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Patent Searching and Data


Title:
COPPER FOIL FOR PRINTED WIRING BOARD
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/081889
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a copper foil which is to be used for a printed wiring board, has both excellent adhesiveness to an insulating board and excellent etching characteristics and suitable for fine pitches. The copper foil is provided with a copper foil base material and a coat layer which covers at least a part of the surface of the copper foil base material. In the copper foil, (1) the coat layer is composed of a Ni layer and a Cr layer which are sequentially laminated from a surface of the copper foil base material, (2) a Cr of 15-210μg/dm2 and a Ni of 15-440μg/dm2 exist in the coat layer, and (3) the maximum thickness is 0.5-5nm and the minimum thickness is 80% or more of the maximum thickness when a cross-section of the coat layer is observed by a transmission electron microscope.

Inventors:
OKANO TOMOKI (JP)
ARAIKAWA TOMOHIRO (JP)
CHUUGANJI MISATO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073256
Publication Date:
July 02, 2009
Filing Date:
December 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON MINING CO (JP)
OKANO TOMOKI (JP)
ARAIKAWA TOMOHIRO (JP)
CHUUGANJI MISATO (JP)
International Classes:
H05K1/09; C23C14/14; H05K3/00
Domestic Patent References:
WO2006087873A12006-08-24
Foreign References:
JP2007007937A2007-01-18
JP2006310359A2006-11-09
JP2006336045A2006-12-14
JPH02147235A1990-06-06
Attorney, Agent or Firm:
AXIS Patent International (13-11 Nihonbashi 3-chome, Chuo-k, Tokyo 27, JP)
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Claims:
 銅箔基材と、該銅箔基材表面の少なくとも一部を被覆する被覆層とを備えたプリント配線板用銅箔であって、
(1)該被覆層は銅箔基材表面から順に積層したNi層及びCr層で構成され、
(2)該被覆層にはCrが15~210μg/dm 2 、Niが15~440μg/dm 2 の被覆量で存在し、
(3)該被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察すると最大厚みが0.5~5nmであり、最小厚みが最大厚みの80%以上である、
プリント配線板用銅箔。
 Crの被覆量が18~150μg/dm 2 、Niの被覆量が20~195μg/dm 2 である請求項1記載のプリント配線板用銅箔。
 Crの被覆量が30~100μg/dm 2 、Niの被覆量が40~180μg/dm 2 である請求項1記載のプリント配線板用銅箔。
 銅箔基材は圧延銅箔である請求項1~3何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 プリント配線板はフレキシブルプリント配線板である請求項1~4何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 ポリイミド前駆体であるポリアミック酸溶液を乾燥体で25μmになるよう被覆層上に塗布し、空気下乾燥機で130℃30分でイミド化する工程と、更に窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉において350℃30分でイミド化する工程とを経てポリイミドを被覆層上に製膜し、次いで、温度150℃で空気雰囲気下の高温環境下に168時間放置してからポリイミドフィルムを180°剥離法(JIS C 6471 8.1)に従って被覆層から剥離した後の被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察すると最大厚みが0.5~5nmであり、最小厚みが最大厚みの70%以上である請求項1~5何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた全クロム及び酸素の深さ方向(x:単位nm)の原子濃度(%)をそれぞれf(x)、g(x)とすると、区間[1.0、2.5]において、0.6≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦2.2を満たす請求項1~6何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた金属クロム及びクロム酸化物の深さ方向(x:単位nm)の原子濃度(%)をそれぞれf 1 (x)、f 2 (x)とすると、区間[0、1.0]において、0.1≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦1.0を満たし、区間[1.0、2.5]において、0.8≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦2.0を満たす請求項1~7何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 XPSによる表面からの深さ方向分析から得られた深さ方向(x:単位nm)のクロムの原子濃度(%)をf(x)とし、酸素の原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x)すると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx)が1.0%以下である請求項1~8何れか一項記載のプリント配線板用銅箔。
 スパッタリング法によって銅箔基材表面の少なくとも一部を厚さ0.2~5.0nmのNi層及び厚さ0.2~3.0nmのCr層で順に被覆することを含むプリント配線板用銅箔の製造方法。
 請求項1~9何れか一項記載の銅箔を備えた銅張積層板。
 銅箔がポリイミドに接着している構造を有する請求項11記載の銅張積層板。
 請求項11又は12記載の銅張積層板を材料としたプリント配線板。
Description:
プリント配線板用銅箔

