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Title:
CARBON NANOFIBER, METHOD FOR PRODUCTION THEREOF, METHOD FOR PRODUCTION OF CARBON FIBER COMPOSITE MATERIAL USING CARBON NANOFIBER, AND CARBON FIBER COMPOSITE MATERIAL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/128374
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a method for producing a carbon fiber composite material (50), which comprises a first step and a second step. In the first step, a first carbon nanofiber produced by a vapor growth method is oxidized to produce a second carbon nanofiber (40) having an oxidized surface. In the second step, the second carbon nanofiber (40) is mixed with an elastomer (30), and applying a shearing force to the resulting mixture to cause the homogeneous dispersion of the second carbon nanofiber (40) in the elastomer (30), thereby producing the carbon fiber composite material (50). The second carbon nanofiber (40) produced in the first step has a surface oxygen concentration of 2.6 to 4.6 atm% as measured by X-ray photoelectron spectrometry (XPS).

Inventors:
NOGUCHI TORU (JP)
UEKI HIROYUKI (JP)
INUKAI SHIGEKI (JP)
TAKEUCHI KENJI (JP)
IINOU SATOSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/057198
Publication Date:
October 22, 2009
Filing Date:
April 08, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NISSIN KOGYO KK (JP)
MEFS KABUSHIKI KAISHA (JP)
NOGUCHI TORU (JP)
UEKI HIROYUKI (JP)
INUKAI SHIGEKI (JP)
TAKEUCHI KENJI (JP)
IINOU SATOSHI (JP)
International Classes:
D01F9/127; C01B31/02; C08J3/20; C08K3/02; D06M10/00
Domestic Patent References:
WO2007099975A12007-09-07
WO2007037260A12007-04-05
Foreign References:
JPS61225326A1986-10-07
JPS61225325A1986-10-07
JPH0812310A1996-01-16
EP1466940A12004-10-13
JPS61218661A1986-09-29
JP2007254271A2007-10-04
JPH02259120A1990-10-19
JP2005097525A2005-04-14
JP2006198393A2006-08-03
Other References:
See also references of EP 2270266A4
Attorney, Agent or Firm:
FUSE, Yukio et al. (JP)
Yukio Fuse (JP)
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Claims:
 気相成長法によって製造された第1のカーボンナノファイバーを酸化処理して得られた、X線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%である、カーボンナノファイバー。
 請求項1において、
 ラマン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22である、カーボンナノファイバー。
 請求項1または2において、
 窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gである、カーボンナノファイバー。
 請求項1~3のいずれかにおいて、
 平均直径が4nm~230nmである、カーボンナノファイバー。
 気相成長法によって製造された第1のカーボンナノファイバーを酸化処理して第2のカーボンナノファイバーを得る工程を有し、
 X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度の増加量は、0.5atm%~2.6atm%である、カーボンナノファイバーの製造方法。
 気相成長法によって製造された第1のカーボンナノファイバーを酸化処理して第2のカーボンナノファイバーを得る工程を有し、
 X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度の増加割合は、20%~120%である、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5または6において、
 前記工程は、前記第1のカーボンナノファイバーを酸素を含有する雰囲気中で600℃~800℃で熱処理する、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5~7のいずれかにおいて、
 前記工程は、前記第1のカーボンナノファイバーの質量を2%~20%減量して前記第2のカーボンナノファイバーを得る、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5~8のいずれかにおいて、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノファイバーは、X線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%である、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5~9のいずれかにおいて、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22である、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5~10のいずれかにおいて、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノファイバーは、窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gである、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項5~11のいずれかにおいて、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノファイバーは、平均直径が4nm~230nmである、カーボンナノファイバーの製造方法。
 気相成長法によって製造された第1のカーボンナノファイバーを酸化処理して表面が酸化された第2のカーボンナノファイバーを得る第1の工程と、
 前記第2のカーボンナノファイバーを、エラストマーに混合し、剪断力で該エラストマー中に均一に分散して炭素繊維複合材料を得る第2の工程と、
 を含み、
 前記第1の工程で得られた前記第2のカーボンナノファイバーのX線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%である、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13において、
 前記第1の工程は、X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度の増加量が、0.5atm%~2.6atm%になるように酸化処理する、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項13において、
 前記第1の工程は、X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボンナノファイバーの表面の酸素濃度の増加割合が、20%~120%になるように酸化処理する、カーボンナノファイバーの製造方法。
 請求項13~15のいずれかにおいて、
 前記第1の工程は、前記第1のカーボンナノファイバーを酸素を含有する雰囲気中で600℃~800℃で熱処理する、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13~16のいずれかにおいて、
 前記第1の工程は、前記第1のカーボンナノファイバーの質量を2%~20%減量して前記第2のカーボンナノファイバーを得る、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13~17のいずれかにおいて、
 前記第2のカーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22である、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13~18のいずれかにおいて、
 前記第2のカーボンナノファイバーは、窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gである、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13~19のいずれかにおいて、
 前記第1のカーボンナノファイバーは、平均直径が4nm~250nmである、炭素繊維複合材料の製造方法。
 請求項13~20のいずれかで製造された炭素繊維複合材料。
 エラストマーに、X線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%であるカーボンナノファイバーを含む、炭素繊維複合材料。
 請求項22において、
 前記カーボンナノファイバーは、ラマン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22である、炭素繊維複合材料。
 請求項22または23において、
 前記第2のカーボンナノファイバーは、窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gである、炭素繊維複合材料。
Description:
カーボンナノファイバー及びそ 製造方法、カーボンナノファイバーを用い 炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊維 合材料

 本発明は、カーボンナノファイバー及び の製造方法、カーボンナノファイバーを用 た炭素繊維複合材料の製造方法及び炭素繊 複合材料に関する。

 一般に、カーボンナノファイバーはマト ックスに分散させにくいフィラーであった 本発明者等が先に提案した炭素繊維複合材 の製造方法によれば、これまで困難とされ いたカーボンナノファイバーの分散性を改 し、エラストマーにカーボンナノファイバ を均一に分散させることができた(例えば、 特開2005-97525号公報参照)。このような炭素繊 複合材料の製造方法によれば、エラストマ とカーボンナノファイバーを混練し、剪断 によって凝集性の強いカーボンナノファイ ーの分散性を向上させている。より具体的 は、エラストマーとカーボンナノファイバ とを混合すると、粘性を有するエラストマ がカーボンナノファイバーの相互に侵入し かつ、エラストマーの特定の部分が化学的 互作用によってカーボンナノファイバーの 性の高い部分と結合し、この状態で、分子 が適度に長く、分子運動性の高い(弾性を有 する)エラストマーとカーボンナノファイバ との混合物に強い剪断力が作用すると、エ ストマーの変形に伴ってカーボンナノファ バーも移動し、さらに剪断後の弾性による ラストマーの復元力によって、凝集してい カーボンナノファイバーが分離されて、エ ストマー中に分散していた。このように、 トリックスへのカーボンナノファイバーの 散性を向上させることで、高価なカーボン ノファイバーを効率よく複合材料のフィラ として用いることができるようになった。

 カーボンナノファイバーは、炭化水素な のガスを金属系触媒の存在下で気相熱分解 せる気相成長法によって製造されるものが 業的に量産化されている。このような量産 されているカーボンナノファイバーの中に 、例えば、1000℃程度の加熱炉内で気相成長 法によって製造され、さらに高温で熱処理し て、黒鉛化が行なわれているものもあった( えば、特開2006-198393号公報参照)。しかしな ら、このように黒鉛化されたカーボンナノ ァイバーの表面は、欠陥が少なく好ましい 性を有しているが、マトリックス材料例え エラストマーとの濡れ性に劣る傾向があっ 。

 本発明の目的は、カーボンナノファイバ 及びその製造方法、カーボンナノファイバ を用いた炭素繊維複合材料の製造方法及び 素繊維複合材料を提供することにある。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーは
 気相成長法によって製造された第1のカーボ ンナノファイバーを酸化処理して得られた、 X線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃 度が2.6atm%~4.6atm%である。

