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Title:
INORGANIC NANOPARTICLE-POLYMER COMPOSITE AND METHOD FOR PRODUCING THE SAME
Document Type and Number:
WIPO Patent Application WO/2009/096365
Kind Code:
A1
Abstract:
Disclosed is an inorganic nanoparticle-polymer composite wherein aggregation of inorganic nanoparticles is suppressed, thereby enabling high dispersion of the inorganic nanoparticles. Also disclosed is a method for producing the inorganic nanoparticle-polymer composite. Specifically disclosed is an inorganic nanoparticle-polymer composite, which is a composite of inorganic nanoparticles and a polymer. The average dispersed particle diameter of the inorganic nanoparticles in the composite is not less than 0.5 nm but not more than 30 nm, and not less than 70% of the inorganic nanoparticles in the composite are dispersed therein in such a manner that the inorganic nanoparticles have a dispersed particle diameter of not more than 30 nm.

Inventors:
OHMORI SATORU (JP)
CHEN JINFENG (JP)
WU HUANYOU (JP)
Application Number:
PCT/JP2009/051214
Publication Date:
August 06, 2009
Filing Date:
January 26, 2009
Export Citation:
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Assignee:
TEIJIN LTD (JP)
OHMORI SATORU (JP)
CHEN JINFENG (JP)
WU HUANYOU (JP)
International Classes:
C08L101/02; B22F1/054; B22F1/102; B82B1/00; B82B3/00; C08K3/08; C08K9/04; D01D5/04; D04H1/413; D04H1/728
Foreign References:
JP2004091798A2004-03-25
JPH06287355A1994-10-11
JP2001114949A2001-04-24
JP2004151313A2004-05-27
JP2006008969A2006-01-12
JP2005082640A2005-03-31
JPH08302138A1996-11-19
JPS62223206A1987-10-01
Attorney, Agent or Firm:
AOKI, Atsushi et al. (Toranomon 37 Mori Bldg.5-1, Toranomon 3-chom, Minato-ku Tokyo 23, JP)
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Claims:
 無機ナノ粒子と高分子との複合体であり、
 前記複合体における前記無機ナノ粒子の平均分散粒径が、0.5nm以上30nm以下であり、且つ
 前記複合体における前記無機ナノ粒子の70%以上が、分散粒径30nm以下の形態で分散している、
無機ナノ粒子-高分子複合体。
 前記無機ナノ粒子の含有量が、複合体全体に対して10質量%以上である、請求項1記載の複合体。
 前記無機ナノ粒子が、金属ナノ粒子、金属酸化物ナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、炭化物ナノ粒子、及びホウ化物ナノ粒子、並びにそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1又は2記載の複合体。
 前記無機ナノ粒子の表面が界面活性剤で被覆されている、請求項1~3のいずれかに記載の複合体。
 前記無機ナノ粒子が金属ナノ粒子であり、且つ前記高分子が金属配位性官能基を有する、請求項1~4のいずれかに記載の複合体。
 前記金属配位性官能基が、酸素、窒素、硫黄、及びリンからなる群から選択される少なくとも1種の元素を含む基である、請求項5に記載の複合体。
 前記金属配位性官能基が、アミン基及び/又はチオール基である、請求項6に記載の複合体。
 前記金属配位性官能基を有する高分子が、前記金属配位性官能基を有するシランカップリング剤と水酸基を有する高分子との反応生成物である、請求項5~7のいずれかに記載の複合体。
 金属配位性官能基を有する高分子に前記金属ナノ粒子を分散させることを含む、請求項5~8のいずれかに記載の複合体を製造する方法。
 金属配位性官能基を有するシランカップリング剤と水酸基を有する高分子とを反応させて、金属配位性官能基を有する高分子を作成することを更に含む、請求項9に記載の方法。
 前記複合体における前記無機ナノ粒子の平均分散粒径が、1nm以上20nm以下であり、且つ
 前記複合体における前記無機ナノ粒子の90%以上が、分散粒径20nm以下の形態で分散している、
請求項1~8のいずれかに記載の複合体。
 平均繊維径が50nm以上2μm以下の繊維の形態である、請求項1~8及び11のいずれかに記載の複合体。
 無機ナノ粒子と高分子とを含む繊維形成用組成物を調製すること、及び
 静電紡糸法にて前記繊維形成用組成物を噴出することによって、繊維を紡糸すること、
を含む、請求項12に記載の繊維の形態である複合体を製造する方法。
 請求項12に記載の繊維の形態である前記複合体を、前記無機ナノ粒子の分散状態を維持する条件で加圧して成形することを含む、請求項1~8及び11のいずれかに記載の複合体を製造する方法。
 雰囲気の減圧を伴って前記加圧を行う、請求項14に記載の方法。
 バルクの形態である、請求項1~8及び11のいずれかに記載の複合体。
 成形されている、請求項16に記載の複合体。
Description:
無機ナノ粒子-高分子複合体及び その製造方法

 本発明は、無機ナノ粒子-高分子複合体、 及びその製造方法に関する。より詳しくは本 発明は、無機ナノ粒子の凝集が抑制されてい ることによって無機ナノ粒子が高度に分散し ている無機ナノ粒子-高分子複合体、及びそ 製造方法に関する。

 無機ナノ粒子の合成に関する研究は、め ましい発展を遂げている。そして近年、優 た単分散性を有し、均一な形態からなるナ 粒子の合成法が、次々に報告されている。

 無機ナノ粒子は、サイズ効果や量子効果 により、化学的、物理的、電気的、磁気的 光学的特性が、バルク材料と大きく異なっ いる。このような無機ナノ粒子の顕著なサ ズ効果や量子効果が現れるのは、粒径が非 に小さい場合、例えば粒径が30nm以下である 場合に限られている。しかしながら、粒径が 非常に小さい場合、粒子の表面エネルギーが 非常に高くなることから、粒子が自発的に互 いに凝集してしまい、各々の無機ナノ粒子の 優れた特性を材料特性として十分に発揮する ことができなくなる。

 したがって、無機ナノ粒子をマトリック 材料中に均一に分散させ、更にその分散状 を制御して、固定化する技術の確立は、無 ナノ粒子の応用研究にとって非常に重要な 題であった。無機ナノ粒子を分散させるた のマトリックス材料としては、電気絶縁性 び成型性等に優れていることから、高分子 料が最もよく用いられている。

 例えば高分子中に無機ナノ粒子を分散さ てなる無機ナノ粒子-高分子複合体(有機・ 機ナノコンポジット材料)は、電子材料、光 材料、磁性材料、触媒材料、自動車材料等 分野において既に使用されつつある。また 無機ナノ粒子-高分子複合体は、電子材料、 光学材料、磁性材料、医薬品、化粧品、顔料 、環境材料、機械材料、記憶素子材料、超磁 性材料等の多くの分野で、その透明性、耐熱 性、強度、導電性等の種々の特性に関して期 待されている。

 無機ナノ粒子-高分子複合体の製造方法に ついては、大きく分けると下記の3つの方法 知られている。

 無機ナノ粒子-高分子複合材料を製造する 第1の方法は、無機ナノ粒子を直接高分子材 に分散させる方法(直接混練法)(特許文献1及 2参照)である。また、無機ナノ粒子-高分子 合材料を製造する第2の方法は、有機モノマ ーを無機ナノ粒子と配合し、その後有機モノ マーを重合させる方法(in-situ重合法)(特許文 3~7参照)である。

 しかしながら、これら第1及び第2の方法 は、無機ナノ粒子を高分子中に均一に分散 せることは極めて困難であり、多くの場合 無機ナノ粒子は高分子中で凝集して存在し しまう。このため、たとえ小さなサイズの 機ナノ粒子を用いたとしても、無機ナノ粒 の凝集塊全体としての特性しか示さなくな 、無機ナノ粒子に起因して得られるさまざ な機能を引き出すことが困難となっていた

 また、無機ナノ粒子-高分子複合材料を製 造する第3の方法は、イオンドープ還元法(特 文献8参照)である。この方法は、主として 属ナノ粒子の分散に適用されるものであり 具体的には、高分子材料に金属イオン又は 属錯体をドープした後、還元ガス中での過 還元処理により、高分子材料中において金 ナノ粒子を析出させる方法である。

 このイオンドープ還元法によれば、金属 ノ粒子の均一分散はある程度実現できるも の、ナノ粒子の粒径と分散性を制御するこ が困難であり、また、還元しきれない残留 属イオンによる材料特性の劣化も発生して まう。このため、イオンドープ還元法によ ても、目標の無機ナノ粒子-高分子複合体を 得ることは困難であった。

特開2000-294441号公報

特開2007-314667号公報

特開昭62-84155号公報

特開平10-72552号公報

特開2002-179931号公報

特開2007-56115号公報

特開2007-239022号公報

特開2005-139438号公報

 本発明は、上記の背景技術に鑑みてなさ たものであり、その目的とするところは、 機ナノ粒子の凝集が抑制されていることに って無機ナノ粒子が高度に分散している無 ナノ粒子-高分子複合体、及びその製造方法 を提供することにある。

 上記課題を鑑みた鋭意研究の結果、本件 明者らは、金属ナノ粒子に対して配位性を す金属配位性官能基を含有する高分子と、 属ナノ粒子との混合を行い、高分子中での ノ粒子の分散状態をこの金属配位性官能基 よって制御することにより、上記の課題を 決できることを見出し、本発明を完成する 至った。

 また、上記課題を鑑みた鋭意研究の結果 本件発明者らは、無機ナノ粒子を均一に分 させた高分子溶液を用いて、この高分子溶 から静電紡糸法(エレクトロスピニング法) て繊維集合体を作成することにより、上記 課題を解決できることを見出し、本発明を 成するに至った。

 すなわち本発明は下記に示すようなもの ある:

