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Patent Searching and Data


Title:
COATED FINE METAL PARTICLE AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/119757
Kind Code:
A1
Abstract:
A process for producing coated fine metal particles comprising core particles of a metal which have been coated with a titanium oxide and a silicon oxide in this order, characterized by: mixing a powder comprising TiC and TiN with a powder of an oxide of a metal (M) having a standard free energy of formation (∆GM-O) satisfying the relationship ∆GM-O>∆GTiO2, heat-treating the mixture in a non-oxidizing atmosphere to reduce the metal (M) oxide with the powder comprising TiC and TiN and coat the surface of the resultant metal (M) particles with a titanium oxide, subsequently coating the surface of the titanium oxide coating with a silicon oxide, and classifying the resultant particles so as to obtain particles having a median diameter (d50) of 0.4-0.7 µm and a coefficient of variation indicating particle diameter distribution width [=(standard deviation)/(average particle diameter)] of 35% or less. Also provided are coated fine metal particles comprising core particles of a metal which have been coated with a titanium oxide and a silicon oxide in this order, characterized by having a median diameter (d50) of 0.4-0.7 µm and a coefficient of variation indicating particle diameter distribution width [=(standard deviation)/(average particle diameter)] of 35% or less.

Inventors:
TOKORO HISATO (JP)
NAKABAYASHI TAKASHI (JP)
FUJII SHIGEO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/056160
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
March 26, 2009
Export Citation:
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Assignee:
HITACHI METALS LTD (JP)
TOKORO HISATO (JP)
NAKABAYASHI TAKASHI (JP)
FUJII SHIGEO (JP)
International Classes:
B22F1/16; B22F9/20
Domestic Patent References:
WO2007148734A12007-12-27
Foreign References:
JP2007224323A2007-09-06
JP2005120470A2005-05-12
JP2000030920A2000-01-28
JPH09143502A1997-06-03
Other References:
See also references of EP 2272608A4
Attorney, Agent or Firm:
TAKAISHI, Kitsuma (JP)
Kitsuma Takaishi (JP)
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Claims:
金属の核粒子にTi酸化物とケイ素酸化物とを順に被覆してなる被覆金属微粒子を製造する方法であって、TiC及びTiNを含有する粉末と、標準生成自由エネルギー(δG M-O )がδG M-O >δG TiO2 の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合し、非酸化性雰囲気中で熱処理することにより、前記金属Mの酸化物を前記TiC及びTiNを含有する粉末により還元するとともに、得られた金属Mの粒子表面をTi酸化物で被覆した後、さらに前記Ti酸化物の被覆の表面をケイ素酸化物で被覆し、得られた粒子をメディアン径(d50)が0.4~0.7μm、及び粒径分布幅を表す変動係数(=標準偏差/平均粒径)が35%以下となるように分級することを特徴とする被覆金属微粒子の製造方法。
請求項1に記載の被覆金属微粒子の製造方法において、前記分級を、磁気分離による方法、デカンテーションによる方法、フィルターによる方法、遠心分離装置による方法、又はそれらの組み合わせにより行うことを特徴とする被覆金属微粒子の製造方法。
請求項1又は2に記載の被覆金属微粒子の製造方法において、前記TiC及びTiNを含有する粉末は10~50質量%のTiNを含有することを特徴とする被覆金属微粒子の製造方法。
請求項1~3のいずれかに記載の被覆金属微粒子の製造方法において、前記Ti酸化物がTiO 2 を主体とすることを特徴とする被覆金属微粒子の製造方法。
請求項1~4のいずれかに記載の被覆金属微粒子の製造方法において、前記熱処理を650~900℃で行うことを特徴とする被覆金属微粒子の製造方法。
金属の核粒子にTi酸化物とケイ素酸化物とを順に被覆してなる被覆金属微粒子であって、メディアン径(d50)が0.4~0.7μmであり、粒径分布幅を表す変動係数(=標準偏差/平均粒径)が35%以下であることを特徴とする被覆金属微粒子。
請求項6に記載の被覆金属微粒子において、炭素含有量が0.2~1.4質量%及び窒素含有量が0.01~0.2質量%であることを特徴とする被覆金属微粒子。
請求項7に記載の被覆金属微粒子において、炭素と窒素との含有量の合計が0.24~0.6質量%であることを特徴とする被覆金属微粒子。
請求項6~8のいずれかに記載の被覆金属微粒子において、飽和磁化が80 Am 2 /kg以上であることを特徴とする被覆金属微粒子。
請求項6~9のいずれかに記載の被覆金属微粒子において、PBSバッファー中に分散させてなる分散液の吸光度を静置状態で測定したときの吸光度の減少速度が1秒当たり0.01~0.03%であることを特徴とする被覆金属微粒子。
請求項6~10のいずれかに記載の被覆金属微粒子において、免疫検査における抗原の検出に用いられることを特徴とする被覆金属微粒子。
Description:
被覆金属微粒子及びその製造方

 本発明は、磁気テープ又は磁気記録ディ ク等の磁気記録媒体、電波吸収体、インダ タ又はプリント基板等の電子デバイス(ヨー ク等の軟磁性体)、光触媒、核酸抽出用磁気 ーズ、医療用マイクロスフィア等に用いる 覆金属微粒子、及びその製造方法に関する

 電子機器及び電子デバイスの高性能化及 小型軽量化とともに、それらを構成する材 の高性能化及び微粒子化が要求されている 例えば磁気テープに塗布する磁性粒子は、 気記録密度の向上を目的として、微粒子化 磁化の向上が同時に要求されている。

 また、抗原等のタンパク質を分離・回収 アレルギー等の疾病を診断するために、磁 分離法が広く用いられるようになってきて り、高磁化を有し耐食性に優れた微粒子の 気ビーズの要求が高まってきている。

 磁性微粒子は主に共沈法や水熱合成法等の 相合成法により製造されている。液相合成 で得られる磁性微粒子はフェライトやマグ タイト等の酸化物粒子である。最近では有 金属化合物の熱分解を利用した方法も採用 れており、例えばFe(CO) 6 からFeの磁性微粒子が製造されている。

 金属の磁性粒子はフェライト等の酸化物粒 に比べて磁化が大きいため、工業的利用へ 期待が大きい。例えば、金属Feの飽和磁化 218 Am 2 /kgと酸化鉄に比べて非常に大きいので、磁界 応答性に優れ、大きな信号強度が得られると いう利点がある。しかし金属Fe等の金属微粒 は容易に酸化し、例えば100μm以下、特に1μm 以下の粒径を有する微粒子状にすると、比表 面積の増大により大気中で激しく燃えるので 、乾燥状態で取り扱うのが難しい。そのため 、フェライトやマグネタイト等の酸化物粒子 が広く利用されている。

 乾燥した金属微粒子を取り扱う場合、金 を直接大気(酸素)に触れさせないように粒 表面を被覆することが不可欠である。しか 特開2000-30920号に記載の、粒子自身の金属酸 物で表面を被覆する方法は、少なからず金 を酸化劣化させてしまう。

 特開平9-143502号は、カーボンブラック、 然黒鉛等の炭素質物質粒子と、金属単体の 子又は金属化合物粒子(金属化合物は、金属 化物、金属炭化物及び金属塩から選ばれる )とを混合し、不活性ガス雰囲気中で1600~2800 ℃に熱処理し、45℃/分以下の冷却速度で冷却 することにより、グラファイト被覆金属微粒 子を製造する方法を提案している。しかし、 この方法は1600~2800℃と極めて高い温度で金属 含有物質粒子を熱処理するので、金属微粒子 の焼結が懸念され、かつ生産効率が低い。ま たグラファイトはグラフェンシートが積層し た構造を有するため、球状の金属微粒子を被 覆した場合、必ず格子欠陥が導入される。こ のため、磁気ビーズ等の高耐食性が要求され る用途には不満足である。従って、高耐食性 の金属微粒子、及びそれを安価に製造し得る 工業生産性に優れた方法が望まれている。

 従って、本発明の目的は、耐食性に優れ 高磁化を有する被覆金属微粒子、及びその 造方法を提供することである。

 上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者 は、TiC及びTiNを含有する粉末と、TiO 2 よりも高い標準生成自由エネルギーを有する 金属酸化物粉末とを混合し、熱処理すること によりTi酸化物で被覆された金属粒子が得ら ること、及び前記Ti酸化物被覆金属粒子の 面をさらにケイ素酸化物で被覆し、分級す ことにより分散安定性に優れた磁性シリカ 子が得られることを見出し、本発明に想到 た。

 すなわち、被覆金属微粒子を製造する本発 の方法は、金属の核粒子にTi酸化物とケイ 酸化物とを順に被覆してなる被覆金属微粒 を製造する方法であって、TiC及びTiNを含有 る粉末と、標準生成自由エネルギー(δG M-O )がδG M-O >δG TiO2 の関係を満たす金属Mの酸化物粉末とを混合 、非酸化性雰囲気中で熱処理することによ 、前記金属Mの酸化物を前記TiC及びTiNを含有 る粉末により還元するとともに、得られた 属Mの粒子表面をTi酸化物で被覆した後、さ に前記Ti酸化物の被覆の表面をケイ素酸化 で被覆し、得られた粒子をメディアン径(d50) が0.4~0.7μm、及び粒径分布幅を表す変動係数(= 標準偏差/平均粒径)が35%以下となるように分 することを特徴とする。