 本発明にかかるカーボンナノファイバー よれば、表面が適度に酸化されていること よって、カーボンナノファイバーと他の材 例えば複合材料におけるマトリックス材料 の表面反応性が向上し、カーボンナノファ バーとマトリックス材料との濡れ性が改善 ることができる。このように濡れ性が改善 れたカーボンナノファイバーを用いること よって、例えば複合材料の剛性や柔軟性を 善することができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーに いて、
 ラマン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22であるこ とができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーに いて、
 窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gであることができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーに いて、
 平均直径が4nm~230nmであることができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法は、
 気相成長法によって製造された第1のカーボ ンナノファイバーを酸化処理して第2のカー ンナノファイバーを得る工程を有し、
 X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1の カーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に 対する前記第2のカーボンナノファイバーの 面の酸素濃度の増加量は、0.5atm%~2.6atm%であ 。

 本発明にかかるカーボンナノファイバー 製造方法によれば、カーボンナノファイバ の表面が適度に酸化されていることによっ 、カーボンナノファイバーと他の材料例え 複合材料におけるマトリックス材料との表 反応性が向上し、カーボンナノファイバー マトリックス材料との濡れ性を改善するこ ができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法は、
 気相成長法によって製造された第1のカーボ ンナノファイバーを酸化処理して第2のカー ンナノファイバーを得る工程を有し、
 X線光電子分光法(XPS)で測定した、前記第1の カーボンナノファイバーの表面の酸素濃度に 対する前記第2のカーボンナノファイバーの 面の酸素濃度の増加割合は、20%~120%である。

 本発明にかかるカーボンナノファイバー 製造方法によれば、カーボンナノファイバ の表面が適度に酸化されていることによっ 、カーボンナノファイバーと他の材料例え 複合材料におけるマトリックス材料との表 反応性が向上し、カーボンナノファイバー マトリックス材料との濡れ性を改善するこ ができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程は、前記第1のカーボンナノファイ バーを酸素を含有する雰囲気中で600℃~800℃ 熱処理することができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程は、前記第1のカーボンナノファイ バーの質量を2%~20%減量して前記第2のカーボ ナノファイバーを得ることができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノ ファイバーは、X線光電子分光法(XPS)で測定し た表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%であることが できる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノ ファイバーは、ラマン散乱分光法によって測 定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22であるこ とができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノ ファイバーは、窒素吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gであることができる。

 本発明にかかるカーボンナノファイバーの 造方法において、
 前記工程で得られた前記第2のカーボンナノ ファイバーは、平均直径が4nm~230nmであること ができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 は、
 気相成長法によって製造された第1のカーボ ンナノファイバーを酸化処理して表面が酸化 された第2のカーボンナノファイバーを得る 1の工程と、
 前記第2のカーボンナノファイバーを、エラ ストマーに混合し、剪断力で該エラストマー 中に均一に分散して炭素繊維複合材料を得る 第2の工程と、
 を含み、
 前記第1の工程で得られた前記第2のカーボ ナノファイバーのX線光電子分光法(XPS)で測 した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%である。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造 法によれば、第2のカーボンナノファイバー の表面が適度に酸化されていることによって 、マトリックスであるエラストマーとの表面 反応性が向上し、カーボンナノファイバーと エラストマーとの濡れ性が改善される。この ようにエラストマーとの濡れ性が改善された 第2のカーボンナノファイバーを用いること よって、剛性や柔軟性が改善された炭素繊 複合材料を製造することができる。特に、 のようにして製造された炭素繊維複合材料 、高温における剛性が改善される。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第1の工程は、X線光電子分光法(XPS)で測 定した、前記第1のカーボンナノファイバー 表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボン ノファイバーの表面の酸素濃度の増加量が 0.5atm%~2.6atm%になるように酸化処理すること できる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第1の工程は、X線光電子分光法(XPS)で測 定した、前記第1のカーボンナノファイバー 表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボン ノファイバーの表面の酸素濃度の増加割合 、20%~120%になるように酸化処理することが きる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第1の工程は、前記第1のカーボンナノ ァイバーを酸素を含有する雰囲気中で600℃~8 00℃で熱処理することができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第1の工程は、前記第1のカーボンナノ ァイバーの質量を2%~20%減量して前記第2のカ ボンナノファイバーを得ることができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第2のカーボンナノファイバーは、ラマ ン散乱分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22であるこ とができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第2のカーボンナノファイバーは、窒素 吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gであることができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料の製造方 において、
 前記第1のカーボンナノファイバーは、平均 直径が4nm~250nmであることができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料は、前 炭素繊維複合材料の製造方法で製造される

 本発明にかかる炭素繊維複合材料は、
 エラストマーに、X線光電子分光法(XPS)で測 した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%であるカ ボンナノファイバーを含む。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料によれ 、カーボンナノファイバーの表面が適度に 化されていることによって、マトリックス あるエラストマーとの表面反応性が向上し カーボンナノファイバーとエラストマーと 濡れ性が改善されている。このようにエラ トマーとの濡れ性が改善されたカーボンナ ファイバーを含む炭素繊維複合材料は、剛 や柔軟性が改善される。特に、本発明にか る炭素繊維複合材料は、高温における剛性 改善される。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料において
 前記カーボンナノファイバーは、ラマン散 分光法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が0.12~0.22であるこ とができる。

 本発明にかかる炭素繊維複合材料において
 前記第2のカーボンナノファイバーは、窒素 吸着比表面積が34m 2 /g~58m 2 /gであることができる。

図1Aは、オープンロール法による炭素 維複合材料の製造方法を模式的に示す図で る。 図1Bは、オープンロール法による炭素 維複合材料の製造方法を模式的に示す図で る。 図1Cは、オープンロール法による炭素 維複合材料の製造方法を模式的に示す図で る。 TG(熱質量分析)法による温度に対する第 2のカーボンナノファイバーの質量変化を示 たグラフである。 比較例2~5に用いた第1のカーボンナノフ ァイバー(CNT-N)の電子顕微鏡写真である。 実施例1~4に用いた第2のカーボンナノフ ァイバー(CNT-B)の電子顕微鏡写真である。 実施例5~8に用いた第2のカーボンナノフ ァイバー(CNT-C)の電子顕微鏡写真である。 実施例9~12に用いた第2のカーボンナノ ァイバー(CNT-D)の電子顕微鏡写真である。 実施例1~12及び比較例1~9のフィラーの充 填量-M100のグラフである。 実施例1~12及び比較例1~9のM100-破断伸び グラフである。

 以下、本発明の実施の形態について詳細 説明する。

 本発明の一実施形態にかかる第1のカーボ ンナノファイバーは、気相成長法によって製 造されたカーボンナノファイバーを酸化処理 して得られた、X線光電子分光法(XPS)で測定し た表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%である。

 本発明の一実施形態にかかるカーボンナ ファイバーの製造方法は、気相成長法によ て製造された第1のカーボンナノファイバー を酸化処理して第2のカーボンナノファイバ を得る工程を有し、X線光電子分光法(XPS)で 定した、前記第1のカーボンナノファイバー 表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボン ナノファイバーの表面の酸素濃度の増加量は 、0.5atm%~2.6atm%である。

 本発明の一実施形態にかかるカーボンナ ファイバーの製造方法は、気相成長法によ て製造された第1のカーボンナノファイバー を酸化処理して第2のカーボンナノファイバ を得る工程を有し、X線光電子分光法(XPS)で 定した、前記第1のカーボンナノファイバー 表面の酸素濃度に対する前記第2のカーボン ナノファイバーの表面の酸素濃度の増加割合 は、20%~120%である。

 本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複 材料の製造方法は、気相成長法によって製 された第1のカーボンナノファイバーを酸化 処理して表面が酸化された第2のカーボンナ ファイバーを得る第1の工程と、前記第2のカ ーボンナノファイバーを、エラストマーに混 合し、剪断力で該エラストマー中に均一に分 散して炭素繊維複合材料を得る第2の工程と を含み、前記第1の工程で得られた前記第2の カーボンナノファイバーのX線光電子分光法(X PS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm%で あることを特徴とする。

 本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複 材料は、前記炭素繊維複合材料の製造方法 製造されることを特徴とする。

 本発明の一実施形態にかかる炭素繊維複 材料は、エラストマーに、X線光電子分光法 (XPS)で測定した表面の酸素濃度が2.6atm%~4.6atm% あるカーボンナノファイバーを含むことを 徴とする。

