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Patent Searching and Data


Title:
ELECTRONIC PART
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/130935
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is an electronic part which can suppress diffusion of Ni from a magnetic layer into a non-magnetic layer during sintering. The magnetic layer (4) contains 30 mol% to 45 mol% of NiO and constitutes a layered body (2). An internal electrode (7) is layered together with the magnetic layer (4) and mutually connected to constitute a coil (L). The non-magnetic layer (11) is arranged in a region where the coil (L) is formed in the layering direction in the layered body (2). The magnetic layer (10) contains 10 mol% to 25 mol% of NiO and arranged so as to sandwich the non-magnetic body (11) from the layering direction.

Inventors:
UCHIDA KATSUYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/052641
Publication Date:
October 29, 2009
Filing Date:
February 17, 2009
Export Citation:
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Assignee:
MURATA MANUFACTURING CO (JP)
UCHIDA KATSUYUKI (JP)
International Classes:
H01F17/00
Domestic Patent References:
WO2008004633A12008-01-10
Foreign References:
JP2006202880A2006-08-03
JP2003124028A2003-04-25
JP2002151354A2002-05-24
JP2008130736A2008-06-05
JP2009081189A2009-04-16
Attorney, Agent or Firm:
MORISHITA, Takekazu et al. (JP)
Takeichi Morishita (JP)
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Claims:
 NiOを含有し、かつ、積層体を構成する複数の第1の磁性体層と、
 前記第1の磁性体層と共に積層され、かつ、互いに接続されてコイルを構成する複数の内部電極と、
 前記積層体内であって、積層方向において前記コイルが形成されている領域に設けられている非磁性体層と、
 前記第1の磁性体層よりも低い割合でNiOを含有し、かつ、前記非磁性体層を積層方向から挟むように設けられている第2の磁性体層と、
 を備えること、
 を特徴とする電子部品。
 前記第1の磁性体層は、30mol%以上45mol%以下の割合でNiOを含有し、
 前記第2の磁性体層は、10mol%以上25mol%以下の割合でNiOを含有していること、
 を特徴とする請求の範囲第1項に記載の電子部品。
 前記第2の磁性体層に含有されているNiOの割合は、前記第1の磁性体層に含有されているNiOの割合の1/2であること、
 を特徴とする請求の範囲第1項又は請求の範囲第2項のいずれかに記載の電子部品。
 前記第1の磁性体層及び前記第2の磁性体層は、Ni-Cu-Zn系フェライトからなっており、
 前記非磁性体層は、Cu-Zn系フェライトからなっていること、
 を特徴とする請求の範囲第1項ないし請求の範囲第3項のいずれかに記載の電子部品。
Description:
電子部品

 本発明は、電子部品に関し、コイルを内 した電子部品に関する。

 DCDCコンバータにおいて、コイルを内蔵し た積層型の電子部品が多用されている。この ような電子部品としては、例えば、特許文献 1に記載の積層型インダクタが提案されてい 。該積層型インダクタは、複数の磁性体及 複数の非磁性体が積層されてなる積層体と 各磁性体内に設けられた複数のコイルと、 コイルを電気的に接続する導体パターンと 備えている。該積層型インダクタでは、磁 体間に非磁性体が設けられることにより、 イルが開磁路型コイルを構成するようにな 。その結果、該積層型インダクタでは、コ ルを流れる重畳電流が大きくなっても、磁 飽和によるインダクタンスの急激な低下が 生しにくい。すなわち、積層型コイルの直 重畳特性が向上する。

 ところで、近年、DCDCコンバータのスイッチ ング周波数は、例えば、10MHz程度まで高周波 している。このようにスイッチング周波数 高周波化したDCDCコンバータに適したコイル を得るためには、磁性体層を低透磁率の磁性 体材料により作製する必要がある。低透磁率 の磁性体材料を得る場合、磁性体材料を構成 する材料の割合が調整される。この際、低透 磁率の磁性体材料では、高透磁率の磁性体材 料に比べて、Niの割合が高くなる。このよう 磁性体材料内のNiの割合が高くなると、積 体の焼成時において、磁性体層から非磁性 層へとNiが拡散してしまう。これにより、非 磁性体層が磁性を有してしまい、コイルが閉 磁路型コイルを構成してしまう。その結果、 積層型インダクタにおいて磁気飽和が発生し 易くなり、該積層型インダクタの直流重畳特 性が低下してしまう。

