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Title:
HEAT TREATING FURNACE
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/028254
Kind Code:
A1
Abstract:
A heat treating furnace in which the atmosphere can be precisely controlled comprises a second heating zone (51C) serving as a reaction chamber having a floor surface belt (53) for holding an article (91) to be treated and an atmosphere taking-in pipe (56) having an opening (56A) in the second heating zone (51C) and taking-in the atmosphere through the opening (56A). The atmosphere taking-in pipe (56) is so installed that the distance between the opening (56A) and the floor surface belt (53) can be changed.

Inventors:
OHKI CHIKARA (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/061230
Publication Date:
March 05, 2009
Filing Date:
June 19, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NTN TOYO BEARING CO LTD (JP)
OHKI CHIKARA (JP)
International Classes:
C23C8/32; C21D1/06; C21D1/74; C21D1/76; C21D9/40; F27B9/04; F27D7/06; F27D21/00
Foreign References:
JP2003302171A2003-10-24
JP2003313637A2003-11-06
Attorney, Agent or Firm:
FUKAMI, Hisao et al. (Nakanoshima Central Tower 22nd Floor,2-7, Nakanoshima 2-chome,Kita-ku, Osaka-shi, Osaka 05, JP)
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Claims:
 鋼の熱処理を実施するための熱処理炉(5)であって、
 被処理物(91)を保持する保持部(53)を有する反応室(51C)と、
 前記反応室(51C)内に開口(56A)を有し、前記開口(56A)から前記反応室(51C)内の雰囲気を採取する雰囲気採取部材(56)とを備え、
 前記雰囲気採取部材(56)は、前記開口(56A)と前記保持部(53)との距離が変更可能に設置されている、熱処理炉(5)。
 前記雰囲気採取部材(56)の外周面を取り囲むシール部材(621,622,623)と、
 前記シール部材(621,622,623)の外周面を取り囲み、前記反応室(51C)の外壁に接続された外方壁部(511)とをさらに備え、
 前記雰囲気採取部材(56)は、前記外方壁部(511)に対して相対的に移動可能に設置されている、請求の範囲第1項に記載の熱処理炉(5)。
 前記雰囲気採取部材(56)は、筒状の形状を有する筒状部(562,563)を含み、
 前記シール部材(621,622,623)は、前記筒状部(562,563)の外周面を取り囲むように配置され、
 前記雰囲気採取部材(56)は、前記筒状部(562,563)の軸方向に、前記外方壁部(511)に対して相対的に移動可能に設置されている、請求の範囲第2項に記載の熱処理炉(5)。
 前記シール部材(621,622,623)を冷却する冷却部(511E)をさらに備えた、請求の範囲第2項に記載の熱処理炉(5)。
 前記熱処理は、浸炭窒化処理であり、
 前記雰囲気採取部材(56)に接続され、前記雰囲気採取部材(56)により採取された前記雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率を算出する雰囲気分析部(57)と、
 前記雰囲気分析部(57)に接続され、算出された前記未分解アンモニアの体積分率に基づいて、前記反応室(51C)内の前記雰囲気を制御する雰囲気制御部(58)とをさらに備えた、請求の範囲第1項に記載の熱処理炉(5)。
Description:
熱処理炉

 本発明は熱処理炉に関し、より特定的に 、鋼からなる被処理物を熱処理するための 処理炉に関するものである。

 一般に、鋼からなる被処理物を制御され 雰囲気中で加熱する熱処理においては、雰 気ガスを熱処理炉内に導入しつつ、熱処理 内の雰囲気を採取して分析し、当該分析結 に基づいて熱処理炉内に導入する雰囲気ガ の流量(単位時間あたりの供給量)を調節す ことにより、熱処理炉内の雰囲気が制御さ る。これにより、被処理物の表面改質や酸 などによる表面劣化の抑制が達成される。

 たとえば、鋼からなる被処理物に対して実 されるガス浸炭窒化処理においては、Rガス およびアンモニア(NH 3 )ガスを一定の流量で熱処理炉内に流入させ とともに、熱処理炉内のカーボンポテンシ ル(C P )値を熱処理炉内の二酸化炭素(CO 2 )の分圧に基づいて制御することにより、当 熱処理炉内の雰囲気が制御されている。こ で、被処理物の表層部に侵入する窒素量は 浸炭窒化処理中に直接測定することは困難 ある。そのため、各熱処理炉に関して、ア モニアガスの流量と被処理物の表層部に侵 する窒素量との関係を過去の生産実績等か 経験的に決定し、浸炭窒化処理中に直接測 することが可能なアンモニアガスの流量を 節することにより被処理物の表層部に侵入 る窒素量が制御される場合が多い。

 そして、このアンモニアガスの流量は、 熱処理炉の過去の生産実績等に基づき、被 理物の量や形状などを考慮して経験的に決 されている。しかし、過去の生産実績が無 ような量や形状の被処理物を浸炭窒化処理 る必要が生じた場合、当該浸炭窒化処理に ける最適なアンモニアガスの流量を決定す ための試行錯誤が必要となる。その結果、 適なアンモニアガスの流量が決定されるま は被処理物の品質を安定させることが困難 なる。また、上記試行錯誤を量産ラインに いて実施する必要があるため、要求品質を たさない被処理物が発生し、生産コスト上 の要因となるおそれもある。

 これに対し、熱処理炉の形状、被処理物 量や形状ごとに変化するアンモニアガスの 量ではなく、熱処理炉内に残留している気 アンモニアの濃度である未分解アンモニア 度(アンモニアの残留ガス濃度)を調節する とにより、被処理物に侵入する窒素量を制 する方法が提案されている(たとえば、恒川 樹、外2名、「ガス浸炭窒化処理におけるボ イドの発生と窒素の拡散挙動」、熱処理、198 5年、25巻、5号、p.242-247(非特許文献1)および 開平8-13125号公報(特許文献1)参照)。すなわち 、浸炭窒化処理中に測定が可能な未分解アン モニア濃度を測定し、熱処理炉の形状や被処 理物の量および形状等に関係なく決定可能な 未分解アンモニア濃度と被処理物に侵入する 窒素量との関係に基づき、アンモニアガスの 流量を調節する。これにより、最適なアンモ ニアガスの流量を試行錯誤により決定するこ となく、被処理物に侵入する窒素量を制御す ることが可能となり、被処理物の品質を安定 させることができる。

 さらに、炭素の活量を未分解アンモニアの 積分率で除した値であるγ値をパラメータ して採用して炉内の雰囲気を制御すること より、被処理物への窒素の侵入速度を調整 能とする浸炭窒化方法が提案されている(た えば、特開2007-154293号公報(特許文献2)参照) これにより、被処理物の品質をさらに安定 せるとともに、効率的な浸炭窒化処理を実 することができる。
恒川好樹、外2名、「ガス浸炭窒化処理 おけるボイドの発生と窒素の拡散挙動」、 処理、1985年、25巻、5号、p.242-247

特開平8-13125号公報

特開2007-154293号公報

 しかしながら、上記文献に開示された浸 窒化方法を採用した場合でも、被処理物の 部における窒素の濃度が十分に制御されな 場合がある。より具体的には、上記文献に 示された浸炭窒化方法を実施した場合でも 被処理物の内部に侵入した窒素の量が予測 れる量よりも少なくなり、所望の窒素濃度 分布が得られない場合がある。これは、従 の熱処理炉では、熱処理炉内の雰囲気の制 が必ずしも十分な精度で行なわれていない めであると考えられる。

 そこで、本発明の目的は、熱処理炉内の 囲気を精度よく制御することが可能な熱処 炉を提供することである。

 本発明に従った熱処理炉は、鋼の熱処理 実施するための熱処理炉である。この熱処 炉は、被処理物を保持する保持部を有する 応室と、反応室内に開口を有し、当該開口 ら反応室内の雰囲気を採取する雰囲気採取 材とを備えている。そして、雰囲気採取部 は、上記開口と保持部との距離が変更可能 設置されている。

