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Title:
GLYCEROL-3-PHOSPHATE ACYLTRANSFERASE (GPAT) HOMOLOGUE AND USE THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/156026
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a novel glycerol-3-phosphate acyltransferase gene. Specifically disclosed is a nucleic acid comprising a nucleotide sequence depicted in SEQ ID NO:1 or 4 or a fragment of the nucleic acid.

Inventors:
OCHIAI MISA (JP)
TOKUDA HISANORI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/060789
Publication Date:
December 24, 2008
Filing Date:
June 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
SUNTORY LTD (JP)
OCHIAI MISA (JP)
TOKUDA HISANORI (JP)
International Classes:
C12N15/09; A23D9/00; C12N1/15; C12N1/19; C12N1/21; C12N5/10; C12N9/10; C12P7/64
Domestic Patent References:
WO2006094091A22006-09-08
WO2004087902A22004-10-14
WO2001040514A12001-06-07
WO2005019437A12005-03-03
Foreign References:
JP2007160042A2007-06-28
US20060094091A12006-05-04
JPH08205900A1996-08-13
JP2001120276A2001-05-08
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See also references of EP 2157179A4
Attorney, Agent or Firm:
ONO, Shinjiro et al. (Section 206 New Ohtemachi Bldg., 2-1, Ohtemachi 2-chome, Chiyoda-k, Tokyo 04, JP)
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Claims:
 以下の(a)~(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
 以下の(a)~(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項1に記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質をコードする塩基配列
 以下の(a)~(c)のいずれかに記載の塩基配列又はそのフラグメントを含む核酸。
(a)配列番号4で示される塩基配列
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号1で示される塩基配列
 以下の(a)~(e)のいずれかに記載の塩基配列を含む核酸。
(a)以下のタンパク質をコードする塩基配列
 配列番号2で示されるアミノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、以下のタンパク質をコードする塩基配列
 前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(c)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70%以上の塩基配列からなり、かつ、以下のタンパク質をコードする塩基配列
 前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(d)以下のタンパク質をコードする塩基配列
 配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、以下のタンパク質をコードする塩基配列
 前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
 以下の(a)~(c)のいずれかである塩基配列を含む、請求項4に記載の核酸。
(a)以下のタンパク質をコードする塩基配列
 配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下でハイブリダイズし、かつ、以下のタンパク質をコードする塩基配列
 前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(c)以下のタンパク質をコードする塩基配列
 配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質であり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパク質
 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタンパク質。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、前記アミノ酸配列からなるタンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前記アミノ酸配列からなるタンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を発現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組成を形成できるような活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
 配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
 請求項1~5のいずれか1項に記載の核酸を含有する組換えベクター。
 請求項9に記載の組換えベクターによって形質転換された形質転換体。
 請求項10に記載の形質転換体を培養して得られる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成物の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以上が、請求項9の組換えベクターで形質転換されていない宿主を培養して得られる培養物の前記比率より高いことを特徴とする、前記脂肪酸組成物。
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸含有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭素数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノレン酸の含有量の比率
 請求項10に記載の形質転換体を培養して得られる培養物から、請求項11に記載の脂肪酸組成物を採取することを特徴とする、前記脂肪酸組成物の製造方法。
 請求項11に記載の脂肪酸組成物を含む、食品。
Description:
グリセロール-3-リン酸アシル基 移酵素(GPAT)ホモログとその利用

 本出願は、2007年6月18日に出願された日本 国特許出願2007-160042に基づく優先権を主張す 。

 本発明は、新規なグリセロール-3-リン酸 シル基転移酵素遺伝子に関する。

 脂肪酸は、リン脂質やトリアシルグリセ ール等、脂質を構成する重要な成分である 不飽和結合を2箇所以上含有する脂肪酸は、 高度不飽和脂肪酸(PUFA)と総称され、アラキド ン酸やジホモγリノレン酸、エイコサペンタ ン酸、ドコサヘキサエン酸等が知られてお 、様々な生理活性が報告されている(非特許 文献1)。この高度不飽和脂肪酸は様々な分野 の利用が期待されているが、動物体内で合 できないものも含まれている。そこで、種 の微生物を培養して高度不飽和脂肪酸を獲 する方法が開発されてきた。また、植物で 度不飽和脂肪酸を生産させる試みもなされ いる。こうした場合、高度不飽和脂肪酸は 例えばトリアシルグリセロール等の貯蔵脂 の構成成分として、微生物の菌体内若しく 植物種子中に蓄積されることが知られてい 。

 より詳細には、トリアシルグリセロール 、生体内で以下のとおり生成される。すな ち、グリセロール-3-リン酸がグリセロール- 3-リン酸アシル基転移酵素によりアシル化さ てリゾホスファチジン酸となり、このリゾ スファチジン酸がリゾホスファチジン酸ア ル基転移酵素によりアシル化されてホスフ チジン酸となり、このホスファチジン酸が スファチジン酸ホスファターゼにより脱リ 酸化されてジアシルグリセロールとなり、 のジアシルグリセロールがジアシルグリセ ールアシル基転移酵素によりアシル化され トリアシルグリセロールとなる。また、ア ルCoA:コレステロールアシル基転移酵素やリ ゾホスファチジルコリンアシル基転移酵素等 が間接的にトリアシルグリセロールの生合成 に関与することが知られている。

 上述のトリアシルグリセロール生合成経 やリン脂質生合成経路において、グリセロ ル-3-リン酸のアシル化によりリゾホスファ ジン酸(lysophosphatidic acid)が生成する反応に 、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素( 以下、「GPAT」と記載する場合もある。:EC 2.3 .1.15)が介在することが知られている。

 GPAT遺伝子はこれまでにいくつかの生物で 報告されている。哺乳動物由来のGPAT遺伝子 して、小胞体型(膜結合型)とミトコンドリア 型(膜結合型)の2種類がクローン化されている (非特許文献2)。また、植物由来のGPAT遺伝子 して小胞体型(膜結合型)、ミトコンドリア型 (膜結合型)及び葉緑体型(遊離型)の3種類がク ーン化されている(非特許文献3)。その他、 菌であるSaccharomyces cerevisiae 由来のGPAT遺伝 子として、小胞体型(膜結合型)のGPT2(GAT1)及び SCT1(GAT2)の2種類がクローン化されている(非特 許文献4)。ここで、GPT2はパルミチン酸(16:0)か らオレイン酸(18:1)に至るまで、幅広い範囲の 脂肪酸を基質として利用できる活性を有する のに対し、SCT1はパルミチン酸(16:0)、パルミ レイン酸(16:1)といった炭素数16の脂肪酸を基 質とすることに強い選択性を有することが示 されている(非特許文献4)。また、その他多く の生物からGPAT遺伝子はクローン化されてい 。

 脂質生産菌であるモルティエレラ(Mortierella) 属微生物由来のGPATも報告されている。Mortiere lla ramanniana由来のGPATについては、小胞体型GP ATが単離され、これがパルミチン酸(16:0)より オレイン酸(18:1)を5.4倍多く選択的にアシル 供与体として利用することが示されている( 非特許文献5)。Mortierella alpina(以下、「M. alpi na」と記載する場合もある。)由来のGPATにつ ては、ミクロソーム画分にグリセロール-3- ン酸アシル基転移酵素活性があることが報 されている(非特許文献6)。また、M. alpinaの クロソームに存在するGPAT(膜に結合してい 状態)と種々のアシルCoAをインビトロで反応 せると高い活性を維持したまま、オレイン (18:1)、リノール酸(18:2)、ジホモγリノレン (DGLA)(20:3)、アラキドン酸(20:4)といったPUFAを く基質として用いることが示されている(特 許文献1)。さらに、M. alpina (ATCC #16266)から ローニングされたGPATを、エイコサペンタエ 酸(EPA)まで生合成できるよう形質転換され Yarrowia lipolyticaで発現させたところ、総脂肪 酸の内、ジホモγリノレン酸(DGLA)(20:3)の組成 大きくなり、オレイン酸(18:1)の組成が小さ なることが示された。この結果は、より長 で不飽和度の高いPUFAが選択的に取り込まれ ていることを示すものである(特許文献2)。

国際公開第WO2004/087902号パンフレット

米国特許出願公開第2006/0094091号明細書 Lipids, 39, 1147 (2004) Biochimica et Biophysica Acta, 1348, 17-26, 1997 Biochimica et Biophysica Acta, 1348, 10-16, 1997 The Journal of Biological Chemistry, 276 (45),  41710-41716, 2001 The Biochemical Journal, 355, 315-322, 2001 Biochemical Society Transactions, 28, 707-709, 20 00

 しかしながら、これまでに報告されてい GPAT遺伝子は、宿主細胞に導入して発現させ ても、その基質特異性により、宿主が産生す る脂肪酸組成物は限られていた。そこで、こ れまでとは異なる組成の脂肪酸組成物を産生 しうる、新規な遺伝子を同定することが求め られている。

 本発明の目的は、宿主細胞で発現又は導 することで、目的とする脂肪酸組成の油脂 製造させたり、目的とする脂肪酸の含有量 増加させたりできるようなタンパク質及び 酸を提供することである。

 本発明者は、上記課題を解決するために 意研究を行った。まず、脂質生産菌Mortierell a alpinaのEST解析を行い、そのなかから既知の GPAT遺伝子と同一性の高い配列を抽出した。 らに、GPATをコードするオープンリーディン フレーム(ORF)全長を取得するため、cDNAライ ラリーのスクリーニングあるいはPCRにより 伝子をクローニングした。それを酵母等の 増殖能を有する宿主細胞に導入して所望の 肪酸組成物の産生を試みた発明者は、従来 GPATが発現した宿主が産生する脂肪酸組成物 と比較して、異なる脂肪酸組成物を生成させ ることができる、基質特異性が異なる新規な GPATに関する遺伝子のクローニングに成功し 本発明を完成するに至った。すなわち、本 明は以下の通りである。

 (1) 以下の(a)~(e)のいずれかに記載の塩基配 を含む核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列におい 1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若 くは付加されたアミノ酸配列からなり、か 、グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素 性を有するタンパク質をコードする塩基配
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的 塩基配列からなる核酸とストリンジェント 条件下でハイブリダイズし、かつ、グリセ ール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有す タンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70% 上の塩基配列からなり、かつ、グリセロー -3-リン酸アシル基転移酵素活性を有するタ パク質をコードする塩基配列
(d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、 リセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性 有するタンパク質をコードする塩基配列
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からな タンパク質をコードする塩基配列に対し相 的な塩基配列からなる核酸とストリンジェ トな条件下でハイブリダイズし、かつ、グ セロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を するタンパク質をコードする塩基配列
 (2) 以下の(a)~(c)のいずれかである塩基配列 含む、(1)に記載の核酸。
(a)配列番号2で示されるアミノ酸配列におい 1~10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加 れたアミノ酸配列からなり、かつ、グリセ ール-3-リン酸アシル基転移酵素活性を有す タンパク質をコードする塩基配列
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的 塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下 でハイブリダイズし、かつ、グリセロール-3- リン酸アシル基転移酵素活性を有するタンパ ク質をコードする塩基配列
(c)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 90%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、 リセロール-3-リン酸アシル基転移酵素活性 有するタンパク質をコードする塩基配列
 (3) 以下の(a)~(c)のいずれかに記載の塩基配 又はそのフラグメントを含む核酸。
(a)配列番号4で示される塩基配列
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からな タンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号1で示される塩基配列
 (4) 以下の(a)~(e)のいずれかに記載の塩基配 を含む核酸。
(a)以下のタンパク質をコードする塩基配列
配列番号2で示されるアミノ酸配列において1 しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換若し は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ 前記タンパク質が発現している宿主の脂肪 組成において、以下のi)~v)のうちの少なく も一つ以上が、前記タンパク質を発現して ない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率であ 脂肪酸組成を形成できるような活性を有す タンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的 塩基配列からなる核酸とストリンジェント 条件下でハイブリダイズし、かつ、以下の ンパク質をコードする塩基配列
前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸 組成において、以下のi)~v)のうちの少なくと 一つ以上が、前記タンパク質を発現してい い宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である 肪酸組成を形成できるような活性を有する ンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(c)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70% 上の塩基配列からなり、かつ、以下のタン ク質をコードする塩基配列
前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸 組成において、以下のi)~v)のうちの少なくと 一つ以上が、前記タンパク質を発現してい い宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である 肪酸組成を形成できるような活性を有する ンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(d)以下のタンパク質をコードする塩基配列
配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が70 %以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前記 ンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成 おいて、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ 以上が、前記タンパク質を発現していない宿 主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸 組成を形成できるような活性を有するタンパ ク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からな タンパク質をコードする塩基配列に対し相 的な塩基配列からなる核酸とストリンジェ トな条件下でハイブリダイズし、かつ、以 のタンパク質をコードする塩基配列
前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸 組成において、以下のi)~v)のうちの少なくと 一つ以上が、前記タンパク質を発現してい い宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である 肪酸組成を形成できるような活性を有する ンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
 (5) 以下の(a)~(c)のいずれかである塩基配列 含む、(4)に記載の核酸。
(a)以下のタンパク質をコードする塩基配列
配列番号2で示されるアミノ酸配列において1~ 10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加さ たアミノ酸配列からなり、かつ、前記タン ク質が発現している宿主の脂肪酸組成にお て、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ以 が、前記タンパク質を発現していない宿主 脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸組 を形成できるような活性を有するタンパク
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的 塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃の条件下 でハイブリダイズし、かつ、以下のタンパク 質をコードする塩基配列
前記タンパク質が発現している宿主の脂肪酸 組成において、以下のi)~v)のうちの少なくと 一つ以上が、前記タンパク質を発現してい い宿主の脂肪酸組成よりも高い比率である 肪酸組成を形成できるような活性を有する ンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(c)以下のタンパク質をコードする塩基配列
配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性が90 %以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前記 ンパク質が発現している宿主の脂肪酸組成 おいて、以下のi)~v)のうちの少なくとも一つ 以上が、前記タンパク質を発現していない宿 主の脂肪酸組成よりも高い比率である脂肪酸 組成を形成できるような活性を有するタンパ ク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
 (6) 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタ パク質。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミ 酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ 配列からなり、かつ、グリセロール-3-リン アシル基転移酵素活性を有するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質 あり、かつ、グリセロール-3-リン酸アシル 転移酵素活性を有するタンパク質
 (7) 以下の(a)又は(b)のいずれかに記載のタ パク質。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミ 酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ 配列からなり、かつ、前記アミノ酸配列か なるタンパク質が発現している宿主の脂肪 組成において、以下のi)~v)のうちの少なく も一つ以上が、前記タンパク質を発現して ない宿主の脂肪酸組成よりも高い比率であ 脂肪酸組成を形成できるような活性を有す タンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 70%以上のアミノ酸配列からなり、かつ、前 アミノ酸配列からなるタンパク質が発現し いる宿主の脂肪酸組成において、以下のi)~v) のうちの少なくとも一つ以上が、前記タンパ ク質を発現していない宿主の脂肪酸組成より も高い比率である脂肪酸組成を形成できるよ うな活性を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
 (8) 配列番号2で示されるアミノ酸配列から るタンパク質。

