HIRATA ATSUHIKO (JP)
KAMITANI GAKU (JP)
HIRATA ATSUHIKO (JP)
JPH10511165A | 1998-10-27 | |||
JP2002130135A | 2002-05-09 | |||
JPH0381585A | 1991-04-05 | |||
JPH0354383A | 1991-03-08 |
基板と、この基板上に変位可能に配置された円板状の圧電素子とを備えた流体移送装置であって、 上記圧電素子には同心円状の複数の分割電極が形成されており、 上記分割電極に電圧を順次位相をずらして印加する電圧印加手段が設けられ、 上記分割電極に電圧を位相をずらして印加することにより上記圧電素子に環状の波打ち状屈曲変形を発生させ、上記圧電素子と基板との間に生成される環状のポケット室を半径方向に移動させることにより、流体を外周部と中心部との間で移送することを特徴とする流体移送装置。 |
上記基板および圧電素子のいずれか一方の中心部に第1の流路口が形成され、上記基板および圧電素子のいずれか一方の外周部または両者の外周部の間に第2の流路口が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の流体移送装置。 |
上記圧電素子の外周部が上記基板に固定され、上記圧電素子への非電圧印加時において、第1の流路口及び第2の流路口が上記圧電素子と基板とによって閉じられていることを特徴とする請求項2に記載の流体移送装置。 |
上記圧電素子への非電圧印加時において、上記圧電素子と基板とが全面で接触していることを特徴とする請求項3に記載の流体移送装置。 |
上記圧電素子は、少なくとも3個に分割された同心円状の分割電極と分割されていない全面電極とを、圧電体層を間にして交互に積層したものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体移送装置。 |
上記圧電素子は、同心円状の複数の第1の分割電極と、この第1の分割電極と同心円状でかつ分割電極間のギャップ部が第1の分割電極間のギャップ部と半径方向に交互に位置する複数の第2の分割電極とを、圧電体層を間にして交互に積層したものであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の流体移送装置。 |
基板と、この基板上に変位可能に配置された円板状の圧電素子とを備えた流体移送装置であって、 上記圧電素子には一方に順次偏心した略円状の複数の分割電極が形成されており、 上記分割電極に電圧を順次位相をずらして印加する電圧印加手段が設けられ、 上記分割電極に電圧を位相をずらして印加することにより上記圧電素子に環状の波打ち状屈曲変形を発生させ、上記圧電素子と基板との間に生成される環状のポケット室を半径方向に移動させることにより、流体を外周部と中心部との間で移送することを特徴とする流体移送装置。 |
上記分割電極の各ギャップ部は、上記圧電素子より外周側の仮想直線からの距離の平方根にほぼ比例するように設定されている請求項7に記載の流体移送装置。 |
上記基板は上記圧電素子と同様の構造を有する圧電素子で構成され、対向する圧電素子の各分割電極に同一位相の電圧を順次位相をずらして印加することにより、上記一対の圧電素子に環状の波打ち状屈曲変形を対称的に発生させ、2つの圧電素子の間に生成される環状のポケット室を半径方向に移動させることにより、流体を移送することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の流体移送装置。 |
本発明は流体移送装置、例えば屈曲変形す る圧電素子を用いた流体移送装置に関するも のである。
ノートパソコンなどの小型電子機器の冷却 水輸送用ポンプや燃料電池の燃料輸送用ポン プなどに、圧電ポンプが用いられている。ま た、CPU等の冷却用ファンに代わる送風用ポン プ、あるいは燃料電池で発電するのに必要な 酸素を供給するための送風用ポンプとしても 、圧電ポンプを用いることができる。圧電ポ ンプは、電圧印加により屈曲変形する圧電素 子を用いたポンプであり、構造が簡単で、薄 型に構成でき、かつ低消費電力であるという 利点がある。
