Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
CARBON NANOTUBE DISPERSION AND UTILIZATION OF THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/098779
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a carbon nanotube dispersion wherein carbon nanotubes are uniformly dispersed and can exert the characteristics inherent to the carbon nanotubes while sustaining a favorable dispersion state over a long period of time. This carbon nanotube dispersion contains an alcoholic solvent (preferably a lower alcohol having from about 1 to about 4 carbon atoms) and a polyvinyl acetal resin.

More Like This:
Inventors:
HASHIMOTO TAKESHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/052153
Publication Date:
August 13, 2009
Filing Date:
February 08, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
MEIJO NANO CARBON CO LTD (JP)
HASHIMOTO TAKESHI (JP)
International Classes:
C08L29/14; C01B31/02; C08K3/04
Foreign References:
JP2004075705A2004-03-11
JP2008001898A2008-01-10
JP2005097499A2005-04-14
JP2006016450A2006-01-19
Attorney, Agent or Firm:
ABE, Makoto (Shirakawa Dairoku Bldg.7th Fl., 2-18-5, Nishiki, Naka-ku,Nagoya-sh, Aichi 03, JP)
Download PDF:
Claims:
 カーボンナノチューブが液状媒体に分散した分散液であって、
 前記液状媒体は、アルコール系溶媒とポリビニルアセタール樹脂とを含む、カーボンナノチューブ分散液。
 前記アルコール系溶媒は、炭素数1~4の低級アルコールである、請求項1に記載の分散液。
 前記アルコール系溶媒100mLに対して、前記カーボンナノチューブは0.5mg~1000mgが分散している、請求項1又は2に記載の分散液。
 前記ポリビニルアセタール樹脂は、前記カーボンナノチューブに対して質量比0.5~10の割合で含まれる、請求項1~3のいずれか一項に記載の分散液。
 前記ポリビニルアセタール樹脂は、平均分子量1.0×10 4 ~2.5×10 4 である、請求項1~4のいずれか一項に記載の分散液。
 前記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルブチラール樹脂である、請求項1~5のいずれか一項に記載の分散液。
 前記ポリビニルブチラール樹脂は、ブチラール化度65mol%~80mol%である、請求項6に記載の分散液。
 前記ポリビニルブチラール樹脂は、20℃の温度条件下でエタノールとトルエンとを1:1の体積比で混合した混合溶媒に10質量%の濃度で溶解させた際の溶液粘度が5mPa・s~30mPa・sである、請求項6又は7に記載の分散液。
 常温で静置した場合に、少なくとも2週間カーボンナノチューブが分散状態を維持する、請求項1~8のいずれか一項に記載の分散液。
 カーボンナノチューブが液状媒体に分散した分散液を製造する方法であって:
 カーボンナノチューブを用意すること;
 アルコール系溶媒とポリビニルアセタール樹脂とを含む液状媒体を用意すること;及び
 前記カーボンナノチューブを前記媒体とともに容器に入れて、該容器の内容物を分散処理すること;
 を包含し、ここで該分散処理は少なくとも攪拌処理と超音波処理とを含む、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
 前記分散処理は、長さ1μm以上であり直径が0.1μm未満のカーボンナノチューブバンドルが前記媒体に分散した分散液が形成されるように行われる、請求項10に記載の製造方法。
 請求項1~9のいずれか一項に記載の分散液を基材に付与してなるカーボンナノチューブ膜。
 請求項10又は11に記載の方法により製造される分散液を基材に付与してなるカーボンナノチューブ膜。
Description:
カーボンナノチューブ分散液、 びその利用

 本発明は、カーボンナノチューブが所定 液状媒体に分散したカーボンナノチューブ 散液に関する。また本発明は、該分散液の 造方法に関する。さらには、該カーボンナ チューブ分散液を基材に付与してなるカー ンナノチューブ膜に関する。

 カーボンナノチューブは、導電性、熱伝 性、機械的強度等の優れた特性を持つこと ら、多くの分野から注目を集めている新素 である。かかるカーボンナノチューブに関 、単独での利用のみならず、これを他の材 に分散させた複合材料として利用すること ついても種々検討されている。例えばカー ンナノチューブを分散媒に分散させたカー ンナノチューブ分散液を、導電性付与剤や 電防止剤として利用できる。また、該カー ンナノチューブ分散体を塗布してフィルム シート等の基板上に導電層を形成し、この 板をディスプレイのエミッタ材料、燃料電 用電極材料、ガス吸蔵材料等に利用できる

 一般にカーボンナノチューブは、多数のチ ーブが凝集した状態で製造され、かつ販売 れている。かかる凝集状態にあるカーボン ノチューブは、他の材料(液状媒体)に均一 分散しにくいという問題がある。この問題 解決するべく、カーボンナノチューブの分 性を向上させる方法が種々検討されている 例えば、特許文献1には、所定の液体とカー ンナノチューブとの混合液を湿式媒体攪拌 ルで解砕し、上記カーボンナノチューブを 記液体中に分散させる方法が記載されてい 。特許文献2には、アミド系極性有機溶媒と 非イオン性界面活性剤との混合液にカーボン ナノチューブを分散させる方法が記載されて いる。特許文献3には、カーボンナノチュー の一部に共役系重合体を付着させることに り上記カーボンナノチューブの分散性を向 させる方法が記載されている。

特開2005-324999号公報

特開2005-075661号公報

特開2005-089738号公報

 しかし、特許文献1に記載の方法では、カ ーボンナノチューブが過剰に断片化し易く、 またチューブの壁面構造が損傷し易い。断片 化して短くなり過ぎたカーボンナノチューブ や損傷の大きいカーボンナノチューブでは、 カーボンナノチューブ本来の特性(例えば導 性や強度等)を適切かつ十分に発揮できない また、特許文献2及び3に記載の方法では、 面活性剤や共役系重合体等の多種材料(成分) の混合によって、該混合材料の混合工程や未 反応物の除去工程(精製工程)が増して製造工 が煩雑化する虞がある。また、特殊な混合 料の使用によりカーボンナノチューブ分散 の製造コストが上昇する。

