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Title:
CELLULOSE DERIVATIVE AND PHOTOELECTRIC CONVERSION MEMBRANE CONTAINING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/140048
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a substance having a chemical structure useful for a novel photoelectric converter, preferably a substance having a photoelectric efficiency equal to or greater than that of conventional photoelectric conversion system using an organic pigment. A cellulose derivative into which an organic group (Q) having a chemical structure capable of generating a photoelectric current by absorbing visible light has been introduced, wherein an adjacent organic group (Q) has been introduced at a substitution position spaced apart at a fixed distance in a cellulose skeleton. Preferably, further a long-chain alkyl group has been introduced at a substitution position different from the substitution position of the organic group (Q) in the cellulose skeleton. More preferably, the organic group (Q) has been introduced via an ester bond or an ether bond into at least a portion of carbon atoms at the 6-position of the pyranose rings of the cellulose, and the long-chain alkyl group has been introduced via an ester bond or an ether bond into at least a portion of carbon atoms at the 2- and 3-positions of the pyranose rings of the cellulose.

Inventors:
NAKATSUBO FUMIAKI (JP)
SAKAKIBARA KEITA (JP)
OGAWA YASUHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/058651
Publication Date:
November 20, 2008
Filing Date:
May 09, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYOTO (JP)
NAKATSUBO FUMIAKI (JP)
SAKAKIBARA KEITA (JP)
OGAWA YASUHIRO (JP)
International Classes:
C08B3/14; C08B15/06; H01L51/42
Foreign References:
JP2004022424A2004-01-22
JPS60250678A1985-12-11
Other References:
NAKATSUBO F.: "Koden Henkan Kino Cellulose Hakumaku - Cellulose no Yakuwari Buntangata Kinoka -", CELLULOSE COMMUN., vol. 14, no. 4, 30 November 2007 (2007-11-30), pages 149 - 153
SAKAKIBARA K. ET AL.: "First Cellulose..... Generation Systems", MACROMOLECULAR RAPID COMMUNICATIONS, vol. 28, no. 11, 1 June 2007 (2007-06-01), pages 1270 - 1275
KROUIT M. ET AL.: "New photoantimicrobial films..... cellulose esters", BIOORGANIC & MEDICINAL CHEMISTRY LETTERS, vol. 16, no. 6, 2006, pages 1651 - 1655, XP025107067
REDL F.X. ET AL.: "Chemistry of Porphyrin..... Spectro-electrochemistry", CHEM. EUR. J., vol. 7, no. 24, 2001, pages 5350 - 5358
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome, Chuo-ku, Osaka-sh, Osaka 44, JP)
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Claims:
 可視光を吸収して光電流を発生し得る化学構造をもつ有機基(Q)が導入されたセルロース誘導体であって、
 隣接する有機基(Q)がセルロース骨格中の一定間隔離れた置換位置に導入されている、セルロース誘導体。
 セルロース骨格中の有機基(Q)の置換位置とは異なる置換位置に長鎖アルキル基がさらに導入されている、請求項1記載のセルロース誘導体。
 有機基(Q)はセルロースのピラノース環の6位の炭素原子の少なくとも一部にエステル結合またはエーテル結合を介して導入され、
 長鎖アルキル基はセルロースのピラノース環の2位および3位の炭素原子の少なくとも一部にエステル結合またはエーテル結合を介して導入されている、請求項2記載のセルロース誘導体。
 単位グルコース当たりの、有機基(Q)の平均置換度(DS)が0.1~1.0である請求項1~3のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
 有機基(Q)がポルフィリン環を有する請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
 ポルフィリン環の中心に金属原子が配位していないか、或いは、パラジウムが配位している請求項1~4のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
 単位グルコース当たりの、長鎖アルキル基の平均置換度(DS)が1.0~2.0である請求項2~6のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
 長鎖アルキル基が炭素数6~20のアルキル基である請求項2~7のいずれか1項に記載のセルロース誘導体。
 請求項1~8のいずれか1項に記載のセルロース誘導体を含有する光電変換膜。
 セルロース誘導体からなるラングミュア-ブロジェット膜である、請求項9記載の光電変換膜。
 請求項1~8のいずれか1項に記載のセルロース誘導体とフラーレンとを含有する光電変換膜。
 セルロース誘導体とフラーレンの混合物からなるラングミュア-ブロジェット膜(LB膜)である、請求項11記載の光電変換膜。
 セルロース誘導体とフラーレンの混合物からなるラングミュア-ブロジェット膜(LB膜)の多重累積膜である、請求項11記載の光電変換膜。
 セルロース誘導体とフラーレンの含有量比が1:0.5~3である、請求項12又は13記載の光電変換膜。
Description:
セルロース誘導体およびそれを 有する光電変換膜

 本発明は、セルロース誘導体およびそれ 含有する光電変換膜に関する。

 ポルフィリンなどといった有機色素の多く π共役系の分子構造をもつことから、吸光 より励起電子を生成することができ、光電 換素子用の材料として期待される。そうい た有機色素のもつ光電効果を素子として実 化するための分子設計が行われており、例 ば、非特許文献1では、ポリアクリル酸骨格 カルボキシル基に所定量のビピリジンルテ ウム錯体が配位してなるポリアクリル酸誘 体が開示されている。また、非特許文献2で は、ITO基板にシロキサン層を介してポルフィ リン環をもつ官能基が導入されてなる光電変 換システムが開示されている。
Tatsuo Taniguchi, Yoshihito Fukasawa, and Tokuji Miyashita, “Photoelectro-chemical Response of Polymer  Langmuir-Blodgett Films Containing Tris(2,2’-bipyridi ne)ruthenium(II) Complex”, J. Phys. Chem. B, 1999,  103, 1920-1924. Hiroshi Imahori, Kohei Hosomizu, Yukie Mori, Tom oo Sato, TaeKyu Ahn, Seong Keun Kim, Dongho Kim, Yo shinobu Nishimura, Iwao Yamazaki, Hirotake Ishii, Hiro ki Hotta, and Yoshihiro Matano, “Substituent Effects  of Porphyrin Monolayers on the Structure and Photoe lectrochemical Properties of Self-Assembled Monolayers  of Porphyrin on Indium-Tin Oxide Electrode”, J. Phy s. Chem. B, 2004, 108, 5018-5025. Juan A. Camacho Gomez, Ulrich W. Erler, Dieter O. Klemm, “4-Methoxy Substituted Trityl Groups in  6-O Protection of Cellulose: Homogeneous Synthesis, Ch aracterization, Detritylation”, Macromol. Chem. Phys. 1996, 197, 953-964. Jonathan S. Lindsey, Jeffrey N. Woodford, “A  Simple Method for Preparing Magnesium Porphyrins”, I norg. Chem. 1995, 34, 1063-1069. Ines Scalise, Edgardo N. Durantini, “Photodynam ic Effect of Metallo 5-(4-Carboxyphenyl)-10,15,20-tris(4 -methylphenyl) Porphyrins in Biomimetic AOT Reverse Mi celles Containing Urea”, J. Photochem. Photobiol. A,  2004, 162, 105-113.

