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Patent Searching and Data


Title:
DYEABLE CROSSLINKED ACRYLATE FIBER, PROCESS FOR PRODUCING THE SAME, AND DYED CROSSLINKED ACRYLATE FIBER OBTAINED BY DYEING THE FIBER
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/057235
Kind Code:
A1
Abstract:
A crosslinked acrylate fiber which is excellent in the property of being evenly and densely dyed, can have high color fastness, and even after dyeing, can have the same properties including moisture-absorbing/releasing properties, antibacterial properties, and deodorizing properties as before dyeing. The dyeable crosslinked acrylate fiber is characterized by being obtained by subjecting an acrylic fiber to a treatment with a hydrazine compound and a treatment with an aminated organic compound having two or more primary amino groups per molecule and then hydrolyzing the fiber.

Inventors:
YAMAUCHI TAKAO (JP)
TANAKA KOJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/001835
Publication Date:
May 07, 2009
Filing Date:
July 09, 2008
Export Citation:
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Assignee:
JAPAN EXLAN CO LTD (JP)
YAMAUCHI TAKAO (JP)
TANAKA KOJI (JP)
International Classes:
D06M13/332; D06M11/63; D06M11/65; D06P1/38; D06P3/70; D06P5/00; D06M101/28
Foreign References:
JP2006070421A2006-03-16
JPS6375041A1988-04-05
Attorney, Agent or Firm:
KAZAHAYA, Nobuaki et al. (6-20 Tosabori 1-chome,Nishi-ku, Osaka-sh, Osaka 01, JP)
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Claims:
 アクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物による処理、および、1分子中に2個以上の1級アミノ基を有するアミノ基含有有機化合物による処理を施した後、加水分解処理を施して得られることを特徴とする可染性架橋アクリレート系繊維。
 1分子中に2個以上の1級アミノ基を有するアミノ基含有有機化合物が、1分子中に3個以上のアミノ基を有し、かつアミノ基間を3個以上の炭素を有するアルキレン基で結合した構造を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の可染性架橋アクリレート系繊維。
 ヒドラジン系化合物による処理を施した後に、アミノ基含有有機化合物による処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の可染性架橋アクリレート系繊維。
 アクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物による処理、および、1分子中に2個以上の1級アミノ基を有するアミノ基含有有機化合物による処理を施した後、加水分解処理を施すことを特徴とする可染性架橋アクリレート系繊維の製造方法。
 請求項1~3のいずれか一項に記載の可染性架橋アクリレート系繊維に酸性条件下で反応染料を吸着させた後、アルカリ性条件下で該染料と繊維中のアミノ基を反応させることにより得られることを特徴とする染色された架橋アクリレート系繊維。
Description:
可染性架橋アクリレート系繊維 よびその製造方法ならびに該繊維を染色し 得られる染色された架橋アクリレート系繊

 本発明は、可染性架橋アクリレート系繊 に関する。詳細には、架橋アクリレート系 維の製造時にアミノ基含有有機化合物によ 処理を施してアミノ基を導入することによ 、吸放湿性、消臭性等の性能を損なうこと く、染色性を向上させた架橋アクリレート 繊維に関する。

 架橋アクリレート系繊維は、優れた吸放 性、発熱性、消臭性、抗菌性を有するため 多機能性繊維や高機能性繊維として、近年 注目されている。しかし、該繊維は、色相 淡桃色から褐色であること、あるいは、カ ボキシル基を有するため、カチオン染料で を付けることは可能であるものの、繊維自 の持つ水膨潤性のために染色堅牢度が悪く 実用的なレベルの染色が難しいことなどそ 色相において課題を有するものである。こ ため、該繊維を単独で使用したもののみな ず、混用した繊維構造体においても、衣料 リビング、建材などの色相が重要視される 野への応用は制限されていた。

 かかる問題点に関して特許文献1において は、黒色化するために原料繊維であるアクリ ル系繊維にあらかじめ、0.5~5重量%のカーボン ブラックを含有させておき、該原料繊維にヒ ドラジン系化合物による架橋の導入および加 水分解によるカルボキシル基の導入を行って いる。しかしながら、この方法は黒色に限定 されたものである。仮に種々の色に着色した 原料繊維を使用するとしても、多岐にわたる 色の種類に対しては工業的には到底対応しう るものではない。

