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Title:
FLUORINE-CONTAINING ION EXCHANGE RESIN DISPERSED COMPOSITION
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/125695
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided is a fluorine-containing ion exchange resin dispersed composition having very low viscosity even when the fluorine-containing ion exchange resin concentration in the liquid composition wherein the fluorine-containing ion exchange resin has been dispersed is high due to concentration. Said composition includes water-containing solvent and fluorine-containing ion exchange resin having an equivalent mass of 400 to 1000 g/eq and comprising repeating units of formula (1) or formula (2). From 0.1 to 80 vol% of said fluorine-containing ion exchange resin has a particle size of 10 μm or above. (In the formula, Z is H, Cl, F or a perfluoroalkyl group having from 1 to 3 carbon atoms, m is an integer from 0 to 12, and n is an integer from 0 to 2.)

Inventors:
MURAI TAKAHIKO (JP)
KITA KOHEI (JP)
SAKAMOTO NAOKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/056650
Publication Date:
October 15, 2009
Filing Date:
March 31, 2009
Export Citation:
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Assignee:
ASAHI KASEI E MATERIALS CORP (JP)
MURAI TAKAHIKO (JP)
KITA KOHEI (JP)
SAKAMOTO NAOKI (JP)
International Classes:
C08J3/05; C08F214/26; H01B1/06; H01M4/86; H01M8/02; H01M8/10
Domestic Patent References:
WO2004005377A12004-01-15
Foreign References:
JP2005082749A2005-03-31
JP2000159965A2000-06-13
JP2001504872A2001-04-10
JP2006257423A2006-09-28
JPS4813333A
JPS57192464A1982-11-26
JP2001504872A2001-04-10
JP2005082749A2005-03-31
JP2005082748A2005-03-31
Other References:
See also references of EP 2264085A4
Attorney, Agent or Firm:
INABA, Yoshiyuki et al. (JP)
Yoshiyuki Inaba (JP)
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Claims:
 下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位からなり、かつ当量質量が400~1000g/eqである含フッ素イオン交換樹脂と、水を含む溶媒と、を含む含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物であって、
(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、mは0~12の整数であり、nは0~2の整数である。)
 前記含フッ素イオン交換樹脂における粒子径が10μm以上の樹脂の存在割合が0.1~80体積%である、分散組成物。
 前記分散組成物の粘度ηd(mPa・s)が、式(I):ηd≦exp(0.26×Cd)の範囲内にある、請求項1に記載の分散組成物(ここで、Cdは前記含フッ素イオン交換樹脂の濃度(質量%)を示す)。
 前記含フッ素イオン交換樹脂を15~45質量%含む、請求項1又は2に記載の分散組成物。
 前記含フッ素イオン交換樹脂前駆体のメルトフローレートが0.01~100g/10分である、請求項1~3のいずれか一項に記載の分散組成物。
 前記含フッ素イオン交換樹脂が前記式(2)においてn=0かつm=2の共重合体を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の分散組成物。
 請求項1~5のいずれか一項に記載の分散組成物を用いて作製される固体高分子型燃料電池用電解質膜。
 請求項1~5のいずれか一項に記載の分散組成物を用いて作製される固体高分子型燃料電池用ガス拡散電極。
 請求項6に記載の固体高分子型燃料電池用電解質膜及び/又は請求項7に記載の固体高分子型燃料電池用ガス拡散電極を備える燃料電池。
 下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位からなる共重合体を含む含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物の製造方法であって、
(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であり、mは0~12の整数であり、nは0~2の整数である。)
 水を50.1~99.9質量%、アルコール類を0.1~49.9質量%含有する混合溶媒に、当量質量が400~1000g/eqである前記含フッ素イオン交換樹脂を1質量%以上15質量%未満混合する工程、
 前記含フッ素イオン交換樹脂を含有する水性組成物を分散処理する工程、
 分散処理された前記水性組成物を含フッ素イオン交換樹脂濃度Cd(質量%)が15質量%以上45質量%以下となるように濃縮する工程、
を含む、分散組成物の製造方法。
 前記アルコール類がメタノール、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノールからなる群から選ばれる1種類以上のアルコールである、請求項9に記載の分散組成物の製造方法。
 220℃以下で分散処理する、請求項9又は10に記載の分散組成物の製造方法。
 前記含フッ素イオン交換樹脂が前記式(2)においてn=0かつm=2の共重合体を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の分散組成物の製造方法。
Description:
含フッ素イオン交換樹脂の分散 成物

 本発明は、含フッ素イオン交換樹脂の分 組成物及びその製造方法、並びに固体高分 型燃料電池用電解質膜、固体高分子型燃料 池用ガス拡散電極及び燃料電池に関する。

 近年、固体高分子型燃料電池の電解質膜及 電極は需要が大きくなっており、スルホン 型官能基を有する含フッ素イオン交換樹脂( 以下、単に「含フッ素イオン交換樹脂」と記 載する場合がある。)の分散組成物は、固体 分子型燃料電池用の電解質膜の製造や修理 触媒粒子を含む電極の製造等に使用されて る。
 イオン交換樹脂の分散組成物は、電解質膜 び電極の材料として取り扱いが容易となる うに、より高濃度な状態で粘度が低いこと 要求されている。

 スルホン酸型官能基を有する含フッ素イ ン交換樹脂の分散組成物としては、代表的 ものとしてNafion<登録商標>Dispersion Solut ion(米国DuPont社製)、Aciplex<登録商標>-SS(旭 化成ケミカルズ株式会社製)等が挙げられる スルホン酸型官能基を有する含フッ素イオ 交換樹脂の溶媒への分散性は極めて低いた 、これまで、含フッ素イオン交換樹脂を様 な技術により溶媒に分散させた分散組成物 提案されてきた。

 例えば、特許文献1には、アルコール中のス ルホン酸含有フルオロカーボン重合体の溶液 が開示されている。
 また、特許文献2には、1025~1500の範囲内の当 量重量を有するパーフルオロ化イオン交換重 合体の液体組成物が開示されている。
 さらに、特許文献3には、水又は水とベンゼ ンからなる分散媒体を用いて分散処理を行っ た高フッ素化イオン交換ポリマー粒子含有組 成物が開示されている。

 特許文献4には、分散機を用いて均質化す る方法により製造されるスルホン酸型パーフ ルオロ共重合体分散液が開示され、特許文献 5には、加熱加圧下、水中にて洗浄工程を実 したのちに分散処理を行う方法により製造 れるスルホン酸型パーフルオロ共重合体分 液が開示されている。

特公昭48-13333号公報

特開昭57-192464号公報

特表2001-504872号公報

特開2005-82749号公報

特開2005-82748号公報

 しかしながら、特許文献1,2,4及び5のいず の文献においても、具体的に開示している は、低濃度の含フッ素イオン交換樹脂を含 する分散組成物である。また、特許文献3に おいて具体的に開示しているのは、230℃を超 える高温の分散処理によって得られる分散組 成物である。

 含フッ素イオン交換樹脂は、分子骨格が フッ素化されているために極めて高い化学 耐久性を示し、過酷な条件で使用すること 可能である。その中でも当量質量の低い含 ッ素イオン交換樹脂を電解質膜及び電極の 料として用いると、プロトンの伝導性が高 なり、燃料電池として高い出力を得ること 可能となるため、低当量質量の含フッ素イ ン交換樹脂を原料とした高濃度かつ低粘度 分散組成物が切望されている。

 上記事情に鑑み、本発明が解決しようと る課題は、含フッ素イオン交換樹脂を分散 た液体組成物において、濃縮により含フッ イオン交換樹脂濃度を高めた場合でも、極 て低い溶液粘度を有する含フッ素イオン交 樹脂の分散組成物を提供することにある。

 本発明者らは、上記課題を解決するために 意検討した結果、特定の繰り返し単位から り、かつ当量質量が特定範囲にある含フッ イオン交換樹脂と、水を含む溶媒と、を含 含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物であ て、含フッ素イオン交換樹脂における粒径 10μm以上の樹脂の存在割合が特定範囲に調 された分散組成物が、上記課題を解決し得 ことを見出した。
 また、該分散組成物を用いることにより、 池運転を行った際の電流電圧特性にも優れ 燃料電池用のガス拡散電極を製造すること できることを見出し、本発明を完成させた

