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Patent Searching and Data


Title:
HIGHLY CORROSION-RESISTANT MEMBERS AND PROCESSES FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/081650
Kind Code:
A1
Abstract:
A highly corrosion-resistant member which comprises a stainless steel substrate, an inner layer covering at least part of the surface of the substrate, and an amorphous carbon film covering at least part of the surface of the inner layer and which is produced by forming the inner layer and the amorphous carbon film at least at a surface temperature of the substrate of as low as 450°C or below; and a highly corrosion-resistant member which comprises a stainless steel substrate whose surface is nitrided and an amorphous carbon film covering at least part of the surface of the substrate and which is produced by conducting the nitriding and the formation of the amorphous carbon film at least at a surface temperature of the substrate of as low as 450°C or below. In the step of producing the above corrosion-resistant members, the surface of the stainless steel substrate is not exposed to high temperature (> 450°C), so that the members exhibit corrosion resistance equivalent to that of original stainless steel.

Inventors:
SAITO TOSHIYUKI (JP)
SUZUKI MASAHIRO (JP)
HASHITOMI HIROYUKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2007/071822
Publication Date:
July 10, 2008
Filing Date:
November 09, 2007
Export Citation:
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Assignee:
JTEKT CORP (JP)
CNK CO LTD (JP)
SAITO TOSHIYUKI (JP)
SUZUKI MASAHIRO (JP)
HASHITOMI HIROYUKI (JP)
International Classes:
C23C16/26; C23C8/38; C23C8/50; C23C14/14; C23C28/00; C23C28/04; F16C33/24
Foreign References:
JP2005314758A2005-11-10
JPH1046360A1998-02-17
JP2003343481A2003-12-03
JPH10184692A1998-07-14
Other References:
MESKINI S. ET AL.: "XPS study of the ultrathin a-C:H films deposited onto ion beam nitrided AISI 316 steel", APPL. SURF. SCI., vol. 249, no. 1-4, 15 August 2005 (2005-08-15), pages 295 - 302, XP025284966
Attorney, Agent or Firm:
OHKAWA, Hiroshi (Nakamura-ku Nagoya-sh, Aichi 02, JP)
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Claims:
 ステンレス鋼製の基材と、該基材の表面の少なくとも一部に被覆された中間層と、該中間層の表面の少なくとも一部に被覆された非晶質炭素膜と、を備える高耐食性部材であって、
 前記中間層および前記非晶質炭素膜は、前記基材の表面の温度が450℃以下の低温で形成されることを特徴とする高耐食性部材。
 表層部が窒化処理されたステンレス鋼製の基材と、該表層部の表面の少なくとも一部に被覆された非晶質炭素膜と、を備える高耐食性部材であって、
 前記窒化処理および前記非晶質炭素膜の形成は、前記基材の表面の温度が450℃以下の低温で行われることを特徴とする高耐食性部材。
 水を含む液体の存在下において使用され、前記非晶質炭素膜の表面が相手材と摺接する摺動部品である請求項1または2記載の高耐食性部材。
 前記液体は、水で希釈されたクーラントである請求項3記載の高耐食性部材。
 前記摺動部品は、駆動軸および/または軸受である請求項3記載の高耐食性部材。
 前記駆動軸および前記軸受は、前記液体を輸送するウォータポンプの軸受構造部である請求項5記載の高耐食性部材。
 前記中間層は、クロム(Cr)膜、チタン(Ti)膜、ケイ素(Si)膜、タングステン(W)膜またはCr、Ti、SiおよびWのうちの少なくとも1種を含む炭化物膜、窒化物膜または炭窒化物膜である請求項1記載の高耐食性部材。
 ステンレス鋼製の基材の表面の少なくとも一部に、該基材の表面の温度を450℃以下にして中間層を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の表面の少なくとも一部に、前記基材の表面の温度を450℃以下にして非晶質炭素膜を成膜する非晶質炭素膜成膜工程と、
からなることを特徴とする高耐食性部材の製造方法。
 ステンレス鋼製の基材の表層部を該基材の表面の温度を450℃以下にして窒化処理する低温窒化処理工程と、
窒化処理された前記表層部の表面の少なくとも一部に、前記基材の表面の温度を450℃以下にして非晶質炭素膜を成膜する非晶質炭素膜成膜工程と、
 からなることを特徴とする高耐食性部材の製造方法。
 前記中間層形成工程は、物理蒸着法により前記中間層を形成する工程である請求項8記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記低温窒化処理工程は、イオン注入によるイオン窒化法またはアンモニア水を用いた液体窒化法により窒化処理を行う工程である請求項9記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記非晶質炭素膜成膜工程は、物理蒸着法により前記非晶質炭素膜を成膜する工程である請求項8または9記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記高耐食性部材は、水を含む液体の存在下において使用され、前記非晶質炭素膜の表面が相手材と摺接する摺動部品である請求項8または9記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記液体は、水で希釈されたクーラントである請求項13記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記摺動部品は、駆動軸および/または軸受である請求項13記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記駆動軸および前記軸受は、前記液体を輸送するウォータポンプの軸受構造部である請求項15記載の高耐食性部材の製造方法。
 前記中間層は、クロム(Cr)膜、チタン(Ti)膜、ケイ素(Si)膜、タングステン(W)膜またはCr、Ti、SiおよびWのうちの少なくとも1種を含む炭化物膜、窒化物膜または炭窒化物膜である請求項8記載の高耐食性部材の製造方法。
Description:
高耐食性部材およびその製造方