特許文献1や2には、流入口と流出口とを有 るポンプ本体上に、振動板を接触状態で取 付けるとともに、振動板上に流入口から流 口に向かって並ぶように複数の圧電素子を り付けた圧電ポンプが提案されている。こ ポンプの場合には、流入口側に近い圧電素 から流出口側に近い圧電素子へと順次に駆 することにより、振動板を流入口から流出 に向かって順次撓ませ、流体を流入口から 出口に向かって押し出すことができる。そ て、圧電素子への電圧印加を停止すると、 動板の復元によって流入口と流出口との間 流路を閉じるので、流入口および流出口の 止弁を省略することができる。
上記のような先行技術の場合、複数の圧電 素子を振動板に貼り付け、異なる位相の電圧 を印加することで、ポンプ本体の一端から他 端に向かって流体を移送する、いわゆるチュ ーブポンプ動作をしている。しかしながら、 複数の圧電素子を平面状に配列しているため 、ポンプ構造として大型かつ複雑になるとい う問題がある。また、複数の圧電素子でチュ ーブポンプ動作をするため、圧電素子同士を 連結するための弾性変形する接続部の構造、 流体のシールなどが難しく、流体を抱え込ん だ微小体積のポケットをうまく移動させる機 構の実現が困難である。
特許文献3では、圧電素子の中心領域と周辺
域とにそれぞれリング状の分割電極を形成
、これら中心領域と周辺領域とを逆方向に
縮させることで、圧電素子を屈曲変形させ
流体を移送する流体ポンプが開示されてい
。圧電素子は矩形状であり、この圧電素子
に分割電極が長辺方向に並んだ状態で形成
れている。この場合も、圧電素子の屈曲変
は一端から他端に向かって移動する、いわ
るチューブポンプ動作をする。しかしなが
、上述の先行技術と同様に、移動方向に向
って複数の電極を形成しなければならず、
ンプ構造として大型化するという欠点があ
。また、弾性変形する電極間を連結するた
の接続部のシールが難しく、流体を抱え込
だ微小体積のポケットをうまく移動させる
とが難しい。
そこで、本発明の好ましい実施形態の目的 は、流体を効率よく移送でき、構造が簡単で 小型の流体移送装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明は、基板 と、この基板上に変位可能に配置された円板 状の圧電素子とを備えた流体移送装置であっ て、上記圧電素子には同心円状の複数の分割 電極が形成されており、上記分割電極に電圧 を順次位相をずらして印加する電圧印加手段 が設けられ、上記分割電極に電圧を位相をず らして印加することにより上記圧電素子に環 状の波打ち状屈曲変形を発生させ、上記圧電 素子と基板との間に生成される環状のポケッ ト室を半径方向に移動させることにより、流 体を外周部と中心部との間で移送することを 特徴とする流体移送装置を提供する。
本発明では、基板上に同心円状の複数の分 割電極が形成された円板状の圧電素子を配置 する。圧電素子に電圧を印加しない状態では 、基板と圧電素子とはほぼ隙間なく接触して いる。それぞれの分割電極に振幅が等しい電 圧を位相をずらして印加すると、圧電素子に は環状の波打ち状屈曲変形が発生する。この 変形により圧電素子と基板との間に環状のポ ケット室が生成され、このポケット室が外周 部から内周部に向かって、あるいは内周部か ら外周部に向かって半径方向に移動するため 、流体を外周部と中心部との間で移送するこ とができる。このように、流体を抱え込んだ 環状のポケット室を圧電素子自身でシールで きるため、流体の漏れが少なく、ポケット室 内の流体を確実に移送でき、高い吐出圧力を 発生することができる。圧電素子が円板状で あり、分割電極が同心円状であるため、構造 が簡単で小型に構成できる。