 また、特許文献2には、架橋アクリレート 系繊維に実用レベルの染色性を付与するため 、1分子中に水酸基およびアミノ基を有する 染性化合物を含有させておく方法が記載さ ている。該方法は、アクリル系繊維にヒド ジン系化合物による架橋導入処理、アルカ 性金属塩水溶液による加水分解処理を施し 得た架橋アクリレート系繊維を、1分子中に 酸基およびアミノ基を有する可染化化合物 溶液にて含浸処理するものであり、得られ 繊維は湿潤摩擦堅牢度3級以上の染色性を示 している。

 しかしながら、この方法では実質的に処 工程が増えることになり、工業的には生産 が下がることは否めない。また、可染化化 物のアミノ基と架橋アクリレート繊維中の ルボキシル基を反応させることにより可染 するため、多量のカルボキシル基を有する 橋アクリレート系繊維を処理する場合には 均一に付与することが難しい。また、カル キシル基が可染化化合物によって封鎖され ことにより、架橋アクリレート系繊維の本 有する吸放湿性能や消臭性能が低下してし う恐れもある。

 一方、特許文献3においては、染色方法を改 善することで架橋アクリレート系繊維の染色 堅牢度の向上を試みている。該方法において は、ヒドラジン系化合物による架橋導入処理 の際に、一部架橋せずにアミノ基が形成され る部分があることから、該アミノ基を反応染 料の染着座席として利用して染色を行い、良 好な染色堅牢度を発現させている。しかし、 該架橋導入処理に伴い形成されるアミノ基は 数が少ないため、均染性や濃染性に課題があ り、一方で繊維物性に大きく影響する架橋条 件を染色性向上を目的に変更することは難し いという根本的な問題を有している。

特開2003-89971号公報

特開2003-278079号公報

特開2006-70421号公報

 本発明は、かかる従来技術の現状に鑑み 案されたものであり、その目的は、均染性 濃染性に優れ、高い染色堅牢度を発現する とができ、染色後においても、染色前と同 に吸放湿性、抗菌性、消臭性などの特性を 現できる架橋アクリレート系繊維を提供す ことにある。

 本発明者らは、かかる目的を達成するた に、染色性に優れた架橋アクリレート系繊 を得るべく、鋭意研究を続けてきた結果、 応染料の染着座席となるアミノ基を共有結 によって導入した新規な架橋アクリレート 繊維が、吸放湿性、吸湿発熱性、抗菌性、 臭性などの架橋アクリレート系繊維の特性 損なうことなく、均一、濃色に染色でき、 色堅牢度も優れたものであることを見出し 本発明を完成するに至った。

 本発明の上記目的は、以下の手段により達 される。すなわち、
[1]アクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物に よる処理、および、1分子中に2個以上の1級ア ミノ基を有するアミノ基含有有機化合物によ る処理を施した後、加水分解処理を施して得 られることを特徴とする可染性架橋アクリレ ート系繊維。
[2]1分子中に2個以上の1級アミノ基を有するア ミノ基含有有機化合物が、1分子中に3個以上 アミノ基を有し、かつアミノ基間を3個以上 の炭素を有するアルキレン基で結合した構造 を有するものであることを特徴とする上記[1] に記載の可染性架橋アクリレート系繊維。
[3]ヒドラジン系化合物による処理を施した後 に、アミノ基含有有機化合物による処理を施 すことを特徴とする上記[1]に記載の可染性架 橋アクリレート系繊維。
[4]アクリル系繊維に、ヒドラジン系化合物に よる処理、および、1分子中に2個以上の1級ア ミノ基を有するアミノ基含有有機化合物によ る処理を施した後、加水分解処理を施すこと を特徴とする可染性架橋アクリレート系繊維 の製造方法。
[5]上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の可染性 橋アクリレート系繊維に酸性条件下で反応 料を吸着させた後、アルカリ性条件下で該 料と繊維中のアミノ基を反応させることに り得られることを特徴とする染色された架 アクリレート系繊維。

 本発明の可染性架橋アクリレート系繊維 用いることにより、吸放湿性、吸湿発熱性 抗菌性、消臭性などの架橋アクリレート系 維の特性を損なうことなく、均一、濃色に 色され、実用に耐えうる染色堅牢度を有す 架橋アクリレート系繊維を得ることができ 。これにより、高度で多様な機能を有しな ら染色特性の低さのために用途展開が制限 れていた架橋アクリレート系繊維を、色相 重要視する分野に対しても展開することが 能となる。かかる本発明の可染性架橋アク レート系繊維は、多機能化あるいは高機能 の求め続けられる衣料、リビング、建材な 様々な分野において極めて有用である。

