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Patent Searching and Data


Title:
COMPOSITION FOR PROMOTING KETONE COMPOUND FORMATION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/120778
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a composition for promoting the formation of a ketone compound which contains a water-soluble β-hydroxy short to medium chain fatty acid polymer. This composition for promoting the formation of a ketone compound is appropriately usable in preventing and treating various diseases which can be prevented or treated by promoting the formation of a ketone compound.

Inventors:
KURIYAMA MASAKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/056338
Publication Date:
October 09, 2008
Filing Date:
March 31, 2008
Export Citation:
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Assignee:
EARTHUS INC (JP)
KURIYAMA MASAKI (JP)
International Classes:
A61K31/765; A23L33/12; A23L33/135; A61P3/00; A61P3/08; A61P3/10; A61P7/10; A61P9/00; A61P9/04; A61P9/10; A61P21/04; A61P25/00; A61P25/08; A61P25/14; A61P25/16; A61P25/28; A61P39/00; A61P39/06; A61P43/00
Domestic Patent References:
WO2004108740A22004-12-16
WO2005021013A12005-03-10
WO2005021013A12005-03-10
Foreign References:
JP2001515510A2001-09-18
JP2002521330A2002-07-16
CN1729965A2006-02-08
CN1778904A2006-05-31
JP2003509366A2003-03-11
JP2000515510A2000-11-21
JP2002521330A2002-07-16
JPH1095730A1998-04-14
JP2002524506A2002-08-06
Other References:
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GASIOR M. ET AL.: "Neuroprotective and disease-modifying effects of the ketogenic diet", BEHAVIOURAL PHARMACOLOGY, vol. 17, no. 5-6, September 2006 (2006-09-01), pages 431 - 439, XP008120909
RAMSAY B.A. ET AL.: "Production of poly-(beta-hydroxybutyric-co-beta-hydroxyvaleric) acids", APPLIED AND ENVIRONMENTAL MICROBIOLOGY, vol. 56, no. 7, 1990, pages 2093 - 2098, XP008120879
VEECH, PROSTAGLANDINS, LEUKOTRIENES AND ESSENTIAL FATTY ACIDS, vol. 70, 2004, pages 309 - 319
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J.BIOTECHNOL., vol. 172, 1990, pages 2791 - 2792
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COMP.BIOCHEM.PHYSIOL.A:MOL.INTEGR.PHYSIOL., vol. 132, 2002, pages 333 - 340
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EUR.J.BIOCHEM., vol. 224, 1994, pages 317 - 328
See also references of EP 2143434A4
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (IMP Building3-7, Shiromi 1-chome,Chuo-k, Osaka-shi Osaka 01, JP)
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Claims:
水不溶性β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を含む、ケトン体生成促進剤組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸が、β-ヒドロキシ酪酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒドロキシ吉草酸、β-ヒドロキシカプロン酸、β-ヒドロキシカプリル酸、β-ヒドロキシカプリン酸およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸の単独重合体である、請求項1または2に記載の組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸共重合体である、請求項1または2に記載の組成物。
β-ヒドロキシ酪酸の単独重合体もしくは共重合体である、請求項1~4いずれかに記載の組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体がβ-ヒドロキシ酪酸とβ-ヒドロキシ吉草酸の共重合体である、請求項5記載の組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体の重量平均分子量が1,000~20,000,000である、請求項1~6いずれかに記載の組成物。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体がスピルリナにより産生されたものである、請求項1~7いずれかに記載の組成物。
経口投与もしくは経口投与に類する投与方法により投与される、請求項1~8いずれかに記載の組成物。
動物飼料、または動物飼料添加物である、請求項9に記載の組成物。
機能性食品である、請求項9に記載の組成物。
ヒトを含む動物用医薬組成物である、請求項1~9いずれかに記載の組成物。
アルツハイマー病、ピック病関連前頭側頭骨変性、血管性痴呆、レーヴィ体型の老人性痴呆、前頭萎縮を伴う振せん麻痺の痴呆、進行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性症、ダウン症候群関連アルツハイマー、重症筋無力症ならびに筋ジストロフィーからなる群から選択される神経変性疾患、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、パーキンソン病、フリーラジカル疾患、心不全、心筋梗塞、狭心症、II型糖尿病、ピルビン酸デヒドロゲナーゼの欠乏もしくは遮断、1又はそれ以上の種類の細胞型における解糖の実施不能及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー、細胞代謝にとって有害な遺伝的欠陥、インシュリン耐性又は他のグルコース代謝欠陥もしくは欠陥誘発性状態、GABA予防発作からなる群から選択される疾患乃至症状の治療または予防;虚血または頭部外傷が介在する脳疾患状態の抑制または治療;または脳浮腫の抑制、脳機能の保護、脳エネルギー代謝の調整、および脳卒中の程度の軽減から選択される脳機能改善のために用いられる、請求項1~12いずれかに記載の組成物。
脳細胞損傷に起因する疾患の治療および/または予防のために用いられる、請求項1~12いずれかに記載の組成物。
脳卒中の予防または治療のために用いられる、請求項14記載の組成物
脳卒中の後遺症からの回復促進のために用いられる、請求項14記載の組成物。
Description:
ケトン体生成促進剤組成物

 本発明は新規ケトン体生成促進剤組成物 びにケトン体生成促進方法を提供する。

 ケトン体とは、脂肪酸の分解により肝臓 作られ、血液中に放出されるアセトン、ア ト酢酸、β-ヒドロキシ酪酸を総称する用語 ある。これらのうちアセトンは揮発性で呼 に排出されやすいため、測定される際には 中のアセト酢酸とβ-ヒドロキシ酪酸の合計 を総ケトン体としている。ケトン体は、ブ ウ糖や遊離脂肪酸、アミノ酸などとともに ネルギー源としての役割をもち、肝臓以外 、脳、心臓、腎臓、骨格筋などの多くの組 で使われる。特に脳はブドウ糖とケトン体 か利用せず重要なエネルギー源である。ケ ン体は、他の成分が狭い範囲で血中濃度が 持されるのとは異なり、摂食や運動状況等 よってその生理的濃度は大きく変わるとい 特徴がある。

