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Patent Searching and Data


Title:
FINE CARBON FIBER, FINE SHORT CARBON FIBER, AND MANUFACTURING METHOD FOR SAID FIBERS
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/110570
Kind Code:
A1
Abstract:
A new fine carbon fiber is manufactured by vapor deposition. Graphite planes consisting solely of carbon atoms form bell-shaped structural units having closed peaks and open bases, and the angle θ between the generatrices of the bell bases and the fiber axis is less than 15°. The bell-shaped structural units stack to form aggregates of 2 to 30 structural units, all the structural units in one aggregate having a common central axis, and the aggregates connect head-to-tail with gaps therebetween, thereby forming fibers. Furthermore, fine short carbon fibers with excellent dispersibility can be obtained by making the fine carbon fibers into short fibers.

Inventors:
NISHIO MASAYUKI (JP)
MATSUURA TSUNAO (JP)
FUKUDA KENJI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/054210
Publication Date:
September 11, 2009
Filing Date:
March 05, 2009
Export Citation:
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Assignee:
UBE INDUSTRIES (JP)
NISHIO MASAYUKI (JP)
MATSUURA TSUNAO (JP)
FUKUDA KENJI (JP)
International Classes:
D01F9/127; B01J23/75; C01B31/02
Foreign References:
JP2003221217A2003-08-05
JP2006103996A2006-04-20
JP2004238791A2004-08-26
JPH0364606B21991-10-07
JPH0377288B21991-12-10
JPH09502487A1997-03-11
JP2004299986A2004-10-28
US4855091A1989-08-08
JP2003073928A2003-03-12
JP2004360099A2004-12-24
JP2004300631A2004-10-28
JPH02503334A1990-10-11
JPS62500943A1987-04-16
JP2004241300A2004-08-26
JP2006103996A2006-04-20
Other References:
See also references of EP 2251465A1
M.ENDO; Y.A.KIM ET AL., APPI.PHYS.LETT., vol. 80, 2002, pages 1267 - 1
H.MURAYAMA; T.MAEDA, NATURE, vol. 345, no. 28, 1990, pages 791 - 793
REN Z. F., APPLIED PHYSICS A, vol. 73, 2001, pages 259 - 264
GADELLE P., CARBON, vol. 41, 2003, pages 2949 - 2959
LIESBETH C. VENEMA ET AL., APPL. PHYS. LETT., vol. 71, 1997, pages 2629
J. LIU ET AL., SCIENCE, vol. 280, 1998, pages 1253
N. PIERARD ET AL., CHEM. PHYS. LETT., vol. 335, 2001, pages 1
Z. GU ET AL., NANO LETT., vol. 2, 2002, pages 1009
KAZUYUKI TAJI: "Text in the Seminar for Solubilization and Dispersion of Carbon Nanotube in a Polymer/Solvent", 31 March 2006, TECHNICAL INFORMATION INSTITUTE CO., LTD.
ISHIOKA M., CARBON, vol. 30, 1992, pages 975 - 979
Attorney, Agent or Firm:
ITO, Katsuhiro et al. (JP)
Katsuhiro Ito (JP)
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Claims:
 気相成長法により製造される微細な炭素繊維であって、
 炭素原子のみから構成されるグラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さく、
 前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2~30個積み重なって集合体を形成し、
 前記集合体が、Head-to-Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成していることを特徴とする微細な炭素繊維。
 前記集合体胴部の端の外径Dが5~40nm、内径dが3~30nmであり、該集合体のアスペクト比(L/D)が2から30であることを特徴とする請求項1記載の微細な炭素繊維。
 含有する灰分が4重量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の微細な炭素繊維。
 X線回折法により測定される微細な炭素繊維の002面のピーク半価幅W(単位:degree)が、2~4であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の微細な炭素繊維。
 X線回折法により測定される微細な炭素繊維のグラファイト面間隔(d002)が0.341~0.345nmであることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の微細な炭素繊維。
 マグネシウムが置換固溶したコバルトのスピネル型酸化物を含む触媒上に、CO及びH 2 を含む混合ガスを供給して反応させ、微細な炭素繊維を成長させることを特徴とする微細な炭素繊維の製造方法。
 前記スピネル型酸化物を、Mg x Co 3-x O y で表したとき、マグネシウムの固溶範囲を示すxの値が、0.5~1.5であることを特徴とする請求項6記載の微細な炭素繊維の製造方法。
 前記スピネル型酸化物のX線回折測定による結晶格子定数a(立方晶系)が0.811~0.818nmであることを特徴とする請求項6または7記載の微細な炭素繊維の製造方法。
 前記混合ガス中のCO/H 2 の容積比が、70/30~99.9/0.1の範囲であり、反応温度が400~650℃の範囲であることを特徴とする請求項6~8のいずれか1項に記載の微細な炭素繊維の製造方法。
 気相成長法により製造される微細な炭素繊維を短繊維化した微細な炭素短繊維であって、グラファイト網面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造単位を形成し、前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2~30個層状に積み重なって集合体を形成し、前記集合体が、Head-to-Tail様式で1個ないし数十個連結していることを特徴とする微細な炭素短繊維。
 前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さいことを特徴とする請求項10記載の微細な炭素短繊維。
 前記集合体胴部の端の外径Dが5~40nm、内径dが3~30nmであり、該集合体のアスペクト比(L/D)が2から30であることを特徴とする請求項10または11記載の微細な炭素短繊維。
 含有する灰分が4重量%以下であることを特徴とする請求項10~12のいずれか1項に記載の微細な炭素短繊維。
 X線回折法により測定される微細な炭素繊維の002面のピーク半価幅W(単位:degree)が、2~4であることを特徴とする請求項10~13のいずれか1項に記載の微細な炭素短繊維。
 X線回折法により測定される微細な炭素繊維のグラファイト面間隔(d002)が0.341~0.345nmであることを特徴とする請求項10~14のいずれか1項に記載の微細な炭素短繊維。
 請求項1~5のいずれか1項に記載の炭素繊維にずり応力を加えて短繊維化して製造される微細な炭素短繊維。
 請求項6~9のいずれか1項に記載の製造方法により微細な炭素繊維を製造した後、ずり応力を加えてさらに短繊維化することを特徴とする微細な炭素短繊維の製造方法。
 導電材、導電助材、熱伝導材、摺動材、または研磨材としての請求項10~16のいずれか1項に記載の微細な炭素短繊維の使用。
Description:
微細な炭素繊維、微細な炭素短 維およびそれらの製造方法

 本発明は導電性に優れる微細な炭素繊維 よび微細な炭素短繊維、並びにその炭素繊 および炭素短繊維を効率良く製造する方法 関する。詳しくは、触媒を使用する気相成 法による微細な炭素繊維の製造方法、およ その後、この微細な炭素繊維にずり応力を えて、さらに短繊維化して得られる微細な 素短繊維の製造方法に関する。

 円筒チューブ状、魚骨状(フィッシュボー ン、カップ積層型)、トランプ状(プレートレ ト)等に代表される微細な炭素繊維は、その 形状、形態から様々な応用が期待されている 。とりわけ円筒チューブ状の微細な炭素繊維 (カーボンナノチューブ)は従来の炭素材料と 較し、強度、導電性等に優れるため、次世 の導電性材料として注目を集めている。

 多層カーボンナノチューブ(多層同心円筒 状)(非魚骨状)は、例えば、特公平3-64606、特 平3-77288、特表平9-502487、特開2004-299986等に記 載されている。

 また、魚骨状(フィッシュボーン)型炭素 維〔カップ積層型炭素繊維〕は、例えば、US P4,855,091、M.EndoおよびY.A.Kimらによる文献〔Appl .Phys.Lett.,vol80(2002)1267~〕、特開2003-073928、特開 2004-360099等に記載されている。この構造は、 のないカップを積層した形状である。

 さらに、プレートレット型カーボンナノ ァイバー(トランプ状)は、例えば、H.Murayama よびT.maedaによる文献〔Nature, vol345[No28](1990) 791~793〕、特開2004-300631等に記載されている。