 前記分級は、磁気分離による方法、デカ テーションによる方法、フィルターによる 法、遠心分離装置による方法、又はそれら 組み合わせにより行うのが好ましい。

 前記TiC及びTiNを含有する粉末は10~50質量%のT iNを含有するのが好ましい。TiNの含有率は以 の式(1)により定義される。
TiN含有率(質量%)=[TiN(質量%)]/[TiC(質量%)+TiN(質 %)] ・・・式(1)

 前記Ti酸化物はTiO 2 を主体とすることを特徴とするのが好ましい 。TiO 2 を主体とするTi酸化物被覆層は高結晶性であ 、コアとなる金属微粒子(金属のコア粒子) 十分に保護することができる。ここで「TiO 2 を主体とする」とは、X線回折測定で検出さ るTiO 2 以外のTi酸化物(例えば不定比組成のTi n O 2n-1 )も含むTi酸化物に相当する回折ピークの中で 、TiO 2 に相当するピークの強度が最大であることを 意味する。均一性の観点から、実質的にTiO 2 からなるのが好ましい。ここで「実質的にTiO 2 からなる」とは、X線回折パターンでTiO 2 以外のTi酸化物のピークが明確に確認できな 程度にTiO 2 の割合が多いことを言う。従って、X線回折 ターンでノイズ程度にTiO 2 以外のTi酸化物のピークがあっても、「実質 にTiO 2 からなる」の条件は満たす。

 前記金属MはFe、Co及びNiからなる群から選 ばれた少なくとも1種の元素を含む磁性金属 あるのが好ましく、特にFeであるのが好まし い。Tiは、Feより酸化物の標準生成エネルギ が小さいため、Feの酸化物を効率良く確実に 還元することができる。従って、飽和磁化が 高く耐食性に優れた磁性金属微粒子が得られ る。磁性金属を核とすることにより、磁気ビ ーズとして磁気分離工程に用いることが可能 となる。

 金属Mの酸化物はFe 2 O 3 であるのが好ましい。保磁力が低下し、分散 性が向上した被覆金属微粒子を得るために、 金属Mの酸化物粉末とTiC及びTiNを含有する粉 との合計に対するTiC及びTiNを含有する粉末 比率は30~50質量%であるのが好ましい。

 前記熱処理は650~900℃で行うのが好ましい 。

 本発明の被覆金属微粒子は、金属の核粒 にTi酸化物とケイ素酸化物とを順に被覆し なる被覆金属微粒子であって、メディアン (d50)が0.4~0.7μmであり、粒径分布幅を表す変 係数(=標準偏差/平均粒径)が35%以下であるこ を特徴とする。

 ケイ素酸化物を被覆することにより核酸 出担体としての特性を発現する。また酸や 基を用いての固定化処理においても高い耐 性を示し、抗体等を固定化する用途に好適 ある。

 メディアン径(d50)が0.7μmを越えると溶液 での粒子の沈降が速くなり好ましくない。0. 4μm未満であると1粒子あたりの磁化が低下し しまい磁気分離等の効率が低下する。変動 数が35%を越えると、0.4~0.7μmの粒径範囲から 外れた粒子の割合が増加するので上記の問題 が生じる。変動係数を35%以下にすることによ り、磁気ビーズを構成した場合の免疫検査( ムノアッセイ)における抗原検出感度が高く る。変動係数は好ましくは30%以下である。

 本発明の被覆金属微粒子は、炭素含有量 0.2~1.4質量%及び窒素含有量が0.01~0.2質量%で るのが好ましく、炭素含有量が0.2~1.1質量%及 び窒素含有量が0.04~0.12質量%であるのがより ましい。炭素と窒素の含有量の合計は0.24~0.6 質量%であるのが好ましく、0.25~0.55質量%であ のがより高い磁化を得るために好ましい。

 被覆金属微粒子の飽和磁化は、80 Am 2 /kg 以上であるのが好ましい。80 Am 2 /kg 以上の飽和磁化は、マグネタイト等の酸 物磁性体では得ることができない。飽和磁 は180 Am 2 /kg以下であるのが好ましい。80~180 Am 2 /kgの範囲の飽和磁化を有する被覆金属微粒子 は、被覆層と磁性体(磁性コア)との量のバラ スがとれ、優れた耐食性及び磁気特性を有 る。このような高い飽和磁化を有すること より、被覆金属微粒子の磁気捕集効率を著 く高めることができる。飽和磁化はより好 しくは95~180 Am 2 /kgであり、最も好ましくは100~180 Am 2 /kgである。

 被覆金属微粒子は8 kA/m以下の保磁力を有 するのが好ましい。このような保磁力を有す る被覆金属微粒子は、残留磁化が極めて小さ いため、磁気凝集が極めて少なく分散性に優 れている。より好ましい保磁力は4 kA/m以下 ある。

 PBSバッファー中に被覆金属微粒子を均一 分散させて、その分散液の吸光度を静置状 で測定したときの吸光度の減少速度は、1秒 当たり0.01~0.03%であるのが好ましい。被覆金 微粒子の沈降速度が遅いことで、液中の対 物質を十分捕捉することができる。吸光度 減少速度が1秒当たり0.01%未満であると液中 おける粒子移動距離が小さすぎるため、磁 から離れた物質を捕捉しにくくなり効率が 下する。

 被覆金属微粒子のX線回折パターンにおいて TiO 2 の最大ピークの半値幅が0.3°以下であり、か 金属Mの最大ピークに対するTiO 2 の最大ピークの強度比が0.03以上であるのが ましい。最大ピーク強度比は0.05以上である がより好ましい。

 本発明の被覆金属微粒子のX線光電子分光 分析によるO、Ti及びFeの定量分析において、F e含有量は14~20原子%であり、金属Fe成分の比率 はFe全体の7~11%であるのが好ましい。Feを含有 することにより、高い飽和磁化が得られる。

 本発明の被覆金属微粒子は、濃度6 Mのグ アニジン塩酸塩水溶液中に前記被覆金属微粒 子を25℃で24時間浸漬(前記水溶液1 mLあたり 記被覆金属微粒子25 mgの割合)したときの、F eイオン溶出量が50 mg/L以下であるのが好まし い。高カオトロピック塩濃度でも高い耐食性 を示す被覆金属微粒子は、DNA抽出等の用途に 好適である。

 本発明の被覆金属微粒子は、アルカリ処 をしたものであるのが好ましい。

 被覆金属微粒子は、免疫検査における抗 の検出に用いられるのが好ましい。

 本発明の被覆金属微粒子は、さらにアミ 基、カルボキシル基、アルデヒド基、チオ ル基、トシル基及びヒドロキシル基からな 群から選ばれた少なくとも1種を表面に固定 化してなるのが好ましい。これにより、様々 な物質を固定化することが容易にできる。

 本発明の被覆金属微粒子は、さらにリガ ドを表面に固定化してなるのが好ましい。 ガンドの特異的な反応を用いて対象物質を 捉することができる。

 本発明の被覆金属微粒子は、さらにブロ キング剤を被覆してなるのが好ましい。ブ ッキング剤により非特異的な吸着を抑制で る。アミノ基等やリガンドが固定化された 分以外の表面をブロッキング剤で覆うよう することが好ましい。

 本発明の方法により、耐食性に優れ、補 能に優れた被覆金属微粒子が安価でかつ簡 に得ることができる。Ti酸化物とケイ素酸 物とを順に被覆してなる本発明の被覆金属 粒子は、高い耐食性を有しており、腐食性 溶液中での使用が可能である。さらに、小 な粒径及び狭い粒径分布を有するため、粒 の沈降速度が遅く、液中の対象物質を十分 捉することができる。このため、DNA抽出等 用途、抗体等を固定化して抗原を検出する 途等に好適である。

参考例1の試料粉末のX線回折パターン 示すグラフである。 参考例1の試料粉末を走査型電子顕微鏡 で撮影した写真である。 参考例25及び参考例26のDNA抽出量と耐久 試験時間との関係を示すグラフである。 フローサイトメータを用いて測定した きの、参考例28、参考例29及び比較例AのFITC 光強度と粒子数との関係を示すグラフであ 。 フローサイトメータを用いて測定した きの、参考例30、参考例31及び比較例BのFITC 光強度と粒子数との関係を示すグラフであ 。 フローサイトメータを用いて測定した きの、参考例32A、参考例32B及び比較例CのPE 光強度と粒子数との関係を示すグラフであ 。 被覆金属微粒子を用いて作製したELISA 示す模式図である。 参考例35の、ヒトアディポネクチン濃 とシグナル強度との関係を示すグラフであ 。 参考例36及び参考例37の、ヒトアディポ ネクチン濃度とシグナル強度との関係を示す グラフである。 実施例4及び比較例2の被覆金属微粒子 分散液の吸光度の時間変化を示すグラフで る。 実施例4及び比較例2~4の磁気ビーズの ディアン径とビオチン結合量との関係を示 グラフである。 検出感度と磁気ビーズ粒径の変動係数 との関係を示すグラフである。

