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Patent Searching and Data


Title:
ELECTRODE AND METHOD FOR MANUFACTURING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/087917
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is an electrode (30) (for instance, a positive electrode for a lithium ion battery) wherein an active material layer (35) having an electrode active material as a main component is held by a metal power collector (32). On a surface of the power collector (32), a barrier layer (33) containing non water-soluble polymeric material (334) and a conductive material (332) is arranged. An interconnecting layer (34), which contains a polymeric material (344) and a conductive material (342) and has conductivity higher than that of the barrier layer (33) is arranged between the polymeric material (344) and the conductive material (342).

Inventors:
TAKAHATA KOJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073617
Publication Date:
July 16, 2009
Filing Date:
December 25, 2008
Export Citation:
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Assignee:
TOYOTA MOTOR CO LTD (JP)
TAKAHATA KOJI (JP)
International Classes:
H01M4/02; H01G11/22; H01G11/34; H01G11/42; H01M4/04; H01M4/06; H01M4/13; H01M4/139; H01M4/62; H01M4/66
Domestic Patent References:
WO1996004689A11996-02-15
Foreign References:
JP2006004739A2006-01-05
JP2003157852A2003-05-30
JPH0997625A1997-04-08
JPS6291356U1987-06-11
JPS5632677A1981-04-02
Attorney, Agent or Firm:
ABE, Makoto (CRD Marunouchi 5th Floor3-17-13 Marunouchi, Naka-k, Nagoya-shi Aichi 02, JP)
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Claims:
 電極活物質を主成分とする活物質層が金属製の集電体に保持された電極であって、
 前記集電体の表面に設けられた層であって非水溶性ポリマー材料と導電材とを含有するバリア層と、
 前記バリア層と前記活物質層との間に介在された層であってポリマー材料と導電材とを含有し、前記バリア層よりも導電性の高い連絡層と、
 を備える、電極。
 前記バリア層における導電材/ポリマー材料の質量比R B と前記連絡層における導電材/ポリマー材料の質量比R C との関係がR B <R C を満たす、請求項1に記載の電極。
 前記バリア層および前記連絡層はそれぞれ粒状の導電材を含み、前記バリア層に含まれる粒状導電材の平均粒径D B と前記連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒径D C との関係がD B >D C を満たす、請求項1に記載の電極。
 前記活物質層は粒状の導電材を含み、該活物質層に含まれる粒状導電材の平均粒径D A と前記連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒径D C との関係がD A >D C を満たす、請求項1に記載の電極。
 前記連絡層は炭素繊維を含み、該炭素繊維の少なくとも一部は前記連絡層から前記活物質層および/または前記バリア層に跨って配置されている、請求項1に記載の電極。
 電極活物質を主成分とする活物質層が金属製の集電体に保持された電極を製造する方法であって:
 導電材と非水溶性ポリマー材料と該ポリマー材料を溶解する溶媒とを含むバリア層形成用組成物を前記集電体に付与して該集電体の表面にバリア層を形成すること;
 前記バリア層の上から、導電材とポリマー材料と該ポリマー材料を溶解する溶媒とを含む連絡層形成用組成物を付与して連絡層を形成すること;および、
 前記連絡層の上から水系の活物質組成物を付与して活物質層を形成すること;
 を包含する、電極製造方法。
 前記バリア層形成用組成物を構成する溶媒は有機溶剤である、請求項6に記載の方法。
 請求項1に記載の電極を用いて構築された電池。
 請求項1に記載の電極を正極に用いて構築されたリチウムイオン電池。
 請求項9に記載のリチウムイオン電池を備える車両。
Description:
電極およびその製造方法

 本発明は、電池(例えばリチウムイオン電池 )の構成要素として用いられる電極およびそ 製造方法に関する。
 なお、本出願は2008年1月11日に出願された日 本国特許出願第2008-004071号に基づく優先権を 張しており、その出願の全内容は本明細書 に参照として組み入れられている。

 電荷担体として機能する化学種を放出し る材料を集電体に保持した構成の電極が知 れている。この種の電極の一例として、該 学種を可逆的に吸蔵および放出し得る材料( 活物質)を金属製集電体に保持した構成の二 電池用電極が挙げられる。かかる電極は、 極との間に介在された電解質(典型的には非 電解質)をリチウムイオンが行き来すること により充放電するリチウムイオン電池を構築 する正極または負極として好ましく使用され 得る。活物質を集電体に保持させる代表的な 方法として、該活物質の粉末を溶媒に分散さ せたペーストまたはスラリー状の組成物(活 質組成物)を電極集電体に付与して活物質主 の層(活物質層)を形成する方法が挙げられ 。この方法に使用する活物質組成物として 、環境負荷の軽減、材料費の低減、設備の 略化、廃棄物の減量、取扱性の向上等の観 から、上記媒体(活物質粉末等の分散媒)を構 成する溶媒が水系溶媒である水系の活物質組 成物が好ましい。

 しかしながら、活物質の内容によっては 系組成物の使用により電池容量の低下ある は初期内部抵抗の増大による放電特性の低 といった問題が生じ得る。これらはペース に含まれる活物質と水との反応に起因し得 。例えば、正極活物質としてリチウムニッ ル系酸化物等のリチウム遷移金属酸化物(リ チウムと一種または二種以上の遷移金属元素 とを構成金属元素として含む酸化物をいう。 以下同じ。)を用いる場合、水系溶媒に分散 た正極活物質の表面でプロトンとリチウム オンの交換反応が生じ、その結果として水 活物質組成物のpHが高い値(すなわちアルカ 性)となり得る。かかる高pHの水系活物質組 物を正極集電体(例えばアルミニウム製)に付 与すると、該集電体の表面に高電気抵抗性を 示す化合物(例えば酸化物、水酸化物)が生成 易くなることがある。このような高電気抵 性化合物の生成は、電池の初期内部抵抗増 の要因(ひいては、高出力化を妨げる要因) なり得る。

 この点に関し、特許文献1には、集電体の表 面に有機溶剤可溶性ポリマー(結着材)および 電材を含む層(導電層)を設け、この層を水 集電体との直接接触を阻止するバリア層と て利用することにより、該層の上から水系 物質組成物を付与して活物質層を形成する に上記高電気抵抗性化合物が生成する事象 回避する技術が記載されている。

日本国特許出願公開2006-4739号公報

 ここで、上述のようなバリア層には耐水 (水と集電体との直接接触を阻止して上記高 電気抵抗性化合物の生成を防止する性能)と もに導電性(換言すれば、活物質層と集電体 との間の抵抗を過度に上昇させないこと)が 求められる。しかしながら、通常これらの二 特性は背反する関係にある。例えば、バリア 層における導電材の含有割合を多くすること は該バリア層を有する電極の導電性向上にと って有利であるが、そうすると結着材の含有 割合が相対的に少なくなるためバリア層の耐 水性は低下傾向となる。逆に、バリア層の耐 水性向上のために結着材の含有割合を多くす ると、導電材の含有割合が相対的に少なくな って導電性が低下傾向となる。

 そこで本発明は、水系の活物質組成物を 用して電極(例えばリチウムイオン電池用正 極)を製造する場合の問題をより高いレベル 解決し、水系の活物質組成物を用いて製造 ても安定した高性能を発揮する電極を提供 ることを目的とする。本発明の他の目的は 水系の活物質組成物を使用して高性能な電 を製造する方法の提供である。また本発明 、かかる電極を用いて構築されたリチウム オン電池その他の電池および該電池を備え 車両の提供を目的とする。

 本発明によると、電極活物質を主成分と る活物質層が金属製の集電体に保持された 極(例えば、リチウムイオン電池用正極)が 供される。その電極は、前記集電体の表面 設けられたバリア層を備える。該バリア層 、非水溶性ポリマー材料と導電材とを含有 る。上記電極は、また、前記バリア層と前 活物質層との間に介在された連絡層を備え 。この連絡層は、ポリマー材料と導電材と 含有し、且つ前記バリア層よりも高い導電 を有する。

