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Title:
CUBIC MAGNESIUM OXIDE POWDER AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/093565
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a magnesium oxide powder having a cubic shape and a large average particle diameter. Also disclosed is a method for producing such a magnesium oxide powder. Specifically disclosed is a magnesium oxide powder whose particles have a cubic shape when observed with a scanning electron microscope. This magnesium oxide powder has a 50% cumulative particle diameter (D50), as determined by a laser diffraction/scattering particle size distribution measuring method, of not less than 1.0 μm. This powder can be obtained by firing a magnesium oxide precursor in the presence of 0.5-30% by mass of a halide ion relative to the total mass of the precursor in a closed system.

Inventors:
OHSAKI YOSHIHISA
KAWASE ATSUYA
KUNISHIGE MASAAKI
Application Number:
PCT/JP2008/050783
Publication Date:
August 07, 2008
Filing Date:
January 22, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TATEHO KAGAKU KOGYO KK (JP)
OHSAKI YOSHIHISA
KAWASE ATSUYA
KUNISHIGE MASAAKI
International Classes:
C01F5/06; C01F5/08
Foreign References:
JP2004244313A2004-09-02
JP2007091525A2007-04-12
Attorney, Agent or Firm:
PATENT CORPORATE BODY ARCO PATENT OFFICE (Bo-eki Bldg. 123-1, Higashi-machi, Chuo-ku, Kobe-sh, Hyogo 31, JP)
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Claims:
 走査型電子顕微鏡にて観察した粒子形状が立方体状であり、かつ
 レーザ回折散乱式粒度分布測定による累積50%粒子径(D 50 )が1.0μm以上であることを特徴とする立方体状酸化マグネシウム粉末。
 レーザ回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒子径(D 10 )と累積90%粒子径(D 90 )の比D 90 /D 10 が10.0以下である、請求項1記載の立方体状酸化マグネシウム粉末。
 BET比表面積が5.0m 2 /g以下である、請求項1又は2に記載の立方体状酸化マグネシウム粉末。
 酸化マグネシウム純度が99.9質量%以上である、請求項1又は2に記載の立方体状酸化マグネシウム粉末。
 酸化マグネシウム前駆体を、当該前駆体全量に対して0.5~30質量%のハロゲン化物イオン存在下、閉鎖系で焼成することにより得られる、請求項1又は2に記載の立方体状酸化マグネシウム粉末。
 走査型電子顕微鏡にて測定した粒子形状が立方体状であり、かつ
 当該立方体の一辺の長さが4.0μmより大きいことを特徴とする、立方体状酸化マグネシウム粒子。
 請求項6記載の立方体状酸化マグネシウム粒子を含む酸化マグネシウム粉末。
 酸化マグネシウム前駆体を、当該前駆体全量に対して0.5~30質量%のハロゲン化物イオン存在下、閉鎖系で焼成することを特徴とする、酸化マグネシウム粉末の製造方法。
 酸化マグネシウム前駆体が、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は、それらの混合物である、請求項8記載の製造方法。
Description:
立方体状酸化マグネシウム粉末 びその製法

 本発明は、立方体状酸化マグネシウム粉 及びその製法に関する。

 酸化マグネシウム(マグネシア)は、耐火 のほか、各種添加剤や電子部品用途、蛍光 原料、各種ターゲット材原料、超伝導薄膜 地用の原料、トンネル磁気抵抗素子(TMR素子) 用のトンネル障壁原料、カラープラズマディ スプレイパネル(PDP)用の保護膜原料や、さら はPDP用結晶酸化マグネシウム層の原料とし も利用され、きわめて広範な用途を持つ無 材料として注目されている。

 例えば、PDP用の結晶酸化マグネシウム層 形成するための原料である酸化マグネシウ としては、1次粒子の形状が立方体状である 高純度の結晶粉末であって、各結晶の粒径が 大きく、さらには粒度分布が狭く、分散性に 優れた結晶粉末が求められている。

