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Title:
CELLULOSE NANOFIBER AND PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF, AND CELLULOSE NANOFIBER DISPERSION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/069641
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a process for producing a cellulose nanofiber, which is characterized by comprising the following steps: an oxidation treatment step of oxidizing a natural cellulose in a neutral or acidic reaction solution containing an N-oxyl compound and an oxidizing agent which can oxidize an aldehyde group; and a dispersion step of dispersing the natural cellulose which has been treated in the oxidation treatment step in a medium. The process enables the production of a cellulose nanofiber having a long fiber length and high strength.

Inventors:
ISOGAI AKIRA (JP)
SAITO TSUGUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/071422
Publication Date:
June 04, 2009
Filing Date:
November 26, 2008
Export Citation:
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Assignee:
UNIV TOKYO (JP)
ISOGAI AKIRA (JP)
SAITO TSUGUYUKI (JP)
International Classes:
C08B15/04; D01F2/00; D21H11/20
Foreign References:
JP2003512540A2003-04-02
JP2002511440A2002-04-16
JPS56100801A1981-08-13
JPH09508658A1997-09-02
JP2006169649A2006-06-29
Other References:
SAITO, T. ET AL.: "Cellulose Nanofibers Prepared by TEMPO-Mediated Oxidation of Native Cellulose", BIOMACROMOLECULES, vol. 8, no. 8, August 2007 (2007-08-01), pages 2485 - 2491, XP008133674
See also references of EP 2216345A4
O.A. BATTISTA, IND. ENG. CHEM., vol. 42, 1950, pages 502
SAITO, T. ET AL: "Homogeneous Suspensions of Individualized Microfibrils from TEMPO-Catalyzed Oxidation of Native Cellulose", BIOMACROMOLECULES, vol. 7, no. 6, 2006, pages 1687 - 1691
SAITO, T. ET AL: "Cellulose Nanofibers Prepared by TEMPO-Mediated Oxidation of Native Cellulose", BIOMACROMOLECULES, vol. 8, no. 8, 2007, pages 2485 - 2491
ISOGAI, A. ET AL: "Viscosity measurements of cellulose/S02-amine-dimethylsulfoxide solution", SEN'I GAKKAISHI, vol. 45, 1989, pages 299 - 306
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (MarunouchiChiyoda-ku, Tokyo 20, JP)
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Claims:
 N-オキシル化合物と、アルデヒド基を酸化する酸化剤とを含む中性又は酸性の反応溶液中で、天然セルロースを酸化させる酸化処理工程と、
 前記酸化処理工程後の前記天然セルロースを媒体に分散させる分散工程と
 を含むことを特徴とするセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記酸化処理工程において、前記反応溶液に緩衝液を添加することを特徴とする請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記酸化剤として亜ハロゲン酸又はその塩を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記酸化剤として、過酸化水素と酸化酵素の混合物、又は過酸を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記酸化処理工程において、前記反応溶液のpHを4以上7以下とすることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記酸化処理工程において、前記反応溶液に次亜ハロゲン酸又はその塩を添加することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記N-オキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジン-N-オキシルであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 前記分散工程が、機械的な解繊処理による工程であることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
 最大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径が2nm以上150nm以下であり、
 セルロースのミクロフィブリル表面に位置する水酸基の少なくとも一部が、カルボキシル基のみで酸化されていることを特徴とするセルロースナノファイバー。
 最大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径が2nm以上150nm以下であり、
 アルデヒド基の含有量が、0.05mmol/g未満であることを特徴とするセルロースナノファイバー。
 前記カルボキシル基の含有量が、前記セルロースの重量に対して0.5mmol/g以上であることを特徴とする請求項9又は10に記載のセルロースナノファイバー。
 平均重合度が600以上であることを特徴とする請求項9から11のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー。
 最大繊維径が500nm以下かつ数平均繊維径が2nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項9から12のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバー。
 最大繊維径が30nm以下かつ数平均繊維径が2nm以上10nm以下であることを特徴とする請求項13に記載のセルロースナノファイバー。
 請求項9から14のいずれか1項に記載のセルロースナノファイバーを媒体中に分散させてなるセルロースナノファイバー分散液。
Description:
セルロースナノファイバーとそ 製造方法、セルロースナノファイバー分散

 本発明は、セルロースナノファイバーとそ 製造方法、セルロースナノファイバー分散 に関するものである。
 本願は、2007年11月26日に、日本に出願され 特願2007-304411号に基づき優先権を主張し、そ の内容をここに援用する。

 天然に多量に存在するバイオマスである ルロースは、生合成によって繊維が生成さ る時点では例外なくミクロフィブリルと呼 れるナノファイバーであり、このナノファ バーが繊維方向に集束化してより大きな単 の繊維に成長するという特徴を有する。こ してできた繊維の束が乾燥状態となり、主 植物の強靱な構造材として機能している。 のようなマクロなセルロース構造材中では ナノファイバーどうしが表面間で主に水素 合を介した結合力によって強く集束してい ため、容易にはナノファイバーの状態に分 させることはできない。

 特許文献1には、汎用的に入手可能な植物系 の精製セルロース(木材パルプやリンターパ プ等)を、高圧ホモジナイザーで処理するこ によりナノファイバー化する技術が開示さ ている。一方、特許文献2や非特許文献1に 、化学的な処理条件によりセルロースの微 化を行う方法(酸加水分解法)が開示されてい る。

特開昭56-100801号公報

特表平9-508658号公報

特願2006-169649 O.A.Battista, Ind. Eng. Chem., 42, 502 (1950) Saito, T., Nishiyama, Y., Putaux, J.L., Vignon, M., Isogai, A, “Homogeneous Suspensions of individu alized microfibrils from TEMPO-catalyzed oxidation of  native cellulose”, Biomacromolecules, 7(6), 1687-1691 (2006). Saito, T., Kimura, S., Nishiyama, Y., Isoagi, A ., “Cellulose nanofibers prepared by TEMPO-mediated  oxidation of native cellulose”, Biomacromolecules, 8( 8), 2485-2491 (2007).

