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Title:
GENE ASSOCIATED WITH FOAM FORMATION OF ACETIC ACID BACTERIUM, ACETIC ACID BACTERIUM BRED BY MODIFYING THE GENE AND METHOD FOR PRODUCING VINEGAR USING THE ACETIC ACID BACTERIUM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/114497
Kind Code:
A1
Abstract:
It is intended to provide a method for suppressing foam formation by identifying a gene associated with foam formation during acetic acid bacterial culture and decreasing or deleting the function of a protein encoded by the gene; a method for more efficiently producing vinegar containing a high content of acetic acid by using an acetic acid bacterium with which foam formation is suppressed by employing the method; and vinegar produced by the production method. The acetic acid bacterium with which foam formation is suppressed by obtaining a gene encoding a protein associated with foam formation during acetic acid bacterial culture, and modifying the gene thereby altering the function of the protein associated with foam formation such that the function is decreased or deleted was obtained. Further, the method for efficiently producing vinegar containing a higher content of acetic acid using the acetic acid bacterium is provided.

Inventors:
IIDA AYA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/000571
Publication Date:
September 25, 2008
Filing Date:
March 13, 2008
Export Citation:
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Assignee:
MIZKAN GROUP CORP (JP)
IIDA AYA (JP)
International Classes:
C07K14/195; C12N15/09; C12J1/04; C12N1/20; C12P7/54
Foreign References:
JP2003507056A2003-02-25
Other References:
IIDA A. ET AL.: "Sakusankin Gluconoacetobacter intermedius ni Okeru Quorum Sensing System no Kaiseki", 2007 NENDO NIPON NOGEI KAGAKUKAI TAIKAI KOEN YOSHISHU, 5 March 2007 (2007-03-05), pages 175 + ABSTR. NO. 3A09A04
MIYASHITA K. ET AL.: "Cloning and Analysis of the AWA1 Gene of a Nonfoaming Mutant of a Sake Yeast", J. BIOSCI. BIOENG., vol. 97, no. 1, 2004, pages 14 - 18
DATABASE NUCLEOTIDE 13 February 2008 (2008-02-13), IIDA A. ET AL.: "Gluconacetobacter intermedius ginR, ginI, ginA genes for AHL-dependent transcriptional regulator, AHL synthase, GinA protein, complete cds"
IIDA A. ET AL.: "Sakusankin Gluconoacetobacter intermedius ni Okeru Quorum Sensing System no Kaiseki", 2008 NENDO NIPPON NOGEI KAGAKUKAI TAIKAI KOEN YOSHISHU, 5 March 2008 (2008-03-05), pages 237 + ABSTR. NO. 3A19P01
Attorney, Agent or Firm:
HIROTA, Masanori (8-5 Akasaka 2-chome,Minato-k, Tokyo 52, JP)
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Claims:
以下の(A)、(B)又は(C)に示されるタンパク質。
(A)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタンパク質
(C)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタンパク質
以下の(A)、(B)又は(C)に示されるタンパク質をコードするDNA。
(A)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(B)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、発泡に関与するタンパク質
(C)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタンパク質
以下の(A)、(B)、(C)又は(D)に示されるDNA。
(A)配列表の配列番号1に示される塩基配列からなるDNA
(B)配列表の配列番号1に示される塩基配列に相補的な配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、発泡に関与するタンパク質をコードするDNA
(C)配列表の配列番号1に示される塩基配列の一部から作製したプライマー又はプローブとしての機能を有する塩基配列からなるDNAと、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタンパク質をコードするDNA
(D)配列表の配列番号1に示される塩基配列において、1若しくは数個の塩基の置換、欠失、挿入、又は付加された塩基配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタンパク質をコードするDNA
酢酸菌の発泡に関与する遺伝子がコードするタンパク質の機能を低下ないしは欠損させることを特徴とする発泡能が抑制された酢酸菌の生産方法。
酢酸菌の発泡に関与する遺伝子が、酢酸菌のクオラムセンシングシステムに関与する遺伝子であることを特徴とする請求項4に記載の発泡能が抑制された酢酸菌の生産方法。
酢酸菌の発泡に関与する遺伝子が、請求項2又は請求項3に記載のDNAからなる遺伝子であることを特徴とする請求項5に記載の発泡能が抑制された酢酸菌の生産方法。
請求項4~6のいずれかに記載の方法により得られる、発泡能が抑制された酢酸菌。
グルコンアセトバクター・インターメディウス NCI1051δorf3株(FERM BP-10792)である請求項7記載の発泡能が抑制された酢酸菌。
請求項7又は8に記載の酢酸菌を、アルコールを含む培地で培養して該培地中に酢酸を生成蓄積せしめることを特徴とする食酢の製造方法。
Description:
酢酸菌の発泡に関与する遺伝子 該遺伝子を修飾して育種された酢酸菌、及 該酢酸菌を用いた食酢の製造方法

 本発明は微生物の培養中の発泡に関与す 遺伝子に関し、さらに発泡に関与する遺伝 がコードするタンパク質の機能を低下ない は欠損させることにより、培養中の発泡を 少させ、より多量の酢酸を生成することが 能な酢酸菌、該酢酸菌を用いた食酢の製造 法、及び該製造方法により製造される食酢 関する。

 微生物を利用した食品産業や化学産業に いて、微生物培養の際の発泡が大きな問題 なっている。微生物を培養すると、特に通 攪拌を伴う培養では、多くの場合泡の発生 伴う。この泡は培養槽上部で泡沫を形成し 培養槽の有効体積を減少させたり、培養槽 部からの泡沫の流出により、培養液のロス 培地組成の変化、微生物の漏洩などの問題 生じる。このように発泡は生産効率や品質 低下、環境汚染などの問題を引き起こす。 のため、発泡の抑制は効率よく微生物を培 し、生産物を得る上で重要な課題とされて り、酢酸菌を用いた食酢の製造においても 同様に発泡による生産効率の低下が問題と っていた。

