Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
FLUORESCENT POLYVINYL ALCOHOL RESIN MOLDINGS AND PROCESS FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/028393
Kind Code:
A1
Abstract:
A PVA resin molding containing at least 0.5% by mass of fluorescent fine particles which have a mean particle diameter of 50nm or below and emit fluorescence of 350 to 700 nm in wavelength under the irradiation with ultraviolet rays; and a process for the production of the PVA resin molding which comprises (i) immersing a PVA molding in a fluid containing either metal ions (A) capable of forming a metal compound (F) emitting fluorescence of the above wavelength under the irradiation with ultraviolet rays or both such metal ions (A) and activator ions (C), (ii) immersing the resulting molding in a fluid containing ions (B) capable of reacting with the metal ions (A) and thus forming the metal compound (F) emitting fluorescence of the above wavelength under the irradiation with ultraviolet rays to form fluorescent fine particles which are made of the metal compound (F) and have a mean particle diameter of 50nm or below in the molding; and (iii) immersing the obtained molding either in a fluid containing such metal ions (A) and ions (B) or in a fluid containing such metal ions (A) and ions (B) and activator ions (C) to age the molding and which makes it possible to produce a PVA resin molding containing fluorescent fine particles of nm-order size which are not sighted under visible rays and can emit intense fluorescence under the irradiation with ultraviolet rays.

Inventors:
MORIHARA YASUSHI (JP)
SANO NOBUYUKI (JP)
MIIYAZU YUKI (JP)
ENDO RYOKEI (JP)
HARA TETSUYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/064900
Publication Date:
March 05, 2009
Filing Date:
August 21, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
KURARAY CO (JP)
MORIHARA YASUSHI (JP)
SANO NOBUYUKI (JP)
MIIYAZU YUKI (JP)
ENDO RYOKEI (JP)
HARA TETSUYA (JP)
International Classes:
C08J7/00; D06M23/08; D06M101/24
Foreign References:
JPS62143306A1987-06-26
JPH02173622A1990-07-05
JPH1193096A1999-04-06
JP2000290831A2000-10-17
JP2008007661A2008-01-17
Attorney, Agent or Firm:
OHTANI, Tamotsu (Bridgestone Toranomon Bldg. 6F.,25-2, Toranomon 3-chom, Minato-ku Tokyo 01, JP)
Download PDF:
Claims:
 ポリビニルアルコール系樹脂成形体内に、紫外線の照射下において350~700nmの波長域に蛍光を発する平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒子が、ポリビニルアルコール系樹脂成形体を構成するポリビニルアルコール系重合体の質量に基づいて0.5質量%以上の割合で分散された状態で含有されていることを特徴とする蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 蛍光体微粒子の平均粒径が30nm以下である請求項1に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされまたはドープされていない、周期表の12族の金属に16族の元素が結合した金属化合物(F)よりなる蛍光体微粒子である請求項1または2に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされた、周期表の12族の金属に16族の元素が結合した金属化合物(F)よりなる蛍光体微粒子であって、賦活剤の量が、賦活剤をドープする前の前記周期表の12族の金属元素1モルに対して0.001モル以上である請求項1~3のいずれか1項に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされまたはドープされていない硫化亜鉛を主体とする蛍光体微粒子および賦活剤がドープされまたはドープされていない硫化カドミウムを主体とする蛍光体微粒子の少なくとも1種である請求項1~4のいずれか1項に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 ポリビニルアルコール系樹脂成形体が、フィルムまたは繊維である請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 フィルムの波長400~760nmの可視光線の平均透過率が、50%以上である請求項1~6のいずれか1項に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
 フィルムの波長300nmの紫外線の透過率が、10%以下である請求項7に記載の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体。
(i) ポリビニルアルコール系重合体よりなる成形体を、紫外線の照射下において350~700nmの波長域に蛍光を発する金属化合物(F)を形成する金属イオン(A)を含む液(Ia)に浸漬するか、または前記金属イオン(A)と賦活剤イオン(C)を含む液(Ib)に浸漬し;次いで、
(ii) 前記金属イオン(A)と反応して紫外線の照射下において350~700nmの波長域に蛍光を発する金属化合物(F)を形成するイオン(B)含む液(II)に浸漬して、ポリビニルアルコール系重合体よりなる成形体内に、紫外線の照射下において350~700nmの波長域に蛍光を発する金属化合物(F)よりなる平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒子を生成させ;更に、
(iii) 前記工程(ii)で形成した蛍光体微粒子を成形体内に含有するポリビニルアルコール系重合体よりなる成形体を、前記金属イオン(A)とイオン(B)を含む液(IIIa)に浸漬するか、または前記金属イオン(A)とイオン(B)と賦活剤イオン(C)を含む液(IIIb)に浸漬して熟成処理する;
ことを特徴とする、賦活剤がドープされまたはドープされていない平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒子が成形体内で分散された状態で含有されている蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体の製造方法。
 液(Ia)、液(Ib)、液(II)、液(IIIa)および液(IIIb)が、水、ポリビニルアルコール系重合体を膨潤する有機溶媒、または水とポリビニルアルコール系重合体を膨潤する有機溶媒の混合溶媒を溶媒とする液である請求項9に記載の製造方法。
上記の工程(iii)の熟成処理を、温度30~90℃で30分以上行う請求項9または10に記載の製造方法。
 液(Ia)および液(Ib)における金属イオン(A)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lであり、液(Ib)における賦活剤イオン(C)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lであり、液(II)におけるイオン(B)生成化合物の含有量が1~120g/Lであり(ただし、液(Ia)および液(Ib)における金属イオン(A)生成化合物の含有量ならびに液(II)におけるイオン(B)生成化合物の含有量のいずれかは、5g/L以上である。)、液(IIIa)および液(IIIb)における金属イオン(A)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lおよびイオン(B)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lであり、液(IIIb)における賦活剤イオン(C)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lである請求項9~11のいずれか1項に記載の製造方法。
 金属イオン(A)が周期表の12族の金属のイオンであり、イオン(B)が周期表の16族の元素のイオンである請求項9~12のいずれか1項に記載の製造方法。
 金属イオン(A)が亜鉛イオンまたはカドミウムイオンであり、イオン(B)が硫黄イオンであり、賦活剤イオン(C)がマンガンイオン、銅イオン、銀イオン、金イオンおよび希土類元素イオンの少なくとも1種である請求項9~13のいずれか1項に記載の製造方法。
Description:
蛍光発色性ポリビニルアルコー 系樹脂成形体およびその製造方法

 本発明は、超微粒子状の蛍光体微粒子を 形体内に含有する蛍光発色性ポリビニルア コール系樹脂成形体および当該成形体を円 に製造する方法に関する。より詳細には、 発明は、可視光下においては蛍光体微粒子 存在が視認されず、紫外線照射下において 鮮明な蛍光を発すると共に高い紫外線吸収 能を有し、しかも酸素をはじめとする気体 表面吸着により蛍光発色性に変化を生じる 微粒子状の蛍光体微粒子を内部に分散含有 る蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂 形体およびその製造方法に関する。本発明 蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成 体は、前記した特性を活かして、紙幣、証 、機密文書、IDカード、商品タグなどにお る偽造防止、壁紙、カーペット、衣類、ガ ス中間膜やガラス貼着膜用フィルムなどの 外線遮蔽と装飾を兼ね備える材料、気体の 面吸着を利用したセンシング材料などの用 に有効に使用することができる。

 紫外線の照射により蛍光を発する蛍光体は 従来から偽造防止対策や装飾材料などに用 られている。紫外線の照射により蛍光を発 る蛍光体は、太陽光下や通常の照明器具を 置した室内などのような可視光線の照射下 は発光は視認されないが、暗所で紫外線を 射すると蛍光を発するため、紫外線を照射 て文字、図形、模様、形状などを浮き出さ て視認することができる。
 蛍光体を用いた装飾用または偽造防止用の 成樹脂成形体としては、紫外線の照射下に いて蛍光を発する蛍光体粒子を表面に付着 せた合成繊維、紫外線の照射下で蛍光を発 る蛍光体粒子を添加した樹脂組成物や樹脂 液を用いて溶融紡糸、湿式紡糸、乾式紡糸 どを行って製造した蛍光体含有合成繊維、 該合成繊維を用いて形成した布帛や紙など 知られている(特許文献1~4を参照)。

 しかしながら、蛍光体粒子を表面に付着し 繊維は、一般にミクロンオーダーの粒径の きな蛍光体粒子が繊維表面に凹凸状に付着 ているため、風合や触感が不良になり易く しかも繊維表面に付着した蛍光体粒子が摩 や屈曲などの外部応力によって繊維表面か 簡単に脱落し易い。
 また、蛍光体粒子を添加した樹脂組成物や 脂溶液を用いて溶融紡糸、湿式紡糸、乾式 糸などによって紡糸する場合は、蛍光体粒 が通常ミクロンオーダーの大きな粒径を有 ているため、紡糸時に紡糸装置のフィルタ 紡糸ノズルの目詰まり、それらに伴う紡糸 程中での断糸などが生じ易く、繊維製造時 工程通過性が不良になり易い。

 その上、前記した従来技術では、前述のよ にいずれもミクロンオーダーの蛍光体粒子 用いられているため、繊維表面に付着させ り繊維中に含有させたりした蛍光体粒子に って、波長の長い可視光線の回折や散乱が じて、可視光線下でも蛍光体粒子の存在が 認されてしまい、偽造防止などの用途には さないものになりがちである。
 繊維やその他の合成樹脂成形体中に含有さ る蛍光体粒子の粒子サイズを可視光線の波 の1/10以下のサイズである50nm以下の蛍光体 粒子にすることができれば、蛍光体微粒子 よる可視光線の回折や散乱が著しく低減す ため、成形体中に含有させた蛍光体微粒子 存在が可視光線下で視認されてしまうとい 問題を防止することができる。
 しかしながら、蛍光体粒子を、ナノメート オーダーの粒子サイズ、特に50nm以下の粒子 サイズで、しかも紫外線を照射した際に明確 に且つ容易に視認できる強い蛍光を発するよ うな高濃度で成形体中に存在させた合成樹脂 成形体およびその製造方法は従来知らていな かった。

特開平9-67764号公報

特開平11-93096号公報

特開平6-128807号公報

特開2000-290831号公報 「J.Am.Chem.Soc.,」1986年,Vol.8,p3358-3361 「色材」、1958年、Vol.31、P85 「Science」,2000年,Vol.290.,p314-317

 本発明の目的は、可視光下においては蛍光 微粒子の存在が視認されず、一方紫外線を 射した際に明確に且つ容易に視認できる強 蛍光を発する平均粒径が50nm以下の粒子サイ ズの蛍光体微粒子が、合成樹脂成形体内で分 散された状態で含有されている蛍光発色性合 成樹脂成形体を提供することである。
 さらに、本発明は、可視光線の透過率が高 て透明性に優れ、一方紫外線の透過率が低 て紫外線の遮蔽効果に優れる、平均粒径が5 0nm以下の粒子サイズの蛍光体微粒子を含有す る蛍光発色性合成樹脂成形体を提供すること である。
 そして、本発明の他の目的は、前記した蛍 発色性合成樹脂成形体を円滑に簡単に製造 る方法を提供することである。

 本発明者らは前記した目的を達成するた に鋭意検討を続けてきた。その結果、合成 脂として特にポリビニルアルコール系樹脂 用い、ポリビニルアルコール系樹脂から予 フィルム、繊維、その他の成形体を製造し おいて、当該ポリビニルアルコール系樹脂 形体を、蛍光を発する金属化合物を形成す 金属イオンを含む液に浸漬するか、または 記金属イオンと賦活剤イオンを含む液に浸 した後、前記金属イオンと反応して紫外線 照射下において蛍光を発する金属化合物を 成するイオンを含む液に浸漬すると、ポリ ニルアルコール系樹脂成形体内に、紫外線 照射下において蛍光を発する金属化合物よ なる蛍光体微粒子を平均粒径50nm以下の超微 粒子状で形成させ、分散させ得ることを見出 した。

 そして、平均粒径50nm以下の蛍光体微粒子が 内部に形成された当該ポリビニルアルコール 系樹脂成形体を、蛍光を発する金属化合物を 形成する前記金属イオンとそれと反応して蛍 光を発する金属化合物を形成する前記イオン を含む液に浸漬して熟成処理するか、または 蛍光を発する金属化合物を形成する前記金属 イオンとそれと反応して蛍光を発する金属化 合物を形成する前記イオンと賦活剤イオンを 含む液に浸漬して熟成処理すると、前記金属 化合物よりなる平均粒径が50nm以下の蛍光体 粒子の結晶性が向上すると共に成形体内で 濃度が増加して蛍光発光強度が増し、それ よって強い蛍光を発する蛍光発色性ポリビ ルアルコール系樹脂成形体が得られること 見出した。
 さらに、本発明者らは、上記した方法によ 場合は、平均粒径が30nm以下、更には20nm以 の蛍光体微粒子が合成樹脂成形体内で分散 れた状態で含有されている蛍光発色性ポリ ニルアルコール系樹脂成形体をも円滑に形 できることを見出した。

