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Title:
ELECTRO-GALVANIZED STEEL SHEET WITH EXCELLENT UNSUSCEPTIBILITY TO STAIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/107546
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are a chromate-free electro-galvanized steel sheet having excellent unsusceptibility to stain and a process for producing the sheet. The electro-galvanized steel sheet has a zinc deposit formed by electroplating and a resinous coating film formed thereon which contains substantially no chromium and 0.05-5 mass% sodium. The zinc deposit formed by electroplating contains, in terms of atomic amount, (A) 60-3,000 ppm Fe and (B) at least one element selected from the group consisting of Ni, Cr, Mo, Sn, Cu, Cd, Ag, Si, Co, In, Ir, and W, the element (B) comprising 60-6,000 ppm Ni, 0.5-5 ppm Cr, 5-500 ppm Mo, 0.6-20 ppm Sn, 8-3,000 ppm Cu, 0.0001-0.02 ppm Cd, 1.0-400 ppm Ag, 30-2,000 ppm Si, 0.0003-0.3 ppm Co, 0.1-30 ppm In, 0.01-10 ppm Ir, and 0.1-50 ppm W.

Inventors:
IWAI MASATOSHI
HISANO SHOJI
OKUMURA KAZUO
Application Number:
PCT/JP2009/052907
Publication Date:
September 03, 2009
Filing Date:
February 19, 2009
Export Citation:
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Assignee:
KOBE STEEL LTD (JP)
IWAI MASATOSHI
HISANO SHOJI
OKUMURA KAZUO
International Classes:
C23C28/00; C25D5/26
Foreign References:
JP2006022127A2006-01-26
JP2006043913A2006-02-16
JP2004169121A2004-06-17
JP2001115295A2001-04-24
JP2000355790A2000-12-26
JPH08188899A1996-07-23
Attorney, Agent or Firm:
TANAKA, Mitsuo et al. (JP)
Mitsuo Tanaka (JP)
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Claims:
 電気Znめっき層の上に実質的にCrを含有せず、Naを0.05~5質量%含有する樹脂皮膜が設けられた電気Znめっき鋼板であって、
 前記電気Znめっき層は、原子換算で、
(A)Fe:60~3000質量ppmと、
(B)Ni、Cr、Mo、Sn、Cu、Cd、Ag、Si、Co、In、IrおよびWよりなる群から選択される少なくとも一種の元素と、を含有し、
 前記(B)の元素は、Ni:60~6000質量ppm、Cr:0.5~5質量ppm、Mo:5~500質量ppm、Sn:0.6~20質量ppm、Cu:8~3000質量ppm、Cd:0.0001~0.02質量ppm、Ag:1.0~400質量ppm、Si:30~2000質量ppm、Co:0.0003~0.3質量ppm、In:0.1~30質量ppm、Ir:0.01~10質量ppm、W:0.1~50質量ppmの範囲内で含有することを特徴とする耐しみ汚れ性に優れた電気Znめっき鋼板(ただし、前記電気Znめっき層が、Ni:60~6000質量ppm、Fe:60~600質量ppm、Cr:0.5~5質量ppm、Mo:30~500質量ppm、Sn:0.6~20質量ppm、Cu:8~3000質量ppm、Cd:0.0001~0.02質量ppm、Ag:1.0~400質量ppm、Si:30~2000質量ppm、Co:0.0003~0.3質量ppm、In:0.1~30質量ppm、Ir:0.01~10質量ppmおよびW:0.1~50質量ppmを含有する電気Znめっき鋼板を除く。)。
 前記樹脂皮膜は、カルボキシル基含有樹脂およびSi系無機化合物を含有する請求項1に記載の電気Znめっき鋼板。
 前記樹脂皮膜は、シランカップリング剤を更に含有する請求項2に記載の電気Znめっき鋼板。
 (1)Fe 2+ :50~5000質量ppmおよびFe 3+ :50~5000質量ppmと、
 Ni:20~2000質量ppm、Cr:5~2000質量ppm、Mo:50~2000質量ppm、Sn:0.05~20質量ppm、Cu:0.05~50質量ppm、Cd:0.05~5質量ppm、Ag:0.05~5質量ppm、Si:20~2000質量ppm、Co:0.05~50質量ppm、In:0.5~50質量ppm、Ir:0.05~5質量ppmおよびW:0.5~50質量ppmよりなる群から選択される少なくとも一種の元素と、
を両方含む酸性めっき液(ただし、Ni:20~2000質量ppm、Fe 2+ :50~5000質量ppm、Fe 3+ :50~5000質量ppm、Cr:5~2000質量ppm、Mo:50~2000質量ppm、Sn:0.05~20質量ppm、Cu:0.05~50質量ppm、Cd:0.05~5質量ppm、Ag:0.05~5質量ppm、Si:20~2000質量ppm、Co:0.05~50質量ppm、In:0.5~50質量ppm、Ir:0.05~5質量ppmおよびW:0.5~50質量ppmを含む酸性めっき液は除く。)を用いて電気Znめっきを行なう工程と、
 (2)Naを0.05~5質量%含有する樹脂皮膜を形成する工程と、
を包含することを特徴とする耐しみ汚れ性に優れた電気Znめっき鋼板の製造方法。
Description:
耐しみ汚れ性に優れた電気Znめ き鋼板

 本発明は、耐しみ汚れ性に優れた電気Zn っき鋼板およびその製造方法に関し、詳細 は、実質的にCrを含有しない樹脂皮膜を有す る電気Znめっき鋼板であって、当該樹脂皮膜 のNaに起因するしみ汚れの外観ムラを効果 に抑制する(目立たなくする)ことが可能な耐 しみ汚れ性の改善技術に関するものである。 本発明の電気Znめっき鋼板は、例えば、家電 OA機器等のシャーシやケース部品、鋼製家 などのように、主として屋内で使用される 途に好適に用いられる。

 有害物質使用規制の観点から、6価クロム を含まないクロメートフリー化成処理皮膜を 備えた電気Znめっき鋼板(ノンクロメート電気 Znめっき鋼板)が汎用されている。このような ノンクロメート電気Znめっき鋼板は、ユーザ からの塗装省略の要請に伴い、塗装するこ なく使用されることが多く、そして、例え 、製造後のコイル保管時、家電メーカーやO A機器メーカーでの加工時またはユーザーの 用中に、高温多湿の環境下に長期間曝され ことがある。

 ところが、ノンクロメート電気Znめっき 板を高温多湿環境下に半月以上もの長期間[ えば504時間(21日)程度]おくと、上記鋼板の 面には、後記する図1Cに示すように、しみの ような形で外観ムラ(色調の差)が生じること 、本発明者らの実験により判明した。

 このような現象(以下、「しみ汚れ」と呼 ぶことがある。)は、クロメート処理を行っ 電気Znめっき鋼板では、見られなったもので ある。また、しみ汚れは、これまでに報告さ れている腐食現象、代表的には、塩素イオン の存在する湿潤環境下で発生する白錆[通常 JIS Z2371に規定する塩水噴霧試験の後96時間(4 日)目に評価]や、白錆の発生前(初期)に見ら る比較的穏やかな腐食環境下で発生する黒 [通常、50℃で相対湿度95%以上の恒温恒湿下 72時間(3日)後に評価]とは異なり、特に、皮 中にNaを含むノンクロメート電気Znめっき鋼 を、約半月以上もの極めて長期間、高温多 環境下に曝すことによって、初めて見られ ことが判明した。

 しかしながら、これまでに提案されている 気Znめっき鋼板の外観ムラ改善技術は、白 や白錆発生前の黒変現象を防止する方法(例 ば、特許文献1~特許文献4)に関するものであ り、しみ汚れの防止を目的とする外観ムラ改 善技術は、提供されていない。

特許第3043336号公報

特許第3499544号公報

特許第3499543号公報

特開2004-263252号公報

 本発明は上記事情に着目してなされたも であって、その目的は、耐白錆性に優れて るだけでなく、耐しみ汚れ性にも優れたノ クロメート電気Znめっき鋼板およびその製 方法を提供することにある。

 上記課題を解決することのできた本発明の 気Znめっき鋼板は、電気Znめっき層の上に実 質的にCrを含有せず、Naを0.05~5%(%は質量%の意 。以下、同じ)含有する樹脂皮膜が設けられ た電気Znめっき鋼板であって、
 前記電気Znめっき層は、原子換算で、
(A)Fe:60~3000ppm(ppmは質量ppmの意味。以下、同じ) と、
(B)Ni、Cr、Mo、Sn、Cu、Cd、Ag、Si、Co、In、Irお びWよりなる群から選択される少なくとも一 の元素と、を含有し、
 前記(B)の元素は、Ni:60~6000ppm、Cr:0.5~5ppm、Mo:5 ~500ppm、Sn:0.6~20ppm、Cu:8~3000ppm、Cd:0.0001~0.02ppm、 Ag:1.0~400ppm、Si:30~2000ppm、Co:0.0003~0.3ppm、In:0.1~30 ppm、Ir:0.01~10ppm、W:0.1~50ppmの範囲内で含有して いる(ただし、前記電気Znめっき層が、Ni:60~600 0ppm、Fe:60~600ppm、Cr:0.5~5ppm、Mo:30~500ppm、Sn:0.6~20 ppm、Cu:8~3000ppm、Cd:0.0001~0.02ppm、Ag:1.0~400ppm、Si: 30~2000ppm、Co:0.0003~0.3ppm、In:0.1~30ppm、Ir:0.01~10ppm およびW:0.1~50ppmを含有する電気Znめっき鋼板 除く。)ことに要旨を有している。

