萬谷 志郎 (〒01 宮城県仙台市太白区八本松二丁目13番8号 Miyagi, 9820001, JP)
HINO, Mitsutaka (38-2, Chuo 1-chome Izumi-ku, Sendai-sh, Miyagi 00, 9813100, JP)
日野 光兀 (〒00 宮城県仙台市泉区中央一丁目38番2号 Miyagi, 9813100, JP)
吉澤石灰工業株式会社 (〒24 東京都中央区日本橋小舟町3-2 Tokyo, 1030024, JP)
BAN-YA, Shiro (13-8, Hachihonmatsu 2-chome Taihaku-ku, Sendai-sh, Miyagi 01, 9820001, JP)
萬谷 志郎 (〒01 宮城県仙台市太白区八本松二丁目13番8号 Miyagi, 9820001, JP)
HINO, Mitsutaka (38-2, Chuo 1-chome Izumi-ku, Sendai-sh, Miyagi 00, 9813100, JP)
| 低窒素、低酸素、かつ低イオウの鋼を製錬するためのフラックスであって、図1に示したMgO-CaO-Al 2
O 3
系ダイアグラムにおける、下記の表1に掲げる諸点A~Eを結ぶ五角形の範囲内にある、アルミナ活量の値が10 -2
以下である領域の組成を有する合成フラックス: 表1 |
| 図2に示したMgO-CaO-Al 2
O 3
系ダイアグラムにおける、下記の表2に掲げる諸点B、CおよびC’を結ぶ三角形の範囲内にある、アルミナ活量の値が10 -5
以下である領域の組成を有する請求項1の合成フラックス。 表2 |
| MgO、CaOおよびAl 2 O 3 各成分を請求項1または2に記載した組成で配合し、粒径5~20mmのペレットないしブリケットに造粒した合成フラックス。 |
| 低窒素、低酸素および低イオウの鋼を、フラックスを用いて製錬する方法であって、脱酸剤としてAlを使用し、そのAlから生じる酸化物がもたらす製錬フラックス中のAl 2 O 3 分の増大を加味して、少なくとも製錬の末期において請求項1または2に記載した組成のフラックスが実現するように、製錬当初のフラックス原料を配合して実施する製錬方法。 |
| 低窒素、低酸素および低イオウの鋼を製錬する方法であって、請求項1または2に記載したフラックスを使用し、真空脱ガスと組合わせて実施する請求項4の製錬方法。 |
本発明は、低窒素、低酸素および低イオウ の鋼を製錬するためのフラックスと、それを 使用した鋼の製錬方法に関する。
自動車用鋼板などの分野で、窒素、酸素お よびイオウの含有量を低くした高級清浄鋼の 需要が高まっている。よく知られているよう に、鋼の脱窒は主として真空脱ガスによって 行ない、脱酸は強力な脱酸剤であるAlやCaを 用して行ない、脱硫は製錬用フラックスの 分を調製することによって行なっている。
滓化が速やかであって脱硫および脱酸の能力 が高いフラックスとして、CaO:40~70%、Al 2 O 3 :10~30%、CaF 2 :10~30%を主成分とし、これに、MgO:0.5~5%、SiO 2 :0.5~5%およびAlF 2 :1~5%を添加したものを焼結して使用すること 提案された(特許文献1)。このフラックス成 中のCaF 2 は、いうまでもなく、融点を下げるはたらき があるが、フッ化物の使用は、環境に対する 配慮から、なるべく避けるようになって来て おり、CaF 2 を含有しないCaO-Al 2 O 3 系のフラックスが、低融点脱硫フラックスと して知られている。
出願人は、フラックス原料としてドロマイ トを使用することを企て、共同出願人ととも に、CaO/MgO=1.0~2.1の比率でCaOとMgOとを含む焼成 ドロマイト、および他のCaO源を加えてCaO/MgO=1 ~5の範囲とした脱硫フラックスを開発した(特 許文献2)。製錬フラックス中にMgOを存在させ ことは、従来も、耐火物の保護を目的に行 われてきた。マグネシアカーボン煉瓦など MgO系耐火物からMgO成分が溶融フラックス中 溶出し、その結果耐火物の溶損が進むこと 防ぐため、MgOを5~20%添加した組成のフラッ スが、使用された。
