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Patent Searching and Data


Title:
FUSED PROTEIN COMPRISING PROTEIN G WITH AVIDIN
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/130053
Kind Code:
A1
Abstract:
[PROBLEMS] To provide an anchor substance which makes it unnecessary to use any chemical binding method such as the coupling method in constructing a labeled antibody (an antibody having a label fixed thereto) to be used for detecting a target antigen and can sufficiently inhibit non-specific binding. [MEANS FOR SOLVING PROBLEMS] A fused protein which contains protein G or a protein comprising a part of the same with an avidin or a protein comprising a part of the same. The labeled antibody as described above contains IgG antibody, the fused protein as described above and a biotinylated label.

Inventors:
ISHIKAWA YUICHIRO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/057866
Publication Date:
October 30, 2008
Filing Date:
April 23, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SYNTHERA TECHNOLOGIES CO LTD (JP)
ISHIKAWA YUICHIRO (JP)
International Classes:
C12N15/09; C07K14/31; C07K14/465; C07K17/00; C07K19/00; C12N1/15; C12N1/19; C12N1/21; C12N5/00; C12P21/00; G01N33/53; G01N33/576
Domestic Patent References:
WO2006049289A12006-05-11
WO2006043675A12006-04-27
WO2006062200A12006-06-15
Foreign References:
JPH08205875A1996-08-13
JPS63503032A1988-11-10
JP2006132980A2006-05-25
JP2003517293A2003-05-27
Other References:
AKERSTROM B. ET AL.: "Definition of IgG- and Albumin-binding Regions of Streptococcal Protein G", J. BIOL. CHEM., vol. 262, 1987, pages 13388 - 13391, XP002969227
FREITAG S. ET AL.: "Structural studies of the streptavidin binding loop", PROTEIN SCIENCE, vol. 6, 1997, pages 1157 - 1166, XP002325362
Attorney, Agent or Firm:
ISSHIKI & CO. (12-7 Shinbashi 2-chome, Minato-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 プロテインG又はその一部からなるタンパク質と、単量体を形成しうるアビジン類の一部からなるタンパク質とを含んでなる融合タンパク質。
 アビジン類が、アビジン、ストレプトアビジン又はニュートラアビジンである、請求項1記載の融合タンパク質。
 プロテインGの一部からなるタンパク質が、IgG抗体のFc領域との結合活性を有するタンパク質である、請求項1記載の融合タンパク質。
 プロテインGの一部からなるタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、請求項1記載の融合タンパク質。
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつIgG抗体のFc領域との結合活性を有するタンパク質
 単量体を形成しうるアビジン類の一部からなるタンパク質が、ビオチンとの結合活性を有するタンパク質である、請求項1記載の融合タンパク質。
 単量体を形成しうるアビジン類の一部からなるタンパク質が、以下の(a)又は(b)のタンパク質である、請求項1記載の融合タンパク質。
(a)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号8に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつビオチンとの結合活性を有するタンパク質
 以下の(a)又は(b)のタンパク質。
(a)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むタンパク質
(b)配列番号10に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を含み、かつIgG抗体のFc領域との結合活性及びビオチンとの結合活性を有するタンパク質
 請求項1又は7記載のタンパク質をコードする遺伝子。
 以下の(a)又は(b)のDNAと、以下の(c)又は(d)のDNAとを含む遺伝子。
(a)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号5に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性を有するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号7に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつビオチンとの結合活性を有するタンパク質をコードするDNA
 以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
(a)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号9に示される塩基配列からなるDNAに対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性及びビオチンとの結合活性を有するタンパク質をコードするDNA
 請求項8~10のいずれか1項に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
 請求項11記載の組換えベクターを含む形質転換体。
 請求項12記載の形質転換体を培養する工程と、得られる培養物からIgG抗体のFc領域との結合活性及びビオチンとの結合活性を有するタンパク質を採取する工程とを含む、当該タンパク質の製造方法。
 IgG抗体、請求項1又は7記載の融合タンパク質、及びビオチン化標識物質を含んでなる、標識化抗体。
 標識物質がオリゴ核酸鎖である、請求項14記載の標識化抗体。
 IgG抗体と請求項1又は7記載の融合タンパク質とを含んでなる、抗体-融合タンパク質結合体。
 請求項1又は7記載の融合タンパク質とビオチン化標識物質とを含んでなる、融合タンパク質-標識物質結合体。
 請求項1又は7記載の融合タンパク質、請求項16記載の結合体、及び請求項17記載の結合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、抗体標識用キット。
 さらにIgG抗体及び/又はビオチン化標識物質を含む、請求項18記載のキット。
 被験試料に含まれる標的抗原を検出する方法であって、標的抗原と請求項14記載の標識化抗体とを接触させて抗原-抗体複合体を形成させる工程、及び当該複合体中の標識を検出する工程を含む、前記方法。
 標的抗原が複数種類であり、かつ、標識化抗体として当該標的抗原の種類に対応して識別し得るように標識処理された複数種類の標識化抗体を用いる、請求項20記載の方法。
 標的抗原がC型肝炎ウイルス抗原である、請求項20記載の方法。
 請求項14記載の標識化抗体を含む、標的抗原検出用キット。
 前記標識化抗体は、標的抗原の種類に対応して識別し得るように標識処理された複数種類の標識化抗体である、請求項23記載のキット。
 請求項16記載の結合体及びビオチン化標識物質、又は、請求項17記載の結合体及びIgG抗体を含む、標的抗原検出用キット。
 標的抗原がC型肝炎ウイルス抗原である、請求項23又は25記載のキット。
 表面がビオチン化された支持体、請求項1又は7記載の融合タンパク質、及びIgG抗体を含んでなる、抗体固定化支持体。
 被験試料中の標的抗原を回収する方法であって、被験試料と請求項27記載の支持体とを接触させる工程、及び当該接触後の前記支持体を回収する工程を含む、前記方法。
 請求項27記載の支持体を含む、抗原回収用キット。
 請求項1又は7記載の融合タンパク質と、表面がビオチン化された支持体とを含んでなる、融合タンパク質固定化支持体。
 被験試料中のIgG抗体を回収する方法であって、被験試料と請求項30記載の支持体とを接触させる工程、及び当該接触後の前記支持体を回収する工程を含む、前記方法。
 請求項30記載の支持体を含む、抗体回収用キット。
Description:
プロテインGとアビジン類との融 合タンパク質

 本発明は、プロテインGとアビジン類との 融合タンパク質に関する。詳しくは、プロテ インGが有するIgG抗体のFc領域に対する結合活 性と、ビオチンに対する結合活性とを合わせ 持つ組換えタンパク質に関する。

 抗体は、軟骨魚類よりも高等な生物が持つ 体防御因子の一つであり、イムノグロブリ (Ig)と呼ばれる場合もある。抗体は、体内に 侵入した異分子と結合して不活化するほか、 凝集作用によってマクロファージなどによる 貪食を促す、補体を活性化して標的タンパク を分解するなどの様々な機能を有している。
 抗体の大きな特徴の一つに「特定の抗原と み結合する」という基質特異性がある。生 内に進入する分子を攻撃して体を守る機能 担う抗体の基質特異性は非常に高く、また 質(=抗原物質)との結合力も強い。
 実験動物への免疫によって所望の物質と結 する抗体を作り出し、精製することが比較 容易に可能となったため、抗体を物質の捜 や検出に用いる方法、例えば免疫染色法、 ェスタンブロッティング法、ELISA法などが 々と考案され、研究に用いられた。また、 の後開発されたモノクローナル抗体の作製 により、さらに高度な検出法が考案され、 究のみならず臨床検査や病気の治療にも用 られるようになった。

 通常、抗体を用いた標的抗原の検出法は、 体に特定の物質を標識して行われる。標識 質としては、蛍光物質や放射性物質のよう 抗体の存在を直接又は間接的に確認するこ を可能にする物質や、西洋わさびペルオキ ダーゼ(HRP)等の酵素のように、抗原抗体反 後に添加した基質の分解に伴う発色又は発 を検出することで、標的抗原に結合した抗 の存在を確認することを可能にする物質が 択される。また、標識物質としてオリゴ核 鎖(DNAなど)を用い、より一層高感度に検出す る方法も開発されている(特許文献1)。
 ここで、抗体への標識化方法としては様々 ものが知られている。例えば、抗体に含ま るアゾ基(-N 2 )を用いたジアゾカップリング法や、抗体に まれるチオール基(-SH)と、標識物質が有する マレイミド基とをカップリング法で結合させ る方法などが広く用いられている。これらの 方法は、いずれも安価で操作も簡便であるな どの長所がある。しかしながら、標識化に際 し加水分解反応を伴うため、抗体分子が損傷 したり、標識物質が抗体の反応基(抗原結合 域)中のアゾ基やチオール基と結合してしま 抗原抗体反応が阻害又は抑制されたりする 合がある。また、抗体の構造や、標識物質 の結合時の条件(温度、pH、空気圧など)によ って、標識化の効率が低下する場合もある。

 ところで、タンパク質や化学物質同士を結 させる方法は、これまでに多数開発されて る。抗体に標識物質を結合する上でよく用 られる方法として、ビオチンとアビジンと 結合を用いた方法がある。ビオチンとアビ ンとの結合は、抗原抗体反応に比べて100万 以上の結合力を持ち、またその結合は実質 に不可逆的なものであるため、物質同士を びつけるアンカーとして非常に有用である
 また、一部の細菌及びウイルスにおいては 抗体のFc領域(末端部)などに高い特異性を持 って結合するタンパク質が合成されることが 知られている。このようなタンパク質として は、例えばプロテインAやプロテインGがよく られており、これらは抗体をプラスチック 質や他の物質に結合させる際に用いられて る。特にプロテインGは、ヒト、マウス及び ラット等の各種動物由来のIgG抗体に対して親 和性が高く、結合可能な条件も非常に広いと いう特性を有する。そのため、抗体を用いた 抗原検出法をデザインする場合において、抗 体の標識化や、支持体への抗体の固定化のた めに用いられることが多い。

 現在、ビオチンとアビジンとの結合、及び ロテインGと抗体との結合は、いずれも汎用 されており、抗体抗原反応の検出に利用され ている。しかしながら、抗体にアビジンやビ オチンを結合しておくためには、結局のとこ ろ、前述したカップリング法等の化学結合法 を用いる必要がある(生じる問題についても 述と同様)。またアビジンは、通常、多量体 して存在するため、互いの分子同士で非特 結合を生じるという問題がある。一方、プ テインGは、分子構造内にアルブミンとの結 合サイトも有しているため、例えば血液中の 各種成分と結合してバックグラウンドの原因 となることが知られている。

米国特許第5,665,539号公報

 そこで、本発明が解決しようとする課題は 標的抗原の検出法に用いる標識化抗体(抗体 に標識物質を固定した抗体)を作製するにあ り、カップリング法等の化学結合法を用い 必要がなく、かつ非特異結合を十分に抑制 ることが可能な、アンカー物質を提供する とにある。
 さらに、本発明は、上記アンカー物質を用 て作製した標識化抗体、当該抗体を使用し 標的抗原の検出方法、及び、当該抗体を含 標的抗原検出用キット等を提供することを 的とする。

 本発明者は、上記課題を解決するべく鋭 検討を行った。その結果、前記アンカー物 として、プロテインGとアビジン類との融合 タンパク質を作製し、この融合タンパク質を 抗体の標識化に用いれば、上記課題を容易に 解決できることを見出し、本発明を完成した 。

 すなわち、本発明は以下の通りである。
 (1) プロテインG又はその一部からなるタン ク質と、アビジン類又はその一部からなる ンパク質とを含んでなる融合タンパク質。
 本発明の融合タンパク質は、前記アビジン が、例えば、アビジン、ストレプトアビジ 又はニュートラアビジンであるものが挙げ れる。
 本発明の融合タンパク質は、プロテインGの 一部からなるタンパク質が、例えば、IgG抗体 のFc領域との結合活性を有するタンパク質で るものが挙げられ、具体的には、以下の(a) は(b)のタンパク質であるものが挙げられる
 (a)配列番号6に示されるアミノ酸配列からな るタンパク質
 (b)配列番号6に示されるアミノ酸配列におい て1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若 くは付加されたアミノ酸配列からなり、か IgG抗体のFc領域との結合活性を有するタンパ ク質
 本発明の融合タンパク質は、アビジン類の 部からなるタンパク質が、例えば、ビオチ との結合活性を有するタンパク質であるも が挙げられ、具体的には、以下の(a)又は(b) タンパク質であるものが挙げられる。
 (a)配列番号8に示されるアミノ酸配列からな るタンパク質
 (b)配列番号8に示されるアミノ酸配列におい て1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若 くは付加されたアミノ酸配列からなり、か ビオチンとの結合活性を有するタンパク質

 (2) 以下の(a)又は(b)のタンパク質。
 (a)配列番号10に示されるアミノ酸配列から るタンパク質
 (b)配列番号10に示されるアミノ酸配列にお て1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若 くは付加されたアミノ酸配列からなり、か IgG抗体のFc領域との結合活性及びビオチン の結合活性を有するタンパク質

 (3) 前記(1)又は(2)記載のタンパク質をコー する遺伝子。
 (4) 以下の(a)又は(b)のDNAと、以下の(c)又は(d )のDNAとを含む遺伝子。
 (a)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA
 (b)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA に対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA であり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性を するタンパク質をコードするDNA
 (c)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
 (d)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA に対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA であり、かつビオチンとの結合活性を有する タンパク質をコードするDNA

 (5) 以下の(a)又は(b)のDNAを含む遺伝子。
 (a)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA
 (b)配列番号9に示される塩基配列からなるDNA に対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA であり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性及 ビオチンとの結合活性を有するタンパク質 コードするDNA

 (6) 前記(3)~(5)のいずれかに記載の遺伝子を む組換えベクター。
 (7) 前記(6)記載の組換えベクターを含む形 転換体。
 (8) 前記(7)記載の形質転換体を培養する工 と、得られる培養物からIgG抗体のFc領域との 結合活性及びビオチンとの結合活性を有する タンパク質を採取する工程とを含む、当該タ ンパク質の製造方法。

 (9) IgG抗体、前記(1)又は(2)記載の融合タン ク質、及びビオチン化標識物質を含んでな 、標識化抗体。
 本発明の標識化抗体において、ビオチン化 れる標識物質としては、例えばオリゴ核酸 が挙げられる。

 (10) IgG抗体と前記(1)又は(2)記載の融合タン ク質とを含んでなる、抗体-融合タンパク質 結合体。
 (11) 前記(1)又は(2)記載の融合タンパク質と オチン化標識物質とを含んでなる、融合タ パク質-標識物質結合体。
 本発明の融合タンパク質-標識物質結合体に おいて、ビオチン化される標識物質としては 、例えばオリゴ核酸鎖が挙げられる。

 (12) 前記(1)又は(2)記載の融合タンパク質、 記(10)記載の結合体、及び前記(11)記載の結 体からなる群より選ばれる少なくとも1種を む、抗体標識用キット。
 本発明の抗体標識用キットとしては、例え 、さらにIgG抗体及び/又はビオチン化標識物 質を含むものが挙げられる。ここで、ビオチ ン化される標識物質としては、例えばオリゴ 核酸鎖が挙げられる。

 (13) 被験試料に含まれる標的抗原を検出す 方法であって、標的抗原と前記(9)記載の標 化抗体とを接触させて抗原-抗体複合体を形 成させる工程、及び当該複合体中の標識を検 出する工程を含む、前記方法。
 本発明の標的抗原検出方法としては、例え 、標的抗原が複数種類であり、かつ、標識 抗体として当該標的抗原の種類に対応して 別し得るように標識処理された複数種類の 識化抗体を用いる方法が挙げられる。ここ 、標的抗原としては、例えばC型肝炎ウイル ス抗原が挙げられる。