 かかる構成の電極によると、バリア層と 物質層との間に設けられた高導電性の連絡 を利用して、バリア層と連絡層との間およ 連絡層と活物質層との間の電子移動を効率 く行うことができる。これにより、上記連 層を有しない電極(すなわち、バリア層の上 に活物質層が直接形成された構成の電極)に べて、活物質層と集電体との間の抵抗を低 することができる。したがって、上記バリ 層における非水溶性ポリマー材料(バリア層 耐水性に寄与する被膜形成成分として機能 得る。)の含有割合が比較的高くても、この ことによる導電性の低下を上記連絡層の設置 によって補うことができる。その結果、バリ ア層における高耐水性(例えば、水系の活物 組成物を用いて活物質層を形成する場合に いても上記高電気抵抗性化合物の生成を実 上十分に防止することのできる耐水性)を確 しつつ上記活物質層-集電体間の導電性が改 善された、高性能な電極が提供され得る。か かる電極を備える電池は、より高性能(例え 高出力)なものとなり得る。

 なお、本明細書において「電池」とは、 気エネルギーを取り出し可能な蓄電デバイ 一般を指す用語であって、二次電池(リチウ ムイオン電池、金属リチウム二次電池、ニッ ケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等の いわゆる蓄電池ならびに電気二重層キャパシ タ等の蓄電素子を包含する。)および一次電 を含む概念である。

 ここに開示される電極の好ましい一態様で 、該電極が、前記バリア層における導電材/ ポリマー材料の質量比R B と前記連絡層における導電材/ポリマー材料 質量比R C との関係がR B <R C を満たすように構成されている。すなわち、 各層に含まれるポリマー材料の質量に対し、 連絡層はバリア層よりも高い比率で導電材を 含有する。かかる連絡層を設けることは、バ リア層-活物質層間の導電パス形成に役立ち る。したがって、かかる構成の電極による 、バリア層-活物質層間の電子移動がより効 よく行われ得る。その結果、より高性能な 極が提供され得る。

 ここに開示される電極の好ましい他の一態 では、前記バリア層および前記連絡層がそ ぞれ粒状の導電材を含む。そして、前記バ ア層に含まれる粒状導電材の平均粒径D B と前記連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒 径D C との関係がD B >D C を満たす。すなわち、連絡層に含まれる粒状 導電材はバリア層に含まれる粒状導電材より も全体として細かい粒子によって構成されて いる。かかる構成の電極によると、バリア層 -連絡層間の導電パスがよりよく形成され、 たがって上記層間の電子移動がより効率よ 行われ得る。その結果、より高性能な電極 提供され得る。

 ここに開示される電極の好ましい他の一態 では、前記活物質層が粒状の導電材を含む そして、該活物質層に含まれる粒状導電材 平均粒径D A と前記連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒 径D C との関係がD A >D C を満たす。すなわち、連絡層に含まれる粒状 導電材は、活物質層に含まれる粒状導電材よ りも全体として細かい粒子によって構成され ている。かかる構成の電極によると、連絡層 -活物質層間の導電パスがよりよく形成され したがって上記層間の電子移動がより効率 く行われ得る。その結果、より高性能な電 が提供され得る。

 ここに開示される電極の好ましい他の一 様では、前記連絡層が炭素繊維を含む。そ て、該炭素繊維の少なくとも一部は、前記 絡層から前記活物質層および/または前記バ リア層に跨って配置されている。かかる構成 の電極によると、上記層間に跨って配置され た炭素繊維を通じて、バリア層-連絡層間お び/または連絡層-活物質層間の電子移動を効 率よく行うことができる。その結果、より高 性能な電極が提供され得る。

 本発明によると、また、電極活物質を主 分とする活物質層が金属製の集電体に保持 れた構成の電極(例えば、リチウムイオン電 池用正極)を製造する方法が提供される。そ 方法は、導電材と非水溶性ポリマー材料と ポリマー材料を溶解する溶媒とを含むバリ 層形成用組成物を前記集電体に付与して該 電体の表面にバリア層を形成することを包 する。上記製造方法は、また、前記バリア の上から、導電材とポリマー材料と該ポリ ー材料を溶解する溶媒とを含む連絡層形成 組成物を付与して連絡層を形成することを 含する。上記製造方法は、さらに、前記連 層の上から水系の活物質組成物を付与して 物質層を形成することを包含する。

 かかる製造方法によると、活物質組成物 付与に先立って集電体表面にバリア層が形 されているので、該バリア層によって水系 活物質組成物と集電体表面との接触を阻む とができる。したがって、水系の活物質組 物の使用に拘らず、上記高電気抵抗性化合 の生成が適切に防止され得る。また、バリ 層と活物質層との間に上記連絡層を形成す ことにより、該連絡層を利用してバリア層- 連絡層間および連絡層-活物質層間の電子移 を効率よく行うことができる。したがって バリア層における高耐水性を確保しつつ上 活物質層-集電体間の抵抗の上昇が抑制され 高性能な電極(ひいては、より高性能な電池 を構築し得る電極)を製造することができる

 ここに開示される電極製造方法の好まし 一態様では、前記バリア層形成用組成物を 成する溶媒が有機溶剤である。かかる組成 バリア層形成用組成物(すなわち溶剤系組成 物)を用いることにより、より耐水性のよい( えば、より長時間に亘って水と集電体表面 の接触を阻止し得る)バリア層が形成され得 る。

 本発明によると、また、ここに開示され いずれかの電極を用いて構築された電池(例 えば二次電池、好ましくは非水系二次電池) 提供される。かかる電極を用いてなる電池 、該電極を構成する集電体表面において上 高電気抵抗性化合物の生成が防止され且つ 物質層-集電体間の導電性が向上されている で、より高性能なものとなり得る。ここに 示されるいずれかの電極を正極に用いて構 されたリチウムイオン電池は、本発明によ 提供される電池の一典型例である。

 本発明によると、また、ここに開示され いずれかのリチウムイオン電池(ここに開示 されるいずれかの方法により製造された電極 を例えば正極に用いてなるリチウムイオン電 池であり得る。)を備える車両が提供される 上記リチウムイオン電池は、車両に搭載さ るリチウムイオン電池として適した高性能( えば、安定して高出力を発揮すること)を実 現するものであり得る。したがって、自動車 等の車両に搭載されるモーター(電動機)用の 源として好適に使用され得る。

図1は、一実施形態に係る電極の機能を 説明するための模式的断面図である。 図2は、一実施形態に係る電極の概略製 造方法を例示するフローチャートである。 図3は、一実施形態に係る電池を示す模 式的斜視図である。 図4は、一実施形態に係る電池を構成す る正負極およびセパレータを示す模式的平面 図である。 図5は、図3のV-V線断面図である。 図6は、一実施形態に係るリチウムイオ ン電池を備えた車両(自動車)を示す模式的側 図である。 図7は、18650型リチウムイオン電池の形 を模式的に示す斜視図である。 図8は、厚み圧縮比と直流抵抗および反 応抵抗との関係を示すグラフである。 図9は、厚み圧縮比と直流抵抗および反 応抵抗との関係を示すグラフである。

 以下、本発明の好適な実施形態を説明す 。なお、本明細書において特に言及してい 事項以外の事柄であって本発明の実施に必 な事柄は、当該分野における従来技術に基 く当業者の設計事項として把握され得る。 発明は、本明細書に開示されている内容と 該分野における技術常識とに基づいて実施 ることができる。

 ここに開示される技術は、例えば、集電 に活物質層が保持された構成の電極であっ 該活物質層の形成に水系の活物質組成物を いる場合に該組成物の液性がアルカリ性と りやすい活物質(典型的には、水と接触して その液性をアルカリ側にシフトさせ得る活物 質)を備えた各種の電極およびその製造に好 しく適用され得る。かかる活物質の代表例 して、リチウムニッケル系酸化物等のリチ ム遷移金属酸化物が挙げられる。