 (9) (1)~(5)のいずれか1つに記載の核酸を含 有する組換えベクター。

 (10) (9)に記載の組換えベクターによって 質転換された形質転換体。

 (11) (10)に記載の形質転換体を培養して得ら れる脂肪酸組成物であって、前記脂肪酸組成 物の脂肪酸組成において、以下のi)~v)のうち 少なくとも一つ以上が、前記タンパク質を 現していない宿主の脂肪酸組成よりも高い 率である脂肪酸組成を形成できるような活 を有するタンパク質
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
 (12) (10)に記載の形質転換体を培養して得ら れる培養物から、(11)に記載の脂肪酸組成物 採取することを特徴とする、前記脂肪酸組 物の製造方法。

 (13) (11)に記載の脂肪酸組成物を含む、食 品。

 本発明のGPATは、従来のGPATとは基質特異 が異なり、従来のGPATが発現した宿主が産生 る脂肪酸組成物とは組成が異なる脂肪酸組 物を宿主中に産生させることができる。そ により、所望の特性や効果を有する脂質を 供できるため、食品、化粧料、医薬品、石 等に適用できるものとして有用である。

 また、本発明のGPATは脂肪酸や貯蔵脂質の 生産能の向上を図ることができるため、微生 物や植物中での高度不飽和脂肪酸の生産性を 向上させるものとして、好ましい。

図1は、本発明のGPAT2のcDNA配列(配列番 1)と推定アミノ酸配列(配列番号2)を示す。図 中、*はGPAT活性に重要であると考えられるア ノ酸残基を示し、+はグリセロール-3-リン酸 との結合に重要であると考えられるアミノ鎖 残基を示す。

 本発明は、グリセロール-3-リン酸をアシ 化して、リゾホスファチジン酸を生成させ ことを特徴とする、Mortierella属由来の新規 グリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素遺 子に関する。

 本発明のグリセロール-3-リン酸アシル基 移酵素(GPAT)は、グリセロール-3-リン酸をア ル化して、リゾホスファチジン酸を生成す 反応を触媒する酵素である。アシル基供与 は、通常、アシルCoAであるが、これに限定 れない。また、本発明に係るタンパク質が 用することによるアシル基転移反応のアシ 基受容体は、グリセロール-3-リン酸である 、これに限定されない。

  本発明のグリセロール-3-リン酸ア シル基転移酵素をコードする核酸
 本発明のグリセロール-3-リン酸アシル基転 酵素(GPAT)には、GPAT2が含まれる。GPAT2をコー ドする核酸のcDNA、CDS、ORF及びアミノ酸配列 対応関係を以下の表1に整理して記載した。

 つまり、本発明のGPAT2に関連する配列と ては、GPAT2のアミノ酸配列である配列番号2 GPAT2のORFの領域を示す配列である配列番号4 そして、そのCDSの領域を示す配列である配 番号3、及びそのcDNAの塩基配列である配列番 号1があげられる。このうち、配列番号3は配 番号1の第113-1891番目の塩基配列に相当し、 列番号4は配列番号1の第113-1888番目の塩基配 列、及び配列番号3の1-1776番目の塩基配列に 当する。

 本発明の核酸とは、一本鎖及び二本鎖のD NAのほか、そのRNA相補体も含み、天然由来の のであっても、人工的に作製したものであ てもよい。DNAには、例えば、ゲノムDNAや、 記ゲノムDNAに対応するcDNA、化学的に合成さ れたDNA、PCRにより増幅されたDNA、及びそれら の組み合わせや、DNAとRNAのハイブリッドがあ げられるがこれらに限定されない。

 本発明の核酸の好ましい態様としては、( a)配列番号4で示される塩基配列、(b)配列番号 2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク をコードする塩基配列、(c)配列番号1で示さ る塩基配列等があげられる。

 配列番号4で示される塩基配列及び配列番 号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパ 質をコードする塩基配列、及び、配列番号1 示される塩基配列は、表1に記載したとおり である。

 上記塩基配列を得るためには、GPAT活性を 有する生物のESTやゲノムDNAの塩基配列データ から、既知のGPAT活性を有するタンパク質と 一性の高いタンパク質をコードする塩基配 を探索することもできる。GPAT活性を有する 物としては、脂質生産菌が好ましく、脂質 産菌としてはM. alpinaがあげられるが、これ に限定されない。

 EST解析を行う場合には、まず、cDNAライブラ リーを作製する。cDNAライブラリーの作製方 については、『Molecular Cloning, A Laboratory Ma nual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001))を参 照することができる。また、市販のcDNAライ ラリー作製キットを用いてもよい。本発明 適するcDNAライブラリーの作製方法としては 例えば以下のような方法があげられる。す わち、脂質生産菌であるM. alpinaの適当な株 を適当な培地に植菌し、適当な期間前培養す る。この前培養に適する培養条件としては、 例えば、培地組成としては、1.8%グルコース 1%酵母エキス、pH6.0があげられ、培養期間は3 日間、培養温度は28℃である条件があげられ 。その後、前培養物を適当な条件にて本培 に供する。本培養に適する培地組成として 、例えば、1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オ リーブ油、0.01%アデカノール、0.3%KH 2 PO 4 、0.1% Na 2 SO 4 、0.05% CaCl 2 ・2H 2 O、0.05% MgCl 2 ・6H 2 O、pH6.0があげられる。本培養に適する培養条 件としては、例えば、300rpm、1vvm、26℃で8日 通気攪拌培養する条件があげられる。培養 間中に適当量のグルコースを添加してもよ 。本培養中に適時培養物を採取し、そこか 菌体を回収して、全RNAを調製する。全RNAの 製には、塩酸グアニジン/CsCl法等の公知の方 法を用いることができる。得られた全RNAから 市販のキットを用いてpoly(A) + RNAを精製することができる。さらに、市販の キットを用いてcDNAライブラリーを作製する とができる。その後、作製したcDNAライブラ ーの任意のクローンの塩基配列を、ベクタ 上にインサート部分の塩基配列を決定でき ように設計されたプライマーを用いて決定 、ESTを得ることができる。例えば、ZAP-cDNA  GigapackIII Gold Cloning Kit (STRATAGENE)でcDNAライ ラリーを作製した場合は、ディレクショナ クローニングを行うことができる。

 ORFの塩基配列で比較すると、本発明のGPAT 2遺伝子と公知のM. alpina(ATCC #16266)由来のGPAT1 遺伝子との同一性は42.0%である。なお、本発 のGPAT2遺伝子をBLASTX解析した結果、最もE-val ueの低かった、すなわち同一性の高かったAspe rgillus nidulans由来の1-アシル-sn-グリセロール- 3-リン酸アシル基転移酵素様の推定タンパク 配列(GBアクセッションNo. EAA62242)、及び機 が明らかにされているタンパク質で最も同 性の高かったSaccharomyces cerevisiae由来のグリ ロール-3-リン酸アシル基転移酵素であるSct1 p(GBアクセッションNo. CAC85390)、をコードする 塩基配列との同一性は、それぞれ36.9%と36.6% ある。

 同様に、本発明のGPAT2と公知のM. alpina(ATC C #16266)由来のGPAT1との間のアミノ酸配列の同 一性は15.7%である。なお、本発明のGPAT2遺伝 をBLASTX解析した結果、最もE-valueの低かった すなわち同一性の高かったAspergillus nidulans 来の1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸アシ 基転移酵素様の推定タンパク質配列(GBアク ッションNo. EAA62242)、及び機能が明らかに れているタンパク質で最も同一性の高かっ Saccharomyces cerevisiae由来のグリセロール-3-リ 酸アシル基転移酵素であるSct1p(GBアクセッ ョンNo. CAC85390)、との同一性は、それぞれ17. 0%と15.0%である。

 本発明はまた、上記配列番号4で示される塩 基配列(「本発明の塩基配列」と記載する場 もある)、並びに、配列番号2で示されるアミ ノ酸配列(「本発明のアミノ酸配列」と記載 る場合もある)からなるタンパク質をコード る塩基配列を含む核酸と同等の機能を有す 核酸を含む。「同等の機能を有する」とは 本発明の塩基配列がコードするタンパク質 び本発明のアミノ酸配列からなるタンパク が、GPAT活性を有することを意味する。また 、このGPAT活性に加えて、本発明の塩基配列 コードするタンパク質、又は、本発明のア ノ酸配列からなるタンパク質が発現してい 宿主の脂肪酸組成において、以下の
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率、並びに
v) アラキドン酸および/またはジホモγリノ ン酸の含有量の比率
のうちの少なくとも一つ以上が、上記タンパ ク質を発現していない宿主の脂肪酸組成より も高い比率である脂肪酸組成を形成できるよ うな活性を有するタンパク質(以下、「本発 のGPATの脂肪酸組成を形成できる活性を有す タンパク質」という場合もある)である場合 も含まれる。

 具体的には、上記本発明の塩基配列等を発 ベクターpYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221 -1228, 1995)に挿入したものを、酵母Saccharomyces cerevisiae EH13-15株(Appl. Microbiol. Biotechnol., 30,  515-520, 1989)を宿主として形質転換させ、得 れた形質転換体を培養して回収した菌体を 以下の実施例6等に記載の方法で脂肪酸解析 をした場合の上記本発明のGPATの脂肪酸組成 、具体的に、以下の
i) オレイン酸含有量が47%以上、好ましくは48 %以上、49%以上、50%以上、51%以上;
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率が8.0以上、好ましくは9.0以上、1 0.0以上、10.5以上; 
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の含有量の比率が8.5以上 、好ましくは9.0以上、10.0以上、11.0以上、11.5 以上;並びに
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率が1.2以上、好ま しくは1.3以上、1.4以上;並びに
v) アラキドン酸の含有率が、0.47以上、好ま くは0.50以上、0.55以上、0.60以上、及び/また は、ジホモγリノレン酸の含有率が、0.34以上 、好ましくは0.40以上、0.50以上、0.55以上
のうちの少なくとも一つ以上の数値を満たす 脂肪酸組成を形成できるような活性を有する タンパク質をコードしている塩基配列を含む 核酸である。さらに好ましくは、本発明の塩 基配列等は、GPAT活性及び上記本発明のGPATの 肪酸組成を形成できる活性を有するタンパ 質をコードする塩基配列を含む核酸である