 そこで本発明は、カーボンナノチューブ 均一に分散して長期間にわたって良好な分 状態を維持するとともに、カーボンナノチ ーブ本来の特性を発揮し得るカーボンナノ ューブ分散液を提供することを目的とする また、このようなカーボンナノチューブ分 液を製造する方法を提供することを他の目 とする。さらに別の目的は、このようなカ ボンナノチューブ分散液を基材に付与して るカーボンナノチューブ膜(即ちカーボンナ ノチューブを主構成要素とする膜)と、該カ ボンナノチューブ膜を備える膜エレメント 提供することである。

 上記目的を実現するべく本発明によってカ ボンナノチューブ分散液が提供される。こ 分散液は、カーボンナノチューブが液状媒 に分散した分散液であって、前記液状媒体 、アルコール系溶媒とポリビニルアセター 樹脂とを含む。
 従来では、例えばアルコール等の有機溶剤 対して、カーボンナノチューブを分散させ ことは困難であった。このため、多種類の 散剤を多量に添加することでカーボンナノ ューブを上記溶剤(分散媒)に分散させてい 。本発明者は、アルコール系溶媒に少なく もポリビニルアセタール樹脂を添加するこ によって、カーボンナノチューブの分散性 著しく向上し、良好かつ均一な分散状態が 期にわたって維持されることを見出した。 なわち、かかるカーボンナノチューブ分散 は、液状媒体中にアルコール系溶媒とポリ ニルアセタール樹脂とを含む。このため、 分散液は、カーボンナノチューブを均一に 散させて、その良好な分散状態を長期間安 して維持することができる。また、ここに 示される分散液では、必須の構成成分を少 くすることができる。このため、使用条件 制約が少なく、組成の自由度が高い。すな ち、利用目的に応じて、該分散液に所望の 能を付与し得る成分を添加して所望の組成 調製し易い。したがって、かかる分散液は 原材料(例えば機能性材料)として幅広い分野 で利用され得る。

 ここに開示される分散液の好ましい一態様 は、前記アルコール系溶媒は、低級アルコ ル(例えば炭素数が8以下)、特に炭素数1~4の 級アルコールである。
 かかる態様では、上記アルコール系溶媒と て炭素数が1~4程度の低級アルコールを用い ので、以下のような効果が奏される。まず 炭素数が1~4程度の低級アルコールは、揮発 が高い。このため、かかる分散液を塗布し カーボンナノチューブ膜を作製する際に、 かるアルコールを塗布物から容易に除去さ 易い。また、かかる低級アルコールは、入 し易く、キシレン等の有機溶剤に比べて環 負荷が比較的低いので、溶剤としての汎用 が高い。このようなアルコールを使用して られるカーボンナノチューブ分散液は、よ 幅広い分野で利用され得る。

 ここに開示される分散液の好ましい一態様 は、前記アルコール系溶媒100mLに対して、 記カーボンナノチューブは0.5mg~1000mg(例えば1 mg~10mg、典型的には1mg~5mg)が分散している。
 また好ましくは、前記ポリビニルアセター 樹脂は、カーボンナノチューブに対して質 比0.5~10(より好ましくは1~5、典型的には1~3) 割合で含まれる。
 かかる態様によれば、カーボンナノチュー の液状媒体への分散性を向上させる効果が らに高まり、安定した分散状態がより長期 にわたって維持され得る。

 ここに開示される分散液に使用されるポリ ニルアセタール樹脂は好ましくは平均分子 1.0×10 4 ~2.5×10 4 である。また、ポリビニルアセタール樹脂の 一好適例として、ポリビニルブチラール樹脂 が挙げられる。
 前記ポリビニルブチラール樹脂は、好まし は平均分子量1.0×10 4 ~2.5×10 4 である。また、かかる樹脂はブチラール化度 65mol%~80mol%であることが好ましい。さらに前 ポリビニルブチラール樹脂としては、20℃の 温度条件下でエタノールとトルエンとを1:1の 体積比で混合した混合溶媒に10質量%の濃度で 溶解させた際の溶液粘度が5mPa・s~30mPa・sであ るものが好ましい。
 ポリビニルブチラール樹脂は、一般的に、 記アルコール系溶媒に容易に溶解し、その 液は無色透明である。また、該溶液を用い 塗膜は強靭で可撓性を有するとともに、多 な基材への良好な接着性を持つ。これらの 般的性質に加え、かかるポリビニルブチラ ル樹脂は低分子量で低粘性である。このた 、かかる樹脂を用いて得られるカーボンナ チューブ分散液は基材へのぬれ性が高く、 材上に容易に薄く広範囲に塗布できる。ま 、かかる分散液を基材に付与(塗布)してカ ボンナノチューブ膜を形成すれば、該膜は 基材と良好な接着強度で接着し、良好な導 性(或いは半導体性)を有する透明な薄膜とな り得る。したがって、かかる樹脂を用いた分 散液は、良好な膜材料として好適に利用され 得る。

 また、ここに開示される発明によって、常 で静置した場合に、少なくとも2週間カーボ ンナノチューブが分散状態を維持することを 特徴とするカーボンナノチューブ分散液が提 供される。
 かかる分散液は、攪拌等の操作を全く行わ に常温で静置しても、カーボンナノチュー が凝集して沈降することなく良好な分散状 を長期間(少なくとも2週間)維持することが きる。該分散液の使用直前に、攪拌等の分 処理を再度行う必要がなく、作業効率を低 させることはない。このため、該分散液は 材料として扱い易く、好ましく利用され得 。

 また、上記目的を実現するべく、本発明に ってカーボンナノチューブが液状媒体に分 した分散液を製造する方法が提供される。 の製造方法は、カーボンナノチューブを用 すること、アルコール系溶媒とポリビニル セタール樹脂とを含む液状媒体を用意する と、及び前記カーボンナノチューブを前記 体とともに容器に入れて、該容器の内容物 分散処理すること、を包含する。ここで該 散処理は少なくとも攪拌処理と超音波処理 を含む。
 また、前記分散処理は、長さ1μm以上であり 直径が0.1μm未満のカーボンナノチューブバン ドル(即ちカーボンナノチューブの束(bundle)を いう。以下同じ。)が前記媒体に分散した分 液が形成されるように行われることが好ま い。
 かかる製造方法によって、カーボンナノチ ーブが上記液状媒体中に均一に分散した分 液が得られる。また、攪拌及び超音波処理 含む分散処理を行うことによって、該カー ンナノチューブの過剰な断片化や損傷が抑 される。したがって、かかる製造方法によ て、カーボンナノチューブ本来の特性を発 し得る状態にあるカーボンナノチューブが 状媒体中に均一に分散した分散液を製造す ことができる。

