Login| Sign Up| Help| Contact|

Patent Searching and Data


Title:
HUMAN ANTI-Α9 INTEGRIN ANTIBODY
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/084671
Kind Code:
A1
Abstract:
Provided are a human anti-α9 integrin antibody or antibody fragment which specifically recognizes human α9 integrin and mouse α9 integrin and inhibits an interaction with a ligand therefor, particularly the antibody or antibody fragment which recognizes loop regions of human and mouse α9 integrins, a gene encoding the antibody or antibody fragment, a recombinant expression vector containing the gene, a transformant transfected with the gene, a method for producing a human anti-α9 integrin antibody or antibody fragment using the transformant, and a preventive or therapeutic agent for rheumatoid arthritis containing the antibody or antibody fragment.

Inventors:
TORIKAI MASAHARU (JP)
ISHIKAWA DAISUKE (JP)
NAKASHIMA TOSHIHIRO (JP)
HIGUCHI HIROFUMI (JP)
SAKAI FUMIHIKO (JP)
YAMAMOTO NOBUCHIKA (JP)
FUJITA HIROTADA (JP)
TAGUCHI KATSUNARI (JP)
Application Number:
PCT/JP2008/073825
Publication Date:
July 09, 2009
Filing Date:
December 26, 2008
Export Citation:
Click for automatic bibliography generation   Help
Assignee:
ASTELLAS PHARMA INC (JP)
CHEMO SERO THERAPEUT RES INST (JP)
TORIKAI MASAHARU (JP)
ISHIKAWA DAISUKE (JP)
NAKASHIMA TOSHIHIRO (JP)
HIGUCHI HIROFUMI (JP)
SAKAI FUMIHIKO (JP)
YAMAMOTO NOBUCHIKA (JP)
FUJITA HIROTADA (JP)
TAGUCHI KATSUNARI (JP)
International Classes:
C12N15/09; A61K39/395; A61P11/00; A61P19/02; A61P19/10; A61P29/00; A61P35/00; A61P37/06; A61P37/08; C07K16/28; C12N1/15; C12N1/19; C12N1/21; C12N5/10; C12P21/08
Domestic Patent References:
WO2008007804A12008-01-17
WO2006075784A12006-07-20
Other References:
WANG A. ET AL.: "Differential regulation of airway epithelial integrins by growth factors.", AM. J. RESPIR. CELL MOL. BIOL., vol. 15, no. 5, 1996, pages 664 - 672, XP002915231
See also references of EP 2236605A4
JOURNAL OF BONE AND MINERAL RESEARCH, vol. 21, 2006, pages 1657 - 1665
THE JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION, vol. 115, 2005, pages 1060 - 1067
AM. J. RESPIR. CELL MOL. BIOL., vol. 15, 1996, pages 664 - 672
J. BACTERIO., vol. R1987, no. 169, pages 4379 - 4383
SCIENCE, vol. 296, 2002, pages 151 - 155
PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 94, 1997, pages 7198 - 7203
CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY EDIT., vol. 5, no. 8, 1987, pages 1 - 8
PCR METHODS AND APPLICATIONS, vol. 2, 1992, pages 28 - 33
NIWA H. ET AL., GENE, vol. 108, 1991, pages 193 - 200
SCIENCE, vol. 122, 1952, pages 501
VIROLOGY, vol. 8, 1959, pages 396
J. AM. MED. ASSOC., vol. 199, 1967, pages 519
PROC. SOC. EXP. BIOL. MED., vol. 73, 1950, pages 1
PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 82, 1985, pages 8404
BOSTIAN, PROC. NATLA ACAD. SCI. USA, vol. 77, 1980, pages 4505
J. D. MARKS ET AL., J. MOL. BIOL., vol. 222, 1991, pages 581 - 597
PROC. NATL. ACAD. SCI. USA, vol. 94, 1997, pages 65 - 72
Attorney, Agent or Firm:
TAKASHIMA, Hajime (1-1 Fushimimachi 4-chome,Chuo-k, Osaka-shi Osaka 44, JP)
Download PDF:
Claims:
 ヒトα9インテグリン及びマウスα9インテグリンを認識し、該α9インテグリンとそれらのリガンドとの相互作用を阻害する、ヒト抗α9インテグリン抗体または抗体フラグメント。
 ヒトα9インテグリン(配列番号36)の104番目のArgから122番目のAspまでの領域が主として構成するエピトープ、及びマウスα9インテグリン(配列番号37)の105番目のArgから123番目のAspまでの領域が主として構成するエピトープを認識する、請求項1に記載の抗体または抗体フラグメント。
 以下の配列番号に各々示されるアミノ酸配列からなる(a)重鎖相補性決定領域及び(b)軽鎖相補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)を有する、請求項1または2に記載の抗体または抗体フラグメント。
(a)重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3
   配列番号2、配列番号3、配列番号4;
   配列番号13、配列番号14、配列番号15;
   配列番号19、配列番号20、配列番号21;
   配列番号25、配列番号26、配列番号27;または
   配列番号31、配列番号32、配列番号33;
(b)軽鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3
   配列番号7、配列番号8、配列番号9
 配列番号31、配列番号32、配列番号33に各々示されるアミノ酸配列からなる重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3を有する、請求項3に記載の抗体または抗体フラグメント。
 配列番号1、配列番号12、配列番号18、配列番号24、配列番号30のいずれかに示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、及び配列番号6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を有する、請求項1または2に記載の抗体または抗体フラグメント。
 配列番号30に示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域を有する、請求項5に記載の抗体または抗体フラグメント。
 当該抗体が、完全抗体である請求項1から6のいずれかに記載のヒト抗α9インテグリン抗体。
 当該抗体フラグメントが、scFvまたはscFv-Fcである請求項1から6のいずれかに記載のヒト抗α9インテグリン抗体フラグメント。
 請求項1から8のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントをコードする遺伝子。
 請求項9に記載の遺伝子を含む組換え発現ベクター。
 請求項9に記載の遺伝子が導入された形質転換体。
 請求項9に記載の遺伝子を宿主に発現させることによって、ヒト抗α9インテグリン抗体または抗体フラグメントを生産する方法。
 請求項1から8のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントを含む、関節リウマチの予防または治療剤。
 請求項1から8のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントの治療有効量を対象に投与する工程を包含する、当該対象における関節リウマチを予防または治療する方法。
 関節リウマチの予防または治療剤の製造における、請求項1から8のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメントの使用。
 関節リウマチを予防または治療するための、請求項1から8のいずれかに記載の抗体または抗体フラグメント。
Description:
ヒト抗α9インテグリン抗体

 本発明は、ヒト抗α9インテグリン抗体及 その用途に関する。詳細には、ヒト及びマ スα9インテグリン蛋白質のL1と命名したル プ領域に結合して、α9インテグリン依存の 胞接着を阻害し、かつ関節炎に対する抑制 用を有するヒト抗α9インテグリン抗体及び 抗体フラグメント、並びに、当該抗体及び 体フラグメントを用いた、関節リウマチ等 自己免疫疾患、アレルギーや移植片拒絶反 等の免疫疾患、及びその他のα9インテグリ が病態形成に関与する各種疾患の診断、予 または治療に関する。

 インテグリン(integrin)は細胞表面糖タンパ ク質のひとつで、主に細胞外マトリックス( ラーゲン、ラミニンなど)への細胞の接着や ムノグロブリンファミリーのメンバー(ICAM-1 、VCAM-1など)の受容体として機能し、細胞外 トリックスからの情報伝達に関与する接着 子である。それにより、細胞は細胞外マト ックスよりシグナルを受け取り、分化、増 、細胞死などが誘導される。インテグリン α鎖とβ鎖の2つのサブユニットからなるヘテ ロダイマーであり、異なるα鎖、β鎖が存在 、多様な組み合わせがあり、インテグリン ーパーファミリーは24種類存在する。インテ グリンノックアウトマウスは、全てのサブユ ニットで致死的あるいは病的で、生命の維持 に個々のインテグリンが必要であることが示 唆されている。このことから、周辺の環境を 細胞に伝え対応を促すインテグリンは、生命 現象のあらゆる場面で機能しており、様々な 病態に関与していると考えられる。

 このように生存に不可欠なインテグリン 病的状態でも役割を演じていると考えられ その阻害が病態改善に働くケースが示され いる。例えば、血小板に特異的なインテグ ンαIIbβ3の阻害薬は、PCTA再狭窄治療薬アブ キシマブ(商品名:ReoPro;Eli Lilly社)として認 されている。また、α4β1(VLA4)阻害剤ナタリ マブ(商品名:Antegren;ELAN社)は多発性硬化症治 薬として認可されている。さらに、αvβ3阻 剤Vitaxin(MEDIMMUNE社)も、その血管新生阻害作 、破骨細胞活性化阻害作用などから、現在 験が進んでいる状況にある。

 インテグリンα9β1はマクロファージ、NKT 胞、樹状細胞(Dendritic Cell)、好中球に発現 ており、これら炎症細胞の浸潤や接着、骨 収などに重要な役割を果しているとされる また最近、破骨細胞の形成においてインテ リンα9β1の関与が報告されており、骨破壊 の関与が示唆されている(非特許文献1)。そ リガンドとしては、切断型オステオポンチ (N末OPN)、VCAM-1、Tenascin-Cなどが知られている 臨床においても、関節リウマチ患者の滑膜 織においてインテグリンα9β1の有意な上昇 認められている(非特許文献2)。

 したがって、α9インテグリン蛋白質に特 的に結合し、α9インテグリン依存の細胞接 を阻害する活性を有するモノクローナル抗 を開発することができれば、α9インテグリ が病態形成に関与する各種疾患の診断、予 または治療に有用であることが期待される

 これまで、ヒトα9インテグリンに対して 能阻害作用を示す抗体としては、マウスモ クローナル抗体であるY9A2(非特許文献3)、同 じくマウスモノクローナル抗体である1K11、24 I11、21C5及び25B6(特許文献1)が報告されている これらの抗体は、ヒトα9インテグリン依存 細胞接着を抑制し得ることがin vitroの実験 果より示されているものの、マウスやラッ のα9インテグリンに対しては交差反応性を さないため、in vivoでの薬効評価等の実験 用いるには不向きである。