 本発明の脂肪酸組成物の特徴の一つとして アラキドン酸含有率が高いことがあげられ 。アラキドン酸は、化学式C 20 H 32 O 2 で示される、分子量304.47の物質で、4つの二 結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸 (〔20:4(n-6)〕)で、(n-6)系に分類される。アラ ドン酸は、動物の細胞膜中の重要なリン脂 (特にホスファチジルエタノールアミン・ホ ファチジルコリン・ホスファチジルイノシ ール)として存在し、脳に多く含まれる。ま たアラキドン酸は、アラキドン酸カスケード により生成するプロスタグランジン・トロン ボキサン・ロイコトリエンなど一連のエイコ サノイドの出発物質であり、細胞間のシグナ ル伝達におけるセカンドメッセンジャーとし ても重要である。一方、アラキドン酸は、動 物ではリノール酸を原料として体内で合成さ れる。しかし、動物の種あるいは年齢等によ っては、この機能が十分でないため必要な量 を生産することかできないか、あるいは全く 生産する機能がないため、食物からアラキド ン酸を摂取しなければならず、アラキドン酸 は必須脂肪酸であるといえる。

 本発明の脂肪酸組成物中のアラキドン酸 有率は、例えば、以下のように測定するこ ができる。すなわち、本発明のGPAT2のプラ ミドを、例えば、実施例8に記載の方法によ pDuraSCやpDura5MCS等のベクターに挿入し、M. al pina株で形質転換して得られた形質転換体を 現させて、実施例8に記載した培養方法等に って得られた培養菌体を用いて菌体内の脂 酸含有率や培地あたりのアラキドン酸の含 量等を測定する方法である。アラキドン酸 含有量等の分析方法としては、例えば、得 れた培養菌体の脂肪酸を塩酸メタノール法 より脂肪酸メチルエステルに誘導したあと ヘキサンで抽出して、ヘキサンを留去して ら、ガスクロマトグラフィーで行う方法が げられる。これによれば、本発明のGPAT2をM.  alpinaで形質転換させた場合は、菌体内の脂 酸含有率も培地あたりのアラキドン酸生産 も高いことが示されている。このように、 ラキドン酸含有率が高い本発明の脂肪酸組 物は、アラキドン酸を効率よく摂取できる め、好ましい。

 また、本発明の脂肪酸組成物の特徴の一つ して、ジホモγリノレン酸含有率が高いこ があげられる。ジホモγリノレン酸(DGLA)は、 化学式C 20 H 34 O 2 で示される、分子量306.48の物質で、3つの二 結合を含む20個の炭素鎖からなるカルボン酸 (〔20:3(n-6)〕)で、(n-6)系に分類される。DGLAは γ-リノレン酸(18:3(n-6))が伸張することによ て得られる。DGLAの二重結合が1つ増えるとア ラキドン酸が生成される。

 このような本発明の核酸と同等の機能を する核酸としては、以下の(a)~(e)のいずれか に記載の塩基配列を含む核酸があげられる。 なお、以下にあげる塩基配列の記載において 、「本発明の上記活性」とは、上記の「GPAT 性及び/又は上記本発明のGPATの脂肪酸組成を 形成できる活性」を意味する。

 (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列におい て1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換 しくは付加されたアミノ酸配列からなり、 つ、本発明の上記活性を有するタンパク質 コードする塩基配列
 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列 号2で示されるアミノ酸配列において1若し は複数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは 加されたアミノ酸配列からなり、かつ、本 明の上記活性を有するタンパク質をコード る塩基配列を含む。

 具体的には、
(i) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個 は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1~ 180個、1~150個、1~100個、1~50個、1~30個、1~25個 1~20個、1~15個、1~10個、さらに好ましくは1~5 ))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、
(ii) 配列番号2に示すアミノ酸配列のうち1個 は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1~18 0個、1~150個、1~100個、1~50個、1~30個、1~25個、1 ~20個、1~15個、1~10個、さらに好ましくは1~5個) )のアミノ酸が他のアミノ酸で置換したアミ 酸配列、
(iii) 配列番号2に示すアミノ酸配列において1 個又は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば 1~180個、1~150個、1~100個、1~50個、1~30個、1~25個 、1~20個、1~15個、1~10個、さらに好ましくは1~5 個))の他のアミノ酸が付加されたアミノ酸配 、又は
(iv) 上記(i)~(iii)を組み合わせたアミノ酸配列 からなるタンパク質であって、かつ、本発明 の上記活性を有するタンパク質をコードする 塩基配列である。

 上記のうち、置換は、好ましくは保存的 換である。保存的置換とは、特定のアミノ 残基を類似の物理化学的特徴を有する残基 置き換えることであるが、もとの配列の構 に関する特徴を実質的に変化させなければ かなる置換であってもよく、例えば、置換 ミノ酸が、もとの配列に存在するらせんを 壊したり、もとの配列を特徴付ける他の種 の二次構造を破壊したりしなければいかな 置換であってもよい。

 保存的置換は、一般的には、生物学的合 系や化学的ペプチド合成で導入されるが、 ましくは、化学的ペプチド合成による。こ 場合、置換基には、非天然アミノ酸残基が まれていてもよく、ペプチド模倣体や、ア ノ酸配列のうち、置換されていない領域が 転している逆転型又は同領域が反転してい 反転型も含まれる。

 以下に、アミノ酸残基を置換可能な残基ご に分類して例示するが、置換可能なアミノ 残基は以下に記載されているものに限定さ るものではない。
A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノ タン酸、メチオニン、O-メチルセリン、t-ブ ルグリシン、t-ブチルアラニン及びシクロ キシルアラニン
B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソア パラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノ ジピン酸及び2-アミノスベリン酸
C群:アスパラギン及びグルタミン
D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジ アミノブタン酸及び2,3-ジアミノプロピオン
E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン及び4-ヒ ドロキシプロリン
F群:セリン、スレオニン及びホモセリン
G群:フェニルアラニン及びチロシン
 非保存的置換の場合は、上記種類のうち、 る1つのメンバーと他の種類のメンバーとを 交換することができるが、この場合は、本発 明のタンパク質の生物学的機能を保持するた めに、アミノ酸のヒドロパシー指数(ヒドロ シーアミノ酸指数)を考慮することが好まし (Kyteら, J. Mol. Biol., 157:105-131(1982))。

 また、非保存的置換の場合は、親水性に づいてアミノ酸の置換を行うことができる

 本明細書及び図面において、塩基やアミ 酸及びその略語は、IUPAC-IUB Commission on Bioc hemical Nomenclature に従うか、又は、例えば、I mmunology--A Synthesis(第2版, E.S. Golub及びD.R. Gre n監修, Sinauer Associates,マサチューセッツ州サ ンダーランド(1991))等に記載されているよう 、当業界で慣用されている略語に基づく。 たアミノ酸に関し光学異性体があり得る場 は、特に明示しなければL体を示す。

 D-アミノ酸等の上記のアミノ酸の立体異 体、α,α-二置換アミノ酸等の非天然アミノ 、N-アルキルアミノ酸、乳酸、及びその他の 非慣用的なアミノ酸もまた、本発明のタンパ ク質を構成する要素となりうる。

 なお、本明細書で用いるタンパク質の表 法は、標準的用法及び当業界で慣用されて る標記法に基づき、左方向はアミノ末端方 であり、そして右方向はカルボキシ末端方 である。

 同様に、一般的には、特に言及しない限 、一本鎖ポリヌクレオチド配列の左端は5’ 端であり、二本鎖ポリヌクレオチド配列の左 方向を5’方向とする。

 当業者であれば、当業界で公知の技術を用 て、本明細書に記載したタンパク質の適当 変異体を設計し、作製することができる。 えば、本発明のタンパク質の生物学的活性 さほど重要でないと考えられる領域をター ティングすることにより、本発明のタンパ 質の生物学的活性を損なうことなくその構 を変化させることができるタンパク質分子 の適切な領域を同定することができる。ま 、類似のタンパク質間で保存されている分 の残基及び領域を同定することもできる。 らに、本発明のタンパク質の生物学的活性 は構造に重要と考えられる領域中に、生物 的活性を損なわず、かつ、タンパク質のポ ペプチド構造に悪影響を与えずに、保存的 ミノ酸置換を導入することもできる。特に 本発明では、図1中に二重下線で示したよう に、本発明のGPATのアミノ酸配列中の第87~93残 基に、グリセロリン脂質アシル基転移酵素(Gl ycerolipid acyltransferase)に必須の保存モチーフ ある「HXXXXD(HX 4 D)」(J. Bacteriology, 180, 1425-1430, 1998)に類似の モチーフが存在する(保存されるヒスチジン びアスパラギン酸を*で示す)。なお、上記保 存モチーフ中で、Xはいかなるアミノ酸残基 あってもよいことを示している。このモチ フは本発明のGPATにとっても、GPAT活性を維持 するために重要であると考えられる。また、 図1中において*で示した、本発明のGPATのアミ ノ酸配列中の第87残基、第93残基、及び第172 基は、本発明のGPATの活性に重要であると考 られる。さらに、第138残基及び第174残基は 本発明のGPATとグリセロール-3-リン酸との結 合に重要であると考えられる。従って、本発 明の変異体は、上記保存モチーフ及び上記に 示した残基が保存されている限り、いかなる 変異体であってもよい。

 当業者であれば、本発明のタンパク質の 物学的活性又は構造に重要であり、同タン ク質のペプチドと類似するペプチドの残基 同定し、この2つのペプチドのアミノ酸残基 を比較して、本発明のタンパク質と類似する タンパク質のどの残基が、生物学的活性又は 構造に重要なアミノ酸残基に対応するアミノ 酸残基であるかを予測する、いわゆる、構造 -機能研究を行うことができる。さらに、こ ように予測したアミノ酸残基の化学的に類 のアミノ酸置換を選択することにより、本 明のタンパク質の生物学的活性が保持され いる変異体を選択することもできる。また 当業者であれば、本タンパク質の変異体の 次元構造及びアミノ酸配列を解析すること できる。さらに、得られた解析結果から、 ンパク質の三次元構造に関する、アミノ酸 基のアラインメントを予測することもでき 。タンパク質表面上にあると予測されるア ノ酸残基は、他の分子との重要な相互作用 関与する可能性があるが、当業者であれば 上記したような解析結果に基づいて、この うなタンパク質表面上にあると予測される ミノ酸残基を変化させないような変異体を 製することができる。さらに、当業者であ ば、本発明のタンパク質を構成する各々の ミノ酸残基のうち、一つのアミノ酸残基の を置換するような変異体を作製することも きる。このような変異体を公知のアッセイ 法によりスクリーニングし、個々の変異体 情報を収集することができる。それにより ある特定のアミノ酸残基が置換された変異 の生物学的活性が、本発明のタンパク質の 物学的活性に比して低下する場合、そのよ な生物学的活性を呈さない場合、又は、本 ンパク質の生物学的活性を阻害するような 適切な活性を生じるような場合を比較する とにより、本発明のタンパク質を構成する 々のアミノ酸残基の有用性を評価すること できる。また、当業者であれば、このよう 日常的な実験から収集した情報に基づいて 単独で、又は他の突然変異と組み合わせて 本発明のタンパク質の変異体としては望ま くないアミノ酸置換を容易に解析すること できる。

 上記したように、配列番号2で表されるアミ ノ酸配列において1若しくは複数個のアミノ が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸 列からなるタンパク質は、『Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Pr ess (2001))、『Current Protocols in Molecular Biology 』(John Wiley & Sons (1987-1997)、Kunkel (1985)  Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 488-92、Kunkel (1988)  Method. Enzymol. 85: 2763-6等に記載の部位特異 変異誘発法等の方法に従って調製すること できる。このようなアミノ酸の欠失、置換 しくは付加等の変異がなされた変異体の作 は、例えば、Kunkel法やGapped duplex法等の公 手法により、部位特異的突然変異誘発法を 用した変異導入用キット、例えばQuikChange TM  Site-Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社 )、GeneTailor TM  Site-Directed Mutagenesis System(インビトロジェ 社製)、TaKaRa Site-Directed Mutagenesis System(Mutan- K、Mutan-Super Express Km等:タカラバイオ社製)等 を用いて行うことができる。

 なお、タンパク質のアミノ酸配列に、そ 活性を保持しつつ1又は複数個のアミノ酸の 欠失、置換、若しくは付加を導入する方法と しては、上記の部位特異的変異誘発の他にも 、遺伝子を変異源で処理する方法、及び遺伝 子を選択的に開裂して選択されたヌクレオチ ドを除去、置換若しくは付加した後に連結す る方法があげられる。

 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好 しくは、配列番号2で示されるアミノ酸配列 において1~10個のアミノ酸が欠失、置換若し は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ GPAT活性を有するタンパク質をコードする塩 配列である。

 また、本発明の核酸に含まれる塩基配列 は、配列番号2において1~10個のアミノ酸が 失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列 らなり、かつ、本発明の上記活性を有する ンパク質をコードする塩基配列も含まれる

 本発明のタンパク質におけるアミノ酸の 異又は修飾の数、あるいは変異又は修飾の 位は、GPAT活性、又は本発明のGPATの脂肪酸 成を形成できる活性が保持される限り制限 ない。