 即ち、本発明は、以下の含フッ素イオン交 樹脂の分散組成物及びその製造方法、並び 含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物を用 て作製される固体高分子型燃料電池用電解 膜及び固体高分子型燃料電池用ガス拡散電 を提供する。
[1]
 下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位からなり かつ当量質量が400~1000g/eqである含フッ素イ ン交換樹脂と、水を含む溶媒と、を含む含 ッ素イオン交換樹脂の分散組成物であって

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基であり、mは0~12の整数であり nは0~2の整数である。)
 前記含フッ素イオン交換樹脂における粒子 が10μm以上の樹脂の存在割合が0.1~80体積%で る、分散組成物。
[2]
 前記分散組成物の粘度ηd(mPa・s)が、式(I):ηd ≦exp(0.26×Cd)の範囲内にある、上記[1]に記載 分散組成物(ここで、Cdは前記含フッ素イオ 交換樹脂の濃度(質量%)を示す)。
[3]
 前記含フッ素イオン交換樹脂を15~45質量%含 、上記[1]又は[2]に記載の分散組成物。
[4]
 前記含フッ素イオン交換樹脂前駆体のメル フローレートが0.01~100g/10分である、上記[1]~ [3]のいずれかに記載の分散組成物。
[5]
 前記含フッ素イオン交換樹脂が前記式(2)に いてn=0かつm=2の共重合体を含む、上記[1]~[4] のいずれかに記載の分散組成物。
[6]
 上記[1]~[5]のいずれかに記載の分散組成物を 用いて作製される固体高分子型燃料電池用電 解質膜。
[7]
 上記[1]~[5]のいずれかに記載の分散組成物を 用いて作製される固体高分子型燃料電池用ガ ス拡散電極。
[8]
 上記[6]に記載の固体高分子型燃料電池用電 質膜及び/又は上記[7]に記載の固体高分子型 燃料電池用ガス拡散電極を備える燃料電池。
[9]
 下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位からなる 重合体を含む含フッ素イオン交換樹脂の分 組成物の製造方法であって、

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基であり、mは0~12の整数であり nは0~2の整数である。)
 水を50.1~99.9質量%、アルコール類を0.1~49.9質 %含有する混合溶媒に、当量質量が400~1000g/eq である前記含フッ素イオン交換樹脂を1質量% 上15質量%未満混合する工程、
 前記含フッ素イオン交換樹脂を含有する水 組成物を分散処理する工程、
 分散処理された前記水性組成物を含フッ素 オン交換樹脂濃度Cd(質量%)が15質量%以上45質 量%以下となるように濃縮する工程、
を含む、分散組成物の製造方法。
[10]
 前記アルコール類がメタノール、エタノー 、1-プロパノール及び2-プロパノールからな る群から選ばれる1種類以上のアルコールで る、上記[9]に記載の分散組成物の製造方法
[11]
 220℃以下で分散処理する、上記[9]又は[10]に 記載の分散組成物の製造方法。
[12]
 前記含フッ素イオン交換樹脂が前記式(2)に いてn=0かつm=2の共重合体を含む、上記[9]~[11 ]のいずれかに記載の分散組成物の製造方法

 本発明により、含フッ素イオン交換樹脂 高い濃度で含有し、かつ低粘度である分散 成物を得ることができる。

実施例における分散組成物AS2、AS6、AS11 、及びAS13Fを動的光散乱光度計を用いて解析 た結果をプロットしたグラフである。

 以下、本発明を実施するための最良の形 (以下、本実施の形態)について詳細に説明 る。なお、本発明は、以下の実施の形態に 定されるものではなく、その要旨の範囲内 種々変形して実施することができる。

 本実施の形態の含フッ素イオン交換樹脂の 散組成物(以下、単に「分散組成物」と記載 する場合がある。)は、
 下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位からなり かつ当量質量が400~1000g/eqである含フッ素イ ン交換樹脂と、水を含む溶媒と、を含む含 ッ素イオン交換樹脂の分散組成物であって

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基であり、mは0~12の整数であり nは0~2の整数である。)
 前記含フッ素イオン交換樹脂における粒子 が10μm以上の樹脂の存在割合が0.1~80体積%で る。

 本実施の形態の分散組成物は、上記構成 有することにより、濃縮により樹脂濃度を めた場合であっても、粘度が低く均質な状 を保つことができる。また、樹脂濃度が高 ことにより、該分散組成物を用いて溶液キ スティング法による膜形成を行う際には、 り短時間で溶媒を除去することが可能とな 電解質膜の生産性を向上させることができ 。さらに、低粘度であることにより、電極 製時の触媒粒子の分散性に優れるため、燃 電池の発電特性を高めることができる。

(含フッ素イオン交換樹脂)
 本実施の形態において用いる含フッ素イオ 交換樹脂は、下記式(3)で表されるフッ化オ フィンのモノマーと下記式(4)で表されるフ 化ビニル化合物との共重合体を含む含フッ イオン交換樹脂前駆体を加水分解して得ら るものである。

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基である。)

(式中、mは0~12の整数であり、nは0~2の整数で り、Wは加水分解によりSO 3 Hに転換しうる官能基である。)
 ここで、加水分解によりSO 3 Hに転換しうる官能基Wとしては、特に限定さ ないが、例えば、SO 2 F、SO 2 Cl、SO 2 Br等が挙げられる。

 上記式(3)及び式(4)において、W=SO 2 F、Z=Fである共重合体を含む含フッ素イオン 換樹脂前駆体を用いることが好ましい。

 上記含フッ素イオン交換樹脂前駆体は、 知の手段により合成できる。例えば、含フ 素炭化水素等の重合溶剤を使用し、上記式( 3)で表されるフッ化オレフィン(以下、単に「 フッ化オレフィン」と記載する場合がある。 )と上記式(4)で表されるフッ化ビニル化合物( 下、単に「フッ化ビニル化合物」と記載す 場合がある。」)を充填溶解して反応させ重 合する方法(溶液重合)、含フッ素炭化水素等 溶媒を使用せず上記フッ化ビニル化合物そ ものを重合溶剤として重合する方法(塊状重 合)、界面活性剤の水溶液を媒体として、上 フッ化オレフィンと上記フッ化ビニル化合 とを充填して反応させ重合する方法(乳化重 )、界面活性剤及びアルコール等の助乳化剤 の水溶液に、上記フッ化オレフィンと上記フ ッ化ビニル化合物とを充填乳化して反応させ 重合する方法(ミニエマルジョン重合、マイ ロエマルジョン重合)、懸濁安定剤の水溶液 上記フッ化オレフィンと上記フッ化ビニル 合物とを充填懸濁して反応させ重合する方 (懸濁重合)等が挙げられる。本実施の形態 おいては、含フッ素イオン交換樹脂前駆体 して、いずれの重合方法で作成されたもの も使用することができる。

 上記溶液重合の重合溶剤に使用する含フ 素炭化水素としては、例えば、トリクロロ リフルオロエタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフ オロペンタン等の「フロン」と総称される 合物群を好適に使用することができる。

 本実施の形態においては、含フッ素イオ 交換樹脂の重合度の指標として、含フッ素 オン交換樹脂前駆体において温度270℃、オ フィス内径2.09mm、オリフィス長さ8mm、荷重2 .16kgで測定したメルトフローレートを使用す ことが好ましい。本実施の形態における含 ッ素イオン交換樹脂前駆体のメルトフロー ートは0.01g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以 がより好ましく、0.3g/10分以上がさらに好ま しい。また、本実施の形態における含フッ素 イオン交換樹脂前駆体のメルトフローレート は100g/10分以下が好ましく、50g/10分以下がよ 好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。 フッ素イオン交換樹脂前駆体のメルトフロ レートが0.01g/10分以上であることにより、本 実施の形態の分散組成物を容易に得ることが できる。また、得られた分散組成物の粘度が 低くなるため電解質膜作製時又は電極作製時 の取扱いが容易になる傾向にある。一方、メ ルトフローレートが100g/10分以下であること より、該分散組成物を用いて製造する電解 膜の強度が高くなる傾向にある。また、樹 の吸水性が抑制できるため、ガス拡散電極 バインダー原料として利用した際に燃料電 運転時のフラッディングを抑制し広範な発 条件にて良好な出力を得られる傾向にある

