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Patent Searching and Data


Title:
FERRITIC STAINLESS STEEL
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/139355
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a ferritic stainless steel suitable as a heat exchange material for Ni brazing or Cu brazing, containing in mass%, C: 0.03% or less, Si: 3% or less, Mn: 2% or less, P: 0.05% or less, S: 0.03% or less, CR: 11 to 30%, Nb: 0.15 to 0.8%, and N: 0.03% or less, with the remainder comprising Fe and unavoidable impurities, and for which the value A is 0.10 or higher. A = Nb – (C x 92.9/12 + N x 92.9/14)

Inventors:
KAWANO AKINORI (JP)
MIZOGUCHI TAICHIROU (JP)
TOMIMURA KOUKI (JP)
HARADA WAKAHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058778
Publication Date:
November 19, 2009
Filing Date:
May 11, 2009
Export Citation:
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Assignee:
NISSHIN STEEL CO LTD (JP)
KAWANO AKINORI (JP)
MIZOGUCHI TAICHIROU (JP)
TOMIMURA KOUKI (JP)
HARADA WAKAHIRO (JP)
International Classes:
C22C38/00; C21D9/46; C22C38/38; C22C38/58; F28F21/08
Domestic Patent References:
WO2009084526A12009-07-09
Foreign References:
JP2642056B21997-08-20
JPH034617B21991-01-23
JP2642056B21997-08-20
Other References:
See also references of EP 2280090A4
Attorney, Agent or Firm:
INABA, Yoshiyuki et al. (JP)
Yoshiyuki Inaba (JP)
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Claims:
 質量%で、
C:0.03%以下、
Si:3%以下、
Mn:2%以下、
P:0.05%以下、
S:0.03%以下、
Cr:11~30%、
Nb:0.15~0.8%、
N:0.03%以下
を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
下記A値が0.10以上であるフェライト系ステンレス鋼。
 A = Nb - (C×92.9/12 + N×92.9/14)
 質量%で、
C:0.03%以下、
Si:3%以下、
Mn:2%以下、
P:0.05%以下、
S:0.03%以下、
Cr:11~30%、
Nb:0.15~0.8%、
N:0.03%以下
を含有し、
残部がFeおよび不可避的不純物からなり、Tiの含有量(モル)がCとNの含有量(モル)の合計より多く、
下記A’値が0.10以上であるフェライト系ステンレス鋼。
 A’ = Nb - C×(92.9/12)/2
 さらに、Mo、Cu、VおよびWの1種以上を合計4%以下の範囲で含有する請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼。
 さらに、Ti、Alの1種以上を合計0.4%以下の範囲で含有する、請求項1~3いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
 さらに、NiおよびCoの1種以上を合計5%以下の範囲で含有する請求項1~4のいずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
 CおよびNの合計含有量が0.01%以上である請求項1~5いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
 Siの含有量の下限値が0.1%を超える請求項1~6いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
 熱交換器部材製造用又はトーチろう付け部材製造用である請求項1~7いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼。
 析出物の最大径dが0.25μm以下で、析出物の体積率fが0.05%以上である、 請求項1~8いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼からなる鋼板。
 請求項1~9いずれかに記載のフェライトス系テンレス鋼からなる鋼板を含むステンレス鋼接合体であって、前記鋼板がろう付けされている、ステンレス鋼接合体。
 請求項1~10いずれかに記載のフェライト系ステンレス鋼を用意する工程と、
 巻取温度を750℃未満として熱間圧延を行う工程と、
 昇温過程における600℃から最高到達温度Tmまでの平均昇温速度を10℃/s以上、却過程における最高到達温度Tmから600℃までの平均冷却速度を10℃/s以上として仕上焼鈍を行う工程と、
 を含む、フェライト系ステンレス鋼板の製造方法。
Description:
フェライト系ステンレス鋼

 本発明は、ろう付けを施す部材に用いる に適したフェライト系ステンレス鋼に関す 。さらに、本発明は、熱交換器を構成する 材として用いるのに特に適したフェライト ステンレス鋼に関する。

 熱交換器は排熱されたガスを有効に再利 する目的で、ガス給湯器やエコキュート缶 の熱交プレートなどさまざまな分野で使用 れている。ガス給湯器の場合は、排熱ガス 成分が凝縮して硝酸、硫酸ならびに塩素が 在した液が発生し、熱交プレートでは液/液 の熱交換で液体中の高塩素濃度で耐食性が懸 念される部位である。また、部品の接合にNi うやCuろうを使用しており、ろう付け時の 織粗大化に起因した延性・靭性回避が必要 ある。従来、このような耐食性とろう付け が要求される部材には、銅や銅合金が用い れている。しかし、銅は強度が低いため、 度を高めるためには、部材を厚肉化する必 があり、コストが上昇するという問題があ 。このような背景から、熱交換器鋼製部材 は、銅の代替としては、これまではSUS304やSU S316などのオーステナイト系ステンレス鋼が いられてきた。

