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Patent Searching and Data


Title:
ENGINE AND PISTON
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/122640
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are an engine adapted so that sliding surfaces between a cylinder and a piston are less likely to seize on each other and the proportion of lubricating oil in mixed fuel can be reduced, and a piston capable of actively supplying lubricating oil to sliding surfaces between a cylinder or a cylinder liner and the piston. An engine in which mixed gas having lubricating oil mixed therein is supplied to a combustion chamber has supply means for supplying the mixed gas to space between the inner wall of a cylinder or a cylinder liner and a tube section (portion between piston rings and/or the piston rings) of the piston. The supply means are, for example, a groove and a through hole penetrating through the tube section of the piston.

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Inventors:
TSUCHIDA SHUICHIROU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/000349
Publication Date:
October 08, 2009
Filing Date:
January 30, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TSUCHIDA SHUICHIROU (JP)
International Classes:
F01M3/00; F01M1/06; F02B25/16; F02F3/00; F02M69/10; F16J1/08
Foreign References:
JPS5221354U1977-02-15
JPS5058117U1975-05-30
JPH0561440U1993-08-13
JPS61157146U1986-09-29
JPH041654U1992-01-08
Attorney, Agent or Firm:
TOMONO, Eizo (JP)
Eizo Tomono (JP)
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Claims:
 潤滑油が混合された混合気が燃焼室に供給されるエンジンにおいて、シリンダー或いはシリンダーライナーの内壁とピストンの筒部及びピストンリング部、溝部との間に前記混合気が供給される供給手段が設けられていることを特徴とするエンジン。
 請求項1に記載のエンジンにおいて、
 前記供給手段は、前記ピストンの前記筒部を貫通する貫通孔であることを特徴とするエンジン。
 請求項2に記載のエンジンにおいて、
 前記貫通孔は、前記燃焼室で燃焼された燃焼ガスを排気する排気ポート以外のシリンダー或いはシリンダーライナーの内壁面に対向する位置に設けられていることを特徴とするエンジン。
 請求項3に記載のエンジンにおいて、
 前記貫通孔は、前記シリンダー内に前記混合気を流入させるポート及び/もしくは混合気を燃焼室へ送るポート以外の前記シリンダー或いはシリンダーライナーの内壁面に対向する位置に設けられていることを特徴とするエンジン。
 潤滑油が混合された混合気が燃焼室に供給されるエンジンのピストンにおいて、シリンダー或いはシリンダーライナーの内壁面との間に混合気を供給する供給経路を有することを特徴とするピストン。
 請求項5に記載のピストンにおいて、
 前記供給経路が、筒部を貫通する貫通孔であることを特徴とするピストン。
 請求項1乃至6のうちの1項記載のピストンにおいて、
 前記貫通孔の前記シリンダー或いはシリンダーライナーの内壁面側の開口からピストンリング部及び/もしくはピストンリング部分に向かう溝部が前記筒部に形成されていることを特徴とするピストン。
Description:
エンジン及びピストン

 本発明は、たとえばエンジン及びピスト に係り、具体的には混合燃料を用いるエン ン及びピストンに関する。

 エンジンを備える機械の1つである草刈機 やチェーンソーその他の小型機械等には、予 めガソリン等の燃料と各部品(部材)の潤滑を う潤滑油とを混合させた混合燃料を燃焼さ ることで動力を得る2サイクルエンジンが搭 載されたものが幅広く使用されている。

 こうした2サイクルエンジンは、混合燃料 の燃焼により動力を得ると共に、各部材の潤 滑を行うように構成されている(例えば、特 文献1参照)。

 ところで、2サイクルエンジンにおいて、 混合燃料における潤滑油の割合を低減したい という要求は常に存在する。しかしながら、 従来の2サイクルエンジンでは、潤滑油の量 減らすと、シリンダー或いはシリンダーラ ナーとピストン及びその周辺部材の摺動面 潤滑が不十分になり、シリンダー内或いは リンダーライナー内を往復運動するピスト 及びその周辺部材が焼き付いてしまう。

 なお、上述したような問題は、予め燃料と 滑油とを混合させる混合燃料を使用する構 の2サイクルエンジンに限定される話ではな い。例えば、燃料と潤滑油とが別々にクラン ク室に供給されるような2サイクルエンジン おいても、燃料と潤滑油とが混合された混 気を使用して、動力を得ると共に潤滑を行 構成であれば、上述したような問題は同様 存在する。

特開2007-231887号公報

 具体的な4サイクルエンジンの事情として 、エンジンのシリンダーライナー内壁が0.5mm 耗した場合、ピストンリングの摩耗が無か たとしても、ピストンリングの合い口の透 間は、摩耗以前に比べると、1.57mm拡大する 実例では、シリンダーライナー内壁が0.75mm 耗しているため摩耗以前に比べ2.355mmピスト ンリングの合い口の透き間は拡大する。エン ジンを運転する時間と共に刻々とシリンダー ライナーとその周辺部材は摩耗を拡大し、エ ンジンオイルの多消費、パワーダウン(特に ルク)へと進んで行く。ピストンリングの摩 が有れば更に合い口は拡大し高温高圧の燃 ガスは、ピストンリングの拡大した透き間 らクランク室へ流入し、エンジンオイルを 化とスラッジ(エンジンオイルが高熱や未燃 焼による煤でどろどろとなり流動性を失うこ と。)化していく。高温高圧にさらされたエ ジンオイルは、多量の霧化したオイルを生 出し、ピストンが往復運動することで、拡 したピストンリングの合い口の透き間を通 クランク室のエンジンオイルも燃焼室へ流 し、増大したブローバイガスと共に燃焼排 される。通常エンジンのピストンには、圧 力と、燃焼ガスを受け止める2本のコンプレ ションリングが使用され、ガスの吹き抜け 最小限にするため、コンプレッションリン の合い口の透き間は180度ずれて使用されて るが、合い口の透き間が拡大すると燃焼ガ は最短距離で吹き抜けようと作用するので コンプレッションリングの合い口の透き間 距離を次第に短くしていく。そのため、燃 ガスはよりクランクケース内へ流入し易く り、エンジンオイルの早い消耗、スラッジ 、パワーダウン、燃費の悪化等僅かな摩耗 悪循環を加速させる。シリンダーライナー その周辺部材の摩耗は、エンジンを無にす 第一番の原因となる。

 本発明はこのような事情に鑑み、シリン ー或いはシリンダーライナーとピストン及 その周辺部材の焼き付きが生じにくく、混 燃料における潤滑油の割合を低減できるエ ジン及びシリンダー或いはシリンダーライ ーとの摺動面に潤滑油を積極的に供給する とができるピストンを提供することを目的 する。