 カーボンナノチューブに代表される微細 炭素繊維の製造方法として、従来、アーク 電法、気相成長法、レーザー法、鋳型法等 知られている。この中で触媒粒子を用いる 相成長法は、安価な合成方法として注目さ ているが、大量生産方法は確立されていな 。また生成するカーボンナノチューブは結 性の低い不均質な繊維となるため、高い導 性を要求される場合には黒鉛化処理が必要 ある。

 例えば、特表平9-502487(特許文献1)には、 来技術として、特表平2-503334又は特開昭62-500 943に記載の方法で製造される炭素フィブリル 原料(円筒チューブ状)のXRD(X線回折)測定にお るグラファイト面間隔(d002)が0.354nmを示し、 結晶性が充分でなくそのままでは導電性が低 いことが記載されている。そして、このフィ ブリル原料を2450℃で処理することにより、 ラファイト面間隔(d002)が0.340nmとなり結晶性 改善されたフィブリル材料が得られること 記載されている。

 カーボンナノチューブ(多層同心円筒状) 、グラファイト網面が繊維軸と平行であり これに沿って電子が流れるため、単独の繊 における長軸方向の導電性は良好である。 かしながら、隣接する繊維間での導電性に しては、側周面が円筒状に閉じたグラファ ト網面で構成されているため、π電子の飛び 出しによるジャンピング効果(トンネル効果) 期待できない。従って、カーボンナノチュ ブを導電性フィラーとして利用したポリマ とのコンポジットにおいては、繊維同士の 触が充分に確保されないと導電性が良好に 現されないという問題がある。

 また、この構造のカーボンナノチューブ 円筒状グラファイト網面は、SP2結合の炭素 筒で構成されているため、一般的に使用さ る工業的な方法(ボールミル、ビーズミル等 )で強固な炭素SP2結合を切断して繊維をさら 短繊維化し、繊維の表面に構造欠陥を与え ことなく、工業的に利用可能な微細な炭素 繊維を得ることは困難である。

 一方、魚骨状、プレートレット型(トラン プ状)の微細繊維は、側周面にグラファイト 面の開放端が露出するため、隣接する繊維 の導電性はカーボンナノチューブに比べ向 する。しかしながら、グラファイト網面のC が繊維軸方向に対し傾斜あるいは直交して 層した構造であるため、単独の繊維におけ 繊維軸長軸方向の導電性は低下してしまう

 一方、短繊維化の観点では、魚骨状(フィ ッシュボーン型)炭素繊維は、特開2004-241300に 記載されているように、繊維軸方向に傾斜を 有するコーン形状の炭素基底面が積層した構 造であり、炭素基底面間の層剥離や層間のず れを生じさせることが出来るため、繊維をさ らに短繊維化することは容易である。しかし ながら、上述のように繊維軸方向の導電性が 著しく低いため、魚骨状(フィッシュボーン) 炭素繊維のみならず、さらに短繊維化され ものも導電材としては適さない。

 プレートレット型(トランプ状)の構造も 本的に魚骨状(フィッシュボーン)型炭素繊維 〔カップ積層型炭素繊維〕と同様に繊維軸に 対し垂直に炭素基底面円盤が積層した構造で あるため、さらに短繊維化することは容易で あるが、プレートレット型カーボンナノファ イバーのみならず、さらに短繊維化されたも のも、魚骨状(フィッシュボーン)型炭素繊維 場合と同様の理由で導電材としては適さな 。

 上記の構造に加え、特開2006-103996(特許文 2)では、結晶格子の中核をなす炭素原子に 学的に結合した窒素原子を含み、一端が開 他端が閉じた釣鐘型の多層物質が単位構造 ニットとなり1つのユニットの閉じた端部が のユニットの開いた端部へ差し込まれた形 の繊維構造体とその製造方法が開示されて る。しかし、この繊維は、グラファイト網 において炭素原子と化学的に結合した窒素 子が含まれるため、グラファイト網面に構 的歪みが生じ、結晶性が低い、即ち導電性 低いという問題がある。

 またApplied Physics A 2001(73)259-264(Ren Z. F. ら)(非特許文献1)においても、“bamboo-structure ”と称した、前記特許文献2(特開2006-103996)類 の繊維構造が報告されている。この構造体 合成は、シリカに鉄を担持した触媒を使用 、アセチレン20vol%/アンモニア80vol%の混合ガ スを使用して、750℃での気相成長法によって 実施されている。この報告では、繊維構造体 の化学組成分析は全く記述されていないが、 原料中に含まれる不活性でない窒素分の濃度 が非常に高いことから(59wt%)、該繊維構造体 も化学的に炭素原子と結合した窒素原子が まれ、構造的乱れを生じていると考えられ 。また触媒重量に対する生成物重量の比が6 度と著しく低いため、繊維成長が充分でな アスペクト比が小さいという点も問題であ 。

 さらに、Carbon 2003(41)2949-2959(Gadelle P. ら)( 特許文献2)においても、繊維を構成するグラ ファイト網面がコーン形状で、その開放端が 繊維側周面に適当な間隔で露出した構造が報 告されている。この文献では、クエン酸で共 沈させたコバルト塩及びマグネシウム塩の混 合物0.2gをH 2 で活性化処理した後、CO及びH 2 から成る原料ガス(H 2 濃度:26vol%)と反応させることにより、4.185gの 成物を得ている。しかし、この方法で得ら た繊維構造では、コーン形の側周面と繊維 のなす角は22°程度と、繊維軸に対して大き く傾斜している。このため、単独の繊維の長 軸方向の導電性については、前記の魚骨状炭 素繊維と同様の問題がある。また、繊維成長 が不充分でアスペクト比が小さいことから、 ポリマーとのコンポジットにおいて導電性や 補強性を付与することが困難である。更に、 触媒重量に対する生成物重量が21と小さいた 、製造法として効率的でないばかりでなく 不純物含量が多くなるために用途が制限さ る。

 上記の如く様々な構造を有する微細な炭素 維およびその製法が提案されているが、こ ような微細な炭素繊維をさらに短繊維化す 方法についての提案は少ない。例えば、
(1)走査型トンネル顕微鏡(STM)内で繊維に通電 切断する方法(非特許文献3)
この方法では繊維を一本一本切断するので大 量生産に適さない。
(2)酸と硝酸の混酸を用いて酸化分解と超音波 切断を併進させる方法(非特許文献4)
この方法では炭素壁の損傷が大きいという問 題点がある。また酸化による収率低下の問題 もある。
(3)ボールミル切断方法(非特許文献5)
この方法では繊維側面に大きな損傷が生じ、 同時にボールミルから不純物が混入する。
(4)フッ素化後、加熱切断する方法(非特許文 6)
この方法もフッ素化部分が脱離するので収率 に問題があり、装置が大掛かりになるという 問題もある。
(5)高速回転分散機を用い溶媒中で切断する方 法(非特許文献7)
この方法は簡便ではあるが、大量処理には問 題がある。

特表平9-502487号公報

特開2006-103996号公報 Applied Physics A 2001(73)259-264(Ren Z. F.ら) Carbon 2003(41)2949-2959(Gadelle P.ら) Liesbeth C.Venema etal,Appl.Phys.Lett.71,2629(1997) J.Liu etal,Science 280,1253(1998) N.Pierard etal,Chem.Phys.Lett.335,1(2001) Z.Gu etal,Nano Lett.2,1009(2002) カーボンナノチューブのポリマー・溶媒 への可溶化・分散技術セミナーテキスト(田 和幸 技術情報協会 2006年3月31日)

 以上のように、従来のカーボンナノチュ ブ等の微細な炭素繊維は、単独の繊維にお る長軸方向の導電性と隣接する繊維間での 電性のバランスの点で問題があった。また 効率的かつ品質の安定した製造方法が確立 れておらず、商業的な利用にはコストと技 で課題がある。一方、現行の粒状カーボン ラックは、ポリマーとのコンポジット化に いて、性能、機能の面で満足できる状況に るとはいえない。

 従来のカーボンナノチューブ等の微細な 素繊維には、さらなる問題として、分散性 悪いという点が挙げられる。例えば、大量 産に適していると考えられる気相法で合成 れるカーボンナノチューブは、繊維が互い 複雑に絡まった二次構造を形成しているた 、樹脂等と混合する際には、分散性が悪く る。