本発明は、腐食が発生しやすい環境で使用 されても高い耐食性を示す高耐食性部材およ びその製造方法に関する。

 非晶質構造を有する非晶質炭素(ダイヤモ ンドライクカーボン:DLC)は、耐摩耗性、固体 滑性などの機械的特性に優れ、耐食性、絶 性、可視光/赤外光透過率、酸素バリア性な どを合わせ持つ。そのため、非晶質炭素膜は 、基材の表面に被覆され、保護膜として用い られることが多い。たとえば、特許文献1で 、水を潤滑液として摺動する水潤滑軸受が 示されている。水潤滑軸受は、回転側に固 された回転側部材と、固定側に固定され回 側部材に対向摺接する固定側部材と、を備 る。特許文献1の実施例4によれば、固定側部 材の基材はステンレス鋼製で、その表面には DLC膜が形成されている。

 しかしながら、上記のように、ステンレス 製の基材の表面に直接形成されたDLC膜は、 材との密着性が低いことが知られている。D LC膜と基材との密着性が低いと、耐食性だけ なく摺動性にも悪影響を及ぼす。そこで、 来から、基材の表層部を窒化処理し、その 面にDLC膜を形成することで、密着性を確保 ている。このような従来の被覆部材を腐食 発生しやすい環境下で使用すると、基材とD LC膜との密着性が確保されることにより摺動 材としての信頼性が向上する一方で、ステ レス鋼製の基材をDLC膜で被覆しているにも かわらず、耐食性が著しく低下することが かった。特に、内燃機関に付設される冷却 段であるウォータポンプでは、pH9~10程度に 製されたクーラントが用いられるが、長期 の使用によりクーラントは酸性を呈するよ になる。したがって、従来の被覆部材をウ ータポンプの構成部品に使用すると、長期 使用に耐えられない虞がある。

特開平10-184692号公報

 本発明者等は、上記の現象を詳細に検討 た結果、基材を窒化処理することで、ステ レス鋼自体の耐食性が損なわれていること 着目した。図3は、表面を非晶質炭素膜で被 覆した従来の被覆部材を模式的に示す断面図 である。従来の被覆部材は、一般的に、500℃ またはそれ以上の温度で窒化処理やDLC膜の成 膜が行われている。従来の被覆部材に腐食が 発生する要因として次の2つが考えられる。

1つは、窒化によりステンレス鋼に発生す 内部応力である。ステンレス鋼に窒化処理 施すと、ステンレス鋼の表面から窒素原子 拡散して浸透することで結晶に歪(内部応力) が発生する。一般に、金属材料は、曲げ応力 や引張応力がかかった条件で腐食が発生しや すくなる。したがって、窒化によりステンレ ス鋼の表層部に発生する内部応力が原因で、 基材の表面も腐食しやすくなる傾向にある。

