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Title:
FREQUENCY CONVERSION DEVICE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/063728
Kind Code:
A1
Abstract:
A signal processing unit (2) processes a digital signal from an AD conversion unit (1). The signal processing unit (2) includes a filter unit (4) and a memory unit (5) for accumulating filter coefficient data. An FIR filter (40) and an FIR filter (41) constituting the filter unit (4) update a filter coefficient with data supplied from the memory unit (5) during one sampling cycle. The FIR filters have frequency components whose amplitudes independently fluctuate as the time elapses. The FIR filter (40) and the FIR filter (41) have a common amplitude fluctuation cycle but have phases different by 90 degrees. The filter unit (4) outputs a difference or a sum of the two FIR filters.

Inventors:
ASHIHARA KAORU (JP)
KIRYU SHOGO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/069178
Publication Date:
May 22, 2009
Filing Date:
October 23, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NAT INST OF ADVANCED IND SCIEN (JP)
ASHIHARA KAORU (JP)
KIRYU SHOGO (JP)
International Classes:
H03H17/06; G10L21/013; G10L21/0324; H03H17/00; H03H17/02
Foreign References:
JPH09185392A1997-07-15
JPS6095599A1985-05-28
JPH04247732A1992-09-03
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Claims:
 デジタル入力信号を処理する信号処理部を有して、該デジタル入力信号の周波数成分に周波数変化を与える周波数変換を施して出力する周波数変換器において、前記信号処理部は、フィルタ部と該フィルタ部に供給するフィルタ係数データ供給部を有し、前記フィルタ部は、互いに位相が90度異なった共通の周波数成分から構成される実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタを有し、前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタは、時変フィルタであり、1サンプリング周期中にフィルタ係数が前記フィルタ係数データ供給部から供給されるデータで更新され、かつ、更新されることにより、それぞれのFIRフィルタを構成する各周波数成分の振幅が時間とともに独立に変動し、この振幅変動の周期は前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタに共通だが、位相が90度異なっており、前記フィルタ部は、前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタの出力信号の差あるいは和を出力することを特徴とする周波数変換器。
 時系列のアナログ音響信号をデジタル信号に変換するAD変換部を有して、該変換されたデジタル信号を前記信号処理部に入力し、かつ、前記フィルタ部から出力されるデジタル信号を時系列のアナログ音響信号に変換するDA変換部を備える請求項1に記載の周波数変換器。
 前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタを構成する各周波数成分の振幅変動の周期が任意に制御可能に構成した請求項1又は2に記載の周波数変換器。
 前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタの特性が、各周波数成分の振幅変動のタイミングが異なる少なくとも2種類のフィルタ特性をスムーズにクロスフェードさせた特性となる請求項1~3のいずれかに記載の周波数変換器。
 前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタの振幅周波数特性を任意に制御可能にして、その結果、前記フィルタ部がローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、櫛型フィルタなどとして使用できる請求項1~4のいずれかに記載の周波数変換器。
 前記フィルタ係数データ供給部は、記憶したフィルタ係数データを供給するメモリー部、或いはフィルタ係数を逐次算出するフィルタ係数演算部によって構成される請求項1~5のいずれかに記載の周波数変換器。
 入力信号の振幅スペクトルが周波数軸上で伸縮される変換が行われる音声のピッチ変換器、或いはピッチを変えることなく再生速度を変える話速変換器として用いられる請求項1~6のいずれかに記載の周波数変換器。
Description:
周波数変換装置

 本発明は、録音再生機器、カラオケ装置 電子楽器などにおいて、信号に任意の周波 変換を施す技術であるとともに、拡声装置 補聴器におけるハウリング低減方法として いられる周波数変換技術としても利用でき 話速変換装置の一部としても利用できる信 処理技術である。

 音声信号を扱う分野では、音声のピッチ 変換することが広く行われている。ピッチ 換は周波数変換の一形態である。例えばカ オケ装置などでは、生演奏や歌声の音程す わちピッチを制御する信号処理技術が普及 ている。音声信号のピッチは、信号の再生 度を変えることで操作できるが、再生速度 変えれば再生に要する時間長も変化してし う。このため、音声波形を時間軸方向に伸 した上で、データを間引く(削除する)、あ いは補間(挿入)することにより時間長を変え ることなくピッチを変換する方法(特許文献1) や、音声波形の周期的な部分から周期波形を 切り出してこれを伸縮し、必要な回数だけ繰 り返し再合成する方法(特許文献2)が広く知ら れている。