 一般に、ポリビニルアルコール系重合体 、その水酸基を介して遷移金属イオンとコ プレックスを形成することが知られている( 例えば非特許文献1を参照)。本発明者らは、 リビニルアルコール系重合体に独自なこの 動に着目して、蛍光体微粒子をポリビニル ルコール系重合体よりなる成形体の内部に 細に分散させることを試みて、平均粒径が5 0nm以下の蛍光体微粒子が当該成形体内に微細 に分散された状態で含有されている蛍光発色 性成形体を得ることができたのである。すな わち、ポリビニルアルコール系重合体よりな る成形体を、蛍光を発する金属化合物を形成 する金属イオンを含む液または当該金属イオ ンと賦活剤イオンを含む液に最初に浸漬して 、当該成形体内に、大きさが数オングストロ ームである、ポリビニルアルコール系重合体 分子鎖と金属イオンとからなる配位結合ブロ ック(錯体ブロック)を形成させるか、または リビニルアルコール系重合体分子鎖と金属 オンと賦活剤イオンとから配位結合ブロッ (錯体ブロック)を形成させ、次にそれを前 金属イオンと反応して蛍光発色性金属化合 を形成するイオン(硫黄イオンや硫化物イオ など)を含む液に浸漬することで、数オング ストロームサイズの前記配位結合ブロック部 分に、蛍光発色性金属化合物よりなる超微細 な蛍光体微粒子を形成させることによって、 平均粒径が50nm以下であるナノサイズの微細 蛍光体微粒子が、粒子間の凝集などを生ず ことなく成形体の内部に分散したポリビニ アルコール重合体の成形体を得ることがで た。そして、そのようにして得られた成形 を、更に前記金属イオンと、それと反応し 蛍光発色性金属化合物を形成するイオンを み、場合により更に賦活剤イオンを含む液 浸漬して熟成処理することにより、蛍光体 粒子が発する蛍光の強度が大きくなること 見出した。

 また、本発明者らは、当該蛍光体微粒子 形成する金属化合物としては、紫外線の照 下において350~700nmの波長範囲に1つ以上の発 光ピークを有する蛍光を発する金属化合物を 用いることが、紫外線を照射したときにのみ 目視などによって容易に視認できる蛍光を発 する点から望ましいこと、当該金属化合物と しては、周期表の12族の金属のイオンと周期 の16族の元素のイオンとの反応によって形 される金属化合物が好ましく、そのためポ ビニルアルコール系樹脂成形体を浸漬する めの液としては、12族の金属のイオンを含有 する液または12族の金属のイオンと賦活剤イ ンを含有する液と、16族の元素を含むイオ を含有する液を用いて逐次に浸漬処理して リビニルアルコール系樹脂成形体内に平均 径50nm以下の蛍光体微粒子を形成させ、次い それを12族の金属のイオンと16族の元素を含 むイオンを含有する液で熟成処理するかまた は12族の金属のイオンと賦活剤イオンと16族 元素を含むイオンを含有する液で熟成処理 るのが好ましいことを見出した。

 さらに、本発明者らは、前記熟成処理は 度30~90℃で30分以上行うことが、強い蛍光を 発する蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹 脂成形体を得る上で好ましいこと、または前 記浸漬処理および熟成処理に用いる液中の金 属イオン生成化合物、金属イオンと反応して 紫外線の照射下で蛍光を発する金属化合物を 形成するイオン生成化合物、および賦活剤イ オン生成化合物の濃度を所定の範囲にするこ とが、ポリビニルアルコール系樹脂成形体内 に形成される蛍光体微粒子の粒径の調整、蛍 光体微粒子の濃度の調整などの点から好まし いことを見出し、それらの知見に基づいて本 発明を完成した。

 すなわち、本発明は、
(1) ポリビニルアルコール系樹脂成形体内に 紫外線の照射下において350~700nmの波長域に 光を発する平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒 子が、ポリビニルアルコール系樹脂成形体を 構成するポリビニルアルコール系重合体の質 量に基づいて0.5質量%以上の割合で分散され 状態で含有されていることを特徴とする蛍 発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体 ある。
 さらに、
(2) 蛍光体微粒子の平均粒径が30nm以下である 前記(1)の蛍光発色性ポリビニルアルコール系 樹脂成形体であり;

(3) 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされま はドープされていない、周期表の12族の金 に16族の元素が結合した金属化合物(F)よりな る蛍光体微粒子である前記(1)または(2)の蛍光 発色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体で あり;
(4) 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされた 周期表の12族の金属に16族の元素が結合した 金属化合物(F)よりなる蛍光体微粒子であって 、賦活剤の量が、賦活剤をドープする前の前 記周期表の12族の金属元素1モルに対して0.001 ル以上である前記(1)~(3)のいずれかの蛍光発 色性ポリビニルアルコール系樹脂成形体であ り;
(5) 蛍光体微粒子が、賦活剤がドープされま はドープされていない硫化亜鉛を主体とす 蛍光体微粒子および賦活剤がドープされま はドープされていない硫化カドミウムを主 とする蛍光体微粒子の少なくとも1種である 前記(1)~(4)のいずれかの蛍光発色性ポリビニ アルコール系樹脂成形体であり;
(6) ポリビニルアルコール系樹脂成形体が、 ィルムまたは繊維である前記(1)~(5)のいずれ かの蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂 成形体であり;
(7) フィルムの波長400~760nmの可視光線の平均 過率が、50%以上である前記(1)~(6)のいずれか の蛍光発色性ポリビニルアルコール系樹脂成 形体であり;
(8) フィルムの波長300nmの紫外線の透過率が 10%以下である前記(7)に記載の蛍光発色性ポ ビニルアルコール系樹脂成形体である。

 そして、本発明は、
(9)(i) ポリビニルアルコール系重合体よりな 成形体を、紫外線の照射下において350~700nm 波長域に蛍光を発する金属化合物(F)を形成 る金属イオン(A)を含む液(Ia)に浸漬するか、 または前記金属イオン(A)と賦活剤イオン(C)を 含む液(Ib)に浸漬し;次いで、
(ii) 前記金属イオン(A)と反応して紫外線の照 射下において350~700nmの波長域に蛍光を発する 金属化合物(F)を形成するイオン(B)含む液(II) 浸漬して、ポリビニルアルコール系重合体 りなる成形体内に、紫外線の照射下におい 350~700nmの波長域に蛍光を発する金属化合物(F )よりなる平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒子 生成させ;更に、
(iii) 前記工程(ii)で形成した蛍光体微粒子を 形体内に含有するポリビニルアルコール系 合体よりなる成形体を、前記金属イオン(A) イオン(B)を含む液(IIIa)に浸漬するか、また 前記金属イオン(A)とイオン(B)と賦活剤イオ (C)を含む液(IIIb)に浸漬して熟成処理する;
ことを特徴とする、賦活剤がドープされまた はドープされていない平均粒径が50nm以下の 光体微粒子が成形体内で分散された状態で 有されている蛍光発色性ポリビニルアルコ ル系樹脂成形体の製造方法である。

 さらに、本発明は、
(10) 液(Ia)、液(Ib)、液(II)、液(IIIa)および液(II Ib)が、水、ポリビニルアルコール系重合体を 膨潤する有機溶媒、または水とポリビニルア ルコール系重合体を膨潤する有機溶媒の混合 溶媒を溶媒とする液である前記(9)の製造方法 であり;
(11) 上記の工程(iii)の熟成処理を、温度30~90 で30分以上行う前記(9)または(10)の製造方法 あり;
(12) 液(Ia)および液(Ib)における金属イオン(A) 成化合物の含有量が0.1~120g/Lであり、液(Ib) おける賦活剤イオン(C)生成化合物の含有量 0.1~120g/Lであり、液(II)におけるイオン(B)生成 化合物の含有量が1~120g/Lであり(ただし、液(Ia )および液(Ib)における金属イオン(A)生成化合 の含有量ならびに液(II)におけるイオン(B)生 成化合物の含有量のいずれかは、5g/L以上で る。)、液(IIIa)および液(IIIb)における金属イ ン(A)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lおよびイ オン(B)生成化合物の含有量が0.1~120g/Lであり 液(IIIb)における賦活剤イオン(C)生成化合物 含有量が0.1~120g/Lである前記(9)~(11)のいずれ 1項に記載の製造方法であり;
(13) 金属イオン(A)が周期表の12族の金属のイ ンであり、イオン(B)が周期表の16族の元素 イオンである前記(9)~(12)のいずれかの製造方 法であり;
(14) 金属イオン(A)が亜鉛イオンまたはカドミ ウムイオンであり、イオン(B)が硫黄イオンで あり、賦活剤イオン(C)がマンガンイオン、銅 イオン、銀イオン、金イオンおよび希土類元 素イオンの少なくとも1種である前記(9)~(13)の ずれかの製造方法である。

 本発明の蛍光発色性ポリビニルアルコール 樹脂成形体は、成形体内に、平均粒径が50nm 以下の蛍光体微粒子が蛍光体微粒子間の凝集 などを生ずることなく、分散された状態で含 有されているため、可視光下においては視認 されにくく、紫外線の照射下においては光強 度の大きな蛍光を発する。
 しかも、本発明の蛍光発色性ポリビニルア コール系樹脂成形体は、可視光線の透過率 高くて透明性に優れ、紫外線の透過率が低 て紫外線遮蔽性に優れている。
 そのため、本発明の蛍光発色性ポリビニル ルコール系樹脂成形体は、それらの特性を かして、例えば、紙幣、証券用紙、機密文 、商品タグなどの偽造防止対策用材料、壁 、カーペット、衣料、ガラス中間膜、ガラ 貼付用フィルムなどの紫外線遮蔽と装飾性 兼ね備えた材料、蛍光発色性が酸素をはじ とする気体の表面吸着により変化すること 利用したセンシング材料などの種々の用途 極めて有効に利用することができる。

 本発明の製造方法により、前記した優れ 特性を兼ね備える蛍光発色性ポリビニルア コール系樹脂成形体を円滑に製造すること できる。具体的には、蛍光を発する金属化 物を形成する金属イオンを含む液に浸漬す か、または前記金属イオンと賦活剤イオン 含む液に浸漬し、次いでそれを前記金属イ ンと反応して紫外線の照射下において蛍光 発する金属化合物を形成するイオンを含む に浸漬した後、更に蛍光を発する金属化合 を形成する前記金属イオンとそれと反応し 蛍光を発する金属化合物を形成する前記イ ンを含む液に浸漬して熟成処理するか、ま は蛍光を発する金属化合物を形成する前記 属イオンとそれと反応して蛍光を発する金 化合物を形成する前記イオンと賦活剤イオ を含む液に浸漬して熟成処理する工程を採 していることによって、ポリビニルアルコ ル系樹脂成形体内に、紫外線の照射下にお て蛍光を発する金属化合物よりなる蛍光体 粒子を平均粒径50nm以下の微粒子状で形成さ せ、分散させることができ、蛍光体微粒子の 結晶性の向上、当該蛍光体微粒子の濃度の増 加もなされるため、強い蛍光発色性を有する ポリビニルアルコール系樹脂成形体を得るこ とができる。

実施例1で得られた、蛍光体微粒子を内 部に含有するPVAフィルムを厚さ方向に切断し た切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した 真である。 実施例1で得られた、蛍光体微粒子を内 部に含有するPVAフィルムを厚さ方向に切断し た表面付近の切断面を走査型電子顕微鏡(SEM) 撮影した写真である。 実施例1、比較例1および比較例2で得ら た、蛍光体微粒子を内部に含有するPVAフィ ムの200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域)に ける光透過率の測定結果を示すグラフであ 。 実施例1~3および比較例2で得られた蛍光 体微粒子を内部に含有するPVAフィルムに320nm 励起波長(紫外線)を照射した際の蛍光スペ トルを示すグラフである。 比較例1で得られた、蛍光体微粒子を内 部に含有するPVAフィルムを厚さ方向に切断し た切断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影した 真である。