[1]被覆金属微粒子の製造方法
 金属の核粒子にTi酸化物とケイ素酸化物と 順に被覆してなる被覆金属微粒子は、金属 Ti酸化物を被覆したTi被覆金属微粒子に、さ にケイ素酸化物を被覆して製造する。得ら たシリカ被覆金属微粒子(「磁性シリカ粒子 」とも言う。)を、分級することによりメデ アン径(d50)が0.4~0.7μm、及び粒径分布幅を表 変動係数(=標準偏差/平均粒径)が35%以下のシ カ被覆金属微粒子が得られる。
(1) Ti被覆金属微粒子の作製
 Ti被覆金属微粒子は、標準生成自由エネル ー(δG M-O )がδG M-O >δG TiO2 の関係を満たす金属Mの酸化物粉末と、TiC及 TiNを含む粉末とを混合し、得られた混合粉 を非酸化性雰囲気中で熱処理することによ 、金属Mの酸化物をTiC及びTiNにより還元する ともに、得られた金属Mの粒子表面を、TiO 2 を主体とするTi酸化物で被覆することによっ 作製する。

(i)金属Mの酸化物粉末
 金属Mの酸化物粉末の粒径は、被覆金属微粒 子の目標粒径に合わせて選択し得るが、0.001~ 5μmの範囲内であるのが好ましい。粒径が0.001 μm未満では、2次凝集が著しく起こるため、 下の製造工程での取り扱いが困難である。 た5μm超では、金属酸化物粉末の比表面積が さすぎるため、還元反応の進行が遅い。金 酸化物粉末の実用的な粒径は0.005~1μmである 。金属Mは遷移金属、貴金属及び希土類金属 ら選ばれるが、磁性材用であればFe、Co、Ni はこれらの合金が好ましく、その酸化物と てはFe 2 O 3 、Fe 3 O 4 、CoO、Co 3 O 4 、NiO等が挙げられる。特にFeは飽和磁化が高 ため好ましく、酸化物としてはFe 2 O 3 が安価である点で好ましい。TiはFeより酸化 の標準生成エネルギーが小さいため、Fe酸化 物を効率良くかつ確実に還元することができ る。

 標準生成自由エネルギー(δG M-O )がδG M-O >δG TiO2 の関係を満たす金属Mの酸化物であれば、TiC びTiNを含む粉末により還元することができ 。δG M-O は金属Mの酸化物の標準生成エネルギーであ 、δG TiO2 (=-889kJ/mol)はTiの酸化物の標準生成エネルギー である。例えばFe 2 O 3 (δG Fe2O3 =-740kJ/mol)はδG Fe2O3 >δG TiO2 を満たすので、TiC及びTiNを含む粉末により還 元される。還元によりTiO 2 の被覆が形成されると被覆金属微粒子の比重 が低下する。さらにTiO 2 は親水性が高いので、TiO 2 被覆金属微粒子は、例えば磁気ビーズ用のよ うに溶液中(水中等)に分散させて用いる場合 好適である。

(ii) TiC及びTiNを含む粉末
 M酸化物を還元し、Ti酸化物で被覆され、Mと TiO 2 以外の相が低減したM金属の微粒子を形成す ために、TiC及びTiNを含む粉末を用いる。TiN TiCと併用することによってC残存量が低減す 。

 還元反応を効率的に行うためには、TiC及 TiNを含む粉末の粒径は0.01~20μmであるのが好 ましい。0.01μm未満の粒径であると大気中で 末が酸化し易いのでハンドリングが難しい また20μm超であると比表面積が小さく還元反 応が進行しにくい。大気中での酸化を抑制し つつ、還元反応を十分に進行させるためには 、特に0.1~5μmの粒径であるのが好ましい。

(iii)還元反応
 M酸化物の粉末に対するTiC及びTiNを含む粉末 の比率は、少なくとも還元反応の化学量論比 であることが好ましい。Tiが不足すると、熱 理中にM酸化物粉末が焼結し、バルク化して しまう。

 TiC及びTiNを併用する場合、TiNの含有率は1 0~50質量%であるのが好ましい。ここでTiNの含 率は式(1):TiN含有率(質量%)=[TiN(質量%)]/[TiC(質 量%)+TiN(質量%)] により定義される。TiNの含有 率が10質量%未満の場合は元素Cを低減する効 が十分得られない。TiN含有率が50質量%を越 るとCが不足することにより、酸化物から金 Mへの還元が不十分となり、完全な被覆金属 微粒子が得られない。M酸化物粉末とTiC及びTi Nを含む粉末との混合には、乳鉢、スターラ V字型ミキサ、ボールミル、振動ミル等の攪 機を用いる。

 M酸化物粉末とTiC及びTiNを含む粉末の混合粉 末を非酸化性雰囲気中で熱処理すると、M酸 物粉末とTiC及びTiNを含む粉末との酸化還元 応が起こり、TiO 2 を主体とするTi酸化物で被覆された金属Mの粒 子が生成する。熱処理雰囲気は非酸化性であ るのが好ましい。非酸化性雰囲気としては、 例えばAr、He等の不活性ガスや、N 2 、CO 2 、NH 3 等のガスが挙げられるが、これらに限定され ない。熱処理温度は650~900℃が好ましい。650 未満であると還元反応が十分に進行せず、 た900℃超であると不定比組成のTi n O 2n-1 が生成してしまう。Ti n O 2n-1 は、900℃超で金属MがTiO 2 から酸素を取り込むか、TiO 2 が非酸化性雰囲気中に酸素を放出することに より生成する。その結果、金属Mの酸化物の 元が不十分であるか、被覆層が不完全とな 。熱処理温度が650~900℃の場合に、欠陥が少 く、均一性の高いほぼTiO 2 からなる被覆(被覆層)が形成される。TiO 2 からなる被覆は、光触媒用の被覆金属微粒子 を作製するのに好適である。

(iv)磁気分離
 得られる磁性被覆金属微粒子は非磁性成分( TiO 2 を主体とするTi酸化物のみからなる粒子)を含 んでいる場合があるため、必要に応じて永久 磁石を用いて磁気分離操作を複数回行い、磁 性粒子だけを回収するのが好ましい。

(2) シリカ被覆金属微粒子の作製
 Ti被覆金属微粒子に、さらにシリカを被覆 、シリカ被覆金属微粒子を作製する。アル ール溶媒(メタノール、エタノール、n-プロ ノール、i-プロパノール、ブタノール等)中 分散したTi被覆金属微粒子に、アルコキシシ ラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキ シラン、テトラプロポキシシラン、テトラ トキシシラン、ジエトキシジメトキシシラ 、アミノプロピルトリメトキシシラン等)を 加し、塩基性触媒(アンモニア、アミン、NaO H又はKOH)下で加水分解及び縮重合することに りTi被覆金属微粒子表面にシリカが被覆さ る。得られたシリカ被覆金属微粒子は、必 に応じて永久磁石を用いて磁気分離操作を 数回行い、磁性粒子だけを回収するのが好 しい。

 アルコキシシランは、他の金属アルコキ ド(アルミニウムイソプロポキシド等)を添 して用いても良い。金属アルコキシドの添 量は、アルコキシシランの10質量%以下であ のが好ましい。金属アルコキシドを添加す ことにより、ケイ素酸化物と金属酸化物と 結合し緻密な構造を形成する。

(3) シリカ被覆金属微粒子の分級
 シリカ被覆金属微粒子を、磁気分離による 法、デカンテーションによる方法、フィル ーによる方法、遠心分離装置による方法、 はそれらの組み合わせにより、メディアン (d50)が0.4~0.7μm、及び粒径分布幅を表す変動 数(=標準偏差/平均粒径)が35%以下となるよう に分級する。分級の際には予め凝集を解消し ておくのが好ましく、上記分級処理の前に分 散処理を施すのが好ましい。分散処理として は、機械的解砕処理、超音波照射分散処理、 気圧差を利用した分散処理等が挙げられる。

[2]被覆金属微粒子の構造及び特性
(1)被覆金属微粒子の粒径及び粒径分布
 上記方法により得られる被覆金属微粒子の 径は、M酸化物粉末の粒径に依存する。高い 耐食性及び分散性を得るために、被覆金属微 粒子のメディアン径(d50)は0.4~0.7μmである。メ ディアン径が0.4μm未満であると、十分な厚さ の被覆を確保できずに耐食性が低くなるだけ でなく、1粒子当たりの磁化が極めて小さく り磁気応答性が低くなってしまう。メディ ン径(d50)が0.7μmを超えると、分散性が低下し 、液体中での粒子沈降が速くなりハンドリン グが難しくなる。

 被覆金属微粒子の粒度分布幅を表す変動 数は35%以下が好ましい。変動係数が35%を越 ると、0.4~0.7μmの粒径範囲から外れた粒子の 割合が増加するため、前記耐食性の低下、磁 気応答性の低下、分散性の低下等の問題が生 じる。変動係数を35%以下にすることで、1粒 当りの磁化のばらつきが小さくなるので溶 中で分散させた粒子を磁気捕捉する際の集 性が良好となる。