本発明の流体移送装置によって移送する流 体としては、液体でもよいし気体(例えば空 )でもよい。特に、圧電素子を高周波数で駆 する場合には、気体を用いるのがよい。空 の場合、半導体素子の冷却用ブロアや、燃 電池の空気極で発生する水を蒸発させるブ アなどの用途に用いることができる。分割 極に印加する電圧の振幅は、各分割電極に いて必ずしも等しくする必要はないが、等 くした場合には、各分割電極を設けた領域 変位量をほぼ等しくできる。また、分割電 の間に設けられるギャップを半径方向に等 ッチで設けた場合には、ポケット室の体積 ほぼ一定の速度で変化させることができ、 体の流れが円滑になる。
基板および圧電素子のいずれか一方の中心 部に第1の流路口を形成し、基板および圧電 子のいずれか一方の外周部または両者の外 部の間に第2の流路口を形成するのがよい。 電素子への印加電圧の位相を逆転すること よって、外周部から流体を吸い込み中心部 り吐出する動作と、中心部から流体を吸い み外周部より吐出する動作とを切り替え可 である。つまり、第1の流路口を流出口とし 、第2の流路口を流入口とするか、逆に第1の 路口を流入口とし、第2の流路口を流出口と するかを切替可能である。特に、前者の場合 (外周部から流体を吸い込み中心部より吐出 る場合)には、ポケット室が外周部から中心 に移動するにつれてその体積が減少するの 、吐出圧力を高くできる利点がある。
圧電素子の外周部を基板に固定し、圧電素 子への非電圧印加時において、第1の流路口 び第2の流路口を圧電素子と基板とによって じる構成とするのがよい。この場合には、 電圧印加時に第1の流路口及び第2の流路口 シールされるので、格別なバルブを設けな ても流体の流れを阻止できる。
さらに、圧電素子と基板とが全面で接触し ている構成としてもよい。この場合には、非 駆動時において圧電素子と基板との間にポケ ット室が存在しないので、圧電素子が少しで も変位すれば、流入口から流体を強く吸い込 み、強く吐出することができる。
圧電素子を基板に対して支持する構造とし ては、例えば圧電素子の外周部を基板に固定 してもよいし、圧電素子の外周部を基板に対 して接離自在に弾性支持してもよい。前者の 場合には、圧電素子の外周部が基板によって 固定されているので、圧電素子の浮き上がり を防止でき、ポンプ効率を向上させることが できる。後者の場合には、圧電素子の外周部 が撓むことによって、圧電素子と基板との間 に第2の流路口が自然に形成される。圧電素 を強く拘束しないので、圧電素子が自由に 位できる。その他、圧電素子の支持構造は 意の構造を採用し得る。
圧電素子としてはバイモルフ構造の積層型 圧電素子を用いるのがよい。例えば、圧電素 子を、少なくとも3個に分割された同心円状 分割電極と分割されていない全面電極とを 圧電体層を間にして交互に積層したものと てもよいし、同心円状の複数の第1の分割電 と、第1の分割電極と同心円状でかつ分割電 極間のギャップ部が第1の分割電極間のギャ プ部と半径方向に交互に位置する複数の第2 分割電極とを、圧電体層を間にして交互に 層したものとしてもよい。前者の場合には 一方の電極をべた電極(全面電極)にできる め、電極パターンが一種類で済む。後者の 合には、前者に比べて1面当たりの分極電極 数を少なくでき、各分割電極に印加される 圧を低くできるという利点がある。
円板状の圧電素子に設けられる分割電極は 、同心円状である必要はなく、一方に順次偏 心した複数の分割電極でもよい。すなわち、 小型化のために圧電素子の直径を小さくする と、環状に変位するポケット室の体積は圧電 素子の直径のほぼ4乗に比例して減少するた 、流体の吐出流量が極端に減少してしまう これに対し、複数の分割電極を順次一方に 心させて形成した場合には、分割電極が幅 な部分と幅狭な部分とを有するので、幅広 部分でポケット室の体積を確保できる。そ ため、圧電素子の直径が小さくなっても、 ケット室の体積減少を抑制でき、吐出流量 極端な減少を抑制できる。