 一般に、被処理物が制御された雰囲気中 加熱される熱処理においては、所定温度に 熱された熱処理炉内に雰囲気ガスが導入さ 、熱処理炉内の雰囲気が定常状態となった とを確認した上で、熱処理炉内に被処理物 投入される。そして、熱処理炉内の雰囲気 定常状態となっている場合、熱処理炉内の 囲気が均一であることを前提として、熱処 炉内の雰囲気が分析され、これに基づいて 処理炉内の雰囲気が制御される。しかし、 発明者による詳細な検討の結果、熱処理炉 の雰囲気が定常状態であっても、当該雰囲 は必ずしも平衡状態には到達しておらず、 処理炉内の雰囲気は不均一となっている場 があることが明らかとなった。したがって 熱処理炉内の雰囲気が不均一な状態で熱処 が実施される場合、被処理物に接触する雰 気と同等の成分を有する領域、すなわち被 理物の近傍の雰囲気が採取され、当該雰囲 の成分組成が分析された上で、当該分析結 に基づいて、熱処理炉内の雰囲気が調整さ ることが望ましい。つまり、熱処理炉にお ては、雰囲気を採取するための開口が被処 物の近傍に位置するように雰囲気採取部材 設置されることにより、熱処理炉内の雰囲 を精度よく制御することが可能となる。

 しかし、熱処理炉においては、種々の形 および量の被処理物が熱処理される。熱処 炉内において被処理物が保持される保持部 近傍に上記開口が位置するように雰囲気採 部材を設置する対策を単に採用した場合、 処理物の形状や量が変更されると、被処理 と雰囲気採取部材とが干渉するおそれがあ 。

 これに対し、本発明の熱処理炉において 、上記開口と保持部との距離が変更可能な うに、雰囲気採取部材が設置されている。 のため、被処理物の形状や量が変更された 合でも、これに合わせて上記開口と保持部 の距離を変更し、被処理物の近傍における 囲気を採取することができる。そして、被 理物の近傍から採取された雰囲気の成分組 が分析された上で、当該分析結果に基づい 、熱処理炉内の雰囲気を調整することがで る。したがって、本発明の熱処理炉によれ 、熱処理炉内の雰囲気を精度よく制御する とが可能な熱処理炉を提供することができ 。

 上記熱処理炉において好ましくは、雰囲 採取部材の外周面を取り囲むシール部材と シール部材の外周面を取り囲み、反応室の 壁に接続された外方壁部とをさらに備えて る。そして、雰囲気採取部材は、外方壁部 対して相対的に移動可能に設置されている

 上記構成によれば、雰囲気採取部材と外 壁部との間をシールして熱処理炉内の雰囲 が外部に漏出することを抑制しつつ、雰囲 採取部材を外方壁部に対して移動させるこ により、上記開口と保持部との距離を変更 ることができる。

 上記熱処理炉において好ましくは、雰囲 採取部材は、筒状の形状を有する筒状部を んでいる。さらに、シール部材は、当該筒 部の外周面を取り囲むように配置されてい 。そして、雰囲気採取部材は、当該筒状部 軸方向に、外方壁部に対して相対的に移動 能に設置されている。

 上記構成により、雰囲気採取部材は筒状 においてシール部材によりシールされつつ 外方壁部に対して移動することができる。 の結果、上記開口と保持部との距離をスム ズに変更することができる。なお、上記筒 部の軸方向に垂直な断面における断面形状 、多角形形状であってもよいが、円形とす ことにより、上記開口と保持部との距離を 層スムーズに変更することが可能となる。

 また、上記シール部材は、雰囲気採取部 が外方壁部に対して移動可能の方向に間隔 置いて複数個配置されていてもよい。これ より、雰囲気採取部材が外方壁部に対して 動する際に、雰囲気採取部材と外方壁部と 間が安定してシールされる。

 上記熱処理炉において好ましくは、シー 部材を冷却する冷却部をさらに備えている 鋼の熱処理においては、鋼は高温、たとえ 700℃以上の温度に加熱され、熱処理炉内の 囲気も高温となっている。そのため、上記 ール部材は高温に加熱される場合がある。 の場合、シール部材が熱により劣化あるい 損傷し、雰囲気採取部材と外方壁部との間 シールが不十分となるおそれがある。これ 対し、シール部材を冷却する冷却部を備え ことにより、シール部材の温度上昇を抑え シール部材の劣化や損傷を抑制することが きる。

 上記熱処理炉においては、上記熱処理は 浸炭窒化処理であってもよい。この場合、 記熱処理炉は、雰囲気採取部材に接続され 雰囲気採取部材により採取された雰囲気中 未分解アンモニアの体積分率を算出する雰 気分析部と、雰囲気分析部に接続され、算 された未分解アンモニアの体積分率に基づ て、反応室内の雰囲気を制御する雰囲気制 部とをさらに備えることができる。

 一般に、浸炭窒化処理は、Rガス、エンリッ チガスおよびアンモニアガスなどのガスが導 入された熱処理炉内において、鋼からなる被 処理物を所定の温度に加熱することにより行 なわれる。また、熱処理炉内に導入される上 記ガスの量は、熱処理炉内のC P 値や未分解アンモニアの体積分率などが測定 され、これに基づいて調整される。そして、 被処理物は、熱処理炉内に上記ガスが導入さ れた後十分に時間が経過し、熱処理炉内の雰 囲気が定常状態となった後、熱処理炉内に搬 入される。そのため、熱処理炉内の雰囲気は 均一であることを前提として、C P 値や未分解アンモニアの体積分率などが測定 され、これに基づいて熱処理炉内の雰囲気が 制御される。しかし、熱処理炉内の雰囲気が 定常状態となった後、被処理物が熱処理炉内 に投入された場合でも、被処理物の内部にお ける窒素の濃度が十分に制御されないという 問題が発生する場合がある。

 これに対し、本発明者は、熱処理炉内に ける未分解アンモニアの体積分率の均一性 ついて詳細に検討を行ない、上記問題の原 に関して、以下の知見を得た。

 すなわち、熱処理炉内に導入されたアン ニアは、窒素と水素とに分解する。そして 当該窒素が被処理物に侵入する。ここで、 処理炉内にRガス、エンリッチガスおよびア ンモニアガスなどのガスが導入された後、定 常状態となった場合でも、熱処理炉内の未分 解アンモニアの体積分率は、たとえば2000ppm 度となっている。一方、通常浸炭窒化処理 行なわれる温度である850℃付近における未 解アンモニアの体積分率の平衡値は100ppm程 である。そして、熱処理炉内における未分 アンモニアの体積分率の分布を調査したと ろ、熱処理炉内の雰囲気が定常状態となっ いる場合でも、未分解アンモニアの体積分 は不均一な状態となっており、これが上記 題の原因となっていることが分かった。

 つまり、熱処理炉内の雰囲気が定常状態 なっている場合でも、熱処理炉内に導入さ たアンモニアの分解反応は非平衡状態にあ 、熱処理炉内の同一地点における未分解ア モニアの体積分率はほぼ一定となっている のの、導入されたアンモニアが到達するま の時間が異なる2つの地点においては、その 未分解アンモニアの体積分率は異なっている 。したがって、熱処理炉内の未分解アンモニ アの体積分率に基づいて雰囲気を調整し、被 処理物の内部における窒素濃度の制御を精度 よく行なうためには、被処理物に接触する雰 囲気の未分解アンモニアの体積分率と同等の 未分解アンモニアの体積分率を有する領域の 未分解アンモニアの体積分率に基づいて雰囲 気を調整することが必要である。

 これに対し、上記構成においては、雰囲 採取部材の開口と被処理物を保持する保持 との距離が変更可能であるため、熱処理炉 において被処理物が占める領域の近傍の雰 気を雰囲気採取部材により採取し、当該雰 気中の未分解アンモニアの体積分率を雰囲 分析部において算出し、当該体積分率に基 いて熱処理炉の反応室内の雰囲気を制御す ことができる。その結果、上記構成によれ 、熱処理炉内の雰囲気を精度よく制御する とにより、被処理物の内部における窒素濃 を精度よく制御可能な熱処理炉を提供する とができる。