 本発明は、ポリマーや粉体とのコンポジ ト化における分散性や混練性を改善し、コ ポジットの加工性に優れ、またコンポジッ の導電性、熱伝導性、摺動性、補強等の機 発現に優れる微細な炭素繊維および/または 微細な炭素短繊維、及びそれら効率的な製造 方法を提供することを目的とする。

 本発明は、以下の事項に関する。なお、 発明において、「微細な炭素繊維」とは、 述する気相成長法により得られる、図2に模 式的に示される連結した炭素繊維のことを言 う。また、「微細な炭素短繊維」とは、「微 細な炭素繊維」にずり応力を加えて連結がい くつか切断された、図10および図11に示され 炭素繊維のことを言う。

 1. 気相成長法により製造される微細な炭素 繊維であって、
 炭素原子のみから構成されるグラファイト 面が、閉じた頭頂部と、下部が開いた胴部 を有する釣鐘状構造単位を形成し、前記胴 の母線と繊維軸とのなす角θが15°より小さ 、
 前記釣鐘状構造単位が、中心軸を共有して2 ~30個積み重なって集合体を形成し、
 前記集合体が、Head-to-Tail様式で間隔をもっ 連結して繊維を形成していることを特徴と る微細な炭素繊維。

 2. 前記集合体胴部の端の外径Dが5~40nm、 径dが3~30nmであり、該集合体のアスペクト比( L/D)が2から30であることを特徴とする上記1記 の微細な炭素繊維。

 3. 含有する灰分が4重量%以下であること 特徴とする上記1または2記載の微細な炭素 維。

 4. X線回折法により測定される微細な炭 繊維の002面のピーク半価幅W(単位:degree)が、2 ~4であることを特徴とする上記1~3のいずれか1 項に記載の微細な炭素繊維。

 5. X線回折法により測定される微細な炭 繊維のグラファイト面間隔(d002)が0.341~0.345nm あることを特徴とする上記1~4のいずれか1項 に記載の微細な炭素繊維。

 6. マグネシウムが置換固溶したコバルトの スピネル型酸化物を含む触媒上に、CO及びH 2 を含む混合ガスを供給して反応させ、微細な 炭素繊維を成長させることを特徴とする微細 な炭素繊維の製造方法。

 7. 前記スピネル型酸化物を、Mg x Co 3-x O y で表したとき、マグネシウムの固溶範囲を示 すxの値が、0.5~1.5であることを特徴とする上 6記載の微細な炭素繊維の製造方法。

 8. 前記スピネル型酸化物のX線回折測定 よる結晶格子定数a(立方晶系)が0.811~0.818nmで ることを特徴とする上記6または7記載の微 な炭素繊維の製造方法。

 9. 前記混合ガス中のCO/H 2 の容積比が、70/30~99.9/0.1の範囲であり、反応 度が400~650℃の範囲であることを特徴とする 上記6~8のいずれか1項に記載の微細な炭素繊 の製造方法。

 10. 気相成長法により製造される微細な 素繊維を短繊維化した微細な炭素短繊維で って、グラファイト網面が、閉じた頭頂部 、下部が開いた胴部とを有する釣鐘状構造 位を形成し、前記釣鐘状構造単位が、中心 を共有して2~30個層状に積み重なって集合体 形成し、前記集合体が、Head-to-Tail様式で1個 ないし数十個連結していることを特徴とする 微細な炭素短繊維。

 11. 前記胴部の母線と繊維軸とのなす角θ が15°より小さいことを特徴とする上記10記載 の微細な炭素短繊維。

 12. 前記集合体胴部の端の外径Dが5~40nm、 径dが3~30nmであり、該集合体のアスペクト比 (L/D)が2から30であることを特徴とする上記10 たは11記載の微細な炭素短繊維。

 13. 含有する灰分が4重量%以下であること を特徴とする上記10~12のいずれか1項に記載の 微細な炭素短繊維。

 14. X線回折法により測定される微細な炭 繊維の002面のピーク半価幅W(単位:degree)が、 2~4であることを特徴とする上記10~13のいずれ 1項に記載の微細な炭素短繊維。

 15. X線回折法により測定される微細な炭 繊維のグラファイト面間隔(d002)が0.341~0.345nm であることを特徴とする上記10~14のいずれか1 項に記載の微細な炭素短繊維。

 16. 上記1~5のいずれか1項に記載の炭素繊 にずり応力を加えて短繊維化して製造され 微細な炭素短繊維。

 17. 上記6~9のいずれか1項に記載の製造方 により微細な炭素繊維を製造した後、ずり 力を加えてさらに短繊維化することを特徴 する微細な炭素短繊維の製造方法。

 18. 導電材、導電助材、熱伝導材、摺動 、または研磨材としての上記10~16のいずれか 1項に記載の微細な炭素短繊維の使用。

 本発明の微細な炭素繊維では、繊維を構 するグラファイト網面の開放端が繊維側周 に適当な間隔で露出していると共に、グラ ァイト網面からなる側周面と繊維軸とのな 角が小さい繊維構造を有する。この微細な 素繊維の釣鐘状構造単位集合体の繊維軸方 の結合は連続した炭素SP2結合であり、その 合力は大きく、また良好な繊維軸方向の導 性が得られる。また、本炭素繊維は繊維軸 向に対してアスペクト比が2から150程度の頻 度でグラファイト網面の開放端が繊維側周面 に適当な間隔で露出している部分が存在する 。このため、単独の繊維における長軸方向の 導電性と隣接する繊維間での導電性とをバラ ンスよく両立させることができる。

 また、釣鐘状構造単位集合体の開放端の 分では、繊維軸に対し傾斜を持った炭素基 面で接合部が形成されている。言い換えれ 、この接合部は主として炭素基底面間の結 、即ちファンデルワールス力という緩やか 結合力で釣鐘状構造単位集合体が接合して る部分といえる。したがって、この部分に り応力が加わると、容易に炭素基底面間で りが生じ、釣鐘状構造単位集合体は接合部 ら滑り抜ける、あるいは引き抜けるように 断される。

 微細な炭素繊維を微細な炭素短繊維へ短 維化する方法は、従来の短繊維化技術とし (3)で記載したボールミル切断方法と、手段 しては同一である。しかし、従来の微細な 素繊維は、繊維のほぼ全体が炭素SP2結合で 来ているため、この結合を切断するには多 のエネルギーを要す上、切断された繊維の 壁は大きな損傷を受ける。しかしながら、 発明の微細な炭素繊維は、釣鐘状構造単位 合体がファンデルワールス力で接合した構 であるため、小さなエネルギーで接合部を 離することができ、かつ小さなエネルギー 短繊維化することによって、得られた微細 炭素短繊維は何ら損傷を受けることはない さらに、小さなエネルギーで短繊維化する とは、ボールミル容器やボールに与える衝 が小さく、これら容器やボールが削られて 生するコンタミネーションが少ないことも 徴である。このことは、実施例の表2に記載 された短繊維化前後の繊維(参考例B1と実施例 B1-6)について、XRDにより測定される炭素層間 が大きく変化しないこと、真比重がほとん 変化しないこと、および表面積が短繊維化 相当する程度以上には増加しないことから らかである。

 また、微細な炭素繊維の製造方法によれ 、不純物の少ない微細な炭素繊維を効率的 製造することができるので、これにずり応 を加えて得られる微細な炭素短繊維の純度 高く、加えて、短繊維化、すなわち接合部 間の分離に大きなエネルギーを要さないの 、ボールミルなどからの不純物汚染を軽微 ものとすることが出来る。さらには、本発 の微細な炭素短繊維を用いることで、樹脂 粉体と均一に混合する際に要するエネルギ が小さくなる。例えば、樹脂との混合にお ては、高温下で大きなせん断力を必要とし いので、樹脂特性を維持した導電性を有す 複合材を製造することが可能であり、また 固体との混合においては、固体の結晶性を 壊することなく固体特性を維持した導電性 有する複合材を製造することが可能である