 (14) 前記(9)記載の標識化抗体を含む、標的 原検出用キット。
 本発明の標的抗原検出用キットは、前記標 化抗体が、例えば、標的抗原の種類に対応 て識別し得るように標識処理された複数種 の標識化抗体であるものが挙げられる。こ で、標的抗原としては、例えばC型肝炎ウイ ルス抗原が挙げられる。

 (15) 前記(10)記載の結合体及びビオチン化標 識物質、又は、前記(11)記載の結合体及びIgG 体を含む、標的抗原検出用キット。
 本発明の標的抗原検出用キットにおいて、 的抗原としては、例えばC型肝炎ウイルス抗 原が挙げられる。また、当該キットにおいて 、ビオチン化される標識物質としては、例え ばオリゴ核酸鎖が挙げられる。

 (16) 表面がビオチン化された支持体、前記( 1)又は(2)記載の融合タンパク質、及びIgG抗体 含んでなる、抗体固定化支持体。
 (17) 被験試料中の標的抗原を回収する方法 あって、被験試料と前記(16)記載の支持体と を接触させる工程、及び当該接触後の前記支 持体を回収する工程を含む、前記方法。
 (18) 前記(16)記載の支持体を含む、抗原回収 用キット。

 (19) 前記(1)又は(2)記載の融合タンパク質と 表面がビオチン化された支持体とを含んで る、融合タンパク質固定化支持体。
 (20) 被験試料中のIgG抗体を回収する方法で って、被験試料と前記(19)記載の支持体とを 接触させる工程、及び当該接触後の前記支持 体を回収する工程を含む、前記方法。
 (21) 前記(19)記載の支持体を含む、抗体回収 用キット。
〈 関連文献とのクロスリファレンス 〉
 なお、本出願は、2007年4月23日出願の日本国 出願番号特願2007-112779の優先権の利益を主張 、これを引用することにより本明細書に含 る。

(a)本発明の融合タンパク質の合成スキ ム及び構成を示す概略図、(b)本発明の融合 ンパク質を用いた標識化抗体の作製スキー の該略図である。符号1は、プロテインG中 IgG抗体Fc領域に対する結合部位を含む部分を 示し、符号2は、ストレプトアビジン中、ビ チンに対する結合部位を含む部分を示す。 本発明の融合タンパク質の合成スキー を示す概略図である。 本発明の融合タンパク質の構成成分と て用いるプロテインGの一部のアミノ酸配列 及び塩基配列の情報を示す図である。図中の 2つの矢印で挟まれた領域が、上記プロテイ Gの一部に相当する。 本発明の融合タンパク質の構成成分と て用いるストレプトアビジンの一部のアミ 酸配列及び塩基配列の情報を示す図である 2つの矢印で挟まれた領域が、上記ストレプ トアビジンの一部に相当する。 実施例におけるポリアクリルアミドゲ 電気泳動の結果を示す写真である。 実施例におけるhEGF抗原の検出結果を示 すグラフである。 実施例におけるhEGF抗原の検出結果を示 すグラフである。 実施例におけるhEGF抗原の検出結果を示 すグラフである。 実施例におけるHCV抗原の検出結果を示 グラフである。 実施例におけるHCV抗原の検出結果を示 すグラフである。 比較例におけるポリアクリルアミドゲ ル電気泳動の結果を示す写真である。 比較例におけるポリアクリルアミドゲ ル電気泳動の結果を示す写真である。 比較例におけるIL-15抗原の検出結果を すグラフである。

 以下、本発明を詳細に説明する。本発明 範囲はこれらの説明に拘束されることはな 、以下の例示以外についても、本発明の趣 を損なわない範囲で適宜変更し実施するこ ができる。

1.本発明の概要
 本発明者は、図1(a)の概略図に示すように、 プロテインGの一部からなるタンパク質と、 トレプトアビジンの一部からなるタンパク とを連結した融合タンパク質を作製した。 1(a)は、本発明の融合タンパク質の一態様の 成を示す概略図であり、該融合タンパク質 、プロテインGの一部1(すなわちIgG抗体のFc 域に対する結合部位を含む部分)と、ストレ トアビジンの一部2(すなわちビオチンに対 る結合部位を含む部分)とを構成成分として むものであることを示している。
 また図2では、本発明の融合タンパク質の合 成スキームを概略的に示している。具体的に は、まず、Bo AkerstromらによるプロテインGのI gG抗体Fc領域に対する結合部位の研究結果(J.  Biol. Chem., vol.262, p.13388-13391, 1987)、及び、We berによるストレプトアビジンの結晶構造解析 を用いたビオチンとの結合領域の解析結果(Pr oc. Natl. Acad. Sci. USA, vol.86, p.2190-2194, 1989) 基づいて、公知のデータベースから、プロ インG及びストレプトアビジンの各タンパク 質をコードする塩基配列情報を取得する。次 いで、取得した塩基配列情報から、各タンパ ク質の基質(IgG抗体Fc領域、ビオチン)結合部 を含む部分をコードする塩基配列領域を選 し、公知の遺伝子クローニング法により当 塩基配列を有するcDNA断片の調製及び単離を った。その後、当該cDNA断片を鋳型としたPCR 等によりクローニングを行って単離した各cDN A断片を、必要により互いに接合(ライゲーシ ン)させた後、融合タンパク質が得られるよ うに発現ベクターのマルチクローニングサイ トに挿入した。このようにして得られた組換 え発現ベクターを大腸菌に導入して形質転換 体を作製し、形質転換体を培養してタンパク 質発現を行い、産生された融合タンパク質を 回収し精製した。

 本発明の融合タンパク質を用いれば、抗体( IgG抗体)と、ビオチン化した標識物質(オリゴD NA、HRP酵素等)とを、容易に効率よく結合させ ることが可能となる。すなわち、従来のカッ プリング法などを利用することなく、例えば 、適当な溶液に抗体とビオチン化した標識物 質とを混合添加し、その後、本発明の融合タ ンパク質を添加するだけで、極めて効率よく 所望の標識化抗体を作製することができる。
 従って、従来公知の標識物質、例えばHRP酵 及びALP酵素などの化学性物質や放射性物質 びにオリゴ核酸鎖などを、IgG抗体に結合さ て標識化する場合に、従来より格段に容易 つ効率よく標識化を行うことができる。
 また、上述した融合タンパク質は、プロテ ンGを用いた場合に問題となるアルブミン等 との非特異結合を生じる部位、及び、アビジ ン類タンパク質(ストレプトアビジン等)を用 た場合に問題となる当該タンパク質同士の 特異結合を生じる部位を含まない形で作製 ることができる。そのため、野生種のプロ インG及びアビジン類タンパク質を用いて標 識化抗体を作製した場合に比べて、標的抗原 検出時の非特異結合を格段に抑制し、バック グラウンドを大きく低下させることができる 。その結果、検出感度が飛躍的に向上する。

 一方、本発明の融合タンパク質を用いれば 表面にビオチンを固相化したプレートやビ ズに所望のIgG抗体を容易に結合させ固定化 ることができ、さらには、血液等の被験サ プル中のIgG抗体を効率よく捕捉し回収する とができるため、極めて有用である。
 以上の通り、本発明の融合タンパク質は、 的抗原や抗体の検出及び回収など、各種用 において極めて有用な態様で用いることが き、実用性の高いものである。

2.融合タンパク質
 (1) 融合タンパク質
 本発明の融合タンパク質は、プロテインG又 はその一部からなるタンパク質と、アビジン 類又はその一部からなるタンパク質とを含ん でなる融合タンパク質である。
 ここで、「融合タンパク質」とは、一方の ンパク質のアミノ酸配列と、他方のタンパ 質のアミノ酸配列とが、互いに直接連結し なるか又はスペーサーとなる任意のアミノ 配列を介して間接的に連結してなる1つの( 連の)アミノ酸配列からなるタンパク質を意 し、通常、両方のタンパク質の性質(例えば 結合活性など)を合わせ持つものである。ま 、本発明でいう「融合タンパク質」は、上 の直接又は間接的に連結したアミノ酸配列 みからなるタンパク質であってもよいし、 るいは、当該アミノ酸配列を一部に含むア ノ酸配列からなるタンパク質であってもよ 、限定はされない。後者のタンパク質とし は、例えば、前者のタンパク質を構成する ミノ酸配列の両端又はいずれか一端に、他 任意のアミノ酸配列が連結したアミノ酸配 からなるタンパク質が挙げられる。他の任 のアミノ酸配列の長さは、特に限定はされ いが、例えば、1~300残基であることが好まし く、より好ましくは1~200アミノ酸残基であり さらに好ましくは1~100アミノ酸残基である 以下、本明細書において、「融合タンパク 」とは、上述した前者のタンパク質及び後 のタンパク質のいずれをも含む意味である

 また、「その一部からなるタンパク質」と 、所定のタンパク質(プロテインG及びアビ ン類)を構成するアミノ酸配列中の一部の領 内のアミノ酸配列からなるタンパク質のこ を意味する。
 なお、本発明の融合タンパク質が、前記ス ーサーとなるアミノ酸配列を介してなるも である場合、スペーサーとなるアミノ酸配 の長さは、特に限定はされないが、例えば 1~100残基であることが好ましく、より好ま くは2~50アミノ酸残基であり、さらに好まし は2~20アミノ酸残基であり、特に好ましくは 2~10アミノ酸残基であり、最も好ましくは2~5 ミノ酸残基である。スペーサー長が上記範 のときは、融合タンパク質の構成要素とな 各タンパク質の立体構造が互いに障害とな ず、いずれのタンパク質の性質も十分に発 され得る。また、スペーサーに用いるアミ 酸残基としては、例えば、セリン、ヒスチ ンなどが好ましく、中でもヒスチジンがよ 好ましい。これらのアミノ酸残基をスペー ーに用いた場合は、融合タンパク質の構成 素となる各タンパク質の立体構造に与える 響が低減され、いずれのタンパク質の性質 十分に発揮され得る。

 本発明の融合タンパク質は、プロテインG とアビジン類とを含む融合タンパク質、特に プロテインGとアビジン類との融合タンパク であってもよいし、プロテインGとアビジン の一部からなるタンパク質とを含む融合タ パク質、特にプロテインGとアビジン類の一 部からなるタンパク質との融合タンパク質で あってもよいし、プロテインGの一部からな タンパク質とアビジン類とを含む融合タン ク質、特にプロテインGの一部からなるタン ク質とアビジン類との融合タンパク質であ てもよいし、プロテインGの一部からなるタ ンパク質とアビジン類の一部からなるタンパ ク質とを含む融合タンパク質、特にプロテイ ンGの一部からなるタンパク質とアビジン類 一部からなるタンパク質との融合タンパク であってもよく、特に限定はされないが、 えば、プロテインGの一部からなるタンパク とアビジン類の一部からなるタンパク質と 融合タンパク質が好ましい。ここで、本発 でいう「アビジン類」とは、一般にビオチ タンパク質との特異的結合能を有するアビ ンタンパク質全般を意味し、例えば、アビ ン、ストレプトアビジン及びニュートラア ジンが好ましく挙げられ、中でも、ストレ トアビジン及びニュートラアビジンが特に ましい。

 本発明の融合タンパク質としては、例え 、プロテインGの一部からなるタンパク質と 、アビジン類又はその一部からなるタンパク 質とを含む融合タンパク質、特にプロテイン Gの一部からなるタンパク質と、アビジン類 はその一部からなるタンパク質からなる融 タンパク質であって、当該プロテインGの一 からなるタンパク質が、IgG抗体のFc領域と 結合活性を有するタンパク質であることを 徴とするものが好ましく挙げられる。プロ インG中の当該結合活性を有する部分を抽出 たタンパク質は、プロテインGが本質的に有 する各種成分(アルブミン等)との非特異的結 を、格段に低減することができるため、IgG 体との結合能に特化した融合タンパク質と ることができる。そのため、当該融合タン ク質を用いて作製した標識化抗体を標的抗 の検出方法において用いた場合(後述)、検 時のバックグラウンドを大きく低減するこ ができ、検出感度を飛躍的に向上させるこ ができる。

 ここで、プロテインGの一部からなるタンパ ク質としては、具体的には、以下の(a)又は(b) のタンパク質が好ましく挙げられる。
(a)配列番号6に示されるアミノ酸配列を含む ンパク質、特に配列番号6に示されるアミノ 配列からなるタンパク質
(b)配列番号6に示されるアミノ酸配列におい 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若し は付加されたアミノ酸配列を含むか、特に 列番号6に示されるアミノ酸配列において1 しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、かつIgG 体のFc領域との結合活性を有するタンパク質

 なお、野生型プロテインGのアミノ酸配列 (配列番号2)及び当該アミノ配列をコードする 塩基配列(配列番号1)の情報は、公的データベ ースに登録されており、例えば、Swiss-Prot(http ://tw.expasy.org/uniprot/ からアクセス可能)には entry name:SPG1-STRSG、accession number:P06654」とし 登録されており、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.go v/ からアクセス可能)には「accession number:M138 25」として公表されている。上記(a)及び(b)で う「配列番号6に示されるアミノ酸配列」は 、野生型プロテインGのアミノ酸配列(配列番 2)中の、第228番目~第268番目のアミノ酸配列 域からなるアミノ酸配列(計41アミノ酸残基) に相当する。また、野生型プロテインGのア ノ酸配列において、配列番号6に示されるア ノ酸配列が、IgG抗体のFc領域との結合領域 含む部分に相当するアミノ酸配列であるこ は、“Stephern R. et al., J. Bacteriology, vol. 1 67, p. 870-880 (1986)”を参照することにより理 解することができる。

 ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が 欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列 」は、例えば、1個~10個程度、好ましくは1個~ 5個程度のアミノ酸が欠失、置換又は付加さ たアミノ酸配列であることが好ましい。
 なお、上記「欠失、置換若しくは付加され アミノ酸配列からなるタンパク質」は、IgG 体のFc領域との結合活性を安定して発揮し るタンパク質であることが重要である。そ ため、IgG抗体のFc領域との結合性(基質結合 )に重要と考えられるアミノ酸残基などは、 生型プロテインGのアミノ酸配列から変異( 失、置換又は付加)されていないことが好ま い。
 本発明において、IgG抗体のFc領域との結合 性の有無及び程度は、例えば精製した融合 ンパク質をイムノプレート等に固相化した 、ヤギ等の精製IgG抗体を添加してインキュ ートした後、HRP標識した抗ヤギIgG抗体等を 作し、固相化したタンパクと結合した抗体 を、公知の各種検出方法を用いて検出する とにより測定することができる(以下同様)。

 また、本発明の融合タンパク質としては 例えば、アビジン類の一部からなるタンパ 質と、プロテインG又はその一部からなるタ ンパク質とを含む融合タンパク質、特にアビ ジン類の一部からなるタンパク質と、プロテ インG又はその一部からなるタンパク質との 合タンパク質であって、当該アビジン類の 部からなるタンパク質が、ビオチンとの結 活性を有するタンパク質であることを特徴 するものが好ましく挙げられる。アビジン 中の当該結合活性を有する部分を抽出した ンパク質は、アビジン類が本質的に有する 己凝集活性(アビジン類分子同士が互いに結 する活性)に起因する非特異的結合を、格段 に低減することができるため、ビオチンとの 結合能に特化した融合タンパク質とすること ができる。そのため、当該融合タンパク質を 用いて作製した標識化抗体を標的抗原の検出 方法において用いた場合(後述)、検出時のバ クグラウンドを大きく低減することができ 検出感度を飛躍的に向上させることができ 。