 本発明はプリント配線板用の銅箔に関し 特にフレキシブルプリント配線板用の銅箔 関する。

 プリント配線板はここ半世紀に亘って大 な進展を遂げ、今日ではほぼすべての電子 器に使用されるまでに至っている。近年の 子機器の小型化、高性能化ニーズの増大に い搭載部品の高密度実装化や信号の高周波 が進展し、プリント配線板に対して導体パ ーンの微細化(ファインピッチ化)や高周波 応等が求められている。

 プリント配線板は銅箔に絶縁基板を接着 せて銅張積層板とした後に、エッチングに り銅箔面に導体パターンを形成するという 程を経て製造されるのが一般的である。そ ため、プリント配線板用の銅箔には絶縁基 との接着性やエッチング性が要求される。

 絶縁基板との接着性を向上させるために 化処理と呼ばれる銅箔表面に凹凸を形成す 表面処理を施すことが一般に行われている 例えば電解銅箔のM面(粗面)に硫酸銅酸性め き浴を用いて、樹枝状又は小球状に銅を多 電着せしめて微細な凹凸を形成し、投錨効 によって接着性を改善させる方法がある。 化処理後には接着特性を更に向上させるた にクロメート処理やシランカップリング剤 よる処理等が一般的に行われている。

 銅箔表面に錫、クロム、銅、鉄、コバル 、亜鉛、ニッケル等の金属層又は合金層を 成する方法も知られている。

 特開2000-340911号公報には、蒸着形成によ プリント配線板用銅箔表面に金属クロム層 形成することにより基材と銅箔との接着強 が改善されることが記載されている。

 特開2007-207812号公報には、銅箔の表面にNi -Cr合金層を形成し、この合金層の表面に所定 厚みの酸化物層を形成させることにより、銅 層表面が平滑でアンカー効果が少ない状態に おいても樹脂基材との接着性が大幅に向上す ることが記載されている。そして、表面に厚 み1~100nmのNi-Cr合金層が蒸着形成され、該合金 層の表面に厚み0.5~6nmのCr酸化物層が形成され 、かつ最表面の平均表面粗さRzJISが2.0μm以下 ある、プリント配線基板用銅箔が開示され いる。

 特開2006-222185号公報には、ポリイミド系フ キシブル銅張積層板用表面処理銅箔におい 、(1)Ni量にして0.03~3.0mg/dm 2 含有するNi層又は/及びNi合金層、(2)Cr量にし 0.03~1.0mg/dm 2 含有するクロメート層、(3)Cr量にして0.03~1.0mg /dm 2 含有するCr層又は/Cr合金層、(4)Ni量にして0.03~ 3.0mg/dm 2 含有するNi層又は/及びNi合金層の上に、Cr量 して0.03~1.0mg/dm 2 含有するクロメート層、(5)Ni量にして0.03~3.0mg /dm 2 含有するNi層又は/及びNi合金層の上にCr量に て0.03~1.0mg/dm 2 含有するCr層又は/及びCr合金層を表面処理層 して設けることによって、ポリイミド系樹 層との間で高いピール強度を有し、絶縁信 性、配線パターン形成時のエッチング特性 屈曲特性の優れたポリイミド系フレキシブ 銅張積層板用銅箔が得られることが記載さ ている。上記のNi量やCr量から表面処理層の 厚みを推定するとμmオーダーである。また、 実施例では電気めっきを利用して表面処理層 を設けたことが記載されている。

特開2000-340911号公報

特開2007-207812号公報

特開2006-222185号公報

 粗化処理により接着性を向上させる方法 はファインライン形成には不利である。す わち、ファインピッチ化により導体間隔が くなると、粗化処理部がエッチングによる 路形成後に絶縁基板に残留し、絶縁劣化を こすおそれがある。これを防止するために 化表面すべてをエッチングしようとすると いエッチング時間を必要とし、所定の配線 が維持できなくなる。

 銅箔表面にNi層やNi-Cr合金層を設ける方法 では、絶縁基板との接着性という基本特性に おいて改善の余地が大きい。特許文献2には Ni-Cr合金層を設けることで、銅箔の表面を平 滑にしても樹脂基材との接着性が高くできる 旨の記載があるが未だ改善の余地がある。

