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Title:
COMPOSITION AND COMPOSITE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2020/175695
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a composition, in which a polarization source is dispersed in an aqueous medium. Preferably the polarization source forms a composite with a host. Moreover, in addition to water, a hydrogel can also be used as the aqueous medium.

Inventors:
YANAI NOBUHIRO (JP)
KIMIZUKA NOBUO (JP)
KAWASHIMA YUSUKE (JP)
NISHIMURA KOKI (JP)
KOUNO HIRONORI (JP)
FUJIWARA SAIYA (JP)
TATEISHI KENICHIRO (JP)
UESAKA TOMOHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2020/008481
Publication Date:
September 03, 2020
Filing Date:
February 28, 2020
Export Citation:
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Assignee:
UNIV KYUSHU NAT UNIV CORP (JP)
RIKEN (JP)
International Classes:
C08L5/16; A61K49/08; A61K49/12; A61K49/14; C08L89/00; G01N24/00
Foreign References:
JP2017015443A2017-01-19
JP2015532661A2015-11-12
JPH11501839A1999-02-16
JP2001503646A2001-03-21
US20050107696A12005-05-19
Other References:
FUJIWARA, SAIYA: "Dynamic Nuclear Polarization of Metal-Organic Frameworks Using Photoexcited Triplet Electrons", J. AM. CHEM. SOC., vol. 140, 7 November 2018 (2018-11-07), pages 15606 - 15610, XP055735048
NOBUHIRO YANGI: "World's First Success in High-Nucleus Polarization of Nanoporous Materials at Room Temperature-A New Path to High-Sensitivity MRI Observations of Biomolecules-", 8 November 2018 (2018-11-08), pages 1 - 2, XP009530347, Retrieved from the Internet
ANGEW, CHEM. INT. ED., vol. 52, 2013, pages 13307
PROC. NATL. ACAD. SCI, U.S.A., vol. 111, 2014, pages 7527 - 7530
J .AM. CHEM. SOC., vol. 130, 2008, pages 16274 - 16286
J. MATER. CHEM. C, vol. 1, 2013, pages 2193 - 2201
CHEM. SOC. REV., vol. 43, 2014, pages 1627 - 1659
Attorney, Agent or Firm:
SIKS & CO. (JP)
Download PDF:
Claims:
\¥0 2020/175695 29 卩(:171? 2020 /008481

請求の範囲

[請求項 1 ] 偏極源が水系媒体中に分散した組成物。

[請求項 2] 前記偏極源が非会合状態で水系媒体中に分散した、 請求項 1 に記載 の組成物。

[請求項 3] 前記偏極源とホストの複合体を水系媒体中に分散した、 請求項 1 ま たは 2に記載の組成物。

[請求項 4] 前記複合体が粒径 8 0 0 n〇!以下の粒子である、 請求項 3に記載の 組成物。

[請求項 5] 前記複合体が界面活性剤を有する、 請求項 3または 4に記載の組成 物。

[請求項 6] 前記ホストがタンパク質である、 請求項 3または 4に記載の組成物

[請求項 7] 前記ホストがアルブミンである、 請求項 6に記載の組成物。

[請求項 8] 前記ホストがオリゴ糖である、 請求項 3または 4に記載の組成物。

[請求項 9] 前記オリゴ糖がシクロデキストリンである、 請求項 8に記載の組成 物。

[請求項 10] 前記水系媒体が水である、 請求項 1〜 9のいずれか 1項に記載の組 成物。

[請求項 1 1 ] 前記水系媒体がヒドロゲルである、 請求項 1〜 9のいずれか 1項に 記載の組成物。

[請求項 12] 前記偏極源と前記ヒドロゲルが複合している、 請求項 1 1 に記載の 組成物。

[請求項 13] 前記偏極源が前記ヒドロゲルに共有結合で組み込まれている、 請求 項 1 1 に記載の組成物。

[請求項 14] 偏極源がホスト中に分散しており、 粒径が 8 0 0 n 以下である複 合体。

[請求項 15] 界面活性剤を有する、 請求項 1 4に記載の複合体。

[請求項 16] 前記ホストがタンパク質である、 請求項 1 4または 1 5に記載の複 \¥0 2020/175695 30 卩(:171? 2020 /008481

合体。

[請求項 17] 前記ホストがアルブミンである、 請求項 1 6に記載の複合体。

[請求項 18] 前記ホストがオリゴ糖である、 請求項 1 4または 1 5に記載の複合 体。

[請求項 19] 前記オリゴ糖がシクロデキストリンである、 請求項 1 8に記載の複 合体。

Description:
\¥02020/175695 1 卩(:17 2020/008481

明 細 書

発明の名称 : 組成物および複合体

技術分野

[0001 ] 本発明は、 超核偏極において有用な組成物および複合体 に関する。

背景技術

[0002] 磁気モーメントを有する原子核 (核スピン) を静磁場中に置くと歳差運動 を行うようになり、 この状態で、 その歳差運動と同じ周波数の電磁波を照射 すると、 核スピンが共鳴して電磁場のエネルギーを吸 収する核磁気共鳴 ( 現象が現れる。 この IV! 現象における共鳴周波数は核種や原子核の 置かれた化学的または磁気的環境に応じて差 がでることから、 有機化学や生 化学の分野では、 その共鳴によるエネルギー吸収量を電気信号 に変換した 信号の周波数スペクトル (化学シフト値) を観測して、 化合物の分子構 造や物性を解析する IV! 分光法が多く行われている。 また、 医療の分野に おいては、 その IV! 信号に位置情報を与えて画像化する磁気共鳴 撮像法 ( IV! I) が、 脳などの生体器官の非侵襲的検査に応用され ている。

また、 上記のような核スピンの集合体に、 静磁場を印加すると、 例えばプ ロトンの場合では、 その磁場に対してスピンが平行に向いたエネ ルギー状態 と、 磁場に対してスピンが反平行に向いたエネル ギー状態に分裂する。 ここ で、 それぞれのエネルギー状態をもつスピンの数 (占有数) の差をスピン総 数で割った値は偏極率と称されており、 IV! 信号の強度は、 この偏極率に 比例するとされている。 しかし、 核スピンの偏極率は、 通常、 室温では数万 分の 1以下と非常に低い値であり、 このことが 丨の感度 を制限する原因になっている。

[0003] そこで、 核スピンを高偏極化 (超核偏極) する方法として、 電子のスピン 偏極を、 電磁波照射にて誘起される固体効果や積分固 体効果等により、 周囲 の核に移行させて核スピンを高偏極化する動 的核偏極法が提案されている。 ここで、 電子スピンの供給源には、 ラジカルや光励起三重項分子が用いられ \¥0 2020/175695 2 卩(:171? 2020 /008481

、 このうち光励起三重項分子は、 温度に関わりなく、 電子スピンの占有数が 特定のエネルギー状態に大きく偏った状態を とるため、 室温においても、 核 スピンを効果的に高偏極化することができる という利点がある。

こうした光励起三重項分子を用いた動的核偏 極系として、 非特許文献 1 に は、 _ターフェニルの有機結晶基材に、 光励起三重項分子としてのペンタ センを添加したものが記載され、 非特許文献 2には、 〇—ターフェニルのア モルファス基材に光励起三重項分子としての ペンタセンを添加したものが提 案されている。

先行技術文献

非特許文献

[0004] 非特許文献 2014, 1 1 1 , 7529

非特許文献 2 :八叩61/\/. 0116111. 1^1;. £〇!. , 2013, 52, 13307

発明の概要

発明が解決しようとする課題

[0005] 上記のように、 非特許文献 1 には、 _ターフェニルの有機結晶基材に光 励起三重項分子としてのペンタセンを添加し た動的核偏極系が提案され、 非 特許文献 2には、 〇—ターフェニルのアモルファス基材に光励 起三重項分子 としてのペンタセンを添加した動的核偏極系 が提案されている。 しかしなが ら、 従来の超核偏極は固体結晶中の核への適用に 限られており、 生体や生体 関連物質 (生体成分、 生体成分の類似物質等) への適用にはまったく適さな いものであった。

