安達 定雄 (〒15 群馬県桐生市天神町一丁目5-1 国立大学法人群馬大学内 Gunma, 37685, JP)
国立大学法人群馬大学 (〒10 群馬県前橋市荒牧町四丁目2番地 Gunma, 37185, JP)
ADACHI, Sadao (5-1 Tenjin-cho 1-chom, Kiryu-shi Gunma 15, 37685, JP)
| A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZrであって、KとSi、KとGe、KとTiの組合わせを除く。)で表される母体結晶の一部に、賦活剤として遷移金属が置換された構成をとる結晶体からなることを特徴とする蛍光体。 |
| 蛍光体中における電子が励起されることに基づいて発光する請求項1記載の蛍光体。 |
| 賦活剤となる遷移金属がMnであるとき、母体結晶であるA 2 BF 6 結晶中のBの一部が前記Mnに置換された構造をとり、前記置換されたMnは、その原子価が4価の状態を取って存在する請求項1又は2記載の蛍光体。 |
| A 2 BF 6 結晶中のBのMnにより置換される割合がモル比で0.05~90%の範囲内である請求項3記載の蛍光体。 |
| 蛍光体中の電子を励起することにより、赤色を呈する波長域にピークを有する発光をする請求項1記載の蛍光体。 |
| HF水溶液に酸化剤であるAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加えて調製した混合液に、B含有材料(但し、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZrであって、酸化物材料を除く。)を浸漬することにより、前記材料の表層にA 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤としてMnが置換された構成をとる結晶体からなる蛍光体を生成させることを特徴とする蛍光体の製造方法。 |
| 混合液に浸漬するB含有材料の材質が、結晶質或いは非晶質であり、それらの形状が板状、棒状、多孔質状或いは粉体状である請求項6記載の蛍光体の製造方法。 |
| 調製する混合液中のAMnO 4 の濃度がHF水溶液に対して0.01~1モルの範囲である請求項6記載の蛍光体の製造方法。 |
| HF水溶液に酸化剤であるAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加えて調製した混合液に、B含有酸化物材料(但し、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZr)を浸漬することにより、前記混合液と前記B含有酸化物材料とを反応させ、A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤としてMnが置換された構成をとる結晶体からなる蛍光体を生成させることを特徴とする蛍光体の製造方法。 |
| 混合液に浸漬するB含有酸化物材料の材質が、結晶質或いは非晶質であり、それらの形状が板状、棒状、多孔質状或いは粉体状である請求項9記載の蛍光体の製造方法。 |
| 調製する混合液中のAMnO 4 の濃度がHF水溶液に対して0.01~2モルの範囲である請求項9記載の蛍光体の製造方法。 |
| 請求項6ないし11いずれか1項に記載の方法により蛍光体を生成させた後、前記生成させた蛍光体粉末を有機溶媒、酸性溶液或いは酸性溶液と有機溶媒との混合液に浸漬して純化させることを特徴とする蛍光体の精製方法。 |
| 青色発光ダイオードからの青色の光励起によって、緑色蛍光体及び赤色蛍光体をそれぞれ発光させることによる白色発光ダイオードにおいて、 請求項1ないし5いずれか1項に記載の蛍光体、請求項6ないし11いずれか1項に記載の方法により生成された蛍光体、或いは請求項12に記載の方法により精製された蛍光体を前記赤色蛍光体として用いることを特徴とする白色発光ダイオード。 |
本発明は、母体結晶の一部を遷移金属に り置換した新規な蛍光体と、この新規な蛍 体を簡便に製造する方法、該蛍光体を用い 白色発光ダイオードに関するものである。
蛍光体は、蛍光表示管や高演色ランプ、X線 ・放射線量計(シンチレータ)、PDP(Plasma Display Panel)、無機型EL(Electroluminescence)パネル、固 レーザー用材料などに不可欠な物質である 例えば、固体レーザーの最初の発見は、ル ー結晶の一部に、発光中心のCr(クロム)遷移 属不純物を少量置換したルビーレーザー(Al 2 O 3 :Cr)であり、694nmの赤色を呈する光の放出が観 測されている。このように、蛍光体は多様な 用途に使用され、またその重要性から、絶縁 物母体結晶中に発光中心を置換した蛍光体に 関する研究が、現在も盛んに行われている。
絶縁物母体結晶に発光中心となる遷移金属 純物を少量置換した蛍光体材料の、主だっ 例を紹介する。例えば、賦活剤であり発光 心となる遷移金属がMn(マンガン)の場合の母 体結晶として、Al 2 O 3 (サファイア)、CaAl 12 O 19 、CaYAlO 4 、GaN、GdAlO 3 、Gd 3 Ga 5 O 12 (GGG:Gadolinium Gallium Garnet)、Gd 2 MgTiO 6 、Li 2 Ge 7 O 15 、MgGa 2 O 4 、MgO、ScPO 4 、SrAl 12 O 19 、SrTiO 3 、Y 3 Al 5 O 12 、YAlO 3 (YAP)、YAl 3 (BO 3 ) 4 、ZnGa 2 O 4 、2MgO×GeO 2 、2MgO×GeO 2 ×MgF 2 等が知られている。これら母体結晶材料の共 通点として、いずれも非常に高い融点を有す ることが挙げられる。例えば、GGGとして有名 なGd 3 Ga 5 O 12 の融点は1825℃(2098K)であり、また盛んに研究 れているYAlO 3 やSrTiO 3 の融点は各々、1870℃、2353℃であり、溶融石 の軟化温度(1500℃程度)よりも非常に高い。 に、有名なAl 2 O 3 (サファイア)の融点も2325℃であり、前述のGGG より約500℃も高い。
結晶の一部が所望の遷移金属で置換された 縁物蛍光体を合成するにあたって、融点が い母体絶縁物材料を採用する場合、結晶の 成が煩雑かつ複雑となり、また、高価な装 が必要となることから、製造コストが高く る傾向がある。例えば、非特許文献1による YAlO 3 :Mn蛍光体の製法例を紹介する。非特許文献1 製法で使用される方法は、図55に示すように 、チョクラルスキー(Czochralski)法と呼ばれる 名な結晶成長方法である。先ず、希少金属 あるイリジウム(Ir)製のルツボ1にYAlO 3 原料を入れ、このルツボ1を図示しないチャ バに設置し、窒素(95%)/酸素(5%)雰囲気中で原 の融点(1870℃)以上の高温に加熱する。Mnの 純物はMnO 2 の形でルツボ1に入れられる。ルツボ1に入れ れたMnO 2 が溶融YAlO 3 中に十分に混ざり合ったところで、引上げ棒 2の下部に位置する種結晶保持部3により保持 れたYAlO 3 の種結晶4をルツボ1中の結晶溶融部6に浸し、 ゆっくりと引き上げることで、種結晶4の下 に結晶成長部5が種結晶の結晶方位に倣うよ に成長する。これにより、結晶の一部がMn 置換されたYAlO 3 の結晶体からなる蛍光体が得られる。また、 これに類似のルツボから結晶を引き上げる方 法として、キロプロス(Kyropoulos)法があり、こ の方法では例えばSrTiO 3 :Mn蛍光体が作製された例が知られている。こ の例で使用された母体材料の融点も上述した ように2353℃と非常に高いため、ルツボだけ なく、電気炉装置も複雑かつ高価なものを 用する必要がある。
上記引き上げ法による結晶成長法の他には フラックス(Flux)法がある。例えば、非特許 献2に開示されたCaAl 12 O 19 :Mn蛍光体の作製では、図56に示すように、母 結晶原料としてCaO及びAl 2 O 3 、フラックス材料としてCaF 2 及びMgF 2 、Mn不純物ソースとしてMnCO 3 をそれぞれ高価な白金ルツボに充填し、これ を電気炉内に設置し、1650℃に加熱して溶融 せ、図56のごとくフラックス底部に過飽和状 態の結晶を成長させている。なお、図56にお る符号11は電気炉保護壁、符号12はルツボの 開口部を閉じるシール、符号13は加熱によっ 溶融したフラックス溶融部、符号14は結晶 長部、符号15は熱電対をそれぞれ示す。この 文献では、このようにして作製した結晶を、 アルミナ乳鉢で磨り潰すことで微粉末の蛍光 体に仕上げている。
従来の蛍光体作製方法の更に他の例として 浮遊帯域溶融結晶成長(Floating zone)法と呼ば れる方法による、結晶の一部が遷移金属(Mn) 置換されたMgGa 2 O 4 蛍光体の製造方法も紹介する(例えば、特許 献1参照。)。特許文献1に示される方法では 先ず、Ga 2 O 3 粉末とMgO粉末を化学量論的組成で混合し、更 に不純物となる微量のMn粉末を加える。次い 、これら混合粉末を所定の形状に詰め、300M Paの静水圧力を印加することで原料棒を作製 る。次に、作製した原料棒を電気炉に入れ 大気中約1000℃で焼成した後、図57に示すよ に、焼成後の原料棒24を浮遊帯域溶融結晶 長装置21の石英管22の中に、MgGa 2 O 4 の種棒23の先端と原料棒24の先端とが対向す ように設置する。そして、種棒23と原料棒24 シャフト25で回転させながら種棒23と原料棒 24の両先端を回転楕円鏡26及び赤外集光加熱 27により加熱溶融して接触させた後に溶融部 28を形成し、溶融帯を原料棒24側に移動する とで、MgGa 2 O 4 :Mnの結晶体を作製している。なお、結晶成長 時における浮遊帯域の温度は約2100℃と極め 高温である。
以上のことから明らかであるが、従来より られている、結晶の一部が遷移金属で置換 れた絶縁物蛍光体の合成方法においては、 土類(イリジウム)や貴金属(白金)のような高 価なルツボ材料を使用しなければならず、ま た、精密に温度制御可能な極めて高温の電気 炉装置が必要であった。加熱温度が高ければ 高いほど電気炉装置が高価になり、また運用 ・維持費用も必然的に高くなる。また、蛍光 体の母体結晶も、先に述べたように希少、高 価な金属であるY、Gd、Ga、Ti、Li、Sc、Srなど 構成元素としている材料が殆どである。サ ァイヤ(Al 2 O 3 )は安価なAlとO(酸素)のみを構成元素とする。 しかし、融点が極めて高い(2325℃)ため、製造 コストが高い。事実、サファイヤは宝飾品( 石)としてよく知られている。
