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Patent Searching and Data


Title:
HARD COATING FILM, MATERIAL COVERED WITH HARD COATING FILM, MOLD FOR COLD PLASTIC FORMING, AND METHOD FOR FORMING HARD COATING FILM
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/016938
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a hard coating film which is more excellent in wear resistance than conventional surface coating layers, while having low friction coefficient and excellent sliding properties. Also disclosed are a material covered with a hard coating film, a mold for cold plastic forming, and a method for forming a hard coating film. Specifically disclosed is a hard coating film composed of a substance expressed as (NbxM1-x)y(BaCbN1-a-b)1-y, which satisfies the following formulae (1)-(5). 0.2 ≤ x ≤ 1.0 (1) 0 ≤ a ≤ 0.3 (2) 0 ≤ 1 - a - b ≤ 0.5 (3) 0.5 ≤ b ≤ 1 (4) 0.4 ≤ 1 - y ≤ 0.9 (5) (In the formulae, M represents one or more elements selected from the group consisting of group 4a, 5a, 6a elements, Si and Al; x represents the atomic ratio of Nb; 1-x represents the atomic ratio of M; a represents the atomic ratio of B; b represents the atomic ratio of C; 1 - a - b represents the atomic ratio of N; y represents the ratio of (NbxM1-x); and 1 - y represents the ratio of (BaCbN1-a-b).)

Inventors:
YAMAMOTO KENJI
Application Number:
PCT/JP2008/062512
Publication Date:
February 05, 2009
Filing Date:
July 10, 2008
Export Citation:
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Assignee:
KOBE STEEL LTD (JP)
YAMAMOTO KENJI
International Classes:
C23C14/06; B21D37/01
Foreign References:
JPH05239620A1993-09-17
JPS58181775A1983-10-24
JPH11302831A1999-11-02
JPH06322517A1994-11-22
JPH07173608A1995-07-11
JP2003034859A2003-02-07
JP2006124818A2006-05-18
JP2007119795A2007-05-17
Attorney, Agent or Firm:
OGURI, Shohei et al. (7-13 Nishi-Shimbashi 1-chom, Minato-ku Tokyo 03, JP)
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Claims:
 (Nb x M 1-x ) y (B a C b N 1-a-b ) 1-y からなる硬質皮膜であって、下記式(1)~(5)を満たすことを特徴とする硬質皮膜。
     0.2≦x≦1.0 -------------------式(1)
     0≦a≦0.3 -----------------------式(2)
     0≦1-a-b≦0.5 ---------------式(3)
     0.5≦b≦1 -----------------------式(4)
     0.4≦1-y≦0.9 ---------------式(5)
(但し、上記において、Mは4a、5a、6a族の元素およびSi、Alのうち1種以上の元素を示し、xはNbの原子比、1-xはMの原子比、aはBの原子比、bはCの原子比、1-a-bはNの原子比を示し、yは(Nb x M 1-x )の比、1-yは(B a C b N 1-a-b )の比を示す)
 前記xが1である請求項1記載の硬質皮膜。
 膜厚方向に前記yが異なる請求項1記載の硬質皮膜。
 請求項1記載の硬質皮膜を2層以上積層した多層構造の硬質皮膜であって、隣接する前記硬質皮膜の前記yが互いに異なることを特徴とする硬質皮膜。
 基材の表面に請求項1に記載の硬質皮膜が形成されていることを特徴とする硬質皮膜被覆材。
 鉄基合金よりなる基材の表面に4a、5a、6a族の元素およびSi、Alのうち1種以上の元素の窒化物よりなる皮膜層が形成され、その上に請求項1に記載の硬質皮膜が形成されていることを特徴とする硬質皮膜被覆材。
 請求項5記載の硬質皮膜被覆材を用いた冷間塑性加工用金型。
 請求項6記載の硬質皮膜被覆材を用いた冷間塑性加工用金型。
 請求項1記載の硬質皮膜をカソード放電型アークイオンプレーティング装置を用いて炭化水素ガスを含有する雰囲気ガス中にて形成する硬質皮膜の形成方法であって、前記雰囲気ガス中の炭化水素ガス分圧を0.8Pa超4Pa以下とすることを特徴とする硬質皮膜の形成方法。
 前記炭化水素ガスがメタンガス、アセチレンガス、トルエンガスの1種以上である請求項9記載の硬質皮膜の形成方法。
Description:
硬質皮膜、硬質皮膜被覆材およ 冷間塑性加工用金型ならびに硬質皮膜の形 方法