[0006] そこで本発明者らは、 このような従来技術の課題を解決するために 、 生体 への適用に道を開くような媒体中での超核偏 極を実現させるために鋭意検討 を重ねた。

課題を解決するための手段

[0007] 上記の課題を解決するために本発明者らが、 超核偏極の媒体として水系媒 体に着目して鋭意検討を行った結果、 水系媒体中でも偏極源の機能を発現さ \¥0 2020/175695 3 卩(:171? 2020 /008481

せうることを見出した。 そして、 こうした系によれば、 生体や生体関連物質 への超核偏極の適用が可能になるとの着想を 得るに至った。 本発明は、 こう した知見に基づいて提案されたものであり、 具体的に以下の構成を有する。 [0008] [1] 偏極源が水系媒体中に分散した組成物。

[2] 前記偏極源が非会合状態で水系媒体中に分散 した、 [ 1] に記載の 組成物。

[3] 前記偏極源とホストの複合体を水系媒体中に 分散した、 [ 1] また は [2] に記載の組成物。

[4] 前記複合体が粒径 8 0 0 n 〇!以下の粒子である、 [3] に記載の組 成物。

[5] 前記複合体が界面活性剤を有する、 [3] または [4] に記載の組 成物。

[6] 前記ホストがタンパク質である、 [3] または [4] に記載の組成 物。

[7] 前記ホストがアルブミンである、 [6] に記載の組成物。

[8] 前記ホストがオリゴ糖である、 [3] または [4] に記載の組成物

[9] 前記オリゴ糖がシクロデキストリンである、 [ 8] に記載の組成物

[1 0] 前記水系媒体が水である、 [1] 〜 [9] のいずれか 1項に記載 の組成物。

[1 1] 前記水系媒体がヒドロゲルである、 [1] 〜 [9] のいずれか 1 項に記載の組成物。

[1 2] 前記偏極源と前記ヒドロゲルが複合している 、 [1 1] に記載の 組成物。

[1 3] 前記偏極源が前記ヒドロゲルに共有結合で組 み込まれている、 [ 1 1] に記載の組成物。

[1 4] 偏極源がホスト中に分散しており、 粒径が 8 0 0 n 以下である \¥0 2020/175695 4 卩(:171? 2020 /008481

複合体。

[1 5] 界面活性剤を有する、 [1 4] に記載の複合体。

[1 6] 前記ホストがタンパク質である、 [1 4] または [1 5] に記載 の複合体。

[1 7] 前記ホストがアルブミンである、 [1 6] に記載の複合体。

[1 8] 前記ホストがオリゴ糖である、 [1 4] または [1 5] に記載の 複合体。

[1 9] 前記オリゴ糖がシクロデキストリンである、 [1 8] に記載の複 合体。

発明の効果

[0009] 本発明の組成物によれば、 水系媒体中で超核偏極を行うことが可能にな る 。 本発明の組成物は水系媒体を使用しているた め、 生体や生体関連物質に容 易に適用することができる。

図面の簡単な説明

[0010] [図 1]本発明の組成物の動的核偏極メカニズム 説明するための模式図である

[図 2]実施例 1で作製したペンタセン添加ナノ粒子の 3巳 IV!写真である。

[図 3]実施例 1で作製したペンタセン添加ナノ粒子の粒子 分布である。

[図 4]ペンタセン添加ナノ粒子を含有する水分 液に一定時間動的核偏極を行 った後の 1 1 ~ 1 IV! スペクトルである。

[図 5]ペンタセン添加ナノ粒子を含有する水分 液に 6 0秒間動的核偏極を行 った後の 1 1 ~ 1 IV! スペクトルである。

[図 6]ペンタセン添加ナノ粒子を含有する水分 液とペンタセン添加バルク結 晶に動的核偏極を行ったときの 1 1 ~ 1スピン偏極のビルドアップ曲線である

[図 7]複合体含有ゲル 2の作製に用いた反応スキームである。

[図 8]複合体含有ゲル 1、 2、 複合体含有水分散液 3および比較ゲル 1の巳 3 スぺクトルピーク強度の経時変化である。

[図 9]複合体含有ゲル 1 に一定時間動的核偏極を行った後の 1 1 ~ 1 IV! スぺ \¥02020/175695 5 卩(:17 2020/008481

クトルである。

[図 10]複合体含有ゲル 1の IV! 積分値の照射時間依存性を示すグラフであ る。

発明を実施するための形態

[001 1 ] 以下において、 本発明の内容について詳細に説明する。 以下に記載する構 成要件の説明は、 本発明の代表的な実施態様や具体例に基づい てなされるこ とがあるが、 本発明はそのような実施態様や具体例に限定 されるものではな い。 なお、 本明細書において 「〜」 を用いて表される数値範囲は、 「〜」 の 前後に記載される数値を下限値および上限値 として含む範囲を意味する。 ま た、 本発明に用いられる化合物の分子内に存在す る水素原子の同位体種は特 に限定されず、 例えば分子内の水素原子がすべて 1 1 ~ 1であってもよいし、 一部 または全部が 2 1 ~ 1 (デューテリウム〇) であってもよい。 また、 本明細書にお ける 「励起光」 とは、 対象物に励起を引き起こして放射や発光を生 じさせる 光であり、 その対象物の吸収波長に一致する波長の光を 用いることができる

[0012] <組成物>

本発明の組成物は、 偏極源が水系媒体中に分散したものである。 本発明の組成物では、 偏極源が水系媒体中に分散して存在している ことに より、 偏極源がその機能を十分に発現して、 その生成した電子のスピン偏極 を核へ移動させて核のスピン偏極を高くする ことができる。 また、 本発明の 組成物は、 水系媒体を使用しているため、 生体や生体関連物質に容易に適用 することができる。

以下において、 本発明の組成物が含む各成分について説明す る。

[0013] [偏極源]

本発明における 「偏極源」 とは、 偏極した電子スピンを生成して、 その電 子のスピン偏極を核へ供給する、 スピン偏極の供給源となるものである。 偏極源は、 偏極した電子スピンを生じうるものであれば 特に制限されない が、 温度に関わらず、 偏極率が高い電子スピンを生じうることから 、 励起三 \¥02020/175695 6 卩(:171?2020/008481

重項状態をとりうる分子であることが好ま しい。 励起三重項状態は、 磁気量 子数 が異なる複数の副準位を有しており、 電子スピンの占有数が特定の副 準位に大きく偏った、 高いスピン偏極状態を形成しうる。 そのため、 励起三 重項状態をとりうる分子を偏極源に用いるこ とにより、 核スピンの偏極率を 効果的に高めることができる。

ここで、 「励起三重項状態をとりうる分子」 とは、 励起エネルギーを印加 することにより励起三重項状態へ遷移しうる 分子のことを意味する。 励起三 重項状態への遷移は、 励起エネルギーの印加により直接起こる基底 一重項状 態から励起三重項状態への遷移であってもよ いし、 励起エネルギーの印加で 生じた励起一重項状態からの、 励起三重項状態への項間交差であってもよい 。 励起状態への遷移を引き起こす励起エネルギ ーは、 励起光のエネルギーで あっても、 注入したキヤリアの再結合エネルギーであっ てもよいし、 励起状 態になった他の分子から受け取った励起エネ ルギーであってもよい。

