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Title:
GLYCOLIDE/ ε -CAPROLACTONE COPOLYMER, SUTURES MADE BY USING THE SAME, AND PROCESSES FOR PRODUCTION OF BOTH
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/034975
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides a glycolide/ε-caprolactone copolymer which is excellent in strength and flexibility and which can give knots that are tight and little come undone (namely, that are excellent in ligation stability) when used as a suture; a process for the production of the same; and sutures made by using the copolymer. A glycolide/ε-caprolactone copolymer which comprises glycolide units and ε-caprolactone units at a mole ratio of 70:30 to 80:20, characterized in that in 1H-NMR (solvent: 1,1,1,3,3,3-hexafluoroisopropanol), the integrated signal value ratio (B/A) of a signal (B) in a δ range of 4.20 to 4.30 to a signal (A) in a δ range of 4.09 to 4.17 is 1 to 10 and that the copolymer contains a diol having five or fewer carbon atoms in an amount of 0.1 to 0.4% by mole based on the total molar amount of glycolide units and ε-caprolactone units.

Inventors:
TAKAHASHI YOSHITAKE (JP)
MATSUZAKI MITSUTAKA (JP)
YAMAMOTO TORU (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/066278
Publication Date:
March 19, 2009
Filing Date:
September 10, 2008
Export Citation:
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Assignee:
GUNZE KK (JP)
TAKAHASHI YOSHITAKE (JP)
MATSUZAKI MITSUTAKA (JP)
YAMAMOTO TORU (JP)
International Classes:
C08G63/08; A61L17/12; C08G63/85; D01F6/84
Foreign References:
US6498229B12002-12-24
JPH04213320A1992-08-04
JP2004131693A2004-04-30
JP3712849B22005-11-02
JPH06277274A1994-10-04
JPH0343906B21991-07-04
JPH03269013A1991-11-29
US20040084805A12004-05-06
Attorney, Agent or Firm:
SAEGUSA & PARTNERS et al. (1-7-1 Doshomachi,Chuo-ku, Osaka-shi, Osaka, JP)
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Claims:
グリコリド単位及びε-カプロラクトン単位をモル比70:30~80:20の範囲で含むグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体であって、該共重合体の 1 H-NMR(溶媒:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロパノール)におけるδ4.09~4.17のシグナル(A)とδ4.20~4.30のシグナル(B)の積分比(B/A)が1~10であり、グリコリド単位及びε-カプロラクトン単位の合計モル量に対して炭素数5以下のジオール化合物を0.1~0.4mol%の範囲で含有することを特徴とする共重合体。
請求項1に記載のグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体を溶融紡糸して得られる縫合糸。
縫合糸を結紮引張強度の70%の強度で単結節した後、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)で、1週間浸漬した後の結び目の大きさが、結紮直後の結び目の大きさに対して1.2倍以下である請求項2に記載の縫合糸。
縫合糸がモノフィラメントであり、直線的引張強度が400MPa以上、結紮引張強度が200MPa以上であり、ヤング率が2.0GPa以下である請求項2に記載の縫合糸。
オクチル酸スズ及び炭素数5以下のジオール化合物の存在下、グリコリド及びε-カプロラクトンをモル比70:30~80:20の範囲で反応させてグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体を製造する方法であって、該炭素数5以下のジオール化合物をグリコリド及びε-カプロラクトンの合計モル量に対して0.1~0.4mol%用いることを特徴とする製造方法。
前記請求項5に記載の製造方法により得られるグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体。
グリコリド/ε-カプロラクトン共重合体からなる縫合糸を製造する方法であって、
(1)オクチル酸スズ及び炭素数5以下のジオール化合物の存在下、グリコリド及びε-カプロラクトンをモル比70:30~80:20の範囲で反応させてグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体を製造し(該炭素数5以下のジオール化合物をグリコリド及びε-カプロラクトンの合計モル量に対して0.1~0.4mol%用いる)、及び
(2)得られた共重合体を溶融紡糸した後、延伸して縫合糸を得る、
ことを特徴とする製造方法。
Description:
[規則37.2に基づく発明の名称]  リコリド/ε-カプロラクトン共重合体、それ 用いた縫合糸、及び、それらの製造方法

