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Patent Searching and Data


Title:
FILM-LIKE LIGHT SHIELDING PLATE AND STOP, LIGHT AMOUNT ADJUSTING STOP DEVICE OR SHUTTER USING THE FILM-LIKE LIGHT SHIELDING PLATE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/157254
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are a film-like light shielding plate and a digital camera, a stop of a digital camera, a light amount adjustable stop device for a projector or a shutter to which the film-like light shielding plate is applied, wherein the film-like light shielding plate is comprised of a light shielding thin film with a sufficient light shielding property and a low reflective property in a visible light area that is widely applicable to an optical member is formed on a resin film of a base substrate.  A film-like light shielding plate includes a light shielding thin film (B) comprised of a crystalline titanium oxide-carbide film that is formed on at least one surface of a resin film substrate (A), wherein the film-like light shielding plate is characterized in that the light shielding thin film (B) contains an amount of carbon that is equal to or more than 0.6 in the atomic number ratio of C/Ti and contains an amount of oxide that ranges from 0.2 to 0.6 in the atomic number ratio of O/Ti, the total thickness of the light shielding thin film (B) is made to be equal to or more than 260 nm, and an average optical density in the wavelengths ranging from 400nm to 800nm is equal to or more than 4.0.

Inventors:
ABE YOSHIYUKI (JP)
ONO KATSUSHI (JP)
TSUKAKOSHI YUKIO (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/058264
Publication Date:
December 30, 2009
Filing Date:
April 27, 2009
Export Citation:
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Assignee:
SUMITOMO METAL MINING CO (JP)
ABE YOSHIYUKI (JP)
ONO KATSUSHI (JP)
TSUKAKOSHI YUKIO (JP)
International Classes:
G02B5/00; G03B9/02; G03B9/10
Foreign References:
JP2008310016A2008-12-25
JP2002350612A2002-12-04
JPH1195009A1999-04-09
Attorney, Agent or Firm:
KAWABI Kenji (JP)
Kenji Kawabi (JP)
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Claims:
 樹脂フィルム基材(A)の少なくとも一方の面に結晶性の炭化酸化チタン膜からなる遮光性薄膜(B)が形成されたフィルム状遮光板であって、
 遮光性薄膜(B)は、炭素量がC/Ti原子数比として0.6以上、かつ酸素量がO/Ti原子数比として0.2~0.6であり、しかも遮光性薄膜(B)の膜厚が総和で260nm以上となるようにして、波長400~800nmにおける平均光学濃度を4.0以上としたことを特徴とするフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の膜厚が、総和で260~500nmであることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリエーテルサルフォン(PES)から選択される一種以上であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)が、200℃以上の温度でも耐熱性を有するポリイミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又はポリエーテルサルフォン(PES)から選択されることを特徴とした請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)の厚みが38μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)の厚みが25μm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)の両面に遮光性薄膜(B)が形成されており、遮光性薄膜(B)が、いずれも実質的に同じ組成、同じ膜厚であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面が、導電性であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面の正光反射率が、波長400~800nmにおいて平均39%以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面粗さが、0.15~0.70μm(算術平均高さ)であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面の正光反射率が、波長400~800nmにおいて平均1.5%以下であることを特徴とする請求項9に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面粗さが、0.32~0.70μm(算術平均高さ)であることを特徴とする請求項10に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)の表面の正光反射率が、波長400~800nmにおいて平均0.8%以下であることを特徴とする請求項11に記載のフィルム状遮光板。
 樹脂フィルム基材(A)が、スパッタリング装置のフィルム搬送部にロール状にセットされたのち、巻き出し部から巻き取り部へと巻き取られる時に、スパッタリング法で樹脂フィルム基材(A)表面に遮光性薄膜(B)が成膜されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 遮光性薄膜(B)が、炭化酸化チタン焼結体ターゲットを用いたスパッタリング法で樹脂フィルム基材(A)上に形成されることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 炭化酸化チタン焼結体ターゲットが、炭素をC/Ti原子数比として0.6以上、酸素をO/Ti原子数比として0.17~0.53の割合で含有することを特徴とする請求項15に記載のフィルム状遮光板。
 スパッタリング時の樹脂フィルム基材(A)の表面温度が、100℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 270℃の高温環境下において耐熱性を有していることを特徴とする請求項1に記載のフィルム状遮光板。
 請求項1~18のいずれかに記載のフィルム状遮光板を加工してなる、絞り。
 請求項1~18のいずれかに記載のフィルム状遮光板を加工した羽根材を用いてなる、光量調整用絞り装置。
 請求項1~18のいずれかに記載のフィルム状遮光板を加工した羽根材を用いてなる、シャッター。
Description:
フィルム状遮光板、及び、それ 用いた絞り、光量調整用絞り装置、又はシ ッター

 本発明は、フィルム状遮光板、及び、そ を用いた絞り、光量調整用絞り装置、又は ャッターに関し、より詳しくは、光学部材 広範に適用可能な可視域における十分な遮 性と低反射性を有する遮光性薄膜を、ベー 基材となる樹脂フィルム上に形成したフィ ム状遮光板、さらには、該フィルム状遮光 を適用した、デジタルカメラ、デジタルビ オカメラの絞り、プロジェクターの光量調 用絞り装置、又はシャッターに関する。

 近年、デジタルカメラの業界では、高速(機 械式)シャッターの開発が活発に行われてい 。これは、シャッタースピードを高速にす ことで、超高速の被写体をブレ無く撮影す ことにより鮮明な画像を得ることを目的と ている。一般に、シャッターは、シャッタ 羽根と呼ばれる複数の羽根が回転、移動す ことで開閉が行われる。シャッタースピー を高速に行うためには、シャッター羽根が めて短時間に動作と停止を行えるよう、軽 化かつ高摺動性が必要不可欠である。更に シャッター羽根は、シャッターが閉の状態 は、フィルムなどの感光材やCCD、CMOSなどの 像素子の前面を覆って光を遮る役割を有し いるので、完全な遮光性を必要とするだけ なく、シャッター羽根の複数枚が互いに重 り合って動作する際に、各羽根間の漏れ光 発生を防ぐために羽根表面の光反射率が低 こと、すなわち黒色度が高いことが望まれ 。
 デジタルカメラのレンズユニット内に挿入 れ、一定の光量に絞って光を撮像素子に送 役割の固定絞りについても、絞りの表面の 反射が生じると迷光となり鮮明な撮像を損 うため、表面の低反射性、すなわち黒色性 高いことが要求される。

 撮影機能を有した携帯電話、すなわちカメ 付携帯電話でも、近年、高画素で高画質の 影が行えるよう、小型の機械式シャッター レンズユニットに搭載され始めている。ま レンズユニット内には固定絞りが挿入され いる。携帯電話に組み込まれる機械式シャ ターは、一般のデジタルカメラよりも、省 力による作動が要求されるためシャッター 根の軽量化の要求が特に強くなっている。
 更に、最近の携帯電話におけるレンズユニ トの組み立ては、製造コストを低減する目 で、レンズ、固定絞り、シャッターなどの パーツがリフロー工程で行えることが要望 れている。このような工程でも利用できる ャッター羽根や固定絞りには、表面の低反 性・黒色性だけでなく耐熱性が要求されて る。リフロー工程でも利用可能なシャッタ 羽根、固定絞り部材に求められる耐熱性は2 70℃程度である。

 次に、車載モニターであるが、最近の動 として、車載モニターにバックビューモニ ーなどが搭載される場合が増えている。こ モニターのレンズユニット内にも、固定絞 が使われているが、同様に迷光防止のため も表面の低反射性・黒色性が要求される。 して車載用モニターに用いられているレン ユニットは、真夏の炎天下などのような高 の使用環境下でも機能を損なうことが無い う、固定絞り部材にも耐熱性が要求されて る。車載モニター等に使われる固定絞り部 には、一般に約120℃程度の耐熱性が必要で るとされている。

 一方、液晶プロジェクターは、大部屋で 画面のホームシアターとして鑑賞できるた 、最近、一般家庭に急速に普及され始めて る。リビングルームといった明るい環境下 も鮮やかなハイコントラスト映像が楽しめ ような高画質化の要望が強く、ランプ光源 高出力にして画質を高輝度化する技術が進 でいる。液晶プロジェクターの光学系には ランプ光源からの光量を調整する光量調整 絞り装置(オートアイリス)がレンズ系の内 や側面に用いられている。光量調整用の絞 装置は、シャッターと同様に絞り羽根が複 枚互いに重なって光を通す開口部の面積を 整している。このような光量調整用絞り装 の絞り羽根も、シャッター羽根の場合と同 の理由から表面の低反射性と軽量化が要求 れている。すなわち、光照射によって羽根 の低反射性が変質すると、迷光が生じて鮮 な映像を写すことができなくなるからであ 。また、同時に、ランプ光の照射による加 に対する耐熱性も必要となっている。液晶 ロジェクターの光量調整用絞り装置の絞り 根材には、一般に270℃程度の耐熱性が必要 あると言われている。