 〈1〉無機ナノ粒子と高分子との複合体であ り、
 上記複合体における上記無機ナノ粒子の平 分散粒径が、0.5nm以上30nm以下であり、且つ
 上記複合体における上記無機ナノ粒子の70% 上が、分散粒径30nm以下の形態で分散してい る、
無機ナノ粒子-高分子複合体。
 〈2〉上記無機ナノ粒子の含有量が、複合体 全体に対して10質量%以上である、上記〈1〉 記載の複合体。
 〈3〉上記無機ナノ粒子が、金属ナノ粒子、 金属酸化物ナノ粒子、金属窒化物ナノ粒子、 炭化物ナノ粒子、及びホウ化物ナノ粒子、並 びにそれらの組み合わせからなる群より選択 される、上記〈1〉又は〈2〉項記載の複合体
 〈4〉上記無機ナノ粒子の表面が界面活性剤 で被覆されている、上記〈1〉~〈3〉項のいず れかに記載の複合体。
 〈5〉上記無機ナノ粒子が金属ナノ粒子であ り、且つ上記高分子が金属配位性官能基を有 する、上記〈1〉~〈4〉項のいずれかに記載の 複合体。
 〈6〉上記金属配位性官能基が、酸素、窒素 、硫黄、及びリンからなる群から選択される 少なくとも1種の元素を含む基である、上記 5〉項に記載の複合体。
 〈7〉上記金属配位性官能基が、アミン基及 び/又はチオール基である、上記〈6〉項に記 の複合体。
 〈8〉上記金属配位性官能基を有する高分子 が、上記金属配位性官能基を有するシランカ ップリング剤と水酸基を有する高分子との反 応生成物である、上記〈5〉~〈7〉のいずれか に記載の複合体。
 〈9〉金属配位性官能基を有する高分子に上 記金属ナノ粒子を分散させることを含む、上 記〈5〉~〈8〉項のいずれかに記載の複合体を 製造する方法。
 〈10〉金属配位性官能基を有するシランカ プリング剤と水酸基を有する高分子とを反 させて、金属配位性官能基を有する高分子 作成することを更に含む、上記〈9〉項に記 の方法。
 〈11〉上記複合体における上記無機ナノ粒 の平均分散粒径が、1nm以上20nm以下であり、 つ
 上記複合体における上記無機ナノ粒子の90% 上が、分散粒径20nm以下の形態で分散してい る、
上記〈1〉~〈8〉項のいずれかに記載の複合体 。
 〈12〉平均繊維径が50nm以上2μm以下の繊維の 形態である、上記〈1〉~〈8〉及び〈11〉項の ずれかに記載の複合体。
 〈13〉無機ナノ粒子と高分子とを含む繊維 成用組成物を調製すること、及び
 静電紡糸法にて上記繊維形成用組成物を噴 することによって、繊維を紡糸すること、
を含む、上記〈12〉項に記載の繊維の形態で る複合体を製造する方法。
 〈14〉上記〈12〉項に記載の繊維の形態であ る前記複合体を、前記無機ナノ粒子の分散状 態を維持する条件で加圧して成形することを 含む、上記〈1〉~〈8〉及び〈11〉項のいずれ に記載の複合体を製造する方法。
 〈15〉雰囲気の減圧を伴って上記加圧を行 、上記〈14〉項に記載の方法。
 〈16〉バルクの形態である、上記〈1〉~〈8 及び〈11〉項のいずれかに記載の複合体。
 〈17〉成形されている、上記〈16〉項に記載 の複合体。

 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体では 、無機ナノ粒子の凝集が抑制されていること によって無機ナノ粒子が高度に分散している 。

 したがって、本発明の無機ナノ粒子-高分 子複合体によれば、含有されているナノ粒子 に特有の機能を、十分に利用することができ る。このような本発明の無機ナノ粒子-高分 複合体によれば、ナノ粒子特有の機能を必 とする各種材料、例えば電子材料、光学材 、磁性材料、医薬品、化粧品、顔料、環境 料、機械材料、触媒材料、自動車材料、記 素子材料、超磁性材料等として幅広く用い ことが可能であり、したがって新しい機能 材料として非常に有用である。また、本発 の無機ナノ粒子-高分子複合体によれば、無 ナノ粒子と高分子の組み合わせ、又は複数 無機ナノ粒子の使用、2種以上の高分子の使 用等により、要求特性に合わせた種々の機能 を有する複合材料の作成を実現することがで きる。

 また更に、本発明の無機ナノ粒子-高分子 複合体によれば、含有されているナノ粒子に 特有の機能を、バルクの形態で、特に成形さ れたバルクの形態で利用することができる。 なお、本発明に関して「バルク」は、複合体 が三次元的な拡がりを有し、それによって表 面の効果が無視でき、且つ特定の形状を有す る材料としての特性を発揮できる状態にある 複合体を意味している。すなわち、本発明に 関して「バルク」は、微細繊維、微細粉末等 とは反対の意味で用いられる概念である。

実施例1で得られたPVB-Ag複合体フィルム の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(75万倍)である。 実施例2で得られたPVB-Ag複合体フィルム の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(75万倍)である。 実施例3で得られたPVB-Ag複合体フィルム の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(75万倍)である。 比較例1で得られたPS-Ag複合体フィルム 透過型電子顕微鏡(TEM)写真(1万倍)である。 静電紡糸法のイメージである。 倒立包埋法によるTEM観察用サンプル作 イメージである。 実施例B1で得られたAgナノ粒子分散PVB繊 維Agナノ粒子含有PVB(1000)繊維堆積物の光学顕 鏡透過写真(5000倍)である。 実施例B1で得られたAgナノ粒子分散PVB繊 維の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(観察倍率36万 )である。 実施例B2で得られたAgナノ粒子分散PVB繊 維の透過型電子顕微鏡(TEM)写真(観察倍率36万 )である。 実施例B3で得られたAgナノ粒子分散PS-MA A共重合体繊維の透過型電子顕微鏡(TEM)写真( 察倍率36万倍)である。 比較例1で得られたAgナノ粒子分散PVBフ ィルムの透過型電子顕微鏡(TEM)写真(観察倍率 36万倍)である。 実施例B5で得られたFe 3 O 4 ナノ粒子分散PVB繊維の堆積物の光学顕微鏡写 真(3000倍)である。 実施例B6で得られたFe 3 O 4 ナノ粒子分散PVB繊維の堆積物の透過電子顕微 鏡(TEM)写真である(36万倍)。 実施例B7で得られた水分散系Fe 3 O 4 ナノ粒子分散したPVP複合繊維の光学顕微鏡写 真(3000倍)である。 実施例B8で得られた水分散系Fe 3 O 4 ナノ粒子を分散したPEO複合繊維の光学顕微鏡 写真(3000倍)である。 実施例B8で得られたAgナノ粒子分散PVB ルクサンプルの透過電子顕微鏡写真である 実施例B9で得られたFe 3 O 4 ナノ粒子分散PVBバルクサンプルの透過電子顕 微鏡写真である。

 以下、本発明の詳細について説明する。

 〈〈無機ナノ粒子-高分子複合体〉〉
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体は、無 機ナノ粒子と高分子との複合体であり、複合 体における無機ナノ粒子の平均分散粒径が、 0.5nm以上30nm以下であり、且つ複合体における 無機ナノ粒子の70%以上が、分散粒径30nm以下 形態で分散している。

 (複合体における無機ナノ粒子の分散状態( 均分散粒径))
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体におけ る無機ナノ粒子の平均分散粒径は、0.5nm以上 例えば1nm以上又は2nm以上であって、且つ30nm 以下、例えば20nm以下又は10nm以下である。平 分散粒径が充分に小さい場合には、ナノ粒 に特有の特性を効果的に発現することがで る。

 なお、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合 体に含有されている無機ナノ粒子の「平均分 散粒径」は、透過型電子顕微鏡(FEI社製、商 名:TECNAI G2)を用いて加速電圧120kVにて、又は 分析電子顕微鏡(AEM)(日本電子社製、商品名:JE M2010)を用いて加速電圧200kVにて、無機ナノ粒 -高分子複合体の観察及び撮影を実施し、そ の後、取得した画像につき、画像解析ソフト (NEXUS NEW QUBE)を用いて、複合体中において孤 立分散している各々の凝集粒子又は一次粒子 に関して、画像上で同一の面積をもつ円の径 を求める画像解析を行い、この径の平均値を 得られる値である。

 (複合体における無機ナノ粒子の分散状態( 散粒径分布))
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体では、 複合体中に分散している無機ナノ粒子の70%以 上、例えば90%以上が、分散粒径30nm以下、例 ば20nm以下又は10nm以下の形態で分散している 。また特に、本発明の無機ナノ粒子-高分子 合体では、分散粒径が50nm以上の凝集粒子が 質的に存在しない。

 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体中に おいて無機ナノ粒子が高度に分散している場 合、光散乱が抑えられることから、光学材料 への応用展開が可能となる。また、ナノ粒子 の表面積が大きくなるため、当該ナノ粒子が 有する機能特性をより明確に発現することが できる。更に、無機ナノ粒子が特に高度に分 散している場合、例えば無機ナノ粒子の70%以 上が10nm以下の形態で分散している場合、ナ 粒子特有の量子効果等に基づく機能を、複 体にも発現させることができ、より応用展 を広げることができる。

 なお、所定の分散粒径(例えば30nm)以下の形 で分散している粒子(すなわち凝集粒子又は 一次粒子)の割合は、上記の「平均分散粒径 に関して説明したようにして画像解析ソフ (NEXUS NEW QUBE)で得た分散粒径分布に基づい 、下記の式によって求められる値である:
 {所定の分散粒径(例えば30nm)以下の形態で分 散している粒子の数}/{全粒子の数}×100(%)

 (無機ナノ粒子の含有量)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体におけ る金属ナノ粒子の含有量(充填率)は好ましく 、複合体全体に対して、5質量%以上、9質量% 以上、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上 又は25質量%以上である。また、本発明の無機 ナノ粒子-高分子複合体における無機ナノ粒 の含有量(充填率)は好ましくは、体積分率で 、複合体全体に対して0.5体積%以上、0.8体積% 上、1.0体積%以上、1.5体積%以上、3体積%以上 、4体積%以上、5体積%以上、又は8体積%以上で ある。含有量(充填率)が充分に大きい場合に 、ナノ粒子の機能を十分発揮することがで 、得られる複合体の応用可能性を更に広げ ことができる。例えば含有量(充填率)が充 に大きい場合には、高密度記録媒体の記録 度等のマクロな材料特性を、効率的に発現 せることができる。

 なお、複合体における無機ナノ粒子の含 量(充填率)は、例えば熱重量天秤(TGA)(理学 機社製、商品名:TGA8120)により測定できる値 ある。

 (無機ナノ粒子の一次粒径)
 なお、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体 で用いられる無機ナノ粒子は、無機ナノ粒子 -高分子複合体に分散させる前に、30nm以下、 に20nm以下、より特に10nm以下の平均一次粒 を有することが好ましい。平均一次粒径が 分に小さいことは、ナノ粒子に特有の特性 効果的に発現することができる点、光散乱 抑制でき、それによって光学材料への応用 開を行える点で好ましい。

 なお、無機ナノ粒子を無機ナノ粒子-高分 子複合体に分散させる前の「平均一次粒径」 は、無機ナノ粒子の分散液を乾燥させ、得ら れた乾燥物を透過電子顕微鏡(TEM)により撮影( 34万倍又は75万倍)し、取得した画像について 像解析ソフト(NEXUS NEW QUBE)を用いて、100個 一次粒子について、画像上で同一の面積を つ円の径を求める画像解析を行い、この径 平均値として得られる値である。

 (無機ナノ粒子の材料)
 本発明で用いられる無機ナノ粒子の材料は 特に限定されるものではない。本発明にお ては、あらゆる無機材料のナノ粒子を用い ことが可能であり、複合体に発現させたい 能や特性に基づいて、適宜選択して使用す ことができる。

 また、本発明における無機ナノ粒子は、1 種単独であっても、又は複数種を同時に用い てもよい。更に本発明における無機ナノ粒子 は、単独無機材料の粒子のみならず、複数の 無機材料の部分を有する無機ナノ粒子(例え 、一層以上のシェル及びコアからなるコア- ェル型無機ナノ粒子)であってもよい。すな わち例えば、本発明における無機ナノ粒子は 、金属ナノ粒子(具体的には合金ナノ粒子)、 は単独金属若しくは合金を相成分とした複 の金属相からなるナノ粒子(例えば、一層以 上のシェル及びコアからなるコア-シェル型 属ナノ粒子)であってもよい。また、本発明 おける無機ナノ粒子は、球状の形状に限定 れず、中空型のナノ粒子、ナノロッドであ てもよい。