 電極を構成する集電体の材質が、アルカ 性の水系組成物と接触することにより表面 高電気抵抗性を示す化合物を生成し得る材 である場合には、ここに開示される技術を 用することによる効果が特によく発揮され る。かかる材質の代表例として、アルミニ ム(Al)、アルミニウムを主成分とする合金( ルミニウム合金)等のアルミニウム材料が挙 られる。他の例としては、亜鉛(Zn)、スズ(Sn )等の両性金属およびこれらの金属のいずれ を主成分とする合金が挙げられる。

 使用する集電体の形状は、得られた電極 用いて構築される電池(典型的には二次電池 )の形状等に応じて異なり得るため特に制限 なく、棒状、板状、シート状、箔状、メッ ュ状等の種々の形態であり得る。ここに開 される技術は、例えばシート状もしくは箔 の集電体を用いた電極の製造に好ましく適 することができる。かかる方法により製造 れた電極を用いて構築される電池の好まし 一態様として、シート状の正極および負極 典型的にはシート状のセパレータとともに 回してなる電極体(捲回電極体)を備える電池 が挙げられる。該電池の外形は特に限定され ず、例えば直方体状、扁平形状、円筒状等の 外形であり得る。

 ここに開示される技術が好ましく適用さ る電極の典型例として、リチウム遷移金属 化物を活物質とし、該活物質を主成分とす 活物質層がアルミニウム材料製の集電体に 持された構成のリチウムイオン電池用正極 挙げられる。以下、主として本発明をリチ ムイオン電池用正極およびその製造ならび 該電極を用いて構築されたリチウムイオン 池に適用する場合を例として本発明をより しく説明するが、本発明の適用対象をかか 電極または電池に限定する意図ではない。

 リチウムイオン電池用正極の活物質(活物 質層の主成分)たるリチウム遷移金属酸化物( 型的には粒子状)としては、この種のリチウ ムイオン電池の正極活物質として機能し得る 層状構造の酸化物あるいはスピネル構造の酸 化物を適宜選択して使用することができる。 例えば、リチウムニッケル系酸化物、リチウ ムコバルト系酸化物およびリチウムマンガン 系酸化物から選択される一種または二種以上 のリチウム遷移金属酸化物の使用が好ましい 。ここに開示される技術の特に好ましい適用 対象は、正極活物質としてリチウムニッケル 系酸化物を用いてなる(典型的には、正極活 質が実質的にリチウムニッケル系酸化物か なる)正極である。リチウムニッケル系酸化 は、リチウムコバルト系酸化物やリチウム ンガン系酸化物に比べて、水系溶媒に分散 れた場合にLiがより溶出しやすい(したがっ 水性活物質組成物の液性をアルカリ側にシ トさせる作用が強い)傾向にある。したがっ て、正極活物質としてリチウムニッケル系酸 化物を用いる電極の製造においては、ここに 開示される方法を適用することによる効果が 特によく発揮され得る。

 ここで「リチウムニッケル系酸化物」と 、LiとNiとを構成金属元素とする酸化物の他 、LiおよびNi以外に他の一種または二種以上 金属元素(すなわち、LiおよびNi以外の遷移金 属元素および/または典型金属元素)をNiより 少ない割合(原子数換算。LiおよびNi以外の金 属元素を二種以上含む場合にはそれらのいず れについてもNiよりも少ない割合)で含む複合 酸化物をも包含する意味である。かかる金属 元素は、例えば、Co,Al,Mn,Cr,Fe,V,Mg,Ti,Zr,Nb,Mo,W, ,Zn,Ga,In,Sn,LaおよびCeからなる群から選択され る一種または二種以上の元素であり得る。同 様に、「リチウムコバルト系酸化物」とはLi よびCo以外に他の一種または二種以上の金 元素をCoよりも少ない割合で含む複合酸化物 をも包含する意味であり、「リチウムマンガ ン系酸化物」とはLiおよびMn以外に他の一種 たは二種以上の金属元素をMnよりも少ない割 合で含む複合酸化物をも包含する意味である 。

 このようなリチウム遷移金属酸化物(典型 的には粒子状)としては、例えば、従来公知 方法で調製・提供されるリチウム遷移金属 化物粉末(以下、活物質粉末ということもあ 。)をそのまま使用することができる。例え ば、平均粒径が凡そ1μm~25μm(典型的には凡そ2 μm~15μm)の範囲にある二次粒子によって実質 に構成されたリチウム遷移金属酸化物粉末 、ここに開示される技術における正極活物 として好ましく採用することができる。

 ここに開示される方法に使用される正極 物質組成物は、このような活物質が水系溶 に分散した形態の水系組成物であり得る。 た、ここに開示される正極活物質は、かか 水系組成物を用いて形成されたものであり る。ここで「水系溶媒」とは、水または水 主体とする混合溶媒を指す概念である。該 合溶媒を構成する水以外の溶媒としては、 と均一に混合し得る有機溶剤(低級アルコー ル、低級ケトン等)の一種または二種以上を 宜選択して用いることができる。例えば、 水系溶媒の凡そ80質量%以上(より好ましくは そ90質量%以上、さらに好ましくは凡そ95質 %以上)が水である水系溶媒の使用が好ましい 。特に好ましい例として、実質的に水からな る水系溶媒が挙げられる。特に限定するもの ではないが、正極活物質組成物の固形分濃度 (不揮発分、すなわち活物質層形成成分の割 )は、例えば凡そ40~60質量%程度であり得る。

 上記正極活物質組成物は、典型的には、 極活物質および水系溶媒の他に、該組成物 ら形成される正極活物質層の導電性を高め 導電材を含有する。かかる導電材としては えばカーボン粉末やカーボンファイバー等 カーボン材料が好ましく用いられる。ある は、ニッケル粉末等の導電性金属粉末等を いてもよい。これらのうち一種のみを用い もよく二種以上を併用してもよい。カーボ 粉末としては、種々のカーボンブラック(例 えば、アセチレンブラック、ファーネスブラ ック、ケッチェンブラック)、グラファイト 末、等のカーボン粉末を用いることができ 。これらのうちアセチレンブラックを好ま く採用することができる。例えば、構成粒 (典型的には一次粒子)の平均粒径が凡そ10nm~2 00nm(例えば凡そ20nm~100nm)の範囲にある粒状導 材(例えば、アセチレンブラック等の粒状カ ボン材料)の使用が好ましい。

 その他、上記正極活物質組成物は、一般 なリチウムイオン電池正極の製造において 極活物質組成物(典型的には水性組成物)に 合され得る一種または二種以上の材料を必 に応じて含有することができる。そのよう 材料の例として、正極活物質の結着材(バイ ダ)として機能し得る各種のポリマー材料が 挙げられる。かかるポリマー材料としては、 水系の活物質組成物を調製するにあたって結 着材として従来用いられているポリマー材料 を適宜選択して使用することができる。有機 溶剤に対して実質的に不溶性であって水に溶 解または分散するポリマー材料の使用が好ま しい。例えば、水に溶解する(水溶性の)ポリ ー材料としては、カルボキシメチルセルロ ス(CMC)、メチルセルロース(MC)、酢酸フタル セルロース(CAP)、ヒドロキシプロピルメチ セルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチ セルロースフタレート(HPMCP)等のセルロース 導体;ポリビニルアルコール(PVA);等の水溶性 ポリマーが挙げられる。なかでもCMCを好まし く採用し得る。また、水に分散する(水分散 の)ポリマー材料としては、ポリテトラフル ロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン- パーフルオロアルキルビニルエーテル共重含 体(PFA)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフル オロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン-テト ラフルオロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素 系樹脂、酢酸ビニル共重合体、スチレンブタ ジエンブロック共重合体(SBR)、アクリル酸変 SBR樹脂(SBR系ラテックス)、アラビアゴム等 ゴム類が例示される。なかでもPTFE等のフッ 系樹脂を好ましく使用し得る。このような リマー材料のうち一種のみを用いてもよく 種以上を併用してもよい。