 本発明は、強度と結紮安定性に優れたグ コリド/ε-カプロラクトン共重合体からなる 縫合糸に関するものである。

 グリコリド/ε-カプロラクトン共重合体は 、グリコリドとε-カプロラクトンとの開環重 合により得られ、生体吸収性高分子として注 目されている。そのため、外科用物品、特に モノフィラメント縫合糸として有用である。

 特許文献1には、強度及び柔軟性を両立す るため、1,6-ヘキサンジオールの存在下、1段 重合法を用いてグリコリド/ε-カプロラクト ン共重合体(GA/CL=80/20~65/35)を製造する方法、 び2段階重合法を用いてグリコリド/ε-カプロ ラクトン共重合体(GA/CL=80/20~65/35)を製造する 法が記載されている。しかし、これらの方 で得られる共重合体からなる縫合糸は、生 的食塩水に一定時間浸漬した後(即ち、加水 解後)の結紮安定性が低いため、術後に結紮 部分(結節点)が緩んでしまうという問題があ 。

 特許文献2には、ラウリルアルコール等の 水酸基化合物を反応系に添加して、グリコリ ドとε-カプロラクトンから分子量の制御され たグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体を 造する方法が記載されている。しかし、ラ リルアルコールに代表される直鎖状飽和脂 族アルコールは一官能性であるため、反応 に片末端にモノマーが反応されていくため 子量制御には効果があるが、柔軟性制御に 効果がない。また、一官能性アルコールは 常温で固化しやすく扱いやすさに難があり 重合反応物への溶解性も乏しい。

 特許文献3には、モノオール化合物又はジ オール化合物の存在下、ε-カプロラクトン及 びグリコリドを順に開環重合して、ポリ(ε- プロラクトン)セグメント(A)及びポリグリコ ル酸セグメント(B)からなるブロック共重合 (GA/CL=50/50~95/5)を、溶融紡糸した後、延伸し モノフィラメントが得られることが記載さ ている。このモノフィラメントは、引張強 、柔軟性、結紮安定性に優れることが記載 れている。しかし、創傷治癒など治癒に必 な期間、強度を保持し、治癒終了後は速や に縫合糸が体内に吸収すべきであるが、こ モノフィラメントは分解性が低いため吸収 間が長くなり創傷治癒後も長期に体内に残 するため、異物反応や炎症反応を引き起こ 可能性がある。

 特許文献4には、モノフィラメント縫合糸 の結紮安定性を向上させるため、ジエチレン グリコールの存在下、グリコリド/ε-カプロ クトン(GA/CL=70/30~30/70)のプレポリマーを製造 、これをグリコリドと重合させて(二段階重 合)、グリコリド/ε-カプロラクトンの結晶性 重合体を製造する方法が記載されている。

 また、特許文献5には、一官能性重合開始 剤(ドデカノール等)及び二官能性重合開始剤( ジエチレングリコール等)を用いて、p-ジオキ サノンを用いる第1段の単独重合と、グリコ ドを用いる第2段のブロック共重合により(2 階重合)、結晶化速度の速いポリラクトン共 合体を製造することが記載されている。

 確かに、特許文献4及び5の二段階重合で 、各段階で加えるモノマー種、量により、 リマーのブロック性を制御することが可能 ある。しかしながら、この方法で得られた リコリドカプロラクトン共重合体は結紮保 性が低く、緩みやすい性質を有している。

 このように、従来のグリコリド/ε-カプロラ クトン共重合体を縫合糸として使用した場合 、必ずしも柔軟性、結紮安定性を得ることが できないのが現状である。

特公平3-43906号公報

特許第3075665号明細書

特許第3712849号明細書

特開平4-213320号公報

特開2004-131692号公報

 本発明は、強度と柔軟性に優れ、縫合糸 した時の結節点がタイトになりほどけにく (結紮安定性に優れた)グリコリド/ε-カプロ クトン共重合体、及びその製法を提供する とを目的とする。また、該共重合体を用い 縫合糸を提供することを目的とする。

 本発明者は、上記の課題を解決するため 意研究をおこなった結果、グリコリドとε- プロラクトンの重合時の開始剤(例えば、ジ エチレングリコール)を所定量に制御するこ により、ポリマー分子の配列及び縫合糸の 軟性を制御できることを見いだした。具体 には、開始剤の量をグリコリドとε-カプロ クトンの合計モル量に対し、0.1~0.4mol%にする ことで、優れた強度と柔軟性を実現できるこ とを見いだした。これにより、この縫合糸の 結節点はタイトとなりほどけにくいものとな り結紮安定性が大幅に向上した。かかる知見 に基づき、さらに研究を重ねて本発明を完成 するに至った。

