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Title:
COMPOSITE SILVER NANOPASTE, PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF, METHOD OF CONNECTION AND PATTERN FORMATION PROCESS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/116185
Kind Code:
A1
Abstract:
The invention provides a technique of converting C1-9 or C11 composite silver nanoparticles into a paste by the use of a resin exhibiting non-fluidity at 10°C or below in order to inhibit the nanoparticles from agglomeration in storage, that is, a non-fluid paste of such nanoparticles. A composite silver nanopaste prepared by mixing a metal component containing as the essentials composite silver nanoparticles constituted of both silver cores which are made of silver atom aggregates and have a mean particle diameter of 1 to 20nm and organic coats which cover the cores respectively and are made of at least one member selected from among alcohol residues, alcohol molecule derivatives and alcohol molecules which each contain 1 to 9 or 11 carbon atoms with a resin, characterized in that at 10°C or below, the resin is in a non-fluid state to keep the metal component in a dispersed state, while on heating, it can be fluidized to permit coating.

Inventors:
KOMATSU TERUO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/062238
Publication Date:
September 24, 2009
Filing Date:
July 04, 2008
Export Citation:
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Assignee:
APPLIED NANOPARTICLE LAB CORP (JP)
KOMATSU TERUO (JP)
International Classes:
H01B1/22; H01B13/00; H01L21/52; H05K1/09; H05K3/12; B22F1/02
Domestic Patent References:
WO2008001518A12008-01-03
WO2001070435A12001-09-27
WO2000076699A12000-12-21
Foreign References:
JP2008091250A2008-04-17
JP2007042301A2007-02-15
EP1107305A22001-06-13
EP1107298A22001-06-13
Attorney, Agent or Firm:
MIKI, Hisami (JP)
Hisami Miki (JP)
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Claims:
銀原子の集合体からなる平均粒径1~20nmの銀核の周囲に、炭素数1~9又は11のアルコール分子残基、アルコール分子誘導体又はアルコール分子の一種以上からなる有機被覆層を形成した複合銀ナノ粒子を少なくとも含有する金属成分を樹脂と混合して構成され、前記樹脂は10℃以下では非流動状態にあって前記金属成分を分散状態に保持し、加熱により流動化して塗着可能になることを特徴とする複合銀ナノペースト。
前記複合銀ナノ粒子は95(mass%)以下であり、前記樹脂は20(mass%)以下である請求項1に記載の複合銀ナノペースト。
前記金属成分として平均粒径0.1~10μmの銀微粒子が添加される請求項1に記載の複合銀ナノペースト。
前記複合銀ナノ粒子は5~85(mass%)、前記銀微粒子は80~10(mass%)であり、前記樹脂は20(mass%)以下である請求項3に記載の複合銀ナノペースト。
所望量の溶剤を添加して、10℃以下でも流動状態化させて塗着可能にする請求項1~4のいずれかに記載の複合銀ナノペースト。
 10℃で非流動状態にあり加熱により流動化する樹脂に、銀原子の集合体からなる平均粒径1~20nmの銀核の周囲に炭素数1~9又は11のアルコール分子残基、アルコール分子誘導体又はアルコール分子の一種以上からなる有機被覆層を形成した複合銀ナノ粒子及び必要により銀微粒子を金属成分として混合し、加熱下で前記樹脂を流動化させて全体を混練し、混練後に前記樹脂が非流動状態になる温度まで冷却して、前記金属成分を前記樹脂中に分散状態に保持することを特徴とする複合銀ナノペーストの製法。
前記銀核の平均粒径は1~20nm、前記銀微粒子の平均粒径は0.1~10μmである請求項6に記載の複合銀ナノペーストの製法。
所望量の溶剤を添加して、10℃以下でも流動状態化させて塗着可能なペーストにする請求項6又は7に記載の複合銀ナノペーストの製法。
請求項1~5のいずれかに記載の複合銀ナノペーストを用意し、前記複合銀ナノペーストを下体に塗着してペースト層を形成し、前記ペースト層上に上体を配置し、加熱により前記ペースト層を銀化して前記下体と前記上体を接合することを特徴とする接合方法。
請求項1~5のいずれかに記載の複合銀ナノペーストを用意し、前記複合銀ナノペーストを基体の面上に所定パターンに塗着してペーストパターンを形成し、加熱により前記ペーストパターンを銀化して銀パターンを形成することを特徴とするパターン形成方法。
Description:
複合銀ナノペースト、その製法 接合方法及びパターン形成方法

 本発明は、多数の銀原子からなる銀核の 囲に有機物からなる有機被覆層を形成した 合銀ナノ粒子を成分とするペーストに関し 更に詳細には、前記ペーストを塗着して焼 することにより前記有機被覆層や他の有機 分を気散させて銀膜を形成し、この銀膜に り半導体接合や電極パターンを形成する複 銀ナノペースト、その製法、接合方法及び ターン形成方法に関する。

 一般に、半導体、電子回路、電子機器な は各種の電子部品を基板に半田で溶融固定 て電気的導通性を確保している。しかし、 来の半田はSnとPbの合金であり、近年の環境 保全対策としてPbの使用が禁止されつつある め、前記従来半田に替わるPbフリーの代替 田の開発が要望されている。

 代替半田の特性として、Pbを含有しない とは当然であるが、その他に熱伝導性が高 、融点が低く、電気伝導度が高くしかも安 性が高いことが要望されている。この期待 応える素材として銀が注目され、超微粒子 して複合銀ナノ粒子が開発されるに到った

 まず、特許文献1として特許第3205793号公 が公開された。出発物質として銀有機化合 (特に銀有機錯体)が選択された。空気を遮断 した不活性ガス雰囲気下で、前記銀有機化合 物を分解開始温度以上で、且つ完全分解温度 未満の温度で加熱し、分解還元された銀核の 周囲に前記銀有機化合物の被覆層を有した複 合銀ナノ粒子が製造された。銀核の粒径は1~1 00nmであり、そのため通称で複合銀ナノ粒子 称される。具体的には、ステアリン酸銀100g 窒素気流下のフラスコ内で250℃で4時間加熱 すると、粒径5nmの銀核を有する複合銀ナノ粒 子が生成された。

 前記製法では、ステアリン酸銀を溶媒無 の固相法で加熱するため、生成された複合 ナノ粒子の銀核がたとえ5nmであっても、多 の複合銀ナノ粒子が団子状態に結合して大 な2次粒子になる欠点がある。しかもステア リン酸銀を出発物質とするため、銀核の周囲 に炭素数17のステアリン酸基が有機被覆層と り、銀含有率が小さくなる欠点を有してい 。

 そこで、特許文献2としてWO00/076699号公報 公開された。本発明者はこの国際公開公報 発明者の一人である。この公開公報には複 の発明が開示されているが、その中でも金 無機化合物を界面活性剤を用いて処理する 法が重要である。即ち、金属無機化合物を 面活性剤を用いて非水系溶媒中でコロイド して超微粒子前駆体を形成する第1工程と、 このコロイド溶液中に還元剤を添加して前記 超微粒子前駆体を還元し、金属核の外周に界 面活性剤殻を被覆層として形成した複合金属 ナノ粒子を生成する第2工程から構成される