 また、マウスα9インテグリンに対して機 阻害作用を示す抗体としては、ハムスター ノクローナル抗体である11L2B、12C4'58、18R18D び55A2C(特許文献1)が報告されている。これ の抗体はマウスα9の細胞接着等の機能を抑 し得ることがin vitroの実験結果より示され おり、また11L2Bについては肝炎に対する治療 効果を有することがin vivoの実験結果より示 れているものの、ヒトα9インテグリンに対 る反応性は確認されていないため、これら 抗体をヒトの疾患の治療や予防に適用する とは出来ない。

 このように、抗ヒトα9インテグリン抗体 取得してin vitroでの機能評価を行っても、 ウスやラットのα9インテグリンに対して交 反応性を示さなければ、各種炎症性疾患の 態モデルはマウスやラットを用いた系がほ んどであるため、その抗体の薬効を評価す ことは困難である。また、抗マウスα9イン グリン抗体を取得してin vivoの病態モデル を用いて薬効評価を行い、治療または予防 果を見出したとしても、ヒトのα9インテグ ンに対して交差反応性を示さなければ、抗 医薬品としてヒトの病態に適用することは 来ない。

 仮に、抗マウスα9インテグリン抗体を用 て得られた薬効のデータを基に、Y9A2等の抗 ヒトα9モノクローナル抗体を抗体医薬品とし て開発するとしても、薬理データの取得に用 いた抗体と開発品である抗体との同等性を証 明するのに多大な労力を要することとなる。 よって、例えばマウスとヒトとの両方に対し て機能阻害作用を示す抗体があれば望ましい が、そのような抗体の取得は、従来のマウス を免疫する方法等では、原理的に困難である と言える。

 また、そのような困難を克服し、何らか 手法で作製した抗ヒトα9モノクローナル抗 を抗体医薬品として開発するとしても、そ 抗体がヒト以外の動物由来の抗体であれば ヒトに対して投与した場合、その高い免疫 性によって、異物として認識・排除される 従って、そのような抗体を疾患の治療薬剤 して用いることは困難である。

 この問題を解決する方法として、蛋白工 的手法を用いて非ヒト由来抗体をヒト化す ことが考えられるが、非ヒト由来の配列を 部含むため、反復投与や長期投与により、 与するヒト化抗α9インテグリン抗体の活性 阻害するような抗体が作られ、その効果を しく減弱するだけでなく、重篤な副作用を く可能性がある。また、ヒト化により活性 低下することも多く、構築には多大な労力 コストを要する。

 また、α9インテグリンについては、立体構 やリガンド結合部位、中和エピトープなど 構造学的な情報もほとんどないという状況 あり、それらの情報が得られれば、α9イン グリンに関する研究や医療への応用に新た 道が開かれ、その貢献度は多大なものにな 得ると期待される。

WO 2006/075784 Journal of Bone and Mineral Research, 2006, 21:  1657-1665 The Journal of Clinical Investigation, 2005, 115 : 1060-1067 Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1996, 15: 664- 672

 したがって、本発明の目的は、ヒトα9イ テグリンとマウスα9インテグリンの両方に 異的な反応性を有し、かつ安全性と治療効 を兼ね備えたヒト抗α9インテグリン抗体を 供することであり、該ヒト抗α9インテグリ 抗体の、α9インテグリンとその複数のリガ ドとの相互作用の遮断による強力な抗炎症 用と骨破壊抑制作用を利用して、α9インテ リンが病態形成に関与する各種疾患の新規 防または治療手段を提供することである。

 本発明者らは、α9インテグリン発現細胞 作製し、該細胞にヒト抗体を提示した抗体 ァージライブラリーをダイレクトに反応さ ることにより、マウスα9インテグリン及び トα9インテグリンに特異的な反応性を有す ヒト抗α9インテグリン抗体及び抗体フラグ ントを作製することに成功した。さらに、 抗体及び抗体フラグメントが、α9インテグ ン依存性の細胞接着を阻害し、複数の関節 モデルに対して治療効果を示し、該モデル おける破骨細胞の分化を抑制することを見 した。即ち、該抗体及び抗体フラグメント 、安全性と治療効果とを兼ね備えたもので ることを実証して、本発明を完成するに至 た。

 すなわち、本発明は、医学上または産業上 用な方法・物質として下記1)~16)の発明を含 ものである。
1)ヒトα9インテグリン及びマウスα9インテグ ンを認識し、該α9インテグリンとリガンド の相互作用を阻害する、ヒト抗α9インテグ ン抗体または抗体フラグメント。
2)ヒトα9インテグリン(配列番号36)の104番目の Argから122番目のAspまでの領域が主として構成 するエピトープ、及びマウスα9インテグリン (配列番号37)の105番目のArgから123番目のAspま の領域が主として構成するエピトープを認 する、上記1)に記載の抗体または抗体フラグ メント。
3)以下の配列番号に各々示されるアミノ酸配 からなる(a)重鎖相補性決定領域及び(b)軽鎖 補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)を有する、上 1)または2)に記載の抗体または抗体フラグメ ト。
(a)重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3
   配列番号2、配列番号3、配列番号4;
   配列番号13、配列番号14、配列番号15;
   配列番号19、配列番号20、配列番号21;
   配列番号25、配列番号26、配列番号27;ま は
   配列番号31、配列番号32、配列番号33;
(b)軽鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、CDR3
   配列番号7、配列番号8、配列番号9
4)配列番号31、配列番号32、配列番号33に各々 されるアミノ酸配列からなる重鎖相補性決 領域CDR1、CDR2、CDR3を有する、上記3)に記載 抗体または抗体フラグメント。
5)配列番号1、配列番号12、配列番号18、配列 号24、配列番号30のいずれかに示されるアミ 酸配列からなる重鎖可変領域、及び配列番 6に示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変 領域を有する、上記1)または2)に記載の抗体 たは抗体フラグメント。
6)配列番号30に示されるアミノ酸配列からな 重鎖可変領域を有する、上記5)に記載の抗体 または抗体フラグメント。
7)当該抗体が、完全抗体である上記1)から6)の いずれかに記載のヒト抗α9インテグリン抗体 。
8)当該抗体フラグメントが、scFvまたはscFv-Fc ある上記1)から6)のいずれかに記載のヒト抗 9インテグリン抗体フラグメント。
9)上記1)から8)のいずれかに記載の抗体または 抗体フラグメントをコードする遺伝子。
10)上記9)に記載の遺伝子を含む組換え発現ベ ター。
11)上記9)に記載の遺伝子が導入された形質転 体。
12)上記9)に記載の遺伝子を宿主に発現させる とによって、ヒト抗α9インテグリン抗体ま は抗体フラグメントを生産する方法。
13)上記1)から8)のいずれかに記載の抗体また 抗体フラグメントを含む、関節リウマチの 防または治療剤。
14)上記1)から8)のいずれかに記載の抗体また 抗体フラグメントの治療有効量を対象に投 する工程を包含する、該対象における関節 ウマチを予防または治療する方法。
15)関節リウマチの予防または治療剤の製造に おける、上記1)から8)のいずれかに記載の抗 または抗体フラグメントの使用。
16)関節リウマチを予防または治療するための 、上記1)から8)のいずれかに記載の抗体また 抗体フラグメント。

 本発明のヒトモノクローナル抗体及び該 体フラグメントは、ヒト由来抗α9インテグ ン抗体の可変領域を有し、ヒト及びマウス α9インテグリンに対する特異的な反応性と α9インテグリン依存の細胞接着に対する阻 活性、更に関節炎に対する抑制作用を有す 。また、そのエピトープはこれまでに他の ンテグリンファミリーでも報告例のないル プ領域(L1と命名)であった。また、本発明に よる抗体及び該抗体フラグメントは完全ヒト 抗体であるので、α9インテグリンが関与する 各種疾患に対する新たな診断、予防または治 療薬としての利用が期待できる。

scFv display phageのマウスα9との反応性 示す図である。 MA9-413 scFvのマウスα9との反応性を示す 図である。 MA9-413 scFvのマウスα9依存性細胞接着に 対する阻害能を示す図である。 scFv-Fc発現ベクターの構造を示す図であ る。 MA9-413 scFv-Fcのマウスα9及びヒトα9との 反応性をELISAにより解析した結果を示す図で る。 MA9-413 scFv-Fcのマウスα9及びヒトα9との 反応性及び特異性をフローサイトメトリーに より解析した結果を示す図である。 MA9-413 scFv-Fcのマウスα9及びヒトα9依存 性細胞接着に対する阻害能を示す図である。 α9のβプロペラドメインのアミノ酸配 とモデリングより推定されたループ領域を す図である。 MA9-413 scFv-Fcのα9ループ領域改変体及び α9βプロペラドメイン改変体との反応性をフ ーサイトメトリーにより解析した結果を示 図である。 MA9-413 scFv-Fcのα9ループ領域改変体及 α9βプロペラドメイン改変体との反応性をELI SAにより解析した結果を示す図である。 MA9-413 scFv-Fcのマウスコラーゲン抗体 導関節炎に対する抑制効果を示す図である MA9-413 scFv-Fcのマウスコラーゲン誘導 節炎に対する抑制効果を示す図である。 MA9-413 scFv-Fcのマウスコラーゲン抗体 導関節炎に対する破骨細胞分化抑制を示す である。 MA9-413改変体のアミノ酸配列を示す図 ある。 MA9-413改変体scFvのマウスα9及びヒトα9 の反応性を示す図である。 MA9-413改変体scFv-Fcのヒトα9及びマウス 9との反応性を示す図である。 MA9-413のα9反応性に対するMA9-413改変体 競合阻害作用を示す図である。 MA9-413改変体IgGのヒトα9及びマウスα9 の反応性を示す図である。

 以下に本発明について詳述する。
 scFvディスプレイファージライブラリーは、 以下のようにして作製することができる。複 数の健常者から採取した末梢血Bリンパ球よ 、RT-PCR法にて免疫グロブリン重(H)鎖、軽(L) cDNAを合成する。次に各種プライマーを組み わせて、H鎖可変領域(VH)とL鎖可変領域(VL)を 増幅させ、両者をlinker DNAで結合させること より、健常者リンパ球由来のVHとVLのランダ ムな組み合わせによるscFv遺伝子のライブラ ーが作製される。このscFv遺伝子をファージ ドベクター(例、pCANTAB5E)に組込み、約10 8 ~10 11 クローンからなる健常者由来scFvディスプレ ファージライブラリーを構築することがで る。