 銅箔表面にCr層を設ける方法では、比較 高い接着性が得られる。しかしながら、Cr層 はエッチング性に改善の余地がある。すなわ ち、Cr層はNi層よりも接着性が高いが、Crはエ ッチング性に劣るため、導体パターン形成の ためのエッチング処理を行った後に、Crが絶 基板面に残る「エッチング残り」が生じや い。また、耐熱性が十分でなく、高温環境 に置かれた後に絶縁基板との接着性が有意 低下するという問題もある。このため、プ ント配線板のファインピッチ化が進展して く状況下では、有望な手法とは言い難い。 方、クロメート層では接着性に改善の余地 ある。

 特許文献3に記載の、Ni量にして0.03~3.0mg/dm 2 含有するNi層又は/及びNi合金層の上にCr量に て0.03~1.0mg/dm 2 含有するCr層又は/及びCr合金層を表面処理層 して設けるという手法は、比較的高い接着 とエッチング性が得られるが、特性の改善 余地はやはり残っている。

 そこで、本発明は絶縁基板との接着性及 エッチング性の両方に優れ、ファインピッ 化に適したプリント配線板用銅箔を提供す ことを課題とする。また、本発明はそのよ なプリント配線板用銅箔の製造方法を提供 ることを別の課題とする。

 従来、被覆層を薄くすると接着強度が低 するということが一般的な理解であった。 かしながら、本発明者らは、鋭意検討の結 、銅箔基材表面に順にNi層及びCr層をナノメ ートルオーダーの極薄の厚みで均一に設けた 場合には、優れた絶縁基板との密着性が得ら れることを見出した。厚みを極薄にすること でエッチング性の低いCrの使用量が削減され また、被覆層が均一であることからエッチ グ性に有利である。

 以上の知見を基礎として完成した本発明は 側面において、
 銅箔基材と、該銅箔基材表面の少なくとも 部を被覆する被覆層とを備えたプリント配 板用銅箔であって、
(1)該被覆層は銅箔基材表面から順に積層した Ni層及びCr層で構成され、
(2)該被覆層にはCrが15~210μg/dm 2 、Niが15~440μg/dm 2 の被覆量で存在し、
(3)該被覆層の断面を透過型電子顕微鏡によっ て観察すると最大厚みが0.5~5nmであり、最小 みが最大厚みの80%以上である、
プリント配線板用銅箔である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の一実 形態においては、Crの被覆量が18~150μg/dm 2 、Niの被覆量が20~195μg/dm 2 である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の別の 実施形態においては、Crの被覆量が30~100μg/d m 2 、Niの被覆量が40~180μg/dm 2 である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更 別の一実施形態においては、銅箔基材は圧 銅箔である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更 別の一実施形態においては、プリント配線 はフレキシブルプリント配線板である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更 別の一実施形態においては、ポリイミド前 体であるポリアミック酸溶液を乾燥体で25μ mになるよう被覆層上に塗布し、空気下乾燥 で130℃30分でイミド化する工程と、更に窒素 流量を10L/minに設定した高温加熱炉において35 0℃30分でイミド化する工程とを経てポリイミ ドを被覆層上に製膜し、次いで、温度150℃で 空気雰囲気下の高温環境下に168時間放置して からポリイミドフィルムを180°剥離法(JIS C 6 471 8.1)に従って被覆層から剥離した後の被覆 層の断面を透過型電子顕微鏡によって観察す ると最大厚みが0.5~5nmであり、最小厚みが最 厚みの70%以上である。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更 別の一実施形態においては、 XPSによる表 からの深さ方向分析から得られた全クロム び酸素の深さ方向(x:単位nm)の原子濃度(%)を れぞれf(x)、g(x)とすると、区間[1.0、2.5]にお て、0.6≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦2.2を満たす。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更に の一実施形態においては、XPSによる表面か の深さ方向分析から得られた金属クロム及 クロム酸化物の深さ方向(x:単位nm)の原子濃 (%)をそれぞれf 1 (x)、f 2 (x)とすると、区間[0、1.0]において、0.1≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦1.0を満たし、区間[1.0、2.5]において、0. 8≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦2.0を満たす。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔の更 別の一実施形態においては、XPSによる表面 らの深さ方向分析から得られた深さ方向(x: 位nm)のクロムの原子濃度(%)をf(x)とし、酸素 の原子濃度(%)をg(x)とし、銅の原子濃度(%)をh( x)とし、ニッケルの原子濃度(%)をi(x)とし、炭 素の原子濃度(%)をj(x)すると、区間[0、1.0]に いて、∫h(x)dx/(∫f(x)dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx  + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx)が1.0%以下である。