 メディアン径(d50)及び変動係数はレーザ 回折による湿式粒径測定器で測定できる。 ディアン径(d50)は粒径分布(体積基準)から求 た積算分布曲線において50%の積算値におけ 粒径値である。変動係数は平均粒径に対す 粒径分布の標準偏差の割合であり、変動係 (%)=[(標準偏差/平均粒径)×100] で表される。 ここで平均粒径は粒子体積を基準とした算術 平均粒径である。

(2)被覆構造
 被覆金属微粒子は、M金属粒子の周りに順に Ti酸化物被覆層とケイ素酸化物を主体とする 覆層(「ケイ素酸化物被覆層」ともいう。) を有する三重構造となっている。M金属粒子 Ti酸化物被覆層とは1対1のコア-シェル構造 なっている必要はなく、TiO 2 を主体とするTi酸化物層中に2個以上のM金属 子が分散した構造であっても良い。Ti酸化物 の中に2個以上のM金属粒子が含まれていると 金属Mは高含有率で、かつ確実に被覆される ので好ましい。本発明の方法では、M酸化物 還元によるM金属微粒子の形成と、Ti酸化物 覆の形成とが同時に行われるので、M金属微 子とTi酸化物被覆との間にM金属酸化物層が められない。また650℃以上の熱処理により られるTi酸化物被覆の結晶性は高く、ゾル- ル法等により得られる非晶質又は低結晶性 Ti酸化物被覆より高い耐食性を示す。またTi O 2 を主体とした被覆を有する本発明の被覆金属 微粒子は、被覆に欠陥が少ないので、不定比 組成のTi n O 2n-1 の被覆を有するものより高い耐食性を示す。

 Ti酸化物被覆層の上にさらにケイ素酸化 被覆層を形成することにより、核酸抽出あ いは抗原捕捉担体としての特性を持たせる とができる。ケイ素酸化物被覆層は、アル キシシラン、又はアルコキシシラン及び金 アルコキシドを加水分解法及び縮重合する とにより形成できる。

(3)被覆厚さ
 TiO 2 を主体とするTi酸化物被覆の厚さは1~1000 nmが 好ましい。厚さが1 nm未満であると、被覆金 微粒子は十分な耐食性を有さない。また厚 が1000 nm超であると、被覆金属微粒子が大 すぎ、液中での分散性が低いだけでなく、 性金属微粒子の場合は飽和磁化が低い。よ 好ましいTi酸化物被覆の厚さは5~300 nmである 。ケイ素酸化物被覆の厚さは5~500 nmが好まし く、5~100 nmがより好ましい。被覆の厚さは被 覆金属微粒子の透過電子顕微鏡(TEM)写真によ 求める。被覆の厚さが不均一な場合、最大 さと最小厚さの平均を被覆の厚さとする。 お、金属微粒子は、TiO 2 を主体とするTi酸化物及びケイ素酸化物で完 に被覆されておらず、部分的に金属粒子が 面に露出しても構わないが、完全に被覆さ ているのが好ましい。

(4)Ti酸化物の結晶性
 被覆金属微粒子のX線回折パターンにおける TiO 2 の最大ピークの半値幅が0.3°以下で、金属Mの 最大ピークに対するTiO 2 の最大ピークの強度比が0.03以上である場合 、Ti酸化物の結晶性が良く、被覆金属微粒子 は耐食性を示す。TiO 2 が非晶質又は低結晶性の場合、回折ピークは 観察されないかブロードであるため、最大ピ ーク強度比は小さく、半値幅は広い。最大ピ ーク強度比はより好ましくは0.05以上である 最大ピーク強度比が高くなると被覆の割合 多くなり、飽和磁化が低下する。そのため 最大ピーク強度比は3以下が好ましい。

(5)磁性粒子としての機能
 金属Mが磁性金属Feの場合、前記製法により られた被覆金属微粒子は50~180 Am 2 /kgの範囲の飽和磁化を有し、磁性粒子として 機能する。これは、被覆金属微粒子が磁性金 属FeとTiO 2 から形成されているとしたとき、Fe+Tiに対す Tiの比率が11~67質量%である場合に相当する 磁性粒子の飽和磁化が50 Am 2 /kg未満と小さいと、磁界に対する応答が鈍い 。また180 Am 2 /kg超であるとTi酸化物及びケイ素酸化物の含 率が小さく、金属Fe粒子を十分にTi酸化物及 びケイ素酸化物で被覆できていないために耐 食性が低く、磁気特性が劣化しやすい。従っ て、高い飽和磁化及び十分な耐食性を同時に 得るために、被覆金属微粒子の飽和磁化は180  Am 2 /kg以下であるのが好ましい。磁気ビーズ等に 用いる場合の回収効率や磁気分離性能に優れ るためには、被覆金属微粒子の飽和磁化は95~ 180 Am 2 /kgであるのがより好ましい。この範囲の飽和 磁化は、92 Am 2 /kg程度の飽和磁化しか有さないマグネタイト (Fe 3 O 4 )粒子を磁気ビーズ等に用いる場合には得ら ない。この範囲の飽和磁化であると粒子表 に対象物質を捕捉して磁気捕集する際に十 な磁界応答性が得られる。分散性の観点か 、被覆金属微粒子の保磁力は15 kA/m以下が好 ましく、8 kA/m(100 Oe)以下がより好ましく、4 kA/m以下が最も好ましい。保磁力が大きい場 でもTiO 2 被覆を厚くすれば高分散性が得られるが、被 覆金属微粒子の飽和磁化は低下してしまう。 保磁力が8 kA/mを超えると、磁性粒子は無磁 でも磁気的に凝集するので、液中での分散 が低下する。

(6)含有元素の濃度
 被覆金属微粒子に含有されるCの量は0.2~1.4 量%が好ましい。含有されているCは主に原料 として用いたTiC粉の余剰分の残留が原因であ る。金属Mの酸化物を主としてTiが還元剤とな って金属Mへと還元する本発明の製法におい 、TiC中のCも還元剤の役割を果たし、金属Mの 酸化物を補助的に還元している。C量が0.2質 %未満であることは、M酸化物の還元が不十分 であることを意味しており好ましくない。C が1.4質量%超であると金属成分の含有率が低 し、その金属がFe、Co及びNiから選ばれる少 くとも一つの元素を主成分としている場合 、飽和磁化の低下を招く。またCの残留によ って被覆金属微粒子が疎水性となり、水溶液 中での分散性が低下するので磁気ビーズ等の 用途に用いる場合には特に好ましくない。C 有量はより好ましくは0.2~1.1質量%である。

 被覆金属微粒子に含まれるNの量は0.01~0.2 量%が好ましい。含有するNは熱処理中に余 のTiが窒化したことによるものと、原料とし て用いたTiN粉末の熱処理後残留分に由来する ものである。N量が0.01質量%未満であるとTiNの 還元効果が得られないため好ましくない。N が0.2質量%超であると非磁性成分の窒化チタ の含有率が増え、飽和磁化が低下するので ましくない。さらにコアとなる金属Mの微粒 子を十分に被覆する為にはTiがある程度余剰 存在することが好ましく、その結果として 部のTiが熱処理中に窒化されることが好ま い。より好ましいN量は0.04~0.2質量%である。

 飽和磁化をより高く保つためには被覆金 微粒子に含有されるCとNの総量を所定の範 に制御することが重要であり、含有されるC Nの合計(C+N)が0.24~1.6質量%であるのが好まし 、より好ましくは0.24~0.60質量%である。C+Nが 0.24質量%未満であると上述したC及びN含有量 好適範囲から外れ、1.6質量%を越えると飽和 化の低下を招く。金属Mの微粒子を十分に被 覆しながら高い飽和磁化を得るためには0.60 量%以下が特に好ましい。

 ここで上記被覆金属微粒子中のC含有量は 高周波加熱赤外吸収法にて測定、N含有量は 活性ガス中加熱熱伝導法又はケルダール法 よって測定される。

(7)耐食性
 モル濃度が6 Mのグアニジン塩酸塩水溶液1  mL中に、金属MがFeである被覆金属微粒子25 mg 25℃で24時間浸漬したときのFeイオン溶出量 50 mg/L以下であるのが好ましい。この様なFe イオン溶出量を有する被覆金属微粒子は高カ オトロピック塩濃度においても高い耐食性を 示すため、カオトロピック塩水溶液中での処 理を必要とするDNA抽出等の用途に好適である 。Feイオン溶出量が50 mg/L以下の耐食性レベ は、アルカリ処理を施さない場合でも発現 ることがあるが、確実に上記耐食性レベル 得るためにはアルカリ処理を行うのが好ま い。なお、本願明細書の耐食性やX線回折に る記述から判るとおり、本発明の被覆金属 粒子は被覆金属微粒子集合体(粉末)に相当 る用語として用いている。

