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Title:
HOT ROLLED STEEL SHEET POSSESSING EXCELLENT FATIGUE PROPERTIES AND STRETCH-FLANGE ABILITY AND PROCESS FOR PRODUCING THE HOT ROLLED STEEL SHEET
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/118945
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is a hot rolled steel sheet comprising by mass C: not less than 0.015% and less than 0.040%, Si: less than 0.05%, Mn: not less than 0.9% and not more than 1.8%, P: less than 0.02%, S: less than 0.01%, Al: less than 0.1%, N: less than 0.006%, and Ti: not less than 0.05% and less than 0.11% with the balance consisting of Fe and unavoidable impurities. The hot rolled steel sheet has a Ti/C value of not less than 2.5 and less than 3.5, is free from Nb, Zr, V, Cr, Mo, B, and W. More than 96% of the microstructure of the hot rolled steel sheet is accounted for by a mixed structure composed of a polygonal ferrite and a quasi-polygonal ferrite. The hot rolled steel sheet has a maximum tensile strength of not less than 520 MPa and less than 720 MPa, an aging index (AI) of more than 15 MPa, a product of a hole expansion (λ, %) and a total elongation (E1, %) of not less than 2350, and a fatigue limit of not less than 200 MPa.

Inventors:
YOSHINAGA NAOKI (JP)
AZUMA MASAFUMI (JP)
SAKUMA YASUHARU (JP)
MARUYAMA NAOKI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/070612
Publication Date:
October 01, 2009
Filing Date:
November 12, 2008
Export Citation:
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Assignee:
NIPPON STEEL CORP (JP)
YOSHINAGA NAOKI (JP)
AZUMA MASAFUMI (JP)
SAKUMA YASUHARU (JP)
MARUYAMA NAOKI (JP)
International Classes:
C22C38/00; B21B3/00; C21D9/46; C22C38/14; C22C38/58; C23C2/02; C23C2/28
Foreign References:
JP2004131802A2004-04-30
JP2005082841A2005-03-31
JP2006274317A2006-10-12
Other References:
See also references of EP 2267175A4
Attorney, Agent or Firm:
SHIGA, Masatake et al. (JP)
Masatake Shiga (JP)
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Claims:
 質量%にて、
 C :0.015%以上0.040%未満、
 Si:0.05%未満、
 Mn:0.9%以上1.8%以下、
 P :0.02%未満、
 S :0.01%未満、
 Al:0.1%未満、
 N :0.006%未満、
 及びTi:0.05%以上0.11%未満を含有し、
 残部がFe及び不可避的不純物からなり、
 Ti/C=2.5以上3.5未満であり、
 Nb、Zr,V、Cr、Mo、B、及びWを含まず、
 ミクロ組織が、ポリゴナルフェライトとクアジーポリゴナルフェライトの混合組織を96%超含み、
 引張最高強度が520MPa以上かつ720MPa未満、
 時効指数AIが15MPa超、
 穴拡げ率(λ)%と全伸び(El)%の積が2350以上、
 疲労限が200MPa以上であることを特徴とする疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板。
 さらに質量%にて、Cu:0.01%以上1.5%以下、及びNi:0.01%以上0.8%以下のうちのいずれか一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板。
 さらに、質量%にて、Ca:0.0005%以上0.005%以下、REM:0.0005%以上0.05%以下のいずれか一種または二種を含有することを特徴とする請求項1に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板。
 めっきが施されていることを特徴とする請求項1に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板。
 質量%にて、C:0.015%以上0.040%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.9%以上1.8%以下、P:0.02%未満、S:0.01%未満、Al:0.1%未満、N:0.006%未満、及びTi:0.05%以上0.11%未満を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti/C=2.5以上3.5未満であり、Nb、Zr,V、Cr、Mo、B、及びWを含まない鋼片を1100℃以上に加熱し、1000℃以上の温度で終了する条件で粗圧延して粗バーとする工程と、
 830~980℃の温度域で終了する条件で前記粗バーを仕上げ圧延して圧延材とする工程と、
 前記仕上げ圧延の終了後0.5秒以上空冷し、750~600℃の温度域を10~40℃/secの範囲の平均冷却速度で冷却して熱延鋼板とする工程と、
 440~560℃にて前記熱延鋼板を巻き取る工程とを有し、
 ミクロ組織がポリゴナルフェライトとクアジーポリゴナルフェライトの混合組織を96%超含み、引張最高強度が520MPa以上かつ720MPa未満、時効指数AIが15MPa超、穴拡げ率(λ)%と全伸び(El)%の積が2350以上、及び疲労限が200MPa以上である前記熱延鋼板を製造することを特徴とする疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
 前記粗バーを仕上げ圧延する工程を開始するまでの間、および/または前記粗バーを仕上げ圧延する工程中に、前記粗バーまたは前記圧延材を加熱することを特徴とする請求項5に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
 前記鋼片を粗圧延する工程の終了時点から前記粗バーを仕上げ圧延する工程の開始時点までの間に、デスケーリングを行うことを特徴とする請求項5に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
 前記熱延鋼板を780℃以下で焼鈍を行うことを特徴とする請求項5に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
 前記熱延鋼板を780℃以下で加熱し、次いでめっき浴中に浸漬させて鋼板表面をめっきすることを特徴とする請求項5に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
 前記めっき後、めっき合金化処理することを特徴とする請求項9に記載の疲労特性と伸びフランジ性に優れた熱延鋼板の製造方法。
Description:
疲労特性と伸びフランジ性に優 た熱延鋼板およびその製造方法

 本発明は疲労特性と伸びフランジ性に優れ 熱延鋼板およびその製造方法に関する。特 優れた伸びフランジ性を発現させる均一な クロ組織を有し、厳しい伸びフランジ加工 要求される部品でも容易に成形できる熱延 板およびその製造方法に関する。
 本願は、2008年3月26日に出願された日本国特 許出願第2008-079591号に対し優先権を主張し、 の内容をここに援用する。

 近年、自動車の燃費向上などのために軽 化を目的として、Al合金等の軽金属や高強 鋼板の自動車部材への適用が進められてい 。ただし、Al合金等の軽金属は比強度が高い という利点があるものの鋼に比較して著しく 高価であるためその適用は特殊な用途に限ら れている。従ってより安価かつ広い範囲に自 動車の軽量化を推進するためには鋼板の高強 度化が必要とされている。

 材料の高強度化は一般的に成形性(加工性 )等の材料特性を劣化させるため、材料特性 劣化させずにいかに高強度化を図るかが高 度鋼板を開発する上で重要となる。特に内 部材、構造部材、足廻り部材用鋼板に求め れる特性としては、伸びフランジ性、延性 疲労耐久性、特に穴あけ(ピアス)加工するこ とが多いのでその後の疲労耐久性、および耐 食性等が重要であり、高強度とこれら特性を いかに高次元でバランスさせるかが重要であ る。

 このように高強度化と諸特性、特に成形 が両立されたTRIP(TRansformation Induced Plasticity )鋼が開示されている(例えば、特許文献1、2 照)。このTRIP鋼では、鋼のミクロ組織中に残 留オーステナイトを含むことで、成形中にTRI P現象を発現させる。これにより飛躍的に成 性(延性および深絞り性)を向上させている。 しかしながら、伸びフランジ性には一般に劣 っている。従って、高強度でありながら伸び フランジ性に著しく優れた鋼板が切望されて いる。