 正極活物質層全体に占める正極活物質の 合(典型的には、正極活物質組成物の固形分 に占める正極活物質の割合と概ね一致する。 )が凡そ50質量%以上(典型的には50~95質量%)であ ることが好ましく、凡そ75~90質量%であること がより好ましい。導電材を含む組成の正極活 物質層では、該活物質層に占める導電材の割 合を例えば凡そ3~25質量%とすることができ、 そ3~15質量%とすることが好ましい。この場 において、該活物質層に占める正極活物質 割合は凡そ80~95質量%(例えば85~95質量%)とする ことが適当である。

 また、正極活物質および導電材以外の正 活物質層形成成分(例えばポリマー材料)を 有する組成物では、それら任意成分の合計 有割合(正極活物質層形成成分全体に占める 合)を凡そ7質量%以下とすることが好ましく 凡そ5質量%以下(例えば凡そ1~5質量%)とする とがより好ましい。上記任意成分の合計含 割合が凡そ3質量%以下(例えば凡そ1~3質量%)で あってもよい。

 ここに開示される方法では、あらかじめ リア層および連絡層がこの順に設けられた 電体を用意し、該集電体に、上記連絡層の から上記正極活物質組成物を付与して活物 層を形成する。以下、これらバリア層およ 連絡層の構成および形成方法を説明する。

 上記バリア層は、非水溶性ポリマー材料( 典型的には、中性からアルカリ性の水に対し て実質的に不溶性のポリマー材料)と導電材 を含有する。この非水溶性ポリマー材料と ては、集電体表面に耐水性のある被膜を形 し得る一種または二種以上の材料を適宜選 して使用することができる。当該電極を用 て構築される電池(典型的にはリチウムイオ 電池)の電解質(典型的には液状の電解質、 なわち電解液)や電池反応に対して耐性を有 る材料を採用することが好ましい。かかる 水溶性ポリマー材料として、例えば、ポリ ッ化ビニリデン(PVDF)、ポリ塩化ビニリデン( PVDC)、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプ ピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレンオキサ イド-プロピレンオキサイド共重合体(PEO-PPO) を用いることができる。なかでもPVDFの使用 好ましい。

 バリア層の構成に使用する導電材として 、活物質組成物(活物質層)の構成成分とし 例示した導電材と同様のもの等を好ましく いることができる。これらのうち一種のみ 用いてもよく二種以上を併用してもよい。 えば、構成粒子(典型的には一次粒子)の平均 粒径が凡そ10nm~200nm(例えば凡そ20nm~100nm)の範 にある粒状導電材(例えば、アセチレンブラ ク等の粒状カーボン材料)の使用が好ましい 。

 かかるバリア層は、典型的には、上記導 材と非水溶性ポリマー材料とを適当な(典型 的には、該ポリマー材料を溶解可能な)溶媒 添加混合して調製されたバリア層形成用組 物を集電体の表面に付与して乾燥させるこ により形成され得る。該組成物を構成する 媒は、使用する非水溶性ポリマー材料との み合わせを考慮して適宜選択することがで る。従来の溶剤系活物質層形成用ペースト 調製に用いられる有機溶剤(非水系溶媒)が好 適に用いられ得る。かかる有機溶剤としてN- チル-2-ピロリドン(NMP)、メチルエチルケト 、トルエン等が例示される。これらのうち えばNMPを好ましく採用することができる。 に限定するものではないが、バリア層形成 組成物の固形分濃度は例えば凡そ1~30質量%( ましくは凡そ5~15質量%)程度であり得る。こ 固形分濃度が高すぎるとバリア層形成用組 物の取扱性(例えば、該組成物を集電体(特に 箔状集電体)に付与する際の塗工性等)が低下 やすくなることがある。また、固形分濃度 低すぎると使用する有機溶剤量が多くなる でコスト高となりがちである。

 バリア層における導電材/ポリマー材料の質 量比R B (典型的には、バリア層形成用組成物に含ま る導電材/ポリマー材料の質量比と概ね一致 る。)は、例えば凡そ50/50以下(典型的には凡 そ5/95~50/50)とすることができ、凡そ30/70以下( 型的には凡そ10/90~30/70)とすることが好まし 。上記範囲よりもR B が大きすぎるとバリア層の耐水性が低下傾向 となることがある。一方、上記範囲よりもR B が小さすぎると、バリア層において十分な導 電経路(導電パス)を確保することが困難とな 、電極の導電性が低下傾向となることがあ 。

 バリア層形成用組成物を集電体表面に付与 る操作は、従来公知の適当な塗布装置(スリ ットコーター、ダイコーター、コンマコータ ー、グラビアコーター等)を使用して好適に うことができる。塗布後、塗布物を乾燥す ことによって(このとき、必要に応じて適当 乾燥促進手段(ヒータ等)を用いてもよい。) リア層が形成される。バリア層形成用組成 の塗布量は特に限定されないが、該塗布量 少なすぎると形成されるバリア層の耐水性 低下傾向となりやすく、塗布量が多すぎる バリア層(ひいては電極)の導電性が低下し ちとなることがある。これら耐水性と導電 との兼ね合いから、通常は、該塗布量を集 体の片面当たり凡そ0.1~10g/m 2 (固形分基準)とすることが適当であり、例え 凡そ1~5g/m 2 (固形分基準)とすることが好ましい。

 ここに開示される技術では、上記バリア と活物質層との間に、ポリマー材料と導電 とを含有する連絡層を介在させる。連絡層 構成する導電材としては、活物質組成物(活 物質層)の構成成分として例示した導電材と 様のもの等を好ましく用いることができる これらのうち一種のみを用いてもよく二種 上を併用してもよい。例えば、アセチレン ラック等のカーボンブラック(粒状導電材、 型的には粒状カーボン材料)を好ましく用い ることができる。構成粒子(典型的には一次 子)の平均粒径が凡そ5nm~100nm(例えば凡そ10nm~5 0nm)の範囲にある粒状導電材の使用が好まし 。また、連絡層に使用する導電材の他の好 例として、カーボンファイバー等の繊維状 電材(例えば繊維状カーボン材料)が挙げられ る。カーボンファイバーとしては、PAN系、ピ ッチ系等の一般的な炭素繊維の他、カーボン ナノチューブ(単層でも多層でもよい)、気相 により合成された炭素繊維(いわゆる気相法 炭素繊維、例えば昭和電工株式会社から入手 可能な商品名「VGCF」)等が例示される。例え 、繊維長10μm~20μm程度の繊維状カーボン材 を連絡層用の導電材として好ましく使用す ことができる。粒状導電材と繊維状導電材 を任意の割合で併用してもよい。

 かかる連絡層は、典型的には、上記導電 とポリマー材料とを適当な溶媒に添加混合 て調製された連絡層形成用組成物を上記バ ア層の上から付与して乾燥させることによ 形成され得る。上記ポリマー材料は、連絡 を構成する導電材を結着可能なものであれ よく、水溶性であるか非水溶性(例えば有機 溶剤可溶性)であるかを問わない。例えば、 物質層組成物(活物質層)の構成成分として例 示した水溶性ポリマー材料や水分散性ポリマ ー材料、バリア層の構成成分として例示した 非水溶性ポリマー材料、等から選択される一 種または二種以上のポリマー材料を用いるこ とができる。

 また、連絡層形成用組成物を構成する溶 は、水系(例えば上述した水系溶媒)である 溶剤系(例えば上述した有機溶剤)であるかを 問わず、使用するポリマー材料との組み合わ せを考慮して適宜選択することができる。例 えば、連絡層形成用組成物を構成する溶媒と して水系溶媒(典型的には水)を採用すること より(すなわち、水系の連絡層形成用組成物 を使用することにより)、電極の製造に使用 る有機溶剤の量を低減し得る。また、連絡 形成用組成物を構成する溶媒として有機溶 を採用する(すなわち、溶剤系の連絡層形成 組成物を使用する)場合には、該組成物から 形成される連絡層が全体として疎水性となる ことから、水系の活物質組成物と集電体表面 との接触がより確実に阻止され得る。有機溶 媒としては、バリア層の構成成分として例示 した有機溶剤と同様のもの(例えばNMP)等を好 しく使用することができる。特に限定する のではないが、連絡層形成用組成物の固形 濃度は例えば凡そ40~60質量%程度であり得る