 しかしながら、特許文献1に記載の方法で は、高圧ホモジナイザーによる処理に多大な エネルギーを要し、コスト的に不利である。 また、得られる微細化繊維の繊維径も不均一 であり、一般的な処理条件下では1μm以上の い繊維が残ってしまう。一方、特許文献2や 特許文献1に記載の方法では、セルロース繊 維が断裂して短くなってしまうことが知られ ており、繊維の形状を保ったまま微細化する ことが困難である。

 そこで本発明者らは、先の出願(特許文献 3)において、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリ ン-N-オキシル)触媒の存在下で酸化剤を作用 せることで各種天然セルロースの酸化物を 製する方法(以下、先願製造方法と呼ぶ)を 案している。かかる先願製造方法によれば 幅が3~20nmで1本1本が完全に分離されたシング ルナノファイバーを製造することができる。 なお、同製造方法による結果は、非特許文献 2,3に掲載されている。

 上記の先願製造方法では、触媒量のNaBrとTEM POを含む天然セルロース繊維の水分散液に、 亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液を主酸化剤 として加えて酸化反応を進める。この製造方 法では、反応中にカルボキシル基の生成によ ってpHが低下するため、希水酸化ナトリウム 溶液(通常、0.5M程度のNaOH)を常に添加して反 応系のpHを8~11に維持する。
 図8、9に、次亜塩素酸ナトリウムを主酸化 とし、臭化ナトリウム(NaBr)とTEMPOを触媒量加 えることによって、セルロースの1級水酸基 アルデヒド基を経てカルボキシル基に酸化 る機構を示す。

 天然セルロースは、結晶性のミクロフィ リル(結晶化度は65~95%、セルロース分子30~100 本より成る)を構成単位としている。上記の 法では、図10に示すように、この高結晶性の セルロースミクロフィブリルの構造を維持し ながら、天然セルロースのミクロフィブリル の表面に位置するC6位の1級水酸基のみを、選 択的にカルボキシル基あるいはアルデヒド基 に酸化する。これにより、セルロースミクロ フィブリルの表面のみに高密度でカルボキシ ル基のナトリウム塩が生成し、マイナス荷電 を有するカルボキシル基によるミクロフィブ リルどうしの荷電反発を利用して、1本1本が 全に分離したセルロースナノファイバーを ることができる。

 しかし、本発明者らがさらに研究を重ね ところ、上記先願製造方法及びこれにより られるセルロースナノファイバーにおける 題も明らかになってきた。以下、かかる課 について詳細に説明する。

 (1)まず、先願製造方法により得られるセル ースナノファイバーは、平均重合度が200程 であり、天然セルロースの重合度(1400程度) 比べて著しく低い。このようなセルロース 分子量低下は、セルロースナノファイバー 材料として用いる場合には、たとえ高結晶 度であっても、強度の低下の原因となる。 願製造方法で作製したセルロースナノファ バーを用いたフィルムは、高強度、高弾性 を示すが、このようなセルロースの分子量 下を抑えることができれば、さらに高強度 高弾性率のフィルムの実現が期待できる。
 そこで本発明は、セルロースの分子量低下 抑え、繊維が長く強度に優れたセルロース ノファイバーとその製造方法を提供するこ を目的の一つとする。

 (2)先願製造方法により得られるセルロース ノファイバーの分散液を加熱乾燥させてフ ルムを作製すると、フィルムに着色が発生 る。このような着色は、透明性や白色性が 求される用途では品質上の問題となりうる
 そこで本発明は、加熱処理を施しても着色 生じないセルロースナノファイバーとその 造方法を提供することを目的の一つとする

 (3)先願製造方法では、セルロースナノファ バーの収率が80~90%程度である。これは、TEMP O触媒酸化反応によって起こる副反応により セルロース成分の一部が低分子化して水に 解するためであると考えられる。そうする 、反応溶液や洗浄液に分解物が含まれるこ になり、廃液処理のコストが上昇する。
 そこで本発明は、不要な分解物を生じさせ 、高い収率が得られるセルロースナノファ バーを製造する方法を提供することを目的 一つとする。

 (4)先願製造方法によって得られるセルロー ナノファイバーは、カルボキシル基とアル ヒド基を含むものである。これらのうちア デヒド基はマイナス荷電を有していないた 、解繊処理によるナノファイバー化を促進 る作用を奏しない。そこで、このアルデヒ 基をカルボキシル基にまで酸化することが きれば、ミクロフィブリル表面のマイナス 電が増え、解繊処理の効率が向上すること 期待される。
 そこで本発明は、ナノファイバー化の効率 向上させることができるセルロースナノフ イバーの製造方法を提供することを目的の つとする。

 (5)先願製造方法では、TEMPO触媒酸化反応中 、反応液のpHを常に一定にする必要があるた め、反応溶液にpHメーターを設置し、pHを維 するために希NaOH水溶液を反応溶液に滴下し けなければならない。そのため、反応系が ープン型で密閉できないものとなる。また 反応容器を密閉できないことは、反応によ 生じるガスの処理や、反応効率の点でも不 である。
 そこで本発明は、反応系の改善によりpH管 を容易にするとともに反応容器の密閉を可 にしたセルロースナノファイバーの製造方 を提供することを目的の一つとする。

 上記課題を解決するために、本発明のセ ロースナノファイバーの製造方法は、N-オ シル化合物と、アルデヒド基を酸化する酸 剤とを含む中性又は酸性の反応溶液中で、 然セルロースを酸化させる酸化処理工程と 前記酸化処理工程後の前記天然セルロース 媒体に分散させる分散工程とを含むことを 徴としている。

 本発明の製造方法では、N-オキシル化合 の存在下、アルデヒド基を酸化する酸化剤 用いて天然セルロースの酸化処理を行うの 、セルロースのミクロフィブリル表面の水 基をカルボキシル基にまで酸化することが き、C6位のアルデヒド基が生成するのを防ぐ ことができる。