 酸化マグネシウム粉末の製法としては、 に、(1)金属マグネシウムの酸化による気相 、(2)水酸化マグネシウムや炭酸マグネシウ 等の前駆体を、熱分解温度以上の温度で焼 することによる熱分解法、及び、(3)電融法 よって得られた塊を粉砕する方法が知られ いる。

 気相法では、高純度で立方体状の酸化マ ネシウム粉末が得られているが、その粒径 しては1μm未満に留まっている(特許文献1及 非特許文献1を参照)。加えて、結晶表面に 数の微粒子が付着しており表面が清浄でな という問題や、立方体状粒子と非立方体状 粒子が混在しており、立方体状粒子のみか なる単分散粉末ではない、という問題があ た。

 より生産性に優れた熱分解法で製造される 化マグネシウム粉末は、結晶粒子の角又は が丸みを帯びた多角形の形状を有するもの あり、また、大きな粒子が得られにくい。 のために大気中の炭酸ガスや水分等を吸着 て、これが酸化マグネシウム固有の特性の 揮を阻害する場合があった。さらに多くの 合、粒子が互いに凝集して分散性が悪い粉 しか得られなかった。

 以上の熱分解法における欠点を克服するた に、特許文献2では、酸化マグネシウム前駆 体又は酸化マグネシウムに塩化物イオンを混 合した後に焼成する方法、及び、塩化マグネ シウムの水溶液と塩基性沈殿剤の溶液を混合 した後、洗浄することなく濾過して焼成する 方法が記載されている。当該文献の実施例で は、上記焼成を酸素気流中で実施することが 記載されている。これによって得られる酸化 マグネシウムの結晶は立方体状ではあるが、 その粒径としてはわずか0.2μm程度のものであ り、粒子が互いに凝集しているものしか得ら れていない(当該文献の図2(A))。

特開平1-282146号公報

特開2006-36544号公報 「材料」、昭和62年11月、第36巻、第410号 、p.1157-1161


 本発明は、上記現状に鑑み、立方体状で、 つ粒径が大きい酸化マグネシウム粉末、及 、その製法を提供することを目的とするも である。

 本発明者らは、上記課題を解決すべく種々 討を重ねた結果、熱分解法によって酸化マ ネシウム前駆体を焼成して酸化マグネシウ 粉末を製造するにあたって、当該焼成を、 定量のハロゲン化物イオンの存在下で、か 、通常の焼成条件とは異なり閉鎖系で実施 ることにより、従来の製法ではまったく得 ことが不可能であった立方体状で、かつ平 粒径が1μm以上と、きわめて大きな酸化マグ ネシウム粉末を製造できることを見出して、 本発明に至ったものである。

 すなわち本発明は、走査型電子顕微鏡にて 察した粒子形状が立方体状であり、かつレ ザ回折散乱式粒度分布測定による累積50%粒 径(D 50 )が1.0μm以上であることを特徴とする立方体 酸化マグネシウム粉末に関する。ここで、 ーザ回折散乱式粒度分布測定による累積10% 子径(D 10 )と累積90%粒子径(D 90 )の比D 90 /D 10 が10.0以下であることが好ましく、BET比表面 が5.0m 2 /g以下であることが好ましい。また、純度が9 9.9質量%以上であることが好ましい。前記立 体状酸化マグネシウム粉末は、酸化マグネ ウム前駆体を、当該前駆体全量に対して0.5~3 0質量%のハロゲン化物イオン存在下、閉鎖系 焼成することにより得られることが好まし 。

 さらに本発明は、走査型電子顕微鏡にて観 した粒子形状が立方体状であり、かつ当該 方体の一辺の長さが4.0μmより大きいことを 徴とする、立方体状酸化マグネシウム粒子 も関し、また、当該立方体状酸化マグネシ ム粒子を含む酸化マグネシウム粉末にも関 る。

 さらに本発明は、酸化マグネシウム前駆体 、当該前駆体全量に対して0.5~30質量%のハロ ゲン化物イオン存在下、閉鎖系で焼成するこ とを特徴とする、酸化マグネシウム粉末の製 造方法にも関する。前記酸化マグネシウム前 駆体が、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マ グネシウム、又は、それらの混合物であるこ とが好ましい。