 本発明によれば、ここに開示されるいず かのカーボンナノチューブ分散液を基材に 与してなるカーボンナノチューブ膜が提供 れる。或いは、ここに開示されるいずれか 製造方法により製造されるカーボンナノチ ーブ分散液を基材に付与してなるカーボン ノチューブ膜が提供される。かかるカーボ ナノチューブ膜は、カーボンナノチューブ 均一に分散した膜であって、良好な導電性( 或いは半導体性)を示すとともに、強靭で可 性をも備えた膜となり得る。また、上記基 として、例えば透明なPETフィルムやガラス を用いれば、該基材上に形成されるカーボ ナノチューブ膜は、該基材と強い接着強度 接着し、剥離しにくい透明な膜となり得る さらに、上記分散液に所望する機能を与え 成分を添加しておけば、この分散液を用い 得られる膜は機能性膜となり得る。このよ な膜を基材上に備える膜エレメントは、種 の産業分野で利用することができる。

本発明に係るカーボンナノチューブ分 液の製造方法の概略を示すフローチャート ある。 実験例1において得られたカーボンナノ チューブのエタノール分散液のSPM写真である 。 実験例1において得られたカーボンナノ チューブのエタノール分散液の光学写真であ る。 実験例2において得られたポリビニルブ チラール樹脂を含まないカーボンナノチュー ブのエタノール分散液のSPM写真である。 実験例2において得られたポリビニルブ チラール樹脂を含まないカーボンナノチュー ブのエタノール分散液の光学写真である。 実験例3において得られたカーボンナノ チューブのメタノール分散液の光学写真であ る。 実験例4において得られたカーボンナノ チューブの2-プロパノール分散液の光学写真 ある。

 以下、本発明の好適な実施形態を説明す 。なお、本明細書において特に言及してい 事項以外の事柄であって本発明の実施に必 な事柄(例えば、カーボンナノチューブの合 成法、カーボンナノチューブの回収方法)は 当該分野における従来技術に基づく当業者 設計事項として把握され得る。本発明は、 明細書に開示されている内容と当該分野に ける技術常識とに基づいて実施することが きる。

 ここに開示されるカーボンナノチューブ分 液は、液状媒体にカーボンナノチューブが 一に分散した分散液である。この液状媒体 、アルコール系溶媒と少なくともポリビニ アセタール樹脂とを含んでいる。また、カ ボンナノチューブが高濃度に含有された高 度のインク状組成物、或いはペースト状組 物は、液状媒体中にカーボンナノチューブ 一様に分散されている限り、ここに開示さ るカーボンナノチューブ分散液に包含され 一形態である。
 かかるカーボンナノチューブ分散液を製造 るための原料として使用されるカーボンナ チューブ(すなわち、分散対象となるカーボ ンナノチューブ)の種類は特に限定されず、 ーク放電法、レーザ蒸発法、化学気相成長 (CVD法)等の各種方法により製造されたカーボ ンナノチューブを適宜選択して用いることが できる。単層カーボンナノチューブ、多層カ ーボンナノチューブ、及びこれらを任意の割 合で含む混合物のいずれも使用可能である。 典型的には、上記原料として、多数のカーボ ンナノチューブが凝集したカーボンナノチュ ーブ凝集体(上記カーボンナノチューブバン ルを包含する。)が好ましく用いられる。該 集体は、カーボンナノチューブ以外に、チ ーブを形成しないアモルファスカーボン等 炭素成分(不純物炭素)や触媒金属等を含ん もよい。このようなカーボンナノチューブ 集体(原料)として、上述のような各種方法( えばアーク放電法)により得られた生成物を のまま使用してもよく、或いは、該生成物 任意の後処理(例えばアモルファスカーボン の除去、触媒金属の除去等の精製処理)を施 たものを使用してもよい。

 上記原料を構成するカーボンナノチュー の長さは特に限定されないが、典型的には なくとも概ね1μm以上であり、好ましくは概 ね5μm以上(典型的には5μm~100μm、好ましくは5 m~数十μm)である。この長さが概ね10μm以上( 型的には10μm~100μm、好ましくは10μm~数十μm) あってもよい。本発明に係る製造方法によ ば、攪拌処理及び超音波処理を含む分散処 を実施することにより上記長さを有するカ ボンナノチューブを適切に(好ましくは、1μ m以上の長さが維持された状態で)分散させて 該カーボンナノチューブ本来の特性が発揮 れ易いカーボンナノチューブ分散液を得る とができる。

 ここに開示されるカーボンナノチューブ分 液における液状媒体は、アルコール系溶媒 ポリビニルアセタール樹脂とを含み、アル ール系溶媒は液状媒体の主成分であること 好ましい。また、該アルコール系溶媒とし は、上記室温程度の温度域(例えば23℃~25℃) で液状を呈する一般的なアルコールから選択 される1種、又は2種以上を使用することがで る。上記アルコール系溶媒の種類及び組成 、目的及び態様等に応じて適宜選択するこ ができる。本発明の実施に好ましいアルコ ル系溶媒として、低級アルコール、典型的 は炭素数1~4程度の低級アルコールが挙げら る。より好ましくは、後述のポリビニルア タール樹脂を溶解し得る低級アルコールで る。このような低級アルコールとして、例 ば、メタノール、エタノール、1-プロパノ ル、2-プロパノール(イソプロピルアルコー )、1-ブタノール(n-ブタノール)、2-メチル-1- ロパノール(イソブタノール)、2-ブタノール( sec-ブタノール)、及び1-メチル-2-プロパノー (tert-ブタノール)のような炭素数1~4の低級ア コールが挙げられる。これらの低級アルコ ルのうちの1種のみ(例えばエタノール若し は2-メチル-1-プロパノール)、或いは2種以上( 例えばエタノールと1-ブタノール)を適当な混 合比で混合した混合アルコールを、上記アル コール系溶媒として好ましく採用することが できる。
 上記の低級アルコールは揮発性が高い。こ ため、これらのアルコールを含む液状媒体 カーボンナノチューブを分散させた分散液 塗布すれば、該アルコールは容易に揮発す ので上記塗布物から該アルコールを除去(乾 燥)させ易い。また、これらのアルコールは 入手し易く極めて一般的な溶剤である。こ ため、これらのアルコールを用いてなる分 液は幅広い分野に適用され得る。

