、ガラス転移温度=208℃、5%重量 量温度は509℃、還元粘度(ηsp/c)は0.37であっ 。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=14/86(モル%)のPESが得られた 。アルカリ金属含量は、80ppmであった。結果 表9に示す。

 [実施例34]
 表8に示した仕込み組成により、水の添加量 、無水炭酸カリウムの添加量を変更した以外 は、実施例33と同様の方法で実施した。結果 表9に示す。

 [実施例35~37]
 表8に示した仕込み組成により、水の添加量 、無水炭酸カリウム添加量、反応温度を変更 した以外は実施例32と同様の方法で実施した 一連の結果を表9に示す。

 [実施例38、39]
 アルカリ金属塩として、水酸化ナトリウム 水酸化リチウムを使用した以外は、実施例3 2と同様の方法で実施した。一連の結果を表9 示す。

 [比較例4]
 アルカリ金属を添加しない以外は、実施例3 2と同様の方法で実施した。結果を表9に示す

 [比較例5]
 水を添加しない以外は、実施例32と同様の 法で実施した。結果を表9に示す。

 実施例32~39より、PES(A-1)と水(C)、塩基性化 合物(D)を、非プロトン性極性溶媒中で反応す ることにより、水の添加量に応じ、ヒドロキ シフェニル末端基を導入することができ、ま た回収率も高く、さらにはアルカリ金属含量 の低いポリマーが得られることがわかる。

 実施例32~35の結果から、水の添加量をPES 対し、1.4倍モル~14.0倍モル比の添加範囲にお いて、ヒドロキシフェニル末端基量を増加さ せることができることがわかった。また反応 溶媒としてNMPの代わりにDMSOを用いても、ほ 同等の結果が得られることがわかる。

 実施例35~37の結果から、反応温度200℃で 収率が低下することがわかったが、反応温 が高くなると反応性が向上する傾向が確認 き、150℃の場合よりも水や塩基性化合物の 加量が少量でも、高ヒドロキシフェニル末 基含有量のPESが得られることがわかる。

 実施例38、39の結果から、無水炭酸カリウ ムの代わりに、水酸化ナトリウム、水酸化リ チウムを用いると、反応性の低下や残存金属 量の増加などの傾向は認められるものの、い ずれの場合においてもヒドロキシフェニル末 端基が60%以上のPESが得られており、残存アル カリ金属含量は低く、熱安定性、ポリマー純 度に優れるポリマーが得られたことがわかる 。

 一方、比較例4、5の結果から、水や塩基 化合物を添加しなかった場合は、反応が全 進行していないことがわかる。

 [実施例40~44]
 表10に示した条件により反応を行った。攪 機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジムロー )を取り付けた1Lの四口フラスコに、参考例1 ~5で合成したPES(A-1~A-5)(50g)、水(13.5g)(PES1モル 対し7.0倍モル)、DMSO 500ml、無水炭酸カリウ (7.0g)(水1モルに対し0.07倍モル)を使用し、合 手順は実施例32と同様の方法で実施した。 応後の溶液を0.1%濃度の酸メタノール5lに投 し、析出固体を粉砕、5lの水で2回洗浄し、13 0℃で真空乾燥した。一連の結果を表11に示す 。

 [実施例45]
 市販品のPES(住友化学(株)製、スミカエクセ 3600P)を用い、反応溶媒としてDMSOの代わりに NMPを用いた以外は、実施例40~44と同様の方法 実施した。結果を表11に示す。

 [実施例46]
 市販品のPES(住友化学(株)製、スミカエクセ 4800P)を用い反応温度を180℃とした以外は、 施例45と同様の方法で実施した。結果を表11 に示す。

 実施例40-44の結果から、分子量、末端基 造の異なるPES(A-1~4)や、ビスフェノール-A単 からなるPES(A-5)を用い、水、塩基性化合物を 、非プロトン性極性溶媒中で反応させること により、150~180℃というマイルドな条件下で ヒドロキシフェニル末端基を導入すること でき、また収率も高く、さらにはアルカリ 属含量の低いポリマーが得られることがわ る。すなわち原料となるPESの分子量、末端 構造の違いによらず、高ヒドロキシフェニ 末端基量のポリマーが、高収率で、かつ高 度で得ることが可能となったことがわかる