 本発明によって、立方体状で、かつ平均粒 が大きい酸化マグネシウム粉末を得ること できる。最も好適には、本発明によって、( 1)立方体状に粒子形状がそろっており、(2)平 粒径が1μm以上と大きく、(3)粒径がそろって おり、(4)微粒子が含まれておらず立方体状結 晶の表面が清浄、かつ平滑であり、(5)個々の 結晶粒が分離しており分散性に優れている、 という特性を有する酸化マグネシウム粉末を 製造することができる。


 本発明の酸化マグネシウム粉末は1次粒子の 形状が立方体状のものである。この形状は走 査型電子顕微鏡によって確認することができ る。なお「立方体状」とは幾何学的な意味で の厳密な立方体を指すものではなく、図1~5の ように、顕微鏡写真を目視で観察することに よりおおよそ立方体と認識可能な形状を指す 。本発明の酸化マグネシウム粉末は、立方体 状の1次粒子が凝集することなく、各々分離 ているので、分散性が良好という性質を有 得る。

 本発明の酸化マグネシウム粉末は平均粒径 大きいものであり、具体的には、レーザ回 散乱式粒度分布測定による累積50%粒子径(D 50 )で1.0μm以上を満たすものである。これほど きな平均粒径を有する立方体状酸化マグネ ウム粉末は本発明者らによってはじめて見 されたものである。当該D 50 としては1.2μm以上が好ましく、1.5μm以上がよ り好ましい。本発明による製法の範囲内でD 50 がおよそ20μm以下、あるいは、10μm以下の粉 を得ることが可能と考えられる。なお、D 50 とは、メジアン径のことで、粒度の累積グラ フにおいて50体積%に相当する粒径(μm)をいい 粉体をある粒子径で2つに分けたとき、大き い側と小さい側が等量となる粒径のことであ る。

 さらに1次粒子が全体的に大きく微粉を含ま ないという点に関しては、本発明の酸化マグ ネシウム粉末はBET法により測定した比表面積 が5.0m 2 /g以下であることが好ましい。より好ましく 4.0m 2 /g以下、さらに好ましくは2.5m 2 /g以下、特に好ましくは1.0m 2 /g以下である。

 本発明の酸化マグネシウム粉末は、好まし は、立方体状に粒子形状がそろっていて、 方体状結晶表面に微粒子が付着しておらず 当該表面が清浄、かつ平滑なものである。 のため本発明の酸化マグネシウム粉末は粒 がそろっている、すなわち粒度分布が狭い のであることが好ましく、具体的には、レ ザ回折散乱式粒度分布測定による累積10%粒 径(D 10 )と累積90%粒子径(D 90 )の比D 90 /D 10 で10.0以下を満たすものであることが好まし 。より好ましくは6.0以下であり、さらに好 しくは4.5以下である。

 本発明の酸化マグネシウム粉末は高純度 ものであり、純度としては99.9質量%以上が ましく、99.99質量%以上がより好ましい。

 次に、本発明による酸化マグネシウム粉 の製造方法を説明する。

 本発明の製造方法は熱分解法に基づいた のであるが、本発明では酸化マグネシウム 駆体を、当該前駆体全量に対して0.5~30質量% のハロゲン化物イオン存在下、閉鎖系で焼成 する工程を実施することによって酸化マグネ シウム粉末を製造する。これによって、上述 した諸特性を有する酸化マグネシウム粉末を 製造することができる。

 前記酸化マグネシウム前駆体としては従 の熱分解法により使用される前駆体であっ よく、特に限定されないが、例えば、水酸 マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、 酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム等 挙げられる。なかでも、得られる酸化マグ シウム粉末の特性が優れているので、水酸 マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、 び、これらの混合物が好ましい。

 前記前駆体が不純物を多く含むと、得ら る酸化マグネシウム粉末の形状が立方体状 ならず、丸みを帯びた多角形状になる傾向 あるので、前駆体の不純物は少ないほうが ましい。具体的に前駆体が含む不純物量と ては、熱分解法により酸化マグネシウムを 成した際に残留する不純物の合計量が、ハ ゲン化物イオンを除いて0.1質量%以下が好ま しく、0.01質量%以下がより好ましい。