 しかし、もともと備わっているデータを削 したり、存在していないデータを挿入した すると本来のデータとの誤差が生じる。特 信号の周波数が高い場合、間引きや補間に る誤差が大きくなる。周期成分を切り出し 再合成する方法では、連結部分に不連続点 でき、再生信号にノイズが加わってしまう
 これらの欠点を補うには優れた信号補間技 を用いるか、連結しようとする2つの波形の 位相をそろえてからクロスフェードさせる技 術(特許文献3,4)のように複雑な信号処理が求 られる。

 時間波形上の誤差や不連続をともなわない 法としては、FFTなどの周波数分析を行い、 波数軸上でスケーリング操作を行ったのち 変換にて時間波形に戻すもの(特許文献5,6,7) があるが時間軸から周波数軸への変換と周波 数軸から時間軸への変換を要するため、信号 処理に伴う遅延が比較的大きくなってしまう 。
 カラオケ装置のピッチ変換以外にも音声信 の周波数変換は、拡声装置や補聴器のハウ ング低減方法にも利用できる(特許文献9,10)

 一方、無線通信の分野では、搬送波の周波 変換方法としてヒルベルト変換あるいはSSB( シングルサイドバンド)変調がしばしば用い れている(特許文献10,11)。これは信号を実部I (t) (In-phase成分)と、これと位相が90度異なる虚部 Q (t) (Quadrature成分)に分け、I (t) 、Q (t) にそれぞれcos(ωt)、sin(ωt)による振幅変調を し、実部I (t) からQ (t) を減算するもので、入力信号に周波数δf(Hz)= /2πに相当する周波数変化を与えることがで る(非特許文献1)。
 この手法は振幅変調によって信号周波数の サイドに生じる側帯波のうち、低域側か高 側のどちらか片方だけを残すことからシン ルサイドバンド変調あるいは片側変調と呼 れるものであり、実部と虚部をそれぞれ処 する2つのFIRフィルタと振幅変調のみで実現 できる。無線通信以外に光周波数変換方法と しても利用が試みられている(特許文献12,13)
 しかし、一般的なヒルベルト変換による周 数変換は、入力信号のすべての周波数成分 周波数軸上で一律の周波数幅だけ移動させ ものであり、周波数成分を一定の比率でシ トさせる音声のピッチ変換とは異なる。

 ヒルベルト変換は、音声等の瞬時周波数 エンベロープを抽出するためにも用いられ いる(特許文献14,15,16)。ヒルベルト変換を用 いて音声のピッチを変化させる手法としては 、特許文献17があるが、これはフィルタバン で帯域分割し、帯域ごとに搬送波の周波数 変える手法であり、帯域数を増やすのにと ない演算量が多くなってしまう。ヒルベル 変換により信号の絶対値(振幅情報)と位相 報を分離して位相だけを操作する手法が提 されている(特許文献18,19)が、サンプルごと 角速度を抽出するなど複雑な処理を要する のである。

 また、音声や音楽を扱う際には、振幅周波 特性の操作、いわゆるイコライジングが頻 に行われる。信号の再生速度を操作するピ チ変換器の場合、イコライジングを行うた には、ピッチ変換器とは別に振幅周波数特 を操作するイコライザーが必要になる。

特開平9-212193号公報

特開平9-258777号公報

特開2002-169556号公報

特開平5-297891号公報

特開平11-133996号公報

特開2006-64799号公報

特開平9-185392号公報

特開2007-258985号公報

特開昭60-28399号公報

特開平8-97751号公報

特開2007-67851号公報

特開2007-11125号公報

特開2004-85602号公報

特開2006-261787号公報

特開2000-181472号公報

特開平5-316597号公報

特開2003-330500号公報

特開平9-50293号公報

特開昭62-159196号公報 三上直樹,“はじめて学ぶディジタル・ ィルタと高速フーリエ変換,”CQ出版社,2005

 上述のとおり、音質劣化が少ない音声のピ チ変換器を実現するには複雑な信号処理が められるか周波数分析にともなう遅延が避 られない。また、ヒルベルト変換を音声等 ピッチ変換に用いる手法では、帯域分割や ッチ情報の抽出をともなう複雑な処理が要 される。
 本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、2つ のFIRフィルタだけで任意の周波数成分に任意 量の周波数変換を施すことのできる周波数変 換器及びピッチ変換器を提供することである 。さらに、FIRフィルタを用いることにより、 周波数の操作と同時に振幅周波数特性の操作 (イコライジング)も行える周波数変換器を提 することである。