ここで、従来より知られている、結晶の一 が遷移金属で置換された絶縁物蛍光体の典 的な発光スペクトルを図58に示す。図58に示 されるスペクトルは、非特許文献3に開示さ た、チョクラルスキー法で作製したGd 3 Ga 5 O 12 :Mnからの光励起発光スペクトルである。絶縁 物結晶中のMn 4+ イオンによる特有発光が670nm近傍の波長域で 測されている。T=5Kの低温環境では3d電子特 の微細構造が明確に観測されているが、温 が高くなるにつれて徐々に幅広いスペクト となり、T=290Kの室温環境では熱的影響によ かなり幅広いスペクトルとして観測されて る。
次に、現在製品化の主流となっている白 発光ダイオードについて説明する。白色発 ダイオードにおいては、紫外発光ダイオー で三原色(赤、緑、青)の蛍光体を励起する 、又は青色発光ダイオードで緑及び赤色の 色の蛍光体を励起することにより、真の白 光が得られることが知られている。しかし 現在製品化の主流となっている白色発光ダ オードは、図59に示すように、青色発光ダイ オード29と樹脂に封止された黄色蛍光体30の 合せで構成され、青色発光ダイオードの青 の光励起によって、黄色蛍光体を発光する とで白色光31を得る方式が用いられている。 このような補色関係を利用する白色発光ダイ オードの発光は、緑色と赤色の中間の黄色い 光と青い光の組合せを人間が白色と認識する といういわば擬似的な白色光であり、光の三 原色である赤、緑、青のうちで赤い色の成分 を大きく欠いているため、演色性に劣るとい う問題が残されている。緑色と赤色の蛍光体 の組合せではなく、中間色の黄色蛍光体が現 在主に使われている理由としては、青色の励 起光によって高い発光効率で、しかも高温で も発光の強度が減少することなく光る赤色蛍 光体が開発されていなかったためである。な お、例えば自動車のヘッドライトなどの場合 、白色発光ダイオードの使用温度は100℃以上 の高温にもなることが普通である。
白色発光ダイオード用の赤色蛍光体として
在よく知られているものとして、硫化物蛍
体の(Ca,Sr)S:Euがある。この蛍光体は、空気
の水分を吸収して硫化水素を発生して分解
るため、青色発光ダイオードに組み込む際
雰囲気中の水分を極力低減することが重要
ある。また、白色発光ダイオードの耐久性
高めるためには、水分を遮蔽する封止剤を
用するなどのパッケージを工夫する必要が
る。
上記従来より知られているような発光体 、その発光の際の温度によって発光強度に らつきが見られ、安定した発光が得られて ない問題があった。
また、発光強度が最大となる励起波長が 色発光ダイオードの赤色発光特性に要望さ ている様な波長ではないため、その用途が 定的であった。
また、その製造では、前述した通り、高 に加熱する必要があるため、製造コストが くなる問題があった。
更に、現在知られている白色発光ダイオ ド用の赤色蛍光体に関しては、青色の励起 での発光効率が小さく、また高温で発光強 が著しく減少するという問題があった。更 、青色発光ダイオードに組み込む際には、 囲気やパッケージに工夫が必要であった。
本発明の目的は、発光強度が強く、温度 化にも影響を受けにくい、といった優れた 果を有する新規な蛍光体を提供することに る。
本発明の別の目的は、発光強度が強く、 度変化にも影響を受けにくい、といった優 た効果を有する新規な蛍光体を、従来より られている蛍光体の製造方法に比べて極め 低い温度環境において簡便に生成すること できる製造方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、青色発光ダイ ードからの青色の光励起によって、緑色蛍 体及び赤色蛍光体をそれぞれ発光させる原 の白色発光ダイオードの赤色蛍光体として 発光強度が強く、温度変化にも影響を受け くい、といった優れた効果を有する蛍光体 用いることにより、青色の励起光での発光 率が高く、かつ高温でも安定に動作させる とが可能な、白色発光ダイオードを提供す ことにある。
本発明の第1の観点は、A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZrであって、KとSi、KとGe、KとTiの組合わせ 除く。)で表される母体結晶の一部に、賦活 剤として遷移金属が置換された構成をとる結 晶体からなることを特徴とする蛍光体である 。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づ 発明であって、更に蛍光体中における電子 励起されることに基づいて発光することを 徴とする。
本発明の第3の観点は、第1又は第2の観点に づく発明であって、更に賦活剤となる遷移 属がMnであるとき、母体結晶であるA 2 BF 6 結晶中のBの一部が前記Mnに置換された構造を とり、前記置換されたMnは、その原子価が4価 の状態を取って存在することを特徴とする。
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく 明であって、更にA 2 BF 6 結晶中のBのMnにより置換される割合がモル比 で0.05~90%の範囲内であることを特徴とする。
本発明の第5の観点は、第1の観点に基づ 発明であって、更に蛍光体中の電子を励起 ることにより、赤色を呈する波長域にピー を有する発光をすることを特徴とする。
本発明の第6の観点は、HF水溶液に酸化剤で るAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加えて調製した 合液に、B含有材料(但し、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZrであって、酸化物材料を除く。)を浸漬す ることにより、材料の表層にA 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤と してMnが置換された構成をとる結晶体からな 蛍光体を生成させることを特徴とする蛍光 の製造方法である。
本発明の第7の観点は、第6の観点に基づ 発明であって、更に混合液に浸漬するB含有 料の材質が、結晶質或いは非晶質であり、 れらの形状が板状、棒状、多孔質状或いは 体状であることを特徴とする。
本発明の第8の観点は、第6の観点に基づく 明であって、更に調製する混合液中のAMnO 4 の濃度がHF水溶液に対して0.01~1モルの範囲で ることを特徴とする。
本発明の第9の観点は、HF水溶液に酸化剤で るAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加えて調製した 合液に、B含有酸化物材料(但し、BはSi、Ge、S n、Ti又はZr)を浸漬することにより、混合液と B含有酸化物材料とを反応させ、A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤と してMnが置換された構成をとる結晶体からな 蛍光体を生成させることを特徴とする蛍光 の製造方法である。
本発明の第10の観点は、第9の観点に基づ 発明であって、更に混合液に浸漬するB含有 酸化物材料の材質が、結晶質或いは非晶質で あり、それらの形状が板状、棒状、多孔質状 或いは粉体状であることを特徴とする。
本発明の第11の観点は、第9の観点に基づく 明であって、更に調製する混合液中のAMnO 4 の濃度がHF水溶液に対して0.01~2モルの範囲で ることを特徴とする。
本発明の第12の観点は、第6ないし第11の 点に基づく方法により蛍光体を生成させた 、生成させた蛍光体粉末を有機溶媒、酸性 液或いは酸性溶液と有機溶媒との混合液に 漬して純化させることを特徴とする蛍光体 精製方法である。
本発明の第13の観点は、青色発光ダイオ ドからの青色の光励起によって、緑色蛍光 及び赤色蛍光体をそれぞれ発光させること よる白色発光ダイオードにおいて、請求項1 いし5いずれか1項に記載の蛍光体、請求項6 いし11いずれか1項に記載の方法により生成 れた蛍光体、或いは請求項12に記載の方法 より精製された蛍光体を前記赤色蛍光体と て用いることを特徴とする。
本発明の新規な蛍光体によれば、発光強 が強く、温度変化にも影響を受けにくい、 いった優れた効果を有する。
また、本発明による蛍光体の製造方法に れば、発光強度が強く、温度変化にも影響 受けにくい、といった優れた効果を有する 光体を、従来より知られている蛍光体の製 方法に比べて極めて低い温度環境において 便に生成することができる。
また、本発明の白色発光ダイオードによ ば、青色発光ダイオードからの青色の光励 によって、緑色蛍光体及び赤色蛍光体をそ ぞれ発光させる原理の白色発光ダイオード 赤色蛍光体として、発光強度が強く、温度 化にも影響を受けにくい、といった優れた 果を有する蛍光体を用いることにより、青 の励起光での発光効率が高く、かつ高温で 安定に動作させることができる。
次に本発明を実施するための最良の形態 図面に基づいて説明する。
本発明の蛍光体の第1の製造方法は、0~80℃ HF水溶液に酸化剤であるAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加え、溶解する とによって混合液を調製し、図1(a)に示すよ に、この0~80℃の混合液に、B含有材料(但し BはSi、Ge、Sn、Ti又はZrであって、酸化物材 を除く。)を浸漬することにより、図1(b)に示 すように、材料の表層にA 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤と してMnが置換された構成をとる結晶体からな 蛍光体を生成させることを特徴とする。
なお、本発明でいう賦活剤とは、母体結 中に存在し、発光するための励起源となる のをいう。
HF水溶液に上記酸化剤のAMnO 4 を溶解させた混合液に、B含有材料を浸漬す といった極めて簡便な手法により、浸漬し 材料の表層にA 2 BF 6 :Mnの構成をとる結晶体からなる蛍光体を生成 することができる。得られる結晶体は、材料 の表層に膜状に生成され、この膜状の結晶体 の大部分は材料から自然に剥がれる。また軽 く擦る程度の物理的な力を与えることで、材 料の表層から簡単に剥離することもできるた め、材料からの結晶体の分離、結晶体の回収 が極めて容易である。
