SAKURAI HIDEHIKO (JP)
NAKAO TAKAHITO (JP)
TERASHIMA YASUKI (JP)
WO2013118859A1 | 2013-08-15 | |||
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〇 2020/175375 30 卩(:171? 2020 /007080 請求の範囲 [請求項 1 ] 中空糸型の半透膜である中空糸膜であって、 所定の膜分離方法に 9 6時間使用された後の前記中空糸膜の内径の 収縮率が、 使用開始時の内径に対して 0 . 1 %以上 9 %未満であり、 前記所定の膜分離方法は、 前記中空糸膜と、 前記中空糸膜で仕切ら れた第 1室および第 2室と、 を有する中空糸膜モジユールを用いて、 第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 第 2液を前記第 1圧力よりも 低い第 2圧力で前記第 2室に流すことで、 前記第 1室内の前記第 1液 に含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して前記第 2室内の前記第 2液に 移行させ、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液である濃縮液を排出 し、 前記第 2室から希釈された前記第 2液である希釈液を排出し、 前記中空糸膜の外側の空間が前記第 1室であり、 前記中空糸膜の内 側の空間が前記第 2室であり、 前記第 1圧力が 5 . 前記第 2圧力が一定であり、 前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 0 !\/1 3である、 中空糸膜。 [請求項 2] 前記中空糸膜の内径が 4 0 以上 2 0 0 以下である、 請求項 1 に記載の中空糸膜。 [請求項 3] 前記中空糸膜のラマン値が 7 2 %以上 9 0 %以下である、 請求項 1 または 2に記載の中空糸膜。 [請求項 4] 前記中空糸膜の断面内形が三角形状である、 請求項 1〜 3のいずれ か 1項に記載の中空糸膜。 [請求項 5] セルロース系樹脂、 ポリスルホン系樹脂およびポリアミ ド系樹脂の 少なくともいずれかを含む材料から構成される、 請求項 1〜 4のいず れか 1項に記載の中空糸膜。 [請求項 6] 前記中空糸膜と、 前記中空糸膜で仕切られた第 1室および第 2室と 、 を有する中空糸膜モジユールを用いて、 第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 第 2液を前記第 1圧力よりも低い第 2圧力で前記第 2室 に流すことで、 前記第 1室内の前記第 1液に含まれる溶媒を前記中空 〇 2020/175375 31 卩(:171? 2020 /007080 糸膜を介して前記第 2室内の前記第 2液に移行させ、 前記第 1室から 濃縮された前記第 1液である濃縮液を排出し、 前記第 2室から希釈さ れた前記第 2液である希釈液を排出し、 前記第 1液と前記第 2液の浸 透圧差が 4 IV! 3以下である、 膜分離方法に用いられる、 請求項 1〜 5のいずれか 1項に記載の中空糸膜。 [請求項 7] 原料溶液をノズルから空中走行部を経て凝固液中に吐出して、 前記 原料溶液の凝固物を前記凝固液中から曳き出すことにより、 中空糸型 の半透膜である中空糸膜を得る、 紡糸工程と、 前記紡糸工程で得られた中空糸膜を水洗した後に、 熱水処理および塩 潰処理に供する、 後処理工程と、 を含む中空糸膜の製造方法であって、 前記原料溶液は溶媒および非溶媒を含み、 前記原料溶液中の溶媒/ 非溶媒の質量比が 5 0 / 5 0〜 7 0 / 3 0であり、 前記紡糸工程において、 前記ノズルの出口における原料溶液の吐出 速度に対する曳き出し速度の比率である延伸倍率が 2 . 1〜 5 . 0で あり、 前記塩漬処理の温度が 7 0 °〇以上 9 5 °〇以下である、 製造方法。 [請求項 8] 請求項 7に記載の製造方法により製造される中空糸膜。 [請求項 9] 請求項 1〜 6および 8のいずれか 1項に記載の中空糸膜と、 前記中 空糸膜で仕切られた第 1室および第 2室と、 を有する、 中空糸膜モジ ュ _ル。 [請求項 10] 請求項 9に記載の中空糸膜モジュールを備える膜分離装置であって 前記第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 前記第 2液を前記第 1 圧力よりも低い第 2圧力で前記第 2室に流すことで、 前記第 1室内の 前記第 1液に含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して前記第 2室内の前 記第 2液に移行させ、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液である濃 縮液を排出し、 前記第 2室から希釈された前記第 2液である希釈液を 〇 2020/175375 32 卩(:171? 2020 /007080 排出し、 前記中空糸膜の外側の空間が前記第 1室であり、 前記中空糸膜の内 側の空間が前記第 2室であり、 前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 4 IV! 3以下である、 膜分離 装置。 [請求項 1 1 ] 請求項 9に記載の中空糸膜モジュールを用いる膜分離方法であって 前記第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 前記第 2液を前記第 1 圧力よりも低い第 2圧力で前記第 2室に流すことで、 前記第 1室内の 前記第 1液に含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して前記第 2室内の前 記第 2液に移行させ、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液である濃 縮液を排出し、 前記第 2室から希釈された前記第 2液である希釈液を 排出し、 前記中空糸膜の外側の空間が前記第 1室であり、 前記中空糸膜の内 側の空間が前記第 2室であり、 前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 4 IV! 3以下である、 膜分離 方法。 |
発明の名称 :
中空糸膜、 中空糸膜の製造方法、 中空糸膜モジュール、 膜分離装置および 膜分離方法
技術分野
[0001] 本発明は、 中空糸膜、 中空糸膜の製造方法、 中空糸膜モジュール、 膜分離 装置および膜分離方法に関する。
背景技術
[0002] 例えば、 海水から淡水を生産する場合、 RO法が用いられる。 RO法では 、 高圧ポンプによって浸透圧より高い所定の圧 力に昇圧された海水を逆浸透 ( R 0 : Reverse Osmosis) モジュールに供給し、 RO膜を通過させること で、 海水中の塩分等を除去して淡水を取り出す。 残りの海水は、 濃縮塩水 ( ブライン) として R〇モジュールから排出される。
[0003] 近年、 海水淡水化プラントのプライン (濃縮海水) に関する規制が強化さ れ、 ブラインを如何に処理するかを考える必要が ある。 その手法の一つとし て、 ブラインを減容するために、 プラインコンセントレーシヨン (BC) 法 を用いることが検討されている。 BC法は、 このようなプラインや排水の減 容、 Z L D (Zero Liquid Discharge) 、 対象溶液中からの有価物の回収な どへの適用が期待されている。
[0004] BC法は、 RO法よりも必要なエネルギーが少ない方法で る。 BC法と しては、 例えば、 特許文献 1 (特開 201 8- 1 1 1 1号公報) に、 中空糸 膜モジュールの一方の第 1室に対象溶液の一部を流し、 他方の第 2室に対象 溶液の他の一部を流して、 第 1室内の対象溶液を加圧することで、 第 1室内 の対象溶液に含まれる水を中空糸膜を介して 第 2室内に移行させ、 第 1室内 の対象溶液を濃縮し、 第 2室内の対象溶液を希釈する膜分離方法が開 され ている。
[0005] RO法のように、 対象溶液が加圧される中空糸膜の一方側 (高圧側) だけ \¥0 2020/175375 2 卩(:17 2020 /007080
に浸透圧を有する対象溶液を供給する場合 、 中空糸膜の他方側は基本的に浸 透圧を有さない水だけであるため、 中空糸膜の両側間の浸透圧差が大きく、 これにより生じる圧力に打ち勝つ高い圧力で 対象溶液を加圧する必要がある 。 そして、 加圧の圧力は、 中空糸膜の運転圧力 (限界圧力) や使用するボン プの最大圧力によって制限されるため、 [¾〇法では、 対象溶液の浸透圧が中 空糸膜の運転圧力やポンプの最大圧力等を超 えるような高濃度まで、 対象溶 液を濃縮することはできない。