 ここで、熱処理炉内において被処理物が める領域とは、バッチ式の熱処理炉のよう 熱処理炉内における被処理物の位置が変化 ることなく熱処理が実施される場合、被処 物が配置される領域、特に当該領域の表面 あり、連続炉タイプの熱処理炉のように熱 理炉内における被処理物の位置が変化しつ 熱処理が実施される場合、被処理物が移動 る軌跡に該当する領域である。また、算出 れるべき上記未分解アンモニアの体積分率 、雰囲気中の未分解アンモニアの体積分率 一対一の対応関係を有する数値であればよ 。さらに、未分解アンモニアの体積分率と 、熱処理炉内に供給されたアンモニアのう 、分解されることなく気体アンモニアの状 で残存しているアンモニアの熱処理炉内の 囲気における体積分率をいう。

 以上の説明から明らかなように、本発明 熱処理炉によれば、熱処理炉内の雰囲気を 度よく制御することが可能な熱処理炉を提 することができる。

実施の形態1における熱処理炉において 浸炭窒化処理された機械部品を備えた深溝玉 軸受の構成を示す概略断面図である。 実施の形態1の熱処理炉において浸炭窒 化処理された機械部品を備えたスラストニー ドルころ軸受の構成を示す概略断面図である 。 実施の形態1の熱処理炉において浸炭窒 化処理された機械部品を備えた等速ジョイン トの構成を示す概略部分断面図である。 図3の線分IV-IVに沿う概略断面図である 図3の等速ジョイントが角度をなした状 態を示す概略部分断面図である。 実施の形態1における機械部品および当 該機械部品を備えた機械要素の製造方法の概 略を示す図である。 実施の形態1における熱処理炉の構成を 示す概略図である。 図7の線分VIII-VIIIに沿う概略部分断面図 である。 図7および図8における雰囲気採取パイ の周辺を拡大して示す概略部分断面図であ 。 雰囲気採取パイプの開口の位置を調整 するための具体的手順を説明するためのフロ ーチャートである。 実施の形態1における機械部品の製造 法に含まれる焼入硬化工程を説明するため 図である。 図11の雰囲気制御工程の詳細を説明す ための図である。 図11の加熱パターン制御工程における 熱パターン(被処理物に与えられる温度履歴 )の一例を示す図である。 図7および図8における雰囲気採取パイ の周辺を拡大して示す概略部分断面図であ 。 図7および図8における雰囲気採取パイ の周辺を拡大して示す概略部分断面図であ 。 実施例Aのサンプルにおける内部(表層 近)の窒素濃度の分布を示す図である。 参考例Eのサンプルにおける内部(表層 近)の窒素濃度の分布を示す図である。 雰囲気採取パイプの開口と被処理物通 過領域との距離dと窒素侵入量との関係を示 図である。 測定された未分解アンモニアの体積分 率の逆数と経過時間との関係を示す図である 。 図7の線分XX-XXに沿う断面におけるCFD解 析の結果を示す図である。 図7の線分XXI-XXIに沿う断面におけるCFD 析の結果を示す図である。 図7の線分XXII-XXIIに沿う断面におけるCF D解析の結果を示す図である。 実施例2のCFD解析により得られた上記 施例1および2における熱処理炉内の雰囲気の 流速分布を示す図である。

符号の説明

 1 深溝玉軸受、2 スラストニードルころ 受、3 等速ジョイント、5 熱処理炉、11 外 輪、11A 外輪転走面、12 内輪、12A 内輪転走 、13 玉、13A 玉転走面、14,24 保持器、21  道輪、21A 軌道輪転走面、23 ニードルころ 23A ころ転走面、31 インナーレース、31A イ ンナーレースボール溝、32 アウターレース 32A アウターレースボール溝、33 ボール、34  ケージ、35,36 軸、51 本体部、51A 予熱ゾー ン、51B 第1加熱ゾーン、51C 第2加熱ゾーン、 51C1 上壁、51C2 底壁、51D 第3加熱ゾーン、52 隔壁、53 床面ベルト、54 投入口、55 排出 、56 雰囲気採取パイプ、56A 開口、57 雰囲 分析部、58 雰囲気制御部、59 ファン、61  囲気ガス供給部、91 被処理物、92 被処理 通過領域、93 被処理物近傍領域、511 保護 、511A 内壁、511B 外壁、511C 流入口、511D  出口、511E 冷却媒体流路、511F 内径拡大部 519 シール保持部材、561 パイプ部、561A 大 部、562 円筒部材、563 リング部材、563A 溝 部、621 円筒シール、622 円盤シール、623 U ッキン、623A 支持リング、623C 溝部、624 円 環シール、631 支持部材、632 ナット。

 以下、図面に基づいて本発明の実施の形 を説明する。なお、以下の図面において同 または相当する部分には同一の参照番号を しその説明は繰り返さない。

 (実施の形態1)
 まず、図1を参照して、本発明の実施の形態 1における転がり軸受としての深溝玉軸受に いて説明する。

 図1を参照して、深溝玉軸受1は、環状の 輪11と、外輪11の内側に配置された環状の内 12と、外輪11と内輪12との間に配置され、円 状の保持器14に保持された転動体としての 数の玉13とを備えている。外輪11の内周面に 外輪転走面11Aが形成されており、内輪12の 周面には内輪転走面12Aが形成されている。 して、内輪転走面12Aと外輪転走面11Aとが互 に対向するように、外輪11と内輪12とは配置 れている。さらに、複数の玉13は、玉転走 (表面)13Aにおいて内輪転走面12Aおよび外輪転 走面11Aに接触し、かつ保持器14により周方向 所定のピッチで配置されることにより円環 の軌道上に転動自在に保持されている。以 の構成により、深溝玉軸受1の外輪11および 輪12は、互いに相対的に回転可能となって る。

 ここで、機械部品である外輪11、内輪12、 玉13および保持器14のうち、特に、外輪11、内 輪12および玉13には転動疲労強度や耐摩耗性 要求される。そのため、これらのうち少な とも1つが本発明の熱処理炉において浸炭窒 処理された機械部品であることにより、当 部品の内部における窒素濃度が精度よく制 されて表面層が強化され、深溝玉軸受1を長 寿命化することができる。

 次に、図2を参照して、実施の形態1の変 例における転がり軸受としてのスラストニ ドルころ軸受について説明する。

 図2を参照して、スラストニードルころ軸 受2は、円盤状の形状を有し、互いに一方の 面が対向するように配置された転動部材と ての一対の軌道輪21と、転動部材としての複 数のニードルころ23と、円環状の保持器24と 備えている。複数のニードルころ23は、ころ 転走面(外周面)23Aにおいて、一対の軌道輪21 互いに対向する主面に形成された軌道輪転 面21Aに接触し、かつ保持器24により周方向に 所定のピッチで配置されることにより円環状 の軌道上に転動自在に保持されている。以上 の構成により、スラストニードルころ軸受2 一対の軌道輪21は、互いに相対的に回転可能 となっている。

 ここで、機械部品である軌道輪21、ニー ルころ23および保持器24のうち、特に、軌道 21、ニードルころ23には転動疲労強度や耐摩 耗性が要求される。そのため、これらのうち 少なくとも1つが本発明の熱処理炉において 炭窒化処理された機械部品であることによ 、当該部品の内部における窒素濃度が精度 く制御されて表面層が強化され、スラスト ードルころ軸受2を長寿命化することができ 。

 次に、図3~図5を参照して、実施の形態1の 他の変形例における等速ジョイントについて 説明する。なお、図3は、図4の線分III-IIIに沿 う概略断面図に対応する。

 図3~図5を参照して、等速ジョイント3は、 軸35に連結されたインナーレース31と、イン ーレース31の外周側を囲むように配置され、 軸36に連結されたアウターレース32と、イン ーレース31とアウターレース32との間に配置 れたトルク伝達用のボール33と、ボール33を 保持するケージ34とを備えている。ボール33 、インナーレース31の外周面に形成されたイ ンナーレースボール溝31Aと、アウターレース 32の内周面に形成されたアウターレースボー 溝32Aとに接触して配置され、脱落しないよ にケージ34によって保持されている。