 古くから高脂質低炭水化物食は、ケトン 誘導食としててんかんの治療に有用である とが知られていた。ケトン体産生(Ketogenesis) 促進あるいはケトン体の投与によって血中ケ トン体レベルを上昇させ、これによって種々 の治療および予防効果が得られることが知ら れている。

 例えば非特許文献1はマイルドなケトーシ ス、即ち血中ケトン体濃度の穏やかな増加が 種々の症状や疾患の治療や予防に有用である ことを示す。非特許文献1は、ケトン体生成 は難治性てんかんにおける発作抑制、体重 少、癌化学療法の補助として用い得ること ケトン体の塩が、輸液療法を受けている患 のグルコース遊離脂肪酸およびグリセロー 濃度の減少、アシルCoAデヒドロゲナーゼ欠 による遺伝疾患の治療に有用であること、 らに動物実験でマイルドなケトン体濃度の 昇がII型糖尿病に典型的なインスリン抵抗状 態、グルコース輸送およびPHD活性の遺伝的欠 損、低血糖発作、低酸素症、心筋症、遺伝性 筋萎縮症、パーキンソン病などのフリーラジ カルに起因する疾患、アルツハイマー病等の 神経変性疾患などの予防や治療に有用である ことが示されたことを報告している。

 かかる観点からケトン体レベルを調節す ための物質が提案されている。そのひとつ 高脂肪低炭水化物のケトン体誘導食であり かかる食品を継続して摂取することにより 臓におけるケトン体の生成が刺激され、血 ケトン体濃度が上昇する。しかしながら、 脂肪分を継続して摂取することから、高脂 症等の他の疾患を誘発する危険性がある。 た、ケトン体誘導食として味覚的に満足で るものは未だ無く、患者のQOLの観点からも ましくない。

 もう一つは、アセト酢酸やD-β-ヒドロキ 酪酸のごときケトン体を点滴や経口、経腸 与して血中ケトン体濃度を増加させようと るアプローチである。しかし、酸であるこ らの物質をそのまま血中へ投与することは 血液のpHを中性付近へ保つためにも好ましく ない。また、酸をそのまま摂取するのも困難 であることからケトン体前駆体としてその塩 、エステル、環状オリゴマー、ポリマー、代 謝前駆体等、種々の誘導体が提案されている (特許文献1~4、非特許文献2)。

 特許文献1はケトン体のオリゴマーもしく はポリマーまたはエステル等、ケトン体の前 駆体を投与することによって血中ケトン体濃 度が上昇し、心臓効率の増加、糖尿病および インスリン耐性状態の治療、および/または 経変性疾患及びてんかんの効果を転換、遅 もしくは予防するために有用であることを 示する。特許文献1ではポリマーの重合度は2 乃至100であってよいと記載されているが、実 施例において投与されているのは平均重合度 3.75のオリゴマー乃至はβ-ヒドロキシ酪酸の トリウム塩であり、それぞれ2M溶液をラット に0.1mL/体重100gの用量で投与し、投与後120分 わたって血中ヒドロキシ酪酸濃度を測定し いる。その結果、オリゴマーを投与した場 の血中ヒドロキシ酪酸濃度のピークは、D-β- ヒドロキシ酪酸塩を投与した場合のピークよ り遅く出るものの、投与後60分付近であった 血中ヒドロキシ酪酸濃度は2時間後でも5~12 増加しており、摂取後数時間は血中濃度を 意に上昇させるとしている。

 特許文献2はD-β-ヒドロキシ酪酸の直鎖また 環式オリゴマーやエステル等により血液ヒ ロキシ酪酸濃度を上昇させることができ、 白質異化の軽減、食欲抑制、強心効果の増 の効果があり、また糖尿病その他のインス ン抵抗状態、アルツハイマー病、ピック病 連前頭側頭骨変性、血管性痴呆、レーヴィ 型の老人性痴呆、前頭萎縮を伴う振せん麻 の痴呆、進行性核上性麻痺および大脳皮質 底核変性症、ダウン症候群関連アルツハイ ー、重症筋無力症ならびに筋ジストロフィ の処置に有用であることを開示する。実施 では、1日の所要カロリーの5%の環状三量体( 10g)をイヌへ経口投与した場合、血中ヒドロ シ酪酸濃度が90分でピークに達し(5倍以上の 昇)、その後6時間後まで低下することを観 している(実施例2)。また1日の所要カロリー 10%相当の環状三量体23.5gを肉111gに混ぜた餌( 134.5g)を犬に、9時間後まで4回摂取させたとこ ろ、1回目の摂取から30分以内に血中ヒドロキ シ酪酸濃度は約50倍に上昇した。3回目(6時間 )の経口投与後、ケトン体は約30倍に増加し ままであったが、翌朝までに正常値に回復 たことを確認している(実施例3)。また実施 7では平均分子量200と1000のオリゴマーを5日 ラットに摂取させた場合(カロリーで25%混合 )のヒドロキシ酪酸血中濃度は、平均分子量20 0のオリゴマーで対照に比べ9倍、平均分子量1 000では2倍の値であり、水溶性が下がるとヒ ロキシ酪酸血中濃度も下がることが示され いる。
 以上のように、1回の投与で短時間に血中濃 度が大きく数倍以上に上昇し、数時間は維持 されるとしている。

 特許文献3はβ-ヒドロキシ酪酸誘導体もし くは2~10量体を投与して血中ケトン体濃度を 昇させることにより脳機能改善作用が得ら ることを開示する。特許文献3においては2~10 量体もモノマーの塩やエステルと同様のケト ン体濃度上昇およびそれに起因する脳機能改 善作用が得られる旨を記載しているが、実施 例で用いられているのはβ-ヒドロキシ酪酸モ ノマーの塩もしくはエステルのみである。