 本発明のGPAT活性、又は本発明のGPATの脂 酸組成を形成できる活性は、公知の方法を いて測定することが可能である。例えば、 下の文献:Biochem. J., 355, 315-322, 2001を参照 ることができる。

 例えば、本発明の「GPAT活性」は以下の通り 測定してもよい。本発明のGPATを発現させた 母から、J. Bacteriology, 173, 2026-2034(1991)に記 の方法等によりミクロソーム画分を調製す 。そして、反応液である、0.44mM グリセロ ル-3-リン酸 、0.36mM アシル-CoA、0.5mM DTT、1m g/ml BSA、2mM MgCl 2 、50mM Tris-HCl(pH7.5)に上記ミクロソーム画分を 添加し、28℃で適当な時間反応させ、クロロ ルム:メタノールを添加して反応を停止させ た後、脂質の抽出を行い、得られた脂質を薄 層クロマトグラフィー等により分画し、生成 したリゾホスファチジン酸量を定量すること ができる。

 また、本発明の「GPATの脂肪酸組成を形成 できる活性」は、例えば以下のように測定し てもよい。本発明の脂肪酸組成物の製造方法 により得られた凍結乾燥した菌体に、適当な 比率で調整したクロロホルム:メタノールを 加して攪拌した後、適当な時間、加熱処理 する。さらに遠心分離により菌体を分離し 、溶媒を回収することを数回繰り返す。そ 後、適当な方法を用いて脂質を乾固させて ら、クロロホルム等の溶媒を添加して脂質 溶解する。この試料を適当量分取して、塩 メタノール法により菌体の脂肪酸をメチル ステルに誘導した後に、ヘキサンで抽出し ヘキサンを留去してから、ガスクロマトグ フィーで分析を行う。

 (b)配列番号4からなる塩基配列に対し相補的 な塩基配列からなる核酸とストリンジェント な条件下でハイブリダイズし、かつ、本発明 の上記活性を有するタンパク質をコードする 塩基配列
 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列 号4からなる塩基配列に対し相補的な塩基配 列からなる核酸とストリンジェントな条件下 でハイブリダイズし、かつ、本発明の上記活 性を有するタンパク質をコードする塩基配列 を含む。配列番号4及びGPAT活性については上 のとおりである。

 上記塩基配列は、当業者に公知の方法で 当な断片を用いてプローブを作製し、この ローブを用いてコロニーハイブリダイゼー ョン、プラークハイブリダイゼーション、 ザンブロット等の公知のハイブリダイゼー ョン法により、cDNAライブラリー及びゲノム ライブラリー等から得ることができる。

 ハイブリダイゼーション法の詳細な手順 ついては、『Molecular Cloning, A Laboratory Manu al 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001);特にSe ction 6-7) 、『Current Protocols in Molecular Biolog y』(John Wiley & Sons (1987-1997);特にSection6.3- 6.4)、『DNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach 2nd ed.』(Oxford University (1995);ハイブ ダイゼーション条件については特にSection2.1 0) 等を参照することができる。

 ハイブリダイゼーション条件の強さは、 としてハイブリダイゼーション条件、より ましくは、ハイブリダイゼーション条件及 洗浄条件によって決定される。本明細書に ける「ストリンジェントな条件」には、中 度又は高度にストリンジェントな条件が含 れる。

 具体的には、中程度にストリンジェント 条件としては、例えばハイブリダイゼーシ ン条件として、1×SSC~6×SSC、42℃~55℃の条件 より好ましくは、1×SSC~3×SSC、45℃~50℃の条 、最も好ましくは、2×SSC、50℃の条件があ られる。ハイブリダイゼーション溶液中に 例えば、約50%のホルムアミドを含む場合に 、上記温度よりも5ないし15℃低い温度を採 する。洗浄条件としては、0.5×SSC~6×SSC、40℃ ~60℃があげられる。ハイブリダイゼーション 及び洗浄時には、一般に、0.05%~0.2%、好まし は約0.1%SDSを加えてもよい。

 高度にストリンジェント(ハイストリンジ ェント)な条件としては、中程度にストリン ェントな条件よりも高い温度及び/又は低い 濃度でのハイブリダイゼーション及び/又は 洗浄を含む。例えば、ハイブリダイゼーショ ン条件として、0.1×SSC~2×SSC、55℃~65℃の条件 より好ましくは、0.1×SSC~1×SSC、60℃~65℃の 件、最も好ましくは、0.2×SSC、63℃の条件が げられる。洗浄条件として、0.2×SSC~2×SSC、5 0℃~68℃、より好ましくは、0.2×SSC、60~65℃が げられる。

 特に本発明に用いられるハイブリダイゼ ション条件としては、例えば、5×SSC、1%SDS 50mM Tris-HCl(pH7.5)及び50%ホルムアミド中42℃の 条件でプレハイブリダイゼーションを行った 後、プローブを添加して一晩42℃に保ってハ ブリッド形成させ、その後、0.2×SSC、0.1%SDS 、65℃で20分間の洗浄を3回行うという条件 あげられるが、これらに限定されない。

 また、プローブに放射性物質を使用しな 市販のハイブリダイゼーションキットを使 することもできる。具体的には、DIG核酸検 キット(ロシュ・ダイアグノス社)、ECL direct  labeling & detection system(Amersham社製)を使 したハイブリダイゼーション等があげられ 。

 本発明に含まれる塩基配列としては、好 しくは、配列番号4からなる塩基配列に対し 相補的な塩基配列からなる核酸と2×SSC、50℃ 条件下でハイブリダイズし、かつ、GPAT活性 を有するタンパク質をコードする塩基配列が あげられる。

 (c)配列番号4からなる塩基配列と同一性が70% 以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の上 記活性を有するタンパク質をコードする塩基 配列
 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列 号4に示される核酸配列に対して少なくとも 70%以上の塩基配列からなり、かつ、本発明の 上記活性を有するタンパク質をコードする塩 基配列を含む。

 好ましくは、配列番号4に示される核酸配 列に対して少なくとも75%、さらに好ましくは 80%(例えば、85%以上、より一層好ましくは90% 上、さらには95%、98%又は99%)の同一性を有す 塩基配列を含む核酸であって、かつ、本発 の上記活性を有するタンパク質をコードす 塩基配列があげられる。

 2つの核酸配列の同一性%は、視覚的検査 数学的計算により決定することができるが コンピュータープログラムを使用して2つの 酸の配列情報を比較することにより決定す のが好ましい。配列比較コンピュータープ グラムとしては、例えば、米国国立医学ラ ブラリーのウェブサイト:http://www.ncbi.nlm.nih. gov/blast/bl2seq/bls.htmlから利用できるBLASTNプロ ラム(Altschul et al. (1990) J. Mol. Biol. 215: 40 3-10):バージョン2.2.7、又はWU-BLAST2.0アルゴリ ム等があげられる。WU-BLAST2.0についての標準 的なデフォルトパラメーターの設定は、以下 のインターネットサイト:http://blast.wustl.eduに 載されているものを用いることができる。

 (d)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 が70%以上のアミノ酸配列をコードし、かつ、 本発明の上記活性を有するタンパク質をコー ドする塩基配列
 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列 号2からなるアミノ酸配列と同一性が70%以上 のアミノ酸配列をコードし、かつ、本発明の 上記活性を有するタンパク質をコードする塩 基配列を含む。本発明の核酸がコードするタ ンパク質は、本発明の上記活性を有するタン パク質と同等の機能を有する限り、GPAT2のア ノ酸配列と同一性のあるタンパク質でもよ 。

 具体的には、配列番号2で示されるアミノ 酸配列と75%以上、好ましくは80%以上、より好 ましくは85%、さらに好ましくは90%(例えば、95 %、さらには、98%)以上の同一性を有するアミ 酸配列等があげられる。

 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、好 しくは、配列番号2からなるアミノ酸配列と 同一性が90%以上のアミノ酸配列をコードし、 かつ、本発明の上記活性を有するタンパク質 をコードする塩基配列である。さらに好まし くは、配列番号2からなるアミノ酸配列と同 性が95%以上のアミノ酸配列をコードし、か 、本発明の上記活性を有するタンパク質を ードする塩基配列である。

 2つのアミノ酸配列の同一性パーセントは 、視覚的検査及び数学的計算によって決定す ることができる。また、コンピュータープロ グラムを用いて同一性パーセントを決定する こともできる。そのようなコンピュータープ ログラムとしては、例えば、BLAST、FASTA(Altschu lら、 J. Mol. Biol., 215:403-410(1990))、及びClusta lW等があげられる。特に、BLASTプログラムに る同一性検索の各種条件(パラメーター)は、 Altschulら(Nucl. Acids. Res., 25, p.3389-3402, 1997) 記載されたもので、米国バイオテクノロジ 情報センター(NCBI)やDNA Data Bank of Japan(DDBJ) のウェブサイトから公的に入手することがで きる(BLASTマニュアル、Altschulら NCB/NLM/NIH Beth esda, MD 20894;Altschulら)。また、遺伝情報処理 フトウエアGENETYX Ver.7(ゼネティックス)、DIN ASIS Pro(日立ソフト)、Vector NTI(Infomax)等のプ グラムを用いて決定することもできる。

 複数のアミノ酸配列を並列させる特定の ラインメントスキームは、配列のうち、特 の短い領域のマッチングをも示すことがで るため、用いた配列の全長配列間に有意な 係がない場合であっても、そのような領域 おいて、特定の配列同一性が非常に高い領 を検出することもできる。さらに、BLASTア ゴリズムは、BLOSUM62アミノ酸スコア付けマト リックスを用いることができるが、選択パラ メーターとしては、以下のものを用いること ができる:(A)低い組成複雑性を有するクエリ 配列のセグメント(Wootton及びFederhenのSEGプロ ラム(Computers and Chemistry, 1993)により決定さ れる;Wootton及びFederhen, 1996「配列データベー における組成編重領域の解析(Analysis of comp ositionally biased regions in sequence databases)」Met hods Enzymol., 266: 544-71も参照されたい)、又は 、短周期性の内部リピートからなるセグメン ト(Claverie及びStates(Computers and Chemistry, 1993) XNUプログラムにより決定される)をマスクす ためのフィルターを含むこと、及び(B)デー ベース配列に対する適合を報告するための 計学的有意性の閾値、又はE-スコア(Karlin及 Altschul, 1990)の統計学的モデルにしたがって 、単に偶然により見出される適合の期待確率 ;ある適合に起因する統計学的有意差がE-スコ ア閾値より大きい場合、この適合は報告され ない。

 (e)配列番号2で示されるアミノ酸配列からな るタンパク質をコードする塩基配列に対し相 補的な塩基配列からなる核酸とストリンジェ ントな条件下でハイブリダイズし、かつ、本 発明の上記活性を有するタンパク質をコード する塩基配列
 本発明の核酸に含まれる塩基配列は、配列 号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパ ク質をコードする塩基配列に対し相補的な塩 基配列からなる核酸とストリンジェントな条 件下でハイブリダイズし、かつ、本発明の上 記活性を有するタンパク質をコードする塩基 配列を含む。

 配列番号2で示されるアミノ酸配列からな るタンパク質及びハイブリダイズの条件は上 記のとおりである。本発明の核酸に含まれる 塩基配列としては、配列番号2で示されるア ノ酸配列からなるタンパク質をコードする 基配列に対し相補的な塩基配列からなる核 とストリンジェントな条件下でハイブリダ ズし、かつ、本発明の上記活性を有するタ パク質をコードする塩基配列があげられる

 また、本発明の核酸には、配列番号4からな る塩基配列において1若しくは複数個の塩基 欠失、置換若しくは付加された塩基配列か なり、かつ、本発明の上記活性を有するタ パク質をコードする塩基配列を含む核酸も まれる。具体的には、
(i) 配列番号4に示す塩基配列のうち1個又は 数個(好ましくは1個又は数個(例えば、1~540個 、1~500個、1~400個、1~300個、1~200個、1~150個、1~ 100個、1~50個、1~30個、1~25個、1~20個、1~15個、1 ~10個、さらに好ましくは1~5個))の塩基が欠失 た塩基配列、
(ii) 配列番号4に示す塩基配列のうち1個又は 数個(好ましくは1個又は数個(例えば1~540個 1~500個、1~400個、1~300個、1~200個、1~150個、1~10 0個、1~50個、1~30個、1~25個、1~20個、1~15個、1~1 0個、さらに好ましくは1~5個))の塩基が他の塩 基で置換された塩基配列、
(iii) 配列番号4に示す塩基配列において1個又 は複数個(好ましくは1個又は数個(例えば1~540 、1~500個、1~400個、1~300個、1~200個、1~150個、 1~100個、1~50個、1~30個、1~25個、1~20個、1~15個 1~10個、さらに好ましくは1~5個))の他の塩基 付加された塩基配列、又は
(iv) 上記(i)~(iii)を組み合わせた塩基配列であ って、かつ、本発明の上記活性を有するタン パク質をコードしている塩基配列を含む核酸 を用いることもできる。