 ろう付けを施す部材には、以下のような特 が要求される。
(1)Niろう付け性やCuろう付け性、さらには安 な黄銅ろう等を用いたトーチろう付け性等 各種ろう付け性が良好であること。
 さらに、ろう付けを施す部材が、熱交換器 材(冷媒配管や水配管)等の金属部材である 合には、以下のような特性も要求される。
(2)燃焼ガスから排出される凝結水での硝酸や 硫酸環境での耐食性や塩素濃度が高い水環境 での耐すきま腐食などの耐食性が良好である こと。
 これらの特性を有し、良好なろう付け性を つ材料として、特許2642056号ではフェライト 系ステンレス鋼の使用が検討されている。

特許2642056号公報

 フェライト系ステンレス鋼は、熱膨張係 がオーステナイト系鋼種よりも小さく、ま 、材料コストも一般にオーステナイト系鋼 より安価である。自動車の排ガス経路の排 回収部材やマフラー部材にはフェライト系 テンレス鋼が多く使用されている。しかし NiろうやCuろう付け、トーチろう付け等のろ う付けを施す場合には、材料を1000℃以上の 温に曝す必要があるところ、このような高 では、通常、フェライト系ステンレス鋼は ーステナイト系ステンレス鋼に比べて拡散 起こりやすく、結晶粒粗大化による延性や 性の低下を招きやすい。

 前記特許2642056号公報には、ろう付け性の 良い熱交換器用フェライト系ステンレス鋼が 開示されている。しかし、ろう付け時の結晶 粒粗大化や水環境でのすきま腐食については 意図されていない。

 本発明は、NiろうやCuろう付け、黄銅ろう 等を用いたトーチろう付け等のろう付けに供 される部材として好適なフェライト系ステン レス鋼を提供しようとうものである。さらに 、本発明は、ろう付け性に加えて、高塩素濃 度の水の存在する環境における耐食性も兼ね 備えた、熱交換器部材等の金属部材の材料と して好適なフェライト系ステンレス鋼を提供 することを目的とする。

 上記目的は、質量%で、C:0.03%以下、Si:3%以下 、Mn:2%以下、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cr:17~26% Nb:0.15~0.8%、N:0.03%以下であり、残部の主成分 Feおよび不可避的不純物からなり、
固溶Nb量を表す下記A値が0.10以上
 A = Nb - (C×92.9/12 + N×92.9/14)
であることを特徴とする、
フェライト系ステンレス鋼を適用することに より、達成される。
 また、フェライト系ステンレス鋼中の析出 の最大径dが0.25μm以下、析出物の体積率fが0 .05%以上であることが好ましい。
 上記フェライト系ステンレス鋼には、その 必要に応じて、
(1) Mo、Cu、VおよびWの1種以上を合計4%以下の 囲、
(2) Ti、Alの1種以上を合計0.4%以下の範囲、
(3) NiおよびCoの1種以上を合計5%以下の範囲
(4) REM(希土類元素)およびCaの1種類以上を合 0.2%以下の範囲、
でそれぞれ選択的に含有することができる。
 なお、ステンレス鋼がTiを含有する場合、 溶Nb量は下記A’値で表されるので、A’値が0 .10以上であればよい。
  A’ = Nb - C×92.9/2/12

 本発明によれば、NiろうやCuろう付け性、 ガス凝縮水での耐食性や水環境での耐隙間腐 食性ならびに延性・靭性の良好なフェライト 系ステンレス鋼が提供できる。この鋼を用い ることにより、オーステナイト系ステンレス 鋼を部材に用いていた従来の熱交換器部材に 比べ材料コストの低い熱交換器が実現される 。

ろう付け試験片の外観を示す図である 凝縮水試験の条件を示す図である。 トーチろう付けを行う際の試験片の重 方を示す図である。

 上述のように、熱交換器部材等の各種部 のコスト低減のためにはフェライト系ステ レス鋼の採用が有利となる。しかし、フェ イト系ステンレス鋼を使用する場合はガス 縮水環境での耐食性や水環境での耐すきま 食性が懸念される。また、NiやCuろう付け、 黄銅ろう等を用いたトーチろう付けを行う場 合には、1000~1150℃程度の高温に保持されるこ とから、結晶粒の粗大化を抑制するための成 分設計が重要である。すなわち、フェライト 系ステンレス鋼は、このような高温に保持さ れると、結晶粒が成長し粗大化する傾向にあ る。ステンレス鋼中の結晶粒が粗大化すると 、疲労特性が低下し、振動や外部からの衝撃 等により損傷を受けやすくなる。本発明者ら が研究したところによると、このような問題 を回避するためには、フェライト結晶粒の平 均粒径が500μmを超えないことが必要であるこ とが分かった。したがって、ろう付けを施す ことが想定される用途に用いる場合、フェラ イト系ステンレス鋼の組成を、高温において も結晶粒が成長しないようなものに設計する 必要がある。

