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Title:
CU-NI-SI-CO-BASE COPPER ALLOY FOR ELECTRONIC MATERIAL AND PROCESS FOR PRODUCING THE COPPER ALLOY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/041197
Kind Code:
A1
Abstract:
This invention provides a Cu-Ni-Si-Co-base alloy possessing excellent strength, electroconductivity and press punchability. The Cu-Ni-Si-Co-base alloy is a copper alloy for an electronic material and comprises Ni: 1.0 to 2.5% by mass, Co: 0.5 to 2.5% by mass, and Si: 0.30 to 1.2% by mass with the balance consisting of Cu and unavoidable impurities. The observation of a cross section parallel to the rolling direction of the copper alloy, for a variation in composition and the area ratio of second phase particles having a diameter of not less than 0.1 μm and not more than 1 μm, shows that the middle value ρ (% by mass) of the amount of [Ni + Co + Si] is 20 (% by mass) ≤ ρ ≤ 60 (% by mass), the standard deviation σ(Ni + Co + Si) is σ(Ni + Co + Si) ≤ 30 (% by mass), and the area ratio S (%) is 1% ≤ S ≤ 10%.

Inventors:
ERA NAOHIKO (JP)
KUWAGAKI HIROSHI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/065020
Publication Date:
April 02, 2009
Filing Date:
August 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON MINING CO (JP)
ERA NAOHIKO (JP)
KUWAGAKI HIROSHI (JP)
International Classes:
C22C9/06; B21B3/00; C22F1/08; H01B1/02; H01B13/00; H01L23/50; C22F1/00
Domestic Patent References:
WO2006101172A12006-09-28
Foreign References:
JP2007100145A2007-04-19
JP2007107062A2007-04-26
JP2006283120A2006-10-19
JPS63143230A1988-06-15
JP2006233314A2006-09-07
JP2007136467A2007-06-07
JPS58123846A1983-07-23
JP2008038231A2008-02-21
JP2008248333A2008-10-16
JPH11222641A1999-08-17
JP2005532477A2005-10-27
JP2001049369A2001-02-20
JP2007092269A2007-04-12
JP3735005B22006-01-11
JP3797736B22006-07-19
JP3800279B22006-07-26
JPH10219374A1998-08-18
Other References:
See also references of EP 2194151A4
Attorney, Agent or Firm:
AXIS Patent International (13-11 Nihonbashi 3-chom, Chuo-ku Tokyo 27, JP)
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Claims:
 Ni:1.0~2.5質量%、Co:0.5~2.5質量%、Si:0.30~1.2質量%を含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる電子材料用銅合金であって、圧延方向に平行な断面で観察したときに、粒径が0.1μm以上1μm以下である第二相粒子の組成のばらつき及び面積率について、〔Ni+Co+Si〕量の中央値:ρ(質量%)が20(質量%)≦ρ≦60(質量%)、標準偏差:σ(Ni+Co+Si)がσ(Ni+Co+Si)≦30(質量%)であり、面積率:S(%)が1%≦S≦10%である電子材料用銅合金。
 粒径が10μmを超える第二相粒子が存在せず、粒径が5~10μmである第二相粒子が圧延方向に平行な断面で50個/mm 2 以下である請求項1に記載の電子材料用銅合金。
 更にCrを最大0.5質量%含有する請求項1又は2に記載の電子材料用銅合金。
 更にMg、Mn、Ag、及びPから選択される1種又は2種以上を総計で最大0.5質量%wt.%含有する請求項1~3何れか一項に記載の電子材料用銅合金。
 更にSn及びZnから選択される1種又は2種を総計で最大2.0質量%含有する請求項1~4何れか一項に記載の電子材料用銅合金。
 更にAs、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeから選択される1種又は2種以上を総計で最大2.0質量%含有する請求項1~5に記載の電子材料用銅合金。
-所望の組成をもつインゴットを溶解鋳造する工程1と、
-950℃~1050℃で1時間以上加熱後に熱間圧延を行い、熱間圧延終了時の温度を850℃以上とし、850℃から400℃までの平均冷却速度を15℃/s以上として冷却する工程2と、
-冷間圧延工程3と、
-850℃~1050℃で溶体化処理を行い、材料温度が650℃に低下するまでの平均冷却速度を1℃/s以上15℃/s未満として冷却し、650℃から400℃まで低下するときの平均冷却速度を15℃/s以上として冷却する工程4と、
-随意的な冷間圧延工程5と、
-時効処理工程6と、
-随意的な冷間圧延工程7と、
を順に行なうことを含む請求項1~6何れか一項に記載の銅合金の製造方法。
 請求項1~6の何れか一項に記載の銅合金を用いた伸銅品。
 請求項1~6の何れか一項に記載の銅合金を用いた電子機器部品。
Description:
電子材料用Cu-Ni-Si-Co系銅合金及 その製造方法

 本発明は析出硬化型銅合金に関し、とり け各種電子機器部品に用いるのに好適なCu-N i-Si-Co系銅合金に関する。

 コネクタ、スイッチ、リレー、ピン、端 、リードフレーム等の各種電子機器部品に 用される電子材料用銅合金には、基本特性 して高強度及び高導電性(又は熱伝導性)を 立させることが要求される。近年、電子部 の高集積化及び小型化・薄肉化が急速に進 、これに対応して電子機器部品に使用され 銅合金に対する要求レベルはますます高度 している。

 高強度及び高導電性の観点から、電子材 用銅合金として従来のりん青銅、黄銅等に 表される固溶強化型銅合金に替わり、析出 化型の銅合金の使用量が増加している。析 硬化型銅合金では、溶体化処理された過飽 固溶体を時効処理することにより、微細な 出物が均一に分散して、合金の強度が高く ると同時に、銅中の固溶元素量が減少し電 伝導性が向上する。このため、強度、ばね などの機械的性質に優れ、しかも電気伝導 、熱伝導性が良好な材料が得られる。