(a)微細な炭素繊維を構成する最小構造 位(釣鐘状構造単位)を模式的に示す図であ 。(b)釣鐘状構造単位が、2~30個積み重なった 合体を模式的に示す図である。 (a)集合体が間隔を隔てて連結し、繊維 構成する様子を模式的に示す図である。(b) 合体が間隔を隔てて連結する際に、屈曲し 連結した様子を模式的に示す図である。 実施例A1で製造した微細な炭素繊維のTE M写真像である。 実施例A2で製造した微細な炭素繊維のTE M写真像である。 実施例A3で製造した微細な炭素繊維のTE M写真像である。 参考例A1で製造した微細な炭素繊維のTE M写真像である。 評価実験結果をまとめたグラフである 実施例A3で製造した微細な炭素繊維のTE M写真像である。 微細な炭素繊維が、ずり応力により微 な炭素短繊維に引き抜かれる様子を模式的 示す図である。 実施例B1-6で短繊維化された微細な炭 短繊維のTEM像である。 図10と同様に実施例B1-6で短繊維化され た微細な炭素短繊維のTEM像である。 実施例B1-6で短繊維化された微細な炭素短繊 の炭素コートLiFePO 4 への分散状態を示すSEM像である。 参考例B1の短繊維化される前の微細な炭素繊 の炭素コートLiFePO 4 への分散状態を示すSEM像である。 比較例B2のアセチレンブラックの炭素コートL iFePO 4 への分散状態を示すSEM像である。 比較例B3のケッチェンブラックの炭素コートL iFePO 4 への分散状態を示すSEM像である。 ボールミル処理による粒度分布(繊維 分布)の変化を示す図である。 (a)ボールミ 前 (b)ボールミル6時間 (a)ボールミル12時間 (a)ボールミル24時間

符号の説明

11 構造単位
12 頭頂部
13 胴部
21、21a、21b、21c 集合体

 本発明の微細な炭素繊維および微細な炭 短繊維は、図1(a)に示すような釣鐘状構造を 最小構造単位として有する。釣鐘(temple bell) 、日本の寺院で見られ、比較的円筒形に近 胴部を有しており、円錐形に近いクリスマ ベルとは形状が異なる。図1(a)に示すように 、構造単位11は、釣鐘のように、頭頂部12と 開放端を備える胴部13とを有し、概ね中心軸 の周囲に回転させた回転体形状となっている 。構造単位11は、炭素原子のみからなるグラ ァイト網面により形成され、胴部開放端の 周状部分はグラファイト網面の開放端とな 。なお、図1(a)において、中心軸および胴部 13は、便宜上直線で示されているが、必ずし 直線ではなく、後述する図3、図8、図10およ び図11のように曲線の場合もある。

 胴部13は、開放端側に緩やかに広がって り、その結果、胴部13の母線は釣鐘状構造単 位の中心軸に対してわずかに傾斜し、両者の なす角θは、15°より小さく、より好ましくは 1°<θ<15°、更に好ましくは2°<θ<10° ある。θが大きくなりすぎると、該構造単位 から構成される微細繊維が魚骨状炭素繊維様 の構造を呈してしまい、繊維軸方向の導電性 が損なわれてしまう。一方θが小さいと、円 チューブ状に近い構造となり、構造単位の 部を構成するグラファイト網面の開放端が 維外周面に露出する頻度が低くなるため、 接繊維間の導電性が悪化する。

 本発明の微細な炭素繊維および微細な炭 短繊維には、欠陥、不規則な乱れが存在す が、このような不規則性を排除して、全体 しての形状を捉えると、胴部13が開放端側 緩やかに広がった釣鐘状構造を有している 言える。本発明の微細な炭素短繊維、およ 微細な炭素繊維は、すべての部分においてθ が上記範囲を示すことを意味しているのでは なく、欠陥部分や不規則な部分を排除しつつ 、構造単位11を全体的に捉えたときに、総合 にθが上記範囲を満たしていることを意味 ている。そこで、θの測定では、胴部の太さ が不規則に変化していることもある頭頂部12 近を除くことが好ましい。より具体的には 例えば、図1(b)に示すように釣鐘状構造単位 集合体21(下記参照)の長さをLとすると、頭頂 から(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点においてθ 測定してその平均を求め、その値を、構造 位11についての全体的なθとしてもよい。ま た、Lについては、直線で測定することが理 であるが、実際は胴部13が曲線であることも 多いため、胴部13の曲線に沿って測定した方 実際の値に近い場合もある。

 頭頂部の形状は、微細な炭素繊維(微細な 炭素短繊維においても同じ)として製造され 場合、胴部と滑らかに連続し、上側(図にお て)に凸の曲面となっている。頭頂部の長さ は、典型的には、釣鐘状構造単位集合体につ いて説明するD(図1(b))以下程度であり、d(図1(b ))以下程度であるときもある。

 さらに、後述するように活性な窒素を原 として使用しないため、窒素等の他の原子 、釣鐘状構造単位のグラファイト網面中に まれない。このため繊維の結晶性が良好で る。

 本発明の微細な炭素繊維および微細な炭 短繊維においては、図1(b)に示すように、こ のような釣鐘状構造単位が中心軸を共有して 2~30個積み重なって釣鐘状構造単位集合体21( 下、単に集合体という場合がある。)を形成 ている。積層数は、好ましくは2~25個であり 、より好ましくは2~15個である。

 集合体21の胴部の外径Dは、5~40nm、好まし は5~30nm、更に好ましくは5~20nmである。Dが大 きくなると形成される微細繊維の径が太くな るため、ポリマーとのコンポジットにおいて 導電性能等の機能を付与するためには、多く の添加量が必要となってしまう。一方、Dが さくなると形成される微細繊維の径が細く って繊維同士の凝集が強くなり、例えばポ マーとのコンポジット調製において、分散 せることが困難になる。胴部外径Dの測定は 集合体の頭頂側から、(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4 )Lの3点で測定して平均することが好ましい。 なお、図1(b)に胴部外径Dを便宜上示している 、実際のDの値は、上記3点の平均値が好ま い。

 また、集合体胴部の内径dは、3~30nm、好ま しくは3~20nm、更に好ましくは3~10nmである。胴 部内径dの測定についても、釣鐘状構造単位 合体の頭頂側から、(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)L 3点で測定して平均することが好ましい。な 、図1(b)に胴部内径dを便宜上示しているが 実際のdの値は、上記3点の平均値が好ましい 。

 集合体21の長さLと胴部外径Dから算出され るアスペクト比(L/D)は、2~150、好ましくは2~30 より好ましくは2~20、更に好ましくは2~10で る。アスペクト比が大きいと、形成される 維の構造が円筒チューブ状に近づき、1本の 維における繊維軸方向の導電性は向上する 、構造単位胴部を構成するグラファイト網 の開放端が繊維外周面に露出する頻度が低 なるため、隣接繊維間の導電性が悪化する 一方、アスペクト比が小さいと構造単位胴 を構成するグラファイト網面の開放端が繊 外周面に露出する頻度が高くなるため、隣 繊維間の導電性は向上するが、繊維外周面 、繊維軸方向に短いグラファイト網面が多 連結して構成されるため、1本の繊維におけ る繊維軸方向の導電性が損なわれる。

 本発明の微細な炭素繊維および微細な炭 短繊維は、釣鐘状構造単位および釣鐘状構 単位集合体については、本質的に同じ構成 有しているが、以下ように繊維長が異なる

 まず、本発明の微細な炭素繊維は、図2(a) に示すように、前記集合体がさらにHead-to-Tail の様式で連結することにより形成される。Hea d-to-Tailの様式とは、微細な炭素繊維の構成に おいて、隣り合った前記集合体どうしの接合 部位が、一方の集合体の頭頂部(Head)と他方の 集合体の下端部(Tail)の組合せで形成されてい ることを意味する。具体的な接合部分の形態 は、第一の集合体21aの下端開口部において、 最内層の釣鐘状構造単位の更に内側に、第二 の集合体21bの最外層の釣鐘状構造単位の頭頂 部が挿入され、さらに、第二の集合体21bの下 端開口部に、第三の集合体21cの頭頂部が挿入 され、これがさらに連続することによって繊 維が構成される。