 ここで、アビジン類の一部からなるタンパ 質としては、具体的には、以下の(a)又は(b) タンパク質が好ましく挙げられる。
(a)配列番号8に示されるアミノ酸配列を含む ンパク質、特に配列番号8に示されるアミノ 配列からなるタンパク質
(b)配列番号8に示されるアミノ酸配列におい 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若し は付加されたアミノ酸配列を含むか、特に 列番号8に示されるアミノ酸配列において1 しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく 付加されたアミノ酸配列からなり、かつビ チンとの結合活性を有するタンパク質

 なお、野生型ストレプトアビジンのアミ 酸配列(配列番号4)及び当該アミノ配列をコ ドする塩基配列(配列番号3)の情報は、公的 ータベースに登録されており、例えば、Swis s-Prot(http://tw.expasy.org/uniprot/ からアクセス可 )には「entry name:SAV STRAV、accession number:P2262 9」として登録されており、GenBank(http://www.ncbi .nlm.nih.gov/ からアクセス可能)には「accession  number:X03591」として公表されている。上記(a) び(b)で言う「配列番号8に示されるアミノ酸 列」は、野生型ストレプトアビジンのアミ 酸配列(配列番号4)中の、第39番目~第183番目 アミノ酸配列領域からなるアミノ酸配列(計 145アミノ酸残基)に相当する。また、野生型 トレプトアビジンのアミノ酸配列において 配列番号8に示されるアミノ酸配列が、ビオ ンとの結合領域を含む部分に相当するアミ 酸配列であることは、“Carlos E. et al., Nuc leic Acids Res., vol. 14, p. 1871-1882 (1986)”を 照することにより理解することができる。

 なお、アビジン類は通常ホモ4量体を形成 しており、1つのサブユニットにつき1つのビ チン結合ドメインを有するため、タンパク 体で4つのビオチン結合ドメインを有してい ることになるが、本発明で用いるビオチン結 合ドメインは、1つのサブユニットがあるの 好ましく、そのためには、4量体を形成せず オチン結合ドメインを1つだけ有するような アビジン類の一部を使用するのが好ましい。 これまで単量体となるアビジン類変異体は活 発に研究されてきたが、成功していないこと が多かった(Qureshi, M. H., and Wong, S. L. (2002 ). Protein Expr Purif 25, 409-415.; Laitinen, O. H. et al., (2003). J Biol Chem 278, 4010-4014.)。し し、本発明においては、実施例に示すよう 、ストレプトアビジンの39~183番目のアミノ 配列を有するペプチドを使用することによ 、ビオチンとの結合活性を失わない変異体 作製することができた。

 ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が 欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列 」としては、例えば、1個~10個程度、好まし は1個~5個程度のアミノ酸が欠失、置換又は 加されたアミノ酸配列であることが好まし 。
 なお、上記「欠失、置換若しくは付加され アミノ酸配列からなるタンパク質」は、ビ チンとの結合活性を安定して発揮し得るタ パク質であることが重要である。そのため ビオチンとの結合性(基質結合性)に重要と えられるアミノ酸残基などは、野生型スト プトアビジンのアミノ酸配列から変異(欠失 置換又は付加)されていないことが好ましい 。
 本発明において、ビオチンとの結合活性の 無及び程度は、例えば、融合タンパク質を ムノプレート等に固相化した後、ビオチン 識したHRPを一定濃度の水溶液として添加し 洗浄し、次いで発色基質を添加することで 融合タンパク質に結合したビオチンの量を 公知の各種検出方法を用いて検出すること より測定することができる(以下同様)。

 本発明の融合タンパク質としては、より具 的には、以下の(a)又は(b)のタンパク質が好 しく挙げられる。
(a)配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む ンパク質、特に配列番号10に示されるアミ 酸配列からなるタンパク質
(b)配列番号10に示されるアミノ酸配列におい 1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若し くは付加されたアミノ酸配列を含むか、特に 配列番号10に示されるアミノ酸配列において1 若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しく は付加されたアミノ酸配列からなり、かつIgG 抗体のFc領域との結合活性及びビオチンとの 合活性を有するタンパク質

 上記「配列番号10に示されるアミノ酸配 」は、前述した配列番号6に示されるアミノ 配列と、配列番号8に示されるアミノ酸配列 とをそれぞれ構成成分として一部に含む一連 のアミノ酸配列である。なお、配列番号10に されるアミノ酸配列中、第29番目~第69番目 アミノ酸配列領域がプロテインGの一部から るタンパク質を構成するアミノ酸配列(配列 番号6)であり、第76番目~第220番目のアミノ酸 列領域がアビジン類(具体的にはストレプト アビジン)の一部からなるタンパク質を構成 るアミノ酸配列(配列番号8)であり、さらに 70番目~第75番目のアミノ酸配列領域がスペー サー部分(オリゴペプチド)を構成するアミノ 配列であって、配列番号6に示されるアミノ 酸配列のC末端と、配列番号8に示されるアミ 酸配列のN末端とを連結しているアミノ酸配 列である。また、配列番号10に示されるアミ 酸配列中、第1番目~第28番目、及び第221番目 ~第301番目のアミノ酸配列領域が、前述した のアミノ酸配列に当たる部分である。

 ここで、上記「1若しくは数個のアミノ酸が 欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列 」としては、例えば、1個~10個程度、好まし は1個~5個程度のアミノ酸が欠失、置換又は 加されたアミノ酸配列であることが好まし 。
 なお、上記「欠失、置換若しくは付加され アミノ酸配列からなるタンパク質」は、IgG 体のFc領域との結合活性及びビオチンとの 合活性をいずれも安定して発揮し得るタン ク質であることが重要である。そのため、Ig G抗体のFc領域との結合性(基質結合性)に重要 考えられるアミノ酸残基、及び、ビオチン の結合性(基質結合性)に重要と考えられる ミノ酸残基などは、野生型プロテインG又は 生型ストレプトアビジンのアミノ酸配列か 変異(欠失、置換又は付加)されていないこ が好ましい。

 (2) 組換え遺伝子
 本発明の遺伝子は、上述した本発明の種々 融合タンパク質をコードする遺伝子を全て むものである。中でも、配列番号6に示され るアミノ酸配列(プロテインGの一部からなる ンパク質)と、配列番号8に示されるアミノ 配列(ストレプドアビジンの一部からなるタ パク質)との融合タンパク質をコードする遺 伝子が好ましい。このような遺伝子としては 、例えば、以下の(a)又は(b)のDNAと、以下の(c) 又は(d)のDNAとを含む遺伝子が好ましく挙げら れる。なお、当該遺伝子は、上記DNAの他に遺 伝子発現に必要な公知の塩基配列(転写プロ ーター、SD配列、Kozak配列、ターミネーター )をも含むものであってもよく、限定はされ ない。

(a)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA
(b)配列番号5に示される塩基配列からなるDNA 対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ジェントな条件下でハイブリダイズするDNA あり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性を有 するタンパク質をコードするDNA
(c)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA
(d)配列番号7に示される塩基配列からなるDNA 対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ジェントな条件下でハイブリダイズするDNA あり、かつビオチンとの結合活性を有する ンパク質をコードするDNA

 ここで、プロテインG又はその一部からな るタンパク質をコードする遺伝子DNA(例えば 記(a)のDNA等)、及びアビジン類又はその一部 らなるタンパク質をコードする遺伝子DNA(例 えば前記(c)のDNA等)は、それぞれ、前述した 生型プロテインGをコードする塩基配列(配列 番号1)及び野生型ストレプトアビジンをコー する塩基配列(配列番号3)の塩基配列情報に づいて、各種クローニング法及び/又は化学 合成法(DNA合成装置を用いる方法)等の公知の 製又は合成方法により得ることができる。

 なお、配列番号5に示される塩基配列は、 配列番号1に示される塩基配列のうちの第1259 目~第1381番目の領域に相当する塩基配列(123 基対)であり、配列番号7に示される塩基配 は、配列番号3に示される塩基配列のうちの 164番目~第598番目の領域に相当する塩基配列 (435塩基対)である。

 本発明の融合タンパク質をコードする遺伝 としては、より具体的には、以下の(a')又は (b')のDNAを含む遺伝子が好ましく挙げられる なお、当該遺伝子は、上記DNAの他に遺伝子 現に必要な公知の塩基配列(転写プロモータ 、SD配列、Kozak配列、ターミネーター等)を 含むものであってもよく、限定はされない
(a')配列番号9に示される塩基配列からなるDNA
(b')配列番号9に示される塩基配列からなるDNA 対し相補的な塩基配列からなるDNAとストリ ジェントな条件下でハイブリダイズするDNA あり、かつIgG抗体のFc領域との結合活性及 ビオチンとの結合活性を有するタンパク質 コードするDNA

 上記「配列番号9に示される塩基配列」は 、前述した配列番号5に示される塩基配列と 配列番号7に示される塩基配列とをそれぞれ 成成分として一部に含む一連の塩基配列で る。なお、配列番号9に示される塩基配列中 、第85番目~第207番目の塩基配列領域がプロテ インGの一部からなるタンパク質をコードす 塩基配列(配列番号5)であり、第226番目~第660 目の塩基配列領域がアビジン類(具体的には ストレプトアビジン)の一部からなるタンパ 質をコードする塩基配列(配列番号7)であり さらに第208番目~第225番目の塩基配列領域が ペーサー部分(オリゴペプチド)をコードす 塩基配列であって、配列番号5に示される塩 配列の3'末端と、配列番号7に示される塩基 列の5'末端とを連結している塩基配列であ 。また、配列番号9に示される塩基配列中、 1番目~第84番目、及び第661番目~第903番目の 基配列領域が、前述した他のアミノ酸配列 コードする塩基配列に当たる部分である。

 前記(b)、(d)及び(b')のDNAは、それぞれ、前記 (a)、(c)及び(a')のDNA若しくはそれらと相補的 塩基配列からなるDNA、又はこれらを断片化 たものをプローブとして用い、コロニーハ ブリダイゼーション、プラークハイブリダ ゼーション、及びサザンブロット等の公知 ハイブリダイゼーション法を実施し、cDNAラ ブラリーやゲノムライブラリーから得るこ ができる。ライブラリーは、公知の方法で 製されたものを利用してもよいし、市販のc DNAライブラリーやゲノムライブラリーを利用 してもよく、限定はされない。ハイブリダイ ゼーション法の詳細な手順については、Molecu lar Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed. (Cold Sprin g Harbor Laboratory Press (1989)等を適宜参照する ことができる。
 ハイブリダイゼーション法の実施において ストリンジェントな条件」とは、ハイブリ イゼーション後の洗浄時の条件であって、 ッファの塩濃度が15~330mM、温度が25~70℃、好 ましくは塩濃度が15~150mM、温度が55~65℃の条 を意味する。具体的には、例えば100mMで60℃ の条件を挙げることができる。さらに、こ ような塩濃度や温度等の条件に加えて、プ ーブ濃度、プローブの長さ、反応時間等の 条件も考慮し、前記(b)、(d)及び(b')のDNAを得 るための条件を適宜設定することができる。

 前記(b)、(d)及び(b')のDNAに関し、ハイブリ ダイズするDNAとしては、それぞれ、前記(a)、 (c)及び(a')のDNAの塩基配列に対して少なくと 40%以上の相同性を有する塩基配列であるこ が好ましく、より好ましくは60%以上、さら 好ましくは90%以上、さらにより好ましくは95 %以上、特に好ましくは98%以上、最も好まし は99%以上である。

 前記(b)、(d)及び(b')のDNAは、それぞれ、例え ば前記(a)、(c)及び(a')のDNAと比較したときに 基配列は完全同一ではないが翻訳後のアミ 酸配列は完全同一となるような塩基配列か なるDNA、すなわち前記(a)、(c)及び(a')のDNAに イレント変異が導入されたDNAであることが 特に好ましい。このようなサイレント変異 導入されたDNAに代表される変異置換型のDNA 、例えば、Molecular Cloning, A Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989) Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley  & Sons (1987-1997) 等に記載の部位特異的変 誘発法に準じて調製することができる。具 的には、Kunkel法や Gapped duplex法等の公知手 法により、部位特異的突然変異誘発法を利用 した変異導入用キットを用いて調製すること ができ、当該キットとしては、例えば、QuickC hange TM  Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社 )、GeneTailor TM  Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェ 社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan- K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等 が好ましく挙げられる。また、所望のサイレ ント変異やミスセンス変異が導入されるよう に設計したPCRプライマーを用い、野生型プロ テインGや野生型ストレプトアビジンをコー するDNAをテンプレートとして、適当な条件 でPCRを行うことにより調製することもでき 。PCRに用いるDNAポリメラーゼは、正確性の いDNAポリメラーゼであることが好ましく、 えば、Pwo DNA(ポリメラーゼロシュ・ダイア ノスティックス)、Pfu DNAポリメラーゼ(プロ ガ)、プラチナPfx DNAポリメラーゼ(インビト ロジェン)、KOD DNAポリメラーゼ(東洋紡)、KOD- plus-ポリメラーゼ(東洋紡)等が好ましい。PCR 反応条件は、用いるDNAポリメラーゼの最適 度、合成するDNAの長さや種類等により適宜 定すればよいが、例えば、サイクル条件で れば「90~98℃で5~30秒(熱変性・解離)→50~65℃ 5~30秒(アニーリング)→65~80℃で30~1200秒(合成 ・伸長)」を1サイクルとして合計20~200サイク 行う条件が好ましい。

 本発明の遺伝子は、翻訳後の個々のアミ 酸に対応するコドンは、特に限定はされな ので、転写後、ヒト等の哺乳類において一 的に用いられているコドン(好ましくは使用 頻度の高いコドン)を示すDNAを含むものであ てもよいし、また、大腸菌や酵母等の微生 や、植物等において一般的に用いられてい コドン(好ましくは使用頻度の高いコドン)を 示すDNAを含むものであってもよい。

 (3) 組換えベクター
 本発明の融合タンパク質を発現させるため は、まず、上述した本発明の遺伝子が適当 発現ベクターに挿入された状態の組換えベ ターを構築することが必要である。
 具体的には、プロテインG又はその一部を含 むタンパク質をコードする遺伝子と、アビジ ン類又はその一部を含むタンパク質をコード する遺伝子との2種の遺伝子をそれぞれ作製 、両遺伝子を適当な発現ベクターに挿入し 組換えベクターを構築する。あるいは、当 2種の遺伝子DNAを用いて予め作製しておいた 本発明の融合タンパク質をコードする遺伝 又はその一部(上記2種の遺伝子を含む)を、 当な発現ベクターに挿入した組換えベクタ を構築する。
 発現ベクターの種類は、特に限定はされず 例えば、プラスミドDNA、バクテリオファー DNA、レトロトランスポゾンDNA、レトロウイ スベクター、人工染色体DNAなど、挿入した 伝子を保持し得るものであれば、使用する 主細胞に適したベクターを適宜選択して使 することができるが、前記2種の遺伝子を挿 入する場合の発現ベクターとしては、一般に 融合タンパク質遺伝子を作製することができ るものとして公知の発現ベクターを使用する ことが好ましい。このような発現ベクターと しては、例えば、pCR2.1(Invitrogen社)、pCR II(Invi trogen社)等が好ましく挙げられる。

 発現ベクターに挿入する遺伝子は、必要に じ、予め、上流に転写プロモーター、SD配 (宿主が原核細胞の場合)及びKozak配列(宿主が 真核細胞の場合)が連結されていてもよいし 下流にターミネーターが連結されていても く、その他、エンハンサー、スプライシン シグナル、ポリA付加シグナル及び選択マー ー等が連結されていてよい。なお、上記転 プロモーター等の遺伝子発現に必要な各要 は、挿入する遺伝子に初めから含めておい もよいし、発現ベクターに含まれている場 はそれを利用してもよい。
 発現ベクターに遺伝子を挿入する方法は、 えば、制限酵素を用いる方法や、制限酵素 用いない方法(例えばTAクローニング法)、あ るいはトポイソメラーゼを用いる方法など、 公知の遺伝子組換え技術を利用した各種方法 が採用できる。