[0006] これに対して、 巳(3法では、 中空糸膜の他方側 (低圧側) にも対象溶液を 流すことで、 中空糸膜の両側間の浸透圧差を低減し、 高圧側の対象溶液への 加圧の圧力を低減することができる。 このため、 巳〇法を用いることで、 対 象溶液の浸透圧が中空糸膜の運転圧力やポン プの最大圧力等を超えるような 高濃度まで、 対象溶液を濃縮することが可能となる。 したがって、 巳(3法に よれば、 ブラインのような高濃度溶液の濃縮 (膜分離) が可能である。
[0007] 一方、 特許文献 2〜 6には、 原料溶液をノズルから空中走行部を経て凝固 液中に吐出して凝固させ、 凝固物を凝固液中から順次曳き出すことによ り、 中空糸膜を得る工程 (紡糸工程) と、 紡糸工程で得られた中空糸膜を水洗し た後に、 熱水処理および塩漬処理の少なくともいずれ かに供する工程 (後処 理工程) と、 を含む中空糸膜の製造方法が開示されている 。
先行技術文献
特許文献
[0008] 特許文献 1 :特開 2 0 1 8 _ 1 1 1 1号公報
特許文献 2 :国際公開第 2 0 1 2 / 0 2 6 3 7 3号
特許文献 3 :国際公開第 2 0 1 3 / 1 1 8 8 5 9号
特許文献 4 :国際公開第 2 0 1 3 / 1 2 5 6 8 1号
特許文献 5 :特開 2 0 1 3 _ 1 9 8 8 9 3号公報
特許文献 6 :国際公開第 2 0 1 7 / 1 2 2 6 7 3号 発明の概要 〇 2020/175375 3 卩(:171? 2020 /007080 発明が解決しようとする課題
[0009] 巳(3法では、 [¾ 0法とは異なり、 中空糸膜の内側と外側の両方に液を積極 的に送り込む必要があるため、 巳(3法に用いられる中空糸膜は、 [¾〇法に用 いられる通常の中空糸膜 ([¾〇膜) より内径 (丨 口) を大きく して、 中空糸 膜の内側の圧力損失を低下させることが望ま しい。 しかし、 本発明者らは、 通常の 8 0膜より内径 (丨 口) が大きい中空糸膜は、 巳(3法による膜分離に 用いられたときに、 中空糸膜の内径が経時的に減少することを見 出した。
[0010] 中空糸膜の内径が経時的に減少すると、 中空糸膜の内側へ通水するための 運転エネルギーが経時的に増大するという問 題がある。 また、 巳(3法を用い た処理は、 他の処理と組み合わせたシステムの一部とし て用いられることが 多いため、 中空糸膜の内径が経時的に減少すると、 システム全体の制御が困 難になるという問題もある。
[001 1 ] したがって、 本発明は、 中空糸膜が巳(3法による膜分離に用いられ とき に、 中空糸膜の内径の経時的な減少を抑制するこ とを目的とする。
課題を解決するための手段
[0012] (1) 中空糸型の半透膜である中空糸膜であって、
所定の膜分離方法に 9 6時間使用された後の前記中空糸膜の内径の 縮率 が、 使用開始時の内径に対して〇. 1 %以上 9 %未満であり、
前記所定の膜分離方法は、 前記中空糸膜と、 前記中空糸膜で仕切られた第 1室および第 2室と、 を有する中空糸膜モジュールを用いて、 第 1液を第 1 圧力で前記第 1室に流し、 第 2液を前記第 1圧力よりも低い第 2圧力で前記 第 2室に流すことで、 前記第 1室内の前記第 1液に含まれる溶媒を前記中空 糸膜を介して前記第 2室内の前記第 2液に移行させ、 前記第 1室から濃縮さ れた前記第 1液である濃縮液を排出し、 前記第 2室から希釈された前記第 2 液である希釈液を排出し、
前記中空糸膜の外側の空間が前記第 1室であり、 前記中空糸膜の内側の空 間が前記第 2室であり、
前記第 1圧力が 5 . 前記第 2圧力が一定であり、 〇 2020/175375 4 卩(:171? 2020 /007080
前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 0 !\/1 3 である、 中空糸膜。
[0013] (2) 前記中空糸膜の内径が 4 0 以上 2 0 0 以下である、 (1
) に記載の中空糸膜。
[0014] (3) 前記中空糸膜のラマン値が 7 2 %以上 9 0 %以下である、 (1) または (2) に記載の中空糸膜。
[0015] (4) 前記中空糸膜の断面内形が三角形状である、 (1) 〜 (3) のい ずれかに記載の中空糸膜。
[0016] (5) セルロース系樹脂、 ポリスルホン系樹脂およびポリアミ ド系樹脂 の少なくともいずれかを含む材料から構成さ れる、 (1) 〜 (4) のいずれ かに記載の中空糸膜。
[0017] (6) 前記中空糸膜と、 前記中空糸膜で仕切られた第 1室および第 2室 と、 を有する中空糸膜モジユールを用いて、 第 1液を第 1圧力で前記第 1室 に流し、 第 2液を前記第 1圧力よりも低い第 2圧力で前記第 2室に流すこと で、 前記第 1室内の前記第 1液に含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して 記 第 2室内の前記第 2液に移行させ、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液で ある濃縮液を排出し、 前記第 2室から希釈された前記第 2液である希釈液を 排出し、 前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 4 IV! 3 以下である、 膜分離 方法に用いられる、 (1) 〜 (5) のいずれかに記載の中空糸膜。
[0018] (7) 原料溶液をノズルから空中走行部を経て凝固 液中に吐出して、 前 記原料溶液の凝固物を前記凝固液中から曳き 出すことにより、 中空糸型の半 透膜である中空糸膜を得る、 紡糸工程と、
前記紡糸工程で得られた中空糸膜を水洗した 後に、 熱水処理および塩漬処 理に供する、 後処理工程と、
を含む中空糸膜の製造方法であって、
前記原料溶液は溶媒および非溶媒を含み、 前記原料溶液中の溶媒/非溶媒 の質量比が 5 0 / 5 0〜 7 0 / 3 0であり、
前記紡糸工程において、 前記ノズルの出口における原料溶液の吐出速 度に 対する曳き出し速度の比率である延伸倍率が 2 . 1〜 5 . 0であり、 〇 2020/175375 5 卩(:171? 2020 /007080
前記塩漬処理の温度が 70°〇以上 95°〇以下である、 製造方法。
[0019] (8) (7) に記載の製造方法により製造される中空糸膜 。
[0020] (9) (1 ) 〜 (6) および (8) のいずれかに記載の中空糸膜と、 前 記中空糸膜で仕切られた第 1室および第 2室と、 を有する、 中空糸膜モジュ _ル。
[0021] (1 0) (9) に記載の中空糸膜モジュールを備える膜分離 装置であつ て、
前記第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 前記第 2液を前記第 1圧力よ りも低い第 2圧力で前記第 2室に流すことで、 前記第 1室内の前記第 1液に 含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して前記第 2室内の前記第 2液に移行させ 、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液である濃縮液を排出し、 前記第 2室 から希釈された前記第 2液である希釈液を排出し、
前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 4 IV! ? 3 以下である、 膜分離装置。
[0022] (1 1 ) (9) に記載の中空糸膜モジュールを用いる膜分離 方法であつ て、
前記第 1液を第 1圧力で前記第 1室に流し、 前記第 2液を前記第 1圧力よ りも低い第 2圧力で前記第 2室に流すことで、 前記第 1室内の前記第 1液に 含まれる溶媒を前記中空糸膜を介して前記第 2室内の前記第 2液に移行させ 、 前記第 1室から濃縮された前記第 1液である濃縮液を排出し、 前記第 2室 から希釈された前記第 2液である希釈液を排出し、
前記第 1液と前記第 2液の浸透圧差が 4 IV! ? 3 以下である、 膜分離方法。 発明の効果
[0023] 本発明によれば、 中空糸膜が巳 ( 3法による膜分離に用いられたときに、 中 空糸膜の内径の経時的な減少を抑制すること ができる。
[0024] 中空糸膜の内径の経時的な減少を抑制するこ とで、 中空糸膜の内側へ通水 するための運転エネルギーの増大を抑えるこ とができる。 また、 巳〇法を用 いた処理が、 他の処理と組み合わせたシステムの一部とし て用いられる場合 において、 中空糸膜の内径の経時的な減少を抑制するこ とで、 システム全体 〇 2020/175375 6 卩(:171? 2020 /007080
の制御が容易になる。
図面の簡単な説明
[0025] [図 1]実施形態 1の膜分離装置を示す模式図である。