 本発明の周波数変換器は、デジタル入力 号を処理する信号処理部を有して、該デジ ル入力信号の周波数成分に周波数変化を与 る周波数変換を施して出力する。前記信号 理部は、フィルタ部と該フィルタ部に供給 るフィルタ係数データ供給部を有し、前記 ィルタ部は、互いに位相が90度異なった共 の周波数成分から構成される実部用FIRフィ タ及び虚部用FIRフィルタを有する。前記実 用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタは、時 フィルタであり、1サンプリング周期中にフ ルタ係数が前記フィルタ係数データ供給部 ら供給されるデータで更新され、かつ、更 されることにより、それぞれのFIRフィルタ 構成する各周波数成分の振幅が時間ととも 独立に変動し、この振幅変動の周期は前記 部用FIRフィルタ及び虚部用FIRフィルタに共 だが、位相が90度異なっている。前記フィ タ部は、前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FI Rフィルタの出力信号の差あるいは和を出力 る。

 また、時系列のアナログ音響信号をデジ ル信号に変換するAD変換部を有して、該変 されたデジタル信号を前記信号処理部に入 し、かつ、前記フィルタ部から出力される ジタル信号を時系列のアナログ音響信号に 換するDA変換部を備える。前記実部用FIRフィ ルタ及び虚部用FIRフィルタを構成する各周波 数成分の振幅変動の周期が任意に制御可能に 構成する。

 また、前記実部用FIRフィルタ及び虚部用FIR ィルタの特性は、各周波数成分の振幅変動 タイミングが異なる少なくとも2種類のフィ ルタ特性をスムーズにクロスフェードさせた 特性となる。前記実部用FIRフィルタ及び虚部 用FIRフィルタの振幅周波数特性を任意に制御 可能にして、その結果、前記フィルタ部がロ ーパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンド パスフィルタ、櫛型フィルタなどとして使用 できる。前記フィルタ係数データ供給部は、 記憶したフィルタ係数データを供給するメモ リー部、或いはフィルタ係数を逐次算出する フィルタ係数演算部によって構成される。
 また、本発明の周波数変換器は、入力信号 振幅スペクトルが周波数軸上で伸縮される 換が行われる音声のピッチ変換器、或いは ッチを変えることなく再生速度を変える話 変換器として用いることができる。

 本発明により、入力信号を2つのFIRフィル タにとおし、2つのFIRフィルタの出力信号の あるいは和を求めるだけの簡単な信号処理 より、入力信号の任意の周波数成分に任意 の周波数変化を与える周波数変換器が得ら る。また、周波数変化幅を周波数に対して 定の比率にすれば入力信号に任意のピッチ 化を与えるピッチ変換器が得られる。

本発明による周波数変換器の構成例 本発明における信号処理部の構成例 ヒルベルト変換による一般的な周波数 換器の構成を示す図 周波数変化幅が一定の等幅周波数変換 理の模式図 周波数変化幅が周波数に対して一定比 になったピッチ変換処理の模式図 本発明のフィルタ部で用いる時変FIRフ ルタの特性変動を示す図 7-Aは、2kHzの正弦波信号のスペクトル( )と2kHzの正弦波に20%ピッチ変換を施した結果 得られた信号のスペクトル(右)、及び7-Bは、2 .4kHzの正弦波信号のスペクトル(左)と2.4kHzの 弦波に式1及び式2によるフィルタ係数を用い て20%ピッチ変換を施した結果得られた信号の スペクトル(右) 2.4kHzの正弦波に式1及び式2によるフィ タ係数を用いて20%ピッチ変換を施した結果 られた信号の波形 2.4kHzの正弦波に式4及び式5によるフィ タ係数を用いて20%ピッチ変換を施した結果 られた信号の波形 2.4kHzの正弦波に式1及び式2によるフィ タ係数と式4及び式5によるフィルタ係数を ロスフェードさせたフィルタ係数を用いて20 %ピッチ変換を施した結果得られた信号のス クトル ピッチ変換処理前の音声のスペクトル と処理後の音声のスペクトルの比較図 メモリー部の代わりにフィルタ係数演 算部を用いた周波数変換器の構成例