 (4) 形質転換体
 上記組換えベクターを適当な宿主に導入し 形質転換体を得、これを培養することによ 、本発明の融合タンパク質を発現させるこ ができる。なお、本発明で言う「形質転換 」とは宿主に外来遺伝子が導入されたもの 意味し、例えば、宿主にプラスミドDNA等を 入すること(形質転換)で外来遺伝子が導入 れたもの、並びに、宿主に各種ウイルス及 ファージを感染させること(形質導入)で外来 遺伝子が導入されたものを、いずれも含む意 味である。
 宿主としては、組換えベクターが導入され 後、本発明の融合タンパク質を発現し得る のであれば、特に限定はされないが、例え 、細菌及び酵母のほか、ヒトやマウス等の 種動物細胞、及び各種植物細胞等の公知の 主が挙げられる。

 細菌を宿主とする場合、例えば、大腸菌(DH5 α等)、枯草菌等が用いられる。
 酵母を宿主とする場合は、例えば、サッカ ミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、 ゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces  pombe)等が用いられる。
 動物細胞を宿主とする場合は、例えば、ヒ 繊維芽細胞、CHO細胞、サル細胞COS-7、Vero、 ウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞等が用い れる。また、Sf9細胞、Sf21細胞等の昆虫細胞 を用いることもできる。
 植物細胞を宿主とする場合は、例えば、タ コBY-2細胞等が用いられる。
 形質転換体を得る方法は、限定はされず、 主と発現ベクターとの種類の組み合わせを 慮し、適宜選択することができるが、例え 、電気穿孔法、リポフェクション法、ヒー ショック法、PEG法、リン酸カルシウム法、D EAEデキストラン法、並びに、DNAウイルスやRNA ウイルス等の各種ウイルスを感染させる方法 などが好ましく挙げられる。
 得られる形質転換体においては、組換えベ ターに含まれる遺伝子のコドン型は、実際 用いた宿主のコドン型と一致していてもよ し異なっていてもよく、限定はされない。

 (5) 融合タンパク質の製法
 本発明の融合タンパク質は、前述した形質 換体を培養する工程と、得られる培養物か IgG抗体のFc領域との結合活性及びビオチン の結合活性を有するタンパク質を採取する 程とを含む方法により製造することができ 。
 ここで、「培養物」とは、培養上清、培養 胞、培養菌体、又は細胞若しくは菌体の破 物のいずれをも意味するものである。形質 換体の培養は、宿主の培養に用いられる通 の方法に従って行うことができる。目的の 合タンパク質は、上記培養物中に蓄積され 。
 形質転換体の培養に用いる培地は、宿主が 化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを 有し、当該培養を効率的に行うことができ 培地であれば、公知の各種天然培地及び合 培地のいずれを用いてもよい。例えば、宿 が大腸菌等の場合は、LB培地及びTB培地等の 汎用の培地を用いることができる。

 培養中は、形質転換体に含まれる組換えベ ターの脱落及び目的の融合タンパク質をコ ドする遺伝子の脱落を防ぐために、選択圧 かけた状態で培養してもよい。すなわち、 択マーカーが薬剤耐性遺伝子である場合に 、相当する薬剤を培地に添加することがで 、選択マーカーが栄養要求性相補遺伝子で る場合には、相当する栄養因子を培地から くことができる。例えば、G418耐性遺伝子を 含むベクターで形質導入したヒト線維芽細胞 を培養する場合、培養中、必要に応じてG418(G 418硫酸塩)を添加してもよい。
 誘導性のプロモーターを有する発現ベクタ により形質転換した形質転換体等を培養す 場合は、必要に応じ、好適なインデューサ を培地に添加してもよい。
 形質転換体の培養条件は、目的の融合タン ク質の生産性及び宿主の生育が妨げられな 条件であれば特に限定はされず、通常、10 ~40℃(好ましくは20℃~37℃)で、5~100時間培養 行う。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカ リ溶液等を用いて行うことができる。培養方 法としては、固体培養、静置培養、振盪培養 、通気攪拌培養などが挙げられる。

 培養後、目的の融合タンパク質が菌体内又 細胞内に生産される場合は、菌体又は細胞 破砕することにより当該タンパク質を採取 ることができる。菌体又は細胞の破砕方法 しては、フレンチプレス又はホモジナイザ による高圧処理、超音波処理、ガラスビー 等による磨砕処理、リゾチーム、セルラー 又はペクチナーゼ等を用いる酵素処理、凍 融解処理、低張液処理、ファージによる溶 誘導処理等を利用することができる。破砕 、必要に応じて菌体又は細胞の破砕残渣(細 胞抽出液不溶性画分を含む)を除くことがで る。残渣を除去する方法としては、例えば 遠心分離やろ過などが挙げられ、必要に応 て、凝集剤やろ過助剤等を使用して残渣除 効率を上げることもできる。残渣を除去し 後に得られた上清は、細胞抽出液可溶性画 であり、粗精製したタンパク質溶液とする とができる。
 また、目的の融合タンパク質が菌体内又は 胞内に生産される場合は、菌体や細胞その のを遠心分離、膜分離等で回収して、未破 のまま使用することも可能である。
 一方、目的の融合タンパク質が菌体外又は 胞外に生産される場合には、培養液をその ま使用するか、遠心分離やろ過等により菌 又は細胞を除去する。その後、必要に応じ 硫安沈澱による抽出等により、培養物中か 目的の融合タンパク質を採取することがで る。

 以上のように目的の融合タンパク質を採取 た後、さらに必要に応じて、透析、各種ク マトグラフィー(ゲルろ過法、イオン交換ク ロマトグラフィー、等電点クロマトグラフィ ー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニテ ィクロマトグラフィー等)を用いて単離精製 ることもできる。アフィニティクロマトグ フィーを用いる場合は、IgG抗体を固相化し セルロース・ビーズ等を用いてアフィニテ カラム精製を行うことが好ましい。
 形質転換体等を培養して得られた融合タン ク質の生産収率は、例えば、培養液当たり 菌体湿重量又は乾燥重量当たり、粗酵素液 ンパク質当たりなどの単位で、SDS-PAGE(ポリ クリルアミドゲル電気泳動)等により確認す ることができる。
 また、目的の融合タンパク質の製造は、形 転換体の培養によるタンパク質合成系のほ 、生細胞を全く使用しない無細胞タンパク 合成系を用いて行うこともできる。

 無細胞タンパク質合成系とは、細胞抽出液 用いて試験管等の人工容器内で目的タンパ 質を合成する系である。また、使用し得る 細胞タンパク質合成系としては、DNAを鋳型 してRNAを合成する無細胞転写系も含まれる この場合、使用する細胞抽出液の由来は、 述の宿主細胞であることが好ましい。細胞 出液としては、例えば真核細胞由来又は原 細胞由来の抽出液、より具体的には、CHO細 、ウサギ網状赤血球、マウスL-細胞、HeLa細 、小麦胚芽、出芽酵母、大腸菌などの抽出 を使用することができる。なお、これらの 胞抽出液は、濃縮又は希釈して用いてもよ し、そのままでもよく、限定はされない。 胞抽出液は、例えば限外濾過、透析、ポリ チレングリコール(PEG)沈殿等によって得る とができる。
 このような無細胞タンパク質合成は、市販 キットを用いて行うこともできる。例えば 試薬キットPROTEIOS TM (東洋紡)、TNT TM  System(プロメガ)、合成装置のPG-Mate TM (東洋紡)、RTS(ロシュ・ダイアグノスティクス )等が挙げられる。
 無細胞タンパク質合成によって産生された 的の融合タンパク質は、前述したように、 ロマトグラフィー等の手段を適宜選択して 製することができる。

3.標識化抗体
 (1) 標識化抗体
 本発明の標識化抗体は、IgG抗体、本発明の 合タンパク質(前記2.参照)、及びビオチン化 標識物質を含んでなるものであり、具体的に は、本発明の融合タンパク質を介して、IgG抗 体にビオチン化標識物質が結合された(固定 された)ものである。
 IgG抗体としては、その由来は限定されず、 えば、ヒト、マウス、ラット、モルモット ラビット、ウサギ、ブタ、イヌ、ネコ、サ 、ヒツジ、ウシ及びウマ等の哺乳類動物由 のIgG抗体が挙げられ、中でも、ヒト、マウ 、ラット、ラビット及びウサギ由来のIgG抗 が好ましい。
 IgG抗体は、所望の標的抗原に対して特異的 合能を有するものを用いることができる。 的抗原としては、例えば、ウイルス抗原及 /又は微生物抗原が挙げられる。ここで、抗 原となるウイルス及び微生物の種類は、特に 限定はされないが、例えば、C型肝炎ウイル 、B型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス 大腸菌、破傷風菌、黄色ブドウ球菌及びク ミジア等が挙げられ、中でも、C型肝炎ウイ ルスが好ましい。
 IgG抗体は、ポリクローナル抗体であっても ノクローナル抗体であってもよく、限定は れないが、モノクローナル抗体であること 好ましい。

 ビオチン化標識物質は、特異的抗体を用 た抗原検出方法において抗体の検出標識に 用され得る各種物質であって、ビオチン化 れたもの(ビオチンと結合させたもの)であ ばよく、特に限定はされない。ビオチン化 識物質としては、例えば、ビオチン化され オリゴ核酸鎖(オリゴヌクレオチド鎖等)、並 びにビオチン化された各種化学物質(HRPやALP の酵素、蛍光物質、及び放射性物質等)など 挙げられ、中でもビオチン化されたオリゴ 酸鎖が好ましい。なお、標識物質のビオチ 化の方法は、限定はされず、公知の化学的 は酵素的処理(好ましくは化学的処理)によ ビオチンを導入する方法を採用することが きる。

 標識物質として用いる上記オリゴ核酸鎖と ては、検出標識としての機能を持たせるた 、例えば、下記(A)~(I)から選ばれる少なくと も1つの処理が施されたものが好ましい。
  (A) 核酸増幅法で増幅可能な領域を設ける 処理
  (B) 制限酵素による切断部位を設ける処理
  (C) 放射性同位体元素を含有させる処理
  (D) 蛍光色素を結合させる処理
  (E) 酵素を結合させる処理
  (F) 光照射による切断部位を設ける処理
  (G) 活性酸素による切断部位を設ける処理
  (H) 標識処理デンドリマを結合させる処理
  (I) 塩基の種類において少なくとも1塩基 違いを設ける処理

 これらの中でも、(A)、(B)及び(I)の処理は、 識処理が容易であり検出感度が高くなる等 点で好ましく、より好ましくは(A)及び(B)の 理である。
 また、(A)の処理と、(B)、(F)又は(G)の処理と 組み合わせた標識処理も好ましく、具体的 は、オリゴ核酸鎖を(B)、(F)又は(G)の処理に り切断し、得られた断片を鋳型として(A)の 理により増幅することができるようにした 識処理等が挙げられる。このような標識処 をした場合は、抗原-抗体複合体から検出標 識となる断片を分離及び単離して鋳型とする ことができ、より効率的な増幅反応を行うこ とができるため、より一層検出感度を向上さ せることができる。

 上記(A)の処理を施したオリゴ核酸鎖とは、 酸増幅法に用いるプライマーとの結合領域 有するオリゴ核酸鎖である。核酸増幅法は 例えば、サーマルサイクラー等により複数 の温度制御条件下で反応を行う核酸増幅法( 例えばPCR法)や、恒温条件下で反応可能な核 増幅法(例えばLAMP法、ICAN法)のいずれであっ もよく、限定はされない。また、核酸増幅 による増幅領域は、オリゴ核酸鎖の一部で ってもよいし全部であってもよい。
 ここで、PCR法用プライマーと結合する領域 は、フォワードプライマー(Fプライマー)及 リバースプライマー(Rプライマー)から構成 れるプライマーセットを設計する基となる2 領域を含む領域であり、かつ、このプライマ ーセットを用いて増幅され得る領域を意味し 、具体的な核酸配列は特に限定はされない。 なお、PCR法としては、検出及び定量の容易性 からリアルタイムPCR法が好ましいが、特にTaq Man法の場合は、前記オリゴ核酸鎖として、Taq Manプローブとの結合領域も有するものを用い る。

 LAMP法用プライマーと結合する領域とは、FIP 、BIP、F3プライマー、B3プライマー(必要に応 てLoop Primer F及び/またはLoop Primer B)から 成されるプライマーセットを設計する基と る6領域を含む領域であり、かつ、このプラ マーセットを用いて増幅され得る領域を意 し、具体的な核酸配列は限定されない。
 ICAN法用プライマーと結合する領域とは、2 のキメラプライマー(F及びRプライマー)から 成されるプライマーセットを設計する基と る2領域を含む領域であり、かつ、このプラ イマーセットを用いて増幅され得る領域を意 味し、具体的な核酸配列は限定されない。

 本発明において、標識物質として用い得る リゴ核酸鎖としては、一本鎖若しくは二本 のオリゴヌクレオチド鎖(例えばオリゴDNA鎖 及びオリゴRNA鎖(特にオリゴDNA鎖))、オリゴペ プチド核酸鎖(オリゴPNA鎖とも言う)、又はこ らの混合鎖が好ましく挙げられ、中でもオ ゴヌクレオチド鎖がより好ましい。また、 発明でいうオリゴ核酸鎖は、その一部にオ ゴペプチド鎖を含むものも包含し得る。な 、オリゴ核酸鎖は、天然物であっても合成 であってもよいが、通常は、合成物である とが好ましい。
 標識として用いるオリゴ核酸鎖の鎖長は、 に限定はされないが、例えば、100~5,000merで ることが好ましく、より好ましくは100~1,000m er、さらに好ましくは100~500merである。オリゴ 核酸鎖の鎖長が上記範囲を満たす場合、検出 感度の向上や検出時間の短縮を図ることがで きる。

 本発明の標識化抗体の作製方法は、前述 たIgG抗体、本発明の融合タンパク質(前記2. 照)、及びビオチン化標識物質を適宜混合し て互いに結合させればよく、限定はされない が、例えば、まず本発明の融合タンパク質と ビオチン化標識物質とを結合させ、該結合体 に対してIgG抗体を添加して結合させる手順に よる方法が好ましい。なお、必要に応じ、各 種クロマトグラフィー(ゲルろ過法、イオン 換クロマトグラフィー、等電点クロマトグ フィー、疎水性クロマトグラフィー、アフ ニティクロマトグラフィー等)を用いて当該 識化抗体を精製単離することができる。

 (2) 抗体-融合タンパク質結合体
 本発明は、IgG抗体と本発明の融合タンパク (前記2.参照)とを含んでなる、抗体-融合タ パク質結合体を包含するものである。なお IgG抗体の詳細については前述した通りであ 。
 本発明の抗体-融合タンパク質結合体の作製 方法は、IgG抗体と本発明の融合タンパク質と を適宜混合して互いに結合させればよく、限 定はされない。なお、必要に応じ、前述した 各種クロマトグラフィーを用いて当該結合体 を精製単離することができる。
 本発明の抗体-融合タンパク質結合体は、種 々のIgG抗体にそれぞれ所望のビオチン化標識 物質を結合させたい場合、あるいはビオチン 化した支持体(プレート、ビーズ等)に所望のI gG抗体を結合させたい場合などに、有効利用 ることができる。