[0014] 励起三重項状態をとりうる分子は、 無機分子であっても有機分子であって もよいが、 有機分子であることが好ましい。

偏極源として用いうる好ましい有機分子とし て、 4〜 6個のベンゼン環が 縮合した骨格を有する化合物を挙げることが できる。 4〜 6個のベンゼン環 が縮合した骨格の具体例として、 テトラセン骨格、 ペンタセン骨格、 へキサ セン骨格、 ルプレン骨格、 ピセン骨格を挙げることができ、 これらの骨格の 2種類以上が連結した構造を有するものや、 これらの骨格にベンゼン環やナ フタレン環、 ビフエニル環が連結した構造を有するもので あってもよい。 4 〜 6個のベンゼン環が縮合した骨格を有する化 物は、 その骨格のみからな る無置換の化合物であってもよいし、 これらの骨格が置換基で置換された構 造を有する誘導体であってもよいが、 誘導体であることが好ましい。 骨格に 置換しうる置換基の好ましい範囲と具体例に ついては、 下記の がとりうる 置換基の好ましい範囲、 具体例を参照することができる。 中でも、 この骨格 の置換基は、 後述するホストやヒドロゲルと相互作用する 官能基を含むこと が好ましい。 これにより、 偏極源の分子を高度に分散させやすくなる。 その \¥0 2020/175695 7 卩(:171? 2020 /008481

ような官能基として、 カルボキシ基 (一〇〇〇1 ~ 1) 、 スルホ基 (一 3〇 3 1 ~ 1)

、 ホスホノ基 (一 (0) (〇1 ~ 1) 2 ) 、 ホスホノキシ基 (_〇 (〇) (〇 ! !) 2 ) 等の酸性基、 またはこれらの基からプロトンが電離したア ニオン基等 を挙げることができ、 カルボキシ基、 カルボキシラートアニオン基であるこ とが好ましい。

[0015] また、 偏極源として用いる化合物は、 その少なくとも一部の水素原子が重 水素で置換されていることが好ましく、 化合物に存在する水素原子の 3 0〜

7 0 %が重水素で置換されていることがより好ま い。 これにより、 偏極源 のスピンー格子緩和時間を長く して、 核スピンを効果的に高偏極化すること ができる。 ここで、 化合物の重水素で置換される箇所は、 比較的動きやすい 箇所であることが好ましい。 例えば、 化合物を構成する 4〜 6個のベンゼン 環が縮合した骨格に、 単結合で結合した原子団 (置換基) が存在する場合に は、 その置換基が有する水素原子の少なくとも一 部が重水素で置換されてい ることが好ましく、 その全部の水素原子が重水素で置換されてい ることが好 ましい。 重水素で置換するのに好ましい置換基の例と して、 炭素数 1〜 2 0 のアルキル基を挙げることができる。

[0016] 偏極源として用いる化合物は、 下記一般式 (八) で表される化合物または その塩であることが好ましい。

[0017] [化 1 ]

[0018] 式 (八) において、 はそれぞれ独立して水素原子 (1 ~ 1) 、 重水素原子 ( 口) 、 又は酸素原子、 硫黄原子、 及びケイ素原子からなる群より選択される 少なくとも 1種の原子を含んでいてもよい炭素数 1〜 2 0の炭化水素基を表 す。

なお、 式 (八) の はそれぞれ独立して水素原子 (! !) 、 重水素原子 (口 \¥0 2020/175695 8 卩(:171? 2020 /008481

) 、 又は酸素原子、 硫黄原子、 及びケイ素原子からなる群より選択される少 なくとも 1種の原子を含んでいてもよい炭素数 1〜 2 0の炭化水素基を表し ているが、 「炭化水素基」 とは直鎖状の飽和炭化水素基に限られず、 炭素_ 炭素不飽和結合、 分岐構造、 環状構造のそれぞれを有していてもよいこと を 意味する。 また、 「酸素原子、 硫黄原子、 及びケイ素原子からなる群より選 択される少なくとも 1種の原子を含んでいてもよい」 とは、 酸素原子、 硫黄 原子、 又はケイ素原子を含む官能基を含んでいても よいことを意味するほか 、 酸素原子、 硫黄原子、 又はケイ素原子を含む連結基を炭素骨格の内 部又は 末端に含んでいてもよいことを意味するもの とする。 従って、 「酸素原子、 硫黄原子、 及びケイ素原子からなる群より選択される少 なくとも 1種の原子 を含んでいてもよい」 炭化水素基には、 例えば一〇 1 ~ 1 2 —〇 1 ~ 1 2 —〇 1 ~ 1のよう なヒドロキシ基を含む炭素数 2の炭化水素基、 _〇 1 ~ 1 2 _〇_〇 1 ~ 1 3 のような エーテル基を炭素骨格の内部に含む炭素数 2の炭化水素基、 及び一〇 _〇 1 ~ 1 2 -〇 1 ~ 1 3 のようなエーテル基を炭素骨格の末端に 含む炭素数 2の炭化水素基等 が含まれる。

[0019] ペンタセン誘導体の 「その塩」 とはペンタセン誘導体がカルボキシル基 ( -〇〇〇 1 ~ 1) やスルホ基 (一 3〇 3 1 ~ 1) 等の酸点を有する化合物であり、 その 水素イオンが金属陽イオンに置き換えられて いるものを意味するものとする

[0020] が炭化水素基である場合、 炭化水素基の炭素数は、 好ましくは 3以上、 より好ましくは 6以上であり、 好ましくは 1 2以下、 より好ましくは 8以下 である。

炭化水素基としては、 フエニル基、 ビフエニル基、 フエニルチオ基、 デシ ルチオ基、 エチニル基等が挙げられる。

炭化水素基に含まれる官能基や連結基として は、 カルボキシル基 (_〇〇 〇 、 カルボキシル基のカリウム塩 (一〇〇〇<) 、 スルホ基 (一 3〇 3 1 ~ 1 ) 、 チオエーテル基 (一 3—) 、 トリエチルシリル基 (一 3 丨 巳 1: 3 ) 、 トリ イソプロピルシリル基 (一 3 丨 丨 「 3 ) 等が挙げられる。 \¥02020/175695 9 卩(:17 2020/008481

炭化水素基の結合数は、 通常 1以上、 好ましくは 2以上であり、 通常 6以 下、 好ましくは 5以下である。

炭化水素基の結合位置は、 6位及び 1 3位の組合せ (炭化水素基の結合数 2) 、 5位、 7位、 1 2位、 及び 1 4位の組合せ (炭化水素基の結合数 4)

、 1位、 4位、 8位、 及び 1 1位の組合せ (炭化水素基の結合数 4) 、 2位 、 3位、 9位、 及び 1 0位の組合せ (炭化水素基の結合数 4) が挙げられる が、 6位及び 1 3位の組合せが最も好ましく、 5位、 7位、 1 2位、 及び 1 4位の組合せ、 1位、 4位、 8位、 及び 1 1位の組合せ、 2位、 3位、 9位 、 及び 1 0位の組合せの順で好ましい。 ペンタセン誘導体は大気中で溶媒に 溶かすと酸化分解され易い傾向があるが、 炭素水素基を付加する位置によっ て上記の順で分解速度が遅くなる。 これは、 ペンタセンの 電子雲のスピン 密度の高い順に相当する。

[0021 ] また、 Proc. NaU. Acad. Sc i , ·八· 2014, 1 1 1 , 7527-7530.には、 ペンタセン に含まれる水素原子を重水素置換することに よって、 動的核偏極により達成 される 1 1 ~ 1スピン偏極率が向上することが示され いる。

[0022] [化 2]

[0023] 式 ( ) で表されるペンタセン誘導体及び/又はその としては、 下記の 化合物 1〜 1 3を挙げることができる。

[0024] \¥02020/175695 10 卩(:17 2020/008481

[化 3]