 含フッ素イオン交換樹脂前駆体は、押し出 機を用いてノズル、ダイ等で押し出し成型 ることができる。この成型方法、成型体の 状は、特に限定されないが、後述の加水分 処理及び酸処理において処理を早めるには 成型体が0.5cm 3 以下のペレット状であることが好ましいが、 重合後に得られたパウダー又はフレーク状の 樹脂であってもよい。

 本実施の形態における含フッ素イオン交 樹脂は、例えば上記含フッ素イオン交換樹 前駆体を塩基性反応液中に浸漬する等の方 により、加水分解処理を行うことによって 造することができる。

 加水分解処理に使用する塩基性反応液は 特に限定されないが、水酸化ナトリウム、 酸化カリウム等のアルカリ金属又はアルカ 土類金属の水酸化物の水溶液が好ましい。 溶液中のアルカリ金属又はアルカリ土類金 の水酸化物の含有量は、特に限定されない 、10~30質量%以下であることが好ましい。

 上記塩基性反応液は、メチルアルコール エチルアルコール等のアルコール類、アセ ン等のケトン類、ジメチルスルホキシド(以 下、「DMSO」と記載する。)、N、N-ジメチルア トアミド(以下、「DMAC」と記載する。)、N,N- ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と記載 る。)等の双極性溶媒等の膨潤性有機溶媒を 有することが好ましい。上記有機溶媒の含 率は、塩基性反応溶液の混合溶媒中の1~30質 量%以下であることが好ましい。

 加水分解処理における加水分解温度は、 水分解処理に用いられる溶媒種、溶媒組成 によって異なるが、加水分解温度を高くす ほど、処理時間を短くすることができ、含 ッ素イオン交換樹脂前駆体の取り扱い易さ 点で、20~160℃であることが好ましい。

 加水分解処理における反応時間としては、 記含フッ素イオン交換樹脂前駆体中の、官 基Wが、加水分解により全てSO 3 K又はSO 3 Naに転換するのに十分な時間反応させること できれば特に限定されないが、反応時間が0 .5~48hrであることが好ましい。

 本実施の形態における含フッ素イオン交 樹脂は、含フッ素イオン交換樹脂前駆体を 基性反応液中で加水分解処理した後、必要 応じて水等で洗浄を行った後に、酸処理を うことにより製造することができる。

 酸処理に使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸 の鉱酸類やシュウ酸、酢酸、ギ酸、トリフ オロ酢酸等の有機酸類であれば特に限定さ ない。また、酸処理に用いる酸の濃度も特 限定されない。この酸処理によって含フッ イオン交換樹脂前駆体はプロトン化され、S O 3 H体となる。その後、必要に応じて水等で洗 を行う。

 本実施の形態における含フッ素イオン交 樹脂は、下記式(1)及び式(2)の繰り返し単位 らなり、かつ当量質量が400~1000g/eqである樹 であれば特に限定されないが、

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基であり、mは0~12の整数であり nは0~2の整数である。)、
 前記式(2)におけるSO 3 H基を含む側鎖の構造が短い場合、得られる フッ素イオン交換樹脂の結晶性が向上し、 実施の形態の分散組成物から作製した電解 膜等の耐熱性や機械的強度に優れる傾向に るため、前記式(2)においてn=0かつm=2である 重合体を含むことが好ましい。

 また、含フッ素イオン交換樹脂は下記式( 5)で表される共重合体を含むことが好ましい

(式中、x、yは0≦x<1かつ0≦y<1であり、x +y=1を満たす正数、mは0~12の整数であり、nは0~ 2の整数である。)

 本実施の形態においては、上記化学式(5) nが0である含フッ素イオン交換樹脂を用い ことが電解質膜の強度の観点から好ましい

 本実施の形態における含フッ素イオン交 樹脂の当量質量は、400g/eq以上であり、450g/e q以上であることが好ましく、500g/eqであるこ がより好ましい。また、上限としては、1000 g/eqであり、950g/eq以下であることが好ましく 900g/eqであることがより好ましい。当量質量 が、1000g/eq以下であることにより発電性能に れる電解質膜等を得ることができ、400g/eq以 上であることにより吸水性が低く機械的強度 に優れる電解質膜等を得ることができる。こ こで、含フッ素イオン交換樹脂の当量質量は 、後述する実施例において記載された方法に 従って測定することができる。

(含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物)
 本実施の形態の分散組成物は、上述した含 ッ素イオン交換樹脂と、水を含む溶媒と、 含むものである。ここで、分散組成物中の フッ素イオン交換樹脂の含有量は、好まし は15~45質量%であり、より好ましくは17~43質 %であり、さらに好ましくは20~40質量%である 含フッ素イオン交換樹脂の含有量が15質量% 上であると、分散組成物を用いて電解質膜 び電極を作製する際に除去すべき溶媒量が なくなる傾向にあるため好ましい。一方、4 5質量%以下であると、得られる分散組成物の 度が経時的に安定であり、運搬、保管時に じる異常な粘度増大や部分的なゲル化を防 ことができる傾向にあるため好ましい。

 また、分散組成物中の水を含む溶媒の含 量は、好ましくは55~85質量%であり、より好 しくは57~83質量%であり、さらに好ましくは6 0~80質量%である。

 (含フッ素イオン交換樹脂の分散性)
 本実施の形態の分散組成物中の含フッ素イ ン交換樹脂の分散性は、動的光散乱光度計 用いて測定される粒子径分布によって判断 ることができる。
 分散組成物中の含フッ素イオン交換樹脂が 状構造を取っており、分散組成物中の粒子 粒径分布が存在し、粒子間に相関がないと 定すると、動的光散乱から求められる散乱 の時間相関関数G1(t)は式(II)によって表され 。ただし、式(II)及び式(III)中、Cは定数、Pi 粒径の分布関数、Diは並進拡散係数、nは溶 の屈折率、θは散乱角、λは入射光の波長、 tは時間である。
 さらに、式(II)中のDiは式(IV)により粒径diと 係している。ただし、式(IV)中、kはボルツ ン定数、Tは測定温度、ηは溶媒の粘度であ 。
 したがって、動的光散乱測定により得られ G1(t)を式(II)でフィッティングすることによ 、分散組成物中の粒子の粒径分布を求める とができる。

 しかし、実際には分散組成物中には様々な 径の粒子が多数存在しており、粒径分布を 意的に求めるのは困難である。そこで、分 組成物中には粒径0.5μm以下の粒子(以下、小 粒子と呼ぶ)、0.5μmから10μmの粒子(以下、中 子と呼ぶ)、10μm以上の粒子(以下、大粒子と ぶ)の3種類の粒子のみが存在していると考 て解析を行う。すなわち、G1(t)を式(V)により フィッティングすることにより小粒子の粒径 d1、存在割合P1/(P1+P2+P3)、中粒子の粒径d2、存 割合P2/(P1+P2+P3)、大粒子の粒径d3、存在割合P 3/(P1+P2+P3)を求めることができる。ただし、フ ィッティングの際、D1、D2、D3の値は式(IV)に り求めた粒径d1、d2、d3がそれぞれ小粒子、 粒子、大粒子の粒径範囲に入るよう拘束を ける。
 上記解析には正確なG1(t)が必要である。測 の際にはG1(t)を精度よく測定できる条件を選 択する必要がある。
 以上の方法により10μm以上の分散粒子径を つ含フッ素イオン交換樹脂の割合、すなわ 、(P3)/(P1+P2+P3)を求めることが可能であるが この値は粘度と同様、分散液中の固形分に 存しており、固形分の異なる分散液同士で 較しても意味がない。そこで、固形分が10質 量%以上の場合には精製水で希釈し、また、10 質量%未満の場合には公知の方法で濃縮を実 して10質量%にした後に上記測定を行うこと する。

 本実施の形態の分散組成物においては、 述のようにして測定された大粒子の存在割 、すなわち含フッ素イオン交換樹脂におけ 粒子径が10μm以上の樹脂の存在割合が0.1~80 積%であり、好ましく5~75体積%であり、より ましくは10~60体積%である。一方、小粒子及 中粒子の存在割合、すなわち含フッ素イオ 交換樹脂における粒子径が10μ未満の樹脂の 在割合が20~99.9体積%であり、好ましくは25~95 体積%であり、より好ましくは40~90体積%であ 。