 特許文献4ではβ-ヒドロキシ酪酸(3-ヒドロ キシ酪酸)の環状エステルを投与して、β-ヒ ロキシ酪酸および/またはアセトアセテート あるケトン体の血中濃度を高めることがで ることを開示する。血中ケトン体濃度を高 ることにより、フリーラジカル、毒性作用 質、例えばペプチド及び蛋白質の作用並び 細胞代謝にとって有害な遺伝的欠陥、イン ュリン耐性または他のグルコース代謝欠陥 しくは血管誘発性状態、虚血、頭部外傷に って機能不全に陥っている細胞を治療しお びまたは細胞効率を高めるために有用であ こと、従って、かかる投与がアルツハイマ 病、パーキンソン病、萎縮性側軸索硬化症 てんかん、フリーラジカル疾患、心不全、I I型糖尿病、ピルビン酸でヒドロゲナーゼの 乏もしくは遮断、1またはそれ以上の種類の 胞型における解糖の実施不能及びデュシェ ヌ型筋ジストロフィーの治療に有用である とを開示する。特許文献4においても、環状 オリゴマーとして環状三量体が用いられてい る実施例が開示され、ラットに投与後(餌に11 重量%混合)80分と150分の時点で血中ケトン体 度がそれぞれ1.8倍と2.4倍に上昇したことを 認している。

 非特許文献1は点滴により直接血中へケト ン体を導入することによって、種々の疾患の 予防乃至治療を行う可能性について開示して いる。非特許文献2は、水溶性のβ-ヒドロキ 酪酸オリゴマーを血液中へ直接点滴するこ により、血中ケトン体濃度を上昇させるこ が可能であり、また水溶性オリゴマーの経 投与によっても同様の効果が得られること 開示する。

 上記のとおり、従来技術においてはいず も重合度の低いβ-ヒドロキシ酪酸のオリゴ ーやエステルなどの誘導体を摂取させて血 ケトン体濃度増加を確認している。これら 先行技術において血中ケトン体濃度はいず も投与後速やかに上昇していることから、 与されたβ-ヒドロキシ酪酸のオリゴマー等 誘導体が胃や小腸にて加水分解されて吸収 れるか、そのままこれが血中へ移行し加水 解等された結果であると考えられる。即ち これらの従来技術にて用いられているケト 体前駆体は基本的に水溶性であることが前 となっている。また、非特許文献1および2 おいても、血中ケトン体濃度を上昇させる めの物質は水溶性である必要がある旨明記 れている。

 本出願人は先に、水不溶性β-ヒドロキシ ~中鎖脂肪酸重合体を動物に経口投与した場 合、胃や腸で分解されることなく大腸まで送 達され、大腸において腸内細菌叢により分解 され、生理活性が発揮されることを示してい る(特許文献5)。

特表2001-515510

特表2002-521330

特開平10-95730

特表2002-524506

国際公開WO2005/021013号公報 Veech,Prostaglandins,Leukotriens and Essential Fatt y Acids 70 (2004)309-319 Rich,Prceedings of the Nutrition Society (1990)49 ,361-373 上記文献は、いずれも引用により本 に含まれる。

 本発明は、比較的少量を経口投与するこ によって持続的な効果を発揮できる、ケト 体生成促進剤組成物を提供することを目的 する。

 本発明は、水不溶性β-ヒドロキシ短~中鎖 脂肪酸重合体を含む、ケトン体生成促進剤組 成物を提供する。

 本発明のケトン体生成促進剤組成物は、 口投与または経口投与に類する投与方法に って投与される。

 本発明はまた、水不溶性β-ヒドロキシ短~ 中鎖脂肪酸重合体を、ケトン体生成促進の必 要な対象へ経口または経口投与に類する投与 方法によって投与することを含む、ケトン体 生成促進方法に関する。

 短~中鎖脂肪酸のβ-ヒドロキシ化物を重縮 合して得られる重合体は、胃や小腸でほとん ど、あるいは少ししか分解されず、その大部 分が大腸まで送達される。大腸まで送達され た重合体は腸内細菌叢に含まれる細菌によっ て分解され、水溶性のβ-ヒドロキシ短~中鎖 肪酸モノマーまたはオリゴマーとなり、大 から吸収されて生理作用を発揮する(特許文 5)。

 本発明のケトン体生成促進剤組成物を5重 量%含有する餌をラットに与えた場合、ラッ の血中ケトン体濃度は給餌開始から12時間経 過時までケトン体生成促進剤組成物を含有し ていない餌を与えたコントロール群と差が無 い。しかしながら、同じ餌を継続してラット へ給餌した場合、2週間後にはアセト酢酸お びヒドロキシ酪酸の両方の濃度の穏やかな 昇が確認されている。先行技術のように投 後数時間は大幅なケトン体の濃度の上昇が きるのとは異なり、本発明の組成物によっ 、血中ケトン体濃度の穏やかな上昇が長期 維持される。この比較的低い濃度上昇でも 脳卒中易発性高血圧ラットの脳卒中発症の 防効果が示唆された。また、人において本 明のケトン体生成促進剤組成物を投与した においても脳卒中の後遺症に対して数日後 ら効果が発現している。発明者は理論に限 されることを望まないが、大腸にてモノマ または水溶性オリゴマーにまで分解されたβ -ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体は、吸収さ てそのまま血中に移行するのではなく、大 より吸収されるかまたは大腸において腸内 菌や大腸上皮細胞によりエネルギー源とし 利用された後何らかの機構により肝臓にお るケトン体生成作用を刺激するものと推測 れる。