 前記方法は、非水系溶媒に金属無機化合 を溶解させるから、生成した複合金属ナノ 子同士が非水系溶媒中に分散し、団子状態 なり難い特徴を有している。しかし、添加 た界面活性剤は炭素数が大きいため、有機 覆層である界面活性剤殻の炭素数は当然大 く、界面活性剤殻を焼成して気散させる温 、即ち焼成温度が高くなる欠点があった。

 このような中で、複合銀ナノ粒子の研究 進展し、特許文献3としてWO01/070435号公報が 開された。この公開公報中で、炭酸銀とミ スチン酸(C数は14)から複合銀ナノ粒子がで たと記載されている。また、炭酸銀とステ リルアルコール(C数は18)から複合銀ナノ粒子 が生成されたことが記載されている。しかし 、ミリスチン酸(C数は14)もステアリルアルコ ル(C数は18)も炭素数が大きいため、銀化さ るための焼成温度が高くなる欠点があるこ は云うまでもない。

特許第3205793号公報

WO00/076699号公報

WO01/070435号公報

特許第3638486号公報

特許第3638487号公報 Ph. Buffat and J-P. Borel, Phy. Rev. A13(1976)2 287

 本発明者等は、銀化温度を低下させるた に、炭酸銀とC1~C9又はC11のアルコールを反 させて、銀核の周囲にアルコール残基から る銀アルコキシド型複合銀ナノ粒子を生成 ることに成功した。

 このようにして得られたC1~C9又はC11の複 銀ナノ粒子は、特許文献3で得られたC14又はC 18の複合銀ナノ粒子よりも、銀化温度が低く ることは当然である。炭素数が小さくなる 果、銀化温度が低下すると同時に、銀含有 が増大する利点がある。

 そこで、本発明者等は、前記C1~C9又はC11 複合銀ナノ粒子を用いてペーストを作製す ことにした。このペーストを用いて、素材 接合して電子部品を組み立てたり、また基 上に電極パターンを形成する試験を行い、 ーストの有効性を確認する。ペーストを用 た接合方法については、下記の2件の従来特 公報が存在する。

 特許文献4として、特許第3638486号公報が 開されている。ここには、平均粒径が1~10nm 実質的に金属成分からなるコア部の周囲を 炭素数が5以上の有機物からなる被覆層で被 した複合金属超微粒子を予め作製し、該複 金属超微粒子を溶媒に分散させて金属ペー トを調整する工程と、該金属ペーストを回 基板の端子電極上に付着させて主に複合金 超微粒子からなる金属ペーストボールを形 する工程と、該金属ペーストボール上にフ イスダウン法を用いて半導体素子の電極を 合する工程と、低温焼成により半導体素子 回路基板とを電気的に接続する工程が記載 れている。

 また、特許文献5として、特許第3638487号 報が公開されている。この特許公報には、 均粒径が1~10nmの実質的に金属成分からなる ア部の周囲を、炭素数が5以上の有機物から る被覆層で被覆した複合金属超微粒子を予 作製し、該複合金属超微粒子を溶媒に分散 せて金属ペーストを調整する工程と、該金 ペーストを半導体素子の電極上に付着させ 温焼成して超微粒子電極を作製する工程と 該超微粒子電極上にはんだバンプを形成す 工程と、該はんだバンプを回路基板の端子 極に加熱融着する工程が開示されている。

 前記特許文献4、5には、複合金属超微粒 を溶媒に分散させて金属ペーストを調整す ことが記載され、特に特許文献4の請求項3に は、導電率が高い金属に溶媒に加えて樹脂分 が添加される金属ペーストが記載されている 。両文献には、溶媒としてトルエンのみが例 示されており、特許文献4、5の溶媒とは粘性 低下させてペーストを溶液状にする役割が 与されている。前記樹脂分は粘性を増加さ るために添加されるものであり、溶媒と樹 分を適当量添加して所定粘性のペーストが 製されることになる。

 前記特許文献4及び5に従って、本発明者 、前述したC1~C9又はC11の複合銀ナノ粒子をト ルエンに溶解させてペーストを作製した。前 記ペーストは、基板や半導体電極に塗着し易 いように、室温で傾斜させたときに自然に流 下する程度の粘性に調製された。前記ペース トは、2週間だけ室温下で容器内に保管され 。2週間の保管後、回路基板に膜厚1μmのペー スト膜をスクリーン印刷法で形成し、電気炉 内で350℃・20分間の焼成を行って、ペースト から銀膜に成形した。

 光学顕微鏡と電子顕微鏡を用いて、前記 膜の表面及び断面が観察された。その結果 銀膜表面に多少の凹凸が発見された。350℃ 焼成では、有機物は全て気散するが、銀核 溶融せず、表面融解して銀核同士が焼結し 銀膜が形成される。従って、銀核が大きけ ば、表面の凹凸は増幅されることになる。 まり、前記表面の凹凸は、大きな銀核同士 焼結により形成されたものと考えられた。 きな銀核が形成された理由は、2週間の保管 中に、ペースト内で複合銀ナノ粒子が相互に 凝集して2次粒子化して団子粒子が形成され 結果だと考えられる。凝集を防止するため 、分散剤や界面活性剤をペーストに添加す と、ペースト中の銀含有率が低下し、また 面活性剤は350℃では完全に気散せず、銀膜 に有機物が残留する事態もある。従って、 ーストに余分な有機物を添加することは、 温焼成を視野におく限り、極力避けること 必要である。

 複合銀ナノ粒子が溶媒添加前に凝集して た可能性もあるから、複合銀ナノ粒子を事 に乳鉢で微細に磨り潰して単分散化し、そ 後に溶媒を添加してペーストを作製した。 のペーストを2週間置いた後、回路基板上に ペースト膜を形成し、350℃で20分間の焼成を った。電子顕微鏡で観察したところ、銀膜 面の凹凸は多少改善されていたが、まだ凹 が残留していた。

 以上の結果から、複合銀ナノ粒子を溶媒 混合して流動状態で保管すると、複合銀ナ 粒子同士の凝集が生起して2次粒子化し、保 管時間が長くなるに従って、2次粒子の粒径 増加するという結論が得られた。この結果 、複合銀ナノ粒子を粘性の小さなトルエン の溶媒に添加して、室温で流動性を有した 動性ペーストにし、前記流動性ペーストを 産して長期間に亘って貯蔵することの問題 を浮き彫りにした。

 従って、本発明の目的は、C1~C9又はC11の 合銀ナノ粒子を凝集しない形態でペースト する技術、つまり非凝集性ペーストを提供 、その非凝集性を非流動性の樹脂により実 した非流動性ペーストを提供することであ 。また、その非流動性ペーストの製造方法 提供し、同時に非流動性ペーストを利用し 接合方法及びパターン形成方法を提供する とである。