 本発明は別の一側面において、スパッタ ング法によって銅箔基材表面の少なくとも 部を厚さ0.2~5.0nmのNi層及び厚さ0.2~3.0nmのCr層 で順に被覆することを含むプリント配線板用 銅箔の製造方法である。

 本発明は更に別の一側面において、本発 に係る銅箔を備えた銅張積層板である。

 本発明に係る銅張積層板の一実施形態に いては、銅箔がポリイミドに接着している 造を有する。

 本発明は更に別の一側面において、本発 に係る銅張積層板を材料としたプリント配 板である。

 本発明によれば、絶縁基板との接着性及 エッチング性の両方に優れたプリント配線 用銅箔が得られる。

例1のNo.2の銅箔についてのXPSによるデ スプロファイルである。 Crを2nmスパッタした銅箔についてのXPS よるデプスプロファイルである。 例1のNo.2の銅箔についてのTEM写真であ 。 例1のNo.2の銅箔について、クロムを金 クロムと酸化クロムに分離したときのXPSに るデプスプロファイルである。

符号の説明

1 TEM観察時の被覆層の厚み

1.銅箔基材
 本発明に用いることのできる銅箔基材の形 に特に制限はないが、典型的には圧延銅箔 電解銅箔の形態で用いることができる。一 的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチ ンやステンレスのドラム上に銅を電解析出 て製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる 性加工と熱処理を繰り返して製造される。 曲性が要求される用途には圧延銅箔を適用 ることが多い。
 銅箔基材の材料としてはプリント配線板の 体パターンとして通常使用されるタフピッ 銅や無酸素銅といった高純度の銅の他、例 ばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加 した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン 銅合金のような銅合金も使用可能である。 お、本明細書において用語「銅箔」を単独 用いたときには銅合金箔も含むものとする

 本発明に用いることのできる銅箔基材の さについても特に制限はなく、プリント配 板用に適した厚さに適宜調節すればよい。 えば、5~100μm程度とすることができる。但 、ファインパターン形成を目的とする場合 は30μm以下、好ましくは20μm以下であり、典 的には10~20μm程度である。

 本発明に使用する銅箔基材には粗化処理 しないのが好ましい。従来は特殊めっきで 面にμmオーダーの凹凸を付けて表面粗化処 を施し、物理的なアンカー効果によって樹 との接着性を持たせるケースが一般的であ た。しかしながら一方でファインピッチや 周波電気特性は平滑な箔が良いとされ、粗 箔では不利な方向に働くからである。また 粗化処理工程が省略されるので、経済性・ 産性向上の効果もある。従って、本発明で 用される箔は、特別に粗化処理をしない箔 ある。

2.被覆層
 銅箔基材の表面の少なくとも一部はNi層及 Cr層で順に被覆される。Ni層及びCr層は被覆 を構成する。被覆する箇所には特に制限は いが、絶縁基板との接着が予定される箇所 するのが一般的である。被覆層の存在によ て絶縁基板との接着性が向上する。一般に 銅箔と絶縁基板の間の接着力は高温環境下 置かれると低下する傾向にあるが、これは が表面に熱拡散し、絶縁基板と反応するこ により引き起こされると考えられる。本発 では、予め銅の拡散防止に優れるNi層を銅箔 基材の上に設けたことで、銅の熱拡散が防止 できる。また、Ni層よりも絶縁基板との接着 に優れたCr層をNi層の上に設けることで更に 絶縁基板との接着性を向上することができる 。Cr層の厚さはNi層の存在のおかげで薄くで るので、エッチング性への悪影響を軽減す ことができる。なお、本発明でいう接着性 は常態での接着性の他、高温下に置かれた の接着性(耐熱性)及び高湿度下に置かれた後 の接着性(耐湿性)のことも指す。

 本発明に係るプリント配線板用銅箔にお ては、被覆層は極薄で厚さが均一である。 のような構成にしたことで絶縁基板との接 性が向上した理由は明らかではないが、Ni 覆の上に最表面として樹脂との接着性に非 に優れているCr単層被膜を形成したことで、 イミド化時の高温熱履歴後(約350℃にて数時 程度)も高接着性を有する単層被膜構造を保 しているためと推測される。また、被覆層 極薄にするとともにNiとCrの二層構造として Crの使用量を減らしたことにより、エッチン 性が向上したと考えられる。