 (3) 融合タンパク質-標識物質結合体
 本発明においては、本発明の融合タンパク (前記2.参照)とビオチン化標識物質とを含ん でなる、融合タンパク質-標識物質結合体を 含するものである。なお、ビオチン化標識 質の詳細については前述した通りである。
 本発明の融合タンパク質-標識物質結合体の 作製方法は、本発明の融合タンパク質とビオ チン化標識物質とを適宜混合して互いに結合 させればよく、限定はされない。なお、必要 に応じ、前述した各種クロマトグラフィーを 用いて当該結合体を精製単離することができ る。
 本発明の融合タンパク質-標識物質結合体は 、種々のIgG抗体にそれぞれ所望のビオチン化 標識物質を結合させたい場合などに有効利用 することができる。

 (4) 抗体標識用キット
 本発明の抗体標識用キットは、本発明の融 タンパク質(前記2.参照)、本発明の抗体-融 タンパク質結合体(前記3.(2)参照)、及び本発 の融合タンパク質-標識物質結合体(前記3.(3) 参照)からなる群より選ばれる少なくとも1種 含むものである。当該キットは、前述した 発明の標識化抗体の作製に利用することが き、極めて有用性が高いものである。
 本発明の抗体標識用キットは、上記列挙し 構成成分以外に、他の構成成分を含んでい もよい。他の構成成分としては、例えば、I gG抗体及びビオチン化標識物質のいずれか又 両方が好ましく挙げられる。なお、IgG抗体 びビオチン化標識物質の詳細については前 した通りである。さらに、他の構成成分と ては、例えば、各種バッファ、滅菌水、各 反応容器(エッペンドルフチューブ等)、ブ ッキング剤(Bovine Serum Albumin (BSA), Skim milk,  Goat血清等の血清成分)、アジ化ナトリウム の防腐剤、及び実験操作マニュアル(説明書) 等が挙げられる。

4.標的抗原の検出
 (1) 標的抗原の検出方法
 本発明の標的抗原の検出方法は、被験試料 含まれる標的抗原を検出する方法であって 標的抗原と本発明の標識化抗体(前記3.(1)参 )とを接触させて抗原-抗体複合体を形成さ る工程(抗原-抗体複合体形成工程)、及び抗 -抗体複合体中の標識を検出する工程(標識検 出工程)を含む方法である。
 本発明の検出方法の好ましい一態様として 、例えば、被験試料に含まれる標的抗原が 数種類であり、かつ、本発明の標識化抗体 して当該標的抗原の種類に対応して識別し るように標識処理された複数種類の標識化 体を用いる方法が挙げられる。すなわち、 該方法は、被験試料に含まれる標的抗原を 別検出する方法であり、当該識別検出は同 に(同一の反応系内で)行うことが好ましい
 なお、本発明の検出方法は、上述した各工 以外の他の工程を含んでいてもよい。他の 程は、公知の手段及び方法を用いて実施す ことができる。

 (1-1) 抗原-抗体複合体の形成工程
 (i) 支持体
 本発明の検出方法においては、標的抗原は 支持体に固定された状態であってもよいし 支持体に固定されていない状態であっても く、限定はされない。
 本発明において用い得る支持体としては、 的抗原を固定することができ、当該抗原に 体(抗体溶液)を接触させることができるも であればよく、通常、不溶性の材質及び形 等のものが用いられる。例えば、抗原抗体 応によるアッセイ系に用い得る支持体が好 しく、具体的には、マルチプラスチックウ ルプレート、プラスチックビーズ、ラテッ スビーズ、磁性ビーズ、プラスチックチュ ブ、ナイロン膜、ニトロセルロース膜など 挙げられる。
 また、支持体としては、後述するように、 的抗原に特異的に結合し得る抗体が支持体 面に固定化されたものを用いることができ 。このような支持体を用いれば、抗体を介 て標的抗原を固定することができる。支持 表面への抗体の固定化は、公知の種々の方 を用いて行うことができるが、前述した本 明の融合タンパク質(前記2.参照)を利用して 効率的に固定化する方法が好ましく挙げられ る。具体的には、表面をビオチン化しておい た支持体に、本発明の抗体-融合タンパク質 合体(前記3.(2)参照)を接触させて、アビジン- ビオチン結合反応と同様の反応によって抗体 を固定化する方法、あるいは、表面をビオチ ン化した後に本発明の融合タンパク質を接触 させて当該融合タンパク質を結合させた支持 体に、所望のIgG抗体を接触させて抗体を固定 化する方法などが挙げられる。

 (ii) 標的抗原
 検出対象とする標的抗原の種類は、特に限 はされないが、例えば、前述したウイルス び/又は微生物(例えばC型肝炎ウイルス)、各 種タンパク質(抗体タンパク質も含む)、ペプ ド(オリゴペプチド、ポリペプチド等)、多 類、糖脂質、各種核酸(DNAやRNA)、及びその他 低分子の化学合成物や生体成分等が挙げられ る。また、本発明の一実施形態として、単一 種類の標的抗原を検出対象とし、複数種類の 標識化抗体を用いて、標的抗原がどの標識化 抗体に対してより特異的に結合するかを特定 するアッセイ系も挙げられる。
 被験試料は、例えば、生体成分(組織や血液 )、食肉や野菜等の食品類、土壌や河川水、 焼廃棄物等を挙げることができるが、限定 されない。
 被験試料に含まれる標的抗原が複数種類の 合、その種類数は、特に限定はされないが 本発明の方法によれば、例えば、10種類以 であっても特定の標的抗原を明確に識別検 することができ、また50種類以上であっても よいし、さらには100種類以上であってもよい 。

 被験試料中の標的抗原の濃度は、限定はさ ないが、本発明の方法によれば、例えば、 験試料1μLあたり標的抗原がngオーダー以下 濃度であっても、特定の標的抗原を明確に 別検出することができ、またpgオーダー以 であってもよいし、さらにはfgオーダー以下 であってもよい。特に、本発明の標識化抗体 として、核酸増幅法により増幅可能なオリゴ 核酸鎖で標識したIgG抗体を用いた場合は、よ り低い標的抗原濃度であっても高い感度で識 別検出することができる。
 本発明の検出方法においては、標的抗原を 持体に固定しておいた上で本発明の標識化 体(溶液)と接触させ、これにより標的抗原 標識化抗体との抗原抗体反応を行うことが き、標的抗原を支持体等へ固定せずに当該 応を行ってもよい。さらに、これらを組み わせて行うようにしてもよい。

 標的抗原を支持体へ固定する方法としては 例えば、支持体表面に直接的に標的抗原を 定する方法、及び、標的抗原に特異的に結 する抗体を予め支持体表面に固定化した後 この固定化抗体に標的抗原を結合させるこ で支持体表面に間接的に標的抗原を固定す 方法が挙げられるが、限定はされない。後 の間接的な固定方法の場合、被験試料中の 種多様な物質のうち標的抗原となり得るも を予め選抜するができるため、検出感度や 出精度を高めることができる。なお、支持 に固定する抗体は、通常、後で添加する抗 (標識化抗体等)とは標的抗原に対して認識 るエピトープが異なるものを用いる。
 標的抗原を支持体へ固定した場合は、その 抗体(標識化抗体等)を添加する前に、常法 従い、ブロッキングを行うことが好ましい

 (iii) 標識化抗体
 本発明の検出方法においては、前述した本 明の標識化抗体(前記3.(1)参照)を用いる。こ こで、検出対象とする標的抗原が複数種類で ある場合は、本発明の標識化抗体としては、 当該抗原の種類に対応して識別し得るように 標識処理された標識化抗体を複数種類用いる 。標識化抗体における標識処理は、個々の標 的抗原を特異的に認識し得るIgG抗体ごとに単 一の(1種類の)標識処理が施されるようにし、 後の検出工程において標識の数及びその種類 の特定を行うことで、検出された標的抗原の 数及びその種類の特定を行うようにする。し かしこの態様には限定されず、例えば、単一 の標識処理を施した複数種類の標識化抗体( まり抗体部分が複数種類)を用いて、複数種 の標的抗原を1種類の検出標識で包括的に検 出することもできる。複数種類の標識化抗体 を用いる場合、各抗体はモノクローナル抗体 であることが好ましいが、限定はされない。

 なお、本発明の検出方法において、「支持 に固定された標的抗原と標識化抗体とを接 させる」とは、標的抗原と標識化抗体とを 接接触させて結合させる意味には限定はさ ず、支持体に固定された標的抗原を特異的 認識する1次抗体を結合させ、次いでこの1 抗体(又は1次抗体中の標識物質)を特異的に 識する本発明の標識化抗体を接触させるこ で、標的抗原と標識化抗体とを間接的に結 させる意味も含む。この間接的な結合の場 は、1次抗体には、さらに2次抗体、3次抗体 ・・・n次抗体を結合させてもよく、その場 、本発明の標識化抗体としてはn次抗体と特 異的に結合し得るものを用いればよい。なお 、上記nの範囲は1~11であることが好ましく、 り好ましくは1又は2である。
 本発明の標識化抗体として、標的抗原の種 に対応して識別し得るように標識処理され 複数種類の標識化抗体を使用する場合につ て、上記識別検出を可能とするための標識 質の標識処理の具体的態様を以下に説明す 。以下では、オリゴ核酸鎖を標識物質とし 前記3.(1)で説明した(A)若しくは(B)又はこれ を組み合わせた標識処理が施された標識化 体を使用する場合を例に挙げて説明する。 れらの標識処理が施された場合のほか、他 標識処理が施された場合についても、公知 術(例えば、WO2006/049289等)を参照することに り理解することができる。

 前記(A)の標識処理の場合は、例えば、他の 体のオリゴ核酸鎖とは増幅断片の長さが異 るようにするか、他の抗体のオリゴ核酸鎖 らは増幅断片が得られないようにするか、 るいは、これらを組み合わせて行うこと等 より、識別検出することができる。
 増幅断片の長さが異なるようにすることは 具体的には、同一のプライマーを用いた場 であっても、プライマーの結合位置が異な 、増幅可能な領域の幅(長さ)がオリゴ核酸 同士で異なるように合成しておくこと等に り実施できる。増幅断片の長さの差は、限 はされないが、良好な感度で識別検出でき 点で、5mer以上であることが好ましく、より ましくは10mer以上、さらに好ましくは50mer以 上である。

 前記(B)の標識処理の場合は、例えば、他の 体のオリゴ核酸鎖とは制限酵素処理後に得 れる断片の長さが異なるようにするか、他 抗体のオリゴ核酸鎖からは制限酵素処理後 断片が得られないようにするか、あるいは これらを組み合わせて行うこと等により、 別検出することができる。
 制限酵素処理後に得られる断片の長さが異 るようにすることは、具体的には、抗体に 合させるオリゴ核酸鎖の長さは標識化抗体 士で実質的に同じであるが、制限酵素によ 切断位置が互いに異なるように合成してお か、又は、抗体に結合させるオリゴ核酸鎖 長さ自体をオリゴ核酸鎖同士で異なるよう 合成しておくこと等により実施できる。制 酵素処理後の断片の長さの差は、限定はさ ないが、良好な感度で識別検出できる点で 10mer以上であることが好ましく、より好ま くは50mer以上、さらに好ましくは100mer以上で ある。
 前記(A)と(B)を組み合わせた標識処理の場合 、具体的には、前記(A)の標識処理において オリゴ核酸鎖中の核酸増幅可能な領域より 抗体側に、制限酵素切断部位を設けておく 外は、前記(A)の標識処理と実質的に同様で る。増幅可能な領域を含む断片(テンプレー ト)を標識化抗体から分離した後に核酸増幅 を行うことにより、増幅効率を向上させる とができ、検出感度を一層高めることがで る。

 (iv) 抗原抗体反応
 支持体に固定(コーティング)した標的抗原 、本発明の標識化抗体(溶液)を接触させる場 合は、通常、予め公知のブロッキング液でブ ロッキング処理を施し、PBS等の公知の洗浄液 でよく洗浄しておく。その後、標識化抗体を 含む溶液を適量添加し、室温で30~60分間攪拌 ながら、標的抗原と標識化抗体との結合反 を行い、抗原-抗体複合体を形成させ、再度 よく洗浄することが好ましい。
 一方、支持体等に固定していない標的抗原 、本発明の標識化抗体(溶液)を接触させる 合は、通常、標的抗原を含む被験試料に対 て適当な前処理を行い、標的抗原以外の不 物を除去あるいは少なくしておくことが好 しい。

 (1-2) 標識検出工程
 形成した抗原-抗体複合体中の標識物質の検 出は、使用した標識化抗体中の標識物質の種 類により異なる。以下では、オリゴ核酸鎖を 標識物質とし、前記3.(1)で説明した(A)若しく (B)又はこれらを組み合わせた標識処理が施 れた標識化抗体を使用する場合を例に挙げ 標識物質の検出方法を説明する。これらの 識処理が施された場合のほか、他の標識処 が施された場合の標識物質の検出方法につ ても、公知技術(例えば、WO2006/049289等)を参 することにより理解することができる。

 前記(A)の標識処理の場合は、例えば、常法 従い、設計した所定のプライマー等を添加 、PCR(例えば約5~30サイクル)等の核酸増幅法 より特定の領域を増幅した断片を得る。得 れた増幅断片は、濁度測定や目視により容 に検出することができるほか、アガロース ル等を用いた各種電気泳動法により検出す ことができ、増幅断片の長さを比較すれば 数種類の標識物質を識別検出することがで る。また、蛍光標識したプライマーを用い 場合は、得られた増幅断片をDNAシークエン ー(例えばApplied Biosystems社製、製品名:ABI-310 0)を用いたGeneScanソフトウェアで解析するこ により検出することができ、ピーク位置及 その高さを同定し比較すれば複数種類の標 物質を識別検出することができる。さらに 蛍光標識したプライマー、及びプローブ(TaqM anプローブ等)を用いた場合は、得られた増幅 断片をリアルタイムPCR法により検出すること もできる(例えば、ストラタジーン社製、製 名:MX-3005pリアルタイムPCR装置 ; Applied Biosys tems社製、製品名:StepOne TM  Real-Time PCR System、7300 Real-Time PCR System等)

 前記(B)の標識処理の場合は、例えば、常法 従い、所定の制限酵素溶液を添加して、オ ゴ核酸鎖を切断する。得られた断片は、ア ロースゲル等を用いた各種電気泳動法によ 検出することができ、増幅断片の長さを比 すれば複数種類の標識物質を識別検出する とができる。当該検出において、抗原の量 少なかった場合など、制限酵素処理後の断 濃度が低いときは、必要に応じ、当該処理 の反応液をスピンカラム等で遠心沈降して 縮することが好ましい。
 前記(A)と(B)を組み合わせた標識処理の場合 、例えば、制限酵素処理後の遊離断片をテ プレートとして、設計した所定のプライマ 等を添加し、PCR(例えば約5~30サイクル)等の 酸増幅法により特定の領域を増幅した断片 得る。得られた増幅断片の検出方法につい は、(A)の標識処理の場合と同様である。

 本発明においては、標識検出工程で得ら た結果を指標とすることにより、被験試料 の標的抗原量(例えばC型肝炎ウイルス量等) 定量することもできる。当該定量は、上記 各種検出方法と併用される公知の定量手法 ら適宜選択して行うことができる。具体的 定量方法としては、例えば、デンシトメー ーによる電気泳動後のバンド濃度の測定、 光光度計や分光光度計による増幅産物の濁 測定(モニタリング)、分光蛍光光度計によ 蛍光強度測定(モニタリング)等による測定結 果を指標とし、予め作成しておいたコントロ ールの測定結果(検量線など)と比較換算する とにより定量する方法が好ましく挙げられ 。