 ここに開示されるカーボンナノチューブ 散液の液状媒体には、ポリビニルアセター 樹脂が含まれる。ポリビニルアセタール樹 は、一般的にはビニルエステル系単量体を 合してなるポリビニルエステル系樹脂をケ 化して得られるポリビニルアルコール(PVA) 樹脂(或いは変性PVA系樹脂)に対してアルデヒ ドと反応させ、アセタール化することにより 得られる。このため、このポリビニルアセタ ール樹脂は、PVA系樹脂の連続するビニルアル コール構造単位がアルデヒド化合物によって アセタール化された構造単位(すなわちアセ ール基を含む構造単位)と、未反応のビニル ルコール構造単位(すなわち水酸基を含む構 造単位)、及びPVA系樹脂の未ケン化部分であ 酢酸ビニル構造単位(すなわちアセチル基を む構造単位)とを有する高分子化合物である 。この各構造単位の割合(すなわち組成)、重 度(分子量)により、物理的・化学的性質が 化し、かかる樹脂の熱的性質や機械的性質 溶液粘度等が左右され得る。例えば、未反 のビニルアルコール構造単位(水酸基)が多い 組成のポリビニルアセタール樹脂は、水素結 合により結晶化し易く、高弾性率や強靭性、 親水性、又は基材との接着性に優れる。また 、アセタール基が多い(アセタール化度が高 )組成では、軟化性や親油性に優れる。分子 (重合度)が大きい場合には、かかる樹脂の 液粘度が低下する。

 ここで、上記液状媒体に使用され得るポリ ニルアセタール樹脂は、アルコール系溶媒 の溶解度が高いことが好ましく、また、ア コール系溶媒に溶解させて高濃度に溶液を 製しても溶液粘度が低いような性質を有す ことが好ましい。したがって、所望の特性 呈するような分子量(重合度)や組成を適宜 定することで、本発明の実施に好ましいポ ビニルアセタール樹脂を採用することがで る。
 上記ポリビニルアセタール樹脂は、上記の 性を呈するものであれば特に限定されない 、好ましく採用され得る一つの典型例とし は、ポリビニルブチラール樹脂が挙げられ 。これはPVA系樹脂をブチルアルデヒドによ アセタール化(ブチラール化)して得られる のである。

 上記特性を有し、本発明にとり好ましいポ ビニルブチラール樹脂の平均計算分子量は 1.0×10 4 ~3.5×10 4 が好ましく、より好ましくは1.5×10 4 ~2.3×10 4 である。上記のような平均分子量を有するポ リビニルブチラール樹脂の重合度としては、 150~600が好ましく、より好ましくは200~350であ 。この重合度は原料のビニルエステル系単 体を重合してなるポリビニルエステル系樹 (重合体)の重合度を制御することにより調 できる。

 また、使用するポリビニルブチラール樹 としては、20℃の温度条件下において、エ ノールとトルエンとを1:1の体積比で混合し 混合溶媒に10質量%の濃度で溶解させた際の 液粘度が5mPa・s~30mPa・s(好ましくは9mPa・s~30mP a・s、さらに好ましくは9mPa・s~15mPa・s、若し は10mPa・s~30mPa・s)となるようなものである とが好ましい。かかるポリビニルブチラー 樹脂の粘度を測定する方法としては、例え BM型の回転粘度計を用いる等、従来公知の方 法を好ましく用いることができ、特に限定さ れない。

 また、本発明の実施に好ましいポリビニル チラール樹脂のブチラール化度は65mol%~80mol% (好ましくは68mol%~77mol%)が好ましい。これに対 して、かかる樹脂の好ましい水酸基量は、20m ol%~35mol%(好ましくは21mol%~28mol%)である。さら かかる樹脂に残存するアセチル基は5mol%以下 (好ましくは2mol%~5mol%以下)であることが好ま い。ブチラール化度は、PVAまたは変性PVAの 酸基数のうちブチラール化された水酸基数 割合である。したがって、上記ブチラール 度が上記範囲の上限を超えると、有機溶媒 の溶解性は上昇するが、水酸基量が減る。 のためかかる樹脂のアルコール溶液の塗膜 、接着性が低下する。一方、ブチラール化 が上記範囲の下限を下回って水酸基量が増 と、有機溶媒への溶解性が低下する。した って、かかるポリビニルブチラール樹脂に いて、ブチラール化度と水酸基量との存在 が上記範囲内にバランスされていることが ましい。
 ブチラール化度の算出方法は、従来公知の 法を好ましく用いることができ、特に限定 れない。例えば、かかるポリビニルブチラ ル樹脂のブチラール基は2個の水酸基がアセ タール化されて形成されることから、当該ア セタール化された2個の水酸基を数えて、そ モルパーセント[mol%]を算出すればよい。ま 、ポリビニルブチラール樹脂の水酸基量を める方法は、例えばジメチルスルホキシド の溶液を作製し共鳴種として同位元素13Cを いる核磁気共鳴スペクトル(典型的には 13 C-NMR)測定や、赤外分光(IR)測定により定量す 方法等が挙げられる。或いは、JIS K6728(ポリ ビニルブチラール試験方法)に準拠して測定 ることにより上記ブチラール化度及び水酸 量を好ましく求めることができる。

 かかるポリビニルブチラール樹脂において 本発明にとり好ましい市販品として、積水 学工業株式会社製品、「S-LEC B」シリーズ 低重合度タイプのものを採用することがで る。特に好ましくは、同タイプの商品名「BL -10」(計算分子量;約1.5×10 4 、水酸基;約28mol%、ブチラール化度;71±3mol%、 記溶液粘度;9~15mPa・s)、又は商品名「BL-S」( 算分子量;約3.2×10 4 、水酸基;約21mol%、ブチラール化度;77mol%以上 上記溶液粘度;10~30mPa・s)である。