 即ち、本発明は下記のグリコリド/ε-カプ ロラクトン共重合体、その製法、及び縫合糸 に関する。

 項1.グリコリド単位及びε-カプロラクトン 位をモル比70:30~80:20の範囲で含むグリコリド /ε-カプロラクトン共重合体であって、該共 合体の 1 H-NMR(溶媒:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロ ノール)におけるδ4.09~4.17のシグナル(A)とδ4.2 0~4.30のシグナル(B)の積分比(B/A)が1~10であり、 グリコリド単位及びε-カプロラクトン単位の 合計モル量に対して炭素数5以下のジオール 合物を0.1~0.4mol%の範囲で含有することを特徴 とする共重合体。

 項2.項1に記載のグリコリド/ε-カプロラク トン共重合体を溶融紡糸して得られる縫合糸 。

 項3.縫合糸を結紮引張強度の70%の強度で 結節した後、37℃、pH7.4のリン酸緩衝食塩水( PBS)で、1週間浸漬した後の結び目の大きさが 結紮直後の結び目の大きさに対して1.2倍以 である項2に記載の縫合糸。

 項4.縫合糸がモノフィラメントであり、 線的引張強度が400MPa以上、結紮引張強度が20 0MPa以上であり、ヤング率が2.0GPa以下である 2に記載の縫合糸。

 項5.オクチル酸スズ及び炭素数5以下のジ ール化合物の存在下、グリコリド及びε-カ ロラクトンをモル比70:30~80:20の範囲で反応 せてグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体 製造する方法であって、該炭素数5以下のジ オール化合物をグリコリド及びε-カプロラク トンの合計モル量に対して0.1~0.4mol%用いるこ を特徴とする製造方法。

 項6.前記項5に記載の製造方法により得ら るグリコリド/ε-カプロラクトン共重合体。

 項7.グリコリド/ε-カプロラクトン共重合体 らなる縫合糸を製造する方法であって、
(1)オクチル酸スズ及び炭素数5以下のジオー 化合物の存在下、グリコリド及びε-カプロ クトンをモル比70:30~80:20の範囲で反応させて グリコリド/ε-カプロラクトン共重合体を製 し(該炭素数5以下のジオール化合物をグリコ リド及びε-カプロラクトンの合計モル量に対 して0.1~0.4mol%用いる)、及び
(2)得られた共重合体を溶融紡糸した後、延伸 して縫合糸を得る、
ことを特徴とする製造方法。

 本発明のグリコリド/ε-カプロラクトン共 重合体からなる縫合糸は、強度と柔軟性に優 れしかも結紮安定性に優れている。

 以下、本発明を詳細に説明する。

 本発明のグリコリド/ε-カプロラクトン共重 合体は、グリコリド単位及びε-カプロラクト ン単位をモル比70:30~80:20の範囲で含み、該共 合体の 1 H-NMR(溶媒:1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロ ノール)におけるδ4.09~4.17のシグナル(A)とδ4.2 0~4.30のシグナル(B)の積分比(B/A)が1~10であるこ とを特徴とする。

 ここで、δ4.09~4.17のシグナル(A)は、ε-カ ロラクトンがブロック的に開環重合した構 におけるカルボニル炭素のγ位の炭素上のプ ロトンとして帰属される。δ4.20~4.30のシグナ (B)は、ε-カプロラクトンとグリコリドがラ ダム的に開環重合した構造におけるカルボ ル炭素のγ位の炭素上のプロトンとして帰 される。具体的には、実施例1を参照。

 上記シグナルAとシグナルBの積分比(B/A)は 、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~7で ある。

 本発明のグリコリド/ε-カプロラクトン共 重合体は、オクチル酸スズ及び炭素数5以下 ジオール化合物の存在下、グリコリド及びε -カプロラクトンをモル比70:30~80:20の範囲で反 応させてグリコリド/ε-カプロラクトン共重 体を製造する方法であり、該ジオール化合 をグリコリド及びε-カプロラクトンの合計 ル量に対して0.1~0.4mol%用いることを特徴とす る。