 インナーレース31の外周面およびアウタ レース32の内周面のそれぞれに形成されたイ ンナーレースボール溝31Aとアウターレースボ ール溝32Aとは、図3に示すように、軸35および 軸36の中央を通る軸が一直線上にある状態に いて、それぞれ当該軸上のジョイント中心O から当該軸上の左右に等距離離れた点Aおよ 点Bを曲率中心とする曲線(円弧)状に形成さ ている。すなわち、インナーレースボール 31Aおよびアウターレースボール溝32Aに接触 て転動するボール33の中心Pの軌跡が、点A(イ ンナーレース中心A)および点B(アウターレー 中心B)に曲率中心を有する曲線(円弧)となる うに、インナーレースボール溝31Aおよびア ターレースボール溝32Aのそれぞれは形成さ ている。これにより、等速ジョイントが角 をなした場合(軸35および軸36の中央を通る が交差するように等速ジョイントが動作し 場合)においても、ボール33は、常に軸35およ び軸36の中央を通る軸のなす角(∠AOB)の2等分 上に位置する。

 次に、等速ジョイント3の動作について説 明する。図3および図4を参照して、等速ジョ ント3においては、軸35、36の一方に軸まわ の回転が伝達されると、インナーレースボ ル溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aに め込まれたボール33を介して、軸35、36の他 の軸に当該回転が伝達される。ここで、図5 示すように軸35、36が角度θをなした場合、 ール33は、前述のインナーレース中心Aおよ アウターレース中心Bに曲率中心を有するイ ンナーレースボール溝31Aおよびアウターレー スボール溝32Aに案内されて、中心Pが∠AOBの 等分線上となる位置に保持される。ここで ジョイント中心Oからインナーレース中心Aま での距離と、アウターレース中心Bまでの距 とが等しくなるように、インナーレースボ ル溝31Aおよびアウターレースボール溝32Aが 成されているため、ボール33の中心Pからイ ナーレース中心Aおよびアウターレース中心B までの距離はそれぞれ等しく、三角形OAPと三 角形OBPとは合同である。その結果、ボール33 中心Pから軸35、36までの距離Lは互いに等し なり、軸35、36の一方が軸まわりに回転した 場合、他方も等速で回転する。このように、 等速ジョイント3は、軸35、36が角度をなした 合でも、等速性を確保することができる。 お、ケージ34は、軸35、36が回転した場合に インナーレースボール溝31Aおよびアウター ースボール溝32Aからボール33が飛び出すこ をインナーレースボール溝31Aおよびアウタ レースボール溝32Aとともに防止すると同時 、等速ジョイント3のジョイント中心Oを決定 する機能を果たしている。

 ここで、機械部品であるインナーレース3 1、アウターレース32、ボール33およびケージ3 4のうち、特に、インナーレース31、アウター レース32およびボール33には疲労強度や耐摩 性が要求される。そのため、これらのうち なくとも1つが本発明の熱処理炉において浸 窒化処理された機械部品であることにより 当該部品の内部における窒素濃度が精度よ 制御されて表面層が強化され、等速ジョイ ト3を長寿命化することができる。

 次に、本実施の形態における上記機械部 、および上記機械部品を備えた転がり軸受 等速ジョイントなどの機械要素の製造方法 ついて説明する。図6を参照して、まず、鋼 からなり、機械部品の概略形状に成形された 鋼部材を準備する鋼部材準備工程が実施され る。具体的には、たとえば、棒鋼を素材とし 、当該棒鋼に対して切断、鍛造、旋削などの 加工が実施されることにより、機械部品とし ての外輪11、軌道輪21、インナーレース31など の機械部品の概略形状に成形された鋼部材が 準備される。

 次に、鋼部材準備工程において準備された 述の鋼部材に対して、浸炭窒化処理を実施 た後、A 1 点以上の温度からM S 点以下の温度へ冷却することにより、鋼部材 を焼入硬化する焼入硬化工程が実施される。 この焼入硬化工程の詳細については後述する 。

 ここで、A 1 点とは鋼を加熱した場合に、鋼の組織がフェ ライトからオーステナイトに変態を開始する 温度に相当する点をいう。また、M S 点とはオーステナイト化した鋼が冷却される 際に、マルテンサイト化を開始する温度に相 当する点をいう。

 次に、焼入硬化工程が実施された鋼部材に して、A 1 点以下の温度に加熱することにより焼入硬化 された鋼部材の靭性等を向上させる焼戻工程 が実施される。具体的には、焼入硬化された 鋼部材がA 1 点以下の温度である150℃以上350℃以下の温度 、たとえば180℃に加熱され、30分間以上240分 以下の時間、たとえば120分間保持されて、 の後室温の空気中で冷却される(空冷)。

 さらに、焼戻工程が実施された鋼部材に して、仕上げ加工などが施される仕上げ工 が実施される。具体的には、たとえば、焼 工程が実施された鋼部材の内輪転走面12A、 道輪転走面21A、アウターレースボール溝32A どに対する研削加工が実施される。これに り、実施の形態1における機械部品は完成し 、実施の形態1における機械部品の製造方法 完了する。さらに、完成した機械部品が組 合わされて機械要素が組み立てられる組立 工程が実施される。具体的には、上述の工 により製造された本発明の機械部品である たとえば外輪11、内輪12、玉13と保持器14とが 組み合わされて、深溝玉軸受1が組み立てら る。これにより、実施の形態1における機械 品を備えた機械要素が製造される。

 次に、図7~図13を参照して、本実施の形態 における熱処理炉および当該熱処理炉を用い て実施される機械部品の製造方法に含まれる 焼入硬化工程の詳細について説明する。図13 おいて、横方向は時間を示しており右に行 ほど時間が経過していることを示している また、図13において、縦方向は温度を示し おり上に行くほど温度が高いことを示して る。

 まず、本実施の形態の熱処理炉について 明する。図7を参照して、本実施の形態にお ける熱処理炉5は、鋼の浸炭窒化処理を実施 るための連続炉タイプの熱処理炉である。 処理炉5は、壁面により取り囲まれた本体部5 1と、雰囲気採取パイプ56と、雰囲気分析部57 、雰囲気制御部58とを備えている。

 本体部51の長手方向(X軸方向)の一端には 被処理物91を投入するための開口である投入 口54が形成されており、本体部51の長手方向 他端には被処理物91を排出するための開口で ある排出口55が形成されている。また、本体 51の底壁に沿って、投入口54から投入された 被処理物91を保持するとともに、被処理物91 投入口54から排出口55まで搬送する保持部と ての床面ベルト53が配置されている。さら 、本体部51には、本体部の幅方向(Z軸方向)の 一端から他端にまで延在するとともに、本体 部51の上壁から床面ベルト53に向けて突出し 床面ベルト53との間に間隔を有する3つの隔 52、52、52が配置されている。3つの隔壁52、52 、52は、本体部51の長手方向に並べて配置さ ている。これにより、本体部51は、長手方向 に、投入口54側から順に予熱ゾーン51A、第1加 熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cおよび第3加熱 ーン51Dの4つのゾーンに分割されている。

 さらに、図7および図8を参照して、反応 としての第2加熱ゾーン51Cには、第2加熱ゾー ン51C内に開口56Aを有し、第2加熱ゾーン51Cの 部の雰囲気を採取する雰囲気採取部材とし の雰囲気採取パイプ56と、雰囲気採取パイプ 56に接続され、雰囲気中の未分解アンモニア 体積分率を算出する雰囲気分析部57と、雰 気分析部57に接続され、算出された未分解ア ンモニアの体積分率に基づき、第2加熱ゾー 51Cの内部の雰囲気を制御する雰囲気制御部58 とが設置されている。また、第2加熱ゾーン51 Cの内部の上壁51C1には、Rガス、エンリッチガ ス、アンモニアガスなどの雰囲気ガスを第2 熱ゾーン51Cの内部に供給する雰囲気ガス供 部61と、第2加熱ゾーン51Cの内部の雰囲気ガ を攪拌する攪拌装置としてのファン59が設置 されている。