 微細な炭素繊維の1本の微細繊維を形成す る各々の接合部分は、構造的な規則性を有し ておらず、例えば第一の集合体と第二の集合 体の接合部分の繊維軸方向の長さは、第二の 集合体と第三の集合体の接合部分の長さと必 ずしも同じではない。また、図2(a)のように 接合される二つの集合体が中心軸を共有し 直線状に連結することもあるが、図2(b)の釣 状構造単位集合体21bと21cのように、中心軸 共有されずに接合して、結果として接合部 において屈曲構造を生じることもある。前 釣鐘状構造単位集合体の長さLは繊維ごとに おおむね一定である。しかしながら、気相成 長法では、原料及び副生のガス成分と触媒及 び生成物の固体成分が混在するため、発熱的 な炭素析出反応の実施においては、前記の気 体及び固体からなる不均一な反応混合物の流 動状態によって一時的に温度の高い局所が形 成されるなど、反応器内に温度分布が生じ、 その結果、長さLにある程度のばらつきが生 ることもある。

 このようにして構成される微細な炭素繊 は、前記釣鐘状構造単位下端のグラファイ 網面の開放端の少なくとも一部が、前記集 体の連結間隔に応じて、繊維外周面に露出 る。この結果、1本の繊維における繊維軸方 向の導電性を損なうことなく、前記π電子の び出しによるジャンピング効果(トンネル効 果)によって隣接する繊維間の導電性を向上 せることができる。以上のような微細な炭 繊維の構造は、TEM画像によって観察できる また、本発明の微細な炭素繊維の効果は、 合体自体の曲がり、集合体の連結部分にお る屈曲が存在しても、ほとんど影響がない 考えられる。従って、TEM画像の中で、比較 直線に近い形状を有する集合体を観察して 構造に関する各パラメータを求め、その繊 についての構造パラメータ(θ、D、d、L)とし よい。

 次に、本発明の微細な炭素短繊維は、こ ようにして構成される微細な炭素繊維をさ に短繊維化して得られる。具体的には、微 な炭素繊維にずり応力を加えることにより 集合体接合部で黒鉛基底面間の滑りを生じ 微細な炭素繊維が前記集合体接合部の一部 切断されて短繊維化される。このような短 維化により得られる微細な炭素短繊維は、 合体が1個から数十個程度(即ち100個以下、80 個程度まで、好ましくは70個程度まで)、好ま しくは、1個から20個連結した繊維長さに短繊 維化されている。この微細な炭素短繊維の集 合体のアスペクト比は2ないし150程度である 混合に適する微細な炭素短繊維の集合体の スペクト比は2ないし50である。ずり応力を えても、集合体の炭素SP2結合から成る繊維 胴部分では、繊維の切断が起こらず、集合 よりも小さく切断することはできない。

 微細な炭素短繊維においても、グラファ ト網の端面が露出する結果、1本の繊維にお ける繊維軸方向の導電性を損なうことなく、 前記π電子の飛び出しによるジャンピング効 (トンネル効果)によって隣接する繊維間の 電性は短繊維化前の微細な炭素繊維と同様 良好である。以上のような短繊維化後の微 な炭素短繊維の構造は、TEM画像によって観 できる(図10および図11を参照)。また、微細 炭素短繊維の効果は、集合体自体の曲がり 集合体の接合部分における屈曲が存在して 、ほとんど影響がないと考えられる。図10の 微細な炭素短繊維は、釣鐘状構造単位集合体 が、図に示したように4-a~4-dの4個連結されて り、それぞれのθおよびアスペクト比(L/D)は 、4-a:θ=4.8°、(L/D)=2.5、4-b:θ=0.5°、(L/D)=2.0、4-c :θ=4.5°、(L/D)=5.0、4-d:θ=1.1°、(L/D)=5.5である。 また、図11の微細な炭素短繊維は、釣鐘状構 単位集合体が、図に示したように5-a~5-dの4 連結されており、それぞれのθおよびアスペ クト比(L/D)は、5-a:θ=10°、(L/D)=4.3、5-b:θ=7.1° (L/D)=3.4、5-c:θ=9.5°、(L/D)=2.6、5-d:θ=7.1°、(L/D) =4.3である。

 微細な炭素繊維および炭素短繊維の学振 によるXRDにおいて、測定される002面のピー 半価幅W(単位:degree)は、2~4の範囲である。W 4を超えると、グラファイト結晶性が低く導 性も低い。一方、Wが2未満ではグラファイ 結晶性は良いが、同時に繊維径が太くなり ポリマーに導電性等の機能を付与するため は多くの添加量が必要となってしまう。

 微細な炭素繊維および炭素短繊維の学振 によるXRD測定によって求められるグラファ ト面間隔d002は、0.350nm以下、好ましくは0.341 ~0.348nmである。d002が0.350nmを超えるとグラフ イト結晶性が低くなり、導電性が低下する 一方、0.341nm未満の繊維は、製造の際に収率 低い。

 本発明の微細な炭素繊維および炭素短繊 に含有される灰分は、4重量%以下であり、 常の用途では、精製を必要としない。通常 0.3重量%以上4重量%以下であり、より好まし は0.3重量%以上3重量%以下である。尚、灰分 、繊維を0.1グラム以上燃焼して残った酸化 の重量から決定される。

 また、本発明の炭素短繊維は、好ましく 100~1000μm、より好ましくは100~300μmの繊維長 有する。このような長さを有し、且つ上述 002面のピーク半価幅W(単位:degree)が2~4、且つ グラファイト面間隔d002が、0.350nm以下、好ま くは0.341~0.348nmであるような微細な炭素短繊 維は従来存在しなかった新規な繊維である。

 次に、本発明の微細な炭素繊維および炭 短繊維の製造方法について説明する。本発 の微細な炭素短繊維は、微細な炭素繊維を 繊維化して製造される。

 <微細な炭素繊維の製造方法>
 まず、微細な炭素繊維の製造方法は、次の おりである。コバルトのスピネル型結晶構 を有する酸化物に、マグネシウムが固溶置 した触媒を用いて、CO及びH 2 を含む混合ガスを触媒粒子に供給して気相成 長法により、微細な炭素繊維を製造する。

 Mgが置換固溶したコバルトのスピネル型結 構造は、Mg x Co 3-x O y で表される。ここで、xは、MgによるCoの置換 示す数であり、形式的には0<x<3である また、yはこの式全体が電荷的に中性になる うに選ばれる数で、形式的には4以下の数を 表す。即ち、コバルトのスピネル型酸化物Co 3 O 4 では、2価と3価のCoイオンが存在しており、 こで、2価および3価のコバルトイオンをそれ ぞれCo II およびCo III で表すと、スピネル型結晶構造を有するコバ ルト酸化物はCo II Co III 2 O 4 で表される。Mgは、Co II とCo III のサイトの両方を置換して固溶する。MgがCo III を置換固溶すると、電荷的中性を保つために yの値は4より小さくなる。但し、x、y共に、 ピネル型結晶構造を維持できる範囲の値を る。

 触媒として使用できる好ましい範囲とし 、Mgの固溶範囲は、xの値が0.5~1.5であり、よ り好ましくは0.7~1.5である。xの値が0.5未満の 溶量では、触媒の活性は低く、生成する微 な炭素繊維の量は少ない。xの値が1.5を超え る範囲では、スピネル型結晶構造を調製する ことが困難である。

 触媒のスピネル型酸化物結晶構造は、XRD 定により確認することが可能であり、結晶 子定数a(立方晶系)は、0.811~0.818nmの範囲であ り、より好ましくは0.812~0.818nmである。aが小 いとMgの固溶置換が充分でなく、触媒活性 低い。また、0.818nmを超える格子定数を有す 前記スピネル型酸化物結晶は調製困難であ 。

 このような触媒が好適である理由として 本発明者らは、コバルトのスピネル構造酸 物にマグネシウムが置換固溶した結果、あ かもマグネシウムのマトリックス中にコバ トが分散配置された結晶構造が形成される とにより、反応条件下においてコバルトの 集が抑制されていると推定している。

 また、触媒の粒子サイズは、適宜選ぶこ ができるが、例えばメジアン径として、0.1~ 100μm、好ましくは、0.1~10μmである。

 触媒粒子は、一般に基板または触媒床等 適当な支持体に、散布するなどの方法によ 載せて使用する。基板または触媒床への触 粒子の散布は、触媒粒子を直接散布して良 が、エタノール等の溶媒に懸濁させて散布 、乾燥させることにより所望の量を散布し も良い。