 上述のシャッター羽根や固定絞り材、光量 整用絞り装置の絞り羽根に用いる遮光板と て下記のものが一般に用いられている。
 すなわち、耐熱性を要求される遮光板には 基材として、SUS、SK材、Al、Ti等の金属薄板 一般的に用いられている。金属薄板自体を 光板としたものもあるが、金属光沢を有す ため、表面の反射光による迷光の影響を回 したい場合には好ましくない。これに対し 、金属薄板上に黒色潤滑膜を塗装した遮光 は、低反射性・黒色性を有するが、塗装部 耐熱性に劣るため、高温環境下では一般に えない。

 特許文献1では、アルミニウム合金などの金 属製羽根材料の表面に硬質炭素膜を形成した 遮光材が提案されている。しかし、硬質炭素 膜を金属製羽根材料の表面に形成しても十分 な低反射特性は実現できず、反射光による迷 光の発生は避けられない。また、金属薄板を 基材に用いた遮光板をシャッター羽根や絞り 羽根として使用すると、重量が大きいので、 羽根を駆動する駆動モーターのトルクが大き くなり消費電力が大きくなる、シャッタース ピードが上げられない、羽根同士の接触によ る騒音が発生する、などの問題が生じていた 。これに対して、樹脂フィルムを基材として 用いた遮光板もあり、特許文献2には、表面 反射を低減するためにマット加工した樹脂 ィルムを使用したものや、微細な多数の凹 面を形成することで艶消し性を付与したフ ルム状の遮光板が提案されている。
 また、特許文献3では、樹脂フィルム上に、 艶消し塗料を含有した熱硬化性樹脂を塗膜し た遮光フィルムが提案されている。しかし、 これらは、樹脂フィルム自体の加工や艶消し 剤の添加により表面の反射を低減させている に過ぎず、遮光羽根からの反射による迷光の 影響を防止することは難しかった。

 樹脂フィルム基材については、低比重、 価、可とう性の観点から、ポリエチレンテ フタレート(PET)を基材とした遮光フィルム 多い。また、カーボンブラックやチタンブ ックなどの黒色微粒子を内部に含浸させて 過率を低減したPETフィルムが広範に用いら ている。しかし、PET材は、耐熱性が150℃よ 低く、引張弾性率などの機械的強度が弱い よって、高出力のランプ光が照射されて使 されるプロジェクターの光量調整用絞り部 、リフロー工程に対応するための固定絞り 材、あるいはシャッター部材とする場合は 耐熱性に劣るため利用することができない また、高速シャッターの羽根部材としてみ と、シャッター羽根の高速化に応じてフィ ム厚みを低減することになるが、黒色微粒 を内部に含浸させて得た樹脂フィルムの場 は、フィルム厚が薄くなり、特に38μm以下に なると、可視域で十分な遮光性を発揮するこ とができず、シャッター羽根には使用できな い。さらに、このような黒色微粒子を内部に 含浸させて得た樹脂フィルムは絶縁性である ため、シャッター羽根に用いると、羽根同士 が擦れて静電気が発生し、粉塵を吸着するな どの問題が生じる。

 そのため特許文献4では、フィルム状の基材 と、その片面又は両面に形成された遮光性を 有する遮光膜と、その上に形成された保護膜 とを含み、この保護膜により導電性、潤滑性 及び耐擦傷性のうち一つ以上の特性を満たす ようにした遮光羽根材料が提案されている。 前記基材は、少なくとも150℃の処理温度に耐 える樹脂材料からなり、前記遮光膜は150℃以 下の処理温度を維持できる真空蒸着法、スパ ッタリング法又はプラズマCVD法にて成膜され た金属を含む薄膜から構成している。ただし 、遮光羽根の要求特性の一つである低反射性 、黒色性については言及されておらず、保護 膜が耐擦傷性に関して効果が確認されたカー ボンのみが具体的に示されている。
 上記のように、これまでシャッター羽根や 定絞り、光量調整用絞り装置の絞り羽根な に利用できる遮光板で、可視域における十 な遮光性と低反射性、軽量性、導電性を併 持つものは知られていなかった。特に軽量 に有利な樹脂フィルム基材を用いたフィル 状遮光板において、板厚が38μm以下でも完 な遮光性を有するものはなかった。また、 パーツの組み立てをリフロー工程で行う場 でも、リフロー工程で品質が低下せず、270 の耐熱性を有する樹脂フィルムベースのフ ルム状遮光板は存在しなかった。

 このようなことから、軽量性に有利な薄 樹脂フィルム基材を用いたフィルム状遮光 であって、リフロー工程で各パーツを組み てることができ、可視域における十分な遮 性と低反射性、軽量性、導電性を併せ持つ ャッター羽根や固定絞り、光量調整用絞り 置の絞り羽根が必要とされていた。

特開平2-116837号公報

特開平1-120503号公報

特開平4-9802号公報

特開2006-138974号公報

 本発明は、これら従来の問題点に鑑み、 学部材に広範に適用可能な可視域における 分な遮光性と低反射性を有する遮光性薄膜 、ベース基材となる該樹脂フィルム上に形 したフィルム状遮光板、さらには、該フィ ム状遮光板を適用した、デジタルカメラ、 ジタルビデオカメラの絞り、プロジェクタ の光量調整用絞り装置、又はシャッターを 供することを目的とする。

 本発明者等は、上記課題を解決するため 、可視域(波長400~800nm)における完全な遮光 と低反射性を有しており、樹脂フィルム基 に対する付着力に優れている遮光性薄膜を 意探索した結果、特定の含有炭素量、含有 素量である炭化酸化チタン焼結体ターゲッ を用いて、スパッタリングすることで、膜 の炭素量、酸素量が特定範囲にあり、炭化 化チタンの結晶膜が樹脂フィルム基材に形 され、これを遮光性薄膜として用いること 、可視域における十分な遮光性と低反射性 兼ね備え、樹脂フィルム基材に対する高い 着力と270℃における耐熱性を有するフィル 状遮光板が得られることを見出し、このフ ルム状遮光板は、完全な遮光性と低反射性 導電性を発揮するだけでなく、軽量性ゆえ 低電力駆動に対応可能な高速シャッターの ャッター羽根材としても利用でき、駆動モ ターの小型化にも貢献でき、光量調整用絞 装置や機械式シャッターの小型化も実現で ることを見出して、本発明を完成するに至 た。

 すなわち、本発明の第1の発明によれば、樹 脂フィルム基材(A)の少なくとも一方の面に結 晶性の炭化酸化チタン膜からなる遮光性薄膜 (B)が形成されたフィルム状遮光板であって、 遮光性薄膜(B)は、炭素量がC/Ti原子数比とし 0.6以上、かつ酸素量がO/Ti原子数比として0.2~ 0.6であり、しかも遮光性薄膜(B)の膜厚が総和 で260nm以上となるようにして、波長400~800nmに ける平均光学濃度を4.0以上としたことを特 とするフィルム状遮光板が提供される。
 また、本発明の第2の発明によれば、第1の 明において、遮光性薄膜(B)の膜厚の総和が26 0~500nmであることを特徴とするフィルム状遮 板が提供される。