 ここで、先願製造方法では、pH8~11の弱アル リ性条件でTEMPO触媒酸化を行うため、図11中 央に示すように、C6位にアルデヒド基(CHO基) 中間体として生成する。このアルデヒド基 は、pH8~11の条件で極めて容易にベータ脱離 応が起こる。その結果、図11右側に示すよう に、セルロースの分子鎖が切断され、得られ るセルロースナノファイバーの分子量が著し く低下すると考えられる。
 これに対して本発明の製造方法では、上述 たようにアルデヒド基が生成するのを防ぐ とができ、仮にアルデヒド基が短時間存在 たとしても、反応溶液のpHが中性又は酸性 あるため、弱アルカリ~強アルカリ性で起き ベータ脱離反応が生じることはない。した って本発明によれば、アルデヒド基の反応 よるセルロース分子鎖の切断を防ぐことが き、分子鎖が長く、優れた強度を発現する ルロースナノファイバーを製造することが きる。

 また、アルデヒド基が速やかに酸化され ことで、セルロースのミクロフィブリル表 には、マイナス荷電を有するカルボキシル のみが生成されるので、分散工程において 果的に荷電反発が作用し、極めて効率よく クロフィブリルの分離を行うことができる

 また、先願製造方法では、セルロースナノ ァイバーの表面に生成するアルデヒド基は 0.5mmol/g以下(通常0.3mmol/g以下)とカルボキシ 基に比べて少量であるが、洗浄後のセルロ スナノファイバーの表面にも残存している そのために、アルデヒド基を有する還元糖 おけるキャラメル化と同様の反応により着 が生じると考えられる。
 これに対して本発明の製造方法では、酸化 にアルデヒド基を酸化するものを用いてい ため、仮に、酸化処理工程においてC6位の ルデヒド基が残存していたとしても、いず 酸化されてカルボキシル基に変換される。 たがって、本発明の製造方法により得られ セルロースナノファイバーはアルデヒド基 含まないものとなり、これを加熱処理や加 乾燥処理に供しても着色を生じることはな 。よって本発明によれば、無色で透明性に れたフィルムや複合材料等を作製できるセ ロースナノファイバーを製造することがで る。

 以上詳細に説明したように、本発明によ ば、先願製造方法における課題(1)~(4)を解決 することができる。

 また本発明では、前記酸化処理工程におい 、前記反応溶液に緩衝液を添加することが ましい。このような製造方法とすることで pH維持のために酸やアルカリを添加する必 が無くなり、pHメーターも不要になる。した がって、本製造方法では反応容器を密閉する ことができ、課題(5)についても解決すること ができる。
 そして、反応容器を密閉すれば、反応系に する加温や加圧が可能である。また反応溶 から発生するガスが系外に放出されること ないため安全面でも優れた製造方法となる また酸化剤の分解によって生じるガスが大 に放散されることがないため、酸化剤の使 量を少なくすることができるという利点も る。

 前記酸化剤としては亜ハロゲン酸又はそ 塩を用いることができる。また、前記酸化 として、過酸化水素と酸化酵素の混合物、 は過酸を用いることもできる。これらの酸 剤を用いることで、1級水酸基をカルボキシ ル基に酸化することができ、C6位のアルデヒ 基の生成を効果的に防ぐことができる。

 前記酸化処理工程において、前記反応溶 のpHを4以上7以下とすることが好ましい。こ のような範囲とすることで、効率よく酸化剤 を天然セルロースに作用させることができ、 セルロースナノファイバーを短時間で効率よ く製造することができる。

 前記酸化処理工程において、前記反応溶 に次亜ハロゲン酸又はその塩を添加するこ が好ましい。このような製造方法とするこ で、反応速度を著しく向上させることがで 、セルロースナノファイバーの製造効率を きく向上させることができる。

 前記N-オキシル化合物が、2,2,6,6-テトラメ チル-1-ピペリジン-N-オキシル(TEMPO)であるこ が好ましい。あるいは、4-アセトアミドTEMPO あることが好ましい。

 前記分散処理工程が、機械的な解繊処理 あることが好ましい。このような製造方法 すれば、高効率かつ低コストでセルロース 解繊処理し、ナノファイバー化することが きる。

 次に、本発明のセルロースナノファイバー 、最大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径 2nm以上150nm以下であり、セルロースのミク フィブリル表面に位置する水酸基の少なく も一部が、カルボキシル基のみで酸化され いることを特徴とする。
 また本発明のセルロースナノファイバーは 最大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径が2 nm以上150nm以下であり、アルデヒド基の含有 が、0.05mmol/g未満であることを特徴とする。
 カルボキシル基の含有量が、セルロースの 量に対して0.5mmol/g以上であることが好まし 。
 また、平均重合度が600以上であることが好 しく、900以上であることがさらに好ましい
 さらに、最大繊維径が500nm以下かつ数平均 維径が2nm以上100nm以下であることが好ましく 、最大繊維径が30nm以下かつ数平均繊維径が2n m以上10nm以下であることがより好ましい。
 本発明に係る製造方法によって得られるセ ロースナノファイバーは、上記した特徴に って特定することができる。いずれのセル ースナノファイバーも、幅が小さく、かつ 子鎖が長い、従来にない優れた特徴を具備 た新規なセルロースナノファイバーである

 次に、本発明のセルロースナノファイバ 分散液は、本発明のセルロースナノファイ ーを媒体中に分散させてなるものである。 の分散液によれば、加熱処理や乾燥処理に り容易に高強度のナノフィブリル構造体を ることができる。

 本発明のセルロースナノファイバーの製造 法によれば、カルボキシル基のみで酸化さ ており、加熱しても着色の生じないセルロ スナノファイバーを製造することができる また、重合度が高く、強度に優れたセルロ スナノファイバーを製造することができる
 本発明のセルロースナノファイバーによれ 、カルボキシル基のみで酸化されているか 加熱しても着色することがなく、透明性あ いは白色性に優れた構造体を形成すること できる。また、重合度が高いことから強度 優れた構造体を形成できるナノファイバー ある。
 また本発明のセルロースナノファイバー分 液は、長く細いセルロースナノファイバー 含むことから、低濃度で高粘度の分散液と る。

本発明に係る製造方法におけるカルボ シル基の生成機構を示す図。 本発明に係る製造方法及び先願製造方 で使用される装置を示す図。 実施例1に係る測定結果を示すグラフ。 酸化触媒の化学構造を示す図。 実施例6に係るX線開設パターンの測定 果を示す図。 セルロースナノファイバーの電子顕微 写真。 セルロースナノファイバー水分散液の 察写真。 先願製造方法におけるセルロースの酸 機構を示す図。 先願製造方法におけるセルロースの酸 機構を示す図。 セルロースのミクロフィブリルの構造 モデルを示す図。 ベータ脱離反応による分子鎖の切断を 説明する図。