 本発明は上記課題を解決するためになさ たものであり、本発明の第1形態は、銀原子 の集合体からなる平均粒径1~20nmの銀核の周囲 に、炭素数1~9又は11のアルコール分子残基、 ルコール分子誘導体又はアルコール分子の 種以上からなる有機被覆層を形成した複合 ナノ粒子を少なくとも含有する金属成分を 脂と混合して構成され、前記樹脂は10℃以 では非流動状態にあって前記金属成分を分 状態に保持し、加熱により流動化して塗着 能になる複合銀ナノペーストである。

 本発明の第2形態は、前記第1形態におい 、前記複合銀ナノ粒子は95(mass%)以下であり 前記樹脂は20(mass%)以下である複合銀ナノペ ストである。

 本発明の第3形態は、前記第1形態におい 、前記金属成分として平均粒径0.1~10μmの銀 粒子が添加される複合銀ナノペーストであ 。

 本発明の第4形態は、前記第3形態におい 、前記複合銀ナノ粒子は5~85(mass%)、前記銀微 粒子は80~10(mass%)であり、前記樹脂は20(mass%)以 下である複合銀ナノペーストである。

 本発明の第5形態は、前記第1~第4形態のい ずれかにおいて、所望量の溶剤を添加して、 10℃以下でも流動状態化させて塗着可能にす 複合銀ナノペーストである。

 本発明の第6形態は、10℃で非流動状態に り加熱により流動化する樹脂に、銀原子の 合体からなる平均粒径1~20nmの銀核の周囲に 素数1~9又は11のアルコール分子残基、アル ール分子誘導体又はアルコール分子の一種 上からなる有機被覆層を形成した複合銀ナ 粒子及び必要により銀微粒子を金属成分と て混合し、加熱下で前記樹脂を流動化させ 全体を混練し、混練後に前記樹脂が非流動 態になる温度まで冷却して、前記金属成分 前記樹脂中に分散状態に保持する複合銀ナ ペーストの製法である。

 本発明の第7形態は、前記第6形態におい 、前記銀核の平均粒径が1~20nm、前記銀微粒 の平均粒径が0.1~10μmである複合銀ナノペー トの製法である。

 本発明の第8形態は、前記第6又は第7形態 おいて、所望量の溶剤を添加して、10℃以 でも流動状態化させて塗着可能なペースト する複合銀ナノペーストの製法である。

 本発明の第9形態は、前記第1~第5形態のい ずれかの複合銀ナノペーストを用意し、前記 複合銀ナノペーストを下体に塗着してペース ト層を形成し、前記ペースト層上に上体を配 置し、加熱により前記ペースト層を銀化して 前記下体と前記上体を接合する接合方法であ る。

 本発明の第10形態は、前記第1~第5形態の ずれかの複合銀ナノペーストを用意し、前 複合銀ナノペーストを基体の面上に所定パ ーンに塗着してペーストパターンを形成し 加熱により前記ペーストパターンを銀化し 銀パターンを形成するパターン形成方法で る。

 本発明の第1形態によれば、銀原子の集合体 からなる平均粒径1~20nmの銀核の周囲に、炭素 数1~9又は11のアルコール分子残基、アルコー 分子誘導体又はアルコール分子の一種以上 らなる有機被覆層を形成した複合銀ナノ粒 を用いるから、安価な複合銀ナノペースト 提供できる。前記複合銀ナノ粒子は、安価 C1~C9又はC11のアルコールと、比較的安価な 塩(例えば、炭酸銀)を出発原料とするから、 安価な複合銀ナノ粒子を利用できる。しかも 、C1~C9のアルコールは、C10及びC12のアルコー と比較して、炭素数は比較的小さく、複合 ナノ粒子における銀含有率が比較的高い特 がある。また、C11はC12よりも炭素数が小さ から、C12よりも銀含有率が高い。前記複合 ナノ粒子は、以下ではCnAgAL(n=1~9、11)と書い り、C1AgAL~C9AgAL、C11AgALと書く場合もある。 の意味は、炭素数n=1~9又は11の銀アルコキシ 型の複合銀ナノ粒子である。C1はメタノー 、C2はエタノール、C3はプロパノール、C4は タノール、C5はペンタノール、C6はヘキサノ ル、C7はヘプタノール、C8はオクタノール、 C9はノナノール、C11はウニデカノールを意味 ている。つまり、銀原子の集合体である銀 の周囲に、多数のCnアルコキシド基からな 有機被覆層を有する複合銀ナノ粒子をCnAgAL 書く。アルコール残基とは、例えばアルコ ルをC n H 2n+1 OHと書くと、そのアルコキシド基C n H 2n+1 O等を含む概念である。アルコール誘導体と 、例えばC n-1 H 2n-1 CHO、C n-1 H 2n-1 COOH、C n-1 H 2n-1 COOなどを含む概念である。アルコールとはC n H 2n+1 OH自体を云う。

 本発明に係る複合銀ナノペーストの特徴は 、樹脂の機能に最大の特徴がある。前記樹 は10℃以下では非流動状態にあって前記複 銀ナノ粒子と前記銀微粒子を分散状態に保 し、加熱により流動化する性質を有する。 記非流動状態とは、固体状態又は高粘度状 を意味し、前記複合銀ナノ粒子と前記銀微 子を分散状態に固定的に保持する性質を云 。10℃以下とは、冷蔵庫内で低温保管する温 度領域であり、長期保管では冷蔵庫保管によ り前記10℃以下を達成できる。このように冷 庫保管する場合には、ペーストは非流動状 にあり、内部に分散した複合銀ナノ粒子や 微粒子は樹脂によりペースト内で固定され 相互に凝集することはできない。従って、1 0℃以下では粒子が相互に凝集することがで ず、ペースト保存中に粒子相互が凝集して 子化することが完全に防止される。この非 動性ペーストを非凝集性ペーストと称する とができる。しかし、例えば40℃以上に加熱 すると、樹脂が液化したり急激に粘性が低下 して流動状態になり、ペーストとして対象物 に塗着可能になる。従って、本発明のペース トを製造した後は10℃以下で保存して非凝集 (非流動化)しておく。ペーストを対象物に 着する直前に加熱して流動化させて流動性 ーストにし、この流動性ペーストを対象物 塗着すれば、金属分(銀分)が凝集していない から極めて緻密な銀膜を形成することが可能 になる。余った流動性ペーストは直ちに10℃ 下に冷却すれば、非凝集性ペーストとして 期保存することが出来る。加熱により高粘 から低粘度に変化する樹脂として、例えば ソボルニルシクロヘキサノール(松脂状と称 する)やグリセリン(シロップ状と称する)があ る。グリセリンの融点は17℃であるから、乾 状態で10℃以下に設定すれば、固化が可能 ある。10℃以下で固体であり、加熱すると液 化する樹脂として、例えばミリスチルアルコ ール(C14)、パルミチルアルコール(C16)、ステ リルアルコール(C18)、ベヘニルアルコール(C2 2)といったアルコール類、その他の物質が利 できる。これらの樹脂は、焼成したときに ての成分が気散するか、又は炭化物などの 留物が極めて少ない性質を有することが必 であり、この性質により焼成により形成さ る銀膜の電気伝導性や熱伝導性を格段に向 できる。
従って、本発明の樹脂は、通常の化学概念の 樹脂ではなく、10℃で非流動性を発現する物 の総称であり、しかも焼成により全てが気 し、炭化物などの残留物が出現しない物質 意味する。