化合物 1 2 化合物 1 3

[0025] 上記に示されるもののうち、 化合物 1 (ペンタセン) 、 化合物 2

) については、 実施例において電子スピン共鳴スペクトルを 測定しており、 IV! 信号が得られることも確認されている。 \¥0 2020/175695 1 1 卩(:171? 2020 /008481

また、 丄八111.(^6111. 300. 2008, 130, 16274-16286.には、 例えば、 上記化合物 4 、 5、 1 0、 1 1、 1 3につき、 ペンタセン類の 〇ギヤツ プや光酸化抵抗性に与える置換基の効果につ いて詳細に説明されている。 他にも、 丄 6111.(:, 2013, 1 , 2193-2201 .には、 上記化合物 8、 9等の ペンタセン誘導体が水溶性であり太陽電池へ の応用が示されているが、 動的 核偏極の偏極源として用いられた報告はない 。

上述の 1 3種類の化合物は、 化学式に含まれる水素原子 (1 ~ 1) のその一部 または全部が重水素原子 (口) で置換されていてもよい。

[0026] また、 偏極源には、 炭素原子、 水素原子および重水素原子のみから構成さ れる化合物も好ましく用いることができる。

[0027] 組成物における偏極源の含有量は、 1 0 IV!〜 1 0 0 IV!であることが好

[0028] [偏極源とホストの複合体]

偏極源は、 ホストとともに複合体を形成して水系媒体中 に分散していても よい。

本明細書中における 「ホスト」 とは、 偏極源とともに複合体を形成しうる 物質のことを意味する。 偏極源とホストの複合体は、 偏極源とホストが一体 的になっていればよく、 その態様は特に制限されない。 すなわち、 ここで言 う 「複合体」 は、 偏極源の分子がホストに包接、 吸着、 付着等している態様 を広く含むものである。 偏極源がホストと複合体を形成していること により 、 水系媒体中における偏極源の分散性が向上し 、 偏極源が非会合状態で分散 し易くなる。 これにより、 偏極源の凝集に起因する三重項寿命の短縮が 抑え られ、 三重項電子のスピン偏極を効率よく核へ移動 させることができる。 「 非会合状態で分散」 の説明については、 下記の [偏極源の分散状態] の欄の 記載を参照することができる。

ホストとしては、 アルブミン、 グロブリン等のタンパク質、 シクロデキス トリン等のオリゴ糖、 ーテルフエニル等の有機化合物からなる結晶 、 ピラ \¥02020/175695 12 卩(:171?2020/008481

—アレーン、 カリックスアレーン等の環状化合物、 ゼラチン、 アガロース等 の生体高分子等、 金属有機構造体 (1\/1 0 ) 、 共有結合性有機骨格構造体 ( 〇〇 ) 等の結晶性多孔高分子が挙げられる。

[0029] 複合体の形態は、 特に制限されず、 無定形であってもよいし、 形状をもっ た固体であってもよい。 複合体が形状をもった固体である場合、 その形状は 粒子状であることが好ましく、 粒径 8 0 0 n 以下のナノ粒子であることが より好ましい。 ナノ粒子の粒径は、 好ましくは 5 0 0 n 以下であり、 より 好ましくは 2 0 0 n 以下であり、 さらに好ましくは 5〜 1 0 0 n である ここで、 粒子の粒径は動的光散乱、 走査型電子顕微鏡、 透過型電子顕微鏡 により測定することができる。

[0030] 粒子である複合体の好ましい例として、 _テルフエニル等の有機化合物 の結晶により形成されており、 その結晶中に偏極源がドープされたナノ粒子 を挙げることができる。

偏極源がドープされたナノ粒子は、 例えば偏極源と結晶性化合物の混合物 を溶融した後、 冷却することでバルク状の結晶を作製し、 そのバルク状の結 晶を湿式法で粉砕することにより製造するこ とができる。 ここで製造される ナノ粒子は、 互いに独立したナノ粒子の集合体を構成して おり、 水系媒体に 高度に分散させることができる。 これに対して、 再沈殿法で粒子を形成した り、 バルク結晶の粉砕を乾式法で行ったりした場 合には、 粒子同士が会合し て塊状になり、 分散性の高い組成物を得るのは極めて困難で ある。

ここで、 バルク結晶の湿式粉砕に際しては、 界面活性剤を存在させて粉砕 を行うことが好ましい。 これにより、 より分散性が高いナノ粒子を得ること ができる。

[0031 ] 偏極源とホストの複合体を用いる場合、 偏極源とホストの配合比は、 1 :

5 0〜 1 : 1 0 0 0 0であることが好ましく、 1 : 1 0 0〜 1 : 1 0 0 0で あることがより好ましく、 1 = 2 0 0〜 1 : 5 0 0であることがさらに好ま しい。 \¥02020/175695 13 卩(:171?2020/008481

また、 組成物における複合体の含有量は、 〇. 1重量%〜 2 0重量%であ ることが好ましく、 1重量%〜 1 5重量%であることがより好ましく、 5重 量%〜 1 0重量%であることがさらに好ましい。

[0032] [水系媒体]

本発明における 「水系媒体」 とは、 水を含有する媒体を意味する。 水系媒 体に含まれる水の割合は、 9 0 %以上であることが好ましい。

媒体は、 室温 (3 0 0<) で液体であるものか、 ヒドロゲルであることが 好ましい。

室温で液体である媒体は、 水のみから構成されていてもよいし、 水と他の 媒体との混合媒体であってもよい。 水と混合する他の媒体は、 極性媒体であ ることが好ましい。 極性媒体の具体例として、 メタノール、 エタノール、 イ ソプロパノール、 アセトニトリル、 -ジメチルホルムアミ ド、 ジメチルス ルホキシド、 グリセロール等を挙げることができる。 水に他の媒体を混合す る場合、 他の媒体は 1種類であってもよいし、 2種類以上であってもよい。 ヒドロゲルは、 ネッ トワーク構造と、 ネッ トワーク構造の隙間に含まれる 分散媒から形成された固体状の媒体である。 ネッ トワーク構造を形成しうる 物質として、 親水性高分子、 低分子ゲル化剤、 粘土層などの無機材料等を挙 げることができる。 親水性高分子としては、 アガロース、 澱粉、 グルコマン ナン、 カラギナン、 ぺクチン、 メチルセルロース、 力ードラン、 ジェランガ ム、 タマリンドシードガム、 キサンタンガムと口ーカスドビーンガムの混 合 物等の多糖類、 ポリエチレングリコール、 ポリビニルアルコール、 ポリイソ プロピルアクリルアミ ド、 ポリベプチド等が挙げられる。

ヒドロゲルに含侵される分散媒の説明と好ま しい範囲、 具体例については 、 上記の 「室温で液体である媒体」 についての記載を参照することができる 水系媒体としてヒドロゲルを用いる場合、 偏極源はヒドロゲルと複合して いてもよいし、 ヒドロゲルに共有結合で組み込まれていても よい。 ここで、 偏極源がヒドロゲルと複合する場合の 「複合」 とは、 偏極源分子がヒドロゲ \¥0 2020/175695 14 卩(:171? 2020 /008481

ルを構成するネッ トワーク構造に包接、 吸着、 付着等している態様を広く含 むものである。 このように、 偏極源がヒドロゲルと複合またはゲルに共有 結 合で組み込まれていることにより、 偏極源同士の会合が抑制されて、 偏極源 の凝集に起因する三重項寿命の短縮が抑えら れる。 その結果、 その三重項電 子のスピン偏極を効率よく核へ移動させるこ とができる。

[0033] [その他の成分]

本発明の組成物は、 偏極源と水系媒体のみ、 または、 偏極源、 ホストおよ び水系媒体のみで構成されていてもよいし、 その他の成分を含んでいてもよ い。

以下において、 組成物が含んでもよいその他の成分について 説明する。

[0034] (界面活性剤)

