Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
HIV-PROTEASE INHIBITOR AND METHOD FOR PRODUCTION THEREOF
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2008/088033
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed are: a novel HIV-protease inhibitor; and a method for producing the HIV-protease inhibitor. An extract having an HIV-protease inhibitory activity can be produced by a method comprising: a first fermentation step for seeding and culturing a lactic acid bacterium and a bacterium Bacillus subtilis in a culture medium; a mushroom fungus culture step for seeding and culturing a mushroom fungus in the culture medium after the first fermentation step; a second fermentation step for adding a Koji mold and water to the mushroom fungus culture produced in the mushroom fungus culture step and culturing the resulting culture; and a solid-liquid separation step for solid-liquid-separating the culture produced in the second fermentation step.

Inventors:
WADA SUEO (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/050564
Publication Date:
July 24, 2008
Filing Date:
January 18, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
WADA SUEO (JP)
International Classes:
A61K36/07; A61K35/74; A61K35/742; A61K35/744; A61K36/06; A61K36/062; A61P31/18; A61P43/00
Foreign References:
JP3524145B22004-05-10
JP2004057183A2004-02-26
JPH11103665A1999-04-20
JPH02237934A1990-09-20
JP2003210136A2003-07-29
JPS54160787A1979-12-19
JP2004159655A2004-06-10
Other References:
EL-MEKKAWY S. ET AL.: "Anti-HIV-1 and anti-HIV-1-protease substances from Ganoderma lucidum", PHYTOCHEMISTRY, vol. 49, no. 6, 1998, pages 1651 - 1657, XP004321585, DOI: doi:10.1016/S0031-9422(98)00254-4
ICHIMURA T. ET AL.: "Inhibition of HIV-1 Protease by Water-Soluble Lignin-Like Substance from an Edible Mushroom, Fuscoporia obliqua", BIOSCI. BIOTECHNOL. BIOCHEM., vol. 62, no. 3, 1998, pages 575 - 577
Attorney, Agent or Firm:
KONISHI, Tomimasa et al. (17-12 Marunouchi 2-chome, Naka-k, Nagoya-shi Aichi 02, JP)
Download PDF:
Claims:
 乳酸菌と枯草菌で発酵させた培地を用いてキノコ菌を培養した後、さらに麹菌で発酵させて得られる培養物の液状部又は該液状部の濃縮若しくは希釈物を含む、HIV-プロテアーゼ阻害剤。
 前記乳酸菌がバシラス・コアグランス(Bacillus coagulans)である、請求項1に記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
 前記枯草菌が納豆菌(Bacillus subtilis natto)である、請求項1又は2に記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
 前記キノコ菌がアガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei Murril)である、請求項1~3のいずれかに記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
 前記培地の主成分がコーンコブミール、竹破砕物、稲ワラ、麦わら、サトウキビ搾りかす又は食用キノコ廃培地である、請求項1~4のいずれかに記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
 前記麹菌がアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)である、請求項1~5のいずれかに記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
 培地に乳酸菌と枯草菌を植菌し、培養する第1発酵工程、
 第1発酵工程後の培地にキノコ菌を植菌し、培養するキノコ菌培養工程、
 キノコ菌培養工程で得られた培養物に麹菌及び水を添加し、培養する第2発酵工程、及び 第2発酵工程で得られた培養物を固液分離する固液分離工程を含む、HIV-プロテアーゼ阻害剤の製造方法。
Description:
HIV-プロテアーゼ阻害剤及びその 製造方法

 本発明はHIV-プロテアーゼ阻害剤及びその 製造方法に関する。詳しくは、キノコ類を原 料としたHIV-プロテアーゼ阻害剤及びその製 方法に関する。

 キノコ類から抽出した物質の中には、ヒト 疫不全症候群ウイルス(HIV)活性を阻害する 用を有するものがあり、その本質は、HIV-1プ ロテアーゼに対する阻害効果であることが知 られている。例えば、カバノアナタケ抽出物 のHIV-1プロテアーゼ阻害効果について、産業 術総合研究所の丸山、市村らが報告してい (非特許文献1)。このプロテアーゼ阻害効果 、抽出物に含まれる「水溶性リグニン」と う成分によるものである。このリグニンは キノコ類以外に、様々な植物にも含まれて る。岐阜県生活技術研究所の伊藤、関らは 稲わら、スギ由来のリグニンおよびリグニ 誘導体に、HIV-1プロテアーゼ阻害効果があ ことを報告している。