符号の説明

 100 反応容器、101 キャップ、110 反応溶 、120 加熱装置

 以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形 について説明する。
 本発明に係るセルロースナノファイバーの 造方法は、原料である天然セルロースに、 応溶液が中性又は酸性である条件下で、N- キシル化合物を酸化触媒に用いて、アルデ ド基を酸化する酸化剤を作用させることで 記天然セルロースを酸化させる酸化処理工 と、前記酸化処理工程後の前記天然セルロ スを媒体に分散させる分散工程とを含む。

 酸化処理工程では、まず、水中に天然セ ロースを分散させた分散液を調製する。天 セルロースは、植物、動物、バクテリア産 ゲル等のセルロースの生合成系から単離し 精製セルロースである。具体的には、針葉 系パルプ、広葉樹系パルプ、コットンリン ーやコットンリント等の綿系パルプ、麦わ パルプやバガスパルプ等の非木材系パルプ バクテリアセルロース、ホヤから単離され セルロース、海草から単離されるセルロー などを例示することができる。

 酸化処理工程において、反応溶液におけ 天然セルロースの分散媒には、典型的には 水が用いられる。反応溶液中の天然セルロ ス濃度は、試薬(酸化剤、触媒等)の十分な 解が可能であれば特に限定されない。通常 、反応溶液の重量に対して5%程度以下の濃度 とすることが好ましい。

 また、単離、精製された天然セルロース 対して、叩解等の表面積を拡大する処理を してもよい。これにより反応効率を高める とができ、生産性を高めることができる。 た、天然セルロースは、単離、精製の後、 バードライ状態で保存したものを用いるこ が好ましい。ネバードライ状態で保存する とで、ミクロフィブリルの集束体を膨潤し すい状態に保持することができるので、反 効率を高めるとともに、繊維径の細いセル ースナノファイバーを得やすくなる。

 反応溶液に添加される触媒としては、N-オ シル化合物が用いられている。N-オキシル化 合物としては、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペ ジン-N-オキシル)及びC4位に各種の官能基を するTEMPO誘導体を用いることができる。特 、TEMPO及び4-アセトアミドTEMPOは、反応速度 おいて好ましい結果が得られている。
 N-オキシル化合物の添加は触媒量で十分で り、具体的には、反応溶液に対して0.1~4mmol/l の範囲で添加すればよい。好ましくは、0.1~2m mol/lの添加量範囲である。

 酸化剤としては、水酸基の酸化によって 成するアルデヒド基も酸化することができ 酸化剤が用いられる。このような酸化剤と ては、亜ハロゲン酸又はその塩(亜塩素酸ナ トリウムなど)、過酸化水素と酸化酵素(ラッ ーゼ)の混合物、過酸などを例示することが できる。なお、過酸としては、過硫酸(過硫 水素カリウムなど)、過酢酸、過安息香酸な 、種々のものを用いることができる。酸化 の含有量は、1~10mmol/lの範囲とすることが好 ましい。

 このようにアルデヒド基をカルボキシル基 酸化することができる酸化剤を用いること 、C6位のアルデヒド基の生成を防ぐことが きる。図1は、本発明におけるカルボキシル の生成機構を示す図である。図1に示すよう に、N-オキシル化合物を触媒とした酸化反応 は、グルコース成分の1級水酸基が選択的に 酸化されてアルデヒド基を含む中間体が生成 する可能性がある。しかし本発明では、アル デヒド基を酸化する酸化剤を含むため、この 中間体のアルデヒド基は速やかに酸化され、 カルボキシル基に変換される。
 これにより、アルデヒド基を含まないセル ースナノファイバーを得ることができる。

 また、上述した酸化剤を主酸化剤として いるのを前提として、次亜ハロゲン酸又は の塩を添加することが好ましい。例えば、 量の次亜塩素酸ナトリウムを添加すること 、反応速度を大きく向上させることができ 。次亜ハロゲン酸塩等の添加量を多くしす ると、これらが主酸化剤として機能するた に所望のセルロースナノファイバーを得ら なくなるおそれがある。そこで、次亜ハロ ン酸塩等の添加量は、1mmol/l程度以下とする ことが好ましい。

 反応溶液のpHは、中性から酸性の範囲で維 することが好ましい。より具体的には、4以 7以下のpH範囲とすることが好ましい。
 さらに、反応溶液に緩衝液を添加すること 好ましい。緩衝液としては、リン酸緩衝液 酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝 、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液等、種々の 衝液を用いることができる。

 緩衝液を用いて反応中のpH変化を抑える うにすることで、pHを維持するための酸やア ルカリの連続的な添加が不要になり、またpH ーターの設置も不要になる。そして、酸や ルカリの添加が不要であることから、反応 器を密閉することができる。

 ここで、図2(a)は、本発明の製造方法を実施 するための装置の一例を示す図である。図2(b )は、先願製造方法を実施するための装置を す図である。
 図2(a)に示すように、本発明の製造方法では 、反応容器100に原料、触媒、酸化剤、緩衝液 等を含む反応溶液110が収容されており、さら にキャップ101により反応容器100は密閉されて いる。また、温浴槽120のような加熱装置を用 いて、反応容器100を加熱することができ、反 応温度を上昇させることができる。また場合 によっては、反応容器100に内部を加圧する加 圧装置を併設してもよい。

 一方、図2(b)に示す先願製造方法では、反 応溶液210を収容した反応容器200の上部は開口 しており、この開口部を介して、併設された pH調整装置250のpH電極251や、pH調整用の希NaOH 液を供給するノズル252が反応溶液210内に設 されている。このように先願製造方法では 反応容器210をオープン型にせざるを得ない め、共酸化剤である次亜塩素酸ナトリウム 分解により発生した塩素ガスが大気中に一 放出されてしまう。そうすると、放出され 塩素ガスを処理する装置が必要になったり 酸化剤の損失により次亜塩素酸ナトリウム 必要以上に添加しなければならなくなる。