 (I)第1のカーボンナノファイバー
まず、炭素繊維複合材料の製造方法に用いら れる第1のカーボンナノファイバーについて 明する。

 第1のカーボンナノファイバーの製造方法 は、気相成長法によって製造される。気相成 長法は、炭化水素等のガスを金属系触媒の存 在下で気相熱分解させて第1のカーボンナノ ァイバーを製造する方法である。より詳細 気相成長法を説明すると、例えば、ベンゼ 、トルエン等の有機化合物を原料とし、フ ロセン、ニッケルセン等の有機遷移金属化 物を金属系触媒として用い、これらをキャ アーガスとともに高温例えば400℃~1000℃の反 応温度に設定された反応炉に導入し、第1の ーボンナノファイバーを基板上に生成させ 方法、浮遊状態で第1のカーボンナノファイ ーを生成させる方法、あるいは第1のカーボ ンナノファイバーを反応炉壁に成長させる方 法等を用いることができる。また、あらかじ めアルミナ、炭素等の耐火性支持体に担持さ れた金属含有粒子を炭素含有化合物と高温で 接触させて、平均直径が70nm以下の第1のカー ンナノファイバーを得ることもできる。気 成長法で製造された第1のカーボンナノファ イバーの平均直径は、平均直径が4nm~250nmであ ることが好ましい。第1のカーボンナノファ バーは、表面が酸化処理されていないとい 意味で未処理のカーボンナノファイバーで り、表面を酸化処理して分散性を向上する とが好ましい。

 このように気相成長法で製造された第1の カーボンナノファイバーを酸化処理する前に 不活性ガス雰囲気中において2000℃~3200℃で熱 処理することができる。この熱処理温度は、 2500℃~3200℃がさらに好ましく、特に2800℃~3200 ℃が好ましい。熱処理温度が、2000℃以上で ると、気相成長の際に第1のカーボンナノフ イバーの表面に沈積したアモルファス状の 積物や残留している触媒金属などの不純物 除去されるので好ましい。また、第1のカー ボンナノファイバーの熱処理温度が、2500℃ 上であると、第1のカーボンナノファイバー 骨格が黒鉛化(結晶化)し、第1のカーボンナ ファイバーの欠陥が減少し強度が向上する め好ましい。なお、第1のカーボンナノファ イバーの熱処理温度が、3200℃以下であれば 黒鉛が昇華することによる黒鉛骨格の破壊 発生しにくいため好ましい。このように黒 化した第1のカーボンナノファイバーは、酸 処理されていないので未処理のカーボンナ ファイバーであって、黒鉛化によって優れ 強度、熱伝導性、電気伝導性などを有して る。

 第1のカーボンナノファイバーは、例えば 、いわゆるカーボンナノチューブなどが例示 できる。カーボンナノチューブは、炭素六角 網面のグラファイトの1枚面を1層もしくは多 に巻いた構造を有する。また、部分的にカ ボンナノチューブの構造を有する炭素材料 使用することができる。なお、カーボンナ チューブという名称の他にグラファイトフ ブリルナノチューブ、気相成長炭素繊維と った名称で称されることもある。

 (II)第2のカーボンナノファイバー
炭素繊維複合材料の製造方法の第1の工程で られた第2のカーボンナノファイバーについ 説明する。

 第2のカーボンナノファイバーは、気相成長 法によって製造された第1のカーボンナノフ イバーを酸化処理して表面が酸化されるこ で得られる。酸化処理については、炭素繊 複合材料の製造方法の欄で後述する。第2の ーボンナノファイバーは、その表面のX線光 電子分光法(XPS)で測定した酸素濃度が2.6atm%~4. 6atm%であり、好ましくは3.0atm%~4.0atm%であり、 らに好ましくは3.1atm%~3.7atm%である。このよ に、第2のカーボンナノファイバーの表面が 適度に酸化していることで、第2のカーボン ノファイバーとエラストマーとの表面反応 が向上し、エラストマー中における第2のカ ボンナノファイバーをより均一に分散する とができる。第2のカーボンナノファイバー は、第1のカーボンナノファイバーの質量を2% ~20%減量した質量を有することができる。第2 カーボンナノファイバーは、ラマン散乱分 法によって測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)好ましくは0.12~0.22 である。第2のカーボンナノファイバーは、 素吸着比表面積が好ましくは34m 2 /g~58m 2 /gである。第2のカーボンナノファイバーは、 平均直径が4nm~230nmであることが好ましく、20n m~200nmが好適で、特には60nm~150nmが好適である 第2のカーボンナノファイバーは、直径が4nm 以上ではマトリックス樹脂に対する分散性が 向上し、逆に230nm以下ではマトリックス樹脂 表面の平坦性が損なわれにくく好ましい。 2のカーボンナノファイバーの平均直径が60n m以上では分散性及び表面の平坦性に優れて り、150nm以下では少量の添加量でもカーボン ナノファイバーの本数が増加することになる ため例えば炭素繊維複合材料の性能を向上さ せることができ、したがって高価な第1のカ ボンナノファイバーを節約することができ 。また、第2のカーボンナノファイバーのア ペクト比は50~200が好ましい。

 第2のカーボンナノファイバーによれば、 表面が適度に酸化されていることによって、 カーボンナノファイバーと他の材料例えば複 合材料におけるマトリックス材料との表面反 応性が向上し、カーボンナノファイバーとマ トリックス材料との濡れ性が改善することが できる。このように濡れ性が改善されたカー ボンナノファイバーを用いることによって、 例えば複合材料の剛性や柔軟性を改善するこ とができる。特に、黒鉛化された第1のカー ンナノファイバーの場合、比較的反応性の い表面を適度に酸化させることによって、 2のカーボンナノファイバーとマトリックス 料との濡れ性を改善することができるため 分散性を向上させることができ、例えば従 より少量の第2のカーボンナノファイバーの 添加でも同等の物性を得ることができる。

 (III)エラストマー
 次に、炭素繊維複合材料の製造方法に用い れるエラストマーについて説明する。

 エラストマーは、分子量が好ましくは5000 ~500万、さらに好ましくは2万~300万である。エ ラストマーの分子量がこの範囲であると、エ ラストマー分子が互いに絡み合い、相互につ ながっているので、エラストマーは、第2の ーボンナノファイバーを分散させるために 好な弾性を有している。エラストマーは、 性を有しているので凝集した第2のカーボン ノファイバーの相互に侵入しやすく、さら 弾性を有することによって第2のカーボンナ ノファイバー同士を分離することができるた め好ましい。

 エラストマーは、パルス法NMRを用いてハー エコー法によって、30℃、観測核が 1 Hで測定した、未架橋体におけるネットワー 成分のスピン-スピン緩和時間(T2n/30℃)が好 しくは100~3000μ秒、より好ましくは200~1000μ秒 である。上記範囲のスピン-スピン緩和時間(T 2n/30℃)を有することにより、エラストマーは 、柔軟で充分に高い分子運動性を有すること ができ、すなわち第2のカーボンナノファイ ーを分散させるために適度な弾性を有する とになる。また、エラストマーは粘性を有 ているので、エラストマーと第2のカーボン ノファイバーとを混合したときに、エラス マーは高い分子運動により第2のカーボンナ ノファイバーの相互の隙間に容易に侵入する ことができる。

 また、エラストマーは、パルス法NMRを用い ハーンエコー法によって30℃、観測核が 1 Hで測定した、架橋体における、ネットワー 成分のスピン-スピン緩和時間(T2n)が100~2000μ であることが好ましい。その理由は、上述 た未架橋体と同様である。すなわち、上記 条件を有する未架橋体を架橋化すると、得 れる架橋体のT2nはおおよそ上記範囲に含ま る。

 パルス法NMRを用いたハーンエコー法によ て得られるスピン-スピン緩和時間は、物質 の分子運動性を表す尺度である。具体的には 、パルス法NMRを用いたハーンエコー法により エラストマーのスピン-スピン緩和時間を測 すると、緩和時間の短い第1のスピン-スピン 緩和時間(T2n)を有する第1の成分と、緩和時間 のより長い第2のスピン-スピン緩和時間(T2nn) 有する第2の成分とが検出される。第1の成 は高分子のネットワーク成分(骨格分子)に相 当し、第2の成分は高分子の非ネットワーク 分(末端鎖などの枝葉の成分)に相当する。そ して、第1のスピン-スピン緩和時間が短いほ 分子運動性が低く、エラストマーは固いと える。また、第1のスピン-スピン緩和時間 長いほど分子運動性が高く、エラストマー 柔らかいといえる。

