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Title:
CADAVERINE SALT, AQUEOUS CADAVERINE SALT SOLUTION, POLYAMIDE RESIN, MOLDED ARTICLE AND PROCESS FOR PRODUCING CADAVERINE SALT AND AQUEOUS CADAVERINE SALT SOLUTION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/084849
Kind Code:
A1
Abstract:
To improve problems of the content of trifunctional and higher organic compounds, fish-eyes of a film and its flowability in injection molding occurring in the existing techniques, the total content of trifunctional and higher organic compounds of cadaverine salts is regulated to 90 ppm or less. To improve the fish-eyes (F/E) of a polyamide resin film and its flowability in injection molding and the amount of high-molecule impurities contained in the polyamide resin, an aqueous cadaverine salt solution, from which high-molecule impurities having a molecular weight of 12,000 or more have been removed, is prepared. To easily and economically produce a cadaverine solution by which defects in the surface appearance such as fish-eyes can be prevented in the case of using it as a starting material of a polyamide resin film or the like, moreover, the amount of microbial cells employed in the reaction is regulated within a definite range.

Inventors:
MIYAOKU KOHEI (JP)
YAMAGISHI KENJI (JP)
HITOMI TATSUYA (JP)
YAMAMOTO MASANORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/050265
Publication Date:
July 17, 2008
Filing Date:
January 11, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUBISHI CHEM CORP (JP)
MIYAOKU KOHEI (JP)
YAMAGISHI KENJI (JP)
HITOMI TATSUYA (JP)
YAMAMOTO MASANORI (JP)
International Classes:
C07C211/09; C07C55/14; C07C209/84; C08G69/26; C12N15/09; C12P13/02
Domestic Patent References:
WO2006123778A12006-11-23
Foreign References:
JP2004203837A2004-07-22
JP2004222569A2004-08-12
JP2005006650A2005-01-13
Attorney, Agent or Firm:
SANADA, Tamotsu (10-31 Kichijoji-honcho 1-chome, Musashino-sh, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 3官能以上の有機物の含有量の合計が90ppm以下である
ことを特徴とする、カダベリン塩。
 前記3官能以上の有機物がアミノ酸である
ことを特徴とする、請求項1に記載のカダベリン塩。
 前記3官能以上の有機物がリジンであり、前記リジンの含有量が50ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のカダベリン塩。
 前記3官能以上の有機物がアルギニンであり、前記アルギニンの含有量が40ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のカダベリン塩。
 前記3官能以上の有機物として、リジンの含有量が50ppm以下、且つアルギニンの含有量が40ppm以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のカダベリン塩。
 カダベリンが、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは前記細胞の処理物を使用して、前記リジンから産出されたものである
ことを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のカダベリン塩。
 前記カダベリン塩が、カダベリン・ジカルボン酸塩である
ことを特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のカダベリン塩。
 カダベリン塩水溶液の晶析により得られる
ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載のカダベリン塩。
 分子量12,000以上の高分子不純物が除去されたものである
ことを特徴とする、カダベリン塩水溶液。
 分子量5,000以上の高分子不純物が除去されたものである
ことを特徴とする、請求項9に記載のカダベリン塩水溶液。
 カダベリン塩に対する3官能以上の有機物の含有量の合計が90ppm以下であり、かつ分子量12,000以上の高分子不純物が除去されたものである
ことを特徴とする、カダベリン塩水溶液。
 リジンに対して、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当前記細胞の処理物を使用して得られたカダベリン塩水溶液を、カダベリン塩の濃度が50重量%以上69重量%以下となるように濃縮した後、晶析率が1重量%以上、46重量%以下となるように晶析を行う
ことを特徴とする、カダベリン塩の製造方法。
 カダベリン塩がカダベリン・ジカルボン酸塩である
ことを特徴とする、請求項12に記載のカダベリン塩の製造方法。
 前記カダベリン塩水溶液の晶析に先立って分子量12,000以上の高分子不純物を除去する
ことを特徴とする、請求項11に記載のカダベリン塩水溶液の製造方法。
 前記高分子不純物の除去を膜処理によって行う
ことを特徴とする、請求項14に記載のカダベリン塩水溶液の製造方法。
 前記膜処理が、限外濾過膜(UF膜)処理である
ことを特徴とする、請求項15に記載のカダベリン塩水溶液の製造方法。
 カダベリン塩がカダベリン・ジカルボン酸塩である
ことを特徴とする、請求項14~16の何れか一項に記載のカダベリン塩水溶液の製造方法。
 請求項1~8の何れか一項に記載のカダベリン塩の重縮合反応により、または前記カダベリン塩と他の共重合成分との重縮合反応により得られる
ことを特徴とする、ポリアミド樹脂。
 請求項9~11の何れか一項に記載のカダベリン塩水溶液から得られたカダベリン塩、請求項12又は13に記載の製造方法により得られたカダベリン塩、及び請求項14~17の何れか一項に記載の製造方法により得られたカダベリン塩水溶液から得られたカダベリン塩からなる群より選ばれる1種以上のカダベリン塩の重縮合反応又は前記カダベリン塩と他の共重合成分との重縮合反応により得られる
ことを特徴とする、ポリアミド樹脂。
 請求項18又は19に記載のポリアミド樹脂を成形してなる
ことを特徴とする、成形品。
 前記成形品が、フィルムである
ことを特徴とする、請求項20に記載の成形品。
 前記成形品が、射出成形品である
ことを特徴とする、請求項20に記載の成形品。
 前記成形品が、繊維である
ことを特徴とする、請求項20に記載の成形品。
 前記成形品が、モノフィラメントである
ことを特徴とする、請求項20に記載の成形品。
 リジン及び/又はリジン塩にリジン脱炭酸酵素を作用させて得られたカダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液であって、
 前記溶液中におけるカダベリンに対する加水分解アミノ酸のモル比率が0.008以下である
ことを特徴とする、カダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液。
 前記溶液中におけるカダベリンに対する遊離リジン及び遊離アルギニンのモル比率が0.003以下である
ことを特徴とする、請求項25記載のカダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液。
 前記溶液中におけるカダベリンに対する遊離アミノ酸のモル比率が0.003以下である
ことを特徴とする、請求項26記載のカダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液。
 カダベリン塩を形成する酸が、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、カルボン酸、リン酸、及びスルホン酸からなる群より選択される一種以上の酸である
ことを特徴とする、請求項25~27の何れか一項に記載のカダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液。
 リジン及び/又はリジン塩にリジン脱炭酸酵素を作用させることにより、カダベリン及び/又はカダベリン塩を製造する方法であって、
 反応に使用するリジンの総重量に対する、反応に使用する菌体の乾燥菌体換算重量の比率を0.002以下とする
ことを特徴とする、カダベリン及び/又はカダベリン塩の製造方法。
Description:
カダベリン塩、カダベリン塩水 液、ポリアミド樹脂及び成形品、並びにカ ベリン塩及びカダベリン塩水溶液の製造方

 本発明の第1の要旨は、カダベリン塩等に 関し、より詳しくは、3官能以上の有機物の 有量が少ないカダベリン塩等に関する。ま 、本発明の第2の要旨は、カダベリン塩水溶 の製造方法等に関し、より詳しくは、高分 不純物が除去されるカダベリン塩水溶液の 造方法等に関する。さらに、本発明の第3の 要旨は、カダベリン及び/又はカダベリン塩 溶液、並びに、カダベリン及び/又はカダベ ン塩の製造方法に関する。なお、以下の記 では、カダベリン及び/又はカダベリン塩を 「カダベリン類」と総称する場合がある。

 従来、プラスチックの原料としては、主 ナフサ等の化石原料が用いられている。し し、プラスチックを廃棄する場合、再生利 する場合を除くと、焼却等の手法で廃棄す ことになるが、プラスチックを焼却すると 酸ガスの放出を招くことから、近年課題と りつつある。そこで、地球温暖化防止及び 環型社会の形成に向けて、プラスチックの 造原料をバイオマス由来の原料に置き換え ことが嘱望されている。このようなニーズ 、フィルム、自動車部品、電気・電子部品 機械部品等の射出成型品、繊維、モノフィ メント等、多岐にわたる。

 プラスチックの中でも、ポリアミド樹脂 、機械的強度、耐熱性、耐薬品性等に優れ おり、いわゆるエンジニアリングプラスチ クスの1つとして多くの分野で用いられてい る。中でもフィルムは、二軸延伸ポリプロピ レンフィルムや二軸延伸ポリエステルフィル ム等に比べ、優れた機械的特性、耐熱性、透 明性、ガスバリア性などの特徴を有しており 、食品、医薬品、雑貨などの包装用フィルム として広く利用されている。

 ポリアミド樹脂フィルムは強度やガスバ ア性を付与するため、二軸延伸等の延伸処 を施して使用される場合が多いが、この際 ィッシュアイと称される粒状欠陥があると それを起点に延伸破断を起こし生産性を損 うだけでなく、フィルムの外観を悪化させ 品価値を著しく損なうため、極力低減する とが求められている。

 また、ポリアミド樹脂はその優れた性能 生かし、繊維やモノフィラメントの分野で 広く用いられているが、これらの用途でも 述のフィルム同様、フィッシュアイは成型 の延伸破断や表面外観の悪化を招くため、 の低減が求められている。

 一方、ポリアミド樹脂からなる射出成形 には、自動車部品、電気・電子部品、機械 品等が挙げられるが、いずれも部品のコン クト化や軽量化を目的に薄肉化が望まれて る。この場合、ポリアミド樹脂本来の物性 維持するため分子量(数平均分子量)を下げ ことなく、高い流動性を有するポリアミド 脂が求められる。

 バイオマス由来の原料を使用して製造さ るポリアミド樹脂としては、カダベリン及 ジカルボン酸からなる塩(カダベリン・ジカ ルボン酸塩)を原料とし、これらを重合させ 得られるものが知られている。例えば、56ナ イロンは、カダベリン及びアジピン酸からな る塩(カダベリン・アジピン酸塩)を重合させ ことにより作製される。

 さらに、バイオマス由来の原料を使用し 製造されるポリアミド樹脂としては、カダ リンを原料とするものが知られている。例 ば、特許文献1、特許文献2にはその原料で るカダベリン・ジカルボン酸塩の製造方法 精製方法が提案されている。

 ポリアミド樹脂の原料となるカダベリン び/又はカダベリン塩(カダベリン類)を製造 る方法として、例えば、特許文献3~5には、 ジン及び/又はリジン塩(リジン類)の溶液を 料とし、これにリジン脱炭酸酵素(Lysine Deca rboxylase:LDC)を作用させることにより、カダベ ン類の溶液を得る方法が開示されている。 ジン脱炭酸酵素としては、微生物由来のも が用いられる。

特開2004-208646号公報

特開2005-006650号公報

特開2002-223770号公報

特開2004-223771号公報

特開2004-000114号公報

 本発明の第1の要旨は、上述したバイオマス 由来の原料から得られたポリアミド樹脂にお ける第1の課題を解決するためになされたも である。
 即ち、本発明の第1の要旨の目的は、3官能 上の有機物の含有量が低減されたカダベリ 塩を提供することにある。
 また、本発明の第1の要旨の目的は、斯かる バイオマス由来の原料から得られたカダベリ ン塩を用いてなるポリアミド樹脂を提供する ことにある。
 また、本発明の第1の要旨の目的は、斯かる ポリアミド樹脂からなる成形品を提供するこ とにある。

 なお、前記特許文献1及び2には、3官能以 の有機物含有量とフィルムのフィッシュア や射出成形時の流動性との関連性について 何ら言及されていない。

 本発明の第2の要旨は、上述したバイオマス 由来の原料から得られたポリアミド樹脂にお ける第2の課題を解決するためになされたも である。
 即ち、発明の第2の要旨の目的は、高分子不 純物が除去されたカダベリン塩水溶液の製造 方法を提供することにある。
 また、本発明の第2の要旨の目的は、高分子 不純物が減少したカダベリン塩水溶液を提供 することにある。
 本発明の第2の要旨の目的は、カダベリン塩 水溶液から得られるカダベリン塩を提供する ことにある。
 本発明の第2の要旨の目的は、バイオマス由 来の原料から得られたポリアミド樹脂を提供 することにある。
 本発明の第2の要旨の目的は、斯かるポリア ミド樹脂から得られる成形品を提供すること にある。

 なお、前記特許文献1及び2には、ポリア ド樹脂フィルムのフィッシュアイ(F/E)や射出 成形時の流動性と、ポリアミド樹脂に含まれ る高分子不純物との関連性については何ら言 及されていない。

 さらに、上述の特許文献3~5記載の技術に れば、得られたカダベリン類溶液をポリア ド樹脂フィルム等の原料として用いた場合 、フィッシュアイ等の表面外観の欠陥を生 る場合があった。

 カダベリン類の生産速度を上げるために 応時間を短く設定すれば、リジン類をカダ リン類に変換する反応が終わり切らず、原 のリジン類がカダベリン類溶液中に不純物 して残存してしまう。この場合、精製によ 不純物の除去が困難となり、結果としてポ アミド樹脂フィルムに外観上の欠陥が生じ しまうと考えられる。

 このため、リジン脱炭酸酵素の使用量を やし、リジン類を消費させるため反応速度 向上させることが検討されてきたが、上記 題を十分に解決するまでには至っていなか た。

 以上の背景から、ポリアミド樹脂フィル 等の原料として用いた場合に、フィッシュ イ等の表面外観の欠陥を防止することが可 なカダベリン類溶液を、容易且つ経済的に 造する技術が求められていた。

 本発明の第3の要旨は、上述の第3の課題 鑑みてなされたもので、本発明の第3の要旨 目的は、ポリアミド樹脂フィルム等の原料 して用いた場合に、フィッシュアイ等の表 外観の欠陥を防止することが可能なカダベ ン又はカダベリン塩の溶液を提供するとと に、このようなカダベリン又はカダベリン を容易且つ経済的に製造することが可能な 法を提供することである。

 上記の第1の課題を解決するために、本発 明者らは鋭意検討を行った結果、バイオマス 由来の原料から得られたカダベリン塩中の3 能以上の有機物の含有量、或いはアミノ酸 有量、リジン含有量、アルギニン含有量を 御することにより、著しくフィッシュアイ 少なく表面外観に優れたポリアミド樹脂フ ルムを得ることが可能であり、且つ、この リアミド樹脂は、著しく射出成形時の流動 が優れることを見出し、斯かる知見に基づ 本発明の第1の要旨を完成した。

 かくして本発明の第1の要旨によれば、3官 以上の有機物の含有量の合計が90ppm以下であ ることを特徴とするカダベリン塩が提供され る(請求項1)。
 ここで、本発明の第1の要旨が適用されるカ ダベリン塩において、3官能以上の有機物と ては、アミノ酸を用いることができる(請求 2)。
 また、3官能以上の有機物がリジンの場合、 その含有量が50ppm以下であることが好ましい( 請求項3)。
 また、3官能以上の有機物がアルギニンの場 合、その含有量が40ppm以下であることが好ま い(請求項4)。
 また、3官能以上の有機物として、リジンの 含有量が50ppm以下、且つアルギニンの含有量 40ppm以下であることが好ましい(請求項5)。

 ここで、本発明の第1の要旨が提供するカダ ベリン塩において、カダベリンが、リジン脱 炭酸酵素活性の向上した組み換え微生物又は リジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは細 胞の処理物を使用して、リジンから産出され たものであることが好ましい(請求項6)。
 特に、カダベリン塩がカダベリン・ジカル ン酸塩であることが好ましい(請求項7)。
 また、斯かるカダベリン塩は、カダベリン 水溶液の晶析により得られることが好まし (請求項8)。

 次に、本発明の第1の要旨によれば、請求 項1~8の何れか一項に記載のカダベリン塩の重 縮合反応により、または前記カダベリン塩と 他の共重合成分との重縮合反応により得られ ることを特徴とするポリアミド樹脂が提供さ れる(請求項18)。

 さらに、本発明の第1の要旨によれば、斯か るポリアミド樹脂を成形してなることを特徴 とする成形品が提供される(請求項20)。
 ここで、成形品としては、フィルム、射出 形品、繊維、モノフィラメントが好ましい( 請求項21~24)。

 そして、上記の第2の課題を解決するため に、本発明者らは鋭意検討を行った結果、バ イオマス由来の原料から得られたカダベリン 塩水溶液から高分子不純物を除去しポリアミ ド樹脂を製造すると、著しくフィッシュアイ が少なく表面外観に優れたポリアミド樹脂フ ィルムを得ることが可能であり、且つ、この ポリアミド樹脂は、著しく射出成形時の流動 性が優れることを見出し、斯かる知見に基づ き本発明の第2の要旨を完成した。

 かくして本発明の第2の要旨によれば、分子 量12,000以上の高分子不純物が除去されたもの であることを特徴とするカダベリン塩水溶液 が提供される(請求項9)。
 ここで、本発明の第2の要旨が適用されるカ ダベリン塩水溶液において、さらに分子量5,0 00以上の高分子不純物が除去されたものであ ことが好ましい(請求項10)。
 また、本発明の第2の要旨によれば、カダベ リン塩に対する3官能以上の有機物の含有量 合計が90ppm以下であり、かつ分子量12,000以上 の高分子不純物が除去されたものであること を特徴とする、カダベリン塩水溶液が提供さ れる(請求項11)。
 さらに、本発明の第2の要旨によれば、リジ ンに対して、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭 酸酵素活性の向上した組み換え微生物又はリ ジン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは当前 記細胞の処理物を使用して得られたカダベリ ン塩水溶液を、カダベリン塩の濃度が50重量% 以上69重量%以下となるように濃縮した後、晶 析率が1重量%以上、46重量%以下となるように 析を行うことを特徴とする、カダベリン塩 製造方法が提供される(請求項12)。
 この時、カダベリン塩がカダベリン・ジカ ボン酸塩であることが好ましい(請求項13)。
 この時、前記カダベリン塩水溶液の晶析に 立って分子量12,000以上の高分子不純物を除 することが好ましい(請求項14)。
 また、斯かる高分子不純物は、膜処理によ 除去を行うことが好ましい(請求項15)。
 また、斯かる膜処理としては、限外濾過膜( UF膜)処理が好ましい(請求項16)。
 また、カダベリン塩がカダベリン・ジカル ン酸塩であることが好ましい(請求項17)。

 さらに、本発明の第2の要旨によれば、請求 項9~11の何れか一項に記載のカダベリン塩水 液から得られたカダベリン塩、請求項12又は 13に記載の製造方法により得られたカダベリ 塩、及び請求項14~17の何れか一項に記載の 造方法により得られたカダベリン塩水溶液 ら得られたカダベリン塩からなる群より選 れる1種以上のカダベリン塩の重縮合反応又 これと他の共重合成分との重縮合反応によ 得られることを特徴とする、ポリアミド樹 が提供される(請求項19)。
 さらに、本発明の第2の要旨によれば、斯か るポリアミド樹脂を成形してなることを特徴 とする成形品が提供される(請求項20)。
 ここで、成形品としては、フィルム、射出 形品、繊維、モノフィラメントが好ましい( 請求項21~24)。

 さらに、本発明者らは、上記の第3の課題 を解決するべく鋭意検討した結果、カダベリ ン類溶液中に存在するタンパク質やペプチド が、ポリアミド樹脂フィルム等の表面外観の 欠陥を招く原因の一つとなっていることを見 出した。そして、これらのタンパク質やペプ チドの量を表わす指標として、カダベリン類 溶液中の加水分解アミノ酸量に着目し、この 加水分解アミノ酸量を所定範囲内に抑えたカ ダベリン類溶液を用いることにより、ポリア ミド樹脂フィルム等の表面外観の欠陥を低減 することが可能となることを見出した。

 更に、本発明者らは、カダベリン類溶液 に存在するこれらのタンパク質やペプチド 、リジン脱炭酸酵素の使用に伴う微生物(菌 体)に由来することを見出した。そして、反 時に使用する菌体の量を所定範囲内に抑え ことにより、上記規定のカダベリン類溶液 得ることが可能となることを見出し、本発 の第3の要旨を完成させた。

 即ち、本発明の第3の要旨は、リジン及び /又はリジン塩にリジン脱炭酸酵素を作用さ て得られたカダベリン及び/又はカダベリン の溶液であって、前記溶液中におけるカダ リンに対する加水分解アミノ酸のモル比率 0.008以下であることを特徴とする、カダベ ン及び/又はカダベリン塩の溶液に存する(請 求項25)。

 ここで、前記溶液中におけるカダベリン 対する遊離リジン及び遊離アルギニンのモ 比率が0.003以下であることが好ましい(請求 26)。

 また、前記溶液中におけるカダベリンに する遊離アミノ酸のモル比率が0.003以下で ることが好ましい(請求項27)。

 また、カダベリン塩を形成する酸が、塩 、硫酸、硝酸、炭酸、カルボン酸、リン酸 及びスルホン酸からなる群より選択される 種以上の酸であることが好ましい(請求項28) 。

 また、本発明の第3の別の要旨は、リジン 及び/又はリジン塩にリジン脱炭酸酵素を作 させることにより、カダベリン及び/又はカ ベリン塩を製造する方法であって、反応に 用するリジンの総重量に対する、反応に使 する菌体の乾燥菌体換算重量の比率を0.002 下とすることを特徴とする、カダベリン及 /又はカダベリン塩の製造方法に存する(請求 項29)。

 本発明の第1の要旨によれば、本発明のカ ダベリン塩を用いて、フィッシュアイが少な く表面外観に優れたポリアミド樹脂のフィル ムが得られる。

 そして、本発明の第2の要旨によれば、高 分子不純物が除去されたカダベリン塩水溶液 が得られる。

 本発明の第3の要旨によれば、カダベリン又 はカダベリン塩の溶液は、ポリアミド樹脂フ ィルム等の原料として用いた場合に、フィッ シュアイ等の表面外観の欠陥を防止すること ができる。
 また、本発明の第3の要旨に係るカダベリン 又はカダベリン塩の製造方法によれば、上述 の優れたカダベリン又はカダベリン塩の溶液 を、容易且つ経済的に得ることができる。

cadAのクローニングの手順を説明する図 である。即ち、リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA) を組み込んだプラスミドpCAD1の構築手順の概 を示す図である。 参考例における各サンプルの乾燥菌体 度と、上清の加水分解アミノ酸濃度及び遊 アミノ酸濃度との関係を示すグラフである

 以下、本発明について実施の形態を挙げ 詳細に説明するが、本発明は以下の説明に 定されるものではなく、その要旨を逸脱し い範囲において種々に変更して実施するこ ができる。

[A.第1の要旨]
 はじめに、本発明の第1の要旨について説明 する。

(カダベリン)
 本発明の第1の要旨におけるカダベリンは、 例えば、リジン溶液に、同溶液のpHが酵素的 炭酸反応に適したpHに維持されるように酸 加えながら、リジンの酵素的脱炭酸反応を うことにより、製造することができる。
 ここで用いる酸としては、例えば塩酸、硫 、リン酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸が げられる。得られた反応生成液から、通常 分離精製方法を用いて遊離カダベリンを採 することができる。
 更には、上記酸としてジカルボン酸を用い 、直接ポリアミドの製造原料となるカダベ ン・ジカルボン酸塩を採取することも可能 ある。即ち、カダベリン塩が、カダベリン ジカルボン酸塩であってもよい。

(カダベリン・アジピン酸塩の製造方法)
 以下に、酸としてアジピン酸を用いて、リ ンの酵素的脱炭酸反応により、カダベリン アジピン酸塩を製造する方法について詳細 説明する。
 原料として用いるリジンは、通常、遊離塩 (リジンベース。即ち、遊離リジン)である とが好ましいが、リジンのアジピン酸塩で ってもよい。リジンは、酵素的脱炭酸反応 よりカダベリンを生成するものであれば、L- リジン、D-リジンのいずれであってもよいが 通常は入手のしやすさからL-リジンが好ま い。
 また、リジンは、精製されたリジンであっ もよく、酵素的脱炭酸反応により生成する ダベリンがアジピン酸と塩を形成すること 可能であれば、リジンを含む発酵液であっ もよい。