 しかし、上記の光電変換システムでは、 電変換効率が特段に高いとはいい難く、変 効率のさらなる向上が期待される。また、 電変換素子の設計における材料の選択肢を やすためには、上記とは別の化学構造をも 光電変換能をもつ物質の開拓も望まれる。

 上記に鑑みて、本発明の目的は、新規な 電変換素子のために有用な化学構造をもつ 質の提供であり、好ましくは有機色素を用 る従来の光電変換系と同等かそれ以上の光 効率を有する物質の提供である。

 上記目的を達成するための本発明は次のと りである。
(1)可視光を吸収して光電流を発生し得る化学 構造をもつ有機基(Q)が導入されたセルロース 誘導体であって、
 隣接する有機基(Q)がセルロース骨格中の一 間隔離れた置換位置に導入されている、セ ロース誘導体。
(2)セルロース骨格中の有機基(Q)の置換位置と は異なる置換位置に長鎖アルキル基がさらに 導入されている、上記(1)記載のセルロース誘 導体。
(3)有機基(Q)はセルロースのピラノース環の6 の炭素原子の少なくとも一部にエステル結 またはエーテル結合を介して導入され、
 長鎖アルキル基はセルロースのピラノース の2位および3位の炭素原子の少なくとも一 にエステル結合またはエーテル結合を介し 導入されている、上記(2)記載のセルロース 導体。
(4)単位グルコース当たりの、有機基(Q)の平均 置換度(DS)が0.1~1.0である上記(1)~(3)のいずれか に記載のセルロース誘導体。
(5)有機基(Q)がポルフィリン環を有する上記(1) ~(4)のいずれかに記載のセルロース誘導体。
(6)ポルフィリン環の中心に金属原子が配位し ていないか、或いは、パラジウムが配位して いる上記(1)~(4)のいずれかに記載のセルロー 誘導体。
(7)単位グルコース当たりの、長鎖アルキル基 の平均置換度(DS)が1.0~2.0である上記(2)~(6)のい ずれかに記載のセルロース誘導体。
(8)長鎖アルキル基が炭素数6~20のアルキル基 ある上記(2)~(7)のいずれかに記載のセルロー 誘導体。
(9)上記(1)~(8)のいずれかに記載のセルロース 導体を含有する光電変換膜。
(10)セルロース誘導体からなるラングミュア- ロジェット膜である、上記(9)記載の光電変 膜。
(11)上記(1)~(8)のいずれかに記載のセルロース 導体とフラーレンとを含有する光電変換膜
(12)セルロース誘導体とフラーレンの混合物 らなるラングミュア-ブロジェット膜(LB膜)で ある、上記(11)記載の光電変換膜。
(13)セルロース誘導体とフラーレンの混合物 らなるラングミュア-ブロジェット膜(LB膜)の 多重累積膜である、上記(11)記載の光電変換 。
(14)セルロース誘導体とフラーレンの含有量 が1:0.5~3である、上記(12)又は(13)記載の光電 換膜。

 本発明によれば、セルロース骨格中に有 基(Q)が位置選択的に導入されて、隣接する 機基(Q)どうしがセルロース骨格中の一定間 離れた置換位置に存在しているので、可視 によって励起した有機基(Q)が隣接する有機 (Q)との相互作用によって直ちに緩和すると う不所望な事態(自己消光)を低減し、高い 子収率を得ることができる。この結果、光 変換効率の向上が期待される。さらに、セ ロース骨格中の有機基(Q)の置換位置(導入位 )とは異なる位置に長鎖アルキル基がさらに 導入されることで、有機基(Q)の置換位置(導 位置)がより確実に制御され、より一層の光 変換効率の向上が期待される。

本発明のセルロース誘導体での有機基( Q)(ポルフィリン環を有する基)を与える試薬 配合量と有機基(Q)(ポルフィリン環を有する )の平均置換度(DS)の関係を示す図である。 実施例3~9の化合物の 1 H-NMRスペクトルである。 有機基(Q)(ポルフィリン環を有する基) 平均置換度(DS)に対する量子収率(φ)及び入射 単位光当たりの光電変換効率(IPCE)の関係を示 す図である。 図4(a)、4(b)は隣接するトリフェニルポ フィリンの配置構造を模式的に示した図で る。 本発明のセルロース誘導体とフラーレ の混合物によるLB多重累積膜の入射光波長 光電流密度との関係を示す図である。 本発明のセルロース誘導体とフラーレ の混合物によるLB多重累積膜の層数と光電 密度との関係を示す図である。

 本発明のセルロース誘導体におけるセル ース骨格は、グルコースがβ-1,4-グルコシド 結合で重合してなる連続構造をもち、その基 本単位は以下のピラノース環で表現すること ができる。

 ピラノース環においては、1位と4位の炭 は酸素原子を介して隣接するピラノース環 結合して連続構造を形成しており、2位と3位 の炭素原子にはそれぞれ1つずつ水酸基が結 している。5位の炭素原子にはヒドロキシメ ル基が結合していて、このヒドロキシメチ 基の炭素原子が6位である。本発明のセルロ ース誘導体では、これら2位、3位および6位の 炭素原子に、所定の置換基がエステル結合ま たはエーテル結合を介して導入される。