混合液の調製は、AMnO 4 を純水で溶解し、このAMnO 4 水溶液をHF水溶液に混合することが、AMnO 4 をHF水溶液中に均一に溶解させるために好適 ある。但し、特に酸化剤がNaMnO 4 (A=Na)の場合、純水で溶解することなく、HF水 液に直接溶解させた方が好適なこともある
混合液は、B含有材料を浸漬して、その表 層に結晶体を均質に生成させるため、一定温 度に保つことが好ましい。例えば、調製した 混合液を室温環境にある一定時間放置して、 液温を均等にすることで、簡便にかつ高品質 な蛍光体を作製することができる。
生成される結晶体は、B含有材料を構成する B元素(Si、Ge、Sn、Ti又はZr)又は、混合液中の ッ素、A元素(K、Na、Rb又はCs)により律速され 。従って、混合液中のフッ素やA元素が大量 に存在していても、浸漬するB含有材料の量 少なければ、生成される結晶体の量も決定 れる。結晶体中に置換されるMnの量は、混合 液を調製する際に使用するAMnO 4 、HF、H 2 O及びこの混合液に浸漬するB含有材料の量に って、微妙に異なった結果となる。
本発明の蛍光体の第1の製造方法において は、図1からも明らかであるが、高温に加熱 る必要がないため、電気炉などの大型装置 全く不要である。必要なものとして、混合 を貯留する化学溶液槽と混合液を調製する めの適当な化学溶液のみであり、室温環境 蛍光体を製造する場合には、化学溶液槽加 用ヒータも不要である。
上記形態では、板状の材料を出発材料と て用いたが、作製する蛍光体の用途に応じ その材料の形状を変更することが可能であ 。例えば、図2に示すような棒状結晶を出発 材料として使用してもよい。このような形状 の材料を使用することで、蛍光体の作製効率 の向上を図ることができる。また、形状は棒 状だけでなく、図3に示すような粉体状の材 或いは多孔質状の材料を用いてもよい。粉 状の材料はその表面積が大きいため、結晶 の生成速度が速く、更なる蛍光体の作製効 の向上を図ることができる。
また、混合液に浸漬するB含有材料の材質 としては、結晶質或いは非晶質が挙げられる 。さらに、例えばSiGeのような合金形態の半 体材料においても、結晶体を生成させるこ ができる。
Si材料やGe材料といった、B含有材料を混 液に浸漬する際には、その表面を脱脂した 、表面酸化膜を除去したりする前処理を施 ことが、高品質の結晶体を生成させるため 好適である。
更に、本発明の第1の製造方法で得られる結 晶体は、水に対してだけでなく、HF水溶液に しても溶解度が小さい。このような技術的 利点を利用して、例えば、図4(a)に示すよう に、KMnO 4 /HF混合液が貯留された反応槽にSi材料を浸漬 、図4(b)に示すように、表層に結晶体からな る蛍光体が生成されたSi基板に対して、テフ ン(登録商標)素材などの耐酸性のブラシを いて表層に生成された蛍光体の膜を物理的 剥離する。これにより、Si基板の表層はSiが 出するため、再び表層に結晶体からなる蛍 体が生成されるため、結果として連続的に 光体を作製することが可能となる。なお、S i基板から物理的に剥離させた蛍光体の剥離 は、反応槽の下部に堆積したままの状態と るが、混合液に溶解されて消失してしまう うなことはなく、逆に、混合液中のMnイオン に長時間さらされることから、母体結晶への Mnの置換が進み、得られる蛍光体の発光強度 高まる。実際に、図4(a)及び(b)に示すような 工程で、ブラシによりSi基板表層に生成した 晶体を剥離しながら蛍光体の作製を行った 験では、剥離物が混合液中のMnイオンに長 間さらされた状態が保たれ、その後、ろ過 出して得られた蛍光体は、図1(a)及び(b)に示 ような工程で作製した蛍光体に比べて、発 強度が10倍近く増加することも確認してい 。
ここで、B含有材料としてSi材料を、酸化剤 してKMnO 4 をそれぞれ用いた場合の、K 2 SiF 6 結晶の生成化学反応機構を説明する。酸化剤 であるKMnO 4 を添加したHF水溶液中でのSiの化学反応は以 の式(1)のように進行する。
Si(s) + 6HF(aq) + xh + → SiF 6 2- (aq) + (6-2y)H + (aq) + yH 2 (g) + ze - ……(1)
ここで(s)は固体(solid)、(aq)は溶液(aqueous)、(g )はガス(gas)を意味し、h + 及びe - は各々、正孔と電子である。またx+2y+z=4の関 がある。上記式(1)におけるSiF 6 2- は、KMnO 4 /HF混合液中のK + イオンと以下の式(2)のように反応することで 、K 2 SiF 6 が生成される。
2K + + SiF 6 2- → K 2 SiF 6 ……(2)
上記式(1)及び式(2)の化学反応によりK 2
SiF 6
が形成される。
酸化剤としてNaMnO 4
、RbMnO 4
又はCsMnO 4
を使用する場合も、上記式(2)のKをNa、Rb又はC
sなどに置き換えることで説明される。また
母材料であるB含有材料については、Siの代
りにGe、Sn、Ti又はZrを使用する場合も、SiをG
e、Sn、Ti又はZrに置き換えることで説明され
。
次に、母体結晶となるK 2 SiF 6 結晶にMnが置換する作用について考察する。K MnO 4 /HF混合液中には、金属イオンとしてKイオン けでなく、Mnイオンも存在する。Mnの各価の 効半径は、各々、0.83Å(Mn 2+ )、0.65Å(Mn 3+ )、0.54Å(Mn 4+ )である。一方、K 2 SiF 6 結晶を構成する元素であるSi 4+ イオンの実効半径は0.41Åである。また、K 2 SiF 6 結晶の構成原子の電荷中和条件は以下の式(3) に示す通りである。
2K +
+ Si 4+
= 6F -
……(3)
従って、母体結晶となるK 2
SiF 6
結晶のSiサイトに、Mn原子が+4価の状態で置換
したとしても、何ら不思議はない。幸運にも
、Si 4+
の実効イオン半径が0.41Å、Mn 4+
の実効イオン半径が0.53Åと、双方の半径が
ぼ等しいといえるほどの半径を有するため
Mn 4+
イオンが、上記式(1)及び式(2)で進行するK 2
SiF 6
化学反応生成過程で無理なくSiサイトに置換
れたものと考えられる。原子番号が比較的
きいSn 4+
のイオン半径は0.69Åと大きいが、Mn 4+
に関与した赤色発光が明確に観測されるため
、やはりMn 4+
イオンがSnサイトに置換していることになる
本発明における蛍光体の第1の製造方法に使 用する混合液は、酸化剤であるAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)をHF水溶液に加えて 調製したものであるが、もしこの酸化剤を添 加しない場合、即ちHF水溶液(HF+H 2 O)では、誰もが予測するごとく、Si表面上の 然酸化膜がエッチング除去されるのみであ 。
しかし、HF水溶液にKMnO 4 を添加することにより、溶液のSiに対する酸 還元電位の影響で、式(1)の化学反応式によ てSi表面がエッチングされる。KMnO 4 の濃度が少ないと、単なる酸化還元電位によ る影響でSi表面が多孔質状或いは鏡面状にエ チングされるのみである。ところが、KMnO 4 濃度がある程度以上に濃い場合、式(1)に続い て式(2)の化学反応も顕著になり、Mnがドープ れたK 2 SiF 6 蛍光体が析出するのである。K 2 SiF 6 蛍光体を析出させるための混合液中のKMnO 4 の濃度は、HF水溶液に対して0.01~1モルの範囲 あることが好ましい。下限値未満であると 晶体の生成速度が極めて遅いため実用的で なく、また、上限値を越える濃度としても 結晶体を生成させることはできるがその生 速度は変わらないためである。使用するHF 溶液の濃度は1~50%であることが好ましい。下 限値未満では、結晶体の生成速度が極めて遅 く実用的ではなく、上限値を越えても結晶体 を生成させることはできるがその生成速度は 変わらないためである。50%のHF水溶液濃度は 般に市販されているHF水溶液であり、これ 同量の純水で薄めた約25%HF水溶液を使用する ことが特に好ましい。
混合液の温度は通常の化学反応と同じく 液の温度が高ければ高いほど激しい反応が き、逆に液温度が低ければ反応が穏やかに きる。従って、結晶を生成させる際の混合 の温度は、20℃や80℃など製造に際して最適 な温度、その目的に応じた温度を選択すれば よい。これらの温度は、先の背景技術で述べ たごとく、結晶成長をベースとする蛍光体の 作製方法のような1000℃以上の高温とは異な 、室温近辺のような極めて低い温度であり それ故、簡便に製造することが可能である
しかも、装置としては、化学反応槽、より 易な手法を用いるのであれば、例えば、テ ロン(登録商標)製ビーカーのみがあれば結 体の製造が可能であり、これは高温電気炉 温度制御装置などを必要とする従来の製造 法とは明確に異なる。また、SiやTiは地上に 常に豊富な元素であって、入手も容易であ 、KMnO 4 やNaMnO 4 も工業的にごく一般的に酸化剤として使われ ている安価な化学材料である。
このように、入手が容易でかつ安価な材 を混合液を貯留した化学反応槽に浸漬する けで、化学反応が自然に進行し、この反応 終点が結晶体である蛍光体合成の終わりで ることから、反応途中での液温の複雑な制 などの必要がない。このため、蛍光体製造 業者の仕事としては、材料を化学反応槽へ 入するだけの簡単なものとなる。
本発明の蛍光体の第2の製造方法は、0~80℃ HF水溶液に酸化剤であるAMnO 4 (但し、AはK、Na、Rb又はCs)を加え、溶解する とによって混合液を調製し、図5(a)に示すよ に、この0~80℃の混合液に、B含有酸化物材 (但し、BはSi、Ge、Sn、Ti又はZr)を浸漬するこ により、混合液とB含有酸化物材料とを反応 させ、図5(b)に示すように、A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZr)で表される母体結晶の一部に、賦活剤と してMnが置換された構成をとる結晶体からな 蛍光体を生成させることを特徴とする。
なお、本発明でいう賦活剤とは、前述し 第1の製造方法と同様、母体結晶中に存在し 、発光するための励起源となるものをいう。
HF水溶液に上記酸化剤のAMnO 4 を溶解させた混合液に、B含有酸化物材料を 漬するといった極めて簡便な手法により、 漬した材料が化学反応でA 2 BF 6 :Mnの構成をとる結晶体からなる蛍光体粒に変 わる。得られる結晶体からなる蛍光体粒は、 溶液中に沈殿するため、回収が極めて容易で ある。