符号の説明

1 AD変換部
2 信号処理器
3 DA変換部
4 フィルタ部
40 FIRフィルタ
41 FIRフィルタ
42 FIRフィルタ
43 FIRフィルタ
5 メモリー部
6 フィルタ係数演算部
7 発信器

 本発明の実施形態について図1乃至図12を いて説明する。図1は、本発明によるピッチ 変換器の構成図である。入力される音響信号 は、AD変換部1にてデジタル化され信号処理部 2へ送られる。信号処理部2にはフィルタ部4と メモリー部5が含まれる。信号処理部2にて周 数変換された信号がDA変換部3にてアナログ 号に変換される。補聴器や拡声器へ実装す のであれば、マイクロホンなどからの信号 AD変換部1に入力され、DA変換部3からの出力 号がスピーカや受話器などのトランスデュ サに送られる。また、もともとデジタル化 れ、各種メディア等に記録されているデー に周波数変換を施すのであれば、AD変換部1 介さず、デジタル信号をそのまま信号処理 2に入力すればよい。

 図2は、本発明における信号処理部2の構 を示す図である。信号処理部は、フィルタ 4とメモリー部5から構成される。フィルタ部 4には、実部用FIR(Finite Impulse Response)フィル 40と虚部用FIRフィルタ41が含まれる。FIRフィ タ40及びFIRフィルタ41のフィルタ係数がメモ リー部から順次読み込まれることによってフ ィルタ特性が時間とともに変化する。

 FIRフィルタ40とFIRフィルタ41は、位相が90 異なった共通の周波数成分から構成される 変フィルタであり、1サンプリング周期中に フィルタ係数がメモリー部5から供給される ータで更新される。更新されることにより それぞれのFIRフィルタを構成する各周波数 分の振幅が時間とともに独立に変動する。 の振幅変動の周期はFIRフィルタ40とFIRフィル タ41に共通だが、位相が90度異なっている。 のフィルタ部4がFIRフィルタ40とFIRフィルタ41 の出力信号の差あるいは和を出力する。

 図3は、ヒルベルト変換を用いた一般的な周 波数変換器の構成図である。ヒルベルト変換 を用いる周波数変換では、FIRフィルタ42とFIR ィルタ43に共通の信号が入力される。2つのF IRフィルタの振幅周波数特性は共通だが、位 はすべての周波数において90度異なってい 。発信器7は位相が90度異なる2つの信号cos(ω (t) )とsin(ω (t) )を生成しており、FIRフィルタ42、FIRフィルタ 43のそれぞれの出力信号にcos(ω (t) )とsin(ω (t) )による振幅変調が施される。変調された信 の差を求めると入力信号をδf(Hz)=ω (t) /2πだけ周波数シフトした出力信号が得られ 。

 図3に示す一般的な周波数変換器は、入力 信号のすべての周波数成分を一律にδf(Hz)移 させる働きがある。FIRフィルタ42とFIRフィル タ43が、すべての周波数において1の利得をも つ全域通過フィルタのとき、この作用は図4 示されるとおりとなる。すなわち入力信号 すべての周波数成分は、その振幅を保った まで周波数軸上をδf(Hz)移動することになる

 これに対し図5は、音声等のピッチ変換器に 求められる作用を示す図である。図5に示さ るように音声等のピッチ変換では、入力信 の振幅スペクトルが周波数軸上で伸縮され ような変換が行われる。図5は、入力信号の ペクトルが周波数軸上で伸張された場合を いたものである。このとき個々の周波数成 は一律の周波数幅だけシフトされるのでは く、周波数に応じて一定の比率で等比的に 波数変換されている。
 本発明は、図3に示す周波数変換器と同等の 演算量で、図5に示すようなピッチ変換作用 実現するための信号処理方法及び当該方法 用いた周波数変換器を提供するものである