 このように特定の粒子径を有する樹脂の 適な存在割合の範囲がある理由としては、 下に述べる点が挙げられる。まず、粒子径 10μm以上の含フッ素イオン交換樹脂粒子の 在割合が80体積%以下であると、即ち、分散 中に小粒子及び中粒子の存在割合が多いと 濃縮等の工程により含フッ素イオン交換樹 の濃度を向上させた際においても、該イオ 交換樹脂のスルホン酸基同士が静電反発す ことによって粒子同士が再会合しないため 分散液の粘度を低く保つことができる。一 、大粒子の存在しない分散液から造膜した には、膜に亀裂が入り連続的な膜とならな が、粒子径が10μm以上の含フッ素イオン交換 樹脂粒子の存在割合が0.1体積%以上であると 本実施の形態の分散組成物から造膜した際 、亀裂の無い連続的な膜が得られる。これ 小粒子及び中粒子を、大粒子が糊の如く相 につなげることで応力を吸収しているから あると考えられる。

(含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物の粘 )
 本実施の形態の分散組成物の粘度ηd(mPa・s) 、含フッ素イオン交換樹脂濃度Cd(質量%)を いて表される式(I):ηd≦exp(0.26×Cd)を満たすこ とが好ましい。濃度に対する粘度が相対的に 低ければ、製膜時の樹脂濃度を向上させるこ とができるため、粘度範囲は、好ましくはηd ≦exp(0.25×Cd)を満たし、より好ましくはηd≦ex p(0.24×Cd)を満たす。また、分散組成物の粘度 下限としては特に限定されないが、水の25 における粘度の値が0.89mPa・sであることから 、実質的に0.89mPa・s以上である。

 本実施の形態の分散組成物は、含フッ素 オン交換樹脂の含有率が低い場合には、水 同等の粘度であることから触媒の分散性は めて良好となり、また、該イオン交換樹脂 含有率を高くする場合には、取り扱いが可 な粘度範囲において均質な溶液状態を保っ ままで高濃度、すなわち含有される溶媒量 少なくできるほど、電解質膜を造膜する際 、溶媒を除去する乾燥工程を低温化、もし は短時間化することが可能となるため好ま い。

 本実施の形態の分散組成物は、ガス拡散 極を作製した際には触媒の表面を均一で極 て薄い含フッ素イオン交換樹脂で覆うこと 可能なため、発電時の抵抗が小さくなり結 として高い電流密度においても高い電圧を ることができる。

(含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物の製 方法)
 本実施の形態の下記式(1)及び式(2)の繰り返 単位からなる共重合体を含む含フッ素イオ 交換樹脂の分散組成物の製造方法は、

(式中、Zは、H、Cl、F又は炭素数1~3のパーフル オロアルキル基であり、mは0~12の整数であり nは0~2の整数である。)
 水を50.1~99.9質量%、アルコール類を0.1~49.9質 %含有する混合溶媒に、当量質量が400~1000eq/g である前記含フッ素イオン交換樹脂を1質量% 上15質量%未満混合する工程、
 前記含フッ素イオン交換樹脂を含有する水 組成物を分散処理する工程、
 分散処理された前記水性組成物を含フッ素 オン交換樹脂濃度Cd(質量%)が15質量%以上45質 量%以下となるように濃縮する工程、
を含む方法である。

 前記分散処理工程及び前記濃縮工程を含 分散組成物の製造方法により、分散組成物 粘度ηd(mPa・s)が、式(I):ηd≦exp(0.26×Cd)の範 内にある含フッ素イオン交換樹脂の分散組 物を製造することができる。

 本実施の形態における上記混合工程は、 フッ素イオン交換樹脂と上記の混合溶媒を 切な攪拌機を付した圧力容器中に加え混合 る。

 圧力容器内の空気は窒素等の不活性気体 予め置換しておくことが好ましい。この際 含フッ素イオン交換樹脂濃度を1~15質量%未 となるように混合することで、分散処理工 における含フッ素イオン交換樹脂を含む水 組成物の粘度を適切に制御することができ 。含フッ素イオン交換樹脂濃度は1質量%以上 であることが好ましく、2質量%以上であるこ がより好ましく、3質量%以上であることが らに好ましい。また、上限としては、15質量 %以下であることが好ましく、14質量%以下で ることがより好ましく、13質量%以下である とがさらに好ましい。

 分散処理工程においては、液の温度を好 しくは220℃以下とし、1~24hr加熱、攪拌する とによって分散することができる。分散処 時の温度は、100℃以上であることが好まし 110℃以上であることがより好ましく、120℃ 上であることがさらに好ましい。また、上 としては、220℃以下であることが好ましく 210℃以下であることが好ましく、200℃以下 あることがさらに好ましい。分散処理温度 100℃以上であれば含フッ素イオン交換樹脂 分散性が高まるため好ましく、分散処理時 圧力の観点から220℃以下であることが好ま い。

 本実施の形態において、含フッ素イオン 換樹脂の混合及び分散処理を行う圧力容器 材質としてはSUS304、SUS316、SUS329、SUS430、SUS4 44、ハステロイ<登録商標>、インコネル&l t;登録商標>、ステライト<登録商標>等 好適に用いられる。また、必要に応じて加 容器の中にガラス製やポリテトラフルオロ チレン(以下、「PTFE」と記載する。)製の内 を有するものや、圧力容器内壁がPTFE又はグ ラスライニング処理を施してある装置を用い てもよい。具体的には、耐圧硝子工業株式会 社製のTEM-D型装置等が挙げられる。ガラス製 PTFE製の内筒、又はグラスライニングを施し た圧力容器を用いて含フッ素イオン交換樹脂 の分散処理を行うと、圧力容器本体に含有さ れるFe、Ni等の成分から生じる金属イオンの 出を防ぐことができるため好ましい。該金 イオンが含有される分散組成物を用いて作 した電解質膜又は電極は、燃料電池運転中 発生する過酸化水素を起因とする化学的劣 への耐久性が大幅に低下するおそれがある これを防ぐためには、造膜又は電極作製後 塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸や酢酸、シュウ 等の有機酸による金属イオンの除去処理を う必要があり、製造工程が煩雑になるおそ がある。

 本実施の形態においては、分散処理後に共 蒸留や薄膜蒸留、限外ろ過等の公知の濃縮 程を行って含フッ素イオン交換樹脂を15質 %以上45質量%以下含む分散組成物を作製する また、濃縮工程において、分散組成物に対 て過大なせん断力を作用させると、分散組 物の粘度が上昇するおそれがあり、その場 は均質な濃縮液を得ることが難しい。よっ 、方法は特に限定されないが、静置、又は ん断速度が100sec -1 未満となるゆるやかな攪拌下における濃縮や ロータリーエバポレーター等を用いる濃縮工 程を行うことが好ましい。この工程において 実質的に溶媒が水のみからなる分散組成物に 変換されてもよいし、また何らかの溶媒を添 加して希釈した後に濃縮してもよい。このよ うにして得られた含フッ素イオン交換樹脂の 分散組成物に対して、同様の加熱加圧下にお ける分散処理工程を複数回実施し、さらに濃 縮工程を組み合わせることで、より高濃度で 粘度の低い分散組成物とすることが可能であ る。2回目以降の分散処理工程を行う際の含 ッ素イオン交換樹脂の濃度は1質量%以上が好 ましく、2質量%以上がより好ましく、3質量% 上がさらに好ましい。また、上限としては 40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより ましく、30質量%以下がさらに好ましい。

 本実施の形態において、分散組成物の含 ッ素イオン交換樹脂の濃度Cdは、15質量%以 が好ましく、17質量%以上がより好ましく、20 質量%以上がさらに好ましい。また、上限と ては、45質量%以下が好ましく、43質量%以下 より好ましく、40質量%以下がさらに好まし 。

 本実施の形態において、分散処理後又は 散処理に次ぐ濃縮工程後の分散組成物のろ を行うことで工程中に混入した塵等を取り くことができる。ろ材は特に限定されない ポリプロピレン、ポリエステル、ポリテト フルオロエチレン、セルロース等から選択 て用いることができる。孔径も特に限定さ ないが、0.5~100μmの範囲から選択して用いる ことができる。

 本実施の形態において、含フッ素イオン 換樹脂を混合、分散させる際には溶媒とし 水及びアルコール類を含む混合溶媒を用い 。

 本実施の形態におけるアルコール類とし は、アルコール類の沸点が低沸点であるこ から炭素数1~3のアルコールであることが好 しい。これらのアルコールは1種類で用いら れてもよいし、2種類以上を混合して用いて よい。具体的にはメタノール、エタノール 1-プロパノール、2-プロパノール等が挙げら 、メタノール、エタノールが好ましい。ア コール類を含有する溶媒を用いることで該 オン交換樹脂が膨潤しその結果として分散 せやすくなると考えられる。本実施の形態 おいて、上記アルコール類を用いることに り、より低温で分散処理を行うことができ 。