 リジン溶液を調製する溶媒としては、好適 は水が用いられる。反応液のpHは、アジピ 酸によって調整するため、他のpH調整剤や緩 衝剤を用いる必要はないが、前記溶媒として 緩衝液を用いてもよい。
 このような緩衝液としては、例えば酢酸ナ リウム緩衝液等が挙げられる。但し、カダ リンとアジピン酸との塩を形成させるとい 点からは、緩衝剤等は用いないか、用いる 合であっても低濃度に抑えることが好まし 。

 リジンとして遊離リジンを用いる場合は、 常、リジン溶液にアジピン酸を加えて酵素 脱炭酸反応に適したpHとなるように調整す 。具体的には、pHとしては、通常4.0以上、好 ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上で、 通常8.0以下、好ましくは7.0以下、より好まし くは6.5以下が挙げられる。
 尚、リジンとして、リジンのアジピン酸塩 用いる場合は、反応液調製時にアジピン酸 加える必要はない。以下、このように、反 液のpHを酵素的脱炭酸反応に適したpHに調整 することを、「中和」と称す場合がある。

 リジンの酵素的脱炭酸反応の際には、生 速度及び反応収率向上のため、ピリドキシ 、ピリドキサミン、ピリドキサル及びピリ キサルリン酸から選ばれる少なくとも1種の ビタミンB6を配合することが好ましく、なか もピリドキサルリン酸が特に好ましい。な 、これらは1種のみを単独で用いてもよく、 2種以上を任意の比率及び組み合わせで用い もよい。また、ビタミンB6を配合する方法に は特に制限はない。反応中に適宜配合しても よい。

 リジンの酵素的脱炭酸反応は、例えば、上 のようにして中和されたリジン溶液にリジ 脱炭酸酵素(LDC)を混合することによって行 ことができる。
 LDCとしては、リジンに作用してカダベリン 生成させるものであれば特に制限はない。L DCとしては、精製酵素を用いてもよいし、LDC 産生する微生物、植物細胞又は動物細胞等 細胞を用いてもよい。LDC又はそれを産生す 細胞は、1種でもよく、2種以上の混合物で ってもよい。
 また、細胞をそのまま用いてもよく、LDCを む細胞処理物を用いてもよい。細胞処理物 しては、例えば細胞破砕液及びその分画物 が挙げられる。

 前記微生物としては、E.coli(以下、適宜、 「Escherichia coli」、「大腸菌」、「エシェリ ア・コリ」とも言う。)等のエシェリヒア属 細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファーメ ンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリネ型 菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)等 バチルス属細菌、セラチア・マルセッセン (Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等の細 、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyce s cerevisiae)等の真核細胞が挙げられる。これ の中では細菌、特にE.coliが好ましい。なお 微生物は、1種を単独で用いても良く、2種 上を任意の比率及び組み合わせで用いても い。

 前記微生物は、LDCを産生する限り、野生 でもよく、変異株であってもよい。また、L DC活性が上昇するように改変された組換え株 あってもよい。植物細胞又は動物細胞も、L DC活性が上昇するように改変された組換え細 を用いることができる。組換え細胞につい は、後述する。

 リジン溶液にLDCを混合して反応を開始した は、反応の進行に伴い、リジンから遊離さ る炭酸ガスが反応液から放出され、通常pH 上昇する。従って、反応液のpHが前記範囲と なるように、通常アジピン酸を反応液に混合 する。アジピン酸は連続的に混合してもよく 、pHが前記範囲に維持される限り、分割して 合してもよい。
 反応温度は、LDCがリジンに作用してカダベ ンを生成させる温度であれば特に制限はな が、温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃ 以上で、通常60℃以下、好ましくは40℃以下 行う。

 原料のリジン又はリジン・アジピン酸塩 、反応開始時に反応液に全量混合してもよ 、LDC反応の進行に応じて、分割して混合し もよい。

 酵素反応は、バッチ式によって行うと、ア ピン酸の混合を容易に行うことができる。 た、LDC、LDCを産生する細胞又はその処理物 固定化した担体を用いた移動床カラムクロ トグラフィーによって、反応を行うことも きる。
 その場合は、反応系のpHが所定の範囲に維 されたまま反応が進行するように、リジン びアジピン酸をカラムの適当な部位に注入 ればよい。

 上記のようにして、リジンの酵素的脱炭 反応によるカダベリン生成に伴って通常上 するpHを、アジピン酸を用いて逐次中和す ことにより、酵素反応が良好に進行する。 のようにして生成するカダベリンは、通常 アジピン酸塩として反応液中に蓄積する。

 LDC反応により得られたカダベリン・アジ ン酸塩は、反応液から公知の方法を組み合 せることによって単離、精製することがで る。カダベリン・アジピン酸塩は、使用態 に応じて、溶液のままであってもよく、結 であってもよい。上記のようにして得られ 結晶は、カダベリンとアジピン酸を等モル 含んでいるため、ポリアミド樹脂製造の原 として好適であり、必要に応じて乾燥して 用することができる。

 次に、一例として晶析法にて、本発明の 1の要旨におけるカダベリン・アジピン酸塩 水溶液からカダベリン・アジピン酸塩を得る 方法を具体的に説明する。即ち、本発明の第 1の要旨において、カダベリン塩が、カダベ ン塩水溶液の晶析により得られることが好 しい。

 バイオマス原料から得られたカダベリン・ ジピン酸塩水溶液は、通常、着色している め、晶析前に脱色することが好ましく、脱 剤としては、例えば活性炭、合成吸着剤、 性白土、シリカ、ゼオライト等が挙げられ 中でも活性炭が好ましい。脱色剤は、1種を 単独で用いても良く、2種以上を任意の比率 び組み合わせで用いても良い。
 脱色は、脱色剤を充填した塔にカダベリン アジピン酸塩水溶液を通液する方法や、カ ベリン・アジピン酸塩水溶液中に脱色剤を 合、攪拌する方法等が挙げられ、中でも前 が好ましい。

 脱色後のカダベリン・アジピン酸塩水溶 は、窒素バブリングにより溶存酸素を追い した後、カダベリン・アジピン酸塩濃度が 常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、ま 、通常69重量%以下、好ましくは67重量%以下 で濃縮する。カダベリン・アジピン酸塩濃 が過度に小さい場合は晶析後の収率が低く り、過度に大きいとカダベリン・アジピン 塩に混入する不純物濃度が高くなる傾向と る。具体的には、リジン、アルギニン等の3 官能以上のアミノ酸等の含有量が高くなる傾 向となる。

 濃縮は、カダベリン・アジピン酸塩水溶 の温度50℃~70℃、減圧度150Torr以下で行うの 好ましい。温度が過度に低いと濃縮時間が くなり、温度が過度に高いとカダベリン・ ジピン酸塩が分解する傾向となる。また、 圧度が150Torrを超えると濃縮時間が長くなる 傾向となる。

 晶析は、冷却してカダベリン・アジピン 塩を析出させて行う。この場合、冷却して る降温途中で種晶を混合することが好まし 。種晶は、種晶としての効果が得られるも であれば特に限定されない。中でも、析出 るカダベリン・アジピン酸塩が好ましい。 お、種晶は、1種を単独で用いても良く、2 以上を任意の比率及び組み合わせで用いて 良い。

 冷却時の降温速度は、通常1℃/時間以上 好ましくは2℃/時間以上、さらに好ましくは 3℃/時間以上、又通常30℃/時間以下、好まし は20℃/時間以下、さらに好ましくは10℃/時 以下である。降温速度が過度に遅いと晶析 時間を要する傾向となる。降温速度が過度 速いと結晶サイズが小さくなる傾向となり 精製度合いが低下する傾向となる。

 晶析終了温度は、通常1℃以上、好ましく は5℃以上、さらに好ましくは10℃以上、又通 常30℃以下、好ましくは25℃以下、さらに好 しくは20℃以下である。晶析終了温度が過度 に高いと収率が低くなる傾向となる。晶析終 了温度が過度に低いと、カダベリン・アジピ ン酸塩スラリーを移送する際に、配管を閉塞 しやすくなる傾向となる。

 晶析率は、濃縮液のカダベリン・アジピ 酸塩濃度と晶析終了温度により決められ特 限定されないが、通常1重量%以上、好まし は5重量%以上、さらに好ましくは10重量%以上 である。また、通常46重量%以下、好ましくは 39重量%以下、さらに好ましくは35重量%以下に 制御することが好ましい。晶析率が過度に低 いと収率が低くなる傾向となる。晶析率が過 度に高いとカダベリン・アジピン酸塩に混入 するリジン、アルギニン等の3官能以上のア ノ酸等の不純物濃度が高くなる傾向となる

 晶析後のカダベリン・アジピン酸塩スラリ は、常法に従い固液分離して、結晶として られる。例えば、遠心濾過を行う場合は、 液を振り切った後に、遠心濾過器が回転し いる状態で少量の脱塩水をシャワー状にふ かけ、カダベリン・アジピン酸塩に付着し いる母液をさらに洗い流すと精製度が上が 好ましい。
 脱塩水量はwetケーキ(若干の水を含んだカダ ベリン・アジピン酸塩)に対して、通常1重量% 以上、好ましくは5重量%以上である。また、 常40重量%以下、好ましくは30重量%以下であ 。脱塩水量が過度に少ないと洗浄効果が小 くなる傾向となる。脱塩水量が過度に多い 、収率が低下する傾向となる。このように て得られた結晶を1番晶と称する。

 固液分離後の母液や洗浄液は回収して、 度、濃縮、晶析、固液分離を行い、2番晶を 得る。同様にして、3番晶、4番晶等を得るこ ができる。

 本発明の第1の要旨におけるカダベリン塩 中の3官能以上の有機物の合計含有量(即ち、 有量の合計)は、90ppm以下であり、好ましく 60ppm以下、さらに好ましくは30ppm以下である 。3官能以上の有機物の含有量が90ppmを超える と、架橋してゲルの原因となり、射出成形品 においては流動性や機械物性の低下、フィル ム、繊維、モノフィラメントにおいてはF/E( ィッシュアイ)発生による表面外観の低下や 伸時の破断原因となる可能性がある。

 ここで、3官能以上の有機物とは、例えば、 架橋してゲルの原因となり得る官能基を3つ 上有する有機物等が挙げられる。このよう 官能基としては、例えば、アミノ基、カル キシル基、スルホン基、リン酸基、水酸基 ヒドラジド基、エポキシ基、メルカプト基 ニトロ基、アルコキシル基等が挙げられる
 本発明の第1の要旨における3官能以上の有 物の一例として、アミノ酸、オリゴ糖、リ ゴ酸、クエン酸等が挙げられる。3官能以上 有機物は、1種でも、2種以上でもよい。

 本発明の第1の要旨が適用されるカダベリ ン塩中の3官能以上のアミノ酸の合計含有量 、90ppm以下が好ましく、さらに好ましくは60p pm以下、特に好ましくは30ppm以下である。3官 以上のアミノ酸含有量が90ppmを超えると、 橋してゲルの原因となり、射出成形品にお ては流動性や機械物性の低下、フィルム、 維、モノフィラメントにおいてはF/E発生に る表面外観の低下や延伸時の破断原因とな 可能性がある。

 3官能以上のアミノ酸としては、例えば、 アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギ ン、グルタミン等のモノアミノジカルボン酸 ;リジン、オルニチン、ヒドロキシリジン、 ルギニン、ヒスチジン等のジアミノモノカ ボン酸等が挙げられる。これらのアミノ酸 L体でもD体でも構わない。

 本発明の第1の要旨が適用されるカダベリン 塩中のリジンは、L-リジンでもD-リジンでも く、その含有量は50ppm以下が好ましく、さら に好ましくは30ppm以下、特に好ましくは20ppm 下である。即ち、カダベリン塩中、前記3官 以上の有機物がリジンであり、前記リジン 含有量が50ppm以下であることが好ましい。 ジンが50ppmを超えると、架橋してゲルの原因 となり、射出成形品においては流動性や機械 物性の低下、フィルム、繊維、モノフィラメ ントにおいてはF/E発生による表面外観の低下 や延伸時の破断原因となる可能性がある。
 カダベリン塩中のリジン含有量は常法によ 測定することができ、例えば、アミノ酸分 計等を用いて測定することができる。

 カダベリン塩を構成するカダベリンが、 ジン脱炭酸酵素活性の向上した組み換え微 物又はリジン脱炭酸酵素を産生する細胞も くは前記細胞の処理物を使用して、前記リ ンから産出されたものであることが好まし 。ただし、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭 酵素活性の向上した組み換え微生物又はリ ン脱炭酸酵素を産生する細胞もしくは前記 胞の処理物を使用して、リジンからカダベ ンを産出する場合には、リジンが残存しや くなるが、できるだけ残存リジン量を低く ることが望ましい。残存リジン量が多いと その後の精製工程への負荷が大きくなり、 済性が低下する傾向となる。

 本発明の第1の要旨におけるカダベリン塩 中のアルギニンは、L-アルギニンでもD-アル ニンでも良く、その含有量は40ppm以下が好ま しく、さらに好ましくは20ppm以下、特に好ま くは10ppm以下である。即ち、前記3官能以上 有機物がアルギニンであり、前記アルギニ の含有量が40ppm以下であることが好ましい アルギニンの含有量が40ppmを超えると、架橋 してゲルの原因となり、射出成形品において は流動性や機械物性の低下、フィルム、繊維 、モノフィラメントにおいてはF/E発生による 表面外観の低下や延伸時の破断原因となる可 能性がある。アルギニン含有量は常法により 測定することができる。例えば、アミノ酸分 析計等を用いて測定することができる。

 また、前記3官能以上の有機物として、リ ジンとアルギニンとを含有していても良い。 この際、前記3官能以上の有機物として、リ ンの含有量が50ppm以下、且つアルギニンの含 有量が40ppm以下であることが好ましい。

 次に、微生物を、LDC活性が上昇するよう 改質する方法について例示する。尚、他の 胞についても、それに適するように下記の 法を適宜改変することによって、同様にLDC 性を上昇させることができる。

 LDC活性は、例えば、LDCをコードする遺伝 (LDC遺伝子)の発現を増強することによって 昇する。LDC遺伝子の発現の増強は、例えばLD C遺伝子のコピー数を高めることによって達 される。例えば、LDC遺伝子断片を、微生物 機能するベクター、好ましくは、マルチコ ー型のベクターと連結して組換えDNAを作製 、これを適当な宿主に導入して形質変換す ばよい。

 LDC遺伝子のコピー数を高めることは、LDC遺 子を微生物の染色体DNA上に多コピー存在さ ることによっても達成できる。微生物の染 体DNA上に遺伝子を多コピーで導入するには 例えば、染色体DNA上に多コピー存在する配 を標的に利用して相同組換えにより行う。
 染色体DNA上に多コピー存在する配列として 、例えば、レペティティブDNA、転移因子の 部に存在するインバーテッド・リピート等 利用できる。或いは、特開平2-109985号公報 開示されているように、目的遺伝子をトラ スポゾンに搭載してこれを転移させて染色 DNA上に多コピー導入することも可能である

 LDC活性の上昇は、上記の遺伝子増幅による 外に、染色体DNA上又はプラスミド上のLDC遺 子のプロモーター等の発現調節配列を強力 ものに置換することによっても達成される 例えば、lacプロモーター、trpプロモーター trcプロモーター等が強力なプロモーターと て知られている。
 また、国際公開第00/18935号パンフレットに 示されているように、遺伝子のプロモータ 領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強 なものに改変することも可能である。これ のプロモーター置換又は改変によりLDC遺伝 の発現が強化され、LDC活性が上昇する。こ ら発現調節配列の改変は、遺伝子のコピー を高めることと組み合わせてもよい。

 発現調節配列の置換は、例えば、温度感 性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様に て行うことができる。E.coliの温度感受性複 起点を有するベクターとしては、例えば、 際公開第99/03988号パンフレットに記載され プラスミドpMAN997等が挙げられる。また、λ ァージのレッド・リコンビナーゼ(Red recombin ase)を利用した方法(Datsenko,K.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.U SA(2000)97(12),6640-6645)によっても、発現調節配 の置換を行うことができる。

 LDC遺伝子としては、コードされるLDCが、 ジンの脱炭酸反応に有効利用できるもので れば特に制限されないが、例えば、バクテ ウム カダベリス、E.coli等の細菌や、ガラ 豆等の植物、さらには、特開2002-223770号公報 に記載の微生物のLDC遺伝子等が挙げられる。

 宿主微生物としてE.coliを用いる場合は、E.co li由来のLDC遺伝子が好ましい。
 E.coliのLDC遺伝子としては、例えばcadA遺伝子 及びldc遺伝子(米国特許第5,827,698号)等が知ら ているが、これらの中ではcadA遺伝子が好ま しい。

 E.coliのcadA遺伝子は配列が知られており(N.Wat son et al.,Journal of bacteriology(1992)vol.174,p.530-54 0;S.Y.Meng et al.Journal of bacteriology(1992)vol.174,p. 2659-2668;GenBank accession M76411)、例えばその配 に基づいて作成したプライマーを用いたPCR より、E.coli染色体DNAから単離することがで る。
 このようなプライマーとしては、例えば配 番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列 号2(配列;ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG)に示す 基配列を有するプライマー等が挙げられる

 取得されたLDC遺伝子とベクターを連結して 換えDNAを調製するには、通常はLDC遺伝子の 端に合うような制限酵素でベクターを切断 、T4 DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて前記 遺伝子とベクターを連結すればよい。
 E.coli用のベクターとしては、pUC18、pUC19、pST V29、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pBR322、pACYC 184、pMW219等が挙げられる。

 LDC遺伝子は、野生型であってもよいし、変 型であってもよい。例えばcadA遺伝子は、コ ードされるLDCの活性が損なわれない限り、1 しくは複数の位置での1若しくは数個のアミ 酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むLDC コードするものであってもよい。
 ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタ パク質の立体構造における位置や種類によ ても異なるが、具体的には通常2個以上、ま た、通常50個以下、好ましくは30個以下、よ 好ましくは10個以下である。

 上記のようなLDCと実質的に同一のタンパク をコードするDNAは、例えば部位特異的変異 によって、特定の部位のアミノ酸残基が置 、欠失、挿入、付加又は逆位を含むようにc adA遺伝子の塩基配列を改変することによって 得られる。
 また、上記のような改変されたDNAは、従来 られている変異処理によっても取得され得 。変異処理としては、変異処理前のDNAをヒ ロキシルアミン等でインビトロ処理する方 、及び変異処理前のDNAを保持する微生物、 えばエシェリヒア属細菌を、紫外線又はN- チル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)も しくはエチルメタンスルホン酸(EMS)等の通常 異処理に用いられている変異剤によって処 する方法等が挙げられる。

 上記のような変異を有するDNAを、適当な細 で発現させ、発現産物の活性を調べること より、通常LDCと実質的に同一のタンパク質 コードするDNAが得られる。
 また、変異を有するLDCをコードするDNA又は れを保持する細胞から、例えば、cadA遺伝子 (GenBank accession M76411)のコード領域の配列、 は同配列の一部を有するプローブとストリ ジェントな条件下でハイブリダイズし、か 、LDCと同等の活性を有するタンパク質をコ ドするDNAが得られる。

 ここで言う「ストリンジェントな条件」 は、いわゆる特異的なハイブリッドが形成 れ、非特異的なハイブリッドが形成されな 条件をいう。この条件を明確に数値化する とは困難であるが、一例を示せば、相同性 高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80% 上、より好ましくは90%以上の相同性を有す DNA同士がハイブリダイズし、それにより相 性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条 、或いは通常のサザンハイブリダイゼーシ ンの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、 ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する 濃度でハイブリダイズする条件等が挙げら る。

 プローブとしてcadA遺伝子の一部の配列を 用いることもできる。そのようなプローブは 、例えば公知のcadA遺伝子の塩基配列に基づ て作成したオリゴヌクレオチドをプライマ とし、cadA遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするP CRによって作製することができる。プローブ して、300bp程度の長さのDNA断片を用いる場 には、ハイブリダイゼーションの洗いの条 は、例えば、50℃、2×SSC、0.1%SDS等の条件が げられる。

 LDCと実質的に同一のタンパク質をコード るDNAとして具体的には、公知のcadA遺伝子が コードするアミノ酸配列と、好ましくは70%以 上、より好ましくは80%以上、さらに好ましく は90%以上の相同性を有し、かつLDC活性を有す るタンパク質をコードするDNA等が挙げられる 。

 組換えDNAを微生物に導入するには、これ でに報告されている形質転換法に従って行 ばよい。例えば、エシェリヒア・コリ K12 ついて報告されているような、受容菌細胞 塩化カルシウムで処理してDNAの透過性を増 方法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))が り、バチルス・サチリスについて報告され いるような、増殖段階の細胞からコンピテ トセルを調製してDNAを導入する方法(Ducan,C.H. ,Wilson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1997))等がある。

 或いは、バチルス・サチリス、放線菌類 び酵母について知られているような、DNA受 菌の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプ トプラスト又はスフェロプラストの状態に て組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang, S.and Choen,S.N.,Molec,Gen.Genet.,168,111(1979);Bibb,M.J.,W ard,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hic ks,J.B.and Fink,G.R.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75 1929(1978)) 応用できる。また、電気パルス法(特開平2-2 07791号公報)によっても、微生物の形質転換を 行うことができる。

 LDCを産生する微生物又は細胞を得るための 養は、用いる微生物又は細胞に応じて、LDC 産生に適した方法によって行えばよい。
 例えば、培地は、炭素源、窒素源、無機イ ン及び必要に応じその他の有機成分を含有 る通常の培地でよい。炭素源としては、グ コース、ラクトース、ガラクトース、フラ トース、アラビノース、マルトース、キシ ース、トレハロース、リボースや澱粉の加 分解物等の糖類;グリセロール、マンニトー ルやソルビトール等のアルコール類;グルコ 酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の 機酸類等を用いることができる。

 窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化 ンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機 ンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒 、アンモニアガス、アンモニア水等を用い ことができる。
 有機微量栄養素としては、ビタミンB1等の タミン類、アデニンやRNA等の核酸類等の要 物質又は酵母エキス等を適量含有させるこ が望ましい。これらの他に、必要に応じて リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄 オン、マンガンイオン等が少量含まれてい もよい。

 培養は、エシェリヒア・コリの場合は、好 的条件下で16時間~72時間程度実施するのが く、培養温度は通常30℃~45℃に、培養中のpH 通常5~8に制御する。なお、pH調整には無機 いは有機の酸性又はアルカリ性物質、アン ニアガス等を使用することができる。
 尚、LDC遺伝子が、誘導可能なプロモーター よって発現が調節されている場合には、通 、誘導剤を培地に含有させる。

 培養後、細胞は、遠心分離機や膜により めることにより、培養液から回収すること できる。細胞は、そのまま用いてもよいが LDCを含むそれらの処理物を用いる場合は、 胞を超音波、フレンチプレス、又は酵素的 理により破砕し酵素を抽出させ、無細胞抽 液とし、さらにそこからLDCを精製する場合 は、常法に従い、硫安塩折、各種クロマト ラフィーを使用すること等によって精製す ことができる。

(ポリアミド樹脂)
 本発明の第1の要旨が適用されるポリアミド 樹脂は、カダベリン単位、ジカルボン酸単位 を構成成分として含み、本発明の第1の要旨 係る効果を損なわない範囲において、それ 外の共重合成分が含有されていてもよい。

 この場合、共重合成分としては、例えば 6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン 、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル 息香酸等のアミノ酸;ε-カプロラクタム、ω- ウロラクタム等のラクタム;シュウ酸、マロ ン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、 ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セ バシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、 ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデ カン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカ ルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の 環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸 テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等 芳香族ジカルボン酸;

エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン 1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、 1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン 1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1 ,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカ ン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノ トラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,1 6-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプ デカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジ ミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン 2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の脂肪族ジ ミン;シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-ア ノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシ リレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げ られる。

 また、本発明の第1の要旨で使用するジカル ボン酸は、前述した芳香族ジカルボン酸、脂 肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸と同 様の化合物を挙げることができる。
 これらの共重合成分は1種を単独で用いても よく、2種以上を併用してもよい。