 フェライト系ステンレス鋼のガス凝縮水 境での耐食性や水環境での耐すきま腐食性 固溶Nbが有効に働くことを発明者らは見出 た。ステンレスが腐食によるステンレス表 を覆っている不動態皮膜が破壊されたとき 、Nbは不動態皮膜の修復能力が高いことを明 らかにした。

 また、本発明者らはフェライト系ステン ス鋼の結晶粒粗大化抑制にも、固溶Nbは有 に作用することを見出した。発明者らの研 により、ろう付け温度の下限を1000℃とした 合にフェライト系ステンレス鋼中に結晶粒 大化抑制に必要な量の固溶Nbを確保するの Nb量が最低0.15%以上必要であることが明らか なった。なお、固溶Nbによる結晶粒粗大化 制は、後述するドラッグ効果によるものと 測されるが、これに限られない。

 さらに、Nb添加による結晶粒粗大化の抑制 、固溶Nbによる他元素の拡散を抑制するドラ ッグ効果による粒粗大化抑制作用の他に、Nb 窒化物による粒成長を抑えるピン止め効果 大きく働いていると推測される。従って本 明における成分設計では、C、N含有量をあ 程度確保するほうが有利である。具体的に CとNの合計含有量を0.01%以上とすることがよ 効果的である。また、Nb含有量を十分確保 ることにより、Fe 2 Nb(Laves 相)やFe 3 NbCなどの析出物によるピン止め効果も結晶粒 粗大化の抑制に有効に作用すると考えられる 。ろう付け時の結晶粒粗大化が抑制されるこ とによって靭性や延性低下防止に効果がある 。

 以下に、ドラッグ効果、ピン止め効果につ て説明する。
〔ドラッグ効果〕
 結晶粒が成長するときには結晶粒界の移動 伴う。結晶粒界に集積しやすい固溶元素や 純物元素がマトリクス中に含まれていると 結晶粒界は、それらの原子を引き連れて移 しなくてはならず、その移動が困難になる( ドラッグ効果)。本発明者らは、このドラッ 効果に着目し、結晶粒界にあえて固溶元素 存在させ結晶粒界の移動を阻害することに り、結晶粒成長が抑制できることを見出し 。そして、フェライト系ステンレス鋼の高 での結晶粒成長について鋭意研究した結果 フェライト系ステンレス鋼の場合には、固 元素の中でもとりわけ固溶Nbが結晶粒成長の 抑制に有効であることを見出した。
 もっとも、NbはC、Nと結合しやすい元素であ るため、ステンレス鋼中のNbのうち、固溶Nb なり得るのは、Nb炭窒化物生成に用いられた 残りのNbである。したがって、ステンレス鋼 の固溶可能なNb量は、下記式のようにA値を いて表すことができる。
A = Nb - (C×92.9/12 + N×92.9/14)
 なお、上式において、C、Nは、それぞれ、 テンレス鋼中のC、Nの含有量(質量%)を表す。

 ただし、フェライト系ステンレス鋼にTiが まれる場合、Nは主にTiNを形成するため、Nb 化物はほとんど形成されない。一方、炭化 はTi、Nbいずれも同じ確率で形成することか 、Tiの含有量(モル)がCとNの含有量(モル)の 計より多い(Ti含有量(モル)>C含有量(モル)+N 含有量(モル))場合には、固溶可能なNb量は、 記式のようにA’値を用いて表すことができ る。
A’ = Nb - C×(92.9/12)/2

 そして、フェライト系ステンレス鋼の高温 熱時における固溶Nbによるドラッグ効果は A値あるいはA’値(フェライト系ステンレス にTiがCとNの含有量の合計量より多く含まれ 場合)で表される固溶可能なNb量が0.10以上で あるときに有効に発現し、粒界移動が抑制さ れ、その結果、フェライト系ステンレス鋼の 高温時(ろう付け時等)の結晶粒粗大化を抑制 きることが分かった。
 A値、A’値は、0.2以上であることが好まし 、0.25以上であることがさらに好ましい。