 具体的には、本発明に係る被覆層は以下 構成を有する。

(1)Cr、Ni被覆層の同定
 本発明においては、銅箔素材の表面の少な とも一部はNi層及びCr層の順に被覆される。 これら被覆層の同定はXPS、若しくはAES等表面 分析装置にて表層からアルゴンスパッタし、 深さ方向の化学分析を行い、夫々の検出ピー クの存在によってNi層及びCr層を同定するこ ができる。また、夫々の検出ピークの位置 ら被覆された順番を確認することができる

(2)付着量
 一方、これらNi層及びCr層は非常に薄いため 、XPS、AESでは正確な厚さの評価が困難である 。そのため、本願発明においては、Ni層及びC r層の厚さは特許文献3と同様に単位面積当た の被覆金属の重量で評価することとした。 発明に係る被覆層にはCrが15~210μg/dm 2 、Niが15~440μg/dm 2 の被覆量で存在する。Crが15μg/dm 2 未満だと十分なピール強度が得られず、Crが2 10μg/dm 2 を超えるとエッチング性が有意に低下する傾 向にある。Niが15μg/dm 2 未満だと十分なピール強度が得られず、Niが4 40μg/dm 2 を超えるとエッチング性が有意に低下する傾 向にある。Crの被覆量は好ましくは18~150μg/dm 2 、より好ましくは30~100μg/dm 2 であり、Niの被覆量は好ましくは20~195μg/dm 2 、より好ましくは40~180μg/dm 2 、典型的には40~100μg/dm 2 である。

(3)透過型電子顕微鏡(TEM)による観察
 本発明に係る被覆層の断面を透過型電子顕 鏡によって観察したとき、最大厚さは0.5nm~5 nm、好ましくは1~4nmであり、最小厚さが最大 さの80%以上、好ましくは85%以上で、非常に らつきの少ない被覆層である。被覆層厚さ 0.5nm未満だと耐熱試験、耐湿試験において、 ピール強度の劣化が大きく、厚さが5nmを超え ると、エッチング性が低下するためである。 厚さの最小値が最大値の80%以上である場合、 この被覆層の厚さは、非常に安定しており、 耐熱試験後も殆ど変化がない。TEMによる観察 では被覆層中のNi層及びCr層の明確な境界は 出しにくく、単層のように見える(図3参照) 本発明者の検討結果によればTEM観察で見出 れる被覆層はCrを主体とする層と考えられ、 Ni層はその銅箔基材側に存在するとも考えら る。そこで、本発明においては、TEM観察し 場合の被覆層の厚さは単層のように見える 覆層の厚さと定義する。ただし、観察箇所 よっては被覆層の境界が不明瞭なところも 在し得るが、そのような箇所は厚みの測定 所から除外する。本発明の構成により、Cu 拡散が抑制されるため、安定した厚さを有 ると考えられる。本発明の銅箔は、ポリイ ドフィルムと接着し、耐熱試験(温度150℃で 気雰囲気下の高温環境下に168時間放置)を経 た後に樹脂を剥離した後においても、被覆層 の厚さは殆ど変化なく、最大厚さが0.5~5.0nmで あり、最小厚さにおいても最大厚さの70%以上 、好ましくは80%維持されることが可能である 。

(4)被覆層表面の酸化状態
 まず、被覆層最表面(表面から0~1.0nmの範囲) は内部の銅が拡散していないことが、接着 度を高める上では望ましい。従って、本発 に係るプリント配線板用銅箔では、XPSによ 表面からの深さ方向(x:単位nm)のクロムの原 濃度(%)をf(x)とし、酸素の原子濃度(%)をg(x) し、銅の原子濃度(%)をh(x)とし、ニッケルの 子濃度(%)をi(x)とし、炭素の原子濃度(%)をj(x )すると、区間[0、1.0]において、∫h(x)dx/(∫f(x )dx + ∫g(x)dx + ∫h(x)dx + ∫i(x)dx + ∫j(x)dx) を1.0%以下とするのが好ましい。