 伸びフランジ性に優れた熱延鋼板について いくつかの開示がある。特許文献3には、ア シキュラーフェライト単相組織を有する熱延 鋼板が開示されている。しかしながら、この ような低温変態生成物単独の組織では延性が 低く、伸びフランジ成形以外の用途に用いる ことが困難である。
 特許文献4には、フェライトとベイナイトか らなる組織を有する鋼板が開示されているが 、このような複合組織鋼では、比較的良好な 延性が得られるものの、伸びフランジ性を表 す指標である穴拡げ率が低い傾向にある。
 さらに特許文献5には、フェライト体積率が 高い鋼板が開示されている。しかしこれには Siが多量に含有されているため、疲労特性な に問題を生じる場合がある。このようなSi よる弊害を避けるためには、熱延中または/ よび熱延後に表面改質を図ることが必要と り、特殊な設備導入が必要となったり、生 性が劣化したりと問題も多い。

 特許文献6,7にはTiを添加した穴拡げ性の良 な熱延鋼板が開示されている。しかしなが Ti/Cは適切に制御されておらず、穴拡げ率が ほど高くない。

特開2000-169935号公報

特開2000-169936号公報

特開2000-144259号公報

特開昭61-130454号公報

特開平8-269617号公報

特開2005-248240号公報

特開2004-131802号公報

 本発明は、引張最高強度が520~720MPaであり 、かつ優れた伸びフランジ成形性と良好な延 性を有し、疲労特性、特に穴あけ(ピアス)加 後の疲労特性にも優れた熱延鋼板およびそ 製造方法を提供することを目的とする。

 本発明者らは、上記課題を克服すべく鋭 研究を重ねた。その結果、まず、Siを極力 いレベルに抑制すること、また、組織をフ ライト主体とすること、さらには固溶Cを若 でも残存させること、Ti量とC量との比に留 することが重要であることを新たに見出し 。

 さらに、ピアス打ち抜き加工した時の疲労 性(ピアス疲労特性)に大きく影響するシャ 切断の断面形態を検討した。
 図1は、シャー打ち抜き端面(シャー切断の 面形態、切断面)を顕微鏡により観察して得 れた写真を示す。ここで、図1の上側には、 正常破面が観察された結果を示し、下側には 、正常破面と異常破面が観察された結果を示 す。
 図2は、正常破面部のSEM写真を示し、図3は 異常破面部のSEM写真を示す。
 図1~3は、板厚の12%のクリアランスで熱延鋼 にシャー切断を行い、得られた打ち抜き端 (打ち抜き部の破面性状)を観察した結果で る。

 図1,2に示されたように正常な破面(正常破面 )は延性破面であるが、図1,3に示されたよう 異常部の破面(異常破面)は脆性破面である。 脆性破面は、切断面に伸長したフェライト粒 界が多量に存在するか、TiC等の析出物がフェ ライト粒界に多数存在した時に発生すると考 えられる。
 したがって、脆性破面の発生を抑制するた には、(1)結晶粒の形態を制御することと、( 2)TiC等の析出物が存在しないことが重要であ 。
 本発明では、520MPa~720MPaの熱延鋼板の製造を 目標としているが、析出物で強化する析出強 化では、TiCなどの析出物が生成されるので、 破面での脆性破壊が阻止できない。また、C の固溶元素を使うと、ベイナイト、セメン イト、及びマルテンサイト等の硬質の第2相 析出するとともにTiCなどの析出物が生成す ことが多いので、破面での脆性破壊が阻止 きない。加えて、硬質相は穴広げ率を低下 せる。また、析出物が無い時には強度が不 した。

 以上の問題点を考慮し、本発明では、Ti-Cク ラスターを生成させることにより、以下の作 用が得られることを見出した。
 1)TiC等の主に炭化物系の析出物の生成を抑 できる。
 2)セメンタイトなどの硬質の第2相の生成を 制できる。
 3)結晶粒の形態を制御して,脆性破壊(脆性破 面)が起き難い形態にすることができる。
 4)Ti-Cクラスターの周り生成する歪み場を用 て転位を固定し、強度を確保することがで る。
 さらに、Nbを添加すると、再結晶温度が上 るので、伸長したフェライト粒が発生しや いことが分かった。したがって、この観点 らNbを含有してはいけないことを見出した。

 以上により、本発明を完成させた。即ち、 発明の要旨は、以下の通りである。
 本発明にかかる疲労特性と伸びフランジ性 優れた熱延鋼板は、質量%にて、C:0.015%以上0 .040%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.9%以上1.8%以下、P:0 .02%未満、S:0.01%未満、Al:0.1%未満、N:0.006%未満 び、Ti:0.05%以上0.11%未満を含有し、残部がFe び不可避的不純物からなり、Ti/C=2.5以上3.5 満であり、Nb、Zr,V、Cr、Mo、B、及びWを含ま 、ミクロ組織が、ポリゴナルフェライトと アジーポリゴナルフェライトの混合組織を96 %超含み、引張最高強度が520MPa以上かつ720MPa 満、時効指数AIが15MPa超、穴拡げ率(λ)%と全 び(El)%の積が2350以上、疲労限が200MPa以上で る。

 本発明にかかる疲労特性と伸びフランジ性 優れた熱延鋼板では、さらに質量%にて、Cu: 0.01%以上1.5%以下、及びNi:0.01%以上0.8%以下のう ちのいずれか一種または二種を含有してもよ い。
 さらに、質量%にて、Ca:0.0005%以上0.005%以下 REM:0.0005%以上0.05%以下のいずれか一種または 種を含有してもよい。
 めっきが施されていてもよい。

 本発明の疲労特性と伸びフランジ性に優 た熱延鋼板の製造方法は、質量%にて、C:0.01 5%以上0.040%未満、Si:0.05%未満、Mn:0.9%以上1.8%以 下、P:0.02%未満、S:0.01%未満、Al:0.1%未満、N:0.00 6%未満、及びTi:0.05%以上0.11%未満を含有し、残 部がFe及び不可避的不純物からなり、Ti/C=2.5 上3.5未満であり、Nb、Zr,V、Cr、Mo、B、及びW 含まない鋼片を1100℃以上に加熱し、1000℃以 上の温度で終了する条件で粗圧延して粗バー とする工程と、830~980℃の温度域で終了する 件で前記粗バーを仕上げ圧延して圧延材と る工程と、前記仕上げ圧延の終了後0.5秒以 空冷し、750~600℃の温度域を10~40℃/secの範囲 平均冷却速度で冷却して熱延鋼板とする工 と、440~560℃にて前記熱延鋼板を巻き取る工 程とを有し、ミクロ組織がポリゴナルフェラ イトとクアジーポリゴナルフェライトの混合 組織を96%超含み、引張最高強度が520MPa以上か つ720MPa未満、時効指数AIが15MPa超、穴拡げ率( )%と全伸び(El)%の積が2350以上、及び疲労限が 200MPa以上である前記熱延鋼板を製造する。

 本発明の疲労特性と伸びフランジ性に優れ 熱延鋼板の製造方法では、前記粗バーを仕 げ圧延する工程を開始するまでの間、およ /または前記粗バーを仕上げ圧延する工程中 に、前記粗バーまたは前記圧延材を加熱して もよい。
 前記鋼片を粗圧延する工程の終了時点から 記粗バーを仕上げ圧延する工程の開始時点 での間に、デスケーリングを行ってもよい
 前記熱延鋼板を780℃以下で焼鈍を行っても い。
 前記熱延鋼板を780℃以下で加熱し、次いで っき浴中に浸漬させて鋼板表面をめっきし もよい。
 前記めっき後、めっき合金化処理してもよ 。