 上記課題を解決する本発明の第1の態様は 、潤滑油が混合された混合気が燃焼室に供給 されるエンジンにおいて、シリンダー或いは シリンダーライナーの内壁とピストンの筒部 及びピストンリング部との間に混合気が供給 される供給手段が設けられていることを特徴 とするエンジンにあり、特にこれには潤滑油 が混合された混合気が燃焼室に供給される2 イクルエンジンにおいて、シリンダー或い シリンダーライナーの内壁とピストンの筒 との間に混合気が供給される供給手段が設 られていることを特徴とする2サイクルエン ンも含まれる。以下においても同様に、エ ジンとして指標するものの中には、2サイク ルエンジン、4サイクルエンジンが含まれる のとする。

 ここで、混合燃料とは、燃料(例えば、ガ ソリンを含む。)にあらかじめ潤滑油(例えば 2サイクルオイルを含む。)を混合するため 燃料を駆動用として使用するだけでなく、 滑を実現することもできるものを示す。な 、燃料と潤滑油との混合比率については特 限定はない。

 また、潤滑油とは、エンジン内部で高速 転するクランク軸やシリンダー内部で内壁 略接して上下運動するピストンの筒部の摩 による温度上昇が原因となる焼き付きや摩 による性能劣化を防止するために使用可能 油を意味する。エンジンオイルも潤滑油の 種であり、潤滑油の種類としては、摩耗に る性能劣化の防止という機能を果たせれば く、特に種類に限定はない。

 さらに、供給手段とは、混合気をクラン 軸の回転軸やシリンダー或いはシリンダー イナーの内壁とピストンの筒部との間(以下 、「摺動面」ともいう。)等に提供するもの あり、例えば、ピストンの側面を貫通する 通孔であってピストンの内側から摺動面に 合気を吐出する通路を形成するものや、ピ トンの筒部の外側側面に設けた溝部であっ 混合気を滞留させる機能を有するものを含 。なお、貫通孔及び溝部の形状及び寸法に 定はないが、混合気を最適に流入し、ピス ン駆動の効率が低下しない量の混合気を滞 するものであればよい。また、ガソリンエ ジンやディーゼルエンジン等の内燃機関に いられるピストンは中空の円筒形のものが 般的であるため、ピストンの側面(側面の厚 寸法に限定はない。)をボール盤や切削工具 等で加工して貫通させたり溝を設けたりする ことができる。

 かかる第1の態様では、供給手段により、 シリンダー或いはシリンダーライナーの内壁 とピストンの筒部及びその周辺部材との間に 潤滑油が混合された混合気が積極的に供給さ れる。これにより、シリンダー或いはシリン ダーライナーとピストン及びその周辺部材の 摺動面は良好に潤滑され、シリンダー或いは シリンダーライナーとピストン及びその周辺 部材の焼き付きの発生を抑制することができ る。

 すなわち、焼き付きや摩耗を防止するた の潤滑油を燃料に混合することで燃料自体 潤滑作用をもつところ、本願の上記態様で 供給手段を設けるので、ピストンが駆動す 動作によって必然的に混合気が摺動面に侵 するため、結果として駆動中は混合気を常 積極供給することとなり、摺動面に油膜を 成することができる。この形成した油膜が 滑油としてシリンダー或いはシリンダーラ ナーとピストン及びその周辺部材間の摺動 の摩擦と摩耗を低減することになる。

 本発明の第2の態様は、第1の態様のエン ンにおいて、供給手段としては、ピストン 筒部を貫通する貫通孔を採用して構成した とを特徴とするエンジンにある。

 ここで、貫通孔とは、ピストンの壁面を 通した孔であって、貫通孔の径、形状(例え ば、円形、楕円形若しくは四角形等又はテー パの有無(例えば、内側から外側に向かって が漸減する形状を含む。)もしくは段差の有 、数及び間隔に限定はないが、好適には、 通孔に傾斜及びテーパはなく、略等間隔に けるものとする。一方、貫通孔の加工位置 も限定はないが、好適には、排気ポート、 気ポート及び吸気ポートのいずれの経路口 重複しない位置に穿設される。

 詳細には、ピストンリングを挿入する溝( 以下、「リング溝部」ともいう。)に貫通孔 設けると、周囲の材質の強度に悪影響を与 圧縮ガス漏れを起こし始動困難となるおそ があるため好ましくない。また、リング溝 の下面部から傾斜を持たせて貫通孔を設け ことは製造方法が大変困難で高価であるた 、特に小径なピストンの場合に貫通孔を設 ることは困難を極め多額の費用と時間を浪 してしまう。できるだけ多くの混合気を瞬 的に行き渡らせ、油膜を形成するためには ましくない。さらに、所定の位置に設ける 通孔の数としては、単数より複数の方が好 しい。単数の貫通孔とした場合、略水平面 おいて、孔から湧出した潤滑油が行き渡る めには、シリンダーの水平断面において略 周の行程が必要となり、混合気の摺動面へ 供給不足が生じないようにするためには孔 を大きくせざるを得ないが、一定以上の孔 ではピストンの強度を害する恐れがあるか である。したがって、所望の効果を得るた には、適合的な径、形状、数及び配置間隔 有する貫通孔を設ける必要がある。

 一方、貫通孔は所定の製造方法で加工す ことができ、詳細には、ボール盤やフライ 盤によるドリル及びエンドミル加工、レー ー加工或いはプレスによる打ち抜き加工に る方法又はそれらの複合加工による方法に り加工することができる。さらに、製造方 に係る工程は2サイクルエンジンもしくはピ ストンの製造工程のいずれのタイミングであ ってもよいが、最適なリードタイムや歩留を 実現し得るタイミングが好ましい。

 かかる第2の態様では、ピストンに設けら れた貫通孔により、ピストンの内側から貫通 孔を通ってシリンダー或いはシリンダーライ ナーの内壁面に混合燃料が供給される。した がって、簡単な構成で、確実にシリンダー或 いはシリンダーライナーとピストン及びその 周辺部材の摺動面の焼き付きの発生を抑制す ることができる。

 また、貫通孔は簡単な構成であるため、 通孔を設ける製造方法も複雑ではなく、従 の2サイクルエンジンもしくはピストンを製 造する工程に貫通孔を加工する一工程を付加 するだけで、貫通孔を有するピストンが製造 できる。したがって、製造コストも廉価であ って、製造面でのエネルギー消費も抑えるこ とができる。

 本発明の第3の態様は、第2の態様のエン ンにおいて、貫通孔は、燃焼室で燃焼され 燃焼ガスを排気する排気ポート以外のシリ ダー或いはシリンダーライナーの内壁面に 向する位置に設けられていることを特徴と るエンジンにある。