 前記焼成はハロゲン化物イオンの存在下 行う。ハロゲン化物イオンとしては、塩化 イオン、フッ化物イオン、臭化物イオン、 ウ化物イオンが挙げられるが、通常、塩化 イオンが用いられる。ハロゲン化物イオン 含む化合物の具体例としては、塩酸、塩化 ンモニウム、塩化ナトリウム、塩化カリウ 、塩化マグネシウム等が挙げられる。

 ハロゲン化物イオンの存在量としては、 化マグネシウム前駆体全量に対して0.5~30質 %の範囲である。ハロゲン化物イオンの存在 量が少なすぎると本発明の効果を発揮するに 至らず、逆に多すぎると、酸化マグネシウム の結晶が成長しにくくなる。好ましくは1.0~25 質量%の範囲であり、より好ましくは10~25質量 %の範囲である。

 ハロゲン化物イオンを含む化合物は、酸 マグネシウム前駆体そのものであってもよ し、酸化マグネシウム前駆体に含まれてい 不純物に由来するものであってもよいし、 化マグネシウム前駆体を溶液合成法によっ 調製する際に生じる副生物であってもよい 、酸化マグネシウム前駆体に対して別途添 したものであってもよいし、閉鎖式の炉中 ガス雰囲気に、例えば気体の塩化水素等と て添加したものであってもよい。また、酸 マグネシウム前駆体に含まれている不純物 酸化マグネシウム調製時に生じた副生物を 浄等により十分に除去し、あらためて酸化 グネシウム前駆体に、又は、ガス雰囲気に 加してもよい。

 本発明において酸化マグネシウム前駆体 しては、溶液合成で得られたものが好まし 。

 酸化マグネシウム前駆体が塩基性炭酸マ ネシウムと水酸化マグネシウムとの混合物 ある場合に当該前駆体を溶液合成法で調製 るには、例えば、(1)塩化マグネシウム水溶 と水酸化ナトリウム水溶液を混合して、水 化マグネシウムスラリーを得、(2)当該スラ ー中の水酸化マグネシウムの一部を炭酸化 て塩基性炭酸マグネシウムと水酸化マグネ ウムとを含むスラリーを得、(3)当該スラリ を濾過して、塩基性炭酸マグネシウムと水 化マグネシウムとの混合物を得る。この混 物には、出発物質である塩化マグネシウム 又は、副生物である塩化ナトリウムとして 塩化物イオンが含まれている。

 前記工程(1)において水酸化マグネシウム ラリーを得た後、水で希釈することによっ 、当該スラリーの濃度を、好ましくは50~100g /Lの範囲に、より好ましくは60~90g/Lの範囲に 整するとよい。スラリーの濃度を下げるこ によってスラリーの粘度を低減して、次の 程(2)での炭酸化反応が均一に進行するよう するためである。

 前記工程(2)においては、前記スラリーに 酸ガスを吹き込むことによって、スラリー の水酸化マグネシウムの一部を炭酸化する この炭素化反応の温度は40~80℃が好ましい この温度範囲では水酸化マグネシウムから 基性炭酸マグネシウムへの変換が速やかに われ、反応効率がよい。さらに、この温度 囲内では、濾過効率に優れた粒径を有する 基性炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウ との混合物を得ることができる。

 前記炭酸化反応で使用する炭酸ガスの使 量は、水酸化マグネシウムスラリー中の水 化マグネシウムの一部を塩基性炭酸マグネ ウムに転化して、塩基性炭酸マグネシウム 水酸化マグネシウムとの混合物を与えるこ ができる量とする。具体的な炭酸ガスの使 量は、水酸化マグネシウム1モルに対して0.2 ~2.0モル当量であることが好ましい。この範 内では、濾過効率に優れた塩基性炭酸マグ シウムと水酸化マグネシウムとの混合物を 効率よく得ることが可能となる。