 本実施の形態において、アルコール類の 度は、水とアルコール類を含む混合溶媒に いて49.9質量%以下である。アルコール類の 度が49.9質量%以下であることにより分散組成 物の粘度を低くすることができるため、含フ ッ素イオン交換樹脂濃度を15質量%以上45質量% 以下の高い濃度で含有することができる。

 本実施の形態におけるアルコール類の濃 としては、好ましくは45質量%以下であり、 り好ましくは40質量%以下である。アルコー 類の濃度の下限は特に限定されないが、含 ッ素イオン交換樹脂の均一分散性を考える 、アルコール類の濃度は0.1質量%以上であり 、1.0質量%以上であることがより好ましく、10 .0質量%以上であることがさらに好ましい。

 本実施の形態において、水の濃度は、水 アルコール類を含む混合溶媒において50.1~99 .9質量%であるが、下限としては60質量%以上で あることが好ましく、上限としては99.0質量% 下であることが好ましく、90.0質量%以下で ることがより好ましい。

 本実施の形態の趣旨に反しない範囲で、 記混合溶媒にエチレングリコール、1,2-プロ ピレングリコール、1,3-プロピレングリコー 等のジオール系溶剤、DMSO、DMAC、DMF等の双極 性有機溶剤、含フッ素アルコール類、含フッ 素エーテル類を混合してもよく、その濃度は 混合溶媒全体において5質量%以下であること 好ましい。

 本実施の形態において、水とアルコール を含む上記混合溶媒を用いて分散処理工程 濃縮工程を組み合わせて、含フッ素イオン 換樹脂の分散組成物を製造することにより 45質量%の高濃度の分散組成物においてもな 液状で均質な状態を維持することが可能と る。

 本実施の形態において、液状とは25℃に けるE型粘度系による測定を実施した際に溶 の粘度が3000mPa・s以下であることを意味し 均質とは25℃においてゲル状物を含まないこ とを意味する。3000mPa・sを超える液体におい も、液体の温度を上昇させることで粘度を 下させることが可能だが、この場合はゲル 物を多く含む液体となり実用には供さない よって25℃における分散液の粘度の実質上 上限は3000mPa・sである。これは溶媒組成が含 フッ素イオン交換樹脂の分散性に大きな影響 を及ぼしていることの現れであり、上述した 動的光散乱光度計を用いて測定される粒子径 分布を測定することによって、従来の分散組 成物と本実施の形態における分散組成物に含 まれる樹脂の粒子径の違いを明らかにするこ とができる。

(固体高分子型電池用電解質膜)
 本実施の形態の含フッ素イオン交換樹脂の 散組成物を用いて作製されるイオン交換膜 、固体高分子型燃料電池用電解質膜(以下、 単に「電解質膜」と記載する場合がある。) して使用することができる。本実施の形態 おいて膜電極接合体(MEA)における電解質膜の 厚さは特に限定されないが、電解質膜の厚さ は50μm以下であることが好ましい。電解質膜 厚さが50μm以下であることにより、アノー とカソードに挟まれた電解質膜中では水蒸 量の濃度勾配を大きくすることができ、電 としての特性を高くすることができる。ま 、電解質膜の厚さが3μm以上であることによ 、短絡を起こすおそれを少なくすることが きる。電解質膜の厚さは3~40μmであることが より好ましく、5~30μmであることがさらに好 しい。

 本実施の形態は、上記分散組成物を用い 製造する固体高分子型燃料電池用電解質膜 製造方法にも関する。固体高分子型燃料電 用電解質膜の製造方法としては、シャーレ の容器に高分子電解質含有溶液を展開し、 要に応じてオーブン等の中で加熱すること より溶媒を少なくとも部分的に留去した後 容器から剥がす等して膜状体を得る方法が る。また、ガラス板又はフィルム等に高分 電解質含有溶液を厚みが均一になるように ブレード、エアナイフ又はリバースロール いった機構を有するブレードコーター、グ ビアコーター又はコンマコーター等の装置 よって膜厚を制御しながらキャスト成膜し 枚葉の塗工膜とすることもできる。また、 続的にキャストして連続成膜し、長尺のフ ルム状の膜にすることもできる。

 上記フィルムとしては、特に限定されな が、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポ エチレンブタレート(PBT)、ポリエチレンナフ タレート(PEN)及び液晶ポリエステル類を含む リエステル、トリアセチルセルロース(TAC) ポリアリレート、ポリエーテル、ポリカー ネート(PC)、ポリスルホン、ポリエーテルス ホン、セロファン、芳香族ポリアミド、ポ ビニルアルコール、ポリエチレン(PE)、ポリ プロピレン(PP)、ポリビニルクロライド(PVC)、 ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-ブタジ ン-スチレン共重合体(ABS)、ポリメチルメタ リレート(PMMA)、ポリアミド、ポリアセター (POM)、ポリフェニレンテレフタレート(PPE)、 ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェ レンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド(P AI)、ポリエーテルアミド(PEI)、ポリエーテル ーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PI)、ポリメ チルペンテン(PMP)、ポリテトラフルオロエチ ン、(PTFE)、フッ素化エチレン-プロピレン(FE P)、テトラフルオロエチレン-エチレン(ETFE)コ ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、リベ ンザゾール(PBZ)、ポリベンズオキサゾール(PBO )、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンズイ ミダゾール(PBI)及びポリパラフェニレンテレ タルイミド(PPTA)等から選択して用いること できる。

 また、高分子電解質含有溶液をダイから し出して成膜する押出し成膜方法も可能で 押出し成膜法によっても枚葉又は長尺の膜 することが可能である。さらには、スプレ 等で剥離性のある支持体中に析出させ、乾 して成膜し、さらに必要に応じ、加熱プレ 等により圧密化して成膜してもよい。

 さらに、一度、キャスト又は押出し成膜 た膜を、後述する乾燥処理をする前にブレ ド又はエアナイフによって膜厚を再度制御 ることも可能である。

 また、成膜された膜中に存在する溶媒を 去する方法として、適正な溶液又は溶媒中 成膜後の膜を投入して脱溶媒する溶媒浸漬 等の方法を採ることもできる。

 上記した成膜方法は溶液の粘度やその他 性状に合わせて選択することができ、限定 れるものではない。また異なった成分比の 分子電解質含有溶液を自由な方法で多数回 膜した後積層し、多層状としてもよい。

 また、本実施の形態の分散組成物を用い ことにより、分散組成物に製膜助剤等の添 剤を添加することなく、電解質膜、触媒層 に製膜することができる。

(固体高分子型電池用膜電極接合体)
 本実施の形態において、膜電極接合体にお るガス拡散電極としての触媒層の厚さは特 限定されないが、触媒層の厚さは、触媒層 のガス拡散を容易にし、電池特性を向上さ る観点から、20μm以下であることが好まし 、さらに均一であることが好ましい。

 本実施の形態の含フッ素イオン交換樹脂 分散組成物を用いることにより、厚さ20μm 下の触媒層でも均一な厚さで形成すること できる。触媒層の厚さを薄くすると単位面 あたりに存在する触媒量が少なくなり反応 性が低くなるおそれがあるが、この場合は 媒として白金又は白金合金が高担持率で担 された担持触媒を用いれば、薄くても触媒 が不足することなく電極の反応活性を高く てる。上記観点から、触媒層の厚さは1~15μm あることがより好ましい。

 本実施の形態は、上記分散組成物を用い 製造する固体高分子型燃料電池用ガス拡散 極の製造方法にも関する。固体高分子型燃 電池用ガス拡散電極は、例えば、市販のガ 拡散電極の表面に含フッ素イオン交換樹脂 分散組成物を塗布した後、大気雰囲気中、1 40℃で乾燥・固定化することにより製造する とができる。