 ここで、排気ポートとは、2サイクルエン ジンにおける燃焼室で燃焼した燃焼ガスを大 気中に開放するための排気口であって、所定 の口径を有するものをいう。もし、貫通孔を 排気口と重複する位置に設けると、クランク 室内の燃焼前の混合気がかかる貫通孔を介し て排気ポートから意図に反して放出される可 能性がある。となると潤滑油としても用いる べき混合気が無駄に消費されてしまうことか ら、排気ポートと重複しない位置、すなわち 、貫通孔はかかるポート以外のシリンダー或 いはシリンダーライナー内壁面に対向する位 置に設ける必要がある。

 かかる第3の態様では、貫通孔が排気ポー ト以外のシリンダー或いはシリンダーライナ ーの内壁面に対向する位置に設けられている ので、ピストンがシリンダー或いはシリンダ ーライナーの内壁面を摺動する際に、未燃焼 の混合気が貫通孔から直接排気ポートに排出 されてしまうことを防止する。したがって、 混合気の無駄な排出を防止し、摺動面への混 合気の効率の良い供給が達成される。

 本発明の第4の態様は、第3の態様のエン ンにおいて、貫通孔は、シリンダー内或い シリンダーライナー内に混合気を流入させ ポート以外のシリンダー或いはシリンダー イナーの内壁面に対向する位置に設けられ いることを特徴とするエンジンにある。

 ここで、クランク室内に混合気を流入さ るポート及び/もしくは混合気を燃焼室へ送 るポートとは、クランク室内に混合気を流入 させる吸気ポート及び/もしくはクランク室 の混合気(霧化した混合燃料と空気とを混ぜ もの)を燃焼室に供給する掃気ポートを示す 。したがって、貫通孔を吸気ポート及び/も くは掃気ポートと重複する位置に設けると クランク室内の燃焼前の混合気が貫通孔を して吸気ポート及び/もしくは掃気ポートか 放出される可能性がある。となると潤滑油 しても用いるべき混合燃料が無駄に消費さ てしまうことから、吸気ポート及び/もしく は掃気ポートと重複しない位置、すなわち、 貫通孔は当該ポート以外でシリンダー内壁面 或いはシリンダーライナー内壁面に対向する 位置に設ける必要がある。

 かかる第4の態様では、ポートから混合気 が抜けてしまうガス抜けの発生を確実に防止 することが可能となる。

 本発明の第5の態様は、潤滑油が混合され た混合気が燃焼室に供給されるエンジンのピ ストンにおいて、シリンダー或いはシリンダ ーライナーの内壁面とピストンリング部分の 間に混合気を供給する供給経路を有すること を特徴とするピストンにある。

 ここで、供給経路とは、上記記載の供給 段と同様の構成をもつものを含める概念で り、混合気が供給される流路を示す。

 かかる第5の態様では、供給経路によりシ リンダーの内壁或いはシリンダーライナーの 内壁との間に潤滑油が混合された混合気を積 極的に供給することができる。

 すなわち、焼き付きや摩耗を防止するた の潤滑油を燃料に混合することで燃料自体 潤滑作用をもたらすが、さらに供給経路を けることでピストンの駆動作用に連動して ストンが下死点方向へ移動するときに混合 が圧縮されることを利用して自動的に混合 が摺動面に侵入するため、結果として駆動 は混合気を常時積極供給することとなり、 動面に油膜を確実に形成することができる

 本発明の第6の態様は、第5の態様のピス ンにおいて、供給経路として、筒部を貫通 る貫通孔を採用した構成にあることを特徴 するピストンにある。

 貫通孔は、ピストンの壁面を貫通した孔 あって、貫通孔の径、形状(例えば、円形、 楕円形若しくは四角形等又はテーパの有無( えば、内側から外側に向かって径が漸減す 形状を含む。)もしくは段差の有無、数及び 隔に限定はないが、好適には、貫通孔に傾 及びテーパはなく、略等間隔に設けるもの する。一方、貫通孔の加工位置にも限定は いが、好適には、排気ポート、掃気ポート び吸気ポートのいずれの経路口と重複しな 位置に穿設される。

 かかる第6の態様では、貫通孔が存在する ことにより、ピストンの内側からシリンダー 或いはシリンダーライナーとの摺動面に向か って、ピストンの駆動作用に連動して自動的 に混合気を積極的に供給することができる。

 本発明の第7の態様は、第1乃至第6のいず かの態様のピストンにおいて、貫通孔のシ ンダー或いはシリンダーライナーの内壁面 の開口からピストンリング部及び/もしくは ピストンリング部分に向かう溝部が筒部に形 成されていることを特徴とするピストンにあ る。

 溝部とは、ピストンの外側側面に設けた 所定の幅、所定長(数mm~全長)に亘る凹部も くは溝であって、設ける場所、幅及び長さ 法(例えば、筒部の最上部から最下部に至る での長さでもよい。)に限定はないが、好適 には貫通孔から上死点方向に設け、ピストン リングが挿入されている溝と直結している構 成とする。また、溝部の深さ寸法に限定はな いが、好適にはピストンリングが挿入されて いる溝よりも浅い(小さい)ものとし、具体的 は、例えば、ピストンリングが挿入されて る溝の深さ寸法が小径ピストンにおいて1.5m m~1.6mmである場合、溝部の深さ寸法は1mm未満 あることが好ましく、好適には0.5mm~0.8mm程度 の深さ寸法がよい。なぜなら、ピストンリン グが接しない溝部の面積を最小限に抑え、可 能な限りピストンリグが接する溝の下面部面 積を多くすることが好ましいからである。溝 部の幅はピストン表面貫通孔直径の幅が好ま しい。さらに、溝部の数に限定はないが、好 適には全ての貫通孔の貫通孔とピストンリン グ部分との間及びピストンリング部分とピス トンリング部分との間に設けることが好まし い。

 また、溝部は所定の製造方法で加工する とができ、詳細には、ボール盤やフライス によるドリル及びエンドミル加工、レーザ 加工或いはプレス加工による方法又はそれ の複合による方法で加工することができる さらに、製造方法に係る工程は2サイクルエ ンジン、ピストンの製造工程のいずれのタイ ミングであってもよいが、最適なリードタイ ムや歩留を実現し得るタイミングが好ましい 。また、上記において、「ピストンリング部 」とはピストンリングそのものを、「ピスト ンリング部分」とはピストンリングを外した 溝の部分を含めた箇所を指す。

 かかる第8の態様では、貫通孔を通ってシ リンダー或いはシリンダーライナーの内壁面 側に供給される混合気が溝部によってピスト ンリング部及びピストンリング部分に案内さ れるので、ピストンとの摺動面より広範囲な 領域に混合気を供給することができる。した がって、シリンダー或いはシリンダーライナ ーとピストン及びその周辺部材との摺動面の 潤滑、摩擦低減をより確実に達成することが できる。