 本発明に採用するアクリル系繊維は、ア リロニトリル(以下ANという)系重合体により 形成された繊維であればよく、AN系重合体と ては、AN単独重合体あるいはANと他の単量体 との共重合体のいずれでも採用しうる。

 AN系重合体におけるANの共重合量は、好ま しくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以 上、さらに好ましくは80重量%以上である。本 発明においては、アクリル系繊維を形成する AN系重合体のニトリル基とヒドラジン系化合 およびアミノ基含有有機化合物を反応させ ことで繊維中に架橋構造およびアミノ基を 入する。架橋構造は繊維物性に、アミノ基 染色性に大きく影響するものであり、ANが なすぎる場合、架橋構造やアミノ基が少な ならざるを得なくなり、繊維物性や染色性 不十分となる可能性があるが、ANの共重合量 を上記範囲とすることで良好な結果を得られ やすくなる。

 AN系重合体としてANと他の単量体との共重 合体を採用する場合、AN以外の共重合成分と ては、メタリルスルホン酸、p-スチレンス ホン酸等のスルホン酸基含有単量体及びそ 塩、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のカル ボン酸基含有単量体及びその塩、スチレン、 酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、(メ タ)アクリルアミド等の単量体などが挙げら 、ANと共重合可能な単量体であれば特に限定 されない。

 また、本発明に採用するアクリル系繊維 製造手段は特に制限がなく、基本的には公 の方法をそのまま適用して製造すればよい 形態としては、短繊維、トウ、糸、編織物 不織布等いずれの形態のものでもよく、ま 、製造工程中途品、廃繊維などでも採用で る。

 特に、湿式または乾/湿式紡糸により得ら れる、乾燥緻密化、湿熱緩和処理等の熱処理 の施されていない比較的粗な構造を有するア クリル系繊維、具体的には、乾燥繊維重量基 準で表した含有水分量の百分率である水膨潤 度が30~150%のアクリル系繊維を使用した場合 は、反応液中での繊維の分散性や繊維中へ アミノ基含有有機化合物の浸透性などが高 なるので、反応が均一且つ速やかに進むと う利点がある。

 本発明におけるヒドラジン系化合物によ 処理とは、AN系重合体のニトリル基などと ドラジン系化合物を反応させることを言う かかる反応によりAN系重合体間あるいは重合 体内に架橋構造が形成されるが、該架橋構造 は、後述する加水分解処理において導入され るカルボキシル基によって重合体の親水性が 高まり、吸湿時などに繊維物性が低下するの を抑制する効果がある。

 本発明に採用するヒドラジン系化合物と ては、特に限定されるものではなく、水加 ドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジ 、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネ ト等の他に、エチレンジアミン、硫酸グア ジン、塩酸グアニジン、リン酸グアニジン メラミン等のアミノ基を複数含有する化合 が例示される。

 本発明におけるアミノ基含有有機化合物 よる処理とは、AN系重合体のニトリル基な とアミノ基含有有機化合物を反応させるこ を言う。これにより染着座席となるアミノ が導入される。該アミノ基含有有機化合物 しては、1分子中に2個以上の1級アミノ基を するものを採用する。これは、少なくともAN 系重合体のニトリル基と反応するアミノ基と 染着座席となるアミノ基がそれぞれ1個ずつ 要であり、また、ニトリル基あるいは反応 料に対する反応性の観点からアミノ基は1級 ミノ基であることが望ましいことによる。 お、かかるアミノ基含有有機化合物による 理においても、染着座席となるべきアミノ がAN系重合体のニトリル基と反応した場合 上述したヒドラジン系化合物による処理と 様に架橋構造が形成されうるが、反応条件 制御により架橋構造が形成される割合を低 することができる。

 かかるアミノ基含有有機化合物の具体例 しては、エチレンジアミン、ジエチレント アミン、トリエチレンテトラミン、テトラ チレンペンタミン、ポリビニルアミン、ポ エチレンイミン、3,3’-イミノビス(プロピ アミン)、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピ アミン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチ ンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1, 3-プロピレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプ ロピル)-1,3-ブチレンジアミン、N,N’-ビス(3- ミノプロピル)-1,4-ブチレンジアミンなどが げられる。