 かかるポリビニルブチラール樹脂を用意 る際には、上記市販品を入手してもよく、 いは所定の分子量や組成を有するように製 してもよい。ポリビニルブチラール樹脂を 造する場合には、その方法は特に限定され ものではなく、従来公知の方法を好ましく いることができる。典型的には、まず溶液 合等により酢酸ビニル等のビニルエステル モノマーを共重合させてポリビニルエステ 系樹脂(重合体)を生成し、これをケン化し PVA系樹脂を得る、次に、得られたPVA系樹脂 水に溶解し、低温でブチルアルデヒドと反 させてブチラール化してポリビニルブチラ ル樹脂を析出させる、その後、系の温度を げてブチラール化反応を終了するとともに セタール化部分を再配列させる、という方 が好ましく用いられる。ポリビニルブチラ ル樹脂は、その重合度が低重合度に制御さ ていることが好ましい。このようなポリビ ルブチラール樹脂を製造する方法の一つと て、例えば、ビニルエステル系単量体をヨ ドホルム等のヨウ素化合物の存在下でラジ ル重合させて得られるポリビニルエステル 重合体を用いる方法が挙げられる。なお、 リビニルブチラール樹脂の製造方法自体は 発明を何ら特徴づけるものではないため、 れ以上の詳細な説明は省略する。

 上記ポリビニルブチラール樹脂を上述の ルコール系溶媒に溶解して、カーボンナノ ューブ分散液として好ましい液状媒体を調 する。なお、上記アルコール系溶媒は、上 のように低級アルコールを2種以上混合した 混合アルコールでもよいが、例えば、上記低 級アルコール(典型的にはメタノールやエタ ール)に芳香族炭化水素(例えばトルエンやキ シレン)及び/又はエステルやケトン(例えば酢 酸エチルやエチルメチルケトン)等の有機溶 を所定割合(例えばアルコール:芳香族炭化水 素の体積比4:6程度)で混合した混合溶媒を好 しく用いることもできる。該混合溶媒の使 は、カーボンナノチューブ分散液の粘度調 や、該分散液の塗膜のさらなる透明化に効 的である。

 また、上記液状媒体は、ポリビニルアセ ール樹脂のほかに、必要に応じて各種の添 材を副成分として含有することができる。 のような添加剤としては、界面活性剤、酸 防止剤、粘度調整剤、pH調整剤、防腐剤等 例示される。

 次に、アルコール系溶媒に対するカーボ ナノチューブ及びポリビニルアセタール樹 の配合比について説明する。該アルコール 溶媒100mLに対して、カーボンナノチューブ 0.5mg~1000mg(例えば0.5mg~200mg、典型的には0.5mg~50 mg、特には1mg~30mg)分散させることが好ましい また、単層カーボンナノチューブのみを選 的に用いる際には、上記アルコール系溶媒1 00mLに対して、上記カーボンナノチューブを0. 5mg~200mg(より好ましくは0.5mg~100mg、典型的には 1mg~30mg)分散させることが好ましい。さらに、 多層カーボンナノチューブのみを選択的に用 いる際には、上記アルコール系溶媒100mLに対 て、上記カーボンナノチューブを0.5mg~1000mg( より好ましくは0.5mg~200mg、典型的には1mg~50mg) 散させることが好ましい。また、導電膜(例 えば、太陽電池、タッチパネル、液晶ディス プレイやプラズマディスプレイ等の電極とし て用いられる透明導電膜)として好適に使用 れ得る後述のカーボンナノチューブ膜を、 えばディップコート法により作製する場合 は、アルコール系溶媒100mLに対してカーボン ナノチューブを60mg以下、例えば1mg~40mg(典型 には1mg~20mg)分散させることが好ましい。一 、上記導電膜として好適に使用され得るカ ボンナノチューブ膜を、例えば滴下法によ 作製する場合には、アルコール系溶媒100mLに 対してカーボンナノチューブを10mg以下、例 ば1mg~10mg(典型的には1mg~5mg)分散させることが 好ましい。

 上記カーボンナノチューブに対して、ポ ビニルアセタール樹脂を質量比0.5~10(好まし くは1~3、典型的には1~2)の割合でアルコール 溶媒に溶解させることが好ましい。アルコ ル系溶媒にカーボンナノチューブをより多 分散させる際には、カーボンナノチューブ 対するポリビニルアセタール樹脂の質量比 1より大きくすることで分散性が向上する。 言すれば、分散させたいカーボンナノチュ ブ量に対して、ポリビニルアセタール樹脂 アルコール系溶媒への溶解量を適宜調整し 液状媒体を調製することにより、幅広い濃 範囲のカーボンナノチューブ分散液を得る とができる。例えば、液状媒体、すなわち リビニルブチラール樹脂が溶解しているア コール系溶媒(例えばエタノール100mL)にカー ボンナノチューブを分散させる場合、該ポリ ビニルアセタール樹脂とカーボンナノチュー ブとの質量比が1:1であれば、カーボンナノチ ューブは10mg程度までは良好に分散するが、 れ以上のカーボンナノチューブを分散させ と、分散状態を長時間(例えば2週間以上)維 できない。カーボンナノチューブを20mg以上 散させて該分散状態を2週間以上維持する場 合には、ポリビニルアセタール樹脂を質量比 1.5~2程度まで(すなわち、20mgのカーボンナノ ューブに対して30mg~40mgのポリビニルアセタ ル樹脂を)アルコール系溶媒に溶解させるこ が好ましい。ポリビニルアセタール樹脂の ーボンナノチューブに対する質量比が上記 囲の上限より超える場合には、カーボンナ チューブの分散性は良好となるが分散液の 度が大きくなり過ぎることがある。

 一方、該質量比が0.5未満である場合、カ ボンナノチューブが一時は良好に液状媒体 に分散しても、例えば2週間以上という長期 間にわたってその良好な分散性を維持するこ とができず、カーボンナノチューブが液状媒 体中で凝集し沈降する傾向がある。例えば、 エタノール100mL中のカーボンナノチューブに するポリビニルブチラール樹脂の質量比が0 .4~0.5の場合には、分散液調製直後は良好な分 散状態を呈したが、その翌日~翌々日にはカ ボンナノチューブが凝集して沈降していた 該質量比が0.3以下の場合には、分散液調製 点で分散性は示さず、攪拌してもカーボン ノチューブの凝集体は分散しなかった。ま 、カーボンナノチューブの分量がアルコー 系溶媒の分量に対して多すぎるか少なすぎ 場合(すなわち、上記範囲を逸脱する場合)に は、後述の攪拌処理の効率又は効果が低下す る傾向がある。