 そこで、泡を消す方法として、物理的方 や化学的方法が開発されている(例えば非特 許文献1及び非特許文献2参照)。例えば、物理 的方法には攪拌羽根等で泡沫にせん断力を加 え、泡沫を破壊する機械的方法や、加熱によ って液体の粘度を低下させ、泡沫を不安定に する熱的方法、通電、スパーク、電流等によ って破泡する電気的方法などが知られている が、いずれの方法も装置の導入、使用にはコ ストがかかる上に、その消泡効果も不十分で あった。

 化学的方法としては、消泡剤を添加する 法が挙げられる。消泡剤としては、アルコ ル類、エステル、脂肪酸、シリコン等の化 物が使用されている。しかし、消泡剤によ 消泡方法は簡便である一方で、消泡剤によ ては、微生物の生育や物質生産に重要な酸 移動速度の低下、微生物の生育阻害、分離 成工程への悪影響などを引き起こす場合が り問題であった。

 微生物培養時の発泡のメカニズムは未解 な点が多いものの、真核生物において発泡 関わる遺伝子やタンパク質がいくつか見出 れている。その1つは酵母でみつかった発泡 に関与する遺伝子awa1である(非特許文献3参照 )。この遺伝子は真核生物に特有のグリコシ フォスファチジルイノシトールアンカータ パク質をコードしていた。このタンパク質 細胞表面の疎水性に関与しており、破壊す と発泡能が抑制される。また、カビやきの 等において、ハイドロフォビンと呼ばれる 水性、又は両親媒性のタンパク質が発見さ た。このハイドロフォビンをコードする遺 子を破壊することにより、発泡能が抑制さ ることが見出されている(特許文献1参照)。 かし、原核生物においては、物理的、化学 方法に代わる新たな消泡手法として、発泡 少ない菌株の育種が求められていたにもか わらず、培養時の発泡に関与する遺伝子や ンパク質についての知見はほとんど得られ いないのが現状である。

 一方、近年、多くの細菌で細胞密度に依 して特定の遺伝子の転写が制御される細胞 情報伝達機構の存在が明らかになっている この情報伝達機構はクオラムセンシングシ テム(quorum sensing system)(集団密度感知制御 )とよばれ、生物発光、菌体外酵素の生産、 原性の発現、バイオフィルムの形成、抗生 質生産など、様々な機能の発現制御に関わ ている。

 ビブリオ・フィッシェリ(Vibrio fischeri)等 多くのグラム陰性細菌で見出されているク ラムセンシングシステムには2つのタンパク 質が関与している(例えば、非特許文献4参照) 。すなわち、細胞間の情報伝達物質であるア シルホモセリンラクトンを合成するアシルホ モセリンラクトン合成酵素、アシルホモセリ ンラクトンの受容体であり転写因子としても 機能するアシルホモセリンラクトン受容体型 転写因子である。菌体内でアシルホモセリン ラクトン合成酵素によって生産されたアシル ホモセリンラクトンは、菌体内外に拡散する 。そして、その濃度の増加に伴い、菌体内で アシルホモセリンラクトン受容体型転写因子 と複合体を形成し、遺伝子の転写を制御する 。

 本発明者はこれまでに酢酸菌のクオラム ンシングシステムに関与する2つの遺伝子、 すなわちアシルホモセリンラクトン合成酵素 をコードする遺伝子とアシルホモセリンラク トン受容体型転写因子をコードする遺伝子を 取得していた。さらに、酢酸菌のクオラムセ ンシングシステムが酢酸生産能に関与してい ることを明らかにしていた。しかし、クオラ ムセンシングシステムと微生物培養時の発泡 との関係は全く分かっていなかった。

発酵工学の基礎、学会出版センター、198 8年 泡技術 使う、作る、排除する、工業調 会、2004年 ジャーナル・オブ・バイオサイエンス・ アンド・バイオエンジニアリング(Journal of b ioscience and bioengineering)、97巻、1号、14-18ぺー ジ、2004年 バイオサイエンスとインダストリー、60 、4号、219~224頁、2002年

特表2003-507056号公報

 本発明の課題は、酢酸菌の培養中の発泡 関与する遺伝子を同定し、該遺伝子がコー するタンパク質の機能を低下ないし欠損さ ることにより発泡を抑制させる方法、さら 、該方法により発泡が抑制された酢酸菌を いることにより高濃度の酢酸を含有する食 をより効率良く製造する方法、及び該製造 法により製造される食酢を提供することに る。

 本発明者は、クオラムセンシングシステ に関与する遺伝子に注目し、従来から知ら ているクオラムセンシングシステム遺伝子 ゲノムサザンやその配列情報に基づいて作 した縮重プライマーを用いたPCR法などによ て、酢酸菌のクオラムセンシングシステム 伝子を取得しようと多くの実験を行ったが 成功しなかった。(クローニング後に、酢酸 菌のクオラムセンシングシステム遺伝子の配 列解析をして、はじめて、既知の配列との相 同性が低いことが成功しなかった原因である ことが判明した。)そこで、レポーター株を 標にクオラムセンシングシステム遺伝子を ローニングする方法について検討すること した。レポーター株を用いたアッセイにお ては、ショットガンクローニングで作製し ライブラリーについて、数千コロニーにつ て試行したが、どのレポーター株でもうま いく訳ではなく、最初クオラムセンシング ステム遺伝子のクローニングに成功しなか た。数種類目のレポーター株として、アグ バクテリウム・チュメファシエンス NTL4(pZLR 4)株を選択したアッセイにおいて、ショット ンクローニングで作製したライブラリーに いて、数千コロニーについて試行してよう く酢酸菌のクオラムセンシングシステム遺 子のクローニングに成功した。

 このようにして酢酸菌のクオラムセンシ グシステムに関与する2つのタンパク質をコ ードする遺伝子、すなわち、アシルホモセリ ンラクトン合成酵素とアシルホモセリンラク トン受容体型転写因子をコードする遺伝子を 酢酸菌において初めて見い出した(特願2007-436 35)。他方、本発明者は発泡が培養後期に起こ ることから、菌体密度依存的遺伝子制御シス テムであるクオラムセンシングシステムと発 泡の関連性にたまたま着目した。そこで、ク オラムセンシングシステムの発泡能への影響 を調べるため、両遺伝子の破壊株の表現型を 解析した結果、両破壊株で発泡能が抑制され ることを見い出した。発泡の原因遺伝子を探 るべく、更なる解析を行なった結果、アシル ホモセリンラクトン合成酵素をコードする遺 伝子の下流に、同遺伝子とオペロンを形成す る機能未知の新規遺伝子を見い出し、発泡に 関与するタンパク質をコードしていることを 見い出した。