 グリコリド及びε-カプロラクトンをモル は、好ましくは70/30~80/20、より好ましくは72 .5/27.5~77.5/22.5である。グリコリドが70mol%未満 あると縫合糸の強度が低くなり、80mol%を越 ると縫合糸の柔軟性が乏しくなるため好ま くない。

 本反応で用いる触媒としては、オクチル スズが好適である。オクチル酸スズの使用 は、仕込みモノマー全量に対して、10~200ppm 度(スズ金属換算で3~59ppm程度)、好ましくは2 5~100ppm程度(スズ金属換算で7~29ppm程度)である

 炭素数5以下のジオール化合物としては、 本反応の環状エステルの開環重合の反応性が 高く、減圧下でも揮発しない比較的沸点の高 い溶液が選択される。具体的には、ジエチレ ングリコール、(1,2-又は1,3-)プロピレングリ ール、1,4-ブタンジオール、1, 3-ブタンジオ ル、2, 3-ブタンジオール、1, 5-ペンタンジ ール、1, 2-ペンタンジオール等が例示され 。好ましくは、ジエチレングリコールであ 。なお、炭素数6を越えると固体となるため 添加量の調整が容易でなく、また得られる縫 合糸の結紮保持性が低下する傾向にあるため 好ましくない(例えば、比較例5,7)。

 炭素数5以下のジオール化合物の使用量は 、グリコリド及びε-カプロラクトンの合計モ ル量に対して、0.1~0.4 mol%、好ましくは0.15~0.3 5 mol%である。炭素数5以下のジオール化合物 、上記の範囲から選択されるが、該ジオー 化合物の増加とともに共重合体の分子配列 ランダム性が増加し、それに伴い融点も低 する。例えば、0.1 mol%未満の場合は縫合糸 した場合に固くて結紮性に乏しくなり、0.4 mol%を越えると柔軟性が高すぎてゴム状とな 所望の引張及び結節強度、引張及び結節弾 率等が得られない。

 また、炭素数5以下のジオール化合物を用 いないか或いは使用量が少ない場合は、グリ コリド/ε-カプロラクトンの仕込み比に対し 、得られる共重合体の重合比が一致せず、 望の重合比の共重合体を製造することが困 であった。しかし、上記の範囲で該ジオー 化合物を用いることにより、原料の仕込み と共重合体の重合比がほぼ同一となり、重 比の制御が容易になる。なお、重合の際添 する該ジオール化合物はほぼ全量反応し、 重合体中に残る。

 本反応の反応温度は、通常150~190℃、好ま しくは160~180℃である。温度が低いほど重合 の着色が抑えられ、重合組成比を制御しや いため好ましい。反応圧力は、不活性ガス 囲気下であれば減圧でも常圧でもよい。反 時間は、24~240時間、好ましくは72~168時間で る。

 本反応は、1段階の重合反応からなり、2 階重合反応で得られる共重合体(縫合糸)と比 較して、結紮保持性が大きく向上する(例え 実施例1~3と比較例6,7を参照)。

 得られた重合体は、溶融状態のまま減圧 て、又は、冷却、粉砕した後、減圧下で加 することにより未反応モノマーを除去する とが好ましい。

 モノフィラメント縫合糸は、得られた重 体を溶融紡糸してフィラメント状にした後 伸する。溶融紡糸は、220~270℃の温度範囲で 行うことができる。溶融紡糸の際、紡糸ノズ ルから吐出されたフィラメントを、吐出後お よそ1~30秒以内に、-50~50℃の冷却媒体中に浸 して冷却することが好ましい。冷却媒体に 、水、炭化水素化合物類、アルコール類、 気、窒素ガス、アルゴン等の不活性ガス等 知のものを使用できる。

 紡糸により得られた未延伸フィラメント 、およそ20~80℃の温度にて3~10倍に延伸する とができる。また、モノフィラメントの経 的な収縮を抑制する目的で、100~150℃にてア ニーリングをすることができる。