 周波数変化幅が等比的なピッチ変換を実現 るためのフィルタ部の処理について図6から 図12を用いて説明する。本発明において周波 ごとに独立した周波数変化を実現するには FIRフィルタを構成する各周波数成分にそれ れ独立した振幅変調を与える必要がある。 の結果、フィルタの特性は時々刻々と変動 るものとなる。ピッチ変換を行うのであれ 、振幅変調の周波数がフィルタを構成する 分の周波数に対して一定の比率になるよう 定する。よって、サンプリング周波数をf s 、フィルタを構成する周波数成分fに与える 幅変調の周波数をδf×f(Hz)、フィルタのタッ 長をnとすると、時間tにおけるFIRフィルタ i番目の係数I i は、式1にて得られる。
振幅変調の周波数をδf×fとすることにより、 周波数変化幅がfに対して一定の比率となる ッチ変換が行われる。

 このI i を実部用のフィルタ係数とするなら、虚部用 のフィルタ係数Q i は、
である。

 図6は、時間とともに変化するピッチ変換 用FIRフィルタの周波数特性の例である。この 例ではタップ長を128としたとき、時間tが0サ プルから255サンプルまで進むのに伴ってフ ルタを構成する各周波数成分の振幅がどの うに変化するかを示している。それぞれの ラフの横軸はフィルタを構成する周波数成 f(0から64)であり、縦軸は各成分の振幅を示 ている。

 例えば、f=64の成分は、時間tが4サンプル進 ごとに1回(360度)振幅変調されているが、f=32 の成分は、tが4サンプル進んでも1/2回(180度) か振幅変調されていない。したがって、信 のサンプリング周波数が8kHzなら、f=64の成分 は8000/4=2000Hz、f=32の成分はその半分の1000Hzだ 周波数がシフトされることになる。f=1の成 が1回振幅変調されるには256サンプルを要す るため、f=1の成分には8000/256=31.25Hzの周波数 化が与えられる。
 時間tが256に達してからは、t=0から255までの 特性を繰り返し利用できる。フィルタ係数デ ータは実部用と虚部用の2組必要なので、こ 例では、128個の係数データ×256セット×2のデ ータを蓄えられるメモリー容量が必要となる 。メモリー部に蓄えられるフィルタ係数デー タにはあらかじめ振幅変調が施されているた め、図3にみられる発信器は不要となる。

 このようにして周波数変化幅がフィルタを 成する成分の周波数に対して等比となるピ チ変換が行われる。なお、図6に示すのは1 のFIRフィルタの特性変化であり、これを実 用とするなら、これとペアで用いる虚部用 FIRフィルタの特性は、実部用で用いるフィ タとすべての周波数において90度位相が異な るものである。
 しかし、インパルス応答(タップ長)が有限 FIRフィルタを用いる本手法には限界がある 波長がFIRフィルタのタップ数の整数分の1に る周波数の信号なら問題ないが、そうでな 周波数の信号に対してピッチ変換を行うと 号の周波数の上下に側帯波が生じてしまう この問題を解決するための手法について、 7から図12を用いて説明する。

 図7-Aは、2kHzの正弦波を入力とし、式1及び 2で求めたフィルタ係数を用いて20%のピッチ 換を施した場合の処理前のスペクトル(左) 処理後のスペクトル(右)、図7-Bは、2.4kHzの正 弦波を入力とし、式1及び式2で求めたフィル 係数を用いて20%のピッチ変換を施した場合 処理前のスペクトル(左)と処理後のスペク ル(右)である。いずれもサンプリング周波数 f s を16kHz、FIRフィルタのタップ長nを1024とした 合の例である。20%のピッチ変換なので、δf 、
となり、f s =16000、n=1024なのでδf=3.125Hzである。

 図8は、2.4kHzの正弦波に式1及び式2で求め フィルタ係数を用いて20%のピッチ変換を施 た結果得られた波形ある。

 図7-Aでは、ピッチ変換後の信号にも大き 側帯波は生じていないが、図7-Bでは、ピッ 変換後の信号の周辺に大きな側帯波が生じ いる。このときの波形が図8である。サンプ リング周波数が16kHzのとき、2kHzの正弦波の周 期は8サンプルであり、FIRフィルタのタップ 1024の128分の1となる。これに対し、2.4kHzの正 弦波の周期は6.666・・・サンプルであり、FIR ィルタのタップ長の整数分の1にはならない 。このため、2.4kHzの周波数成分はFIRフィルタ においては隣接する複数の周波数成分に分解 される。隣接する2つの周波数成分には異な 周波数の振幅変調がかけられているため、 差が生じてしまう。図7-Bの例では、隣接す 2つの周波数成分の間で振幅変調の周波数が3 .125Hz異なっている。したがって5120サンプル とに360度の位相差が生じている。振幅変調 位相差が0度付近及び360度付近のときには大 な側帯波は生じないが、振幅変調の位相差 180度付近のときには大きな側帯波が生じて まう。