(8)被覆金属微粒子表面
 被覆金属微粒子表面に、アミノ基、カルボ シル基、アルデヒド基、チオール基、トシ 基、ヒドロキシル基の少なくとも1種が固定 化されていることが好ましい。これらの官能 基が固定化されていることにより簡便に様々 なリガンドを固定化できる。また官能基によ り溶液への分散性を調整することも可能であ る。

 被覆金属微粒子表面に、リガンドを固定 するのが好ましい。リガンドとはある特定 物質と特異的に結合する物質である。リガ ドとはアビジン、ビオチン、ストレプトア ジン、2次抗体、プロテインG、プロテインA プロテインA/G、プロテインL、抗体、抗原、 レクチン、糖鎖、ホルモン、核酸等である。 これらの物質が単独で固定化されていてもよ いし、複数固定化されていても構わない。ア ビジン又はストレプトアビジンを被覆金属微 粒子表面に固定化することにより、ビオチン 標識された物質、例えばビオチン標識抗体、 ビオチン標識DNA、ビオチン標識蛍光物質と特 異的に結合できる。またアビジンとストレプ トアビジンはビオチンと4つの結合部位を持 ため、アビジン又はストレプトアビジンは オチンが固定化された被覆金属微粒子と結 し、さらにビオチン標識された物質と結合 きる。2次抗体は特定の抗体と選択的に結合 ることから1次抗体を固定化することができ る。プロテインGは免疫グロブリンG(IgG)と特 Fc部位と強く結合することからIgGと選択的に 結合できる。プロテインAはIgGの種により結 能に大きな差があり特定のIgGと選択的に結 できる。またプロテインAとIgGの結合はpH依 性を有するため、一旦捕捉後pHを変化させる ことにより解離することもでき、プロテイン Aを修飾した被覆金属微粒子はIgG等の精製用 好適に用いることができる。プロテインA/G プロテインAとプロテインGの特性を組み合わ せた融合タンパク質であり、リガントとして 好ましく用いることができる。プロテインL ウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワトリ以外のIgと結 合することからウシ、ヤギ、ヒツジ、ニワト リのIgを含む血清からウシ、ヤギ、ヒツジ、 ワトリ以外のIgを選択的に捕捉することが きる。抗体、抗原は、特定の抗原、抗体と 原抗体反応により結合を行うことができる 例えば、抗体もしくは抗原を固定化した被 金属微粒子は免疫学的測定法(イムノアッセ )に好適に用いることができる。また、抗体 、抗原、レクチン、糖鎖、ホルモンは、特定 の物質を特異的に捕捉でき、例えばタンパク 質や、細胞の回収などに好適に用いることが できる。また例えば所望する核酸又は所望す る核酸の一部と相補的な核酸を被覆金属微粒 子表面に固定化することにより、所望する核 酸を選択的に回収することができる。

 被覆金属微粒子表面は、ブロッキング剤 コーティングしてあることが好ましい。こ により非特異的な吸着を抑制することがで る。非特異的な吸着(nonspecificity)とは所望の 物質以外が吸着することである。ブロッキン グ剤としてはウシ血清アルブミン(BSA)、スキ ミルク等を用いることができる。市販のブ ッキング剤を用いることができ、例えばブ ックエース(雪印乳業株式会社)等の非特異 着を抑制する効果があるものを用いること できる。

(9)粒子沈降性
 核酸抽出あるいは抗原捕捉担体として用い 場合、被覆金属微粒子は溶液中で沈降速度 遅いことが好ましい。沈降速度は、PBSバッ ァー中に均一分散させた被覆金属微粒子の 散液の吸光度を静置状態で測定し、1秒当た りに低下する吸光度の割合(%)で表す。対象物 質を粒子と十分に反応させて捕捉するために は、沈降速度(1秒当たりの吸光度の低下率)が 0.01~0.03%であるのが好ましい。沈降速度が0.03% を超えると粒子沈降速度が速いため粒子と対 象物質との反応が不十分となってしまう。沈 降速度が0.01%未満であると粒子の溶液中での 動距離が小さすぎて溶液中の対象物質を均 に捕捉することができない。

 以上の要件を備えた被覆金属微粒子は特 溶液中での対象物質との反応性が高く、高 度に対象物質を検出できるため、免疫検査 磁気ビーズとして好適である。

 本発明を以下の実施例によりさらに詳細 説明するが、本発明はこれらに限定される のではない。

参考例1
 メディアン径0.03μmのα-Fe 2 O 3 粉末とメディアン径1μmのTiC粉末とを、7:3の 量比でボールミルにより10時間混合し、得ら れた混合粉末をアルミナボート内で、窒素ガ ス中700℃で2時間熱処理した。得られた試料 末のX線回折パターンを図1に示す。図1の横 は回折の2θ(°)を示し、縦軸は回折強度(相対 値)を示す。MDI社製解析ソフト「Jade,Ver.5」に る解析の結果、回折ピークはα-Fe及びTiO 2 (ルチル構造)と同定された。

 α-Feの(200)ピークの半値幅からシェラーの式 を用いて算出されたFeの平均結晶子サイズは9 0 nmであった。2θ=27.5°のとき得られたTiO 2 の最大回折ピークの半値幅は0.14であり、TiO 2 の最大回折ピーク強度のα-Feの最大回折ピー [(110)ピーク]強度に対する比は0.18であった これから、TiO 2 が高い結晶性を有することが分かる。レーザ ー回折型粒度分布測定装置(HORIBA製:LA-920)で測 定したこの試料粉末のメディアン径(d50)は3.1 mであった。

 図2に示すSEM写真により、被覆金属微粒子は 数μmの粒径を有することが分かる。ほとんど の被覆金属微粒子は、複数のFe粒子2にTiO 2 層1が被覆して1個の微粒子を形成している。 えば、矢印1で示したTiO 2 層に包含されているFe粒子2(図2中で白色の部 )の粒径は約0.5μmであった。

 Fe酸化物の標準生成エネルギーδG Fe2O3 =-740 kJ/molに対して、Ti酸化物はδG TiO2 =-889 kJ/molであるため、TiO 2 の標準生成エネルギーの方が小さい。従って 、α-Fe 2 O 3 がTiCにより還元され、TiO 2 が生成したと言える。

 得られた試料粉末5 gと50 mLのイソプロピル アルコール(IPA)とを100 mLのビーカに投入し、 10分間超音波を照射した。次いで永久磁石を ーカの外面に1分間接触させ、磁性粒子だけ をビーカ内壁に吸着させ、黒灰色の上澄み液 を除去した。この磁気分離操作を50回繰り返 、得られた精製磁性粒子を室温で乾燥させ 。この磁性粒子の磁気特性を、最大印加磁 を1.6 MA/mとしてVSM(振動型磁力計)により測 した。精製した磁性粒子におけるFeとTiの質 比は、X線回折パターンから被覆金属微粒子 がFeとTiO 2 からなることを確認した後で、被覆金属微粒 子の飽和磁化の測定値から算出した。結果を 表1に示す。

 参考例2~参考例5
 α-Fe 2 O 3 粉末とTiC粉末の質量比を、表1に示すように 更した以外参考例1と同様にして試料粉末の 製及び精製を行い、磁性粒子を得た。これ の磁性粒子の組成及び磁気特性を参考例1と 同様にして測定した。結果を表1に示す。

 α-Fe 2 O 3 粉末とTiC粉末の質量比を4:6として得られた参 考例5の磁性粒子は、高い耐食性を有してい が、飽和磁化Msは48 Am 2 /kgとなり50 Am 2 /kgより低く、保磁力iHcは18 kA/mとなり15 kA/m であった。以上より、金属Fe粒子の特性を生 かして高い飽和磁化の値を維持するためには TiC配合比は30~50質量%であるのが好ましいこと が分かる。

注:(1)原料(混合粉末)中のα-Fe 2 O 3 とTiCとの質量比。
  (2)精製した磁性粒子中のFe:Tiの質量比。

 参考例6
 熱処理温度を800℃とした以外は参考例1と同 様にして磁性被覆金属微粒子を得た。この試 料粉末について磁気特性を参考例1と同様に て測定した。試料粉末中のC量は高周波加熱 外吸収法(HORIBA製EMIA-520)によって測定し、N は不活性ガス中加熱熱伝導法(HORIBA製EMGA-1300) によって測定した。結果を表2に示す。

参考例7~参考例11
 表2に示す原料配合比で、TiC粉末の一部をメ ディアン径2.8μmのTiN粉末に置換した以外は参 考例6と同様にして磁性被覆金属微粒子を得 。この試料粉末の磁気特性、及びC、Nの含有 量を参考例6と同様にして評価した。結果を 2に示す。

 TiNの添加量が増加するに従い、C及びNの含 量が低下し、飽和磁化Msは向上した。特にTiN 含有率が20~40質量%(参考例8~参考例10)の場合は 、C量が1.3質量%以下及びN量が0.2質量%以下で り、これらの元素の含有量は極めて少なか た。さらにTiN含有率が40質量%の参考例10は、 Msが158 Am 2 /kgまで向上した。しかしTiN含有率が50質量%の 参考例11は、C及びN量は少ないもののMsはTiNを 含まない参考例6よりもむしろ低下した。こ はCが不足することにより還元反応の進行が 十分であったためと考えられる。しかしな ら参考例11の磁性被覆金属微粒子は、保磁 iHcが非常に小さいために残磁が少なく磁気 集が抑制される。よって磁気ビーズなどの 分散性が要求される用途に適している。