 好ましい実施形態において、前記樹脂皮 は、カルボキシル基含有樹脂およびSi系無 化合物を含有している。Si系無機化合物の代 表例として、例えば、コロイダルシリカが挙 げられる。

 好ましい実施形態において、前記樹脂皮 は、シランカップリング剤を更に含有して る。

 上記課題を解決することのできた本発明に る電気Znめっき鋼板の製造方法は、(1)Fe 2+ :50~5000ppmおよびFe 3+ :50~5000ppmと、
 Ni:20~2000ppm、Cr:5~2000ppm、Mo:50~2000ppm、Sn:0.05~20p pm、Cu:0.05~50ppm、Cd:0.05~5ppm、Ag:0.05~5ppm、Si:20~200 0ppm、Co:0.05~50ppm、In:0.5~50ppm、Ir:0.05~5ppmおよびW :0.5~50ppmよりなる群から選択される少なくと 一種の元素と、
を両方含む酸性めっき液(ただし、Ni:20~2000ppm Fe 2+ :50~5000ppm、Fe 3+ :50~5000ppm、Cr:5~2000ppm、Mo:50~2000ppm、Sn:0.05~20ppm Cu:0.05~50ppm、Cd:0.05~5ppm、Ag:0.05~5ppm、Si:20~2000ppm 、Co:0.05~50ppm、In:0.5~50ppm、Ir:0.05~5ppmおよびW:0.5 ~50ppmを含む酸性めっき液は除く。)を用いて 気Znめっきを行なう工程と、
(2)Naを0.05~5%含有する樹脂皮膜を形成する工程 と、
を包含することに要旨を有している。

 本発明の電気Znめっき鋼板は、上記のよ に構成されているので、ノンクロメート処 鋼板の耐白錆性および耐しみ汚れ性が大幅 改善される。

図1Aは実施例1のNo.2の写真である。 図1Bは実施例1のNo.4の写真である。 図1Cは実施例1のNo.6の写真である。

 「しみ汚れ」現象は、これまでのクロメ ト処理鋼板では認識されていなかったもの あり、本発明者の実験により、特に、クロ ートフリー樹脂皮膜中にNaを含有する電気Zn めっき鋼板を高温多湿環境下に長時間(おお ね、約504時間程度)曝すことによって観察さ ることが判明したものである。Naは、主に クロメートフリー樹脂皮膜の強度を高めて アブレージョン性(耐疵付き性)の向上を図る 目的で添加されており(詳細は後述する)、Na 含有するノンクロメート樹脂皮膜は、ノン ロメート処理鋼板の分野で汎用されるよう なっている。

 そこで、本発明者は、クロメート処理を さないノンクロメート電気Znめっき鋼板を 温多湿環境下に極めて長期間保存すること 生じる「しみ汚れ」の外観ムラを防止でき (目立たなくする)技術を提供するため、検討 を重ねてきた。

 その結果、めっき層中に、(A)Znめっきの 料や鋼板からの溶出等に起因して不可避的 存在する不純物元素であるFeの含有量を所定 範囲内に制御し、且つ、(B)以下に詳述する特 定の元素(「耐しみ汚れ性改善元素」と呼ぶ 合がある。)の含有量を所定範囲内に制御す ば、耐しみ汚れ性が改善されることを見出 、本発明を完成した。

 なお、本発明のような耐しみ汚れ性改善 術ではないが、前述した特許文献1~特許文 4には、電気Znめっき層中の所定の元素の含 量を制御することによって耐白錆性の改善 図る方法が提案されている。このなかには 本発明に用いられる元素であって、含有量 一部が重複する元素がいくつか開示されて る。具体的には、白錆などの外観ムラを防 するため、特許文献1~特許文献3には、めっ 浴中にZnよりも貴な元素(Ni,In,Cu,Ag,Co)を添加 る方法が開示されており、特許文献4には、Z nが溶解するアルカリ域で難溶性の水酸化物 形成する元素(Fe,Co,Ni,Mn,Mg,Al,Ce,In)や、中性域 安定であり腐食環境でも安定に存在できる 素(Si,Ti,V,Mo,Zr)をめっき浴中に添加する方法 開示されている。

 しかしながら、両者が対象とする外観ム は、以下に述べるように、これらの発生原 が相違しており、発生機序(メカニズム)も 違しているのではないかと推察される。

 すなわち、本発明で対象とする「しみ汚 」の外観ムラは、ノンクロメート電気Znめ き鋼板を高温高湿下に極めて長期間曝すこ によって初めて生じるものであり、塩水雰 気下で発生する白錆や、高温高湿下に短時 曝すことによって発生する黒変の外観ムラ は、発生メカニズムが相違すると考えられ 。また、上記の「しみ汚れ」は、ノンクロ ート化成処理皮膜中にNaを含有する場合に初 めて見られる現象である点においても、白錆 や黒変の外観ムラとは、発生メカニズムが異 なると考えられる。これらの特許文献を精査 しても、Na含有ノンクロメート皮膜を用いた とは全く記載されていない。

 また、後記する実施例に示すように、本 発明に用いられる耐しみ汚れ性改善元素の 類および含有量は、前述した特許文献にお て、現実に効果が確認された耐白錆性向上 素の種類および含有量と異なるものもあり 上記特許文献に記載の方法を、そのまま、 しみ汚れ性改善技術に適用することが困難 あることも分かった。

 以下、本発明の電気Znめっき鋼板につい 、詳しく説明する。

 本発明の電気Znめっき鋼板は、電気Znめっき 層の上に実質的にCrを含有せず、Naを0.05~5%含 する樹脂皮膜が設けられた電気Znめっき鋼 であって、前記電気Znめっき層は、
(A)Fe(不純物元素):60~3000ppmと、
(B)Ni、Cr、Mo、Sn、Cu、Cd、Ag、Si、Co、In、Ir、 よびWよりなる群から選択される少なくとも 種の元素(耐しみ汚れ性改善元素)と、を含 し、
 前記(B)の元素は、Ni:60~6000ppm、Cr:0.5~5ppm、Mo:5 ~500ppm、Sn:0.6~20ppm、Cu:8~3000ppm、Cd:0.0001~0.02ppm、 Ag:1.0~400ppm、Si:30~2000ppm、Co:0.0003~0.3ppm、In:0.1~30 ppm、Ir:0.01~10ppm、W:0.1~50ppmを含有している(た し、前記電気Znめっき層が、Ni:60~6000ppm、Fe:60 ~600ppm、Cr:0.5~5ppm、Mo:30~500ppm、Sn:0.6~20ppm、Cu:8~3 000ppm、Cd:0.0001~0.02ppm、Ag:1.0~400ppm、Si:30~2000ppm Co:0.0003~0.3ppm、In:0.1~30ppm、Ir:0.01~10ppm、および W:0.1~50ppmを含有する電気Znめっき鋼板を除く )。

 図1に、しみ汚れが発生した電気Znめっき 板の写真を示す。詳細には、図1は、Na含有 ンクロメート皮膜を有する電気Znめっき鋼 を、温度50℃、相対湿度95%の高温多湿下に504 時間(21日間)保管したときの写真(当該電気亜 メッキ鋼板の5cm×5cmの領域)であり、図1A~図1 Cは、それぞれ、後記する実施例1の表2-1のNo.2 (耐しみ汚れ性評価基準3、しみ汚れが発生し いる)、No.4(耐しみ汚れ性評価基準2、しみ汚 れが僅かに発生している)、No.6(耐しみ汚れ性 評価基準1、しみ汚れが全くない)である。図1 Aに示すように、電気Znめっき鋼板には、皮膜 表面が黒っぽく(茶褐色)変色した領域(Na凝集 分)と、変色が生じない白っぽい領域(Naが凝 集していない非凝集部分)とが混在しており 皮膜全体として、しみのようなまだら模様( み汚れ)が観察される。しみ汚れの外観ムラ が生じる主な理由は、Na凝集部分だけが変色 ることに起因すると考えられる。

 本発明により、しみ汚れを効果的に防止 得るメカニズムは不明であるが、上記のよ にFeおよび耐しみ汚れ性改善元素の両方が 定範囲に制御された電気Znめっき層を設ける ことにより、Znめっきの結晶形態や表面の酸 物(例えば、Znめっき表面に不可避的に生成 る上述の添加元素を含んだZnの水酸化物層 ど)に影響を及ぼすため、Na凝集部分とNa非凝 集部分との色調の差を殆ど無くすことが可能 になることが考えられる。その結果、しみ汚 れによる外観ムラを解消できる。