 そして、この遺伝子を修飾して、発泡に 与するタンパク質の機能を低下ないし欠損 せることによって、培養中の発泡が顕著に 制され、高濃度の酢酸を含有する食酢をよ 効率良く製造できることを確認し、本発明 完成するに至った。

すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)以下の(A)、(B)又は(C)に示されるタンパク質 。
(A)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 からなるタンパク質
(B)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 において、1若しくは数個のアミノ酸の置換 欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列 らなり、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に 与するタンパク質
(C)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 と少なくとも85%以上の相同性を有するアミ 酸配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中 発泡に関与するタンパク質

(2)以下の(A)、(B)又は(C)に示されるタンパク質 をコードするDNA。
(A)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 からなるタンパク質
(B)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 において、1若しくは数個のアミノ酸の置換 欠失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列 らなり、かつ、発泡に関与するタンパク質
(C)配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配 と少なくとも85%以上の相同性を有するアミ 酸配列からなり、かつ、酢酸菌の培養液中 発泡に関与するタンパク質

(3)以下の(A)、(B)、(C)又は(D)に示されるDNA。
(A)配列表の配列番号1に示される塩基配列か なるDNA
(B)配列表の配列番号1に示される塩基配列に 補的な配列からなるDNAとストリンジェント 条件下でハイブリダイズし、かつ、発泡に 与するタンパク質をコードするDNA
(C)配列表の配列番号1に示される塩基配列の 部から作製したプライマー又はプローブと ての機能を有する塩基配列からなるDNAと、 トリンジェントな条件下でハイブリダイズ 、かつ、酢酸菌の培養液中の発泡に関与す タンパク質をコードするDNA
(D)配列表の配列番号1に示される塩基配列に いて、1若しくは数個の塩基の置換、欠失、 入、又は付加された塩基配列からなり、か 、酢酸菌の培養液中の発泡に関与するタン ク質をコードするDNA

(4)酢酸菌の発泡に関与する遺伝子がコードす るタンパク質の機能を低下ないしは欠損させ ることを特徴とする発泡能が抑制された酢酸 菌の生産方法。
(5)酢酸菌の発泡に関与する遺伝子が、酢酸菌 のクオラムセンシングシステムに関与する遺 伝子であることを特徴とする上記(4)に記載の 発泡能が抑制された酢酸菌の生産方法。
(6)酢酸菌の発泡に関与する遺伝子が、上記(2) 又は上記(3)に記載のDNAからなる遺伝子である ことを特徴とする上記(5)に記載の発泡能が抑 制された酢酸菌の生産方法。
(7)上記(4)~(6)のいずれかに記載の方法により られる、発泡能が抑制された酢酸菌。
(8)グルコンアセトバクター・インターメディ ウス NCI1051△orf3株(FERM BP-10792)である上記(7) 載の発泡能が抑制された酢酸菌。
(9)上記(7)又は(8)に記載の酢酸菌を、アルコー ルを含む培地で培養して該培地中に酢酸を生 成蓄積せしめることを特徴とする食酢の製造 方法。

 本発明によれば、酢酸菌の発泡に関与す 遺伝子と該タンパク質が提供される。また 該遺伝子がコードするタンパク質の機能を 下ないし欠損させることにより培養中の発 を顕著に抑制させる方法が提供される。さ に、培養中の発泡を顕著に抑制させて高濃 の酢酸を含有する食酢をより効率的に製造 る方法が提供され、また該製造方法によっ 製造された高濃度の酢酸を含有する食酢が 供される。

野生株とorf3破壊株を培養した際の発泡 の様子を示した図である。 野生株とorf3破壊株を培養した際の発泡 の様子を示した図である。 orf3を含むDNA断片の塩基配列(配列番号1) を示した図である。 orf3のアミノ酸配列(配列番号2)を示した 図である。 プライマー1の塩基配列(配列番号3)を示 した図である。 プライマー2の塩基配列(配列番号4)を示 した図である。 プライマー3の塩基配列(配列番号5)を示 した図である。 プライマー4の塩基配列(配列番号6)を示 した図である。 プライマー5の塩基配列(配列番号7)を示 した図である。 プライマー6の塩基配列(配列番号8)を した図である。

 以下、本発明を詳細に説明する。
 本発明のタンパク質としては、酢酸菌の発 に関与するタンパク質である。具体的には 配列表の配列番号2(図4)に示されるアミノ酸 配列からなるタンパク質や、配列表の配列番 号2(図4)に示されるアミノ酸配列において、1 しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿入 又は付加されたアミノ酸配列からなり、か 、発泡に関与するタンパク質や、配列表の 列番号2(図4)に示されるアミノ酸配列と少な くとも85%以上の相同性を有するアミノ酸配列 からなり、かつ、発泡に関与するタンパク質 に関する。本発明において、「発泡に関与す るタンパク質」とは、当該タンパク質の機能 を低下ないしは欠損させることにより、酢酸 菌の培養中の発泡が抑制されるタンパク質を いう。

 本発明のタンパク質の取得・調製方法は に限定されず、単離した天然由来のタンパ 質でも、化学合成したタンパク質でも、遺 子組換え技術により作製した組換えタンパ 質の何れでもよい。天然由来のタンパク質 取得する場合には、かかるタンパク質を発 している細胞からタンパク質の単離・精製 法を適宜組み合わせて本発明のタンパク質 取得することができる。

 化学合成により本発明のタンパク質を調 する場合には、例えば、Fmoc法(フルオレニ メチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチル オキシカルボニル法)等の化学合成法に従っ 本発明のタンパク質を合成することができ 。また、各種の市販のペプチド合成機を利 して本発明のタンパク質をそのアミノ酸配 情報に基づいて合成することもできる。

 また、遺伝子組換え技術により本発明の ンパク質を調製する場合には、該タンパク をコードするDNAを好適な発現系に導入する とにより本発明のタンパク質を調製するこ ができる。これらの中でも、比較的容易な 作でかつ大量に調製することが可能な遺伝 組換え技術による調製が好ましい。