 (2) 標的抗原検出用キット
 本発明の標的抗原検出用キットは、本発明 標識化抗体(前記3.(1)参照)を含むものである 。ここで、当該キットが、複数種類の標的抗 原の識別検出を目的とするキットの場合は、 上記標識化抗体は、標的抗原の種類に対応し て識別し得るように標識処理された複数種類 の標識化抗体であることが好ましい。
 また、本発明は、本発明の抗体-融合タンパ ク質結合体(前記3.(2)参照)及びビオチン化標 物質、又は、本発明の融合タンパク質-標識 質結合体(前記3.(3)参照)及びIgG抗体を含む、 標的抗原検出用キットを包含するものである 。
 本発明の標的抗原検出用キットは、前述し 本発明の標的抗原の検出方法に利用するこ ができ、極めて有用性が高いものである。

 本発明の標的抗原検出用キットは、上記 成成分以外に、他の構成成分を含んでいて よい。他の構成成分としては、例えば、HRP はALP標識一次抗体、制限酵素、DNAポリメラ ゼ、PCRプライマー、dNTP、各種バッファ、滅 菌水、エッペンドルフチューブ、フェノール クロロホルム、クロロホルム、エタノール、 核酸共沈剤、各種ゲル(粉末)、フリーラジカ 産生遊離試薬(HRP及びFe錯体等)、ブロッキン グ剤としてBovine Serum Albumin (BSA), Skim milk,  Goat血清等の血清成分、及び各種detergent、DNA ンターカレーター等の蛍光試薬、光反応物 、各種プレート(抗体固定化プレートを含む) 、各種ビーズ(抗体固定化ビーズを含む)、ア 化ナトリウム等の防腐剤、並びに実験操作 ニュアル(説明書)等のほか、必要に応じ、 種電気泳動装置やPCR等実験機器等も挙げら る。

5.抗原又は抗体の回収
 (1) 抗体固定化支持体
 本発明の抗体固定化支持体は、表面がビオ ン化された支持体、本発明の融合タンパク (前記2.参照)、及びIgG抗体を含んでなる支持 体である。本発明の抗体固定化支持体は、具 体的には、ビオチン化された支持体表面に、 本発明の融合タンパク質を介してIgG抗体が結 合してなる支持体である。
 本発明の抗体固定化支持体は、例えば、サ ドイッチ法を用いた抗原検出方法に用いる 持体として使用することができる。また、 験試料中の標的抗原の捕捉及び回収に用い ことができる。従って、本発明は、被験試 中の標的抗原と上記抗体固定化支持体とを 触させる工程、及び当該接触後の前記支持 を回収する工程を含む、標的抗原の回収方 を包含するものである。
 また本発明は、上記抗体固定化支持体を含 抗原回収用キットを包含するものである。 該キットには、被験試料からの抗原回収に 要な公知の各種構成成分を含めることがで る。

 (2) 融合タンパク質固定化支持体
 本発明の融合タンパク質固定化支持体は、 発明の融合タンパク質(前記2.参照)と、表面 がビオチン化された支持体とを含んでなる支 持体である。本発明の融合タンパク質固定化 支持体は、具体的には、ビオチン化された支 持体表面に本発明の融合タンパク質が結合し てなる支持体である。
 本発明の融合タンパク質固定化支持体は、 験試料中の標的抗体の捕捉及び回収に用い ことができる。従って、本発明は、被験試 中の標的抗体と上記融合タンパク質固定化 持体とを接触させる工程、及び当該接触後 前記支持体を回収する工程を含む、標的抗 の回収方法を包含するものである。
 また本発明は、上記融合タンパク質固定化 持体を含む抗体回収用キットを包含するも である。当該キットには、被験試料からの 体回収に必要な公知の各種構成成分を含め ことができる。

 以下に、実施例を挙げて本発明をより具 的に説明するが、本発明はこれらに限定さ るものではない。

==融合タンパク質の合成==
 以下の手順により、プロテインGの一部から なるタンパク質(IgG抗体Fc領域との結合領域を 含むタンパク質)と、ストレプトアビジンの 部からなるタンパク質(ビオチンとの結合領 を含むタンパク質)とを構成成分として含む 融合タンパク質を合成した(図2参照)。

1.下記の通り、公的データベースであるSwiss-P rot(http://tw.expasy.org/uniprot/ からアクセス可能) 及びGenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ からアクセ 可能)等から、野生型のプロテインG及びス レプトアビジンについての塩基配列情報及 アミノ酸配列情報を取得した。
 なお、プロテインGの塩基配列情報は配列番 号1に、アミノ酸配列は配列番号2に示した。 た、ストレプトアビジンの塩基配列情報は 列番号3に、アミノ酸配列は配列番号4に示 た。

 <プロテインG>
 ・Swiss-Prot:
  「entry name:SPG1-STRSG」,「accession number:P06654 」
 ・GenBank:
  「accession number:M13825」

 <ストレプトアビジン>
 ・Swiss-Prot:
  「entry name:SAV STRAV」,「accession number:P22629 」
 ・GenBank:
  「accession number:X03591」

2.プロテインG及びストレプトアビジンのア ミノ酸配列情報を基に、プロテインG中のIgG 体Fc領域との結合に必要なアミノ酸配列領域 、及びストレプトアビジン中のビオチンとの 結合に必要なアミノ酸配列領域を選択し、こ れらの領域を含むアミノ酸配列をコードする 塩基配列を特定した(図3及び図4中の矢印で挟 まれた領域を参照)。

 <プロテインG>
 IgG抗体Fc領域との結合領域を含む部分:
  配列番号2に示されるアミノ酸配列のうち 第228番目~第268番目のアミノ酸配列領域(配 番号6;41アミノ酸残基)
  配列番号1に示される塩基配列のうちの第1 259番目~第1381番目の塩基配列領域(配列番号5;1 23塩基対)

 <ストレプトアビジン>
 ビオチンとの結合領域を含む部分:
  配列番号4に示されるアミノ酸配列のうち 第39番目~第183番目のアミノ酸配列領域(配列 番号8;145アミノ酸残基)
  配列番号3に示される塩基配列のうちの第1 64番目~第598番目の塩基配列領域(配列番号7;435 塩基対)

3.プロテインG及びストレプトアビジンの各々 の塩基配列情報を基に、所望の塩基配列領域 をクローニングした。
 具体的には、まず、前記2.で特定したプロ インG及びストレプトアビジンの各々に関す 塩基配列情報を基に、リン酸基部位無保護 によるDNAの化学合成法によって、当該塩基 列と同一の塩基配列を有する相補的な二本 DNAを合成した。この際、必要により、断片 に合成された個々の二本鎖DNAをT4リガーゼ 接合した。
 その後、合成した各二本鎖DNAをそれぞれ鋳 とし、下記のフォワードプライマー(Fプラ マー)及びリバースプライマー(Rプライマー) 設計して、以下の反応液組成及び反応条件 PCRを行うことにより、各二本鎖DNAを増幅し 。なお、PCRにより得られるDNA断片が両端に 限酵素認識部位を有するように、各プライ ーを設計した(小文字部分の塩基配列を参照 )。

<プロテインGの塩基配列用プライマー>
  Fプライマー: 5'- catatg C ACTTACAAATTAATCCTTAA -3'   (配列番号11)
  Rプライマー: 5'- gaattc ggatcc TTCACCGTCAACACCG TTG -3' (配列番号12)

<ストレプトアビジンの塩基配列用プライ ー>
  Fプライマー: 5'-gaattc aagctt GCCGGCATCACCGGCACC TG-3' (配列番号13)
  Rプライマー: 5'-ctgcag CTGCTGAACGGCGTCGAGCG-3'     (配列番号14)

 各PCRは、下記の反応液組成、及び反応条件 行った。
《反応液組成》
 鋳型DNA(1μg/μl):  1μL
 TaqDNAポリメラーゼ:   0.5unit
 Fプライマー(10μM):   5μL
 Rプライマー(10μM):   5μL
 dNTP(0.2mM each):    8μL
 10×Buffer:       10μL
 滅菌水:         適量 (約72 L) 
 合計:          100μL

《反応条件》
 「95℃で30秒間の熱変性・解離 → 55℃で30 間のアニーリング → 72℃で30秒間の合成 伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、 35サイクル。

 PCR後の増幅断片が、目的の塩基配列を有 るものであるかどうかについては、まずPCR よって得られたDNA断片をアガロースゲル電 泳動法によって分離し、その鎖長を確認す ことで行った。次いで、鎖長が正しいと判 されたものにつき、個別に、公知の方法で ークエンス解析を行い、塩基配列が正確か か(すなわち前記2.で特定した各塩基配列を むか否か)を確認した。

4. 2種のDNA断片の接合
 前記3.においてクローニングした2種のDNA断 について、遺伝子組換え技術の常法により RcoRIを用いて制限酵素処理を施し、処理後 DNA断片を、公知の方法により回収及び精製 た。次いで、精製後の2種のDNA断片を、T4 DNA リガーゼにより接合した(互いのRcoRIサイトで ライゲーション)。接合後のDNA断片を鋳型と 、前記配列番号11及び配列番号14で示される 基配列を用いて、前記3.と同様の反応液組 及び反応条件で、PCRを行った。

5.発現ベクターへの挿入
 前記4.のPCRにより得られたDNA断片を、発現 クターである大腸菌タンパク合成プラスミ (pCR2.1:Invitrogen社)のマルチクローニングサイ へ挿入し、本発明の融合タンパク質をコー する塩基配列(配列番号9)を有する組換えベ ターが構築されるようにして、クローニン ・セレクションを行った。なお、配列番号9 に示される塩基配列は、前記4.のPCRにより得 れたDNA断片を一部に含む塩基配列であり、 該塩基配列によりコードされる本発明の融 タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号10 示される通りである。

 すなわち、pCR2.1ベクターに付属のTA-Cloning 試薬を用いたTAクローニング法の常法に従い 前記4.のPCRにより得られたDNA断片をインサ トとしてpCR2.1ベクターに導入した。具体的 は、前記4.のPCR後の反応液を、そのままで( は蒸留水にて10倍希釈して)、TA-Cloning試薬 2 lに対し0.5μlの割合で混合後、室温にて5分間 インキュベートすることにより、目的の組換 えベクターを構築した。なお、得られた組換 えベクターは、上記インキュベート後、下記 6.の形質転換に供した。

6.組換えベクターを大腸菌に導入(形質転換体 の作製)
 上記5.で構築した組換えベクターをDH5α種の 大腸菌に導入して、形質転換体を作製した。
 具体的には、まず、あらかじめ氷上で溶解 たコンピテントセル50μlに対し、前記4.のイ ンキュベート後の溶液を2μl混合し、氷上で30 分間インキュベートした後、42℃で1分間のヒ ートショックを加え、再び氷上で30分間イン ュベートした。
 形質転換した大腸菌液50μlにアンピシリン 含まないTB培地を200μl加え、37℃下で1時間200 rpmにて予備培養を行った後、アンピシリン(50 μg/ml)を含むTB培地を等量(200μl)加え、この培 液を、アンピシリン(50μg/ml)とX-galとを含むL Bプレートに1枚あたり100μlを塗布した。その 、37℃下で1晩静置培養し、出現したコロニ のうち白色のもののみを選択して、アンピ リン(50μg/ml)を含むTB培地2ml中で震盪培養し 。

 震盪培養により増殖した大腸菌を回収後、 ルカリプレップ法の常法に基づいて大腸菌 含まれるプラスミドDNAを精製及び濃縮した
 もともとpCR2.1ベクターは配列内にT7プロモ ターなどの配列を持っているので、同配列 相補鎖を用いてシークエンス解析を行い、 ンサートの塩基配列を確認した。

7.融合タンパク質の産生(形質転換体の培養)
 上記6.のシークエンス解析でインサートの 基配列が正しいと判定されたプラスミドDNA 保有する形質転換体を、アンピシリン(50μg/m l)とIPTG(1mM)とを含むTB培地500mlにて、37℃、200r pmで一晩震盪培養した。
 浸透培養後の菌液を遠心分離処理(9,000rpm,15 間)し、上清を捨て、増殖した菌体(形質転 体)を回収した。回収した菌体は、-80℃にて1 時間以上凍結保存した。

8.産生した融合タンパク質の回収及び精製
 上記7.にて凍結保存した菌体を常法に従い 溶化した。すなわち、上記7.の浸透培養後の 菌液500ml分から回収した菌体に、可溶化バッ ァ(50mM Tris-HCl(pH7.5), 500mM NaCl, 20mM imidazole,  2M urea, 0.5% TritonX-100)50mlを加えて、ポリト ン型ホモジナイザーでホモジナイズした。 いで、可溶化後の菌液を超遠心機にて、4℃ 、40,000Gで2時間遠心した後、上清を回収した 上清にはプロテインG-アビジン融合タンパ 質が溶解しているため、回収した上清200mlあ たり、IgG抗体を固相化したセルロース・ビー ズ(Pierce社製、製品名:AminoLink Plus Coupling Gel) を50μlずつ添加し、4℃、10rpmにて2時間混合吸 着した。次いで、セルロース・ビーズを回収 し、洗浄用バッファで3回洗浄したのち、回 したビーズを洗浄液ごとフィルターカラム 移し、再び洗浄バッファで洗浄した。その 、グリシンバッファによりセルロース・ビ ズに結合している融合タンパク質を溶出及 精製して回収した。
 精製後のタンパク質が目的の融合タンパク であることを、SDS-PAGEにより確認した。そ 結果を図5に示した。

==オリゴヌクレオチド標識化抗体の作製==
 まず、以下の手順により、所定のオリゴヌ レオチドで標識処理した抗EGF抗体を作製し 。

1.オリゴヌクレオチド鎖の調製
 Pin1をインサートしたpcDNA3.1(Invitrogen社製)を 型DNAとし、下記のプライマー(5-MUSTagBio、3-MU STag515)を使用してPCRを行うことにより、5'末 がビオチン化された550merのオリゴヌクレオ ド鎖を調製した。ここで、5-MUSTagBioは、5'末 にビオチンが結合したものであり、5'プラ マー(Fプライマー)として使用した。また、3- MUSTag515は、3'プライマー(Rプライマー)として 用した。
 一方、対照として、5-MUSTagBioの代わりに5-MUS TagSSを使用した以外は、上記と同様にPCRを行 て、5'末端にジスルフィド基(SS基)が導入さ た550merのオリゴヌクレオチド鎖を調製した ここで、5-MUSTagSSは、5-MUSTagBioにおいて、5' 端にビオチンの代わりにジスルフィド基(SS )を結合させた以外は同様のものであり(すな わち塩基配列は同じ)、5'プライマー(Fプライ ー)として使用した。

<5'プライマー>
  5-MUSTagBio:
   5'-Biotin-CGGAATTCGCGGACGAGGAGAAGCTGCCGCCCGGCTGG-3' ( 配列番号15)
  5-MUSTagSS:
   5'-SS-CGGAATTCGCGGACGAGGAGAAGCTGCCGCCCGGCTGG-3' (配 番号15)
<3'プライマー>
  3-MUSTag515:
   5'-AGCTTGACGGGGAAAGCCGG-3'(配列番号16)

 上記PCRは、下記の反応液組成、及び反応条 で行った。
《反応液組成》
 鋳型DNA(100μg/μl):  1μL
 TaqDNAポリメラーゼ:    2.5unit
 5'プライマー(20μM):   2μL
 3'プライマー(20μM):   2μL
 dNTP(2.5mM each):     8μL
 10×Buffer:        10μL
 滅菌水:          適量 (約7 7μL) 
 合計:           100μL

《反応条件》
 「95℃で60秒間の熱変性・解離 → 55℃で60 間のアニーリング → 72℃で30秒間の合成 伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、 35サイクル。