 前記工程(3)においては、前記工程(2)で得 れた塩基性炭酸マグネシウムと水酸化マグ シウムとを含むスラリーを濾過にかけて、 基性炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウ との混合物を固体として得る。この固形混 物には塩化物イオンが含まれているので、 れをそのまま、洗浄せずに、乾燥した後、 述する焼成に付してもよいし、この混合物 、適切な量の水を用いて洗浄することによ てケーキ中の塩化物イオンの量を適正なレ ルに低減してから、乾燥及び焼成に付して よい。洗浄を十分に行ってしまうと塩化物 オンの含有量が低くなりすぎて本発明の効 が得られないので、洗浄の度合いを、洗浄 の使用量、洗浄時間等によって制御する必 がある。しかし、十分に洗浄を行い塩化物 オンを完全に除去してから、別途ハロゲン 物イオン含有化合物を添加してもよい。

 酸化マグネシウム前駆体が水酸化マグネ ウムである場合に当該前駆体を溶液合成法 調製するには、例えば、(1)塩化マグネシウ 水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を混合し 、水酸化マグネシウムスラリーを得、(2)当 スラリーを濾過して、固形の水酸化マグネ ウムを得る。この固形物には、出発物質で る塩化マグネシウム、又は、副生物である 化ナトリウムとして、塩化物イオンが含ま ている。

 前記工程(1)において水酸化マグネシウム ラリーを得た後、水で希釈することによっ 、当該スラリーの濃度を、好ましくは50~100g /Lの範囲に、より好ましくは60~90g/Lの範囲に 整し、さらに、熟成をすることによって当 スラリー中の水酸化マグネシウム粒子を成 させることが好ましい。これによって工程(2 )での濾過効率を向上させることができる。 記熟成の条件としては特に限定されないが スラリーを攪拌下、高温で一定時間、保持 ればよい。熟成温度としては例えば80~150℃ 度、熟成時間としては数分~数時間程度でよ 。

 前記工程(2)では、前記工程(1)で得られた 酸化マグネシウムスラリーを濾過にかけて 固形の水酸化マグネシウムを得る。この固 物には塩化物イオンが含まれているので、 れを上述のように処理すればよい。

 本発明の熱分解法による酸化マグネシウ の製法においては、酸化マグネシウム前駆 の焼成を、ハロゲン化物イオンの存在下で かつ閉鎖系で行う必要がある。本発明にお る閉鎖系とは、焼成を行う空間に存在する 体が、実質的に、外部に流出せず、また、 部からも実質的に気体が流入しないように ぼ密閉された系をいい、大気や酸素等の雰 気下で開放して、又は、それらの気流を流 ながら行われる通常の焼成方法とは異なる 本発明では閉鎖系で焼成することにより、 ロゲン化物イオンが外部に飛散することな 、焼成を行う容器中に留まり、酸化マグネ ウム粉末の結晶が成長する過程に十分に介 することによって、きわめて平均粒径の大 な立方体状結晶粉末が得られる。

 この閉鎖系での焼成は、例えば、雰囲気 スの流出入が実質的にない密閉式の電気炉 使用するか、密閉できる坩堝に入れるかし 行うことができる。焼成時の温度としては6 00℃~1400℃程度がよく、1200℃程度が最も好ま い。焼成時の温度が高すぎると、得られる 晶が凝集して分散性が悪くなる場合がある 焼成時間としては温度にもよるが、通常1~10 時間程度である。例えば、温度が1200℃程度 場合には5時間程度が適当である。なお、焼 のために昇温する際の速度としては特に限 されないが、5~10℃/min程度がよい。

 この焼成時の雰囲気としては特に限定さ ず、例えば、大気、酸素、窒素、アルゴン が挙げられるが、前駆体に含まれる不純物 酸化ガスとして除去することが可能となる う、大気や、酸素雰囲気が好ましい。