 かかるアミノ基含有有機化合物の中でも 1分子中に3個以上のアミノ基を有し、かつ ミノ基間を3個以上の炭素を有するアルキレ 基で結合した構造を有するものであること より好ましい。なお、ここで言う炭素の個 は、アミノ基間を直接結ぶ炭素の数のこと あって、分岐鎖や置換基などの炭素の数は まない。1分子中に2個のアミノ基を有する 合には、上述したように架橋構造が形成さ て染着座席となるべきアミノ基が失われる 能性があるが、1分子中に3個以上のアミノ基 を有する場合には、2個のアミノ基がAN系重合 体のニトリル基と反応して架橋構造が形成さ れても1個以上のアミノ基が残存し、しかも 体的な制限からこのアミノ基がさらにAN系重 合体のニトリル基と反応する可能性は低いた め、染着座席となりうるアミノ基をより確実 に確保できる。

 また、かかる構造を有するアミノ基含有 機化合物は、ニトリル基との反応速度が速 、100℃以下の処理温度でも短時間で反応で るので、圧力容器を必要とせず、コスト的 有利で好ましい。さらに、かかる構造を有 るアミノ基含有有機化合物の場合、得られ 繊維を着色の少ないものにできるので、染 に有利である。

 かかる構造を有するアミノ基含有有機化 物としては、3,3’-イミノビス(プロピルア ン)、N-メチル-3,3’-イミノビス(プロピルア ン)、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレン アミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プ ピレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピ ル)-1,3-ブチレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミ プロピル)-1,4-ブチレンジアミンなどを例示 ることができる。

 また、アミノ基含有有機化合物による処 においては、アミノ基含有有機化合物の量 該化合物の有するアミノ基数を選択するこ により、染着座席数を容易に調節できる。 のため、均染性や濃染性を向上させること 可能である。

 本発明においては、アクリル系繊維に上 したヒドラジン系化合物による処理および ミノ基含有有機化合物による処理を行うが 後述する加水分解処理の前であれば、どち の処理を先に行ってもよく、同時に処理を ってもよい。ただし、処理の順序により後 するような特徴があるので、その特徴を認 した上で処理順序を決定することが望まし 。

 まず、同時処理の場合、工程数が減少す という利点があるが、未反応のヒドラジン 化合物やアミノ基含有有機化合物を回収し 再利用することが難しくなり、架橋構造や ミノ基の導入量の制御も複雑となる。一方 各処理を別々に行う場合には、工程数が増 るものの、薬剤の回収再利用や構造制御は 易となる。特に、ヒドラジン系化合物によ 処理を先に行った場合、アミノ基含有有機 合物による処理の段階ではすでに架橋構造 存在し、立体的な制約が大きくなるので、 述したようなアミノ基含有有機化合物によ 架橋構造は形成されにくくなり、繊維中に 着座席となるアミノ基を効率よく導入する とができ、好ましい。

 ヒドラジン系化合物あるいはアミノ基含 有機化合物を反応させる程度としては、目 とする繊維物性や染色性能を基に必要とな 架橋構造量やアミノ基量を勘案し適宜設定 ればよく、反応条件によって任意に調整す ことができるが、後述する加水分解処理の 象となるべきニトリル基などの官能基が残 するように反応を行う必要がある。

 ヒドラジン系化合物あるいはアミノ基含 有機化合物でアクリル系繊維を処理する方 としては、特に制限されるものではないが これらの化合物の水溶液を用意し、アクリ 系繊維を該水溶液に浸漬、もしくは、アク ル系繊維に該水溶液を噴霧、もしくは塗布 処理する方法が挙げられる。

 ヒドラジン系化合物による処理およびア ノ基含有有機化合物による処理の後には、 処理で残留したこれらの化合物を十分に除 した後、酸処理を施しても良い。酸処理を すことにより、繊維の白度を向上させるこ ができ、染色に有利となる。かかる酸処理 用いられる酸としては、硝酸、硫酸、塩酸 の鉱酸や蟻酸、酢酸等の有機酸を挙げるこ ができる。

 本発明においては、アクリル系繊維に、 ドラジン系化合物による処理およびアミノ 含有有機化合物による処理、並びに所望に り酸処理を施した後に加水分解処理を施す 該加水分解処理により、ヒドラジン系化合 による処理、アミノ基含有有機化合物によ 処理あるいはその後の酸処理において反応 ずに残存しているニトリル基やこれらの処 により一部のニトリル基が加水分解されて 成されるアミド基がカルボキシル基に変換 れる。

 本発明においては、ヒドラジン系化合物 アミノ基含有有機化合物による処理の後に 水分解処理を行うことが、架橋構造やアミ 基を十分導入するために重要である。もし ヒドラジン系化合物やアミノ基含有有機化 物による処理の前に加水分解処理を行った すると、カルボキシル基存在下でヒドラジ 系化合物やアミノ基含有有機化合物を反応 せることとなるが、これらの化合物はカル キシル基と容易にイオン結合を形成するた 、肝心のニトリル基との反応が進行せず、 橋構造やアミノ基の導入が不十分となる。