 析出硬化型銅合金のうち、コルソン系合 と一般に呼ばれるCu-Ni-Si系銅合金は比較的 い導電性、強度、及び曲げ加工性を兼備す 代表的な銅合金であり、業界において現在 発に開発が行われている合金の一つである この銅合金では、銅マトリックス中に微細 Ni-Si系金属間化合物粒子を析出させることに よって強度と導電率の向上が図れる。

 コルソン合金の更なる特性の向上を目的 して、Ni及びSi以外の合金成分の添加、特性 に悪影響を与える成分の排除、結晶組織の最 適化、析出粒子の最適化といった各種の技術 開発がなされている。

 例えば、Coを添加することによって特性が 上することが知られている。
 特開平11-222641号公報(特許文献1)には、CoはNi と同様にSiと化合物を形成し、機械的強度を 上させ、Cu-Co-Si系は時効処理させた場合に Cu-Ni-Si系合金より機械的強度、導電性共に僅 かに良くなる。そしてコスト的に許されるの であれば、Cu-Co-Si系やCu-Ni-Co-Si系を選択して よいことが記載されている。
 特表2005-532477号公報(特許文献2)には、重量 、ニッケル:1%~2.5%、コバルト0.5~2.0%、珪素:0.5 %~1.5%、および、残部としての銅および不可避 の不純物から成り、ニッケルとコバルトの合 計含有量が1.7%~4.3%、比(Ni+Co)/Siが2:1~7:1である 錬銅合金が記載されており、該鍛錬銅合金 、40%IACSを超える導電性を有するとされてい る。コバルトは珪素と組み合わされて、粒子 成長を制限し且つ耐軟化性を向上させるため に、時効硬化に有効な珪化物を形成するとさ れている。コバルト含有量が0.5%より少ない 、コバルト含有珪化物第2相の析出が不十分 なる。さらに、0.5%の最小コバルト含有量と 0.5%の最小珪素含有量とを組み合わせた場合 溶体化後の合金の粒径は20ミクロン以下に保 たれる。コバルト含有量が2.5%を超える場合 過剰の第二相粒子が析出して、加工性の減 をもたらし、および銅合金には望ましくな 強磁性特性が付与されることが記載されて る。
 国際公開第2006/101172号パンフレット(特許文 3)には、Coを含むCu-Ni-Si系合金の強度が、あ 組成条件の下で飛躍的に向上することが記 されている。具体的にはNi:約0.5~約2.5質量% Co:約0.5~約2.5質量%、及びSi:約0.30~約1.2質量%を 含有し、残部Cuおよび不可避的不純物から構 され、該合金組成中のNiとCoの合計質量のSi 対する質量濃度比([Ni+Co]/Si比)が約4≦[Ni+Co]/S i≦約5であり、該合金組成中のNiとCoの質量濃 度比(Ni/Co比)が約0.5≦Ni/Co≦約2である電子材 用銅合金が記載されている。
 また、溶体化処理において加熱後の冷却速 を意識的に高くすると、Cu-Ni-Si系銅合金の 度向上効果は更に発揮されることから、冷 速度を毎秒約10℃以上として冷却するのが効 果的であることが記載されている。

 銅マトリックス中の粗大な介在物を制御す ことが良いことも知られている。
 特開2001-49369号公報(特許文献4)には、Cu-Ni-Si 合金の成分調整を行った上で、必要に応じM g、Zn、Sn、Fe、Ti、Zr、Cr、Al、P、Mn、Ag、Beを 有させると共に、製造条件を制御・選定し マトリックス中の析出物、晶出物、酸化物 の介在物の分布の制御を行なうことにより 電子材料用銅合金として好適な素材を提供 きることが記載されている。具体的には、1. 0~4.8wt%のNi及び0.2~1.4wt%のSiを含有し、残部がCu 及び不可避的不純物からなり、そして介在物 の大きさが10μm以下であり、且つ5~10μmの大き さの介在物個数が圧延方向に平行な断面で50 /mm 2 未満であることを特徴とする強度及び導電性 の優れた電子材料用銅合金が記載されている 。
 また、該文献には半連続鋳造における鋳造 の凝固過程においてNi-Si系の粗大な晶出物 び析出物が生成することがあるため、これ 制御する方法について記載があり、「粗大 介在物は800℃以上の温度で1時間以上加熱後 熱間圧延を行ない、終了温度を650℃以上と ることにより、マトリックス中に固溶され 。しかし加熱温度が900℃以上になると大量 スケールの発生、熱間圧延時の割れの発生 いった問題が生じるため、加熱温度は800℃ 上900℃未満とするのが良い。」と記載され いる。

特開平11-222641号公報

特表2005-532477号公報

国際公開第2006/101172号パンフレット

特開2001-49369号公報

 このように、Cu-Ni-Si系合金にCoを添加する ことによって、強度や導電性が向上すること が知られているが、本発明者は、Coを添加し Cu-Ni-Si系合金の組織を観察すると、添加し い場合よりも粗大な第二相粒子が多く点在 ることを見出した。この第二相粒子は主にCo のシリサイド(コバルトの珪化物)からなる。 大な第二相粒子は強度に寄与しないばかり 、曲げ加工性に悪影響を与える。

 粗大な第二相粒子の生成は、Coを含有し いCu-Ni-Si系合金であれば抑制可能な条件で製 造しても、抑制できない。すなわち、Cu-Ni-Si- Co系合金においては、特許文献4に記載あるよ うな、800℃~900℃の温度で1時間以上加熱後に 間圧延を行い、終了温度を650℃以上とする 大な介在物の生成を抑制する方法によって 、Coシリサイドを主体とする粗大な第二相 子は充分にマトリックス中に固溶されない 更に、特許文献3に教示されているような、 体化処理において加熱後の冷却速度を高く る方法でも粗大な第二相粒子は充分に抑制 れない。