 なお、遺伝子組換え技術によって本発明 タンパク質を調製する場合に、かかるタン ク質を細胞培養物から回収し精製するには 硫酸アンモニウム又はエタノール沈殿、酸 出を行った後、アニオン又はカチオン交換 ロマトグラフィー、ホスホセルロースクロ トグラフィー、疎水性相互作用クロマトグ フィー、アフィニティークロマトグラフィ 、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフ ー及びレクチンクロマトグラフィーを含め 公知の方法が用いられ、好ましくは、高速 体クロマトグラフィーが用いられる。

 特に、アフィニティークロマトグラフィ に用いるカラムとしては、例えば、本発明 タンパク質に対するモノクローナル抗体等 抗体を結合させたカラムや、上記本発明の ンパク質に通常のペプチドタグを付加した 合は、このペプチドタグに親和性のある物 を結合したカラムを用いることにより、こ らのタンパク質の精製物を得ることができ 。

 さらに、配列表の配列番号2(図4)に示され るアミノ酸配列において1若しくは数個のア ノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加とされ アミノ酸配列からなるタンパク質、又は、 列表の配列番号2(図4)に示されるアミノ酸配 と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列か なるタンパク質は、配列表の配列番号2(図4) に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配 列の一例を示した配列表の配列番号1(図3)に される塩基配列の情報に基づいて当業者で れば適宜調製又は取得することができる。

 例えば、配列表の配列番号1(図3)に示され る塩基配列に基づいて合成したオリゴヌクレ オチドをプライマーに用いるポリメラーゼ・ チェーン・リアクション(PCR反応)によって、 るいは該塩基配列に基づいて合成したオリ ヌクレオチドをプローブとして用いるハイ リダイゼーションによって、アセトバクタ 属やグルコンアセトバクター属に属する酢 菌、あるいはそれら以外の酢酸菌より、該D NAのホモログを適当な条件下でスクリーニン することにより単離することができる。こ ホモログDNAの全長DNAをクローニング後、発 ベクターに組み込み適当な宿主で発現させ ことにより、該ホモログDNAによりコードさ るタンパク質を製造することができる。

 オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、 販されている種々のDNA合成機を用いて定法 従って合成できる。また、PCR反応は、アプ イドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)製 サーマルサイクラーGene Amp PCR System 2400を 用い、TaqDNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製) KOD-Plus-(東洋紡績社製)などを使用して、定 に従って行うことができる。

 さらに、上記本発明のタンパク質とマー ータンパク質及び/又はペプチドタグとを結 合させて融合タンパク質とすることもできる 。マーカータンパク質としては、従来知られ ているマーカータンパク質であれば特に制限 されるものではなく、例えば、アルカリフォ スファターゼ、HRP等の酵素、抗体のFc領域、G FP等の蛍光物質などを具体的に挙げることが き、またペプチドタグとしては、HA、FLAG、M yc等のエピトープタグや、GST、マルトース結 タンパク質、ビオチン化ペプチド、オリゴ スチジン等の親和性タグなどの従来知られ いるペプチドタグを具体的に例示すること できる。かかる融合タンパク質は、常法に り作製することができ、Ni-NTAとHisタグの親 性を利用した本発明のタンパク質の精製や 本発明のタンパク質の検出や、本発明のタ パク質に対する抗体の定量や、その他当該 野の研究用試薬としても有用である。

 また、本発明のDNAとしては、配列表の配 番号2(図4)に示されるアミノ酸配列からなる タンパク質をコードするDNAや、配列表の配列 番号2(図4)に示されるアミノ酸配列において 1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失、挿 、又は付加されたアミノ酸配列からなり、 つ、発泡に関与するタンパク質をコードす DNAや、配列表の配列番号2(図4)に示されるア ミノ酸配列と少なくとも85%以上の相同性を有 するアミノ酸配列からなり、かつ、発泡に関 与するタンパク質をコードするDNAや、配列表 の配列番号1(図3)に示される塩基配列からな DNAや、配列表の配列番号1(図3)に示される塩 配列に相補的な配列からなるDNAとストリン ェントな条件下でハイブリダイズし、かつ 発泡に関与するタンパク質をコードするDNA 、配列表の配列番号1(図3)に示される塩基配 列の一部から作製したプライマー又はプロー ブとしての機能を有する塩基配列からなるDNA と、ストリンジェントな条件下でハイブリダ イズし、かつ、発泡に関与するタンパク質を コードするDNAや、配列表の配列番号1(図3)に される塩基配列において、1若しくは数個の ミノ酸の置換、欠失、挿入、又は付加され 塩基配列からなり、かつ、発泡に関与する ンパク質をコードするDNAを挙げることがで る。

 このように、本発明の発泡に関与するタ パク質をコードするDNAは、コードされるタ パク質の機能が損なわれない限り、1又は複 数の位置で1又は数個のアミノ酸が欠失、置 、挿入、又は付加されたタンパク質をコー するものであってもよい。

 このような発泡に関与するタンパク質と ての機能を有するタンパク質と実質的に同 のタンパク質をコードするDNAは、例えば部 特異的変異法によって、特定の部位のアミ 酸を欠失、置換、挿入又は付加し、あるい 逆位として塩基配列を改変することによっ も取得することができる。また、上記のよ な改変されたDNAは、従来知られている突然 異処理によっても取得することができる。 らに、一般的にタンパク質のアミノ酸配列 びそれをコードする塩基配列は、種間、株 、変異体、変種間でわずかに異なることが られているので、実質的に同一のタンパク をコードするDNAは、酢酸菌全般、中でもア トバクター属やグルコンアセトバクター属 種、株、変異体、変種から得ることが可能 ある。

 上記「1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠 失、挿入、又は付加されたアミノ酸配列」と は、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好 しくは1~10個、さらに好ましくは1~5個の任意 の数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付 加されたアミノ酸配列を意味する。
 また、上記「1若しくは数個の塩基が置換、 欠失、挿入、又は付加された塩基配列」とは 、例えば1~20個、好ましくは1~15個、より好ま くは1~10個、さらに好ましくは1~5個の任意の 数の塩基が置換、欠失、挿入、又は付加され た塩基配列を意味する。

