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Patent Searching and Data


Title:
ELECTROLYTIC COPPER FOIL AND PROCESS FOR PRODUCING THE ELECTROLYTIC COPPER FOIL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/057688
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a high-strength electrolytic copper foil which is an electrolytic copper foil for fine pitch circuit formation and can be used as an alternative to a Corson alloy foil. The electrolytic copper foil is produced by electrolyzing a copper electrolysis solution and is characterized in that the electrolytic copper foil contains 110 ppm to 400 ppm of sulfur, 150 ppm to 650 ppm of chlorine and has an electric conductivity of not less than 48% IACS and an ordinary tensile strength of not less than 70 kgf/mm2. In producing the electrolytic copper foil, a sulfuric acid-type copper electrolysis solution is used. The sulfuric acid-type copper electrolysis solution contains an additive A (one or more compounds of “a compound having a structure comprising a heterocyclic ring containing a benzene ring and a nitrogen atom and, at the same time, having a mercapto group bonded thereto”, “a compound having a five-membered structure comprising a heterocyclic ring containing one or more nitrogen atoms and, at the same time, having an SH group bonded thereto” and “a thiourea compound”), an additive B (a sulfonic acid salt of an active sulfur compound), and an additive C (an ammonium salt polymer having a cyclic structure) and has a chlorine concentration of 40 ppm to 80 ppm.

Inventors:
SAKAI HISAO (JP)
TAKAHASHI MASARU (JP)
MATSUDA MITSUYOSHI (JP)
DOBASHI MAKOTO (JP)
INABA SHINTARO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069744
Publication Date:
May 07, 2009
Filing Date:
October 30, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MITSUI MINING & SMELTING CO (JP)
SAKAI HISAO (JP)
TAKAHASHI MASARU (JP)
MATSUDA MITSUYOSHI (JP)
DOBASHI MAKOTO (JP)
INABA SHINTARO (JP)
International Classes:
C25D1/04; C22C9/00; C25D1/00; H01M4/66; H05K1/09
Domestic Patent References:
WO2007125994A12007-11-08
Foreign References:
JP2007294923A2007-11-08
Attorney, Agent or Firm:
YOSHIMURA, Katsuhiro (Office Omiya F Bldg., 5-4,Sakuragicho 2-chome, Omiya-k, Saitama-shi Saitama 54, JP)
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Claims:
銅電解液を電解することにより得られる電解銅箔において、
 当該電解銅箔は、硫黄を110ppm~400ppm、塩素を150ppm~650ppm含有し、
 導電率が48%IACS以上であり、且つ、常態における引張り強さの値が70kgf/mm 2 以上であることを特徴とする電解銅箔。
当該電解銅箔は、炭素を250ppm~470ppm含有するものである請求項1に記載の電解銅箔。
当該電解銅箔は、窒素を40ppm~180ppm含有するものである請求項1に記載の電解銅箔。
常態における当該電解銅箔は、析出開始面から析出終了面に向けて成長した結晶粒を備え、当該結晶粒の平均短径の長さが30nm~110nm、平均長径の長さが140nm~400nmの結晶粒で構成された析出組織を備える請求項1に記載の電解銅箔。
180℃×60分の加熱後における当該電解銅箔は、析出開始面から析出終了面に向けて成長した結晶粒を備え、当該結晶粒の平均短径の長さが25nm~120nm、平均長径の長さが100nm~500nmの結晶粒で構成された析出組織を備える請求項1に記載の電解銅箔。
析出面付近の断面における常態の結晶粒子の平均長径の長さと平均短径の長さとが、[平均短径の長さ]/[平均長径の長さ]=0.1~0.5の関係を備える請求項1に記載の電解銅箔。
180℃×60分の加熱後の引張り強さの値が、常態引張り強さの値の85%以上である請求項1に記載の電解銅箔。
析出面の幅方向に対して測定した光沢度[Gs(60°)]の値が、100以上である請求項1に記載の電解銅箔。
請求項1に係る電解銅箔の表面に粗化処理、防錆処理、シランカップリング剤処理のいずれか1種又は2種以上を施したことを特徴とする表面処理電解銅箔。
硫酸系銅電解液を用いた電解法により請求項1に記載の電解銅箔を製造する方法であって、
 当該硫酸系銅電解液は、下記添加剤A~添加剤Cを含み、塩素濃度が40ppm~80ppmであるものを用いることを特徴とする電解銅箔の製造方法。
添加剤A:複素環にベンゼン環とNとを含み同時にメルカプト基が結合している構造を有する化合物、複素環に1以上のNを含み同時にSH基が結合した5員環構造を有する化合物、チオ尿素系化合物から選ばれる1以上の化合物。
添加剤B:活性硫黄化合物のスルホン酸塩。
添加剤C:環状構造を持つアンモニウム塩重合体。
前記添加剤Aである複素環にベンゼン環とNとを含み同時にメルカプト基が結合している構造を有する化合物は、
 2-メルカプト-5-ベンズイミダゾールスルホン酸、3(5-メルカプト-1H-テトラゾールイル)ベンゼンスルホナート、2-メルカプトベンゾチアゾールのいずれかを用いるものである請求項10に記載の電解銅箔の製造方法。
前記添加剤Aである複素環に1以上のNを含み同時にSH基が結合した5員環構造を有する化合物は、
 2-メルカプト-イミダゾール、2-チアゾリン-2-チオールのいずれかを用いるものである請求項10に記載の電解銅箔の製造方法。
前記添加剤Aであるチオ尿素系化合物は、ジエチルチオ尿素である請求項10に記載の電解銅箔の製造方法。
前記硫酸系銅電解液中における、前記添加剤Bの濃度と前記添加剤Cの濃度との重量濃度比である[B濃度]/[C濃度]の値が0.07~1.4である請求項10に記載の電解銅箔の製造方法。
請求項9に記載の表面処理電解銅箔を絶縁層構成材料と張合わせて得られることを特徴とする銅張積層板。
Description:
電解銅箔及びその電解銅箔の製 方法

 本件発明は、電解銅箔、その電解銅箔を いた表面処理銅箔、その電解銅箔の製造方 及びその表面処理銅箔を用いた銅張積層板 関する。特に、析出面が低プロファイルで り、且つ、大きな機械的強度を備える電解 箔及びその製造方法等に関する。

 電解銅箔は、テープオートメーティド  ンディング(以下、「TAB」と称する。)製品、 リチウム二次電池用負極集電体等を初めとす る種々の分野で、その強度の向上が要求され てきた。例えば、TAB製品においては、製品の 略中央部に位置するデバイスホールに配され るインナーリード(フライングリード)に対し ICチップの複数の端子を直接ボンディング る。このときのボンディングは、ボンディ グ装置(ボンダー)を用いて、瞬間的に通電加 熱して、且つ、一定のボンディング圧を付加 して行う。このとき、電解銅箔をエッチング 形成して得られたインナーリードが、ボンデ ィング圧で引張られて延びるという問題があ る。従って、インナーリードの線幅を細線化 するにも、強度的側面からの問題が存在する ことになる。

 また、リチウム二次電池用負極集電体の 成材料として、銅箔を用いる場合には、機 的強度に起因する2つの問題があった。まず 、リチウム二次電池用負極集電体の製造プロ セスにおける問題である。例えば、賦活剤の 坦持プロセスにおいて、かなりの高温での熱 履歴を受ける。その結果、用いた電解銅箔の 強度の軟化が顕著で、耐久性に劣ることにな るため、高寿命のリチウム二次電池の供給が 不可能になる。また、機械的強度の低い電解 銅箔をリチウム二次電池用負極集電体の構成 材料として用いると、充放電を行う際のリチ ウム二次電池用負極集電体の変形が大きくな るため、高寿命化が達成できないことは当然 であり、電池としての安全性にも懸念を生じ ることになる。このことは充電時の膨張が著 しいケイ素や錫を含む負極活物質を使用した 場合に、特に顕著となる。

 そして一方では、近年の電子及び電気機器 小型化、軽量化等の所謂軽薄短小化に対す 要求に併せて、限られた搭載スペースの中 小型化と高機能化に対応した回路形成がプ ント配線板に要求される。このようなプリ ト配線板には、回路のファインピッチ化を い、高密度化した回路を形成することが必 になる。従って、このようなファインピッ 回路を得るためには、当該電解銅箔の基材 の張り合わせ面の粗度を下げて、オーバー ッチング時間の短縮化が必要になる。その 果、近年では、低プロファイル電解銅箔の 用が一般化されている。また、通常の配線 の分野でも、薄膜化する電解銅箔や銅張積 板のハンドリング性を良好にするため、電 銅箔の機械強度を大きくすることが求めら てきた。具体的には、引張り強さが70kgf/mm 2 を超え、リン青銅のハード材と同等の機械的 強度が電解銅箔に対して望まれてきた。