 グルコースの平均重合度(DP n )は特に限定はないが、好ましくは10~200であ 。前記範囲内であれば、重合度の増加は膜 強度に寄与するという利点がある。

 可視光を吸収して光電流を発生し得る化 構造をもつ有機基(Q)としては、典型的には 環状の共役不飽和環構造をもつ有機基、特 、有機色素として用いられる化合物がもつ 構造を有する有機基などが挙げられる。好 しくは、有機基(Q)は、ポルフィリン環、フ ロシアニン環、ルテニウム・ビピリジル錯 または多環芳香族炭化水素を有し、より好 しくはポルフィリン環を有する。ここで、 ルフィリン環の中心には、金属原子が配位 ていてもよいし、配位していなくてもよい ポルフィリン環の中心に金属原子が配位す 場合、そのような金属原子としては、マグ シウム(Mg)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)、パラジウム(Pd) 等が挙げられ、中でも、パラジウム(Pd)が好 しい。特に好ましい有機基(Q)としては、p-(10 ,15,20-トリフェニル-5-ポルフィリニル)-ベンゾ イル基または当該基のポルフィリン環の中心 に金属原子が配位したものが挙げられる。な お、後述するように、本発明のセルロース誘 導体はフラーレンと混合してラングミュア- ロジェット膜(LB膜)を形成し得、そのLB膜は れた光電変換特性を示す。かかるセルロー 誘導体とフラーレンの混合物からなるLB膜に おいては、セルロース誘導体における有機基 (Q)はその中心に金属原子が配位していないポ ルフィリン環を有する有機基であるのが好ま しい。

 本発明のセルロース誘導体において、有 基(Q)は、エステル結合またはエーテル結合 介して、例えば、ピラノース環の6位の炭素 原子と結合する。すなわち、セルロース骨格 中の一定間隔離れた置換位置に、位置選択的 に有機基(Q)が導入される。よって、互いに隣 接する有機基(Q)どうしが一定間隔の距離をも って存在しているので、可視光によって励起 した有機基(Q)が励起電子を発生することなく 隣接する有機基(Q)によって緩和されるという 不所望な事態を低減することができる。この 結果、光電変換効率の向上が期待される。本 発明では、セルロースを基本骨格として用い ており、このピラノース環の6位の炭素原子 有機基(Q)を導入することにより、隣接する 機基(Q)どうしが適切な距離を保つことがで るのである。

 単位グルコース当たりの、有機基(Q)の平 置換度(DS)は、好ましくは0.1~1.0であり、入 単位光当たりの光電変換効率(Incident Photon-to -current Conversion Efficiency)の観点からは0.55~1.0 より好ましい。一方、量子効率の観点から 、0.1~0.5がより好ましく、とりわけ好ましく は0.4である。平均置換度(DS)は、セルロース 導体全体としてみたときの、グルコース単 (ピラノース環)1モルに対して導入されてい 有機基(Q)の量(モル)を表す。平均置換度(DS) 元素分析によってセルロース誘導体の組成 を決定することによって求めることができ 。

 有機基(Q)の平均置換度(DS)が大きいほど励 起電子を多く発生させることができるという 利点がある一方、平均置換度(DS)が小さけれ 有機基(Q)の存在が疎であるから隣接する有 基(Q)どうしの緩和を低減できるという利点 ある。有機基(Q)の平均置換度(DS)が上述した 囲内であれば前記利点を両立しやすくなる 有機基(Q)の平均置換度(DS)は、本発明のセル ロース誘導体の製造の際に用いる、有機基(Q) を導入するための化合物の量を調節したり、 長鎖アルキル基の大きさや長さとその量を調 節することによって調整することができる。

 長鎖アルキル基は、立体障害を与えたり 要に応じて脂溶性を付与することができ、 鎖アルキルの鎖長は特に限定はなく、立体 害や脂溶性付与を確実にする観点からは、 ましくは炭素数6以上であり、より好ましく は10以上であり、さらに好ましくは14以上で る。製造や取扱いの容易性、過度な立体障 の回避、成膜性、試薬の価格の観点から、 鎖アルキル基は、好ましくは炭素数24以下で あり、より好ましくは20以下である。最も好 しい長鎖アルキル基の炭素数は14である。 お、長鎖アルキル基は直鎖であってもよい 、枝分かれしていてもよい。

 長鎖アルキル基は、エステル結合または ーテル結合を介して、例えばピラノース環 2位および3位の炭素原子と結合する。位置 択的に長鎖アルキル基を導入することで、 接する有機基(Q)どうしの距離をより確実に 御することができる。この観点からは、本 は6位の炭素原子に導入されるべき有機基(Q) 2位や3位の炭素原子に不所望に導入される とをできるだけ避けるために、長鎖アルキ 基はピラノース環の2位および3位の全ての酸 素原子に導入されていることが特に好ましく 、この場合には、単位グルコース当たりの、 長鎖アルキル基の平均置換度(DS)は2である。 だし必ずしも全ての2位および3位の酸素原 に長鎖アルキル基が導入される必要はなく 長鎖アルキル基の平均置換度(DS)は、好まし は1.0~2.0であり、より好ましくは1.6~2.0であ 。

 本発明のセルロース誘導体の製造方法は特 限定されるものではなく、以下の例示を参 して適宜改変してよい。
 ここで例示する製法では、セルロースの6位 の炭素原子に結合した水酸基を保護基で保護 した出発物質(公知物質)に対して、2位および 3位の炭素原子に結合する水酸基をアシル化 ることによって長鎖アルキル基を導入し、 いで、前記保護基を除去し、しかる後に、6 の炭素原子に結合した水酸基をアシル化す ことによって有機基(Q)を導入する。

 出発物質である、[6-O-(p-メトキシトリチ )セルロース]は、Juan A. Camacho Gomez, Ulrich W . Erler, Dieter O. Klemm: Macromol. Chem. Phys. 1996 , 197, 953-964.(非特許文献3)において構造およ 製法が公知である。この出発物質は、セル ースの6位の炭素原子に結合した酸素原子に 保護基(p-メトキシトリチル基)が結合してい 。

 例えば、この出発物質における2位および 3位の炭素原子に結合した水酸基をアシル化 ることにより、エステル結合を介して長鎖 ルキル基を導入することができる。アシル の方法は特に限定はなく、例えば、カルボ 酸塩化物等のアシル化剤を作用させるなど 公知の方法を採ることができる。非限定的 例としては、ジメチルアセトアミド中で塩 の存在下、出発物質およびアシル化剤を加 、混合することが挙げられる。このとき、 望のアルキル基をもつアシル化剤を選択す ことによって、最終的に得られるセルロー 誘導体に導入される長鎖アルキル基の構造 コントロールすることができる。

 次に、保護基であるp-メトキシトリチル を外すことによって、[2,3-ジ-O-アシルセルロ ース]を得る。このときも一般的な脱保護の 法を適宜取り入れることができ、非限定的 例として、THF中で酸の存在下、加熱還流す ことが挙げられる。