 また実施例45、46の結果から、通常公知の 重縮合法により製造されている市販のPESを使 用しても、同様の結果が得られることがわか る。

 [実施例47~54]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジム ロート)を取り付けた1Lの四口フラスコに、表 12に示した仕込み組成により、PES、水、無水 酸カリウムを秤量し、溶媒に、モレキュラ シーブを入れて1晩以上乾燥処理した、ジメ チルスルホキシド(DMSO)400mlを添加した。窒素 ロー下、DMSO反応溶液を攪拌しながら反応温 度を150℃にまで上昇させ、反応時間5時間で 応を終了し、反応溶液を0.1%希塩酸水4lに滴 することで、粉体状の析出物を得、さらに4l の水で2回洗浄し、80℃で6時間真空乾燥し、 色微粉末状のポリマー粉を得た。結果を表13 にまとめて示す。

 実施例47~54と実施例35~37の結果から、原料 となるPESの分子量、末端基構造の違いによら ず、高ヒドロキシフェニル末端基量のポリマ ーが、高収率で、かつ高純度で得ることが可 能となったことがわかる。

  1 H-NMRの結果から、原料に用いた参考例1のPESで は確認された、7.7ppm付近にクロル置換された 芳香族炭素に隣接するプロトン(b)が、反応後 の実施例48では僅かに観察される程度になっ おり、6.9ppm付近にヒドロキシル基で置換さ た芳香族炭素に隣接するプロトン(a)が増え いることが確認できる。(図2参照)
 実施例32~39と、実施例47~54の結果が若干異な るのは、実施例47~54では用いた溶媒に、モレ ュラーシーブで1晩以上脱水処理したDMSOを いた影響と思われる。                                  

 <ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) 粒子の製造>
 [実施例55]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジム ロート)を取り付けた100mLの四口フラスコに、 PES(住友化学(株)製 スミカエクセル4800P)5.00g 対し、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホ (DHDPS)1.25g、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)50ml、 水炭酸カリウム0.70gを秤量し、NMP反応溶液を 攪拌しながら反応温度を150℃にまで上昇させ 、反応時間5時間で反応を終了した。室温ま 冷却した後に、ポリビニルアルコール(PVA)( 本合成化学工業株式会社製,ゴーセノール,GL- 05,数平均分子量8000)2.00gを加え、60℃の温度下 、2時間撹拌した。混合溶液は懸濁液であっ 。室温まで冷却し、水50gを流速1g/分の速度 添加した。得られたスラリー溶液を濾別し 濾物を水100gで3回洗浄した。その後、温度80 において真空乾燥させ、PES粒子4.10gを得た 1 H-NMRではクロロフェニル末端基は確認されず ヒドロキシフェニル末端基組成が100モル%で あった。数平均粒子径は27μm、体積平均粒子 は44μm、粒子径分布は1.62であった。アルカ 金属含量は80ppmであった。結果を表15に示す 。

 [実施例56]
 4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンの変 わりに水1.35gを用いた以外は、実施例55と同 の方法で実施した。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=20/80(モル%)であった。数平 均粒子径は24μm、体積平均粒子径は42μm、粒 径分布は1.75であった。アルカリ金属含量は8 0ppmであった。結果を表15に示す。

 [実施例57]
 4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを0.1 0g、無水炭酸カリウムを0.06g用いた以外は、 施例55と同様の方法で実施した。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=38/62(モル%)であった。数平 均粒子径は26μm、体積平均粒子径は45μm、粒 径分布は1.73であった。アルカリ金属含量は3 0ppmであった。結果を表15に示す。

 [実施例58]
 溶媒をN-メチル-2-ピロリドン(NMP)の代わりに ジメチルスルホキシド(DMSO)、ポリビニルアル コール(PVA)を5.00gに変更した以外は、実施例55 と同様に実施した。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=0/100(モル%)であった。数平 均粒子径は17μm、体積平均粒子径は20mm、粒子 径分布は1.18であった。アルカリ金属含量は90 ppmであった。結果を表15に示す。得られた粒 の走査型電子顕微鏡写真を図3に示す。

 [実施例59]
 実施例58で得られたPES粒子5.00g、35%塩酸0.54g メタノール100g中に混合し、1時間撹拌した その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES 粒子4.10gを得た。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=0/100(モル%)であった。数平 均粒子径は17μm、体積平均粒子径は20μm、粒 径分布は1.18であった。アルカリ金属含量は2 0ppmであった。結果を表15に示す。

 [比較例6]
 無水炭酸カリウムを添加しない以外は、実 例55と同様の方法で実施した。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平 均粒子径は29μm、体積平均粒子径は45μm、粒 径分布は1.55であった。アルカリ金属含量は1 6ppmであった。結果を表15に示す。