偏極源がホストとともに複合体を構成してい る場合、 特に、 その複合体が 粒径 8 0 0 n 以下の粒子である場合、 その複合体は界面活性剤を有するこ とが好ましく、 その表面に界面活性剤からなる被覆層が形成 されていること が好ましい。 これにより、 複合体同士が会合することが抑制され、 水系媒体 中に均一に分散することができる。 その結果、 光とマイクロウエーブを効率 よく照射でき、 三重項電子のスピン偏極を効率よく核へ移動 させることがで きる。

界面活性剤は、 陽イオン界面活性剤、 陰イオン界面活性剤、 両性界面活性 剤、 非イオン性界面活性剤のいずれでもよいが、 陽イオン性界面活性剤であ ることが好ましい。 陽イオン界面活性剤の好ましい例として、 ジアルキルジ メチルアンモニウム塩、 ジメチルジアルキルアンモニウムハライ ド、 ジアル キルジメチルアンモニウムハライ ド等の第 4級アンモニウム塩型界面活性剤 を挙げることができ、 具体例としてセチルトリメチルアンモニウム ブロマイ ドを挙げることができる。

組成物における界面活性剤の添加量は、 1〜〇. 0 0 1重量%であること が好ましく、 〇. 5〜〇. 0 0 5重量%であることがより好ましく、 0 . 1 〜〇. 0 1重量%であることがさらに好ましい。 \¥0 2020/175695 15 卩(:171? 2020 /008481

[0035] [偏極源の分散状態]

本発明の組成物では、 偏極源が水系媒体中に非会合状態で分散して いるこ とが好ましい。 ここで、 「非会合状態」 とは、 偏極源の分子同士が互いに会 合しておらず、 離間して存在していることを意味しており、 偏極源の分子が 単分子分散 (分子状に分散) をしている場合と、 偏極源が分散してヒドロゲ ルに共有結合で組み込まれている場合の両方 を含む。

偏極源が非会合状態にあることは、 その組成物の蛍光スぺクトルを測定し たとき、 例えばペンタセン誘導体では 5 8 0〜 6 3 0 n の波長範囲に鋭い 蛍光ピークが観測されたことをもって確認す ることができる。 ここで、 鋭い 蛍光ピークとは半値全幅が 7 0 n 以下の蛍光ピークのことをいう。 この蛍 光ピークの半値全幅は 1 0 0门 以下であることが好ましく、 7 0 n m以下 であることがより好ましく、 5 0门 以下であることがさらに好ましい。

[0036] [超核偏極のメカニズムと方法]

本発明の組成物は、 核のスピン偏極率を高める超核偏極に効果的 に用いる ことができる。

以下において、 本発明の組成物が核のスピン偏極率を高める メカニズムを 、 励起三重項状態をとりうる分子を偏極源に用 いる場合を例にして、 図 1 を 参照しながら説明する。 ただし、 本発明の組成物の超核偏極のメカニズムは 、 以下で説明するメカニズムによって限定的に 解釈されるべきものではない

[0037] [ 1 ] 偏極源の励起工程

この工程では、 組成物に励起光を照射して、 励起三重項状態をとりうる分 子からなる偏極源を励起三重項状態へ遷移さ せる。

組成物に励起光を照射すると、 図 1 に示すように、 偏極源が基底一重項状 態 3 0 から励起一重項状態 3 ! へと遷移し、 さらに、 励起一重項状態 3 ! からの 項間交差が起こって励起三重項状態丁„にな る。 続いて、 励起三重項状態丁„ が、 それよりも低次の励起三重項状態へと段階的 に内部転換し、 終には最低 エネルギー準位の励起三重項状態丁!になる 。 この励起三重項状態丁!での電 \¥0 2020/175695 16 卩(:171? 2020 /008481

子スピン (三重項電子スピン) のゼーマン準位の数は、 磁気量子数 01 = - 1 、 〇、 + 1のそれぞれに相当する 3つであり、 これらのうち、 〇1 = 0のゼー マン準位に電子スピンが大きく偏って分布し た電子スピン高偏極状態になっ ている。 一方、 ホスト等の核のゼーマン準位の数は、 例えばプロトン 1 1 ~ 1 +で は、 磁気量子数 = + 1 / 2、 一 1 / 2のそれぞれに相当する 2つである。 これらのうち〇1 = + 1 / 2のゼーマン準位の方が、 僅かに核スピンの占有数 が多いものの、 偏極率は 1 0 _ 6 程度であり、 極めて低い核スピン偏極状態に ある。

[0038] [2] 高偏極化工程

この工程では、 組成物で生成した三重項電子のスピン偏極を 核に移動させ て、 核スピンを局偏極化する。

具体的には、 三重項電子スピンが生じた組成物に、 外部磁場を印加しつつ 電子スピンが共鳴する電磁波を照射する。 すると、 積分固体効果により、 三 重項電子のスピン偏極が核へ移動して、 核スピンが高偏極化される。 このと き、 本発明の組成物では、 偏極源が水系媒体中に高度に分散しているこ とに より、 三重項電子の寿命が長く、 そのスピン偏極の核への移動が長時間継続 し、 核にスピン偏極が蓄積される。 こうして核スピンが高偏極化された物質 (偏極対象物) からは、 強度が高い IV! 信号を得ることができ、 光法や1\/|[¾ I において高い測定感度を実現することができ る。

高偏極化の条件は特に制限されないが、 例えば外部磁場の強度は、 〇. 1 〜 1 丁、 電磁波の周波数は 2〜 2 0〇1 ~ 1 2、 電磁場の強度は〇. 1〜 1 0 0 の各範囲から適宜選択することができる。

なお、 上記の工程 [1] 、 [2] は、 工程 [1] を行った後に、 工程 [2 ] を行うようにしてもよいし、 工程 [1] と工程 [2] を同時に行ってもよ い。 後者の場合には、 組成物に外部磁場を印加しつつ、 励起光と電子スピン が共鳴する電磁波を同時に照射する。

また、 上記の工程 [1] 、 [2] は、 室温で行ってもよいが、 水系媒体が 凍結する温度で行うことも好ましい。 これにより、 偏極源や偏極源とホスト \¥0 2020/175695 17 卩(:171? 2020 /008481

の複合体を、 媒体中に高度に分散させた状態で保持するこ とができ、 三重項 寿命がより長くなることに加え、 積分固体効果により効率よく偏極移行を行 うことが可能になる。 また、 水系媒体の 1 1 ~ 1等の核スピンの縦緩和時間丁 1 が 長くなり、 核偏極をより蓄積することができる。 具体的には、 工程 [ 1 ] 、 [ 2 ] を行う際の組成物の温度は、 7 7 [<〜3 0 0<であることが好ましく 、

ることがさらに好ましい。

本発明の組成物で超核偏極を行った後に観測 される IV! スぺクトルビー クの強度は、 熱平衡状態にある組成物の対応するピーク強 度に対して、 1 〇 倍以上であることが好ましく、 1 0 0倍以上であることがより好ましく、 1 〇〇 0倍以上であることがさらに好ましい。

IV! 信号の検出は、 連続波法、 パルスフーリエ変換法等の公知の方法を 用いて行うことができ、 例えばパルスフーリエ変換法による IV! 信号の検 出には、 [¾ コイル (プローブ) 、 増幅器等を備えた装置を用いることがで きる。

本発明では、 本発明の組成物を用いて、 測定対象物の核スピンを高偏極化 するため、 測定対象物からの IV! 信号を高い強度で検出することができる 。 そのため、 この 1\/| [¾測定法を応用することにより、 1\/| [¾分光法による 化合物の構造や物性の解析、 I による生体器官の検査を感度よく行うこ とができる。

[0039] [偏極対象物]