 前記の条件下での焼成によって平均粒径 大きな立方体状酸化マグネシウム粉末が成 するのであるが、密閉下で焼成を行うため 、前記のハロゲン化物イオン含有化合物等 不純物が十分に除去されず、焼成後の粉末 混入していることになる。このハロゲン化 イオン含有化合物の混入量を低減して酸化 グネシウム粉末の純度を上げるために、本 明の製造方法では、前述の閉鎖系での一次 成後に、さらに開放系で2回目の焼成を行う ことが好ましい。

 この二次焼成は、通常の開放系で行う焼 であってよく、例えば、大気雰囲気下で雰 気ガスの流動があるガス炉や、酸素気流下 の電気炉等で行うことができる。二次焼成 の温度、時間、及び、炉内の気体としては ハロゲン化物イオン含有化合物等の不純物 除去できればよく、特に限定されないが、 晶成長は一次焼成ですでに完了しているの 、二次焼成の時間は比較的短めとしてもよ 。

 本発明の製法によって、図4で示すような きわめて大きな粒径を持つ立方体状の酸化マ グネシウム粒子を得ることができる。この立 方体状粒子は、走査型電子顕微鏡にて観察し た際に、立方体の一辺の長さが4.0μmより大き くなっている。このように大きく、微粒子が なく、表面が清浄かつ平滑である立方体状粒 子はこれまでまったく報告されていない。本 発明による製法の範囲内で、立方体の一辺の 長さが20μm以下、あるいは、10μm以下の粒子 得ることが可能と考えられる。当該粒子を む酸化マグネシウム粉末も本発明の範囲内 ものである。

 以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳 に説明するが、本発明はこれら実施例に限 されるものではない。

 以下の実施例では、以下に示す手順に沿っ 各種物性等を測定した。
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)観察法
 走査型電子顕微鏡(商品名:JSM-5410、JEOL製)を 用してSEM組成像を撮影し、粒子形状の観察 よび立方体状酸化マグネシウムの一辺の長 の測定をした。
(2)レーザ回折散乱式粒度分布測定法

 レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(商品名 :HIRA、日機装 製)を使用して、累積10%粒子径( D 10 )、累積50%粒子径(D 50 )、累積90%粒子径(D 90 )を測定した。

(3)BET比表面積測定法

 比表面積測定装置(商品名:Macsorb1210、マウン テック 製)を使用して、ガス吸着法により比 表面積を測定した。

(4)酸化マグネシウムの純度測定法

 酸化マグネシウムの純度は、100質量%から測 定した不純物量の合計を差し引いた値として 算出した。

(5)酸化マグネシウムの不純物量測定法

 酸化マグネシウムの不純物量(Si、Al、Ca、Fe V、Cr、Mn、Ni、Zn、B、Zr、Cu、Na、K、Cl)は、IC P発光分析装置(商品名:SPS-1700、セイコーイン ツルメンツ 製)を使用して試料を酸に溶解 たのち測定した。
(6)酸化マグネシウム前駆体のハロゲン化物量 測定法
 酸化マグネシウム前駆体のハロゲン化物量 、ICP発光分析装置(商品名:SPS-1700、セイコー インスツルメンツ 製)により測定した。

 実施例1

 塩化マグネシウム(MgCl 2 )水溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を反 させて、水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )スラリーを得た。この水酸化マグネシウム ラリーをイオン交換水でスラリー濃度75g/Lに 希釈し、希釈した水酸化マグネシウムスラリ ー30Lを100~150rpmの速度で攪拌しながら、水蒸 を吹込み、液温を60℃に調整した。次に、液 温を60℃に保持しながら、タンクの下部からC O 2 濃度100容量%の炭酸ガスを流量10L/minで3時間(0. 8モル当量)吹込み、一部を塩基性炭酸マグネ ウムに変換した。

 次いで、このスラリーを濾過し、得られた ーキを、イオン交換水20Lで水洗した。この 、当該ケーキを120℃で10時間乾燥機にて乾 し、前駆体を得た。X線回折分析の結果から 前駆体が、水酸化マグネシウムと塩基性炭 マグネシウム(化学式:4MgCO 3 ・Mg(OH) 2 ・8H 2 O及び4MgCO 3 ・Mg(OH) 2 ・4H 2 O)との混合物であることが分かった。この時 で、上記前駆体に含まれる塩化物イオンの 有量を測定したところ、3質量%であった。