 本発明のケトン体生成促進剤組成物を経口 与もしくは経口投与に類する投与方法によ 動物に投与することによって、ケトン体生 が促進される。本発明の組成物は従って、 トン体生成促進により治療や予防が可能な 々の疾患の予防あるいは治療に有用である 即ち、本発明のケトン体生成促進剤組成物 、アルツハイマー病、ピック病関連前頭側 骨変性、血管性痴呆、レーヴィ体型の老人 痴呆、前頭萎縮を伴う振せん麻痺の痴呆、 行性核上性麻痺および大脳皮質基底核変性 、ダウン症候群関連アルツハイマー、重症 無力症ならびに筋ジストロフィーからなる から選択される神経変性疾患、筋萎縮性側 硬化症、てんかん、パーキンソン病、フリ ラジカル疾患、心不全、心筋梗塞、狭心症 II型糖尿病、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ 欠乏もしくは遮断、1又はそれ以上の種類の 胞型における解糖の実施不能及びデュシェ ヌ型筋ジストロフィー、細胞代謝にとって 害な遺伝的欠陥、インシュリン耐性又は他 グルコース代謝欠陥もしくは欠陥誘発性状 、GABA予防発作からなる群から選択される疾 患乃至症状の治療または予防;虚血または頭 外傷が介在する脳疾患状態の抑制または治 ;または脳浮腫の抑制、脳機能の保護、脳エ ルギー代謝の調整、および脳卒中の程度の 減から選択される脳機能改善などが例示さ る。
 本発明の組成物は特に脳細胞損傷に起因す 疾患の治療および/または予防、特に脳卒中 の予防または治療において有用である。また 本発明の組成物は脳卒中の後遺症からの回復 の促進に有用である。

 本発明において、β-ヒドロキシ短~中鎖脂 肪酸とは、その骨格が炭素原子数3~12の飽和 肪酸を意味する。好ましくは、β-ヒドロキ 酪酸、β-ヒドロキシプロピオン酸、β-ヒド キシ吉草酸、β-ヒドロキシカプロン酸、β- ドロキシカプリル酸およびβ-ヒドロキシカ リン酸が例示される。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 体としては、これらモノマーの単独重合体で あっても、2以上の短~中鎖脂肪酸の共重合体 あってもよい。特にβ-ヒドロキシ酪酸の単 重合体またはβ-ヒドロキシ酪酸とその他の1 以上のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸との共重 体が好適に用いられる。共重合体としてはβ -ヒドロキシ酪酸とβ-ヒドロキシ吉草酸の共 合体が特に好適に用いられる。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 体には、β-ヒドロキシ脂肪酸またはそのオリ ゴマーの生理作用を妨げない限り、他のモノ マー単位を含んでいてもよい。

 本発明の組成物において、β-ヒドロキシ ~中鎖脂肪酸重合体は、水不溶性であればそ の重合度は特に限定的ではない。重合体が水 溶性であれば、経口投与されるとそのままの 形で、あるいは胃や小腸における酸、アルカ リ条件下で加水分解された形で大腸へ到達す る前に吸収され、本発明の効果を発揮するこ とができない。

 β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体におい ては、重合度がほぼ10以上となると水不溶性 なる。従って例えばβ-ヒドロキシ酪酸重合 であれば重量平均分子量が1,000以上のもの 特に重量平均分子量が1,500以上のものが好適 に用いられる。重合体分子量の上限としては 特に限定的ではなく、重合体として製造でき るものであればいずれも本発明に用いること ができる。例えば。微生物により重量平均分 子量20,000,000以上のβ-ヒドロキシ酪酸重合体 得たという報告がある(Appl.Microbiol.Biotechnol.,4 7,140-143(1997))。本発明で用いられるβ-ヒドロ シ短~中鎖脂肪酸重合体として、好ましくは 合体の重合度20~100,000、より好ましくは重合 度20~20,000のものが例示される。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 体は、公知のいかなる方法を用いて調製して もよい。具体的なβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪 重合体の調製法は例えば、原料となるβ-ヒ ロキシ短~中鎖脂肪酸モノマーを脱水重縮合 る常套のポリエステル合成方法により得る とができる。

 また、微生物あるいは高等生物により産 されるβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を 用いてもよい。

 β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を産生 する多くの細菌が知られている(Microbiol.Rev.,54 ,450-472(1990)およびBiotechnol.Bioeng.,49,1-14(1996)、 れらの文献は引用により本願に含まれる)。 かる細菌により産生されるものも好適に用 られる。細菌により産生されたβ-ヒドロキ 短~中鎖脂肪酸重合体は、菌体から分離して 用いても、菌体と共に用いてもよい。細菌は 一般に蛋白質の含有率が高く、本発明の組成 物を飼料や機能性食品として採用する場合に は、蛋白源としても有用である。

 公知の微生物の中でもラルストニア・ユ トロファ(Ralstonia eutropha)、アルカリゲネス ラタス(Alcaligenes latus)はβ-ヒドロキシ酪酸 合体を大量に生産することが知られている 特にラルストニア・ユートロファ(Ralstonia eu tropha)は、過去に微生物蛋白として検討され が、菌体自体の成分に占める蛋白質含有率 高く、また、従来成長促進のために添加さ ているセリンやグリシン等のアミノ酸含有 も多い。したがって、β-ヒドロキシ酪酸重 体などを提供するためのみならず、蛋白源 しても有効性が高く、飼料や食品へ配合す 場合には特に好ましい。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体 はスピルリナにより産生されたものであって もよい。スピルリナは、熱帯や亜熱帯地域の 淡水に生息する藍藻類であり、アフリカのCha d湖やメキシコのTexcoco湖などでは古くから原 民によって食用にされてきた。今では高い 養価(高蛋白・高ミネラル・高ビタミン)を 徴とする健康食品としても市販されている
 健康食品として市販されているスピルリナ 通常、その乾燥重量中0.1重量%程度以下のβ- ヒドロキシ酪酸重合体しか含有しない。本発 明においては培養条件を調節する等によりβ- ヒドロキシ酪酸重合体含有量を増したスピル リナ(例えばJ.Biotechnol.,172,2791-2792(1990)参照、 文献は引用により本願に含まれる)が好適に いられる。本発明の組成物においてβ-ヒド キシ短~中鎖脂肪酸重合体としては、スピル リナから単離したものを用いても、スピルリ ナをそのまま配合してもよい。