 触媒粒子は、原料ガスと反応させる前に、 性化させることも好ましい。活性化は通常 H 2 またはCOを含むガス雰囲気下で加熱すること より行われる。これらの活性化操作は、必 に応じて、HeやN 2 などの不活性ガスで希釈することにより実施 することができる。活性化を実施する温度は 、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~550 である。

 気相成長法の反応装置に特に制限はなく 固定床反応装置や流動床反応装置といった 応装置により実施することができる。

 気相成長の炭素源となる原料ガスは、CO及 H 2 を含む混合ガスが利用される。

 H 2 ガスの添加濃度{(H 2 /(H 2 +CO)}は、好ましくは0.1~30vol%、より好ましくは 2~20vol%である。添加濃度が低すぎると円筒状 グラファイト質網面が繊維軸に平行したカ ボンナノチューブ様の構造を形成してしま 。一方、30vol%を超えると釣鐘状構造体の炭 側周面の繊維軸に対する傾斜角が大きくな 、魚骨形状を呈するため繊維方向の導電性 低下を招く。

 また、原料ガスは不活性ガスを含有してい もよい。不活性ガスとしては、CO 2 、N 2 、He、Ar等が挙げられる。不活性ガスの含有 は、反応速度を著しく低下させない程度が ましく、例えば80vol%以下、好ましくは50vol% 下の量である。また、H 2 およびCOを含有する合成ガスまたは転炉排出 ス等の廃棄ガスを、必要により適宜処理し 使用することもできる。

 気相成長を実施する反応温度は、好まし は400~650℃、より好ましくは500~600℃である 反応温度が低すぎると繊維の成長が進行し い。一方、反応温度が高すぎると収量が低 してしまう。反応時間は、特に限定されな が、例えば2時間以上であり、また12時間程 以下である。

 気相成長を実施する反応圧力は、反応装 や操作の簡便化の観点から常圧で行うこと 好ましいが、Boudouard平衡の炭素析出が進行 る範囲であれば、加圧または減圧の条件で 施しても差し支えない。

 この微細な炭素繊維の製造方法によれば 触媒単位重量あたりの微細な炭素繊維の生 量は、従来の製造方法、例えば非特許文献2 記載の方法に比べて格段に大きいことが示さ れた。この微細な炭素繊維の製造方法による 微細な炭素繊維の生成量は、触媒単位重量あ たり40倍以上であり、例えば40~200倍である。 の結果、前述のような不純物、灰分の少な 微細な炭素繊維の製造が可能である。

 この微細な炭素繊維の製造方法により製 される微細な炭素繊維に特有な接合部の形 過程は明らかではないが、発熱的なBoudouard 衡と原料ガスの流通による除熱とのバラン から、前記触媒から形成されたコバルト微 子近傍の温度が上下に振幅するため、炭素 出が断続的に進行することにより形成され ものと考えられる。即ち、[1]釣鐘状構造体 頂部形成、[2]釣鐘状構造体の胴部成長、[3] 記[1]、[2]過程の発熱による温度上昇のため 長停止、[4]流通ガスによる冷却、の4過程が 触媒微粒子上で繰り返されることにより、微 細な炭素繊維構造特有の接合部が形成される と推定される。

 <微細な炭素短繊維の製造方法>
 以上により、本発明の微細な炭素繊維を製 することができる。次に、本発明の微細な 素短繊維は、微細な炭素繊維を分離して短 維とすることで製造することができる。好 しくは、微細な炭素繊維にずり応力を加え ことにより製造する。具体的な短繊維化処 方法としては擂潰機、回転ボールミル、遠 ボールミル、遠心遊星ボールミル、ビーズ ル、マイクロビーズミル、アトライタータ プの高速ボールミル、回転ロッドミル、振 ロッドミル、ロールミル、3本ロールミルな どが好適である。微細な炭素繊維の短繊維化 は乾式でも、湿式でも行うことが可能である 。湿式で行う場合、樹脂を共存させて、或は 樹脂とフィラーを共存させて行うことも出来 る。また短繊維化前の微細な炭素繊維は凝集 した毛玉のような状態を構成しているので、 このような状態を解きほぐす微小なメディア を共存させると解砕、短繊維化が進みやすい 。また、微細なフィラーを共存させることで 、微細な炭素繊維の短繊維化と、フィラーの 混合および分散とを同時に行うことも出来る 。乾式短繊維化における雰囲気は不活性雰囲 気も酸化雰囲気も目的によって選択すること が出来る。

 ずり応力を加えることにより容易に微細 炭素繊維が短繊維化する理由は、微細な炭 繊維の構造に由来する。つまり、微細な炭 繊維は、その釣鐘状構造単位集合体がHead-to -Tail様式で間隔をもって連結して繊維を形成 ているためである。繊維にずり応力が加わ と、繊維は図9の矢印方向の繊維軸方向に引 っ張られて、接合部を構成する炭素基底面間 で滑りが生じ(図9のA:カタカナの「ハ」形部 )、Head-to-Tail接続部で釣鐘状構造単位集合体 1個から数十個の単位で引き抜かれ、短繊維 化が起きる。即ち、Head-to-Tail接合部は同心円 状微細炭素繊維のように繊維軸方向に連続し た炭素の二重結合で形成されているのではな く、結合エネルギーの低いファンデルワール ス力を主体とする結合で形成されているから である。実施例の表2において、微細な炭素 維と、これを短繊維化した本発明の微細な 素短繊維(参考例B1と実施例B1-1~B1-6)の結晶性 炭素層間隔および真比重で比較すると、両 の炭素結晶性に差異は認められない。しか ながら、微細な炭素繊維と比較して、短繊 化後の本発明の微細な炭素短繊維は、2~5%程 度表面積が増加する。この程度の表面積の増 加は短繊維化に起因するものと考えられ、微 細な炭素繊維の短繊維化は微細な炭素繊維の 釣鐘状構造単位集合体の炭素結晶性を損なう ことなく、釣鐘状構造単位集合体を単にその 接合部位で引き抜くように分離したものであ ることが分かる。

 本発明による微細な炭素短繊維は種々の 脂あるいは無機材料の導電化および導電化 助に有効である。特に、球状、ウィスカー 、扁平状、ナノ粒子などの形態如何に関わ ず、非導電性或は低導電性の半金属、酸化 、フッ化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、 化物、および水素化物等の無機化合物、特 電池材料として用いられる固体材料の導電 および導電化補助に有効である。また、本 明による微細な炭素短繊維は、黒鉛構造を する炭素に特有な高い熱伝導性や摺動性、 らには高い引っ張り強度と弾性率を生かし 、導電化、導電化補助としての用途の他に 樹脂や無機材料と複合化することによる熱 導材、摺動材、および補強材のフィラーと て、あるいは研磨材として有用である。

 以下に本発明の実施例を比較例とともに 明する。

 <実施例A1>
 イオン交換水500mLに硝酸コバルト〔Co(NO 3 ) 2 ・6H 2 O:分子量291.03〕115g(0.40モル)、硝酸マグネシウ ム〔Mg(NO 3 ) 2 ・6H 2 O:分子量256.41〕102g(0.40モル)を溶解させ、原料 溶液(1)を調製した。また、重炭酸アンモニウ ム〔(NH 4 )HCO 3 :分子量79.06〕粉末220g(2.78モル)をイオン交換 1100mLに溶解させ、原料溶液(2)を調製した。 に、反応温度40℃で原料溶液(1)と(2)を混合し 、その後4時間攪拌した。生成した沈殿物の 過、洗浄を行い、乾燥した。

 これを焼成した後、乳鉢で粉砕し、43gの 媒を取得した。本触媒中のスピネル構造の 晶格子定数a(立方晶系)は0.8162nm、置換固溶 よるスピネル構造中の金属元素の比はMg:Co=1. 4:1.6であった。

 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、その上に触媒0.9gを散布した。He雰囲 気中で炉内温度を550℃に加熱した後、CO、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/H 2 =95.1/4.9)を原料ガスとして反応管の下部から1. 28L/分の流量で7時間流し、微細な炭素繊維を 成した。