 以上のような要求に応えるべく、基材と 張り合わせ面が低プロファイルで、且つ、 械的強度にも優れた電解銅箔として、種々 研究が行われてきた。例えば、特許文献1に 開示の発明は、プリント配線板用途やリチウ ム二次電池用負極集電体用途に実用できる低 粗面を持つと共に、疲労屈曲性にも優れた低 粗面電解銅箔、具体的には、粗面粗さRzが2.0 m以下で該粗面に凹凸のうねりがなく均一に 粗度化された粗面を持ち、且つ、180℃にお る伸び率が10.0%以上である低粗面電解銅箔 提供を目的としている。そして、硫酸-硫酸 水溶液を電解液とし、白金属元素又はその 化物元素で被覆したチタン板からなる不溶 陽極と該陽極に対向する陰極にチタン製ド ムを用い、当該両極間に直流電流を通じる 解銅箔の製造方法が開示されている。この 造方法において、前記電解液にオキシエチ ン系界面活性剤、ポリエチレンイミン又は の誘導体、活性有機イオウ化合物のスルホ 酸塩及び塩素イオンを存在させることによ て、粗面粗さRzが2.0μm以下で該粗面に凹凸 うねりがなく均一に低粗度化された粗面を ち、且つ、180℃における伸び率が10.0%以上で ある低粗面電解銅箔を得られると記載してい る。

 更に、この特許文献1の実施例を見ると、得 られた電解銅箔の析出面の表面粗さ(Rz)が0.9μ m~2.0μm、常態伸び率の値が10%~18%、180℃におけ る伸び率の値が10%~20%、常態引張り強さの値 340MPa~500MPa(34.66kgf/mm 2 ~50.99kgf/mm 2 )、180℃における引張り強さの値が180MPa~280MPa( 18.35kgf/mm 2 ~28.55kgf/mm 2 )であることが開示されている。更に、この 解銅箔の析出面の、幅方向に対する光沢度[G s(85°)]は120~132であることが開示されている。

 また、特許文献2に開示の発明は、粗面が 低粗度化され、時間経過又は加熱処理に伴う 抗張力の低下率が低く、しかも高温における 伸び率に優れた低粗面電解銅箔及びその製造 方法を提供することを目的としている。そし て、硫酸-硫酸銅水溶液からなる電解液にヒ ロキシエチルセルロース、ポリエチレンイ ン、アセチレングリコール、活性有機イオ 化合物のスルホン酸塩及び塩素イオンの五 の添加剤を存在させ、これを用いて電解銅 を製造している。ここで得られる電解銅箔 粗面粗さRzは2.5μm以下であり、電着完了時点 から20分以内に測定した25℃における抗張力 500MPa以上である。更に、電着完了時点から30 0分経過時に測定した25℃における抗張力の低 下率が10%以下であり、電着完了時点から100℃ にて10分間加熱処理を施した後に測定した25 における抗張力の低下率が10%以下であり、 つ、180℃における伸び率が6%以上である低粗 面電解銅箔を開示している。

 そして、この特許文献2の実施例を見ると、 更に具体的内容を把握できる。即ち、硫酸(H 2 SO 4 ):100g/L、硫酸銅五水和物(CuSO 4 ・5H 2 O):280g/Lの硫酸-硫酸銅水溶液からなる電解液 基本溶液とし、添加剤としてヒドロキシエ ルセルロース、ポリエチレンイミン、3-メル カプト-1-プロパンスルホン酸ナトリウム、ア セチレングリコール及び塩酸を添加し、この 電解液を白金属酸化物にて被覆したチタンか らなる不溶性陽極と陰極であるチタン製陰極 ドラムとの間に充填し、電解電流密度:40A/dm 2 、電解液温:40℃にて電析して得られた電解銅 箔が開示されている。この電解銅箔は、厚さ 18μm、析出面の表面粗さ(Rz)が1.5μm~2.3μmであ 、常態の抗張力が650MPa~900MPa(66.28kgf/mm 2 ~91.77kgf/mm 2 )、100℃で10分間加熱後の抗張力の低下率が0%~ 7.7%であったと記載されている。

 上記の実施例によれば、これらの製造方 を用いて製造された電解銅箔の析出面は低 ロファイルである。その低プロファイルレ ルは、従来の低プロファイル電解銅箔から れば優れており、ファインピッチ回路の形 には効果を発揮しうる。また、従来の電解 箔よりも優れた機械的強度を得ることが可 なことも開示されている。なお、念のため 記載するが、プリント配線板用銅箔におけ 低プロファイルとは、銅箔の絶縁層構成材 との接合界面における凹凸が低いという意 で用いている。

 更に、特許文献3には、制御された低プロフ ィルの電着銅箔が開示されている。具体的に は、本質的に円柱状粒子および双晶境界がな くそして10ミクロンまでの平均粒子サイズを する粒子構造を持つ電着銅箔であって、該 子構造が実質的に一様でランダムに配向す 粒子構造である、制御された低プロフィル 電着銅箔を開示している。そして、この電 銅箔は、23℃における最大抗張力が87,000~120, 000psi(61.18kgf/mm 2 ~84.38kgf/mm 2 )の範囲にあり、180℃における最大抗張力が25 ,000~35,000psi(17.58kgf/mm 2 ~24.61kgf/mm 2 )の範囲にある等の物理的特性を備えている と等が開示されている。

 この特許文献3の中の記述を見ると、図4に 発明に係る銅箔の、倍率1600倍の断面の顕微 写真が掲載されている。この図4から理解で きるように、特許文献3に開示の電着銅箔は 本質的に円柱状粒子および双晶境界がなく して10ミクロンまでの平均粒子サイズを有す る粒子構造を持つと記載されているように、 確かに10ミクロン以下の粒径を備えるが、倍 1600倍で観察可能な結晶粒子を備えることが 分かる。そして、厳密に言えば、この特許文 献3の明細書中で、23℃における最大抗張力が 100,000psi(70.32kgf/mm 2 )を超える電解銅箔は、具体的に開示されて ない。

 以上の述べてきた従来技術の中でも、特 TAB用途、リチウム二次電池用負極集電体用 においては、多少のコストアップに繋がる しても、コルソン合金箔を使用する動きが る。

特開2004-263289号公報

特開2004-339558号公報

特開平7-188969号公報

 しかしながら、コルソン合金箔は、製造コ トが高く、プリント回路の形成材料として 高い電気抵抗を備えることもあり、プリン 配線板分野では広く普及し得ないと考えら る。そのため近年は、生産コストの低い電 銅箔にコルソン合金箔並みの機械的強度を え、且つ、低電気抵抗と言う特性が求めら 、代替え品としての高強度電解銅箔の提供 求められるようになっている。即ち、要求 れているのは、コルソン合金箔並み又はこ を超える引張り強さ、伸び率、電気抵抗、 断強度等を備える電解銅箔である。なお、 ルソン合金箔の場合、引張り強さは、常態 90.00kgf/mm 2 ~99.00kgf/mm 2 程度、180℃×60分の熱処理後でも殆ど変化せ 、むしろ析出硬化が起こり値が上昇する場 もある。そして、伸び率は、常態で5.0%~6.0% 180℃×60分の熱処理後では3.5%~7.0%である。こ で、伸び率が低下したものは、加熱による 出硬化により引張り強さが上昇し、硬度が 昇したためである。

 上記特許文献1に開示の電解銅箔の場合、そ の電解銅箔の析出面の表面粗さ(Rz)は、0.9μm~2 .0μmの範囲と良好な低プロファイル表面を形 できているが、常態引張り強さの値が340MPa~ 500MPa(34.66kgf/mm 2 ~50.99kgf/mm 2 )の範囲にある。従って、コルソン合金箔並 の高い機械的強度を備えるとは言い難い。

 また、上記特許文献2に開示の電解銅箔の場 合、析出面の表面粗さ(Rz)が1.5μm~2.3μmの範囲 あり、ある程度良好な低プロファイル表面 備えている。しかし、常態の引張り強さが6 50MPa~900MPa(66.28kgf/mm 2 ~91.77kgf/mm 2 )という範囲にあり、70kgf/mm 2 未満の値が得られることを示している。しか も、本件発明者等が、特許文献2の実施例に づいてトレース実験(以下の「比較例」に使 )を実施した結果、そこで得られた電解銅箔 の引張り強さは、58kgf/mm 2 程度であり、特許請求の範囲に記載された下 限値である66.28kgf/mm 2 を超える値が得られなかった。即ち、この特 許文献2に開示の電解銅箔の製造方法は、製 安定性に欠けるものであり、得られる製品 品質バラツキも大きいと考えられる。コル ン合金箔並みの高い機械的強度と言えるた には、引張り強さの値が70kgf/mm 2 を超える電解銅箔を安定生産できることが必 須であり、特許文献2に開示の電解銅箔の製 方法では困難と考えられる。