 β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体含有量 を増したスピルリナとしては、β-ヒドロキシ 短~中鎖脂肪酸重合体、特にβ-ヒドロキシ酪 重合体を乾燥重量中0.2重量%以上、好ましく 1重量%以上、より好ましくは3重量%以上含有 するものが好適に用いられる。スピルリナに 含有されるβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 の量としては、多いほど好ましく、培養条 の調節等により含有量を増やすことができ ば特に上限は無い。例えばスピルリナ乾燥 量中20重量%以上、さらに例えば40重量%まで β-ヒドロキシ酪酸重合体を含有するものを いてもよい。

 また、ヒドロキシ脂肪酸重合体を元来生 しない微生物や植物に遺伝子組換えの技術 用いてヒドロキシ脂肪酸重合体を生産可能 する技術が開発されている(J.Bacteriol.,170,4431 -4436、5837-5847(1988)およびScience,256,520-523(1992)、 これらの文献は引用により本願に含まれる) 本発明において用いるβ-ヒドロキシ短~中鎖 肪酸重合体としては、かかる遺伝子組換技 により得られる微生物や植物が産生する重 体を用いてもよい。重合体は微生物や植物 ら単離して用いても、あるいは該重合体を 有する微生物や植物自体を用いてもよい。

 本発明のケトン体生成促進剤組成物は、 物体内におけるケトン体の生成を促進する 本明細書において「動物」とはヒトを含む 乳動物のみならず、魚類、鳥類等の脊椎動 を含む。

 脊椎動物の大腸内には、多くの種類の細 が数多く生息して細菌叢を形成しており、 の細菌は、胃や小腸で消化されなかった食 を発酵によって短鎖脂肪酸等に変え、脊椎 物はそれを吸収してエネルギーや栄養素と て利用していることが知られている。(J.Exp. Zool.Suppl.,3,55-60(1989); Physiol.Rev.,78,393-427(1998)) 大腸内の細菌叢については人や豚、羊など 哺乳類のみならず、鶏やアヒルなどの鳥類 鯉などの魚類についての研究も多くなされ 脊椎動物は全般に腸内細菌叢を有すること 解明されている(Physiol.Res.,47,259-263(1998); Comp. Biochem.Physiol.A:Mol.Integr.Physiol.,131,657-668(2002); Co mp.Biochem.Physiol.A:Mol.Integr.Physiol.,132,333-340(2002); Appl.Environ.Microbiol.,68,1374-1380(2002)、これらの 献は引用により本願に含まれる)。従って、 発明の組成物は脊椎動物に有効であり、特 哺乳類、鳥類、魚類に有用である。

 本出願において「経口投与もしくは経口 与に類する投与方法」とは、経口投与に加 て経鼻チューブ投与および胃内投与や大腸 への直接注腸等の消化管内投与を含む投与 法などを意味する。

 本発明において、β-ヒドロキシ短~中鎖脂 肪酸重合体を含む組成物は、経口投与もしく は経口投与に類する投与方法により投与され るが、経口投与がより容易で実用上好ましい 。特許文献5にて本出願人が報告したように β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体は動物の 内においては、腸内細菌によって分解され 。従って経口投与した場合でも小腸で消化 収されて血中ケトン体濃度を上昇させるの はなく、大腸まで重合体として送達され、 腸において分解され、利用される。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 体重合体の分解によって生成する水溶性のモ ノマーもしくはオリゴマーは、大腸において 分解、吸収または利用され、その結果として 肝臓におけるケトン体生成を刺激するものと 考えられる。ケトン体生成を刺激することか ら、例えばβ-ヒドロキシ酪酸重合体を投与し た場合、アセト酢酸およびβ-ヒドロキシ酪酸 の両方の血中濃度が投与開始の少なくとも12 間経過後、特に数日後よりマイルドに増加 る。

 一方、特許文献5にて示したように、本発明 に用いられるβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重 体は、長期投与した場合でも身体に対する 影響は確認されていない。従って、本発明 ケトン体生成促進剤組成物は疾患の治療乃 予防並びに健康な対象における健康状態の 持のために投与することができる。
 本発明に用いられるβ-ヒドロキシ短~中鎖脂 肪酸重合体は、真核生物の細胞膜やミトコン ドリアに存在することが知られている。動物 では血液中にアルブミン等と結合して存在す ることも既知である。(Eur.J.Biochem.,224,317-328(19 94))

 本発明のケトン体生成促進剤組成物の経口 与によって、従来から知られるケトン体生 促進により得られる種々の治療乃至予防効 並びに健康維持効果を得ることができる。 かる効果としてはアルツハイマー病、ピッ 病関連前頭側頭骨変性、血管性痴呆、レー ィ体型の老人性痴呆、前頭萎縮を伴う振せ 麻痺の痴呆、進行性核上性麻痺および大脳 質基底核変性症、ダウン症候群関連アルツ イマー、重症筋無力症ならびに筋ジストロ ィーからなる群から選択される神経変性疾 、筋萎縮性側索硬化症、てんかん、パーキ ソン病、フリーラジカル疾患、心不全、心 梗塞、狭心症、II型糖尿病、ピルビン酸デ ドロゲナーゼの欠乏もしくは遮断、1又はそ 以上の種類の細胞型における解糖の実施不 及びデュシェンヌ型筋ジストロフィー、細 代謝にとって有害な遺伝的欠陥、インシュ ン耐性又は他のグルコース代謝欠陥もしく 欠陥誘発性状態、GABA予防発作の治療または 予防および虚血、頭部外傷が介在する脳疾患 状態の抑制乃至治療、脳浮腫の抑制、脳機能 の保護、脳エネルギー代謝の調製、脳卒中の 程度の軽減などの脳機能改善などが例示され る。
 本発明の組成物は特に脳細胞損傷に起因す 疾患の治療および/または予防、特に脳卒中 の予防または治療において有用である。また 、本発明の組成物は、脳卒中の後遺症、例え ば麻痺、痺れ、痛み、言語障害、視覚障害、 感覚障害、尿失禁および情緒障害など、特に 麻痺、痺れ、痛み、尿失禁からの回復促進に 好適に用いられる。