 以下、上記電気亜鉛めっき層に含まれる( A)Feと(B)耐しみ汚れ性改善元素について、詳 く説明する。

 (A)Fe(不純物元素)について
 Feは、Znめっきの原料等に起因して不可避的 に存在する不純物元素であり、本発明では、 所望の不純物元素であるFeを上記範囲に制御 、且つ、後記する(B)の耐しみ汚れ性改善元 を所定範囲に制御することによって、しみ れの発生を有効に防止するものである。

 耐しみ汚れ性改善作用を有効に発揮させ ため、電気Znめっき層中に不可避的に含ま 得るFeの含有量を60ppm以上(好ましくは80ppm以 )とする。ただし、過剰に添加すると、耐し み汚れ性改善作用が低下し、耐食性(特に、 白錆性)も低下するようになるため、上限を3 000ppmとした。

 (B)Ni、Cr、Mo、Sn、Cu、Cd、Ag、Si、Co、In、Ir 、およびWよりなる群から選択される少なく も一種の元素(耐しみ汚れ性改善元素)につい て上記元素は、いずれも、耐しみ汚れ性の向 上に寄与する元素である。これらの元素は、 上記(A)のFeの如く、Znめっきの原料等に由来 る不可避的不純物元素ではないが、例えば Ni-Mo-Cr-Mn合金などからなる電極を用いて電気 Znめっきを行なった場合には当該電極に由来 て電気Znめっき層中に含まれ得る元素であ 。ただし、上記以外の電極、例えば、Tiを被 覆した酸化イリジウム電極(Ti被覆酸化イリジ ウム電極)、Ti電極;Sn-Pbなどの不溶性電極を用 いて電気Znめっきを行なった場合には、電気Z nめっき層中に殆ど含まれない元素である。 考のため、後記する実施例1において、Ti被 酸化イリジウム電極を用いて電気Znめっきを 行なった(ただし、めっき液には何も添加せ )時の、めっき液中およびめっき層中に含ま る上記各元素の濃度(ppm)を表1に示す。表1に 示すように、上記条件の下で電気Znめっきを なった場合、これらの耐しみ汚れ性改善元 は、めっき液中およびめっき層中に殆ど含 れないことが分かる。

 上記元素による耐しみ汚れ性改善作用を 効に発揮させるため、電気Znめっき層中に まれる各元素の含有量を、原子換算で、そ ぞれ、Ni:60ppm以上(好ましくは600ppm以上)、Fe:6 0ppm以上(好ましくは80ppm以上)、Cr:0.5ppm以上(好 ましくは0.8ppm以上)、Mo:5ppm以上(好ましくは10p pm以上)、Sn:0.6ppm以上(好ましくは1.5ppm以上)、C u:8.0ppm以上(好ましくは100ppm以上)、Cd:0.0001ppm 上(好ましくは0.01ppm以上)、Ag:1.0ppm以上(好ま くは30ppm以上)、Si:30ppm以上(好ましくは80ppm 上)、Co:0.0003ppm以上(好ましくは0.001ppm以上)、 In:0.1ppm以上(好ましくは1.0ppm以上)、Ir:0.01ppm以 上(好ましくは0.1ppm以上)、W:0.1ppm以上(好まし は1.0ppm以上)とする(後記する実施例を参照)

 ただし、過剰に添加すると、以下の不具 が生じる。まず、Cr、Mo、Siを過剰に添加す と、後記する実施例に示すように、耐しみ れ性改善作用が低下し、耐食性(特に、耐白 錆性)も低下するようになる。一方、上記3種 外の耐しみ汚れ性改善元素を過剰に添加す と、後記する実施例に示すように、耐しみ れ性は良好であるが、耐白錆性が低下する 耐しみ汚れ性と耐白錆性の両方の特性を満 し、優れた表面外観を得るためには、電気Z nめっき層中に含まれる各元素の含有量を、 れぞれ、Ni:6000ppm以下、Fe:600ppm以下、Cr:5.0ppm 下、Mo:500ppm以下、Sn:20ppm以下、Cu:3000ppm以下 Cd:0.02ppm以下、Ag:400ppm以下、Si:2000ppm以下、Co :0.3ppm以下、In:30ppm以下、Ir:10ppm以下、W:50ppm以 下とする。

 上記元素のなかでも、特に、耐しみ汚れ 向上作用に優れた元素として好ましいのは Ni、Fe、Cr、Mo、Si、Cu、Co、W、In、Cu、Agであ 、より好ましいのは、Ni、Fe、Mo、Cr、Wであ 。

 上記の耐しみ汚れ性改善元素は、単独で 用しても良いし、2種以上を併用しても構わ ない。

 電気Znめっき層中に含まれる耐しみ汚れ 改善元素の量は、例えば、原子吸光分析法 誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)又は誘 導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)などの方法 用いて分析することができる。詳細な分析 法は、後記する実施例の欄に記載している なお、分析に当たっては、めっき液中に含 れるZn、Na、S等のマトリックス元素による 定誤差をなくすため、塩酸などを用いてめ き層を希釈してから実施することが好まし 。希釈倍率は、マトリックス元素の濃度や 定対象である耐しみ汚れ性改善元素の添加 などに応じて、適宜適切な範囲に制御すれ 良い。後記する実施例では、2倍希釈した塩 によりめっき層を希釈してから、めっき層 の元素の含有量を分析している。

 電気Znめっきの付着量は、めっき層表面に 出するZn単結晶の結晶サイズを考慮すると、 おおむね、40g/m 2 以下であることが好ましく、30g/m 2 以下であることがより好ましい。なお、その 下限は、上記の観点からは特に限定されない が、Znによる犠牲防食作用を考慮すると、お むね、3g/m 2 であることが好ましく、10g/m 2 であることがより好ましい。

 電気Znめっき層は、基材である鋼板の所 面に少なくとも設けられていればよく、鋼 の片面のみに設けられていても良いし、両 に設けられていてもよい。

 樹脂皮膜(ノンクロメート樹脂皮膜)は、Na を約0.05~5%(好ましくは、0.1%以上3%以下、より ましくは1%以下)含有している。Naは、ノン ロメート樹脂皮膜(好ましくは、カルボキシ 基含有樹脂およびコロイダルシリカなどのS i系無機化合物を含有する)の強度を向上する 的で、上記のカルボキシル基含有樹脂やコ イダルシリカ中に、通常、添加されている Naの含有量が0.05%未満の場合、例えば、カル ボキシル基含有樹脂中のカルボキシル基とNa の間でNa架橋が充分生成せず、皮膜の強度 低下し、一方、Naの含有量が5%を超えると、 膜中に含まれる可溶性Naの量が増加し、耐 ブレージョン性が低下する。樹脂皮膜に含 れるNa量は、樹脂皮膜を構成する各成分(樹 成分、Si系無機化合物、必要に応じて含まれ るシランカップリング剤など)の固形分中に めるNa量の総和で表される。

 樹脂皮膜は、Crを実質的に含有していな 。ここで、「実質的に含有しない」とは、 脂皮膜の作製過程で不可避的に混入する程 のCr量は許容し得るという意味である。例え ば、本発明では、耐しみ汚れ性改善元素とし て微量のCrをめっき層中に添加することがあ が、めっき層中のCrが樹脂皮膜中に混入す 場合がある。そのほか、例えば、ノンクロ 脂皮膜に用いられる処理液の調製および塗 の過程で、製造容器、塗布装置などから微 のCr化合物が溶出するような場合、樹脂皮膜 中にCrが混入する可能性がある。このような 合であっても、樹脂皮膜中に含まれるCrの は、おおむね、0.01%以下の範囲内であること が好ましい。

 樹脂皮膜は、カルボキシル基含有樹脂の 脂成分、およびSi系無機化合物(代表的には コロイダルシリカ)を含有していることが好 ましい。これらを含有する樹脂皮膜とするこ とにより、皮膜の耐食性、耐アルカリ脱脂性 、塗装性などが向上する。

 カルボキシル基含有樹脂は、カルボキシ 基を有していれば特に限定されず、例えば 不飽和カルボン酸等のカルボキシル基を有 る単量体を原料の一部または全部として重 により合成されるポリマー、または、官能 反応を利用してカルボン酸変性された樹脂 どが挙げられる。

 カルボキシル基含有樹脂は、市販品を用い も良く、例えば、ハイテックS3141(東邦化学 )などが挙げられる。
 樹脂成分は、前述したカルボキシル基含有 脂以外の有機樹脂を含んでいてもよい。

 Si系無機化合物としては、例えば、ケイ 塩および/またはシリカが挙げられる。これ は単独で使用しても良いし、2種以上を併用 しても良い。

 このうち、ケイ酸塩としては、例えば、 イ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが挙げ れる。

 シリカとしては、代表的には、コロイダ シリカ、鱗片状シリカなどが挙げられる。 のほか、粉砕シリカ、気相法シリカ、シリ ゾルやヒュームドシリカなどの乾式シリカ どを用いても良い。