 上記の好ましい配合比でカーボンナノチ ーブとポリビニルアセタール樹脂を含むカ ボンナノチューブ分散液は、良好な分散状 を示し得る。ここで、良好な分散状態とは 常温で静置した場合に、カーボンナノチュ ブバンドル(単一のカーボンナノチューブで あってもよい。)が均一に液状媒体中に分散 ており、凝集したカーボンナノチューブの 降していない状態が少なくとも目視で2週間 維持される状態をいう。

 ここに開示されるカーボンナノチューブ 散液を製造する方法では、製造原料として カーボンナノチューブ及び液状媒体を用意 た後、該カーボンナノチューブを該媒体と もに容器に入れて分散処理を行う。該分散 理は少なくとも攪拌処理と超音波処理とを む。上記容器(攪拌用容器)としては、密閉 の良い構造のものを使用することが好まし 。該容器を密閉して攪拌処理を行うことに り、後述する加圧状態を容易に実現するこ からも好ましい。

 上記攪拌処理は、高速攪拌処理であって 容器内で攪拌体を高速(高回転数)で回転さ て該容器の内容物(典型的には、原料として カーボンナノチューブ及び液状媒体)を攪拌 することにより行われる。上記攪拌体は、容 器内において高回転数で回転し得るように構 成された部材であればよく、その形状は特に 限定されない。また、かかる攪拌体を回転さ せる機構についても、所望の回転数を実現で きる限りにおいて特に制限はない。例えば、 モータに接続された攪拌軸に細長い板状若し くはプロペラ形状の攪拌体(攪拌ブレード)が り付けられた構成の攪拌装置を用いて上記 速攪拌処理を行うことができる。ここで、 拌体のサイズ及び容器に対する位置は、該 拌体が容器の内壁に接触することなく回転 るように設定されていることが好ましい。

 高速攪拌処理時における攪拌体の回転数 、例えば凡そ10,000rpm以上(典型的には10,000rpm ~50,000rpm)とすることができ、凡そ10,000rpm~30,000 rpmとすることが好ましい。攪拌体の回転数が 低すぎると、処理効率が低下し、又は処理効 果(カーボンナノチューブの凝集を緩める効 )が低下する。一方、攪拌体の回転数が高す ると、カーボンナノチューブが損傷を受け くなる場合がある。かかる高回転数の攪拌 行うのに適した攪拌装置の市販品としては 岩谷産業株式会社製品、商品名「ミルサー シリーズを例示することができる。

 特に限定するものではないが、高速攪拌処 を行う時間(攪拌時間)は例えば5秒~30分程度 することができる。処理効率の向上、及び 該処理によるカーボンナノチューブの損傷 抑制という観点から、通常は、上記攪拌時 を10秒~10分程度とすることが好ましく、30秒 ~5分とするのがより好ましい。
 このときの処理温度としては、液状媒体が 状の形態を維持する温度であればよい。例 ば、液状媒体を構成するアルコール系溶媒 エタノールである場合には5℃~60℃(好まし は10℃~50℃)程度の処理温度を採用すること できる。容器内容物を室温よりもやや高い 度域に加熱することにより、処理効率の向 、カーボンナノチューブの損傷軽減などの 果が実現され得る。この場合には、内容物 例えば30℃~60℃(好ましくは30℃~50℃)程度に 温して高速攪拌処理を行うとよい。また、 拌時間のうち一部の期間に内容物を加温し もよい。

 上記攪拌処理は、攪拌容器の内圧が大気圧( 典型的には凡そ1×10 5 Pa)又は大気圧よりも加圧状態にある条件下で 好ましく実施することができる。例えば、該 容器の内圧を大気圧~2×10 5 Pa(約2気圧)程度、好ましくは大気圧~1.5×10 5 Pa程度、又は大気圧~1.2×10 5 Pa程度とすることができる。容器内を加圧状 として攪拌処理を行うことによって該処理 効率及び効果を向上させることができる。 拌時間のうち一部の期間に容器内を加圧状 にしてもよい。また、攪拌処理によって液 媒体中の溶媒の蒸発が促進されるため、容 を密閉して上記攪拌処理を行うことにより 上記溶媒の蒸気圧を利用して容器内を加圧 態にすることができる。また、容器を密閉 態として加熱(例えば30℃~60℃、好ましくは3 0℃~50℃程度に加熱)することにより、液状媒 を構成する溶媒の蒸気圧を上昇させて容器 内圧を高めることもできる。

 ここに開示される分散液の製造方法では、 のような攪拌処理により得られた結果物に し、さらに超音波処理を行う。攪拌処理後 容器内容物をそのまま(特に組成を変更する こともなく)超音波処理に供してもよく、該 容物に任意の成分(液状媒体を構成する溶媒 同一の又は異なる溶媒、各種添加剤等)を加 えてから超音波処理に供してもよい。攪拌処 理後に使用した容器を引き続き超音波処理に 使用してもよく、攪拌処理後の容器内容物を 別の容器に移して超音波処理を行ってもよい 。
 かかる超音波処理に使用する超音波として 、例えば、周波数20kHz~40kHz程度の超音波を ましく採用することができる。かかる周波 の超音波振動を発生し得る超音波装置を用 て、例えば出力80W~200W程度の条件で処理する とよい。出力が低すぎると処理効率が低下傾 向となることがあり、出力が高すぎるとカー ボンナノチューブの損傷が生じ易くなること がある。使用する超音波装置の種類(超音波 発生方式や装置の構成等)は特に限定されず 目的及び態様などに応じて、適当なものを 択することができる。

 超音波処理を行う時間は、先行する攪拌 理の程度や超音波処理条件(例えば周波数) を考慮して、所望の分散状態が実現される うに適宜設定することができる。例えば、 処理時間を1分~2時間程度とすることができ 通常は3分~1時間程度(より好ましくは5分~30分 程度)とすることが好ましい。超音波処理時 が短すぎると分散性を向上させる効果がや 低くなることがあり、該処理時間が長すぎ と、カーボンナノチューブの損傷が生じ易 なることがある。