 本発明のβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合 体を含有する組成物は哺乳動物や鳥類、魚類 などを飼育乃至養殖する際の飼料や飲料等へ 配合しても、あるいはかかる飼料や飲料等へ 配合するための添加物として提供されてもよ い。

 本発明の組成物はまた、健康状態の維持 理や疾病予防を目的とする機能性食品とし も好適に用いられる。本出願において「機 性食品」とは、サプリメント、経腸栄養剤 成分栄養剤、医療食および術後食、高齢者 食品や妊産婦・授乳婦用食品、乳幼児用食 あるいはこれらへの添加剤等を含むものと る。また、機能性食品はヒトのみならず愛 動物や家畜等のヒト以外の動物のためのも も含むものとする。

 本発明の組成物が特定の疾患の治療を目 とするヒトを含む動物用医薬組成物として 供される場合、あるいはヒトを含む動物に して、特定の疾患の予防や総合的な健康状 を維持乃至向上させるための機能性食品も くは食品や飼料への添加物として提供され 場合も本発明の範囲に含まれる。

 本発明の組成物がヒトを含む動物用医薬 成物乃至は機能性食品として提供される場 、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、舌下剤 トローチ、咀嚼可能錠剤、懸濁液等、経口 与により投与されるあるいは経口により摂 されるいかなる形態であってもよい。これ の投与製剤は、常套法により調製すること できる。また本発明の組成物は、食品や飲 等へ配合して経口摂取に供してもよい。

 本発明の組成物へ、医薬上許容される適 な添加剤を含有させてもよい。添加剤とし は特に限定されず賦形剤、希釈剤、増量剤 溶剤、潤滑剤、補助剤、結合剤、崩壊剤、 覆剤、カプセル化剤、乳化剤、分散剤、懸 剤、増粘剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤 保存剤、抗酸化剤、矯味剤、芳香剤、着色 など、製剤学に関する一般書籍に記載され いるものから必要に応じて適宜選択すれば い。

 さらに本発明の組成物には、本発明の目 に反しない限り、別種の薬効成分を適宜含 させることができる。

 本発明の組成物を飼料として調製する場合 飼料の組成としては特に限定的ではなく、 的とする対象に応じて従来から知られてい 飼料にβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を 適宜配合すればよい。本発明の飼料組成物に は、本発明の目的に反しない限り、別の生理 活性物質を配合してもよい。
 また、飼料へ配合して動物に投与させるた の飼料添加剤として調製してもよい。

 本発明に用いられる重合体が微生物、ス ルリナ等の藍藻類あるいは植物等の高等生 によって産生されるものである場合には、 -ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を含有する 微生物、藍藻類、植物等高等生物ごと配合し てもよい。かかる場合、微生物、藍藻類、植 物等高等生物自体も栄養源として有効に利用 される。

 本発明のケトン体生成促進組成物中に含 れるβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体の量 としては特に規定はなく、投与対象の種別、 体重、性別、健康状態、投与目的等によって 適宜決定されるべきである。およその目安と しては、1日あたり1mg~500mg/kg体重である。1回 与えても良いし複数回に分けて与えること できる。あるいは飼料、飲料や食品に0.01~20 重量%、好ましくは0.1~10重量%配合して与えて よい。目的に応じて増減してもよいのは当 である。

 別の態様において本発明は、β-ヒドロキ 短~中鎖脂肪酸のモノマーまたはそのオリゴ マーもしくはこれらの生理的に許容される誘 導体を大腸に送達され得る態様で含有するケ トン体生成促進剤組成物を提供する。「β-ヒ ドロキシ短~中鎖脂肪酸のオリゴマー」とは 特に断らない限り水溶性のオリゴマーを意 するものとする。好適には重合度が10未満、 特に6未満、より好ましくは重合度が3以下の のが例示される。

 「生理的に許容される誘導体」としては -ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸またはそのオリゴ マーの許容される塩や、生理的に加水分解さ れる誘導体、例えばエステルおよびアミド、 さらに水酸基がリン酸化された化合物が挙げ られる。

 塩としては、無機イオンまたは有機塩基 の塩であればよい。無機イオンとして、ナ リウム、カリウム、マグネシウム、カルシ ムや亜鉛、鉄、マンガンなどのアルカリ金 またはアルカリ土類金属、遷移金属のカチ ンが挙げられる。有機塩基として、トリメ ルアミン、トリエチルアミン、エタノール ミン、ジエタノールアミン、トリエタノー アミン等や、アルギニン、リシン、オルニ ン等の塩基性アミノ酸などが挙げられる。

 エステルとしては、例えばメチルエステル エチルエステル、イソプロピルエステル等 アルキルエステル、例えばヒドロキシエチ エステル等のヒドロキシアルキルエステル どが挙げられる。また、単糖やオリゴ糖な の糖類、グリコール、グリセロール、ポリ チレングリコールまたはポリプロピレング コールなどのポリオール化合物とのエステ も好適に用いられる。
 さらに、ヌクレオチドなどのリン酸化合物 のリン酸エステルも好適に用いられる。

 アミドとしては、例えばジエチルアミド のアルキルアミドや、オリゴペプチドとの ミドなどが挙げられる。

 「大腸に送達され得る態様で含有する組 物」としては、β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸 のモノマーまたはオリゴマーもしくはこれら の生理的に許容される誘導体を従来知られて いる大腸溶解性の製剤や除放剤、カプセル剤 などとしたものが例示される。

 β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を経口 投与した場合、大腸において腸内細菌叢によ ってβ-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸のモノマー たはオリゴマーまで分解され、利用される とから(特許文献5)、β-ヒドロキシ短~中鎖脂 酸またはそのオリゴマーもしくはこれらの 理的に許容される誘導体を、大腸へ到達さ 得る形で含有する組成物は、本発明のβ-ヒ ロキシ短~中鎖脂肪酸重合体を含有する組成 物と同様の作用を有する。従って、β-ヒドロ キシ短~中鎖脂肪酸またはそのオリゴマーも くはこれらの生理的に許容される誘導体を 大腸へ到達され得る形で含有するケトン体 成促進剤組成物は、上記と同様の用途にお て上記と同様の用量にて用いることが可能 ある。