 このうち、特に、コロイダルシリカの使 が好ましい。これにより、樹脂皮膜の強度 高められるほか、腐食環境下では皮膜の疵 にシリカが濃化し、Znの腐食が抑制されて 食性が一層高められる。

 コロイダルシリカは、市販品を用いても く、例えば、日産化学工業(株)製のスノー ックスシリーズ「ST-40」、「ST-XS」、「ST-N」 、「ST-20L」、「ST-UP」、「ST-ZL」、「ST-SS」、 「ST-O」、「ST-AK」などが挙げられる。これら は、通常、Naを含有している。

 樹脂皮膜を構成する樹脂成分とSi系無機 合物(代表的には、コロイダルシリカ)の質量 比率は、おおむね、樹脂成分:Si系無機化合物 =5部~45部:55部~95部の範囲内であることが好ま い。樹脂成分の含有量が少ないと、耐食性 耐アルカリ脱脂性、塗装性などが低下する 向にあり、一方、樹脂成分の含有量が多い 、耐アブレージョン性、導電性などが低下 るようになる。また、Si系無機化合物の含 量が少ないと、耐アブレージョン性、導電 などが低下する傾向にあり、Si系無機化合物 の含有量が多いと、樹脂成分が少なくなるた めに樹脂皮膜の造膜性が低下し、耐食性が低 下するようになる。

 樹脂皮膜は、更に、シランカップリング を含有しても良い。シランカップリング剤 添加により、前述したカルボキシル基含有 脂とSi系無機化合物との結合が強固になる め、Naイオンの溶出が少なくなり、耐しみ汚 れ性が一層向上するようになる。

 シランカップリング剤は、例えば、炭素 1~5のアルキル基、アルコキシ基,アリール基 などを有するものが好ましい。具体的には、 例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキ シシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジ メトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルト リエトキシシラン、γ-グリシドキシメチルジ メトキシシランなどのグリシドキシ基含有シ ランカップリング剤;γ-アミノプロピルトリ トキシシラン、γ-アミノプロピルトリエト シシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロ ピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル )-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン どのアミノ基含有シランカップリング剤;ビ ニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキ シシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキ )シランなどのビニル基含有シランカップリ グ剤;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキ シシランなどのメタクリロキシ基含有シラン カップリング剤;γ-メルカプトプロピルトリ トキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチ ジメトキシシランなどのメルカプト基含有 ランカップリング剤;γ-クロロプロピルメト シシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシ ランなどのハロゲン基含有シランカップリ グ剤などが挙げられる。これらのシランカ プリング剤は、単独で用いも良いし、2種以 上を併用してもよい。

 上記のうち、グリシドキシ基含有シラン ップリング剤は、特に反応性が高く、耐食 および耐アルカリ性に優れているため、好 しく用いられる。

 シランカップリング剤は、市販品を用い も良く、例えば、γ-グリシドキシプロピル リメトキシシラン「KBM403」(信越化学社製) どが挙げられる。

 シランカップリング剤の含有量は、樹脂 分とSi系無機化合物の合計100質量部に対し おおむね、5質量部以上25質量部以下の範囲 あることが好ましい。シランカップリング の含有量が少ないと、耐しみ汚れ性改善作 が有効に発揮されないほか、前述したカル キシル基含有樹脂とSi系無機化合物との反応 性が低下し、耐アブレージョン性、塗装性、 耐食性などが低下する。一方、シランカップ リング剤の含有量が多いと、樹脂皮膜の作製 に用いられる皮膜調製液の安定性が低下し、 ゲル化する恐れがある。また、反応に寄与し ないシランカップリング剤の量が多くなるた め、Znめっき層と樹脂皮膜との密着性が低下 る恐れがある。

 以下、本発明に用いられる代表的なノン ロメート樹脂皮膜として、以下の樹脂皮膜 用いた場合について説明する。この樹脂皮 は、本願出願人の出願によって開示された レタン樹脂改良皮膜であり、詳細は、特開2 006-43913号公報に記載したとおりである(例え 、段落[0020]~[0071]を参照)。以下に、上記樹脂 皮膜の構成および調製方法を簡単に説明する が、本発明に用いられる樹脂皮膜を、これに 限定する趣旨ではない。

 樹脂皮膜は、以下の樹脂水性液から得ら る。樹脂水性液は、カルボキシル基含有ポ ウレタン樹脂水性液とエチレン-不飽和カル ボン酸共重合体水性分散液とを不揮発性樹脂 成分として5~45質量部、及び、平均粒子径が4~ 20nmのシリカ粒子55~95質量部を合計で100質量部 含有し、前記合計100質量部に対して、さらに シランカップリング剤を5~25質量部の比率で 有するとともに、前記ポリウレタン樹脂水 液の不揮発性樹脂成分(PU)と前記エチレン-不 飽和カルボン酸共重合体水性分散液の不揮発 性樹脂成分(EC)との配合比率が質量比でPU:EC=9: 1~2:1である。

 まず、カルボキシル基含有ポリウレタン 脂水性液について説明する。

 カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂水 液としては、カルボキシル基含有ポリウレ ン樹脂が水性媒体中に分散した水性分散液 或いは、前記カルボキシル基含有ポリウレ ン樹脂が水性媒体に溶解した水溶液のいず も使用することができる。前記水性媒体に 、水の他、アルコール、N-メチルピロリド 、アセトンなどの親水性の溶媒が微量含ま ていても良い。

 前記カルボキシル基含有ポリウレタン樹 は、ウレタンプレポリマーを鎖延長剤で鎖 長反応して得られるものであることが好ま く、前記ウレタンプレポリマーは、例えば 後述するポリイソシアネート成分とポリオ ル成分とを反応させて得られる。

 前記ウレタンプレポリマーを構成するポ イソシアネート成分としては、トリレンジ ソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイ シアネート(MDI)およびジシクロヘキシルメタ ンジイソシアネート(水素添加MDI)よりなる群 ら選択される少なくとも1種のポリイソシア ネートを使用することが好ましい。ここで、 ウレタンプレポリマーを構成するポリオール 成分としては、1,4-シクロヘキサンジメタノ ル、ポリエーテルポリオール、及び、カル キシル基を有するポリオールの3種類の全て ポリオールを使用し、好ましくは、3種類全 てをジオールとする。また、ポリエーテルポ リオールは、分子鎖にヒドロキシル基を少な くとも2以上有し、主骨格がアルキレンオキ イド単位によって構成されているものであ ば特に限定されず、例えば、ポリオキシエ レングリコール、ポリオキシプロピレング コール、ポリオキシテトラメチレングリコ ルなどが挙げられる。

 また、上述したウレタンプレポリマーを 延長反応する鎖延長剤としては、特に限定 れないが、例えば、ポリアミン、低分子量 ポリオール、アルカノールアミンなどを挙 ることができる。

 カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂の 性液の作製は、公知の方法を採用すること でき、例えば、カルボキシル基含有ウレタ プレポリマーのカルボキシル基を塩基で中 して、水性媒体中に乳化分散して鎖延長反 させる方法、カルボキシル基含有ポリウレ ン樹脂を乳化剤の存在下で、高せん断力で 化分散して鎖延長反応させる方法などがあ 。

 次に、エチレン-不飽和カルボン酸共重合 体水性分散液について説明する。

 エチレン-不飽和カルボン酸共重合体水性 分散液は、エチレン-不飽和カルボン酸共重 体が水性媒体中に分散した液であれば、特 限定されず、上記エチレン-不飽和カルボン 共重合体は、エチレンとエチレン性不飽和 ルボン酸との共重合体である。不飽和カル ン酸としては、(メタ)アクリル酸、クロト 酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル 、イタコン酸等が挙げられ、これらのうち 1種以上と、エチレンとを、公知の高温高圧 合法等で重合することにより、共重合体を ることができる。

 上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合 体はカルボキシル基を有しており、このカル ボキシル基を有機塩基(例えば、沸点100℃以 のアミン)や、Naなどの1価の金属イオンで中 することにより、水性分散液とすることが きる。

 ここで、1価の金属イオンは、上記のよう に中和のために用いられるが、耐溶剤性や皮 膜硬度の向上に効果的である。1価の金属の 合物としては、ナトリウム、カリウム、リ ウムから選ばれる1種または2種以上の金属を 含むことが好ましく、これらの金属の水酸化 物、炭酸化物または酸化物が好ましい。中で も、NaOH、KOH、LiOH等が好ましく、NaOHが最も性 能が良く好ましい。本発明は、このNaOHに由 するしみ汚れ現象を改善するものである。

 1価の金属の化合物の量は、エチレン-不 和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1 ルに対して、0.02~0.4モル(2~40モル%)の範囲と ることが好ましい。上記金属化合物量が0.02 モルより少ないと乳化安定性が不充分となる が、0.4モルを超えると、得られる樹脂皮膜の 吸湿性(特にアルカリ性溶液に対して)が増大 、脱脂工程後の耐食性が劣化するため好ま くない。より好ましい金属化合物量の下限 0.03モル、さらに好ましい下限は0.1モルであ り、より好ましい金属化合物量の上限は0.5モ ル、さらに好ましい上限は0.2モルである。