 抗原であるα9インテグリンの調製は、以下 ようにして行うことができる。
 α9インテグリン(以下、単に「α9」ともいう )は膜蛋白質であるため、α9遺伝子をクロー ングして培養細胞に遺伝子導入を行い、人 的に培養細胞表面に発現させることができ 。遺伝子クローニングの鋳型としては、cDNA library等を用いるとよい。細胞表面に発現さ るためには、通常N末端部分にシグナル配列 が存在する必要があるので、α9が本来有する シグナル配列を利用してもよいし、成熟型α9 をコードする遺伝子領域を他のシグナル配列 と連結させてもよい。作製する抗体について は、種特異性等を評価し、抗体の用途や可能 性を見極めることが必要であるため、遺伝子 の取得はヒトα9とマウスα9の両方について行 うのが望ましい。

 以上のようにして取得した、シグナル配 を含むα9の遺伝子を、例えばpcDNA3.1(-)ベク ー(Invitrogen)などの発現ベクターにクローニ グする。ここで、インテグリンファミリー α鎖の内、α9と最も相同性が高いと言われて いるのはα4である。このことから望ましくは 、α9のコントロールとして用いるために、α4 インテグリンについても同様の操作を行い、 発現ベクターにクローニングするとよい。

 構築した発現ベクターを、CHO細胞やSW480 胞等の培養細胞に、Lipofectamine 2000(Invitrogen) を用いたトランスフェクションにより導入 る。発現ベクターのマーカー(ネオマイシン 等)を利用して発現細胞のみを選択し、得ら た細胞を以降のスクリーニングや評価に使 することができる。発現細胞については、 界希釈法等によりクローニングを行い、均 の細胞集団にすることによって、より安定 に高発現量を示す細胞を得るとよい。

 以下に抗体作製について述べる。抗α9イ テグリン抗体を作製して、α9のターゲット リデーションを行うことを目的とする場合 は、まずマウスα9をターゲットとして機能 害活性を有するモノクローナル抗体を取得 、マウスの病態モデル系を用いて抗体の薬 の有無を評価するとよい。

 まずは、scFvディスプレイファージライブ ラリーからの特異クローン分離について述べ る。例えば次のような手順で行うことが出来 る。上記のライブラリーを、CHO細胞と反応さ せてサブトラクションを行った後、マウスα9 発現CHO細胞に結合させて回収、濃縮し、抗α9  scFvディスプレイファージクローンをスクリ ーニングする。抗原としては、細胞そのもの ではなく、膜画分を調製して用いたり、或い は膜画分から抗原を精製して用いたりするこ ともできる。

 このようにして得られたクローンのscFvを 調製し、α9発現細胞との反応性を確認する。 scFvの発現方法としては、例えば大腸菌で発 させることができる。大腸菌の場合、常用 れる有用なプロモーター、抗体分泌のため シグナル配列等、発現させるscFvを機能的に 合させて発現させることが出来る。例えば ロモーターとしては、lacZプロモーター、ara Bプロモーター等を挙げることができる。scFv 分泌のためのシグナル配列としては、大腸 のペリプラズムに発現させる場合、pelBシグ ナル配列(J. BacterioR1987, 169: 4379-4383)を用い とよい。培養上清中に分泌させるにはM13フ ージのg3蛋白のシグナル配列を用いることも できる。

 細胞内外に発現されたscFvは、宿主から分 離し均一にまで精製することができる。例え ば、pCANTAB5Eの系で発現されるscFvは、そのC末 にEtag配列が付加されているので、抗Etag抗 を用いたアフィニティークロマトグラフィ を用いて、容易に短時間で精製することが きる。その他、通常のタンパク質で使用さ ている分離、精製方法を組み合わせて精製 ることも可能である。例えば、限外濾過、 析、ゲル濾過/イオン交換/疎水クロマト等の カラムクロマトグラフィーを組み合わせれば 抗体を分離・精製することができる。精製し た標品については、HPLCゲルろ過分析等で分 形態を分析することができる。

 得られた抗体や抗体フラグメントのα9イン グリンに対する結合活性を測定する方法と ては、ELISAやFACS等の方法がある。例えばELIS Aを用いる場合、α9インテグリン発現細胞を 接またはcapture抗体を介して固相化した96穴 レートに目的の抗体や抗体フラグメントを む試料、例えば大腸菌の培養上清や精製抗 を加える。次に西洋わさびペルオキシダー (HRP)、アルカリフォスファターゼ(AP)等の酵 、フルオレセインイソシアネート、ローダ ン等の蛍光物質、 32 P、 125 I等の放射性物質、化学発光物質などで標識 た抗Etag抗体等の二次抗体を添加して反応さ 、洗浄した後、必要に応じて検出試薬(例え ばHRP標識の場合、発色基質TMBなど)を加えて 吸光度、蛍光強度、放射活性、発光量等を 定することで、抗原結合活性を評価するこ が出来る。

 また単離したクローンのscFv遺伝子のVH及 VLのDNA塩基配列については、ジデオキシ法 により決定でき、得られたDNA塩基配列情報 らアミノ酸配列を推定できる。

 更に、分離クローンがα9に対する機能阻 活性を有しているか否かを評価する方法と ては、例えばα9依存性の細胞接着を指標と た以下の方法がある。α9のリガンドの一つ あるN末OPN(オステオポンチンがトロンビン より切断された後のN末端側フラグメント)の RAA改変体(他のインテグリンとの反応を抑え ためにRGD配列をRAAに改変したもの)をプレー に固定化し、ブロッキングを行う。各種抗 を添加した後、α9発現細胞を添加し、37℃ 1時間インキュベートする。細胞をCrystal viol etとメタノールを用いて固定・染色して、洗 後、接着した細胞中の色素をTriton X-100で抽 出し、波長595nmにおける吸光度を測定する。 れにより抑制作用が確認されれば、当該抗 はα9に対する機能阻害活性を有しているも と判断される。

 ここで、scFvは一価の抗体フラグメントで あるが、IgG型またはscFv-Fc型の二価の抗体に ることで、Avidityの効果により親和性や阻害 果が大きく向上する場合のあることが知ら ている。また、IgG型またはscFv-Fc型のように 分子量の比較的大きな分子形態の方が、scFv のような分子量の比較的小さな分子形態よ も、体内安定性に優れており、半減期が長 こともよく知られたことである。

 よって、例えば分離クローンについて以 のようにscFv-Fc型に分子形態を変換させ、評 価を行うとよい。分離クローンのscFv遺伝子 域をPCR増幅し、マウスまたはヒトFc融合蛋白 質発現ベクターに挿入することにより、scFv-F cの発現ベクターを構築する。このようなマ スまたはヒトFc融合蛋白質発現ベクターの例 としては、例えば、pFUSE-mIgG1-FcまたはpFUSE-hIgG 1-Fc(InvivoGen社)が使用可能である。当該ベクタ ーにおいては、細胞外への分泌発現を促すリ ーダー配列とscFv遺伝子、及びマウスまたは トFc遺伝子領域が連結されており、その発現 は各種プロモーターにより制御される。

 構築したscFv-Fc発現ベクターは、Lipofectamin e 2000(Invitrogen)等を用いることにより、CHO細 等の培養細胞に遺伝子導入される。発現ベ ターのマーカー(ネオマイシン等)を含む選択 培地で拡張培養を行い、培養上清を回収して 、Protein Aカラムクロマトグラフィー等によ 精製を行うことができる。得られたscFv-Fc精 標品は、scFvと同様に、HPLCゲルろ過やELISA、 FACS、或いはα9依存性細胞接着阻害試験等に り分析するとよい。ELISAにおいては、HRP標識 抗マウスIgG抗体等で、FACSにおいてはFITC標識 マウスIgG抗体等で検出を行うことができる コントロール抗体としてヒトα9に対するマ スモノクローナル抗体Y9A2(CHEMICON)を用いる よい。

 次に、抗体のエピトープ解析について述べ 。
 機能阻害活性を有する抗体クローンのエピ ープを同定できれば、α9の中和エピトープ 明らかにすることができる。エピトープの 析は、例えば以下のようにして行うことが きる。α9のアミノ酸置換体を構築して、当 抗体との反応性を解析する。アミノ酸置換 より、抗体との反応性に変化が認められれ 、置換した部位が抗体のエピトープである 能性が強く示唆される。アミノ酸置換の方 としては、例えば、ヒトα9とマウスα9の配 を入れ替える、α9とα4の配列を入れ替える 或いはα9の配列をAlaに置換する等の方法が る。

 インテグリンファミリーのα鎖に共通す 特徴として、細胞外領域N末端部分に位置す βプロペラドメインが、リガンドとの相互 用部位であると言われている(Science, 296, 151 -155, 2002)ことから、この領域内に中和エピト ープが存在する可能性は高いと思われる。よ って、βプロペラドメインを解析の対象とし もよい。

 また、α4のリガンド結合部位及び中和エ トープを解析した文献(Proc. Natl. Acad. Sci.  USA, 94, 7198-7203, 1997)で、βプロペラドメイン 内のR1からR5と呼ばれるリピート部分(ループ 域に対応)の内、R2とR4がリガンド結合に重 であり、またR2、R3a及びR3cが中和エピトープ になりうるとの結果が示されている。これら のことから、ループ領域が中和エピトープに なっている可能性は高いと思われる。よって 、βプロペラドメイン中のループ領域に対象 絞って解析を行ってもよい。

 更に、それまでの解析結果より、当該抗 の種特異性に関する知見が得られていれば それを利用することも可能である。例えば ヒトα9及びマウスα9に対する反応性の強さ 違いが認められていれば、エピトープ領域 アミノ酸配列がヒトとマウスとでは多少異 っている可能性が考えられる。ヒトα9とマ スα9とは高い相同性を有していることから 解析の対象とする部位の候補の内、ヒトα9 マウスα9とでアミノ酸配列が異なっている 位を選択すれば、更に候補部位が絞られ、 率的に解析を行うことが可能となる。

 また、ヒトα9改変体の発現を確認するた のマーカーとしてEGFP等の蛍光蛋白質を用い るとよい。例えば、α9のC末端(細胞質領域)に EGFPを融合させたα9-EGFP融合体を構築すれば、 蛍光によりα9の発現を確認でき、その発現量 に応じた抗体の反応性を評価することができ るため、より定量的な評価が可能となる。

 そのようなα9或いはα9-EGFP融合体のアミ 酸置換体をsite-directed mutagenesis法等により構 築する。それらを発現ベクターにクローニン グし、CHO細胞等の培養細胞にそれぞれ導入す る。一過性発現または安定発現させた細胞集 団について、野生型または改変型α9(或いはα 9-EGFP)の発現と、それらの当該抗体との反応 をELISA或いはFACS等を用いて評価することが きる。例えばα9-EGFPをベースとして各種アミ ノ酸置換体を構築し、抗体との反応性をFACS より解析した場合、横軸にα9-EGFPの発現、縦 軸に抗体との反応性を示せば、発現量あたり の抗体との反応性を議論することが可能とな る。