 以下実施例により本発明をさらに詳細に説 する。
実施例1:分子量と水溶性・加水分 性
 発酵により製造した(β-ヒドロキシ酪酸-β- ドロキシ吉草酸)共重合体(GPCポリスチレン換 算重量平均分子量Mw=560,000。数平均分子量Mn=23 8,000。β-ヒドロキシ吉草酸=5.4モル%<NMR測定& gt;。PHBV-1)10gをクロロホルム250mlに溶解させ、 濃塩酸2mlを加えて7時間加熱還流した。次い 30%過酸化水素水を6.4ml添加し、加熱環流を更 に8時間続けた。水で中性になるまで洗浄し 後、クロロホルム層を回収しエバポレーシ ンしてPHBV-2を回収した。ゲルパーミエーシ ンクロマトグラフィー(東ソー(株)GPC HLC-8020/ カラムTSKgel MultiporeHXL-M )で重量平均分子量=1 3,600、数平均分子量=5,600(ポリスチレン換算) 測定された。

 回収したPHBV-2のうち8gを200mlのクロロホル ムへ溶解し、30%過酸化水素水を2.56ml添加し、 加熱環流を8時間行なうことを2回繰返した後 上記と同様にしてPHBV-3を回収した。PHBV-3は 量平均分子量=3,700、数平均分子量=1,250(ポリ スチレン換算)であった。

 回収したPHBV-3のうち2gを50mlのクロロホル へ溶解し、濃塩酸を0.2mlを添加して、4時間 に30%過酸化水素水を0.64ml添加し加熱還流す ことを4回繰返して、重量平均分子量=860、 平均分子量=490(ポリスチレン換算)のPHBV-4を た。

 PHBV-1~PHBV-4それぞれを100mg付近で秤量し、37 の水50ml中へ投入し、6時間振とうした。PHBV-1 、PHBV-2およびPHBV-3は6時間後に濾過回収し、 燥させて重量を測定したところ、水中へ投 した重量からの減量は4%未満であり、水中へ 投入した重合体重量と回収された重合体重量 の差は誤差範囲内であった。従って、PHBV-1、 PHBV-2およびPHBV-3は水に不溶である。
 一方、PHBV-4は水中へ投入した2時間後には、 目視でほぼ全量が溶解したことが確認され、 PHBV-4が水溶性であることが確認された。

 次いで水に不溶であることが確認されたP HBV-1~PHBV-3の胃および小腸における加水分解性 や酵素分解性を調べた。

 それぞれ100mg付近で秤量し、以下の胃や 腸のpH環境を模した酵素水溶液(0.1重量%濃度) 50ml中に投入し、37℃で所定時間(胃を想定:6時 間、小腸を想定:10時間)振とう後にろ過回収 た。PHBV-1、PHBV-2およびPHBV-3のいずれの場合 96%以上の回収率で回収され、操作誤差範囲 で分解は認められなかった。

 本試験により、水に不溶な分子量のもの 、胃や小腸の酸・アルカリ性環境や消化酵 によって分解されないことを確認した。

 使用した市販酵素の水溶液は以下の通りで る。
 ペプシン:胃液類似液(塩酸水溶液pH=1.5)
 アミラーゼ:胃液類似液(塩酸水溶液pH=5.5、 化カルシウム0.03重量%)
 トリプシン:腸液類似液(炭酸水素ナトリウ 水溶液pH=8.0)
 リパーゼ:腸液類似液(炭酸水素ナトリウム 溶液pH=7.5、塩化カルシウム0.03重量%)

実施例2:(β-ヒドロキシ酪酸-β-ヒ ロキシ吉草酸)共重合体摂取後のβ-ヒドロキ 酪酸の血中濃度の変化
使用動物:Sprague-Dawley系雄性SPFラット(日本エ エルシー(株)、浜松)8週齢(n=3)
基礎飼料:市販粉末飼料CE-2(日本クレア(株),東 京)
給水:自由摂取
飼育環境:温度23℃、湿度50%、毎日8時~20時に 光灯点灯。
飼育:4日間施設馴致後群分けし、対照群・試 群ともに、基礎飼料を10時から17時まで自由 摂取させる時間制限給餌に7日間馴致した。 験開始日の給餌直前に尾部より末梢血を採 した。対照群には引続き基礎飼料を、試験 には基礎飼料に(β-ヒドロキシ酪酸-β-ヒドロ キシ吉草酸)共重合体(GPCポリスチレン換算重 平均分子量=560,000。β-ヒドロキシ吉草酸=5.4 ル%。PHBV-1)を5wt%添加したものを、時間制限 餌した。4時間毎に尾部より末梢血の採血を 行い、血中のβ-ヒドロキシ酪酸の濃度変化を 観察した。血中β-ヒドロキシ酪酸濃度は常法 により得られた末梢血から血清を分離し、こ れをPBS(pH7.4)で希釈したものを(株)日本医学臨 床検査研究所(京都)にて酵素サイクリング法 測定した。

結果:給餌直前(0時間)のβ-ヒドロキシ酪酸 度は、17時間絶食後であることからβ-ヒドロ キシ酪酸を空腹時のエネルギー源として使う 代謝が働き、上昇していた。PHBV-1を含む飼料 を7時間自由摂取させたが、摂取中および摂 開始から12時間迄にはβ-ヒドロキシ酪酸濃度 は試験群、対照群間で差が無かった。