 また、本発明の第3の発明によれば、第1の 明において、樹脂フィルム基材(A)が、ポリ チレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネー ト(PC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ イミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサ ファイド(PPS)、又はポリエーテルサルフォ (PES)から選択される一種以上であることを特 徴とするフィルム状遮光板が提供される。
 また、本発明の第4の発明によれば、第1の 明において、樹脂フィルム基材(A)が、200℃ 上の温度でも耐熱性を有するポリイミド(PI) アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイド (PPS)、又はポリエーテルサルフォン(PES)から 択されることを特徴としたフィルム状遮光 が提供される。
 さらに、本発明の第5の発明によれば、第1 発明において、樹脂フィルム基材(A)の厚み 38μm以下であることを特徴とするフィルム状 遮光板が提供される。
 また、本発明の第6の発明によれば、第5の 明において、樹脂フィルム基材(A)の厚みが25 μm以下であることを特徴とするフィルム状遮 光板が提供される。
 一方、本発明の第7の発明によれば、第1の 明において、樹脂フィルム基材(A)の両面に 光性薄膜(B)が形成されており、遮光性薄膜(B )が、いずれも実質的に同じ組成、同じ膜厚 あることを特徴とするフィルム状遮光板が 供される。
 また、本発明の第8の発明によれば、第1の 明において、遮光性薄膜(B)の表面が、導電 であることを特徴とするフィルム状遮光板 提供される。
 また、本発明の第9の発明によれば、第1の 明において、遮光性薄膜(B)の表面の正光反 率が、波長400~800nmにおいて平均39%以下であ ことを特徴とするフィルム状遮光板が提供 れる。
 また、本発明の第10の発明によれば、第1の 明において、遮光性薄膜(B)の表面粗さが、0 .15~0.70μm(算術平均高さ)であることを特徴と るフィルム状遮光板が提供される。
 また、本発明の第11の発明によれば、第9の 明において、遮光性薄膜(B)の表面の正光反 率が、波長400~800nmにおいて平均1.5%以下であ ることを特徴とするフィルム状遮光板が提供 される。
 また、本発明の第12の発明によれば、第10の 発明において、遮光性薄膜(B)の表面粗さが、 0.32~0.70μm(算術平均高さ)であることを特徴と るフィルム状遮光板が提供される。
 また、本発明の第13の発明によれば、第11の 発明において、遮光性薄膜(B)の表面の正光反 射率が、波長400~800nmにおいて平均0.8%以下で ることを特徴とするフィルム状遮光板が提 される。
 また、本発明の第14の発明によれば、第1の 明において、樹脂フィルム基材(A)が、スパ タリング装置のフィルム搬送部にロール状 セットされたのち、巻き出し部から巻き取 部へと巻き取られる時に、スパッタリング で樹脂フィルム基材(A)表面に遮光性薄膜(B) 成膜されることを特徴とするフィルム状遮 板が提供される。
 また、本発明の第15の発明によれば、第1の 明において、遮光性薄膜(B)が、炭化酸化チ ン焼結体ターゲットを用いたスパッタリン 法で樹脂フィルム基材(A)上に形成されるこ を特徴とするフィルム状遮光板が提供され 。
 また、本発明の第16の発明によれば、第15の 発明において、炭化酸化チタン焼結体ターゲ ットが、炭素をC/Ti原子数比として0.6以上、 素をO/Ti原子数比として0.17~0.53の割合で含有 ることを特徴とするフィルム状遮光板が提 される。
 また、本発明の第17の発明によれば、第1の 明において、スパッタリング時の樹脂フィ ム基材(A)の表面温度が、100℃以下であるこ を特徴とするフィルム状遮光板が提供され 。
 また、本発明の第18の発明によれば、第1の 明において、270℃の高温環境下において耐 性を有していることを特徴とするフィルム 遮光板が提供される。

 また、本発明の第19の発明によれば、第1~18 いずれかの発明に係り、前記フィルム状遮 板を加工してなる、絞りが提供される。
 一方、本発明の第20の発明によれば、第1~18 いずれかの発明に係り、前記フィルム状遮 板を加工した羽根材を用いてなる、光量調 用絞り装置が提供される。
 さらに、本発明の第21の発明によれば、第1~ 18のいずれかの発明に係り、前記フィルム状 光板を加工した羽根材を用いてなる、シャ ターが提供される。

 本発明に用いる遮光性薄膜は、結晶性の炭 酸化チタン膜であって、膜中の含有炭素量 C/Ti原子数比で0.6以上であり、膜中に含有す る酸素量がO/Ti原子数比で0.2~0.6である薄膜で り、可視域(波長400~800nm)における完全な遮 性と低反射性を有しており、樹脂フィルム 材に対する付着力に優れている。しかも大 中270℃の高温環境下でもそれらの特徴を損 うことがない。
 また、本発明のフィルム状遮光板は、上記 光性薄膜を、ベース基材である樹脂フィル 上に形成したものであり、従来の金属薄板 ベースにした遮光板と比べて軽量性に優れ 。また、更なる軽量化のため38μm以下の樹 フィルム基材を用いた本発明のフィルム状 光板は、同じ厚みの樹脂フィルムの内部に 色微粒子を含浸させた従来からある遮光板 比べて、完全な遮光性と低反射性を発揮す ことができ、低電力駆動に対応可能な高速 ャッターのシャッター羽根材としても利用 き、駆動モーターの小型化にも貢献できる 軽量化による光量調整用絞り装置や機械式 ャッターの小型化が実現するなどのメリッ もあるため、工業的に極めて有用といえる
 また、本発明のフィルム状遮光板は、ポリ ミドなどの耐熱性の樹脂フィルムをベース 材に用いることで、大気中270℃の耐熱性を 揮することができる。すなわち、270℃の高 環境下でも低反射性、遮光性を損なわない とから、液晶プロジェクターの光量調整用 り装置の絞り羽根材や、リフロー工程によ 組み立てに対応できる固定絞り材やシャッ ー羽根材として利用することができるため この点でも工業的価値が極めて高いといえ 。

図1は、樹脂フィルムの片面に遮光性薄 膜を形成した、本発明のフィルム状遮光板の 断面を示す概略図である。 図2は、樹脂フィルムの両面に遮光性薄 膜を形成した、本発明のフィルム状遮光板の 断面を示す概略図である。 図3は、本発明のフィルム状遮光板を製 造するための、巻き取り式スパッタリング装 置の概略図である。 図4は、本発明のフィルム状遮光板を打 ち抜き加工して製造された、黒色遮光羽根を 搭載した光量調整用絞り装置の絞り機構を示 す模式図である。 図5は、本発明(実施例1)で得られた、炭 化酸化チタン膜のX線回折パターン測定結果 示すチャートである。 図6は、比較例の条件で得られた、炭化 酸化チタン膜のX線回折パターン測定結果を すチャートである。

 以下、本発明のフィルム状遮光板、及び れを用いた絞り、光量調整用絞り装置、又 シャッターについて説明する。

1.フィルム状遮光板
 本発明のフィルム状遮光板は、樹脂フィル 基材(A)の少なくとも一方の面に結晶性の炭 酸化チタン膜からなる遮光性薄膜(B)が形成 れたフィルム状遮光板であって、遮光性薄 (B)は、炭素量がC/Ti原子数比として0.6以上、 かつ酸素量がO/Ti原子数比として0.2~0.6であり しかも遮光性薄膜(B)の膜厚が総和で260nm以 となるようにして、波長400~800nmにおける平 光学濃度を4.0以上としたことを特徴とする

(A)樹脂フィルム基材
 樹脂フィルムとは、例えば、ポリエチレン レフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、 リエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(P I)、アラミド(PA)、ポリフェニレンサルファイ ド(PPS)、又はポリエーテルサルフォン(PES)か 選択される1種類以上の材質で構成されてい フィルムや、これらのフィルムの表面にア リルハードコートが施されたフィルムやカ ボンブラックやチタンブラックなどの黒色 粒子を内部に含浸させて透過率を低減した ィルムも利用できる。

 高温環境下でも使用可能で軽量なフィルム 遮光板を実現するためには、耐熱性を有す 樹脂フィルムをベースとした基材を使うこ が好ましい。120~150℃程度の耐熱性を付与す る場合には、ポリエチレンナフタレート(PEN) 有効である。車載のモニターに使われる固 絞り部材には、約120℃程度の耐熱性が必要 あるが、ポリエチレンナフタレートを用い ことで実現できる。
 200℃以上の耐熱性を付与する場合には、ポ イミド(PI)、アラミド(PA)、ポリフェニレン ルファイド(PPS)、又はポリエーテルサルフォ ン(PES)から選択される1種類以上の耐熱性材料 で構成されているフィルムが好ましい。その 中でもポリイミドフィルムは、耐熱温度が270 ℃以上と最も高く、特に好ましいフィルムで ある。リフロー工程による組み立てに対応で きる固定絞り材やシャッター羽根材として利 用できるフィルム状遮光板を得るためにはポ リイミドフィルムを使用することが有効であ る。

 樹脂フィルム基材の厚みは、200μm以下が好 しく、より好ましくは100μm以下、最も好ま くは50μm以下である。200μmより厚いと、小 化が進む絞り装置や光量調整用装置へ遮光 根を複数枚搭載することができないなど、 途によっては不適となってしまうため好ま くない。
 また、フィルム状遮光板をレンズユニット 固定絞りとして利用するときは、光路内の りの端面での光反射が迷光となり、鮮明な 質の撮影を妨げる要因となる。絞り端面で 光反射を極力低減させるためには、絞りの みを極力薄くすることが効果的である。薄 絞りを得るためには、薄いフィルム状遮光 が有用となる。具体的には、厚み38μm以下 好ましく、さらには厚み25μm以下が最も好ま しい。しかし、5μmより薄いものでは、ハン リング性が悪くて取り扱いにくく、フィル に傷や折れ目などの表面欠陥が付きやすく るため好ましくない。

 また、樹脂フィルム基材は、ナノインプ ンティング加工やショット材を使用したマ ト処理加工によって所定の表面凹凸性を有 ていることが好ましい。樹脂フィルム基材 表面凹凸性を有していることで遮光性薄膜 表面凹凸が生じ光の正反射率を低減する、 なわち艶消しの効果をもたらすことができ ので、遮光板としては好ましい。なお、遮 性薄膜の光の正反射率とは、反射光が反射 法則に従い、入射光の入射角に等しい角度 表面から反射していく光の反射率を言う。

(B)遮光性薄膜
 本発明に用いる遮光性薄膜は、結晶性の炭 酸化チタン膜であって、含有炭素量がC/Ti原 子数比で0.6以上であり、含有酸素量がO/Ti原 数比で0.2~0.6である。
 遮光性薄膜の含有炭素量が、C/Ti原子数比で 0.6未満であると、膜が、金色を呈するように なり、可視域での反射率が高くなってしまい 好ましくない。また、C/Ti原子数比が0.6未満 あると、大気中で270℃に加熱したときに膜 酸化による変色がみられるため、270℃にお る耐熱性を発揮させるためにも、膜のC/Ti原 数比は0.6以上である必要がある。