 そして、図8を参照して、床面ベルト53に 持される被処理物91が占める領域、すなわ 被処理物91が床面ベルト53により搬送されて 動する軌跡に該当する領域(被処理物91が移 することにより占める領域全体)である被処 理物通過領域92と同等の未分解アンモニアの 積分率、たとえば被処理物通過領域92との 分解アンモニアの体積分率の差が25%以内と る領域である被処理物近傍領域93に位置する ように、雰囲気採取パイプ56の開口56Aの位置 調整されている。ここで、たとえば炭素の 量が0.95である場合、被処理物への窒素侵入 速度を最大にするためには、未分解アンモニ アの体積分率は0.2%程度以上必要であるが、0. 15%であれば当該窒素侵入速度は最大値の90%以 上を確保することができる。つまり、熱処理 炉内において被処理物が占める領域との未分 解アンモニアの体積分率の差が25%以下である 領域における未分解アンモニアの体積分率に 基づいて雰囲気を調整すれば、被処理物の内 部における窒素濃度を高い精度で制御するこ とができる。

 次に、本実施の形態における雰囲気採取 材としての雰囲気採取パイプについて説明 る。図8および図9を参照して、雰囲気採取 イプ56は、第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1を貫通 るように配置されている。この雰囲気採取 イプ56は、中空円筒状の形状を有し、第2加 ゾーン51C内に開口56Aを有するとともに、内 を第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が通過可能な パイプ部561と、パイプ部561の外周面を取り囲 むように配置された筒状部としての円筒部材 562と、円筒部材562の外周面を取り囲むように 配置された筒状部としてのリング部材563とを 備えている。リング部材563の外周面の中央部 には、外周面の端部よりも外径の小さい溝部 563Aが形成されている。

 そして、溝部563Aには、円筒管状の形状を 有するシール部材としての円筒シール621が嵌 め込まれている。また、リング部材563から見 て開口56Aとは反対側のリング部材563の端面に 接触するように、円環状の形状を有するシー ル部材としての円盤シール622が配置されてい る。さらに、リング部材563の円盤シール622が 配置される側とは反対側の端面、および円盤 シール622のリング部材563の側とは反対側の端 面のそれぞれに接触するように、円環状の形 状を有するとともに、一方の端面が二股に分 離したUパッキン623、623が配置されている。U ッキン623、623のそれぞれは、二股に分離し 側がリング部材563とは反対側に向くように 置されている。

 さらに、円筒部材562の両側の端面のそれ れに接触するように、円盤状の支持部材631 631が配置されている。また、パイプ部561に 、隣接する領域よりも直径の大きい大径部5 61Aが形成されている。そして、一方の支持部 材631は、当該大径部561Aと円筒部材562とに挟 れ、かつ他方の支持部材631は、円筒部材562 パイプ部561に嵌め込まれたナット632とに挟 れており、ナット632が締め付けられること よって、支持部材631、631により、円筒部材56 2が支持されている。

 また、シール部材としての円筒シール621 円盤シール622およびUパッキン623の外周面を 取り囲むように、第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1 ら外側に突出する円筒中空状の外方壁部と ての保護管511が形成されている。シール部 としての円筒シール621、円盤シール622およ Uパッキン623のそれぞれと保護管511とは、少 なくともその一部において密着している。ま た、シール部材としての円筒シール621、円盤 シール622およびUパッキン623のそれぞれは、 護管511に対してパイプ部561の軸方向に摺動 能である。その結果、雰囲気採取パイプ56と 保護管511との間がシールされつつ、雰囲気採 取パイプ56は保護管511に対して相対的に移動 能となっており、開口56Aと床面ベルト53(図8 参照)との距離が変更可能となっている。す わち、雰囲気採取パイプ56は、シール部材と しての円筒シール621、円盤シール622およびU ッキン623と一体に、保護管511に対して移動 能となっている。また、複数のシール部材 しての円筒シール621、円盤シール622およびU ッキン623が雰囲気採取パイプ56の軸方向に べて配置されることにより、雰囲気採取パ プ56と保護管511との間が十分にシールされて いる。

 ここで、保護管511およびパイプ部561は、 温の浸炭窒化雰囲気に曝されるため、高い 熱性等が必要である。そのため、保護管511 素材としては、ステンレス鋼、ステンレス 金、インコネル、炭素鋼など、パイプ部561 素材としては、ステンレス鋼、ステンレス 金、インコネルなどを採用することができ 。また、シール部材としての円筒シール621 円盤シール622およびUパッキン623は、保護管 511に接触することにより高温に加熱されるお それがある。さらに、これらは、雰囲気採取 パイプ56および保護管511に接触しつつ、保護 511に対して摺動可能である必要がある。そ ため、円筒シール621の素材としては、エチ ン樹脂、フェノール樹脂など、円盤シール6 22の素材としては、エチレン樹脂、ポリアミ 樹脂など、Uパッキン623の素材としては、ニ トリルゴム、フッ素ゴムなどを採用すること ができる。

 次に、雰囲気採取パイプ56の開口56Aの第2 熱ゾーン51C内における位置を調整するため 具体的手順の一例を説明する。

 図7、図8および図10を参照して、まず、工 程(S100)において、CFD(Computational Fluid Dynamics; 値流体力学)解析により、熱処理炉5の本体 51の内部、特に第2加熱ゾーン51C内における 分解アンモニアの体積分率を解析する。次 、工程(S200)において、工程(S100)の解析結果 基づき、被処理物91が占める領域、たとえば 被処理物通過領域92における未分解アンモニ の体積分率を算出する。さらに、工程(S300) おいて、工程(S200)で算出された未分解アン ニアの体積分率との差が25%以内である被処 物近傍領域93を確定する。そして、工程(S400 )において、工程(S300)で確定した被処理物近 領域93内に位置するように、開口56Aの位置を 決定する。そして、図9を参照して、雰囲気 取パイプ56をパイプ部561の軸方向に、保護管 511に対して移動させることにより、開口56Aの 位置が被処理物近傍領域93内に位置するよう 、開口56Aの位置を調整する。

 次に、熱処理炉5を用いた焼入硬化処理の 具体的手順を説明する。図7を参照して、焼 硬化工程においては、まず、被処理物91とし ての鋼部材が投入口54から投入され、床面ベ ト53上に載置される。投入された被処理物91 は、床面ベルト53により搬送されて予熱ゾー 51A、第1加熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cお び第3加熱ゾーン51Dを順次通過しつつ浸炭窒 処理される。予熱ゾーン51Aでは、被処理物9 1が加熱されて昇温される。第1加熱ゾーン51B は、被処理物91はさらに加熱されつつ被処 物における温度のばらつきが小さくなるよ に温度が均一化される。第2加熱ゾーン51Cで 、被処理物91が浸炭窒化される。そして、 3加熱ゾーン51Dにおいて被処理物91の温度調 等が行なわれた後、被処理物91は排出口55か 外部に排出され、冷却油などの冷却剤中に 入されることにより冷却されて、焼入硬化 れる。

 次に、上記熱処理炉を用いた実施の形態1に おける機械部品の製造方法に含まれる焼入硬 化工程について説明する。図11を参照して、 入硬化工程においては、まず浸炭窒化工程 実施されて被処理物である鋼部材の表層部 浸炭窒化された後、冷却工程において、当 鋼部材がA 1 点以上の温度からM S 点以下の温度に冷却されることにより、焼入 硬化される。浸炭窒化工程は、本発明の一実 施の形態である実施の形態1における浸炭窒 方法により実施される。すなわち、浸炭窒 工程は、熱処理炉内の雰囲気が制御される 囲気制御工程と、熱処理炉内において鋼部 に付与される加熱履歴が制御される加熱パ ーン制御工程とを含んでいる。この雰囲気 御工程と加熱パターン制御工程とは、独立 、かつ並行して実施することができる。