特開平11-103665号公報

特開2001-120058号公報

特開2002-104988号公報

特開2004-321168号公報

特開2005-46144号公報 Ichimura et al. Biosci. Biotechnol. Biochem., 62 , 575-577, 1998

 近年、担子菌類ハラタケ科のキノコである ガリクス茸の薬理作用が注目を集めており 薬理作用の検討をはじめ、栽培方法や加工 法の改良等、アガリクス茸に関する数多く 研究・開発が行われている(特許文献1~5など )。しかしながら、アガリクス茸又はその抽 エキスなどがHIVに対して有効であるとする 告はこれまでにない。
 以上の背景の下、本発明は新規なHIV-プロテ アーゼ阻害剤及びその製造方法を提供するこ とを課題とする。

 本発明者は、キノコ類の抽出エキスの製造 及び用途を模索する中で、乳酸菌と枯草菌 よる培養(発酵)を経た培地でキノコ菌を培 して得られる培養物を更に麹菌で培養し、 の後に液状部を分離するという、独自のキ コエキス製造法を創出した。そして、当該 造法の有用性を検証すべく、アガリクス茸 原料としてエキスを製造し、その薬理作用 調べた。その結果、驚くべきことに特異的 HIVプロテアーゼ阻害活性が当該エキスに認 られた。
 本発明は以上の成果に基づくものであり、 下のHIV-プロテアーゼ阻害剤、及びHIV-プロ アーゼ阻害剤の製造方法を提供する。
[1]乳酸菌と枯草菌で発酵させた培地を用いて キノコ菌を培養した後、さらに麹菌で発酵さ せて得られる培養物の液状部又は該液状部の 濃縮若しくは希釈物を含む、HIV-プロテアー 阻害剤。
[2]前記乳酸菌がバシラス・コアグランス(Bacil lus coagulans)である、[1]に記載のHIV-プロテア ゼ阻害剤。
[3]前記枯草菌が納豆菌(Bacillus subtilis natto)で ある、[1]又は[2]に記載のHIV-プロテアーゼ阻 剤。
[4]前記キノコ菌がアガリクス・ブラゼイ・ム リル(Agaricus blazei Murill)である、[1]~[3]のいず れかに記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
[5]前記培地の主成分がコーンコブミール、竹 破砕物、稲ワラ、麦わら、サトウキビ搾りか す又は食用キノコ廃培地である、[1]~[4]のい れかに記載のHIV-プロテアーゼ阻害剤。
[6]前記麹菌がアスペルギルス・オリゼ(Aspergil lus oryzae)又はアスペルギルス・ニガー(Aspergil lus niger)である、[1]~[5]のいずれかに記載のHIV -プロテアーゼ阻害剤。
[7]培地に乳酸菌と枯草菌を植菌し、培養する 第1発酵工程、
 第1発酵工程後の培地にキノコ菌を植菌し、 培養するキノコ菌培養工程、
 キノコ菌培養工程で得られた培養物に麹菌 び水を添加し、培養する第2発酵工程、及び  第2発酵工程で得られた培養物を固液分離す る固液分離工程、 を含む、HIV-プロテアーゼ 阻害剤の製造方法。

発酵キノコエキスの製造過程。 発酵キノコエキスの成分分析結果。発 キノコエキスの成分(右欄)が、アガリクス 実体の成分(左欄)と比較して示される。表中 の「抽出エキス」は、熱水抽出によるもの。 注1:エキス換算により水分値0。ND:測定限界以 下。 HIVプロテアーゼに対するペプスタチンA の効果。 HIVプロテアーゼに対する発酵キノコエ スの効果。 HIVプロテアーゼに対するリグニンの効 。 ペプシンに対するペプスタチンAの効果 。 ペプシンに対する発酵キノコエキスの 果。 トリプシンに対する発酵キノコエキス 効果。Mは分子量マーカーを表す。