(ポリアミド樹脂の製造方法)
 本発明の第1の要旨が適用されるポリアミド 樹脂の製造方法としては、公知の方法が使用 でき、具体的には「ポリアミド樹脂ハンドブ ック」(日刊工業社出版:福本修編)等に開示さ れている。例えば、ポリアミド56の製造方法 しては、カダベリン・アジピン酸塩を、水 共存下で混合し、加熱して脱水反応を進行 せる方法(加熱重縮合)が好ましい。より具 的には、本発明の第1の要旨におけるポリア ド樹脂は、カダベリン・アジピン酸塩等の ダベリン塩の重縮合反応により、またはカ ベリン・アジピン酸塩等の前記カダベリン と他の共重合成分との重縮合反応により得 れる。

 なお、本発明の第1の要旨における上記加 熱重縮合とは、ポリアミド樹脂の製造におけ る重合反応物の最高到達温度を200℃以上に上 昇させる製造プロセスである。最高到達反応 温度の上限としては、重合反応時の熱安定性 を考慮して、通常300℃以下である。重合方式 には特に制限は無く回分式、連続方式が採用 できる。

 上記の方法で製造されたポリアミド樹脂 加熱重縮合後に更に固相重合することがで る。これにより、ポリアミド樹脂の分子量 高くすることができる。固相重合は、例え 、100℃以上、当該樹脂の融点以下の温度で 空中、或いは不活性ガス中で加熱すること より行うことができる。

 本発明の第1の要旨が適用されるポリアミド 樹脂の分子量は特に制限がなく、濃度0.01g/mL した98%硫酸溶液の25℃における相対粘度が1. 5以上が好ましく、2.0以上がさらに好ましく また、8.0以下が好ましく、5.5以下がさらに ましい。
 相対粘度が過度に低いと、実用的強度が不 分であり、一方、相対粘度が過度に高いと 流動性が低下し、成形加工性が損なわれる 能性がある。
 相対粘度は、成形性の観点から、フィルム 繊維、モノフィラメント等の押出成形では3 .0~5.5、射出成形では2.0~3.5が特に好ましい。

 本発明の第1の要旨におけるポリアミド樹脂 には、本発明の第1の要旨に係る効果を損な ない範囲で他の成分を、ポリアミド樹脂の 合から成形までの任意の段階で配合するこ ができる。
 このような他の成分としては、例えば、酸 防止剤や熱安定剤(ヒンダードフェノール系 、ヒドロキノン系、ホスファイト系及びこれ らの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等 );耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系 、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系 、ヒンダードアミン系等);離型剤及び滑剤(脂 肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビス アミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス 等);顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、 カーボンブラック等);染料(ニグロシン、アニ リンブラック等);可塑剤(p-オキシ安息香酸オ チル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等);

帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオ 系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオ 系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビ ンモノステアレート等の非イオン系帯電防 剤、ベタイン系両性帯電防止剤等);難燃剤( ラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム 水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリ 酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭 化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカ ボネート、臭素化エポキシ樹脂又はこれら 臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み わせ等);他の重合体(他のポリアミド、ポリ チレン、ポリプロピレン、ポリエステル、 リカーボネート、ポリフェニレンエーテル ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS 脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)等が挙げられ る。他の成分は、1種を単独で用いてもよく 2種以上を任意の比率及び組み合わせで用い もよい。
 これらの他の成分は、ドライブレンド又は 出機を用いて溶融混練するのが好ましい。

 また、本発明の第1の要旨のポリアミド樹脂 をフィルム用途に用いる場合には、滑り性向 上のため、タルク、カオリン、焼成カオリン 、シリカ、ゼオライト等の無機フィラー、特 に微粒子状の無機フィラーを配合することが 好ましい。更に好ましくは、無機フィラーと 離型剤及び/または滑剤とを併用する態様が げられる。フィラーは、1種を単独で用いて 良く、2種以上を任意の比率及び組み合わせ で用いても良い。
 無機フィラーの配合量としては、ポリアミ 樹脂100重量部当り0.005重量部~0.1重量部が好 しく用いられる。また、離型剤及び/または 滑剤は、ポリアミド樹脂100重量部当り0.01重 部~0.5重量部が好ましく用いられる。

 また、本発明の第1の要旨のポリアミド樹 脂は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、 ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法に より、所望の形状に成形することができる。 成形品としては、例えば、射出成形品、フィ ルム、シート、フィラメント、テーパードフ ィラメント、繊維等が挙げられる。また、ポ リアミド樹脂は、接着剤、塗料等にも使用す ることができる。

 また、本発明の第1の要旨のポリアミド樹 脂の具体的な用途例としては、自動車・車両 関連部品として、例えば、インテークマニホ ールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成 品)、結束バンド、レゾネーター、エアーク ーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー シリンダーヘッドカバー、タイミングベル カバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタ ク、ラジエータータンク、インタークーラ タンク、オイルリザーバータンク、オイル ン、電動パワステギヤ、オイルストレーナ 、キャニスター、エンジンマウント、ジャ クションブロック、リレーブロック、コネ ター、コルゲートチューブ、プロテクター の自動車用アンダーフード部品;ドアハンド ル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレー ルレグ、ドアミラーステー、バンパー、スポ イラー、ホイールカバー等の自動車用外装部 品;カップホルダー、コンソールボックス、 クセルペダル、クラッチペダル、シフトレ ー台座、シフトレバーノブ等の自動車用内 部品等が挙げられる。

 さらに、本発明の第1の要旨のポリアミド 樹脂は、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、ス イッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイ ッチ、スイッチのハウジング、ランプソケッ ト、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウ ジング、コネクタのシェル、ICソケット類、 イルボビン、ボビンカバー、リレー、リレ ボックス、コンデンサーケース、モーター 内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カ 、ダンシングプーリー、スペーサー、イン ュレーター、キャスター、端子台、電動工 のハウジング、スターターの絶縁部分、ヒ ーズボックス、ターミナルのハウジング、 アリングリテーナー、スピーカー振動板、 熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プ ンタリボンガイド等に代表される電気・電 関連部品、家庭・事務電気製品部品、コン ューター関連部品、ファクシミリ・複写機 連部品、機械関連部品等各種用途に使用す ことができる。

(ポリアミド樹脂フィルムの成形方法)
 本発明の第1の要旨におけるポリアミド樹脂 フィルムは、公知の方法で成形することがで きる。即ち、本発明の第1の要旨における成 品は、前記ポリアミド樹脂を成形してなる 例えば、ポリアミド樹脂に離型剤や滑剤等 ドライブレンドしたポリアミド樹脂組成物 溶融体を連続的にT-ダイより押出し、キャス ティングロールにて冷却しながらフィルム状 に成形するT-ダイ法;環状のダイスより連続的 に押出し、水を接触させて冷却する水冷イン フレーション法;同じく環状のダイスより押 し、空気によって冷却する空冷インフレー ョン法等が用いられる。また、これらの成 法で他の材料を同時に押し出す共押出法で 層のフィルムを得ることもできる。なお、 形品は、中でも、フィルム、射出成形品、 維、モノフィラメントであることが好まし 。

 必要に応じて一軸または二軸延伸フィルム して使用することも可能である。延伸方法 公知の方法が応用できる。例えば、T-ダイ にて成形したフィルムの場合、縦延伸(一軸 伸)はロール方式を用いる。さらに横方向に 延伸する際には、テンター方式を使用した逐 次二軸延伸法が挙げられる。環状ダイより成 形したチューブ状フィルムについては、上記 の逐次二軸延伸法以外に縦横同時に延伸でき るチューブラー延伸法が用いられる。
 共押出しフィルムについても同様の方法で 層を同時に延伸(共延伸)することができる 尚、延伸倍率は縦方向、横方向とも通常2倍 上、また、通常4倍以下、好ましくは3.5倍以 下である。

 本発明の第1の要旨におけるポリアミド樹脂 のフィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、 ましくは70μm以下である。フィルムの厚みが 過度に小さいと強度が不充分になりやすく、 過度に大きいと繰り返し屈曲疲労性が低下し やすい傾向となる。
 フィルムがポリアミド樹脂単層フィルムの 合、より好ましくは5μm以上、更に好ましく は10μm以上、また、より好ましくは50μm以下 更に好ましくは30μm以下であり、多層フィル ムの場合、ポリアミド樹脂層としての厚みは 、より好ましくは2μm以上、更に好ましくは5 m以上、また、より好ましくは50μm以下、更 好ましくは30μm以下である。

 本発明の第1の要旨におけるポリアミド樹脂 のフィルムは、印刷性の改良や、ラミネート 性(接着性)の改良のために片面、または両面 コロナ処理した後使用することもできる。
 本発明の第1の要旨では、射出成形方法によ り、所望の形状に成形されたポリアミド樹脂 の射出成形品を得ることができる。

[B.第2の要旨]
 次に、本発明の第2の要旨について説明する 。

(カダベリン)
 本発明の第2の要旨におけるカダベリンは、 例えば、リジン溶液に、同溶液のpHが酵素的 炭酸反応に適したpHに維持されるように酸 加えながら、リジンの酵素的脱炭酸反応を うことにより、製造することができる。
 ここで用いる酸としては、例えば塩酸、硫 、リン酸等の無機酸や、酢酸等の有機酸が げられる。得られた反応生成液から、通常 分離精製方法を用いて遊離カダベリンを採 することができる。
 更には、上記酸としてジカルボン酸を用い 、直接ポリアミドの製造原料となるカダベ ン・ジカルボン酸塩を採取することも可能 ある。即ち、カダベリン塩が、カダベリン ジカルボン酸塩であってもよい。

(カダベリン・アジピン酸塩の製造方法)
 以下に、酸としてアジピン酸を用いて、リ ンの酵素的脱炭酸反応により、カダベリン アジピン酸塩を製造する方法について詳細 説明する。
 原料として用いるリジンは、通常、遊離塩 (リジンベース、即ち、遊離リジン)である とが好ましいが、リジンのアジピン酸塩で ってもよい。リジンは、酵素的脱炭酸反応 よりカダベリンを生成するものであれば、L- リジン、D-リジンのいずれであってもよいが 通常は入手のしやすさからL-リジンが好ま い。
 また、リジンは、精製されたリジンであっ もよく、酵素的脱炭酸反応により生成する ダベリンがアジピン酸と塩を形成すること 可能であれば、リジンを含む発酵液であっ もよい。

 リジン溶液を調製する溶媒としては、好適 は水が用いられる。反応液のpHは、アジピ 酸によって調整するため、他のpH調整剤や緩 衝剤を用いる必要はないが、前記溶媒として 緩衝液を用いてもよい。
 このような緩衝液としては、例えば酢酸ナ リウム緩衝液等が挙げられる。但し、カダ リンとアジピン酸との塩を形成させるとい 点からは、緩衝剤等は用いないか、用いる 合であっても低濃度に抑えることが好まし 。

 リジンとして遊離リジンを用いる場合は、 常、リジン溶液にアジピン酸を加えて酵素 脱炭酸反応に適したpHとなるように調整す 。具体的には、pHとしては、通常4.0以上、好 ましくは5.0以上、より好ましくは5.5以上で、 通常8.0以下、好ましくは7.0以下、より好まし くは6.5以下が挙げられる。
 尚、リジンとして、リジンのアジピン酸塩 用いる場合は、反応液調製時にアジピン酸 加える必要はない。以下、このように、反 液のpHを酵素的脱炭酸反応に適したpHに調整 することを、「中和」と称す場合がある。

 リジンの酵素的脱炭酸反応の際には、生産 度及び反応収率向上のため、ピリドキシン ピリドキサミン、ピリドキサル及びピリド サルリン酸から選ばれる少なくとも1種のビ タミンB6を配合することが好ましく、なかで ピリドキサルリン酸が特に好ましい。
 ビタミンB6を配合する方法には特に制限は い。反応中に適宜配合しても良い。ビタミ B6は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を 意の比率及び組み合わせで用いてもよい。

 リジンの酵素的脱炭酸反応は、例えば、上 のようにして中和されたリジン溶液にリジ 脱炭酸酵素(LDC)を混合することによって行 ことができる。
 LDCとしては、リジンに作用してカダベリン 生成させるものであれば特に制限はない。L DCとしては、精製酵素を用いてもよいし、LDC 産生する微生物、植物細胞又は動物細胞等 細胞を用いてもよい。LDC又はそれを産生す 細胞は、1種でもよく、2種以上の混合物で ってもよい。
 また、細胞をそのまま用いてもよく、LDCを む細胞処理物を用いてもよい。細胞処理物 しては、例えば細胞破砕液及びその分画物 が挙げられる。

 前記微生物としては、E.coli(以下、適宜、 「Escherichia coli」、「大腸菌」、「エシェリ ア・コリ」とも言う。)等のエシェリヒア属 細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファーメ ンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリネ型 菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)等 バチルス属細菌、セラチア・マルセッセン (Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等の細 、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyce s cerevisiae)等の真核細胞が挙げられる。これ の中では細菌、特にE.coliが好ましい。

 前記微生物は、LDCを産生する限り、野生 でもよく、変異株であってもよい。また、L DC活性が上昇するように改変された組換え株 あってもよい。植物細胞又は動物細胞も、L DC活性が上昇するように改変された組換え細 を用いることができる。組換え細胞につい は、後述する。

 リジン溶液にLDCを混合して反応を開始した は、反応の進行に伴い、リジンから遊離さ る炭酸ガスが反応液から放出され、通常pH 上昇する。従って、反応液のpHが前記範囲と なるように、通常アジピン酸を反応液に混合 する。アジピン酸は連続的に混合してもよく 、pHが前記範囲に維持される限り、分割して 合してもよい。
 反応温度は、LDCがリジンに作用してカダベ ンを生成させる温度であれば特に制限はな が、温度は、通常20℃以上、好ましくは30℃ 以上で、通常60℃以下、好ましくは40℃以下 行う。

 原料のリジン又はリジン・アジピン酸塩 、反応開始時に反応液に全量混合してもよ 、LDC反応の進行に応じて、分割して混合し もよい。

 酵素反応は、バッチ式によって行うと、ア ピン酸の混合を容易に行うことができる。 た、LDC、LDCを産生する細胞又はその処理物 固定化した担体を用いた移動床カラムクロ トグラフィーによって、反応を行うことも きる。
 その場合は、反応系のpHが所定の範囲に維 されたまま反応が進行するように、リジン びアジピン酸をカラムの適当な部位に注入 ればよい。

 上記のようにして、リジンの酵素的脱炭 反応によるカダベリン生成に伴って通常は 昇するpHを、アジピン酸を用いて逐次中和 ることにより、酵素反応が良好に進行する このようにして生成するカダベリンは、通 アジピン酸塩として反応液中に蓄積する。

 本発明の第2の要旨においては、LDCを用いて 得られたカダベリン塩水溶液から、分子量12, 000以上、好ましくは5,000以上、特に好ましく 1,000以上の高分子不純物を除去することを 徴とする。なお、高分子不純物の除去の操 は、1回のみ行ってもよく、2回以上を任意の 方法で行っても良い。例えば、初めにカダベ リン塩水溶液から分子量12,000以上の高分子不 純物を除去し、次に、同じカダベリン塩水溶 液から分子量5,000以上の高分子不純物を除去 てもよい。
 上記高分子不純物をカダベリン水溶液から 去する時期についての制限はなく、上記LDC よる反応が終了した時点で得られたカダベ ン・塩酸塩水溶液、カダベリン・硫酸塩水 液、カダベリン・リン酸塩水溶液、カダベ ン・炭酸塩水溶液、カダベリン・ジカルボ 酸塩水溶液等から直接除去しても良い。中 も、前記カダベリン塩水溶液の晶析に先立 て分子量12,000以上の高分子不純物を除去す ことが好ましい。この時、カダベリン塩が ダベリン・ジカルボン酸塩であることが好 しい。

 また、本発明の第2の要旨に係るカダベリ ン塩水溶液において、3官能以上の有機物の 有量が、本発明の第1の要旨の項で説明した 囲に収まることが好ましい。即ち、本発明 第2の要旨に係るカダベリン塩水溶液は、カ ダベリン塩に対する前記の3官能以上の有機 の含有量の合計が90ppm以下であり、かつ分子 量12,000以上の高分子不純物が除去されたもの であることが好ましい。

 菌体を用いた場合には、LDCで得られたカダ リン塩水溶液中の菌体を滅菌処理し、遠心 離等の方法で菌体等の不溶物を除去した後 実施しても良い。
 また、カダベリン塩水溶液がカダベリン・ カルボン酸塩水溶液ではない場合には、カ ベリン塩水溶液からイオン交換樹脂等を用 てカダベリン水溶液とした後、高分子不純 を除去する操作を行ってから、ジカルボン を混合してカダベリン・ジカルボン酸塩水 液を得ても良い。さらに、前記カダベリン 溶液にジカルボン酸を混合し、カダベリン ジカルボン酸塩水溶液を得た後、高分子不 物を除去する操作を行ってもよい。

 中でも、操作の煩雑さを軽減し、高分子不 物除去の効率を上げるために、LDCによる反 終了後に不溶物を除去したカダベリン・ジ ルボン酸塩水溶液から高分子不純物を除去 る方法が好ましい。
 特に、カダベリン・ジカルボン酸塩水溶液 ら晶析を行い、カダベリン・ジカルボン酸 を得る場合には、晶析した塩に高分子不純 が混入すると品質の良いポリアミド樹脂が られない可能性があるため、晶析操作の前 高分子不純物を除去しておくことが好まし 。

 分子量12,000以上の高分子不純物を除去する 法について制限はなく、例えば吸着剤を用 る方法や膜処理等が挙げられる。中でも簡 性と除去効果の観点から、限外濾過膜(UF膜) を用いる方法が好ましい。即ち、膜処理は、 限外濾過膜(UF膜)処理であることが好ましい
 限外濾過膜は、その種類により除去できる 子量範囲が定められている。本実施の形態 おいては、除去できる分子量は12,000以上が ましく、さらに好ましくは5,000以上、特に ましくは1,000以上である。
 除去する高分子不純物としては、タンパク や核酸、多糖等が挙げられる。特に、微生 を用いた反応を伴う場合には、タンパク質 混入しやすいので、本発明の第2の要旨によ り得られる効果が顕著である。

 限外濾過膜の材質や膜形状に制限はない。 体的な材質としては、例えば、酢酸セルロ ス、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルベンジ トリメチルアンモニウムクロリド、ポリス レンスルホン酸ナトリウム、アクリロニト ル共重合体、ポリアミド12等が挙げられる 中でも、アクリロニトリル共重合体が好ま い。
 膜形状としては、平膜、中空糸、板、管、 パイラル巻き等が挙げられ、中でも中空糸 好ましい。
 また、種々の限外濾過膜モジュールが各社 ら販売されているが、操作のしやすさから ジュール化したものが好ましい。

 カダベリン塩水溶液から高分子不純物を除 せずに、これを原料の少なくとも一部とし 重合した場合、通常、得られたポリアミド 脂中には多くのゲルが存在する。このよう ゲルは、射出成形品では、流動性や機械物 等の低下原因となり、フィルムやフィラメ トでは、フィッシュアイ(F/E)による表面外 の低下や延伸破断の原因となる可能性があ 。
 また、分子量が過度に低い物質を除去しよ とすると、操作が煩雑になったり、生産性 低下したりする傾向となる。

 高分子不純物を除去したカダベリン塩水 液は、必要に応じ公知の方法を組み合わせ ことにより精製し、ポリアミド樹脂の原料 して使用することができる。

 次に、一例として晶析法にて、本発明の 2の要旨におけるカダベリン・アジピン酸塩 水溶液からカダベリン・アジピン酸塩を得る 方法を具体的に説明する。

 バイオマス原料から得られたカダベリン・ ジピン酸塩水溶液は、通常は着色している め、晶析前に脱色することが好ましく、脱 剤としては活性炭、合成吸着剤、活性白土 シリカ、ゼオライト等が挙げられ、中でも 性炭が好ましい。脱色剤は、1種を単独で用 いても良く、2種以上を任意の比率及び組み わせで用いても良い。
 脱色は、脱色剤を充填した塔にカダベリン アジピン酸塩水溶液を通液する方法や、カ ベリン・アジピン酸塩水溶液中に脱色剤を 合、攪拌する方法等が挙げられ、中でも前 が好ましい。

 脱色後のカダベリン・アジピン酸塩水溶液 、窒素バブリングにより溶存酸素を追い出 た後、カダベリン・アジピン酸塩濃度が通 50重量%以上、好ましくは60重量%以上、また 通常69重量%以下、好ましくは67重量%以下ま 濃縮する。カダベリン・アジピン酸塩濃度 過度に小さい場合は晶析後の収率が低くな 、過度に大きいとカダベリン・アジピン酸 に混入する不純物濃度が高くなる傾向とな 。具体的には、リジン、アルギニン等の3官 能以上のアミノ酸等の含有量が高くなる傾向 となる。
 濃縮は、カダベリン・アジピン酸塩水溶液 温度50℃~70℃、減圧度150Torr以下で行うのが ましい。温度が過度に低いと濃縮時間が長 なり、温度が過度に高いとカダベリン・ア ピン酸塩が分解する傾向となる。また、減 度が150Torrを超えると濃縮時間が長くなる傾 向となる。

 晶析は、通常は冷却してカダベリン・アジ ン酸塩を析出させて行う。この場合、冷却 ている降温途中で種晶を混合することが好 しい。種晶は、種晶としての効果が得られ ものであれば特に限定されない。例えば、 出するカダベリン・アジピン酸塩が好まし 。種晶は、1種を単独で用いても良く、2種 上を任意の比率及び組み合わせで用いても い。
 冷却時の降温速度は、通常1℃/時間以上、 ましくは2℃/時間以上、さらに好ましくは3 /時間以上である。また、通常30℃/時間以下 好ましくは20℃/時間以下、さらに好ましく 10℃/時間以下である。降温速度が過度に遅 と、晶析に時間を要する傾向となる。降温 度が過度に早いと、結晶サイズが小さくな 傾向があり、精製度合いが低下する傾向と る。
 晶析終了温度は、通常1℃以上、好ましくは 5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である。 また、通常30℃以下、好ましくは25℃以下、 らに好ましくは20℃以下である。晶析終了温 度が過度に高いと、収率が低くなる傾向があ る。晶析終了温度が過度に低いと、カダベリ ン・アジピン酸塩スラリーを移送する際に、 配管が閉塞しやすくなる傾向となる。

 晶析率は、濃縮液のカダベリン・アジピ 酸塩濃度と晶析終了温度により決められる 通常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、さ らに好ましくは10重量%以上である。また、通 常46重量%以下、好ましくは39重量%以下、さら に好ましくは35重量%以下に制御することが好 ましい。晶析率が過度に低いと、収率が低く なる傾向となる。晶析率が過度に高いと、カ ダベリン・アジピン酸塩に混入するリジン、 アルギニン等の3官能以上のアミノ酸等の不 物濃度が高くなる傾向となる。

 従って、本発明の第2の要旨に係るカダベ リン塩の製造方法としては、リジンに対して 、リジン脱炭酸酵素、リジン脱炭酸酵素活性 の向上した組み換え微生物又はリジン脱炭酸 酵素を産生する細胞もしくは当前記細胞の処 理物を使用して得られたカダベリン塩水溶液 を、カダベリン塩の濃度が50重量%以上69重量% 以下となるように濃縮した後、晶析率が1重 %以上、46重量%以下となるように晶析を行う とが好ましい。

 この時、カダベリン塩がカダベリン・ジ ルボン酸塩であることが好ましい。

 晶析後のカダベリン・アジピン酸塩スラリ は、常法に従い固液分離して、結晶として られる。例えば、遠心濾過を行う場合は、 液を振り切った後に、遠心濾過器が回転し いる状態で少量の脱塩水をシャワー状にふ かけ、カダベリン・アジピン酸塩に付着し いる母液をさらに洗い流すと精製度が上が 好ましい。
 脱塩水量は、wetケーキ(若干の水を含んだカ ダベリン・アジピン酸塩)に対して、通常1重 %以上、好ましくは5重量%以上である。また 通常40重量%以下、好ましくは30重量%以下で る。脱塩水量が過度に少ないと、洗浄効果 小さくなる傾向となる。脱塩水量が過度に いと、収率が低下する傾向にある。このよ にして得られた結晶を1番晶と称する。