 また、被覆層最表面においては、クロムは 属クロムとクロム酸化物が両方存在してい が、内部の銅の拡散を防止し、接着力を確 する観点では金属クロムの方が望ましいも の、良好なエッチング性を得る上ではクロ 酸化物の方が望ましい。そこで、エッチン 性と接着力の両立を図る上では、XPSによる 面からの深さ方向分析から得られた金属ク ム及び酸化クロムの深さ方向(x:単位nm)の原 濃度(%)をそれぞれf 1 (x)、f 2 (x)とすると、区間[0、1.0]において、0.1≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦1.0を満たすことが好ましい。

 一方、被覆層最表面のすぐ下の深さ1.0~2.5nm おいては、酸素濃度が小さく、クロムが金 状態で存在していることが望ましい。クロ は酸化された状態よりも金属状態のほうが 部の銅の拡散を防ぐ能力が高く、耐熱性を 上させることができるからである。ただし 酸素を厳密に制御することに伴うコストや 最表面にはある程度酸素が存在してクロム 酸化されているほうがエッチング性がよい いった観点からは、そのすぐ下の層におい 完全に酸素を消滅することは現実的ではな 。従って、本発明に係るプリント配線板用 箔は、XPSによる表面からの深さ方向分析か 得られた全クロム及び酸素の深さ方向(x:単 nm)の原子濃度(%)をそれぞれf(x)、g(x)とする 、区間[1.0、2.5]において、0.6≦∫f(x)dx/∫g(x)d x≦2.2を満たすのが好ましく、0.8≦∫f(x)dx/∫g (x)dx≦1.8を満たすのがより好ましく、典型的 は1.0≦∫f(x)dx/∫g(x)dx≦1.5である。また、区 間[1.0、2.5]において、0.8≦∫f 1 (x)dx/∫f 2 (x)dx≦2.0であるのが好ましい。

 クロム濃度及び酸素濃度はそれぞれ、XPSに る表面からの深さ方向分析から得られたCr2p 軌道及びO1s軌道のピーク強度から算出する。 また、深さ方向(x:単位nm)の距離は、SiO 2 換算のスパッタレートから算出した距離とす る。クロム濃度はクロム酸化物濃度と金属ク ロム濃度の合計値であり、クロム酸化物濃度 と金属クロム濃度に分離して解析することが 可能である。

3.本発明に係る銅箔の製法
 本発明に係るプリント配線板用銅箔は、ス ッタリング法により形成することができる すなわち、スパッタリング法によって銅箔 材表面の少なくとも一部を、厚さ0.2~5.0nm、 ましくは0.25~2.5nm、より好ましくは0.5~2.0nmの Ni層及び厚さ0.2~3.0nm、好ましくは0.25~2.0nm、よ り好ましくは0.5~1.5nmのCr層で順に被覆するこ により製造することができる。電気めっき このような極薄の被膜を積層すると、厚さ ばらつきが生じ、耐熱・耐湿試験後にピー 強度が低下しやすい。
 ここでいう厚さとは上述したXPSやTEMによっ 決定される厚さではなく、スパッタリング 成膜速度から導き出される厚さである。あ スパッタリング条件下での成膜速度は、1μm (1000nm)以上スパッタを行い、スパッタ時間と パッタ厚さの関係から計測することができ 。当該スパッタリング条件下での成膜速度 計測できたら、所望の厚さに応じてスパッ 時間を設定する。なおスパッタは、連続又 バッチ何れで行っても良く、被覆層を本発 で規定するような厚さで均一に積層するこ ができる。スパッタリング法としては直流 グネトロンスパッタリング法が挙げられる

4.プリント配線板の製造
 本発明に係る銅箔を用いてプリント配線板( PWB)を常法に従って製造することができる。 下に、プリント配線板の製造例を示す。

 まず、銅箔と絶縁基板を貼り合わせて銅 積層板を製造する。銅箔が積層される絶縁 板はプリント配線板に適用可能な特性を有 るものであれば特に制限を受けないが、例 ば、リジッドPWB用に紙基材フェノール樹脂 紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポ シ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹 、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキ 樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂等を使 し、FPC用にポリエステルフィルムやポリイ ドフィルム等を使用する事ができる。

 貼り合わせの方法は、リジッドPWB用の場 、ガラス布などの基材に樹脂を含浸させ、 脂を半硬化状態まで硬化させたプリプレグ 用意する。プリプレグと銅箔の被覆層を有 る面を重ね合わせて加熱加圧させることに り行うことができる。