内部応力以上に大きな影響を及ぼすのが、 処理温度である。ステンレス鋼は、高温に保 持されると、ステンレス鋼に含まれる添加元 素であるクロム(Cr)が、同じく添加元素であ 炭素(C)等と結合して炭化物などが形成され ため、それらの周りにCr量の少ないCr欠乏層 形成される。Cr欠乏層が形成された周囲で 、元のステンレス鋼よりもCr濃度が低下する ため、安定な不動態被膜は形成され難くなり 、局所的にステンレス鋼の耐食性が低下する 。その結果、ステンレス鋼は、腐食しやすく なる(鋭敏化)。

 本発明は、上記の問題点に鑑み、耐食性 優れた高耐食性部材およびその製造方法を 供することを目的とする。

本発明者等は、上記の要因のうちの処理温 度によるステンレス鋼の鋭敏化に着目した。 すなわち、ステンレス鋼製の基材を準備して から非晶質炭素膜を形成するまでの間、基材 の温度が所定の温度を超えないようにするこ とで、ステンレス鋼の耐食性を保持できるこ とに想到した。

 すなわち、本発明の高耐食性部材は、ステ レス鋼製の基材と、該基材の表面の少なく も一部に被覆された中間層と、該中間層の 面の少なくとも一部に被覆された非晶質炭 膜と、を備える高耐食性部材であって、
 前記中間層および前記非晶質炭素膜は、前 基材の表面の温度が450℃以下の低温で形成 れることを特徴とする。

 また、本発明の高耐食性部材は、表層部が 化処理されたステンレス鋼製の基材と、該 層部の表面の少なくとも一部に被覆された 晶質炭素膜と、を備える高耐食性部材であ て、
 前記窒化処理および前記非晶質炭素膜の形 は、前記基材の表面の温度が450℃以下の低 で行われることを特徴とする。

 本発明の高耐食性部材の製造方法は、ステ レス鋼製の基材の表面の少なくとも一部に 該基材の表面の温度を450℃以下にして中間 を形成する中間層形成工程と、
前記中間層の表面の少なくとも一部に、前記 基材の表面の温度を450℃以下にして非晶質炭 素膜を成膜する非晶質炭素膜成膜工程と、
からなることを特徴とする。

 また、本発明の高耐食性部材の製造方法は ステンレス鋼製の基材の表層部を該基材の 面の温度を450℃以下にして窒化処理する低 窒化処理工程と、
窒化処理された前記表層部の表面の少なくと も一部に、前記基材の表面の温度を450℃以下 にして非晶質炭素膜を成膜する非晶質炭素膜 成膜工程と、
 からなることを特徴とする。

 本発明の高耐食性部材およびその製造方 によれば、ステンレス鋼製の基材の表面が 高温(>450℃)に曝されない。そのため、基 の耐食性は、元のステンレス鋼の耐食性と 等に保たれる。すなわち、本発明の高耐食 部材は、耐食性に優れる。なお、基材の内 の温度は、通常、基材の表面の温度よりも くなるため、本発明においては、少なくと 基材の表面が高温に曝されなければ所望の 食性をもつ高耐食性部材が得られる。 

基材の表面の少なくとも一部に中間層を形 成することで、基材に窒化処理を施すことな く、基材と非晶質炭素膜との密着性を確保す ることができる。窒化処理されていない基材 は、窒素原子が拡散・浸透しないため表層部 に内部応力が生じず、基材の耐食性の低下が 抑制される。

また、基材に低温(450℃以下)で窒化処理を すことにより、基材が高温下に曝されない ともに、基材の表面での内部応力の発生が 減される。そのため、基材の耐食性は、元 ステンレス鋼の耐食性と同等に保たれる。 れは、窒化処理が低温で行われるため、窒 原子が拡散して浸透することで発生する内 応力が小さくなるからである。