特開2006-261577号公報

 そこで、本発明の目的は、焼成時に磁性 層から非磁性体層にNiが拡散することを抑 できる電子部品を提供することである。

 本発明の一形態に係る電子部品は、NiOを 有し、かつ、積層体を構成する複数の第1の 磁性体層と、前記第1の磁性体層と共に積層 れ、かつ、互いに接続されてコイルを構成 る複数の内部電極と、前記積層体内であっ 、積層方向において前記コイルが形成され いる領域に設けられている非磁性体層と、 記第1の磁性体層よりも低い割合でNiOを含有 、かつ、前記非磁性体層を積層方向から挟 ように設けられている第2の磁性体層と、を 備えること、を特徴とする。

 本発明によれば、第2の磁性体層が、第1 磁性体層よりも低い割合でNiOを含有し、か 、非磁性体層を積層方向から挟むように設 られている。これにより、積層体の焼成時 、非磁性体層にNiが拡散して、非磁性体層が 磁性を帯びることを抑制できる。

本発明の一実施形態に係る積層型イン クタの外観斜視図である。 図1に示す積層型インダクタの積層体の 分解図である。 積層型インダクタのA-Aにおける断面構 図である。 比較例に係る解析モデルの断面構造図 ある。 比較例に係る解析モデルの断面構造図 ある。 第1のモデルないし第3のモデルの直流 畳特性を示したグラフである。 磁性体層の透磁率を290としたときの第2 のモデル及び第3のモデルの直流重畳特性を したグラフである。 磁性体層の透磁率を130としたときの第2 のモデル及び第3のモデルの直流重畳特性を したグラフである。 磁性体層の透磁率を70としたときの第2 モデル及び第3のモデルの直流重畳特性を示 したグラフである。 磁性体層の透磁率を20としたときの第2 のモデル及び第3のモデルの直流重畳特性を したグラフである。

符号の説明

 L コイル
 1 積層型インダクタ
 2 積層体
 3a,3b 外部電極
 4a~4l,10a,10b 磁性体層
 7a~7g 内部電極
 8a~8h ビア導体
 9a,9g 引き出し部
 11 非磁性体層

 以下に、本発明の一実施形態に係る電子 品である積層型インダクタについて図面を 照しながら説明する。

(積層型インダクタの構成について)
 図1は、積層型インダクタ1の外観斜視図で る。図2は、積層体2の分解図である。以下で は、積層型インダクタ1の形成時に、セラミ クグリーンシートが積層される方向を積層 向と定義する。そして、この積層方向をz軸 向とし、積層型インダクタ1の長手方向をx 方向とし、x軸とz軸とに直交する方向をy軸 向とする。x軸、y軸及びz軸は、積層型イン クタ1を構成する辺に対して平行である。図3 は、積層型インダクタ1のA-Aにおける断面構 図である。図3において、理解の容易のため 磁性体層4同士の境界を点線で示したが、実 際には、このような境界は視認できないこと が多い。

 積層型インダクタ1は、図1及び図3に示す うに、コイルを内蔵する直方体状の積層体2 及び外部電極3a,3bを備える。積層体2は、直方 体状である。外部電極3a,3bはそれぞれ、積層 2のx軸方向の両端に位置する側面に形成さ ている。

 積層体2は、図2に示すように、複数の内部 極と複数の磁性体層とが共に積層されて構 されている。具体的には、以下の通りであ 。積層体2は、磁性体層4a~4l,10a,10b、及び、非 磁性体層11により構成されている。磁性体層4 a~4lは、Fe 2 O 3 ,CuO,NiO,ZnOを基本構成とするフェライトであっ て、該基本構成全体を100mol%としたときに30mol %以上45mol%以下の割合(本実施形態では、40mol%) でNiOを含有する高透磁率のNi-Zn-Cuフェライト より構成されている。これにより、磁性体 4a~4lは、230の透磁率を有している。