 上記分散処理における攪拌処理を行う程 は、容器内容物(典型的には、液状媒体及び カーボンナノチューブ)の分量や該内容物に けるカーボンナノチューブの濃度、目標と る分散状態等を考慮して適宜設定すること できる。例えば、1μm以上の長さを保ちつつ 径1μm未満(典型的には0.1μm以上1μm未満)に解 されたカーボンナノチューブ若しくはカーボ ンナノチューブバンドルが液状媒体に分散し た態様の分散液が形成されるように実施する とよい。このような分散液が得られるように 、攪拌処理を行う条件(攪拌時間、回転数、 器の内圧、温度等)設定するとよい。例えば 好ましい攪拌処理条件の一例として10,000rpm 上(例えば凡そ20,000rpm)の回転数で30秒~5分間( 例えば凡そ1分間)回転させることが挙げられ 。この条件で攪拌処理すれば、例えば2μm以 上20μm以下、かつ直径0.1μm以上0.5μm以下とな ようにカーボンナノチューブが束となった ーボンナノチューブバンドルが分散した分 液を得られる。

 また、上記攪拌処理の結果物に対して超音 処理を行う程度は、例えば、1μm以上の長さ を保ちつつ直径0.1μm未満(典型的には、原料 用いたカーボンナノチューブ凝集体に含ま る単一のカーボンナノチューブの直径以上0. 1μm未満)に解されたカーボンナノチューブバ ドル(単一のカーボンナノチューブであって もよい。)が液状媒体に分散した態様の分散 が形成されるように実施するとよい。この うな分散液が得られるように、超音波処理 行う条件(処理時間、周波数、出力等)を設定 するとよい。例えば、投げ込み式超音波装置 を用いた場合には、好ましい超音波処理条件 の一例として、上記分散液(すなわち攪拌処 の結果物)に20kHz~30kHz(例えば20kHz)、100W~150W(例 えば120W)の超音波振動を5分~30分(例えば15分) 程度与えることが挙げられる。このような 散処理によって、長さ1μm以上であり直径が0 .1μm未満のカーボンナノチューブバンドルが 状媒体中に均一に分散した分散液が得られ 。
 なお、かかる分散液を原料として、例えば 分散液に他の成分を添加混合することによ て、上記液状媒体とは異なる分散媒にカー ンナノチューブ(典型的には長さ1μm以上か 直径1μm未満のカーボンナノチューブバンド )が分散したカーボンナノチューブ分散体を 製造することができる。例えば、各種高分子 材料又はその前駆体(例えば熱硬化性樹脂の レポリマー)を添加することでカーボンナノ ューブ含有ペーストを調製することができ 。さらに該ペースト中に含まれる揮発成分( 液状媒体を構成する溶剤)を除去した後、上 プレポリマーを硬化させることにより、熱 化性樹脂にカーボンナノチューブが分散し カーボンナノチューブ分散体を得ることが きる。

 上記製造方法により製造されたカーボンナ チューブ分散液(該分散液に高分子材料又は その前駆体を含んだカーボンナノチューブ含 有ペーストを含む)を、基材に付与(塗布)する ことにより、カーボンナノチューブ膜(膜状 カーボンナノチューブ分散体)を好適に形成 ることができる。かかるカーボンナノチュ ブ分散液を基材に塗布する方法は特に限定 れず、ディップコート法、スピンコート法 キャスト法、バーコーター法、滴下法、ス レー法、スクリーン法等の従来公知の方法 好ましく用いることができる。
 また、かかる膜が付与される基材の種類は に限定されず、例えば、ガラス、Si単結晶 多孔質カーボン等の無機材料、PETフィルム の高分子材料等を好ましく採用することが きる。また、上記基材の形状は特に限定さ ず、平板状、円筒状等、目的に応じて採用 れ得る基材表面に上記分散液を塗布するこ ができる。例えば、PETフィルムの両面にデ ップコート法で上記カーボンナノチューブ を形成する一つの好ましい実験例は以下の りである。すなわち、500mLの2-プロパノール 40mgのポリビニルブチラール樹脂と50mgのカ ボンナノチューブとを混合したカーボンナ チューブ分散液を調製し、該分散液に上記 ィルムを浸漬する。浸漬後引上げ速度4mm/秒 引き上げる。このようにして上記フィルム 両面に単分子膜レベルの均一な超薄膜を形 することができる。
 また、例えば金属膜や絶縁膜等の薄膜層が 成された基材表面にさらに上記分散液を塗 してカーボンナノチューブ膜を形成しても い。或いは、基材表面に上記分散液を塗布 てカーボンナノチューブ膜を形成し、その に別の基材を重ねることで、基材と基材の にカーボンナノチューブ層を形成すること できる。本発明によって、このような特徴 備える膜エレメントを製造することができ 。

 ここに開示されるカーボンナノチューブ 散液を用いて基材上にカーボンナノチュー 膜を形成する処理を行うことにより、上記 散液が低粘性で基材との接着性が高いため 基材に対して均一に(すなわち均一な膜厚で )形成され、かつ定着性に優れるカーボンナ チューブ膜を備える膜エレメントを製造す ことができる。透明な液状媒体にカーボン ノチューブを分散した(例えば100mLのアルコ ル系溶媒に対して1mg~40mg程度の)分散液を用 ることにより、例えば適当な基材を当該分 液に浸漬するディップコート法によって透 なカーボンナノチューブ膜を形成し得る。 らに、該膜は、そのカーボンナノチューブ 導電性(金属性)或いは半導体性により導電膜 或いは半導体膜として機能する。すなわち、 該カーボンナノチューブ膜は、上記基材上に 導電性或いは半導体性の機能を付与すること ができる。したがって、このようにして得ら れるカーボンナノチューブ膜は静電(帯電)防 膜や保護膜として利用されるとともに、該 を備える膜エレメントは、半導体素子材料 燃料電池用電極材料若しくはガス吸蔵材料 して利用され得る。

 以下、本発明に関する具体的な実施例を 明するが、本発明を係る実施例に示すもの 限定することを意図したものではない。

  <実験例1>
 図1に示す手順により、カーボンナノチュー ブ分散液を製造した。まず、原料として種々 の方法(例えばアーク放電法)によりカーボン ノチューブ凝集体を用意した(ステップS1)。 本実験例では、カーボンナノチューブ凝集体 は以下のようにして用意した。
 すなわち、鉄(0.5mol%~5mol%)を含むグラファイ からなる一対のスティック状の電極(陽極及 び陰極)を用意し、0.5mm~5mm程度の間隔をあけ 反応容器内に対向配置した。上記反応容器 を水素ガス(H 2 )分圧1.3×10 4 Pa、不活性ガス、ここではアルゴンガス(Ar)分 圧1.3×10 4 Pa程度の雰囲気に調整した。そして、上記一 の電極間に接続された直流電源により20V~40V 程度の電圧を印加し、該電源から30A~70A程度 電流を供給して両電極間にアーク放電を発 させた。かかるアーク放電により陽極から ーボンを蒸発させ、単層カーボンナノチュ ブを含む蜘蛛の巣状の生成物を得た。該生 物に含まれる単層カーボンナノチューブの 合は70mol%以上であった。この生成物に対し 670K~720Kの温度で25分~35分間程度の加熱処理を 行って、生成物中の不純物炭素(アモルファ 状態の炭素等)をガス(CO又はCO 2 等)として除去するとともに、触媒(ここでは 粒子)を酸化した。さらに、上記加熱処理後 の生成物を塩酸等の酸で処理することにより 、上記酸化された触媒を溶出除去した。この ようにしてカーボンナノチューブ凝集体を得 た。