 本発明は、特に伸びフランジ性に優れた熱 鋼板およびその製造方法に関し、これらの 板を用いることにより、高意匠性ホイール 飾り穴部に代表される厳しい伸びフランジ 工が要求される部品でも容易に成形できる また伸びフランジ加工後の端面性状も2次剪 断面やそれに類似する欠陥などが無く、良好 である。
 さらに、自動車のホイールなどのように穴 打ち抜きして使用される部材に本発明の熱 鋼板を用いた場合、穴の周囲から発生する 労破壊を効果的に抑制できる。穴を打ち抜 した際に穴の打ち抜き端面(切断破面)に脆 破壊(脆性破面)が起きると、疲労破壊がこの 穴の周囲から発生する。本発明の熱延鋼板で は、打ち抜き端面における脆性破壊の発生が 抑制されるため、疲労破壊を効果的に抑制で き、優れた疲労特性(ピアス疲労特性)が達成 きる。
 また、塗装後耐食性にも優れている。しか 、鋼板強度に関しては、良好な疲労特性を しつつ、引張最高強度で520~670MPaと高強度で あるので、板厚の低減が可能となる。

図1は、シャー打ち抜き端面(シャー切 の断面形態)を顕微鏡により観察して得られ 写真を示す図である。 図2は、正常破面部のSEM写真を示す図で ある。 図3は、異常破面部のSEM写真を示す図で ある。 図4は、鋼板温度と仕上げ圧延終了から の経過時間との関係において、Ti-Cクラスタ 及びTiC析出物が生成する領域を模式的に示 図である。

 以下に、本発明について詳細に説明する。
 まず、本発明の熱延鋼板の化学成分につい 説明する。
 Cは、本発明において最も重要な元素の一つ である。0.04%以上含有していると、伸びフラ ジ割れの起点となる炭化物が増加し、穴拡 値が劣化するだけでなく強度が上昇してし い加工性が劣化する。このためCの含有量は 、0.040%未満とする。伸びフランジ性の観点か ら、0.035%未満が望ましい。また、0.015%未満で は、強度が不足するので、0.015%以上とする。 Cの含有量は、好ましくは0.015%以上0.035%未満 ある。

 Siは、熱延板表面にSiスケールと呼ばれる表 面模様を形成し、成形品の表面性状を悪化さ せるだけでなく、表面粗度を荒くするため、 疲労特性も劣化させる場合がある。
 また、化成処理性が劣化し、その結果、耐 性も劣悪となる。したがって、Siに関して 、極力低く含有量を抑制する必要がある。 たがって、上限を0.05%未満とする。これによ って粗圧延後に高圧デスケーリングをせずと も、良好な化成処理性と塗装後耐食性を確保 することが可能となる。下限は特に定めない が、0.001%未満とするには大きなコストアップ を伴うので、0.001%以上が実質的な下限である 。Siの含有量は、好ましくは0.001%以上、0.01% 満である。

 Mnは、本発明において重要な元素である Mnは、フェライト変態温度を低温化するため 、組織の微細化効果があり、疲労特性に好ま しい。また比較的安価に強度を高めることが 可能であるため0.9%以上添加する。過剰のMn添 加によって、伸びフランジ性や疲労特性が劣 化するので、1.8%以下を上限とする。上限は ましくは1.5%未満である。Mnの含有量は、さ に好ましくは1.0%~1.4%である。

 Pは、伸びフランジ性や溶接性、溶接部の 疲労強度を劣化させるので0.02%未満を上限と る。0.01%未満がより好ましい上限である。 限は特に指定しないが、0.001%以下とするに 、製鋼技術上、困難であるため、0.001%超が 質的な下限である。

 Sは、熱間圧延時の割れを引き起こすばか りでなく、多すぎると、穴拡げ性を劣化させ るA系介在物を生成するので、極力低減させ べきである。しかし0.01%未満ならば許容でき る範囲である。ただし、高い穴拡げ性を必要 とする場合は0.0040%未満が好ましく、さらに い穴拡げが要求される場合は、0.0025%以下が に好ましい。下限は特に指定しないが、0.00 03%以下とするには、製鋼技術上、困難である ため、0.0003%超が実質的な下限である。

 Alは、溶鋼脱酸のために添加しても良い 、コストの上昇を招くため、その上限を0.1% 満とする。また、あまり多量に添加すると 非金属介在物を増大させ、伸びや穴拡げ性 劣化させるので、望ましくは0.06%未満とす 。Alの含有量は、さらに好ましくは0.01%~0.05% ある。Alは無添加でも構わない。

 Nは、Tiと結合してTiNを形成し、穴拡げ性 疲労特性に悪影響を及ぼすため、その上限 0.006%未満とする。好ましくは0.004%未満であ 。下限は特に設けないが、0.0005%未満を安定 して得ることは困難であるので、0.0005%以上 実質的な下限である。

 Tiは本発明において極めて重要な元素で る。Tiは強度を高めるために必須であるほか 、穴拡げ性も向上させる効果がある。したが って、0.05%以上の添加が必須である。しかし がら添加しすぎると、強度が高くなりすぎ り、穴拡げ性や疲労特性やピアス疲労特性 低下したりする場合がある。このため0.11% 満を上限とする。Tiの含有量は、さらに好ま しくは0.075%以上0.10%未満である。

 熱延鋼板の表面にめっきが施され、さら めっき合金化処理が施されている場合(合金 化溶融メッキ鋼板ともいう)、Tiの含有量は、 好ましくは0.05%~0.10%である。合金化溶融メッ 鋼板では、合金化の過程でTiC析出物を生成 やすいので、Tiの下限を0.05%以上とすること が好ましい。しかし、Ti-Cクラスターを更に 定的に生成させるためには、Tiの含有量を0.0 6%超とすることがさらに好ましい。

 Ti/Cは、質量比で2.5以上、3.5未満とする。C 含有量が0.015以上0.040%未満、Ti/Cが2.5以上3.5 満であり、かつ仕上げ圧延終了から700℃に する時間が5~20秒の条件で製造すると、Ti-Cク ラスターが形成されやすい。
 ここで、Ti-Cクラスターとは、TiCとしての析 出物が生成しにくいがTiがCを捕獲した状態で あることを言う。TiがCを捕捉した状態である ので、通常、440℃~560℃で析出するセンメン イトの析出を抑制できる。更にベイナイト 抑制できる。

 図4は、鋼板温度と仕上げ圧延終了からの経 過時間との関係において、Ti-Cクラスター及 TiC析出物が生成する領域を模式的に示す図 ある。なお、図中、線分(左上から右下へ傾 し500℃近傍で水平になっている線分)は、鋼 板温度の仕上げ圧延終了からの経時変化(冷 過程での鋼板温度の経時変化、冷却曲線と 言う)を示し、Ti/C=3.5のときのTi-Cクラスター びTiC析出物の生成領域の境界線に前記線分 接する場合を示す。
 Tiの原子量は48であり、Cの原子量は12である ので、Ti/C=4の場合には、TiとCの原子比率(モ 比率)が1:1になる。また、Nと結合するTiはお そ0.02%である。したがって、Ti/Cが2.5以上、3 .5未満では、Cが余っていることになるが、本 発明のCの含有量で、本発明の冷却速度では セメンタイトの析出は起きない。
 Ti/Cの析出ノーズと鋼板の冷却曲線を交差さ せるためには、700℃で5秒~20秒の経過時間の 点を鋼板の冷却曲線が通過するようにする すなわち、仕上げ圧延終了からの経過時間 5秒~20秒の間に鋼板温度が700℃となるように 却する。この鋼板温度が700℃になるまでの 過時間は更に10秒~15秒が好ましい。