 本発明は、硬質皮膜、硬質皮膜被覆材お び冷間塑性加工用金型ならびに硬質皮膜の 成方法に関する技術分野に属する。本発明 、特に、耐摩耗性に優れると共に、摩擦係 が低く摺動性に優れた硬質皮膜に関する技 分野に属するものである。

 従来、金型などの金属加工用の治工具は、 化処理により耐摩耗性および耐焼き付き性 改善がなされてきた。近年では、窒化処理 代えて、PVD等の気相コーティングによる耐 耗性ならびに耐焼き付き性の改善が検討さ ている。例えば日本国公開特許公報2000-14437 6には、Cr、Al、Ti、Vの2種以上を含む複合窒化 物の形成による摺動性の改善が開示されてい る。日本国公開特許公報2002-307128、および日 国公開特許公報2002-307129には、Ti、V、Al、Cr Siの1種以上の窒化物、炭化物、炭窒化物を 成し、あるいは更にその上にTi、Crを含み残 部Moより構成される硫化物層を形成した耐摩 性あるいは耐焼き付き性に優れる表面被覆 型が開示されている。日本国公開特許公報2 000-1768には、硬質窒化物上にMoS 2 を形成した耐摩耗性ならびに耐焼き付き性に 優れる表面処理材料が開示されている。

 前記日本国公開特許公報2000-144376に開示 れるCr、Al、Ti、Vの2種以上を含む複合窒化物 は、高硬度であり、耐摩耗性には優れるが、 耐焼き付き性が十分ではなく、高面圧で金属 の塑性加工をする場合など、過酷な環境の使 用には耐え得ない。前記日本国公開特許公報 2002-307128に開示されるTi、V、Al、Cr、Siの1種以 上の窒化物、炭化物、炭窒化物も、同様に高 硬度ではあるが、耐焼き付き性に劣る。耐焼 き付き性改善のために前記日本国公開特許公 報2002-307129や前記日本国公開特許公報2000-1768 開示されるように硫化物を形成した場合、 化物は軟質であり、使用当初は摺動性に優 るが、使用時間と共に摩滅し、長期耐久性 は問題がある。

 本発明はこのような事情に鑑みてなされ ものであって、その目的は、上記従来の表 被覆層よりも耐摩耗性に優れると共に摩擦 数が低くて摺動性に優れる硬質皮膜、硬質 膜被覆材および冷間塑性加工用金型ならび 硬質皮膜の形成方法を提供することである

 本発明者らは、上記目的を達成するため 鋭意検討した結果、本発明を完成するに至 た。本発明によれば上記目的を達成するこ ができる。

 このようにして完成され上記目的を達成 ることができた本発明は、硬質皮膜(第1~4発 明に係る硬質皮膜)、硬質皮膜被覆材(第5~6発 に係る硬質皮膜被覆材)および冷間塑性加工 用金型(第7発明に係る冷間塑性加工用金型)な らびに硬質皮膜の形成方法(第8~9発明に係る 質皮膜の形成方法)に係り、次のような構成 有する。

 即ち、本発明に係る硬質皮膜は、(Nb x M 1-x ) y (B a C b N 1-a-b ) 1-y からなる硬質皮膜であって、下記式(1)~(5)を たすことを特徴とする〔第1発明〕。
     0.2≦x≦1.0 -------------------式(1)
     0≦a≦0.3 -----------------------式(2)
     0≦1-a-b≦0.5 ---------------式(3)
     0.5≦b≦1 -----------------------式(4)
     0.4≦1-y≦0.9 ---------------式(5)
但し、上記(Nb x M 1-x ) y (B a C b N 1-a-b ) 1-y において、Mは4a、5a、6a族の元素およびSi、Al うち、1種以上の元素を示す。上記式(1)~(5) おいて、xはNbの原子比、1-xはMの原子比、aは Bの原子比、bはCの原子比、1-a-bはNの原子比を 示し、yは(Nb x M 1-x )の比、1-yは(B a C b N 1-a-b )の比を示す。

 前記硬質皮膜において、前記xは1である とが好ましい〔第2発明〕。

 前記硬質皮膜において、膜厚方向に前記y は異なることが好ましい〔第3発明〕。また 、前記硬質皮膜を2層以上積層した多層構造 硬質皮膜において、隣接する前記硬質皮膜 前記yが互いに異なることが好ましい〔第4 明〕。