 このように本発明に係る製造方法では、 応容器100を密閉することができるので、反 溶液110の温度を上昇させて反応効率を高め 反応効率を高めることができる。したがっ 本発明によれば、セルロースナノファイバ を効率よく短時間で製造することができる 一方、先願製造方法でも反応溶液210の温度 上昇させることは可能であるが、塩素ガス 放出量が増えるため、排ガス処理や酸化剤 使用量の点で不利になる。

 本発明の製造方法において、酸化処理工程 分散工程との間に、酸化処理工程で未反応 酸化剤や原料を取り除く精製工程を設けて よい。すなわち、酸化処理されたセルロー (酸化セルロース)と水以外の物質を系外へ 去する工程を設けてもよい。
 ところで、酸化セルロースは、この段階で ナノファイバー単位にまで分離されている けではなく、原料である天然セルロースの 維状態を維持している。したがって、水洗 ろ過を繰り返して行う通常の精製方法でほ 100%の収率で回収することができる。また、 元の繊維状態を維持していることから、精製 段階で著しい膨潤やナノファイバー化による ゲル化が生じてろ過や取り扱いが困難になる ことはない。このように精製工程や取り扱い が容易である点も本発明に係る製造方法の有 利な点である。
 なお、上述した精製工程における精製方法 しては、遠心脱水を利用する装置(例えば連 続式デカンター)など、精製工程の目的を達 できる装置であれば任意の装置を用いるこ ができる。

 次に、分散工程では、酸化処理工程で得 れた酸化セルロース又は精製工程を経た酸 セルロースを、媒体中に分散させる。これ より、セルロースナノファイバーが媒体に 散されたセルロースナノファイバー分散液 得られる。

 分散に用いる媒体(分散媒)としては、通 は水が好ましいが、水以外にも目的に応じ 親水性の有機溶媒を用いることができる。 のような親水性有機溶媒としては、水に可 のアルコール類(メタノール、エタノール、 ソプロパノール、イソブタノール、sec-ブタ ノール、tert-ブタノール、メチルセロソルブ エチルセロソルブ、エチレングリコール、 リセリン等)、エーテル類(エチレングリコ ルジメチルエーテル、1,4-ジオキサン、テト ヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メ ルエチルケトン)やN,N-ジメチルホルムアミド 、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスル キサイド等を例示することができる。さら 、複数種の親水性有機溶媒を混合したもの あってもよい。

 分散工程において用いる分散装置(解繊装 置)としては、種々のものを使用することが きる。例えば、家庭用ミキサー、超音波ホ ジナイザー、高圧ホモジナイザー、二軸混 り装置、石臼等の解繊装置を用いることが きる。これらのほかにも、家庭用や工業生 用に汎用的に用いられる解繊装置で容易に ルロースナノファイバーの分散液を得られ 。また、各種ホモジナイザーや各種レファ ナーのような強力で叩解能力のある解繊装 を用いると、より効率的に繊維径の細いセ ロースナノファイバーが得られる。

 そして、以上の工程により得られるセル ースナノファイバー分散液から分散媒を除 することで、本発明に係るセルロースナノ ァイバーが得られる。分散媒の除去には、 般的に知られている乾燥処理を用いること できる。すなわち、凍結乾燥装置やドラム ライヤー、スプレイドライヤーなどを用い 乾燥処理により、容易に分散媒を除去する とができる。

 また、セルロースナノファイバー分散液 、バインダーとして水溶性高分子や糖類の うな沸点が高くセルロースに対して親和性 有する化合物を混入させ、これを乾燥処理 供することもできる。このようにして得ら るセルロースナノファイバーは、再度分散 に分散させることができるものとなるので 分散液として流通させるよりも取り扱いが 易になる。

 なお、分散媒に添加するバインダーの量は セルロースに対して10重量%~80重量%の範囲と することが好ましい。
 また、水溶性高分子としては、ポリエチレ オキサイド、ポリビニルアルコール、ポリ クリルアミド、カルボキシメチルセルロー 、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキ プロピルセルロース、メチルセルロース、 ンプン、天然ガム類などを例示することが きる。糖類としては、グルコース、フルク ース、マンノース、ガラクトース、トレハ ースなどを例示することができる。

 次に、以上に説明した本発明の製造方法に り得られるセルロースナノファイバーは、 大繊維径が1000nm以下かつ数平均繊維径が2nm 上150nm以下であり、セルロースのミクロフ ブリル表面に位置する水酸基の少なくとも 部が、カルボキシル基のみで酸化されてい セルロースナノファイバーとして特定する とができる。
 あるいは、最大繊維径が1000nm以下かつ数平 繊維径が2nm以上150nm以下であり、アルデヒ 基の含有量が、0.05mmol/g未満であるセルロー ナノファイバーとして特定することができ 。

 すなわち、セルロースのミクロフィブリル 面におけるC6位のアルデヒド基が、全く無 、あるいは全く無いとみなせるものである なお、アルデヒド基が全く無いとみなせる 合というのは、アルデヒド基の含有量が0.05m mol/g未満であることに対応する。このような 囲とすることで、アルデヒド基に起因する 合度の低下や加熱時の着色を抑える効果を ることができる。アルデヒド基の量は、よ 好ましくは0.01mmol/g以下であり、さらに好ま しくは、0.001mmol/g以下である。
 なお、現在知られている測定方法における ルデヒド基の検出限界が0.001mmol/g程度であ から、望ましい態様としては、測定を行っ もアルデヒド基が検出されないセルロース ノファイバーである。
 また、先願製造方法では、TEMPO触媒酸化に いて、必ずカルボキシル基とアルデヒド基 双方が生成する。したがって本発明のセル ースナノファイバーは、上記の特徴によっ 先願製造方法で得られるセルロースナノフ イバーとは明確に異なるものとして特定す ことができる。