 収量は53.1gであり、灰分を測定したとこ 1.5重量%であった。生成物のXRD分析で観察さ たピーク半価幅W(degree)は3.156、d002は0.3437nm あった。またTEM画像から、得られた微細な 素繊維を構成する釣鐘状構造単位及びその 合体の寸法に関するパラメータは、D=12nm、d= 7nm、L=114nm、L/D=9.5、θは0から7°であり、平均 ると約3°であった。また、集合体を形成す 釣鐘状構造単位の積層数は4乃至5であった 尚、D、dおよびθについては、集合体の塔頂 ら(1/4)L、(1/2)Lおよび(3/4)Lの3点について測定 した。

 実施例A1で得られた微細な炭素繊維のTEM を図3に示す。

 <実施例A2>
 イオン交換水900mLに硝酸コバルト〔Co(NO 3 ) 2 ・6H 2 O:分子量291.03〕123g(0.42モル)を溶解させた後、 さらに酸化マグネシウム(MgO:分子量40.30)17g(0.4 2モル)を加えて混合し原料スラリー(1)を調製 た。また、重炭酸アンモニウム〔(NH 4 )HCO 3 :分子量79.06〕粉末123g(1.56モル)をイオン交換 800mLに溶解させ、原料溶液(2)を調製した。次 に、室温で原料スラリー(1)と原料溶液(2)を混 合し、その後2時間攪拌した。生成した沈殿 のろ過、洗浄を行い、乾燥した。これを焼 した後、乳鉢で粉砕し、48gの触媒を取得し 。本触媒中のスピネル構造の結晶格子定数a( 立方晶系)は0.8150nm、置換固溶によるスピネル 構造中の金属元素の比はMg:Co=1.2:1.8であった

 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、その上に触媒0.3gを散布した。He雰囲 気中で炉内温度を500℃の温度に加熱した後、 反応管の下部からH 2 を0.60L/分の流量で1時間流し、触媒を活性化 た。その後、He雰囲気中で炉内温度を575℃ま で上げ、CO、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/H 2 =92.8/7.2)を原料ガスとして0.78L/分の流量で7時 流し、微細な炭素繊維を合成した。

 収量は30.8gであり、灰分は0.6重量%であっ 。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価 W(degree)は3.141、d002は0.3433nmであった。またTE M画像から、得られた微細な炭素繊維を構成 る釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に するパラメータは、D=10nm、d=5nm、L=24nm、L/D=2. 4、θは1から14°であり、平均すると約6°であ た。また、集合体を形成する釣鐘状構造単 の積層数は4乃至5であった。尚、D、dおよび θについては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)L よび(3/4)Lの3点について測定した。

 実施例A2で得られた微細な炭素繊維のTEM を図4に示す。

 <実施例A3>
 硝酸マグネシウムの代わりに酢酸マグネシ ム〔Mg(OCOCH 3 ) 2 ・4H 2 O:分子量214.45〕86g(0.40モル)を用いたほかは、 施例A1と同様に触媒調製を行った。得られ 触媒中のスピネル構造の結晶格子定数a(立方 晶系)は0.8137nm、置換固溶によるスピネル構造 中の金属元素の比はMg:Co=0.8:2.2であった。

 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、その上に触媒0.6gを散布した。He雰囲 気中で炉内温度を500℃の温度に加熱した後、 反応管の下部からH 2 を0.60L/分の流量で1時間流し、触媒を活性化 た。その後、He雰囲気中で炉内温度を590℃ま で上げ、CO、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/H 2 =84.8/15.2)を原料ガスとして0.78L/分の流量で6時 間流し、微細な炭素繊維を合成した。

 収量は28.2gであり、灰分は2.3重量%であっ 。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価 W(degree)は2.781、d002は0.3425nmであった。またTE M画像から、得られた微細な炭素繊維を構成 る釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に するパラメータは、D=12nm、d=5nm、L=44nm、L/D=3. 7、θは0から3°であり、平均すると約2°であ た。また、集合体を形成する釣鐘状構造単 の積層数は13であった。尚、D、dおよびθに いては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)Lおよ (3/4)Lの3点について測定した。

 実施例A3で得られた微細な炭素繊維のTEM を図5に示す。

 <比較例A1>
 硝酸マグネシウムを使用せず、重炭酸アン ニウム粉末とこれを溶解させるイオン交換 の量をそれぞれ110g、550mLとしたほかは、実 例A1と同様に触媒調製を行った。得られた 媒中のスピネル構造の結晶格子定数a(立方晶 系)は0.8091nmであった。この触媒を使用し実施 例A2と同様の手順にて合成実験を行ったとこ 、反応はごく僅かしか進行せず、仕込み触 とほぼ同重量の回収物が得られたのみであ た。

 <参考例A1>
 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、実施例A2で調製した触媒を、その支 体上に0.6gを散布した。He雰囲気中で炉内温 を500℃の温度に加熱した後、反応管の下部 らH 2 を0.60L/分の流量で1時間流し、触媒を活性化 た。その後、He雰囲気中で炉内温度を650℃ま で上げ、CO、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/H 2 =60/40)を原料ガスとして0.78L/分の流量で6時間 し、微細炭素繊維を合成した。

 収量は11.2gであり、灰分は6.1重量%であっ 。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価 W(degree)は2.437、d002は0.3424nmであった。またTE M画像から、得られた微細炭素繊維を構成す 釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に関 るパラメータは、D=9nm、d=6nm、L=13nm、L/D=1.4、 θは9から36°であり、平均すると約19°であっ 。また、集合体を形成する釣鐘状構造単位 積層数は5であった。尚、D、dおよびθにつ ては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)Lおよび(3 /4)Lの3点について測定した。

 参考例A1で得られた微細炭素繊維のTEM像 図6に示す。

 <評価実験>
 表1に示す微細な炭素繊維0.5gを直径2cmの樹 製容器に充填し、プレス圧力を変えながら 体抵抗を測定した。使用した触媒は次のと りである。

 評価例1:実施例A1で製造した微細な炭素繊維
 評価例2:実施例A2で製造した微細な炭素繊維
 評価例3:市販の多層カーボンナノチューブ(A ldrich製試薬677248)
 評価例4:参考例A1で製造した微細な炭素繊維

 図7から明らかなように、評価例3、4に対し 評価例1、2では、同じプレス圧力で低い体 抵抗値が得られている。これは、本発明の 細な炭素繊維が、円筒チューブ状(評価例3) 魚骨状炭素繊維に近い構造(評価例4)で使用 た炭素繊維に比べ、その構造上の特徴から 独の繊維における長軸方向の導電性と隣接 る繊維間での導電性をバランス良く具備す ことにより、導電性能が向上していること 示すものである。このため、例えばポリマ とのコンポジットにおいて、優れた導電性 を発現することができる。

 <実施例A4>
 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、その上に実施例A2で調製した触媒0.2g を散布した。原料ガスとしては、LD(Linz-Donawit z)転炉からの排出ガスの利用を想定し、CO、CO 2 、N 2 、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/CO 2 /N 2 /H 2 =67.4/16.1/15.3/1.2)を用いた。前記原料ガスはLD 炉排出ガスから酸素と水を除去したものと 、混合比率をCarbon 1992(30)975-979(Ishioka M.ら) 準じて設定した。He雰囲気中で炉内温度を560 ℃に加熱した後、前記の混合ガスを反応管の 下部から1.3L/分の流量で3時間流し、微細な炭 素繊維を合成した。

 収量は8.4gであり、灰分は1.7重量%であっ 。生成物のXRD分析で観察されたピーク半価 W(degree)は3.533、d002は0.3440nmであった。またTEM 画像から、得られた微細な炭素繊維を構成す る釣鐘状構造単位及びその集合体の寸法に関 するパラメータは、D=12nm、d=5nm、L=84nm、L/D=7.0 、θは0から2°であり、平均すると約1°であっ た。また、集合体を形成する釣鐘状構造単位 の積層数は13であった。尚、D、dおよびθにつ いては、集合体の塔頂から(1/4)L、(1/2)Lおよび (3/4)Lの3点について測定した。