 連絡層における導電材/ポリマー材料の質量 比R C (典型的には、連絡層形成用組成物に含まれ 導電材/ポリマー材料の質量比と概ね一致す 。)は、上述したバリア層のR C よりも大きい比率であることが好ましく、例 えば凡そ70/30以上(典型的には凡そ70/30~99.5/0.5) であり得る。この質量比R C が凡そ80/20以上(典型的には凡そ80/20~99/1)であ ことがより好ましい。上記範囲よりもR C が大きすぎると、導電材の結着性(連絡層の 膜性)が不足気味となりやすい。一方、上記 囲よりもR C が小さすぎると、該連絡層による導電性向上 効果が低下傾向となることがある。なお、通 常、連絡層のR C がバリア層のR B よりも大きければ(例えば、R C /R B が凡そ5以上、好ましくは凡そ10以上)、その 絡層は該バリア層よりも高い導電性を有す ものと推察される。

 連絡層形成用組成物をバリア層上に付与し 連絡層を形成する操作(典型的には、組成物 の塗布操作および塗布物の乾燥操作を包含す る。)は、バリア層形成用組成物を集電体表 に付与してバリア層を形成する操作と同様 して行うことができる。連絡層形成用組成 の塗布量は特に限定されないが、該塗布量 少なすぎると連絡層を配置することによる 果(電極の導電性を改善する効果)が低くなり がちである。一方、該塗布量が多すぎると、 電極の体積当たりに含まれる活物質量が少な くなるため、電極(ひいては該電極を用いて 築される電池)の体積当たりの容量が低下傾 となることがある。したがって、通常は該 布量を集電体の片面当たり凡そ0.5~3g/m 2 (固形分基準)とすることが適当であり、例え 凡そ1~2g/m 2 (固形分基準)とすることが好ましい。

 この連絡層の上から活物質組成物を付与 て活物質層を形成する操作(典型的には、組 成物の塗布操作および塗布物の乾燥操作を包 含する。)は、バリア層形成用組成物を集電 表面に付与してバリア層を形成する操作と 様にして行うことができる。活物質組成物 塗布量は特に限定されず、正極および電池 形状や用途に応じて適宜異なり得る。例え 、バリア層および連絡層の合計厚さと活物 層との厚みの比率(バリア層+連絡層:活物質 )が、概ね1:5~1:100(典型的にはプレス後の厚み 比率)となるように、活物質層を比較的厚く 成することが好ましい。

 このようにして得られた積層物(正極)を 望により厚み方向にプレスすることによっ 、目的とする厚みの正極シートを得ること できる。上記プレスを行う方法としては、 来公知のロールプレス法、平板プレス法等 適宜採用することができる。

 なお、バリア層に含まれる導電材と連絡 に含まれる導電材とは、同種の材料(例えば 、いずれもアセチレンブラック)であっても く異種の材料(例えば、アセチレンブラック ケッチェンブラックの組み合わせ、アセチ ンブラックとカーボンファイバーの組み合 せ等)であってもよい。また、バリア層に含 まれる導電材と連絡層に含まれる導電材との 大きさ(粒状導電材同士では平均粒子径、繊 状導電材同士では繊維長やアスペクト比等 より比較され得る。)は同一であってもよく なってもよい。

 バリア層および連絡層がいずれも粒状導電 (典型的には同種の導電材、例えばアセチレ ンブラック)を含む場合、バリア層に含まれ 粒状導電材の平均粒径D B と連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒径D C との関係がD B >D C を満たすように粒状導電材を選択することが 好ましい。例えば、バリア層用の粒状導電材 として平均粒径D B が20nm~100nm(典型的には40nm~60nm)のものを使用す る場合、連絡層用の粒子状導電材としては、 平均粒径D C が上記D B の概ね90%以下(すなわち、D C /D B が90%以下、典型的には10~90%程度)、より好ま くは80%以下(典型的には20~80%程度、例えば30~7 0%程度)のものを好ましく採用することができ る。

 また、活物質層が導電材を含む組成であ 場合、該導電材とバリア層または連絡層に まれる導電材とは同種の材料であってもよ 異種の材料であってもよい。また、活物質 に含まれる導電材とバリア層または連絡層 含まれる導電材との大きさは同一であって よく異なってもよい。

 活物質層および連絡層がいずれも粒状導電 (典型的には同種の導電材、例えばアセチレ ンブラック)を含む場合、活物質層に含まれ 粒状導電材の平均粒径D A と連絡層に含まれる粒状導電材の平均粒径D C との関係がD A >D C を満たすように粒状導電材を選択することが 好ましい。例えば、活物質層用の粒状導電材 として平均粒径D A が20nm~100nm(典型的には40nm~60nm)のものを使用す る場合、連絡層用の粒子状導電材としては、 平均粒径D C が上記D A の概ね90%以下(すなわち、D C /D A が90%以下、典型的には10~90%程度)、より好ま くは80%以下(典型的には20~80%程度、例えば30~7 0%程度)のものを好ましく採用することができ る。

 連絡層が繊維状導電材(例えば気相法炭素繊 維)を含む組成である場合、該繊維状導電材 少なくとも一部(すなわち、該導電材を構成 る繊維のうち一部)は、該連絡層から前記活 物質層および/または前記バリア層に跨って 置されていることが好ましい。このように 電性の繊維がいわば連絡層から活物質層お び/またはバリア層に突き刺さった構成によ と、該導電性繊維を通じてバリア層-連絡層 間および/または連絡層-活物質層間の電子移 を効率よく行うことができる。例えば、バ ア層形成用組成物および連絡層形成用組成 がいずれも溶剤系(好ましくは同種の有機溶 剤、例えばNMPを用いた組成)である場合には バリア層の上から連絡層形成用組成物を塗 することにより、バリア層の表面付近(連絡 との界面)が部分的に溶解または膨潤し、こ の部分に連絡層形成用組成物中の導電材繊維 の一部が進入し得る。かかる状態で連絡層形 成用組成物を乾燥させることにより、一部の 繊維状導電材を連絡層からバリア層に跨って 配置することができる。また、例えば連絡層 形成用組成物および活物質組成物がいずれも 水系である場合には、連絡層の上から活物質 組成物を塗布することにより、連絡層の表面 付近が部分的に溶解または膨潤し、この部分 に含まれていた導電材繊維の一部が活物質組 成物中に進入し得る。かかる状態で活物質組 成物を乾燥させることにより、一部の繊維状 導電材(一部がバリア層に進入した繊維であ 得る。)を連絡層から活物質層に跨って配置 ることができる。このように連絡層形成用 成物中の繊維状導電材を上下の層に進入さ るためには、該組成物の固形分に占める繊 状導電材の割合を高くする(例えば、R C が80/20以上、より好ましくは90/10以上とする) とが好ましい。

 電極の製造に使用する導電材としてカー ン材料(繊維状、粒状等)を使用する場合、 カーボン材料(例えばアセチレンブラック)と しては、揮発分の少ないものを選択すること が好ましい。カーボン材料の揮発分が少ない ことは、該カーボン材料の表面に官能基が少 ないことに関連づけられ得る。表面官能基の 少ないカーボン材料は、例えば該カーボン材 料を用いて電池を構築して常法によりコンデ ィショニングを行う際に、該カーボン材料と 電解質(典型的には電解液)との接触によりガ を生じさせる作用が少ない(その結果、コン ディショニングにより発生するガス量が少な い)傾向にあるので好ましい。例えば、JIS K62 21に準じて測定される揮発分が凡そ1%以下(典 的には凡そ0.1~1%)であるカーボン材料の使用 が好ましい。