[図 2]中空糸膜モジュールを示す模式図である
[図 3]中空糸膜モジュールを示す概略断面図で る。
[図 4]実施例 1、 2および比較例 2の中空糸膜について、 巳(3試験開始からの 経過時間と中空糸膜内の平均流量の変化比率 との関係を示すグラフである。 [図 5]実施例において、 中空糸膜の内径の収縮率の測定に用いた巳( 3試験の概 要を説明するための模式図である。
[図 6]中空糸膜の製造方法の一例を説明するた の模式図である。
[図 7]ラマン値の測定方法を説明するための模 図である。
[図 8]ラマン値の測定方法を説明するための模 図である。
[図 9]ラマン値の測定方法を説明するための模 図である。
[図 10]ラマン分光法による分析結果の一例を示 グラフである。
[図 1 1]中空糸膜の最薄膜厚/最厚膜厚の算出方法 説明するための模式図で ある。
発明を実施するための形態
[0026] 本発明の実施形態について、 図面を参照して説明する。 なお、 図面におい て、 同 _ の参照符号は、 同 _ 部分または相当部分を表すものである。 また、 長さ、 幅、 厚さ、 深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化 のために適宜 変更されており、 実際の寸法関係を表すものではない。
[0027] 以下では、 まず、 本発明の膜分離装置の実施形態について説明 し、 後に、 膜分離装置に用いられる中空糸膜モジュール および中空糸膜について説明す る。
[0028] <膜分離装置 >
図 1 を参照して、 本実施形態の膜分離装置は、 中空糸膜モジュール 1 を備 える。 中空糸膜モジュール 1は、 中空糸膜 1 〇と、 中空糸膜 1 0で仕切られ た第 1室 1 1および第 2室 1 2と、 を有する。 〇 2020/175375 7 卩(:171? 2020 /007080
[0029] 本実施形態の膜分離装置は、 第 1液を第 1圧力で第 1室 1 1 に流し、 第 2 液を第 1圧力よりも低い第 2圧力で第 2室 1 2に流すことで、 第 1室 1 1内 の第 1液に含まれる溶媒を中空糸膜を介して第 2室 1 2内の第 2液に移行さ せ、 第 1室 1 1から濃縮液 (濃縮された第 1液) を排出し、 第 2室 1 2から 希釈液 (希釈された第 2液) を排出する。 このようにして、 第 1液を濃縮す ると共に、 第 2液を希釈することができる。
[0030] なお、 図 1では簡略化のために中空糸膜 1 0が平膜のように描かれている が、 本実施形態で用いられる中空糸膜は、 後述する図 2および図 3に示され るような中空糸型の半透膜 (中空糸膜 1 0) である。 中空糸膜は、 スパイラ ル型の半透膜などに比べて、 膜モジュールの容積当たりの膜面積を大きく す ることができ、 膜モジュールの容積当たりの膜透過流量を高 めることができ る点で有利である。 中空糸膜モジュールは、 複数の中空糸膜を含み、 複数の 中空糸膜の各々は両端に開口部を有すること が好ましい。
[0031] 中空糸膜モジュール 1 において、 第 1室 1 1は中空糸膜の外側であり、 第
2室 1 2は中空糸膜の内側であることが好ましい。 すなわち、 中空糸膜の外 側の溶液が内側の溶液よりも加圧されること が好ましい。 中空糸膜の内側 ( 中空部) を流れる溶液を加圧しても、 圧力損失が大きくなり加圧が十分に行 われ難い場合があるほか、 中空糸膜自体の構造が、 外圧に対して構造を保持 しやすく、 高い内圧を付与すると膜が破裂する可能性が あるからである。 し かしながら、 圧力損失が小さい、 つまり大きな内径を持ち、 内圧に対する耐 圧が大きい中空糸膜を使用する場合は、 第 1室 1 1 を中空糸膜の内側として も、 特に問題はない。 ただし、 上述の中空糸膜の内径収縮率を測定するとき に用いられる中空糸膜モジュールは、 第 1室 1 1が中空糸膜の外側であり、 第 2室 1 2が中空糸膜の内側である。
[0032] 第 1液と第 2液の浸透圧差は、 以下である。 第 1液と第 2液の浸 透圧差は、 下記式で示される。
[浸透圧差] = [第 1液の浸透圧] 一 [第 2液の浸透圧] 上記式において、 「第 1液の浸透圧」 とは、 中空糸膜モジュール 1の第 1 〇 2020/175375 8 卩(:171? 2020 /007080
室 1 1 に供給される直前の第 1液の浸透圧であり、 「第 2液の浸透圧」 とは 、 中空糸膜モジュール 1の第 2室 1 2に供給される直前の第 2液の浸透圧で ある。
[0033] 上記浸透圧差が 4 IV! 3以下であるとの規定は、 浸透圧差が負 (マイナス ) の値である場合を含むことを意味する。 浸透圧差は、 好ましくは 3 . 5 IV! 3以下である。
[0034] 第 1室 1 1 に流される第 1液の所定の圧力 (第 1圧力) は、 特に制限され ないが、 好ましくは 3〜 1 0 1\/1 3であり、 より好ましくは 5 ~ 8 . 5 1\/1 ^である。
[0035] なお、 上記 「浸透圧差」 が下記式で示される 「第 1液と第 2液の圧力差」 よりも小さければ、 理論上、 巳〇法による膜分離は実施可能である。 「第 1 液と第 2液の圧力差」 に対する 「浸透圧差」 の比率は、 好ましくは 5 0 %以 下であり、 より好ましくは 3 0 %以下である。 なお、 「5 0 %以下」 および 「3 0 %以下」 との規定は、 浸透圧差の比率が負 (マイナス) の値である場 合を含む。
[第 1液と第 2液の圧力差] = [第 1液の圧力] — [第 2液の圧力]
[0036] このように、 プラインコンセントレーシヨン (巳〇) においては、 [¾〇法 のように対象液 (高浸透圧液) と淡水との間の高い浸透圧差に逆らって逆浸 透を起こさせるための高い圧力が必要なく、 比較的低圧の加圧によって、 対 象液の膜分離を実施することができる (第 1液を濃縮し、 第 2液を希釈する ことができる) 。 また、 巳〇を用いることで、 [¾〇法よりも高濃度の対象液 をさらに濃縮することも可能となる。
[0037] なお、 浸透圧差は 0 1\/1 3であってもよい。 また、 第 1液と第 2液は同じ 液であってもよく、 異なる液であってもよい。 また、 第 1液と第 2液の濃度 は、 有効な浸透圧を示す最低濃度以上飽和濃度以 下である。 好ましくは 3 .
5 %以上飽和濃度以下であり、 より好ましくは 5 %以上飽和濃度以下である
[0038] 膜分離装置は、 圧力低下装置として、 例えば、 高圧ポンプ 3 1 によって所 〇 2020/175375 9 卩(:171? 2020 /007080
定の圧力に昇圧された対象液を中空糸膜モ ジュール 1の第 1室 1 1 と第 2室 1 2とに分けて流すことのできる分流弁 4などを備えていてもよい (図 1)
。 なお、 分流弁 4 (圧力低下装置) は、 第 2室 1 2に流される対象液を所定 の圧力より低い圧力に減圧する機能を有して いる。
[0039] このような圧力低下装置を用いることで、 例えば、 第 1液と第 2液が同じ 液 (対象液) である場合に、 同じ流路から供給される対象液の一部を第 1液 として所定の圧力で第 1室 1 1 に供給しつつ、 対象液の他の一部を第 2液と して、 圧力低下装置を通過させることによって、 所定の圧力より低い圧力で 第 2室 1 2に流すことができ、 該圧力低下装置の上流側の対象液の流路が 1 本で済むという利点がある。
[0040] 第 1液および第 2液は、 浸透圧を有する液体である。 当該液体は、 溶質が 溶媒に溶解した溶液であってもよく、 不溶性物質が分散した分散液であって もよい。 溶質としては、 無機または有機の塩類、 酸、 アルカリ、 アルコール 、 糖類、 蛋白質などの可溶性物質が含まれる。 溶媒としては、 これらの溶質 または不溶性物質を溶解または分散させて浸 透圧を示す溶液を形成できる物 質が挙げられる。 このような溶媒は、 典型的には水であるが、 アルコールな どの水以外の液体であってもよい。 第 1液および第 2液としては、 例えば、 海水、 河川水、 汽水、 排水、 有機溶剤、 食品、 飲料などが挙げられる。 排水 としては、 例えば、 工業排水、 生活排水、 油田またはガス田の排水 (随伴水 ) などが挙げられる。
[0041 ] また、 本実施形態の膜分離装置が造水システムに用 いられる場合、 膜分離 装置に供給される第 1液および第 2液は、 逆浸透工程で排出される濃縮塩水 (ブライン) であってもよい。
[0042] なお、 膜分離装置は、 図 1 に示されるように 1つの中空糸膜モジュール 1 を用いた 1段の装置であってもよく、 複数の中空糸膜モジュールを用いた多 段の装置であってもよい。