 更に、特許文献3に開示の電解銅箔の場合、 円柱状粒子および双晶境界が無く、平均結晶 粒子径が10μm以下の結晶組織(特許文献3の図4 よれば、結晶粒径は2μm~5μm程度と推測でき 。)を備えることにより、23℃における最大 張力が87,000~120,000psi(61.18kgf/mm 2 ~84.38kgf/mm 2 )の範囲に出来たと解釈できる。しかし、こ では最大抗張力が90.00kgf/mm 2 を超えるコルソン合金箔並の抗張力は得られ ていない。また、この特許文献3に開示の電 銅箔の低プロファイルと称する表面粗さに しては、特許文献3の段落0027~段落0029に記載 れている。この特許文献3では、表面粗さを 表示するのに、「R tm 」を使用している。この値は、特許文献3の 細書の段落0029にあるように、「薄い箔のR tm は、厚い箔より小さい傾向がある。」と記載 されており、従来の電解銅箔と同様の傾向を 備えることが明らかにされている。そして、 この特許文献3に開示の箔の場合、180℃にお る最大抗張力が25、000~35、000psi(17.58kgf/mm 2 ~24.6kgf/mm 2 )の範囲にあると記載されている。特許文献3 開示の電解銅箔の場合、180℃×60分の加熱後 の引張強さが開示されていないが、当該加熱 後の引張強さが、常態の引張強さの80%以下に 低下する。この点を考慮すると、コルソン合 金箔の代替えとはなり得ない。

 以上のことから理解できるように、本件 明は、ファインピッチ回路を備えるプリン 配線板材料としての電解銅箔であり、且つ コルソン合金箔の使用が検討されているリ ウム二次電池用負極集電体の構成材料等と ても使用可能な高強度且つ低電気抵抗の電 銅箔の提供を目的とする。

 そこで、本件発明者らは、鋭意研究の結 、以下に述べる電解銅箔を採用することで コルソン合金箔と同等の高強度化を行うこ ができた。また、以下に述べる製造方法を 用することにより、コルソン合金箔と同等 高強度な電解銅箔の生産を可能にした。

本件発明に係る電解銅箔: 本件発明に係る電 解銅箔は、銅電解液を電解することにより得 られる電解銅箔において、当該電解銅箔は、 硫黄を110ppm~400ppm、塩素を150ppm~650ppm含有し、 電率が48%IACS以上であり、且つ、常態におけ る引張り強さの値が70kgf/mm 2 以上であることを特徴とするものである。

本件発明に係る表面処理銅箔: 本件発明に 係る表面処理銅箔は、上述の電解銅箔の表面 に粗化処理、防錆処理、シランカップリング 剤処理のいずれか1種又は2種以上を施したこ を特徴とするものである。

本件発明に係る電解銅箔の製造方法: 本件 発明に係る電解銅箔の製造方法は、硫酸系銅 電解液を用いた電解法により、上述の電解銅 箔を製造する方法であって、当該硫酸系銅電 解液は、下記添加剤A~添加剤Cを含み、塩素濃 度が40ppm~80ppmであるものを用いることを特徴 する。

添加剤A:複素環にベンゼン環とNとを含み同時 にメルカプト基が結合している構造を有する 化合物、複素環に1以上のNを含み同時にSH基 結合した5員環構造を有する化合物、チオ尿 系化合物から選ばれる1以上の化合物。
添加剤B:活性硫黄化合物のスルホン酸塩。
添加剤C:環状構造を持つアンモニウム塩重合 。

本件発明に係る銅張積層板: 本件発明に係 る銅張積層板は、上述の表面処理電解銅箔を 絶縁層構成材料と張合わせて得られることを 特徴とするものである。なお、ここで言う銅 張積層板の概念には、リジッド銅張積層板及 びフレキシブル銅張積層板の双方が含まれる 旨を、念のために明記しておく。

 本件発明に係る電解銅箔は、上述のよう nmオーダーの析出結晶粒子で構成されてい ため、結晶粒の微細化効果により、極めて きな機械的強度を備えるようになる。しか 、この本件発明に係る電解銅箔の機械的強 は、180℃×60分の加熱後においても、常態の 械的強度とほぼ変わらない。そして、その 晶の粒子径が微細であるが故に、従来の低 ロファイル電解銅箔を超えるレベルの低プ ファイルの析出面を備える。

 そして、この本件発明に係る電解銅箔を いて、その表面に防錆処理を目的とした表 処理、基材樹脂との密着性を向上させるた の粗化処理、シランカップリング剤処理等 施して、表面処理銅箔が得られる。従って この表面処理銅箔も、良好な機械的強度と らかな表面を備えるようになる。

 また、当該表面処理電解銅箔を用いて得 れる銅張積層板は、板厚が薄くても、電解 箔の極めて大きな機械的強度により、ハン リング時のたわみ及び変形が少なく、取扱 やすくなる。

 更に、本件発明に係る電解銅箔の製造方 は、使用する銅電解液の組成に特徴を備え いる。この銅電解液は、溶液安定性に優れ 長期間の連続使用に耐えるため、経済的に 優れている。

 以下、本件発明に係る電解銅箔、表面処 銅箔、電解銅箔の製造方法、銅張積層板の れぞれの好ましい形態に関して、順を追っ 説明する。

本件発明に係る電解銅箔の形態: 本件発明 に係る電解銅箔は、銅電解液を電解すること により得られる電解銅箔である。最初に、本 件発明に係る電解銅箔が含有する成分であっ て、一般的な電解銅箔には含まれない成分に 関して述べる。

 本件発明に係る電解銅箔は、硫黄を110ppm~400 ppm、塩素を150ppm~650ppm含有し、導電率が48%IACS 上であり、且つ、常態における引張り強さ 値が70kgf/mm 2 以上であることを特徴とすることが、第1の 徴である。純銅に近い銅成分で、コルソン 金箔に近い機械的特性を得ようとすること 、金属学的常識からしても不可能である。 って、電解銅箔の結晶組織中に硫黄を含有 せ、その成分量を適正なレベルとすること 、機械的強度を向上させたのである。なお 念のために記載しておくが、成分の含有量 示に使用した単位「ppm」は、「mg/l」と同義 ある。

 この電解銅箔に含まれる硫黄は、後述す 製造方法で用いる電解液の含有成分に起因 るものである。この硫黄の含有量が110ppm未 の場合には、電解析出により形成される結 粒の粒径がnmレベルにならず、高い機械的 度を備える電解銅箔とはならない。一方、 の硫黄の含有量が400ppmを超える場合には、 解銅箔の析出組織が脆化を引き起こしやす 、伸び率が減少するため、耐折り曲げ特性 要求されるフレキシブル銅張積層板の製造 料として不適になる。

 また、当該電解銅箔は、その構成成分と て塩素を150ppm~650ppm、より好ましくは280ppm~65 0ppmの範囲で含有することが好ましい。この 素は、後述する製造方法で用いる電解液の 有成分に起因するものである。ここで、電 銅箔の構成成分としての塩素が150ppm未満と ると、電解析出により形成される結晶粒の 径がnmレベルになりにくく、安定した高い機 械的強度を備える電解銅箔とはならない。し かも、電解銅箔中の塩素濃度が低くなると、 電解銅箔を長期間保存したときの機械的強度 の変動が大きくなる傾向がある。一方、電解 銅箔の構成成分としての塩素が650ppmを超える と、得られる電解銅箔の析出面の粗さが大き くなり、低プロファイル電解銅箔の製造が困 難となる。より好ましい塩素濃度範囲(280ppm~6 50ppm)では、電解析出により形成される析出結 晶粒の粒径がnmレベルで安定化しているため 高い機械的強度を備える低プロファイル電 銅箔で、且つ、長期間保存したときの機械 強度の変動が顕著に小さくなる。

 そして、本件発明に係る電解銅箔は、そ 構成成分として、炭素を含有することも好 しい。炭素を含有することで、電解銅箔と ての高強度化が図れ、同時にレーザー加工 よる孔明け性能が向上するからである。こ 炭素も、後述する製造方法で用いる電解液 含有成分に起因するものである。電解銅箔 含まれる炭素は、250ppm~470ppm、より好ましく は250ppm~450ppmの範囲であることが好ましい。 素含有量が250ppm未満の場合には、電解銅箔 しての高強度化が図れず、レーザー加工に る孔明け性能も向上させ難い。一方、470ppm 超える炭素濃度になると、電解銅箔が脆化 やすく、伸び率が急激に低下して、同時に 気抵抗の著しい上昇が起こるため、コルソ 合金箔の代替えとなりにくい。より好まし 塩素濃度範囲(250ppm~450ppm)では、電解銅箔と ての高強度化と伸び率とのバランスに優れ 且つ、安定して電気抵抗の顕著な上昇を招 ないからである。

 更に、当該電解銅箔は、その構成成分と て窒素を40ppm~180ppm、より好ましくは40ppm~120p pmの範囲であることが好ましいこの窒素は、 述する製造方法で用いる電解液の含有成分 起因するもので、電解銅箔への硫黄成分の り込みを促進する作用があると思われる。 こで、電解銅箔の構成成分としての窒素が4 0ppm未満となる電解液を用いると、製造する 解銅箔に対し、硫黄成分の適正量の取り込 が困難であり、電解銅箔の構成成分として 窒素が180ppmを超えると、硫黄の含有量も400pp mを超えるようになり、電解銅箔の析出組織 脆化を引き起こしやすく、伸び率が減少す ため、耐折り曲げ特性の要求されるフレキ ブル銅張積層板の製造原料として不適にな 。より好ましい窒素濃度範囲(40ppm~120ppm)であ れば、電解銅箔の製造条件に多少の変動があ ったとしても、電解銅箔中の硫黄の含有量が 400ppmを超えることはなく、脆化しやすい電解 銅箔の析出組織が得られることが無くなる。