 以下に本発明について詳細に説明する。
 本発明の蛍光発色性ポリビニルアルコール 樹脂成形体(以下ポリビニルアルコールを「 PVA」という)は、当該成形体内に、紫外線の 射下において蛍光を発する蛍光体微粒子が 散された状態で含有されている。
 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体を構成 るPVA系重合体の重合度は特に限定されない 、蛍光発色性PVA系樹脂成形体の機械的特性 寸法安定性などを考慮すると、蛍光発色性P VA系樹脂成形体は、平均重合度(30℃のPVA系重 体の水溶液の粘度からJIS K6726に従って求め た粘度平均重合度)が1200~20000のPVA系重合体か 形成されていることが好ましい。蛍光発色 PVA系樹脂成形体を構成するPVA系重合体の重 体が高いほど、成形体の強度や耐湿熱性等 より優れるので好ましいが、PVA系重合体の 造コスト、成形コストなどを考慮すると、P VA系樹脂成形体は平均重合度が1500~8000のPVA系 合体から形成されていることがより好まし 。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体を構成 るPVA系重合体のケン化度は特に限定されな が、当該成形体の機械的特性の点から、当 ケン化度が88モル%以上であることが好まし 、90モル%以上であることがより好ましく、9 6~99.9モル%であることが更に好ましい。
 PVA系重合体のケン化度が低いと、成形体を 造する際の工程通過性、成形コスト、蛍光 色性PVA系樹脂成形体の機械的特性などの点 好ましくない。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体を構成 るPVA系重合体は、ビニルアルコール単位か 主としてなるPVA系重合体であれば、酢酸ビ ルなどのカルボン酸のビニルエステルの単 重合体をケン化してなる、ビニルアルコー 単位のみからなるかまたはビニルアルコー 単位と少量の未ケン化のカルボン酸ビニル ステル単位のみからなるPVA系重合体であっ もよいし、或いは本発明の効果を損なわな 限りは、ビニルアルコール単位を主体とし 要に応じて他の共重合単位を有する少量(通 常12モル%以下の割合で)有するビニルアルコ ル共重合体であってもよい。その場合の他 共重合単位としては、例えば、エチレン、 ロピレン、ブチレンなどのオレフィン類、 クリル酸、アクリル酸塩、アクリル酸メチ やその他のアクリル酸エステル類、メタク ル酸、メタクリル酸塩、メタクリル酸メチ やその他のメタクリル酸エステル類、アク ルアミド、N-メチルアクリルアミド、メタク リルアミド、N-メチロールメタクリルアミド どの(メタ)アクリルアミド類、N-ビニルピロ リドン、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルア トアミドなどのN-ビニルアミド類、ポリアル キレンオキシドを側鎖に有するアリルエーテ ル類、メチルビニルエーテルなどのビニルエ ーテル類、アクリロニトリルなどのニトリル 類、塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、 マレイン酸、マレイン酸塩、無水マレイン酸 、マレイン酸エステルなどの不飽和カルボン 酸またはその誘導体などに由来する共重合単 位を挙げることができる。本発明の蛍光発色 性PVA系樹脂成形体を構成するPVA系重合体は前 記した共重合単位の1種または2種以上を有す ことができる。前記した共重合単位は、PVA 重合体を製造する際に共重合によってPVA系 合体中に導入されていてもよいし、またはP VA系重合体を製造した後に後反応によってPVA 重合体に導入されていてもよい。
 但し、本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体 構成するPVA系重合体は、ビニルアルコール 位の含有割合が88モル%以上、特に90モル%以 のPVA系重合体であることが、成形体を製造 る際の工程通過性、成形コスト、成形体の 械的特性の点から好ましい。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体内に含 れる蛍光体微粒子は、紫外線の照射下にお て350~700nmの波長域に蛍光を発する平均粒径 50nm以下の蛍光体微粒子であり、当該蛍光体 微粒子はPVA系樹脂成形体内に微細に分散され ている。
 ここで、本発明において、蛍光体微粒子に 光を発生させるために照射される前記「紫 線」とは、一般に紫外線として取り扱われ いる1~390nmの波長域の光をいう。
 蛍光体微粒子に照射される前記紫外線は、 記紫外線波長域内の所定の単一波長の紫外 であってもよいし、前記紫外線波長域内の 長が互いに異なる所定の単一波長の紫外線 2つ以上が組み合わさったものであってもよ いし、前記紫外線波長域内に1つの強度ピー を有するかまたは2つ以上の強度ピークを有 る強度分布を有する紫外線であってもよい 、或いは特に強度ピークのない前記紫外線 長域内の紫外線であってもいずれでもよい

 また、本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体 に含まれる「紫外線の照射下において350~700 nmの波長域に蛍光を発する蛍光体微粒子」は 前記した紫外線を照射したときに、350~700nm 波長域の蛍光を発する蛍光体微粒子であれ いずれでもよい。蛍光体微粒子は、例えば 前記紫外線を照射したときに、350~700nmの波 域内にある所定の単一波長の蛍光を発する 光体微粒子であっても、350~700nmの波長域内 ある互いに異なる2つ以上の所定の単一波長 の蛍光を発する蛍光体微粒子であってもよい し、350~700nmの波長域内に1つまたは2つ以上の 度ピークを有する強度分布のある蛍光を発 る蛍光体微粒子であってもよいし、または に強度ピークのない350~700nmの波長域内の蛍 を発する蛍光体微粒子などのいずれであっ もよい。
 そのうちでも、本発明の蛍光発色性PVA系樹 成形体は、波長が200~390nmの紫外線の照射下 おいて、400~650nmの波長範囲に1つまたは2つ 上の強度ピーク、特に1つの強度ピークを有 る蛍光を発する蛍光体微粒子の1種類または 2種類以上を含有していることが、蛍光発色 視認性の点から好ましい。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体内に含 れる蛍光体微粒子はその平均粒径が50nm以下 であり、30nm以下であることが好ましく、20nm 下であることがより好ましい。
 ここで、本明細書における蛍光体微粒子の 均粒径は、蛍光体微粒子を含有する蛍光発 性PVA系樹脂成形体を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影して得られる写真に基づいて算 される蛍光体微粒子の平均粒径をいい、そ 具体的な算出方法は、以下の実施例に記載 るとおりである。

 光の波長よりも小さい粒子による光の散乱 大きさは、レイリー散乱式で表されるよう (非特許文献2を参照)、粒径の関数であり、 径を小さくすることが散乱を小さくする最 重要な要因となる。
 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体では、 形体内に含まれる蛍光体微粒子は、可視光 (一般に波長380~780nm)の波長より一桁小さい 均粒径が50nm以下の微粒子であるから、可視 線が照射された際の当該可視光線の回折や 乱が極めて少なくなる。その結果、本発明 蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、可視光線の 過率(透明性)が高く、蛍光体微粒子が含ま ていることが可視光下では視認されず、可 光下での蛍光体微粒子の低視認性が達成さ る。
 それに対して、平均粒径が1μm以上(1000nm以 )の蛍光体微粒子を含有する従来の成形体は 可視光線の波長より一桁大きな平均粒径を する蛍光体微粒子であるから、可視光線の 乱や回折が大きくなり、PVA系樹脂成形体内 蛍光体微粒子が含まれていることが可視光 で容易に視認されてしまい、低視認性が達 されず、しかもPVA系樹脂成形体の可視光線 透過率が低く、透明性に劣る。

 さらに、本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形 では、成形体内に含まれる蛍光体微粒子の 均粒径が50nm以下であることにより、可視光 下での低視認性の達成と併せて、蛍光強度の 増大が達成される。
 一般に、半導体の粒径をナノサイズにする バンドギャップが増大し、ミクロンサイズ 上の大粒子の場合とは異なった量子力学挙 を示すことが知られている。この効果は量 サイズ効果と呼ばれ、特に蛍光を発する半 体微粒子では量子収率の増大に伴って蛍光 度が増大する(例えば非特許文献3を参照)。
 本発明では、PVA系樹脂成形体内に含有させ 蛍光体微粒子を、平均粒径が10nm以下の蛍光 発色性半導体微粒子とすることもできるので 、その場合には、成形体内に少量の蛍光体微 粒子を含有させることで、紫外線を照射した ときに強い蛍光を発する成形体を得ることが できる。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、成 体を構成するPVA系重合体の質量に基づいて 蛍光体微粒子を0.5質量%以上の割合で含有し ており、0.5~50質量%の割合で含有することが ましく、0.5~30質量%の割合で含有することが り好ましく、1~10質量%の割合で含有するこ が更に好ましい。
 PVA系樹脂成形体における蛍光体微粒子の含 量が少なすぎると、可視光下での視認性を くすることはできるが、紫外線を照射した きに蛍光強度が小さくなり好ましくない。 方、PVA系樹脂成形体における蛍光体微粒子 含有量が多すぎると、可視光下での視認性 高くなってしまい、さらにPVA系樹脂成形体 力学的特性が低下したものになり易い。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体内に含 させる蛍光体微粒子としては、平均粒径が5 0nm以下の半導体ナノ粒子を母体とする蛍光体 微粒子が好ましい。
 半導体ナノ粒子を母体とする蛍光体微粒子 しては、周期表の12族の金属に16族の元素が 結合した金属化合物(12-16族化合物)[例えば硫 亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化亜鉛(ZnSe) 、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化カドミウム(CdS)、 ドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(CdT e)など]からなる蛍光体微粒子、周期表の14族 元素(Si等)よりなる蛍光体微粒子、周期表の 13族の金属に15族の元素が結合した金属化合 (13-15族化合物)よりなる蛍光体微粒子[リン化 インジウム(InP)、窒化ガリウム(GaN)など]など 大別される。
 これらのうちで、周期表の12族の金属に16族 の元素が結合した金属化合物(12-16族化合物) りなる蛍光体微粒子、すなわち、上記した 化亜鉛(ZnS)、酸化亜鉛(ZnO)、セレン化亜鉛(ZnS e)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化カドミウム(CdS) カドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテルル(C dTe)などが、イオン結晶性が高く、光学的に 接遷移であるという点から好ましい。
 そのうちでも、蛍光特性、および蛍光体微 子を含有する本発明の蛍光発色性PVA系樹脂 形体の製造の容易性などの点から、蛍光体 粒子としては、賦活剤がドープされまたは ープされていないZnSおよび賦活剤がドープ れまたはドープされていないCdSからなる蛍 体微粒子がより好ましく、特に賦活剤がド プされまたはドープされていないZnSからな 蛍光体微粒子が無色であるという点から更 好ましい。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体内に含 れる蛍光体微粒子は、前記したように賦活 がドープされた蛍光体微粒子であってもま は賦活剤がドープされていない蛍光体微粒 であってもいずれでもよいが、硫化亜鉛(ZnS )をはじめとする12-16族化合物よりなる蛍光体 微粒子は、賦活剤がドープされることで、固 有の蛍光を発色させることができる。
 賦活剤は、要求される蛍光の波長(発光色) 応じて使用することができ、賦活剤の例と ては、銅(Cu)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、金(Au)な の金属のイオン、ユーロピウム(Eu)やイッテ ルビウム(Yb)をはじめとする希土類元素の金 イオンなどを挙げることができ、これらの 属イオンを単独でまたは2種以上組み合わせ 賦活剤として用いることができる。
 また、必要に応じて、塩素(Cl)、臭素(Br)、 ウ素(I)、アルミニウム(Al)などの共賦活剤を ープしてもよい。
 そして、これら固有の発色が得られる賦活 の種類を適宜選択することで、所望の蛍光 発色する蛍光発色性PVA系樹脂成形体が得ら るようになる。
 PVA系樹脂成形体内に含有させる蛍光体微粒 が、賦活剤がドープされた蛍光体微粒子、 に賦活剤がドープされた12-16族化合物より る蛍光体微粒子である場合は、賦活剤の量 、賦活剤をドープする前の前記金属化合物1 ルに対して0.001モル以上、特に0.005~0.05モル あることが、賦活剤による賦活効果、均一 などの点から好ましい。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体の種類 形状および構造は特に制限されず、PVA系重 体を用いて製造できる成形体であればいず でもよく、例えば、フィルム、シート、プ ート、パイプ、チューブ、棒状体、粒状体 各種異形成形体、繊維、織布、編布、不織 、紙などを挙げることができる。
 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体では、 光体微粒子は、成形体内に実質的に均一に 散された状態で含有されていることが望ま いが、場合によっては、成形体内の一部の 所に偏在して分散された状態で含有されて てもよい。
 そして、実質的に均一に分散されているこ は、PVA系樹脂成形体の切断面を透過型電子 顕微鏡(TEM)、又は走査型電子気顕微鏡(SEM)で 観察した場合に、蛍光体微粒子の凝集物や偏 在が実質的に観察されない状態になっている ことで判断する。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、PVA 重合体から予め成形体を製造しておき、当 成形体に工程(i)および工程(ii)の浸漬処理を 逐次に施し、次いで工程(iii)の熟成処理を行 本発明の製造方法によって円滑に製造され ことから、成形体の厚みやサイズが小さい 合には、蛍光体微粒子がPVA系樹脂成形体の 部に実質的に均一に分散されたPVA系樹脂成 体を得ることができる。一方、成形体が厚 場合は、蛍光体微粒子がPVA系樹脂成形体の 面に近い成形体の内部に多く分散されたPVA 樹脂成形体を得ることができる。
 さらに、本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形 の可視光線の平均透過率は、高い方が好ま く、特に、フィルムの場合は、可視光線の 均透過率は50%以上、好ましくは、60%以上、 らに好ましくは70%以上、最も好ましくは80% 上である。
 また、紫外線の透過率は、低い方が紫外線 蔽機能の観点において好ましく、特に、フ ルムの場合は、波長300nmの透過率は10%以下 好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以 、最も好ましくは0.1%以下である。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体がフ ルム、シート、プレートなどの成形体であ 場合は、可視光下においては無色透明で蛍 体微粒子の存在が視認されず、紫外線を照 すると蛍光体微粒子が蛍光を発することか 、偽造防止対策用材料、装飾材料、センシ グ材料などとして例えば対象物に貼り付け ことで、対象物の視覚情報を損なうことな 蛍光発色特性を付与することができる。