 本実施の形態の含フッ素イオン交換樹脂 分散組成物と、触媒金属粒子がカーボン担 に担持された触媒粉末と、を含む塗工液を 製し、該塗工液を基材上に塗工することに りアノード及びカソードの少なくとも一方 触媒層を形成することができる。この方法 得られる触媒層は、割れ等の欠陥が少なく 滑性に優れる。触媒層は塗工液を塗工後、 媒(分散媒)を除去することにより形成され ため、電解質としてのみではなく触媒のバ ンダーとしても機能するイオン交換体ポリ ーの強度が向上することによって、触媒層 割れを防止することができる。

 塗工液には、さらに溶媒を加えてもよい 加える溶媒としてアルコール類や含フッ素 媒又は水が好ましい。好ましくは、アルコ ル類が挙げられ、主鎖の炭素数が1~4のもの 好ましく、例えば、メタノール、エタノー 、n-プロパノール、イソプロパノール、tert- ブタノール等が挙げられる。また、アルコー ルに水を混合すると含フッ素イオン交換樹脂 の溶解性を上げることもできる。含フッ素溶 媒としては、例えば、2H-パーフルオロプロパ ン、1H,4H-パーフルオロブタン、2H,3H-パーフル オロペンタン、3H,4H-パーフルオロ(2-メチルペ ンタン)、2H,5H-パーフルオロヘキサン、3H-パ フルオロ(2-メチルペンタン)等のヒドロフル ロカーボン類、パーフルオロ(1,2-ジメチル クロブタン)、パーフルオロクタン、パーフ オロヘプタン、パーフルオロヘキサン等の ルオロカーボン類、1,1-ジクロロ-1-フルオロ エタン、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ジクロロエタ 、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロ ン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプ パン等のヒドロクロロフルオロカーボン類 1H,4H,4H-パーフルオロ(3-オキサペンタン)、3- トキシ-1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン等 の含フッ素エーテル類、2,2,2-トリフルオロエ タノール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパ ール、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノ ル等の含フッ素アルコール類等が挙げられ 。

 本実施の形態において、塗工液の固形分 度は、目的とする触媒層の厚さに合わせて 宜選択でき、特に限定されないが、均一な 工層を形成するために、全質量に対する質 比で1~50質量%とすることが好ましく、5~35質 %とすることがより好ましい。上記塗工液を 塗工する基材は、イオン交換膜であってもよ いし、触媒層の外側に配置され集電体として も機能するガス拡散層であってもよい。また 、膜電極接合体の構成材料ではない別途用意 した基材であってもよく、この場合は触媒層 を膜と接合させた後に基材をはく離すればよ い。別途用意する基材としては特に限定され ないが、ポリエチレンテレフタレート、ポリ エチレンナフタレート、ポリプロピレン、ポ リエチレン、ポリメチルペンテン、ポリイミ ド、ポリフェニレンサルファイド、ポリテト ラフルオロエチレン等から選択された材質の フィルムを用いることができる。

 本実施の形態において、膜電極接合体の 造方法としては、例えば、(1)上記塗工液を 体高分子電解質膜上に直接塗工した後、当 塗工液中に含まれる分散媒を乾燥除去して 媒層を形成し、両面からガス拡散層で挟み む方法、(2)カーボンペーパー、カーボンク ス又はカーボンフェルト等のガス拡散層と る基材上に上記塗工液を塗工し乾燥させて 媒層を形成した後、これを固体高分子電解 膜にホットプレス等の方法により接合する 法、(3)上記塗工液中に含まれる溶剤に対し 充分な安定性を示すフィルム(基材)上に上 塗工液を塗工し、これを乾燥し、固体高分 電解質膜にホットプレスした後、基材フィ ムを剥離し、ガス拡散層で挟み込む方法等 挙げられる。

 塗工方法は特に限定されないが、例えば バッチ式の方法としてはバーコータ法、ス ンコータ法、スクリーン印刷法等があり、 続式の方法としては後計量法と前計量法が げられる。後計量法は、過剰の塗工液を塗 し、後から所定の膜厚となるように塗工液 除去する方法である。前計量法は、所定の 厚を得るのに必要な量の塗工液を塗工する 法である。後計量法としては、エアドクタ ータ法、ブレードコーター法、ロッドコー 法、ナイフコータ法、スクイズコータ法、 浸コータ法、コンマコーター法等が挙げら 、前計量法としては、ダイコータ法、リバ スロールコータ法、トランスファロールコ タ法、グラビアコーター法、キスロールコ タ法、キャストコータ法、スプレイコータ 、カーテンコータ法、カレンダコータ法、 出コータ法等が挙げられる。均一な触媒層 形成するためには、スクリーン印刷法及び イコータ法が好ましく、生産効率を考慮す と連続式のダイコータ法がより好ましい。

 本実施の形態において触媒層に含まれる触 は、アノード側とカソード側とで同じでも なっていてもよいが、白金又は白金合金か なる金属触媒がカーボンに担持されたもの 好ましい。担体となるカーボンは金属触媒 分散性よくカーボン担体に担持され、長期 わたって安定した電極反応の活性に優れる め、比表面積が50~1500m 2 /gであることが好ましい。金属触媒としては 固体高分子型燃料電池におけるアノードで 水素酸化反応及びカソードでの酸素還元反 に対して高活性であるため白金からなる金 触媒であることが好ましい。電極触媒とし の安定性や活性をさらに付与できる場合も ることから白金触媒からなる金属触媒であ ことも好ましい。上記白金合金としては、 金以外の白金族の金属(ルテニウム、ロジウ ム、パラジウム、オスミウム、イリジウム) 金、銀、クロム、鉄、チタン、マンガン、 バルト、ニッケル、モリブデン、タングス ン、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、及びス からなる群から選ばれる1種以上の金属と白 との合金であることが好ましく、該白金合 には白金と合金化される金属と白金との金 間化合物が含有されていてもよい。

 アノードで一酸化炭素を含むガスが供給 れる場合は、白金とルテニウムとを含む合 を使用すると、触媒の活性が安定するため ましい。

 本実施の形態において、燃料電池用膜電 接合体には、カソードには酸素を含むガス アノードには水素を含むガスが供給される 具体的には、例えばガスの流路となる溝が 成されたセパレータを膜電極接合体の電極 外側に配置し、ガスの流路にガスを流すこ により膜電極接合体に燃料となるガスを供 し発電させる。また、燃料ガスとしてメタ ールを供給する直接メタノール型燃料電池 の膜電極接合体としても使用できる。

 本実施の形態の燃料電池は、電極接合体 備える燃料電池であり、上記電解質膜及び/ 又はガス拡散電極としての上記触媒層のいず れかを備える燃料電池である。また、上記電 解質膜と上記触媒層により製造される電極接 合体を備える燃料電池であることが好ましい 。

 本実施の形態の燃料電池は、上記分散組 物を用いて製造される電解質膜及び/又はガ ス拡散電極を備えることにより、高い起電力 を有する燃料電池とすることができる。

 本実施の形態において、燃料電池の単セル 性試験(電流密度1A/cm 2 )において、0.35Vの起電力を有する燃料電池と することができ、0.40Vの起電力を有すること 好ましく、0.45Vの起電力を有することがよ 好ましい。

 以下、本実施の形態を実施例及び比較例 よってさらに具体的に詳細に説明するが、 実施の形態はこれらの実施例のみに限定さ るものではない。なお、本実施の形態に用 られる評価方法及び測定方法は以下のとお である。

(1)含フッ素イオン交換樹脂の当量質量
 酸型の含フッ素イオン交換樹脂およそ0.02~0. 10gを50mLの25℃飽和NaCl水溶液(0.26g/mL)に浸漬し 攪拌しながら10分間放置した後、和光純薬 業社製試薬特級フェノールフタレインを指 薬として和光純薬工業社製試薬特級0.01N水酸 化ナトリウム水溶液を用いて中和滴定した。 中和後得られたNa型イオン交換膜を純水です いだ後、真空乾燥して秤量した。中和に要 た水酸化ナトリウムの当量をM(mmol)、Na型イ ン交換膜の質量をW(mg)とし、下記式より当 質量(g/eq)を求めた。
    当量質量=(W/M)-22

(2)含フッ素イオン交換樹脂前駆体のメルトフ ローレート(MFR)
 JIS K-7210に基づき、オリフィスの内径2.09mm 長さ8mmの装置を用いて温度270℃、荷重2.16kg 、含フッ素イオン交換樹脂前駆体のメルト ローレート(MFR、g/10分)を測定した。