 固液分離後の母液や洗浄液は回収して、 度、濃縮、晶析、固液分離を行い、2番晶を 得る。同様にして、3番晶、4番晶等を得るこ ができる。

 次に、微生物を、LDC活性が上昇するよう 改質する方法について例示する。尚、他の 胞についても、それに適するように下記の 法を適宜改変することによって、同様にLDC 性を上昇させることができる。

 LDC活性は、例えば、LDCをコードする遺伝 (LDC遺伝子)の発現を増強することによって 昇する。LDC遺伝子の発現の増強は、例えば LDC遺伝子のコピー数を高めることによって 成される。例えば、LDC遺伝子断片を、微生 で機能するベクター、好ましくは、マルチ ピー型のベクターと連結して組換えDNAを作 し、これを適当な宿主に導入して形質変換 ればよい。

 LDC遺伝子のコピー数を高めることは、LDC遺 子を微生物の染色体DNA上に多コピー存在さ ることによっても達成できる。微生物の染 体DNA上に遺伝子を多コピーで導入するには 例えば、染色体DNA上に多コピー存在する配 を標的に利用して相同組換えにより行う。
 染色体DNA上に多コピー存在する配列として 、例えば、レペティティブDNA、転移因子の 部に存在するインバーテッド・リピート等 利用できる。或いは、特開平2-109985号公報 開示されているように、目的遺伝子をトラ スポゾンに搭載してこれを転移させて染色 DNA上に多コピー導入することも可能である

 LDC活性の上昇は、上記の遺伝子増幅による 外に、染色体DNA上又はプラスミド上のLDC遺 子のプロモーター等の発現調節配列を強力 ものに置換することによっても達成される 例えば、lacプロモーター、trpプロモーター trcプロモーター等が強力なプロモーターと て知られている。
 また、国際公開第00/18935号パンフレットに 示されているように、遺伝子のプロモータ 領域に数塩基の塩基置換を導入し、より強 なものに改変することも可能である。これ のプロモーター置換又は改変によりLDC遺伝 の発現が強化され、LDC活性が上昇する。こ ら発現調節配列の改変は、遺伝子のコピー を高めることと組み合わせてもよい。

 発現調節配列の置換は、例えば、温度感 性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様に て行うことができる。E.coliの温度感受性複 起点を有するベクターとしては、例えば、 際公開第99/03988号パンフレットに記載され プラスミドpMAN997等が挙げられる。また、λ ァージのレッド・リコンビナーゼ(Red recombin ase)を利用した方法(Datsenko,K.A.,Proc.Natl.Acad.Sci.U SA(2000)97(12),6640-6645)によっても、発現調節配 の置換を行うことができる。

 LDC遺伝子としては、コードされるLDCが、 ジンの脱炭酸反応に有効利用できるもので れば特に制限されないが、例えば、バクテ ウム カダベリス、E.coli等の細菌や、ガラ 豆等の植物、さらには、特開2002-223770号公報 に記載の微生物のLDC遺伝子が挙げられる。

 宿主微生物としてE.coliを用いる場合は、E.co li由来のLDC遺伝子が好ましい。
 E.coliのLDC遺伝子としては、例えばcadA遺伝子 及びldc遺伝子(米国特許第5,827,698号)等が知ら ているが、これらの中ではcadA遺伝子が好ま しい。
 E.coliのcadA遺伝子は配列が知られており(N.Wat son et al.,Journal of bacteriology(1992)vol.174,p.530-54 0;S.Y.Meng et al.Journal of bacteriology(1992)vol.174,p. 2659-2668;GenBank accession M76411)、例えばその配 に基づいて作成したプライマーを用いたPCR より、E.coli染色体DNAから単離することがで る。
 このようなプライマーとしては、例えば配 番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列 号2(配列;ACCAAGCTGATGGG
TGAGATAGAGAATGAGTAAG)に示す塩基配列を有するプラ イマー等が挙げられる。

 取得されたLDC遺伝子とベクターを連結して 換えDNAを調製するには、通常はLDC遺伝子の 端に合うような制限酵素でベクターを切断 、T4 DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて前記 遺伝子とベクターを連結すればよい。
 E.coli用のベクターとしては、pUC18、pUC19、pST V29、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pBR322、pACYC 184、pMW219等が挙げられる。

 LDC遺伝子は、野生型であってもよいし、変 型であってもよい。例えばcadA遺伝子は、コ ードされるLDCの活性が損なわれない限り、1 しくは複数の位置での1若しくは数個のアミ 酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むLDC コードするものであってもよい。
 ここで、「数個」とは、アミノ酸残基のタ パク質の立体構造における位置や種類によ ても異なるが、具体的には通常2個以上、ま た、通常50個以下、好ましくは30個以下、よ 好ましくは10個以下である。

 上記のようなLDCと実質的に同一のタンパク をコードするDNAは、例えば部位特異的変異 によって、特定の部位のアミノ酸残基が置 、欠失、挿入、付加又は逆位を含むようにc adA遺伝子の塩基配列を改変することによって 得られる。
 また、上記のような改変されたDNAは、従来 られている変異処理によっても取得され得 。変異処理としては、変異処理前のDNAをヒ ロキシルアミン等でインビトロ処理する方 、及び変異処理前のDNAを保持する微生物、 えばエシェリヒア属細菌を、紫外線又はN- チル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジン(NTG)も しくはエチルメタンスルホン酸(EMS)等の通常 異処理に用いられている変異剤によって処 する方法等が挙げられる。

 上記のような変異を有するDNAを、適当な細 で発現させ、発現産物の活性を調べること より、通常LDCと実質的に同一のタンパク質 コードするDNAが得られる。
 また、変異を有するLDCをコードするDNA又は れを保持する細胞から、例えば、cadA遺伝子 (GenBank accession M76411)のコード領域の配列、 は同配列の一部を有するプローブとストリ ジェントな条件下でハイブリダイズし、か 、LDCと同等の活性を有するタンパク質をコ ドするDNAが得られる。

 ここで言う「ストリンジェントな条件」 は、いわゆる特異的なハイブリッドが形成 れ、非特異的なハイブリッドが形成されな 条件をいう。この条件を明確に数値化する とは困難であるが、一例を示せば、相同性 高いDNA同士、例えば70%以上、好ましくは80% 上、より好ましくは90%以上の相同性を有す DNA同士がハイブリダイズし、それにより相 性が低いDNA同士がハイブリダイズしない条 、或いは通常のサザンハイブリダイゼーシ ンの洗いの条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、 ましくは、60℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する 濃度でハイブリダイズする条件が挙げられ 。

 プローブとしてcadA遺伝子の一部の配列を 用いることもできる。そのようなプローブは 、例えば、公知のcadA遺伝子の塩基配列に基 いて作成したオリゴヌクレオチドをプライ ーとし、cadA遺伝子を含むDNA断片を鋳型とす PCRによって作製することができる。プロー として、300bp程度の長さのDNA断片を用いる 合には、ハイブリダイゼーションの洗いの 件は、例えば、50℃、2×SSC、0.1%SDS等が挙げ れる。

 LDCと実質的に同一のタンパク質をコード るDNAとして具体的には、公知のcadA遺伝子が コードするアミノ酸配列と、好ましくは70%以 上、より好ましくは80%以上、さらに好ましく は90%以上の相同性を有し、かつLDC活性を有す るタンパク質をコードするDNA等が挙げられる 。

 組換えDNAを微生物に導入するには、これま に報告されている形質転換法に従って行え よい。例えば、エシェリヒア・コリ K12に いて報告されているような、受容菌細胞を 化カルシウムで処理してDNAの透過性を増す 法(Mandel,M.and Higa,A.,J.Mol.Biol.,53,159(1970))があ 、バチルス・サチリスについて報告されて るような、増殖段階の細胞からコンピテン セルを調製してDNAを導入する方法(Ducan,C.H.,Wi lson,G.A.and Young,F.E.,Gene,1,153(1997))等がある。
 或いは、バチルス・サチリス、放線菌類及 酵母について知られているような、DNA受容 の細胞を、組換えDNAを容易に取り込むプロ プラスト又はスフェロプラストの状態にし 組換えDNAをDNA受容菌に導入する方法(Chang,S.a nd Choen,S.N.,Molec,Gen.Genet.,168,111(1979);Bibb,M.J.,Ward ,J.M.and Hopwood,O.A.,Nature,274,398(1978);Hinnen,A.,Hicks, J.B.and Fink,G.R.Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75 1929(1978))も 用できる。また、電気パルス法(特開平2-2077 91号公報)によっても、微生物の形質転換を行 うことができる。

 LDCを産生する微生物又は細胞を得るための 養は、用いる微生物又は細胞に応じて、LDC 産生に適した方法によって行えばよい。
 例えば、培地は、炭素源、窒素源、無機イ ン及び必要に応じその他の有機成分を含有 る通常の培地でよい。炭素源としては、グ コース、ラクトース、ガラクトース、フラ トース、アラビノース、マルトース、キシ ース、トレハロース、リボースや澱粉の加 分解物等の糖類;グリセロール、マンニトー ルやソルビトール等のアルコール類;グルコ 酸、フマール酸、クエン酸やコハク酸等の 機酸類等を用いることができる。

 窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化 ンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機 ンモニウム塩、大豆加水分解物等の有機窒 、アンモニアガス、アンモニア水等を用い ことができる。
 有機微量栄養素としては、ビタミンB1等の タミン類、アデニンやRNA等の核酸類等の要 物質又は酵母エキス等を適量含有させるこ が望ましい。これらの他に、必要に応じて リン酸カルシウム、硫酸マグネシウム、鉄 オン、マンガンイオン等が少量含まれてい もよい。

 培養は、エシェリヒア・コリの場合は、好 的条件下で16時間~72時間程度実施するのが く、培養温度は通常30℃~45℃に、培養中のpH 通常5~8に制御する。なお、pH調整には無機 いは有機の酸性又はアルカリ性物質、更に ンモニアガス等を使用することができる。
 尚、LDC遺伝子が、誘導可能なプロモーター よって発現が調節されている場合には、通 誘導剤を培地に含有する。

 培養後、細胞は、遠心分離機や膜により めることにより、培養液から回収すること できる。細胞は、そのまま用いてもよいが LDCを含むそれらの処理物を用いる場合は、 胞を超音波、フレンチプレス、又は酵素的 理により破砕し酵素を抽出させ、無細胞抽 液とし、さらにそこからLDCを精製する場合 は、常法に従い、硫安塩折、各種クロマト ラフィーを使用すること等によって精製す ことができる。

(ポリアミド樹脂)
 本発明の第2の要旨が適用されるポリアミド 樹脂は、カダベリン単位、ジカルボン酸単位 を構成成分として含み、本発明の第2の要旨 係る効果を損なわない範囲において、それ 外の共重合成分が含有されていてもよい。

 この場合、共重合成分としては、例えば 6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン 、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル 息香酸等のアミノ酸;ε-カプロラクタム、ω- ウロラクタム等のラクタム;シュウ酸、マロ ン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、 ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セ バシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、 ブラシリン酸、テトラデカン二酸、ペンタデ カン二酸、オクタデカン二酸等の脂肪族ジカ ルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の 環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸 テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等 芳香族ジカルボン酸;

エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン 1,4-ジアミノブタン、1,6-ジアミノヘキサン、 1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン 1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1 ,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカ ン、1,13-ジアミノトリデカン、1,14-ジアミノ トラデカン、1,15-ジアミノペンタデカン、1,1 6-ジアミノヘキサデカン、1,17-ジアミノヘプ デカン、1,18-ジアミノオクタデカン、1,19-ジ ミノノナデカン、1,20-ジアミノエイコサン 2-メチル-1,5-ジアミノペンタン等の脂肪族ジ ミン;シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-ア ノヘキシル)メタン等の脂環式ジアミン;キシ リレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げ られる。

 また、本発明の第2の要旨で使用するジカル ボン酸は、前述した芳香族ジカルボン酸、脂 肪族ジカルボン酸、脂環式ジカルボン酸と同 様の化合物を挙げることができる。
 これらの共重合成分は1種を単独で用いても よく、2種以上を併用してもよい。

(ポリアミド樹脂の製造方法)
 本発明の第2の要旨が適用されるポリアミド 樹脂の製造方法としては、公知の方法が使用 でき、具体的には「ポリアミド樹脂ハンドブ ック」(日刊工業社出版:福本修編)等に開示さ れている。例えば、ポリアミド56の製造方法 しては、カダベリン・アジピン酸塩を、水 共存下で混合し、加熱して脱水反応を進行 せる方法(加熱重縮合)が好ましい。より具 的には、本発明の第2の要旨におけるポリア ド樹脂は、カダベリン・アジピン酸塩等の ダベリン塩の重縮合反応により、またはカ ベリン・アジピン酸塩等の前記カダベリン と他の共重合成分との重縮合反応により得 れる。

 なお、本発明の第2の要旨における上記加 熱重縮合とは、ポリアミド樹脂の製造におけ る重合反応物の最高到達温度を200℃以上に上 昇させる製造プロセスである。最高到達反応 温度の上限としては、重合反応時の熱安定性 を考慮して、通常300℃以下である。重合方式 には特に制限は無く回分式、連続方式が採用 できる。

 上記の方法で製造されたポリアミド樹脂 加熱重縮合後に更に固相重合することがで る。これにより、ポリアミド樹脂の分子量 高くすることができる。固相重合は、例え 、100℃以上、当該樹脂の融点以下の温度で 空中、或いは不活性ガス中で加熱すること より行うことができる。

 本発明の第2の要旨が適用されるポリアミド 樹脂の重合度は、特に制限がなく、濃度0.01g/ mLとした98%硫酸溶液の25℃における相対粘度 1.5以上が好ましく、2.0以上がさらに好まし 、また、8.0以下が好ましく、5.5以下がさら 好ましい。
 相対粘度が過度に低いと、実用的強度が不 分であり、一方、過度に高いと、流動性が 下し、成形加工性が損なわれる可能性があ 。
 相対粘度は、成形性の観点から、フィルム 繊維、モノフィラメント等の押出成形では3 .0~5.5、射出成形では2.0~3.5が特に好ましい。

 本発明の第2の要旨におけるポリアミド樹脂 には、本発明の第2の要旨に係る効果を損な ない範囲で他の成分を、ポリアミド樹脂の 合から成形までの任意の段階で配合するこ ができる。
 このような他の成分としては、例えば、酸 防止剤や熱安定剤(ヒンダードフェノール系 、ヒドロキノン系、ホスファイト系及びこれ らの置換体、ハロゲン化銅、ヨウ素化合物等 );耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系 、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系 、ヒンダードアミン系等);離型剤及び滑剤(脂 肪族アルコール、脂肪族アミド、脂肪族ビス アミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス 等);顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、 カーボンブラック等);染料(ニグロシン、アニ リンブラック等);可塑剤(p-オキシ安息香酸オ チル、N-ブチルベンゼンスルホンアミド等);

帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオ 系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオ 系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビ ンモノステアレート等の非イオン系帯電防 剤、ベタイン系両性帯電防止剤等);難燃剤( ラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム 水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリ 酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭 化ポリフェニレンオキシド、臭素化ポリカ ボネート、臭素化エポキシ樹脂又はこれら 臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み わせ等);他の重合体(他のポリアミド、ポリ チレン、ポリプロピレン、ポリエステル、 リカーボネート、ポリフェニレンエーテル ポリフェニレンスルフィド、液晶ポリマー ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ABS 脂、SAN樹脂、ポリスチレン等)等が挙げられ る。他の成分は、1種を単独で用いてもよく 2種以上を任意の比率及び組み合わせで用い もよい。
 これらの他の成分は、ドライブレンド又は 出機を用いて溶融混練するのが好ましい。

 また、本発明の第2の要旨のポリアミド樹脂 をフィルム用途に用いる場合には、滑り性向 上のため、タルク、カオリン、焼成カオリン 、シリカ、ゼオライト等の無機フィラー、特 に微粒子状の無機フィラーを配合することが 好ましい。更に好ましくは、無機フィラーと 離型剤及び/または滑剤とを併用する態様が げられる。フィラーは、1種を単独で用いて よく、2種以上を任意の比率及び組み合わせ で用いてもよい。
 無機フィラーの配合量としては、ポリアミ 樹脂100重量部当り0.005重量部~0.1重量部が好 しく用いられる。また、離型剤及び/または 滑剤は、ポリアミド樹脂100重量部当り0.01重 部~0.5重量部が好ましく用いられる。

 また、本発明の第2の要旨のポリアミド樹 脂は、射出成形、フィルム成形、溶融紡糸、 ブロー成形、真空成形等の任意の成形方法に より、所望の形状に成形することができる。 成形品としては、例えば、射出成形品、フィ ルム、シート、フィラメント、テーパードフ ィラメント、繊維等が挙げられる。また、ポ リアミド樹脂は、接着剤、塗料等にも使用す ることができる。

 また、本発明の第2の要旨のポリアミド樹 脂の具体的な用途例としては、自動車・車両 関連部品として、例えば、インテークマニホ ールド、ヒンジ付きクリップ(ヒンジ付き成 品)、結束バンド、レゾネーター、エアーク ーナー、エンジンカバー、ロッカーカバー シリンダーヘッドカバー、タイミングベル カバー、ガソリンタンク、ガソリンサブタ ク、ラジエータータンク、インタークーラ タンク、オイルリザーバータンク、オイル ン、電動パワステギヤ、オイルストレーナ 、キャニスター、エンジンマウント、ジャ クションブロック、リレーブロック、コネ ター、コルゲートチューブ、プロテクター の自動車用アンダーフード部品;ドアハンド ル、フェンダー、フードバルジ、ルーフレー ルレグ、ドアミラーステー、バンパー、スポ イラー、ホイールカバー等の自動車用外装部 品;カップホルダー、コンソールボックス、 クセルペダル、クラッチペダル、シフトレ ー台座、シフトレバーノブ等の自動車用内 部品等が挙げられる。

 さらに、本発明の第2の要旨のポリアミド 樹脂は、釣り糸、漁網等の漁業関連資材、ス イッチ類、超小型スライドスイッチ、DIPスイ ッチ、スイッチのハウジング、ランプソケッ ト、結束バンド、コネクタ、コネクタのハウ ジング、コネクタのシェル、ICソケット類、 イルボビン、ボビンカバー、リレー、リレ ボックス、コンデンサーケース、モーター 内部部品、小型モーターケース、ギヤ・カ 、ダンシングプーリー、スペーサー、イン ュレーター、キャスター、端子台、電動工 のハウジング、スターターの絶縁部分、ヒ ーズボックス、ターミナルのハウジング、 アリングリテーナー、スピーカー振動板、 熱容器、電子レンジ部品、炊飯器部品、プ ンタリボンガイド等に代表される電気・電 関連部品、家庭・事務電気製品部品、コン ューター関連部品、ファクシミリ・複写機 連部品、機械関連部品等各種用途に使用す ことができる。

(ポリアミド樹脂フィルムの成形方法)
 本発明の第2の要旨におけるポリアミド樹脂 フィルムは、公知の方法で成形することがで きる。即ち、本発明の第2の要旨における成 品は、前記ポリアミド樹脂を成形してなる 例えば、ポリアミド樹脂に離型剤や滑剤等 ドライブレンドしたポリアミド樹脂組成物 溶融体を連続的にT-ダイより押出し、キャス ティングロールにて冷却しながらフィルム状 に成形するT-ダイ法;環状のダイスより連続的 に押出し、水を接触させて冷却する水冷イン フレーション法;同じく環状のダイスより押 し、空気によって冷却する空冷インフレー ョン法等が用いられる。また、これらの成 法で他の材料を同時に押し出す共押出法で 層のフィルムを得ることもできる。なお、 形品は、中でも、フィルム、射出成形品、 維、モノフィラメントであることが好まし 。

 必要に応じて一軸または二軸延伸フィルム して使用することも可能である。延伸方法 公知の方法が応用できる。例えば、T-ダイ にて成形したフィルムの場合、縦延伸(一軸 伸)はロール方式を用いる。さらに横方向に 延伸する際には、テンター方式を使用した逐 次二軸延伸法が挙げられる。環状ダイより成 形したチューブ状フィルムについては、上記 の逐次二軸延伸法以外に縦横同時に延伸でき るチューブラー延伸法が用いられる。
 共押出しフィルムについても同様の方法で 層を同時に延伸(共延伸)することができる 尚、延伸倍率は縦方向、横方向とも通常2倍 上、また、通常4倍以下、好ましくは3.5倍以 下である。

 本発明の第2の要旨におけるポリアミド樹脂 のフィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、 ましくは70μm以下である。フィルムの厚みが 過度に小さいと強度が不充分になりやすく、 過度に大きいと繰り返し屈曲疲労性が低下し やすい可能性がある。
 フィルムがポリアミド樹脂単層フィルムの 合、より好ましくは5μm以上、さらに好まし くは10μm以上、また、より好ましくは50μm以 、更に好ましくは30μm以下であり、多層フィ ルムの場合、ポリアミド樹脂層としての厚み は、より好ましくは2μm以上、さらに好まし は5μm以上、また、より好ましくは50μm以下 更に好ましくは30μm以下である。

 本発明の第2の要旨におけるポリアミド樹脂 のフィルムは、印刷性の改良や、ラミネート 性(接着性)の改良のために片面、または両面 コロナ処理した後使用することもできる。
 本発明の第2の要旨では、射出成形方法によ り、所望の形状に成形されたポリアミド樹脂 の射出成形品を得ることができる。

[C.第3の要旨]
 最後に、本発明の第3の要旨について説明す る。

 なお、以下の記載では、まず、本発明の 3の要旨に係るカダベリン及び/又はカダベ ン塩の溶液(以下「本発明の第3の要旨に係る カダベリン類溶液」という場合がある。)に いて説明し、続いて、本発明の第3の要旨に るカダベリン及び/又はカダベリン塩の製造 方法(以下「本発明の第3の要旨に係るカダベ ン類の製造方法」或いは単に「本発明の第3 の要旨に係る製造方法」という場合がある。 )について説明し、更に、本発明の第3の要旨 係るカダベリン類溶液からカダベリン類を 製する方法と、リジン脱炭酸酵素(Lysine deca rboxylase:LDC)活性を高めるべく微生物を改変す 方法について説明する。

[I.カダベリン類溶液]
 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類溶液 は、リジン及び/又はリジン塩にリジン脱炭 酵素(LDC)を作用させて得られたカダベリン及 び/又はカダベリン塩と、溶媒とを備えてな 。なお、リジン類にLDCを作用させてカダベ ン類を得る方法については、[II.カダベリン の製造方法]の欄で後述する。

 本発明において「カダベリン」とは、1,5-ペ ンタンジアミン(H 2 N(CH 2 ) 5 NH 2 )をいう。カダベリンは、ポリマー原料や医 中間体の合成原料として有用な化合物であ 。

 本発明において「カダベリン塩」とは、カ ベリン及び酸から形成される塩のことを言 。
 カダベリンとともに塩を形成する酸の種類 制限はない。無機酸でも有機酸でもよく、 た、一価の酸でも二価以上の酸でもよい。 の例としては、塩酸、硫酸、硝酸、炭酸、 ルボン酸、リン酸、スルホン酸等が挙げら る。カルボン酸の具体例としては、ギ酸、 酸、アジピン酸、グルタル酸、コハク酸、 バシン酸、メタンスルホン酸、エタンスル ン酸等が挙げられる。中でも、ナイロン等 ポリアミドの製造用途に使用する観点から 、酸としてはカルボン酸が好ましく、アジ ン酸がより好ましい。これらの酸は何れか 種を単独で用いてもよく、二種以上を任意 組み合わせ及び比率で併用してもよい。

 カダベリン塩1分子を構成するカダベリン 及び酸の分子数も任意に選択し得る。カダベ リン塩1分子あたり、カダベリン及び酸が共 1分子であってもよく、カダベリン及び酸の 方又は双方が2分子以上であってもよい。例 えば、二価の塩基であるカダベリンと二価の 酸とから構成される塩の場合、一般的にはカ ダベリン1分子と二価の酸(例えばアジピン酸) 1分子とからカダベリン塩1分子が構成される 、他の形態を排除するものではなく、2分子 以上のカダベリン及び/又は2分子以上の二価 酸から構成されたカダベリン塩が含まれて てもよい。