[0043] また、 第 1液および第 2液は、 液中に含まれる微粒子、 微生物等を除去す るための前処理が施されたものであってもよ い。 前処理としては、 海水淡水 化技術に用いられる種々公知の前処理を実施 することができ、 例えば、 ナノ ろ過膜 (N F膜: Nanof i Itration Membrane) 、 限外ろ過膜 (U F膜: Ultra filtration Membrane) 、 精密ろ過膜 (M F膜: Microf i Itration Membrane ) 等を用いたろ過、 次亜塩素酸ナトリウムの添加、 凝集剤添加などが挙げら れる。
[0044] 例えば、 図 1 に示される膜分離装置において、 高圧ポンプ 3 1の上流側に は、 図示しない前処理装置を備えていてもよい。 前処理装置は、 ポンプ 30 で取水した原液 (対象液) を砂濾過や U F膜、 MF膜、 力一トリッジフィル 夕一などによって処理する装置である。 前処理装置により、 原液から濁質を 除去し、 中空糸膜モジュール 1等を含む膜分離装置に適合する水質の原液 得ることができる。 必要により、 p Hの調整手段や塩素添加装置などを付け 加えることも可能である。
[0045] <中空糸膜モジュール >
以下、 本実施形態に用いられる中空糸膜モジュール の一例について説明す る。
[0046] 図 2および図 3を参照して、 中空糸膜モジュール 1は、 中心に配置された 複数の孔 2 1 を有する芯管 (多孔分配管) 2と、 その周囲に配置された複数 の中空糸膜 1 〇と、 芯管 2および複数の中空糸膜 1 0をそれらの両端で固定 する 2つの樹脂壁 6 1 とを備える。 なお、 複数の中空糸膜 1 0はその両端に 開口部を有している。 これらの部材を含む中空糸膜エレメントは、 2つの保 持部材 62に〇 _リング 62 aが介在した液密状態で保持され、 圧力容器 7 内に収容されている。
[0047] また、 中空糸膜モジュール 1は、 4つのポート (第 1液供給口 1 00 a、 第 1液排出口 1 00 b、 第 2液供給口 1 01 aおよび第 2液排出口 1 01 b ) を有している。 第 1液供給口 1 00 aは、 芯管 2の内部に連通し、 さらに 芯管 2の孔 2 1 を介して中空糸膜 1 0の外側 1 00に連通している。 第 1液 排出口 1 00 bは、 中空糸膜 1 0の外側 1 00に連通している。 第 2液供給 口 1 01 aおよび第 2液排出口 1 01 bは、 中空糸膜 1 0の開口部 (第 1開 〇 2020/175375 1 1 卩(:171? 2020 /007080
口部 1 0 3および第 2開口部 1 0 13) を介して複数の中空糸膜 1 0の内部に 連通している。
[0048] 第 1液は、 第 1液供給口 1 0 0 3を介して、 芯管 2内に供給され、 孔 2 1 を介して中空糸膜 1 〇の外側 1 〇〇に流される。 中空糸膜 1 0の外側 1 0 0 を通過した第 1液は、 第 1液排出口 1 〇〇匕から取り出される。
[0049] 第 2液は、 第 2液供給口 1 0 1 3を介して、 中空糸膜 1 0の第 1開口部 1
0 3より中空糸膜 1 0の内部 (中空部) に供給される。 中空糸膜 1 0の内部 を流れて通過した第 2液は、 中空糸膜 1 0の第 2開口部 1 0匕を介して、 第 2液排出口 1 0 1 13から取り出される。
[0050] なお、 本実施形態では、 第 1液を中空糸膜 1 0の外側 1 〇〇に流すと共に 第 2液を中空糸膜 1 0の中空部内に流す場合について説明した。 中空糸膜の 内側 (中空部) を流れる流体 (第 1液) を加圧する場合、 圧力損失が大きく 、 第 1液を十分に加圧することが難しいため、 通常は、 上記のように第 1液 を中空糸膜 1 〇の外側 1 0 0に流すことが好ましい。
[0051 ] ただし、 第 1液中に含まれる溶媒が、 中空糸膜 1 〇を透過して第 2液中に 移動すればよいため、 第 1液を中空糸膜 1 〇の外側 1 〇〇に流すと共に第 2 液を中空糸膜 1 〇の中空部内に流してもよく、 反対に、 第 2液を中空糸膜 1 0の外側 1 0 0に流すと共に第 1液を中空糸膜 1 0の中空部内に流してもよ い。 言い換えれば、 中空糸膜モジュール 1 において、 中空糸膜 1 0の内部が 第 1室であり中空糸膜 1 〇の外部が第 2室であってもよく、 反対に、 中空糸 膜 1 0の外部が第 1室であり中空糸膜 1 0の内部が第 2室であってもよい。
[0052] 芯管 2は、 複数の孔 2 1 を有する管状体であれば特に限定されない。 孔 2
1は、 放射状に各方向に設けられていることが好ま しい。 また、 芯管 2は、 中空糸膜モジュール 1の略中心部に配置されていることが好まし 。
[0053] 図 3において、 第 1液排出口 1 0 0 第 2液供 給口 1 0 1 3および第 2液排出口 1 0 1 匕は、 壁部材 1 3 , 1 4に設けられ ているが、 このような形態に限定されず適宜変更するこ とができる。 例えば 、 第 1液供給口 1 0 0 3、 第 1液排出口 1 0 0 13、 第 2液供給口 1 0 1 3お 〇 2020/175375 12 卩(:171? 2020 /007080
よび第 2液排出口 1 0 1 匕の少なくともいずれかが、 圧力容器 7の外周部に 設けられていてもよい。
[0054] 中空糸膜モジュールの形態としては、 特に限定されないが、 図 2および図
3に示されるような中空糸膜をストレートに 置したモジュールや、 中空糸 膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジ ュールなどが挙げられる。
[0055] <中空糸膜 >
本実施形態の中空糸膜は、 中空糸型の半透膜である。
[0056] (中空糸膜の内径の収縮率)
本実施形態の中空糸膜は、 後述する所定の膜分離方法に 9 6時間使用され た後の中空糸膜の内径の収縮率 (減少率) が、 使用開始時の内径に対して 0 . 1 %以上 9 %未満である。
[0057] 所定の膜分離方法は、 中空糸膜と、 中空糸膜で仕切られた第 1室および第
2室と、 を有する中空糸膜モジュールを用いて、 第 1液を第 1圧力で第 1室 に流し、 第 2液を第 1圧力よりも低い第 2圧力で第 2室に流すことで、 第 1 室内の第 1液に含まれる溶媒を中空糸膜を介して第 2室内の第 2液に移行さ せ、 第 1室から濃縮された第 1液である濃縮液を排出し、 第 2室から希釈さ れた第 2液である希釈液を排出する。
中空糸膜の外側の空間が第 1室であり、 中空糸膜の内側の空間が第 2室で ある。
第 1圧力 (外圧) が 5 . 第 2圧力 (内圧) が一定 (中空 糸膜内側の圧力損失が一定) である。
第 1液と第 2液の浸透圧差は 0 1\/1 3 である。
[0058] 中空糸膜を上記の膜分離方法に継続して使用 し、 使用開始から 9 6時間経 過後に、 中空糸膜内側の流入口における流量と流出口 における流量とを測定 し、 中空糸膜内側の流入口における流量と流出口 における流量との平均値 ( 中空糸膜内平均流量) を算出する。 また、 この 9 6時間経過後の中空糸膜内 平均流量について、 使用開始時の中空糸膜内平均流量からの減少 量の使用開 始時の中空糸膜内平均流量に対する比率 (中空糸膜内平均流量の減少率) を 〇 2020/175375 13 卩(:171? 2020 /007080
求める。
[0059] 下記の より、 流量は中空糸膜の内径の 4乗に比例する ため、 その関係を用いて、 中空糸膜内側の平均流量の減少率から、 中空糸膜 内径の収縮率を算出することができる。 なお、 中空糸膜内側の圧力損失が一 定であるため、 圧力損失は考慮する必要がない。
[0060] [数 1 ]
¢1 _ 128 X /X X <3
(¾ 6[1-卩01 361^丨丨6式)
(1 X 兀 <1 I 4
[0061 ] 上記式中、 は圧力損失であり、 åは微小区間距離である。 は流体 (第
2液) の粘性係数であり、 0は中空糸膜内平均流量であり、 は中空糸膜の 内径である。
[0062] 中空糸膜の内径は、 好ましくは 4 0 以上 2 0 0 以下であり、 より 好ましくは 7 5 〇!以上 1 8 0 以下である。
[0063] 中空糸膜 (膜全体) の厚みは、 好ましくは 4 0〜 2 0 0 であり、 より 好ましくは 5 0〜 1 7 0 である。 なお、 膜厚は (外径一内径) / 2で算 出できる。 また、 中空糸膜の中空率は、 好ましくは 1 〇〜 5 0 %であり、 よ り好ましくは 1 2〜 4 0 %である。 なお、 中空率は、 中空糸膜の横断面にお ける中空部の面積の割合であり、 「中空部断面積/ (膜部断面積十中空部断 面積) X 1 0 0 (%) 」 で表される。
[0064] 中空糸膜の平均孔径 (膜全体の微細孔の平均孔径) は、 2 n m以下である ことが好ましい。 平均孔径の測定方法としては、 例えば、 示差走査熱量測定 (〇3〇 法が挙げられる。
[0065] (ラマン値)