 本発明に用いる遮光性薄膜は、樹脂フィ ム基材に対する密着性に着眼すると、膜のO /Ti原子数比が0.2未満であると、膜を構成する 原子の結合が金属結合性の割合が強まり、イ オン結合性の割合が弱まるため樹脂フィルム に対する付着力が弱まる。O/Ti原子数比が0.2 上の場合は、膜の構成原子の結合にイオン 合性の割合が強くなるため、フィルム基材 イオン結合性が発生して付着力が強まるた 好ましい。

 本発明における遮光性薄膜は、上記のチタ 、炭素、酸素の構成元素の他、他の金属元 や、窒素やフッ素などの他の元素が、本発 の特性を損なわない程度に含まれていても わない。遮光性薄膜へ窒素を導入するには それぞれ、遮光性薄膜を成膜する時のスパ タリングガス中に窒素ガス(添加ガス)を導 してスパッタリング成膜することで可能で るが、上記のような添加ガスを用いなくて 、ターゲット中に窒素を含有させることで 導入することができる。また遮光性薄膜へ フッ素の導入には、ターゲット中にフッ化 を含有させることで可能である。
 また本発明に用いる遮光性薄膜は、炭素含 量および/または酸素含有量の組成の異なる 炭化酸化チタン膜が積層されていても、各層 の組成範囲が本発明の規定内であればかまわ ない。また本発明に用いる遮光性薄膜は、膜 厚方向に炭素含有量および/または酸素含有 が連続的に変化した炭化酸化チタン膜であ ても、膜全体の平均組成が本発明で規定す 組成範囲内であればかまわない。

 一般に、有機物である樹脂フィルムと無 物である金属膜などとの結合は弱い。本発 の遮光性薄膜を樹脂フィルムの表面に形成 るときも同じである。また、膜の付着力を めるためには、成膜時のフィルム表面温度 高めることが有効である。しかし、フィル の種類によっては、130℃以上に温度を上げ と、ガラス転移点や分解温度を越えてしま PETなどもあるため、成膜時のフィルム表面 度はなるべく低温、例えば100℃以下で行え ことが望ましい。100℃以下の樹脂フィルム 面に、本発明の遮光性薄膜を高付着力で形 するためには、膜中のO/Ti原子数比を0.2以上 に設定した炭化酸化チタン膜を用い、更に、 結晶膜とすることが必要不可欠である。

 本発明に用いる遮光性薄膜は、膜の光学特 に着目すると、含有酸素量がO/Ti原子数比で 0.2未満の場合は、炭化酸化チタン膜は金属色 を呈し、低反射性や黒色性に劣ってしまうた め好ましくない。一方、O/Ti原子数比で0.6を える場合は、膜の透過率が高すぎて光吸収 能に劣り、低反射性や遮光性を損なってし うため、好ましくない。
 遮光性薄膜中のC/Ti原子数比やO/Ti原子数比 、例えばXPSにて分析できる。膜の最表面は 素量が多く結合されているため、真空中で 十nmの深さまでスパッタリングで除去した後 に測定して、膜中のC/Ti原子数比やO/Ti原子数 を定量化することができる。

 本発明における遮光性薄膜は、膜厚が総 で260nm以上であると、波長400~800nmにおける 均光学濃度を4.0以上にすることができる。 かし、膜厚の総和は260~500nmであればより好 しい。可視域における完全な遮光性を発揮 るためには、膜厚の総和が260nm以上でなけれ ばならないが、膜厚の総和が500nmより厚くな と、遮光性薄膜を成膜するのに要する時間 長くて製造コストが高くなったり、必要な 膜材料が多くなって材料コストが高くなる で好ましくない。

2.遮光性薄膜の形成方法
 本発明に用いる遮光性薄膜は、例えば、ス ッタリング法、真空蒸着法、CVD法などの真 プロセスを用いた成膜法の他、炭化酸化チ ン微粒子を分散させたインクを塗布する方 でも製造することができる。しかし、これ の中でも、スパッタリング法で製造するこ は、大面積の基板上に均一に形成すること できるだけでなく、基材に対して高い密着 を有して形成することができるため好まし 。

 膜の結晶性は成膜条件に依存するが、炭化 化チタン膜が結晶性であることによって、 ィルム基材に対して高付着力を発揮する。
 本発明のフィルム状遮光板に用いる遮光性 膜をスパッタリング法で製造する場合、含 炭素量がC/Ti原子数比で0.6以上であり、含有 酸素量がO/Ti原子数比で0.17~0.53である炭化酸 チタン焼結体ターゲットを用いることが望 しい。炭化酸化チタンターゲットは、酸化 タンと炭化チタンと金属チタンの粉末の混 体からホットプレス法で作製する。各原料 配合割合を変えることで種々のC/Ti原子数比 O/Ti原子数比の炭化酸化チタンターゲットを 作製することができる。
 O/Ti原子数比が0.17未満の炭化酸化チタンタ ゲット、もしくは、炭化チタンターゲット 用いても、O 2 を多めに混合したArガスをスパッタリングガ として用いることで、膜中に酸素を多く取 込むことができ、本発明の組成範囲内の遮 性薄膜を成膜することができる。しかし、 の場合、スパッタリングガスに酸素を多め 混合することになり、膜の結晶性が低下す 場合があるため、結晶膜が得られる酸素混 量の条件範囲内での作製が必要となる。ス ッタリングガス中にO 2 ガスが多く含まれると結晶性を低下させるの は、O 2 ガスがプラズマによって電離し、負に電離し た酸素イオンが電界で加速して膜を衝撃する ためである。
 本発明のフィルム状遮光板においては、遮 性薄膜は、例えばアルゴン雰囲気中におい 炭化酸化チタン焼結体のスパッタリングタ ゲットを使用し、直流マグネトロンスパッ リング法により樹脂フィルム基材上に成膜 成される。放電方式は、高周波放電でもか わないが、直流放電の方が、高速成膜が可 となるため好ましい。

 樹脂フィルム基材上に炭化酸化チタン膜を パッタリング法で成膜して、本発明のフィ ム状遮光板を製造するには、例えば、図3に 示した巻き取り式スパッタリング装置を用い ることができる。この装置は、ロール状の樹 脂フィルム基材1が巻き出しロール5にセット れ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ6で成 膜室である真空槽7内を排気した後、巻き出 ロール5から搬出されたフィルム1が途中、冷 却キャンロール8の表面を通って、巻き取り ール9で巻き取られていく構成をとる。冷却 ャンロール8の表面の対向側にはマグネトロ ンカソード10が設置され、このカソードには の原料となるターゲット11が取り付けてあ 。なお、巻き出しロール5、冷却キャンロー 8、巻き取りロール9などで構成されるフィ ム搬送部は、隔壁12でマグネトロンカソード 10と隔離されている。
 まず、ロール状の樹脂フィルム基材1を巻き 出しロール5にセットし、ターボ分子ポンプ の真空ポンプ6で真空槽7内を排気する。その 後、巻き出しロール5から樹脂フィルム基材1 供給し、途中、樹脂フィルム基材1が冷却キ ャンロール8の表面を通って、巻き取りロー 9で巻き取られていくようにしながら、冷却 ャンロール8とカソード間で放電させて、冷 却キャンロール表面に密着して搬送されてい る樹脂フィルム基材1に、炭化酸化チタン膜 成膜する。なお、樹脂フィルム基材は、ス ッタリング前にガラス転移温度前後の温度 加熱し、乾燥しておくことが望ましい。

 本発明におけるスパッタリング成膜では、 ス圧は、装置の種類などによっても異なる で一概に規定できないが、例えば、0.2~0.8Pa スパッタリングガス圧で、Arガス、もしく 、O 2 を0.05%以内で混合したArガスを、スパッタリ グガスとして用いる方法が採用できる。
 これにより、基板(樹脂フィルム)に到達す スパッタリング粒子が高エネルギーとなる め、結晶性の膜が耐熱樹脂フィルム基材上 形成され、膜とフィルムとの間に強い密着 が発現される。成膜時のガス圧が0.2Pa未満で あると、ガス圧が低いためスパッタリング法 でのアルゴンプラズマが不安定となり、成膜 した膜の膜質が悪くなる。また、0.2Pa未満で ると、反跳アルゴン粒子が基板上に堆積し 膜を再スパッタリングする機構が強くなり 緻密な膜の形成を阻害しやすくなる。また 成膜時のガス圧が0.8Paを超えた場合では、 板に到達するスパッタリング粒子のエネル ーが低いため膜が結晶成長しにくく、金属 化物膜の粒が粗くなり、高緻密な結晶性の 質でなくなるので樹脂フィルム基材との密 力が弱くなり、膜が剥がれてしまう。この うな膜は耐熱性用途の遮光膜に用いること できない。これにより、純Arガスもしくは微 量にO 2 を混合(例えば0.05%以内)したArガスをスパッタ リングガスに用いて、結晶性の優れた本発明 に係る遮光性薄膜を安定に製造することがで きる。O 2 を0.1%以上混合すると薄膜の結晶性が悪化す 場合があり好ましくない。