 カルボキシル基の導入量は、該基が架橋 クリレート系繊維において吸放湿性、吸湿 熱性、消臭性などの機能を発現させるもと なることから、目的とする機能が十分に発 できるように適宜設定すればよく、反応条 によって任意に調整することができる。一 的には1~12mmol/g、好ましくは3~10mmol/g、さら 好ましくは3~8mmol/gのカルボキシル基を導入 ることが望ましい。

 かかる加水分解処理に採用される化合物 しては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ 類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩など アルカリ性金属化合物などを用いることが きる。

 また、かかる加水分解処理の後に還元処 を行うこともできる。還元処理を行うこと 繊維の白度が向上し、染色に有利となる。 かる還元処理に使用する還元処理剤として 、ハイドロサルファイト塩、チオ硫酸塩、 硫酸塩、亜硝酸塩、二酸化チオ尿素、アス ルビン酸塩、ヒドラジン系化合物からなる より選ばれた1種類または2種類以上を組み わせた薬剤などを挙げることができる。

 以上のようにして得られる本発明の可染 架橋アクリレート系繊維は、染色性が向上 ていることに加え、従来の架橋アクリレー 系繊維と同様に吸放湿性、吸湿発熱性、消 性などの機能を発現することが可能である

 次に、先にヒドラジン系化合物による処 、後にアミノ基含有有機化合物による処理 行う場合を例にとって製造方法を詳述する

 まず、上述したアクリル系繊維に対して ドラジン系化合物による処理を施すが、該 理においては上述したように架橋構造が導 され、これに伴い繊維中の窒素含有量が増 する。このため、窒素含有量の増加は架橋 造導入量の目安となる。良好な繊維物性を るためには窒素含有量の増加を0.1~10重量%に 調整することが望ましい。そのための具体的 な反応条件としては、ヒドラジン系化合物の 濃度5~60重量%の水溶液中、50~120℃、5時間以内 で処理する条件を挙げることができる。ここ で、窒素含有量の増加とは原料となるアクリ ル系繊維の窒素含有量とヒドラジン系化合物 によって処理された繊維の窒素含有量の差を いうものである。

 次に、ヒドラジン系化合物による処理を た繊維を水洗した後、アミノ基含有有機化 物による処理を施す。該処理においては染 座席となるアミノ基が導入される。具体的 反応条件としては、アミノ基含有有機化合 濃度1重量%以上の水溶液中、50~150℃、好ま くは80℃~150℃で30分~48時間処理する条件を挙 げることができる。特に、アミノ基含有有機 化合物として、アミノ基間を炭素数が3以上 アルキレン基で結合した構造を有するもの 採用する場合には、50~150℃、30分~4時間で処 することができる。かかる条件で処理する とにより、飽和染着量の高い繊維を得るこ ができ、優れた均染性や濃染性を発現する とが可能となる。

 アミノ基含有有機化合物による処理を経 繊維は、水洗後、酸処理を施しても良い。 処理に用いる酸としては上述した酸を採用 ることができる。酸処理の条件としては、 に限定されないが、一般的には酸濃度5~20重 量%、好ましくは7~15重量%の水溶液に、50~120℃ で0.5~10時間被処理繊維を浸漬するといった例 が挙げられる。

 以上のような処理を施された繊維は、水 後、加水分解処理を施される。この処理に り、繊維中にカルボキシル基が導入される なお、上述したアルカリ性金属化合物で加 分解処理を行った場合、形成されるカルボ シル基はこれらの化合物由来の金属イオン 結合するので、大部分が金属塩型カルボキ ル基となる。

 カルボキシル基の導入量は、最終的な繊 に求められる機能を勘案して設定すればよ が、一般的には、上述したとおりである。 体的な反応条件としては、アルカリ性金属 合物を用いる場合、1~10重量%、さらに好ま くは1~5重量%の水溶液中、50~120℃で1~10時間以 内で処理する条件を挙げることができる。

 かかる加水分解処理の後には還元処理を ってもよい。還元処理に用いる還元処理剤 しては上述した薬剤を採用することができ 。また、処理条件としては、薬剤濃度0.5~5 量%の水溶液に、温度50℃~120℃で30分間~5時間 被処理繊維を浸漬するといった例が挙げられ る。