 通常のペーストでは、複合銀ナノ粒子を 散させるために分散剤を添加したり、界面 性剤を添加するが、これらの不純物有機物 添加すると、銀含有量が低下するだけでな 、焼成すると前記不純物有機物から大量の スが発生し、このガスにより銀膜中に大量 ボイド(気泡の抜け孔)が形成され、電気伝 度が低下すると同時に、基体との接合力が 下し、銀膜による接合性能が低下する。こ に対し、本発明では樹脂以外の有機物を添 しないから、銀含有率を高く保持できると 時に、発生ガス量が少なく、必然的にボイ 数が少なくなり、接合力の増大と電気伝導 及び熱伝導度を増大化できる効果がある。

 本発明の第2形態によれば、前記複合銀ナ ノ粒子は95(mass%)以下であり、前記樹脂は20(mas s%)以下である複合銀ナノペーストが提供され る。最も単純なペースト組成は、複合銀ナノ 粒子と樹脂の混合物である。この場合には、 銀成分は複合銀ナノ粒子だけであり、その最 大質量%は95mass%で、樹脂の最小質量%は5mass%で ある。複合銀ナノ粒子の質量%の低下に応じ 樹脂の質量%を増加させれば良い。しかし、 ースト中の銀含有率は80mass%以上が好ましい から、樹脂の質量%は20mass%以下に設定される とが望ましい。

 本発明の第3形態によれば、前記金属成分 として平均粒径0.1~10μmの銀微粒子が添加され る複合銀ナノペーストである。本形態では、 銀成分として、複合銀ナノ粒子に加えて銀微 粒子が添加される。銀微粒子は純銀であり、 全く有機物を含有しないから、銀微粒子の添 加によりペースト中の銀含有率を増加させる ことができる。銀微粒子の粒径は0.1~10μmであ り、前記複合銀ナノ粒子の銀核粒径は1~20nmで あるから、前記複合銀ナノ粒子は銀微粒子間 の接着剤の役割を奏すると考えられる。銀微 粒子の表面に前記複合銀ナノ粒子が付着し、 焼成により有機成分が気散して、表面融解し た銀核が表面融解した銀微粒子同士を相互に 結合させるのである。換言すれば、大きな銀 微粒子間の隙間に複合銀ナノ粒子が集積して 、焼成して有機物が気散したときに、銀微粒 子間の隙間が銀核によって充填され、しかも 銀微粒子相互が銀核によって接着されるため 、銀膜自体が緻密に形成されて高強度で高電 気伝導性を有する導体が提供される。前述し た粒径関係にあると、銀核が銀微粒子同士の 隙間を充填し、ガスが気散した後の気泡空洞 (ボイド)に銀核が埋め戻される形態になり、 イド発生数が少なくなる結果、基体との接 強度及び電気伝導度の向上を図ることがで る。

 本発明の第4形態によれば、前記複合銀ナ ノ粒子は5~85(mass%)、前記銀微粒子は80~10(mass%) あり、前記樹脂は20(mass%)以下である複合銀 ノペーストが提供される。この場合、複合 ナノペーストの組成は、複合銀ナノ粒子と 微粒子と樹脂である。組成比(mass%)の境界は 、複合銀ナノ粒子:銀微粒子:樹脂=85:10:5~5:80:15 になるが、前記範囲内である種々の組成比の 複合銀ナノペーストが構成される。複合銀ナ ノ粒子は5~85(mass%)であり、5mass%未満になると 微粒子同士の接着性能が低下し、85mass%以上 になると、ペースト中の有機分含有率が過大 になる。また、銀微粒子は80~10(mass%)であり、 80mass%以上になると、複合銀ナノ粒子の含有 が低下して銀微粒子同士の接着性が低下し 10mass%以下になると、ペースト中の銀含有率 低下する弱点がある。従って、前記範囲内 おいて、適切な銀含有率を有し、焼成時に 散が効率的に為され、しかもボイド(気泡の 抜孔)発生量を適正値に制限した複合銀ナノ ーストを調製することができる。

 本発明の第5形態によれば、所望量の溶剤 を添加して、10℃以下でも流動状態化させて 着可能にする複合銀ナノペーストが提供さ る。第1形態では、樹脂だけを添加したペー ストが提供され、10℃以下でペーストを長期 存しても、ペーストには流動性が無いから この非流動性ペースト内で複合銀ナノ粒子 銀微粒子は固定化され、相互の凝集は発生 ない。適当期間だけ非流動性ペーストとし 保管した後、ペーストを接合する直前に、 第5形態の溶剤を添加して流動化させ、ディ スペンサーにより流動性ペーストを基体に塗 着させることができる。非流動性ペーストを 流動化させるためには、加熱する場合と、溶 剤を添加する場合の二つの方法がある。溶剤 を添加する本形態では、ペースト内での有機 物含有量が増えるから、焼成によるガスが増 大し、ボイド発生量が増える弱点がある。し かし、塗着する直前に溶剤を添加すれば、複 合銀ナノ粒子が凝集して2次粒子化(即ち、団 化)することを避けることが可能になる。前 記溶剤は、ペーストの粘度を低下させる機能 を有し、比較的低温で蒸発する有機溶剤一般 を使用することが出来る。例えば、C1~C8のア コール、キシレン、トルエン、アセトン、 キサン、その他の溶剤が利用できる。

 本発明の第6形態によれば、10℃で非流動 態にあり加熱により流動化する樹脂に、銀 子の集合体からなる平均粒径1~20nmの銀核の 囲に炭素数1~9又は11のアルコール分子残基 アルコール分子誘導体又はアルコール分子 一種以上からなる有機被覆層を形成した複 銀ナノ粒子及び必要により銀微粒子を金属 分として混合し、加熱下で前記樹脂を流動 させて全体を混練し、混練後に前記樹脂が 流動状態になる温度まで冷却して、前記金 成分を前記樹脂中に分散状態に保持する複 銀ナノペーストの製法が提供される。前述 た様に、前記樹脂は10℃で非流動状態にあり 加熱により流動化する特性を有している。こ の中で加熱とは加熱手段による加熱だけでな く、混練時の摩擦も摩擦熱を放出するから、 摩擦も加熱の一形態に含まれる。混錬には3 法ある。第1には、樹脂と複合銀ナノ粒子と 微粒子の同時混連、第2には、樹脂と複合銀 ナノ粒子を混練した後、銀微粒子を追加して 混練する2段階混練、第3には、樹脂と銀微粒 を混練した後、複合銀ナノ粒子を追加して 練する2段階混練がある。銀微粒子を添加し ない場合には、樹脂と複合銀ナノ粒子を混練 する形態しか存在しない。いずれにしても、 加熱混錬により流動化したペーストを冷却し て非流動化し、非流動状態のペーストとして 保管する。従って、非流動状態の保管では、 ペースト中で複合銀ナノ粒子や銀微粒子が凝 集することは無い。