 磁性体層10a,10bは、磁性体層4a~4lよりも低い 合でNiOを含有するNi-Zn-Cuフェライトにより 成されている。より具体的には、磁性体層10 a,10bは、Fe 2 O 3 ,CuO,NiO,ZnOを基本構成とするフェライトであっ て、該基本構成全体を100mol%としたときに10mol %以上25mol%以下の割合(本実施形態では、20mol%) でNiOを含有するNi-Zn-Cuフェライトにより構成 れている。これにより、磁性体層10a,10bの透 磁率は、磁性体層4a~4lの透磁率よりも低い18 なる。本実施形態において、磁性体層4a~4l,10 a,10bに含有されるNiOの割合は、走査型電子顕 鏡X線分析装置(SEM-EDX)により計測して得られ た値である。

 非磁性体層11は、透磁率が1のフェライト( 本実施形態では、Zn-Cuフェライト)により構成 され、図2及び図3に示すように、磁性体層10a 磁性体層10bとにz軸方向において挟まれてい る。複数の磁性体層4a~4l,10a,10b及び非磁性体 11は、それぞれ略同じ面積及び形状を有する 長方形の絶縁層である。

 図2に示すように、磁性体層4a~4c,4j~4lの主 上には何も形成されない。一方、磁性体層4 d,4e,10a,4f,4g,4h,4iの主面上にはそれぞれ、内部 極7a,7b,7c,7d,7e,7f,7gが形成される。更に、磁 体層4d,4e,10a、非磁性体層11及び磁性体層10b,4f ,4g,4hにはそれぞれ、z軸方向に延びるビア導 8a,8b,8c,8d,8e,8f,8g,8hが形成されている。

 以下では、個別の磁性体層4a~4l,10a,10b及び ビア導体8a~8hを示す場合には、参照符号の後 にアルファベットを付し、磁性体層4a~4l,10a, 10b、内部電極7a~7g及びビア導体8a~8hを総称す 場合には、参照符号の後ろのアルファベッ を省略するものとする。

 図2に示すように、各内部電極7は、Agから なる導電性材料からなり、3/4ターン分に相当 する「コ」字形状を有する。なお、内部電極 7は、Pd,Au,Pt等を主成分とする貴金属やこれら の合金などの導電性材料からなっていてもよ い。

 図2に示すように、ビア導体8は、Agからな る導電性材料からなり、磁性体層4,10及び非 性体層11をz軸方向に貫通するように、内部 極7の一端に形成されている。これにより、 ア導体8は、z軸方向に隣り合う内部電極7同 を電気的に接続している。複数の内部電極7 は、該ビア導体8により互いに接続されるこ により5.5ターンのコイルLを構成している。 た、z軸方向において最も上側及び最も下側 に形成された内部電極7a,7gはそれぞれ、図2及 び図3に示すように、引き出し部9a,9gを介して 外部電極3a,3bに接続されている。

 図2に示す分解斜視図の磁性体層4a~4e,10a、 非磁性体層11、磁性体層10b,4f~4lをz軸方向の上 側からこの順に重ねて積層体2を構成する。 に、積層体2の表面に外部電極3a,3bを形成す と、図3に示す断面構造を有する積層型イン クタ1が得られる。

(積層型インダクタの製造方法について)
 以下に図1及び図2を参照しながら積層型イ ダクタ1の製造方法について説明する。以下 作製する積層型インダクタ1では、磁性体層 4a~4lが、40mol%の割合でNiOを含有し、磁性体層1 0a,10bが、20mol%の割合でNiOを含有しているもの とする。