 また、本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形 が繊維である場合は、可視光下においてはP VA系繊維の本来の色調がそのまま視認され、 外線の照射下では蛍光を発する蛍光発色性 維であることから、偽造防止対策用材料、 飾材料、センシング材料などとして、例え 、布製品に当該蛍光発色性PVA系繊維を縫み んだり、当該蛍光発色性PVA系繊維を用いて 布、編布、不織布を製造したり、当該蛍光 色性PVA系繊維を抄き込んで紙を製造したり 当該蛍光発色性PVA系繊維を重合体中に練り んで成形品を製造することで、対象物の視 情報を損なうことなく、蛍光発色特性を付 することができる。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、 発明の効果を損なわない範囲であれば、蛍 体微粒子と共に、必要に応じて、酸化防止 、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤 油剤、難燃剤、特殊機能剤などを含有して てもよい。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、( i)PVA系重合体を用いて予め製造した成形体を 紫外線の照射下において350~700nmの波長域に 光を発する金属化合物(F)を形成する金属イ ン(A)を含む液(Ia)に浸漬するか、または前記 金属イオン(A)と賦活剤イオン(C)を含む液(Ib) 浸漬し、次いで(ii)前記金属イオン(A)と反応 て紫外線の照射下において350~700nmの波長域 蛍光を発する金属化合物(F)を形成するイオ (B)含む液(II)に浸漬して、PVA系重合体よりな る成形体内に、紫外線の照射下において350~70 0nmの波長域に蛍光を発する金属化合物(F)より なる平均粒径が50nm以下の蛍光体微粒子を生 させ、更に(iii)前記工程(ii)で形成した蛍光 微粒子を成形体内に含有するPVA系重合体よ なる成形体を、前記金属イオン(A)とイオン(B )を含む液(IIIa)に浸漬するか、または前記金 イオン(A)とイオン(B)と賦活剤イオン(C)を含 液(IIIb)に浸漬して熟成処理する本発明の製 方法によって円滑に製造される。

 本発明の製造方法で用いる前記工程(i)を す前のPVA系重合体よりなる成形体[以下、工 程(i)~(iii)の処理を施す前のPVA系重合体よりな る成形体を単に「PVA成形体」ということがあ る]の製造方法は特に制限されず、PVA成形体 種類やPVA成形体を形成するPVA系重合体の種 などに応じて適当な方法で製造すればよく 例えば乾式製膜、湿式製膜、湿乾式製膜、 融下での押出成形、ブロー成形、インフレ ション成形、共押出成形、射出成形、トラ スファー成形、ラミネーション成形、乾式 糸、乾湿式紡糸、湿式紡糸、溶融紡糸など より製造することができる。

 工程(i)の処理を施す前のPVA成形体がフィ ムである場合は、PVAフィルムとして、PVA系 合体を水、有機溶媒または水と有機溶媒の 合溶媒に溶解した原液を金属ローラやベル などに流延し、乾燥して得られるPVAフィル などが好適に用いられる。その際に、PVA系 合体の原液中に界面活性剤を添加しておく 、製膜性が向上して厚さ斑の発生が抑制さ ると共に、製膜に使用する金属ローラやベ トからのフィルムの剥離を容易に行うこと できる。界面活性剤の種類は特に限定され いが、金属ローラやベルトなどの剥離性の 点から、アニオン性界面活性剤またはノニ ン性界面活性剤が好ましく用いられ、ノニ ン性界面活性剤がより好ましく用いられる その際に、アニオン性界面活性剤としては 例えば、ラウリン酸カリウムなどのカルボ 酸型、オクチルサルフェートなどの硫酸エ テル型、ドデシルベンゼンスルホネートな のスルホン酸型のアニオン性界面活性剤が 適である。また、ノニオン性界面活性剤と ては、例えば、ポリオキシエチレンオレイ エーテルなどのアルキルエーテル型、ポリ キシエチレンオクチルフェニルエーテルな のアルキルフェニルエーエル型、ポリオキ エチレンラウレートなどのアルキルエステ 型、ポリオキシエチレンラウリルアミノエ テルなどのアルキルアミン型、ポリオキシ チレンラウリン酸アミドなどのアルキルア ド型、ポリオキシエチレンポリオキシプロ レンエーテルなどのポリプロピレングリコ ルエーテル型、オレイン酸ジエタノールア ドなどのアルカノールアミド型、ポリオキ アルキレンアリルフェニルエーテルなどの リルフェニルエーテル型のノニオン性界面 性剤が好適である。これらの界面活性剤は 独でまたは2種以上を組み合わせて使用する ことができる。

 工程(i)の処理を施す前のPVA成形体が繊維で る場合は、PVA繊維として、PVA系重合体を水 有機溶媒または水と有機溶媒の混合溶媒に 解した原液を、乾式紡糸、乾湿式紡糸、湿 紡糸などによって紡糸した繊維が好ましく いられる。原液の調製に用いられる溶媒と ては、例えば、水、ジメチルスルホキシド( 以下「DMSO」と略記する)、ジメチルアセトア ド(以下「DMAc」と略記する)、ジメチルホル アミド(以下「DMF」と略記する)、N-メチルピ ロリドン(以下「NMP」と略記する)などの極性 媒、グリセリン、エチレングリコールなど 多価アルコール類などを挙げることができ これらの溶媒は単独でまたは2種以上を混合 して用いることができる。また、原液は、ロ ダン塩、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩 化亜鉛などの膨潤性金属塩の1種または2種以 を含有していてもよい。そのうちでも、原 の調製に好適な溶媒は、水、DMSO、水とDMSO 混合溶媒、水とグリセリンの混合溶媒など あり、これらの溶媒は、環境への負荷が小 く、回収が容易である。
 PVAを溶解した紡糸原液を紡糸ノズルから吐 した後、乾燥するかまたは貧溶媒中に通す とによって、PVA系重合体よりなる繊維を得 ことができる。

 本発明の製造方法では、工程(i)において 予め製造したPVA成形体を、紫外線の照射下 おいて350~700nmの波長域に蛍光を発する金属 合物(以下これを単に「蛍光発色性金属化合 物」ということがある)(F)を形成する金属イ ン(A)を含む液(Ia)に浸漬するか、または前記 属イオン(A)と賦活剤イオン(C)を含む液(Ib)に 浸漬する。

 工程(i)で用いる液(Ia)および液(Ib)は、工 (i)の浸漬処理時に、PVA成形体内への金属イ ン(A)の浸入、またはPVA成形体内への金属イ ン(A)と賦活剤イオン(C)の浸入が円滑に行わ るように、PVA成形体の膨潤作用を有する溶 を用いて調製するのがよい。かかる点から 液(Ia)および液(Ib)は、水単独、PVA系重合体を 膨潤する有機溶媒、水とPVA系重合体を膨潤す る有機溶媒の混合溶媒、塩類などの膨潤促進 剤を添加した前記した溶媒を用いて調製する ことが好ましい。その場合のPVA系重合体を膨 潤する有機溶媒としてはメタノール、エタノ ールなどのアルコール類、DMSO、DMAc、DMF、NMP どを挙げることができる。

 工程(i)の処理を行う際の液(Ia)または液(Ib) 、PVA成形体を形成するPVA系重合体に対する 潤率が、20~300質量%であることが好ましく、3 0~250質量%であることがより好ましい。膨潤率 が低すぎると、PVA成形体への金属イオン(A)、 または金属イオン(A)と賦活剤イオン(C)の浸入 が円滑に行われなくなって、PVA系樹脂成形体 内に蛍光発色性金属化合物(F)よりなる蛍光体 微粒子が形成されにくくなる。一方膨潤率が 高すぎると、PVA成形体が液(Ia)または液(Ib)に 解するなどして工程通過性が不良になり、 なはだしい場合には、PVA成形体が液(Ia)また は液(Ib)中に完全に溶解してしまい、蛍光発 性PVA系樹脂成形体が得られなくなる。
 ここで、液(溶媒)[工程(i)で用いる(Ia)または 液(Ib)、以下で説明する工程(ii)および工程(iii )で用いる液(II)、液(IIIa)または液(IIIb)]による PVA系重合体の膨潤率とは、以下の方法で求め られる膨潤率をいう。

[液(溶媒)によるPVA系重合体の膨潤率]
 PVA成形体の製造に用いられるPVA系重合体(平 均粒径0.5mmの粉末)W 1 (g)を、100gの液(溶媒)に入れて、温度25℃で24 間放置した後、5A(分析用)の濾紙を用いて濾 し、濾過して得られたPVA系重合体粉末を上 2枚のティッシュペーパーの間に挟んで軽く 押圧することで粉末の表面に付着していた液 を取り除いた後にその質量(W 2 )(g)を測定して、下記の数式から液(溶媒)によ るPVA系重合体の膨潤率を求める。

 膨潤率(質量%)={(W 2 -W 1 )/W 1 }×100     (1)

 液(Ia)および液(Ib)における金属イオン(A)生 化合物の含有量、すなわち液(Ia)および液(Ib) 中に金属イオン(A)を形成させるために液に添 加される化合物の含有量は、液(Ia)または液(I b)の1L(当該化合物などを添加した後の液1L)に して、0.1~120gであることが好ましく、1~100g あることがより好ましく、1~95gであることが 更に好ましい。
 金属イオン(A)生成化合物の含有量ではなく 、金属イオン(A)自体の含有量でいうと、液( Ia)および液(Ib)の1Lに対して、金属イオン(A)を 0.05~50gの割合で含有することが好ましく、0.5~ 45gの割合で含有することがより好ましく、1~4 0gの割合で含有することが更に好ましい。
 液(Ia)および液(Ib)における金属イオン(A)[金 イオン(A)生成化合物]の含有量が少なすぎる と、所望の蛍光発色強度を有するPVA系樹脂成 形体が得られにくくなり、一方金属イオン(A) [金属イオン(A)生成化合物]の含有量が多すぎ と、工程(i)の浸漬処理時にPVA成形体を液(Ia) または液(Ib)中に浸漬させるための装置や、 漬させながら移送する装置などへの金属イ ン(A)生成化合物の付着などが生じて工程性 良などを生じ易くなる。

 液(Ia)および液(Ib)中に添加含有させる金属 オン(A)生成化合物としては、次の工程(ii)に いてイオン(B)と反応して350~700nmの波長域に 光を発する金属化合物(F)を形成する金属イ ン(A)部分を含む化合物であればいずれでも く、特に周期表の12族の金属の塩、特に亜 の有機酸塩、亜鉛の無機酸塩、カドミウム 有機酸塩、カドミウムの無機酸塩が好まし 用いられる。より具体的には、酢酸亜鉛、 酸亜鉛、クエン酸亜鉛、安息香酸亜鉛、硫 亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛など 亜鉛塩、酢酸カドミウム、ギ酸カドミウム クエン酸カドミウム、安息香酸カドミウム 硫酸カドミウム、硝酸カドミウム、塩化カ ミウム、臭化カドミウムなどのカドミウム を挙げることができる。
 液(Ia)および液(Ib)には、前記した金属イオ (A)生成化合物の1種類のみを添加してもよい 、または2種類以上を添加してもよい。
 そのうちでも、液(Ia)および液(Ib)中への溶 度が高い点から、亜鉛またはカドミウムの 酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物が好ましく いられ、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛お び/または塩化亜鉛がより好ましく用いられ 。