 パルス法NMRにおける測定法としては、ハ ンエコー法でなくてもソリッドエコー法、C PMG法(カー・パーセル・メイブーム・ギル法) るいは90゜パルス法でも適用できる。ただ 、本発明にかかるエラストマーは中程度の ピン-スピン緩和時間(T2)を有するので、ハー ンエコー法が最も適している。一般的に、ソ リッドエコー法および90゜パルス法は、短いT 2の測定に適し、ハーンエコー法は、中程度 T2の測定に適し、CPMG法は、長いT2の測定に適 している。

 エラストマーは、主鎖、側鎖および末端 の少なくともひとつに、第2のカーボンナノ ファイバーの末端のラジカルに対して親和性 を有する不飽和結合または基を有するか、も しくは、このようなラジカルまたは基を生成 しやすい性質を有する。かかる不飽和結合ま たは基としては、例えば、二重結合、三重結 合、カルボニル基、カルボキシル基、水酸基 、アミノ基、ニトリル基、ケトン基、アミド 基、エポキシ基、エステル基、ビニル基、ハ ロゲン基、ウレタン基、ビューレット基、ア ロファネート基および尿素基などの官能基か ら選択される少なくともひとつであることが できる。

 本実施の形態では、エラストマーの主鎖 側鎖および末端鎖の少なくともひとつに、 2のカーボンナノファイバーのラジカルと親 和性(反応性または極性)が高い不飽和結合や を有することにより、エラストマーと第2の カーボンナノファイバーとを結合することが できる。このことにより、第2のカーボンナ ファイバーの凝集力にうち勝ってその分散 容易にすることができる。そして、エラス マーと、第2のカーボンナノファイバーと、 混練する際に、エラストマーの分子鎖が切 されて生成したフリーラジカルは、第2のカ ーボンナノファイバーの欠陥を攻撃し、第2 カーボンナノファイバーの表面にラジカル 生成すると推測できる。

 エラストマーとしては、天然ゴム(NR)、エ ポキシ化天然ゴム(ENR)、スチレン-ブタジエン ゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレン ム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPR,EPDM)、ブ チルゴム(IIR)、クロロブチルゴム(CIIR)、アク ルゴム(ACM)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴ (FKM)、ブタジエンゴム(BR)、エポキシ化ブタ エンゴム(EBR)、エピクロルヒドリンゴム(CO,CE O)、ウレタンゴム(U)、ポリスルフィドゴム(T) どのエラストマー類;オレフィン系(TPO)、ポ 塩化ビニル系(TPVC)、ポリエステル系(TPEE)、 リウレタン系(TPU)、ポリアミド系(TPEA)、ス レン系(SBS)、などの熱可塑性エラストマー; よびこれらの混合物を用いることができる 特に、エラストマーの混練の際にフリーラ カルを生成しやすい極性の高いエラストマ 、例えば、天然ゴム(NR)、ニトリルゴム(NBR) どが好ましい。また、極性の低いエラスト ー、例えばエチレンプロピレンゴム(EPDM)で っても、混練の温度を比較的高温(例えばEPDM の場合、50℃~150℃)とすることで、フリーラ カルを生成するので本発明に用いることが きる。

 本実施の形態のエラストマーは、ゴム系 ラストマーあるいは熱可塑性エラストマー いずれであってもよい。また、ゴム系エラ トマーの場合、エラストマーは架橋体ある は未架橋体のいずれであってもよいが、未 橋体を用いることが好ましい。

 (IV)炭素繊維複合材料の製造方法
 炭素繊維複合材料の製造方法は、第1の工程 と、第2の工程と、を有する。

 第1の工程
まず、炭素繊維複合材料の製造方法における 第1の工程について説明する。第1の工程は、 相成長法によって製造された第1のカーボン ナノファイバーを酸化処理して表面が酸化さ れた第2のカーボンナノファイバーを得る。 1の工程は、X線光電子分光法(XPS)で測定した 第1のカーボンナノファイバーの表面の酸素 濃度に対する第2のカーボンナノファイバー 表面の酸素濃度の増加量が、0.5atm%~2.6atm%に るように酸化処理を行うことができる。こ ような第1のカーボンナノファイバーの表面 素濃度に対する第2のカーボンナノファイバ ーの表面酸素濃度の増加量は、0.9atm%~1.9atm%で あることがより好ましく、さらに1.0atm%~1.6atm% であることが好ましい。また、第1の工程は X線光電子分光法(XPS)で測定した、第1のカー ンナノファイバーの表面の酸素濃度に対す 第2のカーボンナノファイバーの表面の酸素 濃度の増加割合が、20%~120%になるように酸化 理を行うことができる。このような第1のカ ーボンナノファイバーの表面酸素濃度に対す る第2のカーボンナノファイバーの表面酸素 度の増加割合は、43%~90%であることがより好 しく、さらに48%~76%であることが好ましい。 第1の工程で得られた第2のカーボンナノファ バーのX線光電子分光法(XPS)で測定した表面 酸素濃度は、2.6atm%~4.6atm%であり、好ましく 3.0atm%~4.0atm%であり、さらに好ましくは3.1atm% ~3.7atm%である。第2のカーボンナノファイバー は、その表面の酸素濃度が第1のカーボンナ ファイバーの表面の酸素濃度より0.2atm%以上 加する程度に酸化することが望ましい。こ ように、第2のカーボンナノファイバーの表 面が適度に酸化していることで、第2のカー ンナノファイバーとエラストマーとの表面 応性が向上し、エラストマー中におけるカ ボンナノファイバーの分散不良を改善する とができる。第1の工程は、第1のカーボンナ ノファイバーを酸素を含有する雰囲気中で600 ℃~800℃で熱処理することができる。例えば 大気雰囲気の炉内に第1のカーボンナノファ バーを配置し、600℃~800℃の温度範囲の所定 温度に設定し、熱処理することによって、第 2のカーボンナノファイバーの表面が所望の 素濃度に酸化できる。この第1の工程で熱処 する時間は、所定温度の熱処理炉内で第1の カーボンナノファイバーを保持する時間であ って、例えば10分~180分であることができる。 酸素を含有する雰囲気は、大気中でもよいし 、酸素雰囲気でもよいし、適宜酸素濃度を設 定した雰囲気をもちいてもよい。第2のカー ンナノファイバーの表面が第1の工程で所望 酸素濃度に酸化されるのに十分な酸素濃度 雰囲気中に存在すればよい。熱処理の温度 、600℃~800℃の範囲で所望の酸化処理を得る ために適宜設定することができる。通常、800 ℃付近で第1のカーボンナノファイバーは燃 して繊維に大きなダメージを負うため、温 設定と熱処理の時間は実験を繰り返しなが 慎重に設定することが望ましい。なお、熱 理の温度や熱処理の時間は、第1の工程に用 る炉内の酸素濃度や炉の内容積、処理する 1のカーボンナノファイバーの量などによっ て適宜調整することができる。このように第 1の工程で酸化処理された第2のカーボンナノ ァイバーの質量は、第1のカーボンナノファ イバーの質量より例えば2%~20%減量することが 好ましく、この減量の範囲であれば第2のカ ボンナノファイバーが適度に酸化している 推測できる。第2のカーボンナノファイバー 質量が第1のカーボンナノファイバーの質量 より2%未満しか減量していないと、第2のカー ボンナノファイバーの表面の酸素濃度が低い ため濡れ性の向上が得にくい傾向がある。ま た、第1のカーボンナノファイバーの質量よ 20%を超えて減量した第2のカーボンナノファ バーは、減量が20%以下の第2のカーボンナノ ファイバーに比べて濡れ性がほとんど変わら ないにもかかわらず、酸化処理によるカーボ ンナノファイバーの減量による損失が大きく 、しかも熱処理のエネルギー消費量に対して 経済的にも不利になる傾向がある。第1のカ ボンナノファイバーの表面が酸化すること よって、第1のカーボンナノファイバーの表 の炭素の一部が炭酸ガスとして気化して減 することになるからである。第2のカーボン ナノファイバーの質量が第1のカーボンナノ ァイバーの質量より20%を超えなければ繊維 がほとんど短くならないと推測できるため ましい。なお、第2のカーボンナノファイバ の表面の酸素濃度は、XPS(X線光電子分光法) よって分析することができる。XPSによる酸 濃度の分析は、第2のカーボンナノファイバ ーの表面に付着した不純物を除去するために 、測定前の第2のカーボンナノファイバーに し例えば0.5分~1.0分間のアルゴンガスエッチ グを行い、第2のカーボンナノファイバーの 清浄な表面を出してから分析を行うことが好 ましい。このアルゴンガスエッチングのアル ゴンガス濃度は5×10 -2 Pa~20×10 -2 Paが好ましい。また、XPSによる酸素濃度の分 は、XPS装置の金属台の上に導電性接着剤で る例えばカーボンテープを貼り、そのカー ンテープ上に第2のカーボンナノファイバー をふりかけてカーボンテープに付着させ、カ ーボンテープに付着しなかった余分な第2の ーボンナノファイバーを振り落として取り いた状態で行うことが好ましい。このよう 、XPSによる酸素濃度の分析においては、第2 カーボンナノファイバーをカーボンテープ に押しつけてブロック状に固めることなく なるべく粉体に近い状態で分析することが ましい。