 前述した有機塩基(好ましくは、沸点100℃ 以下のアミン)と1価の金属化合物の合計量(中 和量)が多すぎると、水性分散液の粘度が急 に上昇して固化することがある上に、過剰 アルカリ分は耐食性劣化の原因となること ら、これを揮発させるために多大なエネル ーが必要となるため好ましくない。しかし 中和量が少なすぎると乳化性に劣るため、 はり好ましくない。従って、有機塩基と1価 金属化合物の合計使用量は、エチレン-不飽 和カルボン酸共重合体中のカルボキシル基1 ルに対し、0.3~1.0モルの範囲とすることが好 しい。

 上記のエチレン-不飽和カルボン酸共重合 体水性分散液は、有機塩基と1価の金属イオ とを併用して乳化することにより、平均粒 径が5~50nmという極めて小さな微粒子(油滴)状 態で水性媒体中に分散したものが得られる。 このため、得られる樹脂皮膜の造膜性、金属 板への密着性、皮膜の緻密化が達成され、耐 食性が向上するものと推定される。上記水性 媒体には、水の他に、アルコールやエーテル 等の親水性溶媒が含まれていても良い。なお 、上記水性分散液の樹脂粒子の粒子径は、例 えば光散乱光度計(大塚電子社製等)を用いた ーザー回折法によって測定することができ 。

 エチレン-不飽和カルボン酸共重合体水性 分散液の調製方法としては、エチレン-不飽 カルボン酸共重合体を水性媒体と共に、例 ば、ホモジナイザー装置等に投入し、必要 より70~250℃の加熱下とし、沸点100℃以下の ミンなどの有機塩基と1価の金属の化合物を 宜水溶液等の形態で添加して(沸点100℃以下 のアミンを先に添加するか、沸点100℃以下の アミンと1価の金属の化合物とを略同時に添 する)、高剪断力で撹拌する。

 次いで、前述した方法によって得られたカ ボキシル基含有ポリウレタン樹脂水性液お びエチレン-不飽和カルボン酸共重合体水性 分散液を、シリカ粒子およびシランカップリ ング剤と所定量配合し、必要に応じて、ワッ クス、架橋剤などを配合して所望の樹脂水性 液を得る。シリカ粒子、シランカップリング 剤、ワックス、及び、架橋剤等はいずれの段 階で添加してもよいが、架橋剤及びシランカ ップリング剤添加後は架橋反応が進行してゲ ル化しないように、熱を掛けない(または加 しない)ようにすることが望ましい。
 以上、本発明に用いられる代表的な樹脂皮 について説明した。

 樹脂皮膜には、上記成分のほか、本発明 作用を損なわない範囲で、通常含まれる成 (例えば、皮張り防止剤、レベリング剤、消 泡剤、浸透剤、乳化剤、造膜補助剤、着色顔 料、潤滑剤、界面活性剤、導電性を付与する ための導電性添加剤、増粘剤、分散剤、乾燥 剤、安定剤、防黴剤、防腐剤、凍結防止剤な ど)を含有してもよい。

 樹脂皮膜の厚さは、おおむね、0.1~2μmの 囲内であることが好ましく、0.2~1.0μmの範囲 であることがより好ましい。樹脂皮膜の厚 が0.1μmを下回ると耐食性が低下し、一方、2 μmを超えると導電性が低下する。

 樹脂皮膜の上には、耐食性(特に耐白錆性 )や塗装性等の向上を目的として、有機系樹 皮膜、有機・無機複合皮膜、無機系皮膜、 着塗装膜等の皮膜が設けられていてもよい

 ここで、有機樹脂皮膜としては、例えば ウレタン系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル 樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エ レン-アクリル酸共重合体等のオレフィン系 樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポ リエステルあるいはこれらの共重合物や変成 物等、塗料用として公知の樹脂に、必要に応 じてコロイダルシリカや固体潤滑剤、架橋剤 等を組み合わせて形成される皮膜などが挙げ られる。

 また、有機・無機複合皮膜としては、上 有機樹脂と、ケイ酸ナトリウム等の水ガラ 形成成分とを組み合わせて形成される皮膜 代表的に挙げられる。

 上記の無機系皮膜としては、水ガラス皮 や、リチウムシリケートから形成される皮 が代表的に挙げられる。

 次に、本発明に係るノンクロメート電気Z nめっき鋼板の製造方法について説明する。

 まず、母材となる下地鋼板(めっき原板) 用意する。下地鋼板としては、電気Znめっき 鋼板に通常用いられるものであれば特に限定 されず、例えば、普通鋼板、Alキルド鋼板、 張力鋼板などの種々の鋼板を用いることが きる。めっき原板は、電気Znめっきを行な 前に、脱脂や酸洗などの前処理を行なうこ が好ましい。

 次に、電気Znめっき法により、下地鋼板 上に電気Znめっき層を形成し、電気Znめっき 板を製造する。

 本発明では、硫酸や塩酸などの酸性液中に (A)Fe 2+ およびFe 3+ と、(B)上記耐しみ汚れ性改善元素の少なくと も一種の元素とが、以下の範囲内に制御され ている酸性めっき浴を用いる(ただし、Ni:20~20 00ppm、Fe 2+ :50~5000ppm、Fe 3+ :50~5000ppm、Cr:5~2000ppm、Mo:50~2000ppm、Sn:0.05~20ppm Cu:0.05~50ppm、Cd:0.05~5ppm、Ag:0.05~5ppm、Si:20~2000ppm 、Co:0.05~50ppm、In:0.5~50ppm、Ir:0.05~5ppmおよびW:0.5 ~50ppmを含む酸性めっき液は除く。)。
 (A)Fe 2+ :50~5000ppmおよびFe 3+ :50~5000ppmであり、好ましくは、Fe 2+ :200ppm以上2000ppm以下、Fe 3+ :500ppm以上2000ppm以下。
 (B)Ni:20~2000ppm、Cr:5~2000ppm、Mo:50~2000ppm、Sn:0.05~ 20ppm、Cu:0.05~50ppm、Cd:0.05~5ppm、Ag:0.05~5ppm、Si:20~ 2000ppm、Co:0.05~50ppm、In:0.5~50ppm、Ir:0.05~5ppm、W:0. 5~50ppmであり、
 好ましくは、Ni:200ppm以上2000ppm以下、Cr:50ppm 上2000ppm以下、Mo:200ppm以上2000ppm以下、Sn:0.5pp m以上5ppm以下、Cu:2ppm以上50ppm以下、Cd:0.5ppm以 5ppm以下、Ag:0.5ppm以上5ppm以下、Si:50ppm以上800 ppm以下、Co:0.5ppm以上5ppm以下、In:2ppm以上20ppm 下、Ir:0.5ppm以上5ppm以下、W:2ppm以上50ppm以下 ある。

 上記(A)および(B)の量が上記の下限を下回 と耐しみ汚れ性が有効に発揮されず、一方 上記(A)および(B)の量が上記の上限を超える 、耐白錆性が低下し、元素によっては耐し 汚れ性も更に低下するようになる(後記する 実施例を参照)。

 上記元素のうち、(B)の耐しみ汚れ性改善 素は、前述したように使用する電極の種類 どによってはめっき浴中に混入する場合が るため、めっき浴中の添加量が上記範囲内 なるように添加量の調整を行なえば良い。 た、上記(A)のFeは、めっき浴中に不可避的 混入してくる不純物元素のため、めっき浴 の添加量が上記範囲内になるように、必要 応じて、Fe除去のための公知の除鉄手段(例 ば、イオン交換法、酸化法など)を行なって 加量の調整を行なえば良い。

 めっき浴中への上記元素の添加形態は、 に限定されず、各元素の原子換算の添加量 上記範囲を満足する限り、任意の形態をと ことができる。例えば、金属粉末や金属箔 どの金属状態でめっき液中に添加しても良 し、硫酸塩、塩化物塩、リン酸塩、炭酸塩 酸化物塩などの金属塩の形態で添加しても い。金属塩の形態で添加する場合、元素の 数は特に限定されず、通常とり得る値を採 することができる。例えば、Crは3価でも6価 でも良い。MoやWなどは、4価、6価のいずれで 良い。後記する実施例に示すように、上記 元素は、水和物の形で添加されていても良 。

 めっき液中には、上記元素のほか、通常添 される他の成分を添加しても良い。例えば 導電性を高めて電力消費量の低減を図る目 で、Na 2 SO 4 、(NH 4 ) 2 SO 4 、KCl、NaClなどの導電性補助剤を添加しても い。

 本発明の製造方法は、耐しみ汚れ性向上 用を有する上記の元素をめっき液中に所定 添加して、所望の電気Znめっき層を形成し ところに特徴があり、他のめっき条件は、 発明の作用を損なわない範囲で、適宜適切 定められるが、例えば、以下のように制御 ることが好ましい。