混合液の調製は、AMnO 4 を純水で溶解し、このAMnO 4 水溶液をHF水溶液に混合することが、AMnO 4 をHF水溶液中に均一に溶解させるために好適 ある。
混合液は一定温度に保つことが好ましい 例えば、調製した混合液を室温環境にある 定時間放置して、液温を均等にすることで 簡便にかつ高品質な蛍光体を作製すること できる。
生成される結晶体は、混合液に浸漬するB含 有酸化物材料を構成するB元素(Si、Ge、Sn、Ti はZr)又は、混合液中のフッ素、A元素(K、Na、 Rb又はCs)により律速される。従って、混合液 のフッ素やA元素が大量に存在していても、 浸漬するB含有酸化物材料の量が少なければ 生成される結晶体の量も決定される。結晶 中に置換されるMnの量は、混合液を調製する 際に使用するAMnO 4 、HF、H 2 O及びこの混合液に浸漬するB含有酸化物材料 量などによって、微妙に異なった結果とな 。
本発明の蛍光体の第2の製造方法において は、図5からも明らかであるが、電気炉など 大型装置は全く不要である。必要なものと て、混合液を貯留する化学溶液槽と混合液 調製するための適当な化学溶液のみであり 室温環境で蛍光体を製造する場合には、化 溶液槽加熱用ヒータも不要である。
上記形態では、粉末状の酸化物を出発材 として用いたが、作製する蛍光体の用途に じてその材料の形状を変更することが可能 ある。例えば、図6に示すような棒状の酸化 物を出発材料として使用してもよい。この場 合、棒状酸化物から蛍光体粒が生成される。 また、多孔質状や板状の酸化物材料を用いて もよい。
混合液に浸漬するB含有酸化物材料は、Si、G e、Sn、Ti又はZrを含むものが使用される。Siを 含む酸化物材料としては、石英(SiO 2 )が挙げられる。また、石英のような酸化物 体だけでなく、ホウ珪酸ガラスやソーダガ スのような酸化物の混合体を用いてもよい また、Geを含む酸化物としては、Ge 2 O 3 が挙げられる。また、Snを含む酸化物として 、SnOが挙げられる。更に、Tiを含む酸化物 しては、TiO 2 やTi 2 O 3 などが挙げられる。
また、混合液に浸漬する酸化物材料の材 としては、結晶質或いは非晶質が挙げられ 。
ここで、B含有酸化物材料として、Siを含む 化物材料である石英(SiO 2 )を、酸化剤としてNaMnO 4 をそれぞれ用いた場合の、Na 2 SiF 6 結晶の生成化学反応機構を説明する。酸化剤 であるNaMnO 4 を添加したHF水溶液中でのSiの化学反応は以 の式(4)のように進行する。
SiO 2
(s) + 6HF(aq) + xh +
→
SiF 6 2-
(aq) + (6-2y)H +
(aq) + yH 2
(g) + ze -
+ O 2
(g) ……(4)
ここで(s)は固体(solid)、(aq)は溶液(aqueous)、(g )はガス(gas)を意味し、h + 及びe - は各々、正孔と電子である。またx+2y+z=4の関 がある。上記式(4)におけるSiF 6 2- は、NaMnO 4 /HF混合液中のK + イオンと以下の式(5)のように反応することで 、Na 2 SiF 6 が生成される。
2Na + + SiF 6 2- → Na 2 SiF 6 ……(5)
上記式(4)及び式(5)の化学反応によりNa 2
SiF 6
が形成される。
酸化剤としてKMnO 4
、RbMnO 4
又はCsMnO 4
を使用する場合も、上記式(5)のNaをK、Rb又はC
sなどに置き換えることで説明される。また
母材料であるB含有酸化物材料については、
えばTiを含む酸化物であるTiO 2
を使用する場合も、SiO 2
をTiO 2
に置き換えることで説明される。また酸化物
材料がSnOの場合は、以下の式(4')や式(5')によ
説明される。
SnO(s) + 6HF(aq) + xh +
→
SnF 6 2-
(aq) + (6-2y)H +
(aq) + yH 2
(g) + ze -
+ 1/2O 2
(g) ……(4')
2Na + + SnF 6 2- → Na 2 SnF 6 ……(5')
次に、母体結晶となるNa 2 SiF 6 結晶にMnが置換する作用について考察する。N aMnO 4 /HF混合液中には、金属イオンとしてNaイオン けでなく、Mnイオンも存在する。Mnの各価の 実効半径は、各々、0.83Å(Mn 2+ )、0.65Å(Mn 3+ )、0.54Å(Mn 4+ )である。一方、Na 2 SiF 6 結晶を構成する元素であるSi 4+ イオンの実効半径は0.41Åである。また、Na 2 SiF 6 結晶の構成原子の電荷中和条件は以下の式(6) に示す通りである。
2Na +
+ Si 4+
= 6F -
……(6)
従って、母体結晶となるNa 2
SiF 6
結晶のSiサイトに、Mn原子が+4価の状態で置換
したとしても、何ら不思議はない。幸運にも
、Si 4+
の実効イオン半径が0.41Å、Mn 4+
の実効イオン半径が0.53Åと、双方の半径が
ぼ等しいといえるほどの半径を有するため
Mn 4+
イオンが、上記式(4)及び式(5)で進行するNa 2
SiF 6
化学反応生成過程で無理なくSiサイトに置換
れたものと考えられる。
本発明における蛍光体の第2の製造方法に使 用する混合液は、酸化剤であるNaMnO 4 をHF水溶液に加えて調製したものであるが、 しこの酸化剤を添加しない場合、即ちHF水 液(HF+H 2 O)では、誰もが予測するごとく、酸化物が単 エッチング液に溶かされるだけである。
しかし、HF水溶液にNaMnO 4 を添加することにより、溶液の酸化物に対す る酸化還元電位の影響で、式(4)の化学反応式 によって酸化物にエッチング反応が起きる。 NaMnO 4 の濃度が少ないと、単なる酸化還元電位によ る影響で酸化物が主にエッチングされるのみ である。ところが、NaMnO 4 濃度がある程度以上に濃い場合、式(4)に続い て式(5)の化学反応も顕著になり、Mnがドープ れたNa 2 SiF 6 蛍光体が析出するのである。Na 2 SiF 6 蛍光体を析出させるための混合液中のNaMnO 4 の濃度は、HF水溶液に対して0.01~2モルの範囲 あることが好ましい。下限値未満であると 晶体の生成速度が極めて遅いため実用的で なく、また、上限値を越える濃度としても 結晶体を生成させることはできるがその生 速度は変わらないためである。使用するHF 溶液の濃度は1~50%であることが好ましい。下 限値未満では、結晶体の生成速度が極めて遅 く実用的ではなく、上限値を越えても結晶体 を生成させることはできるがその生成速度は 変わらないためである。50%のHF水溶液濃度は 般に市販されているHF水溶液である。
混合液の温度は通常の化学反応と同じく 液の温度が高ければ高いほど激しい反応が き、逆に液温度が低ければ反応が穏やかに きる。従って、結晶を生成させる際の混合 の温度は、20~40℃が好ましい。このうち、 えば、20℃や80℃など製造に際して最適な温 、その目的に応じた温度を選択すればよい これらの温度は、先の背景技術で述べたご く、従来より知られている結晶成長をベー とする蛍光体の作製方法のような1000℃以上 の高温とは異なり、室温近辺のような極めて 低い温度であり、それ故、簡便に製造するこ とが可能である。
しかも、装置としては、化学反応槽、より 易な手法を用いるのであれば、例えば、テ ロン(登録商標)製ビーカーのみがあれば結 体の製造が可能であり、これは高温電気炉 温度制御装置などを必要とする従来の製造 法とは明確に異なる。また、例えばSiを含む 酸化物であるSiO 2 は地上に非常に豊富な元素であって、珪石と も呼ばれ、入手も容易であり、KMnO 4 やNaMnO 4 なども工業的にごく一般的に酸化剤として使 われている安価な化学材料である。
このように、入手が容易でかつ安価な材料
混合液が貯留された大気中の化学反応槽に
漬するだけで、化学反応が自然に進行し、
の反応の終点が結晶体である蛍光体合成の
わりであることから、反応途中での液温の
雑な制御などの必要がない。このため、蛍
体製造作業者の仕事としては、材料を化学
応槽へ投入するだけの簡単なものとなる。
なお、混合液の濃度や温度、酸化物材料の
面積や大きさなどの諸条件によっても異な
が、混合液中に酸化物材料を浸漬する時間
、1~48時間が好ましい。
本発明の蛍光体は、前述した第1の製造方法 又は第2の製造方法により得られるものであ 、A 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZrであり、KとSi、KとGe、KとTiの組合わせを く。)で表される母体結晶の一部に、賦活剤 として遷移金属が置換された構成をとる結晶 体からなることを特徴とする。母体結晶のA 2 BF 6 (但し、AはK、Na、Rb又はCs、BはSi、Ge、Sn、Ti又 はZrであり、KとSi、KとGe、KとTiの組合わせを く。)は立方晶系や三方晶(六方晶)の結晶構 を有する。賦活剤として使用される遷移金 としては、Mnが挙げられる。即ち、K 2 SnF 6 :Mn、K 2 ZrF 6 :Mn、Na 2 SiF 6 :Mn、Na 2 GeF 6 :Mn、Na 2 SnF 6 :Mn、Na 2 TiF 6 :Mn、Na 2 ZrF 6 :Mn、Rb 2 SiF 6 :Mn、Rb 2 GeF 6 :Mn、Rb 2 SnF 6 :Mn、Rb 2 TiF 6 :Mn、Rb 2 ZrF 6 :Mn、Cs 2 SiF 6 :Mn、Cs 2 GeF 6 :Mn、Cs 2 SnF 6 :Mn、Cs 2 TiF 6 :Mn、Cs 2 ZrF 6 :Mnである。
本発明の蛍光体は、蛍光体中における電 が励起されることに基づいて発光する。具 的には、蛍光体中の電子を励起することに り、赤色を呈する波長域にピークを有する 光をする。具体的には630nm近傍に最も強い 光を有する。
本発明の蛍光体は、賦活剤となる遷移金属 Mnであるとき、母体結晶であるA 2 BF 6 結晶中のBの一部がMnに置換された構造をとり 、置換されたMnは、その原子価が4価の状態を 取って存在する。
この蛍光体における、A 2 BF 6 母体結晶中のMn置換最適量は0.05モル%~90モル% ある。Mn置換最適量を上記範囲内としたの 、下限値未満の置換量では発光が若干弱く 実用的でないためと考えられるからである 上限値を越えると、製造に時間がかかる、 光が得られないなどの不具合を生じる。