 第1の工程によって得られた第2のカーボン ノファイバーは、ラマン散乱分光法によっ 測定される1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)が好ましくは0.12~0 .22である。第2のカーボンナノファイバーの マンピーク比(D/G)は、その表面の結晶に欠陥 が多くなるため、第1のカーボンナノファイ ーのラマンピーク比(D/G)よりも大きくなる。 第2のカーボンナノファイバーは、そのラマ ピーク比(D/G)が第1のカーボンナノファイバ のラマンピーク比(D/G)より0.02以上増加する 度に酸化することが望ましい。また、第2の ーボンナノファイバーは、窒素吸着比表面 が好ましくは34m 2 /g~58m 2 /gである。第2のカーボンナノファイバーの窒 素吸着比表面積は、その表面が荒れるため、 第1のカーボンナノファイバーの窒素吸着比 面積よりも大きくなる。第2のカーボンナノ ァイバーは、その窒素吸着比表面積が第1の カーボンナノファイバーの窒素吸着比表面積 より9m 2 /g以上増加する程度に酸化することが望まし 。第1の工程に用いられる第1のカーボンナ ファイバーの平均直径は4nm~250nmであること 好ましく、第1の工程で得られた第2のカーボ ンナノファイバーの平均直径は4nm~230nmである ことができる。このような第2のカーボンナ ファイバーを用いることにより、エラスト ーとの表面反応性が向上し、エラストマー 対する濡れ性を改善することができる。

 第2のカーボンナノファイバーのエラスト マーへの配合量は、用途に応じて設定するこ とができるが、第2のカーボンナノファイバ はエラストマーとの濡れ性が向上している め、例えば同じ剛性の炭素繊維複合材料を 造する場合、従来よりも配合量を減らすこ ができる。炭素繊維複合材料は、架橋体エ ストマーあるいは無架橋体エラストマーを のままエラストマー系材料として用いるこ ができ、あるいは金属や樹脂の複合材料の 料として用いることができる。かかる金属 るいは樹脂の複合材料の原料として用いる 素繊維複合材料は、金属あるいは樹脂にカ ボンナノファイバーを混合する際に、カー ンナノファイバーの供給源としてのいわゆ マスターバッチとして用いることができる

 第2の工程
 第2の工程は、第1の工程で得られた第2のカ ボンナノファイバーを、エラストマーに混 し、剪断力で該エラストマー中に均一に分 して炭素繊維複合材料を得る。第2の工程に ついて図1A~1Cを用いて詳細に説明する。

 図1A~1Cは、オープンロール法による炭素繊 複合材料の製造方法を模式的に示す図であ 。原料となるエラストマーは、パルス法NMR 用いてハーンエコー法によって150℃、観測 が 1 Hで測定した、未架橋体における、ネットワ ク成分の第1のスピン-スピン緩和時間(T2n)が1 00~3000μ秒であることが好ましい。図1A~1Cに示 ように、2本ロールのオープンロール2にお る第1のロール10と第2のロール20とは、所定 間隔d、例えば0.5mm~1.5mmの間隔で配置され、 1A~1Cにおいて矢印で示す方向に回転速度V1,V2 正転あるいは逆転で回転する。まず、図1A 示すように、第1のロール10に巻き付けられ エラストマー30の素練りを行ない、エラスト マー分子鎖を適度に切断してフリーラジカル を生成する。第2のカーボンナノファイバー 、酸化処理によって適度に表面が活性化さ ているので、ラジカルや官能基を生成しや くなり、素練りによって生成されたエラス マーのフリーラジカルが第2のカーボンナノ ァイバーと結びつきやすい状態となる。

 次に、図1Bにしめすように、第1のロール1 0に巻き付けられたエラストマー30のバンク34 、第2のカーボンナノファイバー40を投入し 混練する。エラストマー30と第2のカーボン ノファイバー40とを混合する工程は、オー ンロール法に限定されず、例えば密閉式混 法あるいは多軸押出し混練法を用いること できる。

 さらに、図1Cにしめすように、第1のロー 10と第2のロール20とのロール間隔dを、好ま くは0.5mm以下、より好ましくは0~0.5mmの間隔 設定し、混合物36をオープンロール2に投入 て薄通しを1回~複数回行なう。薄通しの回 は、例えば1回~10回程度行なうことが好まし 。第1のロール10の表面速度をV1、第2のロー 20の表面速度をV2とすると、薄通しにおける 両者の表面速度比(V1/V2)は、1.05~3.00であるこ が好ましく、さらに1.05~1.2であることが好ま しい。このような表面速度比を用いることに より、所望の剪断力を得ることができる。薄 通しして得られた炭素繊維複合材料50は、ロ ルで圧延されてシート状に分出しされる。 の薄通しの工程では、できるだけ高い剪断 を得るために、ロール温度を好ましくは0~50 ℃、より好ましくは5~30℃の比較的低い温度 設定して行われ、エラストマー30の実測温度 も0~50℃に調整されることが好ましい。この うにして得られた剪断力により、エラスト ー30に高い剪断力が作用し、凝集していた第 2のカーボンナノファイバー40がエラストマー 分子に1本づつ引き抜かれるように相互に分 し、エラストマー30中に分散される。特に、 エラストマー30は、弾性と、粘性と、第2のカ ーボンナノファイバー40との化学的相互作用 、を有するため、第2のカーボンナノファイ バー40を容易に分散することができる。そし 、第2のカーボンナノファイバー40の分散性 よび分散安定性(第2のカーボンナノファイ ーが再凝集しにくいこと)に優れた炭素繊維 合材料50を得ることができる。

 より具体的には、オープンロールでエラ トマーと第2のカーボンナノファイバーとを 混合すると、粘性を有するエラストマーが第 2のカーボンナノファイバーの相互に侵入し かつ、エラストマーの特定の部分が化学的 互作用によって第2のカーボンナノファイバ の活性の高い部分と結合する。第2のカーボ ンナノファイバーの表面は酸化処理によって 適度に活性が高いため、エラストマー分子と 結合し易い。次に、エラストマーに強い剪断 力が作用すると、エラストマー分子の移動に 伴って第2のカーボンナノファイバーも移動 、さらに剪断後の弾性によるエラストマー 復元力によって、凝集していた第2のカーボ ナノファイバーが分離されて、エラストマ 中に分散されることになる。本実施の形態 よれば、炭素繊維複合材料が狭いロール間 ら押し出された際に、エラストマーの弾性 よる復元力で炭素繊維複合材料はロール間 より厚く変形する。その変形は、強い剪断 の作用した炭素繊維複合材料をさらに複雑 流動させ、第2のカーボンナノファイバーを エラストマー中に分散させると推測できる。 そして、一旦分散した第2のカーボンナノフ イバーは、エラストマーとの化学的相互作 によって再凝集することが防止され、良好 分散安定性を有することができる。

 エラストマーに第2のカーボンナノファイ バーを剪断力によって分散させる工程は、前 記オープンロール法に限定されず、密閉式混 練法あるいは多軸押出し混練法を用いること もできる。要するに、この工程では、凝集し た第2のカーボンナノファイバーを分離でき 剪断力をエラストマーに与えることができ ばよい。特に、オープンロール法は、ロー 温度の管理だけでなく、混合物の実際の温 を測定し管理することができるため、好ま い。

 炭素繊維複合材料の製造方法は、薄通し の分出しされた炭素繊維複合材料に架橋剤 混合し、架橋して架橋体の炭素繊維複合材 としてもよい。また、炭素繊維複合材料は 架橋させずに成形してもよい。炭素繊維複 材料は、オープンロール法によって得られ シート状のままでもよいし、第2の工程で得 られた炭素繊維複合材料を一般に採用される ゴムの成形加工例えば、射出成形法、トラン スファー成形法、プレス成形法、押出成形法 、カレンダー加工法などによって所望の形状 例えばシート状に成形してもよい。