 次に、有機基(Q)の導入は脱保護により生 した、セルロースのヒドロキシメチルにお る水酸基を有機基(Q)を有するアシル化剤で シル化することによって目的のセルロース 導体を得ることができる。このときのアシ 化剤としては、導入すべき有機基(Q)の末端 カルボキシル基を有する化合物などが挙げ れる。ここで、アシル化の方法は特に限定 れず公知の方法を採用すればよく、非限定 な例として、1,3-ジシクロヘキシルカルボジ イミド中で塩基の存在下、[2,3-ジ-O-アシルセ ロース]と有機基(Q)を有するアシル化剤とを 攪拌することが挙げられる。

 本発明のセルロース誘導体について上記 た製造法は限定的なものではなく、反応条 や試剤等を適宜、改良してもよく、また、 鎖アルキル基や有機基(Q)を導入する際にア ル化に代えて、アルキル化をおこなっても い。アルキル化を行った場合には、セルロ スの特定の位置の酸素原子との間でエーテ 結合が形成される。また、有機基(Q)として その中心に金属原子が配位したポルフィリ 環(メタル化ポルフィリン環)を有する基を 入する場合、金属原子が未配位のポルフィ ン環を有する基を上述の方法でセルロース 導入後、公知の方法でポルフィリン環のメ ル化を行なえばよい。例えば、Jonathan S. Lin dsey, Jeffrey N. Woodford : Inorg. Chem. 1995, 34,  1063-1069.(非特許文献4)において、マグネシウ (II)ポルフィリンの合成方法は公知であり、 該方法に適宜修正を加えることでセルロー 誘導体中の金属原子が未配位のポルフィリ 環に種々の金属原子を導入することが可能 ある。

 反応後に得られる本発明のセルロース誘 体はTHFに溶解しさらにメタノールを加えて 澱させることによって洗浄することができ さらに、GPCなどによって精製することがで る。また、ポルフィリン環をメタル化した ルロース誘導体はポルフィリン環のメタル 反応後にジクロロメタン中に溶解しさらに タノールを加えて沈澱させることによって 浄することができ、さらに、GPCなどによっ 精製することができる。

 上述のとおり、本発明のセルロース誘導 は、高い光電変換効率が期待されるところ 以下、そのような光電変換性を利用する態 の一つである、光電変換膜について説明す 。

 本発明の光電変換膜は、上述した本発明 セルロース誘導体を含有していればよい。 発明のセルロース誘導体は、基本骨格がセ ロースであるから、セルロースフィルムの うにフィルムの形態をとることができ、こ を光電変換膜として利用してもよい。

 好適態様として、ITOといった半導体基板 の上に形成された本発明のセルロース誘導 からなるラングミュア-ブロジェット膜(LB膜 )を挙げることができる。本発明のセルロー 誘導体は疎水性である長鎖アルキル基を多 有しているから、LB膜製造に関する従来公知 の技術を適宜援用することによって水面に集 まり、これを基板に移し取ることによってLB を形成することができる。かかるLB膜は単 子膜でも、単分子膜をラングミュア-ブロジ ット法(LB法)で積層した多層累積膜であって もよい。このようなLB膜やその他の本発明の ルロース誘導体からなる膜に、適宜、電流 り出し用の回路等を接続することにより、 の膜を光電変換膜として用いることができ 。

 なお、本発明のセルロース誘導体を用い ラングミュア-ブロジェット膜(LB膜)を形成 る際、セルロース誘導体として、その有機 (Q)がポルフィリン環を有する基からなるセ ロース誘導体を使用し、さらにフラーレン 使用することで、セルロース誘導体とフラ レンの混合物からなるLB膜を形成することが できる。このLB膜はセルロース誘導体のみか なるLB膜に比べてより高い量子効率を示す 電変換膜を実現できる。これは、フラーレ とポルフィリンがπ錯体を形成するためと考 えられる。

 このような有機基(Q)がポルフィリン環を する基からなるセルロース誘導体とフラー ンの混合物からなるLB膜を得る場合、セル ース誘導体はポルフィリン環に金属原子が 位したものでも、配位していないものでも いが、金属原子が配位していないものが好 しい。また、セルロース誘導体とフラーレ との含有比(セルロース誘導体:フラーレン) 1:0.5~3が好ましく、より好ましくは1:1~3、と わけ好ましくは1:1~2、最も好ましくは1:2であ る。なお、ここでいうが含有比とは、1つの ルフィリン単位当たりのセルロース誘導体 物質量とフラーレン分子の物質量との比率 ある。

 また、有機基(Q)がポルフィリン環を有す 基からなるセルロース誘導体とフラーレン 混合物からなるLB膜は、単分子膜でも、単 子膜をLB法で積層した多層累積膜でもよいが 、多層累積膜とすることで、より優れた光電 変換特性を示し、量子効率がさらに向上する 。かかる多層累積膜の層数は2層以上が好ま く、より好ましくは3~8層であり、特に好ま くは4~6層であり、5層が最も好ましい。

 上記のフラーレンには、フラーレンC 60 、フラーレンC 70 、フラーレンC 76 、フラーレンC 78 、フラーレンC 80 、フラーレンC 82 、フラーレンC 84 、フラーレンC 90 、フラーレンC 96 、フラーレンC 240 、フラーレンC 540 、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチ ューブ等の各種フラーレンを使用できるが、 中でも、フラーレンC 60 が好適である。

 以下の実施例は、本発明をより具体的に 明するためのものであって、いかなる意味 おいても本発明の範囲を限定するものでは い。

(合成例1)[6-O-(p-メトキシトリチル)-2,3-ジ-O-ス アロイルセルロース]の調製
 この合成例では、Juan A. Camacho Gomez, Ulrich W. Erler, Dieter O. Klemm: Macromol. Chem. Phys. 19 96, 197, 953-964.(非特許文献3)に、合成法およ 化学構造が開示されている、[6-O-(p-メトキシ トリチル)セルロース]を出発原料として用い 。この出発原料は、ピラノース環の6位の炭 素原子に結合する水酸基が保護されたセルロ ース誘導体である。
 この出発原料(500mg)を10mlのDMAc(ジメチルアセ トアミド)に溶解した。次いで、塩化ステア イル(3.49g、11.5mmol)、ピリジン(1ml、11.5mmol)、4 -(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP、0.14g、1.15mmol )を加えた。このようにして得た混合物を24時 間、60℃で撹拌した。その後、この混合物を 量のメタノールに滴下した。このとき得ら た沈殿物をろ過し、THFで溶解、さらにメタ ールで精製した。