 ここに開示される製造方法によって電極( 例えばリチウムイオン電池用正極)を製造す 好ましい一態様を、図1に示す電極断面図(集 電体の片面側のみを示している。)および図2 示すフローチャートに沿って説明すれば、 下のとおりである。すなわち、まず集電体( 例えばアルミニウム箔)32を用意する(ステッ S100)。その集電体32の片面または両面に、導 材332およびポリマー材料334を含む溶剤系の リア層形成用組成物を付与し、該付与物を 燥させてバリア層33を形成する(ステップS110 )。次に、ステップS110で形成したバリア層33 上から、導電材342とポリマー材料344とを含 例えば溶剤系の連絡層形成用組成物を付与 、その付与物を乾燥させて連絡層34を形成す る(ステップS120)。さらに、ステップS120で形 した連絡層34の上から、活物質(例えばリチ ムニッケル系酸化物粉末)351と導電材352とポ マー材料354とを含む水系の活物質組成物を 与し、該付与物を乾燥させて活物質層35を 成する(ステップS130)。その後、必要に応じ 全体をプレスしたり所望の大きさに裁断し りして、目的とする厚みおよびサイズの電 30を得る。

 ここで、活物質組成物を付与してから該付 物を乾燥させるまでの時間は、当該電極を 成するバリア層の耐水性の程度を考慮して 定することができる。例えば、該バリア層 耐水期間(後述する実施例の記載の耐水性試 験により把握され得る。)よりも短時間のう に上記活物質組成物を乾燥させるとよい。 のことによって、高性能な(例えば、上記高 気抵抗性化合物の生成がよりよく防止され 、すなわち高出力の電池を構築するのに適 た)電極を安定的に製造することができる。 電極の生産効率やライン設計の自由度等の観 点から、ここに開示される電極の実用上好ま しい一態様は、後述する実施例の記載の耐水 性試験において凡そ3分以上の耐水性(耐水期 )を実現するバリア層である。該耐水期間が 凡そ3.5分以上であるバリア層がより好ましい 。また、後述する実施例に記載の膜抵抗測定 において膜抵抗が10mω/cm 2 以下(より好ましくは8mω/cm 2 以下)であるバリア層が好ましい。

 このようにして形成された電極は、例え 図1に示す模式的断面図のように、バリア層 33と活物質層35との間に両層よりも導電材濃 の高い連絡層34が介在されていることにより 、この連絡層34に含まれる導電材342を介して リア層33と活物質層35との間により多くの導 電パスを形成し、両層33,35間の電子移動(典型 的には、これらの層に含まれる導電材332,352 の電子移動)をより効率よく行うことができ (すなわち、界面抵抗を低減し得る)。連絡 34に含まれる導電材342としては、バリア層33 よび活物質層35に含まれる導電材332,352より 平均粒径の小さな(細かな)導電材を使用す ことが好ましい。これにより、連絡層34とバ リア層33との界面および連絡層34と活物質層35 との界面により多くの導電材(例えば、より 数の粒状導電材)342を存在させることができ 。その結果、バリア層33と活物質層35との間 の電子移動をより効率よく行うことができる 。

 本発明により提供される電極は、各種形 の電池を構築するための電極(例えば正極) して好ましく利用される。例えば、上記電 を用いてなる正極と、負極集電体に負極活 質層が保持された負極と、該正負極間に配 される電解質と、典型的には正負極集電体 離隔するセパレータ(電解質が固体である場 には不要であり得る。)とを備えるリチウム イオン電池の構成要素として好適である。か かる電池を構成する外容器の構造(例えば金 製の筐体やラミネートフィルム構造物)やサ ズ、あるいは正負極集電体を主構成要素と る電極体の構造(例えば捲回構造や積層構造 )等について特に制限はない。

 以下、本発明により提供される正極およ 該正極を備えるリチウムイオン電池の一実 形態につき、図1および図3~図5に示す模式図 を参照しつつ説明する。

 図示されるように、本実施形態に係るリ ウムイオン電池10は、金属製(樹脂製又はラ ネートフィルム製も好適である。)の筐体( 容器)12を備えており、この筐体12の中には、 長尺シート状の正極シート30、セパレータ50A 負極シート40およびセパレータ50Bをこの順 積層し次いで扁平形状に捲回することによ 構成された捲回電極体20が収容される。

 正極30は、ここに開示されるいずれかの 法を適用して製造されたものであって、長 シート状の正極集電体32と、該集電体の片面 または両面に形成されたバリア層33(図1参照) 、該バリア層の上に形成された連絡層34(図1 参照)と、該連絡層の上に形成された正極活 質層35とを備える。これらの層33,34,35は、典 的には正極集電体32の略同一範囲に(互いに 完全に重なり合うように)形成されているこ とが好ましい。あるいは、例えば活物質層35 りも広範囲にバリア層33が設られていても い。活物質層35が形成される範囲全体を含む ようにバリア層33が設けられていることが好 しい。連絡層34が形成される範囲は、バリ 層33と活物質層35とが重なり合う範囲と略同 または該範囲の全体を含むことが好ましい 、例えば上記重なり合う範囲の一部(好まし くは凡そ50%以上、より好ましくは凡そ70%、さ らに好ましくは凡そ90%以上)であってもよい

 他方、負極40は、長尺シート状の負極集 体42とその表面に形成された負極活物質層45 を備える。負極集電体42としては銅等の金 から成るシート材(典型的には銅箔等の金属 )を好ましく使用し得る。負極活物質として は、少なくとも一部にグラファイト構造(層 構造)を含む炭素材料(例えば天然黒鉛)を好 に使用することができる。このような負極 物質をバインダ(正極側の活物質層における リマー材料と同様のもの等を使用すること できる。)および必要に応じて用いられる導 電材(正極側の活物質層と同様のもの等を使 することができる。)と混合して調製した負 活物質組成物(好ましくは水系組成物)を負 集電体42の片面または両面に塗布する。次い で該塗布物を乾燥させることにより、集電体 42の所望する部位に負極活物質層45を形成す ことができる(図4)。特に限定するものでは いが、負極活物質100質量部に対するバイン の使用量は例えば0.5~10質量部の範囲とする とができる。

 また、正負極シートと重ね合わせて使用 れるセパレータ50A,50Bとしては、例えば、ポ リエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフ ィン系樹脂から成る多孔質フィルムを好適に 使用し得る。

 図4に示すように、正極シート30および負 シート40の長手方向に沿う一方の端部には 記活物質組成物を塗布せず、よって活物質 35,45が形成されない部分を形成する。正負極 シート30,40を二枚のセパレータ50A,50Bとともに 重ね合わせる際には、両活物質層35,45が重ね わさると同時に正極シートの活物質層未形 部分と負極シートの活物質層未形成部分と 長手方向に沿う一方の端部と他方の端部に 々に配置されるように、正負極シート30,40 ややずらして重ね合わせる。この状態で計 枚のシート30,40,50A,50Bを捲回し、次いで得ら た捲回体を側面方向から押しつぶして拉げ せることによって扁平形状の捲回電極体20 得られる。

 次いで、得られた捲回電極体20を筐体12に収 容するとともに(図5)、上記正極および負極の 活物質層未形成部分を、一部が筐体12の外部 配置される外部接続用正極端子14および外 接続用負極端子16の各々と電気的に接続する 。そして、適当な非水電解液(例えば、エチ ンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート( DEC)との混合溶媒にLiPF 6 等のリチウム塩(支持塩)を適当量溶解させた の)を筐体12内に配置(注液)し、筐体12の開口 部を当該筐体とそれに対応する蓋部材13との 接等により封止して、リチウムイオン電池1 0の構築(組み立て)が完成する。なお、筐体12 封止プロセスや電解液の配置(注液)プロセ は、従来のリチウムイオン電池の製造で行 れている手法と同様でよく、本発明を特徴 けるものではない。