 雰囲気制御工程においては、図12を参照 て、まず、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51C内の 雰囲気が採取される雰囲気採取工程が実施さ れる。具体的には、図8を参照して、第2加熱 ーン51C内に位置する開口56Aを有する雰囲気 取パイプ56により、第2加熱ゾーン51C内の雰 気が採取される。次に、図12を参照して、 取された雰囲気における未分解アンモニア 体積分率が算出される未分解アンモニア体 分率算出工程が実施される。具体的には、 7および図8を参照して、採取された雰囲気が 、たとえば雰囲気分析部57に含まれるガスク マトグラフにより分析されて、雰囲気中の 分解アンモニアの体積分率が算出される。 して、図7、図8および図12を参照して、算出 された未分解アンモニアの体積分率に基づい て、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気が雰囲気制 部58により調整される雰囲気調整工程が実施 される。具体的には、未分解アンモニアの体 積分率算出工程において算出された雰囲気中 の未分解アンモニアの体積分率が目標の未分 解アンモニアの体積分率になっていない場合 、第2加熱ゾーン51C内の未分解アンモニアの 積分率を増減させるためのアンモニア供給 調節工程が実施された後、雰囲気採取工程 再度実施される。

 アンモニア供給量調節工程は、たとえば 配管を介して熱処理炉5に連結されたアンモ ニアガスボンベから雰囲気ガス供給部61を介 て単位時間に第2加熱ゾーン51Cに流入するア ンモニアの量(アンモニアガスの流量)を当該 管に取り付けられたマスフローコントロー などを備えた流量制御装置にて調節するこ により実施することができる。すなわち、 定された未分解アンモニアの体積分率が目 の未分解アンモニアの体積分率よりも高い 合、上記流量を低下させ、低い場合、上記 量を増加させることにより、アンモニア供 量調節工程を実施することができる。この ンモニア供給量調節工程において、測定さ た未分解アンモニアの体積分率と目標の未 解アンモニアの体積分率との間に所定の差 ある場合、どの程度流量を増減させるかに いては、予め実験的に決定したアンモニア スの流量の増減と未分解アンモニアの体積 率の増減との関係に基づいて決定すること できる。

 一方、図12を参照して、未分解アンモニ の体積分率が目標の未分解アンモニアの体 分率になっている場合には、アンモニア供 量調節工程が実施されることなく、雰囲気 取工程が再度実施される。

 そして、図8および図12を参照して、雰囲 採取工程では、アンモニアの分解反応速度 含む解析条件に基づき、第2加熱ゾーン51C内 の雰囲気のCFD解析を実施した場合に、被処理 物通過領域92との未分解アンモニアの体積分 の差が25%以内となる領域である被処理物近 領域93の雰囲気が当該領域に開口56Aを有す 雰囲気採取パイプ56により採取される。

 一方、図11を参照して、加熱パターン制御 程では、被処理物91としての鋼部材に付与さ れる加熱履歴が制御される。具体的には、図 13に示すように、鋼部材が上述の雰囲気制御 程によって制御された雰囲気中で、A 1 点以上の温度である800℃以上1000℃以下の温 、たとえば850℃に加熱され、60分間以上300分 間以下の時間、たとえば150分間保持される。 当該保持時間が経過するとともに加熱パター ン制御工程は終了し、同時に雰囲気制御工程 も終了する(浸炭窒化工程)。この加熱パター 制御工程は、図7を参照して、予熱ゾーン51A 、第1加熱ゾーン51B、第2加熱ゾーン51Cおよび 3加熱ゾーン51Dを被処理物91が順次通過する とにより、図13の加熱パターンが被処理物91 に付与されるように、上記各ゾーンの温度が 制御されることにより実施される。

 その後、図7、図11および図13を参照して、 出口55から排出された被処理物91が、図示し い焼入油槽に貯留された油中に浸漬(油冷) れることにより、A 1 点以上の温度からM S 点以下の温度に冷却される冷却工程が実施さ れる。以上のプロセスにより、鋼部材は表層 部が浸炭窒化されるとともに焼入硬化される 。これにより、本実施の形態の焼入硬化工程 は完了する。

 以上のように、上記熱処理炉5を用いた本 実施の形態における浸炭窒化方法(浸炭窒化 程)においては、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51 C内において被処理物近傍領域93の雰囲気が採 取され、当該雰囲気における未分解アンモニ アの体積分率が算出された上で、当該体積分 率に基づいて、第2加熱ゾーン51C内の雰囲気 調整される。その結果、本実施の形態の熱 理炉を用いた上記浸炭窒化方法によれば、 処理物91の内部における窒素濃度の制御を容 易に実施することができる。そして、本実施 の形態における機械部品の製造方法によれば 、浸炭窒化工程において本実施の形態の熱処 理炉を用いた上記浸炭窒化方法を採用してい るため、内部における窒素濃度が精度よく制 御された機械部品を製造することができる。

 (実施の形態2)
 以下、本発明の一実施の形態である実施の 態2について説明する。実施の形態2におけ 熱処理炉、浸炭窒化方法、機械部品の製造 法および機械部品は、基本的には図1~図13に づいて説明した実施の形態1の場合と同様の 構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、 実施の形態2における熱処理炉は、保護管511 構成において実施の形態1とは異なっている

 すなわち、図14を参照して、実施の形態2 おける保護管511は、シール部材としての円 シール621、円盤シール622およびUパッキン623 に接触する円筒状の内壁511Aと、内壁511Aの外 面を取り囲む円筒状の外壁511Bとを含んでい る。内壁511Aと外壁511Bとの間には、隙間が設 られており、当該隙間は、冷却媒体として 冷却水が通過するための冷却媒体流路511Eと なっている。さらに、外壁511Bには、冷却水 進入するための開口である流入口511Cと、冷 するが排出されるための排出口511Dとが形成 されている。つまり、実施の形態2における 処理炉5における外方壁部としての保護管511 内壁511Aには、内壁511Aを取り囲む冷却部と ての冷却媒体流通部としての冷却媒体流路51 1Eが形成されている。

 そして、熱処理炉5の運転時には、図示し ないポンプなどを含む冷却水循環装置から供 給された冷却水が、流入口511Cから矢印αの向 きに冷却媒体流路511Eに流入し、排出口511Dか 矢印βの向きに排出される。これにより、 護管511およびシール部材としての円筒シー 621、円盤シール622およびUパッキン623が冷却 れ、シール部材の熱により劣化あるいは損 が抑制される。その結果、雰囲気採取パイ 56と保護管511との間のシールを、より確実 実施することができる。

 なお、外方壁部としての保護管511の内壁5 11Aに設置される冷却部としては、上述のよう に冷却水などの冷却媒体が流通するものが採 用されてもよいが、高圧エアーを吹きかける 機構などが採用されてもよい。

 (実施の形態3)
 以下、本発明の一実施の形態である実施の 態3について説明する。実施の形態3におけ 熱処理炉、浸炭窒化方法、機械部品の製造 法および機械部品は、基本的には図1~図13に づいて説明した実施の形態1の場合と同様の 構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、 実施の形態3における熱処理炉は、雰囲気採 パイプ周辺の構成において実施の形態1とは なっている。

 すなわち、図15を参照して、実施の形態3 おいては、保護管511を貫通し、第2加熱ゾー ン51Cの内部にまで到達する雰囲気採取部材と しての雰囲気採取パイプ56は、中空円筒状の 状を有している。また、保護管511は、隣接 る領域よりも内径の大きい領域である内径 大部511Fを含んでいる。そして、保護管511の 内径拡大部511Fの内周面と雰囲気採取パイプ56 の外周面との間には、Uパッキン623が配置さ ている。また、端部が二股に分離すること より形成されたUパッキン623の溝部623Cには、 Uパッキン623を支持する支持リング623Aが嵌め まれている。そして、Uパッキン623の溝部623 Cとは反対側の端面に接触するように、円盤 ール622が配置されている。

 さらに、第2加熱ゾーン51Cとは反対側の保 護管511の端面に接触するとともに、円盤シー ル622のUパッキン623側とは反対側の端面に接 し、かつ雰囲気採取パイプ56の外周面を取り 囲むように、外方壁部としての円環状のシー ル保持部材519が配置されている。シール保持 部材519の内周面と雰囲気採取パイプ56の外周 との間には、円環状の形状を有するシール 材としての円環シール624が配置されている