 例えば、これら1若しくは数個の塩基が置 換、欠失、挿入、又は付加された塩基配列か らなるDNA(変異DNA)は、上記のように、化学合 、遺伝子工学的手法、突然変異誘発などの 業者に既知の任意の方法により作製するこ もできる。具体的には、配列表の配列番号1 に示される塩基配列からなるDNAに対し、変異 原となる薬剤を接触作用させる方法、紫外線 を照射する方法、遺伝子工学的な手法等を用 いて、これらDNAに変異を導入することにより 、変異DNAを取得することができる。遺伝子工 学的手法の一つである部位特異的変異誘発法 は特定の位置に特定の変異を導入できる手法 であることから有用であり、モレキュラーク ローニング第2版(Molecular Cloning: A laboratory M annual, 2nd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY.,1989)やカレントプロトコール ズ・イン・モレキュラーバイオロジー(Current Protocols in Molecular Biology, Supplement 1~38,John  Wiley & Sons (1987-1997))等に記載の方法に準 て行うことができる。この変異DNAを適切な 現系を用いて発現させることにより、1若し くは数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、又 は付加されたアミノ酸配列からなるタンパク 質を得ることができる。

 上記「配列表の配列番号2(図4)に示される アミノ酸配列と少なくとも85%以上の相同性を 有するアミノ酸配列」とは、配列表の配列番 号2(図4)に示されるアミノ酸配列との相同性 85%以上であれば特に制限されるものではな 、例えば、85%以上、好ましくは90%以上、よ 好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上 あることを意味する。

 上記「ストリジェントな条件下」とは、 わゆる特異的なハイブリッドが形成され、 特異的なハイブリッドが形成されない条件 いい、具体的には、50%以上、好ましくは70% 上の相同性を有するDNA同士がハイブリダイ し、それより相同性が低いDNA同士がハイブ ダイズしない条件あるいは通常のサザンハ ブリダイゼーションの洗いの条件である65 、1×SSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウム)、0. 1%SDS、又は0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度で イブリダイズする条件を挙げることができ 。

 また、上記「ストリンジェントな条件下 ハイブリダイズするDNA」とは、DNA又はRNAな の核酸をプローブとして使用し、コロニー ハイブリダイゼーション法、プラークハイ リダイゼーション法、あるいはサザンブロ トハイブリダイゼーション法等を用いるこ により得られるDNAを意味し、具体的には、 ロニーあるいはプラーク由来のDNAまたは該D NAの断片を固定化したフィルターを用いて、0 .7~1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼー ョンを行った後、0.1~2倍程度のSSC溶液を用い 、65℃条件下でフィルターを洗浄することに り同定できるDNAをあげることができる。

 ハイブリダイゼーションは、モレキュラ クローニング第2版等に記載されている方法 に準じて行うことができる。例えば、ストリ ンジェントな条件下でハイブリダイズするこ とができるDNAとしては、プローブとして使用 するDNAの塩基配列と一定以上の相同性を有す るDNAが挙げることができ、例えば60%以上、好 ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さ らに好ましくは90%以上、特に好ましくは95%以 上、最も好ましくは98%以上の相同性を有する DNAを好適に例示することができる。

 本発明のDNAの取得方法や調製方法は特に 定されるものでなく、本明細書中に開示し 配列表の配列番号1(図3)に示される塩基配列 情報又は配列表の配列番号2(図4)や配列表の 列番号3(図5)に示されるアミノ酸配列情報に づいて適当なブローブやプライマーを調製 、それらを用いて当該DNAが存在することが 測されるcDNAライブラリーをスクリーニング することにより目的のDNAを単離したり、常法 に従って化学合成により調製することができ る。

 例えば、アセトバクター属やグルコンア トバクター属に属する酢酸菌から、常法に ってcDNAライブラリーを調製し、次いで、こ のライブラリーから、本発明の遺伝子DNAに特 有の適当なプローブを用いて所望クローンを 選抜することにより、本発明の遺伝子DNAを取 得することができる。また、これらの酢酸菌 からの全RNAの分離、mRNAの分離や精製、cDNAの 得とそのクローニングなどはいずれも常法 従って実施することができる。本発明の遺 子DNAをcDNAライブラリーからスクリーニング する方法は、例えば、モレキュラークローニ ング第2版に記載の方法等、当業者により常 される方法を挙げることができる。

 本発明のDNAは、その塩基配列が明らかと ったので、例えば、鋳型として酢酸菌グル ンアセトバクター・インターメディウス NC I1051(Gluconacetobacter intermedius NCI1051)株のゲノ DNAを用い、該塩基配列に基づいて合成した リゴヌクレオチドをプライマーに用いるPCR 応によって、または該塩基配列に基づいて 成したオリゴヌクレオチドをプローブとし 用いるハイブリダイゼーションによっても ることができる。なお、染色体DNAは、常法( えば、特開昭60-9489号公報)に開示された方 により取得できる。

 オリゴヌクレオチドの合成は、例えば、 販されている種々のDNA合成機を用いて常法 従って合成できる。また、PCR反応は、アプ イドバイオシステムズ社(Applied Biosystems)製 サーマルサイクラーGene Amp PCR System 2400を 用い、TaqDNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製) KOD-Plus-(東洋紡績社製)などを使用して常法 従って行なうことができる。

 本発明のDNAは、例えば部位特異的変異法 よって、特定の部位のアミノ酸が欠失、置 、挿入、又は付加されるように塩基配列を 変することによって取得され得る。また、 記のような改変されたDNAは、従来知られて る突然変異処理によっても取得することが きる。

 また、一般的にタンパク質のアミノ酸配 及びそれをコードする塩基配列は、種間、 間、変異体、変種間でわずかに異なること 知られているので、実質的に同一のタンパ 質をコードするDNAは、酢酸菌全般、中でも セトバクター属やグルコンアセトバクター の種、株、変異体、変種から得ることが可 である。