 また、セルロースナノファイバーの最大繊 径及び数平均繊維径は、以下の方法で解析 ることができる。
 まず、固形分率で0.05~0.1重量%のセルロース ノファイバー分散液を調製する。この分散 を親液化処理済みのカーボン膜被覆グリッ 上にキャストしてTEM観察用試料とする。そ 後、この試料を、5000倍、10000倍、あるいは5 0000倍のいずれかの倍率で電子顕微鏡観察を う。この際に、得られた画像内に縦横任意 画像幅の軸を想定したときに、この軸が20本 以上の繊維と交差するような試料(濃度等)及 観察条件(倍率等)とする。
 そして、この条件を満足する観察画像に対 て、1枚の画像当たり縦横2本ずつの無作為 軸を引き、軸に交錯する繊維の繊維径を目 で読み取っていく。こうして少なくとも3枚 重複しない領域の画像について繊維径の値 読み取る。これにより、最低20本×2(軸)×3( )=120本の繊維径の情報が得られる。
 以上により得られた繊維径のデータから、 大繊維径(最大値)及び数平均繊維径を算出 ることができる。
 なお、上記ではTEM観察を行うこととしたが 繊維径の大きな繊維を含む場合には、SEM観 により行ってもよい。

 本発明において、最大繊維径が1000nmより きく、又は数平均繊維径が150nmより大きい 合には、セルロースナノファイバーとして 所望の特性が得にくくなる。そして、セル ースナノファイバーとしての特性を良好に 現するものとしては、最大繊維径が500nm以下 かつ数平均繊維径が2nm以上100nm以下であり、 らに好ましくは、最大繊維径が30nm以下かつ 数平均繊維径が2nm以上10nm以下である。

 特に最大繊維径が30nm以下かつ数平均繊維径 が2nm以上10nm以下であるセルロースナノファ バーであれば、その分散液は透明なものと り、またこの分散液を乾燥させて得られる ィルム等の構造体も優れた透明性を有する のとなる。
 より具体的には、本発明の製造方法により られるセルロースナノファイバーは、幅が3 nm~10nm(木材セルロースを用いれば3~4nm、綿セ ロースであれば10nm程度)と極めて細く、長さ も500nm以上(通常1μm以上)と、従来の酸加水分 で得られる「セルロースナノウィスカー(長 さは500nm以下)」に比べて長いため、高強度を 発現する。

 また、本発明のセルロースナノファイバー 、C6位のアルデヒド基を含まないものであ から、セルロースナノファイバー分散液を 熱、乾燥処理しても、アルデヒド基由来の 色成分は生成しない。したがって、本発明 セルロースナノファイバーによれば、無色 高い透明性を有するフィルムや複合材料を 製することができる。
 このように、本発明のセルロースナノファ バーは、その優れた強度と透明性によって 高機能ガスバリア性包装材料(フィルム、複 合材料)、ディスプレイ装置の基板、電子機 用基板材料等の用途に好適なものとなって る。

 また、高機能の水および空気用フィルター 触媒機能のある粉体の支持体、再生医療用 ノファイバー、ヘルスケア、健康食品等へ 用できる潜在能力も有している。
 また、バイオマス由来で生物分解性を有し 焼却処理でもカーボンニュートラルで二酸 炭素の増加とはならず(元々植物が二酸化炭 素から生成したものであるため)、土中に埋 込めば生分解性があるために、原料-生産-使 用-廃棄のサイクルの中でも、石油系の材料 比べて環境負荷が少ないという利点を有す 。

 また、本発明に係るセルロースナノファ バーは、他材料との混合性に優れ、水や親 性有機溶媒などの分散媒中で極めて高い分 安定効果を示す。また、分散液の状態で高 チキソトロピー性を発現し、条件によって ゲル状となるため、ゲル化剤としても有効 ある。

 さらに、本発明のセルロースナノファイ ーを樹脂材料などの他材料と複合化する場 には、他の材料中での優れた分散性を示し 透明な複合体を容易に得ることができる。 た複合体においては、セルロースナノファ バーが補強フィラーとしても機能する。さ に複合体中でセルロースナノファイバーが 度にネットワークを形成する場合には、使 した樹脂材料単体の場合に比して著しく高 強度が得られ、また著しい熱膨張率の低下 誘引することもできる。

 この他にも、本発明のセルロースナノフ イバーは、セルロースの持つ両親媒的性質 併せ持つため、例えば乳化剤や分散安定剤 して使用することもできる。特に、繊維中 カルボキシル基を有することで、表面電位 絶対値が大きくなるため、等電点(イオン濃 度が増大した際に凝集が起こり始める濃度) 低pH側にシフトすることが期待され、より広 範なイオン濃度条件で分散安定化効果が期待 できる。またカルボキシル基は金属イオンと 対イオンを形成するため、金属イオンの捕集 剤等としても有効である。

 以下、実施例により本発明をさらに詳細に 明する。ただし、本発明は以下の実施例に 定されるものではない。

 本実施例では、反応pH、反応時間、反応 度に関する検討結果について説明する。

 木材セルロース(1g)を、pH3.5に調整した0.1M 酢酸水溶液、pH4.8に調整した0.1M酢酸緩衝液、 及びpH6.8に調整した0.1Mリン酸緩衝液にそれぞ れ分散させ、各溶液にTEMPOを0.1mmol(0.0156g)、亜 塩素酸ナトリウム10mmol(市販80%亜塩素酸ナト ウム1.13g)を三角フラスコ中で加え、密閉し マグネチックスターラーにて十分に天然セ ロースが分散するまで攪拌した。

 続いて、反応溶液に0.2M濃度の次亜塩素酸ナ トリウム水溶液を2.5mL添加して、すぐに再度 閉した。この際に添加した次亜塩素酸ナト ウムは天然セルロース1gに対して0.5mmolであ 。
 続いて、密閉反応容器を25℃、40℃、60℃の ずれかの水浴中で、所定時間(2~72時間)攪拌 、その後、最大孔径40ミクロンのガラスフ ルターを用いて、吸引ろ過-水洗洗浄を繰り すことで、精製した繊維状TEMPO酸化セルロ スを得た。

 なお、ろ過-水洗浄方法で精製した酸化セ ルロースは、酸化による化学構造変化を考慮 して理論値を計算した場合のほぼ100%の収率 回収できた。これは、廃液成分に、副反応 よるセルロースの分解物がほとんど存在し いことを示しており、高収率で酸化セルロ スが得られるばかりではなく、廃液処理の 荷の低減につながるため、より産業化しや い製造方法であるといえる。