 めっき液のpHは、電流効率やめっき焼け 象との関係を考慮し、おおむね、0.5~4.0の範 内であることが好ましく、1.0~2.0の範囲内で あることがより好ましい。

 めっき液の温度は、おおむね、50~70℃の 囲内とすることが好ましい。

 めっき液の相対流速は、おおむね、0.3~5m/ secの範囲内であることが好ましい。ここで、 相対流速とは、めっき液の流れ方向速度と、 めっき原板である鋼板の通板方向速度との差 を意味する。

 電気めっきに用いられる電極(陽極)の種 は、通常用いられるものであれば特に限定 れず、例えば、Pb-Sn電極、Pb-In電極、Pb-Ag電 、Pb-In-Ag電極などの鉛系電極のほか、Ti被覆 化イリジウム電極、亜鉛電極などが挙げら る。

 めっきセルは、縦型および横型のいずれ セルを用いることができる。電気Znめっき 方法は、特に限定されず、例えば、定電流 っき法やパルスめっき法などが挙げられる

 上記のようにめっき層を形成した後、以 のようにして樹脂皮膜(ノンクロメート皮膜 )を形成する。樹脂皮膜の形成前に、めっき の表面に、皮膜密着性向上、耐食性改善、 観制御などを目的として、例えば、Co,Ni,Mo,V, りん酸塩、硝酸塩などのアミンなどを用いた 公知の前処理を行ってもよい。

 具体的には、まず、カルボキシル基含有 脂の樹脂成分およびSi系無機化合物を所定 含有し、好ましくは、シランカップリング を所定量含有するクロメートフリー化成処 液(以下、単に「処理液」と呼ぶ場合がある )を用意する。処理液は、以下の成分を完全 に溶解できる水系溶媒(例えば、塩酸や硝酸 液など)に溶解・分散させたものである。

 処理液中に含まれる樹脂成分とSi系無機 合物の質量比率は、おおむね、樹脂成分:Si 無機化合物=5部~45部:55部~95部の範囲内である ことが好ましい。カルボキシル基含有樹脂な どの樹脂成分の量が少ないと、耐食性、耐ア ルカリ脱脂性、塗装性などが低下する傾向に あり、一方、樹脂成分の量が多いと、耐アブ レージョン性、導電性などが低下するように なる。また、コロイダルシリカの量が少ない と、耐アブレージョン性、導電性などが低下 する傾向にあり、コロイダルシリカの量が多 いと、樹脂成分が少なくなるために樹脂皮膜 の造膜性が低下し、耐食性が低下するように なる。

 処理液は、シランカップリング剤を更に 有しても良い。処理液中に含まれるシラン ップリング剤の含有量は、後記する実施例 示すように、樹脂成分とSi系無機化合物の 計100質量部に対し、おおむね、5~25質量部の 囲であることが好ましい。シランカップリ グ剤の含有量が少ないと、耐しみ汚れ性改 作用が有効に発揮されないほか、カルボキ ル基含有樹脂とSi系無機化合物との反応性 低下し、耐アブレージョン性、塗装性、耐 性などが低下する。一方、シランカップリ グ剤の含有量が多いと、樹脂皮膜の作製に いられる皮膜調製液の安定性が低下し、ゲ 化する恐れがある。また、反応に寄与しな シランカップリング剤の量が多くなるため Znめっき層と樹脂皮膜との密着性が低下する 恐れがある。

 処理液には、上記成分のほか、必要に応 て、ワックスや架橋剤などを添加してもよ 。更に、処理液には、本発明の作用を損な ない範囲で、通常含まれる成分(例えば、皮 張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤 、乳化剤、造膜補助剤、着色顔料、潤滑剤、 界面活性剤、導電性を付与するための導電性 添加剤、増粘剤、分散剤、乾燥剤、安定剤、 防黴剤、防腐剤、凍結防止剤など)を含有し もよい。

 上記の成分を含有する処理液は、公知の 法、例えば、ロールコート法、スプレーコ ト法、カーテンフローコーター法、ナイフ ーター法、バーコート法、浸漬コート法、 毛塗り法などを用いて、金属板の片面また 両面に塗布した後、加熱、乾燥すると、所 とする樹脂皮膜を備えた電気Znめっき鋼板 得られる。

 加熱・乾燥温度は、使用するカルボキシ 基含有樹脂とSi系無機化合物との架橋反応 充分進行する温度(例えば、おおむね、板温9 0~100℃)で行なうことが好ましい。また、潤滑 剤として、球形のポリエチレンワックスを用 いる場合は、球形を維持しておく方が後の加 工工程での加工性が良好となるので、約70~130 ℃の範囲で乾燥を行うことが望ましい。

 以下、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明するが、本発明は下記実施例によっ 制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る 囲で適切に改変を行って実施することも可 であり、そのような態様も、本発明の技術 範囲に含まれる。

 実験例1
 基礎実験として、めっき層中に含まれる元 の種類および含有量が、耐しみ汚れ性、更 は耐白錆性に及ぼす影響を検討した。ここ は、前述した特開2004-224454号公報の実施例1 記載の方法と同様にして樹脂皮膜を作製し いる。

 (1)樹脂水性液の作製
 ここでは、カルボキシル基含有ポリウレタ 樹脂水性液、エチレン-不飽和カルボン酸共 重合体水性分散液、シリカ粒子、およびシラ ンカップリング剤を含有する樹脂水性液から 樹脂皮膜を作製した。具体的な作製方法は、 以下のとおりである。以下において、「%」 質量%を意味する。

 (1-1)カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂 性液の調製
 撹拌機、温度計、温度コントローラを備え 内容量0.8Lの合成装置にポリオール成分とし て保土ヶ谷化学工業(株)製ポリテトラメチレ エーテルグリコール(平均分子量1000)を60g、1 ,4-シクロヘキサンジメタノール14g、ジメチロ ールプロピオン酸20gを用い、さらに反応溶媒 としてN-メチルピロリドン30.0gを加えた。イ シアネート成分としてトリレンジイソシア ート(以下、単に「TDI」という場合がある)を 104g用い、80から85℃に昇温し5時間反応させた 。得られたプレポリマーのNCO含有量は、8.9% あった。さらにトリエチルアミン16gを加え 中和を行い、エチレンジアミン16gと水480gの 合水溶液を加えて、50℃で4時間乳化し、鎖 長反応させてポリウレタン樹脂水性分散液 得た(不揮発性樹脂成分29.1%、酸価41.4)。

 (1-2)エチレン-不飽和カルボン酸共重合体水 分散液の調製
 撹拌機、温度計、温度コントローラを備え 内容量0.8Lの乳化設備のオートクレイブに、 水626質量部、エチレン-アクリル酸共重合体( クリル酸20質量%、メルトインデックス(MI)300 )160質量部を加え、エチレン-アクリル酸共重 体のカルボキシル基1モルに対して、トリエ チルアミンを40モル%、水酸化ナトリウムを15 ル%加えて、150℃、5Paの雰囲気下で高速撹拌 を行い、40℃に冷却してエチレン-アクリル酸 共重合体の水性分散液を得た。続いて、前記 水性分散液に架橋剤として、4,4'-ビス(エチレ ンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタ (日本触媒製、ケミタイトDZ-22E、「ケミタイ 」は登録商標)を、エチレン-アクリル酸共 合体の不揮発性樹脂成分100質量部に対して5 量部の比率になるように添加した。

 (1-3)樹脂水性液の調製
 上記で得たカルボキシル基含有ポリウレタ 樹脂水性液、上記エチレン-アクリル酸共重 合体水性分散液、コロイダルシリカ(日産化 工業(株)製「ST-XS」、平均粒子径4~6nm)を5質量 部:25質量部:70質量部の配合比率となるように 不揮発性成分換算で合計100質量部配合し、こ の合計100質量部に対して、さらにシランカッ プリング剤として、γ-グリシドキシプロピル トリメトキシシラン(信越化学製「KBM403」)を1 0質量部添加して樹脂水性液を調製した。

 (2)電気Znめっき鋼板の作製
 めっき原板として、常法で作製したAlキル 冷延鋼板を用いた。これを脱脂酸洗後、め き面積180mm×300mmの循環型めっき装置にて、 酸塩浴を用いて、下記の条件で電気めっき 施し、電気Znめっき鋼板を得た。

 (めっき液組成)
 以下の成分を含有すると共に、表2(表2-1、2- 2および2-3)に記載の様々な元素を上記表に示 範囲で、それぞれ、添加しためっき液を用 た。上記表2に示すように、Ni、Fe、Cr、Sn、C u、Cd、Co、Wは、いずれも、硫酸塩として、Mo モリブデン酸ナトリウムとして、Siはコロ ダルシリカとして、Agは硝酸銀として、Inは 酸化物として、Irは臭化物として、それぞ 、添加した。なお、比較のため、これらの 素を全く添加しないめっき液も用意した。
  ZnSO 4 ・7H 2 O 350g/L
  Na 2 SO 4  70g/L
  H 2 SO 4  20g/L

