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Title:
POLYMER/METAL COMPLEX COMPOSITE HAVING MRI CONTRAST ABILITY AND MRI CONTRASTING AND/OR ANTITUMOR COMPOSITION USING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/157561
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a polymer/metal complex composite which comprises a block copolymer capable of serving as a constituent of a polymer micelle and a metal complex having an MRI contrast ability, accumulates tumor-specifically, achieves a high contrast resolution even in a small amount, and has reduced side effects and a long retention time in blood. A polymer/metal complex composite comprising a block copolymer (A) represented by general formula (a) and a metal complex (B) having an MRI contrast ability, which has a structure wherein carboxyl anions of poly(carbo) in the copolymer (A) are bonded to the metal complex (B) via metal atoms (M).

Inventors:
KATAOKA KAZUNORI (JP)
KAIDA SACHIKO (JP)
CABRAL HORACIO (JP)
KUMAGAI MICHIAKI (JP)
SEKINO MASAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/061772
Publication Date:
December 30, 2009
Filing Date:
June 26, 2009
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN SCIENCE & TECH AGENCY (JP)
KATAOKA KAZUNORI (JP)
KAIDA SACHIKO (JP)
CABRAL HORACIO (JP)
KUMAGAI MICHIAKI (JP)
SEKINO MASAKI (JP)
International Classes:
C08G81/00; A61K9/107; A61K33/24; A61K47/34; A61K49/00; A61P35/00
Domestic Patent References:
WO2006003731A12006-01-12
WO2002026241A12002-04-04
WO2003017923A22003-03-06
WO2006003731A12006-01-12
WO1996032434A11996-10-17
WO1996033233A11996-10-24
WO1997006202A11997-02-20
Foreign References:
JP3955992B22007-08-08
JPH06271593A1994-09-27
JPH06329692A1994-11-29
JP2008222804A2008-09-25
JP3955992B22007-08-08
JP2008167823A2008-07-24
Other References:
See also references of EP 2308916A4
Attorney, Agent or Firm:
KOBAYASHI Hiroshi et al. (JP)
Kobayashi 浩 (JP)
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Claims:
 下記一般式(a):
   ポリ(hph)-block-ポリ(carbo)      (a)
〔式(a)中、ポリ(hph)は非荷電性親水性のポリマー鎖セグメントを表し、ポリ(carbo)は側鎖にカルボキシル基を有するポリマー鎖セグメントを表す。〕
で示されるブロック共重合体(A)と、MRI造影能を有する金属錯体(B)とを含んでなる重合体-金属錯体複合体であって、
 共重合体(A)中のポリ(carbo)のカルボキシルアニオンと、金属錯体(B)とが、金属原子(M)を介して結合した構造を含むものである、
前記複合体。
 共重合体(A)中のポリ(carbo)のカルボキシルアニオンに金属原子(M)が結合し、かつ該金属原子(M)に金属錯体(B)が結合した構造を含むものである、請求項1記載の複合体。
 ポリ(hph)が、ポリエチレングリコール、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-イソプロピル-2-オキサゾリン)、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル及びポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)からなる群より選ばれる親水性ポリマーに由来するものである、請求項1又は2記載の複合体。
 ポリ(carbo)が、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)及びポリ(リンゴ酸)からなる群より選ばれるアニオン性ポリマーに由来するものである、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合体。
 金属原子(M)が、金属錯体の中心金属原子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の複合体。
 金属錯体が、抗腫瘍活性を有する金属錯体(C)である、請求項5記載の複合体。
 金属錯体(C)がブロック共重合体(A)に固定化されたものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合体。
 下記一般式(1)又は(2)で示されるものである、請求項1記載の複合体。
〔式(1)及び(2)中、R 1 は水素原子又は未置換若しくは置換された直鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基を表し、L 1 及びL 2 は連結基を表し、R 2 はそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R 3 はそれぞれ独立して水素原子、アミノ基の保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R 4 はヒドロキシル基又は開始剤残基を表し、R 5 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属のイオン、又は下記一般式(3)若しくは(4):
(式(3)及び(4)中、R 6 は金属原子又は金属錯体由来の基を表し、R 7 はMRI造影能を有する金属錯体由来の基を表す。)
で示される基を表し(但し、R 5 は前記一般式(3)で示される基を少なくとも一部に含む。)、mは5~20,000の整数であり、nは2~5,000の整数であり、xは0~5,000の整数(但し、x≦n)である。〕
 下記一般式(1-a)又は(2-a)で示されるものである、請求項1記載の複合体。
〔式(1-a)及び(2-a)中、R 1 は水素原子又は未置換若しくは置換された直鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基を表し、L 1 及びL 2 は連結基を表し、R 2 はそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン基を表し、R 3 はそれぞれ独立して水素原子、アミノ基の保護基、疎水性基又は重合性基を表し、R 4 はヒドロキシル基又は開始剤残基を表し、R 5 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属のイオン、又は下記一般式(3)若しくは(4):
(式(3)及び(4)中、R 6 は金属原子又は金属錯体由来の基を表し、R 7 はMRI造影能を有する金属錯体由来の基を表す。)
で示される基を表し(但し、R 5 は前記一般式(3)で示される基を少なくとも一部に含む。)、mは5~20,000の整数であり、nは2~5,000の整数である。〕
 R 6 が、それぞれ独立して、白金、銅、金又は鉄の金属原子である、請求項8又は9記載の複合体。
 R 6 が、それぞれ独立して、白金、銅、金又は鉄を中心金属原子とする金属錯体由来の基である、請求項8又は9記載の複合体。
 R 6 が、それぞれ独立して、下記一般式(5)又は(6)で示される基である、請求項11記載の複合体。
〔式(5)及び(6)中、Mは白金、銅、金又は鉄の金属原子を表す。〕
 R 6 が、それぞれ独立して、抗腫瘍活性を有する金属錯体由来の基である、請求項8又は9記載の複合体。
 R 6 が、それぞれ独立して、下記式(5-a)又は(6-a)で示される基である、請求項13記載の複合体。
 R 7 が、それぞれ独立して、ガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、鉄又は銅を中心金属原子とする金属錯体由来の基である請求項8~14のいずれか1項に記載の複合体。
 金属錯体が、多座配位子との金属錯体である、請求項15記載の複合体。
 多座配位子が、アミノカルボン酸系若しくはリン酸系化合物、ポルフィリン系化合物、又はデフェリオックスアミンBである、請求項16記載の複合体。
 アミノカルボン酸系又はリン酸系化合物が、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸ビスメチルアミド、トリエチレンテトラミン六酢酸、ベンジロキシプロピオニック五酢酸、エチレングリコールテトラミン四酢酸、テトラアザシクロドデカン四酢酸、テトラアザシクロドデカン三酢酸、ジヒドロキシヒドロキシメチルプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸、ヒドロキシプロピルテトラアザシクロドデカン三酢酸、又はテトラアザシクロドデカン四リン酸である、請求項17記載の複合体。
 R 7 が、それぞれ独立して、下記一般式(7)、(8)、(9)又は(10)で示される基である、請求項15~18のいずれか1項に記載の複合体。
〔式(7)、(8)、(9)及び(10)中、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、鉄又は銅の金属原子を表す。〕
 R 7 が、それぞれ独立して、下記式(7-a)、(8-a)、(9-a)又は(10-a)で示される基である、請求項15~18のいずれか1項に記載の複合体。
 前記一般式(3)で示される基が、それぞれ独立して、下記一般式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)又は(18)で示される基である、請求項8又は9記載の複合体。
〔式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)及び(18)中、M 1 は白金、銅、金又は鉄の金属原子を表し、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、鉄又は銅の金属原子を表す。〕
 前記一般式(3)で示される基が、それぞれ独立して、下記式(11-a)、(12-a)、(13-a)、(14-a)、(15-a)、(16-a)、(17-a)又は(18-a)で示される基である、請求項8又は9記載の複合体。
 前記ポリ(hph)及び前記ポリ(carbo)のセグメントをそれぞれシェル部分及びコア部分として形成されたミセル状粒子に、MRI造影能を有する金属錯体が内包された形態にある、請求項1~22のいずれか1項に記載の複合体。
 さらに抗腫瘍活性を有する金属錯体が内包された形態にある、請求項23記載の複合体。
 水性媒体中における動的光散乱法により測定した平均分散粒子径が10nm~1μmである、請求項23又は24記載の複合体。
 請求項1~25のいずれか1項に記載の複合体を含むことを特徴とする、MRI造影用及び/又は抗腫瘍用組成物。
 被験動物の体内に請求項1~25のいずれか1項に記載の複合体を投与することを特徴とする、腫瘍検出用MRI造影方法。
 請求項1~25のいずれか1項に記載の複合体を含むことを特徴とする、MRI造影用及び/又は抗腫瘍用キット。
Description:
MRI造影能を有する重合体-金属錯 体複合体、並びにそれを用いたMRI造影用及び /又は抗腫瘍用組成物