本発明の高耐食性部材を模式的に示す 面図である。 本発明の高耐食性部材を模式的に示す 面図である。 表面を非晶質炭素膜で被覆した従来の 覆部材を模式的に示す断面図である。 ウォータポンプの軸受構造部を模式的 示す断面図である。

符号の説明

10   :ポンプ軸(駆動軸)
20,30:軸受メタル(軸受)
21,31:ジャーナル軸受部
22   :スラスト軸受部

 以下、本発明の高耐食性部材およびその 造方法について詳細に説明する。なお、図1 および図2は、本発明の高耐食性部材を模式 に示す断面図である。

 [高耐食性部材]
 本発明の高耐食性部材は、ステンレス鋼製 基材と、基材の表面の少なくとも一部に被 された中間層と、中間層の表面の少なくと 一部に被覆された非晶質炭素膜と、を備え (図1)。あるいは、本発明の高耐食性部材は 表層部が窒化処理されたステンレス鋼製の 材と、表層部の表面の少なくとも一部に被 された非晶質炭素膜と、を備える(図2)。

基材は、ステンレス鋼製であれば、その形 状や大きさに特に限定はない。また、ステン レス鋼の種類にも特に限定はなく、一般的な マルテンサイト系、フェライト系またはオー ステナイト系ステンレス鋼や2相ステンレス などから用途に応じて選択すればよい。

また、基材の表面粗さに特に限定はない。 ただし、高耐食性部材を摺動部品として使用 するのであれば、基材と中間層あるいは非晶 質炭素膜との密着性および摺動性の点から、 十点平均粗さRz(JIS)が0.4~6.3μmであるとよい。

基材は、表層部が窒化処理されていてもよ い。ただし、窒化処理は、後に詳説するよう に、450℃以下の低温で行われる。窒化処理の 程度に特に限定はないが、窒化の深さが10μm 上さらには20~30μmであるとよい。10μm以上で あれば、窒化の必要な基材の表面全体に十分 に窒化がされるため、表面に形成される非晶 質炭素膜の剥離が効果的に防止される。

 基材の表面の少なくとも一部に被覆され 中間層は、基材と非晶質炭素膜(DLC膜)との 着性を向上させる。中間層は、基材およびDL C膜との密着性が高く硬質な被膜であるとよ 。たとえば、クロム(Cr)膜、チタン(Ti)膜、ケ イ素(Si)膜、タングステン(W)膜などの金属被 、Cr、Ti、SiおよびWのうちの少なくとも1種を 含む炭化物膜、窒化物膜または炭窒化物膜な どが挙げられる。炭化物膜、窒化物膜および 炭窒化膜の具体例としては、WC膜、SiC膜、SiC/ CrN膜、CrN膜、TiN膜、TiN/CrN膜、TiCrN膜などが挙 げられる。

 中間層の厚さに特に限定はないが、50nm以 上が好ましく、さらに好ましくは50~200nmであ 。50nm以上であれば、基材とDLC膜との密着性 が確保される。

 中間層の表面の少なくとも一部、または 窒化処理された基材の表層部の表面の少な とも一部には、非晶質炭素膜(DLC膜)が被覆 れる。

 DLC膜は、耐食性を向上させる保護膜とし の役割を果たす。DLC膜は、主として炭素(C) らなり非晶質構造を有すれば特に限定はな 、水素(H)の他、モリブデン(Mo)、タングステ ン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、ケイ素(Si)、 ボロン(B)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、窒素(N)等 腐食されにくい元素を含んでもよい。特に Siを含むDLC-Si膜は、耐食性のみならず、低 擦係数や高い耐摩耗性などを示す。さらに 相手攻撃性が低いため、DLC-Si膜を備える本 明の高耐食性部材は、DLC-Si膜の表面を摺動 とした摺動部品として好適である。

 DLC膜の厚さに特に限定はないが、500nm以 が好ましく、さらに好ましくは500~3000nmであ 。500nm以上であれば、保護膜としての耐食 はもちろん、摺動層としても十分な摺動性 示す。