(合成例2)[2,3-ジ-O-ステアロイルセルロース]の 調製
 この合成例では、合成例1で得たセルロース 誘導体の脱保護を行った。
 合成例1で得られた[6-O-(p-メトキシトリチル) -2,3-ジ-O-ステアロイルセルロース](700mg)を30ml THFに溶解した。この溶液に2.5mlの濃塩酸を えた。その後、反応混合物を4時間還流して ら、この混合物を大量のメタノールに滴下 た。このとき得られた沈殿物をろ過し、THF 溶解、さらにメタノールで精製した。
  1 H-NMR(CDCl 3 ): δ=0.88 (broad s, stearoyl -CH 3 ), 1.25 (broad s, stearoyl -CH 2 -), 1.51 (s, stearoyl -CO-CH 2 -CH 2 -), 1.84-2.46 (stearoyl -CO-CH 2 - and acetyl -CH 3 ), 3.52 (AGU H-5), 3.68 (AGU H-4), 4.04 (AGU H-6), 4.37 (AGU H-1 and H6), 4.80 (AGU H-2), 5.08 (AGU  H-3);  13 C-NMR (CDCl 3 , δ): 100.5 (C-1), 76.1 (C-4), 71.4-72.8 (C-2,3,5), 62.0 (C-6), 14.1 (stearoyl -CH 3 ), 20.6 (acetyl -CH 3 ), 22.6, 24.7, 29.0-29.5, 31.9, 33.8 (stearoyl -CH 2 -), 169.2, 169.6, 169.7 (acetyl -C=O), 171.8, 172.3, 172.9 (stearoyl -C=O); IR (KBr): 3450, 2920, 2851,  1751, 1468, 1415, 1379, 1159, 1117, 1074, 914, 721: 元素分析 H 10.92%, C 69.14%: 長鎖アルキル基 の平均置換度(DS)(元素分析に基いて算出) 1.56 : 数平均分子量(GPC)2.12×10 4 ;重量平均分子量(GPC)3.71×10 4 ;DP n (GPC)36.7

(実施例1)2,3-ジ-O-ステアロイル-6-O-[p-(10,15,20- リフェニル-5-ポルフィリニル)-ベンゾイル] ルロース(以下、「H 2 PCS」とも略称する)の調製
 この実施例では、合成例2で得た化合物に、 可視光を吸収して光電流を発生し得る化学構 造をもつ有機基(Q)を導入して本発明のセルロ ース誘導体を得た。
 合成例2で得た[2,3-ジ-O-ステアロイルセルロ ス](50mg)をジクロロメタン(2ml)に溶解した。 の溶液を、1,3-ジシクロヘキシルカルボジイ ミド(DCC、30mg、0.14mmol)、4-(ジメチルアミノ)ピ リジン(DMAP、18mg、0.14mmol)および5-(4-カルボキ フェニル)-10、15、20-トリフェニルポルフィ (95mg、0.14mmol)で、0℃にて攪拌して処理した この混合液を窒素雰囲気で5日間室温で攪拌 した後、この混合物を大量のメタノールに注 いだ。このとき得られた沈殿物をろ過して回 収した。この沈殿物を、THFで溶解し、メタノ ールで精製する処理を数回繰返した。その後 、ジクロロメタンを溶出溶媒とするGPC(LH-20) よって、標記セルロース誘導体を紫色の固 として得た。収量77mg(90.0%)。

  1 H-NMR(CDCl 3 ): δ=-2.80 (NH), 0.81 (broad s, stearoyl -CH 3 ), 1.19 (broad s, stearoyl -CH 2 -), 1.61 (s, stearoyl -CO-CH 2 -CH 2 -), 2.22 (broad s, stearoyl -CO-CH 2 -), 3.08-5.46 (H AGU ), 7.28-7.86 (10,15,20-aromatic-meta and para-H), 7.86- 8.26 (10,15,20-aromatic-ortho-H), 8.26-8.60 (5-aromatic-o rtho and meta-H), 8.60-8.96 (β-H);  13 C-NMR (CDCl 3 , δ): 100.8 (C-1), 72.0-75.0 (C-2,3,4), 67.6 (C-5), 62.6 (C-6), 14.1 (stearoyl -CH 3 ), 22.6, 24.7, 29.7, 31.8, 33.9 (stearoyl -CH 2 -), 118.2, 120.3, 126.5, 127.6, 130.9, 134.5, 142.0, 147.8 (porphyrin -C), 166.0 (porphyrin -C=O), 171.8, 172.2 (stearoyl -C=O); IR (KBr): 3462, 3315, 3055,  3026, 2922, 2851, 2706, 2606, 2532, 1755, 1724, 1652 , 1607, 1558, 1491, 1468, 1441, 1400, 1350, 1267, 1 222, 1213, 1177, 1153, 1115, 1072, 1032, 1020, 1001,  980, 966, 918, 878, 866, 847, 800, 754, 729, 700,  658, 642, 619, 484: 元素分析H 7.79%, C 76.56%, N 4.145%: 有機基(Q)の平均置換度(DS)(元素分析 に基いて算出) 0.64: 数平均分子量(GPC)2.73×10 4 ;重量平均分子量(GPC)5.56×10 4 ;DP n (GPC)27.7

(実施例2)H 2 PCSを用いたLB膜の製造
 実施例1で得たセルロース誘導体をクロロホ ルムに溶解し(0.05wt%)、この溶液を下層水に展 開した。このとき、比抵抗18.2ωcmの超純水(Sim pli Lab, Millipore)を下層水として用いた。サブ フェーズの温度は20℃に維持した。Wilhelmy-type の膜天秤で表面圧力を測定した。溶媒の蒸散 のために30分放置してから、一定圧縮速度(6mm /min)でπ-A等温線を測定した。LB単分子膜の製 にあたって、ITO基板上に単分子膜を形成す ために水平付着法(Langmuir-Schafer 法)を用い 。引き上げ、引き下げ速度はともに10mm/minと した。表面圧力を10mN/mに維持してLB膜を形成 た。成膜前のITO基板は、5%水性洗浄剤(Scat-20 X-N, Nakarai Tesque Inc.)で24時間、次いで、アセ トン、クロロホルム、アセトン、水の順に、 15分間ずつ超音波洗浄した。