〔ピン止め効果〕
 金属マトリクス中に析出物が微細分散して るとき、それらは転位の運動の障害となり わゆる析出強化現象を引き起こすことが知 れているが、高温時にはこれらの析出物が 界移動を抑制することが分かった(ピン止め 効果)。
 ピン止め効果の度合については、析出物の 大径をd(μm)、析出物の体積率(%)をfとして、 d/fで表すことができる。析出物が小さく、量 が多いほうがピン止め効果は高い。発明者ら は析出物の体積率fが0.05~0.20%の鋼を用い、析 物の直径d(μm)を変えた場合の結晶粒粗大化 評価し、d/fが5以上になるとろう付け処理に よってステンレス鋼の結晶粒径が500μm以上に なることを発見した。したがって、本発明に おいては、d/fが5以下になるように析出物の と径を制御することが好ましい。言い換え と、個々の析出物の粒子径が小さく、かつ 析出物のトータルの体積率が大きくするほ 、ピン止め効果が大きくなる。
 なお析出物を微細に分散させるためには、 テンレス鋼の製造時における昇温中や冷却 の析出物粗大化を抑制することが重要であ 。熱延工程では巻取り温度を750℃未満とし 焼鈍工程では600℃から最高到達材温Tmまで 平均昇温速度を10℃/s以上、かつTmから600℃ での平均冷却速度を10℃/s以上にコントロー することにより、最大径が0.25μm以下の析出 物を得られることがわかった。この場合、体 積率fが0.05以上であれば本発明で必要なピン め効果が得られる。
 したがって、本発明においては、析出物の 大径dが0.25μm以下、析出物の体積率fが0.05% 上となるように制御することが好ましい。

 ここで、析出物の最大径d(μm)とは、鋼材断 を研磨したときの断面に現れる析出物の粒 径のうちの最大値をいい、粒子径とは、粒 に外接する面積が最小となる外接長方形の 辺をいう。また、析出物の体積率f(%)とは、 鋼材断面を研磨したときの断面に現れるすべ ての析出物の面積の合計を、観察視野の面積 で除してパーセンテージに換算したものをい う。なお、いずれの測定の場合においても断 面の観察は、走査型電子顕微鏡(SEM)等により うことができ、観察視野の面積は2×10 -2 mm 2 以上とする。 
ピン止め効果に特に有効な析出物としては、 Nb系析出物が挙げられ、例えば、Nb炭化物、Nb 窒化物、Nb炭窒化物(以下、これらをまとめて 「Nb系炭・窒化物」ということもある。)や、 Fe 2 Nb(Laves相)、Fe 3 NbC等が挙げられる。

 Nb以外の合金成分については、MoやWがドラ グ効果で結晶粒粗大化抑制効果が、TiはTiC等 の析出によってもピン止め効果があることが わかった。
 また、Ni、CoならびにCuは、ろう付け時にフ ライト粒が粗大化した時の靭性低下の抑制 極めて有効であることがわかった。一方、T i、Al、Zr、REM、CaはNiろうやCuろう付けを行う に、鋼材表面におけるろう材の流れをを悪 する要因を有していることが明らかになっ 。これは、ろう付けの加熱時に、鋼材表面 これら元素の酸化物が形成されやすいこと 原因ではないかと考えられる。ただし、後 するようにこれらの元素の含有量を適正範 に規制すれば問題ない。

 本発明はこのような知見に基づいて完成 たものである。以下に、本発明のフェライ 系ステンレス鋼を構成する各合金元素につ て範囲選定理由について説明する。なお、 分元素の含有量における「%」は特に断らな い限り「質量%」を意味する。

 C、Nは、Nbと結合して鋼中に添加されたNb 消費し、Nb系炭・窒化物を形成する。これ の析出物によってNbが消費され固溶可能なNb 減少すると、固溶Nbによる耐食性改善効果 結晶粒抑制効果が阻害される。従って、本 明ではC含有量は0.03質量%以下に制限する必 があり、0.025質量%以下であることが望まし 。また、N含有量も同様に0.03質量%以下に制 する必要があり、0.025質量%以下であること 望ましい。

 しかしながら、前述のとおり、Nb系炭・ 化物は、ピン止め効果により、NiやCuろう付 時の結晶粒粗大化抑制に寄与しうる。従っ 、耐食性を損なわない程度のC、N含有量を 保することが望ましい。具体的には、ピン め効果の観点からは、C、Nの合計含有量を0.0 1%以上とすることが好ましく、C、N、各々の 素については、C:0.005質量%以上、N:0.005質量% 上を確保することが望ましい。