 本発明のHIV-プロテアーゼ阻害剤は、乳酸 菌と枯草菌で発酵させた培地を用いてキノコ 菌を培養した後、さらに麹菌で発酵させて得 られる培養物の液状部又は当該液状部の濃縮 若しくは希釈物を含むことを特徴とする。即 ち本発明のHIV-プロテアーゼ阻害剤は、(1)乳 菌と枯草菌による発酵(第1発酵工程)、(2)キ コ菌の培養(キノコ菌培養工程)、(3)麹菌によ る発酵(第2発酵工程)、及び(4)培養物の液状部 の分離(固液分離工程)を経て得られる液体又 その濃縮又は希釈物(以下、これら3つをま めて「発酵キノコエキス」と呼ぶ)を有効成 とする。尚、ここでの「濃縮」及び「希釈 の程度は特に限定されない。従って、水分 が実質的にない状態(即ち乾燥状態)にまで ることも「濃縮」の概念に含むものとする 以下、図1を参照しながら発酵キノコエキス 製造工程について詳述する。

(1)第1発酵工程(図1のa)
 この工程ではまず培地を用意する。後のキ コ菌の培養に適し、且つ乳酸菌及び枯草菌 資化可能なものである限り、培地の種類は に限定されない。例えば、コーンコブミー (トウモロコシ芯の粉砕物)、竹や笹或いは スキ等の粉砕物、廃ホダギ(椎茸や舞茸等の 培廃棄物)の粉砕物、コーヒーかす、稲ワラ 、麦わら、サトウキビ搾りかす等を基材とし 、おから(豆乳の絞りかす)、豆類(大豆など) 粉砕物、小麦ふすま、米ぬか、及びトウモ コシぬか等の栄養材を添加した培地を使用 ることができる。基材と栄養材の使用量比 を重量比で60~90:40~10になるようにするとよい 。尚、使用する基材に十分な量の栄養分(窒 分など)が含有されている場合には栄養材の 用は必須ではない。

 培地を均一に混合した後、水分量を50%~80% 、好ましくは65%~75%に調整する。このように 備した培地に乳酸菌及び枯草菌を植菌し、 養する。乳酸菌又は枯草菌の培養開始を他 の培養開始に先行させてもよい。即ち、乳 菌の植菌時期と枯草菌の植菌時期は必ずし 同時でなくてよい。

 乳酸菌としては、バシラス・コアグラン (Bacillus coagulans)等のバシラス属の乳酸菌、 クトバシラス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラ クトバシラス・ブルガリカス(Lactobacillus bulga ricus)、ラクトバシラス・アシドフィラス(Lacto bacillus acidophilus)、ラクトバシラス・ブレビ (Lactobacillus brevis)、ラクトバシラス・プラン タラム(Lactobacillus plantarum)等のラクトバシラ 属の乳酸菌、ビフィドバクテリウム・ビフ ダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテ ウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)、ビフィ バクテリウム・ラクティス(Bifidobacterium lact is)等のビフィドバクテリウム属の乳酸菌、ラ クトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、 ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremori s)、ラクトコッカス・ジアセチラクティス(Lac tococcus diacetylactis)、ラクトコッカス・プラン タラム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ ラフィノラクティス(Lactococcus rafinolactis)等の ラクトコッカス属の乳酸菌、ペディオコッカ ス・ダムノサス(Pediococcus damnosus)、ペディオ ッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus )等のペディオコッカス属の乳酸菌、カルノ クテリウム・ディバージェンス(Carnobacterium  divergens)、カルノバクテリウム・ピシコーラ(C arnobacterium piscicola)等のカルノバクテリウム の乳酸菌、ロイコノストック・メセンテロ ズ(Leuconostoc mesenteroides)、ロイコノストック シトレウム(Leuconostoc citreum)等のロイコノス トック属の乳酸菌、ストレプトコッカス・サ ーモフィラス(Streptococcus thermophilus)、ストレ トコッカス・フェーカリス(Streptococcus faecal is)、ストレプトコッカス・ピオジェネス(Strep tococcus pyogenes)等のストレプトコッカス属の 酸菌、エンテロコッカス・カゼリフラバス(E nterococcus caseliflavus)、エンテロコッカス・サ フレウス(Enterococcus sulfreus)等のエンテロコ カス属の乳酸菌を使用することができる。 、市販の菌株又は公的機関等に寄託された 株を用いることしても、新たに単離した菌 使用することにしてもよい。また、二種類 上の乳酸菌を併用することにしてもよい。