 また、液(Ib)における賦活剤イオン(C)生成化 合物の含有量、すなわち液(Ib)に添加して液 に賦活剤イオン(C)を形成させるのに用いら る化合物の含有量は、液(Ib)の1L(当該化合物 どを添加した後の液1L)に対して、0.1~120gで ることが好ましく、1~100gであることがより ましく、1~95gであることが更に好ましい。
 賦活剤イオン(C)生成化合物の含有量ではな て、賦活剤イオン(C)自体の含有量でいうと 液(Ib)の1Lに対して、賦活剤イオン(C)を0.05~50 gの割合で含有することが好ましく、0.5~45gの 合で含有することがより好ましく、1~40gの 合で含有することが更に好ましい。
 液(Ib)における賦活剤イオン(C)[賦活剤イオ (C)生成化合物]の含有量が少なすぎると、賦 剤イオン(C)による賦活作用が得られにくく り、一方賦活剤イオン(C)[賦活剤イオン(C)生 成化合物]の含有量が多すぎると、工程(i)の 漬処理時にPVA成形体を液(Ib)中に浸漬させる めの装置や、浸漬させながら移送する装置 どへの賦活剤イオン(C)生成化合物の付着な が生じて工程性不良などを生じ易くなる。

 液(Ib)中に添加・含有させる賦活剤イオン(C) 生成化合物としては、350~700nmの波長域に蛍光 を発する金属化合物(F)に対する賦活作用を有 するイオンを液(Ib)中に生成する化合物であ ばいずれでもよく、例えば、銅(Cu)、マンガ (Mn)、銀(Ag)、金(Au)などの金属の有機酸塩や 機酸塩、ユーロピウム(Eu)やイッテルビウム (Yb)をはじめとする希土類元素(金属)の有機酸 塩、無機酸塩、酸化物などを挙げることがで きる。より具体的には、例えば、酢酸銅、ギ 酸銅、塩化第一銅、塩化第二銅、硝酸銅、硫 酸銅などの銅の有機酸塩または無機酸塩、酢 酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、 硫酸マンガン、過酸化マンガンなどのマンガ ン化合物、塩化第一銀、塩化第二銀、硝酸銀 、硫酸銀などの銀化合物(銀塩)、塩化金、塩 金酸などの金化合物、ユーロピウム化合物 イッテルビウム化合物などを挙げることが きる。
 液(Ib)中には、前記した賦活剤イオン(C)生成 化合物の1種のみを添加してもよいし、また 2種以上を添加してもよい。

 PVA成形体を液(Ia)または液(Ib)に浸漬する工 (i)の処理は、バッチ式で行ってもよいし、 たはPVA成形体を液(Ia)および液(Ib)中に浸漬し ながら連続的に通過させる連続式で行っても よい。
 また、PVA成形体の全体を液(Ia)または液(Ib) に完全に浸漬させて、PVA成形体の全周囲か PVA成形体内に金属イオン(A)、または金属イ ン(A)と賦活剤イオン(C)を浸入させる方法が ましく採用されるが、場合によってはPVA成 体の一部のみを液(Ia)または液(Ib)中に浸漬さ せて、浸漬したPVA成形体部分の内部にのみ金 属イオン(A)、または金属イオン(A)と賦活剤イ オン(C)を浸入させてもよい。後者の方法を採 用した場合には、PVA成形体の一部の内部のみ に蛍光体微粒子が存在する蛍光発色性PVA系樹 脂成形体が形成される。

 工程(i)の浸漬処理を行う際の液(Ia)および液 (Ib)の温度は、一般的に10~70℃、特に20~50℃で ることが、PVA成形体への金属イオン(A)の浸 効率、金属イオン(A)と賦活剤イオン(C)の浸 効率、PVA成形体の工程通過性などの点から ましい。
 浸漬温度が低すぎると、PVA成形体内への金 イオン(A)の浸漬、または金属イオン(A)と賦 剤イオン(C)の浸漬が低減したり、浸漬に時 がかかるようになったり、塩が析出し易く る。一方、浸漬温度が高すぎると、PVA成形 が部分的に溶解することがある。
 また、PVA成形体を液(Ia)または液(Ib)へのPVA 形体の浸漬時間は、PVA成形体の種類、サイ 、厚さ、形状、液の温度などに応じて調整 得るが、一般的には10秒以上、更には60秒以 、特に300~900秒であることが好ましい。

 次いで、工程(i)の浸漬処理を行ったPVA成形 を、工程(ii)において、金属イオン(A)と反応 して紫外線の照射下において350~700nmの波長域 に蛍光を発する金属化合物(F)を形成するイオ ン(B)含む液(II)に浸漬して、PVA成形体内に、 外線の照射下において350~700nmの波長域に蛍 を発する金属化合物(F)よりなる平均粒径が50 nm以下の蛍光体微粒子を生成させる。
 工程(ii)の浸漬処理は、工程(i)の浸漬処理を 行ったPVA成形体を、水、アルコールなどを用 いて洗浄してから行ってもよいし、または洗 浄せずにその間々直接行ってもよく、そのう ちでも洗浄せずに直接行う方がPVA成形体内に 蛍光体微粒子を円滑に形成させ得る点から好 ましい。

 工程(ii)で用いる液(II)は、工程(ii)の浸漬処 時に、PVA成形体内へのイオン(B)の浸入が円 に行われるように、PVA成形体の膨潤作用を する溶媒を用いて調製するのがよい。かか 点から、液(II)は、工程(i)で用いる液(Ia)ま は液(Ib)と同様に、水単独、PVA系重合体を膨 する有機溶媒、水とPVA系重合体を膨潤する 機溶媒の混合溶媒、塩類などの膨潤促進剤 添加した前記した溶媒を用いて調製するこ が好ましく、PVA系重合体を膨潤する有機溶 としてはメタノール、エタノールなどのア コール類、DMSO、DMAc、DMF、NMPなどを挙げる とができる。
 工程(ii)で用いる液(II)は、工程(i)で用いる (Ia)または(Ib)と同様に、PVA成形体を形成する PVA系重合体に対する膨潤率が20~300質量%であ ことが好ましく、30~250質量%であることがよ 好ましい。膨潤率が低すぎると、PVA成形体 のイオン(B)の浸入が円滑に行われなくなっ 、PVA系樹脂成形体内に蛍光発色性金属化合 (F)よりなる蛍光体微粒子が形成されにくく る。一方膨潤率が高すぎると、PVA成形体が (II)に溶解するなどして工程通過性が不良に なり、はなはだしい場合には、PVA成形体が液 (II)に完全に溶解してしまい、蛍光発色性PVA 樹脂成形体が得られなくなる。

 液(II)におけるイオン(B)生成化合物の含有量 、すなわち液(II)中にイオン(B)を形成させる めに液に添加される化合物の含有量は、液(I I)の1L(当該化合物などを添加した後の液1L)に して、1~120gであることが好ましく、1~100gで ることがより好ましく、1~95gであることが に好ましい。
 イオン(B)生成化合物の含有量ではなくて、 オン(B)自体の含有量でいうと、液(II)の1Lに して、イオン(B)を0.5~50gの割合で含有するこ とが好ましく、1~45gの割合で含有することが り好ましく、2~40gの割合で含有することが に好ましい。
 液(II)におけるイオン(B)[イオン(B)生成化合 ]の含有量が少なすぎると、所望の蛍光発色 度を有するPVA系樹脂成形体が得られにくく り、一方イオン(B)[イオン(B)生成化合物]の 有量が多すぎると、工程(ii)の浸漬処理時にP VA成形体を液(II)中に浸漬させるための装置や 、浸漬させながら移送する装置などへのイオ ン(B)生成化合物の付着などが生じて工程性不 良などを生じ易くなり、更に回収系への負担 が大きくなったり、臭気の発生が強くなり易 い。

 また、液(Ia)および液(Ib)における金属イ ン(A)生成化合物の含有量ならびに液(II)にお るイオン(B)生成化合物の含有量が共に少な と、所望の蛍光発色強度を有するPVA系樹脂 形体が得られにくくなるので、液(Ia)および 液(Ib)における金属イオン(A)生成化合物の含 量ならびに液(II)におけるイオン(B)生成化合 の含有量のいずれかは、5g/L以上であること が好ましく、7g/L以上であることがより好ま く、10g/L以上であることが更に好ましい。

 液(II)中に添加・含有させるイオン(B)生成 化合物としては、工程(i)の浸漬処理によって PVA成形体内に既に浸入(含浸)している金属イ ン(A)と反応して、350~700nmの波長域に蛍光を する金属化合物(F)よりなる蛍光体微粒子をP VA成形体内に形成するイオン(B)部分を含む化 物であればいずれでもよく、特に周期表の1 6族の元素を含む化合物が好ましく用いられ 特に硫黄を含む化合物、すなわち硫黄イオ または硫化物イオンを液(II)中に生成する硫 含有化合物が好ましく用いられる。イオン( B)生成化合物として好ましく用いられる硫黄 有化合物の具体例としては、硫化ナトリウ 、第二チオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナト ウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ硫酸ナ リウム、硫化水素、チオ尿素、チオアセト ミドなどを挙げることができ、これらの化 物は単独で使用しても、または2種以上を併 用してもよい。そのうちでも、コスト、入手 のし易さ、低腐食性などの点から、硫化ナト リウムがより好ましく用いられる。

 PVA成形体を液(II)に浸漬する工程(ii)の処理 、バッチ式で行ってもよいし、または工程(i )の処理を終えたPVA成形体を液(II)中に浸漬さ た状態で連続的に通過させる連続式で行っ もよい。
 また、PVA成形体の全体を液(II)中に完全に浸 漬させて、PVA成形体の全周囲からPVA成形体内 にイオン(B)を浸入させることが望ましいが、 場合によっては、特に工程(i)をPVA成形体の一 部のみを液(Ia)または液(Ib)中に浸漬させ処理 た場合は、工程(i)で浸漬した箇所のみを液( II)中に浸漬して、浸漬したPVA成形体部分の内 部にのみ蛍光発色性金属化合物(F)よりなる蛍 光体微粒子を形成させてもよい。

 工程(i)でPVA成形体内に含浸された金属イオ (A)とイオン(B)(特に硫黄イオン)との反応は 一般的には非常に速やかに行われるため、 程(ii)の浸漬時間に特に制限はないが、PVA成 体の内部にイオン(B)を十分に浸入させるた には、工程(ii)における液(II)中への浸漬時 は5秒以上であることが好ましく、30秒以上 あることがより好ましく、150~600秒であるこ が更に好ましい。
 また、工程(ii)の浸漬処理を行う際の液(II) 温度は、一般的に10~70℃、特に20~50℃である とが、PVA成形体へのイオン(B)の浸入効率、P VA成形体の工程通過性などの点から好ましい

 本発明においては、工程(i)の浸漬処理を1回 だけ行った後に工程(ii)の浸漬処理を1回だけ って次の工程(iii)(熟成処理)を行ってもよい し、または工程(i)の浸漬処理と工程(ii)の浸 処理を交互に複数回(例えば2回、3回、4回、5 回、それ以上)にわたって繰り返して行った に次の工程(iii)(熟成処理)を行ってもよい。
工程(i)と工程(ii)を交互に複数回にわたって り返すことで、PVA成形体内における蛍光体 粒子の含有量を高くすることができる。
 また、本発明では、工程(i)の浸漬処理およ 工程(ii)の浸漬処理のいずれか一方または両 方を、超音波をかけないで行ってもよいし、 または超音波をかけながら行ってもよく、超 音波をかけながら行うとPVA成形体表面への蛍 光体微粒子の付着が減り、外観の良好な蛍光 発色性PVA系樹脂成形体を得ることができる。

 上記した工程(i)および工程(ii)の浸漬処理を 行うことで、PVA成形体の内部に、平均粒径が 50nm以下の蛍光体微粒子が分散された状態で 有されている蛍光発色性PVA成形体が形成さ る。
 さらに、本発明では、次の工程(iii)におい 、前記工程(ii)で得られた蛍光体微粒子を成 体内に含有するPVA成形体を、前記金属イオ (A)とイオン(B)を含む液(IIIa)に浸漬して熟成 るか、または金属イオン(A)とイオン(B)と賦 剤イオン(C)を含む液(IIIb)に浸漬して熟成す 。
 工程(iii)の熟成処理は、工程(ii)で得られたP VA成形体を洗浄してPVA成形体の表面に付着し いる蛍光体微粒子などを除去した後に行っ もよいし、または工程(ii)で得られたPVA成形 体に対して洗浄を行うことなく、工程(iii)の 成処理をそのまま施してもよい。そのうち も、洗浄を行わずに熟成処理を施すのが製 コストの点から好ましい。

 工程(iii)で用いる液(IIIa)または液(IIIb)は 金属イオン(A)として工程(i)で用いる液(Ia)ま は液(Ib)に含まれているのと同じ金属イオン (A)を含有し、イオン(B)として工程(ii)で用い 液(II)に含まれているのと同じイオン(B)を含 していることが望ましい。また、工程(iii) 用いる液(IIIb)は、賦活剤イオン(C)として、 程(i)で用いる液(Ib)に含まれているのと同じ 活剤イオン(C)を含有していることが望まし 。そのようにすることによって、PVA成形体 に含まれる蛍光体微粒子が熟成され、それ よる蛍光体微粒子の結晶性が向上して、蛍 体微粒子がより強い蛍光を発するようにな 。