 なお、本発明における無機ナノ粒子は、1 種単独であっても、又は複数種を同時に用い てもよい。

 (無機ナノ粒子の材料(金属ナノ粒子))
 本発明で用いられる無機ナノ粒子は例えば 金属ナノ粒子であってよい。金属ナノ粒子 、量産技術が確立されており、機能発現に くの選択肢があるため、多分野への展開が 待できる。

 本発明に用いられる金属ナノ粒子は、特 限定されるものではないが例えば、元素記 表記で、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Rh、Co、Ru、F e、Mo等の遷移金属を少なくとも1成分として むものが挙げられる。本発明においては、 合体となった後の安定性を考慮し、特に耐 化性の観点から、Au、Ag、Pt、Pdを好ましく用 いることができ、更に、低コスト性と耐酸化 性を両立させる材料が得られることから、銀 (Ag)を用いることが特に好ましい。

 更に本発明に用いられる金属ナノ粒子は 上記の金属のうち2種類以上を含む合金(例 ばFePd、FePt等)、又はコアシェル構造を有す ナノ粒子であってもよい。

 (無機ナノ粒子の材料(金属ナノ粒子以外))
 本発明で用いられる無機ナノ粒子は例えば 金属ナノ粒子以外の無機ナノ粒子であって い。このような無機ナノ粒子は、ZnO、SnO 2 、Fe 2 O 3 、Fe 3 O 4 、TiO 2 等の金属酸化物、又はCdSe、CdS、CdTe、ZnS、ZeSe 、ZeTe、HgS、HgSe等の半導体ナノ粒子であって よい。シリカ、シリコン、セラミックス等 代表例とする狭義の無機ナノ粒子であって よい。またこのような無機ナノ粒子は、金 ナノ粒子に関して挙げた上記の金属を含む 化物(例えばFeN 3 )、炭化物、又はホウ化物であってもよい。

 (無機ナノ粒子の被覆)
 本発明に用いられる無機ナノ粒子は、無機 ノ粒子そのままであってもよいが、その表 が、無機ナノ粒子との親和性、配位性、及 結合性等を有する表面修飾分子によって保 されていることが好ましい。表面修飾分子 よって被覆された無機ナノ粒子を用いるこ により、ナノ粒子同士の凝集を抑制し、一 粒子の状態で安定に存在させることができ 。これによれば、無機ナノ粒子-高分子複合 体を製造する本発明の方法において、より高 度な分散状態を形成することができる。

 無機ナノ粒子表面に吸着可能な官能基とし は例えば、有機系硫黄基(-S=O、-SH)等の硫黄 含む基、アミド基、アミノ基(-NH 2 )等の窒素原子を含む基、水酸基、カルボキ ル基等が挙げられる。また無機ナノ粒子表 に吸着可能な官能基としては例えば、カチ ン性基(例えば、アンモニウム基(ヒドロキシ 基及び/又は炭素数1~6の直鎖若しくは分岐鎖 アルキル基によって置換されていてもよい) ピリジニウム基及びホスホニウム基)、アニ オン性基(例えば、カルボキシル基、スルホ 酸エステル基、スルホン酸基、リン酸基、 びホスホン酸基及びその塩化合物)等が挙げ れる。

 なお、本発明の効果を損なわない限り、 面修飾分子は、一種のみの使用でもよいし 2種類以上の配合物の使用であってもよい。 また、表面修飾分子の添加量は、無機ナノ粒 子の表面全体を一層被覆する量よりも、過剰 量とすることが望ましい。

 表面修飾分子としては特に、界面活性剤 ような有機配位子を用いることができる。 面が界面活性剤で被覆されており、特に本 明において用いられる無機ナノ粒子が逆ミ ル型無機ナノ粒子となっている場合、無機 ノ粒子の凝集を抑制し、一次粒子のままで 媒中に均一に分散させることができる。こ によれば、無機ナノ粒子-高分子複合体を製 造する本発明の方法において、水素結合、イ オン結合、又は電荷作用等により、より高度 な分散状態を形成することができる。

 金属ナノ粒子を被覆する界面活性剤は、 合化前の金属ナノ粒子の凝集を抑制するも であれば特に限定されるものではなく例え 、親水性基として、アミノ基、チオール基 カルボキシ基、及び水酸基からなる群から ばれる少なくとも1種の基を含む界面活性剤 を挙げることができる。これらの中では、金 属との相互作用が強い観点から、アミノ基又 はチオール基を有する界面活性剤を用いるこ とが好ましく、なかでも、多くの高分子に溶 解できることから、アルキルアミンを用いる ことが最も好ましい。

 (高分子)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体を構成 する高分子としては、任意の材料を用いるこ とができ、これは、本発明の無機ナノ粒子- 分子複合体を使用する用途、分散させる無 ナノ粒子との親和性等に基づいて決定する とができる。

 〈〈無機ナノ粒子-高分子複合体(第1の様式) 〉〉
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体の第1 様式では、高分子が金属配位性官能基を有 る。この第1の様式では、金属配位性官能基 有する高分子における金属配位性官能基を 位子(リガンド)として、複合体における金 ナノ粒子を安定化させ、その結果、金属ナ 粒子の凝集を防止することができる。以下 は、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体の 1の様式について説明する。

 (金属配位性官能基を有する高分子)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体の第1 様式に用いられる高分子は、金属ナノ粒子 対する吸着能を有する金属配位性官能基を する高分子である。

 (金属配位性官能基を有する高分子(金属配 性官能基))
 高分子が有する金属配位性官能基としては 金属ナノ粒子に対する吸着能を有するもの あれば特に限定されるものではないが、酸 、窒素、硫黄、及びリンからなる群から選 される少なくとも1種の元素を含む基である ことが好ましい。これらの群から選ばれる少 なくとも1種の基であれば、金属に容易に配 することができる。

 酸素、窒素、硫黄、及びリンからなる群か 選択される少なくとも1種の元素を含む基と しては例えば、水酸基(-OH)、カルボニル基(-C= O)、アミド基、アミノ基(-NH 2 )、イソシアネート(-CN)、ピリジン基、ピロリ ドン基、有機系リン酸基(-P=O)、有機系硫黄基 (-S=O、-SH)等を挙げることができる。これらの 基は、1種単独であっても、又は2種以上が存 する状態であってもよい。これらの中では 金属ナノ粒子との相互作用が比較的強いこ から、アミノ基、有機系硫黄基、有機系リ 酸基が好ましく、更に、金属ナノ粒子との 互作用が最も強いことから有機系硫黄基が も好ましい。

 (金属配位性官能基を有する高分子(高分子 格))
 このような金属配位性官能基を有する高分 としては、ナノ粒子の分散媒となる溶媒に 解するものであれば特に限定されるもので ないが例えば、以下の高分子を挙げること できる。

 水酸基(-OH)を有する高分子としては、ポ ビニルアルコール(PVA)、ポリビニルアセター ル(PVB、PVF等)、トリアセチルセルロース(TAC) ジアセチルセルロース(DAC)、ポリ-4-ヒドロキ シスチレン、ポリヒドロキシエチルメタクリ レート(PHEMA)等を挙げることができる。

 カルボニル基(-C=O)を有する高分子として 、アミド基、ポリメチルメタクリレート(PMM A)、ポリメタクリル酸、ポリカーボネート(PC) 、ボリ乳酸、ポリアクリルアミド、ポリアニ リン等を挙げることができる。

 イソシアネート(-CN)を有する高分子とし は、ピリジン基、ポリアクリロニトリル(PAN) 、ポリビニルピリジン、ポリビニルピロリド ン等を挙げることができる。

 有機系リン酸基(-P=O)、又は有機系硫黄基( -S=O/-SH)を有する高分子としては例えば、ポリ ビニルホスホン酸、ポリサルホン、ポリエー テルサルホン(PES)等を挙げることができる。

 (金属配位性官能基を有する高分子(製造方 ))
 本発明に用いられる金属配位性官能基を有 る高分子は、金属配位性官能基を有するシ ンカップリング剤と水酸基を有する高分子 を反応させて得ることが好ましい。金属配 性官能基を有するシランカップリング剤と 酸基を有する高分子とを反応させることに り、金属配位性官能基が導入された高分子 容易に作成することができる。また、シラ カプリング剤を用いることで、金属ナノ粒 と金属配位性官能基を有する高分子との結 を、金属配位性官能基以外の部分でも行う とができるようになり、又は金属配位性官 基部分にシランカップリング剤が結合する とにより、より強い金属ナノ粒子の捕獲が きるようになり、その結果、金属ナノ粒子 分散性をより向上させることができる。

 ここでいう「金属配位性官能基を有する ランカップリング剤」とは、上記の金属配 性官能基の1種又は2種以上を有するシラン ップリング剤である。シランカップリング としては、アルコキシ基を有し、ケイ素を 格に含む化合物であれば、特に限定される のではない。例えば、ビニルトリエトキシ ラン、ガンマ-メタクリロキシプロピルトリ トキシシラン、ガンマ-メタクリロキシプロ ピルメチルジメトキシシラン、ガンマ-メタ リルオキシプロピルトリメトキシシラン、 ンマ-アミノポロピルトリメトキシシラン、 ンマ-アミノポロピルトリエトキシシラン、 ガンマ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリ トキシシラン、ガンマ-(2-アミノエチル)ア ノプロピルメチルジメトキシシラン、2-シア ノエチルトリメトキシシシラン、3-シアノプ ピルトリメトキシシラン、ガンマ-メルカプ トプロピルトリメトキシシラン、ガンマ-メ カプトプロピルメチルジメトキシシラン等 挙げられる。

 この方法によれば、金属との相互作用が い基を高分子に導入できる。アミノ基、メ カプト基を有するシランカップリング剤を いることが好ましく、更に、金属ナノ粒子 の相互作用が最も強いことから、メルカプ 基を有するシランカップリング剤を用いる とが最も好ましい。

 また、ここでいう「水酸基を有する高分 」とは、金属配位性官能基を有する高分子 骨格となる高分子である。そして、上記の 金属配位性官能基を有するシランカップリ グ剤」のカップリング部分となるアルコキ ド基と「水酸基を有する高分子」とが反応 ることにより、高分子に金属配位性官能基 導入される。

 したがって、「水酸基を有する高分子」 しては、最終的に得たい「金属配位性官能 を有する高分子」の骨格となる高分子骨格 有し、当該骨格に水酸基が存在しているも であれば、特に限定されるものではない。 なわち、水酸基を備えるものであれば、特 限定されるものではない。

 (添加剤等)
 また、本発明の効果が損なわれない範囲で れば、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体 には、目的に応じた添加剤等が含まれていて もよい。例えば、酸化防止剤、凍結防止剤、 pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、増塑剤、特殊機 剤等の添加剤、又はエラストマーや樹脂等 含まれていてもよい。

 任意の添加剤等の添加方法は、特に限定 れるものではなく、用いる金属配位性高分 自身に添加されている場合、金属ナノ粒子 分散媒に添加されている場合等、いずれの 合であってもよい。

 〈〈無機ナノ粒子-高分子複合体の製造方法 (第1の様式)〉〉
 以下に、本発明の複合体の製造方法につい 説明する。本発明の無機ナノ粒子-高分子複 合体の製造方法は、特に限定されるものでは ないが例えば、金属配位性官能基を有する高 分子を作成する反応工程と、高分子に金属ナ ノ粒子を分散させる分散工程とを含む以下の 方法で製造することができる。