 本発明の核酸の好ましい態様としては、以 の(a)~(c)のいずれかに記載の塩基配列のフラ グメントを含む核酸も含まれる。
(a)配列番号4で示される塩基配列
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からな タンパク質をコードする塩基配列
(c)配列番号1で示される塩基配列
 (a)配列番号4で示される塩基配列、(b)配列番 号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパ 質をコードする塩基配列、(c)配列番号1で示 れる塩基配列については、表1に記載したと おりである。上記配列のフラグメントとは、 上記塩基配列に含まれるORF、CDS、生物学的活 性を有する領域、以下に記載するようなプラ イマーとして用いた領域、プローブとなりう る領域が含まれ、天然由来のものであっても 、人工的に作製したものであってもよい。

  本発明のグリセロール-3-リン酸ア シル基転移酵素タンパク質
 本発明のタンパク質は、配列番号2で示され るアミノ酸配列からなるタンパク質及び前記 タンパク質と同等の機能を有するタンパク質 を含み、天然由来のものであっても、人工的 に作製したものであってもよい。配列番号2 示されるアミノ酸配列からなるタンパク質 ついては、上記のとおりである。「同等の 能を有するタンパク質」とは、上記『本発 のグリセロール-3-リン酸アシル基転移酵素 コードする核酸』の項で説明したとおり、 本発明の上記活性」を有するタンパク質を 味する。

 本発明において、配列番号2で示されるアミ ノ酸配列からなるタンパク質と同等の機能を 有するタンパク質としては、以下の(a)又は(b) のいずれかに記載のタンパク質があげられる 。
(a)配列番号2において1若しくは複数個のアミ 酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ 配列からなり、かつ、本発明の上記活性を するタンパク質
(b)配列番号2からなるアミノ酸配列と同一性 70%以上のアミノ酸配列からなるタンパク質 あり、かつ、本発明の上記活性を有するタ パク質
 上記のうち、配列番号2において1若しくは 数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加 れたアミノ酸配列、又は、配列番号2からな アミノ酸配列と同一性が70%以上のアミノ酸 列については、上記、『本発明のグリセロ ル-3-リン酸アシル基転移酵素をコードする 酸』の項で説明したとおりである。また、 記「本発明の上記活性を有するタンパク質 は、配列番号4の塩基配列を含む核酸によっ てコードされるタンパク質の変異体、又は、 配列番号2に示されるアミノ酸配列において1 又は複数個のアミノ酸が置換、欠失若しく 付加等の多くの種類の修飾により変異した ンパク質、あるいはアミノ酸側鎖等が修飾 れている修飾タンパク質、他のタンパク質 の融合タンパク質であって、かつ、GPAT活性 を有するタンパク質であるか、及び/又は、 発明のGPATの脂肪酸組成を形成できる活性を するタンパク質も含まれる。

 また、本発明のタンパク質は、人工的に 製したものであってもよく、その場合は、F moc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル )、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の 学合成法によっても製造することができる また、アドバンスドケムテック社製、パー ンエルマー社製、ファルマシア社製、プロ インテクノロジーインストゥルメント社製 シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社 、島津製作所社製等のペプチド合成機を利 して化学合成することもできる。

  GPATの核酸のクローニング
 本発明のGPATの核酸は、例えば、適切なプロ ーブを用いてcDNAライブラリーからスクリー ングすることにより、クローニングするこ ができる。また、適切なプライマーを用い PCR反応により増幅し、適切なベクターに連 することによりクローニングすることがで る。さらに、別のベクターにサブクローニ グすることもできる。

 例えば、pBlue-Script  TM  SK(+) (Stratagene)、pGEM-T (Promega)、pAmp(TM: Gibco- BRL)、p-Direct (Clontech)、pCR2.1-TOPO(Invitrogen)等の 販のプラスミドベクターを用いることがで る。また、PCR反応で増幅する場合、プライ ーは、上記の配列番号1等に示される塩基配 列のいずれの部分も用いることができるが、 例えば、配列番号1に対しては、
上流側用プライマーとしてE-1: 5'-CTGACTACCAAAACC AGCTGGACTTC-3'(配列番号6)を、
下流側プライマーとして、E-2: 5'-GGCAATTTCATCCAA GTTGTCCTCC-3'(配列番号7)等を
用いることができる。そして、M. alpina 菌体 から調製したcDNAに、上記プライマー及び塩 配列ポリメラーゼ等を作用させてPCR反応を う。上記方法は、『Molecular Cloning, A Laborato ry Manual 3rd ed.』(Cold Spring Harbor Press (2001)) 等に従い、当業者であれば容易に行うことが できるが、本発明のPCR反応の条件としては、 例えば以下の条件があげられる。
変性温度:90~95℃
アニーリング温度:40~60℃
伸長温度:60~75℃
サイクル数:10回以上
 得られたPCR産物の精製には公知の方法を用 ることができる。例えば、GENECLEAN(フナコシ )、QIAquick PCR purification Kits(QIAGEN)、ExoSAP-IT(GE ヘルスケアバイオサイエンス)等のキットを いる方法、DEAE-セルロース濾紙を用いる方法 、透析チューブを用いる方法等がある。アガ ロースゲルを用いる場合には、アガロースゲ ル電気泳動を行い、塩基配列断片をアガロー スゲルより切り出して、GENECLEAN(フナコシ)、Q IAquick Gel extraction Kits(QIAGEN)、フリーズ& クイーズ法等により精製することができる

 クローニングした核酸の塩基配列は、塩 配列シーケンサーを用いて塩基配列を決定 ることができる。

  GPAT発現用ベクター構築及び形質 換体の作製
 本発明はまた、本発明のGPAT2をコードする 酸を含有する組換えベクターを提供する。 発明は、さらに、上記組換えベクターによ て形質転換された形質転換体も提供する。

 このような組換えベクター及び形質転換 は以下のようにして得ることができる。す わち、本発明のGPATをコードする核酸を有す るプラスミドを制限酵素を用いて消化する。 用いる制限酵素としては、例えば、EcoRI、KpnI 、BamHI及びSalI等があげられるが、これらに限 定されない。なお、末端をT4ポリメラーゼ処 することにより平滑化してもよい。消化後 塩基配列断片をアガロースゲル電気泳動に り精製する。この塩基配列断片を、発現用 クターに公知の方法を用いて組み込むこと より、GPAT発現用ベクターを得ることができ る。この発現ベクターを宿主に導入して形質 転換体を作製し、目的とするタンパク質の発 現に供する。

 このとき、発現ベクター及び宿主は、目 とするタンパク質を発現できるものであれ 特に限定されず、例えば、宿主として、真 や細菌、植物、動物若しくはそれらの細胞 があげられる。真菌として、脂質生産菌で るM. alpina等の糸状菌、サッカロミセス・セ レビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の酵母等があ げられる。また細菌として、大腸菌(Escherichia  coli)やバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis) 等があげられる。さらに植物としては、ナタ ネ、ダイズ、ワタ、ベニバナ、アマ等の油糧 植物があげられる。

 脂質生産菌としては、例えば、MYCOTAXON,Vol .XLIV,NO.2,pp.257-265(1992)に記載されている菌株を 使用することができ、具体的には、モルティ エレラ(Mortierella)属に属する微生物、例えば モルティエレラ・エロンガタ(Mortierella elonga ta)IFO8570、モルティエレラ・エキシグア(Mortier ella exigua)IFO8571、モルティエレラ・ヒグロフ ラ(Mortierella hygrophila)IFO5941、モルティエレ ・アルピナ(Mortierella alpina)IFO8568、ATCC16266、A TCC32221、ATCC42430、CBS 219.35、CBS224.37、CBS250.53 CBS343.66、CBS527.72、CBS528.72、CBS529.72、CBS608.70 CBS754.68等のモルティエレラ亜属(subgenus Mortie rella)に属する微生物、又はモルティエレラ・ イザベリナ(Mortierella isabellina)CBS194.28、IFO6336 IFO7824、IFO7873、IFO7874、IFO8286、IFO8308、IFO7884 モルティエレラ・ナナ(Mortierella nana)IFO8190 モルティエレラ・ラマニアナ(Mortierella ramann iana)IFO5426、IFO8186、CBS112.08、CBS212.72、IFO7825、I FO8184、IFO8185、IFO8287、モルティエレラ・ヴィ セア(Mortierella vinacea)CBS236.82等のマイクロム コール亜属(subgenus Micromucor)に属する微生物 があげられる。とりわけ、モルティエレラ アルピナ(Mortierella alpina)が好ましい。

 真菌類を宿主として用いる場合は、本発 の核酸が宿主中で自立複製可能であるか、 しくは当該菌の染色体上に挿入され得る構 であることが好ましい。それと同時に、プ モーター、ターミネーターを含む構成であ ことが好ましい。宿主としてM. alpinaを使用 する場合、発現ベクターとして、例えば、pD4 、pDuraSC、pDura5等があげられる。プロモータ としては、宿主中で発現できるものであれ いかなるプロモーターを用いてもよく、例 ば、histonH4.1遺伝子プロモーター、GAPDH(グリ ルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ)遺 子プロモーター、TEF(Translation elongation facto r)遺伝子プロモーターといったM. alpinaに由来 するプロモーターが用いられる。

 M. alpina等の糸状菌への組換えベクターの 導入方法としては、例えば、エレクトロポレ ーション法、スフェロプラスト法、パーティ クルデリバリー法、及び核内へのDNAの直接マ イクロインジェクション等があげられる。栄 養要求性のホスト株を用いる場合は、その栄 養素を欠いた選択培地上で生育する株を選択 することで、形質転換株を取得することがで きる。また、形質転換に薬剤耐性マーカー遺 伝子を用いる場合には、その薬剤を含む選択 培地にて培養を行い、薬剤耐性を示す細胞コ ロニーを得ることができる。

 酵母を宿主として用いる場合は、発現ベ ターとして、例えば、pYE22m等があげられる また、pYES(Invitrogen)、pESC(STRATAGENE)等の市販 酵母発現用ベクターを、用いてもよい。ま 本発明に適する宿主としては、Saccharomyces ce revisiae EH13-15株(trp1, MATα)等があげられるが れらに限定されない。プロモーターとして 、例えば、GAPDHプロモーター、gal1プロモー ー、gal10プロモーター等の酵母等に由来する プロモーターが用いられる。

 酵母への組換えベクターの導入方法とし は、例えば、酢酸リチウム法、エレクトロ レーション法、スフェロプラスト法、デキ トラン仲介トランスフェクション、リン酸 ルシウム沈殿、ポリブレン仲介トランスフ クション、プロトプラスト融合、リポソー 中のポリヌクレオチド(単数又は複数)の被 、及び核内へのDNAの直接マイクロインジェ ション等があげられる。

 大腸菌等の細菌を宿主として用いる場合 、発現ベクターとしては、例えばファルマ ア社のpGEX、pUC18等があげられる。プロモー ーとしては、例えば、trpプロモーター、lac プロモーター、PLプロモーター、PRプロモー ー等の大腸菌やファージ等に由来するプロ ーターが用いられる。細菌への組み換えベ ターの導入方法としては、例えばエレクト ポレーション法や塩化カルシウム法を用い ことができる。

  本発明の脂肪酸組成物の製造方法
 本発明は、上記形質転換体から、脂肪酸組 物を製造する方法を提供する。すなわち、 記形質転換体を培養して得られる培養物か 脂肪酸組成物を製造する方法である。具体 には、以下の方法で製造することができる しかし、本製造方法に関しては、当該方法 限られず、一般的な公知の他の方法を用い 行うこともできる。

 GPATを発現させた生物の培養に用いる培地 は、適当なpH及び浸透圧を有し、各宿主の増 に必要な栄養素、微量成分、血清や抗生物 等の生物材料を含んでいる培養液(培地)で れば、いかなる培養液も用いうる。例えば 酵母を形質転換してGPATを発現させた場合は SC-Trp培地、YPD培地、YPD5培地等を用いること ができるが、これらに限定されない。具体的 な培地の組成としてSC-Trp培地を例示する:1lあ たり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6. 7g、グルコース20gアミノ酸パウダー(アデニン 硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸 3g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、ロイシ 1.8g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニル ラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バ ン4.5g、スレオニン6g、ウラシル0.6gを混合し もの)1.3g)。

 培養条件は、宿主の増殖に適し、かつ生 した酵素が安定に保たれるのに適当な条件 あればいかなる条件でもよいが、具体的に 、嫌気度、培養時間、温度、湿度、静置培 又は振盪培養等の個々の条件を調節するこ ができる。培養方法は、同一条件での培養( 1段階培養)でもよく、2以上の異なる培養条件 を用いる、いわゆる2段階培養若しくは3段階 養でもよいが、大量培養をする場合には、 養効率がよい2段階培養等が好ましい。