 このようにして解析した結果、α9のアミ 酸置換により、当該抗体との反応性に変化 認められれば、置換した部位が当該抗体の ピトープ(或いはエピトープの一部)である 推察される。

 次に、抗体の薬効評価について述べる。
 α9については炎症への関与が強く示唆され いることから、マウス病態モデル系として 、代表的な関節炎モデルであるマウスコラ ゲン抗体誘導関節炎等を用いるとよい。例 ば以下のような手順で、各抗体クローンの ウスコラーゲン抗体誘導関節炎に対する薬 を評価することができる。

 抗コラーゲン抗体カクテルをマウスに投 して、3日後にLPSを投与することにより、関 節炎の発症を誘導する。LPS投与の当日と3日 に、当該クローンのscFv-Fcを500、170、56μg/head で腹腔内投与する。経時的にマウス全肢の腫 脹の程度を観察・スコア化し、各群の平均値 の推移をグラフ化する。その結果として、scF v-Fcの濃度依存的な関節炎抑制効果が認めら れば、当該クローンは関節炎に対する薬効 有しているものと判断される。

 或いは、もう一つの代表的な関節炎モデ であるマウスコラーゲン誘導関節炎に対す 抑制効果を評価するとよい。コラーゲン抗 誘導関節炎では急性期の炎症反応が惹起さ るのに対し、コラーゲン誘導関節炎では免 反応を介した慢性的な炎症応答が引き起こ れることが知られている。例えば以下のよ な手順で、当該クローンのマウスコラーゲ 誘導関節炎に対する薬効を評価することが きる。

 ウシII型コラーゲンを3週間隔で2回マウス に投与することにより、関節炎の発症を誘導 する。2回目の投与の4日後、6日後、8日後、10 日後及び12日後に当該クローンのscFv-Fcを500、 170、56μg/headで腹腔内投与する。経時的にマ ス全肢の腫脹の程度を観察・スコア化し、sc Fv-Fcの濃度依存的な関節炎抑制効果が認めら るかどうかを評価する。

 また、関節リウマチは関節破壊を伴う慢 の炎症性疾患であり、関節破壊は患者の自 度を奪いQOLの大きな低下をもたらす。現在 でに使用されている関節リウマチ治療剤に 、抗炎症作用は有するものの、関節破壊を 果的に抑制するものは存在せず、今後は、 い抗炎症作用と共に、関節破壊抑制作用を せ持つ関節リウマチ治療剤の開発が望まれ いる。従って、例えば、以下のように当該 ローンの破骨細胞分化に対する抑制効果を 価してもよい。

 上記の関節炎誘導マウスから骨髄細胞を 取し、当該クローンのscFv-Fcと共にRANKL及びM -CSFを含んだαMEM培地で培養を行った後、破骨 細胞(TRAP陽性細胞)数を計数し、破骨細胞への 分化に対する抑制効果を評価する。また、別 の方法としては、関節炎の誘導と同時に当該 scFv-Fcを投与し、翌日に該マウスから骨髄細 を採取してRANKL及びM-CSFを含んだαMEM培地で 養し、破骨細胞数を計数して評価する。

 次に、抗体の親和性向上について述べる。
 抗体の可変領域について、アミノ酸置換等 改変を行うことにより、親和性や特異性が 上或いは変化した例は数多く報告されてい 。得られた抗体が十分な親和性や特異性を していない場合、当該抗体についても、例 ば以下のようにして親和性や特異性を向上 せることは可能と思われる。

 改変の方法としては、当該分野で公知の 々の方法が存在し、例えば、部位を特定し Ala等の特定のアミノ酸に置換する方法(例え ば、Current Protocols in Molecular Biology edit. 198 7, 5: Section 8, 1-8)やランダムアミノ酸を導 する方法(いずれもsite-directed mutagenesis法に り行うことができる)、更には部位を特定せ に抗体の可変領域にランダムにアミノ酸置 を導入する方法(random mutagenesis法により行 ことができる)(例えば、PCR methods and Applicat ions, 1992, 2: 28-33)等がある。

 多くの場合、抗体可変領域の内、抗原認 に最も大きく寄与しているのはVHのCDR3領域 あることから、本領域を改変の対象部位と てもよい。

 また、scFv改変体ディスプレイファージラ イブラリーを作製し、元のクローンよりも親 和性または特異性が向上した改変体をスクリ ーニングすることもできる。

 取得した改変体クローンについては、元 クローンと同様に、例えばscFvやscFv-Fcの分 形態で標品を調製し、反応性や機能阻害活 、更には薬効について評価するとよい。そ 結果、元のクローンより優れた性状とヒトα 9への反応性、そして薬効が確認されれば、α 9が病態形成に寄与する疾患に対する予防ま は治療薬となりうる可能性が大いに期待さ ることとなる。

 本発明者らは、上記の方法により抗α9イ テグリンscFvの取得を試みた結果、α9インテ グリンに対して特異的な反応性を有するscFv ローンMA9-413を取得することに成功した。scFv からscFv-Fcの形に分子形態を変換させて評価 た結果、本クローンは、ヒトα9及びマウスα 9の両方に対する反応性と、両方に対する機 阻害活性を有するという、これまでに報告 れたものとは全く異なる性状であることが 認された。

 さらに本発明者らは、クローンMA9-413につ いてエピトープ解析を行ない、ヒトα9インテ グリンの104番目のArgから122番目のAspまでの領 域(配列番号36:Swiss-Prot AC:Q13797に記載のヒトα 9インテグリン アミノ酸配列のN末端を1とし 番号付けを行った)が主として構成するエピ トープ、及び当該マウスα9インテグリンの105 番目のArgから123番目のAspまでの領域(配列番 37:GenBank ACCESSION:AJ344342に記載のマウスα9イ テグリン アミノ酸配列のN末端を1として番 付けを行った)が主として構成するエピトー プを認識することを明らかにした。この領域 はこれまでに他のインテグリンファミリーの 研究でその機能や役割についての報告がなさ れていないループ領域であり、本発明者らは ここをL1領域と命名した。

 この様な特性を有する抗体及び抗体フラ メントが有する薬効を調べた結果、マウス 節炎モデルにおいて炎症や関節腫脹を有意 抑制するという効果が確認された。

 すなわち、本発明のヒト抗α9インテグリ 抗体及び抗体フラグメントは、α9インテグ ンのL1領域が形成するエピトープを認識し マウスα9インテグリンとヒトα9インテグリ の両方に反応性を有するという、これまで 報告例のない性質を有するものである。こ ような性質を有する本発明の抗体及び抗体 ラグメントは、α9インテグリンが関与する 種疾患に対する新規な診断、予防または治 薬として産業利用が可能であることが期待 れる。

 また、本発明のヒト抗α9インテグリン抗 及び抗体フラグメントは、マウスα9インテ リンとヒトα9インテグリンの両方に反応性 有するので、上述したように、同一抗体で マウスを用いた薬理試験のデータを取得し 更にヒトを対象とした臨床試験を実施して 抗体医薬の開発を進めることが可能であり この点は産業上非常に大きなメリットであ と言える。

 また本発明は、L1領域という新たな中和 ピトープを見出したことにより、α9インテ リンひいてはインテグリンファミリー全般 関する研究或いは産業への応用に対して、 たな可能性を提供するものである。

 更に、本発明者らは、上記クローンMA9-413 に対する分子改変を行い、ヒトα9インテグリ ンに対する反応性が大きく向上した複数のク ローンMA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA9-212を得る とに成功した。これらのクローンは、MA9-413 り更に有効な薬剤となりうるものと期待さ る。

 本発明者らによって取得された、上記性 を有するscFvクローンのVH鎖及びVL鎖のアミ 酸配列及びそれをコードする塩基配列は、 記の通りである。

(1)クローンMA9-413
 クローンMA9-413のVH鎖のアミノ酸配列を配列 号1に示した。当該VH鎖のCDR1~3のアミノ酸配 を配列番号2~4に示した。すなわち、配列番 1に示すVH鎖のアミノ酸配列において、31番 ~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号2)、50 目~66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号3)、9 9番目~115番目のアミノ酸配列がCDR3(配列番号4) に対応している。また、当該VH鎖をコードす 遺伝子の塩基配列を配列番号5に示した。
 また、クローンMA9-413のVL鎖のアミノ酸配列 配列番号6に示した。当該VL鎖のCDR1~3のアミ 酸配列を配列番号7~9に示した。すなわち、 列番号6に示すVL鎖のアミノ酸配列において 23番目~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号 7)、51番目~57番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番 号8)、90番目~96番目のアミノ酸配列がCDR3(配列 番号9)に対応している。また、当該VL鎖をコ ドする遺伝子の塩基配列を配列番号10に示し た。

(2)クローンMA9-418
 クローンMA9-418のVH鎖のアミノ酸配列を配列 号12に示した。当該VH鎖のCDR1~3のアミノ酸配 列を配列番号13~15に示した。すなわち、配列 号12に示すVH鎖のアミノ酸配列において、31 目~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号13) 50番目~66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号1 4)、99番目~115番目のアミノ酸配列がCDR3(配列 号15)に対応している。また、当該VH鎖をコー ドする遺伝子の塩基配列を配列番号16に示し 。
 また、クローンMA9-418のVL鎖のアミノ酸配列 、クローンMA9-413のVL鎖と同一である(配列番 号6)。

(3)クローンHA9-107
 クローンMA9-107のVH鎖のアミノ酸配列を配列 号18に示した。当該VH鎖のCDR1~3のアミノ酸配 列を配列番号19~21に示した。すなわち、配列 号18に示すVH鎖のアミノ酸配列において、31 目~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号19) 50番目~66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号2 0)、99番目~115番目のアミノ酸配列がCDR3(配列 号21)に対応している。また、当該VH鎖をコー ドする遺伝子の塩基配列を配列番号22に示し 。
 また、クローンMA9-107のVL鎖のアミノ酸配列 、クローンMA9-413のVL鎖と同一である(配列番 号6)。