 [比較例7]
 4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホンを添 加しない以外は、実施例55と同様の方法で実 した。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平 均粒子径は29μm、体積平均粒子径は46μm、粒 径分布は1.59であった。アルカリ金属含量は4 00ppmであった。結果を表15に示す。

 [比較例8]
 ポリビニルアルコール(PVA)を添加しない以 は、実施例1と同様の方法で実施した。得ら たPESは粒子状ではなく1mm以上の凝集体であ た。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=0/100(モル%)であった。アル カリ金属含量は500ppmであった。結果を表15に す。

 [比較例9]
 攪拌機、窒素導入管、温度計、冷却管(ジム ロート)を取り付けた100mLの四口フラスコに、 PES(住友化学(株)製 スミカエクセル4800P)5.00g ポリビニルアルコール(PVA)(日本合成化学工 株式会社製,ゴーセノールGL-05,数平均分子量8 000)2.00g、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)50mlを秤量 、60℃の温度下、2時間撹拌した。混合溶液 懸濁液であった。室温まで冷却し、水50gを 速1g/分の速度で添加した。得られたスラリ 溶液を濾別し、濾物を水100gで3回洗浄した その後、温度80℃において真空乾燥させ、PES 粒子4.00gを得た。400MHz  1 H-NMRにより、クロロフェニル末端基/ヒドロキ シフェニル末端基=100/0(モル%)であった。数平 均粒子径は31μm、体積平均粒子径は48μm、粒 径分布は1.55であった。アルカリ金属含量は1 4ppmであった。結果を表15に示す。

 <ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) と熱可塑性樹脂のアロイ化>
 [実施例60~68、比較例10~12]
 アロイ用熱可塑性樹脂として、下記3種類の ポリマーを使用した。
・Tm=255℃、Tmc=178℃、固有粘度1.15(フェノール /テトラクロロエタン=5/5(V/V)、25℃)のポリエ レンテレフタレート樹脂(東レ製T704T)(以下PET と略す)
・Tm=226℃、固有粘度0.85のポリブチレンテレ タレート樹脂(東レ製1100S)(以下PBTと略す)
・Tm=225℃、98%硫酸1g/dlでの相対粘度2.80のナイ ロン6樹脂(東レ製CM1010)(以下N6と略す)
 表16に示した条件により、実施例1、4、5、24 、40、比較例1~3で合成した、各種PES5gと、前 熱可塑性樹脂45gを東洋精機製小型ブラベン ーを用い、所定温度で15分間配合して溶融混 合し、得られた組成物はペレタイズした。

 熱可塑性樹脂マトリックス中のPESのモル ォロジー観察は、透過型電子顕微鏡(HITACHI ELECTRON MICROSCOPE H-700)を用いて、得られた樹 組成物ペレットの断面についてモルフォロ ー観察を行い、写真上に撮影された、分散 た個々の球状分散相の最も長い粒子径を測 し、数平均した値を平均粒径とした。

 一連の結果を表16に示したが、実施例60~68 と比較例10~12のアロイ化検討結果から、本発 の方法により得られるヒドロキシフェニル 端基を有するPES(E)は、PET、PBTなどのポリエ テルやナイロンなどの熱可塑性樹脂とのア イ化に好適であることがわかった。実施例6 2、65、68の分散性が向上しているのは、実施 24で実施した再沈殿回収による微粉化の効 により、さらに分散性が向上したと考えら る。

 <ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) と熱硬化性樹脂のアロイ化>
 [実施例69~75、比較例13、14]
 エポキシ樹脂としてテトラグリシジルジア ノジフェニルメタン(Epikote 604)(ジャパンエ キシレジン社製)と表17に示したPESを、実施 69、72、73はニーダー中にて130℃に加熱・混 させた。ついで得られた混合物を80℃まで 却し、硬化剤として4,4’-ジアミノジフェニ スルホン(以下DDSと略す)を表17に示す割合で 添加し、よく混合してエポキシ樹脂組成物を 得た。得られたエポキシ樹脂組成物を加熱炉 中、180℃で2時間反応、硬化させ、エポキシ 脂硬化物を得た。実施例70、71、74、75は試験 管中で130℃に加熱し、3時間以上かけて混合 せ均一にした。ついで得られた混合物を80℃ まで冷却し、硬化剤として4,4’-ジアミノジ ェニルスルホン(以下DDSと略す)を表17に示す 合で添加し、脱泡混練機(株式会社シンキー 製:あわとり練太郎ARV-310)を用いて2000rpmで3分 練した後、2000rpmで5分、0.6KPaで減圧・脱泡 ながら均一によく混合してエポキシ樹脂組 物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物を 熱炉中、180℃で2時間反応、硬化させ、エポ シ樹脂硬化物を得た。エポキシ樹脂中に微 散されているPESの平均粒径測定は、実施例6 0と同じ方法により測定した。結果を表17に示 した。