脱窒用のフラックスとしては、CaO:30~70%、Al 2
O 3
:70~30%およびCaC 2
:1~25%からなるものが提案されている(特許文
3)。CaC 2
は、脱酸剤として作用する。このフラックス
は製錬容器に挿入した溶湯の表面をスラグで
覆った後、被覆スラグ面に酸化性ガスを吹き
つけ、それと同時に吹き込むという方法で使
用する。変更態様として、この脱窒用フラッ
クスに2~20%のAlを添加して、脱酸作用を強化
たものもある。
本発明の目的は、鋼の製錬に使用するフラ ックスの成分を適切に選択することによって 、フッ化物を使用することなく、鋼中の酸素 、窒素およびイオウの含有量を低減した高度 に清浄な鋼の製造を可能にする、製鋼用のフ ラックスを提供することにある。このフラッ クスを用いて清浄な鋼を製錬する方法を提供 することも、本発明の目的に含まれる。
本発明の製鋼用のフラックスは、低窒素、低
酸素および低イオウの鋼を製錬するためのフ
ラックスであって、重量で、CaO:30~57%、Al 2
O 3
:35~64%およびMgO:5~17%からなり、かつ、図1に示
たMgO-CaO-Al 2
O 3
系ダイアグラムにおける、下記の表1に掲げ
諸点A~Eを結ぶ範囲内にある、アルミナ活量
値が10 -2
以下である領域の組成を有する合成フラック
スである。
表1
このフラックスを使用して鋼の製錬を行な うことにより、従来の製鋼技術において限界 とされていた鋼中の不純物量を大幅に下回る ものが得られる。すなわち、電気炉製鋼にお いて、フッ化物を含有しないフラックスを用 いた場合、酸素は10~15ppm、イオウは100ppmが壁 あったが、本発明により、この壁を破るこ ができた。具体的には、酸素は5ppm以下、イ オウは60ppm以下が実現可能である。窒素は通 60~80ppmであるが、真空脱ガスを併用するこ により、40ppm以下、好適な実施条件であれば 20ppm以下とすることができる。このようにし 、フッ化物の使用を避けたフラックスを用 ながら、従来よりも不純物の含有量が低い 清浄な鋼を得ることができる。
本発明のフラックスは、MgOを含有するため、 MgO系の耐火物の溶損防止にも寄与する。一方 で、CaF 2 のようなフッ化物を含有しないから、廃棄ま たは再利用に当たって、在来のフッ化物を使 用したフラックスと違ってフッの溶出を防止 する対策をとる必要がなく、路盤材や土地改 良材などにそのまま活用できる。
図1に示したMgO-CaO-Al 2 O 3 系ダイアグラムにおいて、アルミナ活量の値 が10 -2 以下であるのは、図のA点から左下に進んだ の左上側の領域である。一方、製鋼用フラ クスとしては、融点が、製錬温度であるお むね1600℃以下であることが求められる。結 、好ましいフラックス組成は、図1において 、上記した表1に掲げる諸点A~Eを結んで形成 れる五角形の範囲内のものである。参考ま に、表1のモル濃度基準の濃度に対応する質 基準の濃度を示せば、下記の表1の2に示す おりである。
表1の2
図1に示したMgO-CaO-Al 2 O 3 系におけるアルミナ活量の値を等活量線で表 わしたものが、図3である。この図から明ら なように、点BおよびC’を結ぶ線は、アルミ ナ活量の値が10 -5 以下であって、それより左上の領域は、本発 明の目的にとって、より好ましいフラックス 組成である。すなわち、図2において、下記 表2に掲げる諸点B、CおよびC’に囲まれた範 内の組成を有し、アルミナ活量の値が10 -5 以下である領域の組成を有する合成フラック スは好適である。とりわけ、C点近傍の組成 、最も好ましい。ここでも参考までに、表2 モル濃度基準の濃度に対応する質量基準の 度を示せば、下記の表2の2に示すとおりで る。
表2
以下、本発明のフラックスを用いて鋼の製 錬を行なったとき、いかにして高度に清浄な 鋼が得られるかという機構を説明するため、 鋼の製錬に関する理論を概観する。
まず脱酸にAlを使用することを前提としたと
、脱酸反応は式(1)で示され、
2[Al]+3[O]=Al 2
O 3
(s) (1)
その平衡定数Kは式(2)で示され、伊東らの研
によれば、その実験式は式(3)で表わされる(