(4)クローンHA9-143
 クローンHA9-143のVH鎖のアミノ酸配列を配列 号24に示した。当該VH鎖のCDR1~3のアミノ酸配 列を配列番号25~27に示した。すなわち、配列 号24に示すVH鎖のアミノ酸配列において、31 目~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号25) 50番目~66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号2 6)、99番目~115番目のアミノ酸配列がCDR3(配列 号27)に対応している。また、当該VH鎖をコー ドする遺伝子の塩基配列を配列番号28に示し 。
 また、クローンHA9-143のVL鎖のアミノ酸配列 、クローンMA9-413のVL鎖と同一である(配列番 号6)。

(5)クローンHA9-212
 クローンHA9-212のVH鎖のアミノ酸配列を配列 号30に示した。当該VH鎖のCDR1~3のアミノ酸配 列を配列番号31~33に示した。すなわち、配列 号30に示すVH鎖のアミノ酸配列において、31 目~35番目のアミノ酸配列がCDR1(配列番号31) 50番目~66番目のアミノ酸配列がCDR2(配列番号3 2)、99番目~115番目のアミノ酸配列がCDR3(配列 号33)に対応している。また、当該VH鎖をコー ドする遺伝子の塩基配列を配列番号34に示し 。
 また、クローンHA9-212のVL鎖のアミノ酸配列 、クローンMA9-413のVL鎖と同一である(配列番 号6)。

 好ましい実施形態においては、本発明の ト抗α9インテグリン抗体または抗体フラグ ントは、配列番号2、配列番号3、配列番号4; 配列番号13、配列番号14、配列番号15;配列番 19、配列番号20、配列番号21;配列番号25、配 番号26、配列番号27;または配列番号31、配列 号32、配列番号33に各々示されるアミノ酸配 列からなる重鎖相補性決定領域(CDR1、CDR2、CDR 3)、及び配列番号7、配列番号8、配列番号9に 々示されるアミノ酸配列からなる軽鎖相補 決定領域(CDR1、CDR2、CDR3)を有する。より好 しい実施形態においては、該ヒト抗α9イン グリン抗体または抗体フラグメントは、配 番号31、配列番号32、配列番号33に各々示さ るアミノ酸配列からなる重鎖相補性決定領 (CDR1、CDR2、CDR3)を有する。

 さらに好ましい実施形態においては、本 明のヒト抗α9インテグリン抗体または抗体 ラグメントは、配列番号1、配列番号12、配 番号18、配列番号24、配列番号30のいずれか 示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領 (VH)、及び配列番号6に示されるアミノ酸配 からなる軽鎖可変領域(VL)を有する。最も好 しい実施形態においては、該ヒト抗α9イン グリン抗体または抗体フラグメントは、配 番号30に示されるアミノ酸配列からなる重 可変領域(VH)を有する。

 本発明で開示されるVH鎖及び/またはVL鎖は ファージ抗体法を用いてscFvの形で得られた のであり、その評価もscFv或いはscFv-Fcの分 形態で行ったが、原則として、本発明のヒ 抗α9インテグリン抗体または抗体フラグメ トは、それらの分子形態に限定されること ない。例えば、完全抗体としては、開示し VH鎖及び/またはVL鎖をヒト免疫グロブリンの 定常領域と連結した完全分子型、また、抗体 フラグメントとしては、scFv及びscFv-Fcのほか ヒト免疫グロブリンの定常領域の一部と組 合わせたFab、Fab'またはF(ab') 2 、さらにscFvをヒト免疫グロブリンのL鎖の定 領域と結合させた一本鎖抗体(scAb)などの他 抗体フラグメントも、本発明に含まれる。

 本発明はまた、上記の本発明の抗ヒトα9 ンテグリン抗体またはその抗体フラグメン のほか、該抗体または抗体フラグメントに のペプチドやタンパク質と融合させた融合 体や、ポリエチレングリコールなどの高分 修飾剤を結合させた修飾抗体をも包含する

 H鎖とL鎖のFvを適当なリンカーで連結させ たscFvを調製する場合、ペプチドリンカーと ては、例えばアミノ酸10~25残基からなる任意 の一本鎖ペプチドが用いられる。

 このようにして得られた本発明のヒト抗 9インテグリン抗体または抗体フラグメント 当該抗体または抗体フラグメントを他のペ チドまたはタンパク質と融合させた融合抗 、または当該抗体または抗体フラグメント 修飾剤が結合されてなる修飾抗体(以下、「 ヒト抗α9インテグリン抗体等」と称する)は 必要によりさらに精製された後、常法に従 て製剤化され、関節リウマチ等の自己免疫 患、アレルギー、移植片拒絶反応等の免疫 患、骨粗鬆症、慢性閉塞性肺疾患、癌等のα 9インテグリンが病態形成に関与する疾患の 防および/または治療に用いることができる

 本発明のヒト抗α9インテグリン抗体等は 好ましくは、関節リウマチの予防・治療剤 して用いることができる。これらの治療剤 剤型の例としては、注射剤、点滴用剤等の 経口剤とすることができ、静脈内投与、皮 投与等により投与することが好ましい(自己 免疫疾患治療剤とする場合もこれに準じれば よい)。また、製剤化にあたっては、薬学的 許容される範囲で、これら剤型に応じた担 や添加剤を使用することができる。

 上記製剤化に当たってのヒト抗α9インテ リン抗体等の添加量は、患者の症状の程度 年齢や使用する製剤の剤型あるいは抗体の 合力価等により異なるが、例えば、0.1mg/kg いし100mg/kg程度を用いればよい。

 本発明はまた、本発明の抗体又はそのフ グメントをコードする遺伝子、及びそれを む発現ベクターを提供する。本発明の発現 クターは、原核細胞および/または真核細胞 の各種の宿主細胞中で本発明の抗体又はその フラグメントをコードする遺伝子を発現し、 これらポリペプチドを産生できるものであれ ば特に制限されない。例えば、プラスミドベ クター、ウイルスベクター(例えば、アデノ イルス、レトロウイルス)等を挙げることが きる。

 本発明の発現ベクターは、本発明の抗体 はそのフラグメントをコードする遺伝子、 び当該遺伝子に機能可能に連結されたプロ ーターを含み得る。細菌中で本発明のポリ プチドを発現させるためのプロモーターと ては、宿主がエシェリキア属菌の場合、例 ば、Trpプロモーター、lacプロモーター、recA プロモーター、λPLプロモーター、lppプロモ ター、tacプロモーターなどが挙げられる。 母中で本発明の抗体又はそのフラグメント 発現させるためのプロモーターとしては、 えば、PH05プロモーター、PGKプロモーター、G APプロモーター、ADHプロモーターが挙げられ 宿主がバチルス属菌の場合は、SL01プロモー ター、SP02プロモーター、penPプロモーターな が挙げられる。また、宿主が哺乳動物細胞 の真核細胞である場合、CAGプロモーター(Niw a H. et al., Gene, 108, 193-200, 1991)、SV40由来 プロモーター、レトロウイルスのプロモー ー、ヒートショックプロモーターなどが挙 られる。

 宿主細胞として細菌、特に大腸菌を用い 場合、本発明の発現ベクターは、開始コド 、終止コドン、ターミネーター領域および 製可能単位をさらに含み得る。一方、宿主 して酵母、動物細胞または昆虫細胞を用い 場合、本発明の発現ベクターは、開始コド 、終止コドンを含み得る。また、この場合 エンハンサー配列、本発明のポリペプチド コードする遺伝子の5’側および3’側の非 訳領域、スプライシング接合部、ポリアデ レーション部位、または複製可能単位など 含んでいてもよい。また、目的に応じて通 用いられる選択マーカー(例えば、テトラサ クリン、アンピシリン、カナマイシン)を含 んでいてもよい。

 本発明はまた、本発明の遺伝子が導入さ た形質転換体を提供する。このような形質 換体は、例えば、本発明の発現ベクターで 主細胞を形質転換することにより作製でき 。形質転換体の作製に用いられる宿主細胞 しては、前記の発現ベクターに適合し、形 転換されうるものであれば特に限定されず 本発明の技術分野において通常使用される 然細胞あるいは人工的に樹立された細胞な 種々の細胞(例えば、細菌(エシェリキア属 、バチルス属菌)、酵母(サッカロマイセス属 、ピキア属など)、動物細胞または昆虫細胞( えば、Sf9)など)が例示される。形質転換は 自体公知の方法により行われ得る。

 本発明はまた、本発明の遺伝子を宿主細 に発現させること、即ち、このような形質 換体を用いることを含む、本発明の抗体又 そのフラグメントの生産方法を提供する。

 本発明の抗体又はそのフラグメントの生 において、形質転換体は、栄養培地中で培 され得る。栄養培地は、形質転換体の生育 必要な炭素源、無機窒素源もしくは有機窒 源を含んでいることが好ましい。炭素源と ては、例えばグルコース、デキストラン、 溶性デンプン、ショ糖などが、無機窒素源 しくは有機窒素源としては、例えばアンモ ウム塩類、硝酸塩類、アミノ酸、コーンス ープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エ ス、大豆粕、バレイショ抽出液などが例示 れる。また所望により他の栄養素(例えば、 無機塩(例えば塩化カルシウム、リン酸二水 ナトリウム、塩化マグネシウム)、ビタミン 、抗生物質(例えばテトラサイクリン、ネオ マイシン、アンピシリン、カナマイシン等) ど)を含んでいてもよい。

 形質転換体の培養は自体公知の方法によ 行われる。培養条件、例えば温度、培地のp Hおよび培養時間は、適宜選択される。例え 、宿主が動物細胞の場合、培地としては、 5~20%の胎児牛血清を含むMEM培地(Science,Vol.122,p .501,1952)、DMEM培地(Virology,Vol.8,p.396,1959)、RPMI164 0培地(J.Am.Med.Assoc.,Vol.199,p.519,1967)、199培地(proc .Soc.Exp.Biol.Med.,Vol.73,p.1,1950)等を用いることが きる。培地のpHは約6~8であるのが好ましく 培養は通常約30~40℃で約15~72時間行なわれ、 要により通気や撹拌を行うこともできる。 主が昆虫細胞の場合、例えば胎児牛血清を むGrace’s培地(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.82,p.8404,19 85)等が挙げられ、そのpHは約5~8であるのが好 しい。培養は通常約20~40℃で15~100時間行な れ、必要により通気や撹拌を行うこともで る。宿主が細菌、放線菌、酵母、糸状菌で る場合、例えば上記栄養源を含有する液体 地が適当である。好ましくは、pHが5~8である 培地である。宿主がE.coliの場合、好ましい培 地としてLB培地、M9培地(Millerら、Exp.Mol.Genet、 Cold Spring Harbor Laboratory,p.431,1972)等が例示さ る。かかる場合、培養は、必要により通気 撹拌しながら、通常14~43℃、約3~24時間行う とができる。宿主がBacillus属菌の場合、必 により通気、撹拌をしながら、通常30~40℃、 約16~96時間行うことができる。宿主が酵母で る場合、培地として、例えばBurkholder最小培 地(Bostian,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,Vol.77,p.4505,1980)が挙 げられ、pHは5~8であることが望ましい。培養 通常約20~35℃で約14~144時間行なわれ、必要 より通気や撹拌を行うこともできる。