 すなわち、ピストンの内側から貫通孔を して供給される混合気が、ピストン駆動(ピ ストンが下死点方向へ移動するときに混合気 が圧縮されること)を利用して、摺動面に浸 する(または、「いきわたる」もしくは「染 渡る」とも表現できる。)ので混合気に含ま れるオイル分が薄くても効果的に供給でき油 膜を形成することができると共に、浸透しき れない(余分な)混合気は、溝部に滞留する。 たがって、滞留した混合気を随時摺動面に 給することができる。また、ピストン駆動 より、混合気はリング溝部にも浸透するこ ができる。

 かかる本発明の2サイクルエンジンでは、 供給手段により、シリンダー或いはシリンダ ーライナーの内壁とピストンの筒部及びその 周辺部材との間に潤滑油が混合された混合気 が積極的に供給される。これにより、シリン ダー或いはシリンダーライナーとピストン及 びその周辺部材の摺動面は良好に潤滑され、 シリンダー或いはシリンダーライナーとピス トン及びその周辺部材の摺動面の焼き付きの 発生を抑制することができる。よって、今ま での2サイクルエンジンにピストンを加工、 いは加工されたピストンを使用することで に何ら手を加えることなく、実施すること できる(例外として、一部の機種で採用され いるコンロットベアリングに密閉式ベアリ グ(密閉式ベアリングに類するもの。)を使 したもの、シリンダーの各ポート間が極狭 ものは本発明の効果を達成できない場合が る)。

 すなわち、供給手段が、ピストンの側面 貫通する貫通孔である場合、エンジン内部 充満する混合気が、ピストンの内側から外 に吐出し、摺動面に油膜を形成するため、 合気が潤滑油による潤滑効果を助け、ピス ンの連続駆動にも耐え、摺動面の焼き付き 摩耗の発生を抑制することができる。

 また、貫通孔を排気ポート、掃気ポート び吸気ポートのうちいずれのポートにも対 しない位置に設けることで、貫通孔を介し 摺動面に供給する混合気を各種ポートから がすことなく、より確実かつ効率良く摺動 の焼き付きや摩耗の発生を抑制することが きる。

 また、供給手段として、ピストンの筒部 外側側面に溝部を設け、特に、溝部は貫通 とピストンリング部分及びピストンリング 間(貫通孔と直結するよう)に位置し、リン 溝部と直結する構成とすることで、溝部に 合気が滞留し、もしくは浸透しきれない(余 な)混合気をこの溝部に保持することができ る。すなわち、溝部によりピストン内側の空 間から貫通孔を通ってピストン筒部の外壁面 側に供給される混合気が上側(燃焼室側)に案 され、摺動面の潤滑される範囲はより拡大 る。また、かかる溝部を介して貫通孔より 上側(燃焼室側)に混合気が案内されること より、混合気が摺動面に滞留する時間(摺動 に供給されてから下方(クランク室側)に落 するまでの時間)は、貫通孔のみの場合より 長くなる。換言すると、貫通孔から供給さ た混合気が、より長い時間シリンダー或い シリンダーライナーとピストンの摺動面に まって潤滑することになる。また、燃焼室 燃焼が起こり、ピストンが下降(クランク室 側)し排気ポートより排気ガスが排出される 、ピストン内側からピストンリングへの排 ガスの圧力がなくなり、ピストンの下降に い、それまで排気ガスの圧力によってリン 溝部の下面部に接していたピストンリング 溝の上面部に移動する(接する)ため(排気ガ が排気ポートより排出されピストンリング ガス圧がなくなるため)、リング溝部の下面 に隙間が生じ、混合気が溝部を介してリン 溝部に供給される。したがって、ピストン 動の回転数や効率を下げることなく、極め 効率良く、確実に混合気を摺動面に供給す ことができる。また、2サイクルエンジンの ピストンリングの合い口が各ポート間にある ため貫通口とそこからの溝部を下死点方向に 設けることによりピストンリングの合い口の 隙間を利用してオイル分を含んだ混合気が浸 透しやすくなり、浸透し続けることとなる。

 さらに、本発明の2サイクルエンジンでは 、混合燃料における潤滑油の割合を低減して も、シリンダー或いはシリンダーライナーと ピストン及びその周辺部材の摺動面に積極的 に混合気が供給されるので焼き付きは生じに くい。したがって、混合燃料における潤滑油 の割合を低減できる。

 すなわち、位置を考慮しつつ貫通孔及び/ または溝部を設けることで、従来の混合燃料 の混合比率(具体的には、燃料と潤滑油の割 が20:1~25:1程度の比率を含む。)を格段に上回 比率を持つ混合燃料の場合であっても、摺 面の焼き付きや摩耗を防止することができ 。この点、従来においては、混合比率を厳 に守らなければ焼き付きや摩耗が発生し、 ンジン破損の原因になってしまうため、混 燃料を作成する際には細心の注意を払うこ を余儀なくされており、これを怠った場合 は故障等を発生したため、コスト高、管理 担が不可避であった。また、混合燃料の材 であるガソリンやオイルの質にも差異があ (具体的には、2サイクルオイルの1リットル たりの金額が高価なものや安価なもの、レ ュラーやハイオクの差異が存在することを む。)、質の劣悪にも気を配る必要があった 。しかし、本願においては、ガソリンと2サ クルオイルの割合が100:1の比率であっても摺 動面の焼き付きや摩耗を防止することができ 、かつ、ガソリンやオイルの質に影響をうけ ることがない。したがって、混合燃料費も抑 制することができ、管理負担を軽減すること もできる。又、2サイクルオイルを多消費す ことなく最大限有効に使用することができ 。一般に市販されている安価な2サイクルオ ルを使用して、ガソリンと2サイクルオイル の混合割合を略20:1~略100:1まで無段階で使用 ることができる。

 また、一般に、潤滑油には潤滑機能を高 るため様々な添加物が混入されており、従 の構成の2サイクルエンジンでは、こうした 潤滑油が燃焼することにより発生する有害な 排気ガスの量が比較的多かったが、本願によ れば、混合比率が極めて低いため、燃焼され る潤滑油の量も減少する。したがって、発生 する人体及び環境に有害な排気ガスの量も減 少させることができ、環境への悪影響を最小 化することが達成される。

 さらに、本願によれば、潤滑油の混合比 が低いため、排気ガスの排気口に付着する 垂れの蓄積を防ぐことができ、効率の良い 気をすることができる(混合気に含まれる2 イクルオイルの量が多いと完全燃焼しきれ 、オイル分がベトベトの煤状となって排気 より垂れ流れ出る)。すなわち、ガソリンの 度が高く、排気ガスに不純物が少ないため 排気口には油垂れ等の不純物が堆積するこ がなくなるか、もしくは最小限に軽減され 。したがって、効率の良い排気が実現する め、クランク内への吸気効率の向上が実現 る。総じてエンジン効率の向上にも資する