 モノフィラメントの太さには特に制限は いが、通常、直径が0.005~2mmである。好まし は0.02~1mmである。

 本発明のモノフィラメント縫合糸は、優 た機械的強度及び柔軟性を有し、適度の加 分解性を有し、かつ結紮安定性の高い、外 用吸収性縫合糸として好適である。モノフ ラメントは、少なくとも400 MPa(好ましくは4 00~1000 MPa)の直線的引張強度、少なくとも200  MPa(好ましくは200~600 MPa)の結紮引張強度を示 、優れた強度を有する。ヤング率は、2.0 GP a以下(好ましくは0.2~2.0 GPa)であり、十分な柔 軟性を有する。加水分解性、すなわち、37  、pH 7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS)中に1週間浸 した後の直線的引張強度の残率(元の引張強 度に対する割合)は、50~90 %であり、さらに好 ましくは60~80 %である。また、同加水分解試 での結紮強度の残率は、30~70 %、さらに好 しくは40~60 %である。本モノフィラメント縫 合糸は、身体の種々の部位に適用することが 可能である。

 本発明の分解性モノフィラメント縫合糸 結紮安定性が良好で、一度作った結紮の結 目が緩くなることがない。従来知られてい モノフィラメント縫合糸はいずれも結び目 大きくなりやすく、結び目の安定性(結紮安 定性)が乏しいため、手術者は縫合糸に多数 の結び目を作る必要があった。本発明のモ フィラメントは、小さく安定し易い結び目 作ることが容易であり、1回の結び目を作る けで十分結紮は安定する。

 さらに、一般的に、結び目を作ったフィ メントは、結び目を作る前よりも引張強度 低下する。従来知られているモノフィラメ トは、結び目を作らない時の引張強度(直線 的引張強度)に比べて、結び目を作った時の 張強度(結紮引張強度)は約3~5割程度に低下す ることが知られている。この傾向は結び目の 回数が多くなるほど顕著になる。

 これに対し、本発明のモノフィラメント 結紮強度は、直線的引張強度の5~6割程度の 下に過ぎない上、上述のとおり、従来のモ フィラメントに比べて少ない結び目で、結 を安定させることが可能なので、実際の手 に使用した場合、十分な結紮強度を保証す ことができ、手術の安全保証の点から、極 て有効である。

 本発明の分解性モノフィラメントは、公知 方法により医療用成形物に成形加工される 医療用成形物として、モノフィラメント状 合糸、骨補強用板、外科用網状体、徐放性 剤、再生医療用足場材料等が挙げられる。

 以下、実施例を用いて本発明をより詳細 説明するが、本発明はこれら実施例に限定 れるものではない。

 本明細書に記載の下記の評価は、次のよう して行った。
<共重合体のブロック性及びランダム性の 価>
 共重合体のブロック性及びランダム性は、 1のNMRチャートにおけるシグナルAとシグナ Bの比の積分比(B/A)として評価した。この数 が大きくなるほどランダム性が大きくなる とを示す。

 (4.20~4.30ppm積分値(シグナルB))/(4.09~4.17ppm積分 値(シグナルA))
<共重合体の重合比の評価>
 共重合体の重合比は、図1のNMRチャートにお ける4.75~5.1ppm積分値と1.7ppm積分値との比から 価した。

 グリコリド/ε-カプロラクトン=(4.75~5.1ppm積 値)/(1.7ppm積分値)
<結紮強度>
 モノフィラメント縫合糸を結紮引張強度の7 0%の力で単結節、即ち結び目を1つ形成する。 その後、引張試験機のチャックに対してチャ ック間距離10 cmで縫合糸の両端を固定する。 試験速度100 mm/minで引張試験を実施し、縫合 が結紮点で破断した際の強度を結紮引張強 とする。
<柔軟性の評価>
 縫合糸の直線的引張試験におけるひずみ0.1% と0.2%に対応する引張強度を、それぞれσ 1 、σ 2 としたとき。引張強度の差(σ 2 1 )をひずみの差で除したときに算出される引 弾性率から柔軟性を評価する。

 引張弾性率(柔軟性, MPa)=(σ 2 1 )/(0.2-0.1)
<結紮安定性の評価>
 モノフィラメント縫合糸を結紮引張強度の7 0%の強度で単結節した後、37℃、pH7.4のリン酸 緩衝食塩水(PBS)中に1週間浸漬した後の結紮安 定性、即ち、結節直後とPBS処理後の結び目の 大きさの変化を以下の基準で評価した。

 ここで、結び目の大きさとは、形成した び目部分について、軸を中心として60゜ず 回転させ、垂直な方向から見た結び目の輪 で囲まれた部分(図4、図5参照)の面積をそれ れ測定し、得られた6つの面積の平均値を意 味する。