 本発明の高耐食性部材は、優れた耐食性 有するため、腐食が発生しやすい環境で用 られる各種装置の構成部品として使用可能 ある。たとえば、本発明の高耐食性部材は 水を含む液体の存在下において使用される 成部品として好適である。特に、本発明の 耐食性部材は、優れた摺動特性を示すDLC膜 有するため、DLC膜の表面が相手材と摺接す 摺動部品であるのが好ましい。このとき、 動部品は、水を含む液体の存在下において 用され、水を含む液体を潤滑液として摺動 る。水を含む液体は、内燃機関の冷却に用 られるクーラントであってもよい。クーラ トは、通常、クーラント原液を水で希釈し 使用される。

 摺動部品の具体例としては、駆動軸、軸 、ピストン、シリンダ、バルブなどが挙げ れる。腐食が発生しやすい環境で用いられ 駆動軸および軸受としては、水あるいは水 含む液体(たとえばクーラント)を輸送する ォータポンプの軸受構造部がある。ウォー ポンプは、たとえば、内燃機関の冷却手段 して自動車に搭載されて用いられる。ウォ タポンプの軸受構造部は、一端部にプーリ 他端部にインペラが固定される回転軸と、 転軸を回転可能に軸支する軸受部材と、を える。通常、軸受部材は、回転軸の他端部 を収容するハウジングに配設される。すな ち、ハウジングは、回転軸の他端部側を収 する収容空間と、収容空間に連通し回転軸 挿通される貫通孔と、を備え、貫通孔の周 部に軸受部材が固定される。軸受部材は、 べり軸受が好ましいが、玉軸受、ころ軸受 どの各種軸受装置であってもよい。軸受部 がすべり軸受であれば、回転軸および/また 軸受部材が本発明の高耐食性部材からなる が好ましく、互いに摺接する回転軸の外周 および軸受部材の軸受面のうちの少なくと 一方に上記のDLC膜の表面が位置するのがよ 。ウォータポンプの軸受構造部であれば、 材に用いられるステンレス鋼としては、SUS3 04、SUS630、SUS440C、SUS303、SUS316等(JIS)を用いる よい。

 そして、中間層およびDLC膜は、基材の表 の温度が450℃以下の低温で形成される(図1) 同様に、窒化処理およびDLC膜の形成は、基 の表面の温度が450℃以下の低温で行われる( 図2)。中間層およびDLC膜の形成ならびに窒化 理については、[高耐食性部材の製造方法] 欄で詳説する。

 本発明の高耐食性部材において基材は、 テンレス鋼製である。ステンレス鋼は、前 のように、高温に保持されることで鋭敏化 る。たとえば、SUS304の場合、鋭敏化温度は5 00~800℃であるといわれているが、鋭敏化温度 は、ステンレス鋼に含まれる添加元素の量、 たとえばC含有量によって異なる。窒化処理 中間層およびDLC膜の形成が、基材の表面の 度を450℃以下、望ましくは250℃以下、さら 望ましくは200℃以下、にして行われれば、 とんどのステンレス鋼で鋭敏化が抑制され と考えられる。基材の表面の温度が450℃を えなければ、窒化処理や中間層およびDLC膜 形成に必要な時間(30~180分)基材が加熱されて も、ステンレス鋼の鋭敏化が抑制される。な お、本発明の高耐食性部材において、窒化処 理や中間層およびDLC膜の形成は、処理方法や 成膜方法にもよるが、いずれも30~180分行えば 、所望の耐食性を有する高耐食性部材が得ら れる。

 [高耐食性部材の製造方法]
 本発明の高耐食性部材の製造方法は、以上 明した本発明の高耐食性部材の製造方法で る。

本発明の高耐食性部材の製造方法は、中間 層形成工程と非晶質炭素膜成膜工程とからな る。

 中間層形成工程は、ステンレス鋼製の基 の表面の少なくとも一部に、基材の表面の 度を450℃以下にして中間層を形成する工程 ある。中間層形成工程は、基材の表面のう 、耐食性が要求される表面の温度を450℃以 にすればよい。なお、通常の処理であれば 基材の内部は、基材の表面に比べて熱の影 が少ないため、基材の表面の温度が450℃以 であれば、基材のどの部分においても450℃ 超えることはない。これ以降、基材の表面 温度を単に「成膜温度」または「処理温度 と記載することがある。