 Siはフェライト系ステンレス鋼の耐孔食 向上させる元素である。しかし、過剰のSi含 有はフェライト相を硬質化させ、加工性劣化 の要因となる。また、NiやCuろう付け時の濡 性を劣化させる。そのため、Si含有量は3質 %以下とする。耐食性向上の観点からは、Si 含有量は0.1%を超えることが好ましい。Siの 有量は0.2~2.5質量%の範囲とすることが好まし く、上限は1.5質量%に規制することもできる

 Mnは、ステンレス鋼の脱酸剤として使用 れる。しかしMnは不動態皮膜中のCr濃度を低 させ、耐食性低下を招く要因となるので、 発明ではMn含有量は低い方が好ましく、2質 %以下の含有量に規定される。スクラップを 原料とするステンレス鋼ではある程度のMn混 は避けられないので、過剰に含有されない う管理が必要である。

 Pは、母材およびろう付け部の靭性を損な うので低い方が望ましい。ただし、含Cr鋼の 製において精錬による脱りんは困難である とから、P含有量を極低化するには原料の厳 選などに過剰なコスト増を伴う。したがって 本発明では一般的なフェライト系ステンレス 鋼と同様に、0.05質量%までのP含有を許容する 。

 Sは、孔食の起点となりやすいMnSを形成し て耐食性を阻害する元素であり、また、S含 量が高い場合、ろう付け部の高温割れが生 やすくなるので、S含有量は0.03質量%以下に 定される。

 Crは、不動態皮膜の主要構成元素であり 耐孔食性や耐隙間腐食性などの局部腐食性 向上をもたらす。熱交換器や冷媒廃刊を構 する配管部材に適用する場合には、Cr含有量 を11%以上とする必要がある。しかし、Cr含有 が多くなるとC、Nの低減が難しくなり、機 的性質や靭性を損ねかつコストを増大させ 要因となる。したがって本発明ではCr含有量 は11~30%であり、好ましくは17~26質量%とする。

 Nbは、本発明において重要な元素であり 上述のように耐食性の面では再不動態化能 に優れ、NiならびにCuろう付け時の結晶粒粗 化の抑制に有効に作用する。それは固溶Nb ドラッグ効果とともに、Nb炭・窒化物による ピン止め効果が有効に作用する。これらの作 用を十分に発揮させるためには、C、N含有量 前記の範囲に規制したうえで、Nb含有量を0. 15質量%以上確保することが重要である。特に NiならびにCuろう付け時の結晶粒粗大化の抑 にはNb含有量を高めることが効果的であり、 好ましくは0.3%以上、より好ましくは0.4%以上 さらには0.5%以上のNb含有量とすることが望 しい。ただし、Nb含有量が多くなると、熱 加工性や鋼材の表面品質特性に悪影響を及 すようになる。従って、Nb含有量は0.8質量% 下の範囲に制限される。また、Nbが0.15~0.3質 %では比較的低温の1000℃のろう付け温度で 粒成長抑制の効果はあるが、その効果を安 させるためにはTiとの複合添加が望ましい。

 Moは、Crとともに耐食性レベルを向上させ るための有効な元素であり、その耐食性向上 作用は高Crになるほど大きくなることが知ら ている。

 Mo、Cu、V、Wは、ステンレス鋼の耐酸性を 上させ、耐食性を改善する。さらに、ろう け温度でのフェライト粒の結晶粒粗大化防 に効く。Mo、VならびにWについては固溶によ るドラッグ効果と析出物によるピン止め効果 が、Cuについてはそれ自体のεCu相としての析 出によるピン止め効果がある。そのため、本 発明においては、これらの元素のうちの少な くとも1種以上を添加することが好ましい。 に、これら元素の合計含有量を0.05質量%以上 確保することが効果的である。しかし、これ らの元素を過剰に添加すると熱間加工性に悪 影響を及ぼすようになる。種々検討の結果、 Mo、Cu、V、Wの1種以上を添加する場合は、そ 合計含有量を4質量%以下に抑える必要がある 。   

 Ti、Alのうち、TiはNbと同様にC、Nとの親和力 が強く微細なTi系炭窒化物を形成して、ろう け時の結晶粒成長を抑制する効果が期待で る。
 Alは、脱酸剤として有効であり、Tiとの複合 添加によってろう付けで酸化した時の耐食性 低下を抑制する。特に、TiとAlの合計含有量 0.03%以上とすると効果的である。
 しかし、これらの元素はいずれも、多量に 有させると熱間加工性や表面特性の低下を く要因となる。また、これらの元素は易酸 性元素であるため、仕上焼鈍やろう付けを う際の加熱により、鋼材表面に強固な酸化 膜を形成することがあり、その酸化皮膜に りろう付け時のろうの流れが悪くなるなっ り、ろう付け後の接合強度が低下すること ある。黄銅ろうを用いる場合、ろうに含有 れるZnの還元作用によってその他の元素の 化皮膜は除去されるが、Ti、AlはZnよりも酸 との親和力が強いため、これらの酸化皮膜 除去することができない。検討の結果、Ti、 Alの1種以上を添加する場合は、酸化皮膜によ る問題を回避するためにその合計含有量(Zrを 含有する場合には、Ti、Al及びZrの合計含有量 )を0.4質量%以下に抑える必要がある。特に、 の合計含有量を0.03~0.3質量%の範囲にするこ が効果的であり、0.03~0.25質量%とすることが より望ましい。