 上記各PCR後の増幅産物は、PCR後に遠心し 得られた上清をMinElute PCR Purification spin co lumn(キアゲン社製)にてフィルター精製するこ とにより単一なオリゴヌクレオチド断片に精 製した。

2.オリゴヌクレオチド標識化抗体の作製
 (1) 本発明のオリゴヌクレオチド標識化抗
 (1-1) ビオチン化オリゴヌクレオチド鎖と、 融合タンパク質との結合
 前記1.で得られたビオチン化オリゴヌクレ チド鎖と、実施例で得られた融合タンパク とを、それぞれ等モルずつ添加混合し、室 で30分インキュベートした。これにより、ビ オチン化オリゴヌクレオチド鎖と、融合タン パク質とが、いわゆるビオチン-アビジン結 してなるオリゴヌクレオチド鎖-融合タンパ 質結合体(約66kDa)を作製した。

 (1-2) オリゴヌクレオチド鎖-融合タンパク 結合体と、IgG抗体との結合
 上記(1-1)で得られたオリゴヌクレオチド鎖- 合タンパク質結合体と、抗hEGF抗体(IgG抗体; 150kDa)とを、それぞれ等モル(100pmol)ずつ添加 混合した。具体的には、1 mg/mlの上記結合体 液6.6μlと、500 mg/mlの抗hEGF抗体溶液30μlとを 混合した。ここで、抗hEGF抗体としては、Anti- hEGF(R&D:Cat#AF236, Lot#AQZ015101)を用いた。その 後、室温で30分インキュベートした。これに り、上記結合体と抗hEGF抗体とが結合してな るオリゴヌクレオチド標識化抗体を作製した 。

 (1-3) 標識化抗体の精製
 上記(1-2)で得られたオリゴヌクレオチド標 化抗体を含む混合物を、0.45μmフィルターで 過した。液体クロマトグラフィー(Phamasia SM ART Systemを用いたゲルろ過法)によるフラクシ ョン分けを行い、オリゴヌクレオチド標識化 抗体のみを精製し回収した。回収したオリゴ ヌクレオチド標識化抗体溶液は、2μg/mLの濃 に調整し、4℃下に保存した。

 (2) 対照オリゴヌクレオチド標識化抗体
 (2-1) 融合タンパク質のアミノ化
 プロテインG(Fr.9:2.36mg/ml)と、Traut試薬(2mg/ml) を、以下の組成で混合し、室温で2時間静置 することにより、プロテインGをアミノ化し 。

 Traut試薬 (2mg/ml)         10 mol
 プロテインG (Fr.9:2.36mg/ml)   1  mol  

 (2-2) オリゴヌクレオチド鎖の脱保護
 前記1.で得られたSS基導入オリゴヌクレオチ ド鎖を20mM Tris-HCl(pH7.4)に溶解させ、10uMのオ ゴヌクレオチド溶液を調製した。次いで、 該オリゴヌクレオチド溶液と1M DTT溶液とを 下記の割合で混合し、室温で30分静置した これにより、オリゴヌクレオチド鎖のSS基を 還元してSH基とした、脱保護化オリゴヌクレ チド鎖を調製した。

 10uM オリゴヌクレオチド溶液   45μl
 1M DTT             5μl  
 合計               50μl

 その後、上記混合後の溶液をSephadexG-50(500μl )ゲルカラムに通し、不要な試薬を除去して フロースルーの吸光度を測定した。

 (2-3) アダプター作製
 上記(2-1)で得られたアミノ化プロテインGと 上記(2-2)で得られた脱保護化オリゴヌクレ チド鎖とを、下記の割合で混合し、室温で1 間静置した。これにより、プロテインGとオ リゴヌクレオチド鎖とが結合してなるアダプ ターを作製した。得れらたアダプター1μl中 は、プロテインGが28ng、オリゴヌクレオチド 鎖が427ng存在することとなる。

 アミノ化プロテインG        0.82μl (Prot einG量:1.4μg)
 脱保護化オリゴヌクレオチド鎖    50.0μl (DNA量:21.7μg)  
 合計                50.82μl

 (2-4) アダプターとIgG抗体との結合
 上記(2-3)で得られたアダプター(オリゴヌク オチド鎖が結合したプロテインG)と、抗hEGF 体(IgG抗体;150kDa)とを、それぞれ等モル(1mol) つ添加混合した。なお、抗hEGF抗体 1molは、 IgG量換算で4.3μgであった。次いで、室温で1 間、軽く振とうさせながら、インキュベー した。その後、遊離抗hEGF抗体を除去するた 、上記混合溶液中にプロテインG固相化ビー ズ(BioLabs社製、製品名:Protein G magnetic beads;1m l)50μlを添加混合して、磁気による分離を行 た。分離後の上清は、対照オリゴヌクレオ ド標識化抗体溶液であるため、該上清を回 し、2μg/mLの濃度に調整して、4℃下に保存し た。

==標識化抗体を用いたhEGF抗原の検出==
 実施例で得られた、本発明のオリゴヌクレ チド標識化抗体と、対照オリゴヌクレオチ 標識化抗体との性能(抗原検出能)を比較し 。

1.hEGF抗原の標準希釈系列(被験サンプル)の作
 hEGFリコンビナント抗原標準液(hEGF濃度:3600  fmol/L = 72 pg/mL)及び標準希釈液を使用して、 hEGFリコンビナント抗原溶液の希釈系列を作 した。ここで、hEGFリコンビナント抗原標準 としては、hEGFリコンビナント抗原(R&D社 、製品名:Cat#236-EG)をPBSで溶解したものを使 し、標準希釈液としては、1% BSA-PBSを使用 た。
 具体的には、下記表に示す通り、まず抗原 準液 (72 pg/mL) 80mLに標準希釈液208mLを加え 3.6倍希釈し、20 pg/mLの抗原標準液を調製し 。次いで、この20 pg/mLの抗原標準液を標準 釈液で5倍希釈して4 pg/mLの抗原標準液を調 し、その後、同様に5倍希釈の作業を4回繰 返して、0.0064 pg/mL(6.4 fg/mL)の抗原標準液の 釈系列を作製した。また、抗原標準液を含 ない標準希釈液のみを、Negative Control(NC)と て使用した。

2.hEGF抗原の感作
 まず、hEGFに対する一次抗体が固相化された イムノプレートの各ウェルに、前記1.で作製 た各希釈系列の抗原標準液を、それぞれ30μ L/wel添加した。上記イムノプレートとしては イムノモジュールプレート(nunc社製、製品 :CN-468667、8連)に対して常法により抗hEGFモノ ローナル抗体(R&D社製、製品名:Cat#MAB636) 固相化したプレートを用いた。
 混合後のプレートにプレートシールを貼り プレートミキサーで攪拌しながら室温下 (2 0~30℃)で60分間攪拌し、hEGFリコンビナント抗 と一次抗体との反応を行った。反応終了後 アスピレーターで各ウェル内の液を除去し 。
 その後、各ウェルに、洗浄液(0.05% Tween20-Tri s-HCl(pH7.4)及び0.5M NaCl)を400μL/well 添加し、20 静置した後、アスピレーターで洗浄液を除 した。同様の洗浄操作をさらに2回繰り返し た(計3回洗浄)。

3.標識化抗体の感作
 実施例で得られた各オリゴヌクレオチド標 化抗体の溶液(原液)50μLに、標識化抗体希釈 液(1% BSA-PBS)12.5 mLを添加して、約250倍希釈し た。
 上記2.の洗浄後の各ウェルに、希釈後のオ ゴヌクレオチド標識化抗体の溶液を50μL/well 加した。添加後、室温下 (20~30℃)で60分間 置し、一次抗体に結合したhEGF抗原と、各オ ゴヌクレオチド標識化抗体との反応を行っ 。反応終了後は、アスピレーターで各ウェ 内の液を除去した。
 その後、各ウェルに、洗浄液(0.05% Tween20-Tri s-HCl(pH7.4)及び0.5M NaCl)を400μL/well 添加し、20 静置した後、アスピレーターで洗浄液を除 した。同様の洗浄操作をさらに2回繰り返し た(計3回洗浄)。

4.増幅工程(オリゴヌクレオチド鎖の増幅)
 (1) EcoRI処理
 上記3.の洗浄後の各ウェルに、EcoRI酵素溶液 (和光純薬工業社製)を添加して、オリゴヌク オチド標識化抗体におけるオリゴヌクレオ ド鎖を切断した。
 具体的には、まずEcoRI酵素溶液を下記の容 比で調製した(EcoRI制限酵素付属のプロトコ に準拠)。

 EcoRI (20unit/μL):  0.4
 10×Buffer:      4
 滅菌水:        35.6  
 合計:         40

 次いで、各ウェルに、調製したEcoRI酵素溶 を30μL/well添加した。添加後のプレートを37 に静置して30分間反応させた。反応後、各ウ ェル内の液を回収して遠心し、上清(EcoRI処理 後のオリゴヌクレオチド断片を含む)を得た

 (2) リアルタイムPCR
 各ウェルに由来する遠心後の上清を、それ れ鋳型DNA溶液とし、下記のプライマー(5-MUST ag-Forw3、3-MUSTag-GEX)及びTaqManプローブ(#1-FAM)を 用してリアルタイムPCRを行った。5-MUSTag-Forw 3は、5'プライマーとして使用し、3-MUSTag-GEXは 、3'プライマーとして使用した。

<5'プライマー>
   5-MUSTag-Forw3:
   5'-TGCATCTAGAGGGCCCTATTCTATA-3' (配列番号17)
<3'プライマー>
   3-MUSTag-GEX:
   5'-GGCAAGCCACGTTTGGTG-3' (配列番号18)
<TaqManプローブ>
   #1-FAM:
   5'-[FAM]- CCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTT -[BHQ]-3' (配 番号19)

 上記リアルタイムPCRは、MX-3005pリアルタイ PCR装置(ストラタジーン社製)を使用し、下記 の反応液組成、及び反応条件で行った。
《反応液組成》
 鋳型DNA(遠心後の上清):        3μL
 2×Buffer:                10μL
 (TaqMan Universal PCR master mix;Applied Biosystems )
 5'プライマー
  5- MUSTag-Forw3 (20μM):       0.4μL
 3'プライマー
  3-MUSTag-GEX (20μM):         0.4μL
 TaqManプローブ
  #1-FAM (2.5μM):           1μL
 Reference Dye (Rox II):         0.4μL
 滅菌水:                 適量 (約4.8μL) 
 合計:                  20μL

《反応条件》
 初めに95℃で10分間の熱変性、次いで「98℃ 15秒間の熱変性・解離 → 60℃で60秒間のア ニーリング・合成・伸長(いわゆる2ステップ )」を1サイクルとするサイクル条件で、計40 サイクル。

6.検出工程(増幅産物の検出)
 リアルタイムPCRによるDNA鎖の合成反応に伴 変動する蛍光量を、反応開始後1分毎に測定 することにより、hEGFリコンビナント抗原の 希釈系列のウェルごとに、増幅断片の検出 可否、及び増幅量の変化を観察した。

7.結果
 上記6の検出結果を、図6~図8に示す。具体的 には、対照オリゴヌクレオチド標識化抗体を 用いて検出を行った結果を図6、本発明のオ ゴヌクレオチド標識化抗体を用いて検出を った結果を図7に示した。また、本発明のオ ゴヌクレオチド標識化抗体に用いた抗hEGF抗 体(IgG抗体)と同じ抗体を常法に従ってHRP標識 て得られた標識化抗体を用い、通常のELISA で検出した結果を図8に示した。
 対照オリゴヌクレオチド標識化抗体を用い 場合は、抗原濃度に依存的な検出結果は認 られず、いずれの抗原濃度においてもδct値 が15~16となる検出結果しか得られなかった。 アルタイムPCRにおいて、δct値は、「PCRによ り増幅されたオリゴヌクレオチド断片の量が 一定値を超えたときのPCRサイクル数」を示す 値である。すなわち、この値が小さいほど、 反応系に含まれるオリゴヌクレオチド断片の 量が多いことを意味する。しかし、図7から わかるように、抗原量が少ないか又は抗原 含まれないものは、δct値が30を超える結果 得られた(オリゴヌクレオチド断片の希釈系 を作製してリアルタイム解析を行っても同 の結果が得られた(データは示さず))。この 果は、抗原プレート上に非常に多くのオリ ヌクレオチド鎖が存在していることを意味 る。すなわち、対照オリゴヌクレオチド標 化抗体を用いた場合は、プレート表面に対 て、当該標識化抗体の多量の非特異的吸着 生じたと言え、これは当該標識化抗体に用 たプロテインGの非特異的吸着性に起因する ものと考えられる。そのため、対照オリゴヌ クレオチド標識化抗体を用いた場合は、バッ クグラウンドが大きくなり、特異的に抗原物 質の検出を行うことができなかった。

 一方、本発明のオリゴヌクレオチド標識 抗体を用いて検出を行った場合は、対照オ ゴヌクレオチド標識化抗体を用いた場合の うなバックグラウンドはなく、非常に良好 結果が得られた。また、本発明の標識化抗 を用いた場合は、ELISAによる検出(検出限界: 8pg/mL(図8))と同じ抗体を使用したにも関わら 、その検出限界は6.4fg/mLであり、ELISAに比べ 1,250倍もの感度向上が認められた。また、 照オリゴヌクレオチド標識化抗体を用いた 合に比べて、「混合操作のみで標識化物質 抗体に結合できる」、「操作手順が少ない 、「反応時間が短い」等の長所が認められ 。

==標識化抗体を用いたHCV抗原の検出==
1.HCV抗原の標準希釈系列(被験サンプル)の作
 C型肝炎ウイルスの定量検出用キットである 「オーソHCV抗原ELISAテスト」(オーソ・クリニ カル・ダイアグノスティックス社製)を入手 、当該キットに付属のHCVリコンビナント抗 標準液 (HCV濃度:3600 fmol/L = 72 pg/mL) と標 希釈液とを使用して、HCVリコンビナント抗 溶液の希釈系列を作製した。
 具体的には、下記表に示す通り、まず抗原 準液 (72 pg/mL) 80mLに標準希釈液208mLを加え 3.6倍希釈し、20 pg/mLの抗原標準液を調製し 。次いで、この20 pg/mLの抗原標準液を標準 釈液で5倍希釈して4 pg/mLの抗原標準液を調 し、その後、同様に5倍希釈の作業を4回繰 返して、0.0064 pg/mL(6.4 fg/mL)の抗原標準液の 釈系列を作製した。

2.HCV患者血清
 C型肝炎ウイルスに感染していることが明白 である患者の凍結血清を3検体用意した。
 使用に際し、夾雑物を除く目的で各サンプ を15,000rpm 15分 (4℃)で遠心分離した後、上 のみを用いた。
 これらのサンプルはすべて含まれるHCVウイ スのコピー数が明らかであったので、下記 の通り、HCV定量検出用キット(前記「オーソ HCV抗原ELISAテスト」)に付属の標準希釈液を用 いて20万ウイルス/mLに調整後、5倍希釈操作を 繰り返した。

3.一次反応工程(HCV抗原の感作)
 まず、HCVに対する一次抗体が固相化された ルチウェルプレート(前記キットに付属)の ウェルに、反応液(前記キットに付属)を100μL /well添加した。次いで、反応液を添加した各 ェルに、前記1.で作製した各希釈系列の抗 標準液ならびに前記2.で調整した患者血清を 、それぞれ100μL/well添加した。添加後、各ウ ル内でピペッティングし、反応液と抗原標 液とを均一に混合した。
 混合後のプレートを、室温下 (20~30℃)、プ ートミキサーで60分間攪拌し、HCVリコンビ ント抗原と一次抗体との反応を行った。反 終了後は、アスピレーターで各ウェル内の を除去した。
 その後、各ウェルに、洗浄液(前記キットに 付属;MilliQで10倍希釈したものを使用)を400μL/w ell 添加し、20秒静置した後、アスピレータ で洗浄液を除去した。同様の洗浄操作をさ に5回繰り返した(計6回)。