 次に、この水酸化マグネシウムと塩基性炭 マグネシウムの混合物である前駆体を、大 雰囲気で雰囲気ガスの流出入がない閉鎖式 電気炉にて、昇温速度6℃/minで1200℃まで加 し同温度で5時間保持することによって焼成 し、酸化マグネシウム粉末を形成させた。こ れをさらに、大気雰囲気で雰囲気ガスの流入 があるガス炉にて1200℃で1時間再焼成した。 られた酸化マグネシウム粉末を走査型電子 微鏡(15,000倍)で観察した結果を図1に示す。 察された結晶の形状はほぼ全てが立方体状 あり、きわめて粒子形状がそろっている。 た、立方体状結晶の一辺は、およそ1μm前後 であり、D 90 /D 10 が小さいことからきわめて粒度分布の狭いも のであることが分かる。後述する図9とは異 り、結晶表面に微粒子が付着しておらず、 晶表面が平滑で、清浄である。さらには、 々の立方体状結晶粒がよく分離している。

 実施例2

 水洗工程でのイオン交換水の使用量を10Lに 更したこと以外は、実施例1と同様の手順で 、塩基性炭酸マグネシウムと水酸化マグネシ ウムとの混合物である前駆体を得、さらに酸 化マグネシウム粉末を得た。ただし、前記前 駆体に含まれる塩化物イオンの含有量は8質 %であった。得られた酸化マグネシウム粉末 走査型電子顕微鏡(15,000倍)で観察した結果 図2に示す。実施例1と比較すると、立方体状 結晶の一辺がおよそ1.5μm程度と大きくなって いる。

 実施例3

 水洗工程を実施しなかったこと以外は、実 例1と同様の手順で、塩基性炭酸マグネシウ ムと水酸化マグネシウムとの混合物である前 駆体を得、さらに酸化マグネシウム粉末を得 た。ただし、前記前駆体に含まれる塩化物イ オンの含有量は14質量%であった。得られた酸 化マグネシウム粉末を走査型電子顕微鏡(15,00 0倍)で観察した結果を図3に示す。実施例1と 較すると、立方体状結晶の一辺がおよそ2μm 度と大きくなっている。

 実施例4
 水洗工程でのイオン交換水の使用量を30Lに 更し、水洗後、乾燥前のケーキに対して6N 酸をイオン交換水で約10倍に希釈して添加し たこと以外は、実施例1と同様の手順で、塩 性炭酸マグネシウムと水酸化マグネシウム の混合物である前駆体を得、さらに酸化マ ネシウム粉末を得た。ただし、前記前駆体 含まれる塩化物イオンの含有量は20質量%で った。得られた酸化マグネシウム粉末を走 型電子顕微鏡(15,000倍)で観察した結果を図4 示す。立方体状結晶の一辺がおよそ4μm程度 達しており、きわめて大きな立方体状酸化 グネシウム粒子が形成されている。

 実施例5

 塩化マグネシウム溶液(MgCl 2 )に水酸化ナトリウム溶液(NaOH)を反応させて 水酸化マグネシウム(Mg(OH) 2 )スラリーを得た。この水酸化マグネシウム ラリーをイオン交換水でスラリー濃度75g/Lに 希釈し、希釈した水酸化マグネシウムスラリ ー30Lを500~600rpmの速度で攪拌しながら、オー クレーブで液温を115℃に保持し、1時間水熱 応した。次いでこのスラリーを濾過し、得 れたケーキを、イオン交換水30Lで水洗した この後、当該ケーキを120℃で10時間乾燥機 て乾燥し、前駆体を得た。この時点で、上 前駆体に含まれる塩化物イオンの含有量を 定したところ、1質量%であった。次にこの前 駆体を、大気雰囲気で雰囲気ガスの流出入が ない閉鎖式の電気炉にて、昇温速度6℃/minで1 200℃まで過熱し同温度で5時間保持すること よって焼成し、酸化マグネシウム粉末を生 させた。これをさらに大気雰囲気で雰囲気 スの流出入があるガス炉にて1200℃で1時間再 焼成した。得られた酸化マグネシウム粉末を 走査型電子顕微鏡(15,000倍)で観察した結果を 5に示す。観察された結晶の形状はほぼ全て が立方体状であり、きわめて粒子形状がそろ っている。また、立方体状結晶の一辺は、お よそ0.5μm前後であり、D 90 /D 10 が小さいことからきわめて粒度分布幅の狭い ものであることが分かる。