 本発明に係る硬質皮膜被覆材は、基材の 面に第1~4発明のいずれかの硬質皮膜が形成 れていることを特徴とする〔第5発明〕。

 または、本発明に係る硬質皮膜被覆材は 鉄基合金よりなる基材の表面に4a、5a、6a族 元素およびSi、Alのうち1種以上の元素の窒 物よりなる皮膜層が形成され、その上に第1~ 4発明のいずれかの硬質皮膜が形成されてい ことを特徴とする〔第6発明〕。

 本発明に係る冷間塑性加工用金型は、第5 発明または第6発明の硬質皮膜被覆材を用い ことを特徴とする〔第7発明〕。

 本発明に係る硬質皮膜の形成方法は、第1 ~4発明のいずれかの硬質皮膜をカソード放電 アークイオンプレーティング装置を用いて 化水素ガスを含有する雰囲気ガス中にて形 する硬質皮膜の形成方法であって、前記雰 気ガス中の炭化水素ガス分圧を0.8Pa超4Pa以 とすることを特徴とする〔第8発明〕。前記 化水素ガスはメタンガス、アセチレンガス トルエンガスの1種以上であることが好まし い〔第9発明〕。

 本発明に係る硬質皮膜は、従来の表面被 層よりも耐摩耗性に優れると共に、摩擦係 が低く摺動性に優れているため、金型や冶 具等の硬質皮膜として好適に用いることが き、それらの耐久性の向上がはかれる。本 明に係る硬質皮膜被覆材は、耐摩耗性に優 ると共に、摩擦係数が低く摺動性に優れ、 型材や冶工具材として好適に用いることが き、それらの耐久性の向上がはかれる。本 明に係る冷間塑性加工用金型は、耐摩耗性 優れると共に、摩擦係数が低く摺動性に優 ているため、耐久性の向上がはかれる。本 明に係る硬質皮膜の形成方法によれば、本 明に係る硬質皮膜を表面が平滑な状態で形 することができる。

 本発明者らは、前述の目的を達成すべく 鋭意研究を行った。その結果、金属元素と てNbを必須元素とし、非金属元素ではCを必 としたNb炭化物ベースの化合物からなる皮 が、耐摩耗性に優れると共に摩擦係数が低 摺動性に優れ、高面圧下における摺動特性 優れることを見出した。

 ここで、NbCは極めて高硬度であり、耐摩 性を維持するのに必要であることから、金 元素(Nb,M)中におけるNbの割合(原子比x)は0.2 上であることが必要であり、0.5以上である とが好ましく、0.8以上であることが更に好 しい。Nb以外の金属元素(M)については、上記 耐摩耗性を損なわない範囲で、4a、5a、6a族の 元素およびSi、Alのうち、1種以上の元素を添 することができる。Nb(CN)化合物は耐酸化性 高くない(使用上限温度:500℃程度)ことから 高温での耐酸化性を改善するためにTi、Al、 CrあるいはSi等の元素を0.8以下の範囲の割合 添加することができる。また、低温側での 動特性を改善するためには、V等の低融点の 化物を形成する元素の添加が有効である。

 非金属元素(B,C,N)に関しては、上記皮膜を 構成する化合物は基本的に摺動特性に優れる 炭化物をベースとしていることから、非金属 元素(B,C,N)中におけるCの割合(原子比b)は0.5以 である必要があり、0.7以上であると好まし 、0.8以上であると更に好ましい。BおよびN 添加することにより皮膜中に高温での摺動 に優れるBN化合物や金属元素と窒素の化合物 を形成することができるが、過度の添加は皮 膜硬度を低下させることから、Bの割合(原子 a)は0.3以下である必要があり、0.1以下であ と好ましく、Nの割合(原子比:1-a-b)は0.5以下 ある必要があり、0.3以下であると好ましく 0.2以下であると更に好ましい。