本発明の組成物を用いて超核偏極を行う偏極 対象物は、 特に制限されない が、 炭化水素、 および、 少なくとも 1つの水素原子が置換基で置換された炭 化水素の誘導体から選択される少なくとも 1種の化合物を含有することが好 ましい。

炭化水素は、 非環系化合物 (脂肪族化合物) であっても環系化合物であっ てもよく、 飽和炭化水素であっても不飽和炭化水素であ ってもよく、 低分子 化合物であっても高分子化合物であってもよ い。 環系化合物は、 脂環系およ \¥0 2020/175695 18 卩(:171? 2020 /008481

び芳香族系のいずれであってもよい。 炭化水素の炭素数は特に制限されず、 通常は 1〜 1 0の範囲である。 また、 炭化水素は、 分子内の一部の炭素原子 がへテロ原子で置換されたものであってもよ い。 ヘテロ原子は特に限定され ないが、 1\1 , 、 〇、 3等を挙げることができる。

炭化水素の誘導体において、 置換基は特に限定されないが、 置換基の少な くとも 1つは、 スピン量子数丨が 0以外である原子を含む置換基であること が好ましく、 1 3 〇、 1 ^、 2 9 3 | % 3 ] 等を含む置換基であることが より好ましく、 フッ素原子であることがさらに好ましい。

[0040] 偏極対象物として特に好ましいものは生体関 連物質である。 ここでいう 「 生体関連物質」 とは、 生体を構成する物質および生体を構成する物 質の誘導 体を意味する。 生体を構成する物質として、 例えば生体高分子 (核酸、 タン パク質、 多糖) や、 これらの構成要素であるヌクレオチド、 ヌクレオシド、 ペプチド、 アミノ酸および糖、 並びに、 脂質、 ビタミン、 ホルモン等が挙げ られる。 偏極対象物とする生体関連物質の具体例とし て、 本明細書の一部と してここに引用する 0116111. 5〇〇. , 2014, 43, 1627-1659のド . 2(八)の赤丸部分 を 1 3 〇ラベルした分子を例示することができ る。 このような分子をプローブ として生体内に導入して本発明を利用して 1^1観測を行うことができる。

[0041 ] <複合体>

次に本発明の複合体について説明する。

本発明の複合体は、 偏極源がホスト中に分散しており、 粒径が 8 0 0 n〇! 以下である複合体である。 本発明の複合体は、 その偏極源で生成した電子の スピン偏極を核へ移行させることができ、 動的核偏極に効果的に用いること ができる。

「偏極源」 の説明の好ましい範囲、 具体例については、 上記の [偏極源] の欄の記載を参照することができ、 「ホスト」 の説明と好ましい範囲、 具体 例については、 上記の [偏極源とホストの複合体] の欄の対応する記載を参 照することができる。

本発明における 「粒径」 とは、 投影したときの最大径をいう。 「粒径」 は \¥0 2020/175695 19 卩(:171? 2020 /008481

、 動的光散乱や走査型電子顕微鏡により測定す ることができる。

複合体の粒径は、 好ましくは 5 0 0 n 以下であり、 より好ましくは 2 0 0门 以下であり、 さらに好ましくは である。

この複合体は、 水系媒体に分散させて用いることが好ましい 。 「水系媒体 」 の説明と好ましい範囲、 具体例については、 上記の 「水系媒体」 の欄の記 載を参照することができる。

実施例

[0042] 以下に合成例および実施例を挙げて本発明の 特徴をさらに具体的に説明す る。 以下に示す材料、 処理内容、 処理手順等は、 本発明の趣旨を逸脱しない 限り適宜変更することができる。 したがって、 本発明の範囲は以下に示す具 体例により限定的に解釈されるべきものでは ない。 なお、 粒子径分布の測定 は動的光散乱装置 (マルバーン社製: å£ 600) を用いて行い、 光吸 収スぺクトルの測定は、 分光光度計 (日本分光社製: ー6 7 0、 \ - 1 1 0) を用いて行い、 虽光スペクトルの測定は、 マルチチヤンネル分光器 (大 塚電子社製: 11/0^-9800) を用いて行った。 過渡吸収測定は、 6 0 0 n m励起 光を照射した後、 5 2 0 n での吸光度の経時変化を測定することにより 行 った。 信号の測定は、 (日本電子社製:

〇〇) を用いて行った。 時間分解巳 3 スペクトルの測定および動的核偏極 は、 5 3 2 n のパルスレーザー、 電磁石、 マイクロ波発生器 (アナログデ バイセズ社製: 1 ~ 1 1\/1〇一丁 2 2 2 0) 、 巳 3 検出器を組み合わせて行った

[0043] (実施例で使用した化合物)

本実施例で使用した偏極源を下記に示す。 \¥0 2020/175695 20 2020 /008481

[化 4]

[0044] 「1 1 偏極源を含む複合体の水分散液の調製と評価

(実施例 1) ペンタセンを偏極源として用い、 _テルフエニルのナノ結晶 をホストとして用いた複合体の水分散液の作 製

ペンタセンと ーテルフエニルの混合物をアンプルに入れて 真空下で密封 し、 2 2 0 °〇 ( _テルフエニルの融点) 超の油浴中で加熱して溶融させた 。 その後、 アンプルを液体窒素に漬けて融液を急速に冷 却することで、 〇. 5〇1〇 丨%のペンタセンがドープされたバルク状の ーテルフエニル結晶を 得た。

このバルク状の ーテルフエニル結晶 (3 0 0〇1 9 ) 、 臭化セチルトリメ チルアンモニウムの水溶液 ( 1 . 3 0〇1 1_) およびアルミナ ·ボー ル (直径 5 〇〇 をセラミック容器に入れ、 ボールミルにて、 2 8 0 「 〇1 で 3時間粉砕を行うことにより、 乳白色の懸濁液を得た。 この懸濁液を遠心 分離 (6 0 0 0 「 、 5分間) にかけて オーダーの大きな粒子状物質 を除去し、 上澄み液を回収した。 続いて、 この上澄み液を遠心分離 (1 2 0 0 0 「 〇1、 3 0分間) にかけてナノ粒子を沈降させた。 その上澄み液の一 部を除去した後、 残った上澄みと沈降物 (ナノ粒子) を撹拌し、 ナノ粒子の 水分散液 (複合体含有水分散液 1) を得た。 この水分散液のナノ粒子の含有 率は、 固体重量で 5 . 3重量%であった。

以下では、 ここで調製したナノ粒子を 「ペンタセン添加ナノ粒子」 といい

、 粉砕する前のバルク状の _テルフエニル結晶を 「ペンタセン添加バルク 結晶」 という。 \¥02020/175695 21 卩(:171?2020/008481

[0045] このペンタセン添加ナノ粒子の走査型電子顕 微鏡 (3巳1\/1) 写真 (倍率:

4 0 0 0 0) を図 2に示し、 動的光散乱法 (口 1_ 3) により測定した粒子径 分布を図 3に示す。

ペンタセン添加ナノ粒子の粒子径は、 3巳 IV!画像から求めた平均粒子径で 9 2 ± 2 2 n 、 動的光散乱法による平均粒子径で 1 5 1 ± 2 6 n であり 、 両方の測定方法でよく一致していた。 また、 このペンタセン添加ナノ粒子 のゼータ電位は + 5 Vであり、 正に大きな値を示した。 これは、 陽イオ ン界面活性剤である臭化セチルトリメチルア ンモニウムの表面被覆層による ものであると考えられる。 ペンタセン添加ナノ粒子は、 この帯電した表面に より良好なコロイ ド安定性が付与され、 2 4時間にわたってナノ粒子が安定 に分散していた。