 本発明は、ブロック共重合体とMRI造影能 有する金属錯体との複合体、並びに該複合 を含むMRI造影用組成物に関する。

 癌の累積罹患率、死亡率が増加の一途を どる中、あらゆる部位において癌の早期発 は命題といえる。早期発見によって治療時 侵襲も低くなるほか、完治も期待できる。 れぞれの癌によって早期治療のプロトコー は確立されており、簡便かつ診断能の高い 術が必要とされている。また、既に進行癌 診断が下された患者に対しては、遠隔転移 有無を的確に診断することは病期(ステージ )の決定、その後の治療方針の決定に非常に 要である。癌の治療には外科治療、放射線 法、化学療法が挙げられるが、外科治療に しては転移病巣の的確な切除、あるいは焼 を行うことで癌の根治が期待できる。また 射線療法でも腫瘍の部位を正確に判定し、 点的に照射を行うことで健常部位への照射 防ぎ、副作用を軽減することができる。こ らの意味でもあらゆるステージでの癌患者 とって、癌の正確な部位診断を行うことは 常に大きなメリットがある。

 悪性腫瘍の画像診断法の代表例としては、X 線CT、超音波、核磁気共鳴映像法(MRI)が挙げ れる。これらの検査は普及率が高く、各々 利点と欠点を併せ持つ。中でも、MRIは、放 線被爆がなく、客観性及び再現性が高いと う利点を有する方法である。しかしながら MRIは、そのハードウェアのみでは小さな腫 の同定が困難であった。
 このような欠点を補うために、腫瘍組織と の周囲組織とのコントラストを高めるため 様々な造影剤が開発され、実用化されてい 。代表的な造影剤としては、Gd-DTPA(ガドリ ウム-ジエチレントリアミン五酢酸)等の金属 錯体が挙げられるが、Gd-DTPAはキレート化し その副作用はフリーのGdよりも軽減されては いるものの、肝毒性や腎毒性等の副作用が存 在する。さらにGd-DTPAは部位特異性に欠け、 静脈投与により、速やかに各臓器及び筋肉 に拡散するため、投与から撮影までの時間 制限が生じるほか、腫瘍とそれ以外の組織 のコントラストを明確にするために多量の 影剤を投与する必要があった。

 そのため、腫瘍に特異的に集積し、少ない 用量でコントラストが高く、しかも副作用 少なく安全でかつ長期間の血中滞留性を有 る造影剤の開発が望まれている。
 腫瘍組織においては、正常組織に比べて新 血管の増生と血管壁の著しい透過性亢進が られること、またリンパ系が未発達である いうこと等の特性により、高分子量の物質 も血中から組織に移行させることができ、 つ移行後は当該組織から排出されにくい。 のため、結果的に、高分子化合物やナノサ ズの粒子が腫瘍組織内に集積しやすいとい 、いわゆるEPR効果により、抗癌剤等の各種 内包したリポソームや高分子ミセルのよう ナノサイズの粒子が、腫瘍組織に集積する とが知られている(特許文献1参照)。
 ところで、コア部分にGd錯体を内包する高 子ミセルは、これまでにも開発されている( 許文献2参照)。しかしながら、当該ミセル おいては、Gd錯体がミセルを構成するブロッ ク共重合体と直接結合して固定されているた め、Gdの緩和能(造影剤の感度)が抑制され、 た腫瘍組織から排出されにくく肝毒性や腎 性等の副作用の問題が懸念されていた。

特許第3955992号公報

国際公開第2006-003731号パンフレット

 そこで、本発明が解決しようとする課題は 高分子ミセルの構成成分となり得るブロッ 共重合体と、MRI造影能を有する金属錯体と 含んでなる、重合体-金属錯体複合体であっ て、腫瘍特異的に集積し、少ない使用量で造 影コントラストが高く、しかも副作用が低減 され且つ長期間の血中滞留性を有する複合体 を提供することにある。
 さらに、当該複合体を含むMRI造影用(及び/ は抗腫瘍用)組成物及びキット、並びに、当 複合体を用いる腫瘍検出用MRI造影方法を提 することにある。

 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭 検討を行った。その結果、高分子ミセルの 成成分となり得るブロック共重合体と、MRI 影能を有する金属錯体との結合を、他の金 錯体又は金属原子を介して行えば、前述し 課題を解決できることを見出し、本発明を 成した。しかも、上記他の金属錯体として 例えば抗腫瘍活性を有する金属錯体を用い ば、MRI造影用の組成物として使用できるだ でなく、同時に抗腫瘍用組成物(医薬組成物 )としても使用することができる。

 すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式(a):
   ポリ(hph)-block-ポリ(carbo)      (a)
〔式(a)中、ポリ(hph)は非荷電性親水性のポリ ー鎖セグメントを表し、ポリ(carbo)は側鎖に カルボキシル基を有するポリマー鎖セグメン トを表す。〕
で示されるブロック共重合体(A)と、MRI造影能 を有する金属錯体(B)とを含んでなる重合体- 属錯体複合体であって、
 共重合体(A)中のポリ(carbo)のカルボキシルア ニオンと、金属錯体(B)とが、金属原子(M)を介 して結合した構造を含むものである、
前記複合体。

 上記(1)の複合体は、例えば、共重合体(A)中 ポリ(carbo)のカルボキシルアニオンに金属原 子(M)が結合し、かつ該金属原子(M)に金属錯体 (B)が結合した構造を含むものが挙げられる。
 上記(1)の複合体は、ポリ(hph)が、例えば、 リエチレングリコール、ポリ(2-メチル-2-オ サゾリン)、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン)、 ポリ(2-イソプロピル-2-オキサゾリン)、ポリ クリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポ ビニルアルコール、ポリアクリル酸ヒドロ シエチル及びポリ(メタクリル酸ヒドロキシ チル)からなる群より選ばれる親水性ポリマ ーに由来するものや、また、ポリ(carbo)が、 えば、ポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラ ン酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル )及びポリ(リンゴ酸)からなる群より選ばれ アニオン性ポリマーに由来するものが挙げ れる。

 上記(1)の複合体は、金属原子(M)が、例え 、金属錯体の中心金属原子であるものが挙 られ、金属錯体としては、例えば、抗腫瘍 性を有する金属錯体(C)が挙げられる。ここ 、金属錯体(C)は、例えば、ブロック共重合 (A)に固定化されたものであってもよい。