 以上のような背景から、本発明者は先に未 開の特願2007-92269にて、粗大な第二相粒子の 生成が抑制されたCu-Ni-Si-Co系合金を開示した 具体的には、Ni:1.0~2.5質量%、Co:0.5~2.5質量%、 Si:0.30~1.20質量%を含有し、残部がCu及び不可避 的不純物からなる電子材料用銅合金であって 、粒径が10μmを超える第二相粒子が存在せず 粒径が5μm~10μmである第二相粒子が圧延方向 に平行な断面で50個/mm 2 以下である電子材料用銅合金を開示した。
 該銅合金を得るには、Cu-Ni-Si-Co系合金の製 工程において、
(1)熱間圧延は950℃~1050℃で1時間以上加熱後に 行い、熱間圧延終了時の温度を850℃以上とし 、15℃/s以上で冷却すること、
(2)溶体化処理は850℃~1050℃で行い、15℃/s以上 で冷却すること、
の両者を満足することが重要である。

 一方、銅合金母材は、プレス打抜き加工す 際に金型磨耗の少ない素材が望ましい。該 明に係る銅合金は、導電性や曲げ加工性を 牲にすることなく強度を向上することがで るという有利な合金特性を奏することがで るが、プレス打抜き性の面では未だ改良の 地が残っている。
 そこで、本発明は強度、導電率及びプレス 抜き性に優れたCu-Ni-Si-Co系合金を提供する とを課題とする。また、本発明はそのよう Cu-Ni-Si-Co系合金を製造するための方法を提供 することを別の課題とする。

 金型の磨耗は、剪断加工現象を基本とし 、一般的に次のように解釈されている。ま 、剪断加工においては、ポンチの食い込み 伴ってある程度剪断変形(塑性変形)が進む 、ポンチまたはダイのいずれか一方の刃先 近から(まれには両刃先から同時に)亀裂が発 生する。次に加工の進行に伴って発生した亀 裂は成長し、後発的に発生、成長してきたも う一方の亀裂と連結して破断面が生成する。 この際、亀裂が工具刃先角より工具側面に沿 って少しずれた位置から発生するためにかえ りが発生する。このかえりが工具側面を磨耗 させ、かえり部分が母材から脱落し金属粉と して金型内部に残留した場合に、さらに金型 寿命を制限すると考えられる。

 よって、かえりの発生を減じるには、素 の塑性変形を少なく(延性を小さく)しつつ 亀裂発生の起点、または伝播を促進させる うな組織制御が重要となる。これまで、素 の延性と第二相粒子の分布に関わる検討が 多く進められ、第二相粒子の増加に伴い延 が低下し、金型磨耗を低減できることは公 である(特許第3735005号、特許3797736号、特許 3800279号)。例えば、特開平10-219374号公報では 、大きさ0.1μmから100μmまで、好ましくは10μm での粗大な第二相粒子数を制御することで 抜き加工性を改善できる事例を示している しかしながら、そのような粗大な粒子を分 させて、打抜き加工性を改善した場合、本 時効析出させる予定のNi、Si等の強化元素が その前の熱処理過程で粗大な粒子中に取り込 まれてしまい、これらの強化元素を添加した 意義が損なわれ、十分な強度を得ることが困 難となる。さらに本発明のようにCoを添加し 、Ni、Co、Siを共添した効果およびそれら元 が第二相粒子中に含有されてしまった場合 挙動については沈黙している。また、第二 粒子の面積率が増加した場合であっても、 材の強度が低くなると延性が増すため、か りが大きくなる。

 本発明者は本課題を解決する上での上記 ような問題点を踏まえて鋭意検討したとこ 、Cu-Ni-Si-Co系合金において、特願2007-92269で 定される大きさの第二相粒子よりも小さな 二相粒子の組成及び分布状態を制御するこ で本課題を解決できることを見出した。具 的には、粒径が0.1μm以上1μm以下である第二 相粒子について、Ni、Co及びSiの合計含有量の 中央値(ρ)、標準偏差(σ(Ni+Co+Si))、及び第二相 粒子が母相中に占める面積率Sが重要な因子 あり、これらを適正に制御することにより 添加したNi、Co、Si元素の時効析出硬化を損 うことなく、プレス加工性が向上すること 分かった。

 第二相粒子を上記のような分布状態に制 するためには、最終の溶体化処理時の材料 冷却速度が重要である。具体的には、Cu-Ni-S i-Co系合金の最終の溶体化処理を850℃~1050℃で 行い、その後の冷却工程において、溶体化処 理の温度から材料温度が650℃に低下するまで の冷却速度を1℃/s以上15℃/s未満とし、650℃ ら400℃まで低下するときの平均冷却速度を15 ℃/s以上として冷却することである。

 以上の知見を背景にして完成した本発明は 側面において、
Ni:1.0~2.5質量%、Co:0.5~2.5質量%、Si:0.30~1.2質量% 含有し、残部がCu及び不可避不純物からなる 電子材料用銅合金であって、圧延方向に平行 な断面で観察したときに、粒径が0.1μm以上1μ m以下である第二相粒子の組成のばらつき及 面積率について、〔Ni+Co+Si〕量の中央値:ρ( 量%)が20(質量%)≦ρ≦60(質量%)、標準偏差:σ(Ni +Co+Si)がσ(Ni+Co+Si)≦30(質量%)であり、面積率:S( %)が1%≦S≦10%である電子材料用銅合金である

 本発明に係る電子材料用銅合金は一実施形 において、粒径が10μmを超える第二相粒子 存在せず、粒径が5~10μmである第二相粒子が 延方向に平行な断面で50個/mm 2 以下である。

 本発明に係る電子材料用銅合金は別の一 施形態において、更にCrを最大0.5質量%含有 る。

 本発明に係る電子材料用銅合金は更に別 一実施形態において、更にMg、Mn、Ag、及びP から選択される1種又は2種以上を総計で最大0 .5質量%wt.%含有する。

 本発明に係る電子材料用銅合金は更に別 一実施形態において、更にSn及びZnから選択 される1種又は2種を総計で最大2.0質量%含有す る。

 本発明に係る電子材料用銅合金は更に別 一実施形態において、更にAs、Sb、Be、B、Ti Zr、Al、及びFeから選択される1種又は2種以 を総計で最大2.0質量%含有する。