 Ti-Cクラスターが生成する場合には、この線 分は、Ti-Cクラスターの生成領域(斜線の部分) を通過する必要がある。
 図4に示されたようにTiC析出物が生成するTi/ Cの値と鋼板温度-経過時間の領域は、Ti-Cクラ スターが生成するTi/Cの値と鋼板温度-経過時 の領域とは異なるので、Ti-Cクラスターが生 成すると、TiC析出物の生成が抑制される。
 Ti/Cが2.5未満では、高強度を安定して得るこ とができない。またTiC析出物量およびTi-Cク スター量が共に少ないため、強度確保がで ない。一方、Ti/Cが3.5以上では、後述する本 明において非常に重要な固溶Cの確保が困難 となり、その結果、穴拡げ性や疲労特性が劣 化する。またTiC析出物の析出が起こりやすく 、Ti-Cクラスターが生成しにくい。

 熱延鋼板中のTiN(析出物)及びTiC析出物の量 、鋼板から抽出残渣を採取して、Ti成分を測 定することによって、Ti換算での量として測 することができる。このため、Ti-Cクラスタ ーの量は、(添加Ti量)-(Ti as TiC析出物)-(Ti as TiN)の計算式によって計算できる。この計算 で計算したTi as Ti-Cクラスターの量は、0.02 %~0.07%程度である。
 また、Ti換算での(Ti as TiC析出物)の量は0.02 %程度、(Ti as TiN)量は0.02%程度である。
 なお、電解抽出残渣分析に用いるフィルタ は0.2μmである。しかし、これ以下の析出物 全部通過することは無く、微細析出物の凝 効果やフィルター目詰まりの影響で、実際 は数nmオーダーの析出物もかなり抽出され ことを電子顕微鏡の観察で確認している。 たがって、(Ti as TiC析出物)または(Ti as TiN) で抽出される析出物は5nm程度以上であると考 えられる。
 また、本発明では、Ti換算でのTiC析出物の が0.02%程度、TiNの量が0.02%程度の場合には、 断面の脆性破面には影響しないことがわか た。これは後述するミクロ組織において、 リゴナルフェライトおよびクアジーポリゴ ルフェライトの組織の割合と密接に影響し いる。

 本発明では、Ti-Cクラスターによる強化を行 う。Ti-Cクラスターが生成すると、この周囲 結晶には歪み場が形成するので、転位を固 して強度を向上させることができる。
 TiNは粗大化するので、強化要素としては用 ることができない。
 TiC析出物は端面の割れや、疲労限を低下さ るので、析出量は少ない方が良く、強化要 としては用いることができない。
 本発明では、Nbを含まないので、NbCやTiNbCN ような複合析出物も強化要素としては用い ことはしない。NbCやTiNbCNのような複合析出 も切断面の脆性破面を生成しやすいので避 るべきである。

 本発明では、Ti-Cクラスターを使用するの で、Nbを添加してはならない。Nbを添加する 、NbCが析出するので、Ti-Cクラスターの生成 阻害する。さらにTi-Cクラスターを分解する 。Ti-Cクラスターの生成が抑制されると、強 の低下、端面の割れの発生の抑制、疲労限 低下を引き起こす。また、Nbを添加すると、 再結晶温度が上がるので、伸長したフェライ ト結晶粒が発生しやすい。したがって、この 観点からもNbは入れてはいけないことを見出 た。

 更に、本発明の熱延鋼板は、Zr,V、Cr、Mo B、及びWも含有しない。Zr,V、Cr、Mo、B、及び Wは炭化物を生成するが、これら元素もTi-Cク スターの生成を阻害したり、Ti-Cクラスター を分解したりする。このため、これらZr,V、Cr 、Mo、B、及びWも含有しない。

 Oは特に限定しないが、多すぎると粗大な 酸化物が増えて穴拡げ性を損なうので、0.012% が実質的な上限である。より好ましくは、0.0 06%以下、さらに好ましくは0.003%以下である。

 次に、本発明においては、必要に応じて Cu、Ni、Ca、及びREM(希土類元素)のうちいず か1種以上を含有してもよい。以下に、各元 の成分について述べる。

 さらに強度を付与するために析出強化も くは固溶強化元素であるCu及びNiのうちのい ずれか一種または二種を添加してもよい。た だし、それぞれ、Cu:0.01%未満、又はNi:0.01%未 では、その効果を得ることができない。ま 、それぞれ、Cu:1.5%超、又はNi:0.8%超の範囲で 添加しても、その効果は飽和するばかりか成 形性の劣化を招き、またコストアップとなる 。

 CaおよびREMは、破壊の起点となったり加 性を劣化させる非金属介在物の形態を変化 せて無害化したりする元素である。ただし 0.0005%未満添加してもその効果がない。またC aならば0.005%超、REMならば0.05%超添加してもそ の効果が飽和する。このため、Ca=0.0005%~0.005% REM=0.0005%~0.05%添加することが望ましい。な 、REMとは、希土類金属であり、Sc,Yおよびラ タノイドのLa,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,L uから選択される1種以上である。

 なお、これらを主成分とする鋼にSn、Co、 Zn、及びMgのうちのいずれか一種または二種 上を合計で1%以下含有しても構わない。しか しながらSnは熱間圧延時に疵が発生する恐れ あるので0.05%以下が望ましい。

 次に、本発明の熱延鋼板のミクロ組織に いて説明する。ミクロ組織は、フェライト 主相とする。フェライトとは、ポリゴナル ェライト(PF)及び擬ポリゴナルフェライト(Qu asi-Polygonal Ferrite、以下αqとする)の混合組織 ある。クアジーポリゴナルフェライトとポ ゴナルフェライトの合計は96%超であり、好 しくは98%以上である。

 クアジーポリゴナルフェライトとは、ポリ ナルフェライト(PF)と同様にエッチングによ り内部構造が現出しないが、形状が分断され たアシュキュラーでありポリゴナルフェライ トとは明確に区別される。ここでは、対象と する結晶粒の周囲長さlq、その円相当径をdq すると、それらの比(lq/dq)がlq/dq≧3.5を満た 結晶粒がクアジーポリゴナルフェライトで る。
 クアジーポリゴナルフェライトは上記の定 のように、完全に丸くはなく、粒界がギザ ザした形状のフェライトであるので、ポリ ナルフェライトと混合されると、切断面の 性破壊を起こし難い。

 この混合組織は、およそ750℃~650℃で生成す るので、Ti-Cクラスターが生成する温度域と ぼ同じであり、Ti-Cクラスターは、ポリゴナ フェライトおよびクアジーポリゴナルフェ イトの生成と関連し、特にクアジーポリゴ ルフェライトの生成と密接に関係している
 即ち、Ti-Cクラスターが形成する条件では、 ミクロ組織としてポリゴナルフェライトおよ びクアジーポリゴナルフェライトの混合組織 が生成しやすいことがわかった。