(3)分散組成物中の含フッ素イオン交換樹脂濃 度
 乾燥した室温の秤量瓶の質量を精秤し、こ をW0とした。測定した秤量瓶に測定物を10g れ、精秤しW1とした。測定物を入れた秤量瓶 をエスペック株式会社製LV-120型真空乾燥機を 用いて温度110℃、絶対圧0.01MPa以下で3hr以上 燥した後、シリカゲル入りのデシケーター で冷却し、室温になった後に精秤しW2とした 。
 (W2-W0)/(W1-W0)を百分率で表し、5回測定し、そ の平均値を含フッ素イオンイオン交換樹脂濃 度とした。

(4)分散組成物の粘度
 東機産業株式会社製TV-33形粘度計・コーン レートタイプ(E型粘度計)及び1°34″×R24の標 コーンロータ(ロータコード01)を用い、温度 25℃、せん断速度76.6sec -1 にて測定時間2分経過後の値を粘度とした。

(5)分散組成物中のアルコール類濃度
 株式会社島津製作所製ガスクロマトグラフ 置G4000、及びジーエルサイエンス株式会社 製キャピラリカラムInertCap WAX(内径0.25mm、長 さ30m、膜厚0.25μm)を用いた。内部標準物質に 光純薬工業社製試薬特級1-ブタノールを用 、予めアルコール類との検量線を作成し、 散組成物1gと1質量%1-ブタノール水溶液1g及び 精製水18gを混合し測定サンプルとした。注入 口を200℃、水素炎イオン化検出器を210℃、オ ーブンを60℃に設定した後にマイクロシリン を用いて測定サンプルを1μL注入した。その 後直ちに10℃/分の速度でオーブンの温度を上 昇させた際に測定されるスペクトルからピー ク面積を求め、アルコール類の濃度を測定し た。

(6)分散組成物の粒子径分布
 動的光散乱光度計である大塚電子株式会社 ゼータ電位・粒径測定システムELS-Z2plus型装 置を用い、温度25℃にてディスポーザブルセ を用い、ピンホール50μm、LOG相関計使用、 動光量調整機能あり、ダストカットなし、 算回数500回の条件にて測定した散乱光の時 相関関数をG1(t)として、分散組成物中の粒子 径分布を求めた。

(7)燃料電池評価
 含フッ素イオン交換樹脂の分散組成物を原 として作製した電解質膜を用いた固体高分 型燃料電池の燃料電池運転評価は、2枚のガ ス拡散電極の間に電解質膜を挟み込み、160℃ 、圧力50kg/cm 2 でホットプレスすることによりMEAを作成して 行った。
 ガス拡散電極としては、米国DE NORA NORTH AM ERICA社製のガス拡散電極ELAT(登録商標)(Pt担持 0.4mg/cm 2 )を用いた。なお、電極触媒層は、ガス拡散 極の表面に含フッ素イオン交換樹脂の分散 成物を塗布した後、大気雰囲気中、140℃で 燥・固定化したものを使用して形成した(ポ マー担持量0.8mg/cm 2 )。
 このMEAを表面にガス流路を有するグラファ ト製のフランジの間に挟み込み、金属製の 料電池フレームで挟み込んだ評価セルに組 込んで評価装置にセットした。具体的には 上記MEAを燃料として水素ガス、酸化剤とし 空気ガスを用い、常圧、セル温度95℃にて セル特性試験(電圧0.65V 電流密度0.5A/cm 2 )を行った。ガス加湿には水バブリング方式 用い、水素ガス、空気ガスともに50℃で加湿 してセルへ供給した。

[実施例1]
 前記式(3)においてZ=Fであるフッ化オレフィ (CF 2 =CF 2 )と前記式(4)においてm=2、n=0、W=SO 2 Fであるフッ化ビニル化合物(CF 2 =CF-O-(CF 2 ) 2 -SO 2 F)との共重合体(MFR=3.0)からなる含フッ素イオ 交換樹脂前駆体を押し出し機を用いて、丸 金から270℃で押し出した後に切断し、直径2 ~3mm、長さ4~5mmの円柱状のペレットとした。こ の含フッ素イオン交換樹脂前駆体ペレット510 gを、KOH濃度15質量%及びDMSO濃度30質量%となる うにKOHとDMSOを添加して事前に調整したKOH水 溶液2460gに6時間浸漬し、含フッ素イオン交換 樹脂前駆体におけるSO 2 F基をSO 3 K基とした。
 上記の処理ペレットを60℃の1N-HCl 2500mLに6 間浸漬した後、60℃のイオン交換水(伝導度0. 06S/cm以下)で水洗、乾燥して、前記SO 3 K基がSO 3 H基となったプロトン交換基を有する含フッ イオン交換樹脂(当量質量=720g/eq)を得た。
 次にガラスの内筒を有するSUS304製の容量5L オートクレーブに、前記含フッ素イオン交 樹脂(含水率28.7質量%)120g、エタノール485g、 オン交換水949gをガラス内筒内に仕込み、内 とオートクレーブ内壁の間にエタノール70g イオン交換水140gを仕込んだ。ガラス内筒内 の液を攪拌しながら、162℃で4hrの分散処理を 実施した。加温とともにオートクレーブ内圧 が上昇し最大圧力は1.2MPaであった。冷却後に オートクレーブから取り出したところ、均一 で透明な含フッ素イオン交換樹脂の分散組成 物AS0を得た。AS0の組成は含フッ素イオン交換 樹脂5.0質量%、エタノール30.0質量%、水65.0質 %であった。
 続いて、上記分散組成物を500mLのナスフラ コに350g仕込み、BUCHI社製ロータリーエバポ ーターR-200を用いて80℃にて40rpmで回転させ がら0.04MPaの減圧度において共沸蒸留によっ 含フッ素イオン交換樹脂濃度が15質量%とな まで濃縮を行い、分散組成物AS1を得た。AS1 組成は含フッ素イオン交換樹脂15.0質量%、 タノール0.4質量%、水84.6質量%であった。ま 、10μm以上の粒子径を有する大粒子の割合は 42体積%であった。

[実施例2]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が20質量%とな まで濃縮を行う以外は実施例1と同様にして 分散組成物AS2を得た。AS2の組成は含フッ素イ オン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、 水80.0質量%であった。また、10μm以上の粒子 を有する大粒子の割合は42体積%であった。

[実施例3]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が25質量%とな まで濃縮を行う以外は実施例1と同様にして 分散組成物AS3を得た。AS3の組成は含フッ素イ オン交換樹脂25.0質量%、エタノール0.0質量%、 水75.0質量%であった。また、10μm以上の粒子 を有する大粒子の割合は42体積%であった。

[実施例4]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が30質量%とな まで濃縮を行う以外は実施例1と同様にして 分散組成物AS4を得た。AS4の組成は含フッ素イ オン交換樹脂30.0質量%、エタノール0.0質量%、 水70.0質量%であった。また、10μm以上の粒子 を有する大粒子の割合は42体積%であった。
 得られた分散組成物をシリコーン系離型剤 表面処理したポリエチレンテレフタレート( PET)フィルム上にダイコータを用いて乾燥後 30μmの厚みになるように塗工して、80℃にお て乾燥を行い、電解質膜を形成した。この 、電解質膜の形成に必要な乾燥時間は8分で あった。
 次に、得られた電解質膜と実施例1で得られ た分散組成物AS1を電極触媒層形成の材料とし て用いて上記(7)燃料電池評価に記載の方法で MEAを形成し、燃料電池特性試験を行った。そ の結果、電流密度1A/cm 2 にて0.46Vの非常に高い起電力が得られた。

[実施例5]
 AS1を原料としてガラス内筒内に1600g仕込み 内筒とオートクレーブ内壁の間にイオン交 水を225g仕込んだ。これをガラス内筒内の液 攪拌しながら、152℃で4hr処理し、均一な含 ッ素イオン交換樹脂の分散組成物を得た。
 続いて、上記組成物を500mLのナスフラスコ 350g仕込み、BUCHI社製ロータリーエバポレー ーR-200を用いて80℃にて40rpmで回転させなが 0.08MPaの減圧度において蒸留によって含フッ イオン交換樹脂濃度が30質量%となるまで濃 を行い分散組成物AS5を得た。AS5の組成は含 ッ素イオン交換樹脂30.0質量%、エタノール0. 0質量%、水70.0質量%であった。また、10μm以上 の粒子径を有する大粒子の割合は15体積%であ った。