上記のように偏心した分割電極を形成した 場合、屈曲変形時の稜線の高さをそろえてお かないと、ポケット室の淵に隙間が開いてし まうため、シール性が悪くなり、流量と圧力 が得られない。そのため、稜線の高さを揃え るような形状の電極パターンになるように、 電極の境界線を決定する必要がある。そこで 、電極の境界線つまり分割電極間のギャップ 部を、圧電素子より外周側の仮想直線からの 距離の平方根にほぼ比例するように設定する のがよい。この場合には、仮想直線から各起 伏部の頂点を結ぶ線が平面上に並ぶので、各 ポケット室を確実にシールでき、流体を確実 に移送できる。
上記説明では、固定された基板に対して圧 電素子を変位可能に配置したが、基板として 圧電素子を用いてもよい。すなわち、2枚の 板状圧電素子を対向して配置し、これら圧 素子を対称的に屈曲変位させるようにして よい。この場合には、ポケット室の容積が2 になるので、吐出流量を増大させることが 能になる。
以上のように、本発明によれば、基板上に 同心円状の複数の分割電極が形成された円板 状の圧電素子を配置し、それぞれの分割電極 に電圧を位相をずらして印加するようにした ので、圧電素子が屈曲変形して圧電素子と基 板との間に環状のポケット室が生成され、こ のポケット室が半径方向に移動することで、 流体を半径方向に移送することができる。圧 電素子が円板状であり、分割電極が同心円状 であるため、流体を抱え込んだ環状のポケッ ト室を圧電素子自身でシールでき、高い吐出 圧力を得ることができる。また、本流体移送 装置は1つの円板状圧電素子と基板とで構成 れるので、構造が簡単になり、小型・薄型 できる。さらに、圧電素子の屈曲変形によ 流入口と流出口との間の流路を閉じるので 流入口および流出口の逆止弁を省略するこ ができる。
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、 実施例に基づいて説明する。
図1~図3は本発明にかかる流体移送装置の第 1実施例を示し、ここでは空気供給用マイク ポンプとして用いた例を示す。図1は本実施 のマイクロポンプAの全体斜視図、図2はそ 分解斜視図、図3は図1のIII -III 線断面図で る。
本実施例のマイクロポンプAは、固定板で る基板10と、その上に変位自在に配置された 円板状の圧電素子20とで構成されており、圧 素子20の外周部全周が接着剤11により基板10 固定されている。この実施例では、基板10 圧電素子20とが同一直径の円板で構成されて いるが、基板10の形状は任意であり、その大 さは圧電素子20より大きくてもよい。基板10 は、剛性のある金属板または樹脂板などより なり、圧電素子20と接する上面が平面の板材 構成されている。接着剤11が塗布された外 部よりやや内径側の基板10の部位には複数の 流入口12が形成され、圧電素子20の中心部と 向する基板10の部位には流出口13が形成され いる。なお、流入口12、流出口13を基板10に えて圧電素子20に形成してもよいし、流入 12をマイクロポンプAの外周面に連通するよ に基板10の上面に溝状に形成してもよい。圧 電素子20への非電圧印加時には、図3に示すよ うに基板10と圧電素子20とが全面で接触して り、両者の間にポケット室(空間)は存在せず 、流入口12と流出口13とが閉じられている。
図4,図5は圧電素子20の詳細な構造およびそ 配線構造を示す。図4に示すように、圧電素 子20は2層の圧電体層21a,21bを全面電極22を間に して積層したものであり、2層の圧電体層21a,2 1bは、矢印Pで示すように全領域にわたって同 一方向に分極されている。表裏の主面には幅 狭なギャップ部G1~G4を介して5分割された分割 電極23a~23eが同心円状に形成されている。分 電極23a~23eは、中心部に位置する円形の第1の 分割電極23aと、その外側に位置する円環状の 第2~第5の分割電極23b~23eとで構成されており 中心部の第1の分割電極23aと最外側の第5の分 割電極23eとが相互に接続されている。裏側の 分割電極23a~23eも同様に構成されており、表 対向する分割電極同士が相互に接続されて 電圧印加手段1と接続されている。図4では、 第1と第5の分割電極23a,23eに電圧印加手段1か 電圧E1が印加され、第2の分割電極23bに電圧E2 が印加され、第3の分割電極23cに電圧E3が印加 され、第4の分割電極23dに電圧E4が印加される 。全面電極22はグランドつまり0vに接続され いる。