A 2 BF 6 母体結晶中のBに示されるサイトにあるMnは、 Bで示される原子のBF 6 2- イオンと同じく、周囲のF - イオンとの結合によりMnF 6 2- の状態で安定に存在している。従って、A 2 BF 6 中のMnは、厳密には、以下の式(7)で表される うな固溶体と表現することもできる。
A 2
(BF 6
) x
(MnF 6
) (1-x)
……(7)
ここで、本発明の蛍光体は、0.1≦x≦0.9995の
範囲内である。この範囲は、前述したMn置換
適量0.05モル%~90モル%の範囲に相当する。
なお、本発明の蛍光体の範囲外となるが、 記式(7)でx=0となるときはMn置換量100%に相当 、A 2 MnF 6 で表される。また、上記式(7)でx=1となるとき は、Mn置換量0%に相当し、A 2 BF 6 で表される。
本発明の新規な蛍光体は、発光強度が強 、温度変化にも影響を受けにくい、といっ 優れた効果を有する。
なお、上記本発明の第1の製造方法或いは第 2の製造方法で生成された蛍光体粉末は、若 黒ずんで見える。これは、第1の製造方法に いては、K 2 SiF 6 を例とした下記の反応式(8)から容易に理解で きる。
Si + 4KMnO 4
+ 12HF → K 2
SiF 6
+ K 2
MnF 6
+ 3MnO 2
+ 6H 2
O + 2O 2
……(8)
即ち、フッ酸(HF)と酸化剤(KMnO 4
)の混合液に珪素(Si)を浸漬することにより、
色蛍光体となるK 2
SiF 6
及びK 2
MnF 6
だけでなく、水(H 2
O)や酸素ガス(O 2
)の他、蛍光体が黒ずむ原因の酸化マンガン(M
nO 2
)が副生成物として形成されるためと推察さ
る。MnO 2
は、赤色の発光を吸収してしまうために発光
強度を弱め、またスペクトルの半値幅を広げ
てしまう。このため、蛍光体中にMnO 2
が存在すると、結果として蛍光体の性能が低
下する。
また、第2の製造方法においては、Na 2 SiF 6 を例とした下記の反応式(9)から容易に理解で きる。
SiO 2
+ 4NaMnO 4
+ 12HF →
Na 2
SiF 6
+ Na 2
MnF 6
+ 3MnO 2
+ 6H 2
O + 3O 2
……(9)
即ち、フッ酸(HF)と酸化剤(NaMnO 4
)の混合液に石英ガラス(SiO 2
)を浸漬することにより、赤色蛍光体となるNa
2
SiF 6
及びNa 2
MnF 6
だけでなく、水(H 2
O)や酸素ガス(O 2
)の他、蛍光体が黒ずむ原因の酸化マンガン(M
nO 2
)が副生成物として形成されるためと推察さ
る。MnO 2
は、赤色の発光を吸収してしまうために発光
強度を弱め、またスペクトルの半値幅を広げ
てしまう。このため、蛍光体中にMnO 2
が存在すると、結果として蛍光体の性能が低
下する。
そこで、本発明の精製方法では、上記第1 の製造方法或いは第2の製造方法により蛍光 を生成させた後、この生成させた蛍光体粉 を有機溶媒、酸性溶液或いは酸性溶液と有 溶媒との混合液に浸漬して純化させること 特徴とする。
具体的には、生成させた蛍光体粉末を有機 媒、酸性溶液或いは酸性溶液と有機溶媒と 混合液に浸漬することで、蛍光体粉末に副 成物として存在していたMnO 2 が徐々に溶解除去される。上記浸漬処理を行 うことで、黒ずんでいた蛍光体がきれいな薄 黄色になる。この精製方法を施すことで、蛍 光体の性能が高まる。上記浸漬処理は複数回 繰返ししてもよい。また、酸性溶液で浸漬処 理した後に有機溶媒で再度浸漬処理するとい うように、有機溶媒、酸性溶液或いは酸性溶 液と有機溶媒との混合液をそれぞれ組み合わ せて複数回の浸漬処理をしてもよい。使用す る有機溶媒としては、メチルアルコール、エ チルアルコール、アセトン等が挙げられる。 また、酸性溶液としては、塩酸、硝酸、硫酸 、リン酸、酢酸等が挙げられる。
なお、精製に使用する薬品の違いによる精 効果は、蛍光体の母体結晶の種類によって 干異なり、例えば、K 2 SiF 6 やK 2 GeF 6 などのカリウム(K)ベースの蛍光体では、酸の 種類にはそれほど依存しないが、Na 2 SiF 6 やNa 2 GeF 6 などのナトリウム(Na)をベースとする蛍光体 は、塩酸がより良好な結果を与えることを 認している。また、Naベースの蛍光体を硝酸 で精製すると、硝酸はMnO 2 だけでなく、蛍光体の母体結晶も溶かしてし まう不具合を有しているため、精製するに際 して、薬品と蛍光体の母体結晶の組み合わせ の適否を事前に検討する必要がある。
また、有機溶媒は、MnO 2 に対しての溶解度が大きく、逆に、蛍光体の 母体結晶に対する溶解度が小さいため、精製 効率が高いことも確認している。特に、K 2 SiF 6 :Mnなどのカリウムベースの蛍光体ではメチル アルコールを、Na 2 SiF 6 :Mnなどのナトリウムベースの蛍光体ではアセ トンをそれぞれ用いることが好適である。
本発明によるA 2 BF 6 :Mn蛍光体をSiなどの基板表面上に形成した場 には、この基板上の蛍光体をそのまま蛍光 として或いはシンチレーターなどに応用す ことができる。また、蛍光体粉末を結晶化 る、或いは蛍光体を大きな結晶にすること より、固体レーザー材料として使用可能で る。特に注目すべきは、この蛍光体の最も い発光波長は610~640nmにあり、これは産業界 最も使用されている気体レーザーであるHe-N eレーザーの発振波長(632.8nm)とほぼ一致して り、この気体レーザーに代わる超小型赤色 光固体レーザーの実現に期待が持てる。
更に、本発明の蛍光体は、発光強度が強 、温度変化にも影響を受けにくい、といっ 優れた効果を有するため、青色発光ダイオ ドからの青色の光励起によって、緑色蛍光 及び赤色蛍光体をそれぞれ発光させる原理 白色発光ダイオードの赤色蛍光体として用 ることで、青色の励起光での発光効率が高 、かつ高温でも安定に動作させることがで 、現在主流の青色発光ダイオードと黄色蛍 体で構成されている擬似的な白色発光ダイ ードに代わる、三波長タイプの新しい真の 色発光ダイオードの実現に期待が持てる。
次に本発明の実施例を詳しく説明する。
<実施例1>
Si材料としてn型Si単結晶基板を用意し、こ
基板に対して前処理洗浄を施した。具体的
は、超音波を付与しながら、先ずトリクロ
エチレン洗浄を10分間、次にアセトン洗浄を
10分間、続いてメタノール洗浄を10分間にわ
って行う脱脂洗浄を施した。この脱脂洗浄
後、5%HF水溶液を使用してSi基板表面に形成
れている自然酸化膜を除去した。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図1(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液にSi基板を10分間浸漬した。 中に浸漬したSi基板の表層には、図1(b)に示 ような結晶体が生成された。
図7に、表層に結晶体が生成したSi基板の 面光学写真を示す。図7に示す表面光学写真 では、Si結晶表層に黄色の結晶体が生成され ことが確認できる。この結晶体は水に難溶 あり、また簡単に剥離可能であった。これ より粉末状の蛍光体を簡便に得られること 確認された。これら粉体のサイズは数十ミ ロンのオーダであった。
次に、Si基板表層に生成した結晶体につい 、X線回折測定を行った。その結果を図8に示 す。図8から明らかなように、X線回折のピー (図8中の(a))が、立方晶K 2 SiF 6 の理論予測のピーク(図8中の(b))とよく一致し ていることから、化学反応生成物質がK 2 SiF 6 の結晶構造を示すことが結論付けられる。な お、K 2 SiF 6 は立方晶系の結晶構造を有し、格子定数は約 8.14Åである。また、図8に示すX線回折ピーク からも明らかであるが、例えば(NH 4 ) 2 SiF 6 などの不純物結晶や非晶質の不純物も含まれ ていない、高品質な結晶であることが判る。
次に、Si基板表層に生成した結晶体につい 、X線光電子分光測定を行った。その結果を 9に示す。図9から明らかなように、K 2 SiF 6 結晶を構成する原子であるK、Si及びFだけで く、Mnのピークも明確に観測されている。な お、それ以外に観測されたピークは、C(炭素) やO(酸素)などの空気吸着分子に起因したピー クである。ちなみに、X線光電子分光測定か 予測されるMn置換量は、だいたい0.5モル%で り、Mnが非常に効率よく、高い割合で置換し ていることがうかがえる。なお、従来より遷 移金属がドープされた絶縁物蛍光体は発光効 率がよいことが知られている。例えば図58に けるGGG結晶中のMn含有量は約0.5モル%である
以上の測定結果から、実施例1で得られた結 晶体は、K 2 SiF 6 :Mnであることが確認された。
なお、実施例1では、出発材料としてn型Si 単結晶基板を使用したが、同様の性質を有す る蛍光体が得られるか追加実験したところ、 p型Si単結晶基板でも同じ効果を有する蛍光体 が得られることを確認した。また、材質が異 なる多結晶Siを出発材料として追加実験した ころ、同じ効果を有する蛍光体が得られる とを確認した。
<評価1-1>
実施例1で得られたK 2
SiF 6
:Mnについて、室温における光励起発光スペク
トルを測定し、その発光特性について評価し
た。光励起光源は、発振波長325nmのHe-Cdレー
ーを用いた。K 2
SiF 6
:Mnの光励起発光スペクトルを図10に示す。な
、図10には、参考として、50%HF:HNO 3
:H 2
O=1:5:10の典型的なステインエッチング液で作
した多孔質(porous)Siからの光励起発光スペク
トルの50倍に拡大したスペクトルも比較のた
に載せている。多孔質Siからの発光スペク
ルを50倍にまで拡大したのは、K 2
SiF 6
:Mn蛍光体からの発光強度に比べ非常に弱いた
めである。比較とした多孔質Siは近年注目さ
ている発光技術である。これは蛍光体から
発光とは異なり、ステインエッチングによ
て作られた多孔質Si微粒子に閉じ込められ
電子による発光と考えられている。図10から
明らかなように、K 2
SiF 6
:Mn蛍光体からの発光強度の強さが、多孔質Si
らの発光強度との比較から明らかである。
実施例1のK 2 SiF 6 :Mnを作製するために使用した混合液の化学組 成と多孔質Si作製のための典型的なステイン ッチング液との本質的な差は、前者はKMnO 4 、後者はHNO 3 の、いわゆる酸化剤の違いのみである。しか しながら、前者の酸化剤にはMnが構成元素と て含まれており、これが前述した式(1)及び (2)に示すような化学反応過程と適合し、Mn Siとのイオン半径がほぼ等しいことにも恵ま れ、Mnが無理なくK 2 SiF 6 母体結晶中に発光中心として置換されたもの と推察される。