 そして、この電解銅箔は、導電率が48%IACS 以上という導電性能を備える。なお、製造条 件を最も適正に管理することで、当該電解銅 箔の導電率を55%IACS以上とする事も可能であ 。ここで、市販されているコルソン合金箔 場合の導電率は、35%IACS~60%IACSの範囲である 従って、本件発明に係る電解銅箔の場合に 、コルソン合金箔と同等以上の電気的導電 能を備えることになる。ここで、本件発明 係る電解銅箔の導電率の上限値を明記して ない。その理由は、導電率の値は、銅以外 成分の含有量、析出形成した銅結晶粒の粒 の相違等によって、変動するからである。 験的に言えば、上限値は78%IACS程度である。 お、ここで言う導電率(%IACS)は、標準軟銅( 抵抗1.7241μω・cm・20℃)の導電率を100%とした き、同温同体積の他の物質の導電率との比 示したもので、数値が大きいほど電気的導 率が良い。

 また、電解銅箔の析出結晶組織の中に、上 のような範囲で硫黄、炭素等を含有させる とで、70kgf/mm 2 以上と言う高い常態における引張り強さを備 える電解銅箔になる。この高い機械的強度は 、主に結晶粒微細化の効果が大きく寄与して いる。例えば、引張り試験における破断は、 試験中の試料片の縁端部にマイクロクラック が発生し、そのマイクロクラックに引張り応 力が集中し、クラックの伝播が起こって、破 断に至ると考えられる。このときのクラック 伝播は、結晶粒界に沿った伝播が主となる。 従って、微細な結晶粒を備えていると、クラ ックの伝播経路が長くなり、破断応力が大き くなる。

 そして、本件発明に係る電解銅箔の機械 特性として、常態における伸び率は、3%~15% 範囲になる。この常態における伸び率の値 3%以上あれば、スルーホール基板を作成す 際に、メカニカルドリルで銅張積層板に穴 け加工を行っても、フォイルクラックの発 が防止できる。一方、この常態伸び率の上 値は、本件発明に係る電解銅箔の実績を考 した実測値の平均であり、経験的に15%程度 ある。

 本件発明に係る電解銅箔の常態における 械的特性を左右する結晶組織は、析出開始 から析出終了面に向けて成長した結晶粒を え、当該結晶粒の平均短径の長さが30nm~110nm 、平均長径の長さが80nm~400nmであることが好 しい。ここで「析出開始面から析出終了面 向けて成長した結晶粒」と称しているのは 析出開始面から成長を始めた縦長の結晶粒 意味する。しかし、ここで言う結晶粒は、 均短径の長さが30nm~110nm、平均長径の長さが8 0nm~400nmであるために、10000倍を超える倍率で ければ結晶粒としての確認はできない。好 しくは、30000倍以上の観察倍率の使用が好 しい。従って、ガリウム(Ga)イオンを電界で 速したビームを細く絞った集束イオンビー を用いたFIB法で、電解銅箔の断面をスパッ リングエッチング加工して、そのエッチン 表面に出現した結晶粒を走査型電子顕微鏡 使用して観察することが好ましい。

 以上に述べたような微細な結晶粒径を電解 箔が備えることにより、70kgf/mm 2 以上と言う高い常態における引張り強さ及び 上述の伸び率が得られる。そして、電解銅箔 中の硫黄、炭素、塩素等の含有成分量、電解 電流、液温等の電解条件等に影響を受ける要 素もあるが、常態で88kgf/mm 2 以上の引張強さを得る場合には、平均短径の 長さが30nm~60nm、平均長径の長さが80nm~150nmの 囲とすることが好ましい。

 また、本件発明に係る電解銅箔の特徴と て、180℃×60分の加熱後であっても、結晶粒 のサイズが1μm以下の範囲にある。一般に、 延銅箔の場合には、その加工度を上げるこ で常態の引張り強さの値を大きくすること できる。しかし、このような塑性加工的に 強度化した圧延銅箔は、加熱すると、低温 も内蔵転移の再編成による回復現象を起こ 再結晶化しやすく、焼鈍効果として容易に 化する傾向がある。これに対し、電解銅箔 場合には、本来の性質として、低温焼鈍で 軟化は起こりにくい。中でも、上述のよう 硫黄、炭素、塩素を所定量含有した電解銅 の場合には、180℃×60分の加熱後においても 析出開始面から析出終了面に向けて成長し 結晶粒を備え、当該結晶粒の平均短径の長 が25nm~120nm、平均長径の長さが100nm~500nmの結 粒で構成された析出組織を備える。このこ から、本件発明に係る電解銅箔は、180℃×60 分の加熱を受けても、引張強さの値が大きく 低下しないことが理解できる。

 即ち、本件発明に係る電解銅箔は、180℃ 60分の加熱を行った後においても、加熱後の 引張強さの値を常態引張強さの値の85%以上に 維持できるとも言える。このように、加熱後 の引張り強さの値の低下が小さいのは、本件 発明に係る電解銅箔の結晶粒がnmオーダーと 細で、且つ、結晶粒径のバラツキが小さく 電解時に内包される電解液の添加剤成分の 晶粒界への分布が均一なためと考えられる この添加剤成分が、加熱時には金属銅の拡 バリアとして機能し、結晶粒の肥大化を抑 するため、結晶粒微細化の効果を加熱後も 持できると考えられる。そして、加熱後の 張強さの値が常態引張強さの値に対して、9 0%以上であれば、コルソン合金箔の代替品と て、より好ましい。これに対し、従来の電 銅箔の場合、180℃×60分の加熱後の引張強さ の値は、常態引張り強さの値の60%以下となる 。なお、ここで180℃×60分の加熱条件を選択 たのは、一般的な銅張積層板の製造に採用 れている加熱プレスの温度条件に近いから ある。

 また、本件発明に係る電解銅箔は、製造後3 0日経過後の常態引張り強さの値が70kgf/mm 2 以上を維持できる。電解銅箔の機械的特性は 、室温で保管しても、製造直後から経時的に 変化して行き、製造後30日経過すると安定化 、その後室温で保管する限り顕著な機械的 性の変化が無くなる傾向がある。そこで、 造後30日経過した常態引張り強さを測定す ば、本件発明に係る電解銅箔の長期品質保 が事実上可能となる。

 そして、本件発明に係る電解銅箔の180℃ 60分の加熱後の伸び率の値は、3.0%以上、よ 好ましい実施態様では4.0%以上である。従来 低温アニール性に優れる電解銅箔では、180 ×60分の加熱後には、伸び率の値が常態伸び 率の値に比べて大きくなる。これに対し、本 件発明に係る電解銅箔は、180℃×60分の加熱 伸び率の値が、常態伸び率の値を基準とし 比較すると、ほぼ同等の値を示す。

 以上に述べた本件発明に係る電解銅箔の える高い引張強さ及び伸び率は、その結晶 の微細さ故に発揮できる機械的特性である そして更に、この結晶組織は、析出面付近 断面における常態の結晶粒子の「平均長径 長さ」と「平均短径の長さ」とが、[平均短 径の長さ]/[平均長径の長さ]=0.1~0.5の関係を備 えることが好ましい。ここで、結晶粒子の平 均長径の長さと平均短径の長さとのバランス は、その結晶粒子で構成された電解銅箔の高 強度特性及び析出面の低プロファイル性能を 同時に安定して得るという観点からは重要な ものである。ここで、[平均短径の長さ]/[平 長径の長さ]が0.1未満の場合には、得られる 解銅箔の析出面の低プロファイル化が出来 、析出面の表面粗さ(Rzjis)が2.0μmを超えるよ うになるため、ファインピッチ回路の形成が 困難な電解銅箔となる。一方、[平均短径の さ]/[平均長径の長さ]が0.5を超える場合には 結晶粒子の形状が角形状に近づいて行き、 強度化が出来にくい。

 そして、本件発明に係る電解銅箔の結晶 織を構成する結晶粒は、微細且つ均一であ ため、その析出面の凹凸形状が滑らかにな 。この本件発明に係る電解銅箔の析出面の らかさを示す指標として、光沢度を採用し 。当該析出面の光沢度[Gs(60°)]は、100以上で ある事が好ましい。後述する実施例では、当 該光沢度[Gs(60°)]は、全て100以上である。

 なお、以上に述べてきた結晶粒の微細さ 備えるが故に、本件発明に係る電解銅箔の 出表面の表面粗さは極めて低く、低プロフ イル表面となる。以上に述べてきたような 細な結晶粒を備えることで、Rzjis=0.40μm~1.80 mの範囲の表面粗さを備える析出表面の形成 可能になる。

 以上に述べてきた電解銅箔に関しては、 の厚さについての特段の限定はない。電解 箔として一般的に製造される製品を考える 、7μm~400μm、特に10μm~40μmの範囲の厚さの電 解銅箔として考えれば足りる。