[光電変換効果の評価] 
 以下の装置・条件により上述のLB単分子膜 光電変換効果の評価を行った。
 光源:500Wキセノンランプ(UXL-500SX, Ushio(ウシ 電機株式会社))
 紫外線および赤外線カットオフフィルター: SCF(Ushio(ウシオ電機株式会社))
 単色光干渉フィルタ:MIF-Wタイプ(波長400-500nm 、10nm fwhm, Vacuum Optics Corporation of Japan(日 真空光学株式会社))
 分析装置:電気化学分析装置(ALS650, BAS(ヒ゛ ・エー・エス株式会社))
 基板:ITO電極(GEOMATEC(シ゛オマテック株式会 ))
 電解液:0.1M硫酸ナトリウム水溶液
 犠牲剤:0.05Mヒドロキノン
 電極面積:1.54cm 2
 参照電極:飽和カロメル電極(SCE)
 対極:白金ワイヤー電極

 光源からの光をフィルタに通過させるこ で、単色光を得て、これをITO基板に形成し LB膜に照射し、LB膜から生成した光電流値を 分析装置において測定した。この測定結果か ら、下記式(1)に基づいて、量子効率(φ)を算 した。なお、「量子効率」は「量子収率」 いうこともあり、両者は同義である。

 式中、iは光電流密度、eは電荷素量、Iは 位領域と単位時間当たりの光子数、λは入 光の波長、Wは波長λ(nm)での光照射強度、hは プランク定数、cは光速度、Aは波長λ(nm)でのL B膜の吸光度である。

 実施例2のLB単分子膜の量子効率は以下のと りである。
(1)バイアス電圧をかけず、犠牲剤であるヒド ロキノンの濃度が0.05Mであり、入射光の波長 420nmである場合には、量子効率は1.6%であっ 。
(2)0.2~0.3Vのバイアス電圧をかけ、犠牲剤であ ヒドロキノンの濃度が0.05Mであり、入射光 波長が420nmである場合には、量子効率は3.8~4. 6%であった。

(比較例1)
 非特許文献1に記載の、下記の式(A)の構造式 で表される、ビピリジンルテニウム錯体で変 性されたポリアクリル酸からなるLB膜(比較例 1)の、0.2M過塩素酸ナトリウムと0.05Mのボラッ ス電解質中(pH10)の条件での量子効率は、バ アス電圧をかけず、犠牲剤であるチオサリ ル酸が0.01Mであり、入射光の波長が460nmであ る場合には、量子効率は0.8~1.1%である。

(比較例2、3)
 また、非特許文献2に記載の、下記の式(B)に より模式的に表される、ITO基板にシロキサン 層を介してポルフィリン環(但し、式中、Rは 素原子である。)をもつ官能基が導入されて なる自己集合単分子膜(SAM膜)(比較例2)の、0.1M 硫酸ナトリウム電解質中での量子効率は、0.4 V(対Ag/AgCl)のバイアス電圧をかけ、トリエタ ールアミンが0.05Mであり、入射光の波長が423 nmである場合には、2.2±0.6%である。

 また、上記式(B)において、式中、Rがt-ブ ル基であるSAM膜(比較例3)の、0.1M硫酸ナトリ ウム電解質中での量子効率は、0.4Vの(対Ag/AgCl )のバイアス電圧をかけ、トリエタノールア ンが0.05Mであり、入射光の波長が423nmである 合には、3.4±0.6%である。

 以上、実施例1、2と比較例1~3の対比から 本発明のセルロース誘導体は、従来公知の 電変換膜よりも優れた光電変換効率(特に量 効率)を達成し得ることが分かる。

(実施例3~9)
 実施例1では2,3-ジ-O-ステアロイルセルロー の遊離水酸基に対し2.0当量の5-(4-カルボキシ フェニル)-10、15、20-トリフェニルポルフィン を加えて、H 2 PCSを合成したが、ここでは、試薬(5-(4-カルボ キシフェニル)-10、15、20-トリフェニルポルフ ィン)の配合量を種々変更してH 2 PCSの合成を行った。試薬量と有機基(Q)(ポル ィリン環を有する基)の平均置換度(DS)の関係 を下記表1と図1に示す。なお、試薬量は1つの 無水グルコース単位(AGU)当たりの量(mol)であ 。

 図1に示されるように、ポルフィリン環を有 する基の平均置換度(DS)が0.38までは試薬量と 均置換度(DS)の間に良好な比例関係が得られ 、それ以降はその直線上に沿わなくなること がわかった。これは平均置換度(DS)が0.4付近 達するとトリフェニルポルフィニル基ある はステアロイル基の立体障害が作用し、反 が進行しづらくなると考えられる。
 これら実施例3~9の化合物の 1 H-NMRスペクトルが図2である。

 次に、かかる実施例3~9で得られた各H 2 PCSについて、クロロホルム溶液(0.05wt%)を調製 し、その溶液を下層水に展開した以外は、実 施例2と同様にして、LB膜を製造した(実施例10 ~16)。
 得られたLB単分子膜のそれぞれについて、 述の光電変換効果の評価方法により、バイ ス電圧:0V、ヒドロキノンの濃度:0.05M、入射 波長:420nmの条件での、量子収率(φ)と入射単 光当たりの光電変換効率(IPCE)を求めた。な 、入射単位光当たりの光電変換効率(IPCE)は 記式(2)に基づいて算出した。

 式中、符号i、W、λは前記と同義である。

 その結果を図3に示す。図3は有機基(Q)(ポ フィリン環を有する基)の平均置換度(DS)に する量子収率(φ)及び入射単位光当たりの光 変換効率(IPCE)の関係を示す。図中、黒丸の ロットが量子効率(φ)、黒三角のプロットが 入射単位光当たりの光電変換効率(IPCE)である 。

 図3から分かるように、量子効率(φ)は平 置換度(DS)が0.38まではほぼ一定であったが(2. 3~2.5%)、平均置換度(DS)がそれより大きくなる 量子効率(φ)は減少した。おそらく平均置換 度(DS)が約0.4から励起ポルフィリンの自己消 が発生し始めたためと考えられる(平均置換 (DS)が約0.4のときに最大の量子効率(φ)を示 た)。なお、入射単位光当たりの光電変換効 (IPCE)は平均置換度(DS)の増加と共に増大し、 DS=0.64のときに0.16%と最も高かった。