 ランクA: 結び目に緩みがなく、切れにく い。結び目の大きさは結紮直後の大きさに比 較して1.2倍以下である。

 ランクB: 結び目に緩みはないが、切れや すい。結び目の大きさは結紮直後の大きさに 比較して1.2倍以下である。

 ランクC: 結び目に緩みが大きく、結び目 の間に空間が容易に見られる。結び目の大き さは結紮直後の大きさに比較して1.2倍以上で ある。

  実施例1
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド2,000 g(17.23 mol)、ε-カプロラクトン 636.5 mL(5.74 mol)、ジエチレングリコール5.5 mL (グリコリドとカプロラクトンの合計モル量 対し0.25 mol%)加えた。常温にて12時間真空脱 した後、窒素置換を行い、オクチル酸スズ 0.212 g(0.52 mmol)加えた。数時間真空脱気後 窒素置換を行い、160℃のオイルバス中で撹 しながら窒素気流下で重合を行った。系内 粘性が上昇したら撹拌を停止し、継続して16 0℃にて7日間重合を実施した。重合終了後、 リマーを粉砕してペレットとし、乾燥ペレ トを用いてポリマー物性及び縫合糸物性を 定した。その結果を表1に示す。

 柔軟性の高いポリマーが得られた。ポリ ーを紡糸して得られたモノフィラメント縫 糸は、結紮安定性に優れ(Aランク)、強度も かった。

  実施例2及び3
 実施例1と同様の重合方法にて、重合開始剤 を以下のように変更し、160℃、7日間重合を った。なお、重合開始剤のmol%は、グリコリ とε-カプロラクトンの合計モル量に対する である。以下同じ。

 実施例2 重合開始剤:プロピレングリコール  0.25 mol%
 実施例3 重合開始剤:1,4-ブタンジオール 0.2 5 mol%
 上記2種につき、それぞれ柔軟性の高いポリ マーが得られた。ポリマーを紡糸して得られ たモノフィラメント縫合糸は、結紮安定性に 優れ(Aランク)、結紮引張強度は高かった。そ の結果を表1に示す。なお、GLはグリコリドを 、CLはε-カプロラクトンを表す。

  比較例1及び2
 実施例1と同様の重合方法にて、重合開始剤 (ジエチレングリコール)の量を以下のように 更し、160 ℃、7日間重合を行った。

 比較例1 重合開始剤:ジエチレングリコール  0.05 mol%
 仕込み比と重合比が一致せず、柔軟性の低 、硬いポリマーが得られた。ポリマーを紡 して得られたモノフィラメント縫合糸は、 紮安定性(加水分解後)に乏しく(Bランク)、 紮引張強度は低かった。その結果を表2に示 。

 比較例2 重合開始剤:ジエチレングリコール  5.0 mol%
 仕込み比と重合比はほぼ一致したが、柔軟 の高い、ゴム状のポリマーが得られた。ポ マーは紡糸試験にて糸の形状として加工す ことができなかった。

  比較例3
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド2,000 g(17.23 mol)、ε-カプロラクトン 636.5 mL(5.74 mol)加えた。常温にて12時間真空 気した後、窒素置換を行い、オクチル酸ス を0.795 g(1.95 mmol)加えた。その後の操作は実 施例1と同様にし、160 ℃、7日間窒素気流下 重合を実施し、ポリマー物性を測定した。 の結果を表2に示す。

 仕込み比と重合比が一致せず、柔軟性の しい、硬いポリマーが得られた。ポリマー 紡糸して得られたモノフィラメント縫合糸 、引張及び結紮引張強度が低く、加水分解 の結紮安定性も乏しかった(Bランク)。

  比較例4
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド2,000 g(17.23 mol)、ε-カプロラクトン 636.5 mL(5.74 mol)加えた。常温にて12時間真空 気した後、窒素置換を行い、オクチル酸ス を0.212 g(0.52 mmol)加えた。その後の操作につ いては実施例1と同様にし、200 ℃、7日間重 窒素気流下で重合を実施し、ポリマー物性 測定した。その結果を表2に示す。

 仕込み比と重合比が一致せず、柔軟性の しい、硬いポリマーが得られた。ポリマー 紡糸して得られたモノフィラメント縫合糸 、引張及び結紮引張強度が低く、加水分解 の結紮安定性も乏しかった(Bランク)。