 実施例A4で得られた微細な炭素繊維のTEM を図8に示す。

 次に、微細な炭素短繊維の製造実施例を 明する。

 <実施例B1>
 イオン交換水500mLに硝酸コバルト〔Co(NO 3 ) 2 ・6H 2 O:分子量291.03〕115g(0.40モル)、硝酸マグネシウ ム〔Mg(NO 3 ) 2 ・6H 2 O:分子量256.41〕102g(0.40モル)を溶解させ、原料 溶液(1)を調製した。また、重炭酸アンモニウ ム〔(NH 4 )HCO 3 :分子量79.06〕粉末220g(2.78モル)をイオン交換 1100mLに溶解させ、原料溶液(2)を調製した。 に、反応温度40℃で原料溶液(1)と(2)を混合し 、その後4時間攪拌混合した。生成した沈殿 のろ過、洗浄を行い、乾燥した。

 これを焼成した後、乳鉢で粉砕し、43gの 媒を取得した。本触媒中のスピネル構造の 晶格子定数a(立方晶系)は0.8162nm、置換固溶 よるスピネル構造中の金属元素の比はMg:Co=1. 4:1.6であった。

 石英製反応管(内径75mmφ、高さ650mm)を立てて 設置し、その中央部に石英ウール製の支持体 を設け、その上に触媒0.9gを散布した。He雰囲 気中で炉内温度を545℃に加熱した後、CO、H 2 からなる混合ガス(容積比:CO/H 2 =95.5/4.5)を原料ガスとして反応管の下部から1. 45L/分の流量で7時間流し、微細な炭素繊維を 成した。

 収量は56.7gであり、灰分を測定したとこ 1.4重量%であった。生成物のXRD分析で観察さ たピーク半価幅W(degree)は3.39、d002は0.3424nmで あった。

 以上により得られた微細な炭素繊維を直 2mmのセラミックボールミルで所定時間処理 て微細な炭素短繊維を調製した。20時間後 微細な炭素短繊維のTEM画像を図10および図11 示す。また、図10および図11のTEM画像から、 得られた微細な炭素短繊維を構成する釣鐘状 構造単位及びその集合体の寸法に関するパラ メータは、D=10.6~13.2nm、L/D=2.0~5.5、θ=0.5°~10° あった。なお、ここに示すθはTEM画像の繊維 軸中心に対して左右の炭素層傾斜の平均値を 記載した。集合体を形成する釣鐘状構造単位 の積層数は10~20であった。

 炭素コート低導電性固体LiFePO 4 :100重量部、バインダーPVDF:5重量部、導電助 として微細な炭素短繊維5重量部、溶媒NMPを1 10重量部混合し、日本精機製NBK-1ニーダーを い、1200rpmで20分間混練後、混練スラリーを リイミドフィルム上に塗工した後乾燥して ィルムを成形した。表3に、ボールミルで行 た短繊維化の処理時間と、この処理時間の いにより得られた微細な炭素短繊維(実施例 B1-1~B1-6)を利用して得られたフィルム厚さお びフィルム表面抵抗の値を示す。また、表2 、比較のために、短繊維化を行っていない 細な炭素繊維(参考例B1)、アセチレンブラッ ク(比較例B2)、ケッチェンブラックEC-600JD(比 例B3)を導電助材として用い、同様の操作で 形して得られたフィルム厚さおよびフィル 表面抵抗の値を示す。

 実施例、参考例および比較例に用いた導電 材の基本物性を表2に示す。なお、表2にお て、比較例B3の導電材炭素層積層厚みの値を 記載していないのは、ケッチェンブラックの XRDプロファイルの半値幅が大きく、計算する ことが困難だったためであり、比較例B2およ 比較例B3の導電材真比重の値を記載してい いのは、試料が嵩高く、信頼性のあるデー が得られなかったためである。また、実施 B1-6の粉砕時間20時間の微細な炭素短繊維、 考例B1、比較例B2、および比較例B3の各導電 材の炭素コート低導電性固体LiFePO 4 への分散状況をそれぞれ図12~15に示す。図12 おいて、本発明の微細な炭素短繊維が均一 分散して炭素コート低導電性固体LiFePO 4 粒子に付着していることがわかる。図13では 炭素コート低導電性固体LiFePO 4 粒子表面で、観察できる微細な炭素繊維の本 数は少なかった。このことは、短繊維化前の 微細な炭素繊維は分散せず、局在しているこ とを示している。図14では、アセチレンブラ クはほぼ均一に分散しているものの、アセ レンブラックが炭素コート低導電性固体LiFe PO 4 粒子表面に付着する割合は、図12の微細な炭 短繊維より低く、分散性も劣っている。図1 5において、ケッチェンブラックもほぼ均一 分散しているが、ケッチェンブラックはほ んどが炭素コート低導電性固体LiFePO 4 粒子の粒子間隙に存在し、均一分散性に於い ては図12の微細な炭素短繊維に劣っている。

 表2より、微細な炭素繊維の炭素層間隔は0.3 424nmであるが、短繊維化によって、微細な炭 短繊維の炭素層間隔は、0.3432nmまで僅かな ら増加した(実施例B1-1~B1-6)。また、微細な炭 素繊維の炭素層積層厚みは、2.7nmであるが、 繊維化によって、微細な炭素短繊維の炭素 積層厚みは、3.2nmまで僅かに増加した(実施 B1-1~B1-6)。さらに、微細な炭素繊維の真比重 は2.05g/cm 3 であるのに対し、短繊維化後の微細な炭素短 繊維の真比重は2.07g/cm 3 まで僅かに増加した(実施例B1-1~B1-6)。一般的 、短繊維化に伴い、機械的なダメージが繊 に与えられる結果、繊維の炭素結晶性は大 く低下すると予想されるが、上記の結果を 合的に判断すると、短繊維化によって、炭 の結晶性に加えられるダメージは僅かであ か、あるいは無視できるレベルにあるとい る。また、短繊維化に伴う表面積増加は、 論値として考えられる程度である。すなわ 、短繊維化前の微細な炭素繊維の釣鐘状構 単位集合体の炭素結晶状態が保たれたまま 繊維化が行われ、微細な炭素短繊維が得ら たといえる。

 表3より、従来から優れた導電助材として用 いられてきたアセチレンブラックのフィルム 表面抵抗1.6×10 3 ω/□やケッチェンブラックのフィルム表面抵 抗2.2×10 3 ω/□に比べて、実施例B1-5およびB1-6の微細な 素短繊維の表面抵抗は、1.0×10 3 ω/□および0.9×10 3 ω/□であり、短繊維化された微細な炭素短繊 維の方が、より有効な導電助材として作用す ることが分かる。また、実施例B1-1~B1-6では、 粉砕処理時間(ボールミルでの処理時間)が長 なるのに伴いフィルム厚みが減少した。こ は、短繊維化処理が進むことによって、絡 っていた微細な炭素繊維どうしが解砕され 嵩が小さくなり、炭素コートLiFePO 4 粒子間に短繊維化された微細な炭素短繊維が 入り込むことによる。これに比べて、参考例 B1に用いた微細な炭素繊維の分散性は、充分 はなく、導電補助効果は低かった。その理 として、この炭素繊維が互いに絡み合った 次構造を形成しており、本試験の分散方法 は、この二次構造を解きほぐし、分散させ ことができなかったためである。

 (粒度分布の測定)
 ボールミル時間による繊維長の変化を粒度 布測定装置により求めた。

 粒度分布測定サンプルの作成:
 分散剤Fisher Scientific社製 Triton X-100の0.015wt %水溶液に、微細な炭素繊維または微細な炭 短繊維を添加し、繊維濃度0.001wt%の希薄スラ リーを調製し、超音波分散機により4分間超 波を照射して分散液を得た。

 装置:島津製作所製SALD-7000粒度分布測定装置 、回分セルを使用
 測定結果は、球の相対粒子量分布として示 れるが、球の直径を繊維長とした。

 ボールミルの時間と粒度分布の変化を、 16(a)~(d)に示す。ボールミル時間により次の うに変化した。図16中、(a)~(d)はそれぞれ、 ールミル前、ボールミル6時間、ボールミル 12時間、ボールミル24時間のサンプルに対応 る。

 ポリマーや粉体とのコンポジット化にお る分散性や混練性を改善し、コンポジット 加工性に優れ、またコンポジットの導電性 熱伝導性、摺動性、補強等の機能発現に優 る微細な炭素繊維および/または微細な炭素 短繊維、及びそれらの効率的な製造方法を提 供することを目的とする。