 以下に、本発明の脂肪酸組成物の具体的 製造方法として、宿主として酵母を用いて2 段階培養を行った場合を例示して説明する。 すなわち、前培養として、上記で得られたコ ロニーを、例えば上記のSC-Trp培地等に植菌し て、30℃で2日間振盪培養を行う。その後、本 培養として、YPD5(2%酵母エキス、1%ポリペプト ン、5%グルコース)培地10mlに前培養液を500μl 加し、30℃で2日間振盪培養を行う方法であ 。

  本発明の脂肪酸組成物
 本発明はまた、本発明のGPAT2が発現してい 細胞における1又はそれ以上の脂肪酸の集合 である脂肪酸組成物を提供する。脂肪酸は 遊離脂肪酸でもよいし、トリグリセリド、 ン脂質等でもよい。特に、本発明の脂肪酸 成物は、その脂肪酸組成において、以下の
i) オレイン酸含有量
ii) パルミチン酸含有量に対するオレイン酸 有量の比率
iii) パルミチン酸含有量に対する、ステアリ ン酸及びオレイン酸の合計含有量の比率、並 びに
iv) 炭素数16の脂肪酸の含有量に対する、炭 数18の脂肪酸の含有量の比率
のうちの少なくとも一つ以上が、本発明の組 換えベクターで形質転換されていない宿主を 培養して得られる培養物の前記比率より高い ことを特徴とする。ここで、「本発明の組換 えベクターで形質転換されていない宿主」と は、例えば、本明細書中の「本発明のグリセ ロール-3-リン酸アシル基転移酵素をコードす る核酸」の項目で記載した核酸が組み込まれ ていないベクター(空ベクター)で形質転換さ た宿主である。

 本発明の脂肪酸組成物に含まれる脂肪酸 しては、長鎖炭水化物の鎖状あるいは分岐 のモノカルボン酸をいい、例えば、ミリス ン酸(テトラデカン酸)(14:0)、ミリストレイ 酸(テトラデセン酸)(14:1)、パルミチン酸(ヘ サデカン酸)(16:0)、パルミトレイン酸(9-ヘキ デセン酸)(16:1)、ステアリン酸(オクタデカ 酸)(18:0)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)(1 8:1(9))、バクセン酸(11-オクタデセン酸)(18:1(11) )、リノール酸(cis, cis-9,12 オクタデカジエン 酸)(18:2(9,12))、α-リノレン酸(9,12,15-オクタデ ントリエン酸)(18:3(9,12,15))、γ-リノレン酸(6,9 ,12-オクタデカントリエン酸)(18:3(6,9,12))、ス アリドン酸(6,9,12,15-オクタデカンテトラエン 酸)(18:4(6,9,12,15))、アラキジン酸(イコサン酸)( 20:0)、(8,11-イコサジエン酸)(20:2(8,11))、ミード 酸(5,8,11-イコサトリエン酸)(20:3(5,8,11))、ジホ γ-リノレン酸(8,11,14-イコサトリエン酸)(20:3( 8,11,14))、アラキドン酸(5,8,11,14-イコサテトラ ン酸)(20:4(5,8,11,14))、エイコサテトラエン酸( 5,11,14,17-イコサテトラエン酸)(20:4(5,11,14,17)、 イコサペンタエン酸(5,8,11,14,17-イコサペン エン酸)(20:5(5,8,11,14,17))、ベヘン酸(ドコサン )(22:0)、(7,10,13,16-ドコサテトラエン酸)(22:4(7, 10,13,16))、(4,7, 13,16,19-ドコサペンタエン酸)(22 :5(4,7, 13,16,19))、(4,7,10,13,16-ドコサペンタエン 酸)(22:5(4,7,10,13,16))、(4,7,10, 13,16,19-ドコサヘ サエン酸)(22:6(4,7,10, 13,16,19))、リノグリセリ ン酸(テトラドコサン酸)(24:0)、ネルボン酸(cis -15-テトラドコサン酸)(24:1)、セロチン酸(ヘキ サドコサン酸)(26:0)、等があげられるが、こ らに限定されない。なお、上記物質名はIUPAC 生化学命名法で定義された慣用名であり、組 織名及び、炭素数と二重結合の位置を示す数 値を、カッコ内に記載した。

 本発明の脂肪酸組成物は、上記の脂肪酸 うち、1またそれ以上の脂肪酸の組み合わせ であれば、いかなる数のいかなる種類の脂肪 酸からなる組成物でもよい。

 このような本発明の脂肪酸組成物が得ら たこと、つまり、本発明のGPAT2が発現した との確認は、公知の一般的な方法を用いて うことができる。例えば、酵母でGPATを発現 せた場合は、脂肪酸組成の変化として確認 ることができる。すなわち、上記本発明の 肪酸組成物の製造方法により得られた凍結 燥した菌体に、適当な比率で調整したクロ ホルム:メタノールを添加して攪拌した後、 適当な時間、加熱処理をする。さらに遠心分 離により菌体を分離して、溶媒を回収するこ とを数回繰り返す。その後、適当な方法を用 いて脂質を乾固させてから、クロロホルム等 の溶媒を添加して脂質を溶解する。この試料 を適当量分取して、塩酸メタノール法により 菌体の脂肪酸をメチルエステルに誘導した後 に、ヘキサンで抽出し、ヘキサンを留去して から、ガスクロマトグラフィーで分析を行う 。

 その結果、上記の脂肪酸組成を有する脂 酸組成物が得られた場合は、本発明の脂肪 組成物が得られたと判断することができる なお、本発明のGPATは、公知のGPAT脂肪酸組 物の脂肪酸組成とは脂肪酸組成が異なるこ から、本発明のGPATは公知のGPATと基質特異性 が異なることが示される。

  本発明の脂肪酸組成物を含む食品 等
 また、本発明は、上記脂肪酸組成物を含む 品を提供する。本発明の脂肪酸組成物は、 法に従って、例えば、油脂を含む食品、工 原料(化粧料、医薬(例えば、皮膚外用薬)、 鹸等の原料)の製造等の用途に使用すること ができる。化粧料(組成物)又は医薬(組成物) 剤型としては、溶液状、ペースト状、ゲル 、固体状、粉末状等任意の剤型をあげるこ ができるが、これらに限定されない。また 食品の形態としては、カプセル等の医薬製 の形態、又はタンパク質、糖類、脂肪、微 元素、ビタミン類、乳化剤、香料等に本発 の脂肪酸組成物が配合された自然流動食、 消化態栄養食、及び成分栄養食、ドリンク 、経腸栄養剤等の加工形態があげられる。

 さらに、本発明の食品の例としては、栄 補助食品、健康食品、機能性食品、幼児用 品、乳児用調製乳、未熟児用調製乳、老人 食品等があげられるが、これらに限定され い。本明細書においては、食品とは、固体 流動体、及び液体、並びにそれらの混合物 あって、摂食可能なものの総称をいう。

 栄養補助食品とは、特定の栄養成分が強 されている食品をいう。健康食品とは、健 的な又は健康によいとされる食品をいい、 養補助食品、自然食品、ダイエット食品等 含まれる。機能性食品とは、体の調節機能 果たす栄養成分を補給するための食品をい 、特定保健用食品と同義である。幼児用食 とは、約6歳までの子供に与えるための食品 をいう。老人用食品とは、無処理の食品と比 較して消化及び吸収が容易であるように処理 された食品をいう。乳児用調製乳とは、約1 までの子供に与えるための調製乳をいう。 熟児用調製乳とは、未熟児が生後約6ヶ月に るまで与えるための調製乳をいう。

 これらの食品としては、肉、魚、ナッツ の天然食品(油脂で処理したもの);中華料理 ラーメン、スープ等の調理時に油脂を加え 食品;天ぷら、フライ、油揚げ、チャーハン 、ドーナッツ、かりん糖等の熱媒体として油 脂を用いた食品;バター、マーガリン、マヨ ーズ、ドレッシング、チョコレート、即席 ーメン、キャラメル、ビスケット、クッキ 、ケーキ、アイスクリーム等の油脂食品又 加工時に油脂を加えた加工食品;おかき、ハ ドビスケット、あんパン等の加工仕上げ時 油脂を噴霧又は塗布した食品等をあげるこ ができる。しかしながら、本発明の食品は 油脂を含む食品に限定されるわけではなく 例えば、パン、麺類、ごはん、菓子類(キャ ンデー、チューインガム、グミ、錠菓、和菓 子)、豆腐及びその加工品等の農産食品;清酒 薬用酒、みりん、食酢、醤油、みそ等の発 食品;ヨーグルト、ハム、ベーコン、ソーセ ージ等の畜産食品;かまぼこ、揚げ天、はん ん等の水産食品;果汁飲料、清涼飲料、スポ ツ飲料、アルコール飲料、茶等があげられ 。

  本発明のGPATをコードする核酸又 GPATタンパク質を用いた菌株の評価・選択方
 本発明はまた、本発明のGPATをコードする核 酸又はGPATタンパク質を用いて、脂質生産菌 評価や選択を行う方法を提供する。具体的 は以下のとおりである。

 (1)評価方法
 本発明の一態様として、本発明のGPATをコー ドする核酸又はGPATタンパク質を用いて、脂 生産菌の評価を行う方法があげられる。本 明の上記評価方法としては、まず、本発明 塩基配列に基づいて設計したプライマー又 プローブを用いて、被検菌株である脂質産 菌株の本発明の上記活性について評価する 法があげられる。このような評価方法の一 的手法は公知であり、例えば、国際特許出 パンフレットWO01/040514号、特開平8-205900号公 などに記載されている。以下、この評価方 について簡単に説明する。

 まず、被検菌株のゲノムを調製する。調 方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、 かなる公知の方法をも用いることができる( えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harb or Laboratory Press, p130 (1990)参照)。

 本発明の塩基配列、好ましくは、配列番 4に基づいてプライマー又はプローブを設計 する。上記プライマー又はプローブは本発明 の塩基配列のいずれの部分をも用いることが でき、またその設計は公知の手法を用いて行 うことができる。プライマーとして用いるポ リヌクレオチドの塩基数は、通常、10塩基以 であり、15~25塩基であることが好ましい。 た、挟み込む部分の塩基数は、通常、300~2000 塩基が適当である。

 上記で作製したプライマー又はプローブ 用いて、上記被検菌株のゲノム中に本発明 塩基配列と特異的な配列が存在するか否か 調べる。本発明の塩基配列と特異的な配列 検出は、公知の手法を用いて行うことがで る。例えば、本発明の塩基配列に特異的配 の一部又は全部を含むポリヌクレオチド又 上記塩基配列に対して相補的な塩基配列を むポリヌクレオチドを一つのプライマーと て用い、もう一方のプライマーとしてこの 列よりも上流あるいは下流の配列の一部又 全部を含むポリヌクレオチド、又は上記塩 配列に対して相補的な塩基配列を含むポリ クレオチドを用いて、例えば、PCR法等によ て被検菌株の核酸を増幅し、増幅物の有無 増幅物の分子量の大きさなどを測定するこ ができる。

 本発明の方法に適するPCR法の反応条件は、 に限定されないが、例えば、以下の条件が げられる。
変性温度:90~95℃
アニーリング温度:40~60℃
伸長温度:60~75℃、
サイクル数:10回以上
などの条件である。得られた反応生成物はア ガロースゲルなどを用いた電気泳動法等によ り分離して、増幅産物の分子量を測定するこ とができる。これにより、増幅産物の分子量 が本発明の塩基配列と特異的な領域に相当す る核酸分子を含む大きさか否かを確認するこ とにより、被検菌株の本発明の上記活性を予 測又は評価することができる。また、上記増 幅産物の塩基配列を上記方法等で解析するこ とによって、さらに本発明の上記活性をより 正確に予測又は評価することができる。なお 、本発明の上記活性の評価方法は、上記のと おりである。

 また、本発明の上記評価方法としては、 検菌株を培養し、配列番号4等の本発明の塩 基配列がコードするGPATの発現量を測定する とによって、被検菌株の本発明の上記活性 評価することもできる。なお、GPATの発現量 、被検菌株を適当な条件で培養し、GPATのmRN A又はタンパク質を定量することにより測定 きる。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の 法を用いて行うことができる。mRNAの定量は 、例えば、ノーザンハイブリダイゼーション や定量的RT-PCRによって、タンパク質の定量は 、例えば、ウエスタンブロッティングによっ て行うことができる(Current Protocols in Molecula r Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。また 上記活性の評価方法として、本発明のGPATが 生する脂肪酸組成物の組成を測定する方法 あげることもできる。脂肪酸組成物の組成 測定方法は上記のとおりである。