 そして、得られた酸化セルロースを水に 散させ、家庭用ミキサーによる解繊処理を った。また、得られた酸化セルロースにつ て、カルボキシル基の量を測定した。解繊 理及びカルボキシル基量測定の結果を表1に 示す。

 カルボキシル基の量は、以下の手法により 定することができる。
 まず、乾燥重量を精秤した酸化セルロース 料から0.5~1重量%のスラリーを60ml調製し、0.1 Mの塩酸水溶液によってpHを約2.5とした後、0.0 5Mの水酸化ナトリウム水溶液を滴下して電気 導度を測定する。測定はpHが11になるまで続 ける。そして、電気伝導度の変化が緩やかな 弱酸の中和段階において消費された水酸化ナ トリウム量(V)から、下式を用いて官能基量を 決定する。この官能基量がカルボキシル基の 量である。
 官能基量(mmol/g)=V(ml)×0.05/セルロースの質量( g)

 なお、同様の式からアルデヒド基の量も 定することができる。上記のカルボキシル 量の測定に供した酸化セルロース試料を、 酸でpH4~5に調整した2%亜塩素酸ナトリウム水 溶液中でさらに48時間常温で酸化し、上記手 によって再び官能基量を測定する。測定さ た官能基量から上記カルボキシル基の量を いた量がアルデヒド基の量である。

 表1において、「ナノファイバー化可」と記 された条件では、ミキサーによる解繊処理で ほぼ全体が透明な分散液に変換され、酸化セ ルロース繊維が1本1本に分離されてナノファ バー化されたことが確認された。
 この結果から、添加試薬量を一定とした場 には、pH6.8の緩衝液中で60℃、2~6時間の反応 処理で、解繊処理によってナノファイバー化 が可能な酸化セルロースを得られることが示 された。

 また、亜塩素酸ナトリウムを主酸化剤とし pH6.8の緩衝液中でTEMPO酸化した場合には、導 入するカルボキシル基量が0.5mmol/g程度でナノ ファイバー化が可能であることが判明した。 これに対して、先願製造方法の次亜塩素酸ナ トリウムを主酸化剤とするpH8~11のTEMPO酸化で 、解繊処理によってナノファイバー化する に必要なカルボキシル基量が、1.0mmol/g以上 より最適なのは約1.5mmol/gである。したがっ 、本発明の製造方法では、添加試薬量を先 製造方法の約1/3にまで減らすことができる
 この理由としては、ナノファイバー間で架 構造を形成することが可能な残存アルデヒ 基がないために解繊が容易になったこと、 繊処理で必要なセルロースミクロフィブリ 表面に効率的に、均一にカルボキシル基が 入されたことなどが考えられる。

 ここで図3は、上記表1の結果に基づき、反 時間と導入されたカルボキシル基量の関係 示したグラフである。なお、図3には、次亜 素酸ナトリウムを添加せずに作製した試料 結果も併記されている。
 図3に示すように、反応のpHを6.8に制御する とで、効率的にセルロースを酸化してカル キシル基を導入できる最適条件が得られる また、pHが4.8の条件でも反応時間を長くす ばナノファイバー化が可能である。しかし pHが3.5の条件では、カルボキシル基の導入が 進行せず、セルロースを酸化することができ ない。一方、亜塩素酸ナトリウムはpH4の条件 でアルデヒド基をカルボキシル基に酸化する ことが確認されており、このことと上記結果 から、本発明における反応pHの好ましい範囲 4以上7以下である。

 本実施例では、反応溶液に添加する次亜 素酸ナトリウムの量に関する検討結果につ て説明する。

 本実施例では、反応溶液に添加する次亜塩 酸ナトリウムの量を、0~1.0mmol/gの範囲で変 て酸化セルロースを作製した。その他の反 溶液の条件は実施例1と同様である。
 得られた酸化セルロースについて、実施例1 と同様に、解繊処理とカルボキシル基量の測 定を行った結果を表2に示す。

 表2の結果から、次亜塩素酸ナトリウムの 添加量の増加に伴って、酸化セルロース中の カルボキシル基量が増加している。次亜塩素 酸ナトリウムを添加しないものと比較すると 、少量の添加で著しい効果が得られており、 ナノファイバー化の効率の向上や反応時間の 短縮に有効である。なお、次亜塩素酸ナトリ ウムを入れすぎると、亜塩素酸ナトリウムが 主酸化剤とならなくなるので、最大でセルロ ース1g当たり1mmol程度が良いと判断される。

 本実施例では、反応溶液に添加する触媒 種類に関する検討結果について説明する。

 本実施例では、反応溶液に添加する酸化触 として、TEMPO、及び4-アセトアミドTEMPOをそ ぞれ用いて酸化セルロースを作製した。図4 に、これらの酸化触媒の化学構造を示す。そ の他の反応溶液の条件は実施例1と同様であ 。
 得られた酸化セルロースについて、実施例1 と同様にカルボキシル基量の測定を行った結 果を表3に示す。

 表3の結果から、4-アセトアミドTEMPOを用 ることによる酸化反応の効率向上が認めら た。しかし、反応系のpHの影響の方がはるか に大きかった。したがって、酸化反応のpHを6 .8に制御することが改めて重要であることを 認した。

 本実施例では、本発明の製造方法と先願 造方法のそれぞれで得られるセルロースナ ファイバーの分子量に関する検証結果につ て説明する。

 本発明の目的の一つは、酸化セルロース 分子量低下を抑えることである。先の実施 で説明したように、反応溶液のpHは6.8が最 であり、このpHではベータ脱離反応は起こり にくいため、たとえ中間体としてアルデヒド 基が生成しても、ベータ脱離反応による低分 子化は起こらないと考えられる。むしろ、亜 塩素酸ナトリウムによって選択的に、迅速に カルボキシル基にまで酸化するため、低分子 化の少ない、アルデヒド基のない酸化セルロ ースが得られることが期待される。