 また、成膜時のフィルム表面温度は、金属 化物膜の結晶性に影響を及ぼす。成膜時の ィルム表面温度が高温であるほど、スパッ リング粒子の結晶配列が起こりやすくなり 結晶性が良好となる。しかし、耐熱樹脂フ ルムの加熱温度にも限界があり、最も耐熱 の優れたポリイミドフィルムでも表面温度 400℃以下で成膜する必要がある。フィルム 種類によっては、130℃以上に温度を上げる 、ガラス転移点や分解温度を越えてしまう め、例えば、PETなどでは、成膜時のフィル 表面温度はなるべく低温、例えば100℃以下 行うことが望ましい。また、製造コストに 目しても、加熱時間や加熱に要する熱エネ ギーを考慮すると、なるべく低温で成膜を うことがコスト低減には有効である。成膜 のフィルム表面温度は、90℃以下が好まし 、85℃以下がより好ましい。
 また、成膜中には樹脂フィルム基材はプラ マから自然加熱される。ガス圧とターゲッ への投入電力やフィルム搬送速度を調整す ことで、ターゲットから基材に入射する熱 子やプラズマからの熱輻射によって成膜中 樹脂フィルム基材の表面温度を所定の温度 維持することは容易である。ガス圧は低い ど、投入電力は高いほど、フィルム搬送速 は遅いほどプラズマからの自然加熱による 熱効果は高くなる。成膜時、フィルムを冷 キャンに接触させている場合でも、自然加 の影響でフィルム表面の温度は冷却キャン 度よりはるかに高い温度となる。しかし、 ーゲットを冷却キャンと対向する位置に設 するスパッタリング装置では、自然加熱に るフィルム表面の温度は、フィルムが冷却 ャンで冷却されながら搬送されるため、キ ンの温度にも大きく依存し、なるべく成膜 の自然加熱の効果を利用するのであれば、 却キャンの温度を高めにして搬送速度を遅 することが効果的である。金属炭化物膜の 厚は、成膜時のフィルムの搬送速度とター ットへの投入電力で制御され、搬送速度が いほど、またターゲットへの投入電力が大 いほど厚くなる。

3.フィルム状遮光板の構造
 本発明のフィルム状遮光板は、樹脂フィル 基材の片面もしくは両面に、遮光性薄膜が 成された構造であり、該遮光性薄膜が、結 性の炭化酸化チタン膜であり、膜中の含有 素量がC/Ti原子数比で0.6以上であり、膜中に 含有する酸素量がO/Ti原子数比で0.2~0.6であり 各面に形成された遮光性薄膜の膜厚の総和 260nm以上であり、波長400~800nmにおける平均 学濃度が4.0以上であることを特徴としてい 。

 また、本発明のフィルム状遮光板は、樹脂 ィルムの両面に遮光性薄膜が形成されてお 、両面に形成された遮光性薄膜が、同じ組 であり、実質的に同じ膜厚であって、各面 形成された遮光性薄膜の膜厚の総和が260nm 上であることが好ましい。
 樹脂フィルム基材の各面に形成した遮光性 膜の膜厚の総和を260nm以上と規定している は、フィルム状遮光板の遮光性は、薄膜の 厚に大きく依存するからである。膜厚の総 が260nm以上であれば膜による光吸収が充分に 行われ、完全な遮光性を発揮することができ る。膜厚の総和が260nm未満であると、膜の光 過が生じて十分な遮光機能を持たないので ましくない。ただし、膜厚が厚くなると遮 性が良くなるが、600nmを超えると、材料コ トや成膜時間の増加による製造コスト高に ながり、また膜の応力も大きくなって変形 やすくなる。より好ましい膜厚は、300~500nm ある。炭化酸化チタン膜を上記のような膜 とすることにより、十分な遮光性と低い膜 力、製造コストの低減を達成することがで る。

 図1は片面に遮光性薄膜が形成された構造 の本発明のフィルム状遮光板を示し、図2は 面に遮光性薄膜が形成された構造の本発明 フィルム状遮光板を示す。上記炭化酸化チ ン膜2は、図1に示すように樹脂フィルム基材 の片面に形成されていてもよいが、図2に示 ように両面に形成されている方が好ましい 両面に形成される場合は、各面の膜の材質 厚みが同じで、樹脂フィルム基材を中心と て対称の構造であることが、より好ましい 基板の上に形成された薄膜は、基板に対し 応力を与えるため、変形の要因となる。応 による変形は、成膜直後の遮光性薄膜でも られる場合があるが、特に155~300℃程度に加 されると変形が大きくなり顕著となりやす 。しかし、上記のように基板の両面に形成 る炭化酸化チタン膜の材質、膜厚を同じに て、基板を中心として対称の構造にするこ で、加熱条件下でも応力のバランスが維持 れ、フラットなフィルム状遮光板を実現し すい。

 上記の通り、各面に形成された遮光性薄膜 膜厚の総和は260nm以上である。上記構造を することで、可視域、すなわち、波長400~800n mにおける平均光学濃度が4.0以上であり、波 400~800nmにおける膜表面の正反射率の平均値 39%以下と低くすることができる。よって、 学部材として有用なフィルム状遮光板を実 できる。
 ここで光学濃度とは、遮光性を示す指標で り、光学媒質で透過率の逆数の10を底とし 対数で表され、4.0以上で完全な遮光性を示 としている。
 また、樹脂フィルムは柔らかいため、表面 形成する膜の応力の影響を受けて変形しや い。これを回避するため、フィルムの両面 同じ組成・膜厚の遮光性薄膜を対称に形成 ることが有効であり、好ましい。

 本発明のフィルム状遮光板に用いる遮光 薄膜は、上記のような組成、構造を有する め膜表面は導電性を有する。そのため、シ ッター羽根として利用すると、シャッター 動時に羽根同士が擦れたとき、静電気が発 しにくく、粉塵を吸着しにくいという利点 ある。静電気が発生しにくい導電性として 、100kω/□(キロオーム・パー・スクエアと む)以下の表面抵抗であれば十分であるが、 発明のフィルム状遮光板の遮光膜は、例え 厚10nmとしても、3~4kω/□の表面抵抗を実現 き、また、単膜で十分な遮光性を発揮する26 0nmでも100~200ω/□の表面抵抗を実現できる。

 樹脂フィルム基材の表面粗さが、0.15~0.72μm( 算術平均高さ)であると、波長400~800nmにおけ 遮光性薄膜表面の正光反射率を1.5%以下とす ことができる。また、表面粗さが、0.35~0.72 mであると、正反射率は0.8%以下となり、非常 に低反射なフィルム状遮光板が実現できる。
 ここで算術平均高さ(Ra)とは、算術平均粗さ とも言われ、粗さ曲線からその平均線の方向 に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分 の平均線から測定曲線までの偏差の絶対値を 合計して平均した値である。基材表面の凹凸 は、ナノインプリンティング加工やショット 材を使用したマット処理加工によって所定の 表面凹凸を形成することができる。マット処 理の場合は、ショット材に砂を使用したマッ ト処理加工が一般的であるが、ショット材は これに限定されない。金属遮光膜を施した樹 脂フィルムを基材として用いる場合は、樹脂 フィルムの表面を上記の方法で凹凸化してお くと有効である。
 遮光性薄膜の表面粗さ(算術平均高さRa)は、 概ね基板の表面粗さに近いが、遮光性薄膜の 表面粗さが0.15~0.70μm(算術平均高さ)であると 波長400~800nmにおける遮光性薄膜表面の正光 射率を平均1.5%以下とすることができる。ま た、遮光性薄膜の表面粗さが、0.32~0.70μmであ ると、正反射率は0.8%以下となり、非常に低 射なフィルム状遮光板が実現できる。

4.フィルム状遮光板の用途
 本発明のフィルム状遮光板は、端面クラッ が生じないように特定の形状に打ち抜き加 を行って、デジタルカメラ、デジタルビデ カメラの固定絞りや機械的シャッターや、 定の光量のみ通過させる絞り(アイリス)、 には液晶プロジェクターの光量調整用装置( ートアイリス)の絞り羽根として利用できる 。