この実施例では、分割電極間のギャップ部 G1~G4は円状に等ピッチで形成されている。す わち、図5に示すように、第1の分割電極23a 第2の分割電極23bとの間のギャップ部G1の直 をDとしたとき、第2の分割電極23bと第3の分 電極23cとの間のギャップ部G2の直径は2D、第3 の分割電極23cと第4の分割電極23dとの間のギ ップ部G3の直径は3D、第4の分割電極23dと第5 分割電極23eとの間のギャップ部G4の直径は4D そして第5の分割電極23eの外径(圧電素子20の 外径)は5Dとしてある。
図6は、電圧印加手段1から各分割電極に印 される電圧E1~E4の振幅および位相を示す。 6から明らかなように、各分割電極には位相 90度異なり振幅が等しい正弦波電圧E1~E4が印 加される。上記のように位相が90度異なる電 を印加することにより、圧電素子20には図7 示すような変位が発生する。なお、本実施 では4つの分割電極に位相が90度異なる電圧 印加したが、分割電極の数に応じて位相を 更することができる。例えば3つの分割電極 に対して位相が120度異なる電圧を印加しても よいし、6つの分割電極に対して位相が60度異 なる電圧を印加してもよい。
図7は直径30mm、厚み0.3mmの圧電素子20を使用 し、その外周部を固定しない状態での各部分 の変位をシミュレーション(静解析)した結果 ある。半径方向の位置を横軸にとり、縦軸 Z方向(高さ方向)の屈曲変位を示している。 も低くなる位置をゼロに揃えて表示してい 。t1~t8は正弦波の45°ずつの各位相であり、 電極への印加電圧を45°ずらして変化させた 場合のそれぞれの変形形状を8本の曲線で表 している。変位0の位置には、対向する床面( 基板10)があると仮定する。位相t5を少し過ぎ ところで、半径12.5mm付近で床面に対して圧 素子が接触し、中心の接触点と接触位置が 換する。これにより床面と圧電素子との間 流体を抱え込んだポケット室が中心付近に れる。この中心ポケット室はt5~t6~t7~t8~t1~t2 経過するに従い体積が小さくなり、最後に 滅する。
図8は中心ポケット室の体積変化の様子を す。ほぼ一定の速度で中心ポケット室の体 が減少していることがわかる。床面(基板10) 中心に穴13をあけておけば、t5~t6~t7~t8~t1~t2~t3 の過程で、この穴13から流体を吹き出すこと できる。続くt4~t5の過程で、再び外周部か 新しい流体の抱え込みが完了する。以後、 の動作を繰り返す。圧電素子20を適切な周波 数で駆動することで、脈動はあるものの、平 均すると大きな吹き出し流量を得ることがで きる。本実施例の圧電素子20の共振周波数は4 kHzであるが、共振周波数を超えない範囲で大 きい周波数範囲で使用することが好ましい。
図9は外周部を固定した圧電素子20の実際の 変位を示す。位相が90度異なり振幅が等しい 弦波電圧E1~E4を印加することにより、図9に すように圧電素子20にその半径方向に波打 状の屈曲変形が発生し、圧電素子20と基板10 の間に環状のポケット室Sが生成され、この ポケット室Sが外周部から中心部に向かって 動する。そのため、流体を外周部の流入口12 から吸い込み、中心部の流出口13から吐出す ことができる。図9の(a)は外周部に環状のポ ケット室Sが生成された状態であり、流入口12 から流体が吸い込まれてポケット室Sに入る 図9の(b)は、外周部に形成された環状のポケ ト室Sが内周方向に移動し、流入口12および 出口13の双方がほぼ閉鎖された状態を示す この状態で、流体を抱え込んだポケット室S 内外周は圧電素子20の屈曲によってシール れるので、流体の漏れが少ない。図9の(c)は ケット室Sがさらに内周側へ移動して中心部 で合体し、流出口13から流体の吐出を開始し 状態を示す。図9の(d)は圧電素子20の屈曲変 がさらに内周方向に移動し、中心部の変位 最大となった状態を示す。次に、図9の(a)の 状態に戻るが、流出口13からの流体の吐出は 図9の(a)の状態に戻るまで続く。