 (反応工程)
 反応工程とは、金属配位性官能基を有する ランカップリング剤と水酸基を有する高分 とを反応させて、金属配位性官能基を有す 高分子を作成する工程である。この工程で 、例えば室温において、金属配位性官能基 有するシランカップリング剤と水酸基を有 る高分子とを溶媒に溶解又は分散し、当該 媒中でこれらを反応させて、金属配位性官 基を有する高分子を得る。なお、シランカ プリング剤と水酸基とのカップリング反応 、二次元 1 H- 29 Si HMBCスペクトルで確認することができる。

 なお、反応工程に用いられる溶媒は、金 配位性官能基を有するシランカップリング と水酸基を有する高分子とを溶解又は分散 きる溶媒であれば、特に限定されるもので ないが例えば、ハロゲン系、エーテル系等 溶媒を用いることが好ましい。

 (分散工程)
 分散工程とは、上記反応工程で得られた金 配位性官能基を有する高分子に、金属ナノ 子を分散させる工程である。本発明におい は、分散方法は特に限定されるものではな が例えば、金属配位性官能基を有する高分 と金属ナノ粒子とを、溶液ブレンド又は溶 ブレンドする方法を挙げることができる。

 好ましくは、溶液ブレンドにより例えば 金属配位性官能基を有する高分子と金属ナ 粒子とを共通溶媒に溶解又は分散させた複 体分散液を得て、当該分散液を適当な基板 に流延、又はバーコート、スピンコート、 ャスト、スプレー等の方法により当該分散 を基板上に塗布し、その後、溶媒を蒸発さ ることにより、高分子中に金属ナノ粒子が 一に分散した複合体を得ることができる。

 〈〈無機ナノ粒子-高分子複合体(第2の様式) 〉〉
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体の第2 様式では、本発明の無機ナノ粒子-高分子複 体は、極細繊維の形態、特に平均繊維径が5 0nm以上2μm以下の繊維の形態である。

 この極細繊維の形態の無機ナノ粒子-高分 子複合体は、後記するように、無機ナノ粒子 を均一に分散させた高分子溶液を用いて、当 該溶液から静電紡糸法によって形成される。 本発明の複合体の製造方法においては、ナノ 粒子の凝集を一次元の極細繊維内に抑えなが ら、荷電させたナノ粒子同士間の静電反発力 を利用することにより、ナノ粒子の凝集を有 効に防ぐことができる。また、繊維が細い分 、瞬間的に溶媒が蒸発することによっても、 ナノ粒子の均一分散を実現することができる 。すなわち、本発明の無機ナノ粒子-高分子 合体の第2の様式では、ナノ粒子の凝集空間 制御することによって、高分子材料中にお て、一次粒子の状態でのナノ粒子の高分散 を実現しているものである。

 (高分子複合体の平均繊維径)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体繊維の 平均繊維径は、通常50nm以上2μm以下又は4μm以 下、好ましくは100nm以上1μm以下、更に好まし くは150nm以上500nm以下又は800nm以下の範囲であ る。

 平均繊維径が充分に小さい場合であれば 繊維内に分散しているナノ粒子の凝集可能 空間が三次元から一次元に制限されたとみ され、その結果、キャスト法等によって得 れるフィルムと比較して、物理的にナノ粒 の凝集を防ぐことができる。また、平均繊 径が小さくなるに伴って、繊維の表面積が 幅に増大するため、静電紡糸法によって繊 形成用組成物をノズルから噴射する際に、 速延伸によって多くの溶媒を一瞬に蒸発さ ることが可能となり、その結果、ナノ粒子 凝集を起こす前に極細繊維内に固定するこ ができる。すなわち、本発明においては、 れら二つの相乗効果によって、高分子マト ックスにおけるナノ粒子の凝集確率を大幅 低減し、ナノ粒子をほぼ一次粒子の状態で 度に分散させることを実現できる。

 一方で、平均繊維径が小さすぎる場合に 、ナノ粒子を含有する繊維を安定に製造す ことが困難となる。また、繊維の長さ方向 の強烈な延伸力により、ナノ粒子の応力凝 の恐れがある。

 当然ながら、得られる繊維の繊維径には ラつきがあってもよい。しかしながら、上 の平均繊維径の範囲であれば、繊維に分散 ているナノ粒子の分散性には大きく影響し い。なお、ここでいう「平均繊維径」とは 極細繊維の堆積物をサンプルとした光学顕 鏡写真から、無作為に選んだ25本の繊維の 径の平均値とする。

 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体から なる繊維は、無機ナノ粒子の分散状態を維持 する条件で加圧して成形することを含む方法 によって、バルクの形態にすることができる 。ここで、この成形において、高温が高すぎ る場合又は加える圧力が大きすぎる場合、高 分子鎖の運動性が高くなり、ナノ粒子に対す る保持力が低下して、繊維中のナノ粒子の分 散状態が維持できなくなることがある。一方 で、適切な温度及び圧力で成形を行う場合、 ナノ粒子を保持しながら、高分子鎖の運動性 が増加させて繊維間の融着を行わせ、それに よって繊維内の無機ナノ粒子の分散状態を維 持しつつ、バルク機能性材料に成形できる。 すなわち、無機ナノ粒子の分散状態を維持し つつ、加圧によって成形できる条件は、高分 子が無機ナノ粒子の分散状態を維持し、且つ 高分子が充分な成形性を有する条件である。

 このような条件は、例えば繊維状の無機 ノ粒子-高分子複合体を構成する高分子が単 一な非結晶性高分子である場合、このような 繊維状の無機ナノ粒子-高分子複合体は、高 子のガラス転移温度付近の温度、例えば高 子のガラス転移温度±10℃の範囲において、 圧して成形することができる。また、例え 繊維状の本発明の無機ナノ粒子-高分子複合 体を構成する高分子が、結晶性高分子から実 質的に構成されている場合又は結晶性高分子 成分を主成分とする場合、このような繊維状 の無機ナノ粒子-高分子複合体は、その軟化 付近の温度、例えばこの軟化点±10℃の範囲 おいて、加圧して成形することができる。 た更に、例えば繊維状の本発明の無機ナノ 子-高分子複合体を構成する高分子が、結晶 性高分子成分と非結晶性高分子のブレンドで ある場合、このような繊維状の無機ナノ粒子 -高分子複合体は、結晶性高分子に由来する 点と高分子構成成分中の非結晶性高分子に 来するガラス転移温度との間の適切な温度 囲において、加圧して成形することができ 。ここで、繊維状の無機ナノ粒子-高分子複 体の加圧は、随意に、雰囲気の減圧を伴っ 行って、繊維間の空隙の減少を促進するこ ができる。なお、繊維状の無機ナノ粒子-高 分子複合体の成形は一般に、高分子の融点よ りも低い温度において行うことが好ましい。 これは、高分子の融点よりも高い温度におい ては、高分子中に分散していたナノ粒子が再 凝集する可能性があることによる。

 したがって例えば、本発明の無機ナノ粒 -高分子複合体からなる繊維は、得られた繊 維の堆積物を用いて、表面にコーティングを 施し、又は真空吸引により繊維間の空隙を減 らして薄膜とし、得られた薄膜を重なり合わ せて、用いた高分子のガラス転移点(Tg)以下 温度において熱プレスすることにより、バ ク材料に展開することが可能である。この 合には、ナノ粒子の機能特性をバルク材料 性として発現することができる。

 (高分子)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体の第2 様式で用いられる高分子は、曳糸性のある 分子であれば、特に限定されるものではな 。

 曳糸性の観点で好ましい高分子材料とし は例えば、ポリエチレンオキシド、ポリビ ルアルコール、ポリビニルアセタール、ポ ビニルエステル、ポリビニルエーテル、ポ ビニルピリジン、ポリアクリルアミド、エ テルセルロース、ペクチン、澱粉、ポリ塩 ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸 ポリグリコール酸、ポリ乳酸-ポリグリコー ル酸共重合体、ポリカプロラクトン、ポリブ チレンサクシネート、ポリエチレンサクシネ ート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポ リヘキサメチレンカーボネート、ポリアリレ ート、ポリビニルイソシアネート、ポリブチ ルイソシアネート、ポリメチルメタクリレー ト、ポリエチルメタクリレート、ポリノルマ ルプロピルメタクリレート、ポリノルマルブ チルメタクリレート、ポリメチルアクリレー ト、ポリエチルアクリレート、ポリブチルア クリレート、ポリエチレンテレフタレート、 ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチ レンナフタレート、ポリパラフェニレンテレ フタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラ ミド-3,4″―オキシジフェニレンテレフタラ ド共重合体、ポリメタフェニレンイソフタ ミド、セルロースジアセテート、セルロー トリアセテート、メチルセルロース、プロ ルセルロース、ベンジルセルロース、フィ ロイン、天然ゴム、ポリビニルアセテート ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエ ルエーテル、ポリビニルノルマルプロピル ーテル、ポリビニルイソプロピルエーテル ポリビニルノルマルブチルエーテル、ポリ ニルイソブチルエーテル、ポリビニルター ャリーブチルエーテル、ポリビニリデンク リド、ポリ(N-ビニルピロリドン)、ポリ(N-ビ ルカルバゾル)、ポリ(4-ビニルピリジン)、 リビニルメチルケトン、ポリメチルイソプ ペニルケトン、ポリプロピレンオキシド、 リシクロペンテンオキシド、ポリスチレン ルホン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11 、ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、及 これらの共重合体等が挙げられる。

 本発明においては、曳糸性に加え、無機 ノ粒子配位性の高い官能基を有する高分子 料を用いると、無機ナノ粒子をより高度に 散させるこができるため好ましい。

 (高分子(無機ナノ粒子配位性官能基))
 本発明に用いられる高分子が好ましく有す 無機ナノ粒子配位性官能基としては、無機 ノ粒子に対する捕獲能を有するものであれ 特に限定されるものではない。本発明にお ては、用いる無機ナノ粒子の種類によって 好適な官能基を選択することができる。

 本発明に用いられる高分子が有する好ま い官能基としては例えば、カルボン酸基(酸 無水物、カルボン酸塩も含める)、アミノ基 イミド基、アミド基、ピリジン基、リン酸 、スルホン酸基、アルコール性水酸基、チ ール基、ジスルフィド基、ニトリル基、イ ニトリル基、アルキン等を挙げることがで る。

 カルボン酸基を含む高分子としては例え 、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリアク ル酸、ポリメチルアクリル酸、スチレン-無 水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレ ン酸共重合体等の不飽和カルボン酸又は不 和カルボン酸無水物を有するカルボン酸変 高分子等が挙げられる。

 アミノ基を含む高分子としては例えば、 リアルキレンイミン、ポリアリルアミン、 リビニルアミン、ジアルキルアミノアルキ デキストラン、ポリリシン、ポリオルニチ 、ポリヒスチジン、ポリアルギニン、アジ ジン(エチレンイミン)、核酸等が挙げられ 。