 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類溶液 は、カダベリンのみを含有していてもよく、 カダベリン塩のみを含有していてもよく、カ ダベリン及びカダベリン塩の双方を含有して いてもよい。但し、本発明の第3の要旨に係 カダベリン類溶液がカダベリン塩を含有す 場合、カダベリン塩の一部は通常、カダベ ン(又はカダベリンのイオン)と酸(又は酸の オン)とに解離した状態で溶液中に存在する 本発明において「カダベリン類溶液」即ち カダベリン及び/又はカダベリン塩の溶液」 とは、このような状態の溶液をも含む概念で ある。
 また、本発明の第3の要旨に係るカダベリン 類溶液がカダベリン塩を含有する場合、カダ ベリン塩の種類は一種のみでもよく、二種以 上であってもよい。

 溶媒としては、上述のカダベリン及び/又 はカダベリン塩を溶解させることが可能であ れば、その種類は任意である。具体的な溶媒 の種類は、本発明に係るカダベリン類溶液の 調製の手法や用途等に応じて選択される。ま た、何れか一種の溶媒を単独で用いてもよく 、二種以上の溶媒を任意の組み合わせ及び比 率で混合して用いてもよい。

 溶媒としては通常、水及び/又は有機溶媒 が使用される。有機溶媒の種類は制限される ものではなく、使用する触媒等の条件に応じ て選択すればよい。一般的な有機溶媒の例と しては、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2 ,3-トリクロロプロパン、テトラクロルエチレ ン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、1,2-ジクロロ エタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類;メ ノール、エタノール、プロパノール、ブタ ール、ペンタノール、ヘキサノール、シク ヘキサノール、オクタノール等のアルコー 類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル ソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、 プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リ ノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエ ステル類;シクロヘキサン、ヘキサン、オク ン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエ 、キシレン、メシチレン、ジフェニルメタ 、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭 水素類;ジメチルスルホキシド、スルホラン 等のスルホキシド類;N,N-ジメチルホルムアミ 、N,N,N’,N’-テトラメチル尿素、1,3-ジメチ イミダゾリジノン等のアミド類;テトラヒド ロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、 ジエチレングリコールジメチルエーテル、ト リエチレングリコールジメチルエーテル、テ トラエチレングリコールジメチルエーテル等 のエーテル類;等が挙げられる。これらの溶 は、何れか一種を単独で用いてもよく、二 以上を任意の組み合わせ及び比率で混合し 用いてもよい。

 特に、LDCによるカダベリン及び/又はカダ ベリン塩の製造反応時に使用した溶媒をその まま使用する場合、溶媒としては通常、水又 は水を主成分とする混合溶媒が用いられる。 ここで「主成分」とは、混合溶媒の通常50重 %以上、好ましくは80重量%以上、より好まし くは90重量%以上を占める成分をいう。

 なお、LDCを用いた反応によるカダベリン び/又はカダベリン塩の製造後、得られたカ ダベリン及び/又はカダベリン塩に対して精 等の後処理やポリアミドへの変換を行なう にも、水及び/又は有機溶媒が使用される場 がある。この場合、反応時に使用した溶媒 そのまま使用してもよく、異なる溶媒を使 してもよい。

 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類溶 液におけるカダベリン及び/又はカダベリン の濃度(カダベリン塩の場合はカダベリン換 濃度)は、カダベリン及び/又はカダベリン が溶媒に溶解可能な範囲内であれば任意で るが、工業的な観点からは、通常10g/L以上、 好ましくは20g/L以上、また、通常500g/L以下、 ましくは400g/L以下の範囲であることが望ま い。なお、カダベリン類溶液におけるカダ リン及び/又はカダベリン塩の濃度(カダベ ン塩の場合はカダベリン換算濃度)は、後述 る溶液中におけるカダベリンのモル濃度と 様の手法により求めることが可能である。

 また、本発明の第3の要旨に係るカダベリ ン類溶液は、上述の溶媒並びにカダベリン及 び/又はカダベリン塩に加えて、その他の一 又は二種以上の成分を含有していてもよい その他の成分の種類や含有量は任意であり 通常はカダベリン類溶液の製法や用途に応 て選択される。

 そして、本発明の第3の要旨に係るカダベ リン類溶液は、溶液中におけるカダベリンに 対する加水分解アミノ酸のモル比率が、通常 0.008以下、好ましくは0.0075以下、より好まし は0.007以下、更に好ましくは0.0065以下、特 好ましくは0.006以下であることを特徴として いる。この特徴は、本発明の第3の要旨に係 カダベリン類溶液が、アミノ酸、タンパク 、ペプチド等の不純物の含有量が比較的少 く、高純度であることを表わしている。逆 この比率が高いと、カダベリン類溶液をポ アミド樹脂フィルム等の原料として用いた 合にフィッシュアイ等の表面外観の欠陥が 大する場合がある。ここで、「溶液中にお るカダベリンに対する加水分解アミノ酸の ル比率」とは、溶液中におけるカダベリン モル濃度に対する、溶液中における加水分 アミノ酸のモル濃度の比率を指す。

 加えて、本発明の第3の要旨に係るカダベ リン類溶液は、溶液中におけるカダベリンに 対する遊離リジン及び遊離アルギニンのモル 比率が、通常0.003以下、好ましくは0.0025以下 より好ましくは0.002以下、更に好ましくは0. 0015以下であることが望ましい。更には、溶 中におけるカダベリンに対する加水分解リ ン及び加水分解アルギニンのモル比率が、 常0.003以下、好ましくは0.0025以下、より好ま しくは0.002以下、更に好ましくは0.0015以下で ることが望ましい。これらの比率が高過ぎ と、カダベリン類溶液をポリアミド等の材 とした場合に、溶液中のリジンやアルギニ が架橋してゲルの原因となり、射出成形品 おいては機械物性の低下、フィルムにおい はF/E発生による表面外観の低下や延伸時の 断原因となり、フィラメントにおいても延 時の破断原因となる場合がある。ここで、 溶液中におけるカダベリンに対する遊離リ ン及び遊離アルギニンのモル比率」とは、 液中におけるカダベリンのモル濃度に対す 、溶液中における遊離リジン及び遊離アル ニンの合計モル濃度の比率を指す。また、 溶液中におけるカダベリンに対する加水分 リジン及び加水分解アルギニンのモル比率 とは、溶液中におけるカダベリンのモル濃 に対する、溶液中における加水分解リジン び加水分解アルギニンの合計モル濃度の比 を指す。

 更に、本発明の第3の要旨に係るカダベリ ン類溶液は、溶液中におけるカダベリンに対 する遊離アミノ酸のモル比率が、通常0.003以 、好ましくは0.0029以下、より好ましくは0.00 28以下であることが望ましい。この比率が高 ぎると、カダベリン類溶液をポリアミド樹 フィルム等の原料として用いた場合に、フ ッシュアイ等の表面外観の欠陥が増大する 合がある。ここで、「溶液中におけるカダ リンに対する遊離アミノ酸のモル比率」と 、溶液中におけるカダベリンのモル濃度に する、溶液中における遊離アミノ酸のモル 度の比率を指す。

 なお、溶液中におけるカダベリンのモル 度とは、溶液に存在するカダベリン分子及 カダベリンイオンのモル濃度を表わす。こ で、カダベリンイオンは、解離したイオン して存在しているか、他のイオンと結合し 塩を形成しているかを問わないものとする

 溶液中におけるカダベリンのモル濃度は 種々の分析機器で測定することが可能であ 。分析手法は限定されないが、イオンクロ トグラフィー、ガスクロマトグラフィー、 体クロマトグラフィー等を用いて測定する が一般的である。これらのクロマトグラフ ーによって測定を行なう場合、測定対象と る溶液をそのまま、或いは必要に応じて所 の濃度範囲となるように希釈して測定に供 る。また、ガスクロマトグラフィー又は液 クロマトグラフィーで測定を行なう場合は 溶液中の成分が有する特定の官能基(主にア ミノ基)を誘導体化してから、測定に供する とが好ましい。

 また、溶液中における遊離アミノ酸のモ 濃度とは、溶液中に遊離して存在するアミ 酸(アミノ酸分子及びアミノ酸イオン。ここ で、アミノ酸イオンは、解離したイオンとし て存在しているか、他のイオンと結合して塩 を形成しているかを問わない。)のモル濃度 表わす。

 溶液中における遊離アミノ酸のモル濃度 、種々の分析機器で測定することが可能で る。分析手法は限定されないが、アミノ酸 析計、イオンクロマトグラフィー、ガスク マトグラフィー、液体クロマトグラフィー を用いて測定するのが一般的である。これ のクロマトグラフィーによって測定を行な 場合、測定対象となる溶液をそのまま、或 は必要に応じて所定の濃度範囲となるよう 希釈して測定に供する。また、ガスクロマ グラフィー又は液体クロマトグラフィーで 定を行なう場合は、溶液中の成分が有する 定の官能基(主にアミノ基)を誘導体化して ら、測定に供することが好ましい。

 また、溶液中における加水分解アミノ酸 モル濃度とは、溶液中の成分を加水分解し 後における遊離アミノ酸のモル濃度を表わ 。即ち、加水分解アミノ酸とは、加水分解 の溶液中に存在する遊離アミノ酸と、タン ク質やペプチド等の分子中で他の成分と結 (加水分解により分解される結合)を形成し いるアミノ酸とを包括する概念である。

 溶液中における加水分解アミノ酸のモル 度は、例えば[実施例]の欄で後述する条件 より、塩酸を用いて溶液中のタンパク質や プチドの加水分解を行なった上で、加水分 後の溶液中における遊離アミノ酸のモル濃 を上述の手法で測定することにより、得る とが可能である。

 また、溶液中における遊離リジン及び遊 アルギニンのモル濃度は、溶液中に遊離し 存在するリジン及びアルギニン(リジン分子 及びリジンイオン、並びにアルギニン分子及 びアルギニンイオン。ここで、リジンイオン 及びアルギニンイオンは、解離したイオンと して存在しているか、他のイオンと結合して 塩を形成しているかを問わない。)のモル濃 を表わす。

 また、溶液中における加水分解リジン及 加水分解アルギニンのモル濃度とは、溶液 の成分を加水分解した後における遊離リジ 及び遊離アルギニンのモル濃度を表わす。 ち加水分解リジン及び加水分解アルギニン は、加水分解前の溶液中に存在する遊離リ ン及び遊離アルギニンと、タンパク質やペ チド等の分子中で他の成分と結合(加水分解 により分解される結合)を形成しているリジ 及びアルギニンとを包括する概念である。

 溶液中における遊離リジン及び遊離アルギ ンのモル濃度は、上述の遊離アミノ酸のモ 濃度の測定手法と同様の手法を用いて測定 ることができる。
 また、溶液中における加水分解リジン及び 水分解アルギニンのモル濃度は、上述の加 分解アミノ酸のモル濃度の測定手法と同様 手法を用いて測定することができる。

 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類溶 液は、リジン類にLDCを作用させて得られたカ ダベリン類を含有するものであれば、その製 造方法は制限されるものではないが、以下に 説明する方法(本発明の第3の要旨に係るカダ リン類の製造方法)により製造することが好 ましい。

[II.カダベリン類の製造方法]
 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類の製 造方法は、リジン及び/又はリジン塩にリジ 脱炭酸酵素(LDC)を作用させることにより、カ ダベリン及び/又はカダベリン塩を製造する のである。

 原料としては、リジン及び/又はリジン塩を 用いる。また、通常はこれらに加えて、更に 酸を原料として用いる。
 リジンは、酵素的脱炭酸反応によりカダベ ンを生成するものであれば、L-リジン、D-リ ジンの何れであってもよく、これらが任意の 比率で混合されたものであってもよいが、通 常はL-リジンが好ましい。
 リジン塩は、リジンと、酸及び/又は塩基と から構成される塩であるが、好ましくはリジ ン及び酸から構成される塩である。リジン塩 を構成する酸の種類やその好ましい例は、上 述のカダベリン塩を構成する酸として挙げた ものと同様である。リジン塩は一種を単独で 用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ 及び比率で併用してもよい。

 また、原料として酸を用いる場合、その種 や好ましい例も、上述のカダベリン塩を構 する酸として挙げたものと同様である。酸 一種を単独で用いてもよく、二種以上を任 の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
 なお、原料となるリジン、リジン塩、酸の み合わせや比率等の詳細は、目的とするカ ベリン及び/又はカダベリン塩の詳細を考慮 して、適宜選択することが好ましい。

 反応は通常、溶媒の存在下で行なう。溶 としては通常、上述のように、水又は水を 成分とする混合溶媒が用いられる。水と混 される溶媒は制限されないが、通常は水と 和性を有する親水性有機溶媒が用いられる 親水性有機溶媒の例としては、アルコール 、カルボン酸、エステル類等が挙げられる アルコール類の例としては、メタノール、 タノール、プロパノール、イソプロパノー 、ブタノール、イソブタノール、t-ブタノ ル、ペンタノール、イソペンタノール、ヘ サノール、エチレングリコール、1,2-プロパ ジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタ ジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジ オール、グリセリン等が挙げられる。カルボ ン酸の例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン 酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、 ヘキサン酸等が挙げられる。エステル類の例 としては、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピ オン酸メチル、プロピオン酸エチル等が挙げ られる。親水性有機溶媒は一種を単独で使用 してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及 び比率で併用してもよい。

 なお、通常は酸によって反応液のpHを調整 るため、他のpH調整剤や緩衝剤を併用する必 要はないが、溶媒として緩衝液を用いてもよ い。緩衝液としては、酢酸ナトリウム緩衝液 等が挙げられる。但し、カダベリンと酸との 塩を形成させるという点からは、緩衝剤等は 用いないか、用いる場合であっても低濃度に 抑えることが好ましい。
 但し、溶媒の詳細についても、目的とする ダベリン類溶液の詳細を考慮して、適宜選 することが好ましい。

 上述のリジン及び/又はリジン塩、並びに 必要に応じて用いられる酸を、上述の溶媒に 溶解させることにより、反応液を調製する。

 ここで、原料となるリジン及び/又はリジ ン塩並びに酸は、反応開始前又は反応開始時 に全量を反応液に含有させてもよく、LDC反応 の進行に応じて分割して反応液に加えてもよ いが、反応開始時におけるリジン及び/又は ジン塩と酸との比率を調整することにより 反応液のpHが酵素的脱炭酸反応に適したpHと るように調整することが好ましい。具体的 は、反応液のpHを、通常4.0以上、好ましく 5.0以上、より好ましくは5.5以上、また、通 8.0以下、好ましくは7.5以下、より好ましく 7.0以下の範囲である。反応液のpHが低過ぎて も高過ぎても、充分な反応速度が得られない 場合がある。なお、以下の記載では、このよ うに反応液のpHを酵素的脱炭酸反応に適したp Hに調整することを、「中和」と称する場合 ある。

 なお、反応液中におけるリジンの濃度は 限されないが、通常10g/L以上、好ましくは20 g/L以上、また、通常500g/L以下、好ましくは400 g/L以下の範囲とすることが望ましい。

 なお、生産速度及び反応収率向上のため 反応液に補酵素としてビタミンB6を含有さ ることが好ましい。ビタミンB6の例としては 、ピリドキシン、ピリドキサミン、ピリドキ サル、ピリドキサルリン酸等が挙げられる。 これらは一種を単独で用いてもよく、二種以 上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても よい。中でも、ピリドキサルリン酸が好まし い。

 ビタミンB6の使用量は特に制限されないが 通常、反応液に対して0.01mM以上、0.5mM以下の 範囲が好ましい。ビタミンB6の使用量が少な ぎると反応速度が遅くなる場合があり、多 ぎると反応液の色が黄色くなる場合がある
 ビタミンB6を反応液に含有させる時期や手 に制限はない。反応前に反応液に混合して よく、反応中に反応液に加えてもよい。ま 、一度に反応液に混合してもよく、二度以 に分割して、異なる時期に反応液に含有さ てもよい。

 上述の中和された反応液にリジン脱炭酸 素(LDC)を加えて、リジンの脱炭酸反応を行 う。LDCとしては、リジンに作用してカダベ ンを生成させるものであれば、その種類に 限はない。

 本発明の第3の要旨では、LDCを産生する細 胞として、微生物を用いる(以下、微生物を 菌体」という場合がある。)。微生物として 、細菌、真核細胞等が挙げられる。細菌と ては、大腸菌(Escherichia coli)等のエシェリヒ ア属細菌、ブレビバクテリウム・ラクトファ ーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)等のコリ 型細菌、バチルス・サチリス(Bacillus subtilis )等のバチルス属細菌、セラチア・マルセッ ンス(Serratia marcescens)等のセラチア属細菌等 挙げられる。真核細胞としては、サッカロ イセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等 挙げられる。中でも、微生物としては細菌 好ましく、エシェリヒア属細菌がより好ま く、大腸菌が特に好ましい。微生物は、LDC 産生する限り、野生株でもよく、変異株で ってもよい。また、LDC活性が上昇するよう 改変された組換え株であってもよい。なお 組換え細胞の詳細については後述する。

 LDCを産生する細胞を用いる場合は、細胞 そのまま反応液に含有させてもよく、LDCを む細胞処理物としてから反応液に含有させ もよい。細胞処理物としては、細胞の破砕 及びその分画物が挙げられる。

 ここで、本発明の第3の要旨に係る製造方 法は、反応に使用するリジンの総重量に対す る、反応に使用する菌体(微生物)の乾燥菌体 算重量の比率を、通常0.002以下、好ましく 0.0015以下、より好ましくは0.001以下とするこ とを特徴としている。この比率が高いと、菌 体を多量に作製する必要があり、経済的に合 理的でない場合がある。また、菌体由来のタ ンパク質やペプチド等が不純物としてポリア ミド中に取り込まれ、表面欠陥上の原因とな る場合がある。

 なお、反応に使用するリジンの総重量と 、反応開始時に反応系内に存在するリジン 重量と、反応中に反応系に加えたリジンの 量との総和を表わす。

 また、菌体の乾燥菌体換算重量とは、乾 して水分を含まない菌体の重量を表わす。 体の乾燥菌体換算重量は、例えば、菌体を む液(菌体液)から、遠心分離やろ過等の方 で菌体を分離し、重量が一定になるまで乾 し、その重量を測定することにより求める とができる。

 リジン溶液にLDCを加えて反応を開始した は、反応の進行に伴い、リジンから遊離さ る炭酸ガスが反応液から放出され、通常はp Hが上昇する。従って、反応液のpHが前記範囲 となるように、通常は反応液に酸を加えてpH 調整する。酸は反応液に連続的に加えても く、pHが前記範囲に維持される限り、分割 て加えてもよい。

 反応時の条件は、LDCがリジンに作用して ダベリンを生成させる条件であれば特に制 はないが、一般的には以下の通りである。

 反応方式は、連続式でもバッチ式でもよ 。反応中に酸の混合を容易に行なう観点か は、バッチ式で反応を行なうことが好まし 。また、LDC並びにLDCを産生する細胞及びそ 処理物のうち一種又は二種以上を固定化し 担体を用いた移動床カラムクロマトグラフ ーによって反応を行なうこともできる。そ 場合は、反応系のpHが所定の範囲に維持さ たまま反応が進行するように、リジン及び/ は酸をカラムの適当な部位に注入すればよ 。

 反応液の温度は、通常20℃以上、好まし は30℃以上、また、通常60℃以下、好ましく 40℃以下の範囲とすることが望ましい。反 液の温度が低過ぎると反応が進行しない場 があり、高過ぎると酵素が失活する場合が る。

 反応時の雰囲気は任意であるが、通常は空 、炭酸ガス又は窒素ガス雰囲気下が好まし 。
 反応時の圧力も任意であるが、通常は常圧 いはそれに近い圧力下で行なう。
 また、反応液に攪拌を加えてもよい。

 なお、反応時には、反応液への通気量を 定の範囲にすることが望ましい。具体的に 通常0.4vvm以下、好ましくは0.2vvm以下、より ましくは0.1vvm以下、更に好ましくは0vvm(通 なし)とすることが望ましい。反応液への通 量をこの範囲に収めることにより、LDCの触 活性を向上させ、生産速度を高めることが 能となる。なお、「vvm」はVolume per Volume p er Minuteの略で、1分間における単位体積当た の通気量を表わす単位である。

 以上の手順により、リジンの酵素的脱炭 反応によってカダベリンが生成し、通常は れに伴って反応液のpHが上昇する。よって 酸を用いて反応液を逐次中和することによ 、酵素反応が良好に進行する。反応によっ 生成するカダベリンは、通常はカダベリン として反応液中に蓄積する。

 以上の反応により得られた反応液は、そ ままの状態で、或いは処理を加えることに り、本発明の第3の要旨に係るカダベリン類 溶液として用いることが可能である。処理の 内容は任意であるが、例としては、反応液の 滅菌・濾過や、溶媒の除去・追加によるカダ ベリン及び/カダベリン塩の濃度調整等の処 が挙げられる。

[III.カダベリン類の精製方法]
 次に、本発明の第3の要旨に係るカダベリン 類溶液から晶析によりカダベリン類を精製す るための手法について説明する。なお、以下 の記載では、本発明の第3の要旨に係るカダ リン類溶液がカダベリン・アジピン酸塩水 液であり、精製により得られるカダベリン がカダベリン・アジピン酸塩である場合を として説明する。

 カダベリン・アジピン酸塩水溶液は、黄色 着色している場合があるため、晶析前に脱 剤を用いて脱色することが好ましい。
 脱色剤の例としては、活性炭、合成吸着剤 活性白土、シリカ、ゼオライト等が挙げら るが、中でも活性炭が好ましい。脱色剤は 1種を単独で用いても良く、2種以上を任意 比率及び組み合わせで用いても良い。
 脱色の手法としては、脱色剤を充填した塔 カダベリン・アジピン酸塩水溶液を通液す 方法や、カダベリン・アジピン酸塩水溶液 脱色剤とを混合・攪拌する方法等が挙げら るが、前者の手法が好ましい。

 脱色後のカダベリン・アジピン酸塩水溶 は、窒素バブリングにより溶存酸素を追い した後、カダベリン・アジピン酸塩の濃度 通常50重量%以上、好ましくは60重量%以上、 た、通常69重量%以下、好ましくは67重量%以 となるまで濃縮する。晶析前のカダベリン アジピン酸塩水溶液におけるカダベリン・ ジピン酸塩の濃度が低過ぎると、晶析後の 率が低くなる傾向があり、カダベリン・ア ピン酸塩の濃度が高過ぎると、リジン、ア ギニンの含有量が高くなる傾向がある。

 濃縮は、カダベリン・アジピン酸塩水溶 の温度が通常50℃以上、70℃以下、また、減 圧度が通常20MPa(約150Torr)以下の条件で行なう が好ましい。温度が低過ぎると、濃縮時間 長くなる傾向があり、温度が高過ぎると、 ダベリン・アジピン酸塩が分解する傾向が る。また、減圧度が十分に低くないと、濃 時間が長くなる傾向がある。

 晶析は、通常、上記手順により得られた 縮液を冷却して、カダベリン・アジピン酸 を析出させることにより行なう。

 冷却時の降温速度は通常1℃/時間以上、 ましくは2℃/時間以上、より好ましくは3℃/ 間以上、また、通常30℃/時間以下、好まし は20℃/時間以下、より好ましくは10℃/時間 下の範囲である。降温速度が遅過ぎると、 析時間が長くなる傾向があり、降温速度が 過ぎると、結晶サイズが小さくなり、精製 が低下する傾向がある。

 なお、降温の途中で、濃縮液中に種晶を えることが好ましい。種晶としては、析出 るカダベリン・アジピン酸塩を用いること 好ましいが、種晶としての効果が得られれ それに限らない。