 上記(1)の複合体としては、具体的には、例 ば、下記一般式(1)又は(2)で示されるものが げられる。
〔式(1)及び(2)中、R 1 は水素原子又は未置換若しくは置換された直 鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基を表し、L 1 及びL 2 は連結基を表し、R 2 はそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン 基を表し、R 3 はそれぞれ独立して水素原子、アミノ基の保 護基、疎水性基又は重合性基を表し、R 4 はヒドロキシル基又は開始剤残基を表し、R 5 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属 のイオン、又は下記一般式(3)若しくは(4):
(式(3)及び(4)中、R 6 は金属原子又は金属錯体由来の基を表し、R 7 はMRI造影能を有する金属錯体由来の基を表す 。)
で示される基を表し(但し、R 5 は前記一般式(3)で示される基を少なくとも一 部に含む。)、mは5~20,000の整数であり、nは2~5, 000の整数であり、xは0~5,000の整数(但し、x≦n) である。〕

 また、上記(1)の複合体の別の具体的として 、例えば、下記一般式(1-a)又は(2-a)で示され るものが挙げられる。
〔式(1-a)及び(2-a)中、R 1 は水素原子又は未置換若しくは置換された直 鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基を表し、L 1 及びL 2 は連結基を表し、R 2 はそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン 基を表し、R 3 はそれぞれ独立して水素原子、アミノ基の保 護基、疎水性基又は重合性基を表し、R 4 はヒドロキシル基又は開始剤残基を表し、R 5 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属 のイオン、又は下記一般式(3)若しくは(4):
(式(3)及び(4)中、R 6 は金属原子又は金属錯体由来の基を表し、R 7 はMRI造影能を有する金属錯体由来の基を表す 。)
で示される基を表し(但し、R 5 は前記一般式(3)で示される基を少なくとも一 部に含む。)、mは5~20,000の整数であり、nは2~5, 000の整数である。〕

 ここで、上記一般式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)に おいては、例えば、R 6 が、それぞれ独立して、白金、銅、金又は鉄 の金属原子であってもよいし、それぞれ独立 して、白金、銅、金又は鉄を中心金属原子と する金属錯体由来の基であってもよい。後者 の場合、R 6 としては、例えば、下記一般式(5)又は(6)で示 される基が挙げられる。
〔式(5)及び(6)中、Mは白金、銅、金又は鉄の 属原子を表す。〕

 また、R 6 としては、例えば、抗腫瘍活性を有する金属 錯体由来の基が挙げられ、具体的には、下記 式(5-a)又は(6-a)で示される基が例示できる。

 また、上記一般式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)にお いては、例えば、R 7 が、それぞれ独立して、ガドリニウム、ユー ロピウム、マンガン、鉄又は銅を中心金属原 子とする金属錯体由来の基であってもよい。 ここで、当該金属錯体としては、例えば、多 座配位子との金属錯体が挙げられ、多座配位 子としては、例えば、アミノカルボン酸系若 しくはリン酸系化合物、ポルフィリン系化合 物、又はデフェリオックスアミンBが挙げら る。さらに、これらの中でも、アミノカル ン酸系又はリン酸系化合物としては、例え 、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレント アミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢 ビスメチルアミド、トリエチレンテトラミ 六酢酸、ベンジロキシプロピオニック五酢 、エチレングリコールテトラミン四酢酸、 トラアザシクロドデカン四酢酸、テトラア シクロドデカン三酢酸、ジヒドロキシヒド キシメチルプロピルテトラアザシクロドデ ン三酢酸、ヒドロキシプロピルテトラアザ クロドデカン三酢酸、又はテトラアザシク ドデカン四リン酸が挙げられる。

 上記R 7 としては、具体的には、例えば、下記一般式 (7)、(8)、(9)又は(10)で示される基
が挙げられ、さらに具体的には、下記式(7-a) (8-a)、(9-a)又は(10-a)で示される基が挙げられ る。
〔式(7)、(8)、(9)及び(10)中、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、 鉄又は銅の金属原子を表す。〕

 さらに、上記一般式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)に おいては、例えば、前述の一般式(3)で示され る基が、それぞれ独立して、下記一般式(11) (12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)又は(18)で示さ る基であってもよく、より具体的には、下 式(11-a)、(12-a)、(13-a)、(14-a)、(15-a)、(16-a)、( 17-a)又は(18-a)で示される基が挙げられる。

〔式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)及び(1 8)中、M 1 は白金、銅、金又は鉄の金属原子を表し、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、 鉄又は銅の金属原子を表す。〕

 上記(1)の複合体としては、例えば、前記ポ (hph)及び前記ポリ(carbo)のセグメントをそれ れシェル部分及びコア部分として形成され ミセル状粒子に、MRI造影能を有する金属錯 が内包された形態にあるものが挙げられ、 らに、抗腫瘍活性を有する金属錯体が内包 れた形態にあるものも挙げられる。当該形 のものとは、いわゆる高分子ミセルを形成 るように、上記(1)の複合体が複数凝集した のであり、例えば、水性媒体中における動 光散乱法により測定した平均分散粒子径が1 0nm~1μmであるものが挙げられる。
(2)上記(1)の複合体を含むことを特徴とする、 MRI造影用及び/又は抗腫瘍用組成物。
(3)被験動物の体内に上記(1)の複合体を投与す ることを特徴とする、腫瘍検出用MRI造影方法 。
(4)上記(1)の複合体を含むことを特徴とする、 MRI造影用及び/又は抗腫瘍用キット。

 本発明によれば、高分子ミセルの構成成 となり得るブロック共重合体と、MRI造影能 有する金属錯体とを含んでなる、重合体-金 属錯体複合体であって、腫瘍特異的に集積し 、少ない使用量で造影コントラストが高く、 しかも副作用が低減され且つ長期間の血中滞 留性を有する複合体を提供することができる 。さらに、当該複合体を含むMRI造影用(及び/ は抗腫瘍用)組成物及びキット、並びに、当 該複合体を用いる腫瘍検出用MRI造影方法を提 供することができる。

本発明の重合体-金属錯体複合体の一実 施例の合成スキームを示す概略図である。 ミセルに内包されたGdのポリマーあた の比率を示すグラフである。 合成時に加え たGd-DTPA量(mM)に対する最終的にミセルに内包 れたポリマーあたりのGd量を表す。CDDPを用 た群(黄色)では押し並べてGd含有量が低いの に対し、DACHPtを用いた群(青色)では合成時に えたGd量が多いほどその含有量も多くなっ いた。 ミセルに内包されたGd及びPt濃度を示す グラフである。 PEG-P(Glu)12-20とPEG-P(Glu)12-40と のPt及びGd濃度を示す。Gd濃度はややPEG-P(Glu) 12-40の方が含有量が多いものの、有意差は認 られなかった。

ミセルに内包されたGdのPtに対する比率 を示すグラフである。 PEG-P(Glu)12-20及びPEG-P(G lu)12-40ミセルのそれぞれのGd/Pt比を示す。初 に加えたGd量が4mM及び5mMの場合において、や やPEG-P(Glu)12-40の方がGd/Pt比が高かった。 ミセルのサイズ(DLSデータ)を示すチャ トである。 すべてのサンプルに関して、粒 径34~43nmの単分散の粒子が得られ、またPolydisp ersityIndex (PdI)は、いずれも0.1以下であった。 ミセルの安定性を示すグラフである。 いずれのミセルでもほぼ同様のintensity(散乱 強度(I/I0);グラフ縦軸)の経時的減少が見ら た。ミセルは徐々に崩壊するものの、血中 も投与後15時間で50%のミセルが滞留し得るこ とが分かった。