 他の電気めっき条件は、以下のとおりであ 。
・電流密度:100A/dm 2
・めっき浴温度:60±5℃
・めっき液流速:1.3m/sec
・電極(陽極):Ti被覆IrO x 電極
・めっき付着量:20g/m 2

 (3)樹脂皮膜を備えた電気Znめっき鋼板の作
 上記(1)で得られた樹脂水性液を、上記(2)で られたZnめっき層の上にロール絞り法によ 塗布(片面塗布)し、実験炉にて、炉温220℃、 板温95℃で加熱乾燥し、厚さが0.4μmの樹脂皮 (ノンクロメート皮膜)を有する電気Znめっき 鋼板を得た。

 このようにして得られた樹脂皮膜は、樹 成分、コロイダルシリカ、およびシランカ プリング剤を質量比率で、おおむね、樹脂 分:コロイダルシリカ:シランカップリング =30部:70部:10部含有している。

 また、上記の樹脂皮膜中に含まれるNaを 子吸光光度法(装置:ジャーレルアッシュ社製 のSOLARA-M6を使用)によって確認したところ、1. 2質量%であった。詳細には、樹脂皮膜を構成 る樹脂成分中に含まれるNa含有量は0.55質量% であり、コロイダルシリカ中に含まれるNa含 量は1.7質量%であった。

 (4)めっき層中の耐しみ汚れ性改善元素の分
 このようにして得られためっき層中に含ま る耐しみ汚れ性改善元素の量は、以下の方 で分析した。

 まず、上記のようにして得られた電気Zn っき鋼板を50×50mmサイズに切断した分析用試 料を用意し、これを2倍に希釈した塩酸液中 入れ、Znの溶解反応が終了するまで浸漬し、 浸漬液(1)を得た。本実施例では、いったん溶 解した耐しみ汚れ性改善元素が、基材である 鋼板表面へ置換析出することによる測定誤差 をなくすため、Znの溶解反応終了後、直ちに 記の試料を引き上げ、再度、新しく調製し 塩酸液(2倍希釈液)に30秒間浸漬し、浸漬液(2 )を得た。その後、上記のようにして得られ 浸漬液(1)および(2)を併せて定容した後、ICP-M S分析装置(VGI社製PLASMAQUAD型)を用い、耐しみ れ性改善元素(Cuを除く)の量を分析した。Cu ついては、ICP分析装置(島津製作所製ICPV-1000) を用い、分析を行った。

 (5)耐しみ汚れ性の評価
 上記のようにして得られた各電気Znめっき 板を、温度50℃、相対湿度95%以上の恒温恒湿 試験装置内に入れて504時間保管した後、目視 で、表面の外観を観察し、下記基準で、耐し み汚れ性を評価した。本実施例では、評価基 準が「1」または「2」を合格(本発明例)と判 した。
  1:しみ汚れが全くない場合
  2:しみ汚れが僅かに発生している場合
  3:しみ汚れが発生している場合

 (6)耐白錆性の評価
 上記のようにして得られた各電気Znめっき 板について、JIS Z2371に規定する塩水噴霧試 を実施し、96時間経過後の白錆発生面積率 下記基準で判定し、耐白錆性を評価した。 実施例では、評価基準が「◎」または「○ を合格(本発明例)と判定した。
  ◎:5%未満
  ○:5%以上10%未満
  △:10%以上50%未満
  ×:50%以上

 これらの結果を、表2-1~表2-3に併記する。 なお、上記表2-1~表2-3のNo.1は、めっき層中に 素を全く添加しない例の結果である。

 また、表2-3中、No.77の「<0.0001」、およ No.83の「<1」は、それぞれ、測定限界以下 であったことを示している。

 これらの表より、以下のように考察する とができる。

 No.3~7(Ni含有例)、No.11~14(Fe 2+ 含有例)、No.18~20(Fe 3+ 含有例)、No.23~28(Cr含有例)、No.32~35(Na含有例) No.38~42(Si含有例)、No.46~49(Sn含有例)、No.52~56(Cu 含有例)、No.59~62(Co含有例)、No.66~69(W含有例)、 No.72~75(In含有例)、No.78~81(Cd含有例)、No.84~87(Ag 有例)、No.90~93(Ir含有例)は、いずれも、めっ き液中およびめっき層中の耐しみ汚れ性改善 元素の量が本発明で規定する範囲を満足する 例であり、めっき浴中に上記元素を全く添加 しなかったNo.1(元素の添加なし)に比べ、耐し み汚れ性および耐白錆性の両特性に優れたノ ンクロメート電気Znめっき鋼板が得られた。

 これに対し、めっき液中およびめっき層中 各元素の含有量が少ない以下の例は、耐し 汚れ性が低下した。
 No.2(めっき液中およびめっき層中のNiの含有 量が少ない例)、No.9、10(Fe 2+ の含有量が少ない例)、No.16、17(Fe 3+ の含有量が少ない例)、No.22(Crの含有量が少な い例)、No.30、31(Moの含有量が少ない例)、No.37( Siの含有量が少ない例)、No.44、45(Snの含有量 少ない例)、No.51(Cuの含有量が少ない例)、No.5 8(Coの含有量が少ない例)、No.65(Wの含有量が少 ない例)、No.71(Inの含有量が少ない例)、No.77(Cd の含有量が少ない例)、No.83(Agの含有量が少な い例)、No.89(Irの含有量が少ない例)

 一方、めっき液中およびめっき層中の各元 の含有量が多い以下の例は、耐しみ汚れ性 良好であったが、耐白錆性が低下した。
 No.8(めっき液中およびめっき層中のNiの含有 量が多い例)、No.15(Fe 2+ の含有量が多い例)、No.21(Fe 3+ の含有量が多い例)、No.50(Snの含有量が多い例 )、No.64(Coの含有量が多い例)、No.70(Wの含有量 多い例)、No.76(Inの含有量が多い例)、No.82(Cd 含有量が多い例)、No.94(Irの含有量が多い例) 。

 また、めっき液中およびめっき層中の各元 の含有量が多い以下の例は、耐しみ汚れ性 よび耐白錆性の両方が低下した。
 No.29(Crの含有量が多い例)、No.36(Moの含有量 多い例)、No.43(Siの含有量が多い例)。

 実施例1
 以上の基礎実験(前述した実験例1)を踏まえ 本実施例では、めっき層中に含まれ得る不 物元素のFeと耐しみ汚れ性改善元素とを、 3~表7(表3-1~3-12、表4-1~4-11、表5-1~5-10、表6-1~6-9 、表7)に示す範囲で制御したときにおける、 しみ汚れ性、更には耐白錆性に及ぼす影響 検討した。

 詳細には、前述した実験例1において、め っき層中およびめっき液中の元素の種類およ び量を、表3~表7の内容に変更したこと以外は 上記実験例1と同様にしてノンクロメート電 Znめっき鋼板を作製し、耐しみ汚れ性および 耐白錆性を評価した。

 これらの結果を表3~表7に併記する。

 まず、表3-1~表3-12について考察する。こ らの表には、不純物元素のFeと、耐しみ汚れ 性改善元素(一種のみ)との合計2種類を上記表 に示す範囲内に制御した場合の結果を示して いる。詳細には、耐しみ汚れ性改善元素の種 類をNi(表3-1)、Cr(表3-2)、Mo(表3-3)、Sn(表3-4)、Cu (表3-5)、Cd(表3-6)、Ag(表3-7)、Si(表3-8)、Co(表3-9) 、In(表3-10)、Ir(表3-11)、W(表3-12)とし、これら 耐しみ汚れ性改善元素の量を、本発明で規 する範囲内・範囲外に変えたときの耐しみ れ性および耐白錆性に及ぼす影響を調べた

 その結果、めっき液中およびめっき層中 耐しみ汚れ性改善元素の量が本発明で規定 る範囲を満足する、上記各表のNo.2では、い ずれも、耐しみ汚れ性および耐白錆性の両特 性に優れたノンクロメート電気Znめっき鋼板 得られた。これに対し、めっき液中および っき層中の耐しみ汚れ性改善元素の量が少 い、上記各表のNo.3では、いずれも、耐しみ 汚れ性が低下した。一方、当該耐しみ汚れ性 改善元素の量が多い、上記各表のNo.1では、 該元素がCr、Mo、およびSiのように耐しみ汚 性と耐白錆性が共に低下する場合と、上記 外の元素のように耐しみ汚れ性は良好であ たが、耐白錆性が低下する場合の両方が見 れた。

 次に、表4-1~表4-11について考察する。こ らの表には、不純物元素のFeと、耐しみ汚れ 性改善元素(Niと、Ni以外の耐しみ汚れ性改善 素の一種類)との合計3種類を上記表に示す 囲内に制御した場合の結果を示している。 細には、Ni以外の耐しみ汚れ性改善元素の種 類をCr(表4-1)、Mo(表4-2)、Sn(表4-3)、Cu(表4-4)、Cd (表4-5)、Ag(表4-6)、Si(表4-7)、Co(表4-8)、In(表4-9) 、Ir(表4-10)、W(表4-11)とし、これらの耐しみ汚 れ性改善元素の量を、本発明で規定する範囲 内・範囲外に変えたときの耐しみ汚れ性およ び耐白錆性に及ぼす影響を調べた。