 光量調整用絞り装置(オートアイリス)の絞 羽根には、複数の絞り羽根として用い、そ らの絞り羽根を可動させ、絞り開口径を可 して光量の調整が可能となる機構用とする とができる。図4は、本発明のフィルム状遮 板を打ち抜き加工して製造された黒色遮光 根を搭載した光量調整用絞り装置の絞り機 を示す模式図である。
 本発明のフィルム状遮光板を用いて作製さ た黒色遮光羽根には、ガイド孔、駆動モー ーと係合するガイドピンと遮光羽根の稼働 置を制御するピンを設けた基板に取り付け ための孔を設けている。また、基板の中央 はランプ光が通過する開口部があるが、絞 装置の構造により遮光羽根は、さまざまな 状をとりうる。樹脂フィルムをベース基材 して用いたフィルム状遮光板は、軽量化で るので、遮光羽根を駆動する駆動部材の小 化と消費電力の低減が可能となる。
 液晶プロジェクターの光量調整装置は、ラ プ光の照射による加熱が顕著である。その め、本発明のフィルム状遮光板を加工して 造された耐熱性と遮光性に優れた絞り羽根 搭載された光量調整装置は有用である。ま 、リフロー工程で固定絞りや機械式シャッ ーを組み立ててレンズユニットを製造する 合においても、本発明のフィルム状遮光板 加工して得た固定絞りやシャッターを用い と、リフロー工程中の加熱環境下において 性が変化しないため非常に有用である。車 モニターのレンズユニット内の固定絞りは 夏場の太陽光による加熱が顕著であるが、 様の理由で本発明のフィルム状遮光板から 製した固定絞りは有用である。

 次に、本発明について、実施例、比較例 用いて具体的に説明するが、本発明は、こ ら実施例によって限定されるものではない 遮光性薄膜の成膜は以下の手順で実施した

 図3に示した巻き取り式スパッタリング装置 を用いて、樹脂フィルム基材に炭化酸化チタ ン膜の成膜を行った。まず、冷却キャンロー ル8の表面の対向側にマグネトロンカソード10 が設置された装置のカソードに膜の原料とな る下記の炭化酸化チタンターゲット11を取り けた。巻き出しロール5、冷却キャンロール 8、巻き取りロール9などで構成されるフィル 搬送部は、隔壁12でマグネトロンカソード10 と隔離されている。次に、ロール状の樹脂フ ィルム基材1を巻き出しロール5にセットした
 樹脂フィルム基材は、スパッタリング前に 真空中にて70℃の温度に加熱したキャンロ ル表面に密着搬送することで、十分に乾燥 た。
 次に、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ6で 真空槽7内を排気した後、冷却キャンロール8 カソード間で放電させて、樹脂フィルム基 1を冷却キャンロール表面に密着搬送しなが ら成膜を行った。このときの冷却キャンロー ルの設定温度は50℃とし、ターゲットと基板 の距離は50mmとした。成膜前の真空槽内の到 達真空度は2×10 -4 Pa以下であった。
 まず、炭化酸化チタン焼結体ターゲットを ソードに設置し、このカソードから直流ス ッタリング法で炭化酸化チタン膜を成膜し 。炭化酸化チタン膜は、スパッタリングガ に純アルゴンガス(純度99.999%)を用いてスパ タリングガス圧0.2Paにて成膜を行った。タ ゲットには1.2~3.0W/cm 2 の直流電力密度(ターゲットのスパッタリン 面における単位面積当たりの直流投入電力) 投入して成膜を実施した。成膜時のフィル の搬送速度とターゲットへの投入電力を制 することで炭化酸化チタン膜の膜厚を制御 た。巻き出しロール5から搬出された樹脂フ ィルム基材1は、途中、冷却キャンロール8の 面を通って、巻き取りロール9で巻き取った 。
 炭化酸化チタン膜のスパッタリング時の、 ィルムの表面温度は、フィルム基材に貼り けたサーモラベル(日油技研工業製)と赤外 放射温度計で測定した。赤外放射温度計は 巻き取り式スパッタリング装置の石英ガラ ののぞき窓から測定した。

 また、得られた耐熱遮光フィルムの評価は 下の方法で行った。
(膜厚測定)
 表面平滑性が非常に優れたPESフィルム(住友 ベークライト製、FST-U1340、厚み200μm)の小片(5 0mm×50mm)に油性マジックで印を付けておき、 の小片を搬送成膜するロール状の樹脂フィ ムに耐熱粘着テープ(日東電工製 No.360UL)を いて貼り付けた。成膜した後に、マジック 印部分をエタノールで溶かし、印上に成膜 れた膜を除去した。このようにして形成さ た膜の段差を、段差・表面あらさ・微細形 測定装置(KLA―Tencor Japan製、Alpha-Step IQ)を用 いて測定した。
(遮光膜の組成)
 得られた膜の組成(C/Ti原子数比、O/Ti原子数 )をXPS(VG Scientific社製ESCALAB220i-XL)で定量分析 した。なお定量分析の際には、膜の表面20~30n mをスパッタエッチングしてから、膜内部の 成分析を実施した。
(遮光膜の結晶性)
 膜の結晶性は、CuKα線を利用したX線回折測 において評価した。

(膜の反射率と透過率)
 波長400~800nmにおける膜の反射率と透過率は 分光光度計(日本分光社製V-570)にて測定し、 透過率から光学濃度を算出した。
 遮光性の指標である光学濃度は、分光光度 で測定される透過率(T)を次式により換算し 。光学濃度は4以上、最大反射率は10%未満で あることが必要である。
        光学濃度=Log(1/T)

(表面粗さ)
 樹脂フィルム基材と、その基材上に得られ 遮光性薄膜の表面粗さ(算術平均高さ)は、 面粗さ計((株)東京精密製、サーフコム570A)で 測定した。
(膜の表面抵抗)
 得られた遮光膜の表面抵抗は、抵抗率計(ダ イアインスツルメンツ製 Loresta―EP MCP-T360) 用いて四探針法で測定した。表面抵抗が100k /□以下である場合は導電性が良好と判断し 。
(耐熱性)
 膜の耐熱性については、大気オーブンにて 270℃で1時間の条件で、加熱処理を行い、膜 の色味変化の有無をチェックした。
(密着性)
 膜のフィルム基材に対する密着性について 、JIS C0021(クロスカット試験)で評価し、膜 がれが生じたときは×、膜が剥がれなかっ ときは○とした。

(炭化酸化チタン焼結体ターゲット)
 C/Ti原子数比が0.44~1.21、O/Ti原子数比が0.10~0.6 1の組成の異なる炭化酸化チタン焼結体ター ット(6インチφ×5mmt、純度4N)を用いた。
 炭化酸化チタンターゲットは、酸化チタン 炭化チタンと金属チタンの粉末の混合体か ホットプレス法で作製した。各原料の配合 合を変えることで種々のC/Ti原子数比、O/Ti 子数比の炭化酸化チタンターゲットを作製 ることができた。作製した焼結体の組成は 焼結体破断面の表面をスパッタリング法で った後、XPS(VG Scientific社製ESCALAB220i-XL)にて 量分析を行った。

(実施例1~5、比較例1~3)
 フィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.05μmであり 厚みが25μmであるポリイミド(PI)フィルムを いて、前記の成膜手順で、非加熱の基板に 定の膜厚の膜を形成した。フィルムの両面 同じ膜厚で、同じ組成の炭化酸化チタン膜 同じ製法にて形成した。成膜中の基板表面 温度は、フィルム基材に貼り付けたサーモ ベル(日油技研工業製)と放射温度計で測定し た。成膜中の基板表面温度は、いずれも80~85 であった。
 表1に、こうしてポリイミド(PI)フィルム基 に炭化酸化チタン膜を形成してフィルム状 光板を作製した結果を示す。表中には、膜 作製に使用した焼結体ターゲットの組成と 膜条件、得られた膜の組成、各面の膜厚の 和、波長400~800nmにおける膜の正反射率の平 値、波長400~800nmにおける光学濃度の平均値 膜表面の粗さ(Ra)、表面抵抗値、大気加熱時 色味変化についてまとめた。