本件発明に係る表面処理銅箔の形態: 本件 発明に係る表面処理銅箔は、上述の電解銅箔 の表面に粗化処理、防錆処理、シランカップ リング剤処理のいずれか1種又は2種以上の表 処理を施したことを特徴とする。ここで言 表面処理は、用途別の要求特性を考慮し、 着強度、耐薬品性、耐熱性等を付与する目 で、電解銅箔の表面へ施される粗化処理、 錆処理、シランカップリング剤処理等であ 。

 ここで言う粗化処理とは、表面処理銅箔 絶縁層構成材料との密着性を物理的に向上 せるための処理であり、一般的に電解銅箔 析出面上に施される。より具体的に例示す と、電解銅箔の表面(主に析出面側)に微細 属粒を付着形成させるか、エッチング法で 化表面を形成する等の方法が採用される。 して、電解銅箔の表面に、微細金属粒を付 形成する場合には、微細金属粒を析出付着 せるヤケめっき工程と、この微細銅粒の脱 を防止するための被せめっき工程とを組み わせて施すのが一般的である。

 次に、防錆処理に関して説明する。この 錆処理では、銅張積層板及びプリント配線 等の製造過程で、表面処理銅箔の表面が酸 腐食することを防止するための被覆層とし 設ける。防錆処理の手法は、ベンゾトリア ール、イミダゾール等を用いる有機防錆、 しくは亜鉛、クロメート、亜鉛合金等の無 防錆のいずれを採用しても問題は無く、使 目的に最適と考えられる防錆手法を選択す ばよい。そして、有機防錆の場合は、有機 錆剤の浸漬塗布法、シャワーリング塗布法 電着法等の形成手法を採用することが可能 ある。無機防錆の場合は、電解法、無電解 っき法、スパッタリング法や置換析出法等 用い、防錆元素を電解銅箔層の表面上に析 させることが可能である。

 そして、シランカップリング剤処理とは 粗化処理、防錆処理等が終了した後に、表 処理銅箔と絶縁層構成材料との密着性を、 学的に向上させるための処理である。ここ 言う、シランカップリング剤処理に用いる ランカップリング剤としては、特に限定を するものではない。使用する絶縁層構成材 、プリント配線板製造工程で使用するめっ 液等の性状を考慮して、エポキシ系シラン ップリング剤、アミノ系シランカップリン 剤、メルカプト系シランカップリング剤等 ら任意に選択使用することができる。そし 、シランカップリング剤層を形成するには シランカップリング剤を含有する溶液を用 て、浸漬塗布、シャワーリング塗布、電着 の手法を採用することができる。

本件発明に係る電解銅箔の製造形態: 本件 発明に係る電解銅箔の製造方法は、硫酸系銅 電解液を用いた電解法を用いて、上述の電解 銅箔を製造する方法である。そして、ここで 用いる硫酸系銅電解液の組成に特徴がある。 この硫酸系銅電解液は、以下に述べる添加剤 A~添加剤Cを含み、塩素濃度が40ppm~80ppmである のを用いることが好ましい。添加剤A~添加 C及び塩素の順で説明する。なお、ここで言 硫酸系銅電解液中の銅濃度は50g/L~120g/L、よ 好ましくは50g/L~80g/Lの範囲を用いる。また フリー硫酸濃度は60g/L~250g/L、より好ましく 80g/L~150g/Lの範囲のものを前提として考える

 添加剤Aに関して説明する。この添加剤A 、「複素環にベンゼン環とNとを含み同時に ルカプト基が結合している構造を有する化 物」、「複素環に1以上のNを含み同時にSH基 が結合した5員環構造を有する化合物」、「 オ尿素系化合物」から選ばれる1以上の化合 である。この添加剤Aは、電解銅箔の電析時 に結晶粒界に均一に分布し、析出銅の結晶粒 の微細化を促進する効果に優れ、電解銅箔の 製造の安定化に寄与する。この結果、高い引 張強さを備える電解銅箔が得られる。これら の添加剤Aと同様の効果を示す添加剤として 従来からチオ尿素が知られている。添加剤B 添加剤Cとの組み合わせること無く、このチ オ尿素を単独で用いると、銅電解液中で低分 子量の分解物が生成するため、その除去が困 難で、電析した電解銅箔へ包含されたり、銅 の析出状態が不安定化するため好ましくない 。

 これに対し、添加剤Aとしての「複素環に ベンゼン環とNとを含み同時にメルカプト基 結合している構造を有する化合物」は、ベ ゼン環という安定した化学構造を備え、更 、Nを含む複素環構造をとっているため、硫 銅溶液中で安定構造をとり、分解が困難で 分子量の分解物が生成しにくく好ましい。 して、メルカプト基が複素環に結合し、ス ホン基がベンゼン環に結合した構造をとれ 、分子内電子の極性が大きくなり、水溶液 対する溶解が容易で、硫酸系銅電解液に用 る添加剤として好ましいものとなる。

 この「添加剤Aである複素環にベンゼン環 とNとを含み同時にメルカプト基が結合して る構造を有する化合物」を具体的に言えば イミダゾール系化合物、チアゾール系化合 及びテトラゾール系化合物である。そして トリアゾール系化合物及びオキサゾール系 合物等も、ここに含まれる。

 また、上記添加剤Aのベンゼン環には、ス ルホン基が結合している化学構造のものを用 いることがより好ましい。ベンゼン環にスル ホン基が結合した化学構造の化合物は、硫酸 系銅電解液中で、極めて良好な安定性を示す 。その結果、溶液の性状変化が小さく、電解 状態が安定化し、溶液寿命も長くなる。

 以下、上述した構造を有する添加剤Aを、 より具体的に言えば、2-メルカプト-5-ベンズ ミダゾールスルホン酸(以下、「2M-5S」と称 る。)、3(5-メルカプト-1H-テトラゾールイル) ベンゼンスルホナート(以下、「MSPMT-C」と称 る。)又は2-メルカプトベンゾチアゾール(以 下、「WM」と称する。)を用いることが好まし い。以下、2M-5Sの構造式を化1に、MSPMT-Cの構 式を化2に、そして、WMの構造式を化3に示す そして、これらの化合物を実際に使用する あたっては、入手が容易である易水溶性の 類、例えば後述する実施例で使用したよう Na塩等の状態で用いることが出来る。

 次に、添加剤Aとしての「複素環に1以上 Nを含み同時にSH基が結合した5員環構造を有 る化合物」とは、イミダゾール系化合物、 オール系化合物である。これらの化合物を より具体的に言えば、以下の化4として示す 2-メルカプト-イミダゾール(以下、「2MI」と する。)、化5として示す2-チアゾリン-2-チオ ル(以下、「2TT」と称する。)である。

 また、添加剤Aとしてのチオ尿素又はその 誘導体は、添加剤B及び添加剤Cと組み合わせ ことで使用が可能になる。中でも、「炭素 が2以上の官能基を有するチオ尿素系化合物 」を用いることが好ましい。例えば、炭素数 が2以上のアルカン基を両端に有するチオ尿 系化合物は、チオ尿素の極性がアルカン基 より弱められる。従って、銅イオンとの反 性を向上させる[=S]の構造を有しつつ、電解 応時においてもチオ尿素のような分解挙動 示しにくい。従って、これらの電解反応時 分解しにくいチオ尿素系化合物を用いれば チオ尿素を用いた場合に生じる不具合が発 し難くなる。

 「炭素数が2以上のアルカン基を両端に有 するチオ尿素系化合物」を具体的に例示する と、その化学構造的に安定性に優れたN,N’- エチルチオ尿素(以下、「EUR」と称する。)を 用いることが好ましい。以下の化6にEURの構 式を示す。このEURは、その化学構造式から 解できるように、N及びSの化学構造配置が、 チオ尿素と同様である。また、エチル基を両 端に有することで、末端基の活性が弱く、電 解液中での安定性が向上すると考えられる。

 以上に述べてきた添加剤Aの中から、2種 上を選択的に用いて、これらを併用するこ も可能である。添加剤Aの異なる成分を併用 ても、添加剤Aとしての効果に変化はなく、 むしろ混合使用することによって、硫酸系銅 電解液中の銅濃度、液温等に応じた、電解液 としての溶液性状の調整が容易になる場合が ある。