本発明において、 中空糸膜のラマン値とは、 水で膨潤した状態の前記中空 糸膜の横断面の膜厚方向の複数の点に対して 、 ラマン分光法により取得され る複数のラマンスぺクトルの各々における最 大ピークのピーク強度において 、 ピーク強度の最大値に対する最小値の比率を 意味する。 なお、 ラマン値は 、 中空糸膜の膜厚方向の密度分布の指標となる 値であり、 ラマン値が高い程 〇 2020/175375 14 卩(:171? 2020 /007080
、 膜厚方向の密度分布の均一性が高いことを示 す。
[0066] 中空糸膜のラマン値は、 好ましくは 7 2 %以上 9 0 %以下である。 ラマン 値がこの範囲である場合、 中空糸膜が巳(3法による膜分離に用いられ とき に、 中空糸膜の内径の経時的な減少を抑制する効 果をより確実に得ることが できる。
[0067] ラマン分光法 (顕微ラマン分光装置) は、 測定試料に対して、 スポッ ト状 に集光したレーザー光を照射することにより 発生するラマン散乱光を検出し 、 分光してラマンスペクトルを得る方法 (装置) である (図 7参照) 。 ラマ ンスペクトルは、 試料に対して固有であり、 ある試料に対するラマンスぺク トルにおける最大ピーク (試料の主構成材料に固有のピーク) の強度は、 試 料の構成材料の密度に相関する。 したがって、 このようなピーク強度を測定 することで、 試料中の構成材料の密度の分布状態を解析す ることが可能であ る。
[0068] なお、 試料の構成材料の密度分布状態を精度よく測 定するため、 レーザー ラマン顕微鏡の対物レンズとして、 空間分解能が 2 以下であるような対 物レンズを用いる。 測定時におけるレーザーラマン顕微鏡のレー ザー光源の 強度は、 測定中に試料の劣化が起きない程度に弱く、 数秒〜数十分の露光時 間でラマンスペクトルが得られる範囲で任意 に設定することができる。
[0069] 具体的には、 まず、 中空糸膜を氷包埋し、 ミクロトームで断面を作製する 。 作製した断面試料を水に浸潰し (水に膨潤させた状態にし) 、 断面が水面 からわずかに出た状態にする (図 7参照) 。 その断面について、 顕微ラマン 分光装置 (レーザーラマン顕微鏡) を用いて、 マッピング (スポッ ト状に集 光したレーザー光を走査することで、 設定した範囲のラマンスぺクトルを測 定する手法) 又はイメージング測定 (ライン状に集光したレーザー光を走査 することで、 設定した範囲のラマンスペクトルを測定する 手法) により (参 考文献: 日本分光学会 (2009、 第 1刷) 『顕微分光法 ナノ ·マイクロの世界 を見る分光法』 (分光測定入門シリーズ第 10巻) 講談社サイエンティフィク ) 、 ラマンスペクトル (ラマンスペクトルにおける最大ピークのピ ーク強度 〇 2020/175375 15 卩(:171? 2020 /007080
) を測定する。 測定は、 中空糸膜の断面における膜厚方向の複数の箇 所につ いて実施される。
[0070] ラマン値の算出のために測定されるラマンス ぺクトルの各々における最大 ピークは、 例えば、 波長 2 9 3 5〇 - 1 付近の C H (炭素一水素結合) の伸 縮振動に相当するピークなど、 最も強度の高いピークである (図 9参照) 。 ピーク強度は、 選択したピークのピーク面積またはピーク高 さから算出する ことができる。
[0071 ] 実際の測定では、 まず、 中空糸膜の断面を顕微鏡で観察しながら、 中空糸 膜の膜部分 (図 8の実線の部分) を含む膜厚方向の所定範囲 (図 8の破線矢 印の部分) について、 1 の間隔で、 内側から外側 (図 8の左側から右側 ) に向かって、 あるいは外側から内側 (図 8の右側から左側) に向かって、 複数のラマンスぺクトルの各々における最大 ピーク (波長 2 9 3 5〇 付 近のピーク) のピーク強度が測定される。 その後で、 測定された複数のピー ク強度のデータから、 中空糸の膜部分 (図 8の実線矢印の部分) に関するデ —夕のみが取り出される。
[0072] 例えば、 まず、 測定された全てのピーク強度のうちの最大値 を 1 0 0とし て、 他のピーク強度の比率 (ピーク強度比) が算出される。 図 1 0に、 ピー ク強度比のグラフの一例を示す。 図 1 0において、 X軸は膜断面における膜 厚方向 (図 8の矢印の方向) の位置を示し、 丫軸はピーク強度比を示す。 な お、 図 1 0に示されるピーク強度比は、 中空糸膜を構成するポリマー (〇丁 八) に由来する 付近のピーク (図 9参照) の強度比であり、 そのピーク強度比はポリマー密度と相関する 。
[0073] ここで、 図 1 0において、 ピーク強度比の最大値 (1 0 0 %) を含み、 1 間隔で測定された隣の点同士の値 (ピーク強度比) の変化率が 5 % (絶 対値) 以内の部分が膜部分 (図 8の実線矢印で示される部分) であり、 5 % を超える点から外側 (図 1 〇で点ハッチングされた部分) は膜以外の部分で あると判断して、 膜以外の部分のデータは削除される。
[0074] このようにして得られた膜部分のピーク強度 (ピーク強度比) のうちの最 〇 2020/175375 16 卩(:171? 2020 /007080
小値を決定し、 ピーク強度の最大値に対する最小値の比率 (最小値のピーク 強度比:図 1 〇参照) がラマン値として求められる。
[0075] (断面内形)
中空糸膜の断面内形は、 好ましくは三角形状である。 この場合、 長期使用 における中空糸膜の潰れが抑制され、 中空糸膜の強度が高くなるという利点 がある。 三角形状とは、 三角形に近い形状であることを意味し、 おにぎり形 (おむすび形) やルーローの三角形のような辺が直線でない ものや角のない 形も含む概念である (特許文献 6 :国際公開第 2 0 1 7 / 1 2 2 6 7 3号参 照) 。
[0076] なお、 三角形の辺付近の膜厚 (最厚膜厚) に対する三角形の頂点付近の膜 厚 (最薄膜厚) の比率 (最薄膜厚/最厚膜厚) は、 好ましくは〇. 6 5〜〇 . 9 0である。 当該比率が〇. 6 5未満の場合は、 最薄膜厚が薄すぎて変形 しやすく (潰れ易く) なる可能性がある。 一方、 当該比率が〇. 9 0より大 きい場合は、 膜断面の内形が円形に近づくため長期使用に おける潰れを抑制 する効果が得られ難くなる。
[0077] 最薄膜厚/最厚膜厚 (最厚膜厚に対する最薄膜厚の比率) の算出方法につ いて、 中空糸膜の断面を表わす図 1 1 を用いて説明する。 図 1 1の中空糸膜 の断面において三角形状の三つの頂点をそれ ぞれ 3、 13、 〇とし、 3点を直 線で結んだ三角形の三つの辺を 3 13、 13 0、 〇 3とする。 点 3から辺 13〇に 向かって垂線 3 を引き、 垂線 3 の延長上での中空糸膜断面外周との交点 を 9、 および」 とする。 点 13および点〇からもそれぞれ辺〇 3、 辺 13 0に垂 線を引き、 図 1 1 に示されるように点㊀、 点 [1、 点 1<、 点 1"、 点丨、 点丨 を 定める。 なお、 図 1 1 において、 中空糸膜の断面外形は略円形であり、 中空 部は (三角) おむすび形である。 図 1 1 に示すように最薄膜厚 3 」、 匕 1<、
〇 丨 と、 それぞれに向かい合う最厚膜厚 ¢1 9、 e h . f i とについて、 中空 糸膜の断面写真によって測定し、 その測定値から最薄膜厚/最厚膜厚の比 ( 3つの値の各々、 またはそれらの平均値) を算出することができる。
[0078] (材料) 〇 2020/175375 17 卩(:171? 2020 /007080
中空糸膜を構成する材料としては、 特に限定されないが、 セルロース系樹 月旨、 ポリスルホン系樹脂およびポリアミ ド系樹脂の少なくともいずれかを含 む材料であることが好ましく、 セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂 の少なくともいずれかを含む材料であること がより好ましい。
[0079] セルロース系樹脂は、 好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。 酢酸セル 口ース系樹脂は、 殺菌剤である塩素に対する耐性があり、 微生物の増殖を抑 制できる特徴を有している。 酢酸セルロース系樹脂は、 好ましくは酢酸セル 口ースであり、 耐久性の点から、 より好ましくは三酢酸セルロースである。
[0080] ポリスルホン系樹脂は、 好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂であ る。
ポリエーテルスルホン系樹脂は、 好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホ ンである。