 工程(iii)で用いる液(IIIa)および液(IIIb)は 工程(iii)の熟成処理に、PVA成形体内への金属 イオン(A)、イオン(B)、賦活剤イオン(C)の浸入 が円滑に行われるように、PVA成形体の膨潤作 用を有する溶媒を用いて調製するのがよく、 かかる点から、液(IIIa)および液(IIIb)は、水単 独、PVA系重合体を膨潤する有機溶媒、水とPVA 系重合体を膨潤する有機溶媒の混合溶媒、塩 類などの膨潤促進剤を添加した前記した溶媒 を用いて調製することが好ましく、PVA系重合 体を膨潤する有機溶媒としてはメタノール、 エタノールなどのアルコール類、DMSO、DMAc、D MF、NMPなどを挙げることができる。

 工程(iii)の処理を行う際の液(IIIa)または (IIIb)は、工程(i)および工程(ii)と同様に、PVA 形体を形成するPVA系重合体に対する膨潤率 、20~300質量%であることが好ましく、30~250質 量%であることがより好ましい。膨潤率が低 ぎると、PVA成形体への金属イオン(A)、イオ (B)、賦活剤イオン(C)の浸入が円滑に行われ くなって、PVA系樹脂成形体内に含まれる蛍 発色性金属化合物(F)よりなる蛍光体微粒子 熟成処理、それに伴う結晶性の向上が不十 になり、蛍光体微粒子の蛍光発光強度が高 なりにくい。一方膨潤率が高すぎると、PVA 形体が液(IIIa)または液(IIIb)に溶解するなど て工程通過性が不良になり、はなはだしい 合には、PVA成形体が液(IIIa)または液(IIIb)中 溶解してしまい、蛍光発色性PVA系樹脂成形 が得られなくなる。

 液(IIIa)および液(IIIb)における金属イオン(A) 成化合物の含有量は、液(IIIa)または液(IIIb) 1L(当該化合物などを添加した後の液1L)に対 て、0.1~120gであることが好ましく、1~100gで ることがより好ましく、1~95gであることが更 に好ましい。
 金属イオン(A)生成化合物の含有量ではなく 、金属イオン(A)自体の含有量でいうと、液( IIIa)および液(IIIb)の1Lに対して、金属イオン(A )を0.05~50gの割合で含有することが好ましく、 0.5~45gの割合で含有することがより好ましく 1~40gの割合で含有することが更に好ましい。
 液(IIIa)および液(IIIb)における金属イオン(A)[ 金属イオン(A)生成化合物]の含有量が少なす ると、PVA成形体内に含まれる蛍光体微粒子 熟成が不十分になり蛍光体微粒子が発する 光の強度が十分に高くならず、一方金属イ ン(A)[金属イオン(A)生成化合物]の含有量が多 すぎると、工程(iii)の熟成処理時にPVA成形体 液(IIIa)および液(IIIb)中に浸漬させるための 置や、浸漬させながら移送する装置などへ 金属イオン(A)生成化合物の付着などが生じ 工程性不良などを生じ易くなる。

 液(IIIa)および液(IIIb)中に添加含有させる金 イオン(A)生成化合物としては、工程(i)に係 説明箇所に記載したのと同様に周期表の12 の金属の塩が用いられ、そのうちでも特に 鉛の有機酸塩、亜鉛の無機酸塩、カドミウ の有機酸塩、カドミウムの無機酸塩が好ま く用いられる。それに該当する具体的な化 物の種類は、工程(i)の説明箇所に具体例と て挙げた各種亜鉛塩およびカドミウム塩と じである。
 そのうちでも、液(IIIa)および液(IIIb)中への 解度が高い点から、亜鉛またはカドミウム 酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、塩化物が好まし 用いられ、酢酸亜鉛、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛 よび/または塩化亜鉛がより好ましく用いら れる。

 液(IIIa)および液(IIIb)におけるイオン(B)生成 合物の含有量は、液(IIIa)または液(IIIb)の1L( 該化合物などを添加した後の液1L)に対して 0.1~120gであることが好ましく、1~100gである とがより好ましく、1~95gであることが更に好 ましい。
 イオン(B)生成化合物の含有量ではなくて、 オン(B)自体の含有量でいうと、液(IIIa)およ 液(IIIb)の1Lに対して、イオン(B)を0.05~50gの割 合で含有することが好ましく、0.5~45gの割合 含有することがより好ましく、1~40gの割合で 含有することが更に好ましい。
 液(IIIa)および液(IIIb)におけるイオン(B)[イオ ン(B)生成化合物]の含有量が少なすぎると、PV A成形体内に含まれる蛍光体微粒子の熟成が 十分になり蛍光体微粒子が発する蛍光の強 が十分に高くならず、一方イオン(B)[イオン( B)生成化合物]の含有量が多すぎると、工程(ii i)の熟成処理時にPVA成形体を液(IIIa)および液( IIIb)中に浸漬させるための装置や、浸漬させ がら移送する装置などへのイオン(B)生成化 物の付着などが生じて工程性不良などを生 易くなる。

 液(IIIa)および液(IIIb)中に添加・含有させ イオン(B)生成化合物としては、工程(ii)で用 いる液(II)中に含有させるのと同様のイオン(B )部分を含む化合物が用いられ、好適には周 表の16族の元素を含む化合物、特に工程(ii) 係る上記説明箇所に記載したのと同じ硫黄 有化合物が用いられ、その具体例は工程(ii) 係る説明箇所に記載したとおりである。

 また、液(IIIb)における賦活剤イオン(C)生成 合物の含有量は、液(IIIb)の1L(当該化合物な を添加した後の液1L)に対して、0.1~120gであ ことが好ましく、1~100gであることがより好 しく、1~95gであることが更に好ましい。
 賦活剤イオン(C)生成化合物の含有量ではな て、賦活剤イオン(C)自体の含有量でいうと 液(IIIb)の1Lに対して、賦活剤イオン(C)を0.05~ 50gの割合で含有することが好ましく、0.5~45g 割合で含有することがより好ましく、1~40gの 割合で含有することが更に好ましい。
 液(IIIb)における賦活剤イオン(C)[賦活剤イオ ン(C)生成化合物]の含有量が少なすぎると、 活剤イオン(C)による賦活作用が得られにく なり、一方賦活剤イオン(C)[賦活剤イオン(C) 成化合物]の含有量が多すぎると、工程(iii) 浸漬処理時にPVA成形体を液(IIIb)中に浸漬さ るための装置や、浸漬させながら移送する 置などへの賦活剤イオン(C)生成化合物の付 などが生じて工程性不良などを生じ易くな 。

 液(IIIb)中に添加含有させる賦活剤イオン( C)生成化合物としては、工程(i)で用いる液(Ib) についての説明箇所で上記したのと同じ化合 物、例えば、銅(Cu)、マンガン(Mn)、銀(Ag)、金 (Au)などの金属の有機酸塩や無機酸塩、ユー ピウム(Eu)やイッテルビウム(Yb)をはじめとす る希土類元素(金属)の有機酸塩、無機酸塩、 化物などを用いることができ、具体例とし は工程(i)で用いる液(Ib)についての説明箇所 に挙げたとおりである。

 PVA成形体を液(IIIa)または液(IIIb)に浸漬する とからなる工程(iii)の熟成処理は、バッチ で行ってもよいし、工程(ii)の処理を行ったP VA成形体を液(IIIa)および液(IIIb)中に浸漬させ がら連続的に通過させる連続式で行っても い。
 工程(iii)の熟成処理は、PVA成形体の全体を (IIIa)または液(IIIb)中に浸漬して行うことが ましいが、場合によっては、工程(i)および 程(ii)をPVA成形体の一部のみを液(Ia)または液 (Ib)に浸漬し、更に液(II)中に浸漬して行った 合は、工程(i)および工程(ii)で浸漬した箇所 のみを液(IIIa)または液(IIIb)中に浸漬して、熟 成処理を行ってもよい。

 工程(iii)の熟成処理時の液(IIIa)および液(IIIb )の温度は、温度が高いほど、PVA成形体内に まれる蛍光体微粒子の溶解析出反応速度が きくなり、それに伴って蛍光体微粒子の一 粒子の異方成長速度が上昇して結晶性が高 なるので好ましいが、液温が高くなり過ぎ と、PVA成形体が液(IIIa)および液(IIIb)に溶解 るという問題が生ずるので、一般的に30~90℃ が好ましく、40~80℃がより好ましい。
特に液(IIIa)および液(IIIb)が水溶液である場合 は、前記の温度を採用することが好ましい。
 また、熟成処理時の液(IIIa)または液(IIIb)へ PVA成形体の浸漬時間は、長い方が好ましい 、一般に30分~20時間が好ましく、1~5時間が り好ましい。熟成時間を長くすると、蛍光 微粒子の溶解析出反応に伴う一次粒子の異 成長が促進されて、粒子の結晶性が向上し 蛍光発光強度が向上する。

 工程(iii)の熟成処理を終えた蛍光体微粒 を内部に有する蛍光発色性PVA系樹脂成形体 、乾燥や熱処理を施すことによって力学的 性を向上させることができる。蛍光発色性PV A系樹脂成形体の乾燥処理または熱処理は、 般に70~250℃の温度で行うことが好ましく、10 0~200℃の温度で行うことがより好ましい。温 が前記範囲よりも低いと、乾燥が不十分と り、しかもPVA系樹脂成形体の物性向上効果 得られにくくなり、一方温度が前記範囲よ も高いと、蛍光発色性PVA系樹脂成形体の表 の部分的な融解や熱分解が生じて物性の低 が生じ易くなる。

 上記により、紫外線の照射下において350~700 nmの波長域に蛍光を発する平均粒径が50nm以下 の蛍光体微粒子が成形体内で分散された状態 で含有されている本発明の蛍光発色性PVA系樹 脂成形体が得られる。
 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、成 体内に含まれる蛍光体微粒子の平均粒径が5 0nm以下で、極めて微細であり、分散されてい るため、可視光下においては視認されにくく 、一方紫外線の照射下においては光強度の大 きな蛍光を発し、しかも可視光線の透過率が 高くて透明性に優れているため、それらの特 性を活かして、例えば、紙幣、証券用紙、機 密文書、商品タグなどの偽造防止対策用材料 、壁紙、カーペット、衣料、ガラス中間膜、 ガラス貼付用フィルムなどの紫外線遮蔽と装 飾性を兼ね備えた材料、蛍光発色性が酸素を はじめとする気体の表面吸着により変化する ことを利用したセンシング材料などの種々の 用途に極めて有効に利用することができる。

 以下に実施例などにより本発明について具 的に説明するが、本発明は以下の実施例に ら限定されるものではない。
 以下の実施例などにおいて、PVA系樹脂成形 中の蛍光体微粒子の含有量、賦活剤の導入 、蛍光体微粒子の平均粒径、フィルムの可 光線の透過率、およびPVA系樹脂成形体の蛍 発光波長は次のようにして求めた。

(1)PVA系樹脂成形体中の蛍光体微粒子の含有量 :
 PVA系樹脂成形体内に含まれる蛍光体微粒子( 賦活剤がドープされまたはドープされていな い硫化亜鉛粒子)の含有量を、ジャーレルア シュ社製のICP発光分析装置「IRIS-AP」を使用 て測定した。なお、硫化亜鉛粒子(蛍光体微 粒子)が、賦活剤がドープされたものである 合は、賦活剤をも含めた硫化亜鉛粒子全体 含有量をもって蛍光体微粒子の含有量とし 。

(2)PVA系樹脂成形体内に含まれる蛍光体微粒子 における賦活剤の含有量:
 上記(1)のICP発光分析の結果に基づいて、蛍 体微粒子(硫化亜鉛)の亜鉛元素に対する賦 剤元素のモル%を求めて、賦活剤の含有量と た。

(3)PVA系樹脂成形体内に含まれる蛍光体微粒子 の平均粒径:
 PVA系樹脂成形体の断面(成形体がフィルムで ある場合はフィルムを厚さ方向に切断した切 断面、成形体が繊維である場合は長さ方向に 直角に切断した切断面)を、透過型電子顕微 (TEM)(日立社製「H-800NA」)を使用して写真撮影 し(倍率=10万倍)、当該写真の対角線の交点を 心とする所定の正方形部分に含まれるすべ の粒子についてその最大径をそれぞれ測定 、その平均値を採って蛍光体微粒子の平均 径とした。なお、その際に、前記「所定の 方形部分」の面積は、当該正方形部分にほ 100個の粒子が含まれる面積とした。