 本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料 製造方法において、通常、エラストマーの 工で用いられる配合剤を加えることができ 。配合剤としては公知のものを用いること できる。配合剤としては、例えば、架橋剤 加硫剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、軟化剤 可塑剤、硬化剤、補強剤、充填剤、老化防 剤、着色剤などを挙げることができる。こ らの配合剤は、例えばオープンロールにお る第2のカーボンナノファイバーの投入前に エラストマーに投入することができる。

 なお、本実施の形態にかかる炭素繊維複合 料の製造方法においては、ゴム弾性を有し 状態のエラストマーに第2のカーボンナノフ ァイバーを直接混合したが、これに限らず、 以下の方法を採用することもできる。まず、 第2のカーボンナノファイバーを混合する前 、エラストマーを素練りしてエラストマー 分子量を低下させる。エラストマーは、素 りによって分子量が低下すると、粘度が低 するため、凝集した第2のカーボンナノファ バーの空隙に浸透しやすくなる。原料とな エラストマーは、パルス法NMRを用いてハー エコー法によって30℃、観測核が 1 Hで測定した、未架橋体における、ネットワ ク成分の第1のスピン-スピン緩和時間(T2n)が1 00~3000μ秒のゴム状弾性体である。この原料の エラストマーを素練りしてエラストマーの分 子量を低下させ、第1のスピン-スピン緩和時 (T2n)が3000μ秒を越える液体状のエラストマ を得る。なお、素練り後の液体状のエラス マーの第1のスピン-スピン緩和時間(T2n)は、 練りする前の原料のエラストマーの第1のス ピン-スピン緩和時間(T2n)の5~30倍であること 好ましい。この素練りは、エラストマーが 体状態のままで行なう一般的な素練りとは なり、強剪断力を例えばオープンロール法 与えることによってエラストマーの分子を 断し分子量を著しく低下させ、混練に適さ い程の流動を示すまで、例えば液体状態に るまで行なわれる。この素練りは、例えば ープンロール法を用いた場合、ロール温度20 ℃(素練り時間最短60分)~150℃(素練り時間最短 10分)で行なわれロール間隔dは例えば0.5mm~1.0mm で、素練りして液体状態のエラストマーに第 2のカーボンナノファイバーを投入する。し しながら、エラストマーは液体状で弾性が しく低下しているため、エラストマーのフ ーラジカルと第2のカーボンナノファイバー 結びついた状態で混練しても凝集した第2の カーボンナノファイバーはあまり分散されな い。

 そこで、液体状のエラストマーと第2のカー ボンナノファイバーとを混合して得られた混 合物中におけるエラストマーの分子量を増大 させ、エラストマーの弾性を回復させてゴム 状弾性体の混合物を得た後、先に説明したオ ープンロール法の薄通しなどを実施して第2 カーボンナノファイバーをエラストマー中 均一に分散させる。エラストマーの分子量 増大した混合物は、パルス法NMRを用いてハ ンエコー法によって30℃、観測核が 1 Hで測定した、ネットワーク成分の第1のスピ -スピン緩和時間(T2n)が3000μ秒以下のゴム状 性体である。また、エラストマーの分子量 増大したゴム状弾性体の混合物の第1のスピ ン-スピン緩和時間(T2n)は、素練りする前の原 料エラストマーの第1のスピン-スピン緩和時 (T2n)の0.5~10倍であることが好ましい。ゴム 弾性体の混合物の弾性は、エラストマーの 子形態(分子量で観測できる)や分子運動性(T2 nで観測できる)によって表すことができる。 ラストマーの分子量を増大させる工程は、 合物を加熱処理例えば40℃~100℃に設定され 加熱炉内に混合物を配置し、10時間~100時間 なわれることが好ましい。このような加熱 理によって、混合物中に存在するエラスト ーのフリーラジカル同士の結合などによっ 分子鎖が延長され、分子量が増大する。ま 、エラストマーの分子量の増大を短時間で 施する場合には、架橋剤を少量、例えば架 剤の適量の1/2以下を混合させておき、混合 を加熱処理(例えばアニーリング処理)し架 反応によって短時間で分子量を増大させる ともできる。架橋反応によってエラストマ の分子量を増大させる場合には、この後の 程で混練が困難にならない程度に架橋剤の 合量、加熱時間及び加熱温度を設定するこ が好ましい。

 ここで説明した炭素繊維複合材料の製造 法によれば、第2のカーボンナノファイバー を投入する前にエラストマーの粘性を低下さ せることで、エラストマー中に第2のカーボ ナノファイバーをより均一に分散させるこ ができる。より詳細には、先に説明した製 方法のように分子量が大きいエラストマー 第2のカーボンナノファイバーを混合するよ も、分子量が低下した液体状のエラストマ を用いた方が凝集した第2のカーボンナノフ ァイバーの空隙に侵入しやすく、薄通しの工 程において第2のカーボンナノファイバーを り均一に分散させることができる。また、 ラストマーが分子切断されることで大量に 成されたエラストマーのフリーラジカルが 2のカーボンナノファイバーの適度に酸化さ た表面とより強固に結合することができる め、さらに第2のカーボンナノファイバーを 均一に分散させることができる。したがって 、ここで説明した製造方法によれば、先の製 造方法よりも少量の第2のカーボンナノファ バーでも同等の性能を得ることができ、高 な第2のカーボンナノファイバーを節約する とで経済性も向上する。

 (V)炭素繊維複合材料
 次に、炭素繊維複合材料について説明する

 炭素繊維複合材料は、エラストマーに、X 線光電子分光法(XPS)で測定した表面の酸素濃 が2.6atm%~4.6atm%であるカーボンナノファイバ を含む。第2のカーボンナノファイバーはエ ラストマー中に均一に分散している。第2の ーボンナノファイバーは、酸化処理されて るため、エラストマーとの濡れ性が改善さ 、炭素繊維複合材料の剛性や柔軟性が改善 れる。特に、炭素繊維複合材料は、高温に ける剛性が改善される。

 炭素繊維複合材料は、パルス法NMRを用いて ーンエコー法によって150℃、観測核が 1 Hで測定した、無架橋体における、第1のスピ -スピン緩和時間(T2n)は100~3000μ秒であり、第 2のスピン-スピン緩和時間を有する成分の成 分率(fnn)は0~0.2であることが好ましい。

 炭素繊維複合材料の150℃で測定したT2n及 fnnは、マトリックスであるエラストマーに 2のカーボンナノファイバーが均一に分散さ れていることを表すことができる。つまり、 エラストマーに第2のカーボンナノファイバ が均一に分散されているということは、エ ストマーが第2のカーボンナノファイバーに って拘束されている状態であるともいえる この状態では、第2のカーボンナノファイバ ーによって拘束を受けたエラストマー分子の 運動性は、第2のカーボンナノファイバーの 束を受けない場合に比べて小さくなる。そ ため、炭素繊維複合材料の第1のスピン-スピ ン緩和時間(T2n)、第2のスピン-スピン緩和時 (T2nn)及びスピン-格子緩和時間(T1)は、第2の ーボンナノファイバーを含まないエラスト ー単体の場合より短くなり、特に第2のカー ンナノファイバーが均一に分散することで り短くなる。特に、酸化処理されていない 1のカーボンナノファイバーをそのままエラ ストマーに混合した炭素繊維複合材料よりも 本実施の形態にかかる炭素繊維複合材料の方 が第1のスピン-スピン緩和時間(T2n/150℃)は短 なる傾向にある。

 また、エラストマー分子が第2のカーボン ナノファイバーによって拘束された状態では 、以下の理由によって、非ネットワーク成分 (非網目鎖成分)は減少すると考えられる。す わち、第2のカーボンナノファイバーによっ てエラストマーの分子運動性が全体的に低下 すると、非ネットワーク成分は容易に運動で きなくなる部分が増えて、ネットワーク成分 と同等の挙動をしやすくなること、また、非 ネットワーク成分(末端鎖)は動きやすいため 第2のカーボンナノファイバーの活性点に吸 着されやすくなること、などの理由によって 、非ネットワーク成分は減少すると考えられ る。そのため、第2のスピン-スピン緩和時間( T2nn)を有する成分の成分分率(fnn)は、fn+fnn=1で あるので、第2のカーボンナノファイバーを まないエラストマー単体の場合より小さく る。したがって、炭素繊維複合材料は、パ ス法NMRを用いてハーンエコー法によって得 れる測定値が上記の範囲にあることによっ 第2のカーボンナノファイバーが均一に分散 れていることがわかる。