 量子効率の置換度依存についてポルフィリ 間距離(d)から考察する。
 トリフェニルポルフィリン(TPP)およびフェ ル基が結合していないポルフィリンの直径 文献値よりそれぞれ1.83nmと1.05nmである。従 て、ポルフィリンが重なり合わないために 、図4(a)に示されるように、少なくともポル ィリン同士が1.83nm以上離れていなければな ない。それに当てはまるのが0.1≦DS≦0.23の 囲であり、このときトリフェニルポルフィ ンは完全に孤立し、自己消光も発生しない 考えられる。
 一方、トリフェニルポルフィリンは図4(b)に 示されるように、フェニル基が入り組んだ構 造をとる可能性もある。そのときのポルフィ リン間距離は1.44nmである。これによりフェニ ル基が入り組んだ状況は誤差も含め有機基(Q) (ポルフィリン環を有する基置換度)の置換度( DS)が0.31と0.38のときであり、この領域でもUV 析によりフェニル基の会合は示唆されるが 自己消光が起こっていないと推測される。 かし、置換度(DS)が0.47以上では完全にポルフ ィリンは重なり合っており、自己消光が起こ っているため、量子効率が向上しないと考え られる。すなわち、下記表2の通りである。 中のポルフィリン間距離(d)はAGU(0.515nm)での 換度(DS)からの計算値である。

 次に、メタル化ポルフィリン環を有する 機基を導入した本発明のセルロース誘導体 それを用いたLB膜の実施例を示す。

(実施例17)ポルフィリン環の中心にマグネシ ム原子(Mg)が配位した、2,3-ジ-O-ステアロイル -6-O-[p-(10,15,20-トリフェニル-5-ポルフィリニル )-ベンゾイル]セルロース(以下、「MgPCS」とも いう。)の調製
 ポルフィリン環の中心へのマグネシウム・ オンの挿入は、LindseyとWoodford(非特許文献4) 手順を改良して行った。実施例1で得られた H 2 PCSをジメチルホルムアミド(DMF)とテトラヒド フラン(THF)の体積比1:1の混合溶媒(3mL)に溶解 したH 2 PCS溶液(17.4mg、ポルフィリン単位当たり11μmol) 中に、臭化マグネシウム(II)ジエチルエーテ (29.2mg、110μmol)及びトリエチルアミン(Et 3 N)(30μL、220μmol)を加え、遮光下に100℃で夜通 撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで 出し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液で 浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下 濃縮した。次に、ポリマーをジクロロメタ 中に溶解し、それから大量のメタノール中 投入して、沈降させ、沈降したポリマーを 集して、標記セルロース誘導体を得た。収 8.8mg(50%)

(実施例18)ポルフィリン環の中心に亜鉛原子(Z n)が配位した、2,3-ジ-O-ステアロイル-6-O-[p-(10, 15,20-トリフェニル-5-ポルフィリニル)-ベンゾ ル]セルロース(以下、「ZnPCS」ともいう。) 調製
 実施例1で得られたH 2 PCSをジクロロメタン(2mL)に溶解したH 2 PCS溶液(9.0mg、ポルフィリン単位当たり5.9μmol) 中に、酢酸亜鉛(II)(20mg、過剰)を含むメタノ ル(1mL)を添加し、遮光下で夜通し攪拌した。 こうして得られた反応混合物について、実施 例17と同様の抽出、洗浄、乾燥及び濃縮の各 作を行い、ポリマーを沈降、捕集して、ZnPC S(6.0mg、64%)を得た。

(実施例19)ポルフィリン環の中心に銅原子(Cu) 配位した、2,3-ジ-O-ステアロイル-6-O-[p-(10,15, 20-トリフェニル-5-ポルフィリニル)-ベンゾイ ]セルロース(以下、「CuPCS」ともいう。)の 製
 実施例1で得られたH 2 PCSをジクロロメタン(3mL)に溶解したH 2 PCS溶液(8.1mg、ポルフィリン単位当たり5.3μmol) 中に、酢酸銅(II)一水和物(10.5mg、53μmol)とト エチルアミン(15μL、105μmol)を添加し、遮光 で夜通し攪拌した。こうして得られた反応 合物について、実施例17と同様の抽出、洗浄 、乾燥及び濃縮の各操作を行い、ポリマーを 沈降、捕集して、標記セルロース誘導体を得 た。収量7.8mg(93%)。

(実施例20)ポルフィリン環の中心にパラジウ 原子(Pd)が配位した、2,3-ジ-O-ステアロイル-6- O-[p-(10,15,20-トリフェニル-5-ポルフィリニル)- ンゾイル]セルロース(以下、「PdPCS」ともい う。)の調製
 ポルフィリン環の中心へのパラジウム・イ ンの挿入は、Scalise and Durantini(非特許文献5 )の手順に従って行った。すなわち、実施例1 得られたH 2 PCSをDMFとTHFの体積比1:1の混合溶媒(5mL)に溶解 たH 2 PCS溶液(14mg、ポルフィリン単位当たり9.2μmol) に、塩化パラジウム(II)(16mg、92μmol)を添加 、100℃で2日間攪拌した。こうして得られた 応混合物について、実施例17と同様の抽出 洗浄、乾燥及び濃縮の各操作を行い、ポリ ーを沈降、捕集して、標記セルロース誘導 を得た。収量11.5mg(76%)。

 以上の実施例17~20のセルロース誘導体にお る錯体形成(金属の配位)の完了は 1 H-NMR分析によるピロールN-Hシグナルの消失と 収スペクトルの変化によって判断した。た しマグネシウム化の場合のみ、完全な錯体 成ができなかった。

(実施例21~24)
 実施例17~20で得られた各セルロース誘導体(M gPCS、ZnPCS、CuPCS、PdPCS)について、トルエン溶 (ポルフィリン単位が約0.1mMの濃度)を調製し 、その溶液を下層水に展開した以外は、実施 例2と同様にして、LB膜を製造した。