 中間層を形成する方法は、基材の表面の 度が450℃を超えないように中間層を形成で る方法であれば特に限定はなく、中間層の 類に応じて選択するとよい。また、中間層 、密着性の点から70℃以上で成膜されるの 好ましい。一般的に、化学蒸着法(CVD法)より も物理蒸着法(PVD法)の方が低温で被膜の形成 可能である。そのため、中間層は、PVD法を いて形成するのが望ましい。具体的には、 子ビームやレーザアブレーション等による 空蒸着、マグネトロンスパッタリング等の パッタリング、イオンプレーティングなど 挙げられる。特に、アンバランスドマグネ ロンスパッタリング法は、緻密な被膜を形 することができる成膜方法である。また、 温成膜が可能なCVD法であれば中間層を形成 る方法として用いることができる。たとえ 、熱陰極PIGプラズマCVD法(PIG:penning ionization gauge)であれば、基材の表面の温度が170~300℃ 範囲で中間層を形成できるため望ましい。

非晶質炭素膜成膜工程は、中間層の表面の 少なくとも一部に、基材の表面の温度を450℃ 以下にしてDLC膜を成膜する工程である。この 際、中間層の表面の温度を450℃以下にしてDLC 膜を成膜すれば、基材の表面の温度が450℃を 超えてステンレス鋼が鋭敏化することはない 。DLC膜を成膜する方法は、基材の表面の温度 が450℃を超えないようにDLC膜を成膜できる方 法であれば特に限定はない。また、DLC膜は、 密着性の点から150℃以上で成膜されるのが好 ましい。前述のように、一般的に、化学蒸着 法(CVD法)よりも物理蒸着法(PVD法)の方が低温 被膜の形成が可能である。そのため、DLC膜 、PVD法を用いて成膜されるのが望ましい。 体的には、電子ビームやレーザアブレーシ ン等による真空蒸着、マグネトロンスパッ リング等のスパッタリング、イオンプレー ィングなどが挙げられる。特に、アンバラ スドマグネトロンスパッタリング法は、緻 で保護効果の高いDLC膜を形成することがで る成膜方法であるため、本発明の高耐食性 材の製造方法として好適である。また、低 成膜が可能なCVD法であればDLC膜の成膜方法 して用いることができる。たとえば、前述 熱陰極PIGプラズマCVD法であれば、基材の表 の温度が170~300℃の範囲でDLC膜を成膜できる め望ましい。

 本発明の他の高耐食性部材の製造方法は 低温窒化処理工程と非晶質炭素膜成膜工程 からなる。

低温窒化処理工程は、ステンレス鋼製の基 材の表層部を基材の表面の温度を450℃以下に して窒化処理する工程である。低温窒化処理 工程では、450℃以下の処理温度で基材を窒化 処理すればよい。窒化処理される基材の表面 の温度が450℃以下であれば、表層部も450℃以 下に保たれる。

窒化処理の方法としては、ガス窒化法、塩 浴窒化法、イオン窒化法などがある。これら のうち、ガス窒化法は、アンモニアガス中で 基材を500~600℃に加熱して行われるため、本 明の高耐食性部材の製造方法には適さない 一方、塩浴窒化法は、シアン化合物を含む 融塩に基材を浸漬させて行うため、溶融塩 種類によっては、基材の表層部の温度を450 以下にして窒化処理をすることが可能であ 。また、イオン注入によるイオン窒化法は 窒素含有ガスがイオン化された窒素プラズ 中に基材を保持して行うため、450℃以下の 温での窒化が可能となるため望ましい。さ に、アンモニア水を用いた液体窒化法は、 の方法に比べ窒化速度が遅いものの、室温 近での処理も可能であるため望ましい。20~80 ℃での液体窒化法は、ステンレス鋼に生じる 内部応力が低減されるため、望ましい。窒化 の処理温度としては、室温以上450℃以下さら には300℃以上450℃以下であるのが望ましい。 300℃以上であれば、十分な深さの窒化層が短 時間で形成される。