上記のように外周部の流入口12から流体を 込み、中心部の流出口13から流体を吐出す 構造のマイクロポンプAの場合、外周部に位 する環状のポケット室Sの容積が漸次減少し ながら中心部に移動し、中心部の流出口13か 集中的に吐出するので、流出口13から吐出 れる流体の吐出圧力を高くすることができ 。また、非駆動時において圧電素子20と基板 10とが面で接触しており、ポケット室が形成 れないので、圧電素子20が少しでも変位す ば、流体を吸い込むことができ、かつ高い 力で流体を吐出することができる。
図10は、表裏主面に形成された分割電極23a~ 23eを外部に引き出すための電極構造の一例を 示す。図10では、中心部の第1の分割電極23aか ら外周端面まで延びる引出電極25aを半径方向 に形成するとともに、これと平行して第2~第4 の分割電極23b~23dから外周端面まで延びる引 電極25b~25dを半径方向に形成してある。なお 第1の分割電極23aから引き出された引出電極 25aと第5の分割電極23eとが主面上で接続され いるが、引出電極25aと第5の分割電極23eとが かれていてもよい。外周端面まで引き出さ た表裏主面の分割電極23a~23eは、端面電極( 示せず)によって相互に接続することができ 。
圧電素子20が多層構造の場合、表裏の分割 極23a~23e同士を導通させる方法として、図11 ようにスルーホール26a~26fを用いて接続して もよい。スルーホール26a~26eは表裏の分割電 23a~23eを相互に接続するスルーホールであり スルーホール26fは全面電極同士を相互に接 するスルーホールである。この場合、スル ホール部以外に引出し部が不要なので、よ 軸対称形状に近い変形が可能になる。
上記のように構成した圧電マイクロポンプ Aを、吹出穴13が発熱素子(半導体ベアチップ ど)に対向するように配置しておけば、吹出 13から吹き出された空気により発熱素子を 果的に冷却することができる。また、圧電 イクロポンプAを、ダイレクトメタノール型 料電池の空気極に対向するように配置して けば、空気極で発生した水を蒸発させて取 除くことができ、燃料電池の出力を大きく ることができる。また、燃料電池のセルが タック型の場合にも、吹出穴13から吹き出 れた空気が各セルの間に流れるような流路 構成してやることで、空気極で発生した水 蒸発させて取り除くことができ、燃料電池 出力を大きくすることができる。
図12~図14は本発明にかかる流体移送装置の 2実施例を示す。この実施例では、第1実施 とは異なり、圧電素子30の分割電極として2 類の異なるパターンを使用している。圧電 子30の外径を5Dとしたとき、第1の電極パター ンは、図12の(a)に示すように、直径Dと3Dで分 された3つの同心円状の分割電極32a~32cより るパターンであり、第2の電極パターンは、 12の(b)に示すように、直径2Dと4Dで分割され 3つの同心円状の分割電極33a~33cよりなるパ ーンである。
図13に示すように、上記2種類の分割電極パ ターン32a~32c、33a~33cが圧電体層31a,31bを間にし て交互に積層されている。そして、中心部の 分割電極32aと最外側の分割電極32cとが相互に 接続され、かつ表裏の分割電極も対向する電 極同士が相互に接続されている。また、層間 の分割電極33aと33cとが相互に接続されて外部 へ引き出され、層間の分割電極33bは個別に外 部へ引き出されている。分割電極32a,32cに図 しない電圧印加手段から電圧e1が印加され、 分割電極33a,33cに電圧e2が印加され、分割電極 32bに電圧e3が印加され、分割電極33bに電圧e4 印加される。図13では、第1の電極パターン32 a~32cを主面電極とし、第2の電極パターン33a~33 cを層間電極とした例を示したが、第1の電極 ターン32a~32cを層間電極とし、第2の電極パ ーン33a~33cを主面電極としてもよいことは勿 である。