 本発明の第7形態によれば、前記銀核の平 均粒径が1~20nm、前記銀微粒子の平均粒径が0.1 ~10μmである複合銀ナノペーストの製法が提供 される。銀微粒子の添加によりペースト中の 銀含有率を増加させることができる。銀微粒 子の粒径は0.1~10μmであり、前記複合銀ナノ粒 子の銀核粒径は1~20nmであるから、このペース トを焼成したときに、前記複合銀ナノ粒子は 銀微粒子間の接着剤の役割を奏すると考えら れる。銀微粒子の表面に前記複合銀ナノ粒子 が付着し、焼成により有機成分が気散して、 表面融解した銀核が表面融解した銀微粒子同 士を相互に結合させるのである。換言すれば 、ペーストを塗着したとき、大きな銀微粒子 間の隙間に複合銀ナノ粒子が集積し、焼成し て有機物が気散したときに、銀微粒子間の隙 間が銀核によって充填され、しかも銀微粒子 相互が銀核によって接着されるため、銀膜自 体が緻密に形成されて高強度で高電気伝導性 を有する銀導体が提供される。前述した粒径 関係にあると、銀核が銀微粒子同士の隙間を 充填し、ガスが気散した後の気泡空洞(ボイ )に銀核が埋め戻される形態になり、ボイド 生数が少なくなる結果、基体との接合強度 び電気伝導度の向上を図ることができる。

 本発明の第8形態によれば、所望量の溶剤 を添加して、10℃以下でも流動状態化させて 着可能なペーストにする複合銀ナノペース の製法が提供される。溶剤を添加しない場 には、本発明の複合銀ナノペーストは低温 非流動状態にある。この非流動性ペースト 流動化するには、加熱して温度を上昇させ 場合と、溶剤を添加する場合がある。本形 では、第6形態又は第7形態の製法に、溶剤 添加することにより、10℃でも流動状態にあ るペーストの製法を提供する。前記溶剤は、 ペーストの粘度を低下させる機能を有し、比 較的低温で蒸発する有機溶剤一般を使用する ことができる。例えば、C1~C8のアルコール、 シレン、トルエン、アセトン、ヘキサン、 の他の溶剤が利用できる。特に、本発明の 合銀ナノ粒子の有機被覆層はアルコール由 物質であるから、溶剤としてアルコールが 利である。

 本発明の第9形態によれば、本発明の複合 銀ナノペーストを用意し、前記複合銀ナノペ ーストを下体に塗着してペースト層を形成し 、前記ペースト層上に上体を配置し、加熱に より前記ペースト層を銀化して前記下体と前 記上体を接合する接合方法が提供される。本 形態は、本発明に係る複合銀ナノペーストを 用いた2物体の接合方法であり、一方の物体 下体、他方の物体を上体と称し、両者をペ スト層を介して接着させ、焼成してペース 層の銀化により、強固な接合を達成できる しかも、銀膜は電気伝導性と熱伝導性に優 、低温焼成が可能であるから、低融点物体 士の接合も可能になる。

 本発明の第10形態によれば、本発明の複 銀ナノペーストを用意し、前記複合銀ナノ ーストを基体の面上に所定パターンに塗着 てペーストパターンを形成し、加熱により 記ペーストパターンを銀化して銀パターン 形成するパターン形成方法が提供される。 えば、低融点の樹脂基板上に所定パターン 銀膜を形成する場合など、本発明形態によ 各種素材上に種々パターンの銀膜を低温度 形成する方法が提供される。

図1は複合銀ナノ粒子CnAgALの製造工程図 である。 図2は複合銀ナノ粒子の生成反応の第1 程図である。 図3は複合銀ナノ粒子の生成反応の第2 程図である。 図4はC2AgALの高分解能透過電子顕微鏡図 である。 図5はC4AgALの高分解能透過電子顕微鏡図 である。 図6はC2AgALの熱解析図である。 図7はC4AgALの熱解析図である。 図8は複合銀ナノペーストの製造工程図 である。 図9はIBCHの粘度と温度の特性図である 図10は昇温率3℃/minのIBCHの熱解析図で る。 図11はIBCHの蒸発温度と昇温率の関係図 である。 図12はグリセリンの粘度と温度の特性 である。 図13は複合銀ナノペースト(C2AgAL)の大 中の熱解析図である。 図14は複合銀ナノペースト(C4AgAL)の大 中の熱解析図である。 図15は複合銀ナノペースト(C6AgAL)の大 中の熱解析図である。

 以下、本発明に係る複合銀ナノペースト その製法、接合方法及びパターン形成方法 実施形態を図面及び表により詳細に説明す 。

 表1は、本発明に使用される複合銀ナノ粒子 の製造原料及びアルコール溶液のモル比の一 覧表である。銀原料として無機銀塩や有機銀 塩が使用できるが、無機銀塩の一例として炭 酸銀(Ag2CO3)が記載されている。アルコール原 として、C n H 2n+1 OH(n=1~9、11)が使用される。炭酸銀微粒子100g(0. 363モル)を分散させるアルコールのモル数は 表1に示すように、3.63モル~23.2モルに亘り、 ル比(アルコールのモル数/炭酸銀のモル数) は10~63.9の範囲にある。炭酸銀とアルコール の化学量論比よりもアルコールを過剰に投入 し、過剰アルコール溶液にして化学反応を行 なわせる。その理由は、化学反応により生成 される複合銀ナノ粒子CnAgALは銀核粒径が1~20nm と極めて小さく、アルコール溶液中で複合銀 ナノ粒子同士の衝突を防止して、凝集による 二次粒子化を抑制するためである。生成され る複合銀ナノ粒子は10種類である。

 表2は、複合銀ナノ粒子の原料の分子量と100 gのモル数の一覧表である。具体的なアルコ ル(C n H 2n+1 OH)の名称は、メタノール(CH 3 OH)、エタノール(C 2 H 5 OH)、プロパノール(C 3 H 7 OH)、ブタノール(C 4 H 9 OH)、ペンタノール(C 5 H 11 OH)、ヘキサノール(C 6 H 13 OH)、ヘプタノール(C 7 H 15 OH)、オクタノール(C 8 H 17 OH)、ノナノール(C 9 H 19 OH)、ウニデカノール(C 10 H 21 OH)である。アルコールの沸点BT(℃)も併記さ ている。