 以下、本発明の実施例について述べるが 本発明はこれらに限定されるものではない

 (1)第2のカーボンナノファイバーの作成
 (1-1)縦型加熱炉(内径17.0cm、長さ150cm)の頂部 、スプレーノズルを取り付ける。加熱炉の 内壁温度(反応温度)を1000℃に昇温・維持し スプレーノズルから4重量%のフェロセンを 有するベンゼンの液体原料20g/分を100L/分の 素ガスの流量で炉壁に直接噴霧(スプレー)散 布するように供給する。この時のスプレーの 形状は円錐側面状(ラッパ状ないし傘状)であ 、ノズルの頂角が60°である。このような条 件の下で、フェロセンは熱分解して鉄微粒子 を作り、これがシード(種)となってベンゼン 熱分解による炭素から、カーボンナノファ バーを生成成長させた。本方法で成長した ーボンナノファイバーを5分間隔で掻き落と しながら1時間にわたって連続的に製造した

 このように気相成長法によって製造された ーボンナノファイバーを、不活性ガス雰囲 中において2800℃で熱処理して黒鉛化した。 黒鉛化した第1の(未処理)カーボンナノファイ バー(表1では「CNT-N」と示す)は、平均直径87nm 、平均長さ10μm、ラマンピーク比(D/G)0.08、窒 吸着比表面積25m 2 /g、表面の酸素濃度2.1atm%であった。

 (1-2)実施例1~12及び比較例10,11に用いる第2 カーボンナノファイバーは、黒鉛化した第1 のカーボンナノファイバー100gを大気雰囲気 加熱炉(卓上電気炉AMF-20Nアサヒ理化製作所製 )に入れ、表1に示す温度(575℃~720℃)と時間(1 間もしくは2時間)で加熱炉内で保持して熱処 理することで酸化処理を行って得た。

 加熱炉の温度設定は、TG(熱質量分析)法を 用いて第1のカーボンナノファイバーの質量 少を測定した結果をみて設定した。TG(熱質 分析)法では、第1のカーボンナノファイバー を大気中で昇温したときの質量減少を測定し 、図2に示すような温度に対する第2のカーボ ナノファイバーの質量変化を示した。この き、昇温速度は10℃/min、雰囲気は大気(圧縮 空気200ml/min)であった。この測定結果から、 1のカーボンナノファイバーの質量が減少(酸 化)し始める600℃から第1のカーボンナノファ バーの質量減少が100%(燃え尽きる)になる800 の間で加熱炉を表1に示すような5つの設定 度に設定し、5種類の第2のカーボンナノファ イバーを得た。第2のカーボンナノファイバ は、表1に示すように、加熱炉の設定温度に じて「CNT-A(575℃)」、「CNT-B(615℃)」、「CNT-C (650℃)」、「CNT-D(690℃)」、「CNT-E(720℃)」と た。なお、加熱炉内の実際の温度は、設定 度に対し±30℃の範囲であった。

 また、5種類の第2のカーボンナノファイバ について、ラマンピーク比(D/G)、窒素吸着比 表面積、表面の酸素濃度を測定し、その結果 を表1に示した。また、第1及び第2のカーボン ナノファイバーの表面の酸素濃度の測定結果 に基づいて、酸化処理を行う前の第1のカー ンナノファイバー(「CNT-N」)の表面酸素濃度( a)に対する各第2のカーボンナノファイバーの 表面酸素濃度(b)の増加量(c=b-a)及び表面酸素 度の増加割合(d=100・c/a)を計算し、表1に示し た。ラマンピーク比は、KAISER OPTICAL SYSTEM社 HOLOLAB-5000型(532nmND:YAG)を用いてラマン散乱分 光法によって第2のカーボンナノファイバー おける1600cm -1 付近のピーク強度Gに対する1300cm -1 付近のピーク強度Dの比(D/G)を測定した。窒素 吸着比表面積は、ユアサアイオニクス社製NOV A3000型(窒素ガス)を用いて第2のカーボンナノ ァイバーの窒素吸着比表面積(m 2 /g)を測定した。第2のカーボンナノファイバ の表面の酸素濃度は、XPS(X線光電子分光分析 法(X-ray Photoelectron Spectroscopy))を用いて測定 た。具体的には、まず、第2のカーボンナノ ァイバーを金属台上のカーボンテープ上に りかけてカーボンテープに付着させ、カー ンテープに付着しなかった余分な第2のカー ボンナノファイバーを振り落として取り除い て、金属台をXPS装置の中に装着した。XPS装置 は、日本電子社製の「マイクロ分析用X線光 子分光装置JPS-9200(以下、XPS装置)を用いた。 して、次に、粉体状の試料である第2のカー ボンナノファイバーをアルゴンガス濃度8×10 -2 Pa、0.5分間でアルゴンガスエッチングを行い 第2のカーボンナノファイバーの清浄な表面 を出した。さらに、XPS装置のX線源を分析径1m m、対陰極Al/Mgツインターゲット、加速電圧10k V、エミッション電流30mAに設定して第2のカー ボンナノファイバーの表面の酸素濃度を測定 した。XPSによって検出された第2のカーボン ノファイバーの表面の元素は酸素と炭素で った。

 また、カーボンナノファイバーを電子顕 鏡で写真撮影した。図3は第1のカーボンナ ファイバー「CNT-N」、図4~図6はそれぞれ第2 カーボンナノファイバー「CNT-B」、「CNT-C」 「CNT-D」の電子顕微鏡写真である。図4~図6 第2のカーボンナノファイバーの表面は、図3 の「CNT-N」の第1のカーボンナノファイバーの 表面に比べて適度に荒れ(酸化され)ており、 ラストマーに対する濡れ性の改善が推測さ る。

 (2)実施例1~12及び比較例1~11の炭素繊維複合 料サンプルの作製
 実施例1~12及び比較例1~11サンプルとして、 ープンロール(ロール設定温度20℃)に、表1に 示す所定量のエチレン-プロピレンゴムを投 し、カーボンナノファイバーをエチレンプ ピレンゴムに投入し素練りの後、第1の混練 程を行いロールから取り出した。さらに、 の混合物をロール温度100℃に設定されたオ プンロールに再度投入し、第2の混練工程を 行って取り出した。

 次に、この混合物をオープンロール(ロー ル温度10~20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、 通しを繰り返し5回行なった。このとき、2 のロールの表面速度比を1.1とした。さらに ロール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして 得られた炭素繊維複合材料を投入し、分出し した。

 分出ししたシートを90℃、5分間圧縮成形し 厚さ1mmの実施例1~12及び比較例1~11の無架橋 の炭素繊維複合材料サンプルを得た。
また、薄通しして得られた無架橋の炭素繊維 複合材料にパーオキサイド2質量部(phr)を混合 し、ロール間隙を1.1mmにセットしたオープン ールに投入し、分出しした。分出しして金 サイズに切り取ったパーオキサイドを含む 素繊維複合材料を金型にセットし、175℃、1 00kgf/cm 2 、20分間圧縮成形して厚さ1mmの実施例1~12及び 比較例1~11の架橋体の炭素繊維複合材料サン ルを得た。

 表2及び表3において、「HAF」は平均粒径27nm 窒素吸着比表面積が82m 2 /gのHAFグレードのカーボンブラックであり、 EPDM」はJSR社製のエチレン-プロピレンゴム(E PDM)の商品名EP103AFであった。また、表2及び表 3において、前記(1)で得られた第2のカーボン ノファイバーは「CNT-A」~「CNT-E」とし、酸 処理しない第1のカーボンナノファイバーは CNT-N」とした。

 (3)実施例13~14及び比較例11~14の炭素繊維複合 材料サンプルの作製
 実施例13~14及び比較例11~14サンプルとして、 オープンロール(ロール設定温度20℃)に、表4 示す所定量の含フッ素エラストマーを投入 、カーボンナノファイバーを含フッ素エラ トマーに投入し素練りの後、混合物をロー から取り出した。
次に、この混合物をオープンロール(ロール 度10~20℃、ロール間隔0.3mm)に巻きつけ、薄通 しを繰り返し10回行なった。このとき、2本の ロールの表面速度比を1.1とした。さらに、ロ ール間隙を1.1mmにセットして、薄通しして得 れた炭素繊維複合材料を投入し、分出しし 。