ミセルからの薬剤の放出を示すグラフ ある。 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルからのGd及びP tそれぞれの放出を示した。Ptは緩徐に放出さ れるのに対し、Gdは20時間で50%が放出された ミセルの緩和能を示すグラフである。 Gd-DTPA /DACHPt内包ミセルは、Gd-DTPAと比較して、20倍 上の緩和能を有するものであった。なお、 和能は、以下で定義される。   1/T 1 = 1/T 10 +R 1 [Gd]   1/T 2 = 1/T 20 +R 2 [Gd]   (R 1  :[mM -1 ・S -1 ] ; R 2  :[mM -1 ・S -1 ]) Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル注入後、1、4、22 間後の血漿中及び腫瘍中の、Pt及びGd量(%dose )を示すグラフである。

 注入後22時間で約20%のGdの腫瘍内への集積が 見られ、血漿中には22時間後でGd及びPtとも10% 認められたため、血中滞留性は高いことが示 された。
in vivo MRI実験の結果を示す図(MRI像)で ある。 腫瘍の中心を通る2スライスを示した 。ミセル投与後30分で陽性の造影効果の出現 認め、180分、240分後に最も顕著となった。 Tumor内におけるFree Gd-DTPAとGd-DTPA/DACHPt 包ミセルとの造影効果の比較結果を示すグ フである。 グラフ縦軸のI/I0は、ミセル投 前の腫瘍内の信号強度に対するミセル投与 の信号強度の増加率(%)を意味する。Gd-DTPAと 比較して、ミセルの方が造影効果が高く、ま た少なくとも6時間は造影効果が持続するこ が分かった。 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル及びフリーのOxal iplatin、又は当該ミセル及びフリーのGd-DTPAを それぞれ、注射後1, 4, 8, 24時間後に採血 、血漿中の薬剤の残存率(%)を測定した結果 示すグラフである。 ミセルの場合、24時間 まで薬剤が留まっているのに対し、Oxaliplati n及びGd-DTPAは速やかに血漿中より消失してい 。この結果から、ミセルは両薬剤の血中滞 性を大幅に増加させることがわかった。

難治性癌の一つであるヒト膵臓癌(BxPC3 )に対する、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル(Pt濃度: 3mg /ml)及びOxaliplatin(Pt濃度: 8mg/ml)の投与後の、 治療群の腫瘍の大きさ(左図)及び体重(右図) 推移を示すグラフである。なお、当該グラ 中、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルを投与した場合 、「DACHPt/m」と表記した。 Oxaliplatinはミセ の倍以上の薬剤濃度でもほとんど治療効果 ないのに対し、ミセルは投与量を減少させ も十分な制癌効果を示した。また、体重減 もなかったことより、強い副作用もないこ が示唆された。 in vivo MRI 実験の結果を示す図(MRI像) ある。 難治性ヒト膵癌(BxPC3)の同所移植モ ルでの、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル(左)及びGd-DTP A(右)の投与後の、MRI造影効果を確認した。ミ セルはGd-DTPAに比べ強く持続的な造影効果を め、この結果、他臓器と腫瘍との間に明確 intensityの差が認められたのに対し、Gd-DTPAで ほとんど造影効果が認められなかった。 in vivo MRI 実験での、各部位における intensityの平均値の経時的推移を示すグラフで ある。 Gd-DTPA投与後の腫瘍(Tumor (free Gd-DTPA)) では、ほとんどintensityの上昇はなかったが、 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル注射後の腫瘍(Tumor)では 、intensityが顕著に上昇し且つ持続した。他臓 器(Liver, Kidneys, Spleen)では、ややintensityの上 がみられたが、wash outされるため、持続的 上昇は認められなかった。

 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の 囲はこれらの説明に拘束されることはなく 以下の例示以外についても、本発明の趣旨 損なわない範囲で適宜変更し実施すること できる。
 なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎 なる特願2008-167823号明細書(2008年6月26日出願 )の全体を包含する。また、本明細書におい 引用された全ての先行技術文献、並びに公 公報、特許公報及びその他の特許文献は、 照として本明細書に組み入れられる。


1.重合体-金属錯体複合体
 本発明は、高い血中滞留性と腫瘍組織選択 を有する高分子ミセルによるドラッグデリ リーシステムに着目し、当該高分子ミセル にMRI造影能を有する金属錯体を内包させる めの、ブロック共重合体-金属錯体複合体を 提供するものである。
 本発明の重合体-金属錯体複合体は、下記一 般式(a):
   ポリ(hph)-block-ポリ(carbo)      (a)
〔式(a)中、ポリ(hph)は非荷電性親水性のポリ ー鎖セグメントを表し、ポリ(carbo)は側鎖に カルボキシル基を有するポリマー鎖セグメン トを表す。なお、本発明においては、便宜上 、ポリ(hph)やポリ(carbo)等と称しているが、「 ポリ」の語には、いわゆる「オリゴ」の範疇 に入るものも包合されるものとする。〕
で示されるブロック共重合体(A)と、MRI造影能 を有する金属錯体(B)とを含んでなる重合体- 属錯体複合体であって、該共重合体(A)中の リ(carbo)のカルボキシルアニオンと、該金属 体(B)とが、金属原子(M)を介して結合した構 を含むものである。

 ここで、共重合体(A)中のポリ(carbo)のカル ボキシルアニオンと、金属錯体(B)とが、金属 原子(M)を介して結合した構造とは、具体的に は、共重合体(A)中のポリ(carbo)のカルボキシ アニオンに金属原子(M)が結合し、かつ該金 原子(M)に金属錯体(B)が結合した構造である とが好ましい。また、共重合体(A)と金属錯 (B)とのリンカー的な役割を果たす金属原子(M )は、金属原子のみであってもよいし、金属 子含有化合物中の金属原子であってもよく 限定はされず、後者の例示としては、金属 体の中心金属原子であることが好ましい。 属錯体の中心金属原子としては、限定はさ ないが、例えば、抗腫瘍活性を有する金属 体(C)の中心金属原子であることが好ましく この場合、MRI造影能のみならず抗腫瘍活性 も発揮させることができる。なお、金属錯 (C)は、限定はされないが、本発明の複合体 高い血中安定性を発揮できるよう、ブロッ 共重合体(A)に固定化されたものであること 好ましい。

 共重合体(A)中、非荷電性親水性のポリマ 鎖セグメントであるポリ(hph)としては、限 はされないが、例えば、ポリエチレングリ ール(PEG)、ポリ(2-メチル-2-オキサゾリン)、 リ(2-エチル-2-オキサゾリン)、ポリ(2-イソプ ピル-2-オキサゾリン)、ポリアクリルアミド 、ポリメタクリルアミド、ポリビニルアルコ ール、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル及び ポリ(メタクリル酸ヒドロキシエチル)からな 群より選ばれる親水性ポリマーに由来する のが好ましく挙げられ、中でも、ポリエチ ングリコールに由来するものがより好まし 。

 また、共重合体(A)中、側鎖にカルボキシル を有するポリマー鎖セグメントであるポリ( carbo)としては、限定はされないが、例えば、 ポリ(グルタミン酸)、ポリ(アスパラギン酸) ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)及び リ(リンゴ酸)からなる群より選ばれるアニ ン性ポリマーに由来するものが好ましく挙 られ、中でも、ポリ(グルタミン酸)及びポリ (アスパラギン酸)に由来するものがより好ま い。
 本発明の重合体-金属錯体複合体としては、 具体的には、下記一般式(1)又は(2)で示される もの複合体が例示できる。