 従って、硫酸系銅電解液中の当該添加剤A の濃度(2種以上を用いる場合は合算濃度)は、 1ppm~50ppmであることが好ましい。より好まし は3ppm~40ppmである。硫酸系銅電解液中の添加 Aの濃度が1ppm未満の場合には、電解により 出する電解銅箔に取り込まれる添加剤Aの量 不足し、得られる電解銅箔が大きな機械的 度を得られなくなり、当該機械的強さの経 変化も大きくなる。一方、当該添加剤Aの濃 度が50ppmを越えると、電解銅箔の析出面の滑 かさが損なわれ、光沢度が低下し、大きな 械的強度を得ることも困難になる。また、 該添加剤Aの群には、種々の分子量を持つ添 加剤が含まれていることを考慮すると、モル 濃度換算で管理することも好ましい。この場 合、添加剤Aをモル濃度換算で10μmol/l~110μmol/l の範囲で管理する事が好ましい。当該添加剤 Aの濃度がモル濃度換算10μmol/l未満となると 電解により析出する電解銅箔に取り込まれ 添加剤Aの量が不足し、得られる電解銅箔が きな機械的強度を得られなくなり、当該機 的強度の経時変化も大きくなる。一方、当 添加剤Aの濃度がモル濃度換算110μmol/lを越 ると、電解銅箔の析出面の滑らかさが損な れ、光沢度が低下し、大きな機械的強度を ることも困難になる。この銅電解液中の添 剤Aの含有量は、HPLC(High Performance Liquid Chrom atography)を用いて確認することが可能である

 なお、以上に具体的化合物名を特定して べてきた添加剤Aは、実施例で使用したもの を例示しているに過ぎない。従って、以上に 述べてきた特徴的化学構造を備え、同様の効 果を発揮する化合物であれば、いずれの化合 物の使用も可能であることを、念のために明 記しておく。

 添加剤Bに関して説明する。この添加剤B 、活性硫黄化合物のスルホン酸塩である。 の添加剤Bは、得られる電解銅箔の表面の光 化を促進するように作用する。添加剤Bを具 体的に言えば、3-メルカプト-1-プロパンスル ン酸(以下、「MPS」と称する。)又はビス(3- ルホプロピル)ジスルフィド(以下、「SPS」と 称する。)のいずれか又は混合物を用いるこ が好ましい。中でも、SPSが、当該電解液中 光沢剤としての効果を発揮すると考えられ 。しかし、このSPSは、硫酸系銅電解液中にMP Sを添加すると、当該溶液中で重合して2量体 する場合もある。従って、SPSの直接添加を うこと無く、硫酸系銅電解液中にMPSを添加 て、これをSPSに転化して用いても構わない ここで、化7にMPSの構造式を、化8にSPSの構 式を示す。これら構造式の比較から、SPSがMP Sの2量体であることが理解できる。

 そして、当該添加剤Bの硫酸系銅電解液中 の濃度は、1ppm~80ppmの範囲であることが好ま く、より好ましい範囲は10ppm~70ppm、更に好ま しい範囲は10ppm~60ppmである。当該濃度が1ppm未 満の場合には、電解銅箔の析出面の光沢が失 われると同時に、高い機械的強度の電解銅箔 を安定して得ることが困難になる。一方、当 該濃度が80ppmを超えると、銅の析出状態が不 定になる傾向にあり、高い機械的強度の電 銅箔を安定して得ることが困難になる。な 、添加剤Bの濃度は、濃度計算を容易にする ために、ナトリウム塩に換算した値を示した 。

 添加剤Cについて説明する。この添加剤C 、環状構造を持つ4級アンモニウム塩重合体 ある。この添加剤Cは、電解法で製造される 電解銅箔の表面の平滑化を促進するように作 用する。そして、具体的には、添加剤Cとし 、ジアリルジメチルアンモニウムクロライ (以下、「DDAC」と称する。)重合体を用いる とが好ましい。DDACは、4級アンモニウム塩が 重合体構造をとる際に環状構造を成すもので あり、環状構造の一部は4級アンモニウムの 素原子で構成されることになる。そして、DD AC重合体には、5員環や6員環の環状構造等の 数の形態が存在する。しかし、実際の重合 の化学構造は、合成条件により決定づけら 、1種又は2種以上の化学構造を持つものが混 在していると考えられる。従って、これら重 合体の内、ここでは5員環構造をとっている 合物を代表とし、塩素イオンを対イオンと たものを化9として以下に示している。このD DAC重合体とは、以下に示す化9のように、DDAC 2量体以上の重合体構造をとっているもので ある。

 そして、当該添加剤Cの、硫酸系銅電解液 中の濃度は0.5ppm~100ppmの範囲であることが好 しく、より好ましい範囲は10ppm~80ppm、更に好 ましくは20ppm~70ppmである。硫酸系銅電解液中 添加剤Cの濃度が0.5ppm未満の場合には、電解 銅箔の析出面の平滑化効果が不十分となり、 SPSの濃度をいかに高めても、高い機械的強度 を得るために必要な微細な結晶粒が得られず 、当該析出面が粗くなり低プロファイル表面 を得ることが困難になる。一方、当該添加剤 Cの濃度が100ppmを超えても、銅の析出面を平 にする効果は向上せず、むしろ析出状態が 安定になって、高い機械的強度を安定して ることが困難になる。

 更に、前記硫酸系銅電解液中における、 記添加剤Bの濃度と前記添加剤Cの濃度との 量濃度比[B濃度]/[C濃度]の値が0.07~1.4である とが好ましい。前述のように、添加剤Bと添 剤Cとは、共に高濃度になると析出状態が不 安定になる傾向がある。ところが、この銅の 析出状態が不安定になる傾向は、一方の成分 のみが高濃度となったときに特に顕著になる 。従って、前記添加剤Bの濃度と前記添加剤C 濃度との重量濃度比[B濃度]/[C濃度]の値を0.0 7~1.4とすることによって、両添加剤が安定し 効果を発揮し、電解操業の安定性も向上す 。そして、重量濃度比[B濃度]/[C濃度]の値が 0.07~1.4であれば、後述する塩素添加の効果を 揮させやすくなり、より好ましい。

 このような、前記硫酸系銅電解液中の、 加剤A~添加剤Cの成分バランスが最も重要で る。これらの添加剤成分の量的バランスが 上記範囲を逸脱した銅電解液を用いて電解 箔を製造しても、その電解銅箔は、高い機 的強度を得ることの可能な微細な析出結晶 を備えず、同時に、平滑で光沢のある析出 が得られず低プロファイル表面が得られな なる。従って、これらのバランスを良好に 持することで、安定して本件発明に係る極 て大きな機械的強度を有する電解銅箔の製 が可能になる。

 そして、前記硫酸系銅電解液中の塩素濃 に関して述べる。この塩素濃度は、40ppm~80pp mの範囲にあることが重要である。この範囲 塩素濃度を採用することで、上記硫黄、炭 、塩素の各成分をバランス良く含有し、且 、微細な結晶粒を含んだ高強度の電解銅箔 安定製造が可能になる。このときの塩素濃 は、添加剤A~添加剤Cを添加した後の状態で 40pm~80ppm、より好ましくは60ppm~80ppmである。 の、塩素濃度が40ppm未満の場合には、得られ た電解銅箔に必要量の硫黄、炭素、塩素の各 成分を含有させることができず、電解銅箔の 機械的強度が低下する傾向が大きくなる。一 方、塩素濃度が80ppmを超えると、コルソン合 並みの高い機械的強度の電解銅箔を得るた に必要な電析状態が得られ難くなる。また この硫酸系銅電解液中の塩素濃度の調整を 要とする場合には、塩酸又は塩化銅を用い 調整することが好ましい。硫酸系銅電解液 溶液性状を変化させないからである。

本件発明に係る銅張積層板の形態: 本件発 明に係る銅張積層板は、上述の表面処理電解 銅箔を絶縁層構成材料と張合わせて得られる ことを特徴とするものである。ここで言う銅 張積層板の製造方法に関しては、特段の限定 はない。但し、ここで言う銅張積層板の概念 には、リジッド銅張積層板及びフレキシブル 銅張積層板の双方が含まれる。リジッド銅張 積層板であれば、ホットプレス方式や連続ラ ミネート方式を用いて製造することが可能で ある。そして、フレキシブル銅張積層板であ れば、従来技術であるロールラミネート方式 やキャスティング方式を用いることが可能で ある。

 そして、本件発明に係る前記リジッド銅 積層板を用いてリジッドプリント配線板が られ、電解銅箔層の機械的強度が極めて大 いため、物理的外力によるスクラッチ、断 不良等の少ない高品質なファインピッチ回 を備えることになる。また、フレキシブル 張積層板は、その屈曲性と軽量性とが要求 れるフレキシブルプリント配線板の製造に いられる。本件発明に係る電解銅箔を用い フレキシブル銅張積層板は、形成した導体 機械的強度が極めて大きいため、高屈曲性 び高いプリント配線板強度を示す。しかも 本件発明に係る電解銅箔は、低プロファイ であるため、フレキシブルプリント配線板 求められるレベルのファインパターン回路 形成に好適である。特に、TABテープのデバ スホールのフライングリードにICチップを ンディングする際のフライングリードの曲 り、ボンディング圧による伸びが解消でき 。