 表1の実施例1~5、比較例1~3を参照すると、膜 組成はターゲット組成がほぼ反映されている ことがわかる。
 実施例1~5の膜は、C/Ti原子数比が0.62~1.23で、 O/Ti原子数比が0.21~0.58の炭化酸化チタン膜で り、本発明の遮光性薄膜であることが確認 れた。実施例1~5の結果から、本発明の遮光 薄膜は、含有炭素量がC/Ti原子数比で0.6~1.21 あり、含有酸素量がO/Ti原子数比で0.17~0.53で る炭化酸化チタン焼結体ターゲットを用い 、スパッタリング法で製造できることがわ る。
 膜の結晶性をX線回折で測定した結果、実施 例1~5、比較例1~3で作製された膜は、全て岩塩 型結晶構造の結晶性に優れた膜であることが 確認された。図5に実施例1の膜のX線回折パタ ーンを示した。岩塩型結晶構造に起因する111 回折ピークが35.8度付近に、200回折ピークが41 .0度付近に観察され、これら以外の回折ピー はみられなかった。TiC(JCPDSカード32-1383)、Ti O(JCPDSカード08-0117)も岩塩型結晶構造であるこ とから、これらの固溶体である炭化酸化チタ ンも同じ岩塩型構造を有するのである。
 実施例1~5の表面抵抗値は、452ω/□以下であ 、高い導電性を示している。よって、静電 の帯電による粉塵吸着を抑制することがで るため光学部材として有効である。
 一方、表1の比較例1~2で作製された膜は、膜 のO/Ti原子数比が本発明の組成範囲から逸脱 ており、比較例3の膜は、膜のC/Ti原子数比が 本発明で規定した組成範囲から逸脱している 。
 比較例1、実施例1~3、比較例2の膜の平均反 率に着目すると、膜のO/Ti原子数比が大きく ると、平均反射率は減少する傾向を示した 比較例2の膜はO/Ti原子数比が0.72と多く含ま るが、平均光学濃度が4.0未満であり、十分 遮光性を有していない。低反射性と十分な 光性を発揮するためには、実施例1~3のよう 、O/Ti原子数比が0.20~0.60である薄膜を使うこ とが重要である。
 また、比較例3のフィルム状遮光板は、膜の O/Ti原子数比が0.43であり上記の範囲内である 、膜のC/Ti原子数比が0.42であり、本発明で 定したC/Ti原子数比の範囲から逸脱して少な 。このような膜は、平均光学濃度は4.0より きくて十分な遮光性を有しているが、膜色 金色を呈していて反射率が非常に高い。膜 のC量が少なくなると、TiO膜に近い物性が現 れ、金色を呈するのである。よって、このよ うな反射率の高い膜は、光学部材の表面薄膜 として利用することができず、これを覆って 得たフィルム状遮光板は光学部材として有用 でない。
 実施例4~5も、膜の組成は本発明の範囲内で るため、比較例1~3のフィルム状遮光板と比 て反射率が低く、また平均光学濃度も4.0を えているため十分な遮光性を有している。 って、光学部材用のフィルム状遮光板とし 利用することができる。

(実施例6、比較例4)
 フィルム表面に形成した炭化酸化チタン膜 膜厚の総和を360nm(各面180nm)に変えるか(実施 例6)、240nm(各面120nm)に変えた(比較例4)以外は 実施例1と全く同様の方法でフィルム状遮光 板を作製した。この結果を表1に示す。
 表中の表面抵抗値が示すように、何れも、 電性を示している。よって、静電気の帯電 よる粉塵吸着の問題は発生しにくいといえ 。
 実施例6、比較例4の膜のX線回折測定から、 れも実施例1と同様に結晶性に優れた膜が得 られていることがわかった。
 総膜厚240nmの炭化酸化チタン膜を形成して 製した比較例4のフィルム状遮光板は、波長4 00~800nmにおける平均光学濃度が4.0未満であり 十分な遮光性を獲ることができなかった。 れに対して、総膜厚を360nmに変えた実施例6 フィルム状遮光板は、平均光学濃度が4.0を えているため、十分な遮光性を有している いえる。

(実施例7、比較例5) 
 フィルム表面に形成した炭化酸化チタン膜 総膜厚を500nm(各面250nm)に変えるか(実施例7) 220nm(各面110nm)に変えた(比較例5)以外は、実 例3と全く同様の方法でフィルム状遮光板を 作製した。この結果を表1に示す。
 表中の表面抵抗値が示すように、何れも、 電性を示している。よって、静電気の帯電 よる粉塵吸着の問題は発生しにくいといえ 。
 実施例7、比較例5の膜のX線回折測定から、 れも実施例1と同様に結晶性に優れた膜が得 られていることがわかった。
 総膜厚220nmの炭化酸化チタン膜を形成して 製した比較例5のフィルム状遮光板は、波長4 00~800nmにおける平均光学濃度が3.68であり、十 分な遮光性を獲ることができなかった。これ に対して、総膜厚を500nmに変えた実施例7のフ ィルム状遮光板は、平均光学濃度が4.0を超え ているため、十分な遮光性を有しているとい える。

(実施例8~12、比較例6~8)
 フィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.35μmであり 厚みが38μmであるポリイミドフィルムを用い た以外は、実施例1と同様にして炭化酸化チ ン膜を形成し、フィルム状遮光板を作製し 。フィルムの表面粗さは、サンドブラスト よるマット処理において形成した。各面の 厚は200nmと共通であり(総膜厚は400nm)、各面 膜の製法も同じである。この結果を表2に示 。
 表2中のフィルム状遮光板は、表面抵抗値が 示すように、何れも導電性を示している。よ って、静電気の帯電による粉塵吸着の問題は 発生しにくいといえる。
 表2中のフィルム状遮光板は、その炭化酸化 チタン膜のX線回折測定から、何れも実施例1 同様に結晶性に優れた膜が得られているこ がわかった。また、炭化酸化チタン膜の表 の表面粗さ(Ra)は何れも0.32μmであった。よ て、表2中のフィルム状遮光板の400~800nmにお る正反射率の平均値は、表面粗さが小さか た実施例1~11のフィルム状遮光板と比べて小 さい。しかし、表2中の実施例と比較例とを 較すると正反射率でも相違がみられる。す わち、実施例8~12は、本発明の組成範囲の炭 酸化チタン膜を用いて作製した本発明のフ ルム状遮光板であるが、O/Ti原子数比が本発 明の組成範囲を逸脱した炭化酸化チタン膜を 用いた比較例6のフィルム状遮光板と比べて 波長400~800nmにおける平均反射率の平均が低 。よって実施例8~12のフィルム状遮光板の方 光学部材として有用である。また、このフ ルム状遮光板は、膜がフィルム基材に対し 強く付着している。よって、耐久性に優れ ため、シャッターなどの光学部材に特に有 である。さらに実施例8~12のフィルム状遮光 板は、平均光学濃度も4.0以上であるため完全 な遮光性を有している。
 一方、比較例6は、膜のフィルム基材に対す る付着力が弱く、この面でも光学部材として 利用できない。比較例7は、O/Ti原子数比が、 発明の組成範囲より多く含まれる炭化酸化 タン膜を用いたフィルム状遮光板であるが 波長400~800nmにおける平均光学濃度が3.83であ るため、十分な遮光性を有していない。また 比較例8は、C/Ti原子数比が、本発明の組成範 より少ない炭化酸化チタン膜を用いたフィ ム状遮光板である。波長400~800nmにおける平 反射率は、同じフィルム基材を用いて作製 た実施例8~12と比べて高く、270℃の加熱試験 における変色もみられた。よって、リフロー 工程で組み立てるような光学部材として利用 することはできない。

(実施例13~17、比較例9~11)
 フィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.17μmであり 厚みが50μmであるポリイミド(PI)フィルムを いた以外は、実施例1と同様にして炭化酸化 タン膜を形成し、フィルム状遮光板を作製 た。フィルムの表面粗さは、サンドブラス によるマット処理において形成した。各面 膜厚は180nmと共通であり(総膜厚は360nm)、各 の膜の製法も同じである。結果を表3に示す 。
 表3中のフィルム状遮光板は、表面抵抗値が 示すように、何れも導電性を示している。よ って、静電気の帯電による粉塵吸着の問題は 発生しにくいといえる。
 表3中のフィルム状遮光板は、炭化酸化チタ ン膜のX線回折測定から、何れも実施例1と同 に結晶性に優れた膜が得られていることが かった。また、表3中のフィルム状遮光板は 、炭化酸化チタン膜の表面の表面粗さ(Ra)が れも0.15μmであった。よって、表3中のフィル ム状遮光板において、400~800nmにおける正反射 率の平均値は、表面粗さが小さかった実施例 1~11のフィルム状遮光板と比べて小さい。し し、表3中の実施例と比較例とを比較すると 反射率でも相違がみられる。すなわち、実 例13~17は、本発明の組成範囲にある炭化酸 チタン膜を用いた本発明のフィルム状遮光 であるが、O/Ti原子数比が本発明の組成範囲 逸脱した比較例9のフィルム状遮光板と比べ て、波長400~800nmにおける平均反射率の平均が 低い。よって実施例13~17のフィルム状遮光板 方が、光学部材として有用である。このフ ルム状遮光板は、膜がフィルム基材に対し 強く付着している。よって、耐久性に優れ ため、シャッターなどの光学部材に特に有 である。実施例13~17のフィルム状遮光板は 平均光学濃度も4.0以上であるため完全な遮 性を有している。
 一方、比較例9は、膜のフィルム基材に対す る付着力が弱く、この面でも光学部材として 利用できない。比較例10は、O/Ti原子数比が、 本発明の組成範囲より多く含まれる炭化酸化 チタン膜を用いたフィルム状遮光板であるが 、波長400~800nmにおける平均光学濃度が3.71で るため、十分な遮光性を有していない。ま 、比較例11は、C/Ti原子数比が、本発明の組 範囲より少ない炭化酸化チタン膜を用いた ィルム状遮光板である。波長400~800nmにおけ 平均反射率は、同じフィルム基材を用いて 製した実施例13~17と比べて高く、金色を呈し ていた。よって、光学部材として利用するこ とができない。