 比較例1
 焼成を、大気雰囲気で雰囲気ガスの流出入 あるガス炉において実施したこと以外は、 施例1と同様にして、酸化マグネシウム粉末 を得た。得られた酸化マグネシウム粉末を走 査型電子顕微鏡(15,000倍)で観察した結果を図6 に示す。得られた酸化マグネシウム粉末は結 晶が立方体状に成長しておらず、さらに、粒 子径も小さく、各粒子が凝集している。

 比較例2

 水洗工程でのイオン交換水の使用量を50Lに 更したこと以外は、実施例1と同様の手順で 、塩基性炭酸マグネシウムと水酸化マグネシ ウムとの混合物である前駆体を得、さらに酸 化マグネシウム粉末を得た。ただし、前記前 駆体に含まれる塩化物イオンの含有量は0.1質 量%であった。得られた酸化マグネシウム粉 を走査型電子顕微鏡(15,000倍)で観察した結果 を図7に示す。得られた酸化マグネシウム粉 は結晶が立方体状に成長しておらず、さら 、粒子径も小さく、各粒子が凝集している

 比較例3

 酸化マグネシウムの前駆体として、不純物 1質量%程度含む水酸化マグネシウム(タテホ 学工業株式会社製、純度99質量%、一次粒子 0.3~0.5μm、比表面積30~40m 2 /g)を使用した。含有塩素量は、0.5質量%であ た。次にこの水酸化マグネシウムを、大気 囲気で雰囲気ガスの流出入がない閉鎖式の 気炉にて、昇温速度6℃/minで1200℃まで過熱 同温度で5時間保持することによって焼成し 酸化マグネシウム粉末を生成させた。これ さらに大気雰囲気で雰囲気ガスの流出入が るガス炉にて1200℃で1時間再焼成した。得 れた酸化マグネシウム粉末を走査型電子顕 鏡(15,000倍)で観察した結果を図8に示す。得 れる酸化マグネシウムが、不純物を1質量%程 度含みMgO純度の低い場合は、粒子成長は起こ っているものの結晶形状は立方体ではない。

 比較例4

 市販の気相法により製造された酸化マグネ ウム粉末を走査型電子顕微鏡(15,000倍)で観 した結果を図9に示す。立方体状結晶が含ま ているが、それと同時に、微細な微粒子状 結晶が大量に付着しており、表面が清浄と 言えないものである。

 比較例5
 市販の酸化マグネシウム粉末を走査型電子 微鏡(15,000倍)で観察した結果を図10に示す。 結晶が立方体状ではなく、さらに、粒子径も 小さく、各粒子が凝集している。

 実施例1~5及び比較例1~5の酸化マグネシウム 末の物性値及び不純物量を測定した結果を 1及び表2に示す。

 本発明の立方体状酸化マグネシウム粉末 、添加剤、充填材、電子部品用原料、医薬 、研究室での試薬、各種ターゲット材原料 超伝導薄膜下地膜用の原料、TMR素子用のト ネル障壁原料、PDP用の保護膜原料、PDP用結 酸化マグネシウム層原料などとして有用な のである。


実施例1で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 実施例2で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 実施例3で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 実施例4で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 実施例5で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 比較例1で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 比較例2で得た酸化マグネシウム粉末の 電子顕微鏡写真 比較例3の酸化マグネシウム粉末の電子 顕微鏡写真 比較例4の酸化マグネシウム粉末の電子 顕微鏡写真 比較例5の酸化マグネシウム粉末の電 顕微鏡写真




 
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