 以下、本件発明に係る電解銅箔及びその 造方法等の理解を容易にするため実施例を す。

 この実施例では、硫酸系銅電解液として 硫酸銅溶液であって銅濃度80g/L、フリー硫 濃度140g/Lに調整した基本溶液を用い、表1に す各添加剤濃度になるように調整した。添 剤BとしてMPS-Na(MPSのナトリウム塩)、添加剤C としてDDAC重合体(センカ(株)製ユニセンスFPA10 0L)、添加剤Aとして、2M-5S、MSPMT-C、2MI、2TT及 EURから選択された1種のいずれかを用い、塩 濃度の調整には塩酸を用いた。そして、表1 に示す添加剤の配合が異なる組成の硫酸系銅 電解液を用いて、試料1~試料8の8種類の電解 箔を製造した。上記実施例に係る試料1~試料 8の液組成及び電解条件は、比較例の液組成 び電解条件と併せて表1に掲載する。

 電解銅箔の作成は、陰極として表面を#200 0の研磨紙を用いて研磨を行ったチタン板電 を、陽極にはDSAを用いて、厚さ12μm~18μmの電 解銅箔を作成した。これらの電解銅箔の光沢 面(析出面の反対側の面)の表面粗さ(Rzjis)は、 0.84μmであった。各特性の評価結果は、以下 比較例及び参考例と対比可能なように表2に めて示す。

 ここで、各種の測定条件等を述べておく 結晶粒径の測定は、走査型電子顕微鏡を用 て、加速電圧:20kV、観察倍率:×30,000、アパ チャー径:60mm、High Current modeを用いて、観 試料を70°に傾けて、方位差5°以上で粒界と なし、結晶粒径測定を行った。なお、測定 域、ステップサイズは、結晶の大きさによ 、下記の2種類の条件を採用した。実施例に 係る試料1~試料3及び試料5の常態および熱後 結晶粒径の測定は、測定領域:2×2μm、ステッ プサイズ:10nmとした。そして、以下に述べる 較例の比較試料B及び比較試料Cの常態およ 熱後結晶粒径の測定は、測定領域:5×5μm、ス テップサイズ:30nmとした。そして、引張強さ び伸び率の測定に関しては、IPC-TM-650に準拠 して行った。また、表面粗さの測定に関して は、JIS B 0601-2001に準拠して行った。さらに 光沢度の測定は、JIS Z 8741-1997に準拠して った。以下の比較例も同様である。

比較例

[比較例1]
 比較例1では、添加剤Aを含んでいないこと 除いては、実施例と同様の電解液組成とし 。この液組成を、実施例の液組成と併せて 後の表1に示す。

 電解銅箔の作成は、陰極として表面を#2000 研磨紙を用いて研磨を行ったチタン板電極 、陽極にはDSAを用いて、液温50℃、電流密度 60A/dm 2 で電解し、厚さ15μmの電解銅箔(比較試料A)を 成した。この電解銅箔の光沢面の表面粗さ( Rzjis)は0.88μmであり、析出面の表面粗さ(Rzjis) 0.44μmで、光沢度[Gs(60°)]は600以上であった そして、常態引張り強さの値が35.4kgf/mm 2 、常態伸び率の値は14.3%であった。更に、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は30.7kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は14.8%であった。実施例 比較例2、比較例3及び参考例の結果と併せ 、後の表2に纏めて示す。

[比較例2]
 比較例2では、特許文献2に開示の実施例2を レースした。具体的には、硫酸濃度を100g/L 硫酸銅五水和物濃度を280g/Lの硫酸系硫酸銅 溶液を調製し、添加剤としてヒドロキシエ ルセルロース:80mg/L、ポリエチレンイミン:30 mg/L、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナト リウム:170μmol/L、アセチレングリコール:0.7mg/ L 及び塩素イオン:80mg/Lを含む電解液を調製 た。

 この電解液の液温を40℃とし、実施例と同 の装置を用いて、電解電流密度40A/dm 2 で電解し、厚さ18μmの電解銅箔(比較試料B)を 成した。この電解銅箔の光沢面の表面粗さ( Rzjis)は、実施例と同じく、0.84μmであった。 して、析出面の表面粗さ(Rzjis)は1.94μm、常態 引張り強さの値が57.7kgf/mm 2 、常態伸び率の値は6.8%であった。また、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は54.7kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は7.3%となった。実施例 比較例1、比較例3及び参考例の結果と併せて 、後の表2に纏めて示す。

[比較例3]
 比較例3では、特許文献2に開示の実施例3を レースした。具体的には、硫酸濃度を100g/L 硫酸銅五水和物濃度を280g/Lの硫酸系硫酸銅 溶液を調製し、添加剤としてヒドロキシエ ルセルロース:6mg/L、ポリエチレンイミン:12m g/L、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸ナト ウム:60μmol/L、アセチレングリコール:0.5mg/L 及び塩素イオン:30mg/Lを含む電解液を調製し 。

 この電解液の液温を40℃とし、実施例と同 の装置を用いて、電解電流密度40A/dm 2 で電解し、厚さ18μmの電解銅箔(比較試料C)を 成した。この電解銅箔の光沢面の表面粗さ( Rzjis)は実施例と同じく、0.84μmであった。そ て、析出面の表面粗さ(Rzjis)は1.42μm、常態引 張り強さの値が57.8kgf/mm 2 、常態伸び率の値は6.4%であった。また、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は55.0kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は8.4%となった。実施例 比較例1、比較例2及び参考例の結果と併せて 、以下の表2に纏めて示す。

[比較例4]
 比較例4では、本件発明で言う適正な範囲を 外れた量の添加剤Aを含有した電解液組成を いた。この液組成は、実施例の液組成と併 て、後の表1に示す。

 そして、表1に示すように、実施例と同様の 条件及び装置を用いて、電解電流密度60A/dm 2 で電解し、厚さ12μmの電解銅箔(比較試料D)を 成した。この電解銅箔の光沢面の表面粗さ( Rzjis)は、実施例と同じく、0.84μmであった。 して、析出面の表面粗さ(Rzjis)は26.0μm、常態 引張り強さの値が21.1kgf/mm 2 、常態伸び率の値は0.4%であった。また、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は17.7kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は0.2%となった。実施例 比較例1、比較例3及び参考例の結果と併せて 、後の表2に纏めて示す。

[比較例5]
 比較例5では、本件発明で言う適正な範囲未 満の塩素量の電解液組成を採用した。この液 組成は、実施例の液組成と併せて、後の表1 示す。

 そして、表1に示すように、実施例と同様の 条件及び装置を用いて、電解電流密度60A/dm 2 で電解し、厚さ18μmの電解銅箔(比較試料E)を 成した。この電解銅箔の光沢面の表面粗さ( Rzjis)は、実施例と同じく、0.84μmであった。 して、析出面の表面粗さ(Rzjis)は20.9μm、常態 引張り強さの値が44.2kgf/mm 2 、常態伸び率の値は1.1%であった。また、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は42.4kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は1.1%となった。実施例 比較例1、比較例3及び参考例の結果と併せて 、後の表2に纏めて示す。

[参考例]
 この参考例では、18μm厚さのコルソン合金 を参考試料として用いた。このコルソン合 箔の製造に用いたコルソン合金は、Cu-2%Ni-0.5 %Si-1%Zn-0.5%Snの組成のものである。このコルソ ン合金は、基地にNi 2 Si析出物を分散して析出させた析出硬化型合 であり、比較的良好な導電性、強度、応力 和特性及び曲げ加工性を兼ね備える合金と て知られている。

 このコルソン合金箔の常態引張り強さの値 91.5kgf/mm 2 、常態伸び率の値は5.4%であった。また、こ 電解銅箔の加熱後引張り強さの値は92.7kgf/mm 2 、加熱後伸び率の値は6.2%であった。実施例 比較例の結果と併せて、以下の表2に纏めて す。

<実施例と比較例との対比>
 最初に、表1を参照して理解できる実施例と 比較例との対比を行う。本件発明に係る電解 銅箔の製造方法は、硫酸系銅電解液を用いた 電解法により電解銅箔を製造するにあたって 、当該電解液が、上述の添加剤A(「複素環に ンゼン環とNとを含み同時にメルカプト基が 結合している構造を有する化合物」、「複素 環に1以上のNを含み同時にSH基が結合した5員 構造を有する化合物」、「チオ尿素系化合 」のいずれかの1種)、添加剤B(活性硫黄化合 物のスルホン酸塩)、添加剤C(環状構造を持つ アンモニウム塩重合体)を含有し、塩素濃度 40ppm~80ppmの範囲にあるという条件が必要であ る。そして、当該硫酸系銅電解液中における 、前記添加剤Bの濃度と前記添加剤Cの濃度と 重量濃度比である[B濃度]/[C濃度]の値が0.07~1 .4であることが好ましい。

 従って、実施例では、添加剤A~添加剤Cの 添加剤を用いて、49.4ppm~66.0ppmの範囲の塩素 度の硫酸系銅電解液を用いている。これに して、比較例の比較試料A及び比較試料Cの 造では塩素濃度30ppmの銅電解液を用いている 。そして、比較例の比較試料Bの製造では、 素濃度80ppmの銅電解液を用いているが、比較 試料B及び比較試料Cの製造に用いた銅電解液 、本件発明に係る電解銅箔の製造に用いる 電解液に含ませることの無いアセチレング コールを含んでいるため、本件発明に係る 造方法の概念を適用することが不可能であ 。