 またさらに、本願によれば、潤滑油の混 比率が低いため、従来一般に市販されてい 潤滑油を使用しても点火プラグに燃焼後に ずるカーボンが付着する「かぶり」と称さ る事象が発生し難くなるという効果を奏す 。それと共に、燃焼ガスが排気されるマフ ーにカーボンが堆積してエンジンの回転が 昇しなくなったりエンジンが不調となった してしまう事態を防止することができる。( 某メーカーの取扱説明書には100時間使用毎に マフラーを外してカーボンを落としてくださ いと記載されているが、本発明を実施するこ とで、このようなことは全く不要となり、維 持管理時間を節約することができる。)

 また、本願によれば、混合燃料の2サイク ルオイルの量が今までよりも仮令低い方へ間 違ったとしても焼き付きや摩耗を防止するこ とができる。

 なお、本願に係る貫通孔や溝部は簡単な 成であるため、製造方法も複雑ではなく、 来の2サイクルエンジンの製造工程に貫通孔 や溝部を加工する工程を付加するだけでよく 、製造コストも廉価であるため、製造面での エネルギー消費量も抑制することができる。

 また、本発明のピストンでは、供給経路 より、ピストンとの摺動面に積極的に潤滑 が混合された混合気を供給することができ 。

 すなわち、ピストンのみに着目し、ピス ンが貫通孔及び/または溝部を含み、摺動面 に混合気を供給することができる供給経路を 有することで、上記2サイクルエンジンに係 本願の供給手段と同様の効果を得ることが きる。

本発明の実施形態1の2サイクルエンジ の概略図である。 本発明の実施形態1の2サイクルエンジ の概略図である。 本発明の実施形態1に係る貫通孔21を設 たピストン2を斜め上方向から見た外観斜視 図(a)及び貫通孔21を含んで断面視した断面図( b)である。 本発明の実施形態1に係る貫通孔21及び 部30を設けたピストン2を斜め上方向から見 外観斜視図(a)及び貫通孔21及び溝部30を含ん で断面視した断面図(b)である。 本発明の実施形態1に係るピストン2が 昇中に起こる混合気18の流れを示した概略 である。 本発明の実施形態1に係るピストン2下 時の混合気18に含まれる潤滑油18-1の流路を した概略図である。 本発明の実施形態1に係るピストン2の 降直後におけるピストンリング31の挙動と 滑油18-1の流路との関係を示す図4BのX部の拡 図である。 本発明の実施形態1に係るピストン2の 降における所定時間経過後のピストンリン 31の挙動と潤滑油18-1の流路との関係を示す 4BのX部の拡大図である。

 以下、図面を参照して本発明を実施する めの最良の形態について説明する。なお、 下では、本発明の目的の達成のために説明 必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当 分の説明に必要な範囲を主に説明すること し、説明を省略する箇所については公知技 によるものとする。

 図1A及び図1Bは、本実施形態に係る2サイ ルエンジンの概略図である。図1Aに係る2サ クルエンジンと図1Bに係る2サイクルエンジ は、排気ポート14、掃気ポート15及び吸気ポ ト19の位置や向きが異なる点を除いて機能 動作原理は同様であるため、重複する部分 ついての説明は一方の説明をもって省略す 方の説明に換えるものとする。

 図1Aに示すように、本実施形態の2サイク エンジン1は、ピストン2と、ピストン2を収 するシリンダー本体3と、混合燃料を貯留す る燃料タンク4と、混合燃料を霧化するキャ レタ5と、外気を吸入するエアクリーナー6と を少なくとも具備して構成される。混合燃料 は、作業員がガソリン等の燃料と各部材を潤 滑する潤滑油とを所定割合で混合することで 作製する。なお、図1Aは本願の概要を理解し すくする目的のもと、各構成部分及びその 合せを模式的に示したものである。したが て、同図においてはたとえば、排気ポート1 4、掃気ポート15、吸気ポート19が同一断面上 存在するかのような図となっているが、実 には同一断面にはない場合もあり、たとえ 、排気ポート14と吸気ポート19とが平面的( 方向)に180°ずれていたり、排気ポート14と掃 気ポート15とが平面的(周方向)に略90°ずれて たりする構成であってよく、これら総てが 願の実施形態に含まれる。図1Bは、排気ポ ト14、掃気ポート15、吸気ポート19の別の配 態様に係る本実施形態の2サイクルエンジン1 の断面を示すものであり、排気ポート14と吸 ポート19とは平面的(周方向)に略180°ずれ、 気ポート14と掃気ポート15とが略90°ずれて 設される構成を示している。

 ピストン2は、コンロッド7の一方端側と 結され、シリンダー本体3のシリンダー8内に シリンダー8の軸方向に沿って摺動可能に収 されている。なお、ピストン2の筒部9にはリ ング溝部10が設けられており、シリンダー本 3の後述する燃焼室11側の空間とクランク室1 2側の混合気の気密性を高めるとともに、シ ンダー8の壁面に接して圧縮ガス漏れを防止 る機能を有する輪状のピストンリングが、 ング溝部10に嵌装されている。図中ではピ トンリングは省略している。

 シリンダー8の上方には、混合気が燃焼さ れる燃焼室11が設けられている。燃焼室11に 点火プラグ13が設けられており、燃焼室11内 流入した混合気は点火プラグ13から生じる 花により燃焼する。

 また、シリンダー8の下方には、クランク 室12が設けられている。クランク室12には、 ランクシャフト16が回転可能に収容されてい る。また、クランクシャフト16のピン部17に ンロッド7の他方端側が連結されている。

 燃焼室11付近には、燃焼室11で燃焼された 燃焼ガスをシリンダー本体3外部へ排出する 気ポート14が設けられている。排気ポート14 は図示しない排気管が連結されている。排 ポート14は、ピストン2が上死点(上限)にあ 際にピストン2の筒部9で閉口される位置で、 かつ、ピストン2が下降する際に、燃焼室11側 の空間において、後述する掃気ポート15の開 よりも早く開口が露出する位置に設けられ いる。かくして燃料室で燃焼した燃焼ガス 、排気ポート14、排気管を通って大気中に 出される。

 また、シリンダー8において排気ポート14 下方には、クランク室12内にキャブレタ5で 化された混合燃料とエアクリーナー6で吸入 された空気とが混合された混合気18を流入さ る吸気ポート19が開口して設けられている 吸気ポート19は、一方側がキャブレタ5に連 された吸気管20の他方側に接続されている。 これにより、エアクリーナー6で吸入された 気がキャブレタ5内で混合燃料と混合され、 気と混合燃料との混合気18がクランク室12内 に流入する。なお、混合気18はクランク室12 に流入する前に、一度シリンダー8内に流入 る。すなわち、吸気ポート19は、シリンダ 8内に混合気を流入させるポートでもある。