 本発明は別の一側面において、
-所望の組成をもつインゴットを溶解鋳造す 工程1と、
-950℃~1050℃で1時間以上加熱後に熱間圧延を い、熱間圧延終了時の温度を850℃以上とし 850℃から400℃までの平均冷却速度を15℃/s以 として冷却する工程2と、
-冷間圧延工程3と、
-850℃~1050℃で溶体化処理を行い、材料温度が 650℃に低下するまでの冷却速度を1℃/s以上15 /s未満として冷却し、650℃から400℃まで低 するときの平均冷却速度を15℃/s以上として 却する工程4と、
-随意的な冷間圧延工程5と、
-時効処理工程6と、
-随意的な冷間圧延工程7と、
を順に行なうことを含む上記銅合金の製造方 法である。

 本発明に係る銅合金の製造方法は一実施 態において、工程2に代えて、950℃~1050℃で1 時間以上加熱後に熱間圧延を行い、熱間圧延 終了時の温度を650℃以上とし、且つ、熱間圧 延最中又はその後の冷却時に材料温度が850℃ から650℃まで低下するときの平均冷却速度を 1℃/s以上15℃/s未満とし、650℃から400℃まで 下するときの平均冷却速度を15℃/s以上とす 工程2’を行なう。

 本発明は更に別の一側面において、上記 合金を用いた伸銅品である。

 本発明は更に別の一側面において、上記 合金を用いた電子機器部品である。

 本発明によれば、特定の大きさの第二相 子について分布状態を制御したため、優れ 強度及び導電率に加えてプレス打抜き性に れたCu-Ni-Si-Co系合金が得られる。

Ni、Co及びSiの添加量
 Ni、Co及びSiは、適当な熱処理を施すことに り金属間化合物を形成し、導電率を劣化さ ずに高強度化が図れる。
 Ni、Co及びSiの添加量がそれぞれNi:1.0質量%未 満、Co:0.5質量%未満、Si:0.3質量%未満では所望 強度が得られず、逆に、Ni:2.5質量%超、Co:2.5 質量%超、Si:1.2質量%超では高強度化は図れる 導電率が著しく低下し、更には熱間加工性 劣化する。よってNi、Co及びSiの添加量はNi:1 .0~2.5質量%、Co:0.5~2.5質量%、Si:0.30~1.2質量%とし た。Ni、Co及びSiの添加量は好ましくは、Ni:1.5 ~2.0質量%、Co:0.5~2.0質量%、Si:0.5~1.0質量%である 。

Crの添加量
 Crは溶解鋳造時の冷却過程において結晶粒 に優先析出するため粒界を強化でき、熱間 工時の割れが発生しにくくなり、歩留低下 抑制できる。すなわち、溶解鋳造時に粒界 出したCrは溶体化処理などで再固溶するが、 続く時効析出時にCrを主成分としたbcc構造の 出粒子またはSiとの化合物を生成する。通 のCu-Ni-Si系合金では添加したSi量のうち、時 析出に寄与しなかったSiは母相に固溶した ま導電率の上昇を抑制するが、珪化物形成 素であるCrを添加して、珪化物をさらに析出 させることにより、固溶Si量を低減でき、強 を損なわずに導電率を上昇できる。しかし がら、Cr濃度が0.5質量%を超えると粗大な第 相粒子を形成しやすくなるため、製品特性 損なう。従って、本発明に係るCu-Ni-Si-Co系 金には、Crを最大で0.5質量%添加することが きる。但し、0.03質量%未満ではその効果が小 さいので、好ましくは0.03~0.5質量%、より好ま しくは0.09~0.3質量%添加するのがよい。

Mg、Mn、Ag及びPの添加量
 Mg、Mn、Ag及びPは、微量の添加で、導電率を 損なわずに強度、応力緩和特性等の製品特性 を改善する。添加の効果は主に母相への固溶 により発揮されるが、第二相粒子に含有され ることで一層の効果を発揮させることもでき る。しかしながら、Mg、Mn、Ag及びPの濃度の 計が0.5%を超えると特性改善効果が飽和する え、製造性を損なう。従って、本発明に係 Cu-Ni-Si-Co系合金には、Mg、Mn、Ag及びPから選 される1種又は2種以上を総計で最大0.5質量% 加することができる。但し、0.01質量%未満 はその効果が小さいので、好ましくは総計 0.01~0.5質量%、より好ましくは総計で0.04~0.2質 量%添加するのがよい。

Sn及びZnの添加量
 Sn及びZnにおいても、微量の添加で、導電率 を損なわずに強度、応力緩和特性、めっき性 等の製品特性を改善する。添加の効果は主に 母相への固溶により発揮される。しかしなが ら、Sn及びZnの総計が2.0質量%を超えると特性 善効果が飽和するうえ、製造性を損なう。 って、本発明に係るCu-Ni-Si-Co系合金には、Sn 及びZnから選択される1種又は2種を総計で最 2.0質量%添加することができる。但し、0.05質 量%未満ではその効果が小さいので、好まし は総計で0.05~2.0質量%、より好ましくは総計 0.5~1.0質量%添加するのがよい。

As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeの添 加量
 As、Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeにおいても、 求される製品特性に応じて、添加量を調整 ることで、導電率、強度、応力緩和特性、 っき性等の製品特性を改善する。添加の効 は主に母相への固溶により発揮されるが、 二相粒子に含有され、若しくは新たな組成 第二相粒子を形成することで一層の効果を 揮させることもできる。しかしながら、こ らの元素の総計が2.0質量%を超えると特性改 善効果が飽和するうえ、製造性を損なう。従 って、本発明に係るCu-Ni-Si-Co系合金には、As Sb、Be、B、Ti、Zr、Al及びFeから選択される1種 又は2種以上を総計で最大2.0質量%添加するこ ができる。但し、0.001質量%未満ではその効 が小さいので、好ましくは総計で0.001~2.0質 %、より好ましくは総計で0.05~1.0質量%添加す るのがよい。

 上記したMg、Mn、Ag、P、Sn、Zn、As、Sb、Be B、Ti、Zr、Al及びFeの添加量が合計で3.0%を超 ると製造性を損ないやすいので、好ましく これらの合計は2.0質量%以下とし、より好ま しくは1.5質量%以下とする。