 枯草菌(Bacillus subtilis)として納豆菌(Bacillu s subtilis natto)を使用することが好ましい。 豆菌の種類は特に限定されず、宮城野菌(有 会社 宮城野納豆菌製造所)、成瀬菌(株式会 社 成瀬発酵化学研究所)、高橋菌(納豆素本  高橋祐蔵研究所)等を使用することができ 。尚、市販の菌株又は公的機関等に寄託さ た菌株を用いることとしても、新たに単離 た菌を使用することにしてもよい。また、 種類以上の枯草菌を併用することにしても い。

 乳酸菌と枯草菌を培地へ植菌すると次第 培地温度が上昇する。通常、培地への両菌 植菌後数時間(2~6時間程度)で培地温度が40℃ 程度まで上昇する(予備発酵)。予備発酵後、 イラーなどの蒸気で加温及び加湿可能な室 に培地を移し、室温を40℃~60℃程度に維持 ることが好ましい。このようにすることに って培地温度が約45℃~約60℃に保持され、乳 酸菌及び枯草菌による良好な発酵が進行する (本発酵)。この本発酵を10日~2月、好ましくは 20日~1月継続する。尚、発酵時に使用する容 の大きさは特に問わないが、通気不良を起 すことを防止し且つ水分の維持をしやすく るために、培地の高さを10cm~30cm、好ましく 15cm~25cm程度にして発酵させるとよい。

(2)キノコ菌培養工程(図1のb)
 まず、発酵工程後の培地の温度を適温まで げる。例えば、培地温度が30℃以下になっ 時点でキノコ菌を植菌する。キノコ菌とし は、アガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus  blazei Murill)、シイタケ(Lentinula edodes)、エノ タケ(Flammulina velutipes)、マッシュルーム(Agari cus bisporus)、マイタケ(Grifola frondosa)、ホンシ メジ(Lyophyllum shimeji)、ブナシメジ(Hypsizigus ma rmoreus)、ナメコ(Pholiota nameko)、エリンギ(Pleuro tus eryngii)等を用いることができる。乳酸菌 は枯草菌の混入がキノコの菌糸体の生育に 響する場合、植菌に先立って培地を滅菌(殺 )することが好ましい。培地の滅菌はオート クレーブ(例えば120℃、2気圧で10~30分)、間歇 菌法、煮沸滅菌法など、常法で行えばよい 尚、アガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei Murill)やマッシュルーム(Agaricus bisporus) 等は滅菌操作をすることなく直接、植菌する こともできる。

 植菌後、使用するキノコ菌の生育に適した 件で菌糸体が十分に生育するまで培養する 培養期間は例えば1月間~4月間とする。培養 件の例を以下に示す。
 アガリクス・ブラゼイ・ムリル:室温26~30℃ 湿度85%前後
 シイタケ:室温20~25℃、湿度85%前後
 マッシュルーム:室温22~27℃(平均24.5℃)、湿 85%前後
 マイタケ:室温20~25℃、湿度85%前後

(3)第2発酵工程(図1のc)
 この工程では、以上の培養によって得られ キノコ菌培養物に麹菌及び水を添加し、麹 による発酵を行う。
 麹菌としては、アスペルギルス・オリゼ(Asp ergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー(Asperg illus niger)、アスペルギルス フラバス(Aspergil lus flavus)、アスペルギルス・ポリオキソジェ ネス(Aspergillus polyoxogenes)、アスペルギルス・ ソーヤ(Aspergillus sojae)、アスペルギルス・ア モリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・カ ワウチ(Aspergillus kawauchii)、アスペルギルス・ サミ(Aspergillus usami)、モナスカス・アンカ(Mon ascus anka)、モナスカス・ピロサス(Monascus pilo sus)、リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligos porus)、リゾプス・オリゼ(Rhizopus oryzae)等を用 いることができる。中でも、発育が容易で有 機酸を生成しやすい等の理由から、アスペル ギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)又はアスペル ギルス・ニガー(Aspergillus niger)を用いること 好ましい。

 麹菌と水の添加後、使用する麹菌に応じ 条件で培養(発酵)する。例えば、アスペル ルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)であれば24~28℃ 、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)で れば24~28℃の温度条件下で培養するとよい 培養時間は特に限定されず、例えば12時間~48 時間培養を継続する。培養終了後、滅菌処理 することが好ましい。