 実施例2、21~24で得られたLB単分子膜につい 、前述の光電変換効果の評価方法により、 イアス電圧が0mV、50mV、100mVの3つの条件下で 光電流値(アノード光電流値)を測定し、そ ぞれの条件下での量子効率(φ)と入射単位光 たりの光電変換効率(Incident Photon-to-current C onversion Efficiency(IPCE))を算出した。入射単位 当たりの光電変換効率(IPCE)は下記式(2)に基 いて算出した。なお、実施例22のセルロース 誘導体(ZnPCS)からなるLB単分子膜については、 入射光波長430nmでの量子効率(φ)と入射単位光 当たりの光電変換効率(IPCE)を求め、それ以外 の実施例2、21、23、24の各セルロース誘導体(H 2 PCS、MgPCS、CuPCS、PdPCS)からなるLB単分子膜につ いては、入射光波長420nmでの量子効率(φ)と入 射単位光当たりの光電変換効率(IPCE)を求めた 。

 式中、符号i、W、λは前記と同義である。

 下記表3にその結果を示す。

 表3より、中心に金属原子が配位したポル フィリン環を有するセルロース誘導体も光電 変換機能を有しており、特にパラジウム(Pd) 配位したポルフィリン環を有するセルロー 誘導体においては、金属原子が未配位のポ フィリン環を有するセルロース誘導体より 、量子効率(φ)及び入射単位光当たりの光電 換効率(IPCE)が大幅に向上することが分かる

 次に、本発明のセルロース誘導体とフラ レンの混合物によるLB膜の実施例を示す。

(実施例25、26)
 実施例2のセルロース誘導体(H 2 PCS)とフラーレンC 60 の混合物によるLB単分子膜(実施例25)及び実施 例8のセルロース誘導体(ZnPCS)とフラーレンC 60 の混合物によるLB単分子膜(実施例26)を、それ ぞれ、セルロース誘導体とフラーレンC 60 の混合比を種々変更して製造した。そして、 得られたLB単分子膜のそれぞれについて、前 の光電変換効果の評価方法により、バイア 電圧が0mV、50mV、100mVの3つの条件下で、光電 流値(アノード光電流値)を測定し、それぞれ 条件下での量子効率(φ)と入射単位光当たり の光電変換効率(IPCE)を算出した。なお、LB単 子膜の製造は、以下の手順で行った。

 セルロース誘導体のトルエン溶液(ポルフ ィリン単位が0.1mMの濃度)とフラーレンのトル エン溶液(0.1mM)を所定割合で混合した希薄溶 を調製し、この溶液を下層水に展開した。 ブフェーズの温度は20℃に維持した。Wilhelmy- typeの膜天秤で表面圧力を測定した。溶媒の 散のために30分放置してから、一定圧縮速度 (6mm/min)でπ-A等温線を測定した。LB単分子膜の 製造にあたって、ITO基板上に単分子膜を形成 するために水平付着法(Langmuir-Schafer法)を用い た。引き上げ、引き下げ速度はともに10mm/min した。表面圧力を10mN/mに維持してLB膜を形 した。成膜前のITO基板は、5%水性洗浄剤(Scat- 20X-N, Nakarai Tesque Inc.)で24時間、次いで、ア トン、クロロホルム、アセトン、水の順に 15分間ずつ超音波洗浄した。

 下記表4に量子効率(φ)と入射単位光当た の光電変換効率(IPCE)を示す。

 表4から、ポルフィリン環を導入したセルロ ース誘導体とフラーレンを混合してLB膜を成 することで、ポルフィリン環を導入したセ ロース誘導体からなるLB膜に比べて光電変 機能が大幅に向上することが分かる。
 また、金属原子が配位したポルフィリン環 有するセルロース誘導体とフラーレンの混 膜よりも、金属原子が配位していないポル ィリン環を有するセルロース誘導体とフラ レンの混合膜の方がより高い光電変換機能 得られる傾向であり、また、セルロース誘 体とフラーレンの混合比が1:2のときに、最 光電変換機能が高くなることが分かる。

(実施例27)
 実施例2のセルロース誘導体(H 2 PCS)とフラーレンC 60 の混合物によるLB単分子膜をLB法により積層 て多重累積膜(2~8層)を形成した。なお、単分 子膜の積層は具体的には以下の方法で行った 。
 すなわち、ITO基板上に水平付着法(Langmuir-Sch afer法)により単分子膜を一層ずつ累積した。 き上げ、引き下げ速度はともに10mm/minとし 。一層累積ごとに窒素ガスで表面を乾燥さ た。表面圧力を10mN/mに維持した。

 得られた多重累積膜(2~8層)のぞれぞれにつ 、前述の光電変換効果の評価方法により、 射光波長を400nm~550nmの範囲で変化させ、バイ アス電圧が0mV、50mV、100mVの3つの条件下で、 電流値を測定し、それから入射単位光当た の光電変換効率(IPCE)を式(2)から算出した。
 なお、本測定系では、電極にかける電位(バ イアス電圧)を、基準電極である飽和カロメ 電極(SCE)に対する電極電位として定めた。す なわち、バイアス電位がSCEに対して0V(すなわ ち、SCEと同じ電位)である場合、「0mV vs SCE と表し、バイアス電位をITO電極の電位が50mV なるようにポテンシオスタットにより設定 た場合、「50mV vs SCE」と表す。

 図5は入射光の波長と光電流密度(バイア 電圧:0mV vs SCE)の関係を示し、図6は多重累 膜の層数と光電流密度の関係(バイアス電圧: 0mV、50mV、100mV vs SCE)を示す。

 図5及び図6から、ポルフィリン環を導入し セルロース誘導体とフラーレンの混合物のLB 単分子膜を累積することで膜の量子収率がさ らに向上することが分かる。特に5層累積し ときに最大の光電流密度(5.4mA/cm 2 (0V vs SCE))を発生し、5層累積膜は単層(1層)に 比べ4倍大きい値を示した。また、累積によ 入射単位光当たりの光電変換効率の増加が 認された。

 本発明のセルロース誘導体およびそれを 有する光電変換膜は、可視光により電子を 成して取り出すことができるので、透明な 陽電池などへの適用が期待されるほか、太 エネルギーを用いて水と炭酸ガスから酸素 有機物を合成したり、水を水素と酸素に分 する人工光合成反応の実用化に向けての適 も期待される。

 本明細書で使用している用語と表現は、あ までも説明上のものであって、なんら限定 なものではなく、本明細書に記述された特 およびその一部と等価の用語や表現を除外 る意図はない。また、本発明の技術思想の 囲内で、種々の変形態様が可能であるとい ことは当然である。
 本出願は日本で出願された特願2007-126976を 礎としており、それらの内容は本明細書に て包含される。