また、 ペンタセン添加ナノ粒子とペンタセン添加バ ルク結晶について、 粉 末 X線回折パターン、 光吸収スペクトル、 蛍光寿命および過渡吸収曲線を測 定したところ、 いずれも一致していた。 ここで、 ペンタセン添加バルク結晶 については、 ペンタセンが分子分散状態で結晶中に存在し ていることが知ら れており、 ペンタセン添加ナノ粒子でぺンタセン添加バ ルク結晶と同様の物 性が得られたことは、 ペンタセン添加ナノ粒子中にもペンタセンが 分子分散 状態で存在していることを意味する。

[0046] 調製したペンタセン添加ナノ粒子の水分散液 に、 5 3 2 n mのパルスレー ザーを照射して光励起を行った後、 磁場掃引を行いながらマイクロ波を照射 して、 ペンタセンで生成した三重項電子のスピン偏 極を 1 1 ~ 1へ移行する動的核 偏極を一定時間繰り返した後、 1 1 ~ 1 スペクトルを測定した。 動的核偏 極を行う前の 1 1 ~ 1 1\/| [¾スペクトルと、 動的核偏極を一定時間繰り返した後 の 1 1 ~ 1 IV! スペクトルを図 4に示す。 ここで、 1 1 ~ 1 1\/| [¾スペクトルの 測定時期は 6 0秒間の間で 1 5秒置きとした。 また、 動的核偏極を 6 0秒間 繰り返した後の 1 1 ~ 1 1\/| [¾スペクトルを図 5 (a) に示し、 この 1 1 ~ 1 1\/1 (13) に 示す。 また、 図 5 (3) 、 (匕) には、 実測した 1 1 ~ 1 IV! スペクトルの力 \¥0 2020/175695 22 卩(:171? 2020 /008481

—ブフイツテイングにより得たシミユレー シヨンスぺクトルと、 このスぺク トルから分けた 2つのスぺクトル成分を併せて示す。 2つのスぺクトル成分 のうち、 鋭いピークは水の 1 1 ~ 1に由来し、 比較的ブロードなピークはペンタセ ン添加ナノ粒子の 1 1 ~ 1に由来する。

図 4に示すように、 動的核偏極を行う前の 1 1 ~ 1 IV! スペクトルには、 水 に由来する鋭いピークのみが観測された。 一方、 動的核偏極を行った後の 1 1 ~ 1 1\/| [¾スぺクトルには、 ペンタセン添加ナノ粒子に由来する比較的ブ ロー ドなピークが観測されるようになり、 そのピークは動的核偏極の繰り返し時 間が長くなるにつれて、 増強する傾向が見られた。 このことから、 水中のぺ ンタセン添加ナノ粒子に動的核偏極を行うこ とにより、 その核のスピン偏極 を向上できることが確認された。

この結果から、 媒体である水にもスピン偏極を移動させうる 可能性が示唆 され、 水媒体に偏極源を分散させる構成は、 偏極源から水にスピン偏極を移 す道を開く発展性のある技術であることがわ かった。

[0047] また、 ペンタセン添加ナノ粒子の水分散液とペンタ セン添加バルク結晶の 1

1 ~ 1スピン偏極のビルドアツプ曲線、 および、 そのビルドアツプ曲線のフィツ ティング曲線を図 6に示す。 図 6の横軸は、 動的核偏極の繰り返し時間を示 す。 縦軸に示すエンハンスメントファクターは、 実測した 1 1 ~ 1 1\/| [¾信号 ( 信号電圧) を下記式 (1) の巳 に代入して求めたものである。 ここで、 参 照データには、 3 0 0 <、 〇. 6 7 6丁の磁場中で熱平衡状態にあるペンタ セン添加バルク結晶の 1 1 ~ 1 1\/| [¾信号を使用した。

[0048] [数 1 ]

ンの数、 丁 0 および丁「

6 干は温度、 および 9 はレシ _ _ ゲイン、 巳 0 |\ ^および巳 はイ目 号電圧をそれぞれ表す。 このうち、 「口 」 を下付き添え字にする記号は 、 偏極源として用いた化合物についてのパラメ ータであり、 「「㊀干」 を下 \¥0 2020/175695 23 卩(:171? 2020 /008481

付き添え字にする記号は、 ペンタセン添加バルク結晶についてのパラメ ータ である。

[0049] (比較例 1) の水分散液 (偏極源が分子分散状態にない水分散液) の 調製

この の水分散液と、 分子分散状態にある のメタノール溶液 ( 参照サンプル) について蛍光スペクトルを測定したところ、 の水分散 液は、 メタノール溶液に比べて、 蛍光ピークが明らかにブロードな形状にな っていた。 このことから、 水中では僅かに凝集して完全な分子分 散状態にならないことがわかった。 また、 脱気した の水分散液とメタ ノール溶液に、 それぞれ励起光を照射した後、 三重項寿命の指標として過渡 吸収測定を行ったところ、 水分散液はメタノール溶液に比べて減衰速度 が速 かった。 このことから、 水分散液では、 が分子分散状態にないことに より、 三重項寿命が短くなることが示された。

[0050] (実施例 2) を偏極源として用い、 ウシ血清アルブミン (巳3 ) を ホストとして用いた複合体の水分散液の作製

の粉末に、 〇. 1 %の巳 3 水溶液を加えた後、 暗所にて 1 0分間 静置することによ (複合体含有 水分散液 2) を得た。

作製した複合体の水分散液について蛍光スぺ クトルを測定したところ、 比 較例 1で作製した 単独の水分散液に比べて蛍光ピークが短波長 側にシ フトするとともにピーク形状がシャープにな っていた。 このことから、 巳 3 八との複合体とすることにより、 の分散性が向上することがわかった 。 また、 作製した複合体の水分散液について円偏光二 色性 (〇〇) スペクト ルを測定したところ、 単独の水分散液や牛血清アルブミン単独の水 溶 液では見られない大きな 0 0変化が観測された。 このことから、

子がキラリティを有する巳 3八中に取り込まれたことが確認された。

さらに、 脱気した複合体の水分散液に励起光を照射し た後、 過渡吸収測定 \¥02020/175695 24 卩(:171? 2020 /008481

を行ったところ、 単独の水分散液よりも減衰速度が遅く、 その三重項 寿命は 65 £で、 分子分散状態にある のメタノール溶液 ( 66 £

) と同等であった。 このことから、 この複合体の水分散液では、 巳 3八に取り込まれることで分子分散状態にな ており、 これにより、 長い三 重項寿命が実現されたことがわかった。

[0051] (実施例 3) を偏極源として用い、 /3—シクロデキストリンをホスト として用いた複合体の水分散液の作製

ロデキストリンの複合体を含む水分散液 (複合体含有水分散液 3) を得た。 ここで、 水分散液における

3 : /3—シクロデキストリン) は実施する測定に応じて変えた。 採用した濃度 比は各水分散液の左括弧内に示した通りであ る。

作製した複合体の水分散液 (濃度比〇. 1 IV!) について蛍光ス ぺクトルを測定したところ、 比較例 1で作製した 単独の水分散液に比 ベて蛍光ピークが短波長側にシフトするとと もにピーク形状がシャープにな っていた。 このことから、 /3 -シクロデキストリンとの複合体とすること より、 の分散性が向上することがわかった。 また、 : /3—シク ロデキストリン = 1 1\/1 : 5 1\/1の重水溶液を調製し、 その 1 1 ~ 1 クトルを測定したところ、 /3—シクロデキストリンに由来するピーク位 が /3—シクロデキストリン単独の重水溶液に対 て大きく変化していた。 こう したピーク位置の変化は、 を包接している 可能性を示しており、 このことが、 の分子分散に寄与していることが 示唆された。