(4)固液分離工程(図1のd)
 この工程では、以上の培養(発酵)によって られた培養物を固液分離し、不要な固形分 除去する。固液分離はろ過、圧搾分離、遠 分離等によって実施可能であるが、操作が 便であり、有効成分のロスも少ないことか 、好ましくはろ過によって固液分離する。 過には布製(不織布製を含む)金属製、又は樹 脂製のフィルタを利用することができる。尚 、固液分離によって得られる液体の固形分濃 度が0.5%~3%程度になるように固液分離の条件 設定することが好ましい。
 固液分離によって得られた液体(培養物の液 状部)は、必要に応じて、濃縮又は希釈され 。

 以上の一連の工程によって得られた発酵 ノコエキスはそのまま又は必要な製剤化の 程を経た後、HIV-プロテアーゼ阻害剤として 用いられる。製剤化する場合には、製剤上許 容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、 壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤 安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など) 含有させることができる。賦形剤としては 糖、デンプン、ソルビトール、D-マンニト ル、白糖等を用いることができる。崩壊剤 してはデンプン、カルボキシメチルセルロ ス、炭酸カルシウム等を用いることができ 。緩衝剤としてはリン酸塩、クエン酸塩、 酸塩等を用いることができる。乳化剤とし はアラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、 ラガント等を用いることができる。懸濁剤 してはモノステアリン酸グリセリン、モノ テアリン酸アルミニウム、メチルセルロー 、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキ メチルセルロース、ラウリル硫酸ナトリウ 等を用いることができる。無痛化剤として ベンジルアルコール、クロロブタノール、 ルビトール等を用いることができる。安定 としてはプロピレングリコール、ジエチリ 亜硫酸塩、アスコルビン酸等を用いること できる。保存剤としてはフェノール、塩化 ンザルコニウム、ベンジルアルコール、ク ロブタノール、メチルパラベン等を用いる とができる。防腐剤としては塩化ベンザル ニウム、パラオキシ安息香酸、クロロブタ ール等と用いることができる。

 製剤化する場合の剤型も特に限定されな 。例えば錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カ セル剤、シロップ剤、注射剤、外用剤、及 座剤などの剤型を採用することができる。

 本発明のHIV-プロテアーゼ阻害剤はその形態 (特に剤型)に応じて経口投与又は非経口投与( 静脈内、動脈内、皮下、筋肉、又は腹腔内注 射、経皮、経鼻、経粘膜など)によってHIV患 に適用される。
 本発明のHIV-プロテアーゼ阻害剤の投与量は 、期待される治療効果が得られるように設定 される。治療上有効な投与量の設定において は一般に症状、患者の年齢、性別、及び体重 などが考慮される。尚、当業者であればこれ らの事項を考慮して適当な投与量を設定する ことが可能である。投与スケジュールとして は例えば1日1回~数回、2日に1回、或いは3日に 1回などを採用できる。投与スケジュールの 成においては、患者の病状や有効成分の効 持続時間などを考慮することができる。

<発酵キノコエキスの製造>
 以下の製造工程に従い、アガリクス・ブラ イ・ムリル(Agaricus blazei Murill)を原料とし 発酵キノコエキスを製造した。

1.乳酸菌と納豆菌による発酵(第1発酵工程)
 コーンコブミールとおからを重量比で80対20 の割合で混合した。均一になるまで攪拌した 後、散水して水分量を65%~75%に調整した。こ ように準備した培地に乳酸菌(Bacillus coagulans 、NBRC 3557、独立行政法人製品評価技術基盤 構)を予めMedium203(Pepton 10g、Yeast extract 5g、L iver,infusion from 25g、Glucose 3g、Glycerol 15g、Nac l 3gを蒸留水に溶解して1リットルにしたもの )にて培養したもの、及び納豆菌(Bacillus subtil is、NBRC 3007、独立行政法人製品評価技術基盤 機構)を予めMedium203にて培養したものを、コ ンコブミールとおからの培地重量に対して れぞれ1~5重量%となるように植菌した。この 態で室温(20~25℃)の室内に1日間放置した(予 発酵)。これによって培地温度が約40℃まで 昇した。次に、培地を栽培箱(幅40cm、奥行 60cm、深さ20cm)に敷きつめ、ボイラーの蒸気 加温及び加湿可能な室内に移した。室温を 50℃、湿度を約90%に維持し、1ヶ月間発酵さ た(本発酵)。尚、培地のpHを測定したところ 発酵前はpH7前後であり、発酵中には一時的 pH9程度まで上昇し、発酵が進行するに従いp Hが低下し、最終的に元のpH(7前後)に戻った。