 具体的には、アセトバクター属やグルコ アセトバクター属の酢酸菌、又は変異処理 たアセトバクター属やグルコンアセトバク ー属の酢酸菌、これらの自然変異株若しく 変種から、例えば配列表の配列番号1(図3)に 記載の塩基配列を有するDNAとストリンジェン トな条件下でハイブリダイズし、かつ、発泡 に関与するタンパク質をコードするDNAを単離 することによっても、該タンパク質と実質的 に同一のタンパク質をコードするDNAが得られ る。

 また、上記配列表の配列番号2(図4)に示さ れるアミノ酸配列において1若しくは数個の ミノ酸が置換、欠失、挿入、又は付加され アミノ酸配列からなり、かつ、発泡に関与 るタンパク質をコードするDNAや、配列表の 列番号2(図4)又は配列表の配列番号3(図5)に示 されるアミノ酸配列と少なくとも85%以上の相 同性を有するアミノ酸配列からなり、かつ発 泡に関与するタンパク質としての機能を有す るタンパク質をコードするDNAなどからなる本 発明の変異遺伝子又は相同遺伝子としては、 配列表の配列番号1(図3)に示される塩基配列 はその一部を有するDNA断片を利用し、他の 酸菌等から、該DNAのホモログを適当な条件 でスクリーニングすることにより単離する とができる。その他、前述の変異DNAの作製 法により調製することもできる。

 例えば、アセトバクター属やグルコンア トバクター属の酢酸菌、又は変異処理した セトバクター属やグルコンアセトバクター の酢酸菌、これらの自然変異株若しくは変 から、例えば配列表の配列番号1に示される 塩基配列、又はその一部から作製したプロー ブと、ストリンジェントな条件下でハイブリ ダイズし、発泡に関与するタンパク質をコー ドするDNAを単離することによっても、該タン パク質と実質的に同一のタンパク質をコード するDNAが得ることができる。

 本発明の酢酸菌には特に制限はなく、例え 、アルコール酸化能を有するアセトバクタ 属(Acetobacter)やグルコンアセトバクター属(Gl uconacetobacter)などの細菌があげられるが、本 明の酢酸菌は上記の如く発泡に関与する遺 子がコードするタンパク質の機能が低下な しは欠損するように改変されたことを特徴 するものであり、以下のものが例示される
 すなわち、グルコンアセトバクター属(Glucon acetobacter)に属する酢酸菌としては、例えば、 グルコンアセトバクター・インターメディウ ス(Gluconacetobacter intermedius)、グルコンアセト クター・キシリヌス(Gluconacetobacter xylinus)、 グルコンアセトバクター・ヨーロパエウス(Gl uconacetobacter europaeus)、グルコンアセトバクタ ー・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotr ophicus)、グルコンアセトバクター・エンタニ (Gluconacetobacter entanii)などがあげられ、さら に具体的には、グルコンアセトバクター・キ シリヌス IFO3288(Gluconacetobacter xylinus IFO3288) グルコンアセトバクター・ヨーロパエウス  DSM6160(Gluconacetobacter europaeus DSM6160)株、グル ンアセトバクター・ジアゾトロフィカス ATC C49037(Gluconacetobacter diazotrophicus ATCC49037)株、 セトバクター・アルトアセチゲネス MH-24(Ace tobacter altoacetigenes MH-24)株、グルコンアセト クター・インターメディウス NCI1051(Gluconace tobacter intermedius NCI1051)(FERM BP-10767)株などが げられる。

 また、アセトバクター属(Acetobacter)に属す る酢酸菌としては、例えば、アセトバクター ・アセチ(Acetobacter aceti)があげられ、さらに 体的には、アセトバクター・アセチ No.1023( Acetobacter aceti No.1023)株、アセトバクター・ セチ IFO3283(Acetobacter aceti IFO3283)株などがあ げられる。

 本発明の酢酸菌の発泡に関与する遺伝子( すなわち、酢酸菌の発泡に関与するタンパク 質をコードする遺伝子)がコードするタンパ 質の機能を低下ないしは欠損させる発泡能 抑制された酢酸菌の生産方法としては、酢 菌の発泡に関与するタンパク質をコードす 遺伝子の発現や、該遺伝子がコードするタ パク質の活性が阻害を受けるような物理的 件下で、該酢酸菌を培養する方法がある。

 また、酢酸菌の発泡に関与する遺伝子を 飾して、機能を低下ないし欠損させること 有効である。また、これらの遺伝子の発現 制御するように当該遺伝子の発現に関与す 遺伝子部分に突然変異を誘導することも有 である。なお、遺伝子を修飾する方法とし は、物理的処理や化学的変異剤を用いて当 遺伝子に突然変異を誘導する方法が有効で り、これらの突然変異を誘導する方法とし は、従来、酢酸菌で実施されてきた方法が 効である。例えば、酢酸菌を紫外線照射ま はN-メチル-N’-ニトロ-N-ニトロソグアニジ (NTG)もしくは亜硝酸等の通常変異処理に用い られている変異剤によって処理し、突然変異 を誘発させる方法があげられる。

 なお、酢酸菌は自然に変異を起こしやす 細菌として知られていることから、自然界 ら、上記酵素の発現や機能に自然に変異を こした遺伝子を有する酢酸菌を分離するこ によっても発泡能が抑制された酢酸菌を得 ことができる。また、既にこれらの遺伝子 取得され、塩基配列も明らかとなっている で、これらの遺伝子を組換えることによっ 変異を導入した遺伝子を元の酢酸菌中に導 し、相同組換えなどを利用して元の酢酸菌 当該遺伝子の機能を低下ないし欠損させる とも有効である。例えば、発泡に関与する ンパク質をコードする遺伝子の部分配列を 失させる、又は、該遺伝子の内部に薬剤耐 遺伝子を挿入するなどして正常に機能する 泡に関与するタンパク質を産生しないよう 修飾した遺伝子を含むDNAで酢酸菌を形質転 し、染色体上の正常な遺伝子との間で相同 換えを起こさせることにより、染色体上の 遺伝子を破壊することなどの方法が有効で る。

 また、本発明の発泡に関与する遺伝子が オラムセンシングシステムによって制御さ ている場合には、同システムの機能を低下 いし欠損させることによっても発泡に関与 る遺伝子がコードするタンパク質の機能を 下ないしは欠損させることができる。例え 、アシルホモセリンラクトン合成酵素遺伝 及び/若しくはアシルホモセリンラクトン受 容体型転写因子遺伝子を破壊することにより 、アシルホモセリンラクトン合成酵素及び/ しくはアシルホモセリンラクトン受容体型 写因子の機能が低下又は欠損した、発泡能 抑制された酢酸菌を作製することができる