 本発明の可染性架橋アクリレート系繊維 染色する方法としては、特に限定されず、 ミノ基と反応する反応染料を用いる染色方 などを採用することができる。特に、背景 術の項で挙げた特許文献3に記載の染色方法 を採用した場合、架橋アクリレート系繊維の 吸放湿性、吸湿発熱性、消臭性などの特色あ る機能を損なわずに、良好な染色堅牢度を有 するだけでなく、該染色方法を従来の架橋ア クリレート系繊維に適用しても得られなかっ たような優れた均一性、濃色性を有する、染 色された架橋アクリレート系繊維を得ること ができる。

 ここで、特許文献3に記載の染色方法とは 、架橋アクリレート系繊維に酸性条件下で反 応染料を吸着させた後、アルカリ性条件下で 該染料と繊維中のアミノ基を反応させるとい う方法である。

 かかる染色方法においてはアミノ基と反 する反応染料を使用する。反応染料として 、例えば、モノクロロトリアジン染料、ジ ロロトリアジン染料等のクロロトリアジン 料や、クロルピリミジン染料、ビニルスル ン染料等が挙げられる。また、スルファー エチルスルホン基を2個有する染料やモノク ロロトリアジン基を2個以上有する染料等の 数の同種官能基を有する染料、さらには、 ルファートエチルスルホン/モノクロロトリ ジン系染料、スルファートエチルスルホン/ ジクロロトリアジン系染料、スルファートエ チルスルホン/ジフルオロモノクロロトリア ン系染料等の複数の異種官能基を有する染 等も使用することができる。

 染色の手順としては、まず、酸性条件下 反応染料を本発明の可染性架橋アクリレー 系繊維に吸着させる。具体的には、反応染 と酸が添加された状態の浴のpHを5以下とし これに本発明の可染性架橋アクリレート系 維を浸漬させる。pHを調整する酸としては 酢酸、蟻酸、乳酸、酒石酸等の有機酸や硝 、硫酸、塩酸等の鉱酸の水溶液を用いる。 理温度は通常60℃以上とする。

 次に、アルカリ性条件下で本発明の可染 架橋アクリレート系繊維中のアミノ基と染 との間に化学的に共有結合を生じさせる。 体的には、反応染料を吸着させた状態の本 明の可染性架橋アクリレート系繊維を水に 漬し、アルカリ性化合物を添加することに り反応を進行させ、最終的に処理後の浴pH 9以上となるようにする。pHを調整するアル リ性化合物としては、アルカリ金属などの 機酸塩、炭酸塩、水酸化物やアミン化合物 アンモニア等を用いる。処理温度は通常60℃ 以上とする。

 なお、かかる染色方法により染色した後 は、繊維中のカルボキシル基のカウンター オンが上記アルカリ性化合物由来のイオン 置換された状態となるが、さらにイオン交 することにより所望の金属塩型カルボキシ 基および/またはH型カルボキシル基に変換 ることが可能であり、これにより、吸放湿 、吸湿発熱性、消臭性などの機能を調整す ことができる。

 以下、実施例により本発明を具体的に説 するが、本発明は以下の実施例に限定され ものではない。なお、実施例中の部及び百 率は、断りのない限り重量基準で示す。

(1) カルボキシル基量[mmol/g]
 試料約1gに200mlの水を加えた後、1mol/l塩酸水 溶液を添加してpH2にし、試料を水洗、脱水、 乾燥した。次いで、十分乾燥したのち、約0.2 gを精秤し(A[g])、0.1mol/lの水酸化ナトリウム水 溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴 定曲線からカルボキシル基に消費された水酸 化ナトリウム水溶液消費量(B[ml])を求め、次 によってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した 。
 カルボキシル基量[mmol/g]=0.1B/A

(2)飽和吸湿率[%]
 試料約5.0gを熱風乾燥機で105℃、16時間乾燥 て重量を測定した(C[g])。次に該試料を温度2 0℃で65%RHの恒温槽に24時間入れた後、このよ にして吸湿させた試料の重量を測定した(D[g ])。以上の測定結果から、次式によって飽和 湿率(%)を算出した。
 飽和吸湿率[%]={(D-C)/C}×100

(3)飽和染着量[%owf]
 反応染料Sumifix Supra Blue BRF(住友化学製)0.60 gおよび蟻酸を水に添加し、pH2.0、120mlの染浴 作製した。該染浴にカルボキシル基をH型に した試料0.60gを浸漬し、60℃で5時間染料吸着 理を行った。処理後の染浴から試料を濾過 て得られた染液の吸光スペクトルを、U-1100 Spectrophotometer(日立製作所製)を使用して測定 、ピーク波長610nmの吸光度から吸光光度法 より残留染料量を定量した。測定結果から 式によって飽和染着量(%owf)を算出した。
 飽和染着量[%owf]={(投入染料量[g]-残留染料量 [g])/試料重量[g]}×100
 かかる飽和染着量は試料中に含有されるア ノ基量が多いほど大きくなることから、試 中のアミノ基含有量の指標となる。