参考例12~参考例17
 原料混合にビーズミルを用いて表3に示す時 間混合した以外は参考例10と同様にして磁性 覆金属粒子を得た。この磁性粉末のメディ ン径(d50)をレーザー回折型粒度分布測定装 (HORIBA製LA-920)にて測定した。結果を表3に示 。また磁気特性、及びC及びNの含有量も表3 示した。Cの含有量は参考例6と同様の手法で コクサイ電子工業製HFT-9を用いて測定した。N の含有量はケルダール法を用いて試料に含有 されるNをアンモニア化した後、インドフェ ール青吸光光度法により分光光度計(島津製 所製UV-1600)にて測定した。これらの実施例 C及びNの含有量は、表2の結果に比べると全 的に低く、Cは0.24~0.54質量%、Nは0.01~0.02質量% あった。またCとNの含有量の合計は最小で 考例15の0.26質量%、最大で参考例17の0.55質量% であった。

 また参考例6及び参考例8~参考例10の試料 末についてアルバック・ファイ製:PHI-Quantera SXMにてX線光電子分光(XPS)分析を実施した。O 1s、Feの2p3及びTiの2p軌道電子についてそれ れナロースペクトルを測定し、定量分析を った。結果を表4に示す。

 TiN含有率が増加するとともにFe含有量が 加し、Ti含有量が減少する傾向であった。つ まりTiNの添加によってFe含有率が増加した。 れはTi酸化物の被覆層が薄くなっているこ を意味している。ただし後述するように酸 Feの割合が増えていないことから、Feコア粒 の被覆が不十分であるわけではない。Fe粒 を十分被覆しながら非磁性成分である被覆 の体積を最小限に留めることができるため 磁気特性の向上が見られたと考えられる。 たTiN含有率の増加に伴い、酸化Feの割合が減 少し金属Feの割合が増加した。特にTiN含有率 20~40質量%の場合、金属Fe成分の比率(金属Fe/ Fe)はいずれも6%以上であった。これはTiN添 によって被覆度がより完全となり、形成さ たTi酸化物の被覆層が薄くなっているにもか かわらず金属Feが酸化されずに維持されてい ためである。

参考例18~参考例21
 参考例6、参考例8、参考例9及び参考例10で られた各試料粉末1 gを50 mLのNaOH水溶液(濃 1 M)中に投入し、60℃で24時間浸漬処理を行 た(アルカリ処理)。このアルカリ処理後、水 洗して試料粉末を乾燥させた。得られた各試 料粉末25 mgを1 mLのグアニジン塩酸塩水溶液( 濃度6 M)中に25℃で24時間浸漬させた(浸漬試 )後のFeイオン溶出量をICP分析装置(エスアイ イナノテクノロジー社製:SPS3100H)により測定 した。結果を表5に示す。

 アルカリ処理によってFeイオン溶出量が50  mg/L以下に低下した。またTiN含有率が大きい ほどFeイオン溶出量は小さかった。特にTiN含 率40質量%ではアルカリ処理を施す前でもFe オン溶出量が10 mg/L未満と極めて小さく、耐 食性に優れることが分かる。

 また表3で示した参考例12~参考例17の被覆 属微粒子に対してアルカリ処理は施さずに 考例18と同様にFeイオン溶出量を測定した。 結果を表6に示す。Feイオン溶出量は2.1 mg/L以 下であり、耐食性に極めて優れていた。

 参考例7~参考例11、参考例18、及び参考例19~ 考例21で得られた試料粉末について、参考 1と同様にしてX線回折を行ったところ、いず れの試料粉末もTiO 2 の最大ピークの半値幅が0.3°以下であり、か 金属Mの最大ピークに対するTiO 2 の最大ピークの強度比が0.03以上であった。

参考例22
 参考例10で得られた被覆金属微粒子に、以 に手法でシリカ被覆処理を施した。被覆金 微粒子5 gを100 mLのエタノール溶媒中に分散 し、テトラエトキシシランを1 mL添加した。 られた分散液を攪拌しながら22 gの純水と4 gのアンモニア水(25%)の混合溶液を添加し1時 攪拌した。攪拌後、磁性粒子を磁石でビー 内壁に捕捉しながら上澄み液を除去した。 られた磁性粒子に対して上述のシリカ被覆 理をさらに2回繰り返し、最後にイソプロピ ルアルコールで溶媒置換を行った後、乾燥し て磁性シリカ粒子を得た。

 得られた磁性シリカ粒子の磁気ビーズ性 は、Roche社製DNA抽出キット「MagNA Pure LC DNA  Isolation Kit I」を用いて馬血100μLからのDNA 出量を測定することにより評価した。12 mg 磁性シリカ粒子を150μLのイソプロピルアル ール(IPA)中に分散させた溶液を各々磁気ビー ズ液として用いた以外は上記Kitのプロトコル に準拠してDNAを抽出した。抽出液中のDNA量は 、UVスペクトル測定機(日立ハイテクノロジー ズ社製ダイオードアレー型バイオ光度計U-0080 D)を用いて測定した。その結果、100μLの馬血 ら抽出したDNA量は2.7μgであった。

比較例1
 市販の磁気ビーズ(Roche製、MagNAPure LC DNA Is olation Kit Iに付属)を用いて参考例22と同様に DNAを抽出した結果、DNA抽出量は2.7μgであった 。

 以上より、参考例22の被覆金属微粒子のDN A回収量は、前記市販の磁気ビーズと同等で り、DNA抽出用磁気ビーズとして好適である とが分かった。

参考例23
 原料粉末の混合時間を100分とした以外は参 例10と同様に被覆金属微粒子を作製し、こ 金属微粒子に参考例22と同様にシリカ被覆処 理を施し、磁性シリカ粒子を得た。この磁性 シリカ粒子のメディアン径(d50)、比表面積及 磁気特性を表7に示す。なお、比表面積は窒 素ガスの吸着を利用したBET法(株式会社マウ テック製Macsorb-1201)により測定した。

参考例24
 原料粉末の混合時間を100分とした以外は参 例6と同様に被覆金属微粒子を作製し、この 金属微粒子に参考例22と同様にシリカ被覆処 を施し、磁性シリカ粒子を得た。この磁性 リカ粒子のメディアン径(d50)、比表面積及 磁気特性を参考例23と同様に評価した。結果 を表7に示す。

 比較例1で使用した市販の磁気ビーズにつ いても同様に各特性を測定した。結果を表7 示す。参考例23及び参考例24は比較例1に比べ ると微粒子かつ高飽和磁化(2倍以上)、及び低 い保磁力(10分の1程度)を有していた。

 次に表7の各例で用いた磁気ビーズについ てヒト全血からのDNA抽出性能を評価した。ヒ ト全血100μLを検体とした点、及び磁性シリカ 粒子を表8に示す質量に変更した点以外は参 例22と同様にして全血からDNAを抽出した。得 られた抽出液中のDNA量は、以下の方法により DNAの2重鎖にインターカレートする性質を持 蛍光試薬にてDNAを標識し、その蛍光強度を 定することによって測定した。すなわち、2 LのDNA抽出液に198μLの蛍光試薬(インビトロジ ェン製PicoGreen)の200倍希釈液[TE溶液(10 mMのTris -HCl及び1 mMのEDTA)で希釈]を添加し、DNAと蛍光 試薬を反応させ、その蛍光強度を分光蛍光光 度計(日立製作所製F-4500)で測定した。波長480 nmの光で励起し、波長520 nmの蛍光強度を測 した。各磁気ビーズのDNA抽出量を表8に示す また表7で示した比表面積の値を用いて、磁 性シリカ粒子の単位表面積あたりのDNA抽出量 を算出し、表8に示す。

 同一質量(12 mg)で比較すると比較例1に比 て参考例23の単位面積当たりのDNA抽出量は 2.7倍多い。また使用するビーズを2 mgまで減 少(単位面積当たりのDNA抽出量は12 mgの場合 約6倍となる。)させてもDNA抽出量は約2μgで 定していた。参考例23の磁性シリカ粒子は、 比較例1に比べてメディアン径が小さくDNA抽 に有効な表面が多いため、ビーズの使用量 少ない場合でも十分にDNAを抽出することが きる。また飽和磁化が高い(表7参照)ため、DN Aを捕捉した磁気ビーズを高効率に磁気捕集 き、かつ洗浄工程等での滅失が極めて少な ので、比較例1に比べて単位面積当たりのDNA 出量が十分高い。参考例24の磁性シリカ粒 は参考例23よりはやや劣っていたが、比較例 1に対しては高いDNA抽出性能を示した。