さらに、 脱気した複合体の水分散液 (濃度比〇. 5 1\/1 : 5 1\/1) に 60 〇门 励起光を照射した後、 520 n で過渡吸収測定を行うことにより三 重項寿命を測定したところ、 その三重項寿命は 76 £であり、 分子分散状 態にある のメタノール溶液 (〇. 1 IV!) の三重項寿命 (66 3) よりも長いものであった。 このように長い三重項寿命が得られたのは、 この \¥0 2020/175695 25 卩(:171? 2020 /008481

複合体の水分散液では、 が分子分散状態になっていることに加えて、

/3 -シクロデキストリンによって側鎖運動性が 限されているためであると 考えられる。

[0052] 「2 1 偏極源を含む複合体含有ゲルの調製と評価

(実施例 4) 偏極源として を用い、 ホストとして/ 3—シクロデキスト リンを用い、 アガロースのヒドロゲルを媒体に用いた複合 体含有ゲル 1の作 製

4重量%のァガロース水分散液を 9 5 °〇に加熱して十分に溶解させた後、 と/ 3—シクロデキストリン (1 0〇1 1\/1) を含む水分散液と 1 : 1の体積比で混合し、 冷蔵庫にて冷やし固めてゲル (アガロールゲルを媒 体とする複合体含有ゲル 1) を得た。

得られた複合体含有ゲル 1は、 実施例

トリンの複合体の水分散液 (複合体含有水分散液 3) とよく似たピンク色を 呈していた。 また、 蛍光スペクトルを測定したところ、 この複合体含有水分 散液 3と同じ位置に、 シャープな蛍光ピークが認められた。 このことから、 この複合体含有ゲル 1では、 ゲル中において

ンが複合体を形成しており、 が分子分散状態にあることが確認された

[0053] (実施例 5) 偏極源として を用い、 ホストとして/ 3—シクロデキスト リンを用い、 ポリエチレングリコールのヒドロゲル 〇6 34£〇 を媒体に用 いた複合体含有ゲル 2の作製

ポリエチレングリコールのヒドロゲルに共有 結合で組み込まれた複合体含有 ゲル 2を作製した。

具体的には、 と 4— (4 , 6—ジメ トキシ - 1 , 3 , 5—トリアジンー 2—イル) 一 4—メチルモルホリニウムクロリ ド 1^-11/1、 の混合物に、 1 . 5〇1 1\/1の卩08八 メタノ_ル溶液 (2 0 0 し) を加え、 暗所にて 3時間静置した。 この混合物から溶媒を揮発さ \¥0 2020/175695 26 卩(:171? 2020 /008481

せた後、 を追加で加え、 さら に、 レフタル酸ナトリウム水溶液 (7 4 し) 、 メタノール (

1 2 6 ^Ji L) を加えた後、 暗所にて 6時間静置した。 得られたピンク色のゲ ルを、 1 0 1\/1の/ 3—シクロデキストリン水溶液に浸潰し、 溶媒およびモノ マーを洗浄除去することにより青色のゲル (士 61「 3 - を媒体とする複合体含 有ゲル 2) を得た。

得られた複合体含有ゲル 2について蛍光スぺクトルを測定したところ 実 施例 3の複合体含有水分散液 3と同じ位置にシャープな蛍光ピークが認め れた。 このことから、 この複合体含有ゲル 2においても、 の会合によ る凝集は起こっておらず、 が分子分散状態で存在していることが確認 された。

[0054] (比較例

(比較ゲル 1) の作製

4重量%のゼラチン水分散液を 5 5 °〇に加熱して十分に溶解させた後、 八 (3〇1 1\/1) と/ 3—シクロデキストリン (1 0〇1 1\/1) を含む水分散液と 1 :

1の体積比で混合し、 冷蔵庫にて冷やし固めてゲル (比較ゲル 1) を得た。 作製したゲルについて蛍光スぺクトルを測定 したところ、 実施例 3の複合 体含有水分散液 3および実施例 4の複合体含有ゲル 1 に比べて、 蛍光ピーク が長波長側に大幅にシフトしていた。 このことから、 このゲルでは、 が凝集した状態で存在しており、 分散性が低いことが示された。 この凝集は 、 ゼラチンゲルのイオン性部位と の相互作用により生じたものと考え られる。

[0055] 実施例 3で作製した複合体含有水分散液 3 (1 . 実施 例 4で作製した複合体含有ゲル 1、 実施例 5で作製した複合体含有ゲル 2お よび比較例 2で作製した比較ゲル 1 について、 それぞれ、 1 2〇 [<で凍結さ せた後、 静磁場中で 5 3 2 n のパルスレーザーを照射して光励起させ、 そ の後、 磁場を掃引しながらマイクロ波を照射するこ とで巳3 [¾ (電子スピン 共鳴) スペクトルを測定した。 巳 3 シグナルが最も大きな値を示したのは \¥02020/175695 27 卩(:171?2020/008481

3 5 0〜 3 5 0 丁付近であり、 その巳 3 ピークの経時変化を図 8に示す 図 8に示すように、 複合体含有水分散液 3、 アガロースゲルを用いた複合 体含有ゲル を用いた複合体含有ゲル

クが観測され、 そのピークが時間とともに減衰する様子が認 められた。 一方 、 ゼラチンを用いた比較ゲル 1では巳 3 ピークが観測されず、 電子スピン の偏極がほとんど起こっていないことが示さ れた。 このことから、 電子スピ ンの偏極を起こすには、 偏極源の分子が凝集しておらず、 高度に分散してい る必要があることがわかった。 また、 複合体の水分散液よりも、 複合体含有 ゲル 1、 2で大きな巳 3 シグナルが得られたことから、 偏極源の媒体をヒ ドロゲルとすることが、 電子スピン偏極の向上に有利に働くことが示 された 。 これは、 ただの氷中よりも凍結したアガロースゲルや ゲルのほう が偏極源の分散性が向上するためであると考 えられる。

[0056] また、 複合体含有ゲル 1の巳 3 スペクトルを分析したところ、 3 1 丁付近に負の方向のピークが認められ、 3 5 0 丁付近に正の方向のピーク が認められた。 これらのピークは励起三重項状態における副 準位間の遷移 ( への遷移) に由来するも のである。 このことから、 上記のマイクロ波照射と磁場掃引により、 ヒドロ ゲル中の に、 三重項電子スピン偏極が生成していたことが 確認された

[0057] さらに、 アガロールゲルを用いた複合体含有ゲル 1 に、 1 0 0 <で 5 3 2 n mのパルスレーザーを照射して光励起を行っ 後、 マイクロ波パルスを用 いた動的核偏極を一定時間行い、 で生成した三重項電子のスピン偏極 を 1 1 ~ 1へ移行させた。 動的核偏極を 3分間行った後と 9 0分間行った後の 1 1 ~ 1 1\/| [¾スぺクトルを図 9に示し、 IV! シグナル積分値のパルス照射時間 依存性を図 1 〇に示す。

図 9、 1 0に示すように、 パルス照射時間が長くなるに従って ナルが増大する傾向が認められた。 このことから、 複合体含有ゲル 1 におい \¥0 2020/175695 28 卩(:171? 2020 /008481

て、 の三重項電子から 1 1 ~ 1へのスピン偏極移行が確実に起こるこ が確 認された。 また、 シグナルの増感に数十分スケールの時間を要 することから 、 偏極を保持できる時間の指標となる縦緩和時 間が非常に長いことがわかっ た。

また、 を用いた複合体含有ゲル 2についても、 同様に動的核偏極 を行ったところ、

られ、 緩和時間が長くて結晶性を保っていることが わかった。

産業上の利用可能性

[0058] 本発明によれば、 水系媒体中で超核偏極を行うことが可能にな る。 また、 本発明の組成物は、 水系媒体を使用しているため、 生体や生体関連物質に容 易に適用することができる。 このため、 本発明は産業上の利用可能性が高い