図14は各分割電極に印加される電圧e1~e4の 幅および位相を示す。図14に示すように、各 分割電極には位相が90度異なり振幅が等しい 弦波電圧e1~e4が印加され、圧電素子30には図 7と同様な変位が発生する。第1実施例では、 割電極23a~23eと全面電極22(0v)との間に90度ず 位相をずらした電圧E1~E4を印加したが、第2 施例では圧電体層を挟んで対向する分割電 間に90度ずつ位相をずらした電圧e1~e4を印加 するので、電圧e1~e4の振幅を電圧E1~E4に比べ 低くしながら、同等の変位量を得ることが きる。また、一面に形成される分割電極の が第1実施例に比べて少なくなる、換言すれ 分割電極を仕切るギャップ部の数を少なく きるので、圧電素子30を効果的に屈曲させ ことができる。
図15は第2実施例の圧電素子30における分割 極を外部に引き出すための構造の一例を示 。図15の(a)は、第1の電極パターン32a~32cのう ち、中心部の分割電極32aと外周部の分割電極 32cとを半径方向に延びる引出電極35aで接続す るとともに、中間部の分割電極32bを半径方向 に延びる引出電極35bで外周端面まで引き出し てある。図15の(b)は、第2の電極パターン33a~33 cのうち、中心部の分割電極33aと外周部の分 電極33cとを半径方向に延びる引出電極36aで 続するとともに、中間部の分割電極33bを半 方向に延びる引出電極36bで外周端面まで引 出してある。引出電極同士が重ならないよ に、引出電極35a,35bと引出電極36a,36bとは互い に直交方向に形成されている。外周端面まで 引き出された電極は、端面電極(図示せず)に って相互に接続されている。
図16の(a),(b)は、図15のような半径方向の引 電極および端面電極に代えてスルーホール 用いて導通させたものである。即ち、第1の 電極パターンの電極32a~32c同士、および第2の 極パターンの電極33a~33c同士をスルーホール 37a~37fによって相互に接続してある。この場 も、スルーホール部以外に引出し部が不要 ので、より軸対称形状に近い変形が可能に る。
図17~図19は本発明にかかる流体移送装置の第3 実施例を示す。この実施例は、圧電素子40の 極パターンを同心円状ではなく、図17のよ に、片方に偏心させて配置したものである すなわち、中心部の分割電極41aの外側に環 の分割電極41b~41eを順次偏心させて形成した のであり、分割電極の境界線であるギャッ 部G1~G4のピッチを、圧電素子40外部の仮想直 線Oからの距離の平方根に比例するように配 してある。この例では、仮想直線Oとはx=0(図 18のY軸)のことであり、この仮想直線Oからの 離xの平方根に比例するように、境界ピッチ を0.8x 0.5 としている。圧電素子40の直径が30mmの場合 圧電素子40の中心は(x,y)=(17,0)としている。
屈曲変形時の高さ方向変位hは、ほぼ境界 ピッチ(ギャップ部G1~G4のピッチ)の2乗に比例 するため、電極を同心円に配置するよりも、 偏心させて配置したほうが、空気を抱え込む ポケット室の体積が全体としては大きくなる 。そのため、流量を増加させるのに有利であ る。ただし、屈曲変形時の稜線の高さをそろ えておかないと、ポケット室の淵に隙間が開 いてしまうため、シール性が悪くなり、流量 と圧力が得られない。そこで、稜線の高さを 揃えるような形状の電極パターンになるよう に、境界線を決定する必要がある。
屈曲変形時の高さ方向変位hは、ほぼ境界線
ッチの2乗に比例するということは、境界線
ッチを圧電素子外部の仮想直線Oからの距離
の平方根に比例するように配置すると、稜線