 イミド基を含有する高分子としては例え 、ポリイミド;アミド基を含有する高分子と しては例えば、ポリアミド(ナイロン);ピリジ ン基及びその誘導体を含有する高分子として は例えば、ポリビニルピリジン、ポリ(4-ビニ ルピリジン);リン酸基を含有する高分子とし は例えば、リン酸エステル、ポリアリール ーテルスルホン;スルホン酸基を含有する高 分子としては例えば、スルホン化ポリスチレ ン;アルコール性水酸基を含有する高分子と ては例えば、ポリビニルアルコール、セル ース及びその誘導体;ニトリル基を含有する 分子としては例えば、ポリアクリルニトリ 等が挙げられる。

 本発明において分散させる粒子が金属ナ 粒子の場合には特に、第1の様式の無機ナノ 粒子-高分子複合体に関して説明した金属配 性官能基を有する高分子を用いることがで る。

 無機ナノ粒子配位性官能基を高分子に導 する方法としては、特に限定されるもので ない。例えば、予め編成ユニットに導入し 後に共重合を行って導入する方法、又は高 子を形成した後に反応により官能基を導入 る方法のいずれであってもよい。

 本発明において好ましく用いられる無機 ノ粒子配位性官能基を有する高分子として 、ポリビニルブチラール(PVB)を挙げること できる。ポリビニルブチラールであれば、 鎖のビニル構造と、側鎖のOH基及びアセター ル基の2種類の官能基の存在率を所定の割合 制御することにより、ナノ粒子の分散性を り高度に制御することができる。

 (高分子(分子量))
 用いられる高分子には、曳糸性は勿論必要 あるが、更に、得られる極細繊維の自立性 機械強度、加工性等を考慮すると、5万~100 の範囲の分子量とすることが好ましい。こ らに加えて更に、無機ナノ粒子をより安定 分散させることを考慮する場合には、高分 の分子量を8万~50万の範囲とすることが最も ましい。

 (分散助剤)
 本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体には、 上記した無機ナノ粒子と高分子以外に、無機 ナノ粒子の凝集を防ぎ、安定に分散させる役 割を果たす分散助剤が含まれていていること が好ましい。分散助剤を用いることで、無機 ナノ粒子と高分子との結合を、無機ナノ粒子 配位性官能基以外の部分でも行うことができ るようになり、又は官能基部分に分散助剤が 結合することにより、より強い粒子捕獲基が できるようになり、その結果、無機ナノ粒子 の分散性をより向上させることができる。

 分散助剤としては、無機ナノ粒子の分散 を向上するものであれば、特に限定される のではないが、一端に、高分子と親和性の い疎水基又は高分子に親和性、配位性、結 性を有する(架橋)官能基を有し、もう一端 、ナノ粒子配位性を有する窒素、硫黄、リ 等の元素を含む官能基又はナノ粒子の表面 飾分子と反応する官能基を有する両親媒性 合物であることが好ましい。

 分散助剤としては例えば、炭素数6~22のカ ルボン酸、スルホン酸、スルフィン酸、ホス ホン酸等の酸、又は炭素数6~22のアミン等の 基性有機化合物等が挙げられる。本発明に いては、なかでも、アルコキシ基を有し、 イ素を骨格に含むシランカップリング剤を ましく用いることができる。特に、本発明 おいて無機ナノ粒子として金属ナノ粒子を いる場合には、アミノ基、メルカプト基等 金属との相互作用の強い基を有するシラン ップリング剤を用いることが好ましい。

 なお、本発明の効果を損なわない限り、 散助剤は、一種のみの使用であっても2種類 以上の併用であってもよい。

 (添加剤等)
 また、本発明の効果が損なわれない範囲で れば、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合体 には、目的に応じた添加剤等が含まれていて もよい。例えば、酸化防止剤、凍結防止剤、 pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、増塑剤、特殊機 剤等の添加剤、又はエラストマーや樹脂等 含まれていてもよい。

 任意の添加剤等の添加方法は、特に限定 れるものではなく、用いる高分子自身に添 されている場合、無機ナノ粒子の分散媒に 加されている場合、又は繊維形成用組成物 添加する場合等、いずれの場合であっても い。

 〈〈無機ナノ粒子-高分子複合体の製造方法 (第2の様式)〉〉
 以下に、本発明の無機ナノ粒子-高分子複合 体の製造方法について説明する。本発明の無 機ナノ粒子-高分子複合体は、無機ナノ粒子 均一に分散させた高分子溶液を用いて、当 溶液から静電紡糸法にて繊維集合体を作成 ることにより得られる。具体的には、以下 「繊維形成用組成物調製工程」と「紡糸工 」とを含むものである。

 本発明においては、無機ナノ粒子を高分 溶液に予め高度に分散し、当該ナノ粒子が 散した高分子溶液を静電紡糸法に適用する とにより、曳糸性のある高分子を延伸して 極細繊維を形成する。本発明においては、 維が形成されることにより、その空間が、 ノ粒子の凝集可能性が高い三次元空間から 次元空間に抑えられるとみなされる。その 果、ナノ粒子が凝集する確率を、大幅に低 させることができる。また、繊維が細くな ば、表面積が極端に増大することから、静 紡糸の際に大量の溶媒を瞬間的に蒸発させ ことができ、溶媒蒸発によるナノ粒子の凝 を極力避けることができる。

 (繊維形成用組成物調製工程)
 繊維形成用組成物調製工程は、無機ナノ粒 と高分子とを必須成分として含む繊維形成 組成物を調製する工程である。用いる高分 としては、上記した通り、無機ナノ粒子配 性官能基を有するものが好ましい。また、 維形成用組成物には、上記した分散助剤を ませることが好ましい。

 具体的には、まず、無機ナノ粒子を溶媒A 中に攪拌しながら展開し、続いて、必要に応 じて表面修飾分子を添加する。溶媒Aとして 、表面修飾分子が溶解するものであれば特 限定されるものではない。単一な溶媒であ ても、又は複数の溶媒による混合溶媒系で ってもよい。また、表面修飾分子の添加量 、粒子表面全体を一層被覆する量よりも過 量とすることが望ましい。

 続いて、高分子を溶媒Bに溶解し、必要に 応じて分散助剤も同時に展開する。溶媒Bと ては、溶媒Aの存在下であっても高分子を完 に溶解することができ、かつ、無機ナノ粒 を沈殿させたり、凝集させたりしないもの あれば、特に限定されるものではない。単 な溶媒であっても、又は複数な溶媒による 合溶媒系であってもよい。

 次に、調製した溶媒Aと溶媒Bとを混合し 攪拌等の公知の分散装置を用いて、高分子 無機ナノ粒子を分散させることにより、無 ナノ粒子-高分子複合体溶液を得る。分散処 は、通常、室温下において、0.5~3時間程度 行うことができるが、必要に応じて加熱す ことも可能である。更に、高濃度、高分散 を実現させたい場合には、分散処理におい 、超音波照射をおこなったり、ビーズミル の分散補助装置を使用することが好ましい

 最後に、得られた無機ナノ粒子-高分子複 合体溶液を、適当な溶媒を用いて、静電紡糸 に適切な濃度にまで希釈して、最終的な繊維 形成用組成物を得る。このとき、繊維形成用 組成物の粘度と当該組成物に含まれる溶媒を 瞬間に蒸発させる条件とを考慮すると、繊維 形成用組成物における繊維材料となる成分の 濃度は、2~30質量%の範囲であることが好まし 。更にナノ粒子の分散性を強化したい場合 は、繊維材料となる成分の濃度を4~10質量% 範囲とすることが好ましい。

 (紡糸工程)
 紡糸工程とは、静電紡糸法にて上記で得ら た繊維形成用組成物を噴出することにより 繊維を得る工程である。以下に、紡糸工程 おける紡糸方法及び紡糸装置について説明 る。

 ここで、「静電紡糸法」又は「エレクト スピニング法」とは、繊維形成性の基質等 含む溶液又は分散液を、電極間で形成され 静電場中に吐出し、溶液又は分散液を電極 向けて曳糸することにより、繊維状物質を 成する方法である。なお、紡糸により得ら る繊維状物質は、通常、捕集基板である電 上に積層される。

 また、形成される繊維状物質は、繊維形 用組成物に含まれていた繊維形成性溶質や 媒等が完全に留去した状態のみならず、こ らが繊維状物質に含まれたまま残留する状 も含む。

 なお、通常の静電紡糸は室温で行われる 、本発明においては、溶媒等の揮発が不十 な場合等には、必要に応じて紡糸雰囲気の 度を制御したり、又は捕集基板の温度を制 することも可能である。

 図5は、静電紡糸法に用いられる装置の一 態様を示す図である。図5に示される静電紡 装置においては、シリンジ2の先端部に、高 圧発生器4にて電圧をかけた注射針状の噴出 ノズル1を設置し、繊維形成用組成物3を噴出 ズル1の先端部まで導く。なお、図5に示さ る装置おいては、高電圧発生器4を用いてい が、適宜の手段を用いることが可能である

 次に、噴出ノズル1の先端を、繊維捕集電 極5から適切な距離をとって配置し、繊維形 用組成物3を噴出ノズル1の先端部から噴出さ せることにより、噴出ノズル1の先端部分と 維捕集電極5との間に繊維状物質を形成させ ことができる。

 静電場を形成するための電極は、導電性 示しさえすれば、金属、無機物、又は有機 等のいかなるものであってもよい。また、 縁物上に導電性を示す金属、無機物、又は 機物等の薄膜を設けたものであってもよい

 また、静電場は一対又は複数の電極間で 成されるものであり、静電場を形成するい れの電極に高電圧を印加してもよい。これ 例えば、電圧値が異なる高電圧の電極2つ( えば15kVと10kV)と、アースにつながった電極1 の合計3つの電極を用いる場合をも含み、又 は3つを超える数の電極を用いる場合も含む のとする。

 また、繊維形成用組成物を静電場中に吐 する方法としては、任意の方法を採用する とができ、図5においては、繊維形成用組成 物を静電場中の適切な位置に置き、ノズルに 供給し、当該ノズルから繊維形成用組成物を 電界によって曳糸して繊維化する方法である 。

 なお、繊維形成用組成物を噴出するため ノズルの形状は、先端が鋭角を形成してい ことが好ましい。噴出ノズルの先端が鋭角 形成している場合には、ノズルの先端にお る液滴形成の制御が容易となる。ノズルの 質については、特に制限されるものではな が、通常、ガラスと金属製のものが多い。 ラスの場合には、ノズル内に白金等の導線 固定し、これを電極として用いる。

 適切なノズルの口径は、用いる繊維形成 組成物によって異なるが、好ましくは0.05~1m mの範囲である。ノズル口径が小さすぎる場 には、ナノ粒子がノズル内に詰まったり、 射が不連続となる場合があり、安定な繊維 造が困難となる。一方で、ノズル口径が太 ぎる場合には、製造する繊維径が太くなる とから、本発明の効果を十分に発現するこ ができなくなる。繊維の細さの確保と操作 を考慮すると、0.1~0.5mmとすることが更に好 しい。

 噴出ノズルと繊維捕集電極との距離は、 電量、ノズル寸法、繊維形成用組成物のノ ルからの噴出量、繊維形成用組成物の溶液 度等に依存するが、20kV程度の場合には10~30c mの範囲が好ましい。距離が短すぎる場合に 、溶媒が完全に蒸発されず、繊維のが互い 融合して形状が崩れ、また、繊維内の残留 媒が多いことから、ナノ粒子の凝集を十分 抑制できなくなる場合がある。一方で、距 が長すぎる場合には、十分な延伸力が得ら なくなることから、曳糸性が悪くなったり 製造した繊維径のバラつきが大きくなった 、また、繊維の回収率が低い等の問題が生 る場合がある。