 非金属元素(B,C,N)と金属元素〔Nb,M(4a、5a、 6a族の元素およびSi、Alから選択した1種以上 元素)〕の割合は量論組成に近い1:1が基本と るが、炭化物の場合、非金属元素の割合(1-y )が0.4~0.9(即ち、0.4≦1-y≦0.9)の範囲にある場 に優れた摺動特性を示すことが判明した。 た、非金属元素の割合(1-y)が0.5を超える場合 に、摺動時の摩擦係数をより低減させること が可能であることが分かった。詳しいメカニ ズムは必ずしも明らかではないが、非金属元 素の割合が0.5を超える場合、その超えた部分 は金属元素と結合しないCで構成されており このC部分が潤滑性を高めていると推定され 。このように摺動時の摩擦係数をより低減 せるには、非金属元素の割合(1-y)が0.5超で ることが望ましく、さらに0.7以上であるこ が望ましく、0.8以上であることが更に望ま い。ただし、金属と結合しないC成分を有す 被膜は耐熱性が高くないことから、使用温 によってはC成分を調整する必要がある。な お、上記のような非金属元素の割合が0.5を超 える化合物は、炭化水素ガスのイオン化を促 進する成膜方法で形成可能である。このよう な成膜方法は、後述する炭化水素ガスを含有 する雰囲気ガス中でのカソード放電型アーク イオンプレーティング法による硬質皮膜の形 成方法である。

 本発明は、かかる知見に基づき完成された のである。このようにして完成された本発 に係る硬質皮膜は、(Nb x M 1-x ) (B a C b N 1-a-b ) 1-y からなる硬質皮膜であって下記式(1)~(5)を満 すことを特徴とする硬質皮膜である〔第1発 〕。本発明に係る硬質皮膜は、従来の表面 覆層よりも耐摩耗性に優れると共に摩擦係 が低くて摺動性に優れ、従って、金型や冶 具等の硬質皮膜として好適に用いることが き、それらの耐久性の向上がはかれる。ま 、本発明に係る硬質皮膜は、高面圧下にお る摺動特性にも優れているので、冷間塑性 工用金型の硬質皮膜としても好適に用いる とができ、その耐久性の向上がはかれる。

     0.2≦x≦1.0 -------------------式(1)
     0≦a≦0.3 -----------------------式(2)
     0≦1-a-b≦0.5 ---------------式(3)
     0.5≦b≦1 -----------------------式(4)
     0.4≦1-y≦0.9 ---------------式(5)
但し、上記(Nb x M 1-x ) (B C b N 1-a-b ) 1-y において、Mは4a、5a、6a族の元素およびSi、Al うち1種以上の元素である。上記式(1)~(5)に いて、xはNbの原子比、1-xはMの原子比、aはB 原子比、bはCの原子比、1-a-bはNの原子比を示 し、yは(Nb x M 1-x )の比、1-yは(B a C b N 1-a-b )の比を示す。

 なお、1-y(B a C b N 1-a-b の比、即ち、非金属元素の割合)が0.5超の場 、摺動時の摩擦係数が低くなるが、高温で 安定性が低くなる。このため、高温となる 合には、1-yは0.5近傍(0.4~0.5)とするのがよく 比較的低温での使用の場合には、1-yは0.5超 するのがよい。このように用途によって1-y 値を選択するとよい。1-yが0.5超の皮膜は、 えば、下記方法により形成することができ 。即ち、磁場印加機構を備えたアーク蒸発 で、ターゲット表面での磁場強度が100ガウ (Gauss)以上であり、かつ、磁力線の向きがタ ゲット表面にほぼ直行するものを使用して 炭化水素ガス分圧を1.33Pa以上として形成す 。

 本発明に係る硬質皮膜において、xが1の 合、即ち、金属元素がNbのみである場合、低 温(おおむねの目安は使用温度300℃以下)での 動特性に最も優れる皮膜が得られる〔第2発 明〕。

 また、本発明に係る硬質皮膜は、膜厚方 にyが異なる構造とすることができる〔第3 明〕。例えば、基材側から膜表面側に向か てyが小さく(即ち、1-yが大きく)なるような 造とすることができる。この場合、基材側 ら膜表面側に向かって傾斜的に金属成分が 少し、非金属成分(具体的にはC)が増大し、 摩耗性と摺動性の面からみて、より好適な 造が得られる。

 本発明に係る硬質皮膜を2層以上積層して 多層構造とし、隣接する前記硬質皮膜の前記 yが互いに異なる構造とすることができる〔 4発明〕。例えば、基材側ではyが大きい(1-y 小さい)本発明に係る硬質皮膜を形成し、膜 面側ではyが小さい(1-yが大きい)本発明に係 硬質皮膜を形成した構造が可能である。こ 場合、基材側から膜表面側に向かって段階 (階段状)に金属成分が減少し、非金属成分( 体的にはC)が増大し、耐摩耗性と摺動性の からみて、より好適な構造が得られる。