 また、本発明の重合体-金属錯体複合体の、 他の好ましい具体例としては、下記一般式(1- a)又は(2-a)で示される複合体が挙げられる。

 上記式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)中、R 1 は水素原子又は未置換若しくは置換された直 鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基を表し、L 1 及びL 2 は連結基を表し、R 2 はそれぞれ独立してメチレン基又はエチレン 基を表し、R 3 はそれぞれ独立して水素原子、アミノ基の保 護基、疎水性基又は重合性基を表し、R 4 はヒドロキシル基又は開始剤残基を表し、
R 5 はそれぞれ独立して水素原子、アルカリ金属 のイオン、又は下記一般式(3)若しくは(4):
(式(3)及び(4)中、R 6 は金属原子又は金属錯体由来の基を表し、R 7 はMRI造影能を有する金属錯体由来の基を表す 。)
で示される基を表す。ここで、一般式(4)で示 される基は、結合の手を2つ有しているが、 れは2つのR 5 部分を連結する基(すなわち、2つのカルボキ ルアニオンと結合する基)であることを意味 する。また、mは5~20,000(好ましくは10~5,000、よ り好ましくは40~500)の整数であり、nは2~5,000( ましくは5~1,000、より好ましくは10~200)の整数 である。さらに、上記式(1)及び(2)においては 、xは0~5,000(好ましくは0~1,000、より好ましく 0~200)の整数(但し、x≦n)である。なお、上記 (1)及び(2)において、n-x個の繰り返し単位とx 個の繰り返し単位とは、ランダムに混在して 分布していてもよいし、ブロック状に分布し ていてもよく、限定はされない。

 上記式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)中の、m個の り返し単位の部分が、前記式(a)におけるポ (hph)のセグメントに相当する。また、上記式 (1)及び(2)中の、n-x個とx個の繰り返し単位の 分、及び上記式(1-a)及び(2-a)中の、n個の繰り 返し単位の部分が、前記式(a)におけるポリ(ca rbo)のセグメントに相当する。

 R 1 について、前述した未置換若しくは置換され た直鎖若しくは分枝のC 1-12 アルキル基としては、限定はされないが、例 えば、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロ ピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n- ンチル、n-ヘキシル、デシル、ウンデシル等 が挙げられ、置換された場合の置換基として は、例えば、アセタール化ホルミル基、シア ノ基、ホルミル基、カルボキシル基、アミノ 基、C 1-6 アルコキシカルボニル基、C 2-7 アシルアミド基、同一もしくは異なるトリ-C 1-6 アルキルシロキシ基、シロキシ基またはシリ ルアミノ基が挙げられる。置換基がアセター ル化ホルミル基であるときは、酸性の温和な 条件下で加水分解して他の置換基であるホル ミル基(-CHO:またはアルデヒド基)に転化でき 。このようなホルミル基、または上記カル キシル基もしくはアミノ基は、例えば、本 明の複合体を生成した後に、対応する保護 れた形態の基または部分から脱保護もしく 転換して生じさせることができ、次いで必 に応じ、適当な抗体もしくはその特異結合 を有する断片(F(ab') 2 、F(ab)、または葉酸など)を共有結合し、そし て該複合体に標的指向性を付与するために利 用できる。このような官能基を片末端に有す るポリ(hph)セグメント(非荷電性親水性のポリ マー鎖セグメント)は、例えば、WO 96/32434、WO  96/33233、WO 97/06202に記載のブロック共重合 のPEGセグメント部の製造法に準じて形成す ことができる。このように形成されるポリ(h ph)セグメントと、ポリ(carbo)セグメントとは 前述した各ブロック共重合体の製造方法に じて、どのような連結様式をとることもで 、どのような連結基で結合されていてもよ 。該製造方法は、特に限定はされないが、 端にアミノ基を有するポリ(hph)誘導体を用い て、そのアミノ末端から、例えば、β-ベンジ ル-L-アスパルテート及び/又はγ-ベンジル-L- ルタメートのN-カルボン酸無水物(NCA)を重合 せてブロック共重合体を合成し、その後、 鎖ベンジル基を他のエステル基に変換する 、または部分もしくは完全加水分解するこ により目的のブロック共重合体を得る方法 挙げられる。この場合、得られた共重合体 構造は、一般式(1)または(1-a)の複合体を構 する共重合体の構造となり、連結基L 1 は、用いたポリ(hph)セグメントの末端構造に 来する構造となり、好ましくは-(CH 2 ) p -NH-である(ここで、pは1~5の整数である。)。 た、ポリ(carbo)セグメント又はポリ(carbo)誘導 体を合成してから、予め用意したポリ(hph)セ メントと結合させる方法でも、共重合体は 造可能である。この場合、結果的に上記の 法で製造したものと同一の構造となること あるが、一般式(2)または(2-a)の複合体を構 する共重合体の構造となることもあり、連 基L 2 は、限定はされないが、好ましくは-(CH 2 ) q -CO-である(ここで、qは1~5の整数である。)。

 R 3 について、前述したアミノ基の保護基として は、例えば、ベンジルオキシカルボニル基、 t-ブチルオキシカルボニル基、アセチル基及 トリフルオロアセチル基等が挙げられる。 た、疎水性基としては、例えば、ベンジル ルボニル基及びベンズヒドリルカルボニル 等が挙げられる。さらに、重合性基として 、例えば、アクリロイル及びメタクリルロ ル基等が挙げられる。
 R 4 について、前述した開始剤残基としては、例 えば、NCA重合の開始剤となり得る脂肪族また は芳香族の1級アミン化合物残基(-NH-アルキル )等が挙げられる。
 R 5 について、前述したアルカリ金属のイオンと しては、例えば、ナトリウム(Na)イオン、リ ウム(Li)イオン及びカリウム(K)イオン等が挙 られる。

 また、一般式(3)及び(4)で示される基におけ R 6 としては、例えば、白金(Pt)、銅(Cu)、金(Au)及 び鉄(Fe)の金属原子、並びに白金、銅、金又 鉄を中心金属原子とする金属錯体由来の基 挙げられる。ここで、当該金属錯体由来の としては、限定はされないが、例えば、下 一般式(5)及び(6)で示される基が例示できる なお、一般式(6)で示される基については、 ス型及びトランス型のいずれの構造のもの 含まれる。
〔式(5)及び(6)中、Mは白金、銅、金又は鉄の 属原子を表す。〕

 また、R 6 としての、当該金属錯体由来の基としては、 例えば、抗腫瘍活性を有する金属錯体由来の 基であることが好ましく、具体的には、例え ば、下記式(5-a)及び(6-a)で示される基が挙げ れる。ここで、式(5-a)で示される基は、ジア ミノシクロヘキサン白金(II)錯体(ダハプラチ (DACH Platin: DACHPt))由来の基であり、式(6-a) 示される基は、シスプラチン(cisplatin: CDDP) 来の基である。なお、式(6-a)で示される基と しては、トランスプラチン由来の基も含み得 るが、抗腫瘍活性を有する金属錯体由来の基 としては、シスプラチン由来の基が選択され る。

 次いで、一般式(3)で示される基におけるR 7 としては、MRI造影能を有する金属錯体由来の 基であればよく、特に限定はされないが、例 えば、ガドリニウム、ユーロピウム、マンガ ン、鉄又は銅を中心金属原子とする金属錯体 由来の基が好ましく挙げられる。当該金属錯 体としては、多座配位子との金属錯体である ことが好ましく、また、当該多座配位子が、 アミノカルボン酸系若しくはリン酸系化合物 、ポルフィリン系化合物、又はデフェリオッ クスアミンBであることがより好ましい。さ に、多座配位子としてのアミノカルボン酸 若しくはリン酸系化合物としては、例えば エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリ ミン五酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸 スメチルアミド、トリエチレンテトラミン 酢酸、ベンジロキシプロピオニック五酢酸 エチレングリコールテトラミン四酢酸、テ ラアザシクロドデカン四酢酸、テトラアザ クロドデカン三酢酸、ジヒドロキシヒドロ シメチルプロピルテトラアザシクロドデカ 三酢酸、ヒドロキシプロピルテトラアザシ ロドデカン三酢酸、及びテトラアザシクロ デカン四リン酸等が好ましく挙げられ、中 も、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレン リアミン五酢酸、ジエチレントリアミン五 酸ビスメチルアミド、テトラアザシクロド カン四酢酸、及びヒドロキシプロピルテト アザシクロドデカン三酢酸がより好ましい