 実施例69~75で得られたヒドロキシフェニ 末端基を有するPESを用いたエポキシ樹脂硬 物は、ヒドロキシフェニル末端基の少ない 較例13や、ヒドロキシフェニル末端基を含ま ない比較例14のPESを用いた場合に比較して、 ポキシ樹脂中により微分散していることが かる。また、そのヒドロキシフェニル末端 が多く、分子量が低い程微分散しているこ がわかる。実施例69、72、73と比較して、実 例70、71、74、75の微分散性が大幅に向上し いるのは、実施例47~54で実施した再沈殿回収 による微粉化の効果、および硬化剤添加後の 脱泡混練条件により、分散性がさらに向上し たと考えられる。

 得られたエポキシ樹脂組成物の断面を透 型電子顕微鏡を用いて観察した結果を図4( 考例7のPES:ヒドロキシフェニル基0%を用いた 較例14)、図5(実施例31のPES:ヒドロキシフェ ル基46%を用いた実施例71)、図6(実施例30のPES: ヒドロキシフェニル基82%を用いた実施例70)、 図7(実施例52のPES:ヒドロキシフェニル基57%を いた実施例75)、図8(実施例47のPES:ヒドロキ フェニル基92%を用いた実施例74)に示した。

 図中、白色部分がエポキシ樹脂で、黒色部 がPESである。ヒドロキシフェニル末端基を さないPESを混練した比較例14では分散せず 相分離している様子が観察されるのに対し 実施例71では平均粒径100nmでPESが微分散して り、実施例70では10nm以下で微分散している とがわかる。さらに実施例75では30~40nmでPES 微分散しており、実施例71よりもヒドロキ フェニルが増加した分、分散性が向上した 考えられる。実施例74では、実施例70と同様 、10nm以下まで分散していることがわかる。
<ヒドロキシフェニル末端基を有するPES(E) 子と熱硬化性樹脂のアロイ>
 [実施例76]
 攪拌機付き試験管に、エポキシ樹脂として トラグリシジルジアミノジフェニルメタン( Epikote 604)(ジャパンエポキシレジン株式会社 )100gと実施例55で合成したPES粒子40gを加え、 140℃に加熱し撹拌した。撹拌時間1時間と3時 時のエポキシ樹脂組成物中のPES粒径を透過 電子顕微鏡にて測定した。結果を表18に示 。

 [実施例77]
 実施例55で合成したPES粒子の変わりに、実 例58で合成したPES粒子を用いた以外は、実施 例76と同様の方法で実施した。結果を表18に す。

 [比較例15]
 実施例55で合成したPES粒子の変わりに、比 例8で合成したPESを用いた以外は、実施例76 同様の方法で実施した。結果を表18に示す。

 [比較例16]
 実施例55で合成したPES粒子の変わりに、比 例9で合成したPES粒子を用いた以外は、実施 76と同様の方法で実施した。結果を表18に示 す。

 ヒドロキシフェニル末端基を有する実施 76、実施例77では、PES粒子がエポキシ中で0.1 μm以下に溶解することが分かる。さらに粒子 径分布の狭い実施例77では、0.1μm以下になる 度が速くなるため、混練時間の短縮等、生 性向上効果があることが分かる。

 一方、ヒドロキシフェニル末端基を有す が粒子状ではないPESを用いる比較例15、ク ロフェニル末端基を有するPES粒子を用いる 較例16では、エポキシへの溶解速度が非常に 遅いことが分かる。

 以上の結果から、PESのヒドロキシフェニ 末端基量が多いほど、アロイ時の分散性が 上し、混練時に均一に混練することでさら 分散性が向上することがわかる。また、粒 化することで、アロイ時にさらに均一に微 散する傾向が見られ、熱可塑性樹脂や熱硬 性樹脂のアロイ化剤として好適であること わかる。

 本発明のPESはそれ自体を成形することに り、電気・電子部品、自動車部品、航空機 品および医療用機器部品等に幅広く利用が 能であり、また熱可塑性樹脂や熱硬化性樹 に配合することにより熱可塑性樹脂や熱硬 性樹脂の改質剤としても利用される。