 本発明の抗体又はそのフラグメントは、 述のような形質転換体を培養し、該形質転 体から回収、好ましくは単離、精製するこ ができる。単離、精製方法としては、例え 塩析、溶媒沈澱法等の溶解度を利用する方 、透析、限外濾過、ゲル濾過、ドデシル硫 ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳 動など分子量の差を利用する方法、イオン交 換クロマトグラフィーやヒドロキシルアパタ イトクロマトグラフィーなどの荷電を利用す る方法、アフィニティークロマトグラフィー などの特異的親和性を利用する方法、逆相高 速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差 を利用する方法、等電点電気泳動などの等電 点の差を利用する方法などが挙げられる。

 以下、本願発明を実施例に基づき詳細に 明するが、本願発明は何らこれらに限定さ るものではない。

《実施例1:抗原の調製》
 ヒトcDNA libraryを鋳型に用い、ヒトα9インテ グリン遺伝子の主要ドメイン領域、及びヒト α5インテグリン遺伝子のシグナル配列領域を クローニングした。ヒトα5インテグリン遺伝 子のシグナル配列領域とヒトα9インテグリン 遺伝子の主要ドメイン領域を連結し、pcDNA3.1( -)ベクター(Invitrogen)に組み込んだ、ヒトα9発 ベクターを構築した。

 マウスcDNA libraryを鋳型に用い、マウスα9 インテグリン遺伝子の全長をクローニングし 、pcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)に組み込み、マ スα9発現ベクターを構築した。

 また、コントロールとして用いるために ヒトα4インテグリンとマウスα4インテグリ についても以下の手順でクローニングを行 た。

 ヒトcDNA libraryを鋳型に用い、ヒトα4インテ グリン遺伝子の全長をクローニングし、pcDNA3 .1(+)ベクター(Invitrogen)に組み込み、ヒトα4発 ベクターを構築した。
 マウス脾臓由来cDNAを鋳型に用い、マウスα4 インテグリン遺伝子の全長をクローニングし 、pcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen)に組み込み、マ スα4発現ベクターを構築した。

 まず、CHO細胞にマウスα9インテグリン発 ベクター及びマウスα4インテグリン発現ベ ターをそれぞれ導入し、マウスα9インテグ ン発現細胞(以後、CHO/mα9と呼ぶ)及びマウス α4インテグリン発現細胞(以後、CHO/mα4と呼ぶ )をそれぞれ樹立した。

 次に、SW480細胞にヒトα9インテグリン発現 クター及びマウスα9インテグリン発現ベク ーをそれぞれ導入し、ヒトα9インテグリン 現細胞(以後、SW480/hα9と呼ぶ)及びマウスα9 ンテグリン発現細胞(以後、SW480/mα9と呼ぶ) それぞれ樹立した。
 これらの各種インテグリン発現細胞を、以 のスクリーニングや評価に使用した。

《実施例2:健常者からのファージライブラリ の構築》
 J. D. Marks ら(J. Mol. Biol., 222: 581-597, 1991) により報告されている方法を参考にし、健常 者20名由来末梢血由来リンパ球を出発材料と 、ファージライブラリーを構築した。構築 たVH(γ)-Vκ、VH(γ)-Vλ、VH(μ)-Vκ、VH(μ)-Vλの各 サブライブラリーはそれぞれ1.1×10 8 、2.1×10 8 、8.4×10 7 、5.3×10 7 クローンの多様性を有すると評価された。

《実施例3:α9インテグリン発現細胞を用いた クリーニング》
 以下の手順でα9に対する特異抗体の作製を ったが、まずはマウスα9をターゲットとし 機能阻害活性を有するモノクローナル抗体 構築し、マウスの病態モデル系を用いて薬 の有無を評価することとした。
 まず親株であるCHO細胞を用いて、ファージ ィスプレイライブラリーのサブトラクショ を行った後、CHO/mα9に反応させた。反応は1 間行い、1%BSA/PBSで3回洗浄した。
 洗浄後の細胞画分を10mM HClで懸濁し、10分 インキュベートしてファージを溶出させた 溶出液を1M Tris-HCl (pH7.5)と混ぜて中和した 、TG1に感染させ、ファージを増幅させた。
 このパンニングを4round行い、マウスα9に特 的に反応するファージクローンMA9-413を単離 した。

《実施例4:ファージ抗体のELISAによる反応性 析》
 MA9-413ファージ抗体のα9に対する反応性をCel l ELISAにより解析した。
 96ウェルプレート(costar)にCHO/mα9及びCHOを2×1 0 4 cells/100μL/wellで播種し、37℃、5%CO 2 で一晩培養した。培地を吸引し、PBSで洗浄し た後、1%BSA/PBSで希釈したファージ抗体を反応 させた。検出は、西洋わさびペルオキシダー ゼ(HRP)標識抗M13抗体(Amersham)とTMB(SIGMA)を組み わせて行った。波長450nm及び650nmにおける吸 度を、マイクロプレートリーダー(Molecular D evices)を用いて測定した。その結果を図1に示 。MA9-413のα9特異的な反応性が確認されたた め、以降の解析を行った。

《実施例5:クローンの配列解析》
 単離したクローンのscFv遺伝子のVH及びVLのDN A塩基配列をCEQ DTCS Quick Start Kit(BECKMAN COULTE R)を用いて決定した。得られたDNA塩基配列の 報をもとに、アミノ酸配列を推定した。

《実施例6:scFvの発現と精製》
 特異クローンMA9-413からプラスミドDNAを回収 して、常法に従って大腸菌JM83を形質転換し 。この大腸菌を2%グルコース及び100μg/mLのア ンピシリンを含む2×YT培地で一夜前培養を行 、2%グルコース及び100μg/mLのアンピシリン 含むSB培地に一部移植して本培養を行った。 対数増殖期に終濃度1mMになるようにIPTGを添 し、3時間培養してscFvの発現誘導を行った。 培養終了後菌体を遠心回収し、20%Sucrose及び10 mM EDTAを含む100mM Tris-HCl溶液(pH7.4)に懸濁して 氷中で30分菌体を静置した。次いで8,900×gで30 分間遠心し、上清を回収して0.45μmフィルタ 濾過後に得られた画分をペリプラズム画分 した。これを出発材料とし、SPカラムクロマ トグラフィー(Amersham)またはRPAS Purification Mod ule(Amersham)で常法に従ってscFvを精製し、得ら た溶出画分をPBSで透析してscFv精製標品とし た。

《実施例7:scFvのELISAによる反応性解析》
 実施例6で調製したscFv精製品について、α9 対する反応性をCell ELISAにより解析した。検 出にはHRP標識抗Etag抗体(Amersham)を用い、その は実施例4と同様の条件で行った。その結果 、図2に示すように、濃度依存的かつ特異的 反応性が確認された。

《実施例8:scFvのα9依存性細胞接着阻害能の評 価》
 MA9-413 scFvがα9依存性の細胞接着を阻害しう るかを、以下の方法で評価した。
 N末OPN改変体(RGD配列をRAAに改変したOPN変異 )をプレートに固定化し、ブロッキングを行 た。MA9-413 scFv精製品を添加した後、続けて SW480/mα9を添加し、37℃で1時間インキュベー した。細胞をCrystal violetとメタノールを用 て固定・染色して、洗浄後、接着した細胞 の色素をTriton X-100で抽出し、波長595nmにお る吸光度を測定した。
 その結果、図3に示すように、濃度依存的な 抑制作用が認められ、MA9-413はマウスα9に対 る機能阻害活性を有していることが確認さ た。

《実施例9:scFv-Fc発現ベクターの構築》
 次に、本クローンを二価の抗体にすること 、より機能阻害活性が向上することを期待 て、scFv-Fcの分子形態への変換を実施した。 MA9-413のscFv遺伝子領域をPCR増幅し、マウスFc 合蛋白質発現ベクターのSalIサイト及びBamHI イトに挿入することにより、図4に示すscFv-Fc の発現ベクターを構築した。本ベクターにお いては、細胞外への分泌発現を促すリーダー 配列とscFv遺伝子、及びマウスIgG1のFc領域を ードする遺伝子が連結されており、その発 はCAGプロモーターにより制御されている。 た本ベクターは、薬剤耐性遺伝子として、 オマイシン耐性遺伝子とアンピシリン耐性 伝子とを有している。

《実施例10:scFv-Fcの発現及び精製》
 Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて、構築した scFv-Fc発現ベクターをCHO-DG44株に遺伝子導入し た。500μg/mLのネオマイシンと10%ウシ血清を含 むα-MEM培地(Invitrogen)またはEX-CELL302培地(ニチ イバイオサイエンス)で培養を行い、培養上 清を回収した。常法に従ってProtein Aカラム ロマトグラフィーでアフィニティー精製を い、PBSで透析を行った。得られたscFv-Fc溶液 精製標品とした。

《実施例11:scFv-FcのELISAによる反応性解析》
 MA9-413 scFv-Fcのマウスα9及びヒトα9に対する 反応性をCell ELISAにより解析した。抗原にはS W480/mα9、SW480/hα9及びSW480を、希釈液には5%FBS 含む1%BSA/PBSを、検出にはHRP標識抗マウスIgG 体(ZYMED)を用い、その他は実施例4と同様の 件で行った。その結果、図5に示すように、 ウスα9及びヒトα9に対する濃度依存的かつ 異的な反応性が確認された。一方、コント ールとして評価したY9A2抗体は、ヒトα9には 反応したがマウスα9には全く反応性を示さな かった。この結果より、MA9-413はマウスα9と トα9のいずれをも認識しうるという、これ でに報告例のない新規な反応性を有する抗 クローンであることが確認された。