 更に、本件発明において用いる硫酸系銅 解液中における、前記添加剤Bの濃度と前記 添加剤Cの濃度との重量濃度比である[B濃度]/[ C濃度]の値が0.07~1.4であることが好ましい。 のとき、実施例の試料1の[B濃度]/[C濃度]=0.40 試料2の[B濃度]/[C濃度]=1.14、試料3の[B濃度]/[ C濃度]=0.67、試料4の[B濃度]/[C濃度]=0.78、試料5 の[B濃度]/[C濃度]=0.21、試料6~試料8の[B濃度]/[C 濃度]=0.86であり、適正な範囲にある。これに 対し、比較例の比較試料Aの製造には、[B濃度 ]/[C濃度]=1.33の硫酸系銅電解液を用いている 、添加剤Aを添加していないため、後述する うに良好な引張り強さ、良好な導電性が得 れていない。更に、比較例の比較試料D及び 比較試料Eの製造には、[B濃度]/[C濃度]=0.85の 酸系銅電解液を用いているが、比較試料DはE UR含有量が適正な範囲を外れており、比較試 Eは塩素濃度が適正な範囲未満となっている 。このため、後述するように、得られる銅箔 の引張強さが低く、析出面の表面粗さが粗い などの不具合が生じている。

 次に、表2を参照して理解できる実施例と 比較例との対比を、各特性毎に行う。最初に 導電率に関しての対比を述べる。参考例(18μm 厚さの、圧延法で得られたコルソン合金箔) 場合は、導電率が48.2%IACSであり、電解法で られた実施例及び比較例と比べて、低くな ている。これは、基本的なバルク組成が異 り、圧延箔であるコルソン合金箔は、圧延 工による集合組織の形成により、加工歪み 大きな結晶組織を備えることも要因として えられる。そこで、実施例を見ると、その 電率は、49.3%IACS~76.0%IACSの範囲となっている 一方、比較例では、63.2%IACS~87.5%IACSの範囲に ある。

 ところが、ここで常態における引張り強さ 値に着目してみると、実施例の試料の引張 強さが76.8kgf/mm 2 ~94.6kgf/mm 2 の範囲にある。そして、これに対して、比較 例の比較試料の引張り強さが21.1kgf/mm 2 ~57.8kgf/mm 2 の範囲にある。即ち、実施例に係る試料の方 が、比較例として用いた比較試料に比べて、 圧倒的に高い引張強さを備えることが分かる 。

 そして、加熱後の引張り強さに着目してみ も、実施例の試料の加熱後引張り強さは、7 3.9kgf/mm 2 ~93.4kgf/mm 2 の範囲にあり、参考例に掲げたコルソン合金 箔と同等の引張強さを示すものもある。そし て、実施例の試料1~試料8毎に、常態と加熱後 との値の変化をみても、大きな軟化現象は見 られていない。これに対し、比較例の比較試 料の加熱後引張り強さは、17.7kgf/mm 2 ~55.0kgf/mm 2 と低い範囲にある。

 次に、表2に掲載した、実施例及び比較例 で製造した電解銅箔の析出面の表面粗さをみ ると、比較試料D及び比較試料Eの表面粗さが 端に大きくなっている。このことから、銅 解液の組成バランスが崩れると、ロープロ ァイルの析出面が得られないことが理解で る。

 ここで、平均結晶粒子径に関して、実施 と比較例とを対比してみる。常態における 施例の各試料の平均結晶粒子径は、平均短 が46.9nm~104.9nm、平均長径が149.8nm~381.5nmの範 にある。即ち、本件発明において好適と称 ている「平均短径の長さが30nm~110nm、平均長 の長さが140nm~400nm」の範囲に入っている。 れに対し、常態における比較例の各比較試 の平均結晶粒子径は、平均短径が487.7nm~916.0n m、平均長径が1217.8nm~2862.5nmの範囲にあり、即 ち、本件発明において好適と称する範囲には 含まれない。

 更に、加熱後における実施例の各試料の 均結晶粒子径は、平均短径が33.0nm~117.0nm、 均長径が113.7nm~468.0nmの範囲にある。即ち、 件発明において好適と称している「平均短 の長さが25nm~120nm、平均長径の長さが100nm~500n m」の範囲に入っている。これに対し、加熱 における比較例の各比較試料の平均結晶粒 径は、平均短径が432.7nm~974.0nm、平均長径が26 17.5nm~2872.7nmの範囲にあり、即ち、本件発明に おいて、加熱後の結晶粒子径として好適と称 する範囲には含まれない。

 しかも、本件発明では、常態の結晶粒子 平均長径の長さと平均短径の長さとが、[平 均短径の長さ]/[平均長径の長さ]=0.1~0.5の関係 を備えることを要求している。このとき、実 施例の試料においては[平均短径の長さ]/[平 長径の長さ]=0.16~0.45の範囲にある。

 以上に述べてきた平均結晶粒子径に関し 言えば、比較例に比べ、実施例の平均結晶 子径の方が、常態及び加熱後の双方で、極 て小さなものであることが理解できる。こ 結晶粒子径の細かさ故に、実施例の電解銅 は、高い引張強さを示すと言える。一方で 比較例と比べ、実施例の結晶粒子径は微細 あり、結晶組織内の結晶粒界の密度が上昇 るため、電気抵抗が高くなると考えられる その結果、比較例の導電率に比べて、実施 の導電率が低くなると考えられる。

 次に、伸び率に関して述べておく。表2か ら明らかなように、比較試料Aを除いては、 解銅箔として一般的に見られる伸び率であ 、電子材料分野において、その用途が限定 れるような値ではないことを明記しておく

 更に、表面粗さに関して述べておく。本 発明に係る電解銅箔及び比較例として使用 た電解銅箔は、全て低プロファイル銅箔と て製造したものである。従って、表面粗さ で測定したRzjisの値に関して、大きな差異 あるとは言えない。

 また、光沢度に着目してみると、本件発 に係る実施例で得られた電解銅箔の光沢度 、MD(流れ方向)光沢度で118~636、TD(幅方向)光 度で102~586の範囲を示しており、十分に良好 な光沢度を備えると言える。

 最後に、表3について述べておく。本件発 明に係る電解銅箔は、硫黄を110ppm~400ppm含有 、炭素を250ppm~470ppm含有し、塩素を150ppm~650ppm 、窒素を40ppm~180ppm含有することが望ましいの は、上述のとおりである。表3から分かるよ に、実施例の各試料の硫黄、炭素、塩素、 素の成分量は、この範囲に入っている。し し、比較例の各比較試料の硫黄、炭素、塩 、窒素の各成分量は、いずれかの成分量が 上述の適正な範囲から外れていることが明 かである。そして、本件発明に係る電解銅 の場合、特に硫黄量及び窒素量が高いこと 顕著な特徴と言え、このことが上記の各機 的特性を総合的に満足させているものと思 れる。

 以上のことから、コルソン合金箔と同等 機械的強さを備える電解銅箔を市場に供給 るという観点からみれば、本件発明に係る 施例として掲載した電解銅箔は、参考例で るコルソン合金箔と同等の機械的強さを備 、且つ、コルソン合金箔を超える導電性能 同時に備え、その他電子材料用途として電 銅箔に求められる基本的特性の全てを満足 たと言えることが明らかである。

 本件発明に係る電解銅箔は、上述のよう nmオーダーの析出結晶粒子で構成されてい ため、結晶粒の微細化効果により、コルソ 合金箔と同等の極めて大きな機械的強度を えるようにできる。しかも、この本件発明 係る電解銅箔の機械的強度は、180℃×60分の 熱後においても、常態の機械的強度とほぼ わらない。そして、その結晶の粒子径が微 であるため、従来の低プロファイル電解銅 と同等レベルの低プロファイルの析出面を える。そして、この本件発明に係る電解銅 を用いて、その表面に防錆処理を目的とし た表面処理、基材樹脂との密着性を向上さ るための粗化処理、シランカップリング剤 理等を施すことで、良好な機械的強度と低 ロファイル表面を備える表面処理銅箔が得 れる。このような表面処理銅箔は、ファイ ピッチ回路を備える高品質のプリント配線 材料、高耐久性能が要求されるリチウム二 電池用負極集電体等の構成材料として好適 ある。

 また、当該表面処理電解銅箔を用いて得 れる銅張積層板は、板厚が薄くても、電解 箔の極めて大きな機械的強度により、ハン リング時のたわみ、変形が少なく、取扱い すくなる。特に、当該電解銅箔を絶縁層形 材であるフィルムと張合わせてフレキシブ 銅張積層板とし、これをファインピッチが 求されるTAB基板用途に用いれば、従来の技 では実用化出来ないレベルの微細なフライ グリードの形成が可能になる。

 更に、本件発明に係る電解銅箔の製造方 は、使用する銅電解液の組成に特徴を備え いる。この銅電解液は、溶液安定性に優れ 長期間の連続使用に耐えるため、経済的に 優れている。更に、使用する製造設備とし も、新たな設備投資を必要とせず、従来の 解銅箔製造設備の使用が可能であり、製造 ストの上昇を招かない。