参考例25
 参考例17で得られた被覆金属微粒子に参考 22と同様にしてシリカ被覆処理を施し、磁性 シリカ粒子を得た。この磁性シリカ粒子の磁 気ビーズとしての性能安定性を評価するため 、以下に述べる耐久試験を実施し、試験後の 磁性シリカ粒子のDNA抽出性能を評価した。耐 久試験は、0.32 gの磁性シリカ粒子と4 mLのイ ソプロピルアルコール(IPA)を6 mL容量のスク ュー缶瓶に充填し、60℃で1、10、50、100hの各 時間保持して行った。通常、磁気ビーズは室 温又は冷蔵保存するのに対し、このように60 で保温することにより強制的に劣化させ耐 度を評価できる。耐久試験後の各磁気ビー を用いて参考例16と同様に馬血100μLからDNA 抽出した。図3にDNA抽出量と耐久試験時間の 係を示す。

参考例26
 参考例17で得られた被覆金属微粒子に対し 、1 mLのテトラエトキシシランと同時に0.05g アルミニウムイソプロポキシド(テトラエト キシシランの5質量%に相当)を添加した以外は 参考例22と同様にしてシリカ被覆処理を施し 磁性シリカ粒子を得た。この磁性シリカ粒 に参考例25と同様の耐久試験を実施し、耐 試験後のDNA抽出性能を評価することにより 気ビーズ性能の安定性を調べた。結果を図3 示す。

 参考例25及び参考例26のDNA回収量はどちら も安定しており、IPAへの浸漬時間が100h経過( 温保存に対して24倍の加速試験)してもDNA回 量は殆ど変化していない。すなわち参考例2 5及び参考例26の磁性シリカ粒子のDNA抽出性能 は優れた耐久性を有していた。これは被覆金 属微粒子が表3に示すように耐食性に優れて るため、IPA中60℃で加熱・保持しても被覆金 属微粒子の変質や特性の劣化が起こらないこ とを表している。すなわち、これらの被覆金 属微粒子は安定したDNA抽出性能を発現してお り、磁気ビーズに適用した場合は性能の長期 安定性に優れる。

参考例27
 原料配合時にビーズミルを用いた以外は参 例10と同様にして磁性被覆金属微粒子を得 。この試料粉末の粒径をレーザー回折型粒 分布測定装置(HORIBA製:LA-920)で測定すると0.8μ mであった。

比較例A
 参考例27で得られた被覆金属微粒子を用い 以外は参考例22と同様にしてシリカ被覆処理 を行い、磁性シリカ粒子を得た。

参考例28
 参考例27で得られた被覆金属微粒子を用い 以外は参考例22と同様にしてシリカ被覆処理 を行い、磁性シリカ粒子を得た。得られた磁 性シリカ粒子0.1gと2 mLの3-アミノプロピルト エトキシシラン(APS)水溶液とを混和し、1時 攪拌した後、大気中で乾燥しアミノ基が固 化された磁気ビーズ(アミノ基コート磁気ビ ーズ)を得た。得られたアミノ基コート磁気 ーズに、Bang Laboratories社製のBioMag Plus Amine Particle Protein Coupling Kitを用いて、下記の手 順でにストレプトアビジンを固定化した。ま ず15 mgのアミノ基コート磁気ビーズと、キッ ト付属ピリジンウォッシュバッファー(PWB)に り5%に調整した600μLのグルタルアルデヒド を混合し3時間室温で攪拌した。この分散液 非磁性成分を磁気分離により除去しPWBで4回 洗浄した。得られた磁気ビーズをPWBに懸濁さ せた液とストレプトアビジン(和光純薬社製) 混合し、4℃で16時間攪拌した。600μLのキッ 付属クエンチング溶液を加え30分室温で攪 し、非磁性成分を磁気分離により除去し、PW Bで4回洗浄し、ストレプトアビジンを固定化 た被覆金属微粒子(ストレプトアビジンコー ト磁気ビーズ)を得た。

参考例29
 参考例28と同様の方法で作製したアミノ基 ート磁気ビーズに、無水コハク酸を用いカ ボキシル基を固定化し、さらにカルボジイ ドを用いて活性化することによりストレプ アビジンを固定化した被覆金属微粒子(スト プトアビジンコート磁気ビーズ)を得た。

 比較例A、参考例28及び参考例29で得られた 覆金属微粒子を、ビオチン化フルオレセイ イソチオシアナート(fluorescein isothiocyanate、F ITC)(Molecular Probes社製fluorescein biotin)で染色後 、フローサイトメトリーを用いてベックマン コールター社製フローサイトメータEPICS ALTRA a にて測定し、ストレプトアビジンの固定化量 を測定した。結果を図4に示す。

 フローサイトメータは、1粒子毎の蛍光強 度を測定する装置である。多数個の粒子を測 定し、そのヒストグラムが蛍光強度の強い方 にシフトしていることは、粒子表面により多 くの蛍光物質が存在することを示す。またビ オチンはストレプトアビジンとビオチン-ア ジン結合により親和的に結合することが知 れている。ストレプトアビジンが表面に固 化された磁気ビーズをビオチン化FITCと反応 せてフローサイトメータで測定し、得られ ヒストグラムがFITC蛍光強度の強い方にシフ トしていることは、粒子表面に固定化されて いるストレプトアビジンの固定化量がより多 いことを示している。

 図4から明らかなように、参考例28及び参 例29のストレプトアビジンコート磁気ビー は、ストレプトアビジンを固定化していな 比較例Aの被覆金属微粒子と比較しFITC蛍光強 度が強くストレプトアビジンが固定化されて いることが分かった。

参考例30
 参考例28のストレプトアビジンコート磁気 ーズにビオチン化された抗体(biomeda社製Epithe lial Specific Antigen-Biotin Labeled,Affinity Pure)を 応させて抗体を固定化した被覆金属微粒子( 体固定磁気ビーズ)を得た。2次抗体(Beckman C oulter社製PE標識Goat F(ab') 2  Anti Mouse IgG(H+L))で染色しフローサイトメト リーを用い測定を行った。結果を図5に示す

参考例31
 ストレプトアビジンの代わりにVU-1D9抗体を いた以外は参考例29と同様の方法でVU-1D9抗 を固定化した被覆金属微粒子(抗体固定磁気 ーズ)を得た。2次抗体(Beckman Coulter社製PE標 Goat F(ab') 2  Anti Mouse IgG(H+L))で染色しフローサイトメト リーを用い測定を行った。結果を図5に示す

 2次抗体は抗体と選択的に結合する。抗体 が表面に固定化された磁気ビーズをPE化2次抗 体と反応させフローサイトメータで測定し、 得られたヒストグラムがPE蛍光強度の強い方 シフトしていることは、粒子表面に固定化 れている抗体の固定化量がより多いことを す。

 図5から明らかなように参考例30及び参考 31の抗体固定磁気ビーズは、抗体を固定化 ていない参考例28(比較例B)の被覆金属微粒子 と比較しPE蛍光強度が強く、抗体が固定化さ ていることが分かった。

参考例32
 ストレプトアビジンの代わりにMouse IgG抗体 を用いた以外は参考例29と同様の方法でMouse  IgG抗体を固定化した被覆金属微粒子を作製し 、これをブロックング剤(雪印乳業株式会社 Block Ace)の溶液に一晩浸漬し、ブロッキング 剤コート磁気ビーズを得た。固定化されてい るMouse IgG抗体と特異的に反応する2次抗体(Bec kman Coulter社製PE標識Goat F(ab') 2  Anti Mouse IgG(H+L))で染色した参考例32A、特異 的に反応をしない2次抗体(Beckman Coulter社製PE 識Goat F(ab') 2 Anti Mouse IgM)で染色した参考例32B、及び無染 の参考例32(比較例C)をフローサイトメトリ を用いて測定した。結果を図6に示す。

 図6から明らかなように参考例32のブロッ ング剤コート磁気ビーズは特異的に反応す 2次抗体とのみ反応することが分かった。つ まり、非特異的な吸着は起こっていないこと が分かった。

参考例35
 図7に示すように、参考例29で作製したスト プトアビジン16を固定化した被覆金属微粒 17に、ビオチン標識抗ヒトアディポネクチン 抗体 (マウス)15 (R&D SYSTEMS社製Anti-human Ad iponectin/Acrp30 Antibody Biotin labeled)を30分イン ュベートし、抗体15が固定化された被覆金属 微粒子17を得た。この被覆金属微粒子17を用 てサンドイッチ式ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法を行った。最初に、抗体15が固定化さ れた被覆金属微粒子17とヒトアディポネクチ 14(BioVendor社製Human Adiponectin,His-Tagged Fusion P rotein)をインキュベートした。その後、被覆 属微粒子17をヒトアディポネクチンELISAキッ (大塚製薬)付属の抗ヒトアディポネクチン 体(ラビット)13(第一抗体液)とインキュベー し洗浄後、さらに西洋ワサビペルオキシダ ゼ(HRP)標識ラビットIgGポリクローナル抗体( ート)12(酵素標識抗体液)とインキュベートし 洗浄を行った。基質と反応させた後反応停止 液で反応を停止させ、UVスペクトル測定機を いシグナル強度(450 nmの吸光度)を測定した ヒトアディポネクチン14の濃度を変更し同 の操作を行い、ヒトアディポネクチン14濃度 とシグナル強度との関係を得た。その結果を 図8に示す。