 また、印加する静電気電位は、5~30kVの範 とすることが好ましい。印加電圧が高すぎ 場合には、異常放電が起こる恐れがあり、 定な繊維製造ができなくなる。一方で印加 圧が低すぎる場合には、十分な静電反発を き起こすことができないことから、繊維径 太くなり、その結果、ナノ粒子の凝集を十 に抑制することができなくなる。ここで、 望の電位は、従来公知の任意の適切な方法 よって製造すればよい。

 繊維形成用組成物の吐出量を調整するシ ンジボンプの制御精度は、0.1μl/min程度とす ることが好ましい。また、繊維形成用組成物 の吐出量は、用いる繊維形成用組成物によっ て異なるが、20~200μl/minの範囲とすることが ましい。

 〈〈実施例(第1の様式)〉〉
 以下、本発明を実施例により更に具体的に 明するが、本発明はこれらの実施例により 等限定を受けるものではない。

 〈測定方法〉
 実施例A1~A6及び比較例A1においては、以下の 項目について、以下の方法によって測定・評 価を実施した。

 (1)複合体における金属ナノ粒子の含有量(充 填率)
 熱重量天秤(理学電機社製、商品名:TGA8120)を 用いて、空気気流中、900℃における熱分析を 行い、その残渣量から評価した。なお、評価 にあたっては、サンプル3点の平均値を採用 た。

 (2)複合体における金属ナノ粒子の分散状態( 平均分散粒径)
 製造した無機ナノ粒子-高分子複合体を、ミ クロトーム(ライカ社性、商品名:ULTRACUT-S)を いて50~100nmの薄切片とし、当該薄切片を銅製 マイクログリッドにのせ、透過型電子顕微鏡 (FEI社製、商品名:TECNAI G2)によって、加速電 120kVで、TEM観察及び撮影(75万倍又は150万倍) 実施した。

 得られたTEM像における120nm×120nmの範囲に 在するすべての金属ナノ粒子をマークし、 像解析ソフト(NEXUS NEW QUBE)を用いて、複合 中において孤立分散している各々の凝集粒 又は一次粒子に関して、画像解析し、平均 散粒径を求めた。

 (3)複合体における金属ナノ粒子の分散状態( 分散粒径分布)
 上記(2)で撮影した写真画像において、画像 析ソフト(NEXUS NEW QUBE)で得られた分散粒径 布から、{30nm以下の形態で分散している粒 の数}/{全粒子の数}x100(%)の値を求めた。

 〈実施例A1〉
 [金属配位性官能基を有する高分子溶液の調 製]
 ポリビニルブチラール(以下では「PVB」とし て言及)(和光社製、商品名:ポリビニルブチラ ール1,000、平均重合度:900~1,100)1.5gを、ジクロ メタン(以下では「DCM」として言及)28.5gに完 全に溶解し、PVB溶液を得た。

 [分散工程]
 上記で得られたPVB溶液に、界面活性剤とし アルキルアミンを含むAgコロイド溶液(戸田 業社製、商品名:ナノシルバー分散体、Agナ 粒子含有量:53質量%、アルキルアミン含有量 :11質量%、分散液:トルエン、Ag粒径:6.0nm)0.3gを 滴下し、2時間攪拌することにより、複合体 散液を得た。

 [複合体フィルムの作成]
 続いて、得られた複合体分散液をガラス基 上にキャストし、窒素雰囲気中で溶媒(DCM) 自然蒸発させることにより、PVB-Ag複合体フ ルムを得た。得られた複合体フィルムの厚 は、60μmであった。

 [測定評価]
 得られたPVB-Ag複合体フィルムの透過型電子 微鏡(TEM)写真(75万倍)を、図1に示す。また、 得られたPVB-Ag複合体フィルムにおけるAgナノ 子の充填率(含有量)は9.5質量%、平均分散粒 は15.0nmであり、Ag粒子の90%以上が、分散粒 30nm以下の状態で分散していた。

 〈実施例A2〉
 [反応工程]
 実施例A1と同様にして、PVB溶液を得た。引 続き、ガンマ-メルカプトプロピルトリメト シシラン(以下では「MPTMS」として言及)(チ ソ社製、商品名:サイラエースS810)0.06gを滴下 し、充分に攪拌してカップリング反応を実施 することにより、MPTMSカップリングPVB(以下で は「MPTMS-PVB」として言及)溶液を得た。

 [分散工程・複合体フィルムの作成]
 得られたMPTMS-PVB溶液に、実施例A1と同様にAg コロイド溶液を滴下し、複合体分散液を得た 。引き続き、実施例A1と同様の方法で、厚み6 0μmの(MPTMS-PVB)-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られた(MPTMS-PVB)-Ag複合体フィルムの透過 電子顕微鏡(TEM)写真(75万倍)を、図2に示す。 た、得られた(MPTMS-PVB)-Ag複合体フィルムに けるAgナノ粒子の充填率(含有量)は10.9質量% 平均分散粒径は9.0nmであり、Ag粒子の95%以上 、分散粒径30nm以下の状態で分散していた。

 〈実施例A3〉
 [反応工程]
 実施例A1と同様にして、PVB溶液を得た。引 続き、ガンマ-アミノプロピルトリメトキシ ラン(以下では「APTMS」として言及)(東京化 社製、商品名:3-アミノプロピルトリメトキ シラン)0.06gを滴下し、充分に攪拌してカッ リング反応を実施することにより、APTMSカッ プリングPVB(以下では「APTMS-PVB」として言及) 液を得た。

 [分散工程・複合体フィルムの作成]
 得られたAPTMS-PVB溶液に、実施例A1と同様にAg コロイド溶液を滴下し、複合体分散液を得た 。引き続き、実施例A1と同様の方法で、厚み6 0μmの(APTMS-PVB)-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたPVB-Ag複合体フィルムの透過型電子 微鏡(TEM)写真(75万倍)を、図3に示す。また、 得られたPVB-Ag複合体フィルムにおけるAgナノ 子の充填率(含有量)は9.0質量%、平均分散粒 は9.0nmであり、Ag粒子の95%以上が、分散粒径 30nm以下の状態で分散していた。

 〈実施例A4〉
 [金属配位性官能基を有する高分子溶液の調 製]
 ポリビニルホルマール(以下では「PVF」とし て言及)(関東化学社製、商品名:ポリビニルホ ルマール)2.5gを、DCM47.5gに完全に溶解し、PVF 液を得た。

 [分散工程]
 上記で得られたPVF溶液に、界面活性剤とし アルキルアミンを含むAgコロイド溶液(戸田 業社製、商品名:ナノシルバー分散体、Agナ 粒子含有量:53質量%、Ag粒径:6.0nm)1gを滴下し 2時間攪拌することにより、複合体分散液を 得た。

 [複合体フィルムの作成]
 続いて、実施例A1と同様の方法で、厚み60μm のPVF-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたPVF-Ag複合体フィルムにおけるAgナ 粒子の充填率(含有量)は15.8質量%、平均分散 径は15.0nmであり、Ag粒子の80%以上が、分散 径30nm以下の状態で分散していた。

 〈実施例A5〉
 [金属配位性官能基を有する高分子溶液の調 製]
 ジアセチルセルロース(以下では「DAC」とし て言及)(和光社製、商品名:酢酸セルロース、 酢化度:53~56%)1.5gを、DCMとアセトン(28.5g/1g)に 全に溶解し、DAC溶液を得た。

 [分散工程・複合体フィルムの作成]
 得られたDAC溶液に、実施例A1と同様にAgコロ イド溶液を滴下し、複合体分散液を得た。引 き続き、実施例A1と同様の方法で、厚み60μm DAC-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたDAC-Ag複合体フィルムにおけるAgナ 粒子の充填率(含有量)は9.7質量%、平均分散 径は12.0nmであり、Ag粒子の80%以上が、分散粒 径30nm以下の状態で分散していた。

 〈実施例A6〉
 [金属配位性官能基を有する高分子溶液の調 製]
 トリアセチルセルロース(以下では「TAC」と して言及)(和光社製、商品名:三酢酸セルロー ス)1.5gを、DCM28.5gに完全に溶解し、TAC溶液を た。

 [分散工程・複合体フィルムの作成]
 得られたTAC溶液に、実施例A1と同様にAgコロ イド溶液を滴下し、複合体分散液を得た。引 き続き、実施例A1と同様の方法で、厚み60μm TAC-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたTAC-Ag複合体フィルムにおけるAgナ 粒子の充填率(含有量)は9.5質量%、平均分散 径は15.0nmであり、Ag粒子の80%以上が、分散粒 径30nm以下の状態で分散していた。

 〈比較例A1〉
 [高分子溶液の調製]
 ポリスチレン(以下では「PS」として言及)( 光社製、商品名:スチレン高分子、平均重合 :2,000)5.2gを、DCM47.5gに完全に溶解し、PS溶液 得た。

 [分散工程・複合体フィルムの作成]
 得られたPS溶液に、実施例A4と同様にAgコロ ド溶液を滴下し、複合体分散液を得た。引 続き、実施例A1と同様の方法で、厚み60μmの PS-Ag複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたPS-Ag複合体フィルムの透過型電子 微鏡(TEM)写真(1万倍)を、図4に示す。また、 られたPS-Ag複合体フィルムにおけるAgナノ粒 の充填率(含有量)は8.4質量%であった。なお 図4に示されるように、Agナノ粒子の多くは 集し、0.1~2μm程度の凝集体となっていた。

 〈実施例A1~A6及び比較例A1についてのまとめ 〉
 実施例A1~A6及び比較例A1において使用した材 料、及び得られた複合材料について、下記の 表1及び2にそれぞれまとめている。

 〈〈実施例(第2の様式)〉〉
 以下、本発明を実施例により更に具体的に 明するが、本発明はこれらの実施例により 等限定を受けるものではない。なお、実施 B1~B7及び参考例B1では、特に断らない限り、 使用した溶媒は無水試薬である。

 〈測定方法〉
 以下の実施例B1~B7及び参考例B1においては、 以下の項目について、以下の方法によって測 定・評価を実施した。

 (1)繊維の平均繊維径及び繊維におけるナノ 子凝集体の確認
 極細繊維の堆積物を採取し、DIGITALMICROSCOPY(K EYENCE製、商品名:VHX-200)により、透過写真(5000 )を撮影した。得られた写真から無作為に測 定エリア5つを選定し、1つのエリアから5本の 繊維を無作為に抽出し、トータル25本の繊維 つき、繊維径を測定した。すべての測定結 (n=25)の平均値を求めて、得られた値を繊維 平均繊維径とした。

 また、得られた透過写真(5000倍)において ナノ粒子の凝集が200nm以上となるスポット 有無について、評価を実施した。

 (2)複合体繊維における金属ナノ粒子の分散 態(平均分散粒径)
 極細繊維の堆積物を採取し、図6に示す倒立 包埋法による透過型電子顕微鏡(TEM)観察用サ プルを製造した。なお、図6において、記号 6は繊維堆積体を示し、記号7はPtを示し、記 8は未硬化樹脂を示し、記号9はスライドガラ スを示し、記号10は硬化樹脂を示している。