 上記の式1及び式2で求めたフィルタ係数を いた場合、ピッチ変換後の波形(図8)には、 ぼ5120サンプルの間隔で側帯波の影響がみら る。このとき用いたピッチ変換器を第1のピ ッチ変換器とすると、FIRフィルタに与える振 幅変調のタイミングを2560サンプル分ずらし 第2のピッチ変換器を用いて2.4kHzの正弦波に2 0%のピッチ変換処理を施すと図9の波形が得ら れる。このとき第2のピッチ変換器のフィル 係数は以下の式4及び式5にて求められる。

 図9は、式4及び式5において、δt=2560とし 求めたフィルタ係数を用いて得られた波形 ある。図8同様に一定の間隔で側帯波の影響 生じているが、図8の波形と図9の波形では 帯波の影響が2560サンプルずれた位置で顕著 なっている。この2つの波形から側帯波の影 響が少ない部分だけを連結するような処理を 行えば側帯波の影響を少なくすることが可能 である。つまり、式1及び式2を用いた第1のピ ッチ変換器と式4及び式5を用いた第2のピッチ 変換器の特性を一定周期ごとにスムーズにク ロスフェードさせた時変特性をもつFIRフィル タを用意すればよい。これを第3のピッチ変 器とする。

 図10は、第3のピッチ変換器にて2.4kHzの正 波に20%のピッチ変換処理を施した場合の処 前のスペクトル(左)と処理後のスペクトル( )である。図7-Bの右図と図10の右図を比較す とあきらかに側帯波が少なくなっているこ がわかる。

 第3のピッチ変換器によるピッチ変換処理 を施した音声信号の例を図11に示す。元の音 のスペクトル(上)とピッチを20%高くした後 スペクトル(下)である。矢印で示すように2.5 kHz付近にあったピークが20%のピッチ変換によ り3kHz付近まで移動していること、また、音 を著しく劣化させるような側帯波は生じて ないことがわかる。

 図6から図11では、周波数変化幅を周波数 対して一定の比率とするピッチ変換手法に いて説明したが、本発明は、周波数ごとに 立の周波数変化量を与えることを可能にす ものである。したがって、ピッチ変換以外 も、例えば特定の帯域の成分だけを周波数 化させたり、ピアノの調律のように、低域 より低く、高域はより高く周波数変化させ りするような特殊な用途にも有効である。

 本発明を用いれば、既存技術(特許文献14 15)のように入力信号の位相情報を抽出しな ても、実部用、虚部用の2つのFIRフィルタを 用いるだけでピッチ変換が可能になる。前述 の時変フィルタの特性を得るには、あらかじ め作成しておいたフィルタ係数をメモリー部 に蓄えておき、これを逐次読み出してフィル タ係数を更新するのが望ましいが、演算器を 用いてサンプル周期ごとにあらたなフィルタ 係数を求めて更新する方法でもよい。この場 合の構成は図12のようなものとなる。これは 1におけるメモリー部5をフィルタ係数演算 6に置き換えたものである。

 また、FIRフィルタを用いているので、周 数変換と同時に振幅周波数特性も自由に設 することができる。式1、式2及び式4、式5で 求められるフィルタ係数で、周波数ごとに任 意の係数をかけておけば、ローパスフィルタ 、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタ、 櫛形フィルタなどとしても使用できる。

 本発明の主な用途は、再生速度を変えず ピッチを変えることであり、歌声や生演奏 データにピッチ調節を施す場合や、補聴器 拡声器のハウリング低減方法の一部として いられるものである。しかし、これはピッ を変えることなく再生速度を変えるいわゆ 話速変換手段としても有効である。この場 は、再生速度を変えたことによって変化し ピッチをもとの高さに戻す手段として利用 ればよい。例えば、ボイスレコーダなどで 音したデータを録音時よりも短い時間で聞 場合など、高速再生してもピッチは元のま にすることが可能となる。

 以上、本発明の基本的な実施形態につい 説明したが、本発明はこれらの実施形態に 定されるものではない。本発明の要旨を逸 しない範囲内において、適宜の変更が可能 ものである。