 また、シリンダー本体3には、クランク室 12側の空間と燃焼室11側の空間とを、シリン ー8とは別の経路で連通させる掃気ポート15 設けられている。掃気ポート15の燃焼室11側 開口は、シリンダー8において、排気ポート 14よりも下側に設けられており、吸気ポート1 9よりも上側に設けられている。掃気ポート15 により、クランク室12内の混合気18は、シリ ダー8の燃焼室11側の領域内に流入した後、 リンダー8に連続して設けられた燃焼室11に 入する。すなわち、掃気ポート15は、シリン ダー8内に混合気を流入させるポートでもあ 。

 ここで、図2及び図3を参照して、ピスト について説明する。

 図2(a)は本願の一実施形態に係る貫通孔21 設けたピストン2を斜め上方向から見た外観 斜視図であり、(b)は貫通孔21を含んで断面視 た断面図である。

 図2(a)及び(b)に図示するように、本実施形 態のピストン2には、筒部9を貫通する貫通孔2 1が穿設されている。本実施形態のピストン2 おいて、貫通孔21は筒部9の外側から内側へ るまで一定の径で設けられている。また、 通孔21は、2サイクルエンジン1の排気ポート 14、掃気ポート15、及び吸気ポート19以外のシ リンダー8の内壁面に対向する位置、具体的 は2サイクルエンジン1に配設されたときに各 ポート(排気ポート14、掃気ポート15及び吸気 ート19)に対して周方向でずれた位置に設け れている。なお、貫通孔21は、ピストン2の 度低下が許容できる範囲内でいくつ設けら ていても構わない。

 すなわち、貫通孔21とは、ピストンを貫 する孔もしくは切欠部であって、貫通孔21の 径、形状(例えば、円形、楕円形若しくは四 形等、又はテーパ(例えば、内側から外側に かって径が漸減する形状を含む。)もしくは 段差の有無、その他貫通を可能にするあらゆ る形状)、数及び間隔に限定はないが、貫通 21に傾斜及びテーパを設けずに略等間隔に穿 設することが好ましい。一方、貫通孔21の加 位置にも限定はないが、排気ポート14、掃 ポート15及び吸気ポート19のいずれの経路口 重複しない位置に加工するのが好ましい。

 詳細には、リング溝部10に貫通孔21を設け ると(図示しない)、ピストンリング付近で圧 ガス漏れが発生し始動不能となる可能性が るため、及びピストンの壁厚によっては材 欠損を招きかねない点から好ましくない。 た、リング溝部10の下面部(図示しない)から 傾斜を持たせて貫通孔21を設けることは製造 法が困難であるため、小径なピストンには 通孔21を設けることは好ましくない。しか 、これらの点が是正される別途手段を設け 場合には、貫通孔21の穿設位置、加工位置に ついては上記位置であってもよい。さらに、 所定の位置に貫通孔21を一つのみ単独に設け としても、混合気の摺動面への供給不足が じるため好ましくなく、複数設けるのが望 しいが、孔の径によっては単独であっても 滑効果に支障をきたさずに所望の効果を発 できる場合もある。以上を纏めると、所望 効果を得るためには、然るべき径、形状、 及び間隔を有する貫通孔21を設ける必要が る。

図3(a)は本願の別の一実施形態に係る貫通 21及び溝部30を設けたピストン2を斜め上方向 から見た外観図であり、(b)は貫通孔21及び溝 30を含んで断面視した断面図である。

 図3(a)及び(b)に図示される態様においては 、貫通孔21の上部に溝部30を設け、さらに溝 30はリング溝部10と直結している。溝部30の さ寸法に限定はないが、(b)に示すとおり、 適にはリング溝部10よりも浅く(小さく)、具 的には、例えば、リング溝部10の深さ寸法 1mmである場合、溝部30の深さ寸法は1mm未満で あることが好ましく、好適には0.5mm~0.8mm程度 深さ寸法がよい。これは、点線で示すピス ンリング31が接しないリング溝部10の下面部 面積を最小限に抑え、可能な限りリング溝部 10の下面部面積を多くすることが好ましいか である。さらに、溝部30の数に限定はない 、好適には全ての貫通孔21の上部に設けるこ とが好ましい。

 上述したような2サイクルエンジン1では ピストン2が上昇することで、燃焼室11の内 に存在する混合気18が圧縮される。このとき 、クランク室12側の空間において吸気ポート1 9の開口が露出し、吸気ポート19からクランク 室12内に混合気18が流入する。そして、ピス ン2が上死点(上限)に達したときに、燃焼室11 に設けられた点火プラグ13が火花を生じさせ 。この火花により燃焼室11内の混合気18が爆 発・膨張し、混合気18が燃焼した後の燃焼ガ の膨張力によってピストン2が下降する。

 そして、ピストン2が下降し、燃焼室11側 空間において排気ポート14の開口が露出さ ると、燃焼ガスが排気ポート14からシリンダ ー本体3外部へ排出される。このとき、ピス ン2の下降によりクランク室12側の混合気18が 圧縮される。さらにピストン2が下降し、燃 室11側の空間において掃気ポート15の燃焼室1 1側の開口が露出されるとすると、クランク 12側の空間と燃焼室11側の空間とが掃気ポー 15で連通される空間内に流入すると同時に 燃焼室11側の空間内に残留した燃焼ガスを排 気ポート14からシリンダー本体3外部に押し出 して排出させる。これにより、燃焼室11側の 間内は全て未燃焼の混合気18で満たされる そして、下死点(下限)まで下降したピストン 2は上昇を開始し、再び圧縮、燃焼・膨張、 気(吸気)工程を繰り返す。すなわち、実際の エンジンにおいて、ピストン2が下降し吸気 ート19下部にピストン下部が達したときから 混合気の圧縮が開始され、ピストンリングの 合い口の隙間及びピストンリング部より浸透 し排気ポート14より排気ガスが排出され、掃 ポート15より混合気が出る直前に圧縮が最 化されることとなる。

 次に、図4A、図4B、図4C及び図4Dを参照し 混合気18の流れを説明する。

 図4Aは、ピストン2が上昇中に起こる混合 18の流れを示した概略図である。図4Aに図示 するように、上述した2サイクルエンジン1の 転に伴う一連の各部材の動作の際、クラン 室12側の空間の混合気18は、クランクシャフ ト16の回転等に伴って上昇し、ピストン2の内 側から貫通孔21を通ってシリンダー8の内壁面 に吐出する。すなわち、ピストン2に設けら た貫通孔21が、シリンダー8の内壁とピスト 2の筒部9との間に混合気を供給する供給手段 として機能し、ピストンの駆動作用に連動し て自動的に混合気がシリンダー8とピストン2 摺動面に積極的に供給される。これにより シリンダー8とピストン2の摺動面を良好に 滑することができ、シリンダー8とピストン2 の摺動面の焼き付きの発生を抑制することが できる。