 Ni、Coは、ろう付け時にフェライト結晶粒 が粗大化した時の靭性低下の抑制に極めて有 効である。この靭性低下を特性する作用は、 平均結晶粒径が粗大化していない時(例えば フェライト結晶粒の平均粒径が500μm以下で る場合)においても奏される。したがって、 要に応じてこれらの元素の1種以上を含有さ せることができる。靭性低下の抑制という観 点からは、Ni、Coの合計含有量を0.5質量%以上 保することがより効果的である。しかし、N i、Coの過剰添加は、高温域でのオーステナイ ト相の生成を招き、熱間加工性に悪影響を及 ぼすので好ましくない。Ni、Coの1種以上を添 する場合は、NiとCoの合計含有量を5質量%以 の範囲に抑える必要がある。

 以上の組成を有するフェライト系ステン ス鋼は、排ガスの凝縮水や塩素濃度が高い 環境での耐食性については、従来の熱交換 部材に使用されているオーステナイト系鋼 と比較して、問題のないレベルであること 確認された。また、NiならびにCuろう付け時 の結晶粒粗大化に対する粒成長抑制効果とろ う付け性が同時に改善されたものである。

 本発明のフェライト系ステンレス鋼は、 発明において規定する組成を有する鋼を溶 した後、一般的なフェライト系ステンレス と同様にして製造することができる。その 、結晶粒粗大化を抑制するためのピン止め 果が充分に発揮されるよう、析出物の最大 と体積率を制御することが好ましい。

 本発明のフェライト系ステンレス鋼は、具 的には、熱間圧延→冷間圧延→仕上焼鈍を む方法により鋼板とすることができる。そ 際、以下の[1]および[2]の条件を満たすよう 熱間圧延および仕上焼鈍を施すと、ピン止 効果が良好に奏される析出分布形態、すな ち、析出物の最大径dが0.25μm以下、かつ析 物の体積率fが0.05%以上である析出物分布形 を実現することができる。
[1]熱間圧延において、巻取温度を750℃未満と する。
[2]仕上焼鈍において、昇温過程で600℃から最 高到達温度Tmまでの平均昇温速度を10℃/s以上 とし、かつ冷却過程でTmから600℃までの平均 却速度を10℃/s以上とする。

 本発明のフェライト系ステンレス鋼から る鋼板をろう付けして、ステンレス鋼接合 にすることにより、熱交換器の部材等の各 部材とすることができる。使用するろう材 限定はなく、例えば、Niろう、Cuろう、りん 銅ろう、黄銅ろう、銀ろう等、公知のろう材 を用いることができる。本発明のフェライト 系ステンレス鋼は、高温加熱した場合の結晶 粒の粗大化が抑制されているので、特に、り ん銅ろう、黄銅ろう等の、ろう付け温度の高 いろう材を用いるろう付けに供される場合に 有利である。また、ろう付け方法にも限定は なく、トーチろう付け等公知の方法を採用す ることができる。

 本発明のフェライト系ステンレス鋼(板)を 銅ろうを用いたトーチ付けに供する場合は 一般的なステンレス鋼と同様、フッ酸とホ 酸を主成分とするフラックスを用いて表面 酸化皮膜を除去し、トーチろう付けを行う とができる。その際、ろう付け時の基材の 大到達温度と加熱時間について、[3]および[4 ]の条件を満たすようにすると、析出物によ ピン止め効果を有効に発揮させることがで 、ろう付け後も基材マトリクスの平均結晶 径が500μm以下に抑えられた、強度特性に優 たステンレス鋼接合体を得ることができる
[3]ろう付け時の基材の最大到達温度を1000℃ 満とする。
[4]ろう付け時の加熱時間を3分未満とする。