 まず、磁性体層4となるべきセラミックグリ ーンシートは、以下のようにして作製される 。酸化第二鉄(Fe 2 O 3 )を45mol%、酸化亜鉛(ZnO)を5mol%、酸化ニッケル( NiO)を40mol%、及び、酸化銅(CuO)を10mol%の比率で 秤量したそれぞれの材料を原材料としてボー ルミルに投入し、湿式調合を行う。得られた 混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末 を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末 ボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥して ら解砕して、2μmの粒径の磁性体層4のフェラ イトセラミック粉末を得る。

 このフェライトセラミック粉末に対して 合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可 剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで 合を行い、その後、減圧により脱泡を行う 得られたセラミックスラリーをドクターブ ード法により、シート状に形成して乾燥さ 、25μmの膜厚のセラミックグリーンシートを 作製する。

 次に、磁性体層10となるべきセラミックグ ーンシートは、以下のようにして作製され 。酸化第二鉄(Fe 2 O 3 )を47mol%、酸化亜鉛(ZnO)を24mol%、酸化ニッケル (NiO)を20mol%、及び、酸化銅(CuO)を9mol%の比率で 秤量したそれぞれの材料を原材料としてボー ルミルに投入し、湿式調合を行う。得られた 混合物を乾燥してから粉砕し、得られた粉末 を800℃で1時間仮焼する。得られた仮焼粉末 ボールミルにて湿式粉砕した後、乾燥して ら解砕して、2μmの粒径の磁性体層10のフェ イトセラミック粉末を得る。

 このフェライトセラミック粉末に対して 合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可 剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで 合を行い、その後、減圧により脱泡を行う 得られたセラミックスラリーをドクターブ ード法により、シート状に形成して乾燥さ 、12μmの膜厚のセラミックグリーンシートを 作製する。

 次に、非磁性体層11となるべきセラミック リーンシートは、以下のようにして作製さ る。酸化第二鉄(Fe 2 O 3 )を49mol%、酸化亜鉛(ZnO)を41mol%、及び、酸化銅 (CuO)を10mol%の比率で秤量したそれぞれの材料 原材料としてボールミルに投入し、湿式調 を行う。得られた混合物を乾燥してから粉 し、得られた粉末を800℃で1時間仮焼する。 得られた仮焼粉末をボールミルにて湿式粉砕 した後、乾燥してから解砕して、2μmの粒径 フェライトセラミック粉末を得る。

 このフェライトセラミック粉末に対して 合剤(酢酸ビニル、水溶性アクリル等)と可 剤、湿潤材、分散剤を加えてボールミルで 合を行い、その後、減圧により脱泡を行う 得られたセラミックスラリーをドクターブ ード法により、シート状に形成して乾燥さ 、25μmの膜厚のセラミックグリーンシートを 作製する。

 次に、磁性体層4d,4e,10a、非磁性体層11及 磁性体層10b,4f,4g,4hとなるべきセラミックグ ーンシートのそれぞれに、ビア導体8a~8hを形 成する。具体的には、磁性体層4d,4e,10a、非磁 性体層11及び磁性体層10b,4f,4g,4hとなるべきセ ミックグリーンシートにレーザビームを照 してビアホールを形成する。次に、このビ ホールに対して、Ag,Pd,Cu,Auやこれらの合金 どの導電性ペーストを印刷塗布などの方法 より充填する。

 次に、磁性体層4d,4e,10a,4f,4g,4h,4iとなるべ セラミックグリーンシート上には、Ag,Pd,Cu,A uやこれらの合金などを主成分とする導電性 ーストをスクリーン印刷法やフォトリソグ フィ法などの方法で塗布することにより、 部電極7a~7gを形成する。なお、内部電極7a~7g 形成する工程とビアホールに対して導電性 ーストを充填する工程とは、同じ工程にお て行われてもよい。

 次に、各セラミックグリーンシートを積 する。具体的には、磁性体層4lとなるべき ラミックグリーンシートを配置する。次に 磁性体層4lとなるべきセラミックグリーンシ ート上に、磁性体層4kとなるべきセラミック リーンシートの配置及び仮圧着を行う。こ 後、磁性体層4j,4i,4h,4g,4f,10b、非磁性体層11 び磁性体層10a,4e,4d,4c,4b,4aとなるべきセラミ クグリーンシートについても同様にこの順 に積層及び仮圧着する。これにより、マザ 積層体が形成される。このマザー積層体に 、静水圧プレスなどにより本圧着が施され 。