 図8から明らかなようにヒトアディポネク チンの濃度とシグナル強度との間には相関関 係が見られた。濃度が既知のヒトアディポネ クチン液を用い検量線を作成後、濃度未知の ヒトアディポネクチン液のシグナル強度を測 定することによりヒトアディポネクチン濃度 を求めることができる。つまりこの被覆金属 微粒子がイムノアッセイに好適であることが 分かった。

参考例36
 参考例26の磁性シリカ粒子を用いた以外は 考例35と同様の方法で、ビオチン標識抗ヒト アディポネクチン抗体(マウス)が固定化され 被覆金属微粒子を得た。前記被覆金属微粒 を用い参考例35と同様の方法で、サンドイ チ式ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法を行 た。結果を図9に示す。

参考例37
 参考例25の磁性シリカ粒子を用いた以外は 考例35と同様の方法で、ビオチン標識抗ヒト アディポネクチン抗体(マウス)が固定化され 被覆金属微粒子を得た。前記被覆金属微粒 を用い参考例35と同様の方法で、サンドイ チ式ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法を行 た。結果を図9に示す。

 図9から明らかなようにヒトアディポネク チンの濃度とシグナル強度との間に相関関係 が見られ、これらの被覆金属微粒子がイムノ アッセイに好適であることが分かった。

参考例38
 参考例17の被覆金属微粒子に、以下の方法 シリカを被覆した。被覆金属微粒子5 gを100 mLのエタノールに分散し、1 mLのテトラエト シシラン及び0.05gのアルミニウムイソプロ キシドを添加した。得られた分散液を攪拌 ながら、22 gの純水と4 gのアンモニア水(25%) の混合溶液を添加し1時間攪拌した。攪拌後 磁性粒子を磁石でビーカ内壁に捕捉しなが 上澄み液を除去した。得られた磁性粒子に して上述のシリカ被覆処理をさらに2回繰り し、最後に溶媒をイソプロピルアルコール 溶媒置換を行った後、乾燥して磁性シリカ 子を得た。この磁性シリカ粒子のメディア 径(d50)は0.8μm、変動係数は47%であった。な メディアン径(d50)及び変動係数はレーザー回 折型粒度分布測定装置(HORIBA製LA-920)にて測定 た。

実施例1
 参考例38で得られたシリカ磁性粒子30 gを500  mLのイソプロピルアルコール(IPA)と混合して 30分間超音波を照射して分散した。分散液を2 4時間かけて自然沈降させた後、上澄み液を 収し、その中に含まれる磁性粒子を磁気分 した。得られた磁性粒子のメディアン径(d50) は0.5μm、変動係数は27%であった。

実施例2
 参考例38の磁性シリカ粒子1 gを50 mLのイソ ロピルアルコール(IPA)と混合し、実施例1と 様の分散処理を施した後、3000 rpmの回転数 120秒間遠心分離し粗大粒子を沈降させ、上 み中に含まれる磁性粒子を磁気分離した。 られた磁性粒子のメディアン径(d50)は0.5μm 変動係数は26%であった。

実施例3
 参考例38の磁性シリカ粒子0.1 gを100 mLのIPA 混合し、実施例1と同様の分散処理を施した 。孔径1μmのろ紙(whatman製GF/B)を用いて分散液 吸引ろ過し、濾液の中に含まれる磁性粒子 磁気分離した。得られた磁性粒子のメディ ン径(d50)は0.6μm、変動係数は28%であった。

 実施例1~実施例3で得られた微粒子の磁気特 を表9に示す。磁気特性は参考例1と同様にVS Mにより測定した。いずれも飽和磁化は80 Am 2 /kg以上であり、0.5~0.6μmの微粒子であっても1 子あたりの磁化が高かった。

実施例4
 実施例1の磁性シリカ微粒子の表面に、参考 例29と同様にしてストレプトアビジンを固定 した。得られた磁性粒子のメディアン径(d50 )は0.5μm、変動係数は27%であった。このスト プトアビジンコート磁気ビーズを、PBSバッ ァー中に0.25 mg/mLの粒子濃度で分散し、1分 超音波を照射して分散処理した。この分散 1 mLの波長550 nmにおける吸光度変化を、UVス ペクトル測定機(日立ハイテクノロジーズ社 ダイオードアレー型バイオ光度計U-0080D)で900 秒間測定し、磁気ビーズの沈降速度を測定し た。結果を図10に示す。直線近似すると、吸 度の時間変化の傾きは-0.0001 s -1 であった。すなわち1秒当たりの吸光度の低 率は0.01%であった。

比較例2
 参考例38の磁性シリカ粒子の表面に、参考 29と同様にしてストレプトアビジンを固定化 した。得られた磁性粒子のメディアン径(d50) 0.8μm、変動係数は47%であった。このストレ トアビジンコート磁気ビーズの沈降速度を 施例4と同様にして測定した。結果を図10に す。実施例4と同様にして求めた吸光度の低 下率は0.04%であった。

 実施例4の磁性シリカ粒子は、比較例2に べて粒径が小さいため、溶液中での沈降速 が遅かった。そのため免疫検査用として用 た場合、磁気ビーズが液中に浮遊している 的物質と十分反応することができるため、 出感度が高まる。

比較例3
 混合時間を200分とした以外は参考例1と同様 にして被覆金属微粒子を作製し、参考例22と 様の手法でシリカ被覆処理を施すことによ 、平均粒径4.1μm、変動係数56%のシリカ磁性 子を得た。このシリカ磁性粒子に参考例29 同様にしてストレプトアビジンを固定化し 。

比較例4
 混合時間を100分とした以外は参考例1と同様 にして被覆金属微粒子を作製し、参考例22と 様の手法でシリカ被覆処理を施すことによ 、平均粒径6.7μm、変動係数44%のシリカ磁性 子を得た。このシリカ磁性粒子に参考例29 同様にしてストレプトアビジンを固定化し 。

 実施例4及び比較例2~比較例4の各磁気ビー ズ(実施例4及び比較例2はn=2)を用いて、1 mgあ たりのビオチン結合量を下記の方法で測定し た。結果を図11に示す。実施例4は粒径が小さ いためストレプトアビジン固定化量が多く、 ビオチン結合量が200 pmol以上と高くなった。 このことから、微粒子の磁気ビーズは免疫反 応において、より高感度に標的物質を検出で きることが分かった。

ビオチン結合量の測定方法
 0.3 mM biotin-4-fluorescein(Invitrogen社、B10570)のDi methyl sulfoxide溶液をBuffer A-T(100 mM NaCl, 50 mM  NaH 2 PO 4 , 1 mM ethylenediaminetetraacetic acid, 0.1% Tween 20 )で15μMに希釈しwork液を作製した。600μlマイ ロチューブに磁気ビーズ0.1 mgを分注し、純 200μlを加えて超音波を10秒印加してビーズ 子を分散させた。磁気分離して上澄みを捨 た後、buffer A-T 液で1回洗浄し、再びbuffer A -T 液300μlを加えて攪拌した。このビーズ懸 液を100μlに、上記work液8μlを加え、全量が400 μlとなるようにbuffer A-T液を添加した。この 濁液を遮光し1時間室温で攪拌し、磁気分離 した上澄み中に残存する未反応のbiotin-4-fluore sceinを、日立製Fluorescence Spectrophotometer F-4500 用いて、490 nmの励起光を照射したときの525  nmの蛍光強度を測定することにより定量し 。上澄み中に残存する未反応のbiotin-4-fluoresc ein量から、磁気ビーズのビオチン結合量を求 めた。

比較例5
 熱処理時間を8時間に変えた以外は参考例17 同様にして作製した磁性被覆金属微粒子に 参考例38と同様にしてシリカを被覆し、シ カ被覆微粒子を作製した。

実施例5及び実施例6
 TiCとTiNの配合比を表10に示すように変更し 原料の混合をボールミルで72時間行った以外 は比較例5と同様にしてシリカ被覆微粒子を 製した。

 実施例5、実施例6及び比較例5のシリカ被 微粒子の磁気特性等を表10に示す。

実施例7、実施例8及び比較例6
 実施例5、実施例6及び比較例5のシリカ被覆 粒子の表面に、参考例29と同様にしてスト プトアビジンを固定化し、それぞれ実施例7 実施例8及び比較例6のストレプトアビジン 定化磁気ビーズを得た。得られたストレプ アビジン固定化磁気ビーズのメディアン径(d 50)及び変動係数を表11に示す。

 これらのストレプトアビジン固定化磁気 ーズを用いて、参考例35に記載のサンドイ チ式ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay)法を行 た。ヒトアディポネクチン(BioVendor社製Human  Adiponectin,His-Tagged Fusion Protein)の濃度は250 ng/ mLに固定し、変動係数の異なるこれらの試料 らのシグナル検出感度を比較した。検出感 の変動係数依存性を図12に示す。検出感度 変動係数の減少とともに増加し、35%以下で 和した。




 
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