 ここで、R 7 としての上記金属錯体由来の基としては、具 体的には、例えば、下記一般式(7)、(8)、(9)及 び(10)で示される基が挙げられる。
〔式(7)、(8)、(9)及び(10)中、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、 鉄又は銅の金属原子を表す。〕

 また、R 7 としての上記金属錯体由来の基としては、よ り具体的には、例えば、下記式(7-a)、(8-a)、(9 -a)及び(10-a)で示される基が挙げられる。

 さらに、R 5 としての、一般式(3)で示される基としては、 上述したR 6 とR 7 とを組み合わせた基が挙げられるが、具体的 には、下記一般式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、( 16)、(17)及び(18)で示される基を例示すること でき、より具体的には、下記式(11-a)、(12-a) (13-a)、(14-a)、(15-a)、(16-a)、(17-a)及び(18-a)で される基が挙げられる。

〔式(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)、(17)及び(1 8)中、M 1 は白金、銅、金又は鉄の金属原子を表し、M 1 はガドリニウム、ユーロピウム、マンガン、 鉄又は銅の金属原子を表す。〕

 前記一般式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)で示される 本発明の複合体は、R 5 として、上述した一般式(3)で示される基を少 なくとも一部に含むものである。一般式(3)で 示される基の割合は、限定はされないが、例 えば、前記式(1)、(2)、(1-a)及び(2-a)で示され 本発明の複合体に含まれる合計n個のR 5 中、一般式(3)で示される基が0.01%以上である とが好ましく、より好ましくは0.1%以上、さ らに好ましくは1%以上である。

 本発明の重合体-金属錯体複合体の製造方 法としては、限定はされないが、前述したブ ロック共重合体(A)と、MRI造影能を有する金属 錯体(B)とを、金属原子(M)(抗腫瘍活性を有す 金属錯体(C)などの金属錯体も含む)の存在下 水性媒体中にて反応させる方法が好ましい 反応条件としては、目的の重合体-金属錯体 複合体が得られる限り、いかなる条件を設定 してもよく、例えば、前述した一般式(1)、(2) 、(1-a)及び(2-a)に示した複合体の構成となる うに、共重合体(A)、金属錯体(B)及び金属原 (M)の使用量等を、適宜設定することができ 。なお、金属原子(M)として上記金属錯体(C) 使用する場合は、例えば、ダハプラチンや スプラチンと、共重合体(A)中のカルボキシ 基との当量比(金属錯体(C)/共重合体(A)中のカ ルボキシル基)が、1/10000以上、好ましくは1/10 00以上、さらに好ましくは1/100以上となるよ に、使用量を設定することが好ましい。ま 、反応温度は、限定はされないが、例えば5~ 60℃であることが好ましい。さらに、反応溶 となる水性媒体としては、水(特に、脱イオ ン水)または各種無機もしくは有機緩衝剤、 セトニトリル、ジメチルホルムアミド、エ ノール等の水混和有機溶媒を、本発明の複 体の形成反応に悪影響を及ぼさない範囲で んでいてもよい。

 本発明の複合体の形態としては、例えば ポリ(hph)のセグメント及びポリ(carbo)のセグ ントをそれぞれシェル部分及びコア部分と て形成されたミセル状粒子に、MRI造影能を する金属錯体が内包された形態にあるもの 好ましく挙げられ、さらに抗腫瘍活性を有 る金属錯体が内包された形態にあるものが り好ましい。通常、水性媒体(水性溶媒)中 おいては、本発明の複合体は、凝集して、 溶化した高分子ミセル状の形態を形成し得 。ポリ(hph)のセグメントは、親水性ポリマー 鎖のセグメントであるため、ミセル粒子の表 面側のシェル部分を構成し、ポリ(carbo)のセ メントは疎水性ポリマー鎖のセグメントで るため、ミセル粒子の内部側のコア部分を 成する。ポリ(carbo)のセグメントに結合して るMRI造影能を有する金属錯体や、抗腫瘍活 を有する金属錯体は、コア部分を構成する リ(carbo)のセグメントとともに、ミセル粒子 の内部に内包された状態となる。このような 、本発明の複合体により構成される高分子ミ セル粒子は、水性媒体中における平均分散粒 子径(動的光散乱法により測定)が、例えば、1 0nm~1μmであることが好ましく、より好ましく 10nm~200nmであり、さらに好ましくは20nm~50nmで ある。高分子ミセル粒子の単離及び精製は、 常法により、水性媒体中から回収することが できる。典型的な方法としては、限外濾過法 、ダイアフィルトレーション、透析方法が挙 げられる。


2.MRI造影用及び/又は抗腫瘍用組成物
 本発明においては、前述した重合体-金属錯 体複合体を含むことを特徴とする、MRI造影用 組成物及び/又は抗腫瘍用組成物(医薬組成物) が提供される。本発明の組成物は、MRI造影に よる癌(悪性腫瘍)の検出・診断手段、及び/又 は癌(悪性腫瘍)の治療手段として使用するこ ができる。腫瘍の種類は、限定はされず、 知の各種癌種を挙げることができる。
 本発明の組成物において、前述した重合体- 金属錯体複合体の含有割合は、限定はされず 、MRI造影の効果や抗腫瘍効果を勘案して適宜 設定することができる。

 本発明の組成物は、ヒト、マウス、ラット ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ等の各種動物に 用することができ、限定はされない。被験 物への投与方法は、通常、点滴静注などの 経口用法が採用され、投与量、投与回数及 投与期間などの各条件は、被験動物の種類 び状態のほか、組成物の使用目的に応じて 適宜設定することができる。例えば、抗腫 用効果を得ることを目的として、ヒトに静 内投与をする場合の用量は、実験動物また ボランティアによる小実験を行い、それら 結果を考慮して、さらには患者の状態を考 して専門医が決定するのが好ましく、限定 されないが、一般には、1日1回、1.0~1,000 mg/ m 2 (患者の体表面積)とすることができ、また、1 0~200 mg/m 2 (患者の体表面積)を1日1回、数日間連続投与 、一定期間休薬するか、あるいは、50~500 mg/ m 2 (患者の体表面積)を1日1回投与した後、数日 休薬する等、投与スケジュールにより、適 な用量を選択することができる。

 本発明の組成物は、MRI造影用及び/又は抗腫 瘍用といった用途を勘案し、薬剤製造上一般 に用いられる賦形材、充填材、増量剤、結合 剤、湿潤剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、 分散剤、緩衝剤、保存剤、溶解補助剤、防腐 剤、矯味矯臭剤、無痛化剤、安定化剤及び等 張化剤等を適宜選択して使用することができ る。
 本発明においては、被験動物の体内に本発 の重合体-金属錯体複合体、又は上記本発明 の組成物を投与することを特徴とする、腫瘍 検出用MRI造影方法を提供することができる。 また同様に、本発明においては、被験動物の 体内に本発明の重合体-金属錯体複合体、又 上記本発明の組成物を投与することを特徴 する、癌の治療方法を提供することができ 。