 以下、本発明に関するいくつかの実施例 説明するが、本発明をかかる具体例に示す のに限定することを意図したものではない

 <例1>
 アルミニウム箔を集電体とし、正極活物質 してLiNiO 2 で表される組成のリチウムニッケル系酸化物 (ニッケル酸リチウム)を有するシート状電極 作製した。

 すなわち、平均粒径48nmのアセチレンブラッ ク(導電材)とPVDF(ポリマー材料)とを、導電材/ ポリマー材料の質量比(R B )が凡そ30/70となり且つ固形分濃度が約10質量% となるようにNMP(有機溶剤)と混合して、溶剤 のバリア層形成用組成物を調製した。

 また、平均粒径48nmのアセチレンブラック( 電材)とPVDF(ポリマー材料)とを、導電材/ポリ マー材料の質量比(R C )が凡そ90/10となり且つ固形分濃度が約20質量% となるようにNMPと混合して、本例に係る連絡 層形成用組成物(溶剤系)を調製した。

 また、ニッケル酸リチウム粉末(正極活物 質)と、平均粒径48nmのアセチレンブラック(導 電材)と、CMC(ポリマー材料)とを、これら材料 の質量比が87:10:3となり且つ固形分濃度が約45 質量%となるようにイオン交換水と混合して 水系の活物質組成物を調製した。

 厚さ15μmの長尺状アルミニウム箔(集電体)の 両面に上記バリア層形成用組成物を塗布して 乾燥させることにより、該集電体の両面にバ リア層を形成した。このとき、バリア層形成 用組成物の塗布量(目付け)は、集電体の片面 たり約2g/m 2 (固形分基準)となるように調整した。

 次いで、上記バリア層が形成された集電体 該バリア層の上から上記連絡層形成用組成 を塗布して乾燥させることにより、各バリ 層上にそれぞれ連絡層を形成した。このと 、連絡層形成用組成物の塗布量は、片面当 り約1.5g/m 2 (固形分基準)となるように調整した。

 その後、上記バリア層および上記連絡層が 成された集電体に該連絡層の上から上記活 質組成物を塗布して乾燥させることにより 各連絡層上にそれぞれ活物質層を形成した 活物質組成物の塗布量(固形分基準)は、両 合わせて約12.8g/m 2 となるように調整した。また、塗布された活 物質組成物の乾燥条件は、該活物質組成物が 集電体(より具体的には連絡層の表面)に付与 れてからほぼ乾燥した状態となるまでの所 時間が概ね3分以内となるように設定した。

 活物質組成物を乾燥させたままの状態に いて、集電体とその両面に形成された電極 (バリア層、連絡層および活物質層)とを含 全体の厚みは約82μmであった。これを全体の 厚みが約64μmとなるように(すなわち、「プレ ス後の全体厚/プレス前の全体厚」として定 される厚み圧縮比が0.78となるように)プレス した。このようにして本例に係るシート状電 極(電極シート)を作製した。

 <例2>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、上記アセチレンブラックとPVDFとを質量 比(R C )が凡そ95/5となるようにNMPと混合した。その の点については例1と同様にして、例2に係 電極シートを作製した。

 <例3>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、上記アセチレンブラックとPVDFとを質量 比(R C )が凡そ97/3となるようにNMPと混合した。その の点については例1と同様にして、例3に係 電極シートを作製した。

 <例4>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、平均粒径48nmのアセチレンブラックに代 えて平均粒径30nmのアセチレンブラックを使 した。その他の点については例3と同様にし 、例4に係る電極シートを作製した。すなわ ち、バリア層および活物質層の形成には例1~3 と同様に平均粒径48nmのアセチレンブラック 使用した。

 <例5>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、平均粒径48nmのアセチレンブラックに代 えて平均粒径16nmのアセチレンブラックを使 した。その他の点については例3と同様にし (したがって、バリア層および活物質層の形 成には例1~3と同様に平均粒径48nmのアセチレ ブラックを使用して)、例5に係る電極シート を作製した。

 <例6>
 本例では、例1と同様にバリア層を形成した 後、該バリア層の上から直接活物質組成物を 塗布して(すなわち、連絡層を形成すること く)活物質層を形成した。その他の点につい は例1と同様にして、例6に係る電極シート 作製した。

  [電極性能の評価]
 上記例1~6の各例に係る電極シートを二枚重 合わせて2500Nの圧力を加え、この状態でJIS  K7194に準じた四端子四探針法によりシート抵 [ω・cm 2 ]を測定した。その結果を表1に示す。表1には 、各電極シートの大まかな構成を併せて示し ている。なお、表1中の「AB」はアセチレンブ ラックを表す。

 表1に示されるように、バリア層の上に直 接活物質層を形成してなる(連絡層を有しな )例6の電極シートに比べて、バリア層と活物 質層との間に連絡層を配置した例1~例5に係る 電極シートによるとシート抵抗を30%以上も低 減することができた。これら例1~6に係る電極 シートはいずれも同じ組成のバリア層を有す る。したがって、上記連絡層を設けることに より、バリア層の性能(典型的には水系の活 質組成物と集電体との接触を阻止する性能) 犠牲にすることなく電極の導電性を改善で ることが確認された。

 なお、例1~6に係る電極シートに具備され バリア層(いずれも同組成)につき、以下の 水性試験を行った。

 すなわち、例1と同様にして集電体の両面に 片面当たり約2g/m 2 (固形分基準)のバリア層を形成することによ (すなわち、該バリア層の上に連絡層や活物 質層を形成することなく)、耐水性評価用の 験片を作製した。この試験片の表面(すなわ バリア層の表面)に0.1モル/Lの水酸化ナトリ ム(NaOH)水溶液を滴下して300秒間(すなわち5 間)放置し、バリア層が剥れるまでの時間(耐 水期間)を観測した。その結果、上記バリア は300秒間の耐水性試験に耐えることが確認 れた。

 また、例1と同様にして集電体の両面に片面 当たり約2g/m 2 (固形分基準)のバリア層を形成することによ (すなわち、該バリア層の上に連絡層や活物 質層を形成することなく)、該バリア層単独 の膜抵抗を測定するための試験片を作製し 。この試験片を二枚の銅板の間に挟んで2500N の圧力を加え、JIS K7194に準じた四端子四探 法によりシート抵抗[ω・cm 2 ]を測定した。かかる膜抵抗測定の結果、上 バリア層の膜抵抗は7.5mω/cm 2 であった。

  [リチウムイオン電池の作製および評価]
 例4に係る電極シートの製造において活物質 層の形成後にプレスを行う際における厚み圧 縮比をそれぞれ0.67(例4a)、0.71(例4b)、0.75(例4c) 、0.78(例4d;上記例4の圧縮比と同じ。)、0.82(例 4e)、0.86(例4f)、0.90(例4g)および0.96(例4h)とし、 他の点については例4と同様にして、厚み圧 比の異なる計8種の電極シートを作製した。 れら例4a~例4hに係る電極シートを正極に使 して、以下に示す手順で、直径18mm、高さ65mm (すなわち18650型)の一般的な円筒型リチウム オン電池100(図7参照)を作製した。

 負極としては以下のものを使用した。す わち、天然黒鉛(粉末)とSBRとCMCとを、これ 材料の質量比が98:1:1であり且つ固形分濃度 45質量%となるようにイオン交換水と混合し 、水系の活物質組成物(負極活物質組成物)を 調製した。この組成物を厚み約15μmの長尺状 箔(負極集電体)の両面に塗布して乾燥させ ことにより負極活物質層を形成した。負極 物質組成物を乾燥させたままの状態におい 、集電体とその両面に形成された負極活物 層とを含む全体の厚みは約120μmであった。 れを全体の厚さが85μmとなるようにプレスし た。このようにしてシート状の負極(負極シ ト)を作製した。