(4)汗染色堅牢度
 反応染料Sumifix Black ENS150(住友化学製)0.49g よび蟻酸を水に添加し、pH2.0、120mlの染浴を 成した。該染浴にカルボキシル基をH型にし た試料7.00gを浸漬し、60℃で5時間染料吸着処 を行った。得られた試料を水洗した後、210m lの水に浸漬し、60℃まで昇温した。次いで、 炭酸ナトリウムを添加して、pH11にし、60℃、 1時間浸漬した。その後、水洗、ソーピング 水洗、脱水を順次行うことによって、染色 れた試料を作製した。作製した試料に対し 、JIS-L-0848に準拠し、アルカリ性人工汗液を いて試験を行い、変退色用グレースケール 用いて試験前の試料と比較し、染色堅牢度 判定した。汗染色堅牢度は3級以上であれば 実用に耐えうるものである。

(5)湿潤摩擦染色堅牢度
 上述の汗染色堅牢度の判定と同様にして染 した試料に対して、JIS-L-0849に準拠し、摩擦 試験機II形によって試験を行い、汚染用グレ スケールを用いて摩擦用白綿布の着色の程 を判定した。湿潤摩擦染色堅牢度は3級以上 であれば実用に耐えうるものである。

(6)濃染性
 上述の汗染色堅牢度の判定と同様にして染 した試料の濃染性を、目視により以下の3段 階で評価した。◎または○であれば実用に耐 えうるものである。
◎:濃色で優れた染色品位である
○:製品として許容される範囲の僅かな欠点 存在する
×:染色が不十分であり、製品として出荷不可 能な重大な欠点が存在する

(7)均染性
 上述の汗染色堅牢度の判定と同様にして染 した試料の染色斑を、目視により以下の3段 階で評価した。◎または○であれば実用に耐 えうるものである。
◎:均質で優れた染色品位である
○:製品として許容される範囲の僅かな欠点 存在する
×:染色が不均一であり、製品として出荷不可 能な重大な欠点が存在する

(アクリル系繊維Aの作製)
 アクリロニトリル90%、アクリル酸メチル10% らなるアクリロニトリル系重合体(30℃ジメ ルホルムアミド中での極限粘度[η]:1.2)10部 48%のロダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸 原液を定法に従って紡糸、水洗、延伸、乾燥 、湿熱処理等を施して、0.9dtexのアクリル系 維Aを得た。

(アクリル系繊維Bの作製)
 アクリロニトリル90%、酢酸ビニル10%からな アクリロニトリル系重合体(30℃ジメチルホ ムアミド中での極限粘度[η]:1.2)10部を48%の ダンソーダ水溶液90部に溶解した紡糸原液を 定法に従って紡糸、水洗、延伸、乾燥、湿熱 処理等を施して、0.9dtexのアクリル系繊維Bを た。

(実施例1)
 アクリル系繊維Aを、ヒドラジンヒドラート 15%、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)3%の混 水溶液で、110℃、3時間処理し、水洗を行っ た。次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水 洗した。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液 90℃、2時間処理し、水洗、脱水、乾燥し、 施例1の可染性架橋アクリレート系繊維を得 た。該繊維について、カルボキシル基量、飽 和吸湿率、飽和染着量、汗染色堅牢度、湿潤 摩擦染色堅牢度、濃染性、均染性を評価した 。結果を表1に示す。

(実施例2)
 アクリル系繊維Aを、ヒドラジンヒドラート 15%水溶液で、110℃、3時間処理し、水洗した 、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)3%水溶液 で110℃、3時間で処理を行い、水洗を行った 次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水洗 た。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液で90 、2時間処理を行い、水洗、脱水、乾燥を行 い、実施例2の可染性架橋アクリレート系繊 を得た。評価結果を表1に示す。

(実施例3)
 アクリル系繊維Aを、ヒドラジンヒドラート 15%水溶液で、110℃、3時間処理し、水洗した 、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)6%水溶液 で110℃、3時間で処理を行い、水洗を行った 次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水洗 た。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液で90 、2時間処理を行い、水洗、脱水、乾燥を行 い、実施例3の可染性架橋アクリレート系繊 を得た。評価結果を表1に示す。