 本発明に係る硬質皮膜被覆材の一つは、 材の表面に本発明に係る硬質皮膜が形成さ ていることを特徴とする硬質皮膜被覆材で る〔第5発明〕。この硬質皮膜被覆材は、耐 摩耗性に優れると共に摩擦係数が低く摺動性 に優れるため、金型材や冶工具材として好適 に用いることができ、それらの耐久性の向上 がはかれる。また、高面圧下における摺動特 性にも優れているので、冷間塑性加工用金型 の硬質皮膜としても好適に用いることができ 、その耐久性の向上がはかれる。

 また、本発明に係る硬質皮膜被覆材の一 は、鉄基合金よりなる基材の表面に4a、5a、 6a族の元素およびSi、Alのうち1種以上の元素 窒化物よりなる皮膜層が形成され、その上 本発明に係る硬質皮膜が形成されているこ を特徴とする硬質皮膜被覆材である〔第6発 〕。この硬質皮膜被覆材は、鉄基合金と硬 皮膜との間に形成された皮膜層(以下、下地 膜ともいう)により、硬質皮膜の密着性が向 し、より密着性に優れて耐久性に優れてい 。この下地膜は硬質皮膜の密着性を向上さ る効果があるが、中でもCrNよりなるものや TiAlNよりなるものが密着性向上の効果が大き いので、これらを用いることが望ましい。下 地膜の厚みは、密着性を向上させるためには 0.1μm以上が必要であり、1μm以上であること 好ましいが、10μmを超えて形成しても密着性 向上の効果が少ないため、10μmを上限とする がよい。

 本発明に係る冷間塑性加工用金型は、本 明に係る硬質皮膜被覆材を用いた冷間塑性 工用金型である〔第7発明〕。本発明に係る 冷間塑性加工用金型は、耐摩耗性に優れると 共に摩擦係数が低く摺動性に優れ、高面圧下 における摺動特性にも優れているので、耐久 性に優れている。

 本発明に係る硬質皮膜の形成方法は、本 明に係る硬質皮膜をカソード放電型アーク オンプレーティング装置を用いて炭化水素 スを含有する雰囲気ガス中にて形成する硬 皮膜の形成方法であって、前記雰囲気ガス の炭化水素ガス分圧を0.8Pa超4Pa以下とする とを特徴とする〔第8発明〕。この方法によ ば、本発明に係る硬質皮膜を、表面が平滑 状態で形成することができる。

 即ち、上記のようにカソード放電型アー イオンプレーティング装置を用いて成膜(即 ち、カソード放電型アークイオンプレーティ ング法により成膜)すると、Nbのような高融点 金属であっても、アーク放電による溶解蒸発 を利用して、高速での成膜が可能である。メ タンガス等の炭化水素ガスを含有する雰囲気 ガス中にて成膜すると、炭化水素ガスがイオ ン化し、炭化物を含有する皮膜を形成するこ とができる。ここで、この雰囲気ガスの調整 (窒素量を少なくするか、または全くなくす) 、蒸発源の調整(蒸発源にBが含有されない うにする)とを行うことによって、本発明に る硬質皮膜を形成することができる。この き、雰囲気ガス中の炭化水素ガス分圧が0.8P a超であると、本発明に係る硬質皮膜を形成 ることができる。雰囲気ガス中の炭化水素 ス分圧が4Pa以下であると、表面が平滑な膜 形成される。従って、本発明に係る硬質皮 の形成方法によれば、本発明に係る硬質皮 を、表面が平滑な状態で、高速で形成する とができる。本発明に係る硬質皮膜の形成 法により形成された硬質皮膜は、本発明に る硬質皮膜の中でも、摩擦係数が低く摺動 に優れている。

 以上のことからわかるように、本発明に る硬質皮膜を形成する際には、カソード放 型アークイオンプレーティング装置を用い 炭化水素ガスを含有する雰囲気ガス(炭化水 素ガス分圧:0.8Pa超4Pa以下)中にて、カソード 電型アークイオンプレーティング法により 成膜するとよい。