(実施例18~22、比較例12~14)
 フィルム表面の表面粗さ(Ra)が0.72μmであり 厚みが100μmであるポリエチレンナフタレー (PEN)フィルムを用いた以外は、実施例1と同 にして炭化酸化チタン膜を形成してフィル 状遮光板を作製した。フィルムの表面粗さ 、サンドブラストによるマット処理におい 形成した。各面の膜厚は180nmと共通であり( 膜厚は360nm)、各面の膜の製法も同じである 結果を表4に示す。
 表4中のフィルム状遮光板は、表面抵抗値が 示すように、何れも導電性を示している。よ って、静電気の帯電による粉塵吸着の問題は 発生しにくいといえる。
 表4中のフィルム状遮光板は、炭化酸化チタ ン膜のX線回折測定から、何れも実施例1と同 に結晶性に優れた膜が得られていることが かった。また、表4中のフィルム状遮光板は 、炭化酸化チタン膜の表面の表面粗さ(Ra)が れも0.69μmであった。よって、表4中のフィル ム状遮光板の400~800nmにおける正反射率の平均 値は、表面粗さが小さかった実施例1~11のフ ルム状遮光板と比べて全体的に小さい。し し、表4中の実施例と比較例とを比較すると 反射率でも相違がみられる。すなわち、実 例18~22は、本発明の組成範囲にある炭化酸 チタン膜を用いた本発明のフィルム状遮光 であるが、O/Ti原子数比が本発明の組成範囲 逸脱した比較例12のフィルム状遮光板と比 て、波長400~800nmにおける平均反射率が低い よって実施例18~22のフィルム状遮光板の方が 、光学部材として有用である。このフィルム 状遮光板は、膜がフィルム基材に対して強く 付着しており、耐久性に優れるため、シャッ ターなどの光学部材に特に有用である。実施 例18~22のフィルム状遮光板は、平均光学濃度 4.0以上であるため完全な遮光性を有してい 。
 一方、比較例12は、膜のフィルム基材に対 る付着力が弱く、この面でも光学部材とし 利用できない。比較例13は、O/Ti原子数比が 本発明の組成範囲より多く含まれる炭化酸 チタン膜を用いたフィルム状遮光板である 、波長400~800nmにおける平均光学濃度が3.73で るため、十分な遮光性を有していない。ま 、比較例14は、C/Ti原子数比が、本発明の組 範囲より少ない炭化酸化チタン膜を用いた ィルム状遮光板である。波長400~800nmにおけ 平均反射率は、同じフィルム基材を用いて 製した実施例18~22と比べて高く、金色を呈 ていた。よって、光学部材として利用する とができない。

(実施例23~25、比較例15)
 表5には、厚みが188μmであるポリエチレンテ レフタレート(PET)フィルム(厚み3μmのアクリ ハードコートがフィルムの両面に施されて る)を用いた以外は、実施例1と同様にして、 その片面のみに炭化酸化チタン膜を形成して フィルム状遮光板を作製した。成膜するフィ ルム面は、サンドブラストによるマット処理 において表面凹凸を形成し、その表面粗さ(Ra )を0.20μmとした。炭化酸化チタン膜は実施例1 と同じターゲットを使用し、酸素を0.05%ほど 合したアルゴンガスを成膜ガスとして用い 条件で成膜した。成膜ガスに酸素を混合せ に成膜した実施例1の膜と比べて、酸素が多 めで炭素が少なめに含まれた膜が得られたが 、本発明の組成範囲内であった。膜厚は、400 nm(実施例23)、310nm(実施例24)、262nm(実施例25)、 245nm(比較例15)と変えたものを作製した。結果 を表5に示す。
 表5中のフィルム状遮光板は、膜表面の表面 抵抗値が示すように、何れも導電性を示して いる。よって、静電気の帯電による粉塵吸着 の問題は発生しにくいといえる。
 表5中のフィルム状遮光板の膜は、何れも弱 い回折ピークが観察され、実施例1~22の膜と べて結晶性に劣ってはいるが、何れも結晶 であることを確認した。結晶膜であるため 同様の条件で評価した膜の密着性について 十分であった。また、表5中のフィルム状遮 板は、炭化酸化チタン膜の表面の表面粗さ( Ra)が何れも0.18μmであった。よって、表5中の ィルム状遮光板において、400~800nmにおける 反射率の平均値は、表面粗さが小さかった 施例1~11のフィルム状遮光板と比べて全体的 に小さい。また、実施例23~25は、膜の総膜厚 本発明の範囲内であるが、波長400~800nmにお る平均光学濃度は4.0以上であり、十分な遮 性を示した。
 これに対して、比較例15は、膜厚が本発明 範囲よりも薄く、平均光学濃度は4.0未満で り、十分な遮光性を示さず、光学部材とし 利用することができない。
 よって、片面に膜を形成する場合でも、260n m以上の膜厚が必要であるといえる。

(比較例16)
 実施例1において、ターゲットと基板間距離 を200mmと広げた以外は同じ条件で、同じ構造 フィルム状遮光フィルムを試作した。
 得られた膜は、組成がC/Ti原子数比が0.92、O/ Ti原子数比が0.57であり、実施例1の膜と比べ 酸素の含有量が多く含まれることがわかっ が、本発明の組成範囲内であった。波長400~8 00nmにおける平均反射率は37.5%であり、平均光 学濃度も4.0を超えていた。270℃の大気加熱試 験における膜の色味変化もみられなかった。
 しかし、XRD測定による膜の結晶性評価では 図6に示すようなX線回折パターンとなり、 は非晶質構造となっていることがわかった 同様の条件で評価した膜の密着性について 、膜剥がれが見られ、光学部材として利用 きないことがわかった。

(比較例17)
 実施例24において、C/Ti原子数比が0.99でO/Ti 子数比が0.05の炭化酸化チタン焼結体ターゲ トを用いたことと、成膜時のスパッタリン ガス中への酸素混合量を0.10%に変えた以外 同じ製造条件で、膜厚・膜構成が実施例24と 同様のフィルム状遮光板を作製した。
 得られた310nmの膜の組成は、C/Ti原子数比が0 .81であり、O/Ti原子数比が0.58であり、本発明 規定した膜の組成範囲内であった。
 しかし、膜のX線回折測定では、回折ピーク は観察されず、得られた膜は非晶質構造であ ることがわかった。スパッタリングガス中に 導入した酸素量が多すぎため、プラズマ中に 発生した酸素イオンが、ターゲット基板間の 電界で加速されて膜を衝撃し、結晶膜の育成 を妨げたものと思われる。
 得られた膜の密着性を同様に評価したとこ 、膜剥がれがみられた。これは膜が非晶質 であったからである。このような遮光膜が がれやすい製品は、光学部材として利用す ことができない。

(比較例18)
 PETフィルムの内部に黒色微粒子を含浸させ 得た、従来からあるフィルム状遮光板(ソマ ール社製ソマブラック)を試料として用い、 れに遮光性薄膜を形成することなく、その 学濃度、表面抵抗値を評価した。
 その結果、厚み50μmでは、波長400~800nmにお る平均光学濃度は4.0以上であったが、厚み 38μmとなると平均光学濃度は3.7であり、厚み が25nmとなると平均光学濃度は2.5であった。 れにより、薄くなるほど遮光性はより不十 になることがわかった。よって、フィルム 内部に黒色微粒子を含浸させて得たフィル 状遮光板では、本発明のフィルム状遮光板 比べて、遮光性も38μm以下になると不十分で あり、シャッターや絞りなどの光学部材とし て利用できないことがわかった。
 また、何れも導電性はないため、静電気が 生しやすく、帯電して粉塵を吸着するなど 問題が生じやすい。

(実施例26)
 本発明のフィルム状遮光フィルムの重量を 定したところ、50μmの厚みを有する遮光板( 施例13~17)で70g/m 2 、25μmの厚みを有する遮光板(実施例1~7)で37g/m 2 であった。これを同じ厚みのAl製の遮光板と べると、本発明のフィルム状遮光フィルム 重量は45%程度であり、本発明の方が明らか 軽量であることを確認した。
 よって、本発明のフィルム状遮光フィルム シャッター羽根に用いると、軽量化による 電力駆動に対応可能となり、駆動モーター 小型化にも貢献できる。このことから、本 明のフィルム状遮光フィルムは、高速シャ ターのシャッター羽根材として有用といえ 。

 本発明のフィルム状遮光板は、低電力駆動 対応可能な高速シャッターのシャッター羽 材としても利用でき、駆動モーターの小型 にも貢献できる。軽量化による光量調整用 り装置や機械式シャッターの小型化が実現 る。
 また、本発明のフィルム状遮光板は、液晶 ロジェクターの光量調整用絞り装置の絞り 根材や、リフロー工程による組み立てに対 できる固定絞り材やシャッター羽根材とし 利用することができる。

0 フィルム状遮光板
1 樹脂フィルム
2 遮光性薄膜
5 巻き出しロール
6 真空ポンプ
7 真空槽
8 冷却キャンロール
9 巻き取りロール
10 マグネトロンカソード
11 ターゲット
12 隔壁
14 耐熱遮光羽根
15 ガイド孔
16 ガイドピン
17 ピン
18 基板
19 孔
20 開口部