 この混合組織であるフェライト組織内での 合割合は、ポリゴナルフェライトが30~70%で り、それ以外がクアジーポリゴナルフェラ トであることが好ましい。
 ポリゴナルフェライトの粒界は直線的であ のに対して、クアジーポリゴナルフェライ の粒界は入り組んでいる。本発明では、TiC 出物の析出量は極めて少ないが、TiC析出物 ポリゴナルフェライトの粒界に並ぶと、脆 破面を生成する原因になりやすい。これに して、ポリゴナルフェライトが30%~70%、それ 以外がクアジーポリゴナルフェライトであり 、両方のミクロ組織が互いに並ぶように存在 すると、脆性破面の生成が起こらない。

 一方、フェライト組織内での混合割合とし ポリゴナルフェライトが30%未満の場合、本 明では析出物が殆ど無いために、本発明の 度の520MPa以上を確保することが難しくなる で、好ましくない。ただし、ポリゴナルフ ライトが30%未満ということは、低温域で変 が生じており、同時に、ベイネティックフ ライトやベイナイトが生成しやすくなる。 のため、実際には、ポリゴナルフェライト クアジーポリゴナルフェライトのみのミク 組織であり、かつポリゴナルフェライトが3 0%未満となるように制御することは極めて難 い。
 ベイネティックフェライトまたはベイナイ を含有する場合、本発明では析出物が殆ど いために、本発明の強度の520MPa以上を確保 ることが難しくなるので、好ましくない。
 フェライト組織内での混合割合としてポリ ナルフェライトが70%よりも多い場合、脆性 面が発生しやすいので好ましくない。

 ポリゴナルフェライトとクアジーポリゴ ルフェライトの混合組織(フェライト)とベ ナイトが混在したミクロ組織や、フェライ とベイネティックフェライトが混在したミ ロ組織は、ミクロ組織の中に硬度差があり その硬度差が大きいので、穴広げ率が120%以 、更には140%以上になる場合、もしくは穴広 げ率と全伸びの積が2350以上になる場合では 穴広げ性の劣化を起こしやすい。このため 本発明の熱延鋼板のミクロ組織としては好 しくない。

 ベイネティックフェライト、ベイナイト 又はパーライトの含有量が、面積率で4%以 である場合、打ち抜き端面にこれらのミク 組織が出現する確率は非常に低くなる。こ ため、穴広げ性の劣化を起こしにくくなる で、許容できる場合もある。しかし前記ベ ネティックフェライト、ベイナイト、又は ーライトの含有量は、好ましくは2%以下であ り、この場合、穴広げ性の劣化をより効果的 に抑制できる。これらのミクロ組織は無いこ とが最も好ましい。

 さらに硬質なミクロ組織であるマルテン イト及び残留オーステナイトは含有されて ならない。

 更に、TiC析出物は粒界に多く形成される傾 があるため、TiC析出物が多く析出すると、T i-Cクラスターの生成を抑制すると共に打ち抜 き時に粒界に沿った脆化割れ、すなわち異常 破面の形成を促進する。このため、粒界の強 化が弱くなる。更にTiC析出物は、伸びフラン ジ成形時に亀裂発生やフランジ割れの起点に なりやすい。このため、穴広げ率が120%以上 更には140%以上になる場合、もしくは穴広げ と全伸びの積が2350以上になる場合、切断面 の脆性破壊を起こしやすいので抑制する必要 がある。TiC析出物の量はTi換算で、好ましく 0.03%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下 である。
 TiNもTiC析出物と同様に、割れの起点となる 能性があるので、TiN,TiC析出物の量はTi換算( 抽出残渣法で測定する値)で0.02%以下にするこ とが好ましい。

 ミクロ組織の分率には、セメンタイトやTiC 出物などの炭化物、MnSなどの硫化物、TiNな の窒化物、及びTi 4 C 2 S 2 などの炭硫化物などのような析出粒子や酸化 物などの晶出粒子は含まない。

 次に、本発明の熱延鋼板の引張最高強度、 効指数AI、穴拡げ率(λ)%と全伸び(El)%の積、 び疲労限について説明する。
 本発明の熱延鋼板の引張最高強度は、520MPa 上、720MPa未満である。520MPa未満では、高強 化のメリットが小さく、720MPa以上では、成 性が劣化する。一方、高意匠性ホイール等 厳しい成形性や形状凍結性が求められる場 には、670MPa未満であることがより望ましい なお、引張最高強度は、JIS Z 2241の方法に たがって行う引張試験により測定される。

 時効指数AI(Aging Index)は、本発明において極 めて重要である。
 通常、TiC析出物としてTiに固定されていな C量は、固溶Cとして定義されて、内部摩擦法 を用いて推定するのが通常である。しかし、 本発明の熱延鋼板では、Ti-Cクラスターが生 しているので、通常の固溶Cを測定する手段 ある内部摩擦法では、Ti-Cクラスターとして 生成するC量を評価できない。すなわち、Ti-C ラスターは固溶Cではない。

 そこで、本発明では、Ti-Cクラスターを評 価するのに、AIの値を用いている。AIの評価 法では、100℃に昇温するので、Ti-Cクラスタ のうち、Tiと結合している一部のCは、Tiの 捉から離れて可動転位を固着する作用を持 。したがって、AIで評価した値は、Ti-Cクラ ターの量と或る相関がある。逆にAIの値が低 いということは、TiC析出物の生成が多いとい うことでもあるので、AIの値が低いと脆性破 を発生しやすい傾向もある。したがって、 のAIの値には、実施例に示したように、切 面の脆性破壊挙動と密接な関係があること わかった。

 AIは15MPa超である。15MPa以下では、良好な穴 げ性と疲労特性とを確保することができな 。AIの上限は特に設けないが、80MPaを超える と、固溶Cが多すぎて成形性が低下する場合 あるので、80MPa以下を上限とすることが好ま しい。
 なお、AIは本発明の鋼板の場合には以下の うにして測定する。まず、6.5~8.5%の引張歪を 付与する。このときの流動応力をσ1とする。 一旦除荷して試験片を引張試験機から取り外 し、100℃にて1時間保持する熱処理を施す。 の後、再度引張試験を行う。そこで得られ 上部降伏応力をσ2とする。AI(MPa)=σ2-σ1で定 される。なお、引張試験はJIS Z 2241の方法 したがって行う。

 伸びフランジ性は、穴拡げ値と全伸びのバ ンスが良いほど優れる。穴拡げ率(%)と全伸 (%)の積が2350未満であると、成形中に伸びフ ランジ割れが発生する頻度が高くなる。この ため、穴拡げ率(%)と全伸び(%)の積の最適な範 囲は2350以上に制限される。より厳しい成形 形状でも割れが発生しない条件として、穴 げ率(%)と全伸び(%)の積は、好ましくは3400以 である。
 なお、本発明の鋼板を意匠性の高いホイー 部材に適用する場合には、穴拡げ率が140%未 満では、フランジ端面に割れが発生する場合 がある。このため穴拡げ率は140%以上である とが望ましい。更に好ましくは160%以上であ 。なお、穴拡げ率は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001-1996に記載の穴拡げ試験方法に従って 定される。

 疲労特性はJIS Z 2275に従う。試験形状はJIS Z 2275に従う。応力振幅一定の完全両振り曲 疲労試験(応力比R=-1)によって評価し、繰り し数1×10 7 回での疲労強度の上限を疲労限とする。疲労 限が200MPa未満であると、成形品が使用中に疲 労破壊する場合がある。このため、適切な疲 労限の範囲を200MPa以上に制限した。220MPa以上 がより好ましい範囲である。
 疲労試験は、試験時間の都合上、繰り返し 1×10 6 回や2×10 6 回で打ち切る場合もあるが、この場合には、 繰り返し数1×10 7 回の場合よりも疲労限は高くなる。