 晶析終了温度は、通常1℃以上、好ましく は5℃以上、さらに好ましくは10℃以上である 。また、晶析終了温度は、通常30℃以下、好 しくは25℃以下、さらに好ましくは20℃以下 である。晶析終了温度が過度に高いと、収率 が低くなる傾向がある。晶析終了温度が過度 に低いと、カダベリン・アジピン酸塩スラリ ーを移送する際に、配管が閉塞しやすくなる 傾向となる。

 晶析率は、濃縮液のカダベリン・アジピ 酸塩濃度と晶析終了温度により決まるが、 常1重量%以上、好ましくは5重量%以上、更に 好ましくは10重量%以上、また、通常46重量%以 下、好ましくは39重量%以下、更に好ましくは 35重量%以下の範囲内となるように制御するこ とが好ましい。晶析率が低過ぎると収率が低 くなる傾向があり、晶析率が高過ぎると、加 水分解アミノ酸や遊離アミノ酸(特にリジン アルギニン)の濃度が高くなる傾向がある。

 晶析によって得られるカダベリン・アジ ン酸塩スラリーを、常法に従い固液分離す ことにより、カダベリン・アジピン酸の結 が得られる。固液分離の例としては、遠心 過が挙げられる。遠心濾過を行なう場合は 母液(カダベリン・アジピン酸塩スラリーの 液体成分)を振り切った後に、遠心濾過器が 転している状態で少量の脱塩水をシャワー に振り掛け、カダベリン・アジピン酸塩に 着している母液を更に洗い流すと、精製度 上がるので好ましい。脱塩水量は、wetケー (若干の水を含んだカダベリン・アジピン酸 )に対して、通常1重量%以上、好ましくは5重 量%以上、また、通常40重量%以下、好ましく 30重量%以下の範囲内である。脱塩水量が少 過ぎると、洗浄効果が小さくなる場合があ 、脱塩水量が多過ぎると、析出したカダベ ン・アジピン酸塩が溶解して収率が低下す 場合がある。

 以上の手順により得られるカダベリン・ア ピン酸の結晶を1番晶と称する。
 1番晶の固液分離時に得られる母液や洗浄液 (これらをそれぞれ「1番母液」及び「1番洗浄 液」という場合がある。)を回収して、上述 手順で再度、濃縮、晶析、固液分離を行な ことにより、2番晶を得ることができる。
 また、上述の手順を同様に繰り返すことに り、2番晶の固液分離時に得られる母液(2番 液)や洗浄液(2番洗浄液)から3番晶を、3番晶 固液分離時に得られる母液(3番母液)や洗浄 (3番洗浄液)から4番晶を、それぞれ順に得る ことができる。以下、5番晶以降も同様であ 。

 なお、上記手順において得られた各母液( 1番母液、2番母液、3番母液・・・)及び各洗 液(1番洗浄液、2番洗浄液、3番洗浄液・・・) も、カダベリン・アジピン酸を含有する溶液 であるため、その溶液中のカダベリンに対す る加水分解アミノ酸のモル比率が上記規定範 囲を満たすものであれば、本発明の第3の要 に係るカダベリン類溶液として使用するこ が可能である。

[IV.LDC遺伝子の発現の増強]
 次に、微生物をLDC活性が上昇するように改 する方法について例示する。なお、他の細 についても、それに適するように下記の方 を適宜改変することによって、同様にLDC活 を上昇させることができる。

 LDC活性は、例えば、LDCをコードする遺伝 (LDC遺伝子)の発現を増強することによって 昇する。LDC遺伝子の発現の増強は、通常、LD C遺伝子のコピー数を高めることによって達 される。例えば、LDC遺伝子断片を、微生物 機能するベクター、好ましくはマルチコピ 型のベクターと連結して組換えDNAを作製し これを適当な宿主に導入して形質変換すれ よい。

 LDC遺伝子のコピー数の増大は、LDC遺伝子 微生物の染色体DNA上に多コピー存在させる とによっても達成できる。微生物の染色体D NA上に遺伝子を多コピーで導入するには、例 ば、染色体DNA上に多コピー存在する配列を 的に利用して相同組換えにより行なう。染 体DNA上に多コピー存在する配列としては、 えば、レペティティブDNA、転移因子の端部 存在するインバーテッド・リピート等が利 できる。あるいは、特開平2-109985号公報に 示されているように、目的遺伝子をトラン ポゾンに搭載してこれを転移させて染色体DN A上に多コピー導入することも可能である。

 LDC活性の上昇は、上記の遺伝子増幅によ 以外に、染色体DNA上又はプラスミド上のLDC 伝子のプロモーター等の発現調節配列を強 なものに置換することによっても達成され 。例えば、lacプロモーター、trpプロモータ 、trcプロモーター等が強力なプロモーター して知られている。また、国際公開第00/1893 5号パンフレットに開示されているように、 伝子のプロモーター領域に数塩基の塩基置 を導入し、より強力なものに改変すること 可能である。これらのプロモーター置換又 改変によりLDC遺伝子の発現が強化され、LDC 性が上昇する。これら発現調節配列の改変 、遺伝子のコピー数を高めることと組み合 せてもよい。

 発現調節配列の置換は、例えば、温度感 性プラスミドを用いた遺伝子置換と同様に て行うことができる。大腸菌の温度感受性 製起点を有するベクターとしては、例えば 際公開第99/03988号パンフレットに記載のプ スミドpMAN997等が挙げられる。また、λファ ジのレッド・リコンビナーゼ(Red recombinase) 利用した方法(Datsenko, K. A., Proc.Natl.Acad.Sci.U SA (2000) 97(12), 6640-6645)によっても、発現調 配列の置換を行うことができる。

 LDC遺伝子としては、コードされるLDCが、 ジンの脱炭酸反応に有効利用できるもので れば特に制限されないが、例えば、バクテ ウム カダベリス、大腸菌等の細菌や、カ ス豆等の植物、更には、特開2002-223770号公報 に記載の微生物のLDC遺伝子が挙げられる。

 宿主微生物として大腸菌を用いる場合は、 腸菌由来のLDC遺伝子が好ましい。
 大腸菌のLDC遺伝子としては、例えばcadA遺伝 子及びldc遺伝子(米国特許第5827698号明細書)等 が知られているが、これらの中ではcadA遺伝 が好ましい。大腸菌のcadA遺伝子は配列が知 れており(N. Watson et al., Journal of bacteriolo gy (1992) vo.174, p.530-540; S. Y. Meng et al. Jour nal of bacteriology (1992) vo.174, p.2659-2668; GenBan k accession M76411)、例えばその配列に基づいて 作成したプライマーを用いたPCRにより、大腸 菌染色体DNAから単離することができる。この ようなプライマーとしては、例えば配列番号 1及び2に示す塩基配列を有するプライマー等 挙げられる。

 取得されたLDC遺伝子とベクターを連結し 組換えDNAを調製するには、通常は、LDC遺伝 の末端に合うような制限酵素でベクターを 断し、T4 DNAリガーゼ等のリガーゼを用いて 前記遺伝子とベクターを連結すればよい。大 腸菌用のベクターとしては、pUC18、pUC19、pSTV2 9、pHSG299、pHSG399、pHSG398、RSF1010、pBR322、pACYC18 4、pMW219等が挙げられる。

 LDC遺伝子は、野生型であってもよいし、 異型であってもよい。例えばcadA遺伝子は、 コードされるLDCの活性が損なわれない限り、 1若しくは複数の位置での1若しくは数個のア ノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加を含むL DCをコードするものであってもよい。ここで 「数個」とは、アミノ酸残基のタンパク質 立体構造における位置や種類によっても異 るが、具体的には2個以上、また、通常50個 下、好ましくは30個以下、より好ましくは10 個以下である。

 上記のようなLDCと実質的に同一のタンパ 質をコードするDNAは、例えば部位特異的変 法によって、特定の部位のアミノ酸残基が 換、欠失、挿入、付加、又は逆位を含むよ にcadA遺伝子の塩基配列を改変することによ って得られる。また、上記のような改変され たDNAは、従来知られている変異処理によって も取得され得る。変異処理としては、変異処 理前のDNAをヒドロキシルアミン等でインビト ロ処理する方法、及び変異処理前のDNAを保持 する微生物、例えばエシェリヒア属細菌を、 紫外線、又は、N-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロ グアニジン(NTG)若しくはエチルメタンスル ン酸(EMS)等の通常変異処理に用いられている 変異剤によって処理する方法等が挙げられる 。

 上記のような変異を有するDNAを、適当な 胞で発現させ、発現産物の活性を調べるこ により、通常LDCと実質的に同一のタンパク をコードするDNAが得られる。また、変異を するLDCをコードするDNA又はこれを保持する 胞から、例えばcadA遺伝子(GenBank accession M76 411)のコード領域の配列、又は同配列の一部 有するプローブとストリンジェントな条件 でハイブリダイズし、且つ、LDCと同等の活 を有するタンパク質をコードするDNAが得ら る。ここでいう「ストリンジェントな条件 とは、いわゆる特異的なハイブリッドが形 され、非特異的なハイブリッドが形成され い条件をいう。この条件を明確に数値化す ことは困難であるが、一例を示せば、相同 が高いDNA同士、例えば通常70%以上、好まし は80%以上、より好ましくは90%以上の相同性 有するDNA同士がハイブリダイズし、それに り相同性が低いDNA同士がハイブリダイズし い条件、或いは、通常のサザンハイブリダ ゼーションの洗いの条件である、温度約60℃ で、通常は1倍濃度SSC又は0.1%SDSに相当する塩 度、好ましくは0.1倍濃度SSC又は0.1%SDSに相当 する塩濃度でハイブリダイズする条件等が挙 げられる。

 プローブとしてcadA遺伝子の一部の配列を 用いることもできる。そのようなプローブは 、公知のcadA遺伝子の塩基配列に基づいて作 したオリゴヌクレオチドをプライマーとし cadA遺伝子を含むDNA断片を鋳型とするPCRによ て作製することができる。プローブとして 300bp程度の長さのDNA断片を用いる場合には ハイブリダイゼーションの洗いの条件とし は、例えば温度約50℃、2倍濃度SSC又は0.1%SDS 相当する塩濃度という条件等が挙げられる

 LDCと実質的に同一のタンパク質をコード るDNAとして、具体的には、公知のcadA遺伝子 がコードするアミノ酸配列と、好ましくは70% 以上、より好ましくは80%以上、更に好ましく は90%以上の相同性を有し、且つ、LDC活性を有 するタンパク質をコードするDNA等が挙げられ る。

 組換えDNAの微生物への導入は、これまで 報告されている形質転換法に従って行なえ よい。例えば、大腸菌K-12について報告され ているような、受容菌細胞を塩化カルシウム で処理してDNAの透過性を増す方法(Mandel, M. a nd Higa, A., J. Mol. Biol., 53, 159 (1970))があり 、バチルス・サチリスについて報告されてい るような、増殖段階の細胞からコンピテント セルを調製してDNAを導入する方法(Ducan, C. H. , Wilson, G. A. and Young, F. E., Gene, 1, 153 (1 997))等がある。或いは、バチルス・サチリス 放線菌類及び酵母について知られているよ な、DNA受容菌の細胞を、組換えDNAを容易に り込むプロトプラスト又はスフェロプラス の状態にして、組換えDNAをDNA受容菌に導入 る方法(Chang, S. and Choen, S. N., Molec, Gen.  Genet., 168, 111 (1979); Bibb, M. J., Ward, J. M.  and Hopwood, O. A., Nature, 274, 398 (1978); Hinnen,  A., Hicks, J. B. and Fink, G. R. Proc. Natl. Aca d. Sci. USA, 75, 1929 (1978))も応用できる。更 は、電気パルス法(特開平2-207791号公報)によ ても、微生物の形質転換を行なうことがで る。

 LDCを産生する微生物又は細胞を得るため 培養は、用いる微生物又は細胞に応じて、L DCの産生に適した方法によって行なえばよい

 例えば、培地としては、炭素源、窒素源 無機イオン及び必要に応じその他の有機成 を含有する通常の培地を用いればよい。

 炭素源としては、グルコース、ラクトー 、ガラクトース、フラクトース、アラビノ ス、マルトース、キシロース、トレハロー 、リボース、澱粉の加水分解物等の糖類、 リセロール、マンニトールやソルビトール どのアルコール類、グルコン酸、フマール 、クエン酸やコハク酸等の有機酸類等を用 ることができる。

 窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩 アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無 アンモニウム塩、大豆加水分解物などの有 窒素、アンモニアガス、アンモニア水等を いることができる。

 有機微量栄養素としては、ビタミンB1等 ビタミン類、アデニンやRNA等の核酸類など 要求物質又は酵母エキス等を適量含有させ ことが望ましい。

 これらの他に、必要に応じて、リン酸カ シウム、硫酸マグネシウム、鉄イオン、マ ガンイオン等を少量使用してもよい。

 培養条件としては、大腸菌の場合、好気的 件下で16~72時間程度実施するのがよく、培 温度は30~45℃に、培養中pHは5~8に制御するの よい。なお、pH調整には、無機又は有機の 性又はアルカリ性物質、アンモニアガス等 使用することができる。
 なお、LDC遺伝子の発現が、誘導可能なプロ ーターによって調節されている場合には、 導剤を培地に含有させてもよい。

 培養後、細胞を遠心分離機や膜により集め ことにより、培養液から回収することがで る。
 回収された細胞は、そのまま用いてもよい 、LDCを含むそれらの処理物を用いる場合は 細胞を超音波、フレンチプレス、又は酵素 処理により破砕して酵素を抽出し、無細胞 出液とする。更に、そこからLDCを精製する 合には、常法に従い、硫安塩折、各種クロ トグラフィーを使用することによって精製 ることができる。

[V.ポリアミド樹脂]
 本発明の第3の要旨に係るカダベリン類溶液 から、第1及び第2の要旨と同様に、ポリアミ 樹脂及びそれを成形した成形体を得ること 出来る。

 以下に実施例を示し、本発明を更に具体 に説明するが、本発明はこれらの記載に限 されるものではではない。

[A.第1の実施例]
 はじめに、第1の要旨に係る実施例を説明す る。

[アミノ酸分析]
 日立アミノ酸分析計L-8900を用いて、リジン アルギニン等のアミノ酸分析を行った。先 、試料溶液を限外濾過(MWCO 10,000)して、濾 を分析試料とした。分析条件は生体アミノ 分離条件、分析法はニンヒドリン発色法(570n m、440nm)とした。標準品には和光アミノ酸混 液ANII型及びB型を希釈したものを用い、試料 注入量は10μLとした。定量計算として、Pro(即 ち、プロリン)は440nm、他のアミノ酸は570nmの ーク面積から一点外部標準法にてアミノ酸 量を算出した。

[相対粘度(ηr)]
 試料を98%濃硫酸に溶解して濃度0.01g/mLとし 25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を 行い、(試料溶液の落下時間)/(濃硫酸の落下 間)を相対粘度(ηr)とした。

[DSC(示差走査熱量測定)]
 セイコー電子工業製ロボットDSCを用い、窒 雰囲気下、試料約5mgを採取し、次の条件で 定した。
 ポリアミド樹脂を完全に融解させて3分間保 持した後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降 したときに現れる発熱ピークの温度(降温結 晶化温度Tc)と、これに続いて、30℃で3分間保 持した後、30℃から20℃/分の昇温速度で昇温 たときに観測される吸熱ピークの温度(融点 Tm)を求めた。吸熱ピークが複数の場合は、最 も高い温度を融点Tmとした。

[静止摩擦係数(滑り性)]
 相対湿度65%、温度23℃の条件下、平行移動 により静止摩擦係数を測定した。

[F/E(フィッシュアイ)数]
 ポリアミド樹脂原料を、押出機シリンダー が30mmφのT-ダイ式製膜機を用いて40μm厚みの ポリアミド樹脂フィルムを製膜する。製膜条 件は、押出機のシリンダー設定温度が280℃、 ポリアミド樹脂フィルムを巻き取る冷却ロー ル温度が90℃、吐出量が2kg/時である。
 面積が900cm 2 中における、大きさが50μm以上の粒状欠陥を ィッシュアイとし、当該フィッシュアイの を数えた(単位:個/900cm 2 )。

[数平均分子量]
(1)末端アミノ基
 ポリアミド樹脂の試料0.1g~2gを正確に秤量し 、フェノール50mL中に溶解した後、自動滴定 置(三菱化学(株)製、GT-06)を用いて0.1N塩酸で 定し、算出した(単位:eq/g)。
(2)末端カルボキシル基
 ポリアミド樹脂の試料0.1g~2gを正確に秤量し 、ベンジルアルコール50mL中に溶解した後、 動滴定装置(三菱化学(株)製、GT-06)または通 のビュレット型滴定装置を用いて0.1N水酸化 トリウムで滴定し算出した(単位:eq/g)。
(3)数平均分子量
 上記(1)、(2)の方法で求めた末端の総数から 式に従って算出した。

[スパイラル流動長]
(スパイラルフロー試験片の成形)
 日本製鋼所社製J75EII型射出成形機を使用し 樹脂温度265℃、金型温度75℃、射出圧力50MPa 、スパイラルフロー試験片厚み3mmにて行った 。スパイラルフロー試験片の長さを測定し、 スパイラル流動長とした(単位:mm)。

[リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増強株の作製]
(A)大腸菌DNA抽出
 LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキス トラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、 腸菌(Eschericia coli)JM109株を対数増殖期後期 で培養し、得られた菌体を10mg/mLのリゾチー を含む10mM NaCl/20mM トリス緩衝液(pH8.0)/1mM E DTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。

 次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最 終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1 時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウ ムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃ で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、 量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加 、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全 を遠心分離(5,000g(ただし、gは重力加速度を す。)、20分間、10℃~12℃)し、上清画分を分 し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加 た後、2倍量のエタノールを加え混合した。 遠心分離(15,000g(ただし、gは重力加速度を表 。)、2分)により回収した沈殿物を70%エタノ ルで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10 mM トリス緩衝液(pH7.5)-1mM EDTA・2Na溶液5mLを加 え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに 用した。

(B)cadAのクローニング
 大腸菌cadAの取得は、上記(A)で調製したDNAを 鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大 腸菌K12-MG1655株の該遺伝子の配列(GenBank Databas e Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(配 番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列 号2(配列;ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG))を用い PCRによって行った。

(反応液組成)
 鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロ ェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3 μM各々プライマー、1mMMgSO 4 、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。

(反応温度条件)
 DNAサーマルサイクラー(MJResearch社製PTC-200)を 用い、94℃で20秒間、60℃で20秒間、72℃で2.5 間からなるサイクルを35回繰り返した。但し 、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒間、最 終サイクルの72℃での保温は10分間とした。

 図1は、cadAのクローニングの手順を説明す 図である。
 図1に示すように、PCR反応終了後、増幅産物 をエタノール沈殿により精製した後、制限酵 素KpnI及び制限酵素SphIで切断した。このDNA標 を、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProd ucts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチ ウム染色により可視化することによりcadAを 含む約2.6kbの断片を検出し、QIAQuick Gel Extract ion Kit(QIAGEN製)を用いて目的DNA断片の回収を った。

 回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベク ーpUC18(宝酒造製)を制限酵素KpnI及び制限酵 SphIで切断して調整したDNA断片と混合し、ラ ゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連 結後、得られたプラスミドDNAを用いて大腸菌 (JM109株)を形質転換した。
 この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/m L アンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル-β-D- チオガラクトピラノシド)及び50μg/mL X-Galを むLB寒天培地に塗抹した。

 この培地上で白色のコロニーを形成した ローンを、常法により液体培養した後、プ スミドDNAを精製した。得られたプラスミドD NAを制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断する とにより、約2.5kbの挿入断片が認められるこ とを確認し、これをpCAD1、pCAD1を含む大腸菌 をJM109/pCAD1とそれぞれ命名した。

[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(1)]
 以下の実施例で使用した反応液(カダベリン ・アジピン酸塩水溶液)は、cadA増幅株を用い リジン・アジピン酸塩を原料とし、以下の 法で調製した。

(1)cadA増幅株の培養
 E.coli JM109/pCAD1をLB培地入りフラスコ10本で 培養した後、1Lの培養液を99LのLB培地が入っ 200L容ジャーファーメンターに接種し、通気 量0.5vvm、35℃、250rpmで通気攪拌培養を行った
 培養開始6時間後、この培養液全量を、3m 3 の2×LB培地が入った5m 3 容培養タンクに接種して更に培養を行った。 5m 3 容培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、 35℃であった。攪拌回転数は溶存酸素濃度が 分高い値になるように60rpm~100rpmの範囲で調 した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプ ピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を終濃度 で0.5mMになるように添加し、その後14時間培 を継続した。

(2)菌体の分離
 6400rpm、フィード速度750L/時間の条件下で、 ルファラバル分離機により培養液からの菌 回収を行った。回収された菌体の湿重量は3 6.9kgであった。この湿菌体を10mMの酢酸ナトリ ウム溶液160Lに懸濁したのち、15000rpm、フィー ド速度1.0L/分の条件下でシャープレス遠心機 より再度菌体回収を行い、18.7kgの湿菌体を 得した。

(3)カダベリン・アジピン酸塩の製造
 50%(w/v)リジンベース溶液(協和醗酵工業株式 社製)にpHが6.0となるようにアジピン酸を添 して、リジン・アジピン酸塩の濃厚溶液を 製した。リジン濃度で60g/Lとなるように基 溶液(3m 3 )を作成し、5m 3 容培養タンクにはり込んだ。ピリドキサルリ ン酸を0.1mMとなるように基質溶液に添加し、 らにE.coli JM109/pCAD1の菌体をOD660が0.5になる うに添加して反応を開始した。

 反応条件は、37℃、0.5vvm通気、70rpmとした。 反応中の溶液のpHは、250kgのアジピン酸をイ ン交換水400Lに懸濁したスラリーを添加し、6 .5になるように制御した。
 また、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L) 開始から約130L/時間で連続的にフィードし 約4.5時間で全量を添加した。さらに反応を 続して計22時間反応させた。

 反応終了時には、リジン残存濃度が0.03g/L以 下であり、ほぼ100%のリジンがカダベリンに 換されていた。
 反応後の溶液(約4m 3 )は、菌体の不活化処理(80℃、30min)を実施し のち、分子量13,000以上をカットするUF膜モジ ュールACP-3053(旭化成工業株式会社製)を通し 高分子量体の不純物除去を行った。
 UF処理による回収率は99.3%であった。以上の ようにして、ほぼカダベリンとアジピン酸を ほぼ等モル含むカダベリン・アジピン酸塩水 溶液を取得した。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1)]
(1)活性炭による脱色
 直径700mmの活性炭塔に三菱化学カルゴン株 会社製活性炭MM-11(105kg、約440L)を仕込み、2日 間脱塩水を通水した。次に、前記カダベリン ・アジピン酸塩水溶液(約4m 3 )を1.32m 3 /時間の速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を 水した。初期460Lをパージした後、活性炭処 理したカダベリン・アジピン酸塩水溶液を採 取した。
 活性炭処理前はカダベリン・アジピン酸塩 溶液4076.5kg、含有するカダベリン・アジピ 酸塩603.9kgであった。活性炭処理後はカダベ ン・アジピン酸塩水溶液5029kg、含有するカ ベリン・アジピン酸塩603.7kgであった。

(2)濃縮
 PPプリーツカートリッジフィルターTCP-JXを して、前記活性炭処理後のカダベリン・ア ピン酸塩水溶液を2m 3 攪拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温 57℃、真空度140Torr~150Torrにて濃縮を開始し、 宜、活性炭処理後のカダベリン・アジピン 塩水溶液を仕込みながら濃縮を行った。
 濃縮液の重量は918.4kg、カダベリン・アジピ ン酸塩濃度は63.5重量%であった。

 尚、上記濃縮液等のカダベリン・アジピ 酸塩水溶液中のカダベリン濃度は、1N-HCl水 液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量 ら算出した。同様に上記濃縮液等のカダベ ン・アジピン酸塩水溶液中のアジピン酸濃 は、1N-NaOH水溶液にて滴定して、pHの変曲点 での滴定量から算出した。滴定には、三菱 学製自動滴定装置GT-06型を使用した。