 引き続き、ミクロトーム(ライカ社製、商 品名:ULTRACUT-S)を用いて90nmの薄片とし、透過 電子顕微鏡(FEI社製、商品名:TECNAI G2)によっ 、加速電圧120kVで、TEM観察及び撮影(75万倍) 実施した。

 得られたTEM像を更に4倍拡大した写真にお ける150nm×150nmのエリアに存在するすべての粒 子を対象に、目視にて、コントラスト差によ り粒子の堺を判断してマーキングを行い、コ ンピューターに認識させた。続いて、解析ソ フト(NEXUS NEW QUBE)を用いて、複合体中におい て孤立分散している各々の凝集粒子又は一次 粒子に関して、画像解析し、平均分散粒径を 求めた。

 このとき、TEM写真で観察された粒子の形 (平面状)が円状でない場合には、観察され 無機ナノ粒子の面積と同じ面積を有する円 を想定し、想定した円の直径を粒径とした

 また、ナノ粒子の独立性が目視で分かり い場合には、3D-TEM観察によって判断を行っ 。3D-TEM観察にあたっては、150nm×150nmのエリ にある粒子の総数に対して、孤立分散して る(平面上で重なりがない)粒子の割合を、 ノ粒子の凝集度合の一つ指標として評価し 。

 なお、TEM観察用サンプルの製造に使用し 包埋樹脂(エポキシ樹脂:日新EM社製)の具体 な配合比は、以下の通りである。

   主剤   :Quetol812   77.2
   軟性硬化剤:DDSA        60
   硬性硬化剤:MNA         35.6
   重合促進剤:DMP-30       2.6

 (3)複合体繊維における金属ナノ粒子の分散 態(分散粒径分布)
 上記(2)で撮影した写真画像において、画像 析ソフト(NEXUS NEW QUBE)で得られた分散粒径 布から、{20nm以下の形態で分散している粒 の数}/{全粒子の数}x100(%)の値を求めた。

 (4)繊維におけるナノ粒子の含有量(充填率評 価)
 熱重量天秤(理学電機社製、商品名:TGA8120)を 用いて、空気気流中、900℃における熱分析を 行い、その残渣量から評価した。なお、評価 にあたっては、サンプル3点の平均値を採用 た。

 〈実施例B1〉(Ag30-PVB1000)
 [繊維形成用組成物調整工程]
 70℃において一週間乾燥を行ったポリビニ ブチラール(以下では「PVB」として言及)(和 社製、商品名:ポリビニルブチラール一級、 均重合度:1000)1gを、ジクロロメタン(以下で 「DCM」として言及)19gに完全に溶解し、PVB溶 液を得た。

 上記で得られたPVB溶液に、分散助剤とし ガンマ-メルカプトプロピルトリメトキシシ ラン(MPTMS)(チッソ社製、固形分:100質量%)0.06g(A gナノ粒子表面修飾剤の2倍以上に相当する)を 添加し、30分間攪拌してカップリング反応を 施することにより、MPTMSカップリングPVB(以 では「MPTMS-PVB」として言及)溶液を得た。

 引き続き、得られたMPTMS-PVB溶液に、界面 性剤としてアルキルアミンを含むAgナノ粒 のコロイド溶液(戸田工業社製、商品名:ナノ シルバー分散体、分散液:トルエン、Agナノ粒 子含有量:53質量%、Agナノ粒子平均粒径:6~8nm、 アルキルアミン含有量:11質量%)0.6gを添加し、 1時間攪拌することにより、Agナノ粒子-(MPTMS-P VB)複合体溶液を得た。

 この時点で、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB )複合体溶液には、Agナノ粒子の凝集による色 調変化は確認されず、また、ガラス容器の壁 にAgナノ粒子の析出は確認されなかった。

 更に、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合 溶液15gを、DCMとクロロホルム(70質量%/30質量% )の混合溶媒を用いて、静電紡糸に適切な濃 まで希釈することにより、繊維形成用組成 を調製した。

 [紡糸工程]
 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶液 )を用いて、図5に示す静電紡糸装置により繊 形成用組成物を噴出し、連続的に紡糸を行 ことにより繊維を蓄積させて、繊維堆積物 製造した。

 このときの噴出ノズル1の内径は0.4mm(注射 針:23G)、シリンジ2の容量は10ml、電圧は18kV、 出ノズル1から繊維捕集電極5(ステンレス板) までの距離は25cmであった。シリンジポンプ(B ioanalyticalS ystems Inc社製、商品名:MD-1020)によ 繊維形成用組成物の吐出量を120ml/minに制御 ながら、繊維形成用組成物を噴射し、捕集 極に貼りつけたPETフィルムの上に堆積させ 。

 [測定評価]
 得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合体繊維の 積物を採取し、光学顕微鏡にて撮影した透 写真(5000倍)を図7に、また、透過型電子顕微 (TEM)による写真(観察倍率36万倍)を図8に示す 。

 得られた繊維の平均繊維径は1.52μmであり 、透過写真における50nm以上のAgナノ粒子の凝 集は確認されなかった。また、Agナノ粒子の 均分散粒径は8.6nm、最大分散粒径は15.3nmで り、すべての粒子が分散粒径20nm以下の状態 分散していた。なお、Agナノ粒子の含有率 、22.8質量%であった。

 〈実施例B2〉(Ag40-PVB700)
 [繊維形成用組成物調整工程]
 70℃において一週間乾燥を行ったPVB(和光社 、商品名:ポリビニルブチラール一級、平均 重合度:700)1.2gを、DCM18.8gに完全に溶解し、PVB 液を得た。

 上記で得られたPVB溶液に、分散助剤とし のMPTMSの添加量を0.1gに変更した以外は、実 例B1と同様にして、MPTMSカップリングPVB溶液 を得た。

 引き続き、Agナノ粒子のコロイド溶液の 加量を1.0gに変更した以外は、実施例B1と同 にして、Agナノ粒子-PVB複合体溶液を得た。

 この時点で、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB )複合体溶液には、Agナノ粒子の凝集による色 調変化は確認されず、また、ガラス容器の壁 にAgナノ粒子の析出は確認されなかった。

 更に、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合 溶液15gを用いて、実施例B1と同様にして、繊 維形成用組成物を調製した。

 [紡糸工程]
 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶液 )を用いて、電圧を20kVとし、シリンジポンプ よる繊維形成用組成物の吐出量を100ml/minに 更した以外は、実施例B1と同様にして、図5 示す静電紡糸装置により繊維堆積物を製造 た。

 [測定評価]
 得られたAgナノ粒子-PVB複合体繊維の透過型 子顕微鏡(TEM)による写真(観察倍率36万倍)を 図9に示す。

 得られた繊維の平均繊維径は1.43μmであり 、透過写真における50nm以上のAgナノ粒子の凝 集は確認されなかった。また、Agナノ粒子の 均分散粒径は8.1nm、最大分散粒径は15.6nmで り、すべての粒子が分散粒径20nm以下の状態 分散していた。なお、Agナノ粒子の含有率 、30.4質量%であった。

 〈実施例B3〉(Ag25-PS/MAA共重合体18)
 [繊維形成用組成物調整工程]
 スチレン(St)とメチルメタアクリル酸(MAA)の 重合体(大日本インキ社製、商品名:リュー ックスA-14、PS/MAA=約90/10(モル%)、Mn:約20万)3.0g を、テトラヒドロフラン(THF)17.0gに完全に溶 し、PS-MAA溶液を得た。

 上記で得られたPS/MAA溶液に、分散助剤と てのMPTMSの添加量を0.45g(約60mol%MAAに相当す )に変更した以外は、実施例B1と同様にして MPTMSカップリングPS/MAA(以下では「MPTMS-PS/MAA として言及)溶液を得た。

 引き続き、Agナノ粒子のコロイド溶液の 加量を2.0gに変更し、2時間攪拌した以外は、 実施例B1と同様にして、Agナノ粒子-(MPTMS-PS/MAA )複合体溶液を得た。

 この時点で、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PS/ MAA)複合体溶液には、Agナノ粒子の凝集による 色調変化は確認されず、また、ガラス容器の 壁にAgナノ粒子の析出は確認されなかった。

 更に、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PS/MAA)複 体溶液15gを、DCMとTHF(70質量%/30質量%)の混合 媒を用いて、静電紡糸に適切な濃度まで希 することにより、繊維形成用組成物を調製 た。

 [紡糸工程]
 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶液 )を用いて、電圧を20kVとし、シリンジポンプ よる繊維形成用組成物の吐出量を60ml/minに 更した以外は、実施例B1と同様にして、図5 示す静電紡糸装置により繊維堆積物を製造 た。

 [測定評価]
 得られたAgナノ粒子-PS/MAA複合体繊維の透過 電子顕微鏡(TEM)による写真(観察倍率36万倍) 、図10に示す。

 得られた繊維の平均繊維径は0.52μmであり 、透過写真における50nm以上のAgナノ粒子の凝 集は確認されなかった。また、Agナノ粒子の 均分散粒径は11.3nm、最大分散粒径は20.6nmで り、99.7%の粒子が分散粒径20nm以下の状態で 散していた。なお、Agナノ粒子の含有率は 21.7質量%であった。

 〈実施例B4〉(Au30-PVB700)
 [繊維形成用組成物調整工程]
 実施例B2と全く同一の材料及び同様の操作 て、PVB溶液を得た。

 得られたPVB溶液に、分散助剤としてのMPTM Sの添加量を0.1g(Auナノ粒子表面修飾剤の2倍以 上に相当する)に変更した以外は、実施例B1と 同様にして、MPTMSカップリングPVB(以下では「 MPTMS-PVB」として言及)溶液を得た。

 引き続き、得られたMPTMS-PVB溶液に、Auナ 粒子のコロイド溶液(アルパックマテリアル 製、商品名:AuナノメタルインクAu1T、分散液 :トルエン、Auナノ粒子含有量:30質量%、Auナノ 粒子平均粒径:4nm)1.2gを添加し、1時間攪拌す ことにより、Auナノ粒子-PVB複合体溶液を得 。

 この時点で、得られたAuナノ粒子-(MPTMS-PVB )複合体溶液には、Auナノ粒子の凝集による色 調変化は確認されず、また、ガラス容器の壁 にAuナノ粒子の析出は確認されなかった。

 更に、得られたAuナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合 溶液15gを、DCMとトルエン(70質量%/30質量%)の 合溶媒を用いて、静電紡糸に適切な濃度ま 希釈することにより、繊維形成用組成物を 製した。

 [紡糸工程]
 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶液 )を用いて、シリンジポンプによる繊維形成 組成物の吐出量を50ml/minに変更した以外は、 実施例B1と同様にして、図5に示す静電紡糸装 置により繊維堆積物を製造した。

 [測定評価]
 得られた繊維の平均繊維径は1.45μmであり、 透過写真における50nm以上のAuナノ粒子の凝集 は確認されなかった。また、Auナノ粒子の平 分散粒径は9.8nm、最大分散粒径は15.2nmであ 、全ての粒子が分散粒径20nm以下の状態で分 していた。なお、Auナノ粒子の含有率は、23 .1質量%であった。