 図4Bは、ピストン2下降時の混合気18に含 れる潤滑油18-1の流路を示した概略図である 図4Bに図示するように、ピストン2が上限に 達後、燃焼室11内の混合気18が爆発・膨張し 、混合気18が燃焼した後の燃焼ガスの膨張力 よってピストン2が下降すると、燃焼ガスの 膨張力による押し出しによって貫通孔21から 出した混合気18に含まれる潤滑油18-1は貫通 21を介して溝部30に湧出する。或いは、摺動 面に対して浸透しきれない(余分な)潤滑油18-1 は、溝部30に滞留する。これは、ピストン2は 下向きに高速移動する一方で潤滑油18-1は燃 ガスの膨出力によってその向きの力を受け 結果、摺動面より凹んでいる溝部30に滞留す ることになるためである。貫通孔21の上部の 部30に直結するリング溝部10(以下、「第一 リング溝部10」ともいう。)の下面部が排気 ート14の内側の下面部を通過後、第一のリン グ溝部10が掃気ポート15の内側の上面部到達 において、ピストンリング付近が密閉状態 なり圧縮されるため、その間に最も混合気 浸透する。

 図4Cは、ピストン2の下降直後におけるピ トンリング31の挙動と潤滑油18-1の流路との 係を示す図4BのX部の拡大図である。同図に 示するように、このときピストンリング31 リング溝部10の下面部に接しているため、潤 滑油18-1はリング溝部10に流入しきれない。一 方、図4Dは、ピストン2の下降における所定時 間経過後のピストンリング31の挙動と潤滑油1 8-1の流路との関係を示す図4BのX部の拡大図で ある。図示するように、ピストン2の下降に い、それまで排気ガスの圧力によってリン 溝部10の下面部に接していたピストンリング 31がリング溝部10の上面部に移動する(接する) ため、リング溝部10の下面部に隙間が生じ、 滑油18-1がリング溝部30を介してリング溝部1 0に供給される。したがって、リング溝部10を 介してシリンダー8の摺動面に潤滑油18-1は供 されるため、ピストン駆動の回転数や効率 下げることなく、極めて良好、確実かつ効 よく混合気を摺動面に供給することができ 。

 上述したように構成された本実施形態の2 サイクルエンジン1及びピストン2によれば、 通孔21により、混合気がシリンダー8とピス ン2の摺動面に積極的に供給される。つまり 、潤滑油の混合割合が従来と同じ混合燃料を 使用する場合、従来の構成に比べて、シリン ダー8とピストン2の摺動面には単位時間当た により多くの潤滑油の割合を低減させるこ ができる。低減させても、シリンダーとピ トンの摺動面には、焼き付きが生じない十 な量の潤滑油が供給されるからである。し がって、本実施形態によれば従来よりも潤 油に係るコストを大幅に低減できる。

 なお、従来の構成ではガソリンと市販さ ている安価な潤滑油の割合は20:1~25:1にしな ればならなかったが、本発明者が実際に本 施形態、具体的には直径及び高さが約32mmで 貫通孔21の直径が約4mmであるピストン2を有す る2サイクルエンジン1で実験したところ、ガ リンと潤滑油の割合を120:1にしても、シリ ダーとピストンの摺動面が焼き付きを起す とはなく良好に使用できることを確認した

 一般に、潤滑油には潤滑機能を高めるた 様々な添加物が混入されており、従来の構 の2サイクルエンジンでは、こうした潤滑油 が燃焼することにより発生する有害な排気ガ スの量が比較的多かった。

 この点で、本実施形態によれば、混合燃 における潤滑油の割合を低減させることが き、実際に低減させることにより、燃焼室1 1内に浸入して燃料と共に燃焼される潤滑油 量も減少する。したがって、発生する人体 び環境に有害な排気ガスの量も減少させる とができる。

 また本実施形態のピストン2の貫通孔21は 燃焼室11で燃焼された燃焼ガスを排気する 気ポート14以外のシリンダー8の内壁面に対 して設けられている。これにより、ピスト 2がシリンダー8の内壁を摺動する際に、未燃 焼の混合気が貫通孔21を通って直接排気ポー 14へ排出されてしまうことを防止すること できる。

 さらに、本実施形態のピストン2の貫通孔 21は、シリンダー8内に混合気を流入させるポ ート以外のシリンダー8の内壁面、具体的に 吸気ポート19及び掃気ポート15以外のシリン ー8の内壁面に対向して設けられている。こ れにより、各ポートから混合気18が漏出して まうガス抜けの発生を確実に防止できる。

 また、本実施形態によれば、混合燃料に ける潤滑油の割合を低減することができる そして、実際に低減することにより、燃焼 11内に浸入する潤滑油の量も減少する。こ により、従来一般に市販されている潤滑油 使用しても点火プラグ13に燃焼後に生ずるカ ーボンが付着する「かぶり」と称される事象 が発生し難くなるという効果を奏すると共に 、燃焼ガスが排気されるマフラーや排気ポー トにカーボンが堆積してエンジンの回転が上 昇しなくなったりエンジンが不調となってし まう事態を防止することができる。(某メー ーの取扱説明書には、100時間使用毎にマフ ーを外してカーボンを落としてください、 記載されているが、本発明を実施すること このようなことは全く不要となり、維持管 時間を節約することができる。)

 以上、本発明の各実施形態について説明 たが、本発明の構成は上述したものに限定 れるものではない。すなわち、上述した実 形態では、ピストンの筒部9に設けられた貫 通孔21又は溝部30が、シリンダーとピストン 摺動面に混合気を供給する供給手段である を示したが、シリンダーとピストンの摺動 に混合気を供給する機能を果たすのであれ 、供給手段はこれに限定されるものではな 。

 また、上述した各実施形態では、予め燃 と潤滑油とを混合した混合燃料を使用する 成を示したが、本発明はこれに限定されず クランク室12内に別々に燃料と潤滑油とが 入する構成の2サイクルエンジンにおいても 果を奏するものである。

 さらにまた、本願発明を用いて生産され 生産品及び/又は方法が、その2次的生産品 登載されて商品化された場合であっても、 願発明の価値は何ら減ずるものではない。

 本発明に係るエンジン及びピストンに係 技術思想は、その本質から、草刈機やチェ ンソーに限らず、ガソリン車やディーゼル を含む4サイクルエンジン搭載の自動車や2 イクルエンジン搭載の自動二輪車その他小 機械等のエンジンにも適用することができ 。