ちなみに、Crを含む酸化剤K 2 Cr 2 O 7 を用いた混合液(50%HF:K 2 Cr 2 O 7 :H 2 O)を用いた以外は実施例1と同様に実験を行い 、実験後のSi基板表層における発光スペクト を測定したが、図10に示す実施例1のK 2 SiF 6 :Mnのような蛍光体中の遷移金属特有の発光ス ペクトルは全く観測されず、多孔質Siの発光 ペクトルと類似の発光スペクトルが観測さ ただけであった。
<評価1-2>
上記評価1-1に続いて、実施例1で得られたK 2
SiF 6
:Mnについて、蛍光体の発光特性をより詳しく
調べるため、発光スペクトルの温度依存性を
測定した。20~300K(-253~27℃)の間で測定を行っ
。図11には、そのうちの3点の温度(20K、200K、
300K)での測定結果を示す。
非特許文献3にも開示された、図58に示すGGG: Mn蛍光体からのスペクトルと比較するとその 果がより明らかとなるが、図11に示すK 2 SiF 6 :Mn蛍光体からの発光強度は、低温よりも高温 の方が強い結果が得られている。また、Mnの3 d電子特有の微細構造発光線も、低温は当然 あるが、室温(300K)においても明確に観測さ ており、母体結晶の温度の影響を受けるこ なく発光していることが判る。このような 度に対して安定な発光スペクトル特性は、 光体の応用上非常に重要な性質である。ま 、高温になるほど発光強度が増す傾向は、 色光源の赤発光体として高温下で使用する 合、例えば、白色発光ダイオードの赤発光 として使用された自動車のヘッドライトな 、非常に有用な性質である。
<評価1-3>
上記評価1-2における図11に示す発光スペク
ルで見られた主だった発光ピーク波長のう
、室温で観測されたピーク波長614nm、631nm及
648nmの3つの発光ピークについて、-250~27℃の
範囲で、もう少し詳しく発光ピーク波長の温
度に対する影響を調べた結果が、図12である
図12から明らかなように、-250~27℃の温度 囲で発光ピーク波長はほとんど変化せず、 度に対して極めて安定な波長で発光するこ が判った。
<評価1-4>
上記評価1-2における図11に示す発光スペク
ルで見られた主だった発光ピーク波長のう
、614nm、631nm及び648nmの半値幅を、-250~27℃の
囲で測定を行い、温度に対してプロットし
ものを図13に示す。なお、各々の発光ピー
の半値幅は、それぞれの発光ピークをガウ
関数でフィットさせることにより決定した
図13から明らかなように、発光ピーク波 の半値幅は、温度が上昇すると若干広くな 程度で、-250~27℃の間で±1nmの極めて狭い範 に収まっていることが確認された。
例えば図58に示す、従来のチョクラルスキ 法で作製したGd 3 Ga 5 O 12 (GGG):Mn蛍光体からの発光では、5K(-268℃)の極 温で描くピークが分離して観測されている 、室温の290K(17℃)では非常に幅の広い発光に 変わっている。
これらの結果から、K 2 SiF 6 :Mn蛍光体からの発光ピークの半値幅は、温度 にほとんど影響されていないことが判る。
<評価1-5>
蛍光体の応用上、最も強く発光させるため
励起光波長を知ることが非常に重要である
そこで、K 2
SiF 6
:Mn蛍光体について、励起波長に対する発光強
度の関係を求めた。その結果を図14に示す。
お、図14中の破線は、励起波長に対する発
強度を、太実線は、発光スペクトルをそれ
れ表す。
図14から明らかなように、太実線で示す 色発光は、約450nmの励起波長で発光強度が最 大になっている。
図14から確認された特性は、現在の青色 光ダイオードと黄色蛍光体で構成されてい 擬似的な白色発光ダイオードに代わる、三 長タイプの真の白色発光ダイオードの実現 要望されている赤色発光体特性と完全に一 する、非常に好都合な特性である。
<評価1-6>
母体結晶にMnが置換された本発明による蛍
体K 2
SiF 6
:Mnと、結晶中にMnが置換されていない単なるK
2
SiF 6
結晶との、光吸収スペクトルを比較したもの
を図15に示す。
図15から明らかなように、母体結晶中にMn が置換されたことにより、青(約450nm)及び紫 域(<400nm)で吸収バンドのピークが明確に観 測されており、これが赤色発光に寄与してい ることが理解される。
<実施例2>
本発明による蛍光体の作製方法は、Si材料
対してだけでなく、Ge材料に対しても有用で
あることを確認するため、混合液に浸漬する
材料として、Si材料に代えてGe材料(Ge微粉末)
用いた以外は、実施例1と同様にして実験を
行った。
<評価2>
続いて、実施例2で生成した結晶体について
、実施例1と同様にしてX線回折測定を行った
図示しないが、実施例2で得られた結晶体が
K 2
GeF 6
結晶構造を有することが確認された。また、
実施例2で生成した結晶体について、実施例1
同様にしてX線光電子分光測定を行った。こ
れも図示しないが、実施例2で得られた結晶
がK 2
GeF 6
結晶を構成する元素であるK、Ge及びFだけで
く、Mnのピークも明確に観測された。
以上の測定結果から、実施例2で得られた結 晶体は、K 2 GeF 6 :Mnであることが確認された。
実施例2で得られたK 2 GeF 6 :Mnについて、上記実施例1の評価1と同様にし 、室温における光励起発光スペクトルを測 し、その発光特性について評価した。その 励起発光スペクトルを図16に示す。
図16から明らかなように、図10に示すK 2 SiF 6 :Mnの発光スペクトルと同様のピークを示し、 また、強い赤色発光が確認された。
<実施例3>
本発明による蛍光体の作製方法での酸化剤
して、KMnO 4
だけでなく他の酸化剤でも有用であることを
確認するため、KMnO 4
の代わりにNaMnO 4
を用いた。それ以外は、実施例1と同様に実
を行った。ただし、この実施例で用いた溶
は100ccの50%HF溶液に12gのNaMnO 4
を投入したものを用いた。
<評価3>
図17に、実施例3の方法で作製した赤色蛍光
の電子顕微鏡写真を示す。この写真から、
発明で作製した赤色蛍光体は数十ミクロン
オーダであることが判る。
図18は、電子プローブ・マイクロアナラ ザーによる組成分析の結果である。この組 分析の結果から、蛍光体はNa、Si、F及びMnを 成分とする化合物であることが結論される
次に、この蛍光体結晶のX線回折測定を行っ た。その結果を図19に示す。図19から明らか ように、X線回折のピークが、三方晶Na 2 SiF 6 の計算ピークと一致していることが判る。従 って、実施例3で得られた蛍光体結晶は、Mnを 含む三方晶結晶Na 2 SiF 6 であると結論される。なお、三方晶Na 2 SiF 6 結晶の格子定数はa=約8.859Å、c=約5.038Åであ 。
本発明による蛍光体Na 2 SiF 6 :Mnの光吸収スペクトルを図20に示す。この図 ら明らかなように、青(約460nm)及び紫外域( 350nm)に吸収バンドのピークが明確に観測さ ており、これらが励起準位として赤色発光 寄与していることが理解される。
実施例3で得られたNa 2 SiF 6 :Mnについて、蛍光体の発光特性をより詳しく 調べるため、発光スペクトルの温度依存性を 測定した。20~300K(-253~27℃)の間で測定を行っ 。図21には、そのうちの3点の温度(20K、200K、 300K)での測定結果を示す。発光スペクトルの 値幅が温度に対して鈍感であることから、 の蛍光体は母体結晶の温度の影響を受ける となく発光していることが判る。このよう 広い温度範囲で安定に発光する蛍光体は、 の応用上非常に重要な性質である。
蛍光体の応用上、最も強く発光させるため 励起光波長を知ることが非常に重要である とから、図14のK 2 SiF 6 :Mn蛍光体の場合と同じく、Na 2 SiF 6 :Mn蛍光体について、励起波長に対する発光強 度の関係を求めた。その結果を図22に示す。 お、図22中の破線は、励起波長に対する発 強度を、太実線は、発光スペクトルをそれ れ表す。この図から明らかなように、太実 で示す赤色発光は、約460nmの励起波長で発光 強度が最大になっている。青色(約460nm)励起 色発光ダイオード用の赤色蛍光体として最 であることが判る。
図23は、赤色蛍光体Na 2 SiF 6 :Mnの発光積分強度を、温度に対してプロット したものである。温度が高温になるにしたが って、赤色発光強度が徐々に増加している。 大概の発光物質は、温度の上昇とともに発光 強度が減少するのが普通であり、本発明での 蛍光体のユニークな特徴の一つを示している 。
<実施例4>
実施例3と同じ酸化剤NaMnO 4
を用い、また浸漬結晶としてGe粒結晶を用い
以外は、実施例1と同様に実験を行った。た
だし、溶液としては100ccの50%HF溶液に24gのNaMnO
4
を加えたものを用いた。
<評価4>
図24に、実施例4で作製した赤色蛍光体の電
顕微鏡写真を示す。この実施例で作製した
色蛍光体は、20ミクロン以下の粒径である
とが判る。
図25は、電子プローブ・マイクロアナラ ザーによる組成分析の結果である。この組 分析の結果から、蛍光体は、Na、Ge、F及びMn 主成分とする化合物であることが結論され 。
次に、この蛍光体結晶のX線回折測定を行っ た。その結果を図26に示す。この図から明ら なように、X線回折のピークが、三方晶Na 2 GeF 6 の計算ピークと一致していることが判る。従 って、実施例4で得られた蛍光体結晶は、Mnを 含む三方晶結晶Na 2 GeF 6 であると結論される。なお、三方晶Na 2 GeF 6 結晶の格子定数はa=約9.058Å、c=約5.109Åであ 、実施例3の三方晶Na 2 SiF 6 結晶蛍光体の格子定数よりも若干大きい。
実施例4で得られたNa 2 GeF 6 :Mn蛍光体の温度依存性を測定した。図27には 20K、200K、300Kの3点の温度での測定結果を示 。実施例1のK 2 SiF 6 や実施例3のNa 2 SiF 6 などと同じく、光スペクトルの半値幅が温度 に対して鈍感であることから、この蛍光体は 母体結晶の温度の影響を受けることなく発光 していることが判る。
図28は、赤色蛍光体Na 2 GeF 6 :Mnの発光積分強度を、温度に対してプロット したものである。温度が高温になるにしたが って、赤色発光強度が徐々に増加している。 本発明による蛍光体のユニークな特徴の一つ である。