(4)PVA系樹脂成形体(フィルム)の可視光線の透 率および紫外線の透過率:
 PVA系樹脂成形体(フィルム)について、自己 光光度計(島津製作所製「UV-2500PC」)を使用し て、PVA系樹脂成形体(フィルム)について、200~ 800nmの波長域(紫外線~可視光線域)で1.0nmごと 光透過率を測定し、400~760nmの波長域(可視光 )の平均透過率を求めた。ここで平均透過率 は、1nmごとの光透過率の和を測定した光透過 率の数で除して求めた。
 また、波長300nmの紫外線の透過率を求めて 紫外線遮蔽率の指標とした。

(5)PVA系樹脂成形体の蛍光発光波長:
 蛍光分光光度計(島津製作所製「RF-5300PC」) 使用して、PVA系樹脂成形体に320nmの励起波長 (紫外線)を照射したときに発せられた蛍光の 大吸収波長(ピーク波長)を蛍光発光波長と た。

 なお、以下の実施例および比較例で用い 、酢酸亜鉛、酢酸カドミウム、酢酸マンガ 、酢酸銅および硫化ナトリウムは、いずれ 和光純薬株式会社製である。

《実施例1》
(1) PVA(粘度平均重合度=1700、ケン化度=99.9モ %)を水に溶解してPVA濃度13質量%の水溶液とし 、このPVA水溶液を60℃の金属上に流延し、50 で3時間乾燥して厚さが75μmのPVAフィルムを 造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムを、酢酸亜 の濃度が500mM(91.8g/L)の酢酸亜鉛水溶液から る温度25℃の水浴中に滞留時間が600秒となる ように浸漬した後、引き続いて、硫化ナトリ ウムの濃度が250mM(19.5g/L)の硫化ナトリウム水 液からなる温度25℃の水浴中に滞留時間が30 0秒になるように超音波照射下で浸漬した。
(3) 次いで、PVAフィルムを硫化ナトリウム水 液からなる水浴から取り出して、取り出し PVAフィルムを、酢酸亜鉛の濃度が500mM(91.8g/L )の酢酸亜鉛水溶液と硫化ナトリウムの濃度 250mM(19.5g/L)の硫化ナトリウム水溶液を1:1の体 積比で混合した混合液(酢酸亜鉛の濃度は45.9g /L、硫化ナトリウムの濃度は9.75g/L)(熟成処理 液)(温度70℃)中に浸漬して、70℃で1時間保 した。その後、PVAフィルムを前記混合液か 取り出して、水、メタノールの順で洗浄し 50℃の熱風で乾燥して、硫化亜鉛微粒子を含 有するPVAフィルムを製造した。

(4) 上記(3)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(3)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1にみるように、 られたPVAフィルムでは蛍光体微粒子(硫化亜 鉛微粒子)が凝集することなくフィルムの内 に実質的に均一に分散していた。
 また、PVAフィルムを厚さ方向に切断してそ 切断面を走査型電子顕微鏡(SEM)にて写真撮 したところ、図2にみるように、PVAフィルム 表面付近(表面から150nm程度の深さ)では、内 部より多くの蛍光体微粒子が存在しているが 、蛍光体微粒子の凝集はみられず、またフィ ルムの表面への付着は殆どなかった。
 そして、図1のTEM写真に基づいて、PVAフィル ム内に含まれる蛍光体微粒子(硫化亜鉛微粒 )の平均粒径を上記した方法で求めたところ 8nmであった。
(5) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子の含有量を上記した方法 求めたところ、3.49質量%であった。

(6) さらに、上記(3)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、図3に示すとおりであった。当該図3 ら、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透過率 および波長300nmの紫外線の透過率を上記した 法で求めたところ、可視光線の平均透過率 95%であって、可視光線の透過率が高く透明 に優れており、一方波長300nmの紫外線の透 率は0.1%と低く、紫外線遮蔽性に優れていた
(7) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、図4に示すとおり あり、430nm付近に青色蛍光発光に帰属される 極大吸収が観察された。

《実施例2》
(1) PVA(粘度平均重合度=1700、ケン化度=99.9モ %)を水に溶解してPVA濃度13質量%の水溶液とし 、このPVA水溶液を60℃の金属上に流延し、乾 して厚さが75μmのPVAフィルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムを、酢酸亜 の濃度が133mM(24.4g/L)の酢酸亜鉛水溶液150mLと 酢酸マンガン(賦活剤)の濃度が8mM(1.4g/L)の酢 マンガン水溶液25mLを混合した混合液(酢酸亜 鉛の濃度は20.9g/L、酢酸マンガンの濃度は0.2g/ L)よりなる温度25℃の水浴中に滞留時間が600 となるように浸漬した後、引き続いて、硫 ナトリウムの濃度が400mM(31.2g/L)の硫化ナトリ ウム水溶液からなる温度25℃の水浴中に滞留 間が600秒になるように超音波照射下で浸漬 た。
(3) 次いで、PVAフィルムを硫化ナトリウム水 液からなる水浴から取り出して、取り出し PVAフィルムを、酢酸マンガンを1モル%の量 添加した酢酸亜鉛水溶液(酢酸亜鉛の濃度が1 50mM(27.5g/L)、酸化マンガンの濃度が0.26g/L)の酢 酸亜鉛水溶液と硫化ナトリウムの濃度が150mM( 11.7g/L)の硫化ナトリウム水溶液を1:1の体積比 混合した混合液(酢酸亜鉛の濃度は13.75g/L、 酸マンガンの濃度は0.13g/L、硫化ナトリウム の濃度は5.85g/L)(熟成処理用液)(温度70℃)中に 漬して、70℃で1時間保持した。その後、PVA ィルムを前記混合液から取り出して、水、 タノールの順で洗浄し、50℃の熱風で乾燥 て、マンガンをドープした硫化亜鉛微粒子 含有するPVAフィルムを製造した。

(4) 上記(3)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(3)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1と同様に、蛍光 微粒子はPVAフィルムの内部に実質的に均一 分散しており、走査型電子顕微鏡(SEM)にて 真撮影したところ、図2と同様に、フィルム 面には付着していなかった。そして、当該T EM写真に基づいてPVAフィルム内に含まれる蛍 体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均粒径を上 した方法で求めたところ、8nmであった。
(5) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子および賦活剤(マンガン) 含有量を上記した方法で求めたところ、蛍 体微粒子(マンガンも含む)の含有量は1.39質 %であり、賦活剤であるマンガンのドープ率 亜鉛元素に対して0.63モル%であった。

(6) さらに、上記(3)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透 率は96%であって、可視光線の透過率が高く 明性に優れており、一方波長300nmの紫外線の 透過率は0.1%と低く、紫外線遮蔽性に優れて た。
(7) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、図4に示すように 580nm付近に橙色蛍光発光に帰属される極大吸 収が観察された。

《実施例3》
(1) 実施例2の(2)において、賦活剤として酢酸 マンガンの濃度8mM(1.38g/L)の酢酸マンガン水溶 液の代わりに酢酸銅の濃度8mM(0.98g/L)の酢酸銅 水溶液を用い、(3)において、酢酸マンガンを 1モル%の量で添加した酢酸亜鉛水溶液の代わ に酢酸銅を1.5モル%の量で添加した酢酸亜鉛 水溶液(酢酸銅の濃度は0.28g/Lとなる。)を用い た以外は、実施例2の(1)~(3)と同じ操作を行っ 、銅がドープされた硫化亜鉛微粒子を含有 るPVAフィルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(1)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1と同様に、蛍光 微粒子はPVAフィルムの内部に実質的に均一 分散しており、走査型電子顕微鏡(SEM)にて 真撮影したところ、図2と同様に、フィルム 面には付着していなかった。そして、当該T EM写真に基づいてPVAフィルム内に含まれる蛍 体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均粒径を上 した方法で求めたところ11nmであった。
(3) また、上記(1)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子および賦活剤(銅)の含有 を上記した方法で求めたところ、蛍光体微 子(銅も含む)の含有量は1.10質量%であり、賦 剤である銅のドープ率は亜鉛元素に対して1 .36モル%であった。

(4) さらに、上記(3)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、400~760nmの波長域(可視光域)の可視光 の平均透過率は92%であって、可視光線の透 率が高く透明性に優れており、一方波長300nm の紫外線の透過率は0.1%と低く、紫外線遮蔽 に優れていた。
(5) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、図4に示すように 450nm付近に緑色蛍光発光に帰属される極大吸 収が観察された。

《実施例4》
(1) 実施例1の(1)と同じ方法を採用して製造し たPVAフィルムを、酢酸カドミウムの濃度が150 mM(34.6g/L)の酢酸カドミウム水溶液からなる温 25℃の水浴中に滞留時間が600秒となるよう 浸漬した後、引き続いて、硫化ナトリウム 濃度が150mM(11.7g/L)の硫化ナトリウム水溶液か らなる温度25℃の水浴中に滞留時間が600秒に るように超音波照射下で浸漬した。
(2) 次いで、PVAフィルムを硫化ナトリウム水 液から水浴から取り出して、取り出したPVA ィルムを、酢酸カドミウムの濃度が150mM(34.6 g/L)の酢酸カドミウム水溶液と硫化ナトリウ の濃度が150mM(11.7g/L)の硫化ナトリウム水溶液 を1:1の体積比で混合した混合液(酢酸カドミ ムの濃度は17.3g/L、硫化ナトリウムの濃度は5 .85g/L)(熟成処理用液)(温度70℃)中に浸漬して 70℃で1時間保持した。その後、PVAフィルム 前記混合液から取り出して、水、メタノー の順で洗浄し、50℃の熱風で乾燥して、硫化 カドミウム微粒子を含有するPVAフィルムを製 造した。

(3) 上記(2)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(2)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1と同様に、蛍光 微粒子はPVAフィルムの内部に実質的に均一 分散しており、走査型電子顕微鏡(SEM)にて 真撮影したところ、図2と同様に、フィルム 表面への付着が殆どなかった。そして、当 TEM写真に基づいて、PVAフィルム内に含まれ 蛍光体微粒子(硫化カドミウム微粒子)の平 粒径を上記した方法で求めたところ10nmであ た。
(4) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子の含有量を上記した方法 求めたところ、1.50質量%であった。

(5) さらに、上記(2)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透 率は61%であって、黄色に着色しているもの 透明性に優れており、一方波長300nmの紫外線 の透過率は0.1%と低く、紫外線遮蔽性に優れ いた。
(6) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、550nm付近に黄色蛍 発光に帰属される極大吸収が観察された。

《実施例5》
(1) 実施例1の(1)と同じ方法を採用して製造し たPVAフィルムを、酢酸亜鉛の濃度が500mM(91.8g/ L)の酢酸亜鉛水溶液からなる温度25℃の水浴 に滞留時間が600秒となるように浸漬し、引 続いて硫化ナトリウムの濃度が250mM(19.5g/L)の 硫化ナトリウム水溶液からなる温度25℃の水 中に滞留時間が300秒になるように超音波照 下で浸漬した後、硫化ナトリウム水溶液か 取り出してPVAフィルムを水洗した。
(2) 上記(1)の、[酢酸亜鉛水溶液からなる水浴 中への浸漬-硫化ナトリウム水溶液からなる 浴中への浸漬-水洗]からなる一連の工程を更 に4回繰り返した(合計5回)。
(3) 次いで、上記(2)で水洗したPVAフィルムを 酢酸亜鉛の濃度が500mM(91.8g/L)の酢酸亜鉛水 液と硫化ナトリウムの濃度が250mM(19.5g/L)の硫 化ナトリウム水溶液を1:1の体積比で混合した 混合液(酢酸亜鉛の濃度は45.9g/L、硫化ナトリ ムの濃度は9.75g/L)(熟成処理用液)(温度70℃) に浸漬して、70℃で1時間保持した後、PVAフ ルムを前記混合液から取り出して、水、メ ノールの順で洗浄し、50℃の熱風で乾燥して 、硫化亜鉛微粒子を含有するPVAフィルムを製 造した。

(4) 上記(3)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(3)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1と同様に、蛍光 微粒子はPVAフィルムの内部に実質的に均一 分散しており、走査型電子顕微鏡(SEM)にて 真撮影したところ、図2と同様に、フィルム 表面への付着が殆どなかった。そして、当 TEM写真に基づいて、PVAフィルム内に含まれ 蛍光体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均粒径 上記した方法で求めたところ、14nmであった
(5) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子の含有量を上記した方法 求めたところ、15.2質量%であった。

(6) さらに、上記(3)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透 率は85%であって、蛍光体微粒子の含有量が 施例1~4で得られたPVAフィルムの約5~10倍であ にも拘わらず、可視光線の透過率が高く透 性に優れており、一方波長300nmの紫外線の 過率は0.1%と低く、紫外線遮蔽性に優れてい 。
(7) また、上記(3)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、430nm付近に青色蛍 発光に帰属される極大吸収が観察された。