 次に、マザー積層体をギロチンカットに り2.0mm×1.25mm×1.0mmの寸法の積層体2にカット る。これにより未焼成の積層体2が得られる 。この未焼成の積層体2には、脱バインダー 理及び焼成がなされる。脱バインダー処理 、例えば、低酸素雰囲気中において500℃で2 間の条件で行う。焼成は、例えば、890℃で2 .5時間の条件で行う。これにより、焼成され 積層体2が得られる。積層体2の表面には、 えば、浸漬法等の方法により主成分が銀で る電極ペーストが塗布及び焼き付けされる とにより、外部電極3a,3bとなるべき銀電極が 形成される。銀電極の乾燥は、120℃で10分間 われ、銀電極の焼き付けは、800℃で60分間 われる。

 最後に、銀電極の表面に、Niめっき/Snめ きを施すことにより、外部電極3a,3bを形成す る。以上の工程を経て、図1に示すような積 型インダクタ1が完成する。

(効果)
 積層型インダクタ1では、図2及び図3に示す うに、非磁性体層11は、積層体2内であって z軸方向においてコイルLが形成されている 域Xに設けられている。これにより、非磁性 層11は、z軸方向に対して垂直な方向にコイ Lを横切るようになるので、コイルLは、開 路型コイルを構成するようになる。その結 、コイルLにおいて磁気飽和が発生しにくく り、積層型インダクタ1の直流重畳特性が向 上する。

 また、積層型インダクタ1では、以下に説 明するように、NiOの割合が高い磁性体層4が 磁性体層11に直接に接触していないので、積 層体2の焼成時において非磁性体層11にNiが拡 することが抑制される。より詳細には、積 型インダクタ1では、磁性体層4a~4lよりもNiO 割合が低い磁性体層10a,10bが、非磁性体層11 z軸方向から挟んでいる。Niの拡散量は、隣 し合う磁性体層と非磁性体層とのNiOの割合 差の大きさに依存している。そのため、積 型インダクタ1のように、非磁性体層11と接 している磁性体層10に含有されるNiOの割合 低くすることにより、積層体2の焼成時に、 磁性体層11にNiが拡散して、非磁性体層11が 性を有することを抑制できる。したがって 積層型インダクタ1では、高周波化したDCDC ンバータに適したコイルLを得るためにNiOの 合を高くすることにより磁性体層4の透磁率 を低くしても、直流重畳特性が低下しにくく なる。

 上記効果をより明確なものとするために 本願発明者は、以下に説明する解析を行っ 。本実施形態に係る積層型インダクタ1の解 析モデル(以下、第1のモデルと称す)の断面構 造図は、図3に示した通りである。また、図4 び図5は、比較例に係る解析モデル(以下、 2のモデル及び第3のモデルと称す)の断面構 図である。図4及び図5において、図3と同じ 成については、同じ参照符号を付してある

 第2のモデルは、図3及び図4に示すように 磁性体層10a,10bが設けられていない点におい て、第1のモデルと相違点を有している。す わち、第2のモデルは、直流重畳特性を向上 せるために非磁性体層11が設けられた従来 積層型インダクタである。また、第3のモデ は、図3及び図5に示すように、磁性体層10a,1 0b及び非磁性体層11の代わりに磁性体層4が設 られている点において、第1のモデルと相違 点を有している。すなわち、第3のモデルは 磁気飽和による直流重畳特性の低下に対す 対策が施されていない従来の積層型インダ タである。

 以下に、解析条件について説明する。第1 のモデルないし第3のモデルにおいて、磁性 層4の厚みを25μm、磁性体層10の厚みを12μm、 磁性体層11の厚みを25μmとした。更に、磁性 体層4の透磁率を230とし、磁性体層10の透磁率 を18とし、非磁性体層11の透磁率を1とした。 た、第1のモデルないし第3のモデルの寸法 2.0mm×1.25mm×1.0mmとした。コイルのターン数を 5.5ターンとした。