<実施例5>
浸漬結晶としてZrを用いた以外は、実施例1
同じ方法で蛍光体を作製した。この方法で
製された蛍光体は、X線回折測定からMnがド
プされたK 2
ZrF 6
と確認できた。
<評価5>
図29はK 2
ZrF 6
:Mn蛍光体の室温での発光スペクトルである。
波長の630nm近傍にピークを有する赤色発光が
測されている。
<実施例6>
浸漬結晶としてSnを用いた以外は、実施例3
同じ方法で蛍光体を作製した。ただし、溶
としては50%HF溶液100cc:H 2
O100cc:NaMnO 4
10gの組成比の液を用いた。この方法で作製さ
れた蛍光体は、X線回折測定からMnがドープさ
れたK 2
SnF 6
と確認できた。
<評価6>
図30はNa 2
SnF 6
:Mn蛍光体の室温での発光スペクトルである。
波長の630nm近傍にピークを有する赤色発光が
測されている。
<実施例7>
浸漬結晶としてTiを用いた以外は、実施例3
同じ方法で蛍光体を作製した。この方法で
製された蛍光体は、X線回折測定からMnがド
プされたNa 2
TiF 6
と確認できた。
<評価7>
図31はNa 2
TiF 6
:Mn蛍光体の室温での発光スペクトルである。
波長の630nm近傍にピークを有する赤色発光が
測されている。
<実施例8>
本発明による蛍光体の作製方法での酸化剤
して、KMnO 4
やNaMnO 4
だけでなく他の酸化剤でも有用であることを
確認するため、KMnO 4
やNaMnO 4
の代わりにCsMnO 4
を用いた。それ以外は、実施例1と同様に実
を行った。ただし、ここで用いた溶液は50%HF
溶液100cc:H 2
O100cc:CsMnO 4
2gの混合割合である。
<評価8>
図32は実施例8で作製された蛍光体の室温で
発光スペクトルである。波長の630nm近傍に
ークを有する赤色発光が観測されている。
<実施例9>
先ず、実施例1で得られた蛍光体粉末を用意
し、この蛍光体粉末を硝酸に浸漬し、軽く攪
拌した。次に、この蛍光体粉末を硝酸から取
り出し、続いてメタノールに浸漬し、取り出
して乾燥させた。上記処理を経ることで、黒
ずんでいた蛍光体粉末がきれいな薄黄色にな
った。
これは生成した蛍光体粉末を硝酸及びエタ ールにそれぞれ浸漬することによって、蛍 体粉末中に副生成物として存在していたMnO 2 が硝酸及びエタノールに溶かされて除去され たためと推察される。
<評価9>
図33は、実施例9で精製した蛍光体粉末の発
スペクトルと実施例5の未精製の蛍光体粉末
の発光スペクトルを比較した図である。
図33から明らかなように、硝酸及びエタ ールを用いた精製によって、蛍光体の発光 度が大幅に増加し、スペクトルが先鋭化し いることが判る。
なお、実施例9では、酸の種類として硝酸 を使用したが、硝酸以外に塩酸や硫酸、リン 酸、酢酸等を試し、同様の効果を得ている。 また、これら酸以外として、メタノールやエ タノール、アセトンなどの有機溶媒で洗浄し ても同様の効果を得ている。更に、酸と有機 溶媒との混合液を使用しても精製の有効性を 確認している。
<実施例10>
蛍光体を樹脂材料に封止した場合、例えば
白色発光ダイオード用赤色蛍光体として現
よく知られている(Ca,Sr)S:Euのような硫化物
光体では、空気中で分解して有毒な硫化水
を発生したり、あるいは樹脂中に分散させ
だけで、蛍光体の劣化をきたすことがある
そこで、実施例1で得られたK 2 SiF 6 :Mn蛍光体をエポキシ樹脂に分散封止して試料 を作製し、その試料を1ヶ月放置することで その径時変化を調べた。
図34は、紫外レーザで励起して赤色発光 せた1ヶ月経過後の試料の光学写真である。 34より明らかなように、写真では紫外レー 照射部分が白く写っているが、実際は赤く っている。また、樹脂に封止された蛍光体 赤く発光することにより、封止された試料 体だけでなく周囲も赤く照っていた。なお 発光の強度は、樹脂への封止1ヵ月経過後で 封止直後と同程度の大きさであることを確 している。
<実施例11>
酸化物材料としてSiO 2
が100%の、いわゆる石英ガラス粉末を用意し
この材料に対して前処理洗浄を施した。具
的には、先ずトリクロルエチレン洗浄を10分
間、次にアセトン洗浄を10分間、続いてメタ
ール洗浄を10分間にわたって行う脱脂洗浄
施した。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液に石英ガラス粉末を48時間浸 した。上記時間浸漬することで、液中に浸 した石英ガラス粉末から、図5(b)に示すよう に結晶体の粉末が得られた。
なお、この例では、酸化物材料として粉 形状のものを用いたが、図6に示すような棒 形状のものを用いても、同様に結晶体の粉末 が得られることを確認した。また、棒形状は 特にガラス質(非晶質)の酸化物材料を使用す 場合に最適であり、石英結晶のような結晶 化物材料を用いる場合は、粉末形状を使用 た方が現実的であった。
図35に、生成した結晶体粉末の光学写真 示す。図35に示す光学写真で結晶体粉末が赤 色に写っているのは、蛍光体に紫外光を照射 して、赤色発光させながら写真撮影したため であり、蛍光体として作用することが確認で きる。
図36に、生成した結晶体粉末の電子顕微鏡 真を示す。図36に示すように、結晶体粉末の 粒径は約十ミクロンのオーダであることが判 る。また、電子プローブ・マイクロアナライ ザーによる解析から、この結晶体粉末はMnが ープされたK 2 SiF 6 :Mnであることが確認された。
<評価10>
図37(a)は、実施例11で得られたK 2
SiF 6
:Mnの室温での発光スペクトルである。この図
37(a)から明らかなように、波長630nm近傍にピ
クを有する赤色発光が観測されている。
蛍光体の応用上、最も強く発光させるた の励起光波長、いわゆる励起スペクトルを ることが非常に重要である。図37(b)は、こ 赤色蛍光体の励起スペクトルである。この 37(b)から明らかなように、波長約460nmの青色 の励起で、赤色が最も強く発光しているこ が判る。
図37(b)から確認された特性は、現在の青 発光ダイオードと黄色蛍光体で構成されて る擬似的な白色発光ダイオードに代わる、 波長タイプの真の白色発光ダイオードの実 に要望されている赤色蛍光体特性と完全に 致している、非常に好都合な特性である。
<実施例12>
酸化物材料としてホウ珪酸ガラス粉末を用
し、この材料に対して前処理洗浄を施した
具体的には、先ずトリクロルエチレン洗浄
10分間、次にアセトン洗浄を10分間、続いて
メタノール洗浄を10分間にわたって行う脱脂
浄を施した。なお、ホウ珪酸ガラスは、一
には硬質ガラスと呼ばれ、SiO 2
とB 2
O 3
を主成分とし、少量のAl 2
O 3
などが含まれているガラスである。なお、こ
の例ではホウ珪酸ガラス粉末として、化学実
験用カバーガラスを乳鉢で粉砕したものを使
用した。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液にホウ珪酸ガラス粉末を48時 浸漬した。上記時間浸漬することで、液中 浸漬したホウ珪酸ガラス粉末から、図5(b)に 示すように結晶体の粉末が得られた。
図38に、生成した結晶体粉末の電子顕微鏡 真を示す。図38に示すように、結晶体粉末の 粒径は約十ミクロンのオーダであることが判 る。また、電子プローブ・マイクロアナライ ザーによる解析から、この結晶体粉末はK 2 SiF 6 :Mnであることが確認された。
更に、生成した結晶体粉末がK 2 SiF 6 :Mnであることを、X線回折測定を用いて調べ 。図39にその結果を示す。図39から明らかな うに、X線回折のピークが立方晶K 2 SiF 6 の理論データとよく一致しており、化学反応 生成物質がK 2 SiF 6 であると結論された。なお、このK 2 SiF 6 は立方晶系の結晶構造を有し、格子定数は約 8.14Åである。
<評価11>
図40(a)は、実施例12で得られたK 2
SiF 6
:Mnの室温での発光スペクトルである。この図
40(a)から明らかなように、波長630nm近傍にピ
クを有する赤色発光が観測されている。
図40(b)は、この赤色蛍光体の励起スペク ルである。この図40(b)から明らかなように、 図37(b)に示す実施例11の石英ガラスを材料と て用いた蛍光体の場合と同様に、波長約460nm の青色光の励起で、赤色が最も強く発光して いることが判る。
図41は、同じくこの赤色蛍光体の、発光積 強度を温度に対してプロットしたものであ 。図41において、I PL (T)は温度が絶対温度Tでの発光強度であり、I PL (0)は温度が0Kでの発光強度である。図41から らかなように、温度が高温になるに従って 赤色発光強度が徐々に増加していることが る。
なお、酸化物材料としてホウ珪酸ガラス以 に、バリウムホウ珪酸ガラスと称されてい SiO 2 、BaO、B 2 Oを主成分とする酸化物混合体についても、 ウ珪酸ガラスを用いた場合と同様の結果を ている。
<実施例13>
酸化物材料としてソーダガラス粉末を用意
、この材料に対して前処理洗浄を施した。
体的には、先ずトリクロルエチレン洗浄を1
0分間、次にアセトン洗浄を10分間、続いてメ
タノール洗浄を10分間にわたって行う脱脂洗
を施した。なお、ソーダガラスは、スライ
ガラスや窓ガラスなど一般的に使われてい
ガラスであり、主原料はSiO 2
、ソーダ灰(Na 2
O 3
)、炭酸カルシウム(CaCO 3
)である。なお、この例ではソーダガラス粉
として、スライドガラスを乳鉢で粉砕した
のを使用した。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液にソーダガラス粉末を48時間 漬した。上記時間浸漬することで、液中に 漬したソーダガラス粉末から、図5(b)に示す ように結晶体の粉末が得られた。
図42に、生成した結晶体粉末の電子顕微鏡 真を示す。図42に示すように、結晶体粉末の 粒径は十ミクロンのオーダであることが判る 。また、電子プローブ・マイクロアナライザ ーによる解析から、この結晶体粉末はMnがド プされたK 2 SiF 6 :Mnであることが確認された。
<評価12>
図43(a)は、実施例13で得られたK 2
SiF 6
:Mnの室温での発光スペクトルである。図43(a)
ら明らかなように、波長630nm近傍にピーク
有する赤色発光が観測されている。