[0081 ] 中空糸膜としては、 単層構造の膜が挙げられる。 ここで、 中空糸膜の膜厚 方向の構造均質性が高いことが好ましい。 中空糸膜の膜厚方向の構造均質性 の指標としては、 例えば、 上述した中空糸膜のラマン値が所定値以上の 範囲 にあることや、 倍率 5 0 0 0倍の走査型電子顕微鏡 (3巳 IV!) を用いて中空 糸膜の横断面を膜厚方向に向かって連続的に 観察した際に構造の変化が少な いことが挙げられる。
[0082] <中空糸膜の製造方法 >
本発明は、 上記の中空糸膜を得るための中空糸膜の製造 方法にも関する。
[0083] 図 6を参照して、 本実施形態の中空糸膜の製造方法は、 少なくとも紡糸エ 程と後処理工程とを含む。
[0084] 〔紡糸工程〕
紡糸工程では、 原料溶液 8 0をノズル 8 1から空中走行部を経て凝固液 9 1中に吐出して、 原料溶液の凝固物を凝固液中から曳き出すこ とにより、 中 空糸型の半透膜である中空糸膜が得られる。 中空糸膜の曳き出し等は、 例え ば、 口ーラー 8 2 , 8 3 , 8 4 , 8 5により行われる。 なお、 曳き出し速度 は、 口ーラー 8 3の表面速度である。
[0085] 原料溶液は、 中空糸膜の原材料 (上述の中空糸膜を構成する材料) と、 溶 〇 2020/175375 18 卩(:171? 2020 /007080
媒および非溶媒と、 を含む。 原料溶液中の溶媒/非溶媒の質量比は、 好まし くは 5 0 / 5 0〜 7 0 / 3 0である。 なお、 溶媒は、 原材料を溶解可能な液 体であり、 非溶媒は、 原材料が溶解しない液体である。
[0086] 凝固液の濃度 〔 (3 +水以外の N 3) /凝固液の質量比率〕 は、 好ましく は 1 0 %〜 6 0 %であり、 より好ましくは 2 0 %〜 5 0 %である。 また、 凝 固液の温度は、 好ましくは 1 〇〜 3 0 ° 〇であり、 より好ましくは 1 〇〜 2 5 °0である。
[0087] 紡糸工程において、 延伸倍率 (ドラフト比) は、 2 . 1〜 5 . 0であり、 好ましくは 2 . 2〜 4 . 0である。 なお、 延伸倍率は、 ノズルの出口におけ る原料溶液の吐出速度 (ノズルから吐出される原料溶液の線速度) (V。) に 対する曳き出し速度 (曳き出される原料溶液の凝固物の線速度) (V の比 率 ハ〇) である。 なお、 特許文献 2〜 6には、 紡糸工程における延伸 倍率は記載されていない。
[0088] 〔後処理工程〕
後処理工程では、 紡糸工程で得られた中空糸膜 8 6が水洗された後に、 熱 水処理および塩漬処理に供される。
[0089] (熱水処理)
熱水処理では、 中空糸膜 8 6が熱水 9 2に浸潰される。 熱水処理における 熱水 9 2の温度 (熱水処理の温度) は、 好ましくは 8 6 °〇以上 1 0 0 °〇未満 であり、 より好ましくは 9 0〜 9 9 . 5 °〇であり、 さらに好ましくは 9 5〜
9 9 ° 〇である。 このように、 従来よりも高い温度での熱水処理を行うこと に より、 中空糸膜の緻密化が進みやすくなるため、 中空糸膜の内径の経時的な 減少を抑制することができる。 なお、 熱水処理は、 無緊張状態の中空糸膜 8 6に対して行われることが好ましい。
[0090] 熱水処理の時間は、 好ましくは 5〜 1 2 0分間であり、 より好ましくは 1 〇〜 4 0分間である。
[0091 ] (塩漬処理)
塩漬処理では、 熱水処理後の中空糸膜 8 6が塩水 9 3に浸潰される。 塩水 〇 2020/175375 19 卩(:171? 2020 /007080
9 3は、 塩化物イオンを含む水溶液である。 塩水 9 3としては、 例えば、 塩 化ナトリウム (食塩) 、 塩化カリウム、 塩化マグネシウム、 塩化カルシウム 、 塩化リチウム等の水溶液が挙げられる。 塩水 9 3の濃度は、 好ましくは 0 . 5〜 2 0質量%であり、 より好ましくは 1 . 〇〜 1 0質量%である。 塩水 9 3の温度 (塩漬処理の温度) は、 好ましくは 7 0 °〇以上 9 5 °〇以下であり 、 より好ましくは 7 5 °〇以上 9 0 °〇以下である。
[0092] 塩漬処理の時間は、 好ましくは 1〜 6 0分間であり、 より好ましくは 5〜
3 0分間である。 なお、 塩漬処理は、 無緊張状態の中空糸膜 8 6に対して行 われることが好ましい。
[0093] 中空糸膜の I 口収縮率を抑える効果は、 中空糸膜の膜厚方向の構造均質性 を高めることにより達成されると考えられる 。 その主要な具体的手段として 、 原料溶液の 比 (溶媒/非溶媒比) 、 ドラフト比、 塩漬処理 (およ び熱水処理) の条件の変更が挙げられる。 従来よりも原料溶液の 3 / 3比 を小さくする (N 3の割合を高める) ことにより脱溶媒速度が遅くなり、 析 出したポリマーの核成長が均一になることで 膜のポリマー密度が膜厚方向で 均質化すると考えられる。 また、 ドラフト比を従来よりも大きくすることに より膜を構成するポリマー分子の一部が配向 し、 膜の強度が高まると考えら れる。 また、 熱水処理に続く塩漬処理によって、 膜中より脱水されることで 細孔が収縮し、 ポリマー密度の均質化と高強度化が進むと考 えられる。
[0094] <膜分離方法 >
本発明は、 上記の中空糸膜モジュール 1 を用いる膜分離方法にも関する。 本実施形態の膜分離方法により、 第 1液から濃縮液 (濃縮された第 1液) が 得られると共に、 第 2液から希釈液 (希釈された第 2液) が得られる。
[0095] 本実施形態の膜分離方法では、 中空糸膜モジュール 1 に対して、 第 1液を 所定の圧力で第 1室 1 1 に流し、 第 2液を所定の圧力よりも低い圧力で第 2 室 1 2に流すことで、 第 1室 1 1内の第 1液に含まれる溶媒を中空糸膜を介 して第 2室 1 2内の第 2液に移行させ、 第 1室 1 1から濃縮液を排出し、 第 2室 1 2から希釈液を排出する。 ここで、 第 1液と第 2液の浸透圧差は 4 !\/1 〇 2020/175375 20 卩(:171? 2020 /007080
9 3以下である。
[0096] 尚、 本実施形態の膜分離方法において、 第 1室 1 1は中空糸膜の外側であ り、 第 2室 1 2は中空糸膜の内側であることが好ましいが 第 1室 1 1が中 空糸膜の内側であり、 第 2室 1 2が中空糸膜の外側であってもよい。
[0097] また、 本発明は、 上記膜分離方法に用いられる上述の中空糸膜 にも関する
実施例
[0098] 以下、 実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する が、 本発明はこれらに 限定されるものではない。
[0099] 〔実施例 1〕
実施形態で説明した中空糸膜の製造方法によ り、 以下の条件で実施例 1の 中空糸膜が製造された。
[0100] [原料溶液の組成]
ポリマー:三酢酸セルロース (〇 7 A) (6 %粘度: 9 5 01 3 3、 ダ イセル社製) ただし、 比較例 3のみ低粘度の <3丁八 ( 6 %粘度: 5 6 8 3、 ダイセル社製)
ポリマー含有量:表 1 に示すとおり
溶媒: 1\1—メチルピロリ ドン ( IV! )
非溶媒:エチレングリコール (巳〇)
(溶媒/非溶媒 に示すとおり)
安息香酸:表 1 に示すとおり
[0101 ] なお、 上記の〇丁八の 6 %粘度は以下のようにして測定された値であ 。
混合溶剤 [塩化メチレン: メタノール = 9 1 : 9 (重量比) ] 6 1 . 6 7 9を三角フラスコに採取し、 1 0 5 ± 5 ° 〇で 2時間乾燥した試料 3 . 0 0 9 を投入し、 密栓した。 その後、 横振り振盪機で約 1 . 5時間振盪し、 さらに 回転振盪機で約 1時間振盪して、 完全に溶解させた。 次に、 得られた 6 1 / V〇 I %溶液の温度を恒温槽で 2 5 ± 1 °〇に調整し、 オストワルト粘度計 を用いて計時用標線間の流下時間を測定し、 下記式から粘度を求めた。 〇 2020/175375 21 卩(:171? 2020 /007080
6%粘度 (0! 3 3) =流下時間 (360) /粘度計係数
なお、 粘度計係数は、 粘度計校正用標準液を用いて、 上記と同様の操作で 流下時間 (360) を測定し、 下記式から求めた。
粘度計係数 = [標準液絶対粘度 (01 ? 3 3) X溶液の密度 ( 1. 235 9/〇 ^ 3 ) ] / [標準液の密度 (9/〇 01 3 ) X標準液の流下時間 (360 ) ]
[0102] [紡糸工程の条件]
原料溶液の溶解温度: 1 85 ° 0
原料溶液の吐出温度: 1 5 1 ° 〇
吐出用のノズル: 3分割ノズル (ノズルの断面積: 0. 05〇1〇1 2 )
〔ノズルの断面積とは、 ノズルの先端部分における原料溶液吐出孔の 断 面積である。 〕
空中走行部 ( 〇) 滞留時間: 〇. 05秒
〔 八〇滞留時間 = 〇長/ { (吐出線速度十曳き出し速度) /2}
]
紡糸工程の延伸倍率:表 1 に示すとおり
凝固液の組成
溶媒 ( 3) : IV!