  比較例5 (特許文献1の実施例1(1段階重合)の追試)
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド2,000 g(17.23mol)、ε-カプロラクトン63 6.5 mL(5.74 mol)、1, 6-ヘキサンジオール2.72 g(0 .1 mol%)及びオクタン酸第一スズ(0.33 mol溶液1. 15 mL)を仕込んだ。フラスコ内の圧力を低下 せてトルエンを蒸発させ、フラスコ内を窒 置換と真空脱気した後、乾燥窒素にて系内 力を大気圧の3/4に調節した。系内圧力が変 しないように封を行い、反応容器を100 ℃に 予熱したオイルバス中に浸漬して15分間撹拌 た。その後、温度を150 ℃に上げて15分間加 熱し、さらにオイルバスを190 ℃に上げて18 間重合を続けた。重合したポリマーを単離 て冷却し、粉砕後減圧下で16時間加熱するこ とによって、未反応モノマーを除去し、精製 ポリマーを得た。その結果を表2に示す。

 ポリマーは着色が多く、加熱劣化してい 。縫合糸は柔軟(弾性率が低い)であるが、 水分解後の結紮安定性はBランクであった。

  比較例6 (特許文献1の実施例4(2段階重合)の追試)
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド156.5 g(1.35 mol)、ε-カプロラクトン3 49 mL(3.15 mol)、グリコール酸0.441 g(5.80 mmol) びオクタン酸第一スズ(0.33 M溶液1.10 mL)を仕 込んだ。フラスコ内の圧力を低下させてトル エンを蒸発させ、反応容器内を窒素置換と真 空脱気した後、乾燥窒素にて系内圧力を1気 に調節した。反応容器をオイルバス中120 ℃ に加熱し、10分保持した。その後、30分かけ オイルバスを200 ℃まで加熱し、200 ℃到達 20分反応させた。オイルバスを150 ℃まで放 冷し、撹拌を中止して反応容器をオイルバス から取り出した。次いで、反応容器にグリコ リド928.0 g(8.00 mol)、ε-カプロラクトン228 g(2 .00 mol)を加えて、再度120 ℃にて10分間撹拌 た。その後、15分間かけてオイルバス温度を 205 ℃まで上昇し、205 ℃にて4時間重合した その結果を表2に示す。

 この場合、縫合糸は柔軟(弾性率が低い) あるが、結紮安定性は乏しく、Cランクであ た。

  比較例7 (特許文献1の実施例7(2段階重合)の追試)
 撹拌羽を付属した3Lセパラブルフラスコに リコリド150 g(1.29 mol)、ε-カプロラクトン342  g(3.0 mol)、1, 6-ヘキサンジオール0.51 g(4.29  mmol)及びオクタン酸第一スズ(0.33 M溶液3.24 mL )を仕込んだ。反応容器内の圧力を低下させ トルエンを蒸発させ、反応容器内を窒素置 と真空脱気した後、乾燥窒素にて系内圧力 1気圧に調節した。反応容器をオイルバス中1 90 ℃に加熱し、35分保持した。その後、30分 けてオイルバスを120 ℃まで放冷し、次い フラスコ反応容器にグリコリド865.5 g(7.71 mo l)、ε-カプロラクトン97.5 g(0.855 mol)を加えた 。120 ℃にて40分間撹拌した後、15分間かけて オイルバス温度を190 ℃まで上昇し、190 ℃ て2.5時間重合した。その結果を表2に示す。

 得られたポリマーを加工したモノフィラ ント縫合糸の引張強度及び結紮引張強度は いが、弾性率が高く、硬い物性である。ま 、加水分解後の結紮安定性も乏しかった(C ンク)。

実施例1で得られたグリコリドカプロラクト 共重合体 1 H NMRチャートである。 実施例1で得られたグリコリドカプロラ クトン共重合体からなる縫合糸の加水分解1 間後の結紮時写真である。 比較例6で得られたグリコリドカプロラ クトン共重合体からなる縫合糸の加水分解1 間後の結紮時写真である。 実施例1で得られたグリコリドカプロラ クトン共重合体からなる縫合糸の加水分解1 間後の結紮時写真(図2)における、結び目の きさを表示する。 比較例6で得られたグリコリドカプロラ クトン共重合体からなる縫合糸の加水分解1 間後の結紮時写真(図3)における、結び目の きさを表示する。