 本発明の熱延鋼板では、ピアス穴疲労限が2 00MPa以上であることが好ましい。
 ピアス穴疲労限は以下のように測定される である。試験方法は、上記の疲労試験と同 に、JIS Z 2275に従う。試験形状はJIS Z 2275 従う。しかし、疲労試験片の真ん中にポン 径φ10mm、クリアランス12%で打ち抜き穴を開 ることが、上記の疲労試験とは異なる。そ て、上記疲労特性と同様に応力振幅一定の 全両振り曲げ疲労試験(応力比R=-1)を行い、 り返し数1×10 7 回での疲労強度の上限をピアス疲労限として 求める。
 へき開破壊破面、粒界破壊破面、又は界面 壊破面からなる脆性破面が穴の打ち抜き端 に存在すると、疲労破壊が打ち抜き穴の周 から発生しやすいことを発明者は見出した このピアス穴打抜材の疲労試験特性(ピアス 穴疲労限)は、疲労破壊の発生のしやすさを 映しており、ピアス穴疲労限が200MPa以上の き、特に優れたピアス疲労特性が達成でき 。

 本発明の熱延鋼板にはめっきが施されて てもよい。めっきの主成分は、亜鉛、アル 、錫、あるいは他のあらゆるめっきで構わ い。まためっきは、溶融めっき、合金化溶 めっきのほか、電気めっきであっても良い めっきの化学成分は、主成分の他に、Fe、Mg 、Al、Cr、Mn、Sn、Sb、Znなどの元素を1種類以 含有しても構わない。

 次に本発明の熱延鋼板の製造方法について 明する。
 本発明の熱延鋼板の製造方法は、鋼片(スラ ブ)を熱間圧延することによって熱延鋼板と る方法であり、鋼片を圧延し粗バー(シート ーとも言う。)とする粗圧延工程と、粗バー を圧延して圧延材とする仕上げ圧延工程と、 圧延材を冷却し熱延鋼板とする冷却工程と、 熱延鋼板を巻き取る工程とを有する。

 本発明において熱間圧延に先行する製造 法は特に限定するものではない。すなわち 高炉、転炉や電炉等による溶製に引き続き 各種の2次精練で目的の成分含有量になるよ うに成分調整を行い、次いで通常の連続鋳造 、インゴット法による鋳造の他、薄スラブ鋳 造などの方法で鋳造すればよい。原料にはス クラップを使用しても構わない。連続鋳造に よって得たスラブの場合には高温鋳片のまま 熱間圧延機に直送してもよいし、室温まで冷 却後に加熱炉にて再加熱した後に熱間圧延し てもよい。鋼片の成分は、前述した本発明の 熱延鋼板の成分と同様である。

 まず鋼片を1100℃以上に加熱する必要がある 。この温度(スラブ抽出温度)が1100℃未満では 、十分な強度を得ることが困難となる。これ はTi系炭化物が1100℃未満では十分に溶解せず 、結果として析出物が粗大となるためと考え られる。スラブ抽出温度は1140℃以上がより ましい。上限は特に設けないが、1300℃超と ても特段の効果はなく、コストアップとな ので1300℃以下が実質的な上限である。
 そして加熱した鋼片を粗圧延して粗バーと る。粗圧延の終了温度は本発明において極 て重要である。すなわち、粗圧延は1000℃以 上で完了する必要がある。終了温度が1000℃ 満では穴拡げ性が劣化するためである。し がって、1000℃以上を下限とする。より好ま くは1060℃以上である。終了温度の上限は特 に設けないが、コストアップとならない温度 として、スラブ抽出温度が実質的な上限であ る。

 次いで粗バーを仕上げ圧延して圧延材と る。仕上げ圧延の仕上げ温度は、830~980℃と する。この温度が830℃未満では、熱延鋼板の 強度が熱間圧延(粗圧延及び仕上げ圧延)後の 却や巻取り条件によって大きく変動したり 引張特性の面内異方性が大きくなったりす 。また穴拡げ性も劣化するので、830℃以上 下限とする。一方、仕上げ温度を980℃超と ると、熱延鋼板が硬質となり延性が劣化す ことがある。また熱延ロールが損耗しやす ので好ましくない。したがって980℃を仕上 温度の上限とする。仕上げ圧延の仕上げ温 は850℃~960℃が好ましく、870℃~930℃がより ましい範囲である。

 仕上げ圧延の終了後は、圧延材を0.5秒以 空冷する。これが0.5秒未満では良好な穴拡 特性を得ることができない。この理由は必 しも明らかではないが、0.5秒未満では、オ ステナイトの再結晶が進まず、結果として 械的特性の異方性が大きくなり、穴拡げ性 低下する傾向になるためであると思われる 1.0秒超の空冷時間を設けることが更に好ま い。

 引き続いて、圧延材を冷却して熱延鋼板 する。この冷却過程において、750℃~600℃の 温度域での平均冷却速度は10℃/sec~40℃/secの 囲とする。冷却速度は15℃/sec~40℃/secが好ま く、20℃/sec超、35℃/sec以下がさらに好まし 範囲である。

 Ti/Cが2.5以上、3.5未満であり、かつ冷却速度 が10℃/sec~40℃/secの範囲である場合、Ti-Cクラ ターが生成されやすい。
 Ti/Cが上記範囲で、冷却速度が10℃/sec未満の 場合、TiC析出物の析出が起こり、脆性破面が 発生する。
 反対に、冷却速度が40℃/sec超の場合、ミク 組織がベイナイトになる。本発明ではTiCの 出を極力抑えているので、ベイナイト組織 は強度が520MPa未満になり、本発明で目的と る特性を満足しない。逆に、TiC析出物を析 させて強度を520MPa以上にすると、脆性破面 生成してピアス疲労限が低下する。

 また、冷却速度が10℃/sec~40℃/secの範囲内で はあるが、Ti/Cが2.5未満の場合、TiC析出物の 出が無いので、ポリゴナルフェライトのみ 組織になり、クアジーポリゴナルフェライ が生成しない。この場合には、強度は520MPa 満になり本発明で目的とする特性を満足し い。
 冷却速度が10℃/sec~40℃/secの範囲内ではある が、Ti/Cが3.5以上の場合、TiC析出物の析出が り、脆性破面が生成してピアス疲労限が低 する。

 更に、有効にTi-Cクラスターを生成させるた めには、仕上げ圧延後のTiC析出物の析出を抑 制するために、仕上げ圧延前のオーステナイ ト粒径を60~150μm程度に大きくする必要がある 。このようにすることで、TiC析出物の析出サ イトを抑制できるので、仕上げ圧延後の冷却 中にTiC析出物の微細析出をより減少させるこ とができる。
 このためには、粗圧延終了から仕上げ圧延 始までの時間を60秒~200秒に調整することが ましい。なお、本発明ではNbを含まないが Nbを含む場合、Nb自体がオーステナイトの再 晶を抑制するので、同じ時間保持してもオ ステナイト粒径は60μm以上にはならない。 たがって、Nbを含有する場合には、同じ時間 保持しても仕上げ圧延後のTiC析出物の析出サ イトが多くなり、TiC析出物の微細化が促進さ れる。本発明ではNbを含まないのでこのよう ことは生じない。