(3)晶析
 次に、同一の2m 3 攪拌槽にて晶析を行った。攪拌翼は3枚後退 、攪拌速度は40rpm、降温速度は8℃/時間であ 。
 内温37.4℃のときに、予め作成したカダベリ ン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結 晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として カダベリン・アジピン酸塩スラリーを得た 尚、種晶としてのカダベリン・アジピン酸 は、本実施例に準じてラボスケールにて準 した。

(4)遠心濾過
 直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記カダベ ン・アジピン酸塩スラリーを3回に分けて遠 濾過した。回転数は980rpm、母液振り切り時 は15分、母液振り切り後に10℃の脱塩水約12k g(脱塩水約12kgは、予想wetケーキ重量の約20重 %分)をシャワー状に振りかけて洗浄し、そ 脱塩水の振り切り時間は15分間とした。

 1番晶として得られたwetケーキは194.3kg(カダ リン・アジピン酸塩として165.2kg、濃縮液に 対する晶析率は28.3重量%)であった。遠心濾過 後に回収した1番母液は644kg、同じく回収した 1番洗浄水は91.1kg(カダベリン・アジピン酸塩 溶けて量が増えた)であった。
 尚、上記カダベリン・アジピン酸塩重量は wetケーキの水分量を水分計(三菱化学株式会 社製、電量滴定式水分測定装置CA-06型、及び 分気化装置VA-06型)にて測定して算出した。

(5)2番晶
 前記回収した1番母液と1番洗浄水とを2m 3 攪拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以 に示した以外は、前述した(2)濃縮~(4)遠心濾 と同様の操作により濃縮、晶析、遠心濾過 行った。
 2番晶析品としてwetケーキ142.6kg(カダベリン アジピン酸塩として121.4kg、晶析率30.6重量%) を得た。回収した2番母液は414kg、回収した2 洗浄水は76.3kgであった。
 1番晶との相違点として、濃縮工程では、濃 縮液の重量は610.5kg、カダベリン・アジピン 塩濃度は65.0重量%であった。
 晶析工程では、内温40℃において、予め作 したカダベリン・アジピン酸塩を種晶とし 1kg添加して結晶を析出させ、内温10.0℃で晶 を終了した。遠心濾過工程では、カダベリ ・アジピン酸塩スラリーを2回に分けて遠心 濾過を行い、母液振り切り後に10℃の脱塩水 16kgをシャワー状に振りかけて洗浄した。

(6)3番晶析
 前記回収した2番母液と2番洗浄水を、2m 3 攪拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以 に示した以外は、前述した(2)~(4)と同様の操 により濃縮、晶析、遠心濾過を行った。
 3番晶析品としてwetケーキ80.4kg(カダベリン アジピン酸塩として68.2kg、晶析率24.5重量%) 得た。回収した3番母液と3番洗浄水の合計は 418kgであった。

 1番晶との相違点として、濃縮工程では、濃 縮液の重量は421.5kg、カダベリン・アジピン 塩濃度は66.0重量%であった。晶析工程では、 内温40℃において、予め作成したカダベリン アジピン酸塩を種晶として1kg添加して結晶 析出させ、内温12.0℃で晶析を終了した。
 遠心濾過工程では、カダベリン・アジピン 塩スラリーを2回に分けて遠心濾過を行い、 各々母液振り切り後に10℃の脱塩水約10kgをシ ャワー状に振りかけて洗浄した。

[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(2)]
 カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(1) 同様の操作により、カダベリン・アジピン 塩水溶液(約4m 3 )を取得した。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(2)]
 カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1) 1番晶を得るのと同様の操作を実施しており 、相違点のみを以下に示す。

(1)活性炭による脱色
 カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1) 1番晶を得るのと同様にして、活性炭処理後 のカダベリン・アジピン酸塩水溶液5,001kg、 有するカダベリン・アジピン酸塩601.0kgを得 。

(2)濃縮
 カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1) 1番晶を得るのと同様にして、濃縮液833.5kg 得た。カダベリン・アジピン酸塩濃度は70.0 量%であった。

(3)晶析
 カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1) 1番晶を得るのと同様にして、内温50℃にお て、予め作製したカダベリン・アジピン酸 を種晶として1kg添加して結晶を析出させ、 温11.2℃で晶析終了として、カダベリン・ア ジピン酸塩スラリーを得た。

(4)遠心濾過
 カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(1) 1番晶を得るのと同様にして、前記カダベリ ン・アジピン酸塩スラリーを5回に分けて遠 濾過した。
 1番晶として得られたwetケーキは330.2kg(カダ リン・アジピン酸塩として283.3kg、晶析率48. 6重量%)であった。遠心濾過後に回収した1番 液は387.5kg、同じく回収した1番洗浄水は155.8k gであった。

(5)2番晶
 前記回収した1番母液と1番洗浄水を、2m 3 攪拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以 に示した以外は(2)~(4)と同様にして濃縮、晶 、遠心濾過を行った。2番晶析品としてwetケ ーキ170.4kg(カダベリン・アジピン酸塩として1 45.8kg、晶析率45.5重量%)を得た。

 1番晶との相違点として、濃縮工程では、 濃縮液の重量は452.7kg、カダベリン・アジピ 酸塩濃度は70.8重量%であった。晶析工程では 、内温50.3℃において、予め作製したカダベ ン・アジピン酸塩を種晶として1kg添加して 晶を析出させ、内温10.4℃で晶析を終了した 遠心濾過工程では、カダベリン・アジピン 塩スラリーを2回に分けて遠心濾過を行い、 母液振り切り後に10℃の脱塩水約18kgをシャワ ー状に振りかけて洗浄した。

[実施例1-1]
<カダベリン・アジピン酸塩の主な晶析条 >
 上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 (1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩 1番晶において、晶析前のカダベリン・アジ ピン酸塩濃度(単位:wt%)、晶析率(単位:%)、晶 回数(単位:回)を表1に示す。

<カダベリン・アジピン酸塩のアミノ酸分 >
 上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 (1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩 1番晶のアミノ酸分析を行った。結果を表1 示す。

<ポリアミド樹脂の製造>
 上記カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 (1)にて調製したカダベリン・アジピン酸塩 1番晶25kgに水25kgを添加した後、亜燐酸1.25g 添加し、窒素雰囲気下で混合物を完全に溶 させ、原料水溶液を得た。
 プランジャーポンプにて予め窒素置換した ートクレーブに、上記の原料水溶液を移送 た。ジャケット温度を280℃に、オートクレ ブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物 を270℃に昇温した。

 次に、オートクレーブ内の圧力を除々に放 した後、更に減圧して所定の攪拌動力に到 した時点で反応終了とした。反応終了後に 素にて復圧し、内容物をストランド状に冷 水槽へ導入した後、回転式カッターでペレ ト化した。
 得られたペレットは、120℃、1Torr(0.13kPa)の 件で、水分量が0.1%以下となる迄乾燥を行い ポリアミド樹脂を得た。相対粘度は3.51であ った。

<フィルム成形>
 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 均粒子径が3.0μmのタルク0.03重量部、及びエ チレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 カオーワックスEB-FF)0.1重量部をドライブレ ドして得たポリアミド樹脂組成物を原料と て、押出機シリンダ径40mmのT-ダイ式製膜機 用い、押出機シリンダ設定温度260℃、冷却 ール温度90℃にて、厚み25μmのフィルムを製 した。
 製膜開始後、1時間目のフィルムを用い、耐 熱性(融点)、滑り性(静止摩擦係数)、F/E(フィ シュアイ)の評価を行った。結果を表1に示 。

[実施例1-2]
 実施例1-1において、カダベリン・アジピン 塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジ ピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベ リン・アジピン酸塩の2番晶に変更し、それ 外は実施例1-1と同様の操作により、アミノ 分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.52) フィルム成形、及びその評価を行った。
 その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主 晶析条件を表1に示す。

[実施例1-3]
 実施例1-1において、カダベリン・アジピン 塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジ ピン酸塩の精製・単離(1)にて調製したカダベ リン・アジピン酸塩の3番晶に変更し、それ 外は実施例1-1と同様の操作により、アミノ 分析、ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.52) フィルム成形、及びその評価を行った。
 その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主 晶析条件を表1に示す。

[実施例1-4]
<ポリアミド樹脂の製造>
 重合終了時の攪拌動力を変更した以外は、 施例1-1と同様にしてポリアミド樹脂を取得( 相対粘度2.72)した。
 得られたポリアミド樹脂を用いて、末端ア ノ基、末端カルボキシル基を測定して数平 分子量を算出した。結果を表1に示す。

<スパイラルフロー試験片の成形>
 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 晶核剤として平均粒子径3.0μmのタルク0.03重 量部をドライブレンドして得たポリアミド樹 脂組成物を原料として、スパイラルフロー試 験片の成形を行った。
 成形は、日本製鋼所社製J75EII型射出成形機 使用し、樹脂温度265℃、金型温度75℃、射 圧力50MPa、スパイラルフロー試験片厚み3mmに て行った。スパイラル流動長を表1に示す。

[比較例1-1]
 実施例1-1において、カダベリン・アジピン 塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジ ピン酸塩の精製・単離(2)にて調製したカダベ リン・アジピン酸塩の1番晶に変更し、それ 外は実施例1-1と同様にして、アミノ酸分析 ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.54)、フィ ム成形、及びその評価を行った。
 その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主 晶析条件を表1に示す。

[比較例1-2]
 実施例1-1において、カダベリン・アジピン 塩の精製・単離(1)にて調製したカダベリン アジピン酸塩の1番晶を、カダベリン・アジ ピン酸塩の精製・単離(2)にて調製したカダベ リン・アジピン酸塩の2番晶に変更し、それ 外は実施例1-1と同様にして、アミノ酸分析 ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.56)、フィ ム成形、及びその評価を行った。
 その結果とカダベリン・アジピン酸塩の主 晶析条件を表1に示す。

[比較例1-3]
<ポリアミド樹脂の製造>
 重合終了時の攪拌動力を変更した以外は、 較例1-1と同様にしてポリアミド樹脂を取得( 相対粘度2.82)した。得られたポリアミド樹脂 用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル を測定して数平均分子量を算出した。結果 表1に示す。

<スパイラルフロー試験片の成形>
 実施例1-4と同様にして、スパイラルフロー 験片の成形を行った。スパイラル流動長を 1に示す。

 以上、説明したように、本発明の第1の要旨 に係るカダベリン塩は、不純物であるリジン 、アルギニン等の3官能以上の有機物含有量 少ない。そのため、これを原料にしてなる リアミド樹脂は、架橋等によるゲルの発生 少なく、フィルム、射出成形品、繊維、モ フィラメント等に極めて好適に使用するこ が可能である。具体的には、著しくフィッ ュアイが少なく表面外観に優れたポリアミ 樹脂フィルム、繊維、モノフィラメントを る事が可能であり、且つ、射出成形時の流 性が著しく優れるものである。
 さらにバイオマス由来の原料を用いること 可能であるため、地球温暖化の防止や循環 社会を形成する上で極めて有効である。

[B.第2の実施例]
 次に、第2の要旨に係る実施例を説明する。

[相対粘度(ηr)]
 試料を98%濃硫酸に溶解して濃度0.01g/mLとし 25℃でオストワルド式粘度計を用いて測定を 行い、(試料溶液の落下時間)/(濃硫酸の落下 間)を相対粘度(ηr)とした。

[DSC(示差走査熱量測定)]
 セイコー電子工業製ロボットDSCを用い、窒 雰囲気下、試料約5mgを採取し、次の条件で 定した。
 ポリアミド樹脂を完全に融解させて3分間保 持した後、20℃/分の降温速度で、30℃まで降 したときに現れる発熱ピークの温度(降温結 晶化温度Tc)と、これに続いて、30℃で3分間保 持した後、30℃から20℃/分の昇温速度で昇温 たときに観測される吸熱ピークの温度(融点 Tm)を求めた。吸熱ピークが複数の場合は、最 も高い温度を融点Tmとした。

[静止摩擦係数(滑り性)]
 相対湿度65%、温度23℃の条件下、平行移動 により静止摩擦係数を測定した。

[F/E(フィッシュアイ)数]
 ポリアミド樹脂原料を、押出機シリンダー が30mmφのT-ダイ式製膜機を用いて40μm厚みの ポリアミド樹脂フィルムを製膜する。製膜条 件は、押出機のシリンダー設定温度が280℃、 ポリアミド樹脂フィルムを巻き取る冷却ロー ル温度が90℃、吐出量が2kg/時である。
 面積が900cm 2 中における、大きさが50μm以上の粒状欠陥を ィッシュアイとし、当該フィッシュアイの を数えた(単位:個/900cm 2 )。

[数平均分子量]
(1)末端アミノ基
 ポリアミド樹脂の試料0.1g~2gを正確に秤量し 、フェノール50mL中に溶解した後、自動滴定 置(三菱化学(株)製、GT-06)を用いて0.1N塩酸で 定し、算出した(単位:eq/g)。
(2)末端カルボキシル基
 ポリアミド樹脂の試料0.1g~2gを正確に秤量し 、ベンジルアルコール50mL中に溶解した後、 動滴定装置(三菱化学(株)製、GT-06)または通 のビュレット型滴定装置を用いて0.1N水酸化 トリウムで滴定し算出した(単位:eq/g)。
(3)数平均分子量
 上記(1)、(2)の方法で求めた末端の総数から 式に従って算出した。

[スパイラル流動長]
 スパイラルフロー試験片の成形、日本製鋼 社製J75EII型射出成形機を使用し、樹脂温度2 65℃、金型温度75℃、射出圧力50MPa、スパイラ ルフロー試験片厚み3mmにて行った。スパイラ ルフロー試験片の長さを測定し、スパイラル 流動長とした(単位:mm)。

[リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増強株の作製]
(A)大腸菌DNA抽出
 LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキス トラクト5g、NaCl5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、大 腸菌(Eschericia coli)JM109株を対数増殖期後期ま 培養し、得られた菌体を10mg/mLのリゾチーム を含む10mM NaCl/20mM トリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDT A・2Na溶液0.15mLに懸濁した。

 次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最 終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1 時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウ ムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃ で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、 量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加 、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全 を遠心分離(5,000g(ただし、gは重力加速度を す。)、20分間、10℃~12℃)し、上清画分を分 し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加 た後、2倍量のエタノールを加え混合した。 遠心分離(15,000g(ただし、gは重力加速度を表 。)、2分)により回収した沈殿物を70%エタノ ルで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10 mM トリス緩衝液(pH7.5)-1mM EDTA・2Na溶液5mLを加 え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに 用した。

(B)cadAのクローニング
 大腸菌cadAの取得は、上記(A)で調製したDNAを 鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大 腸菌K12-MG1655株の該遺伝子の配列(GenBank Databas e Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(配 番号1(配列;GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG)及び配列 号2(配列;ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG))を用い PCRによって行った。

(反応液組成)
 鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロ ェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3 μM各々プライマー、1mMMgSO 4 、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。

(反応温度条件)
 DNAサーマルサイクラー(MJResearch社製PTC-200)を 用い、94℃で20秒間、60℃で20秒間、72℃で2.5 間からなるサイクルを35回繰り返した。但し 、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒間、最 終サイクルの72℃での保温は10分間とした。

 図1は、cadAのクローニングの手順を説明す 図である。
 図1に示すように、PCR反応終了後、増幅産物 をエタノール沈殿により精製した後、制限酵 素KpnI及び制限酵素SphIで切断した。このDNA標 を、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProd ucts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチ ウム染色により可視化することによりcadAを 含む約2.6kbの断片を検出し、QIAQuick Gel Extract ion Kit(QIAGEN製)を用いて目的DNA断片の回収を った。

 回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベク ーpUC18(宝酒造製)を制限酵素KpnI及び制限酵 SphIで切断して調整したDNA断片と混合し、ラ ゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連 結後、得られたプラスミドDNAを用いて大腸菌 (JM109株)を形質転換した。
 この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/m L アンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル-β-D- チオガラクトピラノシド)及び50μg/mL X-Galを むLB寒天培地に塗抹した。

 この培地上で白色のコロニーを形成した ローンを、常法により液体培養した後、プ スミドDNAを精製した。得られたプラスミドD NAを制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断する とにより、約2.5kbの挿入断片が認められるこ とを確認し、これをpCAD1、pCAD1を含む大腸菌 をJM109/pCAD1とそれぞれ命名した。

[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製(1)]
 以下の実施例で使用した反応液(カダベリン ・アジピン酸塩水溶液)は、cadA増幅株を用い リジン・アジピン酸塩を原料とし、以下の 法で調製した。
(1)cadA増幅株の培養
 E.coli JM109/pCAD1をLB培地入りフラスコ10本で 培養した後、1Lの培養液を99LのLB培地が入っ 200L容ジャーファーメンターに接種し、通気 量0.5vvm、35℃、250rpmで通気攪拌培養を行った
 培養開始6時間後、この培養液全量を、3m 3 の2×LB培地が入った5m 3 容培養タンクに接種して更に培養を行った。 5m 3 容培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、 35℃であった。攪拌回転数は溶存酸素濃度が 分高い値になるように60rpm~100rpmの範囲で調 した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イソプ ピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を終濃度 で0.5mMになるように添加し、その後14時間培 を継続した。

(2)菌体の分離
 6400rpm、フィード速度750L/時間の条件下で、 ルファラバル分離機により培養液からの菌 回収を行った。回収された菌体の湿重量は3 6.9kgであった。この湿菌体を10mMの酢酸ナトリ ウム溶液160Lに懸濁したのち、15000rpm、フィー ド速度1.0L/分の条件下でシャープレス遠心機 より再度菌体回収を行い、18.7kgの湿菌体を 得した。

(3)カダベリン・アジピン酸塩の製造
 50%(w/v)リジンベース溶液(協和醗酵工業株式 社製)にpHが6.0となるようにアジピン酸を添 して、リジン・アジピン酸塩の濃厚溶液を 製した。リジン濃度で60g/Lとなるように基 溶液(3m 3 )を作成し、5m 3 容培養タンクにはり込んだ。ピリドキサルリ ン酸を0.1mMとなるように基質溶液に添加し、 らにE.coli JM109/pCAD1の菌体をOD660が0.5になる うに添加して反応を開始した。

 反応条件は、37℃、0.5vvm通気、70rpmとした。 反応中の溶液のpHは、250kgのアジピン酸をイ ン交換水400Lに懸濁したスラリーを添加し、6 .5になるように制御した。
 また、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L) 開始から約130L/時間で連続的にフィードし 約4.5時間で全量を添加した。さらに反応を 続して計22時間反応させた。

 反応終了時には、リジン残存濃度が0.03g/L以 下であり、ほぼ100%のリジンがカダベリンに 換されていた。
 反応後の溶液は、菌体の不活化処理(80℃、3 0min)を行い、カダベリンとアジピン酸とを略 モル含むカダベリン・アジピン塩水溶液(約 3.9m 3 )を取得した。

(4)UF膜処理
(A)分子量13,000以上の高分子不純物の除去
 分子量13,000以上の高分子不純物を除去するU F膜モジュールACP-3053(旭化成工業株式会社製) 通して高分子量体の不純物除去を行ない、 1.3m 3 のカダベリン・アジピン酸塩水溶液(a)を得た 。UF膜処理による回収率は99.4%であった。

(B)分子量6,000以上の高分子不純物の除去
 分子量6,000以上の高分子不純物を除去するUF 膜モジュールAIP-0013UF(旭化成工業株式会社製) を通して高分子量体の不純物除去を行ない、 約1.3m 3 のカダベリン・アジピン酸塩水溶液(b)を得た 。UF膜処理による回収率は99.1%であった。

(C)UF膜未処理
 UF膜処理を行わず、約1.3m 3 のカダベリン・アジピン酸塩水溶液(c)を得た 。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(A)]
(1)活性炭による脱色
 直径500mmの活性炭塔に三菱化学カルゴン株 会社製活性炭MM-11(35kg、約150L)を仕込み、2日 脱塩水を通水した。次に、前記カダベリン アジピン酸塩水溶液(a)(約1.3m 3 )を1.32m 3 /時間の速度で通液し、最後に200Lの脱塩水を 水した。初期150Lをパージした後、活性炭処 理したカダベリン・アジピン酸塩水溶液を採 取した。

(2)濃縮
 PPプリーツカートリッジフィルターTCP-JXを して、前記活性炭処理後のカダベリン・ア ピン酸塩水溶液(a)を2m 3 攪拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温 57℃、真空度140~150Torrにて濃縮を行ない、カ ベリン・アジピン酸塩濃度は63.5wt%に調整し 、濃縮液を得た。

 尚、上記濃縮液等のカダベリン・アジピ 酸塩水溶液中のカダベリン濃度は、1N-HCl水 液にて滴定して、pHの変曲点までの滴定量 ら算出した。同様に上記濃縮液等のカダベ ン・アジピン酸塩水溶液中のアジピン酸濃 は、1N-NaOH水溶液にて滴定して、pHの変曲点 での滴定量から算出した。滴定には、三菱 学株式会社製自動滴定装置GT-06型を使用した 。

(3)晶析
 次に、濃縮液同一の2m 3 攪拌槽にて、晶析を行った。攪拌翼は3枚後 翼、攪拌速度は40rpm、降温速度は8℃/時間、 温38℃の時に予め作成したカダベリン・ア ピン酸塩を種晶として350g添加して結晶を析 させ、内温10℃で晶析終了として、カダベ ン・アジピン酸塩スラリーを得た。尚、種 としてのカダベリン・アジピン酸塩は、本 施例に準じてラボスケールにて準備した。

(4)遠心濾過
 直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記カダベ ン・アジピン酸塩スラリーを遠心濾過した 回転数は980rpm、母液振り切り時間は15分、母 液振り切り後に10℃の脱塩水約15kgをシャワー 状に振りかけて洗浄し、その脱塩水の振り切 り時間は15分とした。1番晶として得られたwet ケーキは約70kg、カダベリン・アジピン酸塩(a )として約60kgを得た。
 尚、上記カダベリン・アジピン酸塩重量は wetケーキの水分量を水分計(三菱化学株式会 社製電量滴定式水分測定装置CA-06型、及び水 気化装置VA-06型)にて測定して算出した。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(B)]
 前記カダベリン・アジピン酸塩水溶液(b)(約 1.3m 3 )を使用して、[カダベリン・アジピン酸塩の 製・単離(A)]と同様にして、wetケーキは約70k g、カダベリン・アジピン酸塩(b)として約60kg 得た。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離(C)]
 前記カダベリン・アジピン酸塩水溶液(c)(約 1.3m 3 )を使用して、[カダベリン・アジピン酸塩の 製・単離(A)]と同様にして、wetケーキは約70k g、カダベリン・アジピン酸塩(c)として約60kg 得た。

[実施例2-1]
<ポリアミド樹脂の製造>
 前記カダベリン・アジピン酸塩(a)25kgに水25k gを添加した後、亜燐酸1.25gを添加し、窒素雰 囲気下で混合物を完全に溶解させ、原料水溶 液を得た。プランジャーポンプにて予め窒素 置換したオートクレーブに、上記の原料水溶 液を移送した。ジャケット温度を280℃に、オ ートクレーブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節 、内容物を270℃に昇温した。

 次に、オートクレーブ内の圧力を除々に 圧した後、更に減圧して所定の攪拌動力に 達した時点で反応終了とした。反応終了後 窒素にて復圧し、内容物をストランド状に 却水槽へ導入した後、回転式カッターでペ ット化した。得られたペレットは、120℃、1 Torr(0.13kPa)の条件で、水分量が0.1%以下となる 乾燥を行い、ポリアミド樹脂を得た。相対 度は3.51であった。

<フィルム成形>
 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 均粒子径が3.0μmのタルク0.03重量部、及びエ チレンビスステアリン酸アマイド(花王社製 カオーワックスEB-FF)0.1重量部をドライブレ ドして得たポリアミド樹脂組成物を原料と て、押出機シリンダ径40mmのT-ダイ式製膜機 用い、押出機シリンダ設定温度260℃、冷却 ール温度90℃にて、厚み25μmのフィルムを製 した。
 製膜開始後、1時間目のフィルムを用い、耐 熱性(融点)、滑り性(静止摩擦係数)、フィッ ュアイ(F/E)の評価を行った。結果を表2に示 。