 シール部材としての円盤シール622およびU パッキン623のそれぞれと保護管511、およびシ ール部材として円環シール624とシール保持部 材519とは、少なくともその一部において密着 している。また、シール部材としての円盤シ ール622、Uパッキン623および円環シール624の れぞれに対して、雰囲気採取パイプ56は、密 着しつつ軸方向に摺動可能である。その結果 、雰囲気採取パイプ56と保護管511およびシー 保持部材519との間がシールされつつ、雰囲 採取パイプ56は保護管511およびシール保持 材519に対して相対的に移動可能となってお 、開口56Aと床面ベルト53(図8参照)との距離が 変更可能となっている。

 すなわち、雰囲気採取パイプ56は、シー 部材としての円盤シール622、Uパッキン623お び円環シール624、および外方壁部としての 護管511およびシール保持部材519に対して摺 することにより移動可能となっている。

 ここで、シール部材としての円環シール6 24は、高温の雰囲気採取パイプ56に接触する とにより高温に加熱されるおそれがある。 らに、円環シール624に対しては、雰囲気採 パイプ56が接触しつつ、摺動可能である必要 がある。そのため、円環シール624の素材とし ては、ニトリルゴム、フッ素ゴムなどを採用 することができる。

 なお、上記実施の形態においては、本発 の熱処理炉により熱処理(浸炭窒化)される 械部品の一例として、深溝玉軸受、スラス ニードルころ軸受、等速ジョイントを構成 る部品について説明したが、本発明の熱処 炉は、表層部の疲労強度、耐摩耗性が要求 れる機械部品、たとえばハブ、ギア、シャ ト等を構成する機械部品の熱処理にも好適 ある。また、上記実施の形態においては、 方壁部として、第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1か ら外側に突出する保護管511が形成される場合 について説明したが、上壁51C1が十分な厚み 有している場合、外方壁部は上壁51C1に形成 れた貫通孔の側壁であってもよい。

 (実施例1)
 以下、本発明の実施例1について説明する。 熱処理炉内における雰囲気採取パイプの開口 の位置と被処理物に侵入する窒素量の制御の 精度との関係を調査する実験を行なった。実 験の手順は以下のとおりである。

 実施例1における実験は、上記実施の形態 1において図7および図8に基づいて説明した熱 処理炉を用いて実施した。この熱処理炉は、 全長5000mmの連続炉タイプの熱処理炉である。 また、被処理物(サンプル)は、JIS SUJ2(炭素含 有量1質量%)製の外径φ38mm、内径φ30mm、幅10mm リングとした。そして、図7および図8を参照 して、被処理物91(サンプル)を投入口54から投 入し、床面ベルト53により本体部51内を搬送 ることにより、被処理物91を熱処理した。加 熱パターンは図13と同様のパターンを採用し 保持温度は850℃とした。そして、第2加熱ゾ ーン51Cにおける炭素の活量の目標値を0.95、γ 値(炭素の活量を未分解アンモニアの体積分 で除した値)の目標値を4.5に設定し、被処理 91に対して浸炭窒化処理を実施した。

 このとき、雰囲気採取パイプ56の開口56A 被処理物通過領域92との距離dを好ましい範 (開口56Aが被処理物近傍領域93内に位置する 囲)である50mm~150mm(実施例A~C)および好ましい 囲外である200mm~650mm(参考例A~E)の範囲で変化 させて、熱処理を実施した。そして、熱処理 中の第2加熱ゾーン51Cにおける炭素の活量お びγ値を測定した。また、熱処理が完了した サンプルを表面に垂直な断面において切断し 、表面からの深さ方向における窒素濃度の分 布をEPMA(Electron Probe Micro Analysis)により調査 た。表1に熱処理の主な条件を示す。

 次に、実験結果について説明する。表2に 、上記実施例A~Cおよび参考例A~Eにおける炭素 の活量およびγ値の測定結果を示す。また、 16および図17において、横軸は表面からの深 さを示しており、縦軸は窒素濃度を示してい る。さらに、図16および図17において、図中 細線は窒素濃度の測定値を示しており、太 はγ値等から算出される窒素濃度の予測値を 示している。つまり、図16および図17におい 、細線と太線とが一致しているほど、高い 度でサンプルへの窒素の侵入量が制御され いることを表している。

 表2を参照して、実施例A~Cおよび参考例A~E のいずれの場合も、炭素の活量およびγ値は ほぼ目標値(表1参照)どおりの値が得られて ることが確認された。そして、図16を参照 て、開口56Aが被処理物近傍領域93内に位置す る実施例Aにおけるサンプルの表層付近の窒 濃度は、γ値等から算出される窒素濃度の予 測値とEPMAにより測定された窒素濃度の実測 とがよく一致している。つまり、実施例Aに いては、サンプルの内部における窒素濃度 精度よく制御されている。一方、図17を参 して、開口56Aが被処理物近傍領域93外に位置 する参考例Eにおけるサンプルの表層付近の 素濃度は、γ値等から算出される窒素濃度の 予測値とEPMAにより測定された窒素濃度の実 値とが大きく異なっている。つまり、参考 Eにおいては、サンプルの内部における窒素 度の制御の精度が低下している。

 さらに、実施例A~Cおよび参考例A~Eについ 測定された窒素濃度の分布について、サン ルの表面から内部に向けて窒素濃度を積分 、サンプル表面の単位面積からサンプル内 侵入した窒素量(窒素侵入量)を算出した。 18において、横軸は上記距離d、縦軸は窒素 入量を示している。また、図18においては、 γ値等から算出された窒素侵入量の予測値が 線で示されている。つまり、図18において 窒素侵入量がこの予測値に近いほど、高い 度でサンプルへの窒素の侵入量が制御され いることを表している。

 図18を参照して、距離dが、被処理物近傍 域93内に開口56Aが位置する範囲内である150mm 以下の場合、算出された窒素侵入量が予測値 とほぼ一致している。一方、距離dが200mm以上 では、距離dが大きくなるにしたがって、算 された窒素侵入量と予測値との差が大きく っている。これは、反応室である第2加熱ゾ ン51Cの内部における未分解アンモニアの体 分率が均一となっておらず、距離dが150mmを えた場合、被処理物(サンプル)近傍よりも 分解アンモニアの体積分率が高い位置にお る未分解アンモニアの体積分率の測定結果 基づき、γ値等が制御されたことが原因であ ると考えられる。以上の結果より、雰囲気採 取パイプの開口と被処理物通過領域との距離 dを150mm以下とすることにより、被処理物の内 部における窒素濃度が精度よく制御可能であ ることが分かった。なお、図18を参照して、 処理物の内部における窒素濃度を安定して 度よく制御するためには、雰囲気採取パイ の開口と被処理物通過領域との距離dを100mm 下とすることが好ましいといえる。

 (実施例2)
 以下、本発明の実施例2について説明する。 浸炭窒化処理において、熱処理炉内に導入さ れたアンモニアガスは、分解反応が進行しつ つ炉内を流れて被処理物の表面に到達し、被 処理物への窒素の侵入に寄与するものと考え られる。そこで、上記実施例1における実験 果の妥当性を確認するため、CFD解析を用い 熱処理炉5内における未分解アンモニアの体 分率の分布を調査する実験を行なった。実 の手順は以下のとおりである。

 浸炭窒化処理の反応室である第2加熱ゾー ン51Cにおいては、内部の雰囲気が定常状態と なっていても、アンモニアの分解反応は平衡 状態には到達していないと考えられる。した がって、第2加熱ゾーン51C内における未分解 ンモニアの体積分率の分布を解析するため は、導入されたアンモニアの分解反応の反 速度が考慮される必要がある。そこで、ま 、浸炭窒化処理が実施される温度および雰 気中でのアンモニアの分解反応の反応速度 数を算出する実験を行なった。

 具体的には、まず、バッチ型熱処理炉(容 積120L)にRガス、エンリッチガスおよびアンモ ニアガスを供給するとともに、炉内を850℃に 加熱した。その後、炉内の未分解アンモニア の体積分率が定常状態となったことを確認の 上、上記ガスの供給を停止し、赤外線分析計 にて未分解アンモニアの体積分率の経時的変 化を測定した。さらに、再現性を確認するた め、同様の測定を再度行なった。表3に、未 解アンモニアの体積分率の経時的変化の測 結果を示す。