の高さは一つの平面上に乗るようにできる。
図19を参照しながら説明すると、仮想直線Oか
らの距離xの平方根に比例するように境界線
ッチを選べば、起伏ピッチδxは境界線ピッ
に比例するから、起伏ピッチδxは仮想直線O
らの距離xの平方根に比例する。すなわち、
δx∝x 0.5
このとき、起伏の高さは起伏ピッチの2乗に
例するから、起伏の高さは仮想直線Oからの
離に比例する。すなわち、
h∝δx 2
∝x
となる。
分割電極41b~41eの具体的な形成方法は次のよ に行う。すなわち、図18に示すように、先ず 圧電素子40の外径となる円C1を描く。次に、 C1の各点について円C1を構成する各点の法線 ら0.8x 0.5 内側に位置する各点をつなぐことによって 円形のC2を描く。同様の手順で、順に略円 のC3,C4,C5を描くことで、分割電極41b~41eの形 が決定する。
図20は本発明の第4実施例の圧電マイクロポ ンプBを示す。第1~第3実施例では、固定平板 ある基板の上に圧電素子を対向して配置し 例を示したが、この実施例は2枚の圧電素子5 0,60を対向して配置したものである。この例 は、圧電素子50,60の外周部同士を接着してあ る。一方の圧電素子50の中心部に流出穴51を け、他方の圧電素子60の外周部に流入孔61を けた場合には、圧電マイクロポンプBの裏側 から流体を吸い込み、表側の中心から流体を 吐出することができる。この場合には、流体 を抱え込むポケット部Sの体積を固定平板を いた場合に比べて2倍にできるので、流量が 加するという利点がある。なお、流入孔と 出孔の両方をいずれか一方の圧電素子50又 60に設けてもよい。
図21は本発明の第5実施例の圧電マイクロポ ンプCを示す。本実施例では、第1実施例と同 に圧電素子20の外周部が基板10と接着固定11 れている。圧電素子20への非電圧印加時(非 動時)において、圧電素子20が全面で基板10 接触せず、基板10の流路口12,13を除く部位と 電素子20との間に空隙部14が形成されている 。この空隙部14の高さHは、圧電素子20の振幅 りも小さく設定されている。非電圧印加時 、圧電素子20は流路口12,13の周囲に突設した 円環状の弁座部12a,13aに接触するため、弁座 12a,13aの面圧が高くなり、両流路口12,13のシ ル性が向上する。この場合も、空隙14の高さ が圧電素子20の振幅より小さいので、高い圧 で流体を吸い込み、かつ吐出することがで る。
図22は本発明の第6実施例の圧電マイクロポ ンプDを示す。本実施例では、基板10に保持部 14を形成し、圧電素子20の外周部を弾性部材15 を介して基板10に対して弾性支持している。 の場合には、圧電素子20の外周部が拘束さ ないので、圧電素子20の外周端部も変位する ことができる。そのため、圧電素子20の外周 らより多量の流体を吸い込むことができ、 出流量を増加させることができる。
上記実施例では、圧電素子として2層の圧電
層を積層した構造について説明したが、3層
上の圧電体層を積層したものでもよい。薄
化して多数積層した場合には、印加電圧を
らに下げることができる。
また、積層構造とは、単層構造の圧電体を焼
成し、表裏面に電極を形成した後、相互に接
着したものでもよいし、電極を形成した複数
のセラミックグリーンシートを積層し、その
後で焼成したものでもよい。
上記実施例では、本発明の流体移送装置を空
気のような圧縮性流体の移送用マイクロポン
プとして用いた例を示したが、液体のような
非圧縮性流体にも適用することができる。
A~D 圧電マイクロポンプ
1 電圧印加手段
10 基板(固定板)
11 接着部
12 流入口
13 流出口
20 圧電素子
21a,21b 圧電体層
22 全面電極
23a~23e 分割電極
30 圧電素子
31a,31b 圧電体層
32a~32c,33a~33c 分割電極
Next Patent: WORD RECOGNIZING METHOD AND WORD RECOGNIZING PROGRAM