 以上のような条件において、第1のモデル のインダクタンスは、267nHとなった。一方、 2のモデルのインダクタンス及び第3のモデ のインダクタンスはそれぞれ、394nH及び378nH なった。このように、第1のモデルでは、非 磁性体層11が存在している分だけ、インダク ンスは低くなっていることが理解できる。

 一方、第2のモデルと第3のモデルとを比 すると、第2のモデルの方が第3のモデルより もインダクタンスが大きくなっていることが 理解できる。理由は以下の通りである。

 第2のモデルでは、積層体2の焼成時に、 性体層4から非磁性体層11へとNiが拡散したた め、非磁性体層11が磁性を有するようになる すなわち、第2のモデルのコイルは、第3の デルのコイルと同様に閉磁路構造を有する うになる。更に、積層型インダクタンスに いて、NiOが含有されている割合が小さくな と、透磁率が大きくなる。第3のモデルでは ともと非磁性体層11にNiが含有されていなか ったので、第3のモデルにおけるNiOの割合は 第2のモデルにおけるNiOの割合よりも低い。 のため、第2のモデルのインダクタンスは、 第3のモデルのインダクタンスよりも大きく る。

 次に、本願発明者は、第1のモデルないし 第3のモデルの直流重畳特性を計算した。図6 、第1のモデルないし第3のモデルの直流重 特性を示したグラフである。縦軸は、イン クタンスを示し、横軸は、重畳電流の大き を示している。

 図6に示すように、第3のモデルでは、非 性体層11が存在しないので、重畳電流が大き くなると、磁気飽和が発生して、インダクタ ンスが急激に減少している。また、第2のモ ルでは、非磁性体層11が設けられているにも かかわらず、第3のモデルと同様に、重畳電 が大きくなると、磁気飽和が発生して、イ ダクタンスが急激に減少している。これは 積層体2の焼成時に、Niが拡散して非磁性体 11が磁性を有しているためである。

 一方、第1のモデルでは、重畳電流が大き くなっても、インダクタンスの急激な減少が 発生していない。これにより、非磁性体層11 磁性を有していないことが理解できる。す わち、図6に示した解析結果によれば、磁性 体層4よりもNiOの割合が低い磁性体層10で非磁 性体層11を挟むことにより、積層体2の焼成時 において、磁性体層4から非磁性体層11にNiが 散することを抑制でき、積層型インダクタ1 の直流重畳特性の向上を図ることが可能なこ とが理解できる。

 特に、本実施形態に係る積層型インダク 1では、磁性体層10に含有されているNiOの割 (20mol%)は、磁性体層4に含有されているNiOの 合(40mol%)の1/2である。これにより、非磁性 層11と磁性体層10とのNiOの割合の差と、磁性 層10と磁性体層4とのNiOの割合の差とを等し することができる。前記の通り、Niの拡散 は、隣接し合う層同士のNiOの割合の差の大 さに依存している。そのため、積層型イン クタ1によれば、磁性体層10から非磁性体層11 へのNiの拡散量と磁性体層4から磁性体層10へ Niの拡散量とを略等しくすることができる これにより、積層型インダクタ1内でのNiの 散を効果的に抑制することができる。

 ところで、積層型インダクタ1では、前記 の通り、磁性体層4が含有するNiOの好適な割 として30mol%以上45mol%以下とし、磁性体層10が 含有するNiOの好適な割合として10mol%以上25mol% 以下としている。以下に、これらの数値限定 について説明する。

 まず、磁性体層4が含有するNiOの割合の下 限値が30mol%であることが好ましい理由につい て説明する。磁性体層4が含有するNiOの割合 下限値は、積層型インダクタ1が適用されるD CDCコンバータのスイッチング周波数によって 定まる。より詳細には、DCDCコンバータのス ッチング周波数は、10MHz程度まで高周波化し ている。10MHzのスイッチング周波数で動作す DCDCコンバータでは、磁性体層4の透磁率は 60以下であることが好ましい。透磁率が60以 の磁性体層4を得るには、磁性体層4が含有 るNiOの割合を30mol%以上とする必要がある。 たがって、磁性体層4が含有するNiOの割合の 限値は、30mol%であることが好ましい。