 分出ししたシートを圧縮成形して厚さ1mmの 施例13~14及び比較例11~14の無架橋体の炭素繊 維複合材料サンプルを得た。
また、薄通しして得られた無架橋の炭素繊維 複合材料をロールで圧延後、170℃、10分間プ ス成形(キュア)した後、さらに200℃、24時間 ポストキュアして、実施例13,14及び比較例11~1 4の架橋体の炭素繊維複合材料(厚さ1mmのシー 形状)を得た。

 表4において、「HAF」は平均粒径27nm、窒素 着比表面積が82m 2 /gのHAFカーボンブラックであり、「2元系FKM」 はデュポン・ダウ・エラストマー・ジャパン 社製の含フッ素エラストマーのバイトンA-500( 分子量50,000)であった。また、表4において、 記(1)の加熱炉温度650℃で得られた第2のカー ボンナノファイバーを「CNT-C」とし、酸化処 しない第1のカーボンナノファイバーは「CNT -N」とした。

 (4)パルス法NMRを用いた測定
 実施例1~14及び比較例1~14の各無架橋体の炭 繊維複合材料サンプルについて、パルス法NM Rを用いてハーンエコー法による測定を行っ 。この測定は、日本電子(株)製「JMN-MU25」を いて行った。測定は、観測核が 1 H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの 件で行い、ハーンエコー法のパルスシーケ ス(90゜x-Pi-180゜x)にて、Piをいろいろ変えて 衰曲線を測定した。また、サンプルは、磁 の適正範囲までサンプル管に挿入して測定 た。測定温度は、150℃であった。この測定 よって、各サンプルについて第1のスピン- ピン緩和時間(T2n/150℃)と第2のスピン-スピン 緩和時間を有する成分の成分分率(fnn)とを求 た。測定結果を表2~4に示した。なお、同様 測定した原料ゴムの第1のスピンースピン緩 和時間(T2n/30℃)は、「EPDM」が520μsec、「2元系 FKM」が55μsecであった。また、パルス法NMRを いてソリッドエコー法による測定を行った この測定は、日本電子(株)製「JMN-MU25」を用 て行った。測定は、観測核が 1 H、共鳴周波数が25MHz、90゜パルス幅が2μsecの 件で行い、ソリッドエコー法のパルスシー ンス(90゜x-Pi-90゜y)にて、減衰曲線を測定し 無架橋体の炭素繊維複合材料サンプルの150 におけるスピン-スピン緩和時間(T2s)を検出 た。

 (5)硬度の測定
 実施例1~14及び比較例1~14の架橋体の炭素繊 複合材料サンプルのゴム硬度(JIS-A)をJIS K 62 53に基づいて測定した。測定結果を表2~4に示 。

 (6)100%モジュラス(M100)の測定
 実施例1~14及び比較例1~14の架橋体の炭素繊 複合材料サンプル(幅5mm×長さ50mm×厚さ1mm)を1 0mm/minで伸長し、100%変形時の応力(M100:100%モジ ュラス(MPa))を求めた。測定結果を表2~4に示す 。実施例1~12及び比較例1、10の測定結果を図7 フィラーの配合量(phr)に対して100%モジュラ (MPa)の変化をグラフで示した。図7における 号は、それぞれAは「CNT-A(比較例10)」、Bは CNT-B」,Cは「CNT-C」,Dは「CNT-D」,Hは「HAF」,Nは 「CNT-N」、EPDMは「EPDM単体(比較例1)」である また、この測定結果に基づいて、エラスト ー100重量部に配合されたカーボンナノファ バー1重量部当たりにおける、エラストマー 体の100%モジュラスに対する炭素繊維複合材 料の100%モジュラスの上昇率(M100上昇率)を計 した。100%モジュラスの上昇率(M100上昇率)は 例えば、実施例1であれば、実施例1と比較 1のM100の差(4.9-1.4=3.5)を比較例1のM100の値(1.4) 割り、さらに実施例1のCNT-Aの配合量(20)で割 った百分率(12.5%)である。

 (7)引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)の測定
 各架橋体の炭素繊維複合材料サンプルを1A のダンベル形状に切り出した試験片につい 、東洋精機社製の引張試験機を用いて、23±2 ℃、引張速度500mm/minでJIS K6251に基づいて引 試験を行い引張強さ(MPa)及び破断伸び(%)を測 定した。これらの結果を表2~4に示す。実施例 1~12及び比較例1~9の測定結果を図8にM100(MPa)に して破断伸び(%)の変化をグラフで示した。 8における符号は、それぞれAは「CNT-A(比較 10)」、Bは「CNT-B」,Cは「CNT-C」,Dは「CNT-D」,H 「HAF」,Nは「CNT-N」,EPDMは「EPDM単体(比較例1) 」である。

 (8)動的粘弾性試験
 実施例1~14及び比較例1~14の架橋体の炭素繊 複合材料サンプルを短冊形(40×1×5(巾)mm)に切 り出した試験片について、SII社製の動的粘弾 性試験機DMS6100を用いて、チャック間距離20mm 測定温度-100~300℃、動的ひずみ±0.05%、周波 10HzでJIS K6394に基づいて動的粘弾性試験を い動的弾性率(E’、単位はMPa)を測定した。 定温度が25℃と200℃における動的弾性率(E’) の測定結果を表2~4に示す。また、この測定結 果に基づいて、測定温度200℃、エラストマー 100重量部に配合されたカーボンナノファイバ ー1重量部当たりにおける、エラストマー単 の動的弾性率に対する炭素繊維複合材料の 的弾性率の上昇率(E’上昇率)を計算した。 的弾性率の上昇率(E’上昇率)は、例えば、 施例1であれば、実施例1と比較例1のE’上昇 の差(18-4.7=13.3)を比較例1の動的弾性率の値(4 .7)で割り、さらに実施例1のCNT-Aの配合量(20) 割った百分率(14.1%)である。

 (9)クリープ特性の測定
 実施例1~14及び比較例1~14の架橋体の炭素繊 複合材料サンプルについて、120℃で250KPaの 荷をかけ、耐熱クリープ試験を行ない、200 ~900分の間における定常クリープ期の1時間当 たりのクリープ変形速度(ppm/時間)を測定した 。クリープ変形速度は、クリープ瞬間ひずみ の後かつ加速クリープ期の前の定常クリープ 期における1時間当たりのひずみ変化量(1ppm=0. 0001%)であり、表2~4では「クリープ速度」と示 す。これらの結果を表2~4に示す。

 (10)平均線膨張係数の測定
 実施例1~14及び比較例1~14の架橋体の炭素繊 複合材料サンプルについて、測定温度範囲 おける平均線膨張係数を測定した。これら 結果を表2~4に示す。測定装置はSII社製TMASS、 測定試料形状は1.5mm×1.0mm×10mm、側長荷重は25K Pa、測定温度は室温~150℃、昇温速度は2℃/分 あった。

 表2~4から、本発明の実施例1~14によれば、 以下のことが確認された。すなわち、本発明 の実施例1~14の表面が適度に酸化処理された ーボンナノファイバーを用いた架橋体の炭 繊維複合材料サンプルは、比較例1~14に比べ M100上昇率及びE’上昇率が高く、カーボン ノファイバーとエラストマーとの濡れ性が 上したことによって剛性、特に高温におけ 剛性が向上したことがわかった。また、図7 び図8から、本発明の実施例1~12の架橋体の 素繊維複合材料サンプルは、比較例1~9に比 てM100が大きくかつ破断伸びが大きいので、 性と柔軟性とを兼ね備えることがわかった 実施例1~14の無架橋体の炭素繊維複合材料サ ンプルは、スピン-スピン緩和時間(T2s/150℃) 、同じ量のカーボンナノファイバーを配合 た比較例2~5、10、11、13、14に比べT2nが短くな り、fnnが小さくなった。なお、比較例10は、 2のカーボンナノファイバーの表面の酸化処 理が不十分であったため、比較例5の第1のカ ボンナノファイバーを用いた炭素繊維複合 料の物性とほとんど変わらなかった。また 比較例11は、第2のカーボンナノファイバー 表面が熱処理によって傷みすぎてしまった め、M100、引張強さ及び破断伸びにおける物 性が低下した。

10 第1のロール
20 第2のロール
30 エラストマー
36 混合物
40 第2のカーボンナノファイバー
50 炭素繊維複合材料
d  ロール間隔
V1 第1のロールの表面速度
V2 第2のロールの表面速度