非晶質炭素膜成膜工程は、窒化処理された 表層部の表面の少なくとも一部に、基材の表 面の温度を450℃以下にしてDLC膜を成膜する工 程である。DLC膜を成膜する方法は、基材の表 面すなわち窒化処理された表層部の表面の温 度が450℃を超えないようにDLC膜を成膜できる 方法であれば特に限定はない。また、DLC膜は 、密着性の点から150℃以上で成膜されるのが 好ましい。前述のように、一般的に、化学蒸 着法(CVD法)よりも物理蒸着法(PVD法)の方が低 で被膜の形成が可能である。そのため、DLC も、PVD法を用いて成膜されるのが望ましい 具体的には、電子ビームやレーザアブレー ョン等による真空蒸着、マグネトロンスパ タリング等のスパッタリング、イオンプレ ティングなどが挙げられる。特に、アンバ ンスドマグネトロンスパッタリング法は、 密で保護効果の高いDLC膜を形成することが きる成膜方法であるため、本発明の高耐食 部材の製造方法として好適である。また、 温成膜が可能なCVD法であればDLC膜の成膜方 として用いることができる。たとえば、前 の熱陰極PIGプラズマCVD法であれば、基材の 面の温度が170~300℃の範囲でDLC膜を成膜でき ため望ましい。

 以上、本発明の高耐食性部材およびその 造方法の実施形態を説明したが、本発明は 上記実施形態に限定されるものではない。 発明の要旨を逸脱しない範囲において、当 者が行い得る変更、改良等を施した種々の 態にて実施することができる。たとえば、 材の表面を粗面化する処理や基材の表面を 浄化する処理などを行ってもよい。

 次に、実施例を挙げて本発明をより具体 に説明する。

 以下に説明する実施例および比較例では ウォータポンプの軸受構造部における駆動 を作製した。ウォータポンプの軸受構造部 図4に示す。

 ウォータポンプの軸受構造部は、ポンプ 10(駆動軸)と、ポンプ軸10を回転可能に軸支 る軸受メタル20および30と、を備える。

ポンプ軸10は、出力側から順に、軸心方向 広がる円板状のフランジ部11、フランジ部11 に隣接する第一大径部12、第一大径部12と間 隔てて位置する第二大径部13、をもつ。軸受 メタル20および30は、ともに円筒形状であっ 、筒内には、ポンプ軸10の第一大径部12およ 第二大径部13がそれぞれ挿通される。この 、軸受メタル20の一方の端面21pは、フランジ 部11の入力側に位置する平面11pに当接する。 たがって、ポンプ軸10と軸受メタル20とで、 ポンプ軸10の第一大径部12の外周面12pと軸受 タル20の内周面22pとが摺接するジャーナル軸 受部21と、フランジ部11の平面11pと軸受メタ 20の端面21pとが摺接するスラスト軸受部22と が構成される。また、ポンプ軸10と軸受メ ル30とで、ポンプ軸10の第二大径部13の外周 13pと軸受メタル30の内周面33pとが摺接するジ ャーナル軸受部31が構成される。

 ポンプ軸10は、ステンレス鋼(SUS304)製の基 材に、基材の外周面に、以下に示す中間層ま たは窒化層ならびにDLC膜を形成してなる。ポ ンプ軸10の基材の外周面の表面粗さは、Rz1.6μ mであった。なお、軸受メタル20および30は、 テンレス鋼(SUS304)製の基材からなり、中間 、窒化層、DLC膜のいずれも形成しなかった