実施例3:ケトン体生成(Ketogenesis)促 進効果
使用動物:Sprague-Dawley系雄性ラット(SPF)(日本エ スエルシー(株)、浜松)8週齢(n=3)
基礎飼料:市販粉末飼料CE-2(日本クレア(株),東 京)
給水:自由摂取
飼育環境:温度23℃、湿度50%、毎日8時~20時に 光灯点灯。
飼育:4日間施設馴致後群分けし、対照群は基 飼料を、試験群は基礎飼料にPHBV-1を5重量% 加したものを2週間自由摂取させた。最終日 朝解剖し、腹部大動脈から採血し血清を得 。肝臓は、氷冷下細断してよく混合し、0.1g をマイクロチューブに投入した。PBS(pH7.4)に0. 1mMのEDTA2Naを加えた溶液を0.9ml加えて、氷冷下 、肝臓組織をホモジナイズした。遠心分離後 後、上澄を得た。血清と上澄中のケトン体( セト酢酸AcAcおよびβ-ヒドロキシ酪酸HB)を(株 )日本医学臨床検査研究所(京都)において酵素 サイクリング法で測定した。

結果:PHBV-1を2週間連続して摂取を続けるこ で、動脈中および肝臓中のケトン体濃度が 加した。肝臓はケトン体を代謝できず生産 る器官であることから、ケトン体の濃度の 加は、肝臓におけるケトン体産生が促進さ たことが示唆される。

   1)ホモジナイズ肝臓細胞0.1g+PBS0.9ml
   * p<0.1、** p<0.05

実施例4:脳卒中の発症予防効果
使用動物:脳卒中易発性高血圧ラットSHRSP/Izm(S PF)(日本エスエルシー(株)、浜松) 雄性9週齢(n =5)
基礎飼料:市販粉末飼料SP-2(日本エスエルシー (株)、浜松)に1wt%の食塩を添加
給水:自由摂取
飼育環境:温度23℃、湿度50%、毎日8時~20時に 光灯点灯。
飼育:4日間施設馴致後群分けし、対照群は基 飼料を、試験群は基礎飼料にPHBV-1を5重量% 加したものを自由摂取させた。前肢を持上 る、横転するなどの脳卒中の発症が認めら るまで飼育し、その発症までの期間を調べ 。

結果:
対照群の発症までの期間=15,16,27,35,36日
試験群の発症までの期間=23,26,31,37,50日
 試験群の方が、常に発症が遅くPHBV-1の脳卒 予防における効果が示唆された。

 試験群で最後に発症したラットの糞を第7 週目の1週間回収して、PHBV-1の腸内分解率を 析した。

 真空乾燥後砕いた糞をクロロホルム中で9 0分加熱環流してPHBVを抽出し、これにn-ヘキ ンを加えてPHBVを沈殿させて回収し糞中のPHBV 含有率を測定した。PHBVの糞中回収量と摂取 から計算したPHBVの腸内分解率は6.0%であった 。

実施例5:脳卒中後遺症の回復促進 果
患者1
 出血性脳卒中発症後、4年1ヶ月経過した50歳 男性。右半身に麻痺と痺れや疼痛の後遺症が あり2級身体障害者認定を受けている。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体の投与
 容量0.3gの1号カプセルに充填したβ-ヒドロ シ酪酸重合体(発酵で製造。重量平均分子量8 39,000)を1日に1カプセル服用させた。
結果
 投与開始4日目から痺れが軽減する時間が現 れ始めた。2週間後には痺れや鈍痛が軽くな たことを明白に自覚するようになった。1日 うちで痺れ感や鈍痛のない時間が徐々に増 、6ヶ月後には全く解消した。
 この痺れや鈍痛の軽減に並行して、筋肉や 体の緊張が弛むのを感じるようになった。 の弛緩(リラクセーション)によって、麻痺 ている部位を自分で動かしたという主動感 持って動かすことができるようになった。
 リハビリテーションを重ねることで動きが 々によくなり、3ヶ月後には、右腕や右足な どの麻痺が軽減したのが実感でき、自力でほ ぼ通常生活を送ることができるようになった 。
 さらに痺れと同時に尿失禁があったが、β- ドロキシ酪酸重合体服用開始後8日目から失 禁回数が急速に減り、2週間後には全く尿失 が無くなった。
患者2
 出血性脳卒中発症後、3年経過した60歳男性 右足に麻痺及び鈍痛、唇の右側に麻痺の後 症あり。
β-ヒドロキシ短~中鎖脂肪酸重合体の投与
 容量0.3gの1号カプセルに充填した、上記β- ドロキシ酪酸重合体を1日に1カプセル服用さ せた。
結果
 投与開始8日後には痺れと鈍痛が軽減するの を自覚した。10日間の服用で止めたが、症状 もとに戻ることはなかった。

実施例6 β-ヒドロキシ短~中鎖脂 酸重合体を多く含むスピルリナの培養
 スピルリナ(Spirulina platensis)を、18リットル Kosaric培地に0.5W/V%の酢酸ナトリウムを加え 培地に入れ(スピルリナ乾燥重量として0.125g/ L,プラスチック製水槽使用)、光照射下(1日16 間、水面で900~1100ルクス)水温24℃でpHを9.3~9.6 に保つように空気をバブリングしながら25日 培養した。濾過にて採集してオーブン(70℃) で乾燥して43gの乾燥スピルリナを得た。この 乾燥スピルリナを用いてクロロホルム抽出法 で、β-ヒドロキシ酪酸重合体の含有量を調べ たところ3.1重量%であった。抽出物はNMRを用 てβ-ヒドロキシ酪酸重合体であることを確 した。

 Kosaric培地(成分(g/L)):NaHCO 3 (9.0),K 2 HPO 4 (0.25),NaNO 3 (1.25),K 2 SO 4 (0.5),NaCl(0.5),MgSO 4 ・7H 2 O(0.1),CaCl 2 (0.02),FeSO 4 ・2H 2 O(0.005),微量ミネラル水溶液0.5ml/L
微量ミネラル水溶液(成分(g/L)):H 2 BO 4 (2.86),MnCl 2 ・4H 2 O(1.81),ZnSO 4 ・7H 2 O(0.22),CuSO 4 ・5H 2 O(0.08),MoO 3 (0.01)