 なお、酢酸菌の形質転換は、塩化カルシ ウム法(例えば、アグリカルチュラル・アン ド・バイオロジカル・ケミストリー(Agric. Bio l. Chem.)、49巻、2091頁、1985年参照)やエレクト ロポレーション法(例えば、バイオサイエン ・バイオテクノロジー・アンド・バイオケ ストリー(Biosci. Biotech. Biochem.)、58巻、974頁 1994年参照)等によって行うことができる。

 このようにして、アルコール酸化能を有 るアセトバクター属(Acetobacter)やグルコンア セトバクター属(Gluconacetobacter)の酢酸菌にお て、上記のようにして発泡に関与するタン ク質の機能を低下ないしは欠損させて正常 機能しないように改変することにより、培 中の発泡を抑制させることができる。

 本発明の発泡能が抑制された酢酸菌とし 、具体的にグルコンアセトバクター・イン ーメディウス NCI1051δorf3株(FERM BP-10792)や、 アシルホモセリンラクトン受容体型転写因子 をコードする遺伝子の破壊株であるアシルホ モセリンラクトン合成酵素をコードする遺伝 子の破壊株であるグルコンアセトバクター・ インターメディウス NCI1051△orf1(FERM BP-10768) 、グルコンアセトバクター・インターメデ ウス NCI1051△orf2(FERM BP-10769)を挙げること できるが、中でも上記NCI1051δorf3株を好適に げることができる。

 本発明の食酢の製造方法は、酢酸菌の発 に関与するタンパク質の機能を低下ないし 欠損させて正常に機能しないようにして、 ルコールを含有する培地で培養して該培地 に酢酸を生成蓄積せしめること以外は、従 公知の方法が採用される。すなわち、酢酸 の培養は基本的には酢酸発酵が可能な条件 行えば良く、具体的には、従来の酢酸菌の 酵法による食酢の製造法と同様にして行え 良い。

 また、アルコールを含有する培地として 酢酸発酵に使用する培地であれば良く、エ ノールなどのアルコール成分の他、炭素源 窒素源、無機物等を含有し、必要があれば 用菌株が生育に要求する栄養源を適当量含 するものを用いることができる。培地は、 成培地でも天然培地でも良い。炭素源とし は、グルコースやシュークロースをはじめ する各種炭水化物、各種有機酸が挙げられ 。窒素源としては、ペプトン、発酵菌体分 物などの天然窒素源を用いることができる

 また、培養条件は、静置培養法、振とう 養法、通気攪拌培養法等の好気的条件下で ない、培養温度は25~35℃、通常30℃とする。 培地のpHは、通常は2.5~7の範囲であり、2.7~6.5 範囲が好ましく、各種酸、各種塩基、緩衝 等によって調製することができる。通常1~21 日間培養することによって、培地中に高濃度 の酢酸が蓄積する。このような本発明の食酢 の製造方法により、培養中の発泡が抑制され 、高酸度の食酢をより効率良く製造すること ができる。

 以下、本発明を実施例により具体的に説 するが,本発明の技術的範囲はこれらの例示 に限定されるものではない。

[発泡に関与する遺伝子]
 培養液中の発泡が培養後期に起こることか 、発泡は菌体密度依存的遺伝子制御システ であるクオラムセンシングシステムの制御 にあるのではないかと考えた。そこで、独 行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託 ンター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地 央第6)に2007年1月31日付で、受託番号 FERM BP -10767としてブダペスト条約に基づき寄託され ているグルコンアセトバクター・インターメ ディウス NCI1051(Gluconacetobacter intermedius NCI105 1)株(以下、野生株と称する場合もある)のア ルホモセリンラクトン合成酵素をコードす 遺伝子の破壊株であり、同じく独立行政法 産業技術総合研究所特許生物寄託センター( 本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6)に 2007年1月31日付で、受託番号 FERM BP-10768とし ブダペスト条約に基づき寄託されているグ コンアセトバクター・インターメディウス NCI1051△orf1(Gluconacetobacter intermedius NCI1051△or f1)株(以下、orf1破壊株と称する場合もある)及 び独立行政法人産業技術総合研究所特許生物 寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1 番地中央第6)に2007年1月31日付で、受託番号 F ERM BP-10769としてブダペスト条約に基づき寄 されているアシルホモセリンラクトン受容 型転写因子をコードする遺伝子の破壊株で るグルコンアセトバクター・インターメデ ウス NCI1051△orf2(Gluconacetobacter intermedius NCI1 051△orf2)株(以下、orf2破壊株と称する場合も る)の発泡量を野生株と比較した。

 具体的には、500ml容坂口フラスコを用い 、エタノール2%、グルコース3%、酵母エキス0 .5%、ポリペプトン0.3%、アンピシリン100μg/ml セルクラスト1.5L(ノボザイムス製)1%を含む100  mlの培地にて、30℃、120spm、振とう培養を行 った。その結果、orf1破壊株及びorf2破壊株は 野生株と比較して、発泡が顕著に抑制され ことがわかった。このことから、酢酸菌培 中の発泡がクオラムセンシングシステムに って制御されていることが示唆された。

 上記結果を確認するため、orf1及びorf2の 補株の作製を試みた。その結果、orf1破壊株 相補には、orf1の後ろにオペロンとして存在 するorf3が必要であることが判明した。なお orf3を含むDNAの塩基配列は、図3及び配列番号 1であることを決定し、orf3は配列番号1の塩基 番号1~267に相当することが確認された。

 以上の結果から、orf3が発泡に関与する遺伝 子であることが示唆された。
 そこで、図3及び配列表の配列番号1の塩基 号1~267に示される塩基配列からなるorf3遺伝 の相同性検索を行なったところ、有意な相 性を有する配列は他に存在せず、新規な遺 子であることがわかった。なお、orf2につい も相補株を作製し、表現型が回復すること 確認した。