 図1は複合銀ナノ粒子の製造工程図である 。所定量の銀塩粉体と所定量のアルコールの 混合液を調製し、前記混合液を反応容器に封 入する。Arガスフロー下で生成温度PT(℃)にて 所定時間だけ前記混合液を加熱する。この加 熱過程で銀塩とアルコールが反応して無数の 複合銀ナノ粒子が生成される。反応時間は1 間以内がよく、長時間になると複合銀ナノ 子が相互に凝集を始めて2次粒子化するので 反応後は急速に冷却することが望ましい。 後に、反応液から複合銀ナノ粒子を粉体と て回収する。前記複合銀ナノ粒子をCnAgALと 示し、アルコキシド型複合銀ナノ粒子であ ことを示す。但し、用いるアルコールは上 10種であり、n=1~9又は11である。

 図2は、本発明に係る複合銀ナノ粒子の生成 反応の第1工程図である。原料は銀塩(1)と式(2 )で示されるアルコールC n H 2n+1 OH(n=1~9、11)である。式(3)のR n はアルコールの炭化水素基C n H 2n+1 を示している。炭素数nは1~9又は11の10種に限 れる。銀塩微粒子はアルコール不溶性のも が多く、アルコールの親水基OHは銀塩微粒 の表面と結合しやすい性質を有する。また ルコールの疎水基R n はアルコール溶媒と親和性が高い。従って、 式(4)に示すように、銀塩微粒子をアルコール 溶媒に分散させると、銀塩微粒子表面にアル コールが取巻いた状態になる。銀塩微粒子が 超微粒子にまで微細化されると、安定な銀塩 微粒子コロイドが形成される。式(4)では、銀 塩として炭酸銀(Ag 2 CO 3 )が示される。

 図3は、本発明に係る複合銀ナノ粒子の生成 反応の第2工程図である。反応式を明確にす ため銀塩として炭酸銀が使用される。炭酸 微粒子表面の炭酸銀はアルコールと反応し 、式(5)に示されるように銀化と同時にアル ヒドR n-1 CHOが生成される。また、式(6)に示されるよう に、アルデヒドが形成されずに、直ちに銀ア ルコキシドAgOR n が生成される反応経路も存在する。前記アル デヒドは強力な還元作用を有し、式(7)に示さ れるように、炭酸銀を還元して、銀化と同時 にカルボン酸R n-1 COOHが形成される。中間生成されたAg、AgOR n 、R n-1 COOHは、式(8)及び式(9)に示される反応により 互に凝集し、複合銀ナノ粒子としてAg k+m (OR n ) m 、Ag k+m (OR n ) m R n-1 COOHが生成される。これらの複合銀ナノ粒子 式(10)及び式(11)に図示されている。前記反応 は炭酸銀微粒子の表面反応であり、表面から 次第に内部に浸透しながら反応が継続し、中 心核となる炭酸銀微粒子は銀核へと転化して ゆく。最終的に、式(10)及び式(11)に示される 合銀ナノ粒子が生成され、本発明では、こ 複合銀ナノ粒子をCnAgALと書く。

 図4はC2AgALの高分解能透過電子顕微鏡図で ある。複合銀ナノ粒子C2AgALは65℃の生成温度P Tにて単分散状態で生成され、高分解能透過 電子顕微鏡により撮影された。銀核には平 線群からなる格子像が観察され、銀核は単 晶であることが確認された。格子像の格子 隔は0.24nmであり、バルク銀結晶の(111)面間隔 に一致することから、銀核が銀単結晶である ことが確認された。

 図5はC4AgALの高分解能透過電子顕微鏡図で ある。複合銀ナノ粒子C4AgALは80℃の生成温度P Tにて単分散状態で生成され、高分解能透過 電子顕微鏡により撮影された。銀核には平 線群からなる格子像が観察され、銀核は単 晶であることが確認された。C2AgALと同様に 格子像の格子間隔は0.24nmであり、バルク銀 晶の(111)面間隔に一致し、銀核が銀単結晶で あることが確認された。

 図6は生成温度PT=65℃で生成された大気中 C2AgALの熱解析図である。DTA曲線は示差熱分 曲線で、DTAピーク温度T2=111℃であり、金属 温度(銀化温度)T3=115℃である。前記DTAピー 温度T2で有機被覆層が強力に分解して気散さ れ、気散が終了した温度が金属化温度T3に相 する。分解開始温度は図示しない熱重量測 曲線(TG曲線)で与えられ、TG減少開始温度T1=1 09℃である。以上のように、T1<T2<T3が一 的に成立し、本発明者が行なった多数の実 から、T2-60≦T1≦T2の関係があることが明白 なった。換言すると、TG減少開始温度T1はDTA ーク温度T2の下方60℃以内にあり、同時にDTA ピーク温度T2以下であることが分かった。

 図7は生成温度PT=80℃で生成された大気中 C4AgALの熱解析図である。DTA曲線は示差熱分 曲線であり、TG曲線は熱重量測定曲線であ 。TG減少開始温度T1=103℃、DTAピーク温度T2=120 ℃、金属化温度(銀化温度)T3=122℃である。T2-6 0≦T1≦T2の関係が成立することも明らかであ 。

 本発明は10種の複合銀ナノ粒子CnAgAL(n=1~9 11)に関係し、これらの生成温度PT、TG減少開 温度T1、DTAピーク温度T2、金属化温度T3及び ルコール沸点BTが表3に示されている。

 10種の複合銀ナノ粒子CnAgAL(n=1~9、11)の生 温度PTは全て100℃以下であり、その結果、DTA ピーク温度T2も150℃以下に低く抑えられるこ が分かった。しかも、金属化温度T3はDTAピ ク温度T2より僅かに高い目になるが、金属化 温度T3も150℃以下であることが示された。CnAg ALは、アルコール溶液を一定の生成温度PTに 持して生成され、大気中ではアルコールの 点は一定であるから、アルコールを沸騰状 で反応させると容易に生成温度PTをその沸点 BTに保持できる。C1~C3のアルコール沸点は100 以下であるから、1≦n≦3の3種のCnAgALはアル ール沸騰反応で生成できることを意味する 勿論、他の温度制御方法を行なうことも可 である。

 表4は、複合銀ナノ粒子CnAgALのTG減少開始 度T1の範囲を示すものである。表4には、T2-6 0、T1及びT2の各温度がC1~C9及びC11に関して示 れている。その結果、T2-60≦T1≦T2が10種の複 合銀ナノ粒子について成立することが分かっ た。

 図8は複合銀ナノペーストの製造工程図で ある。所定重量%の複合銀ナノ粒子CnAgAL粉体 、所定重量%の銀微粒子Ag粉体と、所定重量% 樹脂を用意し、これら3成分を混合容器に投 入する。混合容器内で例えば40℃に加熱して 脂を流動化させ、ペーストを均一混合する このとき、700rpmの自転と2000rpmの公転を行う 自転公転型の遠心器を利用した。40℃位の加 温度であれば、摩擦熱により自然に昇温す から、強制加熱操作は不要である。しかし 40℃以上になるとヒーター加熱すると効率 に流動化できる。その後、複合銀ナノペー トを急速に冷却し、固形化して回収する。 形化により、均一に分散した複合銀ナノ粒 と銀微粒子が樹脂により固定化され、保管 に凝集することは無い。