第二相粒子の分布条件
 コルソン合金では適切な時効処理を施すこ により金属間化合物を主体とするナノメー ルオーダー(一般には0.1μm以下)の微細な第 相粒子が析出し、導電率を劣化させずに高 度化が図れる。しかしながら、本発明のCu-Ni -Co-Si系合金は、従来のCu-Ni-Si系コルソン合金 は異なり、時効析出硬化のための必須成分 して積極的にCoを添加するため、熱間圧延 溶体化処理などの熱処理時に粗大な第二相 子が生じやすい。粗大な第二相粒子ほどそ 粒子中にNi、Co及びSiが取り込まれてしまう その結果、母相へのNi、Co及びSiの固溶量が さくなるため、時効析出硬化量が小さくな 、高強度化が図れない。
 すなわち、Ni、Co及びSiを含有した第二相粒 が大きくてその個数が多いほど、析出硬化 寄与する0.1μm以下の微細な析出粒子数が減 るため、粗大な第二相粒子の分布を制御す ことが望ましい。

 本発明において、第二相粒子とは主にシ サイドを指すが、これに限られるものでは く、溶解鋳造の凝固過程に生ずる晶出物及 その後の冷却過程で生ずる析出物、熱間圧 後の冷却過程で生ずる析出物、溶体化処理 の冷却過程で生ずる析出物、及び時効処理 程で生ずる析出物のことを言う。

 粒径が1μmを超える粗大な第二相粒子はその 組成に関わらず、強度に寄与しないばかりか 曲げ加工性を低下させる。特に粒径が10μmを える第二相粒子については曲げ加工性を著 く低下させ、打抜き性改善の効果も認めら ないため、上限は10μmとする必要がある。 って、本発明の好ましい一実施形態におい は、粒径が10μmを超える第二相粒子は存在し ない。
 粒径が5μm~10μmの第二相粒子は50個/mm 2 以内であれば、強度、曲げ加工性及びプレス 打抜き性を大きく損なうことはない。従って 、本発明の別の好ましい一実施形態において は、粒径が5μm~10μmである第二相粒子が圧延 向に平行な断面で50個/mm 2 以下、より好ましくは25個/mm 2 であり、更により好ましくは20個/mm 2 であり、最も好ましくは15個/mm 2 以下である。

 粒径が1μmを超えて5μm未満の第二相粒子 、溶体化処理段階では1μm程度で結晶粒径の 大化を抑制した後に、続く時効処理で粗大 した可能性があり、5μm以上の第二相粒子に 比べて特性劣化の影響は小さいものと考えら れる。

 本発明では、上記の知見に加えて、圧延 向に平行な断面で観察したときに、粒径が0 .1μm以上1μm以下である第二相粒子の組成がプ レス打抜き性に与える影響を発見し、それを 制御した点に大きな技術的貢献がある。

〔Ni+Co+Si〕量の中央値(ρ)
 まず、プレス打抜き性は粒径が0.1μm以上1μm 以下である第二相粒子中に含まれるNi+Co+Siの 有量が増加すると向上する。プレス打抜き の向上効果が有意に現れてくるのは第二相 子中の〔Ni+Co+Si〕量の中央値:ρ(質量%)が20( 量%)以上のときである。ρが20質量%未満のと は、第二相粒子に含まれるNi、Co及びSi以外 成分、すなわち銅、酸素、硫黄などの不可 不純物成分が多いことを意味するが、この うな第二相粒子はプレス打抜き性改善への 与が小さい。但し、ρが大きくなり過ぎる 、今度は、時効による析出硬化を期待して 加したNi、Co及びSiが粒径0.1μm以上1μm以下の 二相粒子に過剰に取り込まれてしまったこ を意味し、これらの元素の本来的機能であ 析出硬化が得られなくなる。その結果、強 が低下して延性が増大するため、打抜き性 劣化する。
 よって、本発明では、材料を圧延方向に平 な断面で観察したときに、粒径が0.1μm以上1 μm以下である第二相粒子について、〔Ni+Co+Si 量の中央値:ρ(質量%)を20(質量%)≦ρ≦60(質量 %)とした。好ましくは25(質量%)≦ρ≦55(質量%) より好ましくは30(質量%)≦ρ≦50(質量%)であ 。

標準偏差:σ(Ni+Co+Si)
 また、粒径0.1μm以上1μm以下の第二相粒子中 のNi、Co及びSi含有量の合計にばらつきが大き いと、時効処理で析出した微細な第二相粒子 中の組成もばらつきが大きくなり、時効硬化 に適したNi、Co及びSiの組成をもたない第二相 粒子があちこちに点在することとなる。つま り、Ni、Co、Si濃度が高く、粗大な第2相粒子 傍は、母相中のNi、Co、Si濃度が極端に低く る。このような状態で時効析出処理を施す 、微細な第2相粒子の析出が不足し、強化を なう。よってプレス打抜き時には局所的に 度が低く、延性の高い領域が形成されて、 裂伝播を阻害する。その結果、銅合金全体 して充分な強度が得られなくなるばかりで く、プレス打抜き性も劣化する。逆に、第 相粒子中のNi、Co及びSi含有量の合計にばら きが小さいと、亀裂伝播の局所的な進展あ いは阻害が抑制されるので、良好な破断面 得ることができる。従って、第2相粒子に含 まれる[Ni+Co+Si]量の標準偏差σ(Ni+Co+Si)(質量%) できるだけ小さい方がよい。σ(Ni+Co+Si)が30以 下であれば特性に対して大きな悪影響を及ぼ すことはない。
 そこで、本発明では、圧延方向に平行な断 で粒径が0.1μm以上1μm以下である第二相粒子 を観察したときに、σ(Ni+Co+Si)≦30(質量%)であ ことを規定した。好ましくはσ(Ni+Co+Si)≦25( 量%)であり、より好ましくはσ(Ni+Co+Si)≦20( 量%)である。本発明に係る電子材料用銅合金 は、典型的には10≦σ(Ni+Co+Si)≦30であり、よ 典型的には20≦σ(Ni+Co+Si)≦30であり、例えば2 0≦σ(Ni+Co+Si)≦25である。