水以外の非溶媒 (N3) : 巳〇
水
凝固液の濃度 〔3 +水以外の 3) /凝固液の質量比率〕 :表 1 に示す とおり。
凝固液中の溶媒/水以外の非溶媒 (3/水以外の N3) の質量比:表 1 に示す原料溶液の 3 / 3と同じ。
凝固液の温度:表 1 に示すとおり
曳き出し速度: 40〇!/分
[0103] なお、 吐出用のノズルとして 3分割ノズルを用いることにより、 中空糸膜 の断面内形が図 1 1 に示されるようなおにぎり形である中空糸膜 が得られた 〇 2020/175375 22 卩(:171? 2020 /007080
[0104] [後処理工程の条件]
熱水処理の条件:表 1 に示すとおり
塩漬 (塩アニール) 処理の条件:表 1 に示すとおり
[0105] 〔実施例 2〕
表 1 に示されるように、 3比が変更された。 それ以外は実施例 1 と 同様にして、 実施例 2の中空糸膜が製造された。
[0106] 〔実施例 3〜 6〕
表 1 に示されるように、 塩漬処理の条件 (食塩水濃度、 温度) が変更され た。 それ以外は実施例 2と同様にして、 実施例 3〜 6の中空糸膜が製造され た。
[0107] 〔実施例 7〕
表 1 に示されるように、 比が変更された。 それ以外は実施例 2と 同様にして、 実施例 7の中空糸膜が製造された。
[0108] 〔実施例 8〕
表 1 に示されるように、 紡糸工程の延伸倍率 ( 〇滞留時間) が変更され た。 それ以外は実施例 2と同様にして、 実施例 8の中空糸膜が製造された。 なお、 延伸倍率の変更は、 ノズル開口部の断面積を〇. 0 5〇1〇1 2 から 0 . 0 7 2 に変更する (ノズルの外径およびスリツ ト幅を大きくすることにより
、 ノズルの開口部 (原料溶液吐出孔) の断面積を大きくする) ことによって 行った。
[0109] 〔実施例 9〕
表 1 に示されるように、 原料溶液の 凝固条件、 熱水処理条件 および塩漬処理条件が変更された。 それ以外は、 実施例 8と同様にして、 実 施例 9の中空糸膜が製造された。
[01 10] 〔実施例 1 〇〕
表 1 に示されるように、 原料溶液のポリマー濃度、 凝固条件が変更された 。 それ以外は、 実施例 9と同様にして、 実施例 1 0の中空糸膜が製造された 〇 2020/175375 23 卩(:171? 2020 /007080
[0111] 〔比較例 1〕
塩漬処理が行われなかった点以外は実施例 1 と同様にして、 比較例 1の中 空糸膜が製造された。
[0112] 〔比較例 2〕
表 1 に示されるように、 紡糸工程の延伸倍率が変更された。 それ以外は実 施例 1 と同様にして、 比較例 2の中空糸膜が製造された。 なお、 延伸倍率の 変更は、 ノズルの断面積を 0. 05〇1111 2 から 0. 04〇1111 2 に変更する (ノ ズルの外径およびスリッ ト幅を小さくすることにより、 ノズルの開口部 (原 料溶液吐出孔) の断面積を小さくする) ことによって行った。
[0113] 〔比較例 3〕
表 1 に示されるように、 比が変更された。 また、 低粘度<3丁八を 用いた。 それ以外は比較例 1 と同様にして、 比較例 3の中空糸膜が製造され た。
[0114] 〔比較例 4〕
表 1 に示されるように、 凝固条件、 延伸倍率および熱水処理の 条件が変更された。 それ以外は比較例 1 と同様にして、 比較例 4の中空糸膜 が製造された。
[0115] 〔比較例 5〕
表 1 に示されるように、 3比および熱水処理の条件が変更された。 それ以外は、 比較例 4と同様にして、 比較例 5の中空糸膜が製造された。
[0116] 〔比較例 6〕
表 1 に示されるように、 比、 熱水処理および塩漬処理の条件が変 更された。 それ以外は比較例 5と同様にして、 比較例 6の中空糸膜が製造さ れた。
[0117] <ラマン値の測定>
実施例 1〜 1 0および比較例 1〜 6の中空糸膜について、 ラマン値を測定 した。 ラマン値は、 実施形態で説明した測定法によって以下の条 件で測定さ れた。 ラマン値の測定結果を表 1 に示す。
[0118] (ラマン値の測定条件)
中空糸膜 1本を氷包埋し、 ミクロトームで断面を作製した。 作製した断面 試料を水に浸潰し、 断面が水面からわずかに出た状態で、 顕微ラマン分光装 置 (ナノフォトン社製レーザーラマン顕微鏡: RAMAN— 1 1) を用いて 、 レーザー波長 532 n m、 レーザー強度約 2. 2 mW、 アパーチャー径 1 00 Mm、 露光時間 8秒、 露光回数 1回、 回折格子 60 O g r/mm、 対物 レンズ 50倍/ N A0. 55、 走査間隔 1. 0 Mmの条件でマッピング分析 (ラマンスペクトルの測定) を行った。 なお、 ラマン値の測定は、 膜断面の どの部分 (膜厚の薄い部分または厚い部分) で測定してもよいが、 最も厚い 部分 (おにぎりの辺の中央部分) について測定した。
[0119] ラマンスペクトルにおける 2935 c m- 1 付近のピークの強度を、 顕微ラ マン分光装置に付属のピーク面積算出ソフト を用いて算出した。 2800〜 3 1 00 c m- 1 をべースラインとし、 ピークの頂点を中心とし、 ピークの幅 を 22. 2 c m- 1 に固定し、 口ーレンツ関数を用いてフィッティングをお こ ない、 算出されたピーク面積を信号強度 (ピーク強度) とした (図 9参照)
[0120] <形状に関するパラメータの測定>
実施例 1〜 1 0および比較例 1〜 6の中空糸膜 (塩漬処理後の状態。 ただ し、 塩漬処理を行わなかった場合は熱水処理後の 状態) について、 外径 (〇 D) 、 内径 (丨 D) および中空率 (H) を以下のようにして測定した。 その 結果、 実施例 1〜 1 0および比較例 1〜 6の中空糸膜の ODは 200 Mmで あり、 丨 0は90 〇1であり、 Hは 20. 3 %であった。
[0121] (内径、 外径の測定)
中空糸膜の内径、 外径および膜厚は、 中空糸膜をスライ ドグラスの中央に 開けられた直径 3 mmの孔に中空糸膜が抜け落ちない程度に適当 数通し、 スライ ドグラスの上下面に沿ってカミソリにより中 空糸膜をカッ トし、 中空 糸膜断面サンプルを得た後、 投影機 (N i k o n P RO F I L E P RO 〇 2020/175375 25 卩(:171? 2020 /007080
」 巳(3丁〇[¾ V - 1 2) を用いて中空糸膜断面の短径、 長径を測定するこ とにより得られる。 外径については、 中空糸膜断面 1個につき 2方向の短径 、 長径を測定し、 算術平均値を中空糸膜断面 1個の外径とした。 また、 内径 については、 おにぎりに外接する長方形の長辺と短辺の長 さを測定し、 算術 平均値を中空糸膜断面 1個の内径とした。 最大および最小を含む 1 0断面に ついて同様に測定を行い、 平均値を内径および外径とした。
[0122] (中空率の測定方法)
中空糸膜断面サンプルの写真撮影をマイクロ スコープ<巳丫巳 1\1〇巳 V 1 ~ 1乂_ 1 0 0 0を用いて行い、 上記マイクロスコープの面積測定機能により 中空糸膜の中空部の断面積 (中空部断面積) と、 中空糸膜の膜部の断面積 ( 中空部断面積) を求め、 次式より中空率を算出した。
中空率 (%) =中空部断面積/ (膜部断面積十中空部断面積) X I 0 0
[0123] <内径収縮率の測定>
実施例 1〜 1 0および比較例 1〜 6の中空糸膜について、 以下のようにし て内径収縮率を測定した。 内径収縮率の測定結果は表 1 に示される。
[0124] まず、 図 5に示されるような有効長 2 4 . 5 ± 0 .