 フレキシブルプリント配線板(FPC)用の場 、ポリイミドフィルム又はポリエステルフ ルムと銅箔の被覆層を有する面をエポキシ やアクリル系の接着剤を使って接着するこ ができる(3層構造)。また、接着剤を使用し い方法(2層構造)としては、ポリイミドの前 体であるポリイミドワニス(ポリアミック酸 ニス)を銅箔の被覆層を有する面に塗布し、 加熱することでイミド化するキャスティング 法や、ポリイミドフィルム上に熱可塑性のポ リイミドを塗布し、その上に銅箔の被覆層を 有する面を重ね合わせ、加熱加圧するラミネ ート法が挙げられる。キャスティング法にお いては、ポリイミドワニスを塗布する前に熱 可塑性ポリイミド等のアンカーコート材を予 め塗布しておくことも有効である。

 本発明に係る銅箔の効果はキャスティン 法を採用してFPCを製造したときに顕著に表 る。すなわち、接着剤を使用せずに銅箔と 脂とを貼り合わせようとするときには銅箔 樹脂への接着性が特に要求されるが、本発 に係る銅箔は樹脂、とりわけポリイミドと 接着性に優れているので、キャスティング による銅張積層板の製造に適しているとい る。

 本発明に係る銅張積層板は各種のプリン 配線板(PWB)に使用可能であり、特に制限さ るものではないが、例えば、導体パターン 層数の観点からは片面PWB、両面PWB、多層PWB(3 層以上)に適用可能であり、絶縁基板材料の 類の観点からはリジッドPWB、フレキシブルPW B(FPC)、リジッド・フレックスPWBに適用可能で ある。

 銅張積層板からプリント配線板を製造す 工程は当業者に周知の方法を用いればよく 例えばエッチングレジストを銅張積層板の 箔面に導体パターンとしての必要部分だけ 塗布し、エッチング液を銅箔面に噴射する とで不要銅箔を除去して導体パターンを形 し、次いでエッチングレジストを剥離・除 して導体パターンを露出することができる

 以下、本発明の実施例を示すが、これら 本発明をより良く理解するために提供する のであり、本発明が限定されることを意図 るものではない。

例1
 銅箔基材として、厚さ18μmの圧延銅箔(日鉱 属製C1100)及び電解銅箔の無粗化処理箔を用 した。圧延銅箔と電解銅箔の表面粗さ(Rz)は それぞれ0.7μm、1.5μmだった。

 この銅箔の片面に対して、以下の条件であ かじめ銅箔基材表面に付着している薄い酸 膜を逆スパッタにより取り除き、Ni層及びCr 層を順に成膜した。被覆層の厚さは成膜時間 を調整することにより変化させた。また、幾 つかの例ではNi-Cr合金層を成膜した。
・装置:バッチ式スパッタリング装置(アルバ ク社、型式MNS-6000)
・到達真空度:1.0×10 -5 Pa
・スパッタリング圧:0.2Pa
・逆スパッタ電力:100W
・ターゲット:
 Ni層用=Ni(純度3N)
 Cr層用=Cr(純度3N)
 Ni-Cr合金層用=Ni:80質量%、Cr20質量%のNi-Cr合金 (比較例No.9)
・スパッタリング電力:50W
・成膜速度:各ターゲットについて一定時間 2μm成膜し、3次元測定器で厚さを測定し、単 位時間当たりのスパッタレートを算出した。 (Ni:2.73nm/min、Cr:2.82nm/min)

 被覆層を設けた銅箔に対して、以下の手順 より、ポリイミドフィルムを接着した。
(1)7cm×7cmの銅箔に対しアプリケーターを用い 宇部興産製Uワニス-A(ポリイミドワニス)を 燥体で25μmになるよう塗布。
(2)(1)で得られた樹脂付き銅箔を空気下乾燥機 で130℃30分でイミド化。
(3)窒素流量を10L/minに設定した高温加熱炉に いて、350℃30分でイミド化。