 次いで熱延鋼板を巻き取る。巻取り温度 、440℃~560℃とする。巻取り温度が440℃未満 とすると、ベイナイトやマルテンサイトとい った硬質組織が出現し、穴拡げ性が劣化する 。また、560℃超では、本発明で最も重要な要 件の一つである、固溶Cの確保が困難となり 結果として穴拡げ性が劣悪となる場合があ 。巻取り温度のより好ましい範囲は、460℃~5 40℃である。

 粗圧延後の粗バーは、仕上げ圧延が完了 での間(仕上圧延中)に加熱処理を施しても い。また、加熱処理は、粗圧延終了した後 粗バーに対して仕上げ圧延を開始までの間 も行なうことができる。これによって鋼板 幅方向や長手方向の温度が均一となり、製 のコイル内における材質ばらつきも小さく る。加熱方法は、特に指定するものではな 。炉加熱、誘導加熱、通電加熱、高周波加 などの方法で行えばよい。

 粗圧延の終了時点から仕上げ圧延の開始 点までの間にデスケーリングを行ってもよ 。これによって表面粗さが小さくなり疲労 性や穴拡げ性が向上する場合がある。デス ーリングの方法も特に指定しないが、高圧 水流によって行うのが最も一般的である。

 得られた熱延鋼板を再加熱(焼鈍)しても わない。この場合、再加熱の温度が780℃を えると、鋼板の引張強度と疲労限が低下す ので、その適正範囲を780℃以下に制限した 伸びフランジ性の観点からは、680℃以下が り好ましい範囲である。加熱方法は特に指 するものではなく、炉加熱、誘導加熱、通 加熱、高周波加熱などの方法で行えばよい 加熱時間については特に定めないが、550℃ 上の加熱保持時間が30分を越える場合には、 520MPa以上の強度を得るために最高加熱温度は 720℃以下であることが望ましい。

 熱延鋼板は、目的に応じて酸洗してもよ 、またスキンパスを施してもよい。スキン ス圧延は、形状矯正や時効性、さらには疲 特性の改善に奏効するので、酸洗後、また 酸洗前に行ってもよい。行う場合には圧下 3%を上限とすることが望ましい。3%を超える と鋼板の成形性が損なわれるからである。

 得られた熱延鋼板を酸洗後、連続亜鉛めっ 設備あるいは連続焼鈍亜鉛めっき設備を用 て、熱延鋼板を加熱し、溶融めっきを施し も構わない。鋼板の加熱温度が780℃を超え と、鋼板の引張強度と疲労限が低下するの 、加熱温度の適正範囲を780℃以下に制限し 。
 さらに、溶融めっきを施した後に、めっき 金化処理を施し、合金化溶融亜鉛めっきと てもよい。
 なお、加熱温度は、伸びフランジ性の観点 ら、680℃以下がより好ましい範囲である。

 さらに、粗圧延終了と仕上げ圧延開始の にデスケーリングを行ってもよい。デスケ リングによって、仕上げ圧延後の鋼板表面 最大高さRyが15μm(15μmRy,l(基準長さ:sampling le ngth)2.5mm,ln(評価長さ:travelling length)12.5mm)以下 なるように、表面のスケールを除去するこ が望ましい。これは、例えば金属材料疲労 計便覧、日本材料学会編、84ページに記載 れている通り熱延または酸洗ままの鋼板の 労強度は鋼板表面の最大高さRyと相関がある ことから明らかである。また、その後の仕上 げ圧延はデスケーリング後に再びスケールが 生成してしまうのを防ぐために5秒以内に行 のが望ましい。JIS B 0601で定義されるRaは1.4 0μm未満が好ましく、より好ましくは1.20μm未 である。

 また、粗圧延と仕上げ圧延の間にシート ーを接合し、連続的に仕上げ圧延をしても い。その際に粗バーを一旦コイル状に巻き 必要に応じて保温機能を有するカバーに格 し、再度巻き戻してから接合を行ってもよ 。

 以下に、実施例により本発明をさらに説明 る。
 表1に示す化学成分を有するA~Rの鋼(薄鋼板) 以下の方法により製造した。まず転炉にて 製して、連続鋳造し鋼片とした。そして、 2,3に示す条件で鋼片を再加熱、粗圧延して バーとし、次いで粗バーを仕上げ圧延して4 .5mm(本発明の鋼の製造板厚の範囲としては2.2m m~5.6mm)の板厚の圧延材にした後に冷却して熱 鋼板(薄鋼板)として巻き取った。
 なお、粗圧延終了から仕上げ圧延開始まで 時間を60秒~200秒にして、仕上げ圧延前のオ ステナイトの粒径を60~150μm程度に調整した

 表1中の化学組成についての表示は質量%で る。また、鋼D、鋼O,鋼Pについては粗圧延後 衝突圧2.7MP、流量0.001リットル/cm 2 の条件でデスケーリングを施した。さらに、 表1に示す鋼Iについては、450℃で亜鉛めっき 施した。

 製造条件の詳細を表2,3に示す。
 ここで、表中の鋼の化学組成は、その鋼No. アルファベットが同じ表1の鋼No.の鋼の化学 組成と対応している。「SRT」はスラブ抽出温 度を示す。「粗バー加熱」は、粗圧延終了か ら仕上げ圧延開始までの間または/および仕 げ圧延中に、粗バーまたは圧延材を加熱す ことの有無を示す。「RT」は、粗圧延終了温 度を示す。「FT」は、仕上げ圧延終了温度を す。「冷却開始までの時間」とは、仕上げ 延終了から冷却を開始するまでの時間を示 。「750~600℃での冷却速度」とは、冷却時に 750~600℃の温度域を通過する時の平均冷却速 を示す。「CT」とは、巻取温度を示している 。
 得られた薄鋼板の評価結果を表4,5に示す。

 引張試験は、供試材を、まず、JIS Z 2201記 の5号試験片に加工し、JIS Z 2241記載の試験 方法に従って行った。
 AI試験は、引張試験と同様に供試材をJIS Z  2201に記載の5号試験片に加工し、7%の引張予 ずみを試験片に付与した後、100℃×60分の熱 理を施してから再度引張試験を実施した。 こでAI(時効指数)とは、再引張での上降伏点 から10%の引張り予ひずみの流動応力を差し引 いた値として定義される。
 伸びフランジ性は、日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001-1996記載の穴拡げ試験方法に従い測定さ た穴拡げ値(率)にて評価した。
 なお、表2において「TS」は引張最高強度で り、「YS」は降伏強度であり、「EI」は伸び であり、「AI」は時効指数であり、「λ」は 拡げ率である。
 疲労特性はJIS Z 2275に従った完全両振り曲 試験によって評価した。試験形状はJIS Z 22 75に従った。繰り返し数1×10 7 回での疲労強度の上限を疲労限として定義し た。
 疲労試験は、試験時間の都合上繰り返し数1 ×10 6 回や2×10 6 回で打ち切る場合もあるが、この場合には、 繰り返し数1×10 7 回の場合よりも疲労限は高くなる。