面積率:S
 更に、圧延方向に平行な断面で観察したと に、粒径が0.1μm以上1μm以下である第二相粒 子が観察視野に占める面積率:S(%)もプレス打 き性に影響を与える。第二相粒子の面積率 、高いほどプレス打抜き性の改善効果は大 く、面積率で1%以上、好ましくは3%以上とす る。面積率が1%より低い場合は、第二相粒子 少ない状態であり、プレス打ち抜き時の亀 伝播に寄与する粒子が少なく、プレス打抜 性の改善効果が小さい。
 但し、第二相粒子の面積率が高くなりすぎ と、時効による析出硬化を期待して添加し Ni、Co及びSiの多くが粗大な第二相粒子に取 込まれてしまい、これらの元素の本来的機 である析出硬化が得られなくなる。その結 、強度が低下して延性が増大するため、打 き性は劣化する。従って、本発明では、圧 方向に平行な断面で第二相粒子を観察した きに、粒径が0.1μm以上1μm以下である第二相 粒子が観察視野に占める面積率(%)の上限を10% に制御することとした。面積率は好ましくは 7%以下、より好ましくは5%以下である。

 本発明においては、第二相粒子の粒径とは 下記条件で第二相粒子を観察したときの、 粒子を取り囲む最小円の直径のことを指す
 粒径が0.1μm以上1μm以下の第二相粒子組成の ばらつきと面積率はFE-EPMAの元素マッピング 画像解析ソフトの併用により観察可能であ 、観察視野に分散する粒子の濃度測定、個 や粒径の測定および観察視野に占める第2相 子面積率の測定が可能である。個々の第二 粒子に含まれるNi、Co、Siの含有量はEPMAの定 量分析によって行なうことができる。
 粒径が1μmを超える第二相粒子の粒径や個数 は、今述べた本発明範囲の粒径0.1~1μmの第二 粒子と同様の手法で、材料の圧延方向に対 て平行な断面をエッチング後にSEM観察ある はEPMA等の電子顕微鏡を使用することで測定 することができる。

製造方法
 コルソン系銅合金の一般的な製造プロセス は、まず大気溶解炉を用い、電気銅、Ni、Si 、Co等の原料を溶解し、所望の組成の溶湯を る。そして、この溶湯をインゴットに鋳造 る。その後、熱間圧延を行い、冷間圧延と 処理を繰り返して、所望の厚み及び特性を する条や箔に仕上げる。熱処理には溶体化 理と時効処理がある。溶体化処理では、約7 00~約1000℃の高温で加熱して、第二相粒子をCu 母地中に固溶させ、同時にCu母地を再結晶さ る。溶体化処理を、熱間圧延で兼ねること ある。時効処理では、約350~約550℃の温度範 囲で1時間以上加熱し、溶体化処理で固溶さ た第二相粒子をナノメートルオーダーの微 粒子として析出させる。この時効処理で強 と導電率が上昇する。より高い強度を得る めに、時効前及び/又は時効後に冷間圧延を なうことがある。また、時効後に冷間圧延 行なう場合には、冷間圧延後に歪取焼鈍(低 温焼鈍)を行なうことがある。
 上記各工程の合間には適宜、表面の酸化ス ール除去のための研削、研磨、ショットブ スト酸洗等が適宜行なわれる。

 本発明に係る銅合金においても上記の製 プロセスを経るが、最終的に得られる銅合 において、粒径が0.1μm以上1μm以下の第二相 粒子の分布形態、更には粒径が1μmを超える 大な第二相粒子の分布形態を所望のものと るためには、熱間圧延と溶体化処理を厳密 制御して行なうことが重要である。従来のCu -Ni-Si系コルソン合金とは異なり、本発明のCu- Ni-Co-Si系合金は、時効析出硬化のための必須 分として第二相粒子が粗大化しやすいCo(場 によっては更にCr)を積極的に添加している めである。これは、添加したCoがNiやSiと共 形成する第二相粒子の生成及び成長速度が 熱処理の際の保持温度と冷却速度に敏感で るという理由による。

 まず、鋳造時の凝固過程では粗大な晶出 が、その冷却過程では粗大な析出物が不可 的に生成するため、その後の工程において れらの第二相粒子を母相中に固溶する必要 ある。950℃~1050℃で1時間以上保持後に熱間 延を行い、熱間圧延終了時の温度を850℃以 とすればCo、更にCrを添加した場合であって も母相中に固溶することができる。950℃以上 という温度条件は他のコルソン系合金の場合 に比較して高い温度設定である。熱間圧延前 の保持温度が950℃未満では固溶が不十分であ り、1050℃を超えると材料が溶解する可能性 ある。また、熱間圧延終了時の温度が850℃ 満では固溶した元素が再び析出するため、 い強度を得ることが困難となる。よって高 度を得るためには850℃で熱間圧延を終了し 速やかに冷却することが望ましい。

 具体的には、熱間圧延の後、材料温度が8 50℃から400℃まで低下するときの冷却速度を1 5℃/s以上、好ましくは18℃/s以上、例えば15~25 ℃/s、典型的には15~20℃とするのがよい。

 溶体化処理では、溶解鋳造時の晶出粒子 、熱延後の析出粒子を固溶させ、溶体化処 以降の時効硬化能を高めることが目的であ 。このとき、第二相粒子の組成および面積 を制御するには、溶体化処理時の保持温度 時間、および保持後の冷却速度が重要とな 。保持時間が一定の場合には、保持温度を くすると、溶解鋳造時の晶出粒子や、熱延 の析出粒子を固溶させることが可能となり 面積率を低減することが可能となる。また 却速度は速いほど冷却中の析出を抑制でき 。ただし、冷却速度が速過ぎると、打抜き に寄与する第二相粒子が不足する。一方、 却速度が遅すぎる場合には、冷却中に第二 粒子が粗大化し、第二相粒子中のNi、Co、Si 有量及び面積率が増加するため、時効硬化 が低減する。また、第二相粒子の粗大化が 在化するため、粒子中のNi、Co、Si含有量の らつきが生じやすくなる。よって第二相粒 の組成、およびその面積率を制御するには 却速度の設定が特に重要となる。