 表1に示す化学組成を有するステンレス鋼を 溶製し、熱間圧延にて板厚3mmの熱延板を作製 した。その後、冷間圧延にて板厚1.0mmとし、 上焼鈍を最高到達温度Tm:1000~1070℃、保持時 1~60秒で行い、酸洗を施すことによって供試 材とした。
 熱間圧延および仕上焼鈍は、本発明鋼19、20 を除いて、すべて前述の[1]および[2]を満たす 条件で行った。本発明鋼19は、本発明鋼10と じ化学組成の鋼からなる
が、熱間圧延での巻き取り温度を880℃とした 。本発明鋼20は、本発明鋼15と同じ化学組成 鋼からなるが、仕上焼鈍の際の冷却過程に いて、Tmから600℃までの冷却温度を1℃/sとし た。
 なお、比較鋼6はオーステナイト系ステンレ ス鋼である。

 得られた鋼材を用いて以下の特性を調べた
「析出物の最大径、体積率f」
 各鋼材を切断し、その断面を電解研磨した 面をSEMにより観察した。観察視野の総面積 2×10 -2 mm 2 となるまで観察を続け、その間に観察した析 出物のうち、粒子径が最も大きい析出物の粒 子径を最大径d(μm)とした。
 また、同様にして、観察視野2×10 -2 mm 2 分の断面を観察し、その観察視野の中に存在 したすべての析出物の面積S(mm 2 )を画像処理により測定し、以下の式により 積率fを算出した。
 f(%)=S/(2×10 -2 )×100
 なお、析出物の判別は、EDXによる面分析を い、Nb、Ti、Mo、Cu、V又はWの検出強度がマト リクス部分より高い部分を析出物とみなすこ とにより行った。得られた値は表1に示した

「ろう付け性」
 まず図1に示すようなサイズの異なる2枚の 験片(下側35×25mm、上側20×25mm)の間に厚さ0.3mm のペースト状NiとCuろうを塗布した。これを 平に保ったまま、下表の条件で真空中でろ 付け処理を施した。

 炉から取り出し、上側 20×25mmの上面側の ろうで濡れた面積を試験片全面で徐すること により、ろう被覆率を求めた。ろう被覆率が 50%以上のものをA、20%以上50%未満のものをB、2 0%未満のものをCと評価し、B評価以上のもの 合格とした。

「ろう付け熱処理後の結晶粒径」
 上述のろう付け性を評価した試験片につい 、その断面(図1参照)の金属組織(4)を光学顕 鏡で観察した。エッチングは弗酸+硝酸の混 酸で行った。結晶粒径は切片法で求め、200μm 以下のものをA、200μm越え500μm以下のものB、5 00μm越えるものをCと評価し、AとBを合格と判 した。

「Niろう付け熱処理材の凝縮水試験」
 上述のろう付け性を評価した試験片につい 、ろう材が回りこんできた上側20×25mmの上 を#600研磨した後、図2に示すように、この試 験片(5)を200mlビーカー(6)内に保持した給湯ガ の組成に含まれる成分を想定した模擬ドレ 水(7)100ml(100ppmHNO 3 、20ppmH 2 SO 4 、1ppmCl - )に浸漬して(201)、130℃の環境試験機内に液が 乾燥する約7時間置いた浸漬試験を行い(202)、 次いで水洗を行う、というサイクルを10回繰 返して10サイクルの試験を実施し、ステン ス素材ならびにろう材での侵食の有無を侵 の有無で評価した。

「Niろう付け熱処理材の水環境でのすきま腐 凝縮水試験」
 上述のろう付け性を評価した試験片につい 、ろう材が回りこんできた上側20×25mmの上 を#600研磨した後、2000ppmCl - +10ppmCuに24時間浸漬した。その際、最大侵食 さが0.1mm未満を○、0.1mm越えを×とした。

「トーチろう付け相当の熱処理後の結晶粒径 」
 黄銅ろうを用いてトーチろう付けを行う場 、ろう付け温度は900℃程度であるが、予備 熱等により、被ろう付け材の温度は1000℃以 上に上昇し、特に、炎が直接当たる表面近傍 では1100℃程度にまで達することもある。ま 、オーバーヒートや、接合不良による再ろ 付けなどにより、更に熱履歴が加わること ある。そこで、各鋼材から30mm×80mmの試験片 切り出し、トーチろう付けに相当する熱処 として、1100℃で10分間加熱した。熱処理後 試験片の端面を研磨し、フッ酸と硝酸を用 て調製した混酸でエッチングを施し、光学 微鏡で観察し、切片法により平均結晶粒径 求めた。
 平均結晶粒径が200μm以下のものをA(きわめ 良好な粗大化抑制効果があった)、200μmを超 500μm以下のものをB(良好な粗大化抑制効果 あった)、500μmを超え1000μm以下のものをC(粗 化抑制効果があった)、1000μmを超えるもの D(粗大化抑制効果が充分でなかった)と評価 た。B評価が得られたものについては、熱交 器部材や配管部材等の用途に使用しても実 上問題ない特性を示すと考えられる。