2.キノコ菌の植菌及び培養(キノコ菌培養工程 )
 培地のpHが7前後に戻った時点で自然放冷し 培地温度を約25℃まで低下させた。次に、 ガリクス・ブラゼイ・ムリル(Agaricus blazei M urill)の種菌を培地に対して約1~5重量%となる うに植菌した。植菌後は室温25℃、湿度85%の 環境下で培養した。菌糸体の生育状態を観察 しながら約3ヶ月培養を継続した。

3.麹菌による発酵工程(第2発酵工程)
 以上の培養によって得られた菌糸体培養物1 00kgに麹(予め米・ジャガイモ・でんぷん・キ コ子実体粉末を使用した培地で培養してお たアスペルギルス・オリゼ)と水150リットル を混合した後、温度を約60℃までゆっくりと 昇させた。続いて、温度を維持しつつ約24 間後、殺菌処理(85℃、3時間)した。

4.エキスの分取(固液分離工程)
 殺菌処理後の培養物を50メッシュのフィル 及び200メッシュのフィルタで順次ろ過し、 形物を除去した。得られたろ液(発酵キノコ キス)を保冷(-20℃以下)した後、加温(80℃以 )し、最後に瓶詰めした。尚、発酵キノコエ キスの固形分濃度及びpHを測定したところ約2 %及び約5.5であった。その他の成分分析結果 図2の表に示す。

<発酵キノコエキスのHIVプロテアーゼ阻害 >
 以下の手順で、発酵キノコエキスがHIV-1プ テアーゼに対して阻害効果を有するかどう を検討した。具体的には、HIVプロテアーゼ 基質ペプチドをどの程度分解したのかを蛍 発色法によって定量し、発酵キノコエキス 有無で、HIVプロテアーゼのペプチドの分解 力が変化するかどうかを調べた。
 ところでプロテアーゼはHIVに限らず人体に 存在する。例えば、消化管内に存在する消 プロテアーゼはその代表である。発酵キノ エキスが、HIVプロテアーゼだけでなく、消 プロテアーゼにも効果があるかどうかを知 ことは、発酵キノコエキスのHIV-1プロテア ゼ阻害効果が非特異的にプロテアーゼを抑 するためなのか、それともHIV-1プロテアーゼ に特異的なのかを判断する上で重要である。 また、発酵キノコエキスを経口摂取すること を想定すれば、消化プロテアーゼに効果があ るか否かは、注目すべき点である。そこで、 発酵キノコエキスが消化プロテアーゼに対し て阻害効果を有しているかどうかも検討する ことにした。具体的には、代表的な消化プロ テアーゼであるペプシンおよびトリプシンが 、基質タンパク質をどの程度分解したのかを 、紫外部吸光法および電気泳動法によって解 析し、発酵キノコエキスの有無でプロテアー ゼのペプチドの分解能力が変化するかどうか を調べた。

1.実験方法
(1)HIVプロテアーゼ活性に対する発酵キノコエ キスの効果
 市販のHIVプロテアーゼアッセイキット(EnzoLy te 490 HIV-1 Protease Assay Kit)を用いて、HIVプ テアーゼ活性の測定を行った。当該キット は、HIVプロテアーゼが基質ペプチド(蛍光物 で標識されている)を切断することによって 発生する蛍光を指標として試料中のHIVプロテ アーゼ活性が検出される。HIVプロテアーゼ、 基質ペプチド、反応バッファーの他に、水( ントロール)、ペプスタチンA(プロテアーゼ 一般的な阻害物質)、発酵キノコエキス、あ いはリグニンを加えて反応を行った。分解 れた基質由来の発光物質を定量することに ってHIVプロテアーゼの酵素活性を評価した

(2)ペプシン活性に対する発酵キノコエキスの 効果
 基質タンパク質(ヘモグロビン)がどのくら 分解されたのかを紫外部吸光法によって定 した。具体的には、ペプシン、基質タンパ 質、反応バッファーの他に、水(コントロー )、ペプスタチンA(プロテアーゼの一般的な 害物質)、または発酵キノコエキスを加えて 反応を行った。そして、反応液から未分解の ヘモグロビンを除去した上清に280nmの波長の を照射して、その吸光度を測定することで ペプシンが基質タンパク質を分解すること よって生じた分解産物(ペプチド)を定量し 。分解産物の量でペプシンの酵素活性を評 した。