 表3を参照して、上述のように2回実施さ た未分解アンモニアの体積分率の経時的変 には再現性があることが確認される。ここ 、アンモニアの分解反応が2次の速度式に従 場合、ある時刻におけるアンモニアの分解 度は以下の式(1)に従う。また、この場合、 分解アンモニアの体積分率の逆数と、経過 間との間には、式(2)に示す直線関係が成立 る。

 -(dC A /dt)=kC A 2 ・・・(1)
 (1/C A )-(1/C 0 A )=kt・・・(2)
 ここで、C 0 A は測定開始時のアンモニアの体積分率、C A は任意の時間におけるアンモニアの体積分率 、tは測定開始からの経過時間、kは反応速度 数である。

 図19において、横軸は測定開始からの経 時間、縦軸は未分解アンモニアの体積分率 逆数である。また、図中の白丸は表3の1回目 、黒丸は表3の2回目の測定結果に該当する。

 図19を参照して、測定された未分解アン ニアの体積分率の逆数と経過時間とは、未 解アンモニアの体積分率が0.04%以上の範囲( 19の縦軸が2500以下の範囲)では、直線関係が 立していることが分かる。そして、この直 の傾きから、反応速度定数は21(s-1)と算出さ れた。このことから、アンモニアの分解速度 は速く、たとえば0.2%であった未分解アンモ アの体積分率は、8秒後には、0.15%にまで低 していることとなる。したがって、熱処理 内において、アンモニアの分解反応は平衡 態に到達していないことを考慮すると、熱 理炉内における未分解アンモニアの体積分 は不均一となりやすいことが確認される。

 次に、上記アンモニアの分解反応の速度 数により規定されるアンモニアの分解反応 度を含む解析条件に基づき、図7に示す熱処 理炉5の本体部51内における雰囲気のCFD解析を 行なった。熱処理の条件は、実施例1の場合 同様である。CFD解析は、種々のソフトウェ により実施することができるが、ここでは STORM/CFD2000(Adaptive Research社製)を用いて解析 実施した。また、熱処理炉内に存在する未 解アンモニアの体積分率は十分に小さいた 、アンモニアが分解してもRガスの物性値へ 影響は小さい。そこで、本実施例ではアン ニアの分解はパッシブスカラーとして(決ま った流れ場に対して移流拡散し、その濃度は 流れ場に対して影響を与えないものとして) 解析を行なった。

 表4に、本実施例において採用したCFD解析の 諸元を示す。また、表5に、本実施例におい 採用した解析条件に含まれる物性値を示す なお、雰囲気の密度および粘性率は、CO(一 化炭素):20%、N 2 (窒素):50%、H 2 (水素):30%の組成のRガスが850℃に加熱された 合を想定して決定した。また、解析におい 、炉内に導入されるアンモニアの初期の濃 は、上記実施例1における測定結果に合致す ように決定した。以上の条件によりCFD解析 行ない、炉内における流速分布、圧力分布 よび未分解アンモニアの体積分率が定常状 となった時点で計算を終了した。

 図20~図22においては、白い領域が未分解 ンモニアの体積分率が最も高く、黒に近づ ほど当該体積分率が低いことを示している 図20~図22を参照して、第2加熱ゾーン51Cの内 において、未分解アンモニアの体積分率は 大幅にばらついていることが確認される。 して、図7、図8および図20を参照して、雰囲 ガス供給部61および雰囲気採取パイプ56が設 置されている第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1付近 おける未分解アンモニアの体積分率が高い 方、被処理物通過領域92に近い第2加熱ゾー 51Cの底壁51C2付近における未分解アンモニア の体積分率は低くなっている。これは、雰囲 気ガス供給部61および雰囲気採取パイプ56が 置されている第2加熱ゾーン51Cの上壁51C1付近 から導入されたアンモニアガスが、被処理物 通過領域92に近い第2加熱ゾーン51Cの底壁51C2 近に到達するまでに、アンモニアガスの分 反応が速い速度で進行しているためである

 そして、実施例1の実験結果において、雰 囲気採取パイプ56の開口56Aから被処理物通過 域92までの距離dが大きくなるにしたがって 被処理物91への実際の窒素侵入量と予測値 の差が大きくなったのは、開口56Aから被処 物通過領域92までの距離dが大きいほど、被 理物通過領域92よりも未分解アンモニアの体 積分率が高い領域で雰囲気を採取し、これに 基づいて雰囲気を制御していたためであると 考えられる。したがって、実施例1の実験結 は妥当なものであって、浸炭窒化処理にお て被処理物の内部における窒素濃度の制御 精度よく行なうためには、アンモニアの分 反応速度を含む解析条件に基づきCFD解析を 施した場合に、熱処理炉内において被処理 が占める領域との未分解アンモニアの体積 率の差が25%以内となる領域、より具体的に 、被処理物が占める領域からの距離が150mm以 下である領域の雰囲気が採取され、当該雰囲 気中の未分解アンモニアの体積分率に基づい て、熱処理炉内の雰囲気が調整されることが 好ましいといえる。

 なお、上記実施例1および2における実験 件においては、熱処理炉内の雰囲気の流速 小さくなっている。図7、図8および図23を参 して、熱処理炉5の第2加熱ゾーン51Cにおい は、雰囲気ガス供給部61およびファン59が配 されている上壁51C1付近の流速が最も速く、 0.3m/s程度、他の領域では0.1m/s程度となってい る。これは、通常の熱処理条件に比べて小さ い値である。また、熱処理炉内における雰囲 気の流速が大きいほど、未分解アンモニアの 体積分率は均一となる。つまり、上記実施例 1および2における実験は、熱処理炉内におけ 未分解アンモニアの体積分率が不均一とな やすい条件下において実施されている。

 さらに、上記実施例1および2においては 浸炭窒化温度として850℃が採用されている 高炭素鋼が素材として採用される場合、浸 窒化温度は850℃付近、より具体的には830℃ 上870℃以下の温度とされるのが一般的であ 。

 したがって、高炭素鋼からなる被処理物 830℃以上870℃以下の浸炭窒化温度で浸炭窒 処理される場合、被処理物が占める領域か の距離が150mm以下である領域の雰囲気が採 されるように、熱処理炉の雰囲気採取部材 設置することは、特に有効である。ここで 高炭素鋼とは、0.8質量%以上の炭素を含有す 鋼、すなわち共析鋼および過共析鋼であっ 、たとえば軸受鋼であるJIS SUJ2およびこれ 相当するSAE52100、DIN規格100Cr6の他、JIS SUJ3 ばね鋼であるJIS SUP3、SUP4、工具鋼であるJIS SK2、SK3などが挙げられる。

 以上のように、鋼の熱処理(浸炭窒化処理 )において、被処理物の近傍において雰囲気 採取して分析し、これに基づいて熱処理炉 の雰囲気を制御することにより、熱処理炉 の雰囲気を精度よく制御することができる そして、雰囲気採取部材の開口と被処理物 保持する保持部との距離が変更可能に設置 れている本発明の熱処理炉によれば、被処 物の形状や量が変更された場合でも、これ 応じて雰囲気採取部材の開口の位置を変更 ることが可能であり、熱処理炉内の雰囲気 精度よく制御することができる。

 なお、上記実施の形態および実施例にお ては、熱処理として浸炭窒化処理が実施さ る場合について説明したが、本発明の熱処 炉において実施可能な熱処理はこれに限ら ない。本発明の熱処理炉は、たとえば浸炭 理など、被処理物の近傍において雰囲気が 取されることが好ましい熱処理に、有効に 用することができる。

 今回開示された実施の形態および実施例 すべての点で例示であって、制限的なもの はないと考えられるべきである。本発明の 囲は上記した説明ではなくて請求の範囲に って示され、請求の範囲と均等の意味、お び範囲内でのすべての変更が含まれること 意図される。

 本発明の熱処理炉は、熱処理炉内の雰囲 が精度よく制御されることが求められる熱 理炉に、特に有利に適用され得る。