 [実施例1]
 本実施例では、以下の手順で、基材の外周 にチタン膜(中間層)およびDLC膜を形成して 図4に示すポンプ軸10を作製した。

 なお、チタン膜およびDLC膜の形成には、 港精機株式会社製PIG式プラズマCVD装置(APIG-1 060D、以下「PIG」と略記)を用いた。PIG装置は 熱陰極フィラメントと陽極とからなるプラ マ源を有する。装置内に導入された原料ガ は、プラズマ源で生成されたプラズマによ 分解され解離して、基材の表面に成膜され (熱陰極PIGプラズマCVD法)。また、このPIG装 には、直流電源に接続されたスパッタカソ ドが配されているため、直流スパッタリン 法による成膜も可能である。基材の表面温 は、基材近傍に配置された熱電対により測 した。

 はじめに、PIG装置のチャンバー内に基材 配置し、チャンバー内を所定の圧力まで減 した。次に、プラズマ源に電力を供給する ともにチャンバー内にアルゴンガスを導入 、チャンバー内にプラズマを形成した。こ 状態で、基材の表面をイオンボンバード処 (20分)した。

 イオンボンバード処理の後、Tiからなる ーゲット材が載置されたスパッタカソード 直流電力を供給した。40分の成膜により、基 材の外周面には、膜厚100nmのチタン膜が形成 れた。<工程I>

 チタン膜が所望の膜厚に形成されたら、 流電力の供給を停止させた。その後、チャ バー内にテトラメチルシラン(TMS)ガスを導 した。導入されたTMSガスは、電力を供給さ たプラズマ源で生成されたプラズマにより 解され解離して、70分の成膜により、基材の 外周面にSiを含むDLC膜(DLC-Si膜:膜厚3000nm)が成 された。<工程II>

 なお、イオンボンバード処理の処理温度 300℃、工程Iおよび工程IIでの基材の表面の 度は200℃であった。

 [比較例1]
 本比較例では、以下の手順で、基材を窒化 理した後、DLC膜を形成して、図4に示すポン プ軸10を作製した。

 なお、窒化処理およびDLC膜の形成には、 式会社CNK製直流プラズマCVD装置(JPC-3000S、以 下「PCVD」と略記)を用いた。基材の表面温度 、放射温度計により測定した。

 はじめに、PCVD装置のチャンバー内に基材 を配置し、チャンバー内を所定の圧力まで減 圧した。その後、チャンバーの内側に設けた 陽極板と基材との間に直流電圧を印加して、 放電を開始した。そして、基材の表面が窒化 処理温度(500℃)になるまで、イオン衝撃によ 昇温を行った。次に、チャンバー内に、窒 ガスおよび水素ガスを導入し、プラズマ窒 処理(60分)を行った。得られた基材の断面組 織を観察したところ、窒化深さは約20μmであ た。<工程I>

 プラズマ窒化処理の終了後、窒素ガスの 給を停止し、チャンバー内にTMSガスおよび 素ガスを供給した。50分の成膜により、基 の外周面には、Siを含むDLC膜(DLC-Si膜:膜厚3000 nm)が成膜された。<工程II>

 [比較例2]
 本比較例では、基材に中間層、DLC膜の形成 窒化処理を行わなかった。すなわち、駆動 は、未処理の基材である。

 [評価]
 実施例および比較例の駆動軸の耐食性を評 するために、腐食試験を行った。腐食試験 、作製したポンプ軸10(駆動軸)と軸受メタル 20および30からなるウォータポンプの軸受構 部を80℃の水中に24時間放置し、その後の腐 の有無を目視で観察して行った。

表1に、評価結果を示す。なお、表1におい 、「無」は腐食試験開始時と24時間後とで 化が見られなかったもの、「有」は24時間後 の軸受構造部の表面および水の変色が確認さ れたものである。

 工程Iおよび工程IIにおいて処理温度が200 であった実施例1の軸受構造部では、腐食が 確認されなかった。また、未処理の軸受構造 部(比較例2)においても同様に、腐食は確認さ れなかった。一方、工程Iおよび工程IIにおい て処理温度が500℃であった比較例の軸受構造 部は、その表面に錆が確認されるとともに、 水の色が変色した。すなわち、工程Iおよび 程IIにおいて処理温度を450℃以下とすること で、基材の耐食性が保たれることがわかった 。