 次に、液状媒体を用意した(ステップS2)。本 実験例では、液状媒体を以下のようにして用 意した。
 すなわち、アルコール系溶媒として、市販 無水エタノール(純度99.9%)を使用した。ポリ ビニルアセタール樹脂として、積水化学工業 株式会社製品のポリビニルブチラール樹脂、 商品名「S-LEC B」シリーズ「BL-10」(計算分子 ;約1.5×10 4 、水酸基;約28mol%、ブチラール化度;71±3mol%、 液粘度;9~15mPa・s)を使用した。上記エタノー ル100mLに対して、上記ポリビニルブチラール 脂を1.0mg溶解させて液状媒体を得た。

 次に、カーボンナノチューブ凝集体と液状 体とをともに容器に入れて、分散処理のう 攪拌処理を実施した(ステップS3)。本実験例 では、以下のようにして該攪拌処理を実施し た。
 分散処理攪拌処理用の攪拌装置としては、 谷産業株式会社製品、商品名「ミルサー 80 DG」を使用した。この攪拌装置の容器(容量200 mL)に、室温(約23℃)にて、1.0mgの上記ポリビニ ルブチラール樹脂を含む上記液状媒体100mL、 びカーボンナノチューブ凝集体1mgを入れた 大気圧下で該容器の蓋を閉めて容器内を密 し、これを上記攪拌装置にセットして20,000r pmで1分間運転することにより内容物を高速で 攪拌した。攪拌終了時における容器内の圧力 は1.1気圧(約1.1×10 5 Pa)に上昇しており、内容物の温度は約45℃に 昇していた。

 次いで、上記分散処理のうち超音波処理を 施した(ステップS4)。本実験例では、以下の ようにして該超音波処理を実施した。
 上記攪拌処理の後、上記容器の蓋を開けて 容物を別容器に移した。これに投げ込み式 音波装置(BRANSON社製品、商品名「ソニファ ヤー S-450」を使用した。)のホーンを浸漬し 、該装置を周波数20kHz、出力120Wで15分間運転 た。このようにして、液状媒体(ここではエ タノール)にカーボンナノチューブが分散し 分散液を得た。得られた分散液の走査型プ ーブ顕微鏡(SPM)写真を図2に示す。この写真 ら明らかなように、分散しているカーボン ノチューブはその大半が1μm以上の長さを保 ており(すなわち過度に断片化することなく )、直径が0.1μmを超えるような凝集体は認め れなかった。このように、本実験例により 造されたカーボンナノチューブ分散液は、 ーボンナノチューブ本来の性質を発揮する に適した性状のカーボンナノチューブが極 て高度に分散されたものであることが確認 れた。

 また、上記の得られた分散液を静置した 静置後2週間経過した状態における上記分散 液の光学写真を図3に示す。この写真から明 かなように、2週間静置しても、カーボンナ チューブ凝集体が沈降することなく、良好 分散状態が維持されていることが確認され 。

 <実験例2>
 次に、ポリビニルブチラール樹脂を含まな 液状媒体(すなわち、エタノールのみ)を用 した。それ以外は実験例1と全く同様にして ーボンナノチューブ分散液を製造した。こ 結果、得られた分散液では、カーボンナノ ューブ凝集体は一旦分散するものの、直ち 沈降して分散状態を維持できなかった。こ 分散液のSPM写真を図4、光学写真を図5に示 。

 <実験例3>
 次に、液状媒体におけるアルコール系溶媒 して、エタノールを市販の無水メタノール( 純度99.9%)に変更した。それ以外は実験例1と く同様にしてカーボンナノチューブ分散液 製造した。得られた分散液を静置した。静 後2週間経過した状態における上記分散液の 学写真を図6に示す。この写真から明らかな ように、2週間静置しても、カーボンナノチ ーブ凝集体が沈降することなく、良好な分 状態が維持されていることが確認された。

 <実験例4>
 次に、液状媒体におけるアルコール系溶媒 して、エタノールを市販の2-プロパノール( 度99.9%)に変更した。それ以外は実験例1と全 く同様にしてカーボンナノチューブ分散液を 製造した。得られた分散液を静置した。静置 後2週間経過した状態における上記分散液の 学写真を図7に示す。この写真から明らかな うに、2週間静置しても、カーボンナノチュ ーブ凝集体が沈降することなく、良好な分散 状態が維持されていることが確認された。

 <実験例5>
 次に、液状媒体におけるアルコール系溶媒 して、上記2-プロパノール(純度99.9%)を使用 た。また、実験例1と同様にして得られたカ ーボンナノチューブ凝集体と、実験例1と同 のポリビニルブチラール樹脂とを100mLの2-プ パノールに対して、以下の(1)~(3)に示す3種 の配合比[mg]で混合した。
 (1)カーボンナノチューブ:ポリビニルブチラ ール樹脂=30:30
 (2)カーボンナノチューブ:ポリビニルブチラ ール樹脂=40:40
 (3)カーボンナノチューブ:ポリビニルブチラ ール樹脂=40:80
 これら(1)~(3)の配合比で混合された各試料の 全てに対して実験例1と同様の分散処理を実 して、得られた分散液の分散性を確認した
 その結果、配合比(1)及び配合比(3)の分散液 は、カーボンナノチューブが均一に分散し いた。また、これらを2週間静置しても良好 な分散状態が維持されることが確認された。 一方、配合比(2)の分散液では、分散処理直後 においてカーボンナノチューブは均一に分散 していたが、1日(24時間)以内に上記カーボン ノチューブは凝集して沈降し、分散状態を 持できなかった。