特許文献1)。ここで、a Al2O3
はアルミナの活量値を示す。以下の式におい
て、[Al]などは溶鉄中の成分を意味し、(S 2-
)などはフラックス中の成分を意味する。
K=[%Al] 2
+[%O] 3
/a Al2O3
(2)
logK=-45,300/T+11.62(=2.72×10 -13
1873K) (3)
上記の式(2)および(3)から、
[%Al] 2
・[%O] 3
=2.72×10 -13
×a Al2O3
(4)
となり、Al脱酸を強化するためには、アルミ
活量a Al2O3
を、できるだけ小さくする必要があることが
わかる。
MgO-CaO-Al 2 O 3 中のa Al2O3 を測定した萬谷、日野らの結果(非特許文献2) は、図3に示したとおりである。このグラフ 、1873Kで、溶融スラグ域におけるAl 2 O 3 の等活量線を示したものであって、これによ れば、MgO、CaO飽和域付近においてa Al2O3 は最小値をとる。アルミナ活量が10 -2 以下の領域であっても、MgO-Al 2 O 3 飽和域付近では、鋼中に存在した場合、強度 に悪影響を及ぼすことのあるスピネル系非金 属介在物(MgO・Al 2 O 3 )が生成する可能性があるので、それを避け 、MgO-CaO飽和域付近のフラックス組成を選択 ることが望ましい。
式(4)にMgO、CaO飽和域付近のa Al2O3 =10 -6 を代入すると、1873Kにおいて[%Al] 2 ・[%O] 3 =2.7×10 -19 となり、[%Al]=0.01とすると、[%O]<5ppmは容易 達成できると推定される。
上記の傾向は、1873Kの上下50度ずつの温度、 まり1823Kおよび1923Kにおいても同じであるこ が判明したから、MgO-CaO-Al 2 O 3 のMgO、CaO飽和域付近のフラックス組成を使用 することにより、広い温度範囲にわたって低 酸素鋼を溶製可能であることがわかる。
つぎに、溶鉄の脱硫を示すサルファイド・キ
ャパシティー「Cs」は、式(5)にもとづき式(6)
ように定義され、この値が大きければ、フ
ックスの脱硫性能が高いということができ
。
(S 2-
)+1/2O 2
=(O 2-
)+(1/2)S 2
(5)
Cs=(%S)(PO2/PS 2
) 1/2
定義式 (6)
式(6)の対数をとると、式(7)となる。
logCs=log(%S)+1/2logPO2-1/2logPS 2
(7)
溶鉄中の酸素およびイオウと平行する酸素ガ
スおよびイオウガスの分圧は、それぞれ式(8)
および(9)で表わされる。
[O]=1/2O 2
(g): logPO2 1/2
/ao(%)=-5,835/T-0.354 (8)
[S]=1/2S 2
(g): logPs2 1/2
/as(%)=-6,535/T-0.964 (9)
式(8)および(9)から、溶鉄中のイオウとフラッ
クス中のイオウとの関係を示す指数である、
イオウ分配比「Ls」は、式(10)で表わされる。
logLs=log{(%S)/[%S]}=logCs-logas(%)-700/T+1.318 (10)
MgO-CaO-Al 2 O 3 系のCsおよびLsは、やはり萬谷・日野により 測定されている(非特許文献3)。図4に、1873K おけるMgO-CaO-Al 2 O 3 系の等Cs線を示す。これによれば、前記した 酸平衡と同様、MgO・CaO飽和域付近でCsは最 の値をとることがわかる。あわせて、図5にL sを示す。1873K、[%Al]=0.01の条件で、分配比(logL s)が最大の4.5近い値をとることが、図4からわ かる。
このように、Csが大きく、かつ[%O]が低いほど 脱硫が進み、MgO-CaO-Al 2 O 3 系スラグにおいて、MgO・CaO飽和域付近で、ス ラグ中のイオウは溶鉄中のイオウに対して、 30,000倍以上存在することが結論される。この ような条件は、従来の鋼の製錬の常識をくつ がえすものである。1873Kにおいて、MgO-CaO-Al 2 O 3 系フラックスを使用し、[%Al]=0.01の条件で製 を行なえば、[%S]<5ppmは十分実現可能なレ ルである。
溶鉄からの脱窒は萬谷らによって詳細に研究