3.MRI造影用及び/又は抗腫瘍用キット
 本発明のMRI造影用及び/又は抗腫瘍用キット は、前述した重合体-金属錯体複合体を含む とを特徴とする。当該キットは、腫瘍検出 MRI造影方法や、癌の治療方法等に好ましく いることができる。
 当該キットにおいて、本発明の重合体-金属 錯体複合体(高分子ミセル粒子状の形態もの の含む)の保存状態は、限定はされず、その 定性(保存性)及び使用容易性等を考慮して 溶液状又は粉末状等の状態を選択できる。
 本発明のキットは、前記重合体-金属錯体複 合体以外に他の構成要素を含んでいてもよい 。他の構成要素としては、限定はされないが 、例えば、各種バッファー、防腐剤、分散剤 、安定化剤、及び使用説明書(使用マニュア )等を挙げることができる。


 以下に、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明するが、本発明はこれらに限定され ものではない。

 ポリエチレングリコール(以下、PEGという)- リアミノ酸共重合体に、金属錯体を結合さ 、さらに当該金属錯体のカルボキシル末端 Gd(ガドリニウム)錯体を結合させて得られた 、重合体-金属錯体複合体が形成するミセル 調製した(図1)。
 具体的には、Pt錯体として、1-5 mMのcis-diammi nedichloroplatinum(II) Cl 2 (以下、CDDPという)、又は1-5 mM dichloro(1,2-diami nocyclohexane)platinum(II) (NO 3 ) 2 (以下、DACHPtという)溶液をまず1~5 mMのDACHPt(NO 3 ) 2 、または1~5 mM CDDPCl 2 を70℃の蒸留水にて溶解し、その後1~20 mM gad olinium diethylene triamine pentaacetic acid (以下、 Gd-DTPAという)または5 mM Gadolinium [5,8-bis(carbox ymethyl)-11-[2-(methylamino)-2-oxoethyl]-3-oxo-2,5,8,11-tetr aazatridecan-13-oato(3-)] (以下、Gadodiamideという) 加えて、暗所にて37℃、24時間震盪させ、Gd-D TPA/DACHPt、CDDP/Gd-DTPA、DACHPt/GadodiamideまたはCDDP/ Gadodiamide複合体を作製した。次に、PEG-ポリグ ルタミン酸共重合体、またはPEG-ポリアスパ ギン酸共重合体を、カルボン酸濃度で2.5-5 m Mにして加え、暗所にて37℃で5日間震盪させ 。その後、余剰のGd錯体、Pt錯体、ポリマー 除去するため、Molecular weight cut off(以下、 MWCOという)2,000の透析膜を使用し、24時間透析 を行った。さらに、MWCO 30,000のろ過装置を用 いて限外濾過(3,000rpm、15min、5回)をかけ、0.22 mのフィルターを用いて粗大な凝集体を除去 、目的とする高分子ミセルを得た。

 ミセルに内包されたGd錯体の内包量を評価 た。具体的には、まず5 mM DACHPt溶液、また 5 mM CDDP溶液を使用し、加えるGd-DTPAの濃度 変化させてミセルを作製し、最も効率的にG dを含有する濃度を探索した。使用したブロ ク共重合体は、PEG-ポリグルタミン酸(PEGの分 子量:12,000、グルタミン酸ユニット:20)である ミセルに内包されるGd及びPtの量は、ミセル を2%硝酸に溶かし、10000~100000倍希釈した後、 オンカップリングプラズママススペクトル( 以下、ICP-MSという)(Hewlett Packard 4500)にて測 した。その結果、DACHPt内包ミセルの方がCDDP 包ミセルよりもポリマーあたりのGd含有量 多く、かつGd-DTPAを高濃度加えた方がミセル 内包されるGd量が多かった(図2)。
 Gd-DTPA量は1~20mMまで施行し、5mM以上にGd-DTPA 濃度を上げても、ミセルに内包されるGd-DTPA は増加しなかった。

 PEG-ポリグルタミン酸共重合体(PEG-PGlu)の ルタミン酸ユニット数によって、ミセルのGd 内包量が変化するかどうかを検討した。ブロ ック共重合体は、PEGの分子量が12,000で、かつ ポリグルタミン酸のユニット数が20及び40の のを使用した(それぞれ、PEG-PGlu(12-40)及びPEG- PGlu(12-20)という。ここで、当該表記中、「12 はPEGの分子量の12,000を意味し、「20」及び「 40」は、ポリカルボン酸(ここではポリグルタ ミン酸)のユニット数を意味する。)。ミセル 作製は、まず1~5 mM Gd-DTPA溶液と5mM DACHPt溶 とを混和して、37℃で24時間、暗所で震盪し 、その後、カルボン酸ベースで5mM PEG-PGlu溶 を混ぜて、37℃で5日間、震盪して行った。 述の方法と同様に、透析、限外濾過、0.22μm フィルターで余分な分子や構造体を除去し 目的とする高分子ミセルを得た。その後ミ ルに内包されるGd及びPtの量は、ミセルを2% 酸に溶かし、10000~100000倍希釈した後、ICP-MS て測定した。その結果、PEG-PGlu(12-40)はPEG-PGl u(12-20)よりもGd/Pt比はやや高かったものの有 差は認められなかった(図3,4)。

 PEG-PGluのグルタミン酸ユニット数、及びGd-DT PAの仕込みの濃度によって、ミセルの粒径が 化するかどうかを検討した。作製したミセ の流体力学半径を、動的光散乱(DLS)測定(Zeta sizer Nano ZS, Malvern Instruments)により測定した 。その結果、ミセルの平均粒径は、いずれの ポリマーを用いたミセルでも34~40nmであり、Po lydispersity Index(PdI)は、いずれも0.2以下で、単 分散であった(図5)。
 また、他の実施例として、以下の高分子ミ ルも作製し、上記と同様に平均粒径及びPdI 測定した。すなわち、5mM Gadodiamideと5mM DACH Ptとを反応させ、5mM PEG-P(Glu)12-30を加えて、Ga dodiamide/DACHPt内包ミセルを作製した。当該ミ ルの平均粒径は42nmであり、PdIは0.174であっ 。また、5mM Gd-DTPAと5mM CuCl 2 とを反応させ、5mM PEG-P(Glu)12-30を加えて、Gd-D TPA/銅内包ミセルを作製した。当該ミセルの 均粒径は32.2nmであり、PdIは0.158であった。さ らに、5mM Iron acetylacetonateを50% DMFにて溶解 、5mM Gd-DTPAと混合し、すぐに5mM PEG-P(Glu)12-20 を加えて反応させ、Gd-DTPA/鉄内包ミセルを作 した。当該ミセルの平均粒径は、23~110nmで り、PdIは0.399であった。

 実施例1で作製した各々のミセルの血中安定 性を、生理環境下でのミセルの散乱光強度を 測定することで評価した。一定量のミセルに pH7.4、10mMPBS+150mM NaClを加え、経時的に散乱光 強度(Zetasizer Nano ZS, Malvern Instruments)を測定 た(図6)。同時に動的光散乱測定(Zetasizer Nano  ZS, Malvern Instruments)により、ミセルの平均 径も経時的に測定した。その結果、散乱光 度(I/I0)は、どのミセルでもほぼ同じ程度の 時的減少を認めたものの、15時間後でほぼ50% の散乱光強度を保っていた。これは薬剤投与 後15時間でも血中に50%のミセルが滞留し得る とを示すものであった。
 これらの結果から、以下の実験例及び実施 において使用するミセルは、すべて、ポリ ーを、カルボン酸ベースの濃度5 mMの PEG-P( Glu)12-40とし、5mMのGd-DTPAと5mMのDACHPtとを加え ことにより作製した(Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル)

 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルからの薬剤(Gd-DTPA、 DACHPt)のリリース挙動を測定した。具体的に 、20mM,pH7.4 PBS+300mM NaCl溶液1mlと、2mg/ml高分 ミセル溶液1mlとを混合し、MWCO 6,000の透析膜 に封入した。これを10mM,pH7.4 PBS+150mM NaCl溶液 99ml内に入れ、透析膜の外側の溶液を経時的 サンプリングして含有するGd及びPtの量をICP- MSにて測定した。その結果、GdはPtよりも早い 速度で放出されていることが分かった。Gdは2 0時間で50%が放出されるのに対し、Ptは70時間 40%が徐々に放出された(図7)。