充填率が 2 5 . 0 ± 1 . 0 %となるように複数の中空糸膜を束ねて充填 、 該中空糸膜束と 3 II 3管の端部を樹脂により接着し、 接着樹脂端部を切削し て中空糸膜の中空部を開口させることにより 、 中空糸膜モジュール 1が作製 された。
[0125] 作製された中空糸膜モジュール 1 について、 リークがないことを確認した 。 具体的には、 中空糸膜モジュール 1 を水中に沈め、 中空糸膜外側を一方の 開口部から空気で加圧し、 中空糸膜外側の他方の開口部を封止する。 開口部 よりエアーが出ていなければ、 リーク無しと判断した。
[0126] また、 作製された中空糸膜モジュール 1 について、 性能 ([¾〇性能) 確認 試験を行った。 具体的には、 中空糸膜モジュール 1 を用いて [¾〇試験 (中空 糸膜外側の圧力: 5 . 中空糸膜外側の流入口 1 0 1 3における試 験液の I濃度: 3 5 0 0 0 9 / 1_ , 対象溶液の温度: 2 5 °〇, 回収 〇 2020/175375 26 卩(:171? 2020 /007080
率 : 1 0 %) を行い、 透過水量 ( [¾) および塩除去率 ([¾」) が 、 中空糸膜 (! 1 ) の性能基準から逸脱していないことを確認し た。 例えば 、 通常の逆浸透膜を基準と考えた場合、 は好ましくは 4 5 日以 上である。 また、 」は好ましくは 9 0 %以上、 より好ましくは 9 5 %以上 、 さらに好ましくは 9 9 %以上である。
[0127] 上記のようにして性能に問題ないことが確認 された中空糸膜モジュール 1 (図 5に示されるような 3 II 3製の容器内に中空糸膜が収容されたモジュ ル) を使用して、 実施形態で説明された所定の膜分離方法を実 施する巳〇試 験を行った。
[0128] 中空糸膜の内側および外側への送液には、 液体クロマトグラフィー用のポ ンプ 3 2 , 3 3を使用した。 中空糸膜内側の流入口 (第 2液流入口 1 0 1 3 ) における圧力が〇. 中空糸膜外側の流入口 (第 1液供給 口 1 0 0 3) における流量が 1 圧力が 5 . となる ように、 ポンプ 3 2 , 3 3の運転条件を設定した。
[0129] ポンプ 3 2 , 3 3の運転開始時は、 第 1液および第 2液 (第 1液および第
2液は同じ液であり、 それらの浸透圧差は 0 1\/1 3 である) として供給され るタンク 3 4内の液の濃度は 1 0質量%に調整し、 ポンプの運転開始から 1 0分後までにタンク 3 4に濃塩水を添加し、 タンク 3 4内の液の濃度を 1 5 質量%とした。 1 5質量%に達した時点を 0時間 (巳〇試験開始時) とし、 連続的に巳(3試験を実施した。 巳(3試験の実施中、 中空糸膜内側の流入口 ( 第 2液流入口 1 0 1 3) における圧力は〇. 1 IV! 3に維持され、 中空糸膜 外側の流出口 (第 1液排出口 1 0 0 13) における圧力は〇.
るように維持された。 また、 タンク 3 4内の液の温度は 2 5 ± 1 ° 〇に維持し た。 温度変化が大きくなると流量変化が生じるた め好ましくない。
[0130] なお、 図 5に示されるように、 中空糸膜外側の流入口 1 0 0 3に供給され る第 1液と中空糸膜内側の流入口 1 0 1 3に供給される第 2液はタンク 3 4 から供給される同じ液であり、 中空糸膜モジュール 1で濃縮された第 1液と 希釈された第 2液とはタンク 3 4で混合され、 再度同じ液として中空糸膜外 〇 2020/175375 27 卩(:171? 2020 /007080
側の流入口 1 0 0 3と中空糸膜内側の流入口 1 0 1 3とに供給される。
[0131 ] 巳〇試験開始から 1、 2 4、 4 8、 7 2および 9 6時間経過後における中 空糸膜の内径収縮率を測定した。 具体的には、 各時間において、 中空糸膜内 側の流入口 1 0 1 3における流量と流出口 1 0 1 13における流量とを測定し 、 中空糸膜内側の流入口 1 〇 1 3における流量と流出口 1 0 1 13における流 量との平均値 (中空糸膜内平均流量) を算出する。
[0132] 次に、 巳〇試験開始から 1時間後の中空糸膜内平均流量に対する各時 の 中空糸膜内平均流量の比率を中空糸膜内平均 流量の減少率として算出した。 図 4に、 実施例 1、 2および比較例 2の中空糸膜について、 巳(3試験開始か らの経過時間と中空糸膜内の平均流量の変化 比率との関係をグラフで示す。 なお、 巳〇試験開始から 1時間後の中空糸膜の内径を減少率の基準と たの は、 1時間経過した場合、 膜内の濃度分布等が十分に安定していると考 えら れるからであり、 便宜上、 巳(3試験開始から 1時間後の中空糸膜の内径を中 空糸膜の使用開始時の内径とみなしたからで ある。
[0133] 実施形態で説明したように、 ^96010 ^61^ 式より、 中空糸膜内平均流 量の減少率から、 内径 ( I 0) 収縮率を算出した。
[0134] なお、 比較例 4〜 6の中空糸膜については、 5 . の耐圧性を有し ていないため、 巳〇試験を実施することができなかった。
[0135] 表 1 には、 参考として、 2 4 0時間経過後の中空糸 (膜) の内側および外 側の流入口での流量および圧力と、 中空糸 (膜) 内側の送液に必要なエネル ギー (比較例 1 に対する比率) を併せて示す。
[0136]
〇 2020/175375 29 卩(:171? 2020 /007080
[0137] 表 1および図 4に示される結果から、 比較例の中空糸膜を用いた場合、 同 —圧力下における中空糸膜内平均流量は、 巳〇試験により経時的に低下し、 中空糸膜の内径が経時的に減少することが分 かる。 ここで、 比較例について 、 9 6時間使用された後の中空糸膜の内径の収縮 は、 使用開始時の内径に 対して 9 %以上であった。
[0138] これに対して、 実施例の中空糸膜を用いた場合、 同一圧力下における中空 糸膜内平均流量の経時的な低下は比較例より も少なく、 中空糸膜の内径の経 時的な減少が抑制されていることが分かる。 そして、 実施例について、 9 6 時間使用された後の中空糸膜の内径の収縮率 は、 使用開始時の内径に対して 9 %未満であり、 比較例に対して中空糸膜の内径の経時的な収 縮が抑制され ていることが分かる。
[0139] 今回開示された実施形態および実施例はすべ ての点で例示であって制限的 なものではないと考えられるべきである。 本発明の範囲は上記した説明では なくて請求の範囲によって示され、 請求の範囲と均等の意味および範囲内で のすベての変更が含まれることが意図される 。
符号の説明
[0140] 1 中空糸膜モジユール、 1 0 中空糸膜、 1 〇 3 第 1開口部、 1 0匕 第 2開口部、 1 1 第 1室、 1 2 第 2室、 1 3 , 1 4 壁部材、 1 0 0 中空糸膜の外側、 1 0 0 3 第 1液供給口、 1 0 0匕 第 1液排出口、 1 〇 1 3 第 2液供給口、 1 0 1 匕 第 2液排出口、 2 芯管、 2 1 孔、 3 0 , 3 2 , 3 3 ポンプ、 3 1 高圧ポンプ、 3 4 タンク、 4 分流弁、
6 2 保持部材、 6 2 3 〇ーリング、 6 1 樹脂壁、 7 圧力容器、 8 0 原料溶液、 8 1 ノズル、 8 2 , 8 3 , 8 4 , 8 5 口ーラー、 8 6 中 空糸膜、 9 1 凝固液、 9 2 熱水、 9 3 塩水。