 (2)選択方法
 本発明の他の態様として、本発明のGPATをコ ードする核酸又はGPATタンパク質を用いて、 質生産菌の選択を行う方法があげられる。 発明の上記選択方法としては、被検菌株を 養し、配列番号4等の本発明の塩基配列がコ ドするGPATの発現量を測定して、目的とする 発現量の菌株を選択することにより、所望の 活性を有する菌株を選択することができる。 また、基準となる菌株を設定し、この基準菌 株と被検菌株を各々培養し、各菌株の前記発 現量を測定し、基準菌株と被検菌株の発現量 を比較して、所望の菌株を選択することもで きる。具体的には、例えば、基準菌株及び被 検菌株を適当な条件で培養し、各菌株の発現 量を測定し、基準菌株よりも被検菌株の方が 高発現、又は低発現である被検菌株を選択す ることにより、所望の活性を有する菌株を選 択することができる。所望の活性には、上記 のように、GPATの発現量及びGPATが産生する脂 酸組成物の組成を測定する方法があげられ 。

 また、本発明の上記選択方法としては、 検菌株を培養して、本発明の上記活性が高 か若しくは低い菌株を選択することにより 所望の活性を有する被検菌株を選択するこ もできる。所望の活性には、上記のように GPATの発現量及びGPATが産生する脂肪酸組成 の組成を測定する方法があげられる。

 被検菌株又は基準菌株としては、例えば 上記の本発明のベクターを導入した菌株、 記本発明の核酸の発現が抑制された菌株、 然変異処理が施された菌株、自然変異した 株などを用いることができるがこれらに限 されない。なお、本発明のGPAT活性及びGPAT 脂肪酸組成物を形成できる活性は、例えば 明細書中の「本発明のグリセロール-3-リン アシル基転移酵素をコードする核酸」、「 発明の脂肪酸組成物」の項目で記載した方 によって測定することが可能である。突然 異処理としては、例えば、紫外線照射や放 線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタン ルホネート)、N-メチル-N-ニトロソグアニジ などの薬剤処理による化学的方法などがあ られる(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実 験法39 酵母分子遺伝学実験法、p.67-75、学会 版センターなど参照)が、これらに限定され ない。

 なお、本発明の基準菌株、被検菌株とし 用いる菌株としては、上記の脂質生産菌又 酵母等があげられるが、これらに限定され い。具体的には、基準菌株、被検菌株は、 なる属や種や属するいかなる菌株を組み合 せて用いてもよく、被検菌株は1又はそれ以 上の菌株を同時に用いてもよい。

 以下、実施例により本発明をさらに具体 に説明する。但し、本発明は実施例に限定 れるものではない。

  (1)EST解析
 M. alpina 1S-4株を100mlの培地(1.8%グルコース 1%酵母エキス、pH6.0)に植菌し、3日間28℃で前 培養した。10l培養槽(Able Co., 東京)に5lの培 (1.8%グルコース、1%大豆粉、0.1%オリーブ油、 0.01%アデカノール、0.3% KH 2 PO 4 、0.1% Na 2 SO 4 、0.05% CaCl 2 ・2H 2 O、0.05% MgCl 2 ・6H 2 O、pH6.0)を入れ、前培養物を全量植菌し、300rp m、1vvm、26℃の条件で8日間通気攪拌培養した 培養1、2、及び3日目に各々2%、2%、及び1.5% 当のグルコースを添加した。培養1、2、3、6 及び8日目の各ステージに菌体を回収し、塩 酸グアジニン/CsCl法で全RNAを調製した。Oligote x-dT30<Super>mRNA Purification Kit(タカラバイ )を用いて、全RNAからpoly(A) + RNAの精製を行った。各ステージのcDNAライブ リーを、ZAP-cDNA Synthesis Kit(STRATAGENE)を用い 作製し、cDNAの5’側からのワンパスシーケン ス解析(8000クローン×5ステージ)を行った。得 られた配列をクラスタリングした。その結果 、約5000の配列を得た。

  (2)GPAT遺伝子ホモログの探索
 EST解析で得られた塩基配列をGENBANKに登録さ れているアミノ酸配列に対して相同性検索プ ログラムであるBLASTXで検索し、GPAT遺伝子の モログを抽出した。その結果、1つのGPATのホ モログの配列(配列番号5)を見出した。

 上記検索で最も同一性の高かったのは、S . cerevisiae由来のグリセロール‐3-リン酸アシ ル基転移酵素であるSct1p(YBL011wにコードされ タンパク質)であった。

 M. alpinaのGPATホモログについては、米国 許出願公開第US2006/0094091号明細書にすでに記 載されている。この既知のM. alpina由来の配 (GPAT1と呼ぶ)と、ここで得られた配列を比較 ると、配列番号5とは有意な同一性を示さな かった。従って、配列番号5はM. alpinaの公知 GPATとは別のホモログのESTであると考えられ 、当該GPATホモログをGPAT2と呼ぶことにした。

  (1)GPATホモログのクローニング
 配列番号5には、GPATホモログをコードする 考えられるCDSが存在しなかったため、この 伝子の全長をコードするcDNAをクローン化す ために配列番号5の配列に基づき、以下のと おりプライマーを作製した。
配列番号5に基づき設計したプライマー:
プライマーE-1:CTGACTACCAAAACCAGCTGGACTTC(配列番号6)
プライマーE-2:GGCAATTTCATCCAAGTTGTCCTCC(配列番号7)
このプライマー対を用いて、配列番号5を構 するESTを含む8日目cDNAライブラリーを鋳型と して、ExTaq(タカラバイオ)を用いてPCR反応を った。得られたDNA断片をTOPO-TA cloning Kit(INVI TROGEN CORPORATION)を用いてTA-クローニングを行 、インサート部分の塩基配列を決定した。

 その結果、配列番号5の5番目から243番目 塩基配列を含むDNA断片がクローン化された とを確認し、このプラスミドをpCR-E-Pとした 次に、このプラスミドを鋳型として、上記 ライマーを用いてPCR反応を行った。反応に 、ExTaq(タカラバイオ)を用いたが、添付のdNT Pミックスの代わりにPCRラベリングミックス( シュ・ダイアグノスティックス社)を用いて 、増幅されるDNAをジゴキシゲニン(DIG)ラベル 、cDNAライブラリーをスクリーニングするの に用いるプローブを作製した。このプローブ を用いて、EST解析で配列番号5を構成するEST 得たcDNAライブラリーをスクリーニングした

 ハイブリダイゼーションの条件は、次のと りである。
バッファー:5x SSC、1%SDS、50mM Tris-HCl(pH7.5)、50 %ホルムアミド;
温度:42℃(一晩);
洗浄:0.2x SSC、0.1%SDS溶液中(65℃)で、20分間×3 ;
 検出は、DIG核酸検出キット(ロシュ・ダイア グノスティックス社)により行った。スクリ ニングによって得られたファージクローン ら、in vivoエキシジョンにより、プラスミド を切り出し、プラスミドDNAを得た。

 配列番号5を含むcDNAをスクリーニングし 得られたクローンのインサートの塩基配列 配列番号1に示す。配列番号1には、第113番目 から第1891番目までの1779 bpからなるCDSが含ま れており、GPATホモログ(GPAT2)の全長をコード ている配列が得られたと考えられた。この 伝子によってコードされるタンパク質の推 アミノ酸配列を配列番号2に示した。配列番 号1を含むプラスミドをpB-GPAT2とした。

 一方、M. alpina 1S-4株由来のGPAT1をクローン するために、米国特許出願公開第2006/0094091 明細書の配列番号1で示されているGPATホモ グのORF配列をもとに、以下のプライマーを 製した。
プライマーGPAT1-1  ggatcc atggcccttcagatctacga (配列番号8)
プライマーGPAT1-2   gtcgac ctaaatgtcttttgacttggc (配列番号9)
上記プライマーの下線部分は、付加した制限 酵素認識部位である。
これらのプライマーを用いてcDNAライブラリ を鋳型として、KOD -Plus- (東洋紡績) により PCRを行った。増幅された断片をpCR4 Blunt-TOPO  (Invitrogen) にサブクローニングし、塩基配列 確認し、この遺伝子の正しい塩基配列と考 られるクローンをpCR4-GPAT1とした。このよう にしてクローニングされたM. alpina 1S-4株由 のGPAT1のcDNAの塩基配列を配列番号10に、そし てそのcDNAによってコードされるGPAT1の推定ア ミノ酸配列を配列番号11に示した。

  (2)配列解析
 上記のようにして得られたM. alpina由来のGPA Tホモログ(GPAT2)のcDNA配列をGENEBANKに登録され いるアミノ酸配列に対してBLASTXにて相同性 析を行った。その結果、当該ホモログの配 に対して最もE-valueの低かった、すなわち同 一性の高かったアミノ酸配列はAspergillus nidul ans由来の1-アシル-sn-グリセロール-3-リン酸ア シル基転移酵素様の推定タンパク質配列(GBア クセッションNo. EAA62242)であった。機能が明 かにされているタンパク質で最も同一性の かったものは、Saccharomyces cerevisiae由来のグ リセロール-3-リン酸アシル基転移酵素である Sct1p(GBアクセッションNo. CAC85390)であった。 該ホモログ配列のORFと、上記の同一性の高 った配列に係る塩基配列の同一性、及びア ノ酸配列の同一性をclustalWにて求めた。その 結果、ORFの塩基配列の同一性はそれぞれ36.9% 36.6%、アミノ酸配列の同一性はそれぞれ17.0% と15.0%であった。

 クローニングした配列番号1の塩基配列及 びその推定アミノ酸配列である配列番号2は 既知の塩基配列及びアミノ酸配列と比較し も同一性の著しく高いものはなく、M. alpina 来の新規GPATであることと考えられた。

 一方、上述のようにクローン化したM. alp ina 1S-4株由来のGPAT1(cDNA配列は配列番号10に、 その推定アミノ酸配列は配列番号11に示され )とM. alpina(ATCC #16266)由来のGPAT1 (米国特許 願公開第2006/0094091号明細書)を比較したとこ ろ、塩基配列で90.4%、アミノ酸配列で97.9%の 一性であることが確認された。

酵母発現ベクターの構築
 GPAT2を酵母で発現させるために、以下のと り酵母発現用ベクターを構築した。すなわ 、プラスミドpB-GPAT2を制限酵素KpnIで消化し 後、制限酵素SacIで部分消化して得られた約2 kbのDNA断片を酵母用発現ベクターpYE22m (Biosci.  Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995)のSacI-KpnIサ イトに挿入し、プラスミドpYE-MAGPAT2を構築し 。

 一方、GPAT1を酵母で発現させるために以 の通り酵母発現ベクターを構築した。プラ ミドpCR4-GPAT1を制限酵素BamHIとSalIで消化して られた約2.2kbのDNA断片を酵母用発現ベクタ pYE22m(Biosci. Biotech. Biochem., 59, 1221-1228, 1995) のBamHI-SalIサイトに挿入し、プラスミドpYE-MAGP AT1を構築した。

酵母の形質転換
 プラスミドpYE22m、pYE-MAGPAT1又はpYE-MAGPAT2を用 いて酢酸リチウム法により、酵母Saccharomyces  cerevisiae EH13-15株(trp1, MATα)(Appl. Microbiol. Biot echnol., 30, 515-520, 1989)に形質転換した。形質 転換株は、SC-Trp(1lあたり、Yeast nitrogen base w /o amino acids (DIFCO) 6.7g、グルコース20gアミ 酸パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニ 0.6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒ スチジン0.6g、ロイシン1.8g、リジン0.9g、メチ オニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、セリン11.2 5g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオニン6g、 ウラシル0.6gを混合したもの)1.3g)、寒天培地(2 %アガー)上で生育するものとして選抜した。

酵母の培養
 酵母発現ベクターでの形質転換株のうち任 の2株ずつ(c-1株及びc-2株、GPAT1-1株及びGPAT1-2 株、並びに、GPAT2-1株及びGPAT2-2株)を選択して 、以下の条件で培養した。

 すなわち、前培養として、SC-Trp培地10mlに 酵母をプレートから1白金耳植菌し、30℃で2 間振とう培養を行った。本培養は、YPD5(酵母 エキス2%、ポリペプトン1%、グルコース5%)培 10mlに前培養液を500μl添加し、30℃で2日間振 う培養を行った。

酵母の脂肪酸分析
 酵母の培養液を遠心分離することにより、 体を回収した。10mlの滅菌水で洗浄し、遠心 分離により再び菌体を回収し、凍結乾燥した 。凍結乾燥菌体にクロロホルム:メタノール(2 :1)を4ml添加し、激しく攪拌した後、70℃で1時 間処理した。遠心分離により菌体を分離し、 溶媒を回収した。残った菌体に再度クロロホ ルム:メタノール(2:1)を4ml添加し、同様に溶媒 を回収した。スピードバックで脂質を乾固し たのち、2mlのクロロホルムを添加して脂質を 溶解した。この試料のうち、200μlを分取して 、塩酸メタノール法により菌体の脂肪酸をメ チルエステルに誘導した後、ヘキサンで抽出 して、ヘキサンを留去して、ガスクロマトグ ラフィーにより分析を行った。

 その結果を表2に示す。

 表2 形質転換株の脂肪酸組成(ホストEH13-1 5)