 次に、磁性体層4が含有するNiOの割合の上 限値が45mol%であることが好ましい理由につい て説明する。磁性体層4を構成する強磁性の ェライトは、Feを主成分とし、Ni、Cu及びZnを 含有している。より詳細には、該フェライト は、Feを45mol%~50mol%の割合で含有している。該 フェライトは、NiのほかにCu及びZnも含有して いるので、最大で45mol%の割合までNiOを含有す ることができる。したがって、磁性体層4が 有するNiOの割合の上限値は、45mol%であるこ が好ましい。

 次に、磁性体層10が含有するNiOの割合の 限値が10mol%であることが好ましい理由につ て説明する。積層型インダクタ1では、セラ ックグリーンシートの積層後に、積層体2を 焼成する必要がある。焼成温度及び焼成時間 は、磁性体層10の透磁率に大きな影響を及ぼ 。特に、NiOの割合が10mol%よりも低くなると 焼成温度及び焼成時間のばらつきによる透 率のばらつきが大きくなることがわかって る。したがって、磁性体層10が含有するNiO 割合の下限値は、10mol%であることが好まし 。更に、磁性体層10が含有するNiOの割合が大 きくなると、磁性体層10から非磁性体層11へ NiOが拡散し易くなるので、かかる観点から 、磁性体層10が含有するNiOの割合の下限値は 、10mol%であることが好ましい。

 次に、磁性体層10が含有するNiOの割合の 限値が25mol%であることが好ましい理由につ て解析をもとに説明する。本解析では、図4 び図5に示した第2のモデル及び第3のモデル おいて、磁性体層4が含有するNiOの割合を変 化させることにより、磁性体層4の透磁率を 化させて、第2のモデルの直流重畳特性の変 を調べた。そして、Niが非磁性体層11に拡散 することにより、直流重畳特性が低下するNiO の割合を磁性体層10が含有するNiOの上限値と た。

 図7は、磁性体層4の透磁率を290としたと の第2のモデル及び第3のモデルの直流重畳特 性を示したグラフである。図8は、磁性体層4 透磁率を130としたときの第2のモデル及び第 3のモデルの直流重畳特性を示したグラフで る。図9は、磁性体層4の透磁率を70としたと の第2のモデル及び第3のモデルの直流重畳 性を示したグラフである。図10は、磁性体層 4の透磁率を20としたときの第2のモデル及び 3のモデルの直流重畳特性を示したグラフで る。縦軸は、インダクタンスを示し、横軸 、重畳電流の大きさを示している。ここで 磁性体層4の透磁率を290,130,70,20とするため 、磁性体層4が含有するNiOの割合をそれぞれ1 8mol%,23mol%,25mol%,33mol%とした。

 図7ないし図9に示すように、磁性体層4が 有するNiOの割合を18mol%,23mol%,25mol%とした場 には、第2のモデルにおいて、重畳電流が大 くなっても、磁気飽和が発生してインダク ンスが急激に低下することが抑制されてい 。すなわち、磁性体層4が含有するNiOの割合 を18mol%,23mol%,25mol%とした場合には、非磁性体 11が磁性を有してしまうことが抑制されて る。

 一方、図10に示すように、磁性体層4が含 するNiOの割合を33mol%とした場合には、第2の モデルにおいても、第3のモデルと同様に、 畳電流が大きくなると、磁気飽和が発生し インダクタンスが急激に低下している。す わち、磁性体層4が含有するNiOの割合を33mol% した場合には、非磁性体層11が磁性を有し しまっている。以上より、磁性体層4が含有 るNiOの割合の上限値は、25mol%であることが ましい。

 以上のように、本発明は、電子部品に有 であり、特に、焼成時に磁性体層から非磁 体層にNiが拡散することを抑制できる点に いて優れている。