[実施例6]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が40質量%とな まで濃縮を行う以外は実施例5と同様にして 分散組成物AS6を得た。AS6の組成は含フッ素イ オン交換樹脂40.0質量%、エタノール0.0質量%、 水60.0質量%であった。また、10μm以上の粒子 を有する大粒子の割合は15体積%であった。
 得られた分散組成物をシリコーン系離型剤 表面処理したポリエチレンテレフタレート( PET)フィルム上にダイコータを用いて乾燥後 30μmの厚みになるように塗工して、80℃にお て乾燥を行い、電解質膜を形成した。この 、電解質膜の形成に必要な乾燥時間は5分で あった。
 次に、得られた電解質膜と実施例5で得られ た分散組成物AS5を電極触媒層形成の材料とし て用いて上記(7)に記載の方法でMEAを形成し、 燃料電池特性試験を行った。スタート直後か ら一定の値を示し、安定していた。燃料電池 は300時間以上にわたって良好に運転すること ができた。また、電流密度1A/cm 2 にて0.47Vの非常に高い起電力が得られた。

[実施例7]
 実施例1で用いた含フッ素イオン交換樹脂( 水率28.7質量%)235g、エタノール497g、イオン交 換水941gをガラス内筒に仕込んで分散処理を う以外は実施例1と同様にして分散組成物を た。続いて500mLのナスフラスコに、上記分 組成物を200gとイオン交換水を200g仕込み、BUC HI社製ロータリーエバポレーターR-200を用い 80℃にて40rpmで回転させながら0.04MPaの減圧度 において共沸蒸留によって含フッ素イオン交 換樹脂濃度が20質量%となるまで濃縮を行い分 散組成物AS7を得た。AS7の組成は含フッ素イオ ン交換樹脂20.0質量%、エタノール0.0質量%、水 80.0質量%であった。また、10μm以上の粒子径 有する大粒子の割合は42体積%であった。

[実施例8]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が30質量%とな まで濃縮を行う以外は実施例7と同様にして 分散組成物AS8を得た。AS8の組成は含フッ素イ オン交換樹脂30.0質量%、エタノール0.0質量%、 水70.0質量%であった。また、10μm以上の粒子 を有する大粒子の割合は42体積%であった。

[実施例9]
 前記式(3)においてZ=Fであるフッ化オレフィ (CF 2 =CF 2 )と、前記式(4)においてm=2、n=1、W=SO 2 Fであるフッ化ビニル化合物(CF 2 =CF-O-(CF 2 CF(CF 3 )O)-(CF 2 ) 2 -SO 2 F)と、の共重合体(MFR=3.0、当量質量880g/eq)を含 フッ素イオン交換樹脂(含水率25.6質量%)とし 用いる以外は実施例1と同様にして分散組成 AS9を得た。AS9の組成は含フッ素イオン交換 脂15.0質量%、エタノール0.4質量%、水84.6質量 %であった。また、10μm以上の粒子径を有する 大粒子の割合は48体積%であった。

[比較例1]
 実施例1で用いた含フッ素イオン交換樹脂( 水率28.7質量%)140g、エタノール949g、水を908g して分散処理を行い含フッ素イオン交換樹 濃度が10質量%となるまで濃縮を行う以外は 施例1と同様にして分散組成物AS10を得た。AS1 0の組成は含フッ素イオン交換樹脂10.0質量%、 エタノール22.9質量%、水67.1質量%であった。 た、10μm以上の粒子径を有する大粒子の割合 は83体積%であった。

[比較例2]
 含フッ素イオン交換樹脂濃度が20質量%とな まで濃縮を行う以外は比較例1と同様にして 分散組成物AS11を得た。AS11の組成は含フッ素 オン交換樹脂19.9質量%、エタノール1.3質量% 水78.8質量%であった。また、10μm以上の粒子 径を有する大粒子の割合は83体積%であった。
 得られた分散組成物をシリコーン系離型剤 表面処理したポリエチレンテレフタレート( PET)フィルム上にダイコータを用いて乾燥後 30μmの厚みになるように塗工して、80℃にお て乾燥を行い、電解質膜を形成した。この 、電解質膜の形成に必要な乾燥時間は15分 あった。
 次に、得られた電解質膜と比較例1で得られ た分散組成物AS9を電極触媒層形成の材料とし て用いて上記(7)に記載の方法でMEAを形成し、 燃料電池特性試験を行った。その結果、電流 密度1A/cm 2 にて0.33Vの低い起電力しか得られなかった。

[比較例3]
 実施例1で用いた含フッ素イオン交換樹脂( 水率28.7質量%)140g、エタノール450g、水を408g して分散処理を行った。また、10μm以上の粒 子径を有する大粒子の割合は97体積%であった 。
 得られた分散液AS12はゲル状物を多く含み不 均一であったため、燃料電池特性試験に供す ることが可能な均質な電解質膜を作製するこ とができなかった。

[比較例4]
 実施例1で用いた含フッ素イオン交換樹脂( 水率28.7質量%)4.2g、水55.8gをガラスの内筒を するSUS304製の容量0.12Lのオートクレーブのガ ラス内筒に仕込み、内筒とオートクレーブ内 壁の間に水10gを仕込んだ。次いでガラス内筒 内の液を攪拌しながら、230℃で7hrの分散処理 を実施した。加温とともにオートクレーブ内 圧が上昇し最大圧力は2.7MPaであった。冷却後 にオートクレーブから取り出したところ、得 られた分散組成物AS13は膨潤したゲル状物を む液体であった。これをアドバンテック東 株式会社製ステンレスラインホルダーKS-47と ミリポア社製ポリプロピレンプレフィルター AN25(ポアサイズ2.5μm、フィルターサイズ47mmφ) を用いてろ過することで、ゲル状物を取り除 いた分散組成物AS13Fを得た。AS13Fの組成は含 ッ素イオン交換樹脂1.2質量%、水98.8質量%で った。また、10μm以上の粒子径を有する大粒 子の割合は0.0体積%であった。
 得られた分散組成物AS13Fをポリエチレンテ フタレート(PET)フィルム上にダイコータを用 いて乾燥後に30μmの厚みになるように塗工し 、80℃において乾燥を行い、電解質膜を形 したが、乾燥が進行するにしたがい電解質 に亀裂が発生した。乾燥が終了した15分後に は数mm角程度の小片になるまで亀裂が増加し ため、燃料電池特性試験に供することが可 な均質な電解質膜を作製することができな った。

 実施例1~9及び比較例1~4で得られた含フッ イオン交換樹脂の分散組成物の粘度を表1に 示す。また、動的光散乱光度計によって解析 した分散組成物中の粒子の大きさと、その存 在割合を表2に示す。なお、表2中、「小粒子 は粒径0.5μm以下の粒子、「中粒子」は0.5μm ら10μmの粒子、「大粒子」は10μm以上の粒子 である。

 表1の結果から、実施例1~9の含フッ素イオン 交換樹脂の分散組成物は、15質量%以上45質量% 以下の高濃度であるとともに、分散組成物の 粘度が上記式(I)の範囲にある低粘度の分散組 成物であった。
 一方、アルコール類を50質量%以上含有する 合溶媒を用いて製造した比較例1~4の含フッ イオン交換樹脂の分散組成物は、分散組成 の粘度が式(I)の範囲内にない分散組成物で った。特に、比較例2においては、含フッ素 イオン交換樹脂濃度を20質量%にまで濃縮でき るものであったが、不均一で粘度の高い分散 組成物であった。

 図1は、AS2、AS6、AS11、及びAS13Fを動的光散乱 光度計を用いて解析した結果をプロットした グラフであり、横軸は時間、縦軸は散乱光の 時間相関関数G1を示す。
 図1から、AS11に比較してAS2及びAS6は粒子径10 μm以上の成分に由来する1×10 4 μsecよりも長時間側のスペクトルが減少して ることがわかる。また、AS13Fでは1×10 4 μsecよりも長時間側のスペクトルは全く存在 ておらず、このことから粒子径10μm以上の 子の割合が0体積%であることが分かる。

 本出願は、2008年4月9日に日本国特許庁へ 願された日本特許出願(特願2008-101764)に基づ くものであり、その内容はここに参照として 取り込まれる。

 本発明の含フッ素イオン交換樹脂の分散 成物は、高い耐久性を実現できる固体高分 型燃料電池用の電解質膜及び電極の原料と ての産業上利用可能性を有する。