 〈参考例B1〉(Ag20-PVB1000)
 [繊維形成用組成物調整工程]
 実施例B1と全く同一の材料及び同様の操作 て、PVB溶液を得た。

 得られたPVB溶液に、分散助剤としてのMPTM Sの添加量を0.04g(実施例B1における使用量の2/3 に相当する)に変更した以外は、実施例B1と同 様にして、MPTMSカップリングPVB(以下では「MPT MS-PVB」として言及)溶液を得た。

 引き続き、Agナノ粒子のコロイド溶液の 加量を0.4gに変更した以外は、実施例B1と同 にして、Agナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合体溶液を得 た。

 この時点で、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB )複合体溶液には、Agナノ粒子の凝集による色 調変化は確認されず、また、ガラス容器の壁 にAgナノ粒子の析出は確認されなかった。

 [キャストフィルムの作成]
 得られたAgナノ粒子-PVB複合体溶液を用いて ガラス基板上にて、乾燥後のフィルム厚み 約1μmとなるようキャスト法より製膜し、Ag ノ粒子-(MPTMS-PVB)複合体フィルムを得た。

 [測定評価]
 得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合体フィル の透過型電子顕微鏡(TEM)による写真(観察倍 36万倍)を、図11に示す。

 また、得られたAgナノ粒子-(MPTMS-PVB)複合 フィルムのTEM写真による観察を行ったとこ 、ナノ粒子の含有量(充填率)を実施例B1の2/3 減らしたにも関わらず、50nm以上の凝集スポ ットが多数存在していた。また、粒子の最大 分散粒径が20nmを超え、孤立に分散している 次粒子の割合も遥かに90%未満であったこと 目視レベルでもはっきりと分かる。

 〈実施例B5〉PVB2400/Fe 3 O 4 (33.3質量%)
 70℃において一週間乾燥を行ったポリビニ ブチラール(以下では「PVB」として言及)(和 純薬製、商品名:ポリビニルブチラール一級 平均重合度:2400)1gを、DCM19gに完全に溶解し PVB溶液を得た。

 得られたPVB溶液に、界面活性剤としてアル ルアミンを含むFe 3 O 4 ナノ粒子のコロイド溶液(戸田工業社製、商 名:磁性ナノ粒子分散体、分散液:トルエン、 Fe 3 O 4 ナノ粒子含有量:16質量%、ナノ粒子平均粒径:1 5±3nm)を3.25g添加し、チューブミキサーに15分 当たることによって、Fe 3 O 4 ナノ粒子-PVB複合体溶液を調製した。

 この時点で、得られたFe 3 O 4 ナノ粒子-PVB複合体溶液には、Fe 3 O 4 ナノ粒子の凝集による色調変化は確認されず 、また、ガラス容器の壁にFe 3 O 4 ナノ粒子の析出は確認されなかった。

 更に、得られたFe 3 O 4 ナノ粒子-PVB複合体溶液10gを、DCMとクロロホ ム(70質量%/30質量%)の混合溶媒を用いて、静 紡糸に適切な濃度まで希釈することにより 繊維形成用組成物を調製した。

 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶 液)を用いて、図5に示す静電紡糸装置により 維形成用組成物を噴出し、連続的に紡糸を うことにより繊維を蓄積させて、繊維堆積 を製造した。

 このときの噴出ノズル1の内径は0.4mm(注射 針:23G)、シリンジ2の容量は10ml、電圧は16.5kV 噴出ノズル1から繊維捕集電極5(ステンレス )までの距離は20cmであった。シリンジポンプ (BioanalyticalSystemsInc社製、商品名:MD-1020)により 繊維形成用組成物の吐出量を50μl/minに制御し ながら、繊維形成用組成物を噴射し、捕集電 極に貼りつけたPETフィルムの上に堆積させた 。

 得られたFe 3 O 4 ナノ粒子-PVB複合体繊維の堆積物を採取し、 学顕微鏡にて撮影した透過写真(3000倍)を図12 に、また、透過型電子顕微鏡(TEM)による写真( 観察倍率36万倍)を図13に示す。得られた繊維 平均繊維径が3.24μmであり、TEM観察からFe 3 O 4 ナノ粒子が均一に分散し、50nm以上の凝集は 認されなかった。Fe 3 O 4 の充填率がTGA測定により30.7質量%となった。

 〈実施例B6〉PVP/Fe 3 O 4 (水分散、33.3質量%)
 市販されているポリビニルピロリドン(以下 では「PVP」として言及、Aldrich製、Mw約1,300,000 )0.8gをエタノールと水の混合溶媒(エタノール /純水=1:1)9.2gに完全溶解し、PVP溶液を得た。

 得られたPVP溶液に、粒子表面にカチオン表 修飾剤に覆われたFe 3 O 4 水分散コロイド(フェローテック製、商品名EM G607、平均粒径約10nm、固体分約10質量%)4gを添 し、チューブミキサーに15分間当たること よって、Fe 3 O 4 ナノ粒子-PVP複合体溶液を調製した。ナノ粒 の高充填率の達成と分散性の向上を目指し いる場合、ナノ粒子を分散させる前に、カ オン性界面活性剤(例えばtetrabutylammonium chlor ide、今後TBAcと略称)或いはカチオン性高分子 解質(例えばPolyethylenimine、今後PEIと略称)予 添加することもある。

 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶 液)を用いて、図5に示す静電紡糸装置により 維形成用組成物を噴出し、連続的に紡糸を うことにより繊維を蓄積させて、繊維堆積 を製造した。

 このときの噴出ノズル1の内径は0.22mm(注 針:27G)、シリンジ2の容量は10ml、電圧は14.5kV 噴出ノズル1から繊維捕集電極5(ステンレス )までの距離は18cmであった。シリンジポン (BioanalyticalSystemsInc社製、商品名:MD-1020)によ 繊維形成用組成物の吐出量を20μl/minに制御 ながら、繊維形成用組成物を噴射し、捕集 極に貼りつけたPETフィルムの上に堆積させ 。

 得られたFe 3 O 4 ナノ粒子-PVB複合体繊維の堆積物を採取し、 学顕微鏡にて撮影した透過写真(3000倍)を図14 に示し、得られた繊維の平均繊維径が1.1μmで あり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察からFe 3 O 4 ナノ粒子が均一的に分散されていることかつ 50nm以上の凝集がないことは確認された。TGA 定によりFe 3 O 4 の充填率が29.8質量%となった。

 〈実施例B7〉PEO/Fe 3 O 4 (水分散、33.3質量%)
 市販されているポリエチレンオキシド(以下 では「PEO」として言及、和光純薬製、分子量 300,000~500,000)1gを、純水とエタノール(純水/エ ノール=1:1)の混合溶媒19gに完全溶解し、PEO 液を得た。

 得られたPEO溶液に、粒子表面にカチオン表 修飾剤に覆われたFe 3 O 4 水分散コロイド(フェローテック製、商品名EM G607、平均粒径約10nm、固体分約10質量%)5gを添 し、チューブミキサーに15分間当てること よって、Fe 3 O 4 ナノ粒子-PEO複合体溶液を調製した。ナノ粒 の高充填率の達成と分散性の向上を目指し いる場合、ナノ粒子を分散させる前に、カ オン性界面活性剤(例えばtetrabutylammonium chlor ide、今後TBAcと略称)或いはカチオン性高分子 解質(例えばPolyethylenimine、今後PEIと略称)予 添加することもある。

 上記で得られた繊維形成用組成物(紡糸溶 液)を用いて、図5に示す静電紡糸装置により 維形成用組成物を噴出し、連続的に紡糸を うことにより繊維を蓄積させて、繊維堆積 を製造した。

 このときの噴出ノズル1の内径は0.22mm(注 針:27G)、シリンジ2の容量は10ml、電圧は16.0kV 噴出ノズル1から繊維捕集電極5(ステンレス )までの距離は18cmであった。シリンジポン (BioanalyticalSystemsInc社製、商品名:MD-1020)によ 繊維形成用組成物の吐出量を10μl/minに制御 ながら、繊維形成用組成物を噴射し、捕集 極に貼りつけたPETフィルムの上に堆積させ 。

 得られたFe 3 O 4 ナノ粒子-PEO複合体繊維の堆積物を採取し、 学顕微鏡にて撮影した透過写真(3000倍)を図15 に示す。得られた繊維の平均繊維径が0.92μm あり、透過型電子顕微鏡(TEM)観察からFe 3 O 4 ナノ粒子が均一的に分散されていることかつ 50nm以上の凝集がないことは確認された。TGA 定によりFe 3 O 4 の充填率が29.2質量%となった。

 〈実施例B1~B7及び参考例B1についてのまとめ 〉
 実施例B1~B7及び参考例B1において使用した材 料、及び得られた複合材料について、下記の 表3及び4にそれぞれまとめている。

 〈実施例B8〉PVB700/Ag(40質量%)(バルク)
 実施例B2で製造したAgナノ粒子分散繊維堆積 物を掻き集め、80℃のオープンで1時間熱処理 を行ったIR測定錠剤製造用ペレット(SPECAC製、 直径13mm)に入れて、真空を引きながら、300kg/c m 2 の圧力において、15分間成型を行った。成型 た円盤状の塊(直径13×1~2mm)を取り出し、光 顕微鏡にて表面の繊維模様を確認し、80℃×5 0kg/cm 2 の条件において熱プレスを1分間ずつ5回行っ 。なお、繊維堆積物を構成する高分子(MPTMS- PVB)のガラス転移温度(Tg)は、約70~80℃であっ 。

 一分間毎にサンプル表面を光学顕微鏡で 認し、繊維模様が完全になくなった後、ス ンレス板に挟まれたまま80℃のオーブンで1 間熱処理を行い、ナノ粒子分散繊維堆積物 らなるバルク成型体サンプルを得た。

 製造したバルク成型体サンプルをエポキ 樹脂に包埋、ミクロトーム(ULTRACUT-S、ライ 製)より薄切し、バルクサンプル断面のTEM観 を行った。繊維中におけるナノ粒子の高分 性を維持したまま、空隙もなく繊維模様も くなることは確認された(図16に示す)。

 〈実施例B9〉PVB2400/Fe 3 O 4 (33.3質量%)(バルク)
 実施例B5に製造したFe 3 O 4 ナノ粒子分散繊維堆積物を掻き集めて、80℃ オープンで1時間熱処理を行ったIR測定錠剤 造用ペレット(SPACAC製、直径13mm)に入れて、 空を引きながら、300kg/cm 2 の圧力において、15分間成型を行った。成型 た円盤状の塊(直径13×1~2mm)を取り出し、光 顕微鏡にて表面の繊維模様を確認し、80℃×5 0kg/cm 2 の条件において熱プレスを1分間ずつ5回行っ 。なお、繊維堆積物を構成する高分子(PVB) ガラス転移温度(Tg)は、70~80℃であった。

 一分間毎にサンプル表面を光学顕微鏡で 認し、繊維模様が完全になくなった後、ス ンレス板に挟まれたまま80℃のオーブンで1 間熱処理を行い、ナノ粒子分散繊維堆積物 らなるバルク成型体サンプルを得た。

 製造したバルク成型体サンプルをエポキ 樹脂に包埋、ミクロトーム(ULTRACUT-S、ライ 製)より薄切し、バルクサンプル断面のTEM観 を行った。繊維中におけるナノ粒子の高分 性を維持したまま、空隙もなく繊維模様も くなることは確認された(図17に示す)。