 溶体化処理後、850~650℃までは第二相粒子 が生成及び成長し、その後、650℃~400℃では 二相粒子が粗大化する。よって、時効硬化 を損なわずに打抜き性改善に必要な第2相粒 を分散させるためには、溶体化処理後、850~ 650℃までは緩冷却とし、その後の650℃~400℃ では、急冷却とする2段階冷却を採用するの よい。

 具体的には、850℃~1050℃で溶体化処理後 材料温度が溶体化処理温度から650℃まで低 するときの平均冷却速度を1℃/s以上15℃/s未 、好ましくは5℃/s以上12℃/s以下に制御して 、650℃から400℃まで低下するときの平均冷却 速度を15℃/s以上、好ましくは18℃/s以上、例 ば15~25℃/s、典型的には15~20℃とすることで レス打抜き性改善に効果的な第二相粒子を 出できる。

 650℃までの冷却速度を1℃/s未満にすると 第二相粒子が過剰に析出して粗大化するた 、第二相粒子を所望の分布状態にすること できない。一方、冷却速度を15℃/s以上にす ると、第二相粒子は析出しないか又は微量に しか析出しないため、やはり第二相粒子を所 望の分布状態にすることができない。

 一方、400℃~650℃の領域においては、でき るだけ冷却速度は高めた方がよく、平均冷却 速度を15℃/s以上とすることが必要である。65 0~850℃の温度領域で析出した第二相粒子が必 以上に粗大化するのを防止するためである なお、第二相粒子の析出が著しいのは400℃ 度までなので、400℃未満における冷却速度 問題とならない。

 溶体化処理後の冷却速度制御には、850℃~ 1050℃の範囲に加熱した加熱帯に隣接して、 冷帯および冷却帯を設けて各々の保持時間 調整することで冷却速度を調整すればよい 急冷が必要な場合には冷却方法に水冷を施 ばよく、緩冷却の場合には炉内に温度勾配 つくればよい。

 熱間圧延後の冷却速度においても今述べ ような2段階冷却は有効である。具体的には 、材料温度が850℃から650℃まで低下するとき には、熱間圧延最中であるかその後の冷却最 中であるかに関わらず、平均冷却速度を1℃/s 以上15℃/s未満、好ましくは3℃/s以上12℃/s以 、より好ましくは好ましくは5℃/s以上10℃/s 以下とする。また、材料温度が650℃から400℃ まで低下するときには、平均冷却速度を15℃/ s以上、好ましくは17℃/s以上とする。熱間圧 においてこのような冷却過程を経た上で溶 化処理を行なえば、より望ましい第二相粒 の分布状態を得ることが可能となる。この 却方式を採用する場合は熱間圧延終了時の 度を850℃以上に設定する必要はなく、熱間 延終了時の温度を650℃まで下げても不都合 生じない。

 熱間圧延後の冷却速度を管理せずに、溶 化処理後の冷却速度のみを制御しても、後 時効処理で粗大な第二相粒子を充分に抑制 ることはできない。熱間圧延後の冷却速度 及び溶体化処理後の冷却速度は共に制御す 必要がある。

 冷却を速くする方法としては水冷が最も 果的である。ただし、水冷に使用する水の 度により冷却速度が変わるため、水温の管 をすることでより冷却を速くすることがで る。水温が25℃以上だと所望の冷却速度を ることができない場合があるため、25℃以下 に保持するのが好ましい。水を溜めた槽内に 材料を入れて水冷すると、水の温度は上昇し 25℃以上になり易いため、材料が一定の水の 度(25℃以下)で冷却されるように霧状(シャ ー状又はミスト状)にして噴霧したり、水槽 常時冷たい水を流すようにしたりして水温 昇を防ぐのが好ましい。また、水冷ノズル 増設や単位時間当たりにおける水量を増加 ることによっても冷却速度の上昇させるこ ができる。

 本発明においては、熱間圧延後の、「850 から400℃までの平均冷却速度」は材料温度 850℃から400℃まで低下するときの時間を計 し、“(850-400)(℃)/冷却時間(s)”によって算 した値(℃/s)をいう。溶体化処理後の、「650 ℃に低下するまでの平均冷却速度」は溶体化 処理で保持した材料温度から650℃まで低下す る冷却時間を計測し、“(溶体化処理温度-650) (℃)/冷却時間(s)”によって算出した値(℃/s) いう。「650℃から400℃まで低下するときの 均冷却速度”とは同様に、“(650-400)(℃)/冷 時間(s)”によって算出した値(℃/s)をいう。 に、熱間圧延後にも2段階冷却を行なうとき も同様に、「850℃から650℃まで低下するとき 」の平均冷却速度は“(850-650)(℃)/冷却時間(s) ”によって算出した値(℃/s)をいい、「650℃ ら400℃まで低下するとき」の平均冷却速度  “(650-400)(℃)/冷却時間(s)”によって算出し た値(℃/s)をいう。

 時効処理の条件は析出物の微細化に有用 あるとして慣用的に行われている条件で構 ないが、析出物が粗大化しないように温度 び時間を設定することに留意する。時効処 の条件の一例を挙げると、350~550℃の温度範 囲で1~24時間であり、より好ましくは400~500℃ 温度範囲で1~24時間である。なお、時効処理 後の冷却速度は析出物の大小にほとんど影響 を与えない。

 本発明のCu-Ni-Si-Co系合金は種々の伸銅品 例えば板、条、管、棒及び線に加工するこ ができ、更に、本発明によるCu-Ni-Si-Co系銅合 金は、リードフレーム、コネクタ、ピン、端 子、リレー、スイッチ、二次電池用箔材等の 電子部品等に使用することができる。

 以下に本発明の実施例を比較例と共に示 が、これらの実施例は本発明及びその利点 よりよく理解するために提供するものであ 、発明が限定されることを意図するもので ない。