[実施例2-2]
 実施例2-1において、カダベリン・アジピン 塩(b)を用いた以外は実施例2-1と同様にして ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.52)、フィ ム成形、及びその評価を行った。結果を表2 に示す。

[実施例2-3]
 重合終了時の攪拌動力を変更した以外は、 施例2-1と同様にしてポリアミド樹脂を取得( 相対粘度2.72)した。得られたポリアミド樹脂 用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル を測定して数平均分子量を算出した。結果 表2に示す。

<スパイラルフロー試験片の成形>
 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 晶核剤として平均粒子径が3.0μmのタルク0.03 重量部をドライブレンドして得たポリアミド 樹脂組成物を原料として、スパイラルフロー 試験片の成形を行った。
 成形は、日本製鋼所社製J75EII型射出成形機 使用し、樹脂温度265℃、金型温度75℃、射 圧力50MPa、スパイラルフロー試験片厚み3mmに て行った。スパイラル流動長を表2に示す。

[実施例2-4]
 重合終了時の攪拌動力を変更した以外は、 施例2-2と同様にしてポリアミド樹脂を取得( 相対粘度2.72)した。得られたポリアミド樹脂 用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル を測定して数平均分子量を算出した。結果 表2に示す。

<スパイラルフロー試験片の成形>
 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 晶核剤として平均粒子径が3.0μmのタルク0.03 重量部をドライブレンドして得たポリアミド 樹脂組成物を原料として、スパイラルフロー 試験片の成形を行った。
 成形は、日本製鋼所社製J75EII型射出成形機 使用し、樹脂温度265℃、金型温度75℃、射 圧力50MPa、スパイラルフロー試験片厚み3mmに て行った。スパイラル流動長を表2に示す。

[比較例2-1]
 実施例2-1において、カダベリン・アジピン 塩(c)を用いた以外は実施例2-1と同様にして ポリアミド樹脂の取得(相対粘度3.54)、フィ ム成形、及びその評価を行った。結果を表2 に示す。

[比較例2-2]
<ポリアミド樹脂の製造>
 重合終了時の攪拌動力を変更した以外は、 較例2-1と同様にしてポリアミド樹脂を取得( 相対粘度3.03)した。得られたポリアミド樹脂 用いて、末端アミノ基、末端カルボキシル を測定して数平均分子量を算出した。結果 表2に示す。

<スパイラルフロー試験片の成形>
 実施例2-4と同様にして、スパイラルフロー 験片の成形を行った。スパイラル流動長を 2に示す。

 以上、詳述したように、本実施の形態にお るカダベリン塩水溶液の製造方法は、タン ク、核酸、多糖等の高分子不純物を除去す ことが特徴である。これを原料にしてなる リアミド樹脂は、架橋等によるゲルの発生 少なく、フィルム、射出成形品、繊維、モ フィラメント等に極めて好適に使用するこ が可能である。具体的には、著しくフィッ ュアイが少なく表面外観に優れたポリアミ 樹脂フィルム、繊維、モノフィラメントを ることが可能であり、且つ、著しく射出成 時の流動性が優れるものである。
 さらにバイオマス由来の原料を用いること 可能であるため、地球温暖化の防止や循環 社会を形成する上で極めて有効である。

[C.第3の実施例]
 最後に、第3の要旨に係る実施例を説明する 。

[カダベリン及びアミノ酸分析]
 なお、後述の各実施例及び各比較例のカダ リン・アジピン酸塩水溶液における、カダ リン、加水分解アミノ酸、加水分解リジン 加水分解アルギニン、遊離アミノ酸、遊離 ジン及び遊離アルギニンの各モル濃度は、 下の手法により分析した。

 (1)カダベリン分析:
 試料溶液(カダベリン・アジピン酸塩水溶液 )中のカダベリンは、陽イオン交換カラムを いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によ 分離し、電気伝導度計で検出することによ 、濃度を定量した。HPLCの移動相としては、4 0mMのメタンスルホン酸水溶液を使用した。

 (2)遊離アミノ酸分析:
 分析装置としては、日立アミノ酸分析計L-89 00を用いた。まず、試料溶液(カダベリン・ア ジピン酸塩水溶液)を限外濾過(MWCO10000)して、 濾液を分析試料とした。分析条件は生体アミ ノ酸分離条件とし、分析法としてはニンヒド リン発色法(570nm、440nm)を用いた。標準品とし ては和光アミノ酸混合液ANII型及びB型を希釈 たものを用い、分析試料の注入量は10μLと た。定量計算として、Pro(プロリン)は440nm、 のアミノ酸は570nmのピーク面積から、一点 部標準法にて各アミノ酸のモル濃度を算出 、それらを合計して遊離アミノ酸のモル濃 とした。

 (3)加水分解アミノ酸分析:
 試料溶液(カダベリン・アジピン酸塩水溶液 )をリアクティバイアルに適量秤量し、6N塩酸 500μLを加えてよく攪拌し、110℃で24時間加熱 た。これを遠心濃縮機で蒸発乾固させた。 られた固体を200μLの水に再溶解させ、0.45μm フィルターで濾過し、濾液を分析試料とした 。分析試料の各アミノ酸のモル濃度を、上記 「(1)遊離アミノ酸分析」と同様の手順により 測定し、それらを合計して加水分解アミノ酸 のモル濃度とした。

[リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増強株の作製]
 次いで、後述のカダベリン・アジピン酸塩 溶液の調製に用いた、リジン脱炭酸酵素遺 子(cadA)増幅株の作製手順について説明する
 リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)を組み込んだ ラスミドpCAD1の構築手順の概要を図1に示す 具体的には、以下に説明する手順により行 った。

 (1)大腸菌DNA抽出:
 LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキス トラクト5g、塩化ナトリウム(NaCl)5gを蒸留水1L に溶解]10mLに、大腸菌JM109株を対数増殖期後 まで培養し、得られた菌体を、10mg/mLのリゾ ームを含む10mMNaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM チレンジアミン四酢酸ジナトリウム(EDTA・2N a)水溶液0.15mLに懸濁した。

 次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最 終濃度が100μg/mLになるように加え、37℃で1時 間保温した。更に、ドデシル硫酸ナトリウム を、最終濃度が0.5%になるように加え、50℃で 6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等 のフェノール/クロロホルム溶液を加え、室 で10分間緩やかに振盪した後、全量を遠心 離(5000g(ただし、gは重力加速度を表す。)、20 分間、10~12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナ トリウムを0.3Mとなるように加えた後、2倍量 エタノールを加え混合した。遠心分離(15000g (ただし、gは重力加速度を表す。)、2分)によ 回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した 、風乾した。得られたDNAに、10mM トリス緩 液(pH7.5)-1mM EDTA・2Na溶液5mLを加え、4℃で一 静置し、後述のPCRの鋳型DNAとして使用した

 (2)cadAのクローニング:
 大腸菌cadAの取得は、上記(A)で調製したDNAを 鋳型とし、全ゲノム配列が報告されている大 腸菌K-12-MG1655株の該遺伝子の配列(GenBank Databa se Accession No.U00096)を基に設計した合成DNA(下 の配列番号1及び配列番号2で表わされる配 からなるDNA)をプライマーとして用いたポリ ラーゼ連鎖反応(PCR)によって行なった。

・配列番号1:
GTTGCGTGTTCTGCTTCATCGCGCTGATG
・配列番号2:
ACCAAGCTGATGGGTGAGATAGAGAATGAGTAAG

 なお、反応液は、鋳型DNA1μL及びPlatinum(登録 商標)Pfx DNAポリメラーゼ(インビトロジェン 製)0.2μLに、各プライマーが0.3μM、MgSO 4 が1mM、デオキシヌクレオチド3リン酸(dNTPs)が0 .25μMとなるように、1倍濃度Pfx Amplification Buf fer(インビトロジェン社製)を加えて全量を20μ Lとすることにより調製した。

 また、反応温度条件としては、DNAサーマ サイクラー(MJResearch社製PTC-200)を用い、94℃ 20秒、60℃で20秒、72℃で2.5分からなるサイ ルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94 ℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃で 保温は10分とした。

 PCRの終了後、増幅産物をエタノール沈殿 より精製し、制限酵素KpnI及び制限酵素SphI 切断した。得られたDNA標品を、0.75%アガロー ス(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳 により分離した後、臭化エチジウム染色を いて可視化することにより、cadAを含む約2.6k bの断片を検出し、QIA Quick Gel Extraction Kit(QI AGEN製)を用いて目的DNA断片の回収を行なった

 回収したDNA断片を、大腸菌プラスミドベ ターpUC18(タカラバイオ社製)を制限酵素KpnI び制限酵素SphIで切断して調製したDNA断片と 合し、ライゲーションキットver.2(タカラバ オ社製)を用いて連結後、得られたプラスミ ドDNAを用いて大腸菌(JM109株)を形質転換した この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mL アンピシリン、0.2mM IPTG(イソプロピル-β-D-チ オガラクトピラノシド)及び50μg/mL X-Galを含 LB寒天培地に塗抹した。

 この培地上で白色のコロニーを形成した ローンを、常法により液体培養した後、プ スミドDNAを精製した。得られたプラスミドD NAを制限酵素KpnI及び制限酵素SphIで切断する とにより、約2.5kbの挿入断片が認められるこ とを確認した。このプラスミドをpCAD1と命名 、pCAD1を含む大腸菌株をJM109/pCAD1と命名した 。

[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製]
 次いで、後述の実施例及び比較例で使用し カダベリン・アジピン酸塩水溶液の調製手 について説明する。カダベリン・アジピン 塩水溶液の調製は、上述のリジン脱炭酸酵 遺伝子(cadA)増幅株を用い、リジン・アジピ 酸塩を原料として、以下の手順で行なった

 (1)cadA増幅株の培養:
 上記手順により得られた大腸菌株JM109/pCAD1 LB培地入りフラスコ10本で前培養した後、1L 培養液を99LのLB培地が入った200L容ジャーフ ーメンターに接種し、温度35℃、通気量0.5vvm 、攪拌回転数250rpmの条件下で培養を行なった 。培養開始6時間後、この培養液全量を、3m 3 の2倍濃度LB培地が入った5m 3 容培養タンクに接種して、更に培養を行なっ た。5m 3 培養タンクでの培養条件は、通気量0.5vvm、温 度35℃であった。攪拌回転数は、溶存酸素濃 が十分高い値になるように、60~100rpmの範囲 調節した。培養4時間目に、滅菌したIPTG(イ プロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を終 濃度で0.5mMになるように加え、その後14時間 養を継続した。

 (2)菌体の分離
 遠心回転数6400rpm、フィード速度750L/時間の 件下で、アルファラバル分離機により培養 からの菌体回収を行なった。回収された菌 の湿重量は36.9kgであった。この湿菌体を10mM の酢酸ナトリウム溶液160Lに懸濁したのち、 心回転数15000rpm、フィード速度1.0L/分の条件 で、シャープレス遠心機により再度菌体回 を行ない、18.7kgの湿菌体を取得した。

 (3)カダベリン・アジピン酸塩の製造:
 500g/Lリジン水溶液に、pHが6.0となるように ジピン酸を加え、リジン・アジピン酸塩の 厚溶液を調製した。この濃厚溶液を、リジ 濃度が60g/Lとなるように水で希釈することに より、基質溶液(3m 3 )を作製し、これを5m 3 容培養タンクにはり込んだ。ピリドキサルリ ン酸を0.1mMの濃度となるように基質容液に加 、更に、大腸菌株JM109/pCAD1の菌体を、OD660が 0.5になるように加えて反応を開始した。反応 時の条件は、温度37℃、通気量0.5vvm、攪拌回 数70rpmとした。反応中の溶液のpHは、250kgの ジピン酸をイオン交換水400Lに懸濁したスラ リーを加え、pH6.5になるように制御した。ま 、リジン濃度318g/Lの基質濃厚溶液(600L)を開 から約130L/時間で連続的にフィードし、約4. 5時間で全量を添加した。更に反応を継続し 、計22時間反応させた。反応終了時には、リ ジン残存濃度が0.03g/L以下であり、ほぼ100%の ジンがカダベリンに変換されていた。反応 の溶液(約4m 3 )は、菌体の不活化処理(80℃、30分)を実施し 後、分子量13000カットのUF膜モジュールを通 て高分子量の不純物除去を行なった。UF処 による回収率は99.3%であった。
 以上の手順により、カダベリン及びアジピ 酸をほぼ等モル含むカダベリン・アジピン 塩水溶液を調製した。

[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離]
 (1)活性炭による脱色:
 直径700mmの活性炭塔に、活性炭(三菱化学製M M-11)105kg(約440L)を仕込み、2日間脱塩水を通水 た。次に、前記カダベリン・アジピン酸塩 溶液(約4m 3 )を1.32m 3 /時間の速度で通液し、最後に500Lの脱塩水を 水した。初期の流出液460Lをパージした後、 続く流出液を回収することにより、活性炭処 理したカダベリン・アジピン酸塩水溶液を採 取した。

 活性炭処理前のカダベリン・アジピン酸 水溶液の重量は4076.5kgであり、これに含有 れるカダベリン・アジピン酸塩の重量は603.9 kgであった。また、活性炭処理後のカダベリ ・アジピン酸塩水溶液の重量は5029kgであり これに含有されるカダベリン・アジピン酸 の重量は603.7kgであった。

 (2)濃縮:
 前記活性炭処理後のカダベリン・アジピン 塩水溶液を、PPプリーツカートリッジフィ ター(ADVANTEC社製TCP-JX)を通して2m 3 攪拌槽に仕込み、ジャケット温度110℃、内温 57℃、真空度140~150Torr(約18.6~20MPa)にて濃縮を 始し、適宜、活性炭処理後のカダベリン・ ジピン酸塩水溶液を仕込みながら濃縮を行 った。
 得られた濃縮液の重量は918.4kgであり、カダ ベリン・アジピン酸塩濃度は63.5重量%であっ 。

 (3)晶析:
 次に、同一の2m 3 攪拌槽にて晶析を行なった。攪拌翼は3枚後 翼、攪拌速度は40rpm、降温速度は8℃/時間と た。内温37.4℃の時に、予め作製したカダベ リン・アジピン酸塩を種晶として1kg加えて結 晶を析出させ、内温10.5℃で晶析終了として カダベリン・アジピン酸塩スラリーを得た 尚、種晶としてのカダベリン・アジピン酸 は、本実施例に準じてラボスケールにて準 した。

 (4)遠心濾過:
 直径1.22mの遠心濾過器を用い、前記カダベ ン・アジピン酸塩スラリーを3回に分けて遠 濾過した。回転数は980rpm、母液振り切り時 は15分、母液振り切り後に10℃の脱塩水約12k g(脱塩水約12kgは予想wetケーキ重量の約20重量% 分)をシャワー状に振りかけて洗浄し、その 塩水の振り切り時間は15分とした。

 1番晶として得られたwetケーキは194.3kg(カ ベリン・アジピン酸塩として165.2kg、濃縮液 に対する晶析率は28.3重量%)であった。遠心濾 過後に回収した1番母液は644kg、同じく回収し た1番洗浄水は91.1kg(カダベリン・アジピン酸 が溶けて量が増えた)であった。

 尚、上記カダベリン・アジピン酸塩重量 、wetケーキの水分量を水分計(電量滴定式水 分測定装置CA-06型及び水分気化装置VA-06型、 れも三菱化学製)にて測定して算出した。

 (5)2番晶:
 前記回収した1番母液及び1番洗浄水を2m 3 攪拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以 に示した点以外は上記(2)~(4)と同様の手順に り濃縮、晶析、遠心濾過を行なった。2番晶 析品としてwetケーキ142.6kg(カダベリン・アジ ン酸塩として121.4kg、晶析率30.6重量%)を得た 。回収した2番母液は414kg、回収した2番洗浄 は76.3kgであった。

 1番晶との相違点として、濃縮工程では、 濃縮液の重量は610.5kg、カダベリン・アジピ 酸塩濃度は65.0重量%であった。晶析工程では 、内温40℃の時に予め作製したカダベリン・ ジピン酸塩を種晶として1kg加えて結晶を析 させ、内温10.0℃で晶析を終了した。遠心濾 過工程では、カダベリン・アジピン酸塩スラ リーを2回に分けて遠心濾過を行ない、母液 り切り後に10℃の脱塩水約16kgをシャワー状 振りかけて洗浄した。

 (6)3番晶析:
 前記回収した2番母液及び2番洗浄水を2m 3 攪拌槽に仕込み、1番晶との相違点として以 に示した点以外は上記(2)~(4)と同様の手順に り濃縮、晶析、遠心濾過を行なった。3番晶 析品としてwetケーキ80.4kg(カダベリン・アジ ン酸塩として68.2kg、晶析率24.5重量%)を得た 回収した3番母液と3番洗浄水の合計は418kgで った。

 1番晶との相違点として、濃縮工程では、 濃縮液の重量は421.5kg、カダベリン・アジピ 酸塩濃度は66.0重量%であった。晶析工程では 、内温40℃の時に予め作製したカダベリン・ ジピン酸塩を種晶として1kg加えて結晶を析 させ、内温12.0℃で晶析を終了した。遠心濾 過工程では、カダベリン・アジピン酸塩スラ リーを2回に分けて遠心濾過を行ない、各々 液振り切り後に10℃の脱塩水約10kgをシャワ 状に振りかけて洗浄した。

[実施例3-1]
 (1)カダベリン・アジピン酸塩水溶液の遊離 ミノ酸及び加水分解アミノ酸分析:
 上記[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 離]の「(2)濃縮」にて調製した、カダベリン アジピン酸塩の1番晶の晶析前におけるカダ リン・アジピン酸塩の濃縮水溶液について 溶液中のカダベリン、加水分解アミノ酸、 水分解リジン、加水分解アルギニン、遊離 ミノ酸、遊離リジン及び遊離アルギニンの 々のモル濃度を上記手順により測定した。 果を表3に示す。

 (2)ポリアミド樹脂フィルムの作製及びF/E(フ ィッシュアイ)の評価:
 上記[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 離]の「(4)遠心濾過」にて得られた、カダベ ン・アジピン酸塩の1番晶のwetケーキ25kg、水 25kg及び亜燐酸1.25gを、窒素雰囲気下で混合し て完全に溶解させ、原料水溶液を得た。
 プランジャーポンプにて予め窒素置換した ートクレーブに、上記の原料水溶液を移送 た。ジャケット温度を280℃に、オートクレ ブの圧力を1.47MPaにそれぞれ調節し、内容物 を270℃に昇温した。

 次に、オートクレーブ内の圧力を除々に放 した後、更に減圧して所定の攪拌動力に到 した時点で反応終了とした。反応終了後に 素にて復圧し、内容物をストランド状に冷 水槽へ導入した後、回転式カッターでペレ ト化した。
 得られたペレットを、120℃、1Torr(0.13kPa)の 件で、水分量が0.1%以下となるまで乾燥し、 リアミド樹脂を得た。相対粘度は3.51であっ た。

 得られたポリアミド樹脂100重量部に対し、 均粒子径が3.0μmのタルク0.03重量部、及び、 エチレンビスステアリン酸アマイド(花王社 、カオーワックスEB-FF)0.1重量部を乾式混合 て得られたポリアミド樹脂組成物を原料と て、押出機シリンダ径40mmのT-ダイ式成膜機 用い、押出機のシリンダ設定温度を260℃、 膜されたフィルムを巻き取る冷却ロールの 度を90℃として、厚み25μmのフィルムを成膜 た。成膜開始から1時間が経過した直後のフ ィルムを評価用サンプルとし、面積900cm 2 中における大きさ50μm以上の粒状欠陥(フィッ シュアイ)の数を数えることにより、F/E(フィ シュアイ)の評価を行なった。結果を表3に す。

[実施例3-2]
 (1)カダベリン・アジピン酸塩水溶液の遊離 ミノ酸及び加水分解アミノ酸分析:
 上記[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 離]の「(4)遠心濾過」にて回収された1番母液 び1番洗浄水、即ち、カダベリン・アジピン 酸塩の2番晶の晶析前におけるカダベリン・ ジピン酸塩水溶液について、溶液中のカダ リン、加水分解アミノ酸、加水分解リジン 加水分解アルギニン、遊離アミノ酸、遊離 ジン及び遊離アルギニンの各々のモル濃度 上記手順により測定した。結果を表3に示す

 (2)ポリアミド樹脂フィルムの作製及びF/E(フ ィッシュアイ)の評価:
 実施例3-1において用いたカダベリン・アジ ン酸塩の1番晶のwetケーキの代わりに、上記 [カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離]の (5)2番晶析」にて得られた、カダベリン・ア ジピン酸塩の2番晶のwetケーキを用いた他は 実施例3-1と同様の手順により、ポリアミド 脂の作製、フィルムの成膜及びF/E(フィッシ アイ)の評価を行なった。結果を表3に示す

[比較例3-1]
 (1)カダベリン・アジピン酸塩水溶液の遊離 ミノ酸及び加水分解アミノ酸分析:
 上記[カダベリン・アジピン酸塩の精製・単 離]の「(5)2番晶」にて回収された2番母液及び 2番洗浄水、即ち、カダベリン・アジピン酸 の3番晶の晶析前におけるカダベリン・アジ ン酸塩水溶液(これを「比較例3-1のカダベリ ン・アジピン酸塩溶液」とする。)について 溶液中のカダベリン、加水分解アミノ酸、 水分解リジン、加水分解アルギニン、遊離 ミノ酸、遊離リジン及び遊離アルギニンの 々のモル濃度を上記手順により測定した。 果を表3に示す。

 (2)ポリアミド樹脂フィルムの作製及びF/E(フ ィッシュアイ)の評価:
 実施例3-1において用いたカダベリン・アジ ン酸塩の1番晶のwetケーキの代わりに、上記 [カダベリン・アジピン酸塩の精製・単離]の (6)3番晶析」にて得られた、カダベリン・ア ジピン酸塩の3番晶のwetケーキを用いた他は 実施例3-1と同様の手順により、ポリアミド 脂の作製、フィルムの成膜及びF/E(フィッシ アイ)の評価を行なった。結果を表3に示す

[結果]
 実施例3-1、実施例3-2及び比較例3-1の結果を 3に示す。

[参考例]
 上述の[カダベリン・アジピン酸塩水溶液の 調製]に従ってリジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA) 幅株を培養した。培養液を遠心分離するこ により、菌体ペレットを回収した。得られ 菌体を蒸留水で希釈して、下記の表4の最左 の各列に示す乾燥菌体濃度(乾燥菌体換算重 量に基づく濃度)のサンプルを調製した。得 れたサンプルを37℃で24時間放置した後、遠 分離を行なって、上清の遊離アミノ酸及び 水分解アミノ酸の各モル濃度を、上記[カダ ベリン及びアミノ酸分析]記載の手順により 定した。

 各サンプルの乾燥菌体濃度と、上清の加水 解アミノ酸濃度及び遊離アミノ酸濃度との 係を、下記の表4及び図2のグラフに示す。

 これらの結果から、菌体濃度が高いほど 水分解アミノ酸が増加していることが分か 。また、遊離アミノ酸は殆ど存在しなかっ ことから、測定された加水分解アミノ酸の ぼ100%が、菌体(リジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA )増幅株)に含まれていたペプチドやタンパク 等に由来するものであると推測される。

 すなわち、晶析精製前のカダベリン・ア ピン酸塩水溶液中に存在する加水分解アミ 酸は、その大部分が菌体(リジン脱炭酸酵素 遺伝子(cadA)増幅株)に由来するものであると 測される。従って、反応時に使用する菌体( ジン脱炭酸酵素遺伝子(cadA)増幅株)の量を少 なくすれば、不純物となる加水分解アミノ酸 成分(ペプチドやタンパク質)を低減化するこ が可能であると考えられる。

 本発明を利用可能な分野は制限されず、 ダベリン及び又はカダベリン塩の溶液が用 られる任意の分野に利用することが可能で るが、特にナイロン等のポリアミドの製造 野において好適に用いられる。

 なお、本出願は、2007年1月11日付けで出願 された日本出願(特願2007-3468及び特願2007-3650) びに2007年2月6日付けで出願された日本出願( 特願2007-26296)に基づいており、それらの全体 引用により援用される。