 上記負極シートと各例に係る電極シート(正 極シート)とを二枚の長尺状セパレータ(ここ は多孔質ポリエチレンシートを用いた。)と ともに積層し、その積層シートを長尺方向に 捲回して捲回電極体を作製した。該電極体を 非水電解質とともに円筒型容器に収容し、容 器開口部を封止してリチウムイオン電池を構 築した。上記非水電解質(電解液)としては、E CとDECとの3:7(体積比)混合溶媒に1mol/Lの濃度で 支持塩(ここではLiPF 6 )を溶解した組成の非水電解質(電解液)を使用 した。その後、適当なコンディショニング処 理(例えば、1/10Cの充電レートで3時間の定電 充電を行い、次いで1/3Cの充電レートで4.1Vま で定電流定電圧で充電する操作と、1/3Cの放 レートで3.0Vまで定電流放電させる操作とを2 ~3回繰り返す初期充放電処理)を行った。この ようにして、例4a~例4hに係る各正極シートに 応する計8種の18650型リチウムイオン電池を た。

 これらのリチウムイオン電池につき、測 周波数をスイープして交流インピーダンス 定を行い、得られたインピーダンス(Z)のCole -Coleプロットから直流抵抗および反応抵抗を み取った。それらの結果を図8に示す。図中 、黒菱形で示したプロットは直流抵抗[mω]、 四角で示したプロットは反応抵抗[mω]の値 ある。

 図示されるように、厚み圧縮比が0.74~0.82 範囲にある正極シート(例4c、例4d、例4e)を いて構築されたリチウムイオン電池は、直 抵抗および反応抵抗の値がいずれも低く、 両動力源用その他の用途に使用されるリチ ムイオン電池として特に良好な性能を示す のであった。この結果は、バリア層、連絡 および活物質層のいずれにも粒状導電材(こ ではアセチレンブラック)を用いた構成の正 極シートでは、該シートの厚み圧縮比を0.74~0 .82とすることにより特に良好な結果が実現さ れ得ることを支持するものである。

 なお、上記例1~3において連絡層の形成に 用した導電材(例1~6においてバリア層および 活物質層の形成に使用した導電材と同じ。) 、揮発分が1%のアセチレンブラック(平均粒 48nm)である。連絡層形成用組成物の調製にお いて上記アセチレンブラックの代わりに揮発 分が0.7%のアセチレンブラック(平均粒径48nm) 使用し、その他の点については例3と同様に て(すなわち、バリア層および活物質層の形 成には揮発分1%のアセチレンブラックを使用 て)、例3bに係る正極シートを作製した。ま 、連絡層形成用組成物の調製において上記 セチレンブラックの代わりに揮発分が1.4%の アセチレンブラック(平均粒径48nm)を使用し、 その他の点については例3と同様にして、例3c に係る正極シートを作製した。これら連絡層 を構成する導電材の揮発分が異なる三種類の 正極シートを、上記18650型リチウムイオン電 の作製に使用したものと同組成の負極シー およびセパレータシートと積層して捲回し 捲回型電極体を作製した。この電極体を上 非水電解液とともにラミネートフィルム製 容器に収容して容量約500mAのリチウムイオ 電池を構築し、上記18650型リチウムイオン電 池と同様の条件でコンディショニングを行っ た後、水上置換法によりガスの発生量を測定 した。その結果、例3(揮発分1%)に係る正極シ トを用いた電池のガス発生量は2.1mLであり 例3b(揮発分0.7%)に係る電池では1.7mL、例3c(揮 分1.4%)に係る電池では3.3mLであった。以上よ り、より揮発分の少ない(好ましくは揮発分 1%以下の)カーボン材料を導電材に用いて連 層を構成することにより、発生ガス量をよ 低減する効果が得られることが確認された

 <例7>
 本例では、連絡層の形成に用いる導電材と て、例1~5で用いたアセチレンブラック(粒状 )に代えて、気相法により合成された炭素繊 (昭和電工株式会社から入手可能な高結晶性 カーボンナノファイバー、商品名「VGCF」) 使用した。すなわち、この気相法炭素繊維 PVDFとを質量比(R C )が凡そ90/10となるようにNMPと混合して連絡層 形成用組成物を調製した。かかる連絡層形成 用組成物を使用した点以外は例1と同様にし (したがって、バリア層および活物質層の形 には例1~3と同様に平均粒径48nmのアセチレン ブラックを使用して)、例7に係る電極シート 作製した。

 <例8>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、上記気相法炭素繊維とPVDFとを質量比(R C )が凡そ95/5となるようにNMPと混合した。その の点については例7と同様にして、例8に係 電極シートを作製した。

 <例9>
 本例では、連絡層形成用組成物の調製にお て、上記気相法炭素繊維とPVDFとを質量比(R C )が凡そ97/3となるようにNMPと混合した。その の点については例7と同様にして、例9に係 電極シートを作製した。

  [電極性能の評価]
 上記例7~9の各例に係る電極シートについて 例1~6に係る電極シートと同様にシート抵抗[ ω・cm 2 ]を測定した。その結果を、連絡層を有しな 例6に係る電極シートのシート抵抗測定結果 ともに表2に示す。表2には、各電極シート 具備される連絡層の組成を併せて示してい 。

 表1に示されるように、バリア層の上に直 接活物質層を形成してなる(連絡層を有しな )例6の電極シートに比べて、バリア層と活物 質層との間に連絡層を配置した例7~例9に係る 電極シートによるとシート抵抗を35%以上も低 減することができた。これら例6~9に係る電極 シートはいずれも同じ組成のバリア層を有す る。したがって、上記連絡層を設けることに より、バリア層の性能(典型的には水系の活 質組成物と集電体との接触を阻止する性能) 犠牲にすることなく電極の導電性を改善で ることが確認された。

  [リチウムイオン電池の作製および評価]
 例8に係る電極シートの製造において活物質 層の形成後にプレスを行う際における厚み圧 縮比をそれぞれ0.59(例8a)、0.63(例8b)、0.67(例8c) 、0.71(例8d)、0.75(例8e)、0.78(例8f;上記例8の圧 比と同じ。)、0.83(例8g)、0.86(例8h)、0.90(例8i) よび0.94(例8j)とし、他の点については例8と 様にして、厚み圧縮比の異なる計10種の電 シートを作製した。例4a~例4hに係る電極シー トに代えてこれら例8a~例8jに係る電極シート 正極に使用した点以外は上記と同様にして 各正極シートに対応する計10種の18650型リチ ウムイオン電池を作製した。

 これらのリチウムイオン電池につき、上 と同様に交流インピーダンス測定を行って 流抵抗および反応抵抗を求めた。それらの 果を図9に示す。図中、黒菱形で示したプロ ットは直流抵抗[mω]、黒四角で示したプロッ は反応抵抗[mω]の値である。

 図示されるように、厚み圧縮比が0.67~0.82 範囲にある正極シート(例8c、例8d、例8e、例 8f、例8e)を用いて構築されたリチウムイオン 池は、直流抵抗および反応抵抗の値がいず も低く、車両動力源用その他の用途に使用 れるリチウムイオン電池として特に良好な 能を示すものであった。この結果は、バリ 層および活物質層には粒状導電材(ここでは アセチレンブラック)を用い、連絡層には繊 状導電材(ここでは気相法炭素繊維)を用いた 構成の正極シートでは、該シートの厚み圧縮 比を0.67~0.82とすることにより特に良好な結果 が実現され得ることを支持するものである。

 以上、本発明を詳細に説明したが、上記 施形態は例示にすぎず、ここで開示される 明には上述の具体例を様々に変形、変更し ものが含まれる。

 本発明に係るリチウムイオン電池は、上 のように優れた性能(出力性能等)を有する とから、例えば、自動車等の車両に搭載さ るモータ(電動機)用電源として好適に使用さ れ得る。かかるリチウムイオン電池は、それ らの複数個を直列および/または並列に接続 てなる組電池の形態で使用されてもよい。 たがって本発明は、図6に模式的に示すよう 、かかるリチウムイオン電池(組電池の形態 であり得る。)10を電源として備える車両(典 的には自動車、特にハイブリッド自動車、 気自動車、燃料電池自動車のような電動機 備える自動車)1を提供する。