 M. alpina由来の2つのGPATホモログを導入し 酵母と、コントロールの酵母の脂肪酸組成 比較した。GPAT1を導入した酵母の脂肪酸組 は、パルミチン酸の割合がコントロール株 比して上昇する一方、パルミトレイン酸含 の割合は減少した。また、ステアリン酸及 オレイン酸の割合はコントロール株と同程 であった。よって、パルミチン酸含有量に するパルミトレイン酸含有量の比率、パル チン酸含有量に対するオレイン酸含有量の 率、並びに、パルミチン酸含有量に対する テアリン酸及びオレイン酸の合計含有量の 率は、コントロール株に比して低くなった

 一方、GPAT2を導入した酵母ではオレイン の割合がコントロール株に比べて1割以上上 した。パルミチン酸、パルミトレイン酸の 合はコントロール株に比していずれも減少 る一方、パルミチン酸含有量に対するパル トレイン酸含有量の比率はコントロール株 比して若干上昇した。また、GPAT2を導入し 酵母における、パルミチン酸含有量に対す オレイン酸含有量の比率、並びに、パルミ ン酸含有量に対するステアリン酸及びオレ ン酸の合計含有量の比率は、コントロール に比して上昇した。また、GPAT2を導入した酵 母では炭素数16の脂肪酸に対する炭素数18の 肪酸の比が上昇しており、より長鎖の脂肪 を生成した。

 以上の結果から、M. alpina由来の2つのGPAT モログは、その基質のアシル基の特異性が なるためにこれらの遺伝子を導入した酵母 は各々のホモログで脂肪酸組成が異なって ることが示された。また、上記ホモログを 時使い分けることにより、目的とする脂肪 組成の生物を育種することができることが された。

  アラキドン酸生産酵母での発現解 析
 (1)アラキドン酸生産酵母の育種
 アラキドン酸生産酵母(Saccharomyces cerevisiae) 育種するために、以下のプラスミドを構築 た。

 まず、M. alpina 1S-4株から調製したcDNAを鋳 として、δ12-fとδ12-r、δ6-fとδ6-r、GLELO-fとGLE LO-r又はδ5-fとδ5-rといった、プライマーの組 合わせでExTaqを用いてPCRを行い、M. alpina 1S -4株のδ12脂肪酸不飽和化酵素遺伝子、δ6脂肪 酸不飽和化酵素遺伝子、GLELO脂肪酸鎖長延長 素遺伝子及びδ5脂肪酸不飽和化遺伝子を増 した。
δ12-f:TCTAGAatggcacctcccaacactattg(配列番号12)
δ12-r:AAGCTTTTACTTCTTGAAAAAGACCACGTC(配列番号13)
δ6-f:TCTAGAatggctgctgctcccagtgtgag(配列番号14)
δ6-r:AAGCTTTTACTGTGCCTTGCCCATCTTGG(配列番号15)
GLELO-f:TCTAGAatggagtcgattgcgcaattcc(配列番号16)
GLELO-r:GAGCTCTTACTGCAACTTCCTTGCCTTCTC(配列番号17)
δ5-f:TCTAGAatgggtgcggacacaggaaaaacc(配列番号18)
δ5-r:AAGCTTTTACTCTTCCTTGGGACGAAGACC(配列番号19)
 これらをTOPO-TA-cloning Kitによりクローン化 た。塩基配列を確認し、配列番号20-23の塩基 配列を含むクローンをそれぞれプラスミドpCR -MAδ12DS(配列番号20の塩基配列を含む)、pCR-MAδ 6DS(配列番号21の塩基配列を含む)、pCR-MAGLELO( 列番号22の塩基配列を含む)、pCR- MAδ5DS(配列 番号23の塩基配列を含む)とした。

 一方、プラスミドpURA34(特開2001-120276)を制 限酵素HindIIIで消化して得られた約1.2kbのDNA断 片を、ベクターpUC18を制限酵素EcoRIとSphIで消 したあと末端を平滑化し、セルフライゲー ョンして得られたベクターのHindIIIサイトに 挿入し、ベクターのEcoRIサイト側がURA3の5’ であるクローンをpUC-URA3とした。また、YEp13 制限酵素SalIとXhoIで消化して得られた約2.2kb のDNA断片をベクターpUC18のSalIサイトに挿入し 、ベクターのEcoRI側がLUE2の5’側であるクロ ンをpUC-LEU2とした。

 次に、プラスミドpCR-MAδ12DSを制限酵素Hind IIIで消化したあと末端を平滑化したものを制 限酵素XbaIで消化して得られた約1.2kbpのDNA断 と、ベクターpESC-URA(STRATAGENE)を制限酵素SacI 消化した後、末端を平滑化したものを、制 酵素SpeIで消化した約6.6kbpのDNA断片を連結し プラスミドpESC-U-δ12を得た。プラスミドpCR-M Aδ6DSを制限酵素XbaIで消化した後、末端を平 化したものを、制限酵素HindIIIで消化して得 れた約1.6kbpのDNA断片と、プラスミドpESC-U-δ1 2を制限酵素SalIで消化した後、末端を平滑化 たものを、制限酵素HindIIIで消化した約8kbp DNA断片と連結し、プラスミドpESC-U-δ12:δ6を た。これを制限酵素PvuIIで部分消化して得ら れた約4.2kbの断片をpUC-URA3のSmaIサイトに挿入 、プラスミドpUC-URA-δ12:δ6を得た。

 また、プラスミドpCR-MAGLELOを制限酵素XbaI SacIで消化して得られた約0.95kbpのDNA断片と ベクターpESC-LEU(STRATAGENE)を制限酵素XbaIとSacI 消化して得られた約7.7kbpのDNA断片と連結し プラスミドpESC-L-GLELOを得た。プラスミドpCR-  MAδ5DSを制限酵素XbaIで消化した後、末端を 滑化したものを、制限酵素HindIIIで消化して られた約1.3kbpのDNA断片と、プラスミドpESC-L- GLELOを制限酵素ApaIで消化した後、末端を平滑 化したものを、制限酵素HindIIIで消化して得 れた約8.7kbpのDNA断片を連結して、プラスミ pESC-L-GLELO:δ5を得た。これを制限酵素PvuIIで 化して得られた約3.2kb断片をpUC-LEU2のSmaIサイ トに挿入し、プラスミドpUC-LEU-GLELO:δ5を得た S. cerevisiae YPH499株(STRATAGENE)をプラスミドpUC -URA-δ12:δ6とプラスミドpUC-LEU-GLELO:δ5でco-transf ormationした。形質転換株は、SC-Leu、Ura(1lあた 、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g グルコース20g、アミノ酸パウダー(アデニン 酸塩1.25g、アルギニン0.6g、アスパラギン酸3 g、グルタミン酸3g、ヒスチジン0.6g、リジン0. 9g、メチオニン0.6g、フェニルアラニン1.5g、 リン11.25g、チロシン0.9g、バリン4.5g、スレオ ニン6g、トリプトファン1.2gを混合したもの)1. 3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとし 選抜した。こうして得られた株のうち、任 の一株をARA3-1株とした。

 (2)アラキドン酸生産酵母の形質転換株の取 と解析
 ARA3-1株をプラスミドpYE22m、pYE-MAGPAT1、pYE-MAGP AT2でそれぞれ形質転換した。形質転換株は、 SC-Trp、Leu、Ura(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino acids (DIFCO)6.7g、グルコース20g、アミノ パウダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0 .6g、アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒ チジン0.6g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フ ニルアラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g 、バリン4.5g、スレオニン6gを混合したもの)1. 3g)寒天培地(2%アガー)上で生育するものとし 選抜した。各プラスミドを導入した株から それぞれ任意の4株を選択した。

 これらの株を上記SC-Trp、Leu、Ura液体培地1 0mlで30℃、1日間培養し、そのうち1mlをSG-Trp、 Leu、Ura(1lあたり、Yeast nitrogen base w/o amino a cids (DIFCO)6.7g、ガラクトース20g、アミノ酸パ ダー(アデニン硫酸塩1.25g、アルギニン0.6g、 アスパラギン酸3g、グルタミン酸3g、ヒスチ ン0.6g、リジン0.9g、メチオニン0.6g、フェニ アラニン1.5g、セリン11.25g、チロシン0.9g、バ リン4.5g、スレオニン6gを混合したもの)1.3g)液 体培地10mlで15℃、7日間培養し、菌体の脂肪 分析を行った。菌体の脂肪酸組成を表3に、 体内の油脂含有率を表4に示した。

 アラキドン酸生産酵母で、M. alpina由来の GPAT23を発現させた場合、コントロールと比較 して、DGLA、アラキドン酸といったPUFAの比率 高くなった。また、菌体内の脂肪酸含有率 高くなった。

  M.alpina発現用ベクターの構築
 M.alpina発現用ベクターとして、GAPDHプロモー ターから目的遺伝子を発現させるpDuraSCとヒ トンプロモーターから目的遺伝子を発現さ るpDuraMCSを用いた。

 GPAT2をM.alpinaで発現させるために、以下の とおりベクターを構築した。プラスミドpB-GPA T2を制限酵素PstIで消化し、続いて、制限酵素 XhoIで部分分解した。得られたDNA断片のうち 1.7kbのものを切り出し、ベクターpDuraSCまた ベクターpDura5MCSのマルチクローニングサイ のPstIサイト、XhoIサイトに挿入し、各々プラ スミドpDuraSC-GPAT2、プラスミドpDura5MCS-GPAT2と た。

  M.alpina形質転換株の取得
 これらのプラスミドで、M. alpinaより特許文 献(WO2005019437「脂質生産菌の育種方法」)方法 したがって誘導したウラシル要求性株δura-3 を宿主としてパーティクルデリバリー法で形 質転換を行った。形質転換株の選択には、SC 天培地(Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and A mmonium Sulfate(Difco)0.5%、硫酸アンモニウム0.17% グルコース2%、アデニン0.002%、チロシン0.003 %、メチオニン0.0001%、アルギニン0.0002%、ヒス チジン0.0002%、リジン0.0004%、トリプトファン0 .0004%、スレオニン0.0005%、イソロイシン0.0006% ロイシン0.0006%、フェニルアラニン0.0006%、 天2%)を用いた。

  形質転換M.alpinaの評価
 得られた形質転換株を、GY培地(グルコース2 %、酵母エキス1%)4mlに植菌し、28℃で3日間も くは4日間振とう培養を行った。菌体をろ過 より回収し、RNeasy plant kit(QIAGEN)を用いてRN Aを抽出した。スーパースクリプトファース ストランドシステム for RT-PCR(インビトロジ ェン)によりcDNAを合成した。導入したコンス ラクトからの各遺伝子の発現と、トータル 各遺伝子の発現を確認するため、以下のプ イマーの組み合わせでRT-PCRを行った。

 ○プラスミドpDuraSC-GPAT2導入株
導入コンストラクトからの発現確認に使用し たプライマー
 MaGAPDHpfw:CACACCACACATTCAACATC(配列番号24)
 E2:GGCAATTTCATCCAAGTTGTCCTCC(配列番号25)
トータルのGPAT2の発現確認に使用したプライ ー
 E1:CTGACTACCAAAACCAGCTGGACTTC(配列番号26)
 E2
 ○プラスミドpDura5MCS-GPAT2導入株
導入コンストラクトからの発現確認に使用し たプライマー
 PD4P:CGCATCCCGCAAACACACAC(配列番号27)とプライマ E2)、
トータルのGPAT2の発現確認に使用したプライ ー
 プライマーE1とプライマーE2
 上記RT-PCRの結果より、各遺伝子の導入コン トラクトからの発現およびトータルの発現 高かったものとして、プラスミドpDuraSC-GPAT2 導入株からGp-GPAT2-30株を、プラスミドpDura5MCS- GPAT2導入株からHp-GPAT2-9株をそれぞれ選抜した 。

 これらの株を、GY培地4mlに植菌し、28℃、 125rpmで振とう培養した。培養3日目に、20%グ コース400μl添加し、さらに培養を続けた。 たは培養6日目に菌体の全量を濾過により回 し、凍結乾燥した。乾燥菌体の一部(約10-20m g程度)をとり、塩酸メタノール法により菌体 脂肪酸をメチルエステルに誘導した後、ヘ サンで抽出して、ヘキサンを留去して、ガ クロマトグラフィーにより分析を行った。 体内の脂肪酸含有率と、培地あたりのアラ ドン酸生産量を以下の表5-6にまとめた。

 このように、GPAT2遺伝子をM.alpinaで高発現 させることによって、菌体内の脂肪酸含有率 が上昇し、培地あたりのアラキドン酸生産量 も増加させることができた。

配列番号6:プライマー
配列番号7:プライマー
配列番号8:プライマー
配列番号9:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
配列番号19:プライマー
配列番号24:プライマー
配列番号25:プライマー
配列番号26:プライマー
配列番号27:プライマー