 図8の製造工程を変形した方法も採用される 。まず、所定重量%の複合銀ナノ粒子CnAgAL粉 と所定重量%の樹脂を加熱しながら混合して ースト中間体を製造する。このペースト中 体に所定重量%の銀微粒子Ag粉体を加熱しな ら均一混合して複合銀ナノペーストを製造 、急速冷却して固形化する。摩擦熱を利用 る場合には、強制加熱は不要である。この 造法では、まず樹脂中に複合銀ナノ粒子を 一分散させ、その次に銀微粒子を均一分散 せるから、複合銀ナノ粒子と銀微粒子が独 に分散され、両者の相互作用を無くすため 一分散性が一層に増大する特徴がある。
 また、他の変形例として、まず所定重量%の 銀微粒子Ag粉体と所定重量%の樹脂を加熱しな がら混合してペースト中間体を製造する。こ のペースト中間体に所定重量%の複合銀ナノ 子CnAgAL粉体を加熱しながら均一混合して複 銀ナノペーストを製造し、急速冷却して固 化する。摩擦熱を利用する場合には、強制 熱は不要である。この変形製造法では、ま 樹脂中に銀微粒子を均一分散させ、その次 複合銀ナノ粒子を均一分散させるから、複 銀ナノ粒子と銀微粒子が独立に分散され、 者の相互作用を無くすため均一分散性が一 に増大する。
勿論、銀微粒子を添加しない場合には、CnAgAL と樹脂の均一混合だけで済むことは云うまで も無い。

 表5は本発明に使用される樹脂の例示表で ある。イソボルニルシクロヘキサノール(IBCH) は、いわゆる松脂状であり、室温では流動性 が無く、加熱により急速に流動化する性質を 有する。グリセリンはICBHよりも粘性が小さ 、いわゆるシロップ状であるが、17℃の融点 を有しているから、10℃では水分の無い環境 では固形化する。従って、グリセリンは冷 庫温度以下まで冷却すれば殆んど流動性を 失し、加熱すると流動化するから、前記IBCH と同様に本発明の樹脂として使用できる。ICB Hもグリセリンも、大気中焼成により全て分 気散し、炭化物などは一切残留しない。そ 他、10℃以下の室温で固体状であり、例えば 40℃以上になると液化する性質を有し、焼成 ると完全に気散する物質も本発明の樹脂と て使用できる。例えば、C数が14以上の高級 ルコールが利用でき、ミリスチルアルコー 、パルミチルアルコール、ステアリルアル ール、ベヘニルアルコールなどが列挙され 。それらの融点は表3に示す通りである。上 記と同様な樹脂も本発明の樹脂として利用で きることは云うまでもない。

 表6はIBCHの粘度と温度の関係表である。30 ℃以下では15万センチポイズ(cP)であるから、 当然に10℃でも流動性は無いが、40℃以上、 に50℃以上になると急速に流動性を発現する ようになり、本発明に最適の樹脂である。

 図9は、IBCHの粘度と温度の特性図である 表6に示された粘度の温度に対する関係をプ ットしたもので、IBCHは粘度が対数軸で表示 されるほど急激に温度に関して変化する性質 を有していることが分かる。このような性質 を有し、且つ焼成により全てが気散する性質 を有する全ての樹脂が本発明に利用できる。

 図10は、昇温率3℃/minのIBCHの熱解析図で る。DTAから完全蒸発温度は205℃であり、TGか ら205℃で重量がゼロ%になっていることが分 り、全量が蒸発して消失したことが証明さ ている。

 表7はIBCHの昇温率と蒸発温度の関係表で る。昇温率3(℃/min)とは1分間に3℃上昇させ がら昇温させてゆくプログラム昇温を意味 る。昇温率が小さいほど蒸発温度は低くな 、昇温率が大きくなると蒸発温度が高くな 性質がある。この性質はTG・DTA測定の性質と 言って良い。本発明の複合銀ナノペーストを 焼成する場合、まず樹脂を先に気散させる場 合には、昇温率を小さく設定し、樹脂が完全 に蒸発した後にアルコキシド基を気散させる ことになる。逆に、まずアルコキシド基を先 に気散させる場合には、昇温率を大きく設定 すればよく、その後に樹脂が完全蒸発するこ とになる。通常は樹脂を完全蒸発させた後に 、アルコキシド基を気散させる方法が採用さ れる。

 図11は、IBCHの蒸発温度と昇温率の関係図 ある。表7に示された蒸発温度と昇温率の関 係をプロットしたものである。このグラフに 基づいて、昇温率を調整して蒸発温度を任意 に調節することができる。

 表8はグリセリンの粘度と温度の関係表で ある。0℃では12100センチポイズ(cP)であり、 に冷却すると粘度は急速に増加し非流動状 になる。他方、温度を10℃以上にすると粘度 は3900(cP)以下になり、流動性を示すようにな 。この程度の粘度では非流動性は小さいと えるであろうが、これらの粘度は大気に開 され、水分を吸収する環境下での話である 特に、グリセリンの融点は17℃であり、水 の無い環境下では、17℃以下になると固形化 する。従って、10℃以下では非流動性を有す と言うことができる。IBCHがやや高い温度の 樹脂特性を示すのに対し、グリセリンは低い 温度での樹脂特性を示す樹脂であり、両者を 適当に使い分けることにより、非流動性・流 動性変化を実現できる。前述したように、非 流動性とは複合銀ナノ粒子の非凝集性を意味 する。

 図12は、グリセリンの粘度と温度の特性 である。表8に示された粘度の温度に対する 係をプロットしたもので、グリセリン樹脂 粘度が対数軸で表示されるほど急激に温度 関して変化する性質を有していることが分 る。このような性質を有し、且つ焼成によ 全てが気散する性質を有する全ての樹脂が 発明に利用できる。

 表9は、溶剤として使用されるアルコール の一覧表である。本発明に使用する複合銀ナ ノ粒子はCnAgAL(n=1~9、11)のアルコキシド型複合 銀ナノ粒子であり、銀核を取巻く有機被覆層 はアルコキシド基であり、溶剤としてアルコ ールを使用した場合には、複合銀ナノ粒子は アルコールに極めて良く溶解する性質を有す る。アルコールとしては、メタノール、エタ ノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタ ノールが使用できる。アルコール以外にも、 例えば、アセトン、エーテル、ベンゼン、酢 酸エチル、テルピネオール、ジヒドロテルピ ネオール、ブチルカルビトール、セロソルブ 等の有機溶媒が利用できる。

 前述したように、溶剤の添加は、銀含有 を低下させ、流動性ペースト化した場合に 複合銀ナノ粒子や銀微粒子の凝集が生起す から、保管貯蔵中は溶剤の無い非流動性ペ ストとし、塗着する直前に溶剤を添加する とが推奨される。保存期間が極めて短期間 場合でも、凝集の可能性があるから、塗着 前の溶剤添加が望まれる。また、溶剤を添 する場合でも、添加量は全量の10mass%以下が 好ましく、5mass%以下でもよく、特に1~2mass%が ましい。