され、式(11)が提案された(非特許文献4)。
-d[%N]/dt=(A/V)K N'
[%N] 2
(11)
K N'
は、式(12)で表わされる。
K N'
=3.15fN 2
{1/(1+300a 0
+130a S
)} (12)
ここで、V:溶鉄の体積(cm3)、A:ガス・メタル界
面積(cm 2
)
f:溶鉄中のNの活量係数(合金元素により
影響される)
a 0
,a S
:溶鉄中の酸素およびイオウの活量(表面活性
素の影響を受ける)
式(11)および(12)から、溶鉄中の酸素とイオ の存在は脱窒反応の速度を低下させ、限ら た時間内で所望の水準まで脱窒反応を進め ことを阻害していた。従来技術において脱 が困難であった理由は、溶鉄中の酸素とイ ウの除去が十分にできなかったためである 、本発明により、溶鉄中の酸素とイオウの 有量が低減できる結果、脱窒の障害が除か 、低い窒素含有量が可能になった。
従来技術により実現していた、溶鉄の真空処
理前および後の窒素量を対比して、図6に示
(非特許文献5)。これによれば、DH脱ガス、RH
ガスなどの真空脱ガス設備を用いて達成で
る脱窒率は、ようやく25%であり、処理後の
素含有量も、20ppmが限度とされていた。本
明は、この限界を突破したものである。
本発明の精錬用フラックスは、MgO、CaOおよび Al 2 O 3 各成分を所定の組成で配合し、粒径5~20mmのペ レットないしブリケットに造粒しておくと、 使用に好都合である。
本発明のフラックスを使用した鋼の製錬は、 脱酸剤としてAlを使用し、そのAlから生じるAl 2 O 3 がフラックスに加わるから、製錬中にフラッ クス組成が若干変動することが避けがたい。 その量はそれほど多量ではないから、無視し ても差し支えない場合が多いが、できればそ のAlから生じる酸化物がもたらす製錬フラッ ス中のAl 2 O 3 分の増大を加味して、少なくとも製錬の末期 において、所定の組成のフラックスが実現す るように、製錬当初のフラックス原料を配合 して製錬を実施することが好ましい。
本発明のフラックスを使用する鋼の製錬は 、転炉においても、また、取鍋精錬炉(LF)を む電気炉においても実施可能である。製錬 後期を還元条件下の操業とし、Arガスの底吹 きを行なうとよいから、ステンレス鋼製造の VODと組み合わせることができる。もちろん、 上吹き転炉操業にも適用可能である。
とくに脱窒に関していえば、本発明のフラッ
クスを使用する製錬を、従来からある脱ガス
法と組み合わせることが好ましい。既知の脱
ガス技術としては、上記のDH法、RH法のほか
LVD法やREDA法との組み合わせが可能である。
れらの脱ガス法は長時間の処理を必要とし
溶湯の温度低下が問題になる。そのような
合には、ASEA-SKF法、VAD法、LFによる真空また
はArバブリング下の製錬を選択するとよい。
実施例
容量130トンの電気炉で、スクラップを溶解 した。溶湯をLF(取鍋精錬炉)に移し、温度1600 台で時間40~60分間にわたって精錬し、機械 造用鋼の合金組成とした。つづいてRH精錬装 置にかけ、約30分間にわたり、脱ガスを行な た。本発明に従う種々の組成の合成フラッ スを、[生石灰+ドロマイト+アルミ灰ブリケ ト(アーモンド形状)]の配合により用意し、L F精錬に使用した。フラックスの添加量は、 鋼130トンに対し1.6トンである。
LF精錬の終了時に、溶鋼およびフラックス のイオウ量を測定するとともに、溶鋼中の オウに対するフラックス中のイオウの比(S)/ [S]で定義される「イオウ分配率」を算出した 。LF精錬における酸素量の変化も測定し、RH 錬による窒素量の低減効果も測定した。比 のため、在来のフッ化カルシウム(蛍石)を成 分とするフラックスの精錬も行なった。それ らの値を、フラックス組成およびLF精錬の条 と併せて、表3に示す。
本発明のフラックスを使用した場合、イオ ウ分配率(S)/[S]は、新たに用意したフラック では、安定して400近い値が得られる。在来 フラックスでもそれに近い値が得られてい が、これは蛍石を成分としたからであって 蛍石を含有しないフラックスでは、このよ な安定した値は得にくいことが経験された