 MRI用造影剤の感度を示す緩和能(造影剤の感 度)R 1 , R 2 を評価した。緩和能が高い程高感度であるこ とを示す。まず、Gdベースの濃度で0.1~0.5 mM 濃度範囲になるよう、測定したいサンプル 蒸留水で希釈して1mlの溶液として用意した そして、それぞれのサンプルについてT 1 及びT 2 を、それぞれInversion Recovery法及びCarr-Purcell-M eiboom-Gill法にて測定した(JNM-MU25A, JEOL,Inc, 0.58 T)。最後に解析として、Gd濃度をx軸、T 1 及びT 2 それぞれの逆数をy軸としたグラフを作成し その傾きから緩和能R 1 , R 2 を求めた。その結果、高分子ミセルはGd-DTPA 比べて20倍以上の高値を示した(図8)。このこ とはGd-DTPA/DACHPt内包ミセルのMRI造影剤として 能力が同Gd濃度のGd-DTPAよりも20倍以上高い とを意味する。

 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルの体内動態を調べる とを目的として、in vivo実験を行った。C-26 腸癌細胞を皮下移植したCDF1マウス(雌、6週 )に、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルを尾静脈投与し 1時間後、4時間後、22時間後にそれぞれ腫瘍 摘出し、下大静脈より0.1mlの血液を採取し 。これらの組織内に含まれるGd、Pt濃度を測 するため、90% HNO 3 にてこれらの組織を溶解した後、加熱乾燥さ せ、蒸留水にて溶解及び希釈後、その溶液内 のGd及びPtの含有量をICP-MSにより測定した。 9に、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル注入後1、4、22時 後の、血漿中及び腫瘍中のPt、Gd量(%dose)を した。その結果、注入後22時間で、約20%のGd 腫瘍内への集積が見られ、血漿中には22時 後にGd、Ptとも10%程度認められ、従来のミセ (特許第3955992号)と同様に、高い血中滞留性 有していた。

 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルを用いてin vivo MRI 験を行った。C-26大腸癌細胞を皮下移植した CDF1マウス(雌、6週齢)を用いて撮像した。MRI 、4.7Tesla Superconductive Magnet Unit(Varian, Palo A lto, CA)VXR-MRI Consoleを用いて撮像した。撮像 件は、repetition time(TR): 500ms、echo time(TE): 15 ms、field of view(FOV): 32mm x 32mm、matrix size: 1 28 x 128、slice thickness: 2mmで行い、Spin Echo T 1wイメージを撮像した。マウスは5%イソフル ンによる吸入麻酔にて導入を行い、撮像中 1.2%イソフルレンにて維持麻酔をかけた。0.2m lのGd-DTPA/DACHPt内包ミセル(Gd濃度:500μM)を尾静 し、マウスをコンソール内に固定した。フ ントムコントロールとして蒸留水入りの1ml リンジを同時に撮像した。撮像は尾静注後 最初の1時間は5分おきに行い、その後は15分 おきに4~5時間行った。また、コントロールと してフリーのGd-DTPAを同量尾静注し、同様の 法で撮像を行った。

 得られた画像はMathematica(Wolfram Research Inc.) びExcel(Microsoft, Inc.)によって解析を行った
 以上の結果、Gd-DTPAに比べて明らかに腫瘍内 の造影効果が高く、尾静注後30分で腫瘍の信 強度が30%増加し、陽性の造影効果を得た。 たその造影効果は少なくとも4時間持続した (図10,11)。

 C-26大腸癌細胞を皮下移植したCDF1マウス(雌 6週令)に、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル及びOxaliplat in(Free Ox)をそれぞれ0.2ml尾静脈投与し、その1 、4、8、24時間後に下大静脈より0.1ml採血した 。同様に、上記マウスに、当該ミセル及びGd- DTPA(Free Gd-DTPA)をそれぞれ0.2ml尾静脈投与し、 その1、4、8、24時間後に下大静脈より0.1ml採 した。採血後は速やかにヘパリンと混和し 凝血を防いだ後、遠心して血漿のみを採取 た。これに90%HNO 3 を混ぜて加熱、乾燥させ、5N HClにて溶解後 適当な倍数に希釈し、ICP-MSによりGd及びPtの 有量を測定した。得られた測定値を、最初 投与した薬剤の分量で割って% doseを導き、 グラフに示した(図12)。この結果、ミセルは リーの両薬剤と比較し、血中滞留性が上昇 た。

 ヒト膵臓癌細胞(BxPC3)を皮下移植したヌード マウス(雌6週令)に、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセル(Pt : 3mg/ml)及びOxaliplatin(Pt量: 8mg/ml)をそれぞれ 0.2mlずつ、day0, day2, day4と3回静注し、day0か 2日毎に腫瘍の大きさ(長軸=a cm, 短軸=b cm;a b 2 =腫瘍体積の近似値)と体重とを測定し、コン ロール群と比較した(n=6)。
 Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルの腫瘍抑制効果は、Pt 量が3mg/mlでも十分認められたのに対し、Oxalip latinは、Pt量が8mg/mlでもほぼcontrolと同じ経過 あったことから、当該ミセルの制癌効果が 臓癌でも証明された(図13,左)。また、体重 少もほとんどなく、深刻な副作用は認めら なかった(図13,右)。

 ヌードマウス(雌6週令)を吸入麻酔下に開腹 、膵臓の漿膜下にヒト膵臓癌細胞(BxPC3)を0.1 ml注射し、1ヶ月待ち、同所移植モデルを作製 した。MRIは、4.7Tesla Superconductive Magnet Unit(Va rian, Palo Alto, CA)VXR-MRI Consoleを用いて撮像し た。撮像条件は、repetition time(TR): 500ms、echo time(TE): 15ms、field of view(FOV): 32mm x 32mm、ma trix size: 256 x 256、slice thickness: 2mmで行い Spin Echo T1wイメージを撮像した。マウスは5% イソフルレンによる吸入麻酔にて導入を行い 、撮像中は1.2%イソフルレンにて維持麻酔を けた。0.2mlのGd-DTPA/DACHPt内包ミセル(Gd濃度: 5 00μM)を尾静注し、マウスをコンソール内に固 定した。撮像は尾静注後の最初の1時間は5分 きに行い、その後は15分おきに4時間行った また、コントロールとしてフリーのGd-DTPAを 同量尾静注し、同様の方法で撮像を行った。
 得られた画像はMathematica(Wolfram Research Inc.) びExcel(Microsoft, Inc.)によって解析を行った

 以上の結果、Gd-DTPA/DACHPt内包ミセルは、Gd -DTPAに比べて明らかに腫瘍内の造影効果が高 、intensityの増加も200%までになり、さらに造 影効果が少なくとも4時間持続した。これに し、他の臓器(肝臓、腎臓、脾臓)では、少し intensityの増加が認められたがwash outされ、結 果的に腫瘍の造影効果のみが残存する形とな った(図14,15)。

 本発明によれば、高分子ミセルの構成成 となり得るブロック共重合体と、MRI造影能 有する金属錯体とを含んでなる、重合体-金 属錯体複合体であって、腫瘍特異的に集積し 、少ない使用量で造影コントラストが高く、 しかも副作用が低減され且つ長期間の血中滞 留性を有する複合体を提供することができる 。さらに、当該複合体を含むMRI造影用(及び/ は抗腫瘍用)組成物及びキット、並びに、当 該複合体を用いる腫瘍検出用MRI造影方法を提 供することができる。