《実施例12:scFv-Fcのフローサイトメトリーに る反応性解析》
 さらに、MA9-413 scFv-Fcの反応性についてフロ ーサイトメトリーによる評価を行った。
 MA9-413 scFv-FcをSW480、SW480/mα9及びSW480/hα9の れぞれに対して反応させ、フローサイトメ リー解析を行ったところ、マウスα9及びヒ α9に対する反応性が確認された。また、CHO びCHO/mα4のそれぞれに対しても同様にして反 応性を評価したが、マウスα4に対する反応性 は確認されなかった(図6)。これらの結果から 、MA9-413 scFv-Fcはマウス及びヒトのα9に対し 高い特異性をもって反応していることが確 められた。

《実施例13:scFv-Fcのα9依存性細胞接着阻害能 評価》
 MA9-413 scFv-Fcがマウスα9及びヒトα9依存性の 細胞接着を阻害しうるかを評価した。
 まず、リガンドがOPNの場合の細胞接着につ て、SW480/mα9またはSW480/hα9を用い、その他 実施例8と同様の条件で行った。
 また、リガンドがVCAM-1の場合の細胞接着に いて、以下の方法で評価した。
 マウスVCAM-1/Fcをプレートに固定化し、ブロ キングを行った。細胞はSW480/mα9を用い、そ の他は実施例8と同様の条件で行った。
 その結果、図7に示すように、いずれにおい ても濃度依存的な抑制作用が認められ、MA9-41 3はマウスα9及びヒトのα9に対して機能阻害 性を有し、またリガンドがOPNの場合もVCAM-1 場合も同様に作用しうることが示された。

《実施例14:MA9-413のエピトープ解析》
 マウスα9及びヒトα9のいずれにも反応性を し、いずれに対しても機能阻害活性を示す いう、これまでに報告例のない性状を有す MA9-413について、エピトープを同定すること を目的として、以下の解析を行った。
 インテグリンファミリーのα鎖に共通する 徴として、細胞外領域N末端部分に位置する プロペラドメインが、リガンドとの相互作 部位であると言われている(Science, 296, 151-15 5, 2002)。そこでまず、中和エピトープはこの 領域内に存在するという仮説を立てた。

 次に、文献報告されていたヒトα4のβプ ペラドメインの立体構造モデルを参考にし (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94, 65-72, 1997)、ヒ α9のβプロペラドメインの立体構造モデル 作製した。そのモデルから、βシート領域及 びループ領域を推定した(後述)。

 また、α4のリガンド結合部位及び中和エ トープを解析した文献で、βプロペラドメ ン内のR1からR5と呼ばれるリピート部分(ルー プ領域に対応)の内、R2とR4がリガンド結合に 要であり、またR2、R3a及びR3cが中和エピト プになりうるとの結果が示されている(Proc.  Natl. Acad. Sci. USA, 94, 7198-7203, 1997)。これら のことから、MA9-413のエピトープもループ領 である可能性が高いと考えた。

 そこで、α4について得られている知見を 9に応用するために、我々がクローニングし ヒトα4、ヒトα9及びマウスα9について、β ロペラドメインのアミノ酸配列をアライン ントし、配列比較を行った(図8)。図8に示し ヒトα4、ヒトα9及びマウスα9それぞれのβ ロペラドメインのアミノ酸配列を、配列番 38、配列番号39及び配列番号40に示した。モ ルから推定されたループ領域の内、R1からR5 該当しない4つについては、L1~L4と命名する ととした。これまでの検討結果より、MA9-413 はヒトα9に対する反応性よりもマウスα9に対 する反応性の方が強いことが示唆されており 、そのことはエピトープ領域のアミノ酸配列 がヒトとマウスとでは多少異なっている可能 性を示唆している。そこで、ループ領域の内 、ヒトα9とマウスα9とでアミノ酸配列が異な っているものを選択したところ、R1、R4、R5及 びL1の4つに絞られた。

 次に、ヒトα9をベースとして上記4つのル ープ領域それぞれについてアミノ酸置換した 改変体を構築し、MA9-413との反応性を評価す こととした。まず、ヒトα9改変体の発現を 認するためのマーカーとしてEGFPを用いるこ とし、ヒトα9のC末端(細胞質領域)にEGFPを融 合させたヒトα9-EGFP融合体(以後、hα9-EGFPと呼 ぶ)の遺伝子を構築した。EGFP遺伝子はpEGFP-N1 クター(Clontech)を鋳型としたPCR法により増幅 、更にassembly PCRを行ってヒトα9遺伝子と連 結した。制限酵素切断部位を利用して、実施 例1に記載したヒトα9発現ベクターに組み込 、hα9-EGFP発現ベクターを構築した。

 上記ヒトα9-EGFP融合体発現ベクターをベ スとして、4つのループ領域改変体の発現ベ ターを作製した。R1については47番目のPro( 8の番号付けに従う。以下、同様)をAlaに置換 した改変体(以後、hα9/mR1-EGFPと呼ぶ)を、R4に いては243番目のLysをGluに置換した改変体(以 後、hα9/mR4-EGFPと呼ぶ)を、R5については286番 のGlyをAlaに置換した改変体(以後、hα9/mR5-EGFP と呼ぶ)を、L1については77番目のLysをArgに、7 8番目のAsnをThrに、81番目のThrをAlaに、82番目 SerをProに、89番目のGluをGlyに置換した改変 (以後、hα9/mL1-EGFPと呼ぶ)をsite-directed mutagene sis法により構築した。

 更に、βプロペラドメインが確かにエピ ープであることを確認するために、βプロペ ラドメイン全体をヒトα4のβプロペラドメイ と置換した改変体(以後、hα4/9-EGFPと呼ぶ)を 次のようにして構築した。ヒトα9遺伝子の制 限酵素BlpIサイトとStuIサイト間の領域がちょ どβプロペラドメインに相当するため、そ 領域に相当するヒトα4遺伝子領域をBlpIサイ とStuIサイトをそれぞれ付加したプライマー を用いて、ヒトα4発現ベクターを鋳型にPCR増 幅し、BlpIとStuIで切断後、上記ヒトα9-EGFP融 体発現ベクターのBlpIサイトとStuIサイト間の 領域と置換した。

 上記の野生型及び5種の改変体の発現ベク ターをCHO細胞にそれぞれ導入し、一過性発現 させた細胞集団を得て、野生型または改変型 α9-EGFPの発現と、それらの抗体との反応性を まずはFACScan(BECTON DICKINSON)を用いて評価し 。

 各種α9発現細胞集団を、2%正常ウサギ血清 0.05%NaN 3 とを含む1%BSA/PBSで希釈したMA9-413 scFv-Fcまた コントロール抗体と、氷上で30分間反応させ た。洗浄後、PerCP標識抗マウスIgG1抗体(BECTON  DICKINSON)と氷上で30分間反応させ、更に洗浄し た後、FACScanに取り込み解析を行った。その 果を図9に示す。横軸は野生型または改変型 9-EGFPの発現を示しており、縦軸は各種抗体 の反応性を示している。MA9-413 scFv-Fcの反応 ターンに関しては、hα9/mL1-EGFPのみで異なる という結果になっており、hα9-EGFPをはじめ他 の改変体と比較して、発現量当たりの反応性 が高くなっている。hα9/mL1-EGFPはL1領域をヒト の配列からマウスの配列に置換した改変体で あり、MA9-413はヒトα9よりもマウスα9に強く 応することから、この結果はMA9-413のエピト プがL1領域であることを強く示唆するもの ある。

 次に、Cell ELISAによる解析を行った。遺伝 導入後約24時間が経過した各種細胞を回収し て、96ウェルプレートに2×10 4 cells/100μL/wellで播種した。その他は実施例11 同様の条件で行った。その結果、図10に示す ように、hα9/mL1-EGFPのみが野生型hα9-EGFPより MA9-413 scFv-Fcと高く反応する傾向を示し、こ でもL1領域がMA9-413のエピトープであること 示唆する結果が得られた。

 上述したように、これまでα9インテグリ に関する構造学的な知見は非常に乏しい状 であったことから、今回初めて中和エピト プが明らかにされたことの意義は大きい。 た、これまで他のインテグリンファミリー α鎖でも注目されていなかったL1と名付けた 領域が、重要な機能を担っている、或いは機 能阻害のためのターゲットとなり得る可能性 を見出した今回の結果が、関連分野に与える インパクトは多大であると思われる。

《実施例15:マウス関節炎モデルに対するscFv-F cの薬効評価1》
 反応パターンのみならず、エピトープも新 な領域であることが分かったMA9-413のscFv-Fc ついて、マウス関節炎モデルに対して薬効 示しうるかを検討した。
 まず、代表的な関節炎モデルの一つである ウスコラーゲン抗体誘導関節炎に対する効 を調べた。抗コラーゲン抗体カクテルをマ スに投与して、3日後にLPSを投与することに より、関節炎の発症を誘導した。LPS投与の当 日と3日後に、MA9-413 scFv-Fcを500、170、56μg/head で、コントロールマウス抗体を500μg/headで腹 内投与した(各群4~8匹ずつ)。継時的にマウ 全肢の腫脹の程度を観察・スコア化し、各 の平均値の推移をグラフ化したものを図11に 示した。その結果、MA9-413 scFv-Fcの濃度依存 な関節炎抑制効果が認められた。500μg/head投 与群の6日目のスコアにおいては、ポジティ コントロール群のプレドニゾロン投与群と ぼ同等にまで抑制されており、十分に強い 効つまり抗炎症作用を有することが確認さ た。

《実施例16:マウス関節炎モデルに対するscFv-F cの薬効評価2》
 次に、もう一つの代表的な関節炎モデルで るマウスコラーゲン誘導関節炎に対してもM A9-413 scFv-Fcが薬効を示すかを評価した。実施 例15のコラーゲン抗体誘導関節炎では急性期 炎症反応が惹起されるのに対し、コラーゲ 誘導関節炎では慢性的な炎症応答が引き起 されることが知られている。
 ウシII型コラーゲンを3週間隔で2回マウスに 投与することにより、関節炎の発症を誘導し た。2回目の投与の4日後、6日後、8日後、10日 後及び12日後にMA9-413 scFv-Fcを500、170、56μg/hea dで、コントロールマウス抗体を500μg/headで、 ポジティブコントロールとしてエタネルセプ トを500、150μg/headで腹腔内投与した(各群10匹 つ)。継時的にマウス全肢の腫脹の程度を観 察・スコア化し、各群の平均値の推移をグラ フ化したものを図12に示した。その結果、MA9- 413 scFv-Fcの濃度依存的な関節炎抑制効果が認 められた。500μg/head投与群においては、ポジ ィブコントロール群のエタネルセプト500μg/ head投与群を上回る抑制効果であり、十分に い薬効を有することが確かめられた。