《実施例6》
(1) PVA(粘度平均重合度=1700、ケン化度=99.8モ %)を90℃で窒素雰囲気下で水に溶解してPVA濃 が16質量%の紡糸原液を調製した。この紡糸 液を孔径0.16mm、ホール数108のノズルを通し 飽和芒硝水溶液からなる凝固浴中に湿式紡 し、これにより得られた繊維を水中で50℃ 5倍に湿式延伸してPVA繊維(単繊維繊度30dtex) 製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVA繊維を、酢酸亜鉛の 度が133mM(24.4g/L)の酢酸亜鉛水溶液150mLと酢酸 マンガン(賦活剤)の濃度が8mM(1.4g/L)の酢酸マ ガン水溶液25mLを混合した混合液(酢酸亜鉛の 濃度は20.9g/L、酢酸マンガンの濃度は0.2g/L)よ なる温度25℃の水浴中に滞留時間が600秒と るように浸漬した後、引き続いて、硫化ナ リウムの濃度が400mM(31.2g/L)の硫化ナトリウム 水溶液からなる温度25℃の水浴中に滞留時間 600秒になるように超音波照射下で浸漬した
(3) 上記(2)の[酢酸亜鉛と酢酸マンガン(賦活 )を含む水溶液からなる水浴中への浸漬-硫化 ナトリウム水溶液からなる水浴中への浸漬- 洗]からなる一連の工程を更に4回繰り返した (合計5回)。
(4) 次いで、PVA繊維を硫化ナトリウム水溶液 らなる水浴から取り出して、酢酸マンガン 1モル%の量で添加した酢酸亜鉛の濃度が150mM (27.5g/L)の酢酸亜鉛水溶液と硫化ナトリウムの 濃度が150mM(11.7g/L)の硫化ナトリウム水溶液を1 :1の体積比で混合した混合液(酢酸亜鉛の濃度 は13.75g/L、酢酸マンガンの濃度は0.13g/L、硫化 ナトリウムの濃度は5.85g/L)(熟成処理用液)(温 70℃)中に浸漬して、70℃で1時間保持した後 PVA繊維を前記混合液から取り出して、水、 タノールの順で洗浄し、50℃の熱風で乾燥 て、マンガンでドープした硫化亜鉛微粒子 含有するPVA繊維を製造した。

(5) 上記(4)で得られたPVA繊維の外観は平滑で 好であった。
 上記(4)で得られたPVA繊維を長さ方向に直角 切断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM )にて写真撮影したところ、蛍光体微粒子はPV A繊維の内部に実質的に均一に分散しており 走査型電子顕微鏡(SEM)にて写真撮影したとこ ろ、蛍光体微粒子はPVA繊維の内部にのみ存在 しており繊維表面には付着していなかった。 そして、当該TEM写真に基づいてPVA繊維内に含 まれる蛍光体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均 径を上記した方法で求めたところ、18nmであ った。
(6) また、上記(4)で得られたPVA繊維に含まれ 蛍光体微粒子および賦活剤(マンガン)の含 量を上記した方法で求めたところ、蛍光体 粒子(マンガンも含む)の含有量は21.1質量%で り、賦活剤であるマンガンのドープ率は亜 元素に対して0.78モル%であった。
(7) 更に、上記(4)で得られたPVA繊維に320nmの 起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペクト ルを測定したところ、580nm付近に橙色蛍光発 に帰属される極大吸収が観察された。

《実施例7》
(1) 実施例2の(3)の熟成処理を行わなかった以 外は、実施例2の(1)および(2)と同じ操作を行 て、マンガンでドープした硫化亜鉛微粒子 含有するPVAフィルムを製造した。
(2) 上記(1)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(1)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影したところ、図1と同様に、蛍光 微粒子はPVAフィルムの内部に実質的に均一 分散しており、走査型電子顕微鏡(SEM)にて 真撮影したところ、図2と同様に、フィルム 面には付着していなかった。そして、当該T EM写真に基づいてPVAフィルム内に含まれる蛍 体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均粒径を上 した方法で求めたところ、9nmであった。
(3) また、上記(1)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子および賦活剤(マンガン) 含有量を上記した方法で求めたところ、蛍 体微粒子(マンガンも含む)の含有量は1.20質 %であり、賦活剤であるマンガンのドープ率 亜鉛元素に対して0.32モル%であり、熟成処 を行わなかったことにより、蛍光体微粒子 含有量が実施例2に比べて少なく、また賦活 であるマンガンのドープ率は実施例2の半分 程度であった。

(4) さらに、上記(1)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透 率は98%であって、可視光線の透過率が高く 明であった。
(5) また、上記(1)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、熟成処理を行なっ た実施例2の蛍光強度よりは低いものの、580nm 付近に橙色蛍光発光に帰属される極大吸収が 観察された。

《比較例1》
(1) 酢酸亜鉛の濃度が500mM(91.8g/L)の酢酸亜鉛 溶液と硫化ナトリウムの濃度が250mM(19.5g/L)の 硫化ナトリウム水溶液を1:1の体積比で混合し て、硫化亜鉛微粒子を含有するコロイド溶液 を調製した。
(2) PVA(粘度平均重合度=1700、ケン化度=99.9モ %)を90℃で水に溶解してPVA濃度10質量%の水溶 を調製し、このPVA水溶液97質量部に対して 記(1)で調製した硫化亜鉛粒子を含有するコ イド溶液0.3質量部を混合して混合液とし、 の混合液を60℃の金属上に流延し、50℃で3時 間乾燥して厚さが75μmのPVAフィルムを製造し 。

(3) 上記(2)で得られたPVAフィルムの外観は、 視で白濁しており可視光下において蛍光体 粒子(硫化亜鉛粒子)の存在が視認された。
 上記(2)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影した(図5)。図5にみるように、得 れたPVAフィルムでは蛍光体微粒子(硫化亜鉛 微粒子)は数ナノメートルオーダーで分散し おらず凝集していた。
 図5の写真に基づいて、PVAフィルム内に含ま れる蛍光体微粒子(硫化亜鉛微粒子)の平均粒 を上記した方法で求めたところ、280nmであ た。
(4) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子の含有量を上記した方法 求めたところ、2.70質量%であった。

(5) さらに、上記(2)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、図3に示すとおりであった。当該図3 ら、400~760nmの波長域(可視光域)の平均透過率 および波長300nmの紫外線の透過率を上記した 法で求めたところ、波長300nmの紫外線の透 率は0.1%で紫外線遮蔽性には優れていたが、 視光線の平均透過率は21%であって、可視光 の透過率が低く、透明性に劣っていた。
(6) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、430nm付近に青色蛍 発光に帰属される極大吸収が観察されたが 可視光線の透過性(透明性)に優れるもので なかった。

《比較例2》
(1) 実施例1の(1)と同じ方法を採用して製造し たPVAフィルムを、酢酸亜鉛の濃度が20mM(3.7g/L) の酢酸亜鉛水溶液からなる温度25℃の水浴中 滞留時間が600秒となるように浸漬した後、 き続いて、硫化ナトリウムの濃度が10mM(0.8g/ L)の硫化ナトリウム水溶液からなる温度25℃ 水浴中に滞留時間が300秒になるように超音 照射下で浸漬した。
(2) 次いで、PVAフィルムを硫化ナトリウム水 液から水浴から取り出して、酢酸亜鉛の濃 が20mM(3.7g/L)の酢酸亜鉛水溶液と硫化ナトリ ムの濃度が10mM(0.8g/L)の硫化ナトリウム水溶 を1:1の体積比で混合した混合液(酢酸亜鉛の 濃度は1.85g/L、硫化ナトリウムの濃度は0.4g/L)( 熟成処理用液)(温度70℃)中に浸漬して、70℃ 1時間保持した後、PVAフィルムを前記混合液 ら取り出して、水、メタノールの順で洗浄 、50℃の熱風で乾燥して、硫化亜鉛微粒子 含有するPVAフィルムを製造した。

(3) 上記(2)で得られたPVAフィルムの外観は平 で良好であった。
 上記(2)で得られたPVAフィルムを厚さ方向に 断してその切断面を透過型電子顕微鏡(TEM) て写真撮影し、当該写真に基づいて、PVAフ ルム内に含まれる蛍光体微粒子(硫化亜鉛微 子)の平均粒径を上記した方法で求めたとこ ろ8nmであった。
(4) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに含 れる蛍光体微粒子の含有量を上記した方法 求めたところ、0.31質量%であった。
(5) さらに、上記(2)で得られたPVAフィルムに いて、200~800nmの波長域(紫外線~可視光線域) おける光透過率を上記した方法で測定した ころ、図3に示すように、400~760nmの波長域( 視光域)の平均透過率は99%であって、可視光 の透過率が高く透明性に優れていたが、波 300nmの紫外線の透過率は29.4%と高く、紫外線 遮蔽性に劣っていた。
(6) また、上記(2)で得られたPVAフィルムに320n mの励起波長(紫外線)を照射してその蛍光スペ クトルを測定したところ、図4に示すとおり あり、蛍光の発光強度が小さくて、目視で 蛍光の発光を確認することができなかった
430nm付近に青色蛍光発光に帰属される極大吸 が観察された。

《比較例3》
(1) 市販のナイロン繊維(ナイロン6繊維、単 維繊度2dtex)を、酢酸亜鉛の濃度が133mM(24.4g/L) の酢酸亜鉛水溶液150mLと酢酸マンガン(賦活剤 )の濃度が8mM(1.4g/L)の酢酸マンガン水溶液25mL 混合した混合液(酢酸亜鉛の濃度は20.9g/L、酢 酸マンガンの濃度は0.2g/L)よりなる温度25℃の 水浴中に滞留時間が600秒となるように浸漬し た後、引き続いて、硫化ナトリウの濃度が400 mM(31.2g/L)の硫化ナトリウム水溶液からなる温 25℃の水浴中に滞留時間が600秒になるよう 超音波照射下で浸漬した。
(2) 次いで、ナイロン繊維を硫化ナトリウム 溶液からなる水浴から取り出して、酢酸マ ガンを1モル%の量で添加してなる酢酸亜鉛 濃度が150mM(27.5g/L)の酢酸亜鉛水溶液と硫化ナ トリウムの濃度が150mM(11.7g/L)の硫化ナトリウ 水溶液を1:1の体積比で混合した混合液(酢酸 亜鉛の濃度は13.75g/L、酢酸マンガンの濃度は0 .13g/L、硫化ナトリウムの濃度は5.85g/L)(熟成処 理用液)(温度70℃)中に浸漬して、70℃で1時間 持した後、ナイロン繊維を前記混合液から り出して、水、メタノールの順で洗浄し、5 0℃の熱風で乾燥した。

(3) 上記(2)で得られたナイロン繊維に含まれ 蛍光体微粒子および賦活剤(マンン)の含有 を上記した方法で求めたところ、蛍光体微 子(マンガンも含む)の含有
量は0.02質量%であり、賦活剤であるマンガン ドープ率は亜鉛元素に対して0.13モル%であ た。
 また、上記(2)で得られたナイロン繊維を長 方向に直角に切断してその切断面を透過型 子顕微鏡(TEM)にて写真撮影したところ、ナ ロン繊維の内部での蛍光体微粒子の存在は 察されなかった。
 この比較例3の結果から、ナイロンなどのよ うな分子中に水酸基を持たない重合体の成形 体に対して本発明におけるような浸漬による 製造方法を適用しても、成形体内に蛍光体微 粒子が分散する成形体が得られないことがわ かる。

 上記した実施例1~7および比較例1~3の結果 まとめると、以下の表1に示すとおりである 。

 本発明の蛍光発色性PVA系樹脂成形体は、可 光下においては蛍光体微粒子の存在が視認 れず、紫外線照射下においては鮮明で強い 光を発する平均粒径50nm以下の蛍光体微粒子 を有し、しかもその蛍光体微粒子が分散され ていることから、可視光線の透過率が高くて 透明性に優れ、紫外線の透過率が低くて紫外 線遮蔽性に優れ、その上酸素をはじめとする 気体の表面吸着により蛍光発色性に変化を生 ずるため、紙幣、証券、機密文書、IDカード 商品タグなどにおける偽造防止、壁紙、カ ペット、衣類、ガラス中間膜やガラス貼着 用フィルムなどの紫外線遮蔽と装飾を兼ね える材料、気体の表面吸着を利用したセン ング材料などの用途に有効に使用すること できる。
 そして、本発明の製造方法によって前記し 蛍光発色性PVA系樹脂成形体を円滑に製造す ことができる。




 
Previous Patent: COPOLYMER

Next Patent: CHARGE PUMP TYPE BOOSTER CIRCUIT