 その結果、めっき液中およびめっき層中 耐しみ汚れ性改善元素の量が本発明で規定 る範囲を満足する、上記各表のNo.2では、い ずれも、耐しみ汚れ性および耐白錆性の両特 性に優れたノンクロメート電気Znめっき鋼板 得られた。これに対し、めっき液中および っき層中の耐しみ汚れ性改善元素の量が少 い、上記各表のNo.3では、いずれも、耐しみ 汚れ性が低下した。一方、当該耐しみ汚れ性 改善元素の量が多い、上記各表のNo.1では、 該元素がCr、Mo、およびSiのように耐しみ汚 性と耐白錆性が共に低下する場合と、上記 外の元素のように耐しみ汚れ性は良好であ たが、耐白錆性が低下する場合の両方が見 れた。

 次に、表5-1~表5-10について考察する。こ らの表には、不純物元素のFeと、耐しみ汚れ 性改善元素(Niと、Crと、Ni・Cr以外の耐しみ汚 れ性改善元素の一種類)との合計4種類を上記 に示す範囲内に制御した場合の結果を示し いる。詳細には、NiおよびCr以外の耐しみ汚 れ性改善元素の種類をMo(表5-1)、Sn(表5-2)、Cu( 5-3)、Cd(表5-4)、Ag(表5-5)、Si(表5-6)、Co(表5-7) In(表5-8)、Ir(表5-9)、W(表5-10)とし、これらの しみ汚れ性改善元素の量を、本発明で規定 る範囲内・範囲外に変えたときの耐しみ汚 性および耐白錆性に及ぼす影響を調べた。

 その結果、めっき液中およびめっき層中 耐しみ汚れ性改善元素の量が本発明で規定 る範囲を満足する、上記各表のNo.2では、い ずれも、耐しみ汚れ性および耐白錆性の両特 性に優れたノンクロメート電気Znめっき鋼板 得られた。これに対し、めっき液中および っき層中の耐しみ汚れ性改善元素の量が少 い、上記各表のNo.3では、いずれも、耐しみ 汚れ性が低下した。一方、当該耐しみ汚れ性 改善元素の量が多い、上記各表のNo.1では、 該元素がCr、Mo、およびSiのように耐しみ汚 性と耐白錆性が共に低下する場合と、上記 外の元素のように耐しみ汚れ性は良好であ たが、耐白錆性が低下する場合の両方が見 れた。

 次に、表6-1~表6-9について考察する。これ らの表には、不純物元素のFeと、耐しみ汚れ 改善元素(Niと、Crと、Moと、Ni・Cr・Mo以外の 耐しみ汚れ性改善元素の一種類)との合計5種 を上記表に示す範囲内に制御した場合の結 を示している。詳細には、Ni、CrおよびMo以 の耐しみ汚れ性改善元素の種類をSn(表6-1)、 Cu(表6-2)、Cd(表6-3)、Ag(表6-4)、Si(表6-5)、Co(表6- 6)、In(表6-7)、Ir(表6-8)、W(表6-9)とし、これら 耐しみ汚れ性改善元素の量を、本発明で規 する範囲内・範囲外に変えたときの耐しみ れ性および耐白錆性に及ぼす影響を調べた

 その結果、めっき液中およびめっき層中 耐しみ汚れ性改善元素の量が本発明で規定 る範囲を満足する、上記各表のNo.2では、い ずれも、耐しみ汚れ性および耐白錆性の両特 性に優れたノンクロメート電気Znめっき鋼板 得られた。これに対し、めっき液中および っき層中の耐しみ汚れ性改善元素の量が少 い、上記各表のNo.3では、いずれも、耐しみ 汚れ性が低下した。一方、当該耐しみ汚れ性 改善元素の量が多い、上記各表のNo.1では、 該元素がCr、Mo、およびSiのように耐しみ汚 性と耐白錆性が共に低下する場合と、上記 外の元素のように耐しみ汚れ性は良好であ たが、耐白錆性が低下する場合の両方が見 れた。

 次に、表7について考察する。これらの表 には、不純物元素のFeと、本発明で規定する しみ汚れ性改善元素(全部)との合計14種類を 上記表に示す範囲内に制御した場合の結果を 示している。詳細には、In以外の元素はすべ 、本発明に規定する範囲内であり、Inのみ 多い場合の耐しみ汚れ性および耐白錆性に ぼす影響を調べた。その結果、In量が多いた め、耐しみ汚れ性は良好であったが、耐白錆 性が低下した。

 実施例2
 本実施例では、シランカップリング剤の添 による耐しみ汚れ性向上作用について検討 た。ここでは、以下に示すように、樹脂成 とコロイダルシリカの配合比率が異なる三 類の樹脂皮膜を有するノンクロメート電気Z nめっき鋼板を作製し、各ノンクロメート電 Znめっき鋼板に対するシランカップリング剤 の影響を調べた。

 (No.95~98)
 前述した実験例1において、「(1-3)樹脂水性 の調製」における、カルボキシル基含有ポ ウレタン樹脂水性液、エチレン-アクリル酸 共重合体水性分散液、コロイダルシリカ(配 比率=5質量部:25質量部:70質量部)の合計100質 部に対し、さらにシランカップリング剤を 8に示すように、0、10質量部、20質量部、30質 量部の範囲内で添加したこと以外は、実験例 1と同様にして樹脂皮膜を作製した。

 また、前述した実験例1の「(2)電気Znめっ 鋼板の作製」において、表6-1のNo.2のめっき 液を用いたこと以外は、実験例1と同様にし 電気Znめっき鋼板を作製した。

 次いで、実験例1と同様にしてノンクロメ ート電気Znめっき鋼板を作製し、耐しみ汚れ および耐白錆性を評価した。

 (No.99~102)
 前述した実験例1において、「(1-2)エチレン- 不飽和カルボン酸共重合体水性分散液の調製 」において水酸化ナトリウムを添加しなかっ たこと、および、「(1-3)樹脂水性液の調製」 おけるコロイダルシリカとして、日産化学 業(株)製「ST-AK」を用い、且つ、カルボキシ ル基含有ポリウレタン樹脂水性液、エチレン -アクリル酸共重合体水性分散液(Naの含有な )、コロイダルシリカの配合比率を5質量部:30 質量部:65質量部とし、これらの合計100質量部 に対し、さらにシランカップリング剤を表8 示すように、0、10質量部、20質量部、30質量 の範囲内で添加したこと以外は、実験例1と 同様にして樹脂皮膜を作製した。

 また、前述した実験例1の「(2)電気Znめっ 鋼板の作製」において、表6-1のNo.2のめっき 液を用いたこと以外は、実験例1と同様にし 電気Znめっき鋼板を作製した。

 (No.103~106)
 前述した実験例1において、「(1-3)樹脂水性 の調製」におけるコロイダルシリカとして 日産化学工業(株)製「ST-XS」中に強度向上の 目的でNaOHを5.1質量%添加したものを用い、且 、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂水 液、エチレン-アクリル酸共重合体水性分散 液、コロイダルシリカの配合比率を6質量部:3 4質量部:60質量部とし、これらの合計100質量 に対し、さらにシランカップリング剤を表8 示すように、0、10質量部、20質量部、30質量 部の範囲内で添加したこと以外は、実験例1 同様にして樹脂皮膜を作製した。

 (No.103~106)
 前述した実験例1において、「(1-3)樹脂水性 の調製」におけるコロイダルシリカとして 日産化学工業(株)製「ST-XS」中に強度向上の 目的でNaOHを5.1質量%添加したものを用い、且 、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂水 液、エチレン-アクリル酸共重合体水性分散 液、コロイダルシリカの配合比率を6質量部:3 4質量部:60質量部とし、これらの合計100質量 に対し、さらにシランカップリング剤を表8 示すように、0、10質量部、20質量部、30質量 部の範囲内で添加したこと以外は、実験例1 同様にして樹脂皮膜を作製した。

 また、前述した実験例1の「(2)電気Znめっ 鋼板の作製」において、表6-1のNo.2のめっき 液を用いたこと以外は、実験例1と同様にし 電気Znめっき鋼板を作製した。

 次いで、実験例1と同様にしてノンクロメ ート電気Znめっき鋼板を作製し、耐しみ汚れ および耐白錆性を評価した。

 これらの結果を表8に併記する。
 なお、表8は、樹脂皮膜を構成する樹脂成分 およびコロイダルシリカに含まれるNa含有量 並びに、樹脂皮膜中に含まれるNa含有量を 記している。

 表8に示すように、シランカップリング剤 を本発明の好ましい範囲で添加すると、シラ ンカップリング剤無添加の場合に比べ、上記 の特性がいずれも上昇した。なお、シランカ ップリング剤を30質量部添加した例では、処 液がゲル化し、めっき層上に塗布できなか たため、外観の評価はできなかった。