(実施例4)
 アクリル系繊維Aを、3,3’-イミノビス(プロ ルアミン)3%水溶液で110℃、3時間で処理し、 水洗した後、ヒドラジンヒドラート15%水溶液 で、110℃、3時間処理を行い、水洗を行った 次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水洗 た。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液で90 、2時間処理を行い、水洗、脱水、乾燥を行 い、実施例4の可染性架橋アクリレート系繊 を得た。評価結果を表1に示す。

(実施例5)
 3,3’-イミノビス(プロピルアミン)をN-メチ -3,3’-イミノビス(プロピルアミン)に変更す 以外は、実施例2と同じ方法で、実施例5の 染性架橋アクリレート系繊維を得た。評価 果を表1に示す。

(実施例6)
 3,3’-イミノビス(プロピルアミン)をトリエ レンテトラミンに変更する以外は、実施例2 と同じ方法で、実施例6の可染性架橋アクリ ート系繊維を得た。評価結果を表1に示す。

(実施例7)
 実施例2において、水酸化ナトリウム水溶液 での処理を行い、水洗した後、さらに、1%二 化チオ尿素水溶液で90℃、2時間処理を行い 水洗、脱水、乾燥を行い、実施例7の可染性 架橋アクリレート系繊維を得た。評価結果を 表1に示す。

(実施例8)
 アクリル系繊維Aをアクリル系繊維Bに変更 る以外は、実施例2と同じ方法で、実施例8の 可染性架橋アクリレート系繊維を得た。評価 結果を表1に示す。

(実施例9)
 実施例8において、水酸化ナトリウム水溶液 での処理を行い、水洗した後、さらに、1%二 化チオ尿素水溶液で90℃、2時間処理を行い 水洗、脱水、乾燥を行い、実施例9の可染性 架橋アクリレート系繊維を得た。評価結果を 表1に示す。

(比較例1)
 アクリル系繊維Aを、ヒドラジンヒドラート 15%水溶液、110℃、3時間処理し、水洗を行っ 。次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水 した。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液で 90℃、2時間処理を行い、水洗、脱水、乾燥を 行い、比較例1の架橋アクリレート系繊維を た。評価結果を表1に示す。

(比較例2)
 3,3’-イミノビス(プロピルアミン)をn-ブチ アミンに変更する以外は、実施例2と同じ方 で、比較例2の架橋アクリレート系繊維を得 た。評価結果を表1に示す。

(比較例3)
 アクリル系繊維Aを、ヒドラジンヒドラート 15%水溶液、110℃、3時間処理し、水洗を行っ 。次いで、8%硝酸で100℃、1時間処理し、水 した。続いて、5%水酸化ナトリウム水溶液で 90℃、2時間処理を行い、水洗を行った。さら に、3,3’-イミノビス(プロピルアミン)3%水溶 で110℃、3時間で処理を行い、水洗、脱水、 乾燥を行い、比較例3の架橋アクリレート繊 を得た。評価結果を表1に示す。

 表1から明らかな通り、実施例1~9において はいずれも良好な特性を示す可染性架橋アク リレート系繊維が得られた。実施例1、2、4を 比較すると、アミノ基含有有機化合物による 処理をヒドラジン系化合物による処理の後に 行った場合に、より優れた染色特性を有する 繊維が得られることがわかる。また、実施例 2、5、6を比較すると、1分子中に3個以上のア ノ基を有し、かつアミノ基間を3個以上の炭 素を有するアルキレン基で結合した構造を有 するアミノ基含有有機化合物を採用した場合 に、飽和染着量及び濃染性が高くなっており 、かかる構造を有するアミノ基含有有機化合 物を採用することにより、一層効率的にアミ ノ基が導入されることが理解される。

 比較例1および2は、1分子中に2個以上の1 アミノ基を有するアミノ基含有有機化合物 よる処理を行っていないため、また、比較 3は、加水分解処理後にアミノ基含有有機化 物による処理を行っているため、いずれも 和染着量が低く、濃染性および均染性に劣 ものとなった。

 本発明の可染性架橋アクリレート系繊維 、吸放湿性、吸湿発熱性、抗菌性、消臭性 どの架橋アクリレート系繊維特有の特性を 持しながらも、均一、濃色に染色でき、実 に耐えうる染色堅牢度を有する。従って、 発明の可染性架橋アクリレート系繊維は、 機能化あるいは高機能化の求め続けられて る衣料、リビング、建材などの様々な分野 おいて広く用いることができる。