 ミクロ組織の調査は以下のように行った 鋼板板幅の1/4Wもしくは3/4W位置より切出し 試料を圧延方向断面に研磨し、ナイタール 薬を用いてエッチングし、光学顕微鏡を用 200~500倍の倍率で観察して板厚の1/4tにおける 視野の写真を撮影し、ミクロ組織の調査を行 った。ミクロ組織の体積分率とは、上記金属 組織写真において面積分率で定義される。本 発明の鋼板は、上述の通り、主にPFとαqから 成される。このPFとαqの体積分率の合計を ェライト体積率とした。

 αqとは、日本鉄鋼協会基礎研究会ベイナ ト調査研究部会/編;低炭素鋼のベイナイト 織と変態挙動に関する最近の研究-ベイナイ 調査研究部会最終報告書-(1994年 日本鉄鋼 会)に記載されているように拡散的機構によ 生成するポリゴナルフェライトと無拡散の ルテンサイトの中間段階にある変態組織と 義されるミクロ組織のうちのひとつである αqとは、PFと同様にエッチングにより内部 造が現出しないが、形状が分断したアシュ ュラーでありPFとは明確に区別される。ここ では、対象とする結晶粒の周囲長さlq、その 相当径をdqとすると、それらの比(lq/dq)がlq/d q≧3.5を満たす粒がαqである。

 打抜き破断面の評価は、以下のように行っ 。板厚の12%のクリアランスで鋼板にシャー 断を行い、得られた打ち抜き端面(打ち抜き 部の破面性状、破断面)を顕微鏡により観察 た。そして、打ち抜き端面に占める延性破 以外の異常破面の面積率を測定し、以下の うに評価した。
 A(good):異常破面の面積率が5%未満
 B(fair):異常破面の面積率が5%~20%未満
 C(bad):異常破面の面積率が20%以上
 ここで、典型的な延性破面の形態であるデ ンプルが顕微鏡により観察されないものを 性破面と定義した。へき開破壊破面、粒界 壊破面、あるいは界面破壊破面は、脆性破 に分類する。異常破面とは、顕微鏡で見て ィンプルが観察されない脆性破面であり、 き開破壊破面あるいは粒界破壊破面である

 ピアス穴打抜材の疲労試験は、以下のよう 行った。
 疲労試験片の真ん中にポンチ径φ10mm、クリ ランス12%で打ち抜き穴を開けた。そして、 記疲労特性と同様に応力振幅一定の完全両 り曲げ疲労試験(応力比R=-1)を行い、繰り返 数1×10 7 回での疲労強度の上限をピアス疲労限として 測定した。

 表2~5の結果を以下にまとめる。
 鋼A-1、B-1、D-2、D-3、E-1、F-1、及びF-2は、本 明例である。
 鋼A-2では、CTが高いため、TiC析出物の析出 増加して脆性破面が発生した。
 鋼B-2では、仕上げ圧延後の冷却速度が遅い め、TiC析出物の析出が増加して脆性破面が 生した。
 鋼C-1では、NbCの析出により脆性破面が発生 た。
 鋼C-2では、NbCの析出により脆性破面が発生 た。
 鋼D-1では、Ti系炭化物の十分な固溶が出来 、TiC析出物の析出が増加して脆性破面が発 した。
 鋼E-2では、CTが低いので伸びが低下した。
 鋼E-3では、冷却速度が速いので、析出物は 出せずにベイナイトが生成して強度が低下 た。
 鋼F-3では、CTが高いため、TiCの析出が増加 て脆性破面が発生した。
 鋼G-1では、Ti/Cが高いため、TiC析出物の析出 が増加して穴広げ性が悪化し、また脆性破面 が発生した。
 鋼G-2では、Ti/Cが高いため、TiC析出物の析出 が増加して穴広げ性が悪化し、また脆性破面 が発生した。
 鋼H-1では、Ti含有量が高いため、TiC析出物 析出が増加して穴広げ性が悪化し、また脆 破面が発生した。
 鋼H-2では、TiC析出物の析出が増加して穴広 性が悪化し、また脆性破面が発生した。
 鋼I-1では、C含有量が低いため、Ti-Cクラス ーが生成しなかった。
 鋼I-2では、C含有量が低いため、Ti-Cクラス ーが生成しなかった。
 鋼J-1では、Ti/Cが低いため、ポリゴナルフェ ライトになり、強度が下がり、脆性破面も発 生した。
 鋼J-2では、Ti/Cが低いため、ポリゴナルフェ ライトになり、強度が下がり、脆性破面も発 生した。
 鋼K-1では、Si含有量が高いため、疲労限が 下した。
 鋼K-2では、Si含有量が高いため、疲労限が 下した。
 鋼L-1では、Crの炭化物が生成して脆性破面 発生した。
 鋼M-1では、B炭化物が生成して脆性破面が発 生した。
 鋼N-1では、V炭化物が生成して疲労限が低下 した。
 鋼O-1では、W炭化物が生成して脆性破面が発 生した。
 鋼P-1では、Mo炭化物が生成して脆性破面が 生した。
 鋼Q-1では、Cr炭化物が発生して脆性破面が 生した。
 鋼R-1では、B炭化物が発生して脆性破面が発 生した。

 表6,7は、以下の条件で得た熱延鋼板を、酸 を施した後、焼鈍あるいは亜鉛めっき処理 施した例を示す。
 熱間圧延の条件:1200℃にスラブを再加熱;仕 げ圧延温度が900℃;冷却開始までの時間が2se c;750~600℃での平均冷却速度が35℃/sec;及び巻 取り温度が530℃。
 鋼A-3,鋼A-4は、箱型焼鈍炉にて焼鈍のみを行 った例である。
 鋼B-3,鋼B-4は、連続焼鈍めっき設備にて焼鈍 を行い引き続き亜鉛めっきを行った例である 。
 鋼C-3、鋼C-4、鋼D-3、鋼E-3,鋼F-3,鋼L-2、及び L-3は、連続焼鈍めっき設備にて、焼鈍を行 、引き続き亜鉛めっきとめっき合金化処理 行った例である。
 鋼M-2,鋼N-2は、酸洗した板を亜鉛めっき温度 まで加熱した後、亜鉛めっき及びめっき合金 化処理を行った例である。
 なお、亜鉛めっき浸漬温度は450℃、めっき 金化温度は500℃で行った。

 本発明例については、所定の量の鋼成分を 有し、そのミクロ組織が主に均一なフェラ トからなり、疲労特性と伸びフランジ性を ね備えた熱延鋼板が得られている。すなわ 、本発明記載の方法によって評価した穴拡 値が140%を上回っている。
 また、疲労特性の結果(疲労限)は、表2~表7 とおり、本発明例では疲労強度にも優れて る。
 これに対して比較例は、化学成分または/お よび製造方法が発明の範囲外にあり、結果と して強度、穴拡げ性、疲労特性などが劣位と なっていることが分かる。
 また、表2~表5において、成分が本発明外で る鋼K-1,K-2では、疲労限が200以下であるため 本発明外となっている。

 本発明の熱延鋼板は、特に自動車のシャ ー及び足回り部品に好適で、中でもホイー ディスク用として最適である。伸びフラン 性を初めとする成形性に優れるため、デザ ンの自由度を高め、いわゆる高意匠性ホイ ルを実現する。さらに穴を打ち抜きした際 打ち抜き端面(シャー切断破面)における脆 破壊の発生が抑制されるため、疲労破壊を 果的に抑制でき、優れた疲労特性(ピアス疲 特性)が達成できる。また塗装後の耐食性に 優れ、また、高強度であるので板厚を低減す ることが可能となり、自動車車体の軽量化を 通じて地球環境保全に貢献する。