「黄銅ろう材によるトーチろう付け性」
 板厚1mmの各鋼材から30mm×80mmの試験片を切り 出し、図3に示すように重ね代(8)を4mmにして ね合わせ、フラックスを用いて片側(9)から ーチろう付けを行い接合した。なお、ろう としては、黄銅ろう(BCuZn-1(60Cu-0.1Sn-Zn合金)の ワイヤー)を、フラックスとしては、ステン ス鋼のろう付けにおいて一般に使用される H 3 BO 4 -KB 4 O 7 -KF-KBF 4 系のものを使用した。このようにして接合さ れた試験片を、引張試験機により長手方向に 破断するまで引っ張った。トーチろう付けが 良好である場合には、試験片は母材部で破断 することになるので、母材部で破断したもの を○(トーチろう付け性が良好)、ろう材部で 断したものを×(トーチろう付け性が不良)と 評価した。

「トーチろう付け後の外面耐食性」
 本発明のステンレス鋼を配管部材に適用し 場合の管外面の耐食性を評価するために、 記のトーチろう付け相当の熱処理を施した 験片に対して、塩酸噴霧→乾燥→湿潤を1サ イクルとする塩乾湿試験を繰り返し10サイク 行い、発銹面積率を測定した。発銹面積率 、試験後の外観写真を撮影し、端面を除く 銹部分の面積を、試料全体の面積で除する とにより求めた。
 発銹面積率が1%以下のものを○(外面耐食性 良好)、1%を超えるものを×(外面耐食性が不 )と評価した。

 Ni/Cuろう付け性、Ni/Cuろう付け熱処理後の 結晶粒径、Niろう付け熱処理材の凝縮水試験 よびNiろう付け熱処理材の水環境でのすき 腐食凝縮水試験の結果を表3に示し、トーチ う付け相当の熱処理後の結晶粒径、黄銅ろ 材によるトーチろう付け性およびトーチろ 付け後の外面耐食性を表4に示す。

 表3からわかるように、本発明鋼のフェラ イト系ステンレス鋼は、従来熱交換器部材に 使用されていたNiやCuろう付け性を有し、結 粒粗大化を抑制し、ガス組成の凝縮水や水 境での耐食性に優れており、熱交換器部材 して十分な特性を具備できることが確認さ た。

 これに対し、比較鋼1、2はNb量が少なく、 ろう付け時にNb系析出物や固溶Nbの効果がな ために、粒成長が起こりやすい。比較鋼1は 素量が多いためろう付け冷却時の炭化物析 による鋭敏化で、耐食性に課題を要する。 た比較例2はPやMoが高いために靭性が低く、 窒素量も多いため鋭敏化によるガス組成の凝 縮水や水環境での耐食性に劣った。さらには Ti含有量が多いため、ろう付け性は不合格で る。比較鋼3はMn量増大によるオーステナイ 形成によるマルテンサイト相生成による延 低下や高Nbでの高強度化による靭性低下等 製造性も課題が生じる。比較鋼4は、Al過剰 加による表面状況の問題で、NiやCuろう付け が劣った。

 また、表4からも、本発明鋼がろう付け性( ーチろう付け性)に優れ、フェライト結晶粒 粗大化が抑制されていることが確認できた
 ただし、本発明鋼19、20は、極端な製造条件 を設定し、析出物の体積率fを非常に小さく または、析出物の最大径を非常に大きくし ため、フェライト結晶粒の粗大化抑制効果 低下していた。

 これに対し、比較鋼1、2は、Nb含有量が少な く、フェライト結晶粒の粗大化の抑制が充分 でなかった。比較例1は、C含有量も多かった め、トーチろう付け時の加熱により鋭敏化 生じ、耐食性も劣っていた。ただし、ろう として黄銅ろうを用いると、鋼中のCがCOガ となることにより脱炭が起こるので、黄銅 う材によるトーチろう付け性は良好であっ 。また、比較鋼2、4は、Ti+Alの合計含有量が 多かっため、トーチろう付け後の接合強度に 劣った。
 比較例5は、Cr含有量が少なく、外面耐食性 配管部材用途に用いるのに必要な水準に達 ていなかった。

 本発明に係るフェライト系ステンレス鋼 、ろう付け時の結晶粒粗大化による延性や 性の低下を防止しつつ、耐食性も良好であ ので、熱交換器の部材や配管部材等のろう けに供され、耐食性の要求される各種部材 材料に好適に用いることができる。

1  上側試験片
2  下側試験片
3  ろう材
4  金属組織観察の対象部分
5  試験片
51 表面
52 界面
6  200mlビーカー
7  模擬ドレン水
8  重ね代
9  トーチろう付けした方向