 上記のように、雰囲気ガス中の炭化水素 ス分圧が0.8Pa超であると、本発明に係る硬 皮膜を形成することができる。この硬質皮 は、硬度が高くて耐摩耗性に優れると共に 摩擦係数が低く摺動性に優れている。これ 対し、雰囲気ガス中の炭化水素ガス分圧が0. 8Pa以下であると、形成される皮膜中のCの原 比bが低くなり、このため、硬度が低くなっ 耐摩耗性が低下すると共に摩擦係数が高く って摺動性が低下する。雰囲気ガス中の炭 水素ガス分圧が0.8Pa超でないと、硬度が高 耐摩耗性に優れると共に、摩擦係数が低く 動性に優れる硬質皮膜は形成されない。こ 点から、本発明に係る硬質皮膜の形成方法 おいて、雰囲気ガス中の炭化水素ガス分圧 0.8Pa超である。より一層、耐摩耗性に優れる と共に摩擦係数が低く摺動性に優れる硬質皮 膜を形成するという点からは、雰囲気ガス中 の炭化水素ガス分圧は1Pa以上であることが望 ましく、2Pa以上であることがさらに望ましい 。しかし、雰囲気ガス中の炭化水素ガス分圧 を増加させた場合、膜にマクロパーティクル と呼ばれるアークイオンプレーティング特有 の溶融したターゲットからのパーティクルが 多く発生し、表面の平滑性を損なう。炭化水 素ガス分圧が4Paを超えると、その傾向が顕著 になり、ひいては、硬質皮膜の耐摩耗性が低 下すると共に摩擦係数が低下して摺動性が低 下する。この点から、本発明に係る硬質皮膜 の形成方法において、雰囲気ガス中の炭化水 素ガス分圧の上限値は4Paである。この点から は、炭化水素ガス分圧は2Pa以下であることが 望ましい。

 本発明に係る硬質皮膜の形成方法におい 、炭化水素ガスとしてはカソード放電型ア クイオンプレーティング法によりイオン化 るものであればよいので、その種類は特に 限定されず、種々のものを用いることがで る。例えば、メタンガス、アセチレンガス トルエンガスの1種以上を用いることができ る〔第9発明〕。

 炭化水素ガスを含有する雰囲気ガスとし は、炭化水素ガスのみを含有するものと、 化水素ガスとその他のガス(不活性ガス等) の混合状態のものとがある。いずれも、炭 水素ガス分圧が0.8Pa超4Pa以下であれば、用い ることができる。

 本発明に係る硬質皮膜の形成方法におい 、x(Nbの原子比)=1である硬質皮膜、つまり、 Nb炭化物主体の皮膜を形成する際には、ター ット(蒸発源)としてNbを用いればよい。本発 明に係る硬質皮膜の形成方法ではカソード放 電型アークイオンプレーティング装置を用い るので、Nbのような高融点金属であっても、 ーク放電による溶解蒸発を利用して、高速 の成膜が可能である。

 本発明の実施例および比較例を以下説明 る。なお、本発明はこの実施例に限定され ものではなく、本発明の趣旨に適合し得る 囲で適当に変更を加えて実施することも可 であり、それらはいずれも本発明の技術的 囲に含まれる。

〔例1〕
 Nb及び金属元素Mあるいは更にBを含有するア ーク蒸発源を有する成膜装置により、表1に す組成の皮膜を基材上に形成した。ただし 高温下での摺動試験用の皮膜形成の場合に 、密着性を向上させるために基材上にCrNを 3μm形成した後、表1に示す組成の皮膜を形成 した。

 このとき、基材としては、皮膜の組成、硬 の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し 超硬合金基板を用い、高温下での摺動試験 の皮膜形成の場合にはSKD11基板(硬度HRC60)を いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基 を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャ バー内を真空引き(1×10 -3 Pa以下に排気)した後、基材を約400℃まで加熱 し、この後、Arイオンを用いてスパッタクリ ニングを実施した。この後、アーク蒸発源 よる成膜の場合は、φ100mmのターゲットを用 い、アーク電流150Aとし、全圧力1.3Paのメタン ガス雰囲気あるいはメタンガス(分圧1.3Pa)+窒 の混合ガス中にて成膜を実施した。

 このようにして皮膜形成されたものにつ て、皮膜の組成、硬度および表面粗度(Ra)の 調査を行い、更に高温下における摺動試験を 実施し、耐摩耗性ならびに摩擦係数を調査し た。