図43(b)は、この赤色蛍光体の励起スペク ルである。この図43(b)から明らかなように、 図37(b)に示す実施例11の石英ガラスを材料と て用いた蛍光体や図40(b)に示す実施例12のホ 珪酸ガラスを材料として用いた蛍光体の場 と同様に、波長約460nmの青色光の励起で、 色が最も強く発光していることが判る。
<実施例14>
酸化物材料として、珪石(珪砂)を用意した
なお、珪石は珪酸分(SiO 2
)を主成分とし、石英片岩とも呼ばれる、地
の至る所に転がっている石ころである。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液に珪砂を48時間浸漬した。上 時間浸漬することで、液中に浸漬した珪砂 ら、図5(b)に示すように結晶体の粉末が得ら れた。
図44に、生成した結晶体粉末の電子顕微鏡 真を示す。図44に示すように、結晶体粉末の 平均粒径は十ミクロン以下の大きさであるこ とが判る。また、電子プローブ・マイクロア ナライザーによる解析から、この結晶体粉末 の主成分はK 2 SiF 6 :Mnであることが確認された。
更に、生成した結晶体粉末がK 2 SiF 6 :Mnであることを、X線回折測定を用いて調べ 。図45にその結果を示す。図45から明らかな うに、X線回折のピークが立方晶K 2 SiF 6 の理論データとよく一致しており、前述した 実施例12におけるホウ珪酸ガラスを材料とし 用いた蛍光体と同様に、化学反応生成物質 K 2 SiF 6 であると結論された。
<評価13>
図46(a)は、実施例14で得られたK 2
SiF 6
:Mnの室温での発光スペクトルである。この図
46(a)から明らかなように、波長630nm近傍にピ
クを有する赤色発光が観測されている。
図46(b)は、この赤色蛍光体の励起スペク ルである。この図46(b)から明らかなように、 図37(b)に示す実施例11の石英ガラスを材料と て用いた蛍光体や図40(b)に示す実施例12のホ 珪酸ガラスを材料として用いた蛍光体の場 、図43(b)に示す実施例13のソーダガラスを材 料として用いた蛍光体の場合と同様に、波長 約460nmの青色光の励起で、赤色が最も強く発 していることが判る。
図47は、同じくこの赤色蛍光体の、発光積 強度を温度に対してプロットしたものであ 。図47において、I PL (T)は温度が絶対温度Tでの発光強度であり、I PL (0)は温度が0Kでの発光強度である。図47から らかなように、温度が高温になるに従って 赤色発光強度が徐々に増加していることが る。
<実施例15>
酸化物材料として実施例13と同様にソーダ
ラス粉末を用意し、この材料に対して前処
洗浄を施した。具体的には、先ずトリクロ
エチレン洗浄を10分間、次にアセトン洗浄を
10分間、続いてメタノール洗浄を10分間にわ
って行う脱脂洗浄を施した。
一方、実施例11~14で酸化剤として使用したKM nO 4 の代わりにNaMnO 4 を用い、NaMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このNaMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:NaMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液にソーダガラス粉末を48時間 漬した。上記時間浸漬することで、液中に 漬したソーダガラス粉末から、図5(b)に示す ように結晶体の粉末が得られた。
<評価14>
図48は、実施例15で得られた結晶体粉末の室
温での発光スペクトルである。図48から明ら
なように、酸化剤としてKMnO 4
を用いて生成された赤色蛍光体と同様に、波
長630nm近傍にピークを有する赤色発光が観測
れている。なお、X線回折測定から、ここで
の化学反応生成物質はNa 2
SiF 6
:Mnであることが判った。
<実施例16>
酸化物材料としてGeO 2
粉末を用意し、この材料に対して前処理洗浄
を施した。具体的には、先ずトリクロルエチ
レン洗浄を10分間、次にアセトン洗浄を10分
、続いてメタノール洗浄を10分間にわたって
行う脱脂洗浄を施した。
一方、実施例15と同様に、酸化剤としてNaMnO 4 を用い、NaMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このNaMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:NaMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で調 製した混合液にGeO 2 粉末を48時間浸漬した。上記時間浸漬するこ で、液中に浸漬したGeO 2 粉末から、図5(b)に示すように結晶体の粉末 得られた。
<評価15>
図49は、実施例16で得られた結晶体粉末の室
温での発光スペクトルである。図49から明ら
なように、波長630nm近傍にピークを有する
色蛍光体特有の発光が観測されている。な
X線回折測定から、ここでの化学反応生成物
はNa 2
GeF 6
:Mnであることが判った。
<実施例17>
酸化物材料としてSnO粉末を用意し、この材
に対して前処理洗浄を施した。具体的には
先ずトリクロルエチレン洗浄を10分間、次
アセトン洗浄を10分間、続いてメタノール洗
浄を10分間にわたって行う脱脂洗浄を施した
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で 調製した混合液にSnO粉末を48時間浸漬した。 記時間浸漬することで、液中に浸漬したSnO 末から、図5(b)に示すように結晶体の粉末が 得られた。
<評価16>
図50は、実施例17で得られた結晶体粉末の室
温での発光スペクトルである。図50から明ら
なように、波長630nm近傍にピークを有する
色蛍光体特有の発光が観測されている。な
X線回折測定から、ここでの化学反応生成物
はK 2
SnF 6
:Mnであることが判った。
<実施例18>
酸化物材料としてTiO 2
粉末を用意し、この材料に対して前処理洗浄
を施した。具体的には、先ずトリクロルエチ
レン洗浄を10分間、次にアセトン洗浄を10分
、続いてメタノール洗浄を10分間にわたって
行う脱脂洗浄を施した。
一方、KMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このKMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:KMnO 4 =100cc:100cc:6gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で調 製した混合液にTiO 2 粉末を48時間浸漬した。上記時間浸漬するこ で、液中に浸漬したTiO 2 粉末から、図5(b)に示すように結晶体の粉末 得られた。
<評価17>
図51は、実施例18で得られた結晶体粉末の室
温での発光スペクトルである。図51から明ら
なように、波長630nm近傍にピークを有する
色蛍光体特有の発光が観測されている。な
X線回折測定から、ここでの化学反応生成物
はK 2
TiF 6
:Mnであることが判った。
<実施例19>
酸化物材料として実施例18と同様にTiO 2
粉末を用意し、この材料に対して前処理洗浄
を施した。具体的には、先ずトリクロルエチ
レン洗浄を10分間、次にアセトン洗浄を10分
、続いてメタノール洗浄を10分間にわたって
行う脱脂洗浄を施した。
一方、実施例11~14で酸化剤として使用したKM nO 4 の代わりにCsMnO 4 を用い、CsMnO 4 を20℃の純水で溶解し、このCsMnO 4 水溶液を20℃のHF水溶液に混合し、その後、 1時間混合した液を室温で放置することで、 合液を調製した。調製した混合液の組成は 50%HF:H 2 O:CsMnO 4 =100cc:100cc:4gである。
次に、図5(a)に示すように、室温環境下で調 製した混合液にTiO 2 粉末を48時間浸漬した。上記時間浸漬するこ で、液中に浸漬したTiO 2 粉末から、図5(b)に示すように結晶体の粉末 得られた。
<評価18>
図52は、実施例19で得られた結晶体粉末の室
温での発光スペクトルである。図52から明ら
なように、波長630nm近傍にピークを有する
色蛍光体特有の発光が観測されている。な
X線回折測定から、ここでの化学反応生成物
はCs 2
TiF 6
:Mnであることが判った。
<実施例20>
先ず、実施例15で得られた蛍光体粉末を用
し、この蛍光体粉末を塩酸に浸漬し、軽く
拌した。次に、この蛍光体粉末を塩酸から
り出し、続いてアセトンに浸漬し、取り出
て乾燥させた。上記処理を経ることで、黒
んでいた蛍光体粉末がきれいな薄黄色にな
た。
これは生成した蛍光体粉末を塩酸及びアセ ンにそれぞれ浸漬することによって、蛍光 粉末中に副生成物として存在していたMnO 2 が塩酸及びアセトンに溶かされて除去された ためと推察される。
<評価19>
図53は、実施例20で精製した蛍光体粉末の発
光スペクトルと実施例15の未精製の蛍光体粉
の発光スペクトルを比較した図である。
図53から明らかなように、塩酸及びアセ ンを用いた精製によって、蛍光体の発光強 が大幅に増加し、スペクトルが先鋭化して ることが判る。
<実施例21>
蛍光体を樹脂材料に封止した場合、例えば
白色発光ダイオード用赤色蛍光体として現
よく知られている(Ca,Sr)S:Euのような硫化物
光体では、空気中で分解して有毒な硫化水
を発生したり、あるいは樹脂中に分散させ
だけで、蛍光体の劣化をきたすことがある
そこで、実施例11で得られたK 2 SiF 6 :Mn蛍光体をエポキシ樹脂に分散封止して試料 を作製し、その試料を1ヶ月放置することで その径時変化を調べた。
図54は、紫外レーザで励起して赤色発光 せた1ヶ月経過後の試料の光学写真である。 54より明らかなように、写真では紫外レー 照射部分が白く写っているが、実際は赤く っている。また、樹脂に封止された蛍光体 赤く発光することにより、封止された試料 体だけでなく周囲も赤く照っていた。なお 発光の強度は、樹脂への封止1ヵ月経過後で 封止直後と同程度の大きさであることを確 している。
本発明の蛍光体並びに本発明の製造方法 より得られる蛍光体は、三波長タイプの白 発光ダイオード以外の用途として、蛍光表 管や高演色ランプ、X線・放射線量計(シン レータ)、PDP、液晶用バックライト蛍光体、 機型ELパネル、固体レーザー用材料など幅 い用途に適用できる。