[実施例11~113:C1~C9、C11の3種の複合銀ナノペー ト]
 次に、前記複合銀ナノ粒子を用いて複合銀 ノペーストを作成した。C1~C9及びC11のCnAgAL 夫々から次の3種類のペーストを作成した。( 1)CnAgAL+樹脂、(2)CnAgAL+溶剤+樹脂、(3)CnAgAL+銀粒 子+溶剤+粘性付与剤。前記3種類のCnAgALの一つ は表3に示される金属化温度T3を有したCnAgALが 使用され、残り2種は別のやや異なる金属化 度T3を有するCnAgALが使用された。150℃を超え る金属化温度T3を有するCnAgALも使用されてい 。銀粒子の粒径は0.4μmと1.0μmの2種類が使用 された。溶剤は、メタノール、エタノール、 ブタノール、キシレン、トルエンから選択さ れた。樹脂は、IBCH、グリセリン、ミリスチ アルコール(C 14 H 29 OH)、パルミチルアルコール(C 16 H 33 OH)、ステアリルアルコール(C 18 H 37 OH)から選択された。

 銀粒子の粒径、溶剤の種類、樹脂の種類、 成分のmass%及び大気中ペースト焼成温度は 10及び表11に記載された通りである。CnAgALと 脂の2成分でペーストを作成する場合には、 まず樹脂を50℃に加熱して流動化させておき この中にCnAgAL粉体を混合して混練し、混練 に10℃以下に冷却して非流動性ペーストを 成した。塗着する直前に、この非流動性ペ ストを50℃まで昇温して流動化させ、試験面 に塗着する。溶剤を添加する場合には、樹脂 と溶剤を混合して樹脂を流動化させ、この中 にCnAgAL粉体と銀粒子を添加して混練した。そ して、この流動性ペーストを試験面に塗着し た。
 C1~C9及びC11のCnAgALの金属化温度T3(℃)と実際 大気中ペースト焼成温度T(℃)が表10及び表11 に記載されている。

 大気中ペースト焼成温度TはCnAgALの金属化 温度T3よりも高く設定されている。その理由 、CnAgALを金属化させるだけでなく、溶剤を 発させたり、樹脂を蒸発又は分解気散させ 必要があるからである。また、金属化温度T 3よりも高い温度でCnAgALペーストを焼成する 、秀麗な金属膜が形成でき、しかも電気伝 度の高い銀膜を形成できるからでもある。 記大気中焼成温度Tが高いほど銀膜の秀麗性 増大する。従って、表10及び表11に示される ように、大気中ペースト焼成温度Tは前記金 化温度T3よりも高く設定された。

 実施例11~実施例113に示される30種類のペ ストを耐熱ガラス基板に塗着し、表10及び表 11の大気中ペースト焼成温度で焼成したとこ 、ガラス基板には秀麗な銀膜が形成された 形成された銀膜表面を光学顕微鏡で観察し 比抵抗を測定したところ、実用に耐える銀 であることが確認され、本発明の複合銀ナ ペーストが有効であることが結論された。

 次に、実施例23、実施例43及び実施例63の ーストを熱解析した。図13は実施例23のC2AgAL ペーストの熱解析図である。TG曲線で、150℃ での山はIBCHが蒸発していることを示す。更 に、175℃までの段部は、C2AgALの有機被覆層の 分解気散を示している。このTG段部とDTAピー が一致していることからもその事実が理解 れる。

 図14は実施例43のC4AgALペーストの熱解析図 である。TG曲線で、150℃までの山はIBCHが蒸発 していることを示す。更に、175℃までの段部 は、C4AgALの有機被覆層の分解気散を示してい る。このTG段部とDTAピークが一致しているこ からもその事実が理解される。

 図15は実施例63のC6AgALペーストの熱解析図 である。TG曲線で、150℃までの山はIBCHが蒸発 していることを示す。更に、195℃までの段部 は、C6AgALの有機被覆層の分解気散を示してい る。このTG段部とDTAピークが一致しているこ から、その事実が理解できる。

[実施例114:半導体電極と回路基板との接合]
 半導体チップを上体とし、回路基板を下体 して接合試験を行った。半導体チップの電 端を回路基板のスルーホールに挿入し、両 間の接触部に実施例11~実施例113の複合銀ナ ペーストを塗着して、30種のペースト試験 を得た。その後、前記塗着部を表10及び表11 記載のペースト焼成温度Tで局所的に加熱し て、前記塗着部を金属化させ、接合を完了し た。冷却した後、光学顕微鏡により、前記接 合部の外観を検査したところ、30種の試験体 問題はなかった。電気導通試験と電気抵抗 定を行なったが、代替半田として有効に機 していることが確認された。前記30種類の 合試験から、本発明に係る複合銀ナノペー トは代替半田として工業的に利用できるこ が分かった。

[実施例115:耐熱ガラス基板上への銀パターン 形成]
 耐熱ガラス基板を基体とし、この基体上に 施例11~実施例113の複合銀ナノペーストをス リーン印刷して、所定パターンのペースト ターンを形成した30種類の試験体を得た。 の後、前記試験体を電気炉により表10及び表 11に記載の大気中ペースト焼成温度Tで加熱し て、前記ペーストパターンから銀パターンを 形成した。冷却した後、光学顕微鏡により、 前記銀パターンの表面を検査したところ、30 の試験体で問題はなかった。前記30種類の ターン形成試験から、本発明に係る複合銀 ノペーストは銀パターン形成用材料として 業的に利用できることが分かった。

 本発明は、上記実施形態や変形例に限定 れるものではなく、本発明の技術的思想を 脱しない範囲における種々変形例、設計変 などをその技術的範囲内に包含するもので ることは云うまでもない。

 本発明によれば、銀原子の集合体からな 平均粒径1~20nmの銀核の周囲に、炭素数1~9又 11のアルコール分子残基、アルコール分子 導体又はアルコール分子の一種以上からな 有機被覆層を形成した複合銀ナノ粒子を少 くとも含有する金属成分を樹脂と混合して 成され、前記樹脂は10℃以下では非流動状態 にあって前記金属成分を分散状態に保持し、 加熱により流動化して塗着可能になる複合銀 ナノペーストが提供される。非流動性により 複合銀ナノ粒子の凝集を防止し、加熱流動性 により塗着性能を発現するペーストが提供さ れる。従って、本発明の複合銀ナノペースト は、代替半田・プリント配線・導電性材料な どの電子材料、磁気記録媒体・電磁波吸収体 ・電磁波共鳴器などの磁性材料、遠赤外材料 ・複合皮膜形成材などの構造材料、焼結助剤 ・コーティング材料などのセラミックス・金 属材料、医療材料などの各種分野のペースト に適用できる。