(3)トリプシン活性に対する発酵キノコエキス の効果
 基質タンパク質(ウシ血清アルブミン)がど くらい分解されたのかを電気泳動法によっ 定量した。具体的には、トリプシン、基質 ンパク質、反応バッファーの他に、水(コン ロール)、または発酵キノコエキスを加えて 反応を行った。そして、反応液を電気泳動し 、ウシ血清アルブミンがトリプシンによって どのくらい分解されたのかを検出して、電気 泳動のバンドの減少によってトリプシンの酵 素活性を評価した。

2.結果
(1)HIVプロテアーゼ活性に対するペプスタチン Aの効果
 HIVプロテアーゼ反応液にペプスタチンAを0.0 4、0.4、4μM加えた。ペプスタチンAの濃度に依 存して、HIVプロテアーゼの基質ペプチド切断 活性が抑制された(図3)。

(2)HIVプロテアーゼ活性に対する発酵キノコエ キスの効果
 HIVプロテアーゼ反応液に発酵キノコエキス( 濃度1.6%に調整したものを原液として)を0.005 0.05、0.5%加えた。発酵キノコエキスの濃度に 依存して、HIVプロテアーゼの基質ペプチド切 断活性が抑制された(図4)。

(3)HIVプロテアーゼ活性に対するリグニンの効 果
 HIVプロテアーゼ反応液にリグニンを0.5、5、 50μg/ml加えた。リグニンの濃度に依存して、H IVプロテアーゼの基質ペプチド切断活性が抑 された(図5)。

(4)ペプシン活性に対するペプスタチンAの効
 ペプシン反応液にペプスタチンAを0.04、0.4μ M加えた。ペプスタチンAの濃度に依存して、 プシンのヘモグロビン分解活性が抑制され (図6)。

(5)ペプシン活性に対する発酵キノコエキスの 効果
 ペプシン反応液に発酵キノコエキスを0.5ま は1%加えた。発酵キノコエキスの添加の有 に関わらず、ペプシンのヘモグロビン分解 性は変化しなかった(図7)。

(6)トリプシン活性に対する発酵キノコエキス の効果
 トリプシン反応液に発酵キノコエキスを0.5 たは1%加えた。発酵キノコエキスの添加の 無に関わらず、トリプシンはウシ血清アル ミンを分解した(図8)。

3.考察
 測定されたHIVプロテアーゼの活性に由来す と思われる値は、ペプスタチンAによって抑 制されたので、HIVプロテアーゼの活性である と確認できた。
 HIVプロテアーゼ活性は、発酵キノコエキス よって抑制された。発酵キノコエキスには HIVプロテアーゼを抑制する物質が含まれて ると考えられる。その候補物質のひとつが グニンである。実際、リグニンも同様に、H IVプロテアーゼ活性を抑制した。発酵キノコ キスとリグニン溶液の色、においが非常に 似していることから、発酵キノコエキスに リグニン様物質が含有している可能性が高 。そのため、発酵キノコエキス中のリグニ 様物質がHIVプロテアーゼ活性を抑制したと えることができる。
 HIVプロテアーゼとは異なり、発酵キノコエ スは、消化プロテアーゼであるペプシンお びトリプシン活性に対しては、影響を示さ かった。このことから、発酵キノコエキス HIV-1プロテアーゼ阻害効果は、非特異的に ロテアーゼを抑制するものではなく、HIV-1プ ロテアーゼおよびその類似プロテアーゼに特 異的なものと推察できる。
 また、消化プロテアーゼに影響しなかった いう結果は、発酵キノコエキスを飲用した 合に消化管内でペプシンやトリプシン活性 対して大きな影響を与えない可能性を示唆 ている。これは、高い安全性を示している のと理解できる。

 本発明のHIV-プロテアーゼ阻害剤はHIV-プ テアーゼに対して特異的な阻害活性を発揮 ることから、HIVの治療又は予防を目的とし 医薬や食品又はそれらの材料として利用さ ることが期待される。

 この発明は、上記発明の実施の形態及び実 例の説明に何ら限定されるものではない。 許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が 易に想到できる範囲で種々の変形態様もこ 発明に含まれる。
 本明細書の中で明示した論文、公開特許公 、及び特許公報などの内容は、その全ての 容を援用によって引用することとする。