4.二次反応工程(HCV二次抗体の感作)
 HCVに対するHRP標識二次抗体溶液(前記キット に付属)50μLに、抗体希釈液(前記キットに付 )5 mLを添加して、約100倍希釈した。
 前記2.の洗浄後の各ウェルに、希釈後の二 抗体溶液を200μL/well添加した。添加後、室温 下 (20~30℃)で30分間放置し、HCVリコンビナン 抗原と二次抗体との反応を行った。反応終 後は、アスピレーターで各ウェル内の液を 去した。
 その後、各ウェルについて、前記2.と同様 洗浄操作を、同回数(計6回)行った。

5.結合工程(オリゴヌクレオチド標識化抗体の 感作)
 (1) オリゴヌクレオチド標識化抗体の作製
 まず、以下の手順により、所定のオリゴヌ レオチドで標識処理した抗HRP抗体を作製し 。
 (1-1) オリゴヌクレオチド鎖の調製
 Pin1をインサートしたpcDNA3.1(Invitrogen社製)を 型DNAとし、下記のプライマー(5-MUSTagBio、3-MU STag515)を使用してPCRを行うことにより、5'末 がビオチン化された550merのオリゴヌクレオ ド鎖を調製した。ここで5-MUSTagBioは、5'末端 ビオチンが結合したものであり、5'プライ ー(Fプライマー)として使用した。また、3-MUS Tag515は、3'プライマー(Rプライマー)として使 した。

<5'プライマー>
   5-MUSTagBio:
   5'-Biotin-CGGAATTCGCGGACGAGGAGAAGCTGCCGCCCGGCTGG-3' ( 配列番号15)
<3'プライマー>
   3-MUSTag515:
   5'-AGCTTGACGGGGAAAGCCGG-3' (配列番号16)

 上記PCRは、下記の反応液組成、及び反応条 で行った。
《反応液組成》
 鋳型DNA(100μg/μl):  1μL
 TaqDNAポリメラーゼ:    2.5unit
 5'プライマー(20μM):   2μL
 3'プライマー(20μM):   2μL
 dNTP(2.5mM each):     8μL
 10×Buffer:        10μL
 滅菌水:          適量 (約7 7μL) 
 合計:           100μL

《反応条件》
 「95℃で60秒間の熱変性・解離 → 55℃で60 間のアニーリング → 72℃で30秒間の合成 伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、 35サイクル。

 上記各PCR後の増幅産物は、PCR後に遠心し 得られた上清をMinElute PCR Purification spin co lumn(キアゲン社製)にてフィルター精製するこ とにより、単一なビオチン化オリゴヌクレオ チド断片に精製した。

 (1-2) オリゴヌクレオチド標識化抗体の作製
  (1-2-1) ビオチン化オリゴヌクレオチド鎖 、融合タンパク質との結合
 上記(1-1)で得られたビオチン化オリゴヌク オチド鎖と、実施例で得られた融合タンパ 質とを、それぞれ等モルずつ添加混合し、 温で30分インキュベートした。これにより、 ビオチン化オリゴヌクレオチド鎖と、融合タ ンパク質とが、いわゆるビオチン-アビジン 合してなるオリゴヌクレオチド鎖-融合タン ク質結合体(約66kDa)を作製した。

  (1-2-2) オリゴヌクレオチド鎖-融合タンパ 質結合体と、IgG抗体との結合
 上記(1-2-1)で得られたオリゴヌクレオチド鎖 -融合タンパク質結合体と、抗HRP抗体(IgG抗体) とを、それぞれ等モル(100pmol)ずつ添加混合し た。具体的には、1 mg/mlの上記結合体溶液6.6 lと、500 mg/mlの抗HRP抗体溶液30μlとを混合し 。ここで、抗HRP抗体としては、Anti-HRP, Goat- Poly(Gentex.Inc. cat#. GTX72888)を用いた。その後 室温で30分インキュベートした。これにより 、上記結合体と抗HRP抗体とが結合してなるオ リゴヌクレオチド標識化抗体を作製した。

  (1-2-3) 標識化抗体の精製
 上記(1-2-2)で得られたオリゴヌクレオチド標 識化抗体を含む混合物を、0.45μmフィルター ろ過した。液体クロマトグラフィー(Phamasia  SMART Systemを用いたゲルろ過法)によるフラク ョン分けを行い、オリゴヌクレオチド標識 抗体のみを精製し回収した。回収したオリ ヌクレオチド標識化抗体溶液は、2μg/mLの濃 度に調整し、4℃下に保存した。

 (2) オリゴヌクレオチド標識化抗体の感作
 上記(1-2)で得られたオリゴヌクレオチド標 化抗体の溶液(原液)4μLに、PBS1mLを添加して 約250倍希釈した。
 前記3.の洗浄後の各ウェルに、希釈後のオ ゴヌクレオチド標識化抗体溶液を50μL/well添 した。添加後、室温下 (20~30℃)で60分間放 し、二次抗体に標識されたHRPと、上記(1)で たオリゴヌクレオチド標識化抗体との反応 行った。反応終了後は、アスピレーターで ウェル内の液を除去した。
 その後、各ウェルに、PBSを400μL/well 添加し 、20秒静置した後、アスピレーターで洗浄液 除去した。同様の洗浄操作をさらに2回繰り 返した(計3回)。

5.増幅工程(オリゴヌクレオチド鎖の増幅)
 (1) EcoRI処理
 上記4.の洗浄後の各ウェルに、EcoRI酵素溶液 を添加して、オリゴヌクレオチド標識化抗体 におけるオリゴヌクレオチド鎖を切断した。
 具体的には、まずEcoRI酵素溶液を下記の容 比で調製した。

 EcoRI (20unit/μL):  0.4
 10×Buffer:      4
 滅菌水:        35.6 
 合計:         40

 各ウェルに、調製したEcoRI酵素溶液を40μL/we ll添加した。添加後のプレートを37℃に静置 て30分間反応させた。
 反応後、各ウェル内の液を回収して遠心し 上清(EcoRI処理後のオリゴヌクレオチド断片 含む)を得た。

 (2) リアルタイムPCR
 各ウェルに由来する遠心後の上清を、それ れ鋳型DNA溶液とし、下記のプライマー(5-MUST ag-Forw3、3-MUSTag-GEX)及びTaqManプローブ(#1-FAM)を 用してリアルタイムPCRを行った。5-MUSTag-Forw 3は、5'プライマーとして使用し、3-MUSTag-GEXは 、3'プライマーとして使用した。

<5'プライマー>
   5-MUSTag-Forw3:
   5'-TGCATCTAGAGGGCCCTATTCTATA-3' (配列番号17)
<3'プライマー>
   3-MUSTag-GEX:
   5'-GGCAAGCCACGTTTGGTG-3' (配列番号18)
<TaqManプローブ>
   #1-FAM:
   5'-[FAM]- CCTTCTAGTTGCCAGCCATCTGTT -[BHQ]-3' (配 番号19)

 上記リアルタイムPCRは、MX-3005pリアルタイ PCR装置(ストラタジーン社製)を使用し、下記 の反応液組成、及び反応条件で行った。
《反応液組成》
 鋳型DNA(遠心後の上清):        3μL
 2×Buffer:               10μL
 (TaqMan Universal PCR master mix;Applied Biosystems )
 5'プライマー
  5- MUSTag-Forw3 (20μM):       0.4μL
 3'プライマー
  3-MUSTag-GEX (20μM):         0.4μL
 TaqManプローブ
  #1-FAM (2.5μM):           1μL
 Reference Dye (Rox II):        0.4μL
  滅菌水:                適 量 (約4.8μL) 
 合計:                 20μL

《反応条件》
 初めに95℃で10分間の熱変性、次いで「98℃ 15秒間の熱変性・解離 → 60℃で60秒間のア ニーリング・合成・伸長(いわゆる2ステップ )」を1サイクルとするサイクル条件で、計40 サイクル。

6.検出工程(増幅産物の検出)
 リアルタイムPCRによるDNA鎖の合成反応に伴 変動する蛍光量を、反応開始後1分毎に測定 することにより、HCVリコンビナント抗原の各 希釈系列のウェルごとに、増幅断片の検出の 可否、及び増幅量の変化を観察した。

7.結果
 上述したように、本発明の検出方法により HCVリコンビナント抗原の希釈系列(72 pg/ml~0. 9 fg/ml)を被験サンプルとして当該抗原の検出 を試みた結果、抗原濃度0.02 pg/ml(20 fg/ml)ま の抗原を検出することが可能であった(図9参 照)。
 一方、3名のC型肝炎患者サンプルにおいて 、いずれの患者からも8000 copy/mLの感度でHCV 原の検出が可能であった(図10参照)。通常、 ELISA法では50 fmol/mLすなわち2~3万copyの検出が 界であるとされており、本発明の検出方法 用いることで、より一層高感度に血中ウイ スを検出が可能であることが示された。

比較例

<多量体を形成しうるストレプトアビジン の融合タンパク質を用いた場合>
 プロテインGの一部からなるタンパク質(IgG 体Fc領域との結合領域を含むタンパク質)と 多量体を形成しうるストレプトアビジンの 部からなるタンパク質とを構成成分として む融合タンパク質を合成し、その合成効率 検討すると同時に、当該融合タンパク質で リゴヌクレオチド鎖-融合タンパク質結合体 作成し、本発明にかかる融合タンパク質と 較した。

1.多量体を形成しうるストレプトアビジンと 融合タンパク質の合成
 まず、実施例と同様の方法で、多量体を形 しうるストレプトアビジンの一部を有する 合タンパク質を合成した。
 ストレプトアビジンの一部の配列はアミノ  16番目~133番目とし、米国特許5328985号公報 従って、このアミノ酸配列を有するタンパ 質をコードする塩基配列を有するDNA鎖(米国 特許5328985号公報;Proc. Natl. Acad. Sci., 87:142(19 90);J. Biol. Chem., 265:3369 (1990))を合成した。 のDNA鎖を、実施例で用いた、融合タンパク を産生する組換えベクターにおけるアビジ 由来のタンパク質をコードする領域と、XbaI びBamHIを用いて置換して、多量体を形成し るストレプトアビジンの一部からなるタン ク質を含む融合タンパク質を発現するコン ロール組換えベクターを作製した。そして 実施例と同様の条件で融合タンパク質を発 させた。結果を図11に示す。なお、図中A,Bと あるのは、組換えベクターを有する異なる大 腸菌クローンである。またNCでは、実施例で いた組み換えベクターからアビジン由来の ンパク質をコードする領域を制限酵素で切 した時に、blunt-endにした後セルフライゲー ョンして作成したネガティブ・コントロー のベクターであって、プロテインGの一部の みを発現し、融合タンパク質は発現しないベ クターを用いた。
 その結果、比較例の融合タンパク質は、細 を可溶化した上清にはほとんど現れず、細 沈渣に多量に含まれていた。これは比較例 融合タンパク質を大腸菌による発現システ で発現させようとしたとき、合成されたタ パクが菌内で封入体を作り、実施例に記載 穏やかな可溶化法では溶出できないことを す。

 そこで、米国特許5328985号に示されるように 、培養液から得られた細胞沈渣を7Mグアニジ 塩酸で37℃ 1時間の可溶化処理を行った後 150 mM NaCl - 50 mM Tris-HCl(pH 7.5) - 0.05% Twee n 20バッファを数回交換しながら24時間の透 によるrefoldingを行った。透析したタンパク 溶液を回収後、Niビーズによる回収法によっ て合成タンパクを回収し、電気泳動法で確認 した。結果を図12に示す。
 その結果、実施例による可溶化処理(レーン 1)に比べ、7Mグアニジン塩酸による可溶化処 によって、細胞沈渣に融合タンパクがほと ど検出できなくなった(レーン2)。また、グ ニジン塩酸を用いて可溶化した上清(レーン4 )からNi-ビーズを用いた精製法により融合タ パクを回収・精製し泳動した結果、実施例 可溶化方法で得られた上清(レーン3)から得 れるより、遙かに大量の合成タンパクが得 れた。

 以上の結果は、選択されたストレプトア ジンの部位が実施例(本発明)と比較例(米国 許5328985号公報)とで異なっており、実施例 は、単量体を形成しうるストレプトアビジ の部位を用いたのに対し、比較例では多量 を形成しうるストレプトアビジンの部位を いたためであると考えられる。

2.比較例の融合タンパク質を用いたオリゴヌ レオチド鎖-融合タンパク質結合体の作成
 実施例と同様にして、比較例の融合タンパ 質及び抗ヒトIL-15抗体を用いてオリゴヌク オチド標識化抗体を作成した。そして、実 例と同様にして、段階希釈したヒトIL-15抗原 に対し、IL-15抗原の検出を行った。結果を図1 3に示す。
 RT-PCR法により得られた結果を基に、縦軸にc t値、横軸に抗原濃度(log10 / 単位 pg/mL)をプ ットした(図13A)。なお、図13A中、実線は各 ラフにおける最小二乗法でのR 2 >0.95となる漸近線、すなわち測定限界を示 。また、図13Aのグラフをネガティブ・コン ロールの値で標準化し、グラフ化した(図13B )。なお、得られた結果を元に最小二乗法に 検出限界を算出し、グラフ内にて矢印で示 た。
 図13で明らかなように、検出限界、定量限 ともに、比較例の融合タンパク質より、本 明の融合タンパク質を用いたほうが、より 濃度での検出が可能であり、より高感度な リゴヌクレオチド標識化抗体が作成できた

 以上の結果は、比較例の融合タンパク質 、グアニジン塩酸による過激な処理によっ 変性した後、refoldingしたものであるため、 やかな可溶化処理によって回収可能な本発 の融合タンパク質より、IgG結合能、あるい ビオチン結合能が劣るためであると考えら る。

3.結論
 このように、本発明にかかる融合タンパク は、単量体を形成しうるストレプトアビジ の部位を用いることによって、グアニジン 酸法などの激しい可溶化方法を用いること く、穏やかな可溶化処理によって多量に回 可能であり、しかも、得られた融合タンパ で合成されたオリゴヌクレオチド鎖-融合タ ンパク質結合体の性能が改善されているとい う点で、多量体を形成しうるストレプトアビ ジンの部位を用いた融合タンパク質に比べて はるかに優れた機能を有する。

 本発明によれば、標的抗原の検出法に用 る標識化抗体を作製するにあたり、カップ ング法等の化学結合法を用いる必要がなく かつ非特異結合を十分に抑制することが可 なアンカー物質として、プロテインGとアビ ジン類との融合タンパク質を提供することが できる。また、本発明によれば、当該融合タ ンパク質を用いて作製した標識化抗体、当該 抗体を使用した標的抗原の検出方法、及び、 当該抗体を含む標的抗原検出用キット等を提 供することができる。

 本発明の融合タンパク質は、抗体の抗原 識能を損なうことなく、標的抗原検出時の ックグラウンドを効果的に低減し得る標識 抗体を作製することができる点で、極めて 用なものである。また、そのような標識化 体を使用した標的抗原の検出方法は、従来 同様の方法で標識化した抗体を使用した場 と比較しても格段に高い検出感度が得られ 点で、例えば、極めて微量段階での検出が 患の予防、診断及び治療等に大きな影響を える医療分野(例えばC型肝炎ウイルスの検 )において、特に有用なものである。