 そこで、本実施例では、先願製造方法に り得られた酸化セルロース(次亜塩素酸ナト リウムを主酸化剤としてpH10で反応させて得 れた酸化セルロース)と、本発明の亜塩素酸 トリウムを主酸化剤としてpH6.8で得られた 化セルロースの重合度を測定した。表4に重 度の測定結果を示す。

 なお、重合度とは、「1本のセルロース分 子中に含まれる平均グルコース成分の数」で あり、重合度に162をかければ分子量となる。 本実施例では、0.5Mの銅エチレンジアミン溶 に、前もって水素化ホウ素ナトリウムで還 して、残存アルデヒド基をアルコールに還 した後に各酸化セルロース試料を溶解させ 粘度法にて重合度を求めた。銅エチレンジ ミン溶液はアルカリ性であるため、酸化セ ロース中にアルデヒド基が残存していた場 には、溶解過程でベータ脱離反応が起こっ 分子量が低下してしまう可能性があるため 、予め還元処理してアルデヒド基をアルコ ル性水酸基に変換しておいた。0.5Mの銅エチ ンジアミン溶液に溶解させたセルロースの 度から、セルロースの重合度を求める式に いては、以下の文献を参考にした。

 (文献)Isogai, A., Mutoh, N., Onabe, F., Usuda, M. , “Viscosity measurements of cellulose/SO 2 -amine-dimethylsulfoxide solution”, Sen’i Gakkaishi, 45, 299-306 (1989).

 表4において、試料A~Cが本発明の製造方法 により作製した酸化セルロースであり、試料 D,Eが先願製造方法により作製した酸化セルロ ースである。

 表4に示す結果から、本発明に係る製造方 法(亜塩素酸ナトリウムを主酸化剤とする次 塩素酸ナトリウム-TEMPO酸化系)で得られる酸 セルロースは、元のセルロースに比べれば 分子化が生じてはいるが、元のセルロース 重合度の60%以上を維持している。一般的に ルロース材料の強度を発現するためには、 合度は600以上は必要といわれているが、本 明による酸化セルロースはこの値を大きく えている。

 一方、先願製造方法(次亜塩素酸ナトリウ ムを主酸化剤とするpH10のTEMPO触媒酸化系)で られた酸化セルロースの重合度は約200と、 しく低分子化しており、元の重合度の14%で かない。これだけ低分子化すると、セルロ ス材料としての強度は大きく低下している のと考えられる。

 以上から、本発明に係る製造方法によれ 、先願製造方法に比べて重合度が著しく大 い酸化セルロースを得ることができ、セル ース材料としての本来の強度を発現するセ ロースナノファイバーを製造することがで る。

 本実施例では、本発明の製造方法と先願 造方法のそれぞれで得られるセルロースナ ファイバーを用いて作製したフィルムに関 る検証結果について説明する。

 本発明の目的の一つは、酸化セルロース 分散液を加熱したときの着色を抑えること ある。すなわち、先願製造方法で得られるT EMPO酸化セルロースの問題点として、残存す アルデヒド基により、加熱乾燥過程で黄変 る点があった。そこで、表4に示した試料Cと 試料Dについて、105℃で3時間オーブン乾燥さ 、ISO標準法に基づいて、白色度を測定した その結果を表5に示す。

 表5の結果から、本発明の製造方法で得ら れた酸化セルロース試料Cでは、原料の木材 ルロースに対する白色度の低下がほとんど かった。これに対して、先願製造方法で得 れた酸化セルロース試料Dでは、明瞭な白色 低下が認められた。

 本実施例では、本発明の製造方法により られる酸化セルロースの結晶構造、及び結 化度、並びに本発明の製造方法により得ら るセルロースナノファイバーの性状に関す 検証結果について説明する。

 図5は、本発明の製造方法によって得られた 酸化セルロースのX線回折パターンを測定し 結果を、原料の木材セルロースのX線回折パ ーンとともに示す図である。
 図5から明らかなように、本発明の製造方法 によって得られた酸化セルロースは、原料の 木材セルロースと同様の結晶構造であり、X 回折パターンから計算されるセルロースの 晶化度、セルロースの結晶サイズについて 全く変化していなかった。
 すなわち、本発明の製造方法では、先願製 方法と同様に、導入されたカルボキシル基 、セルロースミクロフィブリルの表面にの 存在し、セルロースの結晶内部には生成し いないことが示され、結晶性のセルロース クロフィブリル表面の位置選択的な酸化で ることが示された。
 なお、セルロース結晶内部にまで酸化が起 れば、結晶化度が低下し、結晶サイズも小 くなるはずである。

 次に、実施例1において作製したセルロー スナノファイバーを透過型電子顕微鏡で観察 した。観察に供した試料は、亜塩素酸ナトリ ウムを主酸化剤としてpH6.8の条件で作製した 化セルロースを、水に分散させて家庭用ミ サーで解繊処理したもののうち、光学的に 明な水分散液が得られたものである。先に したように、導入したカルボキシル基量が0 .5mmol/g以上であれば、解繊処理によって光学 に透明な水分散液が得られる。

 図6は、電子顕微鏡観察により得られた画 像である。図6に示すように、本発明の製造 法により得られるセルロースナノファイバ は、幅が3~4nmで、長さは数μm以上もあり、1 1本が完全に分離したナノファイバーである

 上述したように、導入したカルボキシル基 が0.5mmol/g以上であれば、解繊処理によって 明な水分散液、すなわち、完全に1本1本が 離したセルロースナノファイバー水分散液 調製することができた。図7に、その分散液 写真と、偏光板を通した写真を示す。
 図7の写真を比較すれば明らかなように、左 側の写真では透明に見える分散液が、偏光板 を通して見た右側の写真では、明瞭な複屈折 性を示している。このことは、酸化セルロー スが確かにナノファイバーとして分散し、そ れらがある程度規則的に並んだ部分が水分散 液中に存在していることを示している。また このような複屈折性と配向性とから、位相差 板や光学補償板などの光学機能素子への応用 の可能性が示唆される。

 本発明のセルロースナノファイバーの製 方法によれば、カルボキシル基のみで酸化 れており、加熱しても着色の生じないセル ースナノファイバーを製造することができ 。また、重合度が高く、強度に優れたセル ースナノファイバーを製造することができ ことから、本発明の製造方法は、産業上極 て有用である。