 このとき、皮膜の組成は、EPMAにより測定 することによって調査した。皮膜の硬度は、 マイクロビッカース硬度計を用いて、測定荷 重0.25N、測定時間15秒の条件で測定すること よって調査した。表面粗度(Ra)は表面粗度計 用いて測定した。高温下における摺動試験 下記高温摺動試験条件で行った。

 〔高温摺動試験条件〕
   ・装置:ベーンオンディスク型摺動試験 置
   ・ベーン:SKD61鋼(HRC50)3.5×5mm,長さ20mm,先端 半径10R
   ・ディスク:SKD11鋼(HRC60)に皮膜形成した の
   ・摺動速度:0.2m/秒
   ・荷重:500N
   ・摺動距離:500m
   ・試験温度:25℃(加熱無し),400℃

 上記試験の結果を表1に示す。なお、表1 おいて、成膜組成の欄の値は原子比である 表1のNo.4~22において、非金属元素の割合(1-y) 、表1に示されていないが、いずれも0.5であ る。表1からわかるように、本発明の要件を たす硬質皮膜、即ち、本発明例(No.4~8,10~17,19~ 21)は、本発明の要件を満たさないもの、即ち 、比較例(No.1~3,9,18,22)に比較し、摩擦係数が さくて摺動性に優れ、且つ、膜摩耗深さが なくて耐摩耗性に優れている。

〔例2〕
 Nb及び金属元素Mあるいは更にBを含有するア ーク蒸発源を有する成膜装置により、表2に す組成の皮膜を基材上に形成した。ただし 摺動試験用の皮膜形成の場合には、密着性 向上させるために基材上にCrNを約3μm形成し 後、表2に示す組成の皮膜を形成した。

 このとき、基材としては、皮膜の組成、硬 の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し 超硬合金基板を用い、高温下での摺動試験 の皮膜形成の場合にはSKD11基板(硬度HRC60)を いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基 を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャ バー内を真空引き(1×10 -3 Pa以下に排気)した後、基材を約400℃まで加熱 し、この後、Arイオンを用いてスパッタクリ ニングを実施した。この後、アーク蒸発源 よる成膜の場合は、φ100mmのターゲットを用 い、アーク電流150Aとし、メタンガスを含有 る雰囲気ガス中にて成膜を実施した。この タンガスの分圧は種々変化させた。

 このようにして皮膜形成されたものにつ て、前記例1の場合と同様の方法により、皮 膜の組成、硬度および表面粗度(Ra)の調査を い、更に高温下における摺動試験を実施し 耐摩耗性ならびに摩擦係数を調査した。

 上記試験の結果を表2に示す。なお、表2 おいて、成膜組成の欄の値は原子比である 1-yは非金属元素の割合(比率)である。表2か わかるように、本発明の要件を満たす硬質 膜、即ち、本発明例(No.6~9,12~16)は、本発明の 要件を満たさないもの、即ち、比較例(No.1~3,4 ~5,10,11)に比較し、摩擦係数が小さくて摺動性 に優れ、且つ、膜摩耗深さが少なくて耐摩耗 性に優れている。

〔例3〕
 Nbを含有するアーク蒸発源を有する成膜装 により、表3に示す多層構造または傾斜構造 皮膜を基材上に形成した。ただし、摺動試 用の皮膜形成の場合には、基材上にCrNを約3 μm形成した後、上記表3に示す皮膜を形成し 。

 このとき、基材としては、皮膜の組成、硬 の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し 超硬合金基板を用い、高温下での摺動試験 の皮膜形成の場合にはSKD11基板(硬度HRC60)を いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基 を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャ バー内を真空引き(1×10 -3 Pa以下に排気)した後、基材を約400℃まで加熱 し、この後、Arイオンを用いてスパッタクリ ニングを実施した。この後、アーク蒸発源 よる成膜の場合は、φ100mmのターゲットを用 い、アーク電流150Aとし、メタンガスを含有 る雰囲気ガス中にて成膜を実施した。この タンガスの分圧は種々変化させた。

 このようにして皮膜形成されたものにつ て、前記例1の場合と同様の方法により、皮 膜の組成、硬度および表面粗度(Ra)の調査を い、更に高温下における摺動試験を実施し 耐摩耗性ならびに摩擦係数を調査した。