《実施例17:破骨細胞分化に対するscFv-Fcの薬 評価》
 さらに、関節炎モデルにおける破骨細胞分 に対する効果を調べた。上記実施例15で使 したマウスコラーゲン抗体誘導関節炎にお て、関節炎を惹起するLPSの投与翌日のマウ の大腿骨より骨髄細胞を採取し、RANKL(最終 度30ng/mL)およびM-CSF(最終濃度100ng/mL)を含んだ αMEM培地にて培養することにより破骨細胞の 化を誘導した。培養交換は開始後3日目に1 行った。培養開始後7日目にTRAP(酒石酸抵抗 酸フォスファターゼ)染色を行い、染色され 細胞を破骨細胞として細胞数を計測した。 お、ネガティブコントロールとして、抗HBs 体を使用した。その結果、関節炎を誘導し マウスの骨髄細胞にMA9-413を2μg/mL加えてお と破骨細胞への分化を強く抑制した(図13上) また、LPS投与と同時にマウスにMA9-413 250μg/ headを静脈内投与した翌日に採取した骨髄細 を用いた場合においても破骨細胞の分化を 制した(図13下)。

 上記の実施例15と実施例16の結果から、MA9 -413は急性期と慢性期のいずれの炎症反応を 強く抑制する作用を有することが明らかと った。また、上記の実施例17の結果から、MA9 -413が抗炎症効果と共に、炎症下における関 破壊抑制作用を併せ持つことが強く示唆さ た。従って、本クローンについては、従来 ヒトの関節炎の治療或いは予防のための薬 よりも優れた薬剤として利用可能であるこ が期待される。

《実施例18:MA9-413の親和性向上》
 MA9-413はヒトα9よりもマウスα9に強く反応す る抗体であるため、ヒトの関節炎への適用を 目指すには、親和性が十分でない可能性が考 えられる。そこで、MA9-413の分子改変による 和性の向上を試みた。多くの場合、抗体可 領域の内、抗原認識に最も強く寄与してい のはVHのCDR3領域である。MA9-413のVHのCDR3の配 は配列番号4に示した通りであるが、Tyrのク ラスターが特徴的に配置されている。本クロ ーンの可変領域について立体構造モデルを作 製し解析した結果、108番目のTyr及び109番目の Tyrが特に抗原結合面において突出して配置さ れている可能性が見出された。そこで、これ らのTyrの抗原認識における役割を評価するた め、108番目のTyrをAlaに置換した改変体scFv(以 、MA9-418と呼ぶ)及び109番目のTyrをAlaに置換 た改変体scFv(以後、MA9-419と呼ぶ)の発現ベク ーを、site-directed mutagenesis法により構築し 。

 本ベクターより発現させたscFvについてCel l ELISAにより解析した結果、MA9-413に比べてMA9 -418ではマウス及びヒトのα9に対する反応性 向上しており、MA9-419ではマウス及びヒトの 9に対する反応性がほとんど消失していた。 れらの結果より、108番目のTyrを至適なアミ 酸と置換することにより、α9に対する反応 が向上すること、109番目のTyrは抗原認識に 須であるため他のアミノ酸への置換は望ま くないことが示唆された。

 そこで、108番目への部位特異的なアミノ酸 換やDiversify PCR Random Mutagenesis Kit(Clontech) 用いたerror-prone PCRといった進化工学的手法( 変異→淘汰→選択→増殖のサイクル)により ヒトα9との反応性を指標に特異クローンの クリーニングを行った。複数回の選択ステ プを行い、最終的にヒトα9への反応性が向 した3クローンHA9-107、HA9-143及びHA9-212を単離 た。
 それらのクローンについて実施例5と同様に DNA塩基配列を解析し、アミノ酸配列を推定し た。クローンの配列を図14に示す。

《実施例19:scFvの発現及び精製》
 上記のクローンMA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA9- 212について、プラスミドDNAの宿主を大腸菌株 JM83に変えて、scFvの発現と精製を行った。大 菌形質転換体を2%グルコース及び100μg/mLの ンピシリンを含む2×YT培地で培養を行い、対 数増殖期に終濃度1mMになるようにIPTGを添加 て一夜培養することにより、scFvの発現を誘 した。培養終了後菌体を回収し、20%Sucrose及 び10mM EDTAを含む100mM Tris-HCl溶液(pH7.4)に懸濁 て氷中で30分菌体を静置した。次いで8,900×g で30分間遠心し、上清を回収して0.45μmフィル ター濾過後に得られた画分をペリプラズム画 分とした。これを出発材料とし、RPASPurificatio n Module(Amersham)で常法に従ってscFvを精製し、 られた溶出画分をPBSで透析してscFv精製標品 とした。

 精製したscFvについて、検出にHRP標識抗Eta g抗体(Amersham)を用いるほかは実施例11と同様 して、Cell ELISAにより反応性を解析した。そ の結果、図15に示すように、MA9-413に比べてMA9 -418、HA9-107、HA9-143及びHA9-212はヒトα9に対す 反応性が向上しており、特にHA9-212では向上 程度が顕著であった。

《実施例20:scFv-Fcの構築、発現及び精製》
 MA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA9-212についてscFv-F c遺伝子の構築を、実施例9と同様にして行っ 。
 scFv-Fcの発現は、フリースタイル293-F細胞(Inv itrogen)を宿主とした一過性発現により行った 293フェクチン試薬(Invitrogen)を用いて遺伝子 入を行い、フリースタイル293発現培地(Invitr ogen)で2~3日培養後、培養上清を遠心及び0.22μm フィルター濾過により回収した。
 精製はProtein Aカラムクロマトグラフィーを 用いて常法に従って行った。PBS透析後に得ら れたscFv-Fc溶液を精製標品とした。
 調製したscFv-Fc精製品のマウスα9及びヒトα9 に対する反応性を、実施例11と同様にCell ELIS Aにより解析した。その結果、図16に示すよう に、MA9-413に比べてMA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA 9-212はヒトα9に対する反応性が向上していた

《実施例21:改変体クローンのエピトープ解析 》
 MA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA9-212がMA9-413と同 にα9のL1領域を認識しているかどうかを調べ るために、以下の検討を行った。MA9-413のフ ージ抗体を一定濃度にして、実施例4と同様 行ったCell ELISAにおいて、各改変体のscFv-Fc 段階希釈してサンプルと同時に添加するこ により、MA9-413のファージ抗体に対して競合 阻害がかかるか否かを評価した。その結果、 図17に示すように、濃度依存的に競合阻害が かることが確認された。よって、MA9-418、HA9 -107、HA9-143及びHA9-212についてもMA9-413と同様 α9のL1領域を認識していることが強く示唆さ れた。

《実施例22:改変体クローンのα9依存性細胞接 着阻害能の評価》
 各改変体クローンのscFv-Fcについて、ヒトα9 及びマウスα9依存性の細胞接着に対する阻害 能を、実施例13と同様に評価した。表1にIC50 をまとめた。いずれの改変体クローンも、 リジナルのMA9-413と比較して、ヒトα9に対し 強い阻害能を有することが確かめられた。 に、HA9-212については、MA9-413と比較して、 1000倍のヒトα9に対する阻害能を有していた

《実施例23:IgGの作製と調製》
 ヒトα9に対して最も高い反応性を示したク ーンHA9-212について、IgGの分子形態における 反応性を検討した。IgGの遺伝子構築は以下の 手順で行った。まず、HA9-212のVH遺伝子領域を PCR増幅し、ヒトH鎖発現ベクターのクローニ グサイトに挿入した。本ベクターにおいて 、細胞外への分泌発現を促すリーダー配列 VH遺伝子、及びヒトIgG1定常領域の遺伝子が 結されており、その発現はCAGプロモーター より制御されている。また本ベクターは、 剤耐性遺伝子として、ネオマイシン耐性遺 子とアンピシリン耐性遺伝子とを有してい 。次に、MA9-212のVL遺伝子領域をPCR増幅し、 トL鎖発現ベクターのクローニングサイトに 入した。本ベクターにおいては、細胞外へ 分泌発現を促すリーダー配列とVL遺伝子、 びヒトκ鎖定常領域の遺伝子が連結されてお り、その発現はCAGプロモーターにより制御さ れている。また本ベクターは、dhfr遺伝子と ンピシリン耐性遺伝子とを有している。
 IgGの発現は、COS-7細胞及びフリースタイル29 3-F細胞(Invitrogen)を宿主とした一過性発現によ り行った。COS-7細胞に対してはLipofectamine2000(I nvitrogen)を用いて、フリースタイル293-F細胞に 対しては293フェクチン試薬(Invitrogen)を用いて 遺伝子導入を行い、2~3日培養後、培養上清を 遠心及び0.22μmフィルター濾過により回収し 。

《実施例24:IgGの反応性解析》
 培養上清中のIgG発現量をヒトIgG定量ELISAに り定量し、各IgG濃度におけるヒトα9及びマ スα9に対する反応性をCell ELISAにより解析し た。検出にはHRP標識抗ヒトIgG(Fc)抗体(American  Qualex)を用い、その他は実施例11と同様の条件 で行った。その結果、図18に示すように、ヒ α9及びマウスα9に対する濃度依存的かつ特 的な反応性が確認され、特にヒトα9に対し は強い反応性を示した。この結果より、HA9- 212はIgGの分子形態においてもα9に対する反応 性を示すことが確認された。

 以上の結果より、MA9-413に改変を加えるこ とにより得られたMA9-418、HA9-107、HA9-143及びHA9 -212は、MA9-413が有する、マウスα9とヒトα9の ずれにも反応性を有し、また、L1領域を認 するという性質はそのままに、ヒトα9に対 る反応性及び阻害能が大きく向上すること 確認された。さらに、HA9-212についてはIgGの 子形態においてもヒトα9に対する強い反応 を示した。これらのことからMA9-413改変体に ついては、MA9-413より優れたヒトの関節炎の 療或いは予防のための薬剤としての利用可 性が大いに期待される。

 本発明のヒトモノクローナル抗体及び該抗 フラグメントは、ヒト由来抗α9インテグリ 抗体の可変領域を有し、ヒト及びマウスの 9インテグリンに対する特異的な反応性と、 9インテグリン依存の細胞接着に対する阻害 性、更に関節炎に対する抑制作用を有する とから、α9インテグリンが関与する各種疾 に対する新たな診断、予防または治療薬と ての利用が期待できる。
 本出願は、日本で出願された特願2007-340203( 願日:平成19年12月28日)を基礎としており、 の内容はすべて本明細書に包含されるもの する。