[発泡に関与する遺伝子の破壊株]
 実施例1でorf3が発泡に関与する遺伝子であ ことが示唆された。そこで、orf3の発泡への 与を調べるため、orf3の破壊株を作製した。 すなわち、orf3の塩基配列に基づいて、プラ マー1(図5及び配列表の配列番号3参照)及びプ ライマー2(図6及び配列表の配列番号4参照)を 成し、グルコンアセトバクター・インター ディウス NCI1051株の染色体DNAを鋳型にして PCR法によりorf1の上流配列と5’側配列を増 し、該増幅産物を制限酵素EcoRIとKpnI(タカラ イオ製)で処理してDNA断片(DNA断片1)を調製し た。

 同様にして、プライマー3(図7及び配列表 配列番号5参照)及びプライマー4(図8及び配 表の配列番号6参照)を合成し、グルコンアセ トバクター・インターメディウス NCI1051株の 染色体DNAを鋳型にして、PCR法によりorf1の3’ 配列と下流配列を増幅し、該増幅産物を制 酵素HindIII(タカラバイオ製)で処理してDNA断 (DNA断片2)を調製した。

 また、大腸菌トランスポゾンTn5を鋳型に て、プライマー5(図9及び配列表の配列番号7 参照)及びプライマー6(図10及び配列表の配列 号8参照)を使用して、PCR法によりカナマイ ン耐性遺伝子を含むDNA断片を増幅し、該増 産物を制限酵素SmaI(タカラバイオ製)で処理 てDNA断片(DNA断片3)を調製した。

 染色体DNAはGenomicPrep Cells and Tissue DNA Is olation Kit(AmershamBiosciences製)を用いて抽出した 。また、PCR反応はPyrobest DNA Polymerase(タカラ イオ製)を用い、変性94℃、30秒、会合55℃、 30秒、伸長、72℃、1分の条件で30サイクル行 った。次にDNA断片3をpUC18のSmaIサイトに連結 た。このようにして調製したDNAを大腸菌JM10 9(Escherichia coli JM109)株にエレクトロポレーシ ョン法(バイオサイエンス・バイオテクノロ ー・アンド・バイオケミストリー(Biosci. Biot ech. Biochem.)、58巻、974頁、1994年参照)によっ 形質転換した。

 形質転換株は100μg/mlのアンピシリンを添 したLB寒天培地で選択した。上記選択培地 生育したアンピシリン耐性の形質転換株に いて、常法によりプラスミドDNAを調製した このようにして得たプラスミドDNAのEcoRI、Kpn IサイトにDNA断片1を、HindIIIサイトにDNA断片2 同様にして連結し、大腸菌を形質転換して orf3破壊用プラスミドpUC△orf3を調製した。

 このようにして得たorf3破壊用プラスミド pUC△orf3を用いて、グルコンアセトバクター インターメディウス NCI1051株(以下、野生株 称する場合もある。)をエレクトロポレーシ ョン法(プロシーディング・オブ・ナショナ ・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・US A(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)、87巻、8130~8134頁 1990年参照)によって形質転換した。

 形質転換株は100μg/mlのカナマイシンを添 したYPG培地(3%グルコース、0.5%酵母エキス、 0.3%ポリペプトン)で選択した。選択培地上で 育したカナマイシン耐性の形質転換株は、 色体DNAを抽出し、サザンハイブリダイゼー ョンにより、orf3遺伝子中にカナマイシン耐 性遺伝子が挿入され、orf3遺伝子が破壊され いることを確認した。得られた形質転換株 ルコンアセトバクター・インターメディウ  NCI1051△orf3株(以下、orf3破壊株と称する場 もある)は、独立行政法人産業技術総合研究 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば 市東1丁目1番地中央第6)に2007年2月28日付で、 領番号FERM BP-10792としてブダペスト条約に づき寄託されている。

[orf3破壊株の発泡抑制能]
 実施例2で得られたorf3遺伝子が破壊されたor f3破壊株について、野生株と発泡能を比較し 。具体的には、500ml容坂口フラスコを用い 、エタノール2%、グルコース3%、酵母エキス0 .5%、ポリペプトン0.3%、アンピシリン100μg/ml セルクラスト1.5L(ノボザイムス製)1%を含む100  mlの培地にて、30℃、120spm、振とう培養を行 った。その結果、orf3破壊株は、野生株と比 して、発泡が顕著に抑制されることがわか た(図1)。この結果を確認するため、orf3相補 の作製を試みた。その結果、表現型が回復 ることを確認した(図1)。

[orf3破壊株の酢酸発酵試験]
 実施例2で得られたorf3遺伝子が破壊されたor f3破壊株について、野生株と発泡及び酢酸生 量を比較した。具体的には、3リッターのミ ニジャーファーメンター(丸菱バイオエンジ 、Bioneer300型 3L)を用いて、エタノール3%、グ ルコース3%、酵母エキス0.5%、ポリペプトン0.3 %、アンピシリン100μg/ml、セルクラスト1.5L(ノ ボザイムス製)1%、消泡剤0.01%を含む1.5リッタ の培地にて、30℃、500rpm、 リッター/minの 気攪拌培養を行った。発酵中は培地中のエ ノール濃度を2%に制御した。発泡の様子を図 2に、また発酵成績を表1に示した。

 図2から明らかなように、orf3破壊株は、 生株と比較して、発泡が顕著に抑制された また、表1に示した通り、培養液の酢酸濃度 、野生株の3.30%に対して、orf3破壊株では4.32 %に増加し、酢酸生産量が約3割増加した。こ 結果から、発泡に関与するタンパク質をコ ドするorf3を破壊することにより、培養中の 発泡が顕著に抑制され、高濃度の酢酸を含有 する食酢をより効率良く生産することができ ることが示された。

 本発明によれば、酢酸菌の培養中の発泡 関与する遺伝子ならびに該遺伝子がコード るタンパク質が提供され、さらに酢酸菌の 養中の発泡に関与する遺伝子がコードする ンパク質の機能を低下又は欠損させること よる培養中の発泡を顕著に減少させる方法 提供されるので、該方法により発泡が抑制 れた酢酸菌を用いた高濃度の酢酸を含有す 食酢のより効率的な製造を行うことができ ようになる。