 ガソリンやディーゼルを利用する環境対 車も、正常なエンジンの圧縮があって初め 成り立つものであるといえる。そこで、化 燃料を使用するエンジンを搭載する車にお て、燃費を大幅に改善する残された唯一の 段は、熱効率を上げること(すなわち、一定 の燃料を燃焼させたときに、どれ位動力とし て取り出すことができるかを表したもの)で り、圧縮を可能な限り向上させ、小規模エ ジンで最大限のトルクを得ることができる ンジンを実現することが環境対策として最 である。従来は、出力を向上させるため排 量の大きなエンジンを搭載しているが、エ ジンを大きくすればするほど、エンジンを 載可能な必要容積が巨大化し、重量が増す め、燃料消費量が増加し、燃費が悪化して まうことになる。

 現在、ガソリン車の熱効率は14~20%、ディ ゼル車の熱効率は38~40%で、残りの分は全て になったり、排気ガスとして排出されたり る。1リットル当たり100円のガソリンの場合 、動力として取り出せるのはせいぜい20円分 、残り80円分は熱や排ガスになっていると うのが現状である。したがって、熱効率を 上することができれば、燃料にかかるコス は現在の価格に比べて3分の1~4分の1になるこ とも可能であると考えられる。また、エンジ ンの圧縮を1.5倍にするとトルクは2倍以上と る。例えば、ガソリン車で、ガソリンのオ タン価が同じ場合、ノッキングが発生する ともある。一方、ディーゼル車の場合、デ ーゼルノックが大きくなる等の問題はある 、燃焼室直接噴射や瞬時に燃料をきめ細か コントロールするピエゾインジェクターや モンレール方式により解決されている。

 一方で、エンジンのピストンリングは、 縮率を1.5倍にすると、圧縮力がピストンの 側からピストンリングがシリンダー或いは リンダーライナー面へ、従来と比較して略1 .5倍強力に押し付けることとなるため、摺動 に油膜を形成することによる効果はさらに 大なものとなる。仮にシリンダーライナー いはシリンダーが摩耗した場合、ピストン ングも摩耗していることが多く、ピストン ングの合い口の隙間をさらに大きくし、高 となった燃焼ガスのエンジンのクランクケ スへの吹き抜けが増大する。

 高温となった燃焼ガスの吹き抜けは、ク ンクケースのエンジンオイルを劣化させ、 らに一部は油煙となり、増大したブローバ ガス(クランクケースに吹き抜けた燃焼ガス )がエンジンの吸気側へ送られたとき、内部 オイルにより粘着質になってしまう。さら 、ピストンが下死点方向へ移動し最下部へ したときにはエンジンのクランクシャフト よってエンジンオイルがピストン側へ汲み げられ、摩耗したシリンダーライナーと、 くなったピストンリングの合い口を通り、 焼室へエンジンオイルが上がり、さらにオ ルの消費増大となる。したがって、摩耗は 悪循環の繰り返しの原因となり得る。

 総じて、本願によれば、摺動面の焼き付 や摩耗を抑制する油膜を形成するための種 の供給手段、具体的にはピストンの貫通孔 び/または溝部を設けることで、混合燃料の 混合比率を大幅に低下させ、摺動面に随時混 合気の供給による油膜を生成することができ る。こうすることで、熱効率も向上し、燃費 の低下が実現し得る。したがって本願の技術 思想によれば、究極的には、4サイクルエン ンや2サイクルエンジンを搭載する自動車や 動二輪車を環境対策車として確立すること 繋がる。

 さらに、環境対策車だけでなく、エンジ を駆動源とするものであれば、例えば、寒 地仕様の自動車、船舶、船外機、スノーモ ビルその他の機械、乗り物、草刈機やチェ ンソー等の産業機械、器具等にも本願の技 思想は適用することができる。

 本願では、エンジンのシリンダー及びシ ンダーライナーとピストン及びピストンリ グ間に供給手段により積極的にエンジンオ ルを供給して油膜を確実に確りと形成し続 ることで相対する物質間の摩擦がなくなり 新品時のエンジンの燃焼室の圧縮を恒久的 持続させることができる。

 4サイクルエンジンのピストンリング下部 面全周にエンジンオイルの供給手段が設けら れた場合、摩耗以前においては、エンジンオ イルはピストンの往復運動によりピストンリ ングの僅かな隙間が移動することにより、ピ ストンリング周り、シリンダー及びシリンダ ーライナー面への供給は、適度に適量自動的 に確り供給され続け油膜を形成して摩耗を極 力低減することができる。エンジンオイルの 供給手段を設けることにより高価なエンジン オイルも必要としない。

 現在使用されているエンジンの場合、高 なエンジンオイルを使用しても、長い間摩 を防止することは困難であり、このことは 状を見れば明らかである。現在使用されて るエンジンにおいては、走行距離が10万km前 後でエンジンオイル消費量が増加し、エンジ ンオイル交換目安とされる5千km使用ではエン ジンオイルレベルゲージに全くエンジンオイ ルが付かない程摩耗したエンジンが多々見ら れる。

 そうしたエンジンの燃焼室の圧縮力は、 常な場合より1kg~2kgは必ず落ちているのが通 例である。

 本発明の一実施形態に係るエンジンの油 確立対策車においては、通常と同条件下の7 年間のテストにおいてエンジンのシリンダー ライナー、ピストン、ピストンリングが殆ど 摩耗することなく使用できている。

 ピストン周りの摩耗を防止し燃焼室の圧 力を保つことは、寒冷時のエンジンの始動 容易に確実に、そして始動後は、今までの うに燃料を増大させたり、噴射量を多くし 回転数の安定維持をしていたが、寒さに左 されず、安定した回転数とパワー(特にトル ク)を持続させ燃費の悪化を防止することが きる。

 本願によれば、シリンダー或いはシリン ーライナーとピストン及びその周辺部材の 動面は良好に潤滑され、シリンダー或いは リンダーライナーとピストン及びその周辺 材の摺動面の焼き付きの発生を抑制するこ ができるので、総じて、4サイクルエンジン や2サイクルエンジンを搭載する自動車や自 二輪車のみならず、エンジンを備える機械 1つである草刈機やチェーンソー等の産業機 全般に対して利用可能性を持つ。

 さらに、エンジンを駆動源とするもので 例えば、寒冷地仕様の自動車、船舶、船外 、スノーモービルその他のあらゆる機械、 具にまで影響を及ぼすものであるため、国 における環境問題にとどまらず、産業界全 を巻き込み、諸外国を含む新たな駆動源の 直しの契機となりうる点で、自動車産業、 舶業、農業、農機具産業、建設業を含めて く社会全般に大きな利用可能性、有益性を たらすものである。