<付着量の測定>
 50mm×50mmの銅箔表面の皮膜をHNO 3 (2重量%)とHCl(5重量%)を混合した溶液に溶解し その溶液中の金属濃度をICP発光分光分析装 (エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社 製、SFC-3100)にて定量し、単位面積当たりの金 属量(μg/dm 2 )を算出した。
<XPSによる測定>
 被覆層のデプスプロファイルを作成した際 XPSの稼働条件を以下に示す。
・装置:XPS測定装置(アルバックファイ社、型 5600MC)
・到達真空度:3.8×10 -7 Pa
・X線:単色AlKα、X線出力300W、検出面積800μmφ 試料と検出器のなす角度45°
・イオン線:イオン種Ar + 、加速電圧3kV、掃引面積3mm×3mm、スパッタリ グレート2.3nm/min(SiO 2 換算)
・XPSの測定結果において、クロム酸化物と金 属クロムの分離はアルバック社製解析ソフト Multi Pak V7.3.1を用いて行った。
<TEMによる測定>
 被覆層をTEMによって観察したときのTEMの測 条件を以下に示す。表中に示した厚みは観 視野中に写っている被覆層全体の厚みを1視 野について50nm間の厚みの最大値、最小値を 定し、任意に選択した3視野の最大値と最小 を求め、最大値、及び最大値に対する最小 の割合を百分率で求めた。また、表中、「 熱試験後」のTEM観察結果とは、試験片の被 層上に上記手順によりポリイミドフィルム 接着させた後、試験片を下記の高温環境下 置き、得られた試験片からポリイミドフィ ムを180°剥離法(JIS C 6471 8.1)に従って剥離 た後のTEM像である。図3に、TEMによるスパッ タ直後の観察写真をNo.2の銅箔について例示 に示す。
・装置:TEM(日立製作所社、型式H9000NAR)
・加速電圧:300kV
・倍率:300000倍
・観察視野:60nm×60nm

<接着性評価>
 上記のようにしてポリイミドを積層した銅 について、ピール強度を積層直後(常態)、 度150℃で空気雰囲気下の高温環境下に168時 放置した後(耐熱性)、及び温度40℃°相対湿 95%空気雰囲気下の高湿環境下に96時間放置し た後(耐湿性)の三つの条件で測定した。ピー 強度は180°剥離法(JIS C 6471 8.1)に準拠して 定した。

<エッチング性評価>
 上記のようにしてポリイミドを積層した銅 について、所定のレジストを用いてライン ンドスペース20μm/20μmの回路パターンを形 し、次にエッチング液(アンモニア水、塩化 二銅2水和物、温度40℃)を用いてエッチング 処理した。処理後の回路間の樹脂表面をEPMA 測定し、残留しているCr及びNiを分析し、以 の基準で評価した。
×:回路間全面にCr又はNiが観察された
△:回路間に部分的にCr又はNiが観察された
〇:回路間にCr又はNiが観察されなかった

 測定条件及び測定結果を表1に示す。No.1~8は 圧延銅箔に各被膜を被覆し、No.Eは電解銅箔 各被膜を被覆した。SP/SPはNi、Crともスパッ にて被覆した。No8のめっき/SPはNiが電気めっ きの例であるが、比較的層が厚いので、ある 程度のピール強度は確保できた。No.Eの電解 箔においても良好な結果が得られた。
 参考用に、XPSによるデプスプロファイルを 1のNo.2の銅箔について図1に示す。

例2(比較)
 例1で使用した圧延銅箔基材の片面にスパッ タ時間を変化させ、表2の厚さの被膜を形成 た。また、No.14、15(めっき/クロメート)にお ては、以下の条件でNi電気めっき及びクロ ート処理を順に施した。この比較例は特開20 06-222185号公報に教示された方法と比較するた めのものである。
(1)Niめっき
・めっき浴:スルファミン酸ニッケル(Ni 2+ として110g/L)、H 3 BO 3 (40g/L)
・電流密度:1.0A/dm 2
・浴温:55℃
・Ni量:95μg/dm 2 (厚み約1.1nm)
(2)クロメート処理
・めっき浴:CrO 3 (1g/L)、Zn(粉末0.4g)、Na 3 SO 4 (10g/L)
・電流密度:2.0A/dm 2
・浴温:55℃
・Cr量:37μg/dm 2 (厚み約0.5nm)

 被覆層を設けた銅箔に対して、例1と同様の 手順により、ポリイミドフィルムを接着した 。評価結果を表2に示す。比較例No16はNo8と同 にNiが電気めっきの例であるが、Ni層が薄く 、厚みがばらつくため十分なピール強度が得 られなかった。No.17は80%Ni、20%Crの合金ターゲ ットを用い、NiとCrを同時に2.5nm被覆したもの だが、ピール強度が低く、エッチング性も良 好ではなかった。
 参考用に、XPSによるデプスプロファイルをC rを2nmスパッタした銅箔について図2に示す。N o.14及び15については、厚さが不均一であるこ とが観察された。