製造条件が合金特性に与える影響 の検討
 表1に記載の成分組成(組成番号1)の銅合金を 、高周波溶解炉で1300℃で溶製し、厚さ30mmの ンゴットに鋳造した。次いで、このインゴ トを1000℃に加熱後、上り温度(熱間圧延終 温度)を900℃として板厚10mmまで熱間圧延し、 熱間圧延終了後は速やかに18℃/sの冷却速度 400℃まで冷却し、その後は空気中に放置し 冷却した。次いで、表面のスケール除去の め厚さ9mmまで面削を施した後、冷間圧延に り厚さ0.15mmの板とした。次に種々の温度で 体化処理を120秒行い、これを直ちに種々の 却速度で400℃まで冷却し、その後は空気中 放置して冷却した。次いで0.10mmまで冷間圧 して、450℃で3時間かけて不活性雰囲気中で 効処理を施して、最後に0.08mmまで冷間圧延 、最後に300℃で3時間の低温焼鈍をして、試 験片を製造した。

 このようにして得られた各試験片につき 第二相粒子中のNi、Co及びSiの合計含有量の 央値ρ(質量%)、標準偏差σ(Ni+Co+Si)(質量%)、 び面積率S(%)、第二相粒子の粒径分布、合金 性を以下のようにして測定した。

 まず、材料表面を電解研磨してCuの母地を 解すると、第二相粒子を溶け残って現出し 。電解研磨液はリン酸、硫酸、純水を適当 比率で混合したものを使用した。
 粒径0.1~1μmの第二相粒子を観察するときは FE-EPMA(電解放射型EPMA:日本電子(株)製JXA-8500F) より、加速電圧を5~10kV、試料電流を2×10 -8 ~10 -10 A、分光結晶はLDE、TAP、PET、LIFを使用して、 察倍率3000倍(観察視野30μm×30μm)で任意の10箇 所に分散する粒径0.1~1μmの第2相粒子全てを観 察および分析し、付属の画像解析ソフトを用 いて、粒子中のNi、Co及びSiの合計含有量の中 央値ρ(質量%)、標準偏差σ(Ni+Co+Si)(質量%)、面 率S(%)を算出した。

 一方、粒径が1μmを超える第二相粒子を観察 するときは、粒径0.1~1μmの第二相粒子観察と 様の手法により、倍率1000倍(監察視野100×120 μm)で任意の10箇所を観察し、粒径5~10μmの析 物の個数と、粒径10μmを超える析出物の個数 を数え、1mm 2 当たりの個数を算出した。

 強度については圧延平行方向の引っ張り 験を行って0.2%耐力(YS:MPa)を測定した。

 導電率(EC;%IACS)についてはWブリッジによ 体積抵抗率測定により求めた。

 打抜き性はばり高さにより評価した。金 クリアランスを10%とし、250spmの打抜き速度 、金型で角孔(1mm×5mm)を多数打抜き、ばり高 さ(10箇所の平均値)をSEM観察にて測定した。 リ高さが15μm以下のものを適合として‘○’ で示し、15μm以上のものを不適合として‘× で示した。

 製造条件及び結果を表2に示す。

 実施例1~6の合金は、σ、ρ、S、粒径5~10μmの 出物の個数、及び粒径10μmを超える析出物 個数について、適切な範囲にあった。強度 び導電率に加えてプレス打抜き性において 優れた特性を有していた。
 比較例1、7、8、14は溶体化処理後、650℃に 下するまでの平均冷却速度が速すぎ、第二 粒子中のNi、Co、Si濃度及び面積率が低下し 。その結果、プレス打抜き性が不充分とな た。なお、比較例8は特願2007-092269に記載の 施例1に相当する。
 一方、比較例6、13、19は溶体化処理後、650 に低下するまでの平均冷却速度が遅すぎ、 二相粒子中のNi、Co、Si濃度及び面積率が上 した。その結果、プレス打抜き性が不充分 なった。強度も実施例に比べて低下してい が、これは粗大な第二相粒子中のNi、Co、Si 度が高くなった結果、これらが時効処理時 微細析出しなかったためと考えられる。
 比較例2、3、4、5、9、10、11、12、15、16、17 18及び19は溶体化処理後、650℃から400℃まで 下するときの平均冷却速度が遅く、第二相 子中のNi、Co、Si濃度にばらつきが大きくな た。その結果、プレス打抜き性が不充分と った。
 比較例20及び21は溶体化処理温度が低すぎた ため、第二相粒子中のNi、Co、Si濃度のばらつ きが大きく、面積率も上昇した。比較例21で Ni、Co、Si濃度も上昇した。その結果、プレ 打抜き性が不充分となった。強度も実施例 比べて低下しているが、これは粗大な第二 粒子中のNi、Co、Si濃度が高くなった結果、 れらが時効処理時に微細析出しなかったた と考えられる。

組成が合金特性に与える影響の検 討
 表3に記載の各種成分組成の銅合金を、高周 波溶解炉で1300℃で溶製し、厚さ30mmのインゴ トに鋳造した。次いで、このインゴットを1 000℃に加熱後、上り温度(熱間圧延終了温度)9 00℃として板厚10mmまで熱間圧延し、熱間圧延 終了後は速やかに18℃/sの冷却速度で400℃ま 冷却し、その後は空気中に放置して冷却し 。次いで、表面のスケール除去のため厚さ9m mまで面削を施した後、冷間圧延により厚さ0. 15mmの板とした。次に950℃で溶体化処理を120 行い、直ちに850から650℃までの平均冷却速 を12℃/sとし、650℃から400℃までの平均冷却 度を18℃/sとして冷却した。18℃/sの冷却速 で400℃まで冷却し、その後は空気中に放置 て冷却した。次いで0.10mmまで冷間圧延して 450℃で3時間かけて不活性雰囲気中で時効処 を施して、最後に0.08mmまで冷間圧延し、最 に300℃で3時間の低温焼鈍をして、試験片を 製造した。

 実施例7~16の合金は何れも、σ、ρ、S、粒 5~10μmの析出物の個数、及び粒径10μmを超え 析出物の個数について、適切な範囲にあっ ため、強度及び導電率に加えてプレス打抜 性においても優れた特性を有していた。実 例8は実施例3と同一である。Cr等の添加元素 を加えることによって、更に強度が向上した ことが分かる。




 
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