 上記試験の結果を表3に示す。なお、表3に いて、膜のタイプの欄における多層膜とは A層とB層とからなる多層構造の膜であり、A を形成し、その上にB層を形成したものであ 。また、傾斜膜とは、傾斜構造の膜であり 膜厚方向に(基材側から膜表面側に向けて)y 連続的に異なるものである。A層、B層での 成の値は原子比である。例えば、Nb0.2C0.8は Nbの原子比(x)が0.2、Cの原子比(b)が0.8である No.2の傾斜膜は、基材に最も近い位置でNb0.5C0 .5の組成、膜の最表面でNb0.2C0.8の組成のもの ある。Nb0.2C0.8は、Nb y C 1-y においてyが0.2、1-yが0.8であるものともいえ 。Nb0.5C0.5は、Nb y C 1-y においてyが0.5、1-yが0.5であるものともいえ 。

 表3からわかるように、第4発明、第3発明 要件を満たす硬質皮膜、即ち、第4発明例(No .3~7)及び第3発明例(No.2)は、前記例1での比較 (表1のNo.1~3)に比較し、摩擦係数が小さくて 動性に優れ、且つ、膜摩耗深さが少なくて 摩耗性に優れている。また、表3のNo.1の単層 膜(NbC)に比較し、摩擦係数が小さくて摺動性 優れ、且つ、膜摩耗深さが少なくて耐摩耗 に優れている。

〔例4〕
 Nbを含有するアーク蒸発源を有する成膜装 により、Nb y C 1-y の組成の皮膜を基材上に形成した。ただし、 摺動試験用の皮膜形成の場合には、密着性を 向上させるために基材上にCrNを約3μm形成し 後、上記組成の皮膜を形成した。

 このとき、基材としては、皮膜の組成、硬 の調査用の皮膜形成の場合には鏡面研磨し 超硬合金基板を用い、高温下での摺動試験 の皮膜形成の場合にはSKD11基板(硬度HRC60)を いた。いずれの皮膜の形成の場合にも、基 を成膜装置のチャンバー内に導入し、チャ バー内を真空引き(1×10 -3 Pa以下に排気)した後、基材を約400℃まで加熱 し、この後、Arイオンを用いてスパッタクリ ニングを実施した。この後、アーク蒸発源 よる成膜の場合は、φ100mmのターゲットを用 い、アーク電流150Aとし、メタンガスを含有 る雰囲気ガス中にて成膜を実施した。この タンガスの分圧は種々変化させ、これによ 、Nb y C 1-y 中のCの比率(1-y)を変化させた。

 このようにして皮膜形成されたものにつ て、前記例1の場合と同様の方法により、皮 膜の組成、硬度および表面粗度(Ra)の調査を い、更に高温下における摺動試験を実施し 耐摩耗性ならびに摩擦係数を調査した。

 上記試験の結果を表4に示す。表4からわ るように、成膜の際の雰囲気ガス中のメタ ガスの分圧が0.8Pa超4Pa以下の場合、即ち、本 発明に係る硬質皮膜の形成方法での要件を満 たす場合(No.4~7)は、メタンガスの分圧が0.8Pa 下の場合や4Pa超の場合(No.1~3,No.8)に比較し、 成された皮膜は摩擦係数が小さくて摺動性 優れ、且つ、膜摩耗深さが少なくて耐摩耗 に優れている。

 本発明に係る硬質皮膜は、従来の表面被 層よりも耐摩耗性に優れると共に摩擦係数 低くて摺動性に優れ、金型や冶工具等の硬 皮膜として好適に用いることができ、それ の耐久性の向上がはかれて有用である。本 明に係る硬質皮膜の形成方法によると、本 明に係る硬質皮膜の中でも、非金属元素(B,C ,N)の割合(1-y)が高く、且つ、非金属元素(B,C,N) のうちCの原子比(b)が高く、より一層、耐摩 性に優れると共に摩擦係数が低くて摺動性 優れる硬質皮膜を、表面が平滑な状態で高 で形成することができて有用である。

 以上のとおり、本発明を詳細に、また特 の実施態様を参照して説明したが、本発明 精神と範囲を逸脱することなく様々な変更 修正を加えることができることは当業者に って明らかである。本出願は2007年8月2日出 の日本特許出願(特願2007-202192)および2008年6 2日出願の日本特